説明

ロータリ型ブロー成形装置

【課題】 ワニ口式のブロー型を採用しながら、可動キャビティ型を型開きさせる外力に対する抗力を高めて、成形品質を向上させること。
【解決手段】 垂直なパーティング面201を有する固定キャビティ型200に対して、固定水平軸を第1支点O1として可動キャビティ型210が開閉駆動される。この可動キャビティ型を開閉駆動する型開閉駆動機構220は、可動キャビティ型に設けられた第2支点O2に第1端部222Aが回動自在に連結された第1リンク222と、第1リンクの第2端部222Bに設けられた第3支点O3に第3端部224Aが回動自在に連結された第2リンク224と、第2リンクの第3端部と第4端部との間に設けられた第4支点O4に第5端部226Aが回動自在に連結され、固定の第5支点O5に第6端部226Bが回動自在に連結され、第5支点を中心に回動する第3リンク226と、第2リンクの第4端部に設けられた第6支点O6を、5支点O5を通る垂直線の両側に往復移動させる移動部材230と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ型ブロー成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の角度間隔で多数のブロー型を搭載したロータリ型ブロー成形装置が知られている(特許文献1)。この装置では、特許文献1の第2図に示すように、回転搬送される多数のブロー型(72)を用いることで、ブロー成形品の大量生産が可能となる。
【0003】
特許文献1の第2図に示すブロー型(72)は、固定キャビティ型(83)に対して、垂直軸(86)を中心として水平面内で開閉可能な可動キャビティ型(84)を有している。
【0004】
一方、特許文献2の第1図には、一対のキャビティ型が垂直軸を中心として水平面内にて対称的に開閉される、いわゆるブック式と称されるブロー型(202)が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3の第1図には、固定キャビティ型(2)に対して、水平軸(X)を中心として垂直面内にて開閉可能な可動キャビティ型(4)を有する、いわゆるワニ口式と称されるブロー型が開示されている。
【特許文献1】特公昭60−45045号公報(第2図)
【特許文献2】WO89/001400公報(第1図)
【特許文献3】特表2002−516769号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の片側開閉式のブロー型に比べて、特許文献2の両側開閉式のブロー型の方が、ブロー型に対する成形品の出し入れを高速に行うことができることは明らかである。
【0007】
また、特許文献2のブック式のブロー型と比較すると、特許文献3のワニ口式のブロー型の方が、成形品の搬送軌跡が複雑にならない点で優れていることは、特許文献3の図3及び図4の対比から明らかである(特許文献3の段落0025,0026参照)。
【0008】
特許文献3に示すワニ口式のブロー型では、特許文献3の図12に示す型締め状態では、可動キャビティ型(4)の自重や、回転搬送されることで生ずる遠心力などが、可動キャビティ型(4)を型開きさせる外力として作用する。しかし、特許文献3に示すワニ口式のブロー型の構造では、可動キャビティ型(4)を型開きさせる外力に対する抗力が比較的弱いことが判明した。
【0009】
本発明の目的は、いわゆるワニ口式のブロー型を採用しながら、可動キャビティ型を型開きさせる外力に対する抗力を高めて、成形品質を向上させることができるロータリ型ブロー成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るロータリ型ブロー成形装置は、
各々が固定キャビティ型と可動キャビティ型とを含み、垂直なパーティング面を有する前記固定キャビティ型に対して、固定水平軸を第1支点として前記可動キャビティ型が開閉される複数のブロー型と、
前記複数のブロー型を支持して回転搬送するブロー成形ロータリ部と、
前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型を開閉駆動する型開閉駆動機構と、
を有し、
前記型開閉駆動機構は、
第1端部と第2端部とを有し、前記可動キャビティ型に設けられた第2支点に前記第1端部が回動自在に連結された第1リンクと、
第3端部と第4端部とを有し、前記第1リンクの前記第2端部に設けられた第3支点に前記第3端部が回動自在に連結された第2リンクと、
第5端部と第6端部とを有し、前記第2リンクの前記第3端部と前記第4端部との間に設けられた第4支点に前記第5端部が回動自在に連結され、固定の第5支点に前記第6端部が回動自在に連結され、前記第5支点を中心に回動する第3リンクと、
前記第2リンクの前記第4端部に設けられた第6支点を、前記第5支点を通る垂直線の両側に往復移動させる移動部材と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様によれば、移動部材により第5支点を通る垂直線の両側に第6支点を往復移動させることで、型開閉駆動機構の働きにより、固定キャビティ型に対して可動キャビティ型を開閉させることができる。この際、固定である第1支点は、固定キャビティ型の垂直キャビティ面の延長面上またはその近傍に位置するように設計される。また、他の固定点である第5支点は、固定キャビティ型の垂直キャビティ面の延長面上には限らないが、その近傍に配置することがリンク設計上有利である。従って、可動キャビティ型の型閉め時には、第1及び第2リンク上にある第2、第3及び第6支点が、固定の第1及び5支点よりも可動キャビティ型側にシフトして配置される。このため、第1,第2リンクの傾きは垂直線に近づく。それにより、可動キャビティ型を型開きさせる外力に対する抗力を高めることができる。
【0012】
本発明の一態様では、前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型が型閉め位置に移動した時に、前記第2支点、前記第3支点及び前記第4支点を実質的に一直線上に整列させることができる。
【0013】
これにより、いわゆるトグル効果によって、型閉め時には可動キャビティ型は外力が作用しても開き難い構造となる。また、第2〜第4支点が、一直線上に整列する直前では、移動部材の移動に対して可動キャビティ型の閉鎖移動量が小さいので、型閉め直前にて可動キャビティ型の開閉め速度をスローダウンさせることもできる。
【0014】
本発明の一態様では、前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型が型閉め位置に移動した時に、前記第4支点と前記第6支点とを結ぶ直線と、前記第4支点と前記第5支点とを結ぶ直線とを、実質的に直交させることができる。
【0015】
