説明

ローラ、定着装置及び画像形成装置

【課題】 注型工法のみによって弾性層の肉厚が薄いローラを製造することで、ローラの製造コストを低減する。
【解決手段】 定着ローラ11、加圧ローラ14は、回転軸21の軸方向(x方向)の中央部22から軸方向の最端部23まで漸次外径サイズが拡大する。また、回転軸21の方向変位量に対する外径サイズの変化量は回転軸21の軸方向の中央部22から最端部23に向かって漸次拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ、このローラを備えた定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置においては、通常、記録材としての用紙上に転写されたトナー像を定着させるための定着装置を備えている。
この定着装置においては、定着ローラ又は定着ベルトといった定着部材、定着部材に圧接する加圧ローラ、さらには、これらの部材を加熱する熱源を有しており、用紙を挟持しつつ搬送し、熱と圧力とでトナー像を記録紙に定着している。
【0003】
また、この場合、一般的に挟持部で記録紙に掛かる圧力分布を均一にする目的で、定着部材又は加圧部材の表面には弾性層が設けられている。さらに、用紙の搬送中に記録紙にシワが発生することを防ぐため、定着部材又は加圧部材に用いられるローラは、外径が軸方向端部から軸方向中央部側に向かって徐々に小さくなる、逆クラウン形状を有している。これは、逆クラウン形状を有することで、ローラ端部側の線速が早くなり、用紙が端部方向に引っ張られながら搬送されることでシワの発生を防止するためである。
定着ローラ又は加圧ローラが逆クラウン形状をした定着方式には、特許文献1〜3のものが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−121043号公報
【特許文献2】特開2000−250339号公報
【特許文献3】特開2002−333789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、省エネルギーの観点から、ウォームアップ時間の短縮が画像形成装置の課題となっている。その中でも定着装置が所望の温度に到達する時間を短くする工夫が行われてきた。特に、用紙挟持部を形成する部材の熱容量低減の効果が大きく、熱容量の大きいゴムなどの弾性層は従来に比べて肉厚が薄くなってきている。
【0006】
従来、前述のような逆クラウン形状のローラは注型工法を用いて製造されていた。この場合、従来の弾性層の肉厚であれば、ローラの軸方向中央部付近と端部とにある程度の外径差があっても弾性層が変形することで脱型が可能であったが、弾性層が薄くなると弾性層はあまり変形できないので、型可能なローラの外径差はより小さくなることになる。
よって、弾性層の肉厚を薄くしたローラによって従来並の逆クラウン形状を得ようとすると、いずれかの工法を用いて一旦ストレート形状のローラを作製した後に、このストレート形状のローラの外径を所望の逆クラウン形状に加工する必要がある。
そのため、このように弾性層肉厚の薄いローラは、製造工程の増加により、従来に比べて製造コストの高いものとなってしまう不具合がある。
【0007】
また、注型工法のみによって弾性層肉厚が薄いローラを得ようとすると、ローラの軸方向端部と軸方向中央部との外径差が従来のローラに比べて小さくなり、記録紙にシワが発生しやすくなってしまう不具合もある。
【0008】
これに対し、特許文献2,3の技術では、前述のような逆クラウン形状のローラが示されており、やはり前述した不具合を解決することはできない。
【0009】
また、特許文献1の技術では、ローラの軸方向中央部から端部に向かって径サイズが拡大する形状が示されているが、さらにその径方向外側は最端部に向けて径サイズが縮小する形状となっており、注型工法では製造できず、複雑な加工工程を必要とするので、やはり前述した不具合を解決することはできない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、注型工法のみによって弾性層の肉厚が薄いローラを製造することで、ローラの製造コストを低減することである。
本発明の別の目的は、種々のサイズの転写材を用いてもシワの発生を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置の定着装置で記録材の加圧を行うローラであって、回転軸方向の中央部から軸方向の最端部まで漸次外径サイズが拡大し、回転軸方向変位量に対する前記外径サイズの変化量は回転軸方向の前記中央部から前記最端部に向かって漸次拡大することを特徴とするローラである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1本のローラで外径サイズの変化量を複数有することになるので、記録紙のサイズ毎にシワを抑制できる外径サイズの変化量を設定することができ、種々のサイズの記録紙などの転写材を用いてもシワの発生を抑制できる。また、ローラの中央部ほど外径サイズの変化量が小さいため、ローラ端部と中央部との外径差を最小限に抑えることができ、もって注型工法のみによって弾性層の肉厚が薄いローラを製造することができるので、ローラの製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、デジタル複写機であり、原稿の画像を読み取るスキャナ2と、この読み取った画像の画像データに基づいて転写紙などの記録材に電子写真方式で画像を形成するプリンタエンジン3と、画像形成装置1の全体を集中的に制御するメイン制御部4とを備えている。プリンタエンジン3には、加圧と加熱とによりトナー画像を記録材上に定着する定着装置5を備えている。
