説明

ロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法

【課題】ロータリーキルンの燃料として廃プラスチックを用いる際に、廃プラスチックの吹込み速度管理や燃焼管理を容易に行なうことが可能であり、廃プラスチック粒子の燃焼性を向上可能な、また、異物が製品に混入しないロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法を提供すること。
【解決手段】ロータリーキルンで廃プラスチックを利用する方法であって、廃プラスチックを破砕して破砕物を得る破砕工程と、前記破砕物から異物を除去する異物除去工程と、異物を除去した前記破砕物を円柱形状に押出し造粒して造粒物を得る造粒工程と、前記造粒物をロータリーキルン内に吹き込む吹き込み工程と、を有することを特徴とするロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法を用いる。ロータリーキルン内に吹き込む廃プラスチックの造粒物の平均強度指数δが49以上であり、かつ吹き込む直前の前記造粒物の調和平均径が2mm以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生石灰、焼ドロマイト、ポルトランドセメント等を製造するロータリーキルン炉に廃プラスチックを吹き込むことにより燃焼させて、燃料として利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みのプラスチックである廃プラスチックは高い熱量を有する熱源として使用可能であるが、従来埋め立て処理および焼却処理されていた。しかしながら、廃プラスチックは嵩高いため埋め立て処分場が早期に逼迫してくる問題、あるいは廃プラスチックを焼却した際の有害成分の発生等による環境上の問題が発生してきている。そこで、廃プラスチックのリサイクル利用の要請が高まり、例えば鉄鋼業においては、高炉、コークス炉で廃プラスチックを炭材として使用することにより、廃プラスチックの大量リサイクルを行なっている。
【0003】
廃プラスチックが高い熱量を有する熱源として使用可能なことに着目した技術としては、廃プラスチックを利用したセメントクリンカーの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、廃プラスチックをセメントクリンカーを製造するロータリーキルン内の原料に添加することによって安価にセメントクリンカーを製造できるとしているが、具体的な廃プラスチックの添加方法は不明である。
【0004】
従来、生石灰、焼ドロマイト、ポルトランドセメント等がロータリーキルンを用いて製造されていることは良く知られている。ロータリーキルンは装入物に対して燃焼ガスの通過する空間が比較的大きいため、種々の燃料を燃焼するために好都合である。
【0005】
ロータリーキルンにおいて、生石灰、焼ドロマイトは、石灰石、ドロマイト原石をサイロから原石を予熱するためのグレートプレヒーターに供給し、予めロータリーキルンからの排ガスによって予熱し、その後、ロータリーキルンに装入して製造される。ロータリーキルンは円形の鉄皮に耐火物が内張りされた円筒状の加熱炉であって、一定の速度で円筒の軸の回りに回転している。装入された石灰石等は回転した炉内を通過し、出口方向へ移動する。原料の装入口は出口方向に対して3/100〜4/100上向きに傾斜しており、装入された石灰石等は焼成されながら炉内を回転しつつ、出口方向に移動する。
【0006】
出口においては、燃料を供給する装置が備えられており、ノズルを介して炉内に吹き込まれ、空気により燃焼して、炉内を1000℃以上の高温に保持する。この燃焼熱により石灰石、ドロマイト原石は焼成されて生石灰または焼ドロマイトに変化する。
【0007】
燃料燃焼のための空気は生石灰、焼ドロマイトと熱交換を行い、高温空気としてロータリーキルンの中に吹き込まれ、燃料を燃焼する。ロータリーキルン内の温度は出口側が約600℃前後、燃料が燃焼する火炎のある部分は部分的には1500℃以上となり、石灰石、ドロマイトの分解反応に伴って温度が低下し、ガスの排出口側においては1000℃程度まで温度が低下する。この1000℃程度の高温排ガスは石灰石、ドロマイトの予熱に使用される。
【0008】
以上が生石灰または焼ドロマイトを製造するロータリーキルン設備の概要である。従来、ロータリーキルンでは燃料として主に微粉炭を利用し、一部として重油も利用している。しかしながら、これらの燃料は何れもコスト高である。高発熱量を有する廃プラスチックを燃料として利用することで、生石灰または焼ドロマイトをより安価に製造することができ、燃料削減ならびに環境問題の解決につながることが期待される。
【0009】