こうすると、第4支点を回転中心とする第2リンクの第6支点には、垂直直下に向う力しか作用せず、水平方向に移動させる分力は生じない。よって、移動部材が水平移動し難い状態に維持できるので、型閉め状態の可動キャビティ型は予期せぬ外力によっても開き難い状態となる。
【0016】
本発明の一態様では、前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型が型開き位置に移動した時に、前記第2支点と前記第3支点とを結ぶ直線と、前記第4支点と前記第5支点とを結ぶ直線とが、前記第6支点を通る垂直線上の一点にて交わるようにしても良い。
【0017】
この場合にも、第4支点を回転中心とする第2リンクの第6支点には、垂直直下に向う力しか作用せず、水平方向に移動させる分力は生じない。よって、移動部材が水平移動し難い状態に維持できるので、型閉め状態の可動キャビティ型予期せぬ外力によっても閉まり難い状態となる。
【0018】
本発明の一態様では、
型閉め位置にある前記可動キャビティ型の両側方に配置され、それぞれ係合用の孔が形成された2枚の固定板と、
前記可動キャビティ型の両側面より突出駆動される固定軸と、
前記可動キャビティ型が型閉めされた後に前記固定軸を突出駆動して、前記固定軸を前記孔に挿通させ、前記可動キャビティ型が型開きされる前に前記固定軸を後退駆動して、前記固定軸を前記孔より離脱させる固定軸駆動機構と、
をさらに設けることができる。
【0019】
これにより、型閉め後に可動キャビティ型が型開きすることが、機械的に規制される。可動キャビティ型が型開きする前には、固定軸は後退駆動されて、固定板の孔から離脱される。
【0020】
本発明の一態様では、前記複数のブロー型の各々は、前記固定キャビティ型及び前記可動キャビティ型に対して昇降される底型をさらに有し、
前記底型を、前記型開閉駆動機構から動力の伝達を受けて昇降してもよい。
【0021】
こうすると、可動キャビティ型の型閉め及び型開き動作と連動させて、底型を昇降することが可能となる。
【0022】
本発明の一態様では、
前記第5支点に回動自在に設けられたカムと、
前記カムと係合して前記底型を昇降させるカムフォロアと、
をさらに有し、
前記カムが、前記型開閉駆動機構からの動力の伝達を受けて回動されてもよい。
【0023】
こうして、カムとカムフォロアにより、可動キャビティ型の型閉め及び型開き動作と連動させて、底型を昇降することが可能となる。
【0024】
本発明の一態様では、
前記固定キャビティ型及び前記可動キャビティ型にそれぞれ設けられた段差係止部と、
前記底型を支持し、前記カムフォロアを備えた底型支持部材と、
前記底型支持部材に支持されて水平方向に移動案内され、移動案内方向の一方に付勢されて前記底型支持部材の一側面より突出する軸部と、
をさらに有し、
前記可動キャビティ型の型閉め時には、前記軸部が前記底型支持部材の両側面より突出して、前記固定キャビティ型及び前記可動キャビティ型にそれぞれ設けられた前記段差係止部に係止させてもよい。
【0025】
これにより、軸部の両端が、固定及び可動キャビティ型の段差係止部に係止され、ブロー成形時に底型を圧受けすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
(ロータリ型ブロー成形装置の基本的構成)
図1は、本実施形態に係るロータリ型ブロー成形装置10の全体構成を示す平面図である。この装置10は、機台12上に、一次ブロー成形ロータリ部20、二次ブロー成形ロータリ部30及び中継ロータリ部40を有する。
【0028】
一次ブロー成形ロータリ部20は、加熱される複数例えばL=12個の一次ブロー型22を回転搬送しながら、L個の一次ブロー型22の各々にてプリフォームを一次ブロー成形品にブロー成形し、かつ、L個の一次ブロー型22の各々にて一次ブロー成形品を収縮させる。
【0029】
二次ブロー成形ロータリ部30は、複数例えばM=12個の二次ブロー型32を回転搬送しながら、M個の二次ブロー型32の各々にて一次ブロー成形品を二次ブロー成形品にブロー成形する。
【0030】
中継ロータリ部40は、一次及び二次ブロー成形ロータリ部20,30の間に配置される。この中継ロータリ部40は、回転搬送される複数例えばN=6本の中継アーム42の各々に設けた少なくとも一つの第1保持部44を介して、一次ブロー成形ロータリ部20から二次ブロー成形ロータリ部30に一次ブロー成形品を受け渡す。
【0031】
ここで、一次ブロー型22には、少なくとも一つの一次ブローキャビティ22Aが形成されるが、本実施形態では一つの一次ブロー型22に3つの一次ブローキャビティ22Aを形成している。よって、一つの一次ブロー型22で3つの一次ブロー成形品が同時に成形される。一次ブロー成形ロータリ部20として、12×3=36個の一次ブローキャビティ22Aが搭載されていることになる。
【0032】
二次ブロー型32も一次ブロー型22と同じ個数である3つの二次ブローキャビティ32Aが形成されている。よって、一つの二次ブロー型32で3つの二次ブロー成形品が同時に成形される。二次ブロー成形ロータリ部30として、12×3=36個の二次ブローキャビティ32Aが搭載されていることになる。
【0033】
一次ブロー成形ロータリ部20にて、延伸適温に予め加熱されたプリフォームを、加熱された一次ブロー型22内で、高圧エアと延伸ロッドとを用いて一次ブローすることで、一次ブロー成形品が得られる。一次ブロー型22内でブロー成形された一次ブロー成形品は、高圧のブローエアによりその外表面が加熱された一次ブロー型22のキャビティ面に密着された状態となり、ブロー成形後にブローエアを排気すると同時に胴部が熱収縮することとなる。
【0034】
二次ブロー成形ロータリ部30では、収縮して軟化状態にある一次ブロー成形品を二次ブロー型32内で、高圧エアのみにより二次ブローして再膨張させて、最終製品である二次ブロー成形品が得られる。
【0035】
このような工程を用いて耐熱性容器を成形することは、リニア搬送型のブロー成形装置では知られているが、ロータリ型ブロー成形装置では特許文献2による大掛かりな装置しか知られていない。
【0036】
本実施形態では、一次・二次ブロー成形ロータリ部20,30との間の搬送を、中継ロータリ部40のみにて実現している。つまり、中継ロータリ部40は、回転搬送される中継アーム42を介して、一次ブロー成形ロータリ部20にて回転搬送される一次ブロー型22から直接一次ブロー成形品を受け取り、所定回転角度だけ回転搬送して、二次ブロー成形ロータリ部30にて回転搬送される二次ブロー型32に直接一次ブロー成形品を受け渡すことができる。
【0037】
(ロータリ型ブロー成形装置のレイアウト)
