説明

ロールブラシ、基板洗浄装置

【課題】 ダメージを受けやすい薄膜が形成されている基板の洗浄においても、基板にダメージを与えにくく、且つ、薄膜上のパーティクル除去率が高いロールブラシ及びこのロールブラシを用いた基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】 基板51の主面に当接させて回転させることにより基板51の主面を洗浄するロールブラシ56,57を、複数のブラシ毛を束ねて形成されたチャンネルブラシ2を、ロールブラシ56,57の芯を形成する円柱状のロール部材31に、このロール部材31の外周面に螺旋状に、隣接するチャンネルブラシ2間に隙間を設けて巻き付けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置及び液晶表示基板製造装置等に用いられ、液晶表示用ガラス角形基板、半導体ウエハ、カラーフィルタ用ガラス基板、フォトマスク用基板、サーマルヘッド用セラミック基板及びプリント基板等の基板の主面を洗浄する基板洗浄装置、及びその基板洗浄装置に用いられるブラシロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1及び特許文献2に示されるように、水なし平版印刷版の表面のシリコンゴム層を除去するためのロールブラシ(ブラシロール、ブラシローラ)として、1本又は複数本の所謂チャンネルブラシ(帯状ブラシ)を、芯となるロールの軸方向に対して斜め(状巻き)に隙間なく巻き付けてなるものがある。
【0003】
また、基板の主面を洗浄するための基板洗浄装置に上記のようなロールブラシを用いたものがある。また、基板の洗浄用として上記のようなチャンネルブラシを隙間なくロール芯に巻き付けたロールブラシは、ダメージを受けやすい薄膜(例えばITO(Indium Tin Oxide)やCr(Chromium)、Al(Aluminum)などの金属膜や、カラーフィルタ用の有機膜などの比較的柔らかい膜)が表面に形成されている基板の洗浄には、基板にダメージを与えてしまい用いることができないため、このような基板に対する基板洗浄装置及び方法として、ブラシをあてない洗浄装置及び方法が、例えば下記特許文献3に記載されている。
【0004】
チャンネルブラシを隙間なくロール芯に巻き付けたロールブラシを、ダメージを受けやすい薄膜が表面に形成されている基板の洗浄に用いた場合に、基板にダメージを与えてしまう理由を説明すると、ロールブラシは、通常その長手方向(回転軸方向)に例えば2m以上の長さを有するため、ロールブラシが自身の重量により回転軸(長手方向)に垂直な方向にたわんでしまい、ロールブラシの基板への接触にその回転位置による強弱ができ、基板の主面全体にロールブラシを当てようとするとロールブラシの基板への接触が強すぎる箇所ができてしまうためである。
【特許文献1】実開昭62−167253号公報
【特許文献2】特開平6−148900号公報
【特許文献3】特開平10−12582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のブラシをあてない基板の洗浄方法では、薄膜上のパーティクル除去率が低く、製品不良率が高くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたもので、薄膜上のパーティクル除去率が高く、且つ、ダメージを受けやすい薄膜が形成されている基板の洗浄においても、基板にダメージを与えにくいロールブラシ及びこのロールブラシを用いた基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るロールブラシは、基板の主面に当接させて回転させることにより基板の主面を洗浄するロールブラシであって、複数のブラシ毛を束ねて形成された帯状ブラシを、ロールブラシの芯を形成する円柱状のロール部材に、このロール部材の外周面に螺旋状に、隣接する帯状ブラシ間に隙間を設けて巻き付けてなるものである。
【0008】
この構成によれば、同じロールブラシにおいて帯状ブラシを隙間なく巻き付けた場合と比較して、帯状ブラシを隙間を設けて巻き付けた分、帯状ブラシの量が減り、その分の重量が減少するので、ロールブラシの鉛直方向へのたわみが減少し、基板内の位置によるロールブラシの接触の強弱が発生しにくく、ロールブラシが基板により均一に接触し、基板の表面をより傷つけずに洗浄することができる。
【0009】
請求項2に係るロールブラシは、請求項1に記載のロールブラシであって、前記帯状ブラシ間の隙間は前記帯状ブラシの幅以上であるものである。