ロータリーキルンにおいて、廃プラスチックを主燃料と共にロータリーキルン内に吹き込み、燃焼させることを目的とし、(a)廃プラスチック粒子を細束流とする工程と、(b)前記廃プラスチック粒子の細束流を主燃料の吹き込み位置の上側から前記ロータリーキルン内に燃料として吹き込み、燃焼させる工程、を有するロータリーキルンにおける廃プラスチックの燃焼方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2においては、ロータリーキルン内に細束流として吹き込んだ廃プラスチック粒子の炉内における着地範囲が、主燃料の火炎長さの1/10〜2/3の範囲にあるように吹き込むことが好ましいとされている。
【特許文献1】特開昭46−15037号公報
【特許文献2】特開平8−283053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2においては、廃プラスチック粒子をロータリーキルンの中で完全に燃焼させるために、吹込み方法、粒径の規定がなされているが、単純に廃プラスチックを破砕するだけでは幅広い粒度構成の粒子となるため、吹込み速度の管理や、着地位置等を制御する燃焼管理を行なうことが非常に困難である。ロータリーキルンに吹き込む廃プラスチック粒子に、小粒径の廃プラスチックが混入した場合、キルン内ガスの流れにのって排ガス出口(原料入り口)側に移行し、結果としてすすとして排ガス系に排出される。また、廃プラスチックには種々の異物(金属、塩素含有合成樹脂等)が含有されることから、これらの異物が製品(生石灰、焼ドロマイト)に混入することが予測される。
【0011】
したがって本発明の目的は、ロータリーキルンの燃料として廃プラスチックを用いる際に、廃プラスチックの吹込み速度管理や燃焼管理を容易に行なうことが可能であり、廃プラスチック粒子の燃焼性を向上可能な、ロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法を提供することにある。また、本発明の目的は、異物が製品に混入しないロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)ロータリーキルンで廃プラスチックを利用する方法であって、廃プラスチックを破砕して破砕物を得る破砕工程と、前記破砕物から異物を除去する異物除去工程と、異物を除去した前記破砕物を円柱形状に押出し造粒して造粒物を得る造粒工程と、前記造粒物をロータリーキルン内に吹き込む吹き込み工程と、を有することを特徴とするロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法。
(2)下記(z)式で定義するロータリーキルン内に吹き込む廃プラスチックの造粒物の平均強度指数δが49以上であり、かつ吹き込む直前の前記造粒物の調和平均径が2mm以上であることを特徴とする、(1)に記載のロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法。
δ=Σδiωi・・・(z)
(但し、δi:径の長さdiの円柱形状の造粒物の側面に垂直な荷重を加えたときの荷重(N)と変位(mm)との比(N/mm)、ωi:径の長さdiの造粒物の質量分率)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粒状に加工し、品質が安定した廃プラスチックの造粒物をロータリーキルンに利用することで、吹込み管理、燃焼管理が容易となり、炉を安定的に運転することができる。また、廃プラスチックから造粒物を得る際に異物を除去することで、ロータリーキルンを用いて製造される生石灰や焼ドロマイト等の品質が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は前記課題を解決するために、鋭意検討されたものであり、具体的には、図1に示すフローに従い、廃プラスチックを破砕工程1で破砕後、異物除去工程2において予め磁選、風選等を用いた異物除去と水による洗浄等を行ない、プラスチック以外の異物を可能な限り除去した後に、造粒工程3に供給し、造粒物に加工する。造粒物は、造粒物をロータリーキルン内に吹き込む吹き込み工程4により、ロータリーキルン5内に吹き込まれる。造粒工程3では異物を除去した破砕物を円柱形状に押出し造粒して造粒物を得る。ロータリーキルンで製造する生石灰や焼ドロマイト等に要求される品質に合わせて、必要に応じて、塩ビ分離工程6により、塩化ビニル等の塩素含有プラスチックを除去した後に、造粒工程3で造粒を行なう。このようにして得られた造粒物は、プラスチック以外の異物が除去されており、性状が一定(粒径範囲が狭く、品質も安定)であり、ロータリーキルンへの吹込み燃料として好適である。
【0015】
造粒工程は通常の廃プラスチックを造粒する際に用いる公知の方法である、以下に示す圧縮成型造粒方法のような造粒方法を用いることができる。圧縮成型造粒方法は、特にフィルム状の廃プラスチックの造粒に好適である。