一次ブロー成形ロータリ部20での一次ブロー中心(一次ブローキャビティ22Aの中心)P1の回転軌跡であって、一次ブロー成形ロータリ部20の第1回転中心O1と第1直径D1とで定義される円を第1円C1と定義する。二次ブロー成形ロータリ部30での二次ブロー中心(二次ブローキャビティ32Aの中心)P2の回転軌跡であって、二次ブロー成形ロータリ部30の第2回転中心O2と第2直径D2とで定義される円を第2円C2と定義する。さらに、中継ロータリ部40の第3回転中心O3と第3直径D3とで定義され、かつ、第1円C1及び第2円C2と接する円を第3円C3と定義する。ここで、第3円C3は、中継ロータリ部40が一次ブロー成形ロータリ部20との間で一次ブロー成形品を受け取る位置と、中継ロータリ部40が二次ブロー成形ロータリ部30との間で一次ブロー成形品を受け渡す位置との2点を通る仮想上の搬送軌跡である。ただし、後述する通り、中継アーム42が半径方向で進退するので、中継ロータリ部40の実際の搬送軌跡は第3円C3とは一致しない。なお、中継ロータリ部40の搬送軌跡は第3円よりも突出させる必要はないので、第3円は最大搬送軌跡と言える。
【0038】
ここで、本実施形態では、D1>D3及びD2>D3が成立する。つまり、中継ロータリ部40の第3直径D3は、実処理を実施する一次・二次ブロー成形ロータリ部20,30の搬送軌跡の直径D1,D2よりも小さい。中継ロータリ部40は一次ブロー成形品を搬送するだけであるので、必要最小限の直径D3として、ロータリ型ブロー成形装置10の小型化を図っている。
【0039】
また、本実施形態ではD1=D2が成立する。第1直径D1と第2直径D2とは必ずしも一致させる必要はないが、本実施形態のように一次・二次ブロー成形ロータリ部20,30を必須とする装置では、D1=D2により一次・二次ブロー成形ロータリ部20,30の構成部品のほとんどを共通化することができる。なぜなら、一次・二次ブロー成形ロータリ部20,30は一次・二次ブロー型22,32が相違する程度であり、D1=D2とすることで型の回転搬送系の部品は共通化される。
【0040】
本実施形態では、図1に示すように、第1回転中心O1と第2回転中心O2とを通る第1直線S1に対して矢印D側の一方にシフトした位置に、第3回転中心O3を配置した。第1直線S1上に第3回転中心O3を配置しても良いが、これだと第1,第3回転中心O1,O2間の距離L=D3+(D1+D2)/2となるのに対して、本実施形態ではL<D3+(D1+D2)/2となり、上述の通り直径D3を小さくすることを加味すると、距離Lの短縮に伴い装置全体の小型化が実現できる。加えて、上述した第3回転中心O3の設定により以下のことが言える。
【0041】
まず、本実施形態では、一次ブロー成形ロータリ部20は回転方向A、中継ロータリ部40は回転方向B、二次ブロー成形ロータリ部30は回転方向Cとし、回転方向A,Cは同一方向(図1にて反時計回り方向)であり、回転方向Bは逆方向(図1にて時計回り方向)である。各回転方向は必ずしも上記の通りに設定する必要はないが、各回転方向を上述の通りとし、第3回転中心O3をシフトすることで、一次・二次ブロー成形ロータリ部20,30のデッドアングルを小さくできる効果がある。
【0042】
ここで、デッドアングルとは、一次・二次ブロー成形ロータリ部20,30にて、一次ブロー型22または二次ブロー型32が型開きされていて、一次・二次ブロー成形に寄与しない回転角度である。
【0043】
一次ブロー成形ロータリ部20より中継ロータリ部40に一次ブロー成形品を受け渡す位置は、第1,第3回転中心O1,O3を結ぶ第2直線S2上にて一次ブロー型22と中継アーム42とが正対した時である。このときには、一次ブロー型22は型開きされていなければならない。
【0044】
第1直線S1上に第3回転中心O3を配置すると、第1直線S1上にて一次ブロー型22と中継アーム42とが正対した時に受け渡しが行われるが、本実施形態ではその第1直線S1上よりも回転方向Aにて下流の第2直線S2上が受け渡し位置となる。これにより、デッドアングルの開始を遅らせることができ、結果としてデッドアングルを小さくできる。
【0045】
二次ブロー成形ロータリ部30では、第1直線S1上に第3回転中心O3を配置すると、第1直線S1上にて二次ブロー型32と中継アーム42とが正対した時に受け渡しが行われるが、本実施形態ではその第1直線S1上よりも回転方向Cにて上流の第3直線(第2,第3回転中心O2,O3を結ぶ直線)S3上が受け渡し位置となる。これにより、デッドアングルの終了を早めることができ、結果としてデッドアングルを小さくできる。
【0046】
本実施形態では、機台12上に、供給ロータリ部50と取り出しロータリ部60とをさらに有する。供給ロータリ部50は、回転搬送される複数例えば4本の供給アーム52を有する。4本の供給アーム52の各々は、少なくとも一つ例えば3つのプリフォームを保持する第2保持部54を介して、プリフォームを一次ブロー成形ロータリ部20に供給する。
【0047】
取り出しロータリ部60は、回転搬送される複数例えば3本の取り出しアーム62を有する。3本の取り出しアーム62の各々は、少なくとも一つ例えば3つの二次ブロー成形品を保持する第3保持部64を介して、二次ブロー成形ロータリ部30から二次ブロー成形品を取り出す。
【0048】
ここで、供給ロータリ部50の第4回転中心O4と、取り出しロータリ部60の第5回転中心O5は、第1直線S1に対して第3回転中心O3の位置よりも矢印D方向に大きくシフトした位置に配置されている。
【0049】
これにより、供給ロータリ部50は、一次ブロー成形ロータリ部20の回転方向Aにて、一次ブロー成形ロータリ部20と中継ロータリ部40との間の受け渡し位置(第2の直線S2上)よりも上流側にて、プリフォームを供給できる。加えて、供給ロータリ部50から中継ロータリ部40に至る有効処理アングルを大きく確保し、中継ロータリ部40から供給ロータリ部50に至るデッドアングルθ1を小さくできる。
【0050】
供給ロータリ部50が一次ブロー成形ロータリ部20にプリフォームを供給する位置は、第1,第4回転中心O1,O4を結ぶ第4直線S4上である。つまり、一次ブロー型22と供給アーム52とが正対した位置である。この位置で、3つのプリフォームが同時に供給される。よって、2つの直線S1,S4がなす角θ1は、一次ブロー型22が少なくとも型開きされている回転角度であるデッドアングルに相当する。なお、実際には第1の直線S1上よりも上流側で一次ブロー型22は型開きされ、第4の直線S4上よりも下流側で型閉じされるので、実際のデッドアングルは角度θ1よりも広い角度となる。
【0051】
同様に、取り出しロータリ部60は、二次ブロー成形ロータリ部30の回転方向Cにて、二次ブロー成形ロータリ部30と中継ロータリ部40との間の受け渡し位置(第3の直線S3上)よりも下流側にて、二次ブロー成形品を取り出すことができる。加えて、中継ロータリ部40から取り出しロータリ部60に至る有効処理アングルを大きく確保し、取り出しロータリ部60から中継ロータリ部40に至るデッドアングルθ2を小さくできる。
【0052】
