説明

ロール用被覆製造方法

本発明は、ロールフレーム(1)上にロール被覆を製造する方法に関し、当該被覆は、ロールフレーム(1)上にベース層(2)と、ベース層(2)上に表面層(3)を含む。ベース層(2)は、表面層(3)が形成され、硬化又は固化された後に、その最終形態へと至らされる。表面層(3)は、ベース層(2)がロールフレーム(1)上に形成された後に、ベース層(2)上に形成され、硬化又は固化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールフレーム上にロール被覆を製造する方法であって、該被覆は、ロールフレーム上にベース層と、ベース層上に表面層を含み、前記ベース層が、前記表面層が形成され且つ硬化又は固化された後に最終形態に至らされる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの知られているロール製造方法では、製造に関連したロール被覆材料内に残留応力が残るという問題点がある。残留応力は、コーティング剤が応力耐性を超える原因となるので、その場合、永久変形や初期クラックがコーティング材内に形成され、ロールの寿命を短くする。
【0003】
残留応力に関する問題は、被覆層を先ずパイプとして形成し、それをロールフレーム上に嵌合し、パイプとフレームの壁の間に、パイプの内壁と、ロールフレームの外面を結合させる層を注入することにより解決しようとしてきた。
【0004】
ロール被覆層に関する問題についても、フィラーや強化繊維をそれらに添加することにより、解決しようとしてきた。しかし、フィラーは、ロール表面の過剰な硬さの原因となり、また、強化繊維は、紙の表面上にあれを付与してしまう。
【0005】
次に、先行技術による解決策を説明する。
【0006】
特許文献1は、ハードロールの製造方法を開示する。熱硬化樹脂が含浸された繊維材料が、ロールの金属コアまわりに巻きつけられる。中空のシリンダは、金型内で熱硬化合成樹脂からなり、硬化される。繊維材料により被覆された金属コアは、中空シリンダ内にセットされる。リング状の空間が、中空シリンダの内面と繊維層との間に残り、当該空間に接着剤が吹き付けられる。接着剤は硬化され、この場合、繊維材料で被覆された金属コア及びシリンダの内面が互いに結合される。
【0007】
特許文献2は、ロールフレームから層を除去することができる方法を開示する。ロールは、先ず、除去可能な層から形成される。その後、ポリマー材料層が形成される。圧縮可能な材料の層が、除去可能な層とポリマー材料層との間に形成されることができる。圧縮可能な層は、ポリマー材料層よりも収縮できるので、製造中に形成される応力に効果的な作用を有することができる。
【0008】
特許文献3は、エラストマ材料で被覆されたロールの製造方法を開示し、そこでは、不織繊維バンドが、熱硬化樹脂及び微細な無機性の粉末で含浸され、ロールの金属コアのまわりに一端から他端まで応力下で巻きつけられ、熱硬化樹脂が硬化され、そして、エラストマ材料が、不織繊維層上に形成される。
【0009】
特許文献4は、弾性のある表面を備えるロールの製造方法を開示する。ロールは、金属コアを有し、その上に、エラストマの外層と内側のより硬い層から形成される被覆が設定される。接着剤がコアと被覆との間に圧力下で吹き付けられる。
【0010】
特許文献5は、ロールフレームが直立であり、熱硬化樹脂の層が、ロールフレームと外側の円筒状の層との間に注型される、方法を開示する。冷却と加熱の双方が、当該プロセスで用いられる。
【0011】
特許文献6は、円筒形コア、接着剤層、及び被覆層を含むロールを開示する。被覆層には、ポリマー材料のベース層、接続層、及び、エラストマ材料と非常に高いモル重量を含むポリエチレン混合物を含む上層が存在する。
【特許文献1】US5,091,027号明細書
【特許文献2】US6,409,645号明細書
【特許文献3】US4,368,568号明細書
【特許文献4】EP0083301号明細書
【特許文献5】US5,753,165号明細書