【0016】
圧縮成型造粒方法では、廃プラスチックを、全周に複数のダイス孔が貫設されたリングダイの孔から圧縮押出しして造粒する。たとえば、全周に複数のダイス孔が貫設されたリングダイと、このリングダイの内側にリングダイ内周面と接するようにして回転自在に配置された転動ローラとを備えた圧縮成型装置を用いるものであり、リングダイの内部に投入された廃プラスチックを、転動ローラによってリングダイ内周面との間で圧縮・圧潰しつつリングダイのダイス孔に押し込み、ダイス孔内を通過してリングダイ外面側に押し出されたプラスチック成型物を切断又はリングダイ外面から掻き落とすことにより、炉吹き込み原料となる粒状プラスチック成型物を得るものである。主としてダイス孔内において廃プラスチックの少なくとも一部が摩擦熱によって半溶融又は溶融化し、その後固化することによりプラスチック成型物(造粒物)が得られる。
【0017】
圧縮成型造粒方法で用いる造粒装置としては、たとえば、全周に複数のダイス孔が貫設され、装置本体に回転可能に支持されるとともに駆動装置により回転駆動するリングダイと、装置本体に回転自在に支持されるとともに、前記リングダイの内側にリングダイ内周面と接するようにして配置される1又は2以上の転動ローラとを備えたものが知られており、廃プラスチックを、前記転動ローラによってリングダイ内周面との間で圧縮・圧潰しつつリングダイのダイス孔内に押し込み造粒する。
【0018】
圧縮成型造粒方法で用いる造粒装置の一例の概略図を図2に示す。このプラスチック圧縮成型装置は、全周に複数のダイス孔10が貫設されたリングダイ11と、このリングダイ11の内側にリングダイ内周面と接するようにして回転自在に配置された転動ローラ12a、12bと、リングダイ11の外側に配置されたカッター13とを備えている。
【0019】
前記リングダイ11は適当な幅を有するリング体により構成され、図示しない装置本体に回転可能に支持されるとともに、同じく図示しない駆動装置により回転駆動する。このリングダイ11の周方向及び幅方向には複数のダイス孔10が設けられている。これらのダイス孔10は、リングダイ11の径方向に沿ってリングダイ11の内側(内周面)と外側(外周面)間を貫通して設けられている。ダイス孔10の孔径(直径)は造粒すべき粒状プラスチック成型物の大きさ(径)に応じて決められるが、通常2〜15mm程度である。また、ダイス孔10の長さ(リングタイ5の厚さ)は通常30〜150mm程度である。
【0020】
前記転動ローラ12a、12bは装置本体に回転自在に支持されるとともに、リングダイ11の内側に180°対向した状態に配置されている。これら転動ローラ12a、12bは無駆動のフリーのローラ体であり、リングダイ11の内周面と接しているためその内周面との摩擦によりリングダイ11の回転に伴って回転する。なお、この転動ローラ12の数は任意であり、1個又は3個以上設けてもよい。
【0021】
前記カッター13は、その刃先がリングダイ11の外周面に接するか又は外周面の近傍に位置するように設けられ、前記ダイス孔10からリングダイ11の外側に棒状に押し出されるプラスチック成型物を適当な長さに切断する(又はリングダイ外周面から掻き落す)ものである。
【0022】
以上のようなプラスチック圧縮成型装置では、リングダイ11が図中矢印方向に回転駆動し、これに随伴して転動ローラ12a、12bも回転している状態で、投入口14からリングダイ11の内部に廃プラスチック2が投入され、この投入された廃プラスチックは、リングダイ11内で混合され、転動ローラ12a、12bによってリングダイ11内周面との間で圧縮・圧潰されつつリングダイ11のダイス孔10内に押し込まれる。ダイス孔10内に押し込まれた廃プラスチックは、ダイス孔内を通過してリングダイ11の外面側に棒状に成型された状態で順次押し出され、このプラスチック成型物が前記カッター13により適当な長さに切断されることにより、円柱形状のプラスチック造粒物15が得られる。16は排出口である。
【0023】
上記の方法を用いて製造されるプラスチック造粒物は、製造条件(処理速度)、リングダイのダイス孔径、ダイス長さを変更することで、硬さ(平均強度指数)の異なるものを製造することができる。ロータリーキルンへ燃料として吹き込む場合は通常、気流輸送方式が取られるが、上記方法で造粒されたプラスチックを安定的に気送し、ロータリーキルン内に供給するためにはある程度以上の圧縮強度と粒径とを有することが好ましく、ロータリーキルン内に吹き込む廃プラスチックの造粒物の平均強度指数δが49以上であり、かつ吹き込む直前の造粒物の調和平均径が2mm以上であることが好ましい。なお、吹き込む直前の造粒物の調和平均径は、造粒物を5kg採取しその中から縮分して、最低250g程度のサンプルを測り採り、篩目が(11.1mm、9.52mm、6.70mm、4.75mm、2.80mm)の篩で粒度分布測定を行い、各篩目で分けられた造粒物の質量分率wpを求めて下記(x)式により計算する。
