説明

ロータリージョイントおよび遠心分離装置

【課題】密閉状態を維持しつつ、シール部において発生する摩擦熱の流体への伝熱を抑制する。
【解決手段】円筒状の隙間17をあけて中心軸線L回りに相対回転可能に支持された軸体11およびハウジング12と、中心軸線Lに沿う方向に間隔をあけて隙間17に配置され、隙間17を密閉するシール部材13,14と、軸体11の内部に形成され、シール部材13,14により密閉された隙間17において軸体11の外周面に開口する軸側流路15と、ハウジング12に形成され、シール部材13,14により密閉された隙間17においてハウジング12の内面に開口する固定ノズル21と、シール部材13,14により密閉された隙間17において軸体11の外周面を被覆するように設けられた断熱部材16とを備えるロータリージョイント10を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリージョイントおよび遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞等の生体組織を扱う医療・バイオ系のディスポーザブルセットは、滅菌状態を保つために流路を密閉状態にすることが望ましい。この要求に対し、従来、配管を外部のポンプ等に接続された状態で容器を回転させる装置として、気密を保ったまま回転可能なロータリージョイントが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−210964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロータリージョイントには気密のためのシール材が用いられており、遠心分離装置のような高速回転を要する場合には、シール材と回転軸との摩擦による発熱で流路内の温度が上昇し、生体組織にダメージを与えてしまうという不都合があった。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、密閉状態を維持しつつ、シール部において発生する摩擦熱が流体へ伝熱することを抑制できるロータリージョイントおよびこれを備える遠心分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様は、円筒状の隙間をあけて中心軸回りに相対回転可能に支持された軸体およびハウジングと、前記中心軸に沿う方向に間隔をあけて前記隙間に配置され、該隙間を密閉するシール部材と、前記軸体の内部に形成され、前記シール部材により密閉された隙間において前記軸体の外周面に開口する軸側流路と、前記ハウジングに形成され、前記シール部材により密閉された隙間において前記ハウジングの内面に開口するハウジング側流路と、前記シール部材により密閉された隙間において前記軸体の外周面を被覆するように設けられた断熱部材とを備え、前記軸体と前記シール部材との間に形成された第1のシール部と、前記シール部材と前記断熱部材との間に形成された第2のシール部とを有するロータリージョイントである。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、軸体とハウジングとの間に形成されシール部材により密閉された円筒状の隙間によって、軸側流路とハウジング側流路とが接続される。これにより、軸体とハウジングとを相対回転させても、軸側流路とハウジング側流路との間で流体を流動させることができる。また、軸体とシール部材との間に第1のシール部が形成されるとともに、シール部材と断熱部材との間に第2のシール部が形成されるので、円筒状の隙間の密閉度を向上することができる。
【0008】
ここで、軸体とハウジングとが中心軸回りに相対的に回転駆動させられると、軸体とシール部材との間に形成された第1のシール部において摩擦による熱が発生する。この熱は軸体を伝導するが、円筒状の隙間において軸体の外周面には断熱部材が被覆されているため、軸体から円筒状の隙間への熱伝達を抑制することができる。これにより、軸体側流路あるいはハウジング側流路から円筒状の隙間に流体を流通させた場合に、流体が摩擦熱によって過熱されることを防止することができる。また、第2のシール部により、摩擦熱が発生している第1のシール部への流入が防止されるので、第1のシール部における流体の過熱を防止することができる。
【0009】
上記態様において、前記第2のシール部における前記シール部材と前記断熱部材との接触圧力が、前記第1のシール部における前記軸体と前記シール部材との接触圧力よりも小さくなるように前記断熱部材が配置されることとしてもよい。
