説明

ロータリーバルブ

【課題】 ローターとケーシングの接触事故がクリアランスが少ないため生じる可能性があり、この接触事故が発生すると、削り取られた金属粉が処理すべき粉体、粒体に混入してしまう可能性が大きくなってしまうという点である。
【解決手段】 上下方向に貫通する移送路を有するケーシングと、そのケーシングの側面に形成された窓孔に固着されたサイドプレートと、そのサイドプレートを貫通して、前記ケーシング内に配置される回転シャフトと、その回転シャフトに取り付けられ、複数のポケット部を有するローターとから成るロータリーバルブにおいて、前記したローター及び回転シャフトをケーシングと絶縁状態とし、前記した回転シャフトあるいはその回転シャフトを駆動モータと連結する金属継手の一部に導電接触子を摺接させ、電力をシャフトを介してローターに印加する構成としてあることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリーバルブ、特に粉体、粒体を空気やガスによって移送し、その粉体、粒体を定量供給するとともにエアブロックの機能を持つロータリーバルブの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したロータリーバルブの概要は図1の一部及び図7の断面図に示すように構成されている。ロータリーバルブはケーシング1を有しており、このケーシング1は上部に投入口2、下部に排出口3を形成し、その投入口2と排出口3は上下方向で貫通されている。
【0003】
また、前記したケーシング1の両側面に形成された窓孔にはサイドプレート4a、4bがボルト5、5‥によってケーシング1に締結されている。このサイドプレート4a、4bには回転シャフト6の支持部が構成されており、この支持部にはオイルシール7、7‥及びベアリング8、8‥が配置され、回転シャフト6はそのオイルシール7、7‥、ベアリング8、8‥に接する状態でサイドプレート4a、4bを貫通し、ケーシング1内に設置される。
【0004】
前記した回転シャフト6にはキー等の手段によってローター9が嵌合され、このローター9は回転シャフト6と同期回転するものとされており、投入口2から投入される粉体、粒体を定量供給するため複数のポケット10、10‥が均等割で形成されている。
【0005】
さらに、回転シャフト6の一端はカップリング17を介して減速機付きの駆動モータ11に連結される。この駆動モータの回転数が一定であれば、粉体、粒体の排出量も一定となって定量供給の機能を果たす。そして、この粉体、粒体の移送には空気やガスの速度がある程度必要となり、その圧力の存在が必須となり、このため、ロータリーバルブには上部と下部とで圧力差が生じる。このため、空気やガスは上から下、または下から上へ通過する。この通過空気やガスの量が多いと、移送エネルギーが無駄となるから、ローター9とケーシング1の内面とのクリアランスはできるだけ少ない方が望ましく、従来はこのクリアランスを0.2mm程度としている。
【0006】
また、ローター9とサイドプレート4a、4bの間には通常、摩擦を避けるために空間12が形成されるが、この空間12に粉体や粒体が溜り、固化してしまうと激しい摩擦が生じ、運転が停止してしまうことがある。そのために、この空間12はある程度広くしておくことが必要である。
【0007】
さらに、この粉体や粒体の滞留を防止するため、空間12の下方には粉落としと称される開口部13が設けられる。これによって、ロータリーバルブの下方の空気は抵抗無く空間12内に侵入し、その内圧はロータリーバルブの下方と等しい。従って、ロータリーバルブの上下の差圧をブロックする障害となる狭いクリアランスは上方開口部(投入口2側)の周囲だけが有効となり、下方開口部(排出口3側)周辺では無意味となる。
【0008】
即ち、ローター9とケーシング1とのクリアランスは上方(投入口2側)を狭くする方が、ローター9の周囲全部のクリアランスを狭くするよりも有効となる。従って、ケーシング1とローター9とのクリアランスは0.3〜0.5mm程度に大きくしても差し支えはない。従来、このクリアランスの公差は0.2±0.05mmと非常に厳しいものであったが0.3〜0.5mm±0.1mm程度で十分である。従来、高圧用には0.1mmのクリアランスが要求され、頑丈なケーシングと高精度な機械加工が必要とされている。
【特許文献1】出願人は、本願発明に関して、先行する技術文献を調査したが、格別に関連し、類似すると思われる文献は発見することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、ローターとケーシングの接触事故が、クリアランスが少ないため生じる可能性があり、この接触事故が発生すると、削り取られた金属粉が処理すべき粉体、粒体に混入してしまう可能性が大きく、一旦、このような事故があると、出荷した製品で粉体、粒体を回収しなければならず、この費用は膨大となってしまうという点である。
【0010】