取り出しロータリ部60が二次ブロー成形ロータリ部30より二次ブロー成形品を取り出す位置は、第2,第5回転中心O2,O5を結ぶ第5直線S5上である。つまり、二次ブロー型32と取り出しアーム62とが正対した位置である。この位置で、3つの二次ブロー成形品が同時に取り出される。よって、2つの直線S3,S5がなす角θ2は、二次ブロー型32が少なくとも型開きされている回転角度であるデッドアングルに相当する。なお、実際には第5の直線S5上よりも上流側で二次ブロー型32は型開きされ、第3の直線S3上よりも下流側で型閉じされるので、実際のデッドアングルは角度θ2よりも広い角度となる。
【0053】
本実施形態では、供給ロータリ部50の上流側にプリフォーム加熱装置70をさらに有することができる。このプリフォーム加熱装置70は、プリフォームをブロー適温に温調するためのものである。
【0054】
プリフォーム加熱装置70は、2つのスプロケット72A,72B間にチェーン74を掛け渡し、チェーン74に取付けた複数の搬送台にプリフォームを支持して搬送する。このプリフォームの搬送経路を挟んだ両側の一方にヒータを他方に反射鏡を配置して、プリフォームの胴部を加熱することができる。また、図面では省略しているが、加熱領域ではプリフォームが自転するようになっており、プリフォームをその周方向で均一に加熱している。
【0055】
プリフォーム加熱装置70のさらに上流側には、シュータ80と第1供給ホイール82が設けられている。シュータ80を滑り降りたプリフォームは、第1供給ホイール82によって、一つずつプリフォーム加熱装置に供給される。
【0056】
プリフォーム加熱装置70の下流側には、第2,第3供給ホイール84,86が設けられている。プリフォーム加熱装置70にて加熱されたプリフォームは、第2供給ホイール84によって一つずつ取り出され、所定回転角だけ搬送されて第3供給ホイール86に受け渡される。第3供給ホイール86は、受け渡されたプリフォームを所定回転角度だけ搬送して、供給ロータリ部50に一つずつ受け渡す。この際、供給ロータリ部50の第4回転中心O4と第3供給ホイール86の第6回転中心O6とを通る直線(図示せず)上に、供給ロータリ部50の第2保持部54が一つずつ配置される時に、供給ロータリ部50にプリフォームが一つずつ受け渡される。
【0057】
一方、取り出しロータリ部60の下流側には、第1取り出しホイール90、第2取り出しホイール92及び取り出しレール94が配置されている。第1取り出しホイール90には、取り出しロータリ部60から二次ブロー成形品が一つずつ受け渡され、第2取り出しホイール92を介して取り出しレール94に排出される。この際、取り出しロータリ部60の第5回転中心O5と第1取り出しホイール90の第7回転中心O7とを通る直線(図示せず)上に、取り出しロータリ部60の第3保持部64が一つずつ配置される時に、取り出しロータリ部60より二次ブロー成形品が一つずつ取り出される。取り出しロータリ部60から二次ブロー成形品が一つずつ排出する動作は、供給ロータリ部50へのプリフォーム供給動作と同様にして行われる。
【0058】
(ロータリ型成形品搬送装置)
図2及び図3は、中継ロータリ部40、供給ロータリ部50及び取り出しロータリ部60に共通する構造を備えたロータリ型成形品搬送装置100の平面図及び縦断面図である。図2及び図3では、1本の搬送アーム110のみを図示しているが、中継ロータリ部40、供給ロータリ部50及び取り出しロータリ部60等の用途に応じて必要な数の搬送アーム110を等角度間隔で配置することができる。
【0059】
図2及び図3において、このロータリ型成形品搬送装置100は、軸受け部122に回転自在に支持された回転軸104を有する。回転軸104には回転板120が固定されている。回転板120の一面側例えば上側にて回転板120と平行に、第1カム板130が軸受け部122に固定されている。回転板120の他面側例えば下側にて回転板120と平行に、第2カム板140が設けられている。第1,第2カム板130,140は回転軸104と一体回転せずに固定配置されている。
【0060】
第1カム板130の例えば下面には、カム溝にて形成された第1カム132が周方向に連続して設けられている。同様に、第2カム板140の例えば上面には、カム溝にて形成された第2カム142が周方向に連続して設けられている。
【0061】
図2〜図7に示すように、搬送アーム110の自由端側には、回動アーム150が回動自在に設けられている。この回動アーム150には、回動アーム150が延びる方向(回動アーム150の長手方向)と直交する方向に向けて、少なくとも一つ例えば3つの保持部160が突出して設けられている。保持部160は開閉可能なグリップ部材として機能し、プリフォーム、一次ブロー成形品または二次ブロー成形品に共通する口部を把持することができる。なお、3つの保持部160に保持される成形品は、ロータリ型成形品搬送装置の回転搬送方向の上流側から下流側に向けて並べて保持される。
【0062】
一端が回動アーム150に回動自在に設けられ、搬送アーム110に対する回動アーム150の交差角を制御する制御アーム170が設けられている。搬送アーム110の基端側と制御アーム170の他端とは、連結部材118にそれぞれ回動自在に支持されている。連結部材118は後述する通り、回転板120に回動自在に支持されている。そして、搬送アーム110、連結部材118、回動アーム150及び制御アーム170にて四節平行回転リンクが形成される。
【0063】
本実施形態では、図3に示すように、搬送アーム110の基端側に固定された軸部112を設け、この軸部112を、回転板120に配置される軸受け部122にて支持することで、回転板120にて回動自在に支持している。なお、図4〜図7では軸受け部122は図示しているが、回転板120は省略されている。
【0064】
図4〜図7に示すように、軸部112の一端側例えば上端側に固定部材114が固定されている。固定部材114は、軸部112の中心よりも離れた位置に、第1カム132(図3)に案内される第1カムフォロア116を有している。この第1カムフォロア116は、固定部材114に軸支されて回転可能なローラ等で構成できる。
【0065】
図4〜図7に示すように、軸部112の他端側例えば下側には、回動自在に支持された連結部材118が設けられている。この連結部材118の軸部112の中心よりも離れた位置に、第2カム142(図3)に案内される第2カムフォロア119が設けられている。この第2カムフォロア119も、連結部材118に軸支されて回転可能なローラ等で構成できる。そして、制御アーム170は、軸部112を挟んで第2カムフォロア119とは反対側の位置にて、連結部材118に回動自在に支持されている
(ロータリ型成形品搬送装置の動作)
このロータリ型成形品搬送装置100は、各々の回転中心の廻りの等角度間隔の複数位置の各々にて、少なくとも一つの成形品を回転搬送して、少なくとも一つの成形品が受け渡される2台のうちの一方のロータリ型成形品搬送装置に適用されるものである。図1の実施形態では、中継ロータリ部40、供給ロータリ部50及び取り出しロータリ部60のそれぞれをロータリ型成形品搬送装置100にて構成することができる。