このようにすることで、軸体側流路あるいはハウジング側流路から円筒状の隙間に流体を流通させた場合に、第1のシール部におけるシール性を確保して流体の漏れを防止しつつ、第2のシール部における摩擦熱を抑制して流体の過熱を防止することができる。
【0010】
上記態様において、前記第2のシール部において、前記シール部材と前記断熱部材とが前記中心軸方向に間隔をあけて配置されることとしてもよい。
このようにすることで、第2のシール部における摩擦熱の発生を防止することができ、軸体側流路あるいはハウジング側流路から円筒状の隙間に流体を流通させた場合に、第2のシール部における流体の過熱を防止することができる。
【0011】
上記態様において、前記軸体が、金属材料またはセラミック材料から構成されることとしてもよい。
このようにすることで、軸体の強度を向上するとともに、軸体の熱伝導率を大きくして第1のシール部において発生した摩擦熱を効率的に放熱することができる。
【0012】
上記態様において、前記軸体の内部には断熱材料が充填され、該断熱材料内に前記軸側流路が形成されることとしてもよい。
このようにすることで、第1のシール部および第2のシール部において発生した摩擦熱が、軸側流路内の流体に伝達してしまうことを防止することができる。
【0013】
上記態様において、前記第2のシール部において、前記シール部材と前記断熱部材との間隔が、0μmから50μmであることとしてもよい。
このようにすることで、例えば生体組織を軸体側流路あるいはハウジング側流路から円筒状の隙間に流通させた場合に、生体組織内の細胞が、摩擦熱が発生している第1のシール部に流入することを防止することができる。これにより、第2のシール部における摩擦熱の発生を防止しつつ、第1のシール部における細胞の損傷を防止することができる。
【0014】
上記態様において、前記第1のシール部において、前記シール部材のつぶし代が、100μmから500μmであることとしてもよい。
このようにすることで、円筒状の隙間の密閉性を向上することができ、第1のシール部における流体の漏れを防止することができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、上記のいずれかのロータリージョイントと、前記軸体を中心軸回りに回転駆動するモータと、前記軸体の半径方向外方に接続された遠心分離容器とを備える遠心分離装置である。
本発明の第2の態様によれば、ロータリージョイントの軸体とハウジングとの間からの流体の漏れを防止しつつ、ロータリージョイントのシール部において発生する摩擦熱がロータリージョイント内を流通する流体に伝熱することを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、密閉状態を維持しつつ、シール部において発生する摩擦熱が流体へ伝熱することを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠心分離装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1のロータリージョイントの概略構成を示す模式図である。
【図3】図2に示すA部の部分拡大図である。
【図4】軸体内部の流路の形成方法を説明する図である。
【図5】図4の流路形成方法の変形例を示す図である。
【図6】図3のシール部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る遠心分離装置1について、図面を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る遠心分離装置1は、例えば脂肪組織等の生体組織を成分毎に分離する装置であって、相対回転可能に支持された軸体11およびハウジング12を有するロータリージョイント10と、軸体11に中心軸線L方向に接続された回転軸20と、回転軸20を中心軸線L回りに回転駆動するモータ(図示略)と、軸体11の半径方向外方に接続された遠心分離容器40と、ロータリージョイント10を介して遠心分離容器40に給液および排液を行うポンプ30と、これらを接続する配管31,32とを主な構成要素として備えている。
【0019】
遠心分離容器40は、円筒状に形成されており、中心軸線Lに対して揺動可能に軸体11に接続されている。遠心分離容器40は、一端が開口し他端がテーパ状に漸次先細になって閉塞された容器本体41と、容器本体41の開口部を閉塞する蓋体42と、蓋体42の略中央から容器本体41の軸線に沿って延びた配管43とを備えている。
【0020】