調和平均径[Dph]=1/(Σ(質量分率[wp]/代表長さ[Lr]))・・・(x)
上記(x)式における代表長さは、下記(y)式により求めるものである。
代表長さ=((上篩の篩目[mm])・(下篩の篩目[mm]))1/2・・・(y)
ただし、全ての篩目を通らなかった造粒物の代表長さは13.44mm、全ての篩目を通った造粒物の代表長さは1.00mmとする。
【0024】
通常石灰焼成用に用いられるロータリーキルンは燃料として重油あるいは燃料ガスを燃焼させ、その燃焼ガスにより石灰石を焼成する。ロータリーキルン内の燃焼ガスの速度は燃料量、ロータリーキルン内径にもよるが、5m/s〜10m/s程度であり、ガス速度と同等の終末速度を有する廃プラスチック造粒物がキルン内に存在した場合、燃焼ガスに同伴し、キルンより排出され、未燃焼の廃プラスチックおよび/またはすすとして排ガス処理装置に移行する。従って、吹込み直後の廃プラスチック造粒物としては粒子終末速度が10m/sに相当する粒子径以上の合成樹脂を吹き込むことが好ましい。このような粒子径は、円柱形状に押出し造粒して製造した廃プラスチック造粒物においては、約2mmである。したがって、造粒物の粒子径(調和平均径)は、2mm以上とすることが好ましい。本発明者等が検討した結果、造粒物の平均強度指数が49N/mm以上に確保されるように製造することにより、吹込み直後の造粒物の粉化は極めて少なく、2mm未満の粒子の割合を極めて少なくできることが分かった。したがって、平均強度指数が49N/mm以上の廃プラスチック造粒物をロータリーキルンの燃料として利用することで、吹き込み時の粒子径を2mm以上に保持して、燃焼効率が高い粒径2mm以上の造粒物として吹き込むこと可能であり、従来用いられた燃料を代替することが可能である。
【0025】
なお、平均強度指数δは、径の長さdに分布を持つ粒状物について、各径の粒状物について、円柱形状粒子の場合、粒子の長さ方向の側面に垂直な荷重(速度2mm/min一定)を加えたときの荷重(N)と偏位(mm)との比(N/mm)に質量分率を掛け算したものの総和であり、下記(z)式で定義する全てのdiについてのδiとωiの積の総和である。
δ=Σδiωi・・・(z)
但し、δi:径の長さdiの円柱形状の造粒物の側面に垂直な荷重(速度2mm/min一定)を加えたときの荷重(N)と変位(mm)との比(N/mm)、ωi:径の長さdiの造粒物の質量分率である。
【0026】
造粒物の強度は、例えば、図3に示すような装置を用いて測定する。図3は圧縮試験方法を示す模式図であり、圧縮試験装置20を用いて円柱形状の造粒物15の長さ方向の側面に圧縮速度2mm/minでW(N)の荷重を加え、図4に示すような加重W(N)と圧縮距離L(mm)との関係である圧縮特性を測定する。圧縮特性から造粒物の強度δを、δ≡ΔW/ΔLとして求めると、各di(粒径)を有する造粒物について図5に示すようなグラフが得られる。図5は造粒物の粒径と強度との関係を示し、粒径が大きいほど、高強度を有していることが分かる。平均強度指数δは、各粒径(円柱形状の円形部分の平均直径)diを有する造粒物の強度と質量分率の積の総和であり、上記(z)式で定義される。
【実施例1】
【0027】
図1のフローに従い図2に示したものと同様の造粒装置(リングダイ造粒装置)を用いて廃プラスチックを造粒し、プラスチック成型物(造粒物)を得た。
【0028】
使用した廃プラスチックは一般家庭からの廃棄物であり、複数種類のプラスチックと異物とが混合された状態で、ポリエチレン32mass%、ポリプロピレン31mass%、ポリスチレン22mass%、その他(紙など)15mass%であり、塩ビ分離工程は不要であった。表1に廃プラスチックの化学組成を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
廃プラスチックを0.5t/h〜2.0t/hの範囲で造粒装置に供給して、処理速度を変化させて造粒物を製造した。造粒装置はリングダイ内径840mm、幅240mm、リングダイ厚み(ダイス長さ)60mm、転動ローラ径405mmで、ダイス径6mmの穴1万個であり、直径約6mm、長さ約10〜20mmの円柱形状(円筒形)の造粒物を製造した。製造したプラスチック造粒物を900kg/hの条件で配管径40mm、配管長さ40m(ベント部2個所、R400)、ガス流速25m/sで輸送し、輸送後のプラスチック造粒物を回収した。成型直後の造粒物の平均強度指数δならびに気流輸送後のプラスチック造粒物の2mm以下粒子の質量割合(2mm以下粉率)を篩いを用いて測定した。平均強度指数と廃プラスチック処理速度の関係を図6に、2mm以下粉率と平均強度指数との関係を図7に示す。