【0014】
図2は、定着装置5の構成例を示す説明図である。この定着装置5は、定着ローラ11と、ヒートローラ12と、この定着ローラ11とヒートローラ12とに掛け渡されて保持された定着ベルト13と、定着ベルト13を挟んで定着ローラ11と対向する加圧ローラ14と、定着ベルト13のスリップを防ぐために定着ベルト13に当接させているテンションローラ15とを有している。
ヒートローラ12と加圧ローラ14の内部には熱源としてヒータ16,17がそれぞれ設けられている。通常、定着ベルト13の表面にはトナーtの付着を防ぐためにシリコーンゴム等による離型層が形成されている。定着ベルト13及び加圧ローラ14にはそれぞれ中央部に温度センサ(図示せず)が取り付けられており、図示しないコントローラによってそれぞれが所定の温度になるようにヒータ16,17の点灯状態を制御している。
用紙などの転写材pは、定着ローラ11と加圧ローラ14とのニップ部で加圧及び加熱され、トナーtが転写材p上に定着される。
【0015】
図3は、定着ニップ部を構成する定着ローラ11及び加圧ローラ14の外形を示す平面図である。定着ローラ11及び加圧ローラ14は、回転軸21の軸方向の中央部22から軸方向の最端部23まで漸次外径サイズが拡大している。すなわち、矢印aの部分より矢印bの部分の外径サイズが大きく、さらに矢印bの部分より矢印cの部分の外径サイズが大きい。また、回転軸21の軸方向(x方向)の変位量に対する外径サイズの変化量も、回転軸21の軸方向の中央部22から軸方向の最端部23まで漸次拡大している。すなわち、回転軸21の軸方向(x方向)の変位量に対する、矢印aの部分より矢印bの部分の外径サイズの変化量が大きく、さらに矢印bの部分より矢印cの部分の外径サイズの変化量が大きい。定着ローラ11及び加圧ローラ14の表面には弾性層が設けられており、この弾性層の肉厚は例えば0.5〜3mmである。なお、定着ローラ11及び加圧ローラ14の両方がこのような構成である必要はなく、少なくとも一方がこのような構成であれば良い。
【0016】
定着ローラ11、加圧ローラ14は、1本のローラで外径サイズの変化量を複数有することになるので、記録材紙のサイズ毎にシワを抑制できる外径サイズの変化量を設定することができ、種々のサイズの記録紙を用いてもシワの発生を抑制できる。また、定着ローラ11、加圧ローラ14の中央部ほど外径サイズの変化量が小さいため、ローラ端部と中央部との外径差を最小限に抑えることができ、もって注型工法のみによって弾性層の肉厚が薄いローラを製造することができるので、定着ローラ11、加圧ローラ14の製造コストを低減することができる。
【0017】
また、弾性層の肉厚を0.5〜3mmにすることで、定着ローラ11、加圧ローラ14の熱容量の低減と加工の容易さを両立することができる。つまり、弾性層肉厚を3mm以下にすることで、定着ローラ11、加圧ローラ14の熱容量の低減による画像形成装置のウォームアップ時間の短縮につながり、肉厚を0.5mm以上とすることで、注型工法によるローラの製造が容易となる(0.5mmよりさらに弾性層肉厚を薄くしようとした場合、逆クラウン形状を有する定着ローラ11、加圧ローラ14を注型工法で得ようとしても、型から定着ローラ11、加圧ローラ14を取り出すことが非常に困難になる)。
【実施例】
【0018】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例)
本実施例は、図2に示す定着装置5をフルカラープリンタに用いた例である。定着ローラ11は、胴部径φ14mm、ジャーナル部径φ10mmの芯金の周りに、外径φ30mm、幅305mmのシリコーンスポンジを設けたローラである。ヒートローラ12は、外径φ35mm、肉厚0.5mm、幅310mmの中空パイプであり、外周の定着ベルト13との当接部にはテフロン(登録商標)加工が施されている。これら2つのローラ11,12に保持されている定着ベルト13は、内径φ65mm、厚さ100μmのポリイミド基材の上に150μmのシリコーンゴム層を有する幅320mmのベルトである。
【0019】
ヒートローラ12内には熱源としてのハロゲンヒータがヒータ16として設けられており、ヒートローラ12表面を介して定着ベルト13を熱している。なお、このハロゲンヒータの円筒部の中心はヒートローラ12の中心と一致するように配置されている。また、定着ベルト13のスリップを防ぐ事を主な目的とした、テンションローラ15は外径φ10mmのアルミローラからなり、周りに断熱フェルトを巻き付けてある。この断熱フェルトは定着ベルト13の熱が、テンションローラ15に逃げることを防いでいる。ヒートローラ12の近傍には温度センサが配置されており、このセンサの情報をもとにヒータ16のON/OFF制御が行われ、定着ベルト13の表面を170℃に調整している。
【0020】
定着ベルト13を挟んで定着ローラ11と対向する加圧ローラ14は、ジャーナル部φ20mm、胴部の外径φ38mm、長さ312mmの芯金の上にシリコーンゴム層を有するローラである。シリコーンゴム層を含むローラの外径(半径)はゴム部の端部を0としたときに図4のグラフに実施例のプロットで記されている形状を有している。すなわち、本実施例では、加圧ローラ14の外形が前述の本発明の特徴的な形状に構成されている(図4を参照)。
【0021】