遠心分離容器40は、容器本体41内に細胞懸濁液を収容し、モータを作動させて中心軸線L回りに回転させることで、細胞懸濁液に含まれている成分の比重の差によって、容器本体41内の細胞懸濁液を細胞群と上清とに遠心分離するようになっている。
【0021】
ポンプ30は、遠心分離容器40内の細胞懸濁液を細胞群と上清とに遠心分離した状態で、ロータリージョイント10を介して遠心分離容器40内の上清および細胞群をそれぞれ吸引し、遠心分離容器40外に排出するようになっている。また、ポンプ30は、ロータリージョイント10を介して遠心分離容器40内の細胞懸濁液に洗浄液を供給するようになっている。
【0022】
配管31,32は、例えば、生体適合性を有するシリコンゴムで形成されたチューブである。配管31は、ポンプ30とロータリージョイント10のハウジング12とを接続している。配管32は、ロータリージョイント10の軸体11と遠心分離容器40とを接続している。
【0023】
ロータリージョイント10は、図2に示されるように、円筒形状の軸体11と、軸体11の外側に同心円に配置された円筒形状のハウジング12と、軸体11およびハウジング12を中心軸線L回りに相対回転可能に支持する回転軸受(図示略)と、軸体11とハウジング12との間に配置された円環形状のシール部材13,14と、軸体11の外周面を被覆するように設けられた断熱部材16とを備えている。
【0024】
軸体11は、例えばステンレス等の金属やセラミック等の、強度が高く且つ高い熱伝導率を有する材料で形成されている。軸体11は、内部を中空とするパイプ形状を有しており、外周面には遠心分離容器40と接続するための回転ノズル22が設けられている。
【0025】
軸体11の内部には、例えばインサート成形により、生体適合性を有するシリコンゴムやフッ素ゴム等の弾性材料18が充填されており、弾性材料18内には洗浄液や細胞群等を流通させる軸側流路15が形成されている。ここで、弾性材料18は、軸体11に比べて低い熱伝導率を有しているため、軸体11からの伝熱を防止する、いわゆる断熱材としての機能を有している。
【0026】
軸体11を金属やセラミック等の材料で構成することで、強度や耐磨耗性を持たせるとともに、摩擦係数を低下させてシール部材13との摩擦熱を低減することができる。また、高い熱伝導率を持たせることで、シール部材13との摺動部において発生する熱を他の部分に伝導させて放熱することが可能となる。
【0027】
軸体11内に充填されるシリコンゴムやフッ素ゴムは、生体適合性を有するだけではなく、耐熱性にも優れている。また、弾性を有しているため、軸体11との接合部における熱膨張により発生する応力を吸収し、材料の破損を防止することができる。
また、軸体11をパイプ形状にすることにより、金属材料の重量を低減するとともに、軸側流路15の加工を容易なものとすることができ、軽量化やコストダウンが可能となる。
【0028】
ハウジング12は、軸体11と同様に、金属、セラミック材料や硬質プラスチック等から構成されており、外周面にポンプ30と接続するための固定ノズル21(ハウジング側流路)が設けられている。
軸体11とハウジング12との間には、円筒状の隙間17が形成されている。円筒状の隙間17内には、ポンプ30により固定ノズル21を介して洗浄水等が供給される。また、円筒状の隙間17内からは、ポンプ30により固定ノズル21を介して上清および細胞群が吸引される。
【0029】
シール部材13,14は、例えばフッ素樹脂等の耐熱性を有し且つ摩擦係数の低い樹脂で形成された円環形状の部材であり、ハウジング12の内周面に接合されている。シール部材13,14は、円筒状の隙間17において中心軸線Lに沿う方向に間隔をあけて配置されており、円筒状の隙間17を密閉するようになっている。
【0030】
ここで、JIS B 2406において、一般的な運動用Oリングのつぶし代、すなわち、軸体の外径とシール部材の内径との差は、例えば軸体の外径がφ10mmの場合には、280〜470μmと規定されている。より摺動抵抗の少ない硬質材料のシール部材を用いることで、つぶし代を100〜300μm程度にすることも可能である。このように、シール部材13,14の材質と、つぶし代を100〜500μmから適宜選択することで、円筒状の隙間17の密閉性を確保することができる。
【0031】
断熱部材16は、シリコンゴムやフッ素ゴム等の弾性材料や硬質プラスチックであり、シール部材13,14により密閉された隙間17において、軸体11の外周面を被覆するように設けられている。これにより、円筒状の隙間17内において、軸体11の外周面に細胞懸濁液が直接接触してしまうことを防止し、軸体11から円筒状の隙間17内の細胞懸濁液への伝熱を防止するようになっている。