また、従来要求されるクリアランスを達成するためにはケーシングを頑丈なものとし機械加工が要求されるため、ケーシングの重量は大きくなり、加工のためのコストも高騰してしまうという点であり、粉体や粒体を移送するため空気やガスの吹き抜けによるリーク量が多く、移送に要するエネルギーに無駄があったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係るロータリーバルブは上下方向に貫通する移送路を有するケーシングと、そのケーシングの側面に形成された窓孔に固着されたサイドプレートと、そのサイドプレートを貫通して、前記ケーシング内に配置される回転シャフトと、その回転シャフトに取り付けられ、複数のポケット部を有するローターとから成るロータリーバルブにおいて、前記したローター及び回転シャフトをケーシングと絶縁状態とし、前記した回転シャフトあるいはその回転シャフトを駆動モータと連結する金属継手の一部に導電接触子を摺接させ、電力をシャフトを介してローターに印加する構成としてあることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るロータリーバルブは前記した金属継手は、駆動モータと連結するためのカップリングと回転シャフトの間に介在され、絶縁材で形成された中間エレメントを有しており、前記した導電接触子は金属継手の中間エレメントと区切られた回転シャフト側に摺接されることを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明に係るロータリーバルブは前記したサイドプレートの回転シャフト挿通部分にはベアリングが設けられ、そのベアリングと回転シャフトの間には絶縁材で成形されたスリーブを配し、ベアリングの両端面には絶縁材で成形されたリングを有していることを特徴としている。
【0014】
そして、本発明に係るロータリーバルブは上下方向に貫通する移送路を有するケーシングと、そのケーシングの側面に形成された窓孔に固着されたサイドプレートと、そのサイドプレートを貫通して、前記ケーシング内に配置される回転シャフトと、その回転シャフトに取り付けられ、複数のポケット部を有するローターとから成るロータリーバルブにおいて、前記サイドプレートとケーシングの下部及び側部の複数個所に、サイドプレートの径方向に可動となる調整ボルトを有し、その調整ボルトによってローターの配備位置を可変としてあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るロータリーバルブは上記のように構成されている。そのため、ローターとケーシングが接触すると通電が生じて、それを警報音等で告知することができ、即時に作動を停止することができ、金属粉の混入を事前に防ぐことができる。また、ローターの位置を可変としてあるため、機械加工に左程精密なものは必要なくなり、ケーシングの重量も軽減でき、大幅なコストダウンを図ることができる。そして、ローターの位置を可変として上方のクリアランスのみを狭くすることで空気やガスの吹き抜けによるリーク量も減り、移送エネルギーを無駄に使用することも無くなり、非常に有効な構成となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面及び実施例に述べたように構成することで実現した。
【実施例1】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図1乃至図6を参照して説明する。図1は本発明を実施したロータリーバルブを示す断面図、図2は同じく正面図、図3は調整ボルトの取り付けを示す図、図4は同じく調整ボルトの他の取り付けを示す図、図5は同じく変形例を示す図、図6は同じく位置変動されたローターを示す図である。尚、従来例と共通する部分には共通する符号を付して詳しい説明は省略する。
【0018】
この実施例にあっては回転シャフト6とベアリング8、8‥との間に絶縁材で成形されたスリーブ14、14を配し、ベアリング8、8の両端に絶縁材で成形したリング15、16を配してある。また、回転シャフト6の一端と減速機付きのモータ11との間に金属継手17を介在させ、この金属継手17には絶縁材で成形された中間エレメント18を設けてある。このようにして、ローター9や回転シャフト6をその他の部材と絶縁状態としてある。
【0019】
また、サイドプレート4aに減速機付きのモータ11を支承し、金属継手17をカバーするケース20の一部には透孔20aが穿設されており、この透孔20aから金属製の導電接触子21が内部に挿入され、その導電接触子21は金属継手17の中間エレメントで区切られた回転シャフト6側の一部に接触されている。即ち、この導電接触子21は回転シャフト6、強いては金属継手17の回転に応じて常時摺接し、ここに微小な電圧を回転シャフト6を介してローター9に印加するものとなっている。尚、21aはワイヤー(ケーブル)を示している。
【0020】
かかる構成とすることによって、仮にローター9がケーシング1と接触すると、電流が流れ、これを検知することができ、この検知された電流信号によって警報音を発生させれば、即時に装置の運転を中止して、金属粉混入の事態を回避することができる。尚、実施例ではスリーブ14として絶縁材を回転シャフト6とベアリング8の間に設けたが、この絶縁材はベアリング8とサイドプレート4a、4bとの間に設けることもできる。
【0021】
さらに、本発明に係るロータリーバルブはローター9の位置、強いてはこのローター9を取り付けた回転シャフト6、この回転シャフト6を支持するサイドプレート4a、4bの位置を微少に上下左右に位置変更することを可能としている。即ち、サイドプレート4a、4b及びケーシング1の下部及び側部に複数個所、本実施例では三箇所に調整ボルト22、22‥が螺合され、当てられる突部23、23‥を形成してある。
【0022】
係る構成のロータリーバルブでは当初ケーシング1とローター9とクリアランスは0.3〜0.5mm程度と大きくとっておく。ここで、サイドプレート4a、4bをケーシング1に締結するボルト5、5‥をやや緩めた後に、調整ボルト22、22‥を操作(回転)させることで、微少な距離でサイドプレート4a、4bを上方へ押し上げ、クリアランスを調整し、その調整後は締結ボルト5、5‥を再び締め付け位置固定させる。このように、サイドプレート4a、4bを微少に上方へ押し上げることで、ローター9とケーシング1とのクリアランスは上方で狭く、下方が広い状態とされる。
【0023】