【0010】
この構成によれば、同じロールブラシにおいて帯状ブラシを隙間なく巻き付けた場合と比較して、帯状ブラシの重量が約半分以下に減少するので、ロールブラシの鉛直方向へのたわみが減少し、基板内の位置によるロールブラシの接触の強弱が発生しにくく、ロールブラシが基板により均一に接触し、基板の表面をより傷つけずに洗浄することができる。
【0011】
請求項3に係るロールブラシは、請求項1に記載のロールブラシであって、前記ロール部材の表面の半分以下に前記帯状ブラシが巻かれているものである。
【0012】
この構成によれば、同じロールブラシにおいて帯状ブラシを隙間なく巻き付けた場合と比較して、帯状ブラシの重量が約半分以下に減少するので、ロールブラシの鉛直方向へのたわみが減少し、基板内の位置によるロールブラシの接触の強弱が発生しにくく、ロールブラシが基板により均一に接触し、基板の表面をより傷つけずに洗浄することができる。
【0013】
請求項4に係るロールブラシは、請求項1〜3のいずれかに記載のロールブラシであって、2本以上の前記帯状ブラシを交互に巻き付けてなるものである。
【0014】
この構成によれば、同じロールブラシにおいて帯状ブラシを隙間なく巻き付けた従来のロールブラシと比較して、帯状ブラシを隙間を設けて巻き付けた分、従来と比較して帯状ブラシの量が減り、その分の重量が減少するので、ロールブラシの鉛直方向へのたわみが減少し、基板内の位置によるロールブラシの接触の強弱が発生しにくく、ロールブラシが基板により均一に接触し、基板の表面をより傷つけずに洗浄することができる。
【0015】
請求項5に係る基板洗浄装置は、請求項1〜4のいずれかに記載のロールブラシを備え、前記ロールブラシを前記ロール部材の軸を中心に回転させてブラシ毛の先端を基板の主面に対して摺動させることにより基板の主面を洗浄するものである。
【0016】
この構成によれば、請求項1〜4のいずれかの効果を奏する基板洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同じロールブラシにおいて帯状ブラシを隙間なく巻き付けた場合と比較して、帯状ブラシを隙間を設けて巻き付けた分チャンネルブラシの量が減り、その分の重量が減少するので、ロールブラシの回転軸(長手方向)に垂直な方向へのたわみが減少し、基板内の位置によるロールブラシの接触の強弱が発生しにくく、ロールブラシが基板により均一に接触し、ダメージを受けやすい薄膜が表面に形成されている基板においても、基板の表面をより傷つけずに洗浄することができるロールブラシ及び基板洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態における基板処理装置について図面を参照しながら説明する。図1は、基板処理装置の基板洗浄ユニット(基板洗浄装置)の内部の構成の概略を示す側面断面図である。基板洗浄装置5には、基板51の搬入側に前側コンベア部52が配設され、ブラシ洗浄処理後の基板51の搬出側に後側コンベア部53が配設され、これらの前側コンベア部52と後側コンベア部53との間にブラシ洗浄部54が配設されている。
【0019】
これらの前側コンベア部52および後側コンベア部53では、複数の搬送ローラ55が互いに平行に搬送方向Aに並設されている。これらの各搬送ローラ55はそれぞれ基板51の両端縁をそれぞれ支持している。また、これらの各搬送ローラ55は、図示しないが駆動部と連結されており、駆動部からの駆動力によって一定方向に回転して基板51を搬送方向Aに搬送するようになっている。
【0020】
また、ブラシ洗浄部54は、前側コンベア部52と後側コンベア部53との間の基板洗浄搬送経路に配設されている。この搬送経路上流側に、基板51の表面(主面)を洗浄するロールブラシ56が基板51の幅に亘って配設されており、このロールブラシ56の真下をブラシが当接するように基板51が搬送されるようになっている。また同様に、搬送経路の下流側に、基板51の表面を洗浄するロールブラシ57が基板51の幅に亘って配設されており、このロールブラシ57の真下をブラシが当接するように基板51が搬送されるようになっている。
【0021】
さらに、これらのロールブラシ56,57の前後にはそれぞれ、基板51の両端縁部を支持して搬送する搬送ローラ58がそれぞれ配設されていると共に、基板51の端縁部を押圧する上乗せローラ59がそれぞれ配設されている。これらの各搬送ローラ58も、図示しないが駆動部と連結されており、駆動部からの駆動力によって一定方向に回転して基板51を搬送方向Aに搬送するようになっている。