【0032】
図3は、図2におけるA部の部分拡大図である。以降では、シール部材13,14の構成についてシール部材13を代表して説明するが、シール部材14も同様の構成を有している。
図3に示されるように、軸体11とシール部材13との間には、第1のシール部23が形成されている。また、シール部材13と断熱部材16との間には、第2のシール部24が形成されている。この第2のシール部24において、シール部材13と断熱部材16とは、中心軸線L方向に間隔をあけて配置されている。具体的には、シール部材13と断熱部材16との間隔は、0μmから50μmとなるように配置されている。
【0033】
このようにすることで、細胞懸濁液を円筒状の隙間17に流通させた場合に、細胞懸濁液内の細胞が、摩擦熱が発生している第1のシール部23に流入することを防止することができる。これにより、第2のシール部24における摩擦熱の発生を防止しつつ、第1のシール部23における細胞の損傷を防止することができる。
【0034】
シール部材13,14により密閉された隙間17においては、軸体11内に形成された軸側流路15が軸体11の外周面に開口している。軸側流路15は、軸体11に設けられた回転ノズル22と円筒状の隙間17とを接続している。
【0035】
ここで、軸体11内の軸側流路15の形成方法について以下に説明する。
図4に示されるように、軸側流路15の開口を軸体11の半径方向外方に2箇所とも設ける場合には、軸体11の外周部に半径方向内方に向けて穴を2ヶ所開け、流路が設けられた弾性材料18を軸体11内に挿入する。なお、軸体11の外周部に設けられた断熱部材16は、軸体11の内部の弾性材料18と共に一体成形することも可能であるが、別体として軸体11に装着することとしても良い。
【0036】
また、軸体11内に弾性材料18を挿入後に軸側流路15を形成する場合、軸体11の片側が開放されるため、この開放部を塞ぐための栓25を装着する。栓25は、軸側流路15内の細胞懸濁液と接触するため、弾性材料18と同様にシリコンゴムやフッ素ゴムを用いる。なお、生体適合性を有する材質であれば、硬質材でもゴム材でもよい。
【0037】
なお、図5に示されるように、軸側流路15の一方を回転軸線Lに沿う方向に開口させ、軸側流路15の他方を軸体11の先端に開口するようにすれば、軸体11の外周部に設ける穴1ヶ所および栓25が不要となり、液溜まりが発生しない構造で軸側流路15を形成することができる。
【0038】
上記構成を有する遠心分離装置1の作用について以下に説明する。
ここでは、本実施形態に係る遠心分離装置1を用いて、細胞懸濁液から細胞群を遠心分離する場合を例に挙げて説明する。
まず、脂肪組織等の生体組織と、該生体組織を分解する消化酵素液とを遠心分離容器40の容器本体41内に収容し、蓋体42を閉めてモータを作動させる。
【0039】
モータを作動させ、軸体11および遠心分離容器40を中心軸線L回りに回転させると、図1に示されるように、遠心分離容器40はその底部を半径方向外方に向けるように揺動した状態で遠心運動させられる。これにより、遠心分離容器40内部の細胞懸濁液に遠心力が作用して、細胞懸濁液内の細胞の比重に応じて、比重が大きい順に容器本体41の底面側から順に堆積されていく。
【0040】
その後、モータを一旦停止してポンプ30を作動させ、配管43により容器本体41内の上清を吸引する。
ここで、遠心分離により凝集した細胞群の中には、不要な組織片や消化液成分等が巻き込まれるようにして保持されてしまっている場合がある。そこで、ポンプ30を作動させて、配管43により容器本体41内に残った細胞群に対して洗浄液を供給する。
これにより、供給される洗浄液の流動エネルギによって細胞群を攪拌し、不要な組織片や洗浄液成分を細胞群から解放して放出させることができる。
【0041】
なお、細胞群の凝集が顕著な場合には、細胞懸濁液を攪拌するためにモータの回転速度を変化させることとしてもよい。これにより、中心軸線Lに対する遠心分離容器40の揺動角度を変動させ、遠心分離容器40内の細胞懸濁液を攪拌することができる。これにより、細胞群がペレット状に凝集していても、効率的に攪拌してほぐすことができ、洗浄液内に細胞群が均一に分散した細胞懸濁液を生成することができる。
【0042】
このようにして生成された細胞懸濁液を、ポンプ30を作動させて配管42により吸引する。配管43により容器本体41から吸引された細胞懸濁液は、配管32を流通して、ロータリージョイント10の軸体11内部に形成された軸側流路15に流入する。