さらに、この構成を前述した導電接触子21による通電効果を利用すると、装置の運転開始後にクリアランスの調整が必要となった場合でも、製品をライン中から外すことなく組み込んだままで、外部から容易に、かつ、安全に該調整作業を行なうことが可能となる。
【0024】
即ち、製品をラインから取り外さずに、一時的に回転のみを停止させ、前記した電気的接触警報が発せられるまで、つまり、ローター9がケーシング1に接触するまでサイドプレート4a、4bを上方に押し上げ、この接触開始点から、予め計算で求めておいた所要のクリアランスを得る距離の分の回転数で調整ボルト22を回し、サイドプレート4a、4bを重力(自重)によって降下させる。ここで、サイドプレート4a、4bを押し下げるためのボルト、その他の要素を配しても無意味となる。この調整後は締結ボルト5、5‥を再度締め付け固定する。
【0025】
また、図2として示したのはケーシング1に突起23、23を設けて調整ボルト(押しボルト)22、22を配設することとしたが、これは図4として示すようにサイドプレート4a、4bに透孔を設けて調整ボルト(押しボルト)22を配し、ケーシング1に僅かに中心軸をずらせて調整ボルト(押しボルト)22の外径より径の大きな透孔24を穿設し、調整ボルト(押しボルト)22を押し込むと、相対的にサイドプレート4a、4bがケーシング1に対して移動するようにしてもよい。尚、この透孔24は図5として示すように、有底の穴24aとすることもできる。また、ロックナット25を配することは無論構わない。要は、調整ボルト22に限らず、サイドプレート4a、4bをケーシング1に対して相対的に移動させることのできる要素であればかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るロータリーバルブは上記のように構成されている。本実施例では回転シャフト6を両端で支持する一般的なロータリーバルブを例としているが、ローターを取り付けた回転シャフトを片側のみで支持し、反対側は開閉扉を設けてローターを外部に取り出して清掃を行なう、いわゆるサニタリー型のロータリーバルブにも応用することができる。その場合は、回転シャフトを支持するサイドプレートのみを上下左右に位置を微調整できるものとすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施したロータリーバルブを示す断面図である。
【図2】正面図である。
【図3】調整ボルトの取り付けを示す図である。
【図4】調整ボルトの他の取り付けを示す図である。
【図5】変形例を示す図である。
【図6】位置変動されたローターを示す図である。
【図7】従来例としてのロータリーバルブを示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ケーシング
2 投入口
3 排出口
4a サイドプレート
4b サイドプレート
5 ボルト
6 回転シャフト
7 オイルシール
8 ベアリング
9 ローター
10 ポケット部
11 減速機付きのモータ
12 空間
13 開口部
14 スリーブ
15 リング
16 リング
17 金属継手
18 中間エレメント
20 ケース
20a 透孔
21 導電接触子
21a ワイヤー
22 調整ボルト
23 突部
24 透孔
24a 有底の穴
25 ロックナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に貫通する移送路を有するケーシングと、そのケーシングの側面に形成された窓孔に固着されたサイドプレートと、そのサイドプレートを貫通して、前記ケーシング内に配置される回転シャフトと、その回転シャフトに取り付けられ、複数のポケット部を有するローターとから成るロータリーバルブにおいて、前記したローター及び回転シャフトをケーシングと絶縁状態とし、前記した回転シャフトあるいはその回転シャフトを駆動モータと連結する金属継手の一部に導電接触子を摺接させ、電力をシャフトを介してローターに印加する構成としてあることを特徴とするロータリーバルブ。
【請求項2】
前記した金属継手は、駆動モータと連結するためのカップリングと回転シャフトの間に介在され、絶縁材で形成された中間エレメントを有しており、前記した導電接触子は金属継手の中間エレメントと区切られた回転シャフト側に摺接されることを特徴とする請求項1に記載のロータリーバルブ。
【請求項3】
前記したサイドプレートの回転シャフト挿通部分にはベアリングが設けられ、そのベアリングと回転シャフトの間には絶縁材で成形されたスリーブを配し、ベアリングの両端面には絶縁材で成形されたリングを有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロータリーバルブ。
【請求項4】
上下方向に貫通する移送路を有するケーシングと、そのケーシングの側面に形成された窓孔に固着されたサイドプレートと、そのサイドプレートを貫通して、前記ケーシング内に配置される回転シャフトと、その回転シャフトに取り付けられ、複数のポケット部を有するローターとから成るロータリーバルブにおいて、前記サイドプレートとケーシングの下部及び側部の複数個所に、サイドプレートの径方向に可動となる調整ボルトを有し、その調整ボルトによってローターの配備位置を可変としてあることを特徴とするロータリーバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−159122(P2010−159122A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2215(P2009−2215)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(505035792)
【Fターム(参考)】