【0066】
ロータリ型成形品搬送装置100は、搬送アーム110に設けた例えば3つの保持部160により、プリフォーム、一次成形品または二次成形品の口部を把持して、回転軸104の回転により回転軸104の廻りにて回転搬送することができる。この際、第1カム132に係合する第1カムフォロア116により、搬送アーム110の回転位置が制御され。また、第2カム142に係合する第2カムフォロア119により制御アーム170が駆動され、搬送アーム110に対する回動アーム150の交差角度が制御される。
【0067】
特に、このロータリ型成形品搬送装置100は受け渡し位置での制御に特徴がある。このことを、図8〜図10を参照して説明する。図8〜図10は、図1に示す供給ロータリ部50にロータリ型成形品搬送装置100を適用したものである。図8は、図1の第1回転中心O1の廻りで矢印A方向に回転搬送される一次ブロー型22に、供給ロータリ部50(100)からプリフォームを受け渡す直前の回転位置を示している。図9は、供給ロータリ部50(100)から一次ブロー型22にプリフォームを受け渡す回転位置を示している。図10は、供給ロータリ部50(100)から一次ブロー型22にプリフォームを受け渡した直後の回転位置を示している。
【0068】
図8〜図10は、搬送アーム110が一次ブロー成形ロータリ部20の第1回転中心O1と供給ロータリ部50の第4回転中心O4を通る直線S4に沿って配置される時の受け渡し位置(図9)を中心とする所定回転角度(図8〜図10)に亘って、水平面内で直線S4と平行な方向では少なくとも一つ例えば3つの保持部160を受け渡し可能なストローク分だけ往復移動させ、かつ、一次ブロー成形ロータリ部20の一次ブロー型22の少なくとも一つ例えば3つの一次ブローキャビティ22A(図8参照)に対して3つの保持部160をそれぞれ正対させる。
【0069】
ここで、「正対」とは、図8〜図10に示すように、3つの一次ブローキャビティ22Aと3つの保持部160とがそれぞれ真向かいで向かい合う状態を意味する。このように正対させるためには、図8〜図10のいずれの場合でも、型開きされた一次ブロー型22の半割パーティング面22Bと連結部材118とが平行となる姿勢が維持されることが必要である。
【0070】
また、図8及び図10と比較して、図9の受け渡し位置では、3つの保持部160が半径方向外側に最も突出している。これにより、3つの保持部160と3つの一次ブローキャビティ22Aとの間で3つの一次ブロー成形品を同時に受け渡すことができる。このためには、図8から図9に向う回転中に搬送アーム110を図9の直線S4と平行な方向に所定ストローク量だけ往動させればよい。逆に、図9から図10に向う回転中に搬送アーム110を図9の直線S4と平行な方向に所定ストローク量だけ復動させればよい。
【0071】
第1,第2のカム132,142に係合する第1,第2のカムフォロア116,119が、図8〜図10に示す搬送アーム110及び制御アーム170の姿勢を制御することで達成される。
【0072】
このように所定角度範囲で「正対」が維持される技術的意義は、図8〜図10に至る受け渡し工程中に、一次ブロー成形品が3つの保持部160内で回転されることがないことである。従って、成形品の口部が保持部160によって傷付くことがなく、製品外観を向上できる。このような作用・効果は、ロータリ型成形品搬送装置100を図1に示す取り出しロータリ部60に適用した時も同様に得ることができる。
【0073】
ロータリ型成形品搬送装置100を図1に示す中継ロータリ部40に適用した場合には、上述した成形品の口部の傷付き防止に加えて、次の大きな効果を奏することができる。この効果とは、一次ブロー成形工程にて一次ブロー成形品に現れるパーティングラインの位置が、二次ブロー成形品に現れるパーティングラインの位置と一致することである。これは、最終製品としての耐熱容器の外観品質を著しく向上させる。この追加の効果もまた、一次ブロー成形ロータリ部20から二次ブロー成形ロータリ部30に一次ブロー成形品を受け渡す際に、保持部160内で一次ブロー成形品が回転しないことに起因している。
【0074】
さらに、ロータリ型成形品搬送装置100を図1に示す中継ロータリ部40及び供給ロータリ部50の双方に適用すると、一次ブロー成形ロータリ部20のデッドアングルをより小さくできる。この効果は、一つの搬送アーム110に複数の保持部160を配置して同時に受け渡す時に奏することができる。3つのプリフォームまたは3つの一次ブロー成形品を同時に受け渡す場合、図1に示す少なくとも角度θ1が一次ブロー成形ロータリ部20のデッドアングルとなる。図8に示したように、2つの回転中心O1,O4を通る直線S4上に3つの保持部160のうちの中心位置にある保持部160が配置された時が受け渡し位置となる。よって、図1では直線S1上の第1受け渡し位置と直線S4上の第2受け渡し位置との間で少なくとも一次ブロー型が型開きされるデッドアングルとなる。
【0075】
比較例として、一次ブロー型22の3つの一次ブローキャビティ22Aとの間で3本の搬送アーム110を用いて一つずつ成形品を受け渡すものを挙げることができる。この比較例では、一次ブロー型22の3つのうちの搬送先端位置の一次ブローキャビティ22Aが図1の直線S1に達した時に一次ブロー型22が型開きされていなくてはならない。これに対して本実施形態では、一次ブロー型22の3つのうちの中央位置の一次ブローキャビティ22Aが図1の直線S1に達した時に一次ブロー型22が型開きされていれば良い。このため、隣り合うキャビティの1ピッチ分だけ型開きタイミングを遅らせることができる。
【0076】
比較例では一次ブロー型22の3つのうちの搬送後端位置の一次ブローキャビティ22Aが図1の直線S1に達する時まで一次ブロー型22の型開きが維持されていなくてはならない。これに対して本実施形態では、一次ブロー型22の3つのうちの中央位置の一次ブローキャビティ22Aが図1の直線S1に達する時まで一次ブロー型22の型開きが維持されていれば良い。このため、隣り合うキャビティの1ピッチ分だけ型閉じタイミングを早めることができる。こうして、一次ブロー成形ロータリ部20でのデッドアングルを小さくできる。
【0077】
同様にして、ロータリ型成形品搬送装置100を図1に示す中継ロータリ部40及び取り出しロータリ部60の双方に適用すると、二次ブロー成形ロータリ部30のデッドアングルを対策できる。
【0078】
(ブロー型)
図11及び図12は、本実施形態に用いられるブロー型として、例えばプリフォーム180を一次ブロー成形品190にブロー成形するための一次ブロー型22の型締め状態と型開き状態とを示している。一次ブロー型22は、固定キャビティ型(第1半割型)200と、可動キャビティ型(第2半割型)210とを有する。固定キャビティ型200は垂直なパーティング面201を有するように取付け固定されている。可動キャビティ型210は、固定キャビティ型200に対してブロー型開閉駆動機構(リンク機構)220により開閉駆動される。この一次ブロー型22は、いわゆるワニ口式開閉と称される。なお、二次ブロー型32も一次ブロー型22と同様に構成している。