【0043】
ここで、軸体11は、モータによる軸体11の回転運動に伴って、第1のシール部23におけるシール部材13,14と軸体11との摩擦により、熱が発生している。しかしながら、軸体11の内部には断熱性を有する弾性材料18が充填されており、この弾性材料18の内部に軸側流路15が形成されているため、軸側流路15内の細胞懸濁液に第1のシール部23において発生した熱が伝達することを防止する。
【0044】
軸側流路15に流入した細胞懸濁液は、軸側流路15内を流通して円筒状の隙間17に流入する。円筒状の隙間17内の細胞懸濁液は、固定ノズル21から配管31を流通し、ポンプ30により図示しない回収容器に送られる。
【0045】
円筒状の隙間17においては、軸体11の外周面に断熱部材16が被膜されているため、軸体11の外周面と細胞懸濁液とは直接接触せず、また、軸体11からの伝熱も防止される。また、円筒状の隙間17においては、シール部材13と断熱部材16とが中心軸線L方向に間隔をあけて配置されているため、両者の間に摩擦熱は発生せず、細胞懸濁液への伝熱が防止される。
【0046】
以上のように、本実施形態にかかる遠心分離装置1によれば、シール部材13,14により密閉された円筒状の隙間17によって、軸側流路15と固定ノズル21(ハウジング側流路)とが接続される。これにより、軸体11とハウジング12とを相対回転させても、軸側流路15と固定ノズル21との間で流体を流動させることができる。また、軸体11とシール部材13との間に第1のシール部23が形成されるとともに、シール部材13と断熱部材16との間に第2のシール部24が形成されるので、円筒状の隙間17の密閉度を向上することができる。
【0047】
また、円筒状の隙間17において、軸体11の外周面には断熱部材16が被覆されているため、軸体11から円筒状の隙間17内の細胞懸濁液への熱伝達を抑制することができる。また、第2のシール部24により、細胞懸濁液内の細胞が、摩擦熱が発生している第1のシール部23へ流入することが防止される。これにより、第1のシール部23において発生した熱による細胞の損傷を防止することができる。
【0048】
また、軸体11の内部に弾性材料18を充填し、弾性材料18内に軸側流路15を形成することで、第1のシール部23および第2のシール部24において発生した摩擦熱が、軸体11内部に形成された軸側流路15内の細胞懸濁液に伝達してしまうことを防止することができる。
【0049】
また、第2のシール部24において、シール部材13と断熱部材16とを中心軸線L方向に間隔をあけて配置することで、第2のシール部24における摩擦熱の発生を防止することができる。これにより、第2のシール部における細胞懸濁液の過熱を防止することができる。
【0050】
特に、第2のシール部24において、シール部材13と断熱部材16との間隔を、0μmから50μmとすることで、細胞懸濁液内の細胞が、摩擦熱が発生している第1のシール部23に流入することを防止することができる。これにより、第2のシール部24における摩擦熱の発生を防止しつつ、第1のシール部23における細胞の損傷を防止することができる。
【0051】
なお、シール部材13と断熱部材16との間隔は上記に限定されるものではなく、第2のシール部24におけるシール部材13と断熱部材16との接触圧力が、第1のシール部23における軸体11とシール部材13との接触圧力よりも小さくなるように、断熱部材16が配置されていればよい。例えば、シール部材13に50μm程度のつぶし代を持たせることで、シール性をある程度確保しつつ、摩擦熱の発生を抑制することができる。
【0052】
以下に、本発明の変形例について図6を用いて説明する。
シール部材13は、耐磨耗性、耐熱性のある樹脂を用いるが、外気との密閉性を確実に確保するため、軸体11との接触面積やつぶし代がある程度必要となる。
そこで、シール部材13は、図6に示されるように、軸体11の半径方向内方に延在するシール部材13aと、中心軸線Lに向かう方向に延在するシール部材13bとを組み合わせた形状としてもよい。このようにすることで、第1のシール部23において、シール部材13aと軸体11の接触面積を大きくするとともに、シール部材13aを軸体11の半径方向内方へ付勢することができるため、円筒状の隙間17の密閉性を向上することができる。
【0053】