【特許文献6】US6,328,681号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ロール製造技術の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による方法は、表面層は、ベース層が前記ロールフレーム上に形成された後に、前記ベース層上に形成され、硬化又は固化されることを特徴とする。
【0014】
本発明による方法により製造されたロールの残留応力は、低減され、従って、ポリマー被覆の性能が向上する。被覆の全ての層は、別々の表面層の製造、機械加工、フレーム上への表面層のセット、及び、ベース層の注型、を行うことなく、直接的に生成できる。ベース層が、表面層の前にロールフレーム上に形成されるとき、ベース層材料は、表面層の下方で全て意図した位置に存在することを保証することができる。表面層は、如何なる時点でも別のパイプである必要はないので、従前よりも薄く製造することができる。ロールの製造は、本発明による方法を用いると従前より安価になり、本方法により膨大な材料の節約が達成される。
【0015】
本発明による方法によって製造されるロールは、例えば、カレンダロールであるが、他の適切な用途も同様に問題となる。
【0016】
本発明による方法によって製造されるロールは、ロールフレーム、ベース層、及び表面層を含む。ベース層と表面層との間に幾つかの互いに異なる層が存在してもよい。
【0017】
ベース層は、相互に異なるポリマー材料層、効果的には2つの層を含んでよく、又は、ベース層は、少なくとも1つのポリマー層と少なくとも1つの強化層とを含んでよい。ポリマー材料は、一般的に、プラスティック材料である。強化層は、ロールフレーム上に設定されるとき、例えば高い強度の繊維から形成される、自由空間を含有した織り構造であることができる。強化層は、ポリマー材料が上述の自由空間に充填されるような態様で、ポリマー材料で含浸されることができる。繊維層の強化繊維は、例えば、ガラスファイバ又はパラ−アラミド繊維であってよい。効果的には、必ずしも必要ではないが、繊維層は、織布の形態である。強化層の役割の1つは、ロールの異なる層を一緒に維持することである。
【0018】
表面層は、熱硬化性又は熱可塑性であってよい少なくとも1つのポリマー層を含む。表面層の材料は、その処理及び硬化温度がベース層の最も上層のポリマー材料の処理及び硬化温度よりも低くなるように、選択される。
【0019】
本発明による方法では、ロールの被覆層は、ロールフレーム上に直接、内側から外側へと順次形成され、即ち、パイプとして別々に製造される層がロールフレーム上に取り付けられることは無い。表面層は、例えば冷却、注型又は押し出しにより、製造されることができる。
【0020】
本発明の第1実施例によると、ベース層は、自由空間を含有する強化層及びポリマー層から形成される。ベース層のポリマー材料層の処理温度は、表面層の処理温度よりも高い。表面層が既に加熱処理されたとき、それは、ベース層に対して収縮する。従って、熱は、ロールフレームの内側からもたらされ、その場合、ベース層のポリマー材料層は、液体へと変化し、ポリマー材料は、収縮する表面層により生ずる応力によって、例えば織布の糸間である自由空間に移る。液体ポリマー材料は、ポリマー材料が熱硬化性であるか又は熱可塑性であるかに依存して、熱により硬化され又は冷却により固化される。ベース層のポリマー材料層が、強化層と組み合わせられるとき、表面層の残留応力は、除去され、又は、顕著に無くなる。
【0021】
本発明の第2実施例によると、ベース層は、少なくとも2つのポリマー材料層から形成され、その少なくとも1つは、繊維により硬化される層であってよく、又はそれらから形成される構造であってよい。他言すると、層は、ポリマー材料及び強化繊維を含む。ロールフィールドに最も近い層は、繊維強化層又は非強化層であることができ、そこのポリマー材料には、ロールフレーム及び次のポリマー材料層の双方への良好な接着能力を供給される。ベース層にも、ポリマー化されたときに収縮する材料から製造される少なくとも1つの層があり、その処理温度は、表面層の処理温度よりも高い。表面層が既に熱処理されるとき、それはベース層に対して収縮する。従って、熱は、ロールフレームの内側