【0079】
本実施形態では、図1のデッドアングルθ1の間は少なくとも図12に示す型開き状態とされる。これにより、中継ロータリ部40の第1保持部44や供給ロータリ部50の第2保持部54と一次ブロー型22とが干渉せずに、回転搬送されるプリフォーム180または一次ブロー成形品190を受け渡しすることができる。
【0080】
(ブロー型の開閉機構)
図13は、図12に示す型開き状態の可動キャビティ型210と、それを開閉駆動する型開閉駆動機構220とを示している。可動キャビティ型210は、型支持部材212に固定されている。この型支持部材212は、固定水平軸214を第1支点O1とし回動自在に支持されている。
【0081】
型開閉駆動機構220は、第1〜第3リンク222,224,226を有している。第1リンク222は、第1端部222Aと第2端部222Bとを有し、可動キャビティ型210に設けられた第2支点O2に第1端部222Aが回動自在に連結されている。第2リンク224は、第3端部224Aと第4端部224Bとを有し、第1リンク222の第2端部222Bに設けられた第3支点O3に第3端部224Aが回動自在に連結されている。第3リンク226は、第5端部226Aと第6端部226Bとを有し、第2リンク224の第3端部224Aと第4端部224Bとの間に設けられた第4支点O4に第5端部226Aが回動自在に連結され、固定の第5支点O5に第6端部226Bが回動自在に連結され、第5支点O5を中心に回動する。さらに、型開閉駆動機構220は、図11及び図12に示すように、第2リンク224の第4端部224Bに設けられた第6支点O6を、第5支点O5を通る垂直線(図示せず)の両側に往復移動させる移動部材230を有する。図11は右側に、図12は左側に、第6支点O6をそれぞれ移動させた状態を示している。この移動部材230は例えば、水平なリニアガイド232に沿って、モータ駆動等により自走するものである。
【0082】
なお、可動キャビティ型210を円滑に開閉させるためには、固定である第1,第5支点O1,O5は、固定キャビティ型200の垂直パーティング面201の延長面上またはその近傍に位置するように設計される。
【0083】
図14(A)〜図14(F)及び図15(A)〜図15(F)はそれぞれ、移動部材230を一定距離ずつ移動させた時のブロー型22の開閉状態を示している。図14(A)〜図14(F)は、図11の型閉め状態から図12の型開き状態に至るまでの型開き動作を示している。図15(A)〜図15(F)は、図14(A)〜図14(F)とは逆に、図12の型開き状態から図11の型閉め状態に至るまでの型開き動作を示している。このように、第6支点O6を移動部材230により移動させることで、型開閉駆動機構220の働きにより、固定キャビティ型200に対して可動キャビティ型210を開閉できることが分かる。
【0084】
しかも、型開き当初の図14(A)と図14(B)との間での可動キャビティ型210の型開き量と、型開き終期の図14(E)と図14(F)との間での可動キャビティ型210の型開き量とは、型開き中期の図14(A)と図14(B)との間での可動キャビティ型210の型開き量よりも少ないことが分かる。この傾向は、図15(A)〜図15(F)でも全く同じである。つまり、可動キャビティ型210の型開き動作と型閉め動作の終期では、可動キャビティ型210の動きがスローダウンされている。従って、型開閉終了時の衝撃を小さくすることができる。
【0085】
(可動キャビティ型の型閉め状態)
次に、図11に示す型閉め時の動作について説明する。上述の通り、固定である第1支点O1は、固定キャビティ型200の垂直パーティング面201の延長面上またはその近傍に位置するように設計されるのが通常である。また、他の固定点である第5支点O5は、固定キャビティ型200の垂直パーティング面201の延長面上には限らないが、その近傍に配置することがリンク設計上有利である。よって、図11に示すように、移動部材230が第5支点O5を通る垂直線よりも右側に移動する型閉め時には、第1及び第2リンク222,224上にある第2、第3及び第6支点O2,O3、O6の全てが、固定の第1及び5支点O1,O5よりも可動キャビティ型210側にシフトして配置される。このため、第1,第2リンク222,224の傾きはより垂直線側に近づく。それにより、型閉めされた可動キャビティ型210を型開きさせる外力に対する抗力を高めることができる。
【0086】
さらに好ましくは、第2〜第4支点O2,O3,O4が、一直線L1上に整列している。これにより、いわゆるトグル効果によって、型閉め時には可動キャビティ型210は外力が作用しても開き難い構造となる。また、第2〜第4支点O2,O3,O4が、一直線L1上に整列する直前では、移動部材230の移動に対して可動キャビティ型210の閉鎖移動量が小さいので、型閉め直前にて可動キャビティ型210の開閉め速度をスローダウンさせることもできる。
【0087】
本実施形態において、型閉め時に可動キャビティ型210は外力が作用しても開き難いという効果は、特許文献3の発明よりも大きいものである。そのことを、図16(A)(B)と図17(A)(B)との対比により説明する。
【0088】
図16(A)(B)は本実施形態での型閉め及び型開き状態を示し、図17(A)(B)は特許文献3での型閉め及び型開き状態を示している。ここで、説明の便宜上、本実施形態である図16(A)(B)の符号を用いて、特許文献3の構造を説明すると、図17(A)(B)に示すように、第1〜第4リンク222〜228が設けられている。しかも、第2リンク224と第3リンク226が共に、固定の第5支点O5を中心に回動している。以上の点が図16(A)(B)と異なるが、第6支点O6を移動部材により移動させる点は共通する。また、対比の都合上、固定である支点O1,O5の位置と、移動部材230の移動ストロークと、可動キャビティ型210の型開き角度とは、図16(A)(B)と図17(A)(B)とで同じに設定した。
【0089】
図16(A)にてトグル効果を確保するために支点O2,O3,O4は直線L1上に整列することは説明した。図17(A)においてトグル効果を得るためには、支点O2,O3,O5が直線L3上に整列する。ただし、支点O5は固定支点である。また、図16(A)及び図17(A)において、第1,第2支点O1,O2を結ぶ直線を直線L2とする。
【0090】
図16(A)と図17(A)とを対比すると、図16(A)にて直線L1,L2の成す角度θ1は、図17(A)にて直線L2,L3が成す角度θ2よりもはるかに大きい。つまり、図17(A)では直線L3が固定の支点O5を通る必要上から必然として、図17(A)中の直線L2,L3の成す角度よりも、図16(A)にて固定支点O5よりも右側に位置する支点O4を通る直線L1と直線L2との成す角度の方が大きくなる。