第2のシール部24に用いるシール部材13bは、発熱を避けるために断熱部材16とは軽い接触状態か、僅かな隙間をあける。この隙間は、細胞程度のサイズの物が発熱部への接触を防ぐのであれば、数ミクロン程度であっても良い。また、もっと大きな隙間であっても、第1のシール部23により密閉されているので、発熱部に細胞懸濁液が浸入する量を僅かな量とすることができる。なお、シール部材13aとシール部材13bとは、一体でも別体でも良い。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、本実施形態においては、遠心分離容器40が1つである場合を例に挙げて説明したが、遠心分離容器40を複数設け、これに対応する配管32および軸側流路15についても複数設けることとしてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、軸体11をハウジング12に対して回転させることとして説明したが、ハウジング12を軸体11に対して回転させることとしてもよく、軸体11とハウジング12の双方を相対的に回転させることとしてもよい。
また、本実施形態においては、軸体11内に弾性材料18を充填し、弾性材料18内に軸側流路15を形成することとして説明したが、軸体11内に2種類以上の材料を用いて軸側流路15を形成することとしてもよい。この場合には、軸体11の内壁と軸側流路15の外壁との間に断熱機能を有する材料が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0056】
L 中心軸線
1 遠心分離装置
10 ロータリージョイント
11 軸体
12 ハウジング
13,14 シール部材
15 軸側流路
16 断熱部材
17 隙間
18 弾性材料
20 回転軸
21 固定ノズル
22 回転ノズル
23 第1のシール部
24 第2のシール部
30 ポンプ
31,32 配管
40 遠心分離容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の隙間をあけて中心軸回りに相対回転可能に支持された軸体およびハウジングと、
前記中心軸に沿う方向に間隔をあけて前記隙間に配置され、該隙間を密閉するシール部材と、
前記軸体の内部に形成され、前記シール部材により密閉された隙間において前記軸体の外周面に開口する軸側流路と、
前記ハウジングに形成され、前記シール部材により密閉された隙間において前記ハウジングの内面に開口するハウジング側流路と、
前記シール部材により密閉された隙間において前記軸体の外周面を被覆するように設けられた断熱部材とを備え、
前記軸体と前記シール部材との間に形成された第1のシール部と、前記シール部材と前記断熱部材との間に形成された第2のシール部とを有するロータリージョイント。
【請求項2】
前記第2のシール部における前記シール部材と前記断熱部材との接触圧力が、前記第1のシール部における前記軸体と前記シール部材との接触圧力よりも小さくなるように前記断熱部材が配置された請求項1に記載のロータリージョイント。
【請求項3】
前記第2のシール部において、前記シール部材と前記断熱部材とが前記中心軸方向に間隔をあけて配置された請求項1または請求項2に記載のロータリージョイント。
【請求項4】
前記軸体が、金属材料またはセラミック材料から構成された請求項1から請求項3のいずれかに記載のロータリージョイント。
【請求項5】
前記軸体の内部には断熱材料が充填され、該断熱材料内に前記軸側流路が形成された請求項1から請求項4のいずれかに記載のロータリージョイント。
【請求項6】
前記第2のシール部において、前記シール部材と前記断熱部材との間隔が、0μmから50μmである請求項1から請求項5のいずれかに記載のロータリージョイント。
【請求項7】
前記第1のシール部において、前記シール部材のつぶし代が、100μmから500μmである請求項1から請求項6のいずれかに記載のロータリージョイント。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のロータリージョイントと、
前記軸体を中心軸回りに回転駆動するモータと、
前記軸体の半径方向外方に接続された遠心分離容器とを備える遠心分離装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−190288(P2010−190288A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34087(P2009−34087)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】