【0031】
図6によれば、廃プラスチックの処理速度を変化させることで、造粒物の平均強度指数を制御可能であることが分かる。また、図7によれば、平均強度指数が約49N/mm(5kgf/mm)以上であれば、2mm以下の粉状物の割合を10mass%以下とすることができることが分かる。
【0032】
製造したプラスチック造粒物のうち、平均強度指数24.5N/mm(2.5kgf/mm)、64.7N/mm(6.6kgf/mm)、97.0N/mm(9.9kgf/mm)のものを用いて、500t/日の生石灰生産量の石灰焼成ロータリーキルンに吹き込みを行ない、既存燃料(重油)との代替率を算出した。プラスチック吹込み前の重油燃料の吹込み量は2.65t/hで発熱量は9800kcal/kgであった。プラスチックの発熱量も9800kcal/kgである。プラスチック造粒物を吹き込む際には、プラスチック造粒物の吹込み量は840kg/hとし、不足分を重油の吹き込みで補った。
【0033】
いずれの平均強度指数のプラスチック造粒物においても、造粒物中に金属等の異物は混入していなかった。そのため、製造された石灰中に金属等の異物は検知されなかった。また、石灰焼成ロータリーキルンからの排ガスをサンプリングしてガス分析を行なったが、排ガス中にも塩酸等の混入はみられなかった。
【0034】
平均強度指数が24.5N/mmのプラスチック造粒物を用いた場合には、重油の吹き込み量は2.3t/hであり、代替率は43mass%であった。従来技術である単純に廃プラスチックを破砕して幅広い粒度構成で燃焼させた際には、最も良い燃焼性を示した場合で代替率70%であったため、プラスチック造粒物の燃焼性は従来技術の廃プラスチック破砕物に比べて若干低いものであったが、排ガス中には不完全燃焼によるスス等も観察されず、安定した燃焼が達成できた。
【0035】
平均強度指数64.7N/mmの造粒物を用いた場合には1.95t/hの重油吹き込み量、粒子強度指数97.0N/mmの造粒物を用いた場合には1.88t/hの重油吹き込み量となり、代替率は86mass%、95mass%であり平均強度指数を高くしたプラスチック造粒物の燃焼性は非常に高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ロータリーキルンに用いる廃プラスチックの処理フロー。
【図2】圧縮成型造粒方法で用いる造粒装置の一例の概略図(リングダイ造粒装置)。
【図3】圧縮試験方法を示す模式図(平均強度指数の測定方法)。
【図4】圧縮特性と造粒物の強度との関係を示すグラフ(平均強度指数の測定方法)。
【図5】造粒物の粒径と強度との関係を示すグラフ(平均強度指数の測定方法)。
【図6】平均強度指数と廃プラスチック処理速度の関係を示すグラフ。
【図7】2mm以下粉率と平均強度指数との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0037】
1 破砕工程
2 異物除去工程
3 造粒工程
4 吹き込み工程
5 ロータリーキルン
6 塩ビ分離工程
10 ダイス孔
11 リングダイ
12(12a、12b) 転動ローラ
13 カッター
14 投入口
15 プラスチック造粒物
16 排出口
20 圧縮試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンで廃プラスチックを利用する方法であって、廃プラスチックを破砕して破砕物を得る破砕工程と、前記破砕物から異物を除去する異物除去工程と、異物を除去した前記破砕物を円柱形状に押出し造粒して造粒物を得る造粒工程と、前記造粒物をロータリーキルン内に吹き込む吹き込み工程と、を有することを特徴とするロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法。
【請求項2】
下記(z)式で定義するロータリーキルン内に吹き込む廃プラスチックの造粒物の平均強度指数δが49以上であり、かつ吹き込む直前の前記造粒物の調和平均径が2mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のロータリーキルンでの廃プラスチックの利用方法。
δ=Σδiωi・・・(z)
(但し、δi:径の長さdiの円柱形状の造粒物の側面に垂直な荷重を加えたときの荷重(N)と変位(mm)との比(N/mm)、ωi:径の長さdiの造粒物の質量分率)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−253431(P2007−253431A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80043(P2006−80043)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】