【0091】
このように、図16(A)では直線L1がより垂直線に近づくので、第1,第2リンク222,224を倒す外力、つまり可動キャビティ型210を型閉め状態から型開きさせるための外力がより大きくなる。このため、トグル効果とも相まって、型閉め状態の可動キャビティ型210は予期せぬ外力によっても開き難い状態となる。
【0092】
図18は、可動キャビティ型210の型閉め状態での型開閉駆動機構220の各リンク及び支点の位置を模式的に示す図である。固定キャビティ型200に対して可動キャビティ型210が型閉め位置に移動した時に、図18に示すように、第4支点O4と第6支点O6とを結ぶ直線L4と、第4支点O4と第5支点O5とを結ぶ直線L5とが、実質的に直交する。こうすると、第4支点O4を回転中心とする第2リンク224の第6支点O6には、垂直直下に向う力しか作用せず、水平方向に移動させる分力は生じない。よって、移動部材230が水平移動し難い状態に維持できるので、型閉め状態の可動キャビティ型210は予期せぬ外力によっても開き難い状態となる。
【0093】
(可動キャビティ型の型開き状態)
本実施形態では、可動キャビティ型210が型開き状態の時にも、予期せぬ外力によって型閉め方向に移動しないように設計されている。その設計原理を図19に示す。図19は、可動キャビティ型210の型開き状態での型開閉駆動機構220の各リンク及び支点の位置を模式的に示す図である。図19では、第2支点O2と第3支点O3とを結ぶ直線L6と、第4支点O4と第5支点O5とを結ぶ直線L7とが、第6支点O6を通る垂直線L8上の一点Zにて交わっている。本実施形態では、図18及び図19に示す条件が成立するように、型開閉駆動機構220を構成する第1〜第3リンク222,224,226の長さ、各支点O1〜O6の位置及び移動部材230の移動ストロークを設計した。この場合にも、図18と同様に、第4支点O4を回転中心とする第2リンク224の第6支点O6には、垂直直下に向う力しか作用せず、水平方向に移動させる分力は生じない。よって、移動部材230が水平移動し難い状態に維持できるので、型開き状態の可動キャビティ型210は予期せぬ外力によっても閉まり難い状態となる。
【0094】
(ブロー型の型締め)
図8〜図12に示すように、ブロー型22には2枚の固定板204,204が突出形成されている。この固定板204,204の自由端側には孔204A,204A(図12参照)が設けられている。一方、可動キャビティ型210の両側面側には、両側面より外側に突出可能な固定軸216,216が設けられている。この突出可能な固定軸216,216は、可動キャビティ型210の型閉め後に突出駆動されて、固定板204,204の孔204A,204に挿入される。これにより、型閉め後に可動キャビティ型210が型開きすることが、機械的に規制される。可動キャビティ型210が型開きする前に、固定軸216,216は後退駆動されて、孔204A,204Aから離脱される。
【0095】
この固定軸216,216の突出及び後退駆動を行なう固定軸駆動機構は、図1に示す一次ブロー成形ロータリ部20のブロー型22の移動経路に沿って、ブロー型22が型閉め状態とされる経路に沿って円周状の一部または全部に設けられたカムを含むことができる。つまり、固定軸216,216は、このカムに係合するカムフォロアによって突出及び後退駆動される。なお、固定軸216,216の突出駆動または後退駆動のいずれか一方は、バネ等の付勢部材により行なうものであっても良い。二次ブロー成形ロータリ部30についても同様の固定軸駆動機構を設けることができる。なお、ブロー型22が型閉めされ、固定軸216,216が突出駆動された後は、図示しない型締めピストンが駆動されてブロー型22は型締めされる。
【0096】
(底型の駆動)
本実施形態では、図12に示すように、固定及び可動キャビティ型200,210に型締めされる底型240を有することができる。この底型240を、型開閉駆動機構220により駆動しても良い。こうすると、可動キャビティ型210の型閉め及び型開き動作と連動して、底型240を昇降させることが可能となる。この場合、型開閉駆動機構220は、固定の第5支点O5の周りに回転するカム250を有する。カム250は、例えば第3支点03に連結されたカム駆動リンク252により回転駆動される。
【0097】
一方、底型240は、図11及び図12に示すように、カム250と係合するカムフォロア242を備えた底型支持部材240Aに支持されている。図11に示す型閉め状態では底型240が上昇し、図12に示す型開き状態では底型240は下降している。この底型240及び底型支持部材240Aの昇降駆動は、回転するカム250と係合するカムフォロア242によって行うことができる。
【0098】
底型240を圧受けするために、固定キャビティ型200に設けられた段差係止部200Aと、可動キャビティ型210に設けられた段差係止部210Aと、底型支持部材240Aに設けられた軸部246とが設けられている。図12に示す型開き状態では、軸部246は一端(図12の右側)のみが、例えばバネ等の付勢部材によって底型支持部材240Aの一側面から突出している。図11に示す型閉め状態になると、底型支持部材240Aの一側面から突出した軸部246は、可動キャビティ型210の段差係止部210Aにより押動されて、その他端246Aが底型支持部材240Aの一側面から突出する。これにより、軸部246の両端が、固定及び可動キャビティ型200,210の段差係止部200A,210Aに係止され、底型240を圧受けすることができる。
【0099】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の一態様に係るロータリ型ブロー成形装置の平面図である。
【図2】図1に示す供給ロータリ部の平面図である。
【図3】供給ロータリ部の縦断面図である。
【図4】供給アームの斜視図である。
【図5】供給アームの平面図である。
【図6】供給アームの底面図である。
【図7】供給アームの背面図である。
【図8】3つのブローキャビティと3つの保持部とが正対する受け取り位置直前の回転状態を示す図である。
【図9】3つのブローキャビティと3つの保持部とが正対する受け取り位置での回転状態を示す図である。
【図10】3つのブローキャビティと3つの保持部とが正対する受け取り位置直後の回転状態を示す図である。
【図11】ブロー型の型締め状態を示す側面図である。
【図12】ブロー型の型開き状態を示す側面図である。
【図13】型開き状態での可動キャビティ型及び型開閉駆動機構を示す図である。
【図14】図14(A)〜図14(F)は、型閉め状態から型開き状態に向けて、移動部材を等距離だけ移動させた際の可動キャビティ型の型開きの軌跡を示す図である。