加圧ローラ14は押しつけ部材(図示せず)を介してスプリング(図示せず)によって定着ベルト13及び定着ローラ11に押し当てられている。また、加圧ローラ14内には熱源としてのハロゲンヒータであるヒータ14を有しており、加圧ローラ14を介して記録紙pに熱を与えている。また、加圧ローラ14には温度センサが配置されており、このセンサの温度検出情報が150℃未満の時にヒータがONになるように制御が行われる。
このような定着装置5を備えたプリンタは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のトナーによって画像を形成するフルカラープリンタであり、感光体上に作像された各色のトナー像を被転写材上で重ね合わせて画像形成する。
【0022】
(比較例1)
上記実施例に対する比較例1の加圧ローラ14は、ジャーナル部φ20mm、胴部の外径φ38mm、長さ312mmの芯金の上にシリコーンゴム層を有するローラである。シリコーンゴム層を含むローラの外径(半径)はゴム部の端部を0としたときに図4のグラフに比較例1としてプロットで記されている形状を有している。その他の条件は実施例と同様である。
【0023】
(比較例2)
比較例2の加圧ローラ14は、ジャーナル部φ20mm、胴部の外径φ38mm、長さ312mmの芯金の上にシリコーンゴム層を有するローラである。シリコーンゴム層を含むローラの外径(半径)はゴム部の端部を0としたときに図4のグラフに比較例2としてプロットで記されている形状を有している。その他の条件は実施例と同様である。
【0024】
(評価1)
実施例及び比較例1,2の加圧ローラ14が注型工法により製造可能か評価を行ったところ、実施例及び比較例2の加圧ローラは、型からローラを脱型することができたが、比較例1の加圧ローラ14は脱型することができなかった。
【0025】
(評価2)
実施例及び比較例1,2の構成の加圧ローラ14を有する定着装置5を備えた画像形成装置を用いてA4及びA3の45k紙を50枚、両面で通紙し、シワの発生有無を調べた。実施例及び比較例1ではシワの発生が無かったが、比較例2ではA3の両面通紙においてシワが発生した。
【0026】
(まとめ)
表1は、評価1,2の結果をまとめたものである。この表からも判るように、実施例は評価1,2において良好な結果を得られている。
【0027】
【表1】

【0028】
また、表2に、各加圧ローラ14の外径差と外径変化率(外径変化率は、軸21方向の変位に対するローラの外径が変化する割合)を示した。外径差に関しては実施例及び比較例2に比べて比較例1が大きく、これが脱型できなかった理由と考えられる。次にA3の用紙を通紙する場合、用紙の端部は加圧ローラ14の0〜11と301〜312の部分を通過する(図3参照)。この箇所の外径変化率を比較すると、実施例は6.36E-4、比較例は16.41E-4であるのに比べて、比較例2は3.85E-4と小さい。これより、A3の用紙の端部付近の加圧ローラ14の外径変化率が小さいと、用紙端部を外側に引っ張る力が十分に得られないため、シワが発生したと考えられる。また、A4の用紙を通紙する場合、用紙端部はローラ48〜107と205〜264の部分を通過する。この箇所の外径変化率は比較例1の6.41E-4に比べて、実施例が3.90E-4、比較例2が3.85E-4と小さいにもかかわらず、シワは発生していない。これより、用紙サイズが小さくなると外径変化率が小さくてもシワの発生を抑制できると考えられる。
【0029】
【表2】

【0030】
以上のように、本発明の構成を有する加圧ローラ14とすることで、ローラの外径差を最小限に抑えながらも、記録紙にシワが発生することを抑制することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態である定着装置の概略構成の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態であるローラの平面図である。
【図4】本発明の実施例を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 画像形成装置
5 定着装置
11 定着ローラ
14 加圧ローラ
21 回転軸
22 中央部
23 最端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置の定着装置で記録材の加圧を行うローラであって、
回転軸方向の中央部から軸方向の最端部まで漸次外径サイズが拡大し、回転軸方向変位量に対する前記外径サイズの変化量は回転軸方向の前記中央部から前記最端部に向かって漸次拡大することを特徴とするローラ。
【請求項2】
肉厚が0.5〜3mmの弾性層を表面に備えていることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項3】
電子写真方式の画像形成装置に設けられる定着装置において、
定着ニップ部を形成する一対のローラのうち少なくとも一方が請求項1又は2に記載のローラであることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
電子写真方式の画像形成装置において、
定着装置が請求項3の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−199487(P2007−199487A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18984(P2006−18984)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】