【0022】
この構成により、搬送ローラ55,58などの搬送手段によって搬送されて来る基板51の面に、洗浄液を供給しつつ、駆動部によって回転するロールブラシ56,57をそれぞれ当接摺動させて基板51の主面を洗浄している。ロールブラシ56,57の長手方向(回転軸方向)の長さは、例えば2m以上である。
【0023】
図2は、ロールブラシ56,57に用いるチャンネルブラシ(帯状ブラシ)2の斜視図である。チャンネルブラシ2は、例えばナイロン等を用いたブラシ毛21の中央付近を芯材23に巻き付け、その外側を金属等を用いたかしめ部材22によりかしめてなる帯状に長いブラシである。
【0024】
図3は、ロールブラシ56,57の側面図である。ロールブラシ56,57は、金属等を用いたロール部材31に、チャンネルブラシ2をブラシ毛21が外側を向くように螺旋状に巻き付けて(状巻き)なるブラシである。本実施形態においては、隣り合うチャンネルブラシ2の間隔はチャンネルブラシ2の幅とほぼ同等とし、2本のチャンネルブラシ2を交互に巻き付ける、所謂、2条巻きを行う。つまり、チャンネルブラシ2を隙間なく巻き付けた場合の4倍の巻きピッチで2本のチャンネルブラシを交互に(2条巻き)ロール部材31に巻き付ける。ここで、巻きピッチとは、巻き付けられて隣接しているチャンネルブラシの幅の中心から中心までの距離である。これにより、チャンネルブラシ2を隙間なく巻き付けた従来のロールブラシと比較して、(2本の合計で)約半分の長さのチャンネルブラシ2が用いられ、チャンネルブラシ2の重量が約半分となりロールブラシの重量が軽減される。
【0025】
図4は、複数の異なるロールブラシ56,57を異なる条件下で動作させた場合の基板洗浄実験の結果を示す図表である。ロールブラシには、ブラシ毛の材質、チャンネルブラシのチャンネルサイズ、チャンネルブラシの巻きピッチ、及びブラシ毛の太さの異なるものを用いた。具体的には、ブラシ毛の材質をナイロン612又はナイロン610、チャンネルサイズを2番チャンネル又は3番チャンネル、巻きピッチを14mm又は7mm、ブラシ毛の太さを直径0.0625mm又は0.05mmにした。ただし、チャンネルブラシのチャンネルサイズとはチャンネルブラシの幅サイズのことで、2番チャンネルは2mmの幅サイズ、3番チャンネルは3mmの幅サイズを示す。実際に、ブラシ毛21と芯材23がかしめ部材22に挟まれると幅サイズは0.5mm程度太くなる。
【0026】
洗浄条件としては、ロールブラシの回転速度、及び基板の搬送条件(速度)を異ならせて洗浄を行った。具体的には、ロールブラシの回転速度を150r.p.m又は300r.p.mとし、1〜4m/minで基板を搬送しながら、又は5〜15秒間基板を同一位置で保持(停止)しながら洗浄した。このとき、全実験を通してブラシ毛の長さは15mm程度、基板に対するブラシ毛の押し込みは1mm程度とした。
【0027】
図表中の実験結果の「○」は、目視による確認によりダメージがほぼないこと、「△」は、目視による確認によりダメージがややあること、「×」は、目視による確認によりダメージがあることを示す。ブラシ毛の材質をナイロン612、チャンネルサイズを2番チャンネル、巻きピッチを14mm、ブラシ毛の太さを直径0.0625mm、及びブラシの回転速度を150r.p.mとした場合には、1〜4m/minで基板を搬送しながら洗浄したときと、5〜15秒間基板を同一位置で保持(停止)しながら洗浄したとき共に、ダメージがあることが確認された。
【0028】
ブラシ毛の材質をナイロン610、チャンネルサイズを2番チャンネル、巻きピッチを14mm、ブラシ毛の太さを直径0.05mm、及びブラシの回転速度を150r.p.mとした場合には、1〜4m/minで基板を搬送しながら洗浄したときと、5〜15秒間基板を同一位置で保持(停止)しながら洗浄したとき共に、ダメージがないことが確認された。ブラシ毛の材質をナイロン610、チャンネルサイズを2番チャンネル、巻きピッチを14mm、ブラシ毛の太さを直径0.05mm、及びブラシの回転速度を300r.p.mとした場合には、1〜4m/minで基板を搬送しながら洗浄したときはダメージがないことが確認され、5〜15秒間基板を同一位置で保持(停止)しながら洗浄したときは、ダメージがややあることが確認された。
【0029】