【図15】図15(A)〜図15(F)は、型開き状態から型閉め状態に向けて、移動部材を等距離だけ移動させた際の可動キャビティ型の型閉めの軌跡を示す図である。
【図16】図16(A)(B)は、本実施形態でのブロー型の型閉め及び型開き状態を示す図である。
【図17】図17(A)(B)は、特許文献3に示されたブロー型の型閉め及び型開き状態を示す図である。
【図18】可動キャビティ型の型閉め状態での型開閉駆動機構の各リンク及び支点の位置を模式的に示す図である。
【図19】可動キャビティ型の型開き状態での型開閉駆動機構の各リンク及び支点の位置を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0101】
10 ロータリ型ブロー成形装置、12 機台、20 一次ブロー成形ロータリ部、22 一次ブロー型、22A 一次ブローキャビティ、30 二次ブロー成形ロータリ部、32 二次ブロー型、32A 二次ブローキャビティ、40 中継ロータリ部、42 中継アーム、44 第1保持部、50 供給ロータリ部、52 供給アーム、54 第2保持部、60 取り出しロータリ部、62 取り出しアーム、64 第3保持部、70 プリフォーム加熱装置、72A,72B スプロケット、74 チェーン、80 シュータ、82 第1供給ホイール、84 第2供給ホイール、86 第3供給ホイール、90 第1取り出しホイール、92 第2取り出しホイール、94 取り出しレール、100 ロータリ型成形品搬送装置、110 搬送アーム、118 連結部材、120 回転板、130 第1カム板、140 第2カム板、150 回動アーム、170 制御アーム、180 プリフォーム、190 一次ブロー成形品、200 固定キャビティ型、200A 段差係止部、210 可動キャビティ型、210A 段差係止部、214 固定水平軸、220 型開閉駆動機構、222 第1リンク、222A 第1端部、222B 第2端部、224 第2リンク、224A 第3端部、224B 第4端部、226 第3リンク、226A 第5端部、226B 第6端部、230 移動部材、240 底型、240A 底型支持部材、242 カムフォロア、246 軸部、250 カム、2 O1 第1支点(固定)、O2 第2支点、O3 第3支点、O4 第4支点、O5 第5支点(固定)、O6 第6支点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が固定キャビティ型と可動キャビティ型とを含み、垂直なパーティング面を有する前記固定キャビティ型に対して、固定水平軸を第1支点として前記可動キャビティ型が開閉される複数のブロー型と、
前記複数のブロー型を支持して回転搬送するブロー成形ロータリ部と、
前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型を開閉駆動する型開閉駆動機構と、
を有し、
前記型開閉駆動機構は、
第1端部と第2端部とを有し、前記可動キャビティ型に設けられた第2支点に前記第1端部が回動自在に連結された第1リンクと、
第3端部と第4端部とを有し、前記第1リンクの前記第2端部に設けられた第3支点に前記第3端部が回動自在に連結された第2リンクと、
第5端部と第6端部とを有し、前記第2リンクの前記第3端部と前記第4端部との間に設けられた第4支点に前記第5端部が回動自在に連結され、固定の第5支点に前記第6端部が回動自在に連結され、前記第5支点を中心に回動する第3リンクと、
前記第2リンクの前記第4端部に設けられた第6支点を、前記5支点を通る垂直線の両側に往復移動させる移動部材と、
を含むことを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型が型閉め位置に移動した時に、前記第2支点、前記第3支点及び前記第4支点が実質的に一直線上に整列することを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型が型閉め位置に移動した時に、前記第4支点と前記第6支点とを結ぶ直線と、前記第4支点と前記第5支点とを結ぶ直線とが、実質的に直交することを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。
【請求項4】
前記固定キャビティ型に対して前記可動キャビティ型が型開き位置に移動した時に、前記第2支点と前記第3支点とを結ぶ直線と、前記第4支点と前記第5支点とを結ぶ直線とが、前記第6支点を通る垂直線上の一点にて交わることを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
型閉め位置にある前記可動キャビティ型の両側方に配置され、それぞれ係合用の孔が形成された2枚の固定板と、
前記可動キャビティ型の両側面より突出駆動される固定軸と、
前記可動キャビティ型が型閉めされた後に前記固定軸を突出駆動して、前記固定軸を前記孔に挿通させ、前記可動キャビティ型が型開きされる前に前記固定軸を後退駆動して、前記固定軸を前記孔より離脱させる固定軸駆動機構と、
をさらに設けたことを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記複数のブロー型の各々は、前記固定キャビティ型及び前記可動キャビティ型に対して昇降される底型をさらに有し、
前記底型は、前記型開閉駆動機構から動力の伝達を受けて昇降されることを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第5支点に回動自在に設けられたカムと、
前記カムと係合して前記底型を昇降させるカムフォロアと、
をさらに有し、
前記カムが、前記型開閉駆動機構からの動力の伝達を受けて回動されることを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記固定キャビティ型及び前記可動キャビティ型にそれぞれ設けられた段差係止部と、
前記底型を支持し、前記カムフォロアを備えた底型支持部材と、
前記底型支持部材に支持されて水平方向に移動案内され、移動案内方向の一方に付勢されて前記底型支持部材の一側面より突出する軸部と、
をさらに有し、
前記可動キャビティ型の型閉め時には、前記軸部が前記底型支持部材の両側面より突出して、前記固定キャビティ型及び前記可動キャビティ型にそれぞれ設けられた前記段差係止部に係止されることを特徴とするロータリ型ブロー成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−111053(P2010−111053A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286512(P2008−286512)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000227032)日精エー・エス・ビー機械株式会社 (35)
【Fターム(参考)】