ブラシ毛の材質をナイロン610、チャンネルサイズを3番チャンネル、巻きピッチを14mm、ブラシ毛の太さを直径0.05mm、及びブラシの回転速度を300r.p.mとした場合には、1〜4m/minで基板を搬送しながら洗浄したときと、5〜15秒間基板を同一位置で保持(停止)しながら洗浄したとき共に、ダメージがややあることが確認された。ブラシ毛の材質をナイロン610、チャンネルサイズを3番チャンネル、巻きピッチを7mm、ブラシ毛の太さを直径0.05mm、及びブラシの回転速度を300r.p.mとした場合には、1〜4m/minで基板を搬送しながら洗浄したときと、5〜15秒間基板を同一位置で保持(停止)しながら洗浄したとき共に、ダメージがあることが確認された。
【0030】
また、実験の結果、洗浄性能が十分でないときには、巻きピッチを変えずにロールブラシ56,57の本数を増加させることで、洗浄性能が向上できることが示された。
【0031】
このように本実施形態によれば、チャンネルブラシ2をロール部材31に、隣接するチャンネルブラシ2間に隙間を設けて、従来の約4倍の巻きピッチで2条巻きに巻き付けてロールブラシ56,57を構成したので、ロールブラシの重量が軽減された。これにより、ロールブラシ56,57の軸(ロール部材31)のたわみが軽減され、回転中のロールブラシ56,57が基板の主面により均一にあたるようになり、ロール毛を基板に適度な強さで当接させて摺動させることができるので、ダメージを受けやすい薄膜が表面に形成されている基板においても、基板の表面をより傷つけずに洗浄することができる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、以下に述べる態様を採用することができる。本実施形態においては、2条巻きにしたが、1条巻きでもよいし、3条巻き以上であってもよい。本実施形態においては、基板洗浄装置5にロールブラシ56,57を2本備えたが、1本でもよいし、3本以上であってもよい。更に基板洗浄装置5の洗浄性を向上させるために、上述のロールブラシ56,57に加えて他の洗浄ツール(例えば洗浄液の噴射等)を組み合わせてもよい。
【0033】
また、チャンネルブラシを2条巻き以上にした場合に、異なるチャンネルブラシ間には隙間を設けずに巻き付けてもよい。つまり、2条巻きの場合には、隣接する2本ごとのチャンネルブラシ間には隙間を設けないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態における基板洗浄装置の内部の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるチャンネルブラシを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるロールブラシを示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるロールブラシを用いた洗浄実験の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0035】
2 チャンネルブラシ(帯状ブラシ)
21 ブラシ毛
31 ロール部材
5 基板洗浄装置
51 基板
56,57 ロールブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面に当接させて回転させることにより基板の主面を洗浄するロールブラシであって、
複数のブラシ毛を束ねて形成された帯状ブラシを、ロールブラシの芯を形成する円柱状のロール部材に、このロール部材の外周面に螺旋状に、隣接する帯状ブラシ間に隙間を設けて巻き付けてなるロールブラシ。
【請求項2】
前記帯状ブラシ間の隙間は前記帯状ブラシの幅以上である請求項1に記載のロールブラシ。
【請求項3】
前記ロール部材の表面の半分以下に前記帯状ブラシが巻かれている請求項1に記載のロールブラシ。
【請求項4】
2本以上の前記帯状ブラシを交互に巻き付けてなる請求項1〜3のいずれかに記載のロールブラシ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のロールブラシを備え、前記ロールブラシを前記ロール部材の軸を中心に回転させてブラシ毛の先端を基板の主面に対して摺動させることにより基板の主面を洗浄する基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−80187(P2006−80187A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260648(P2004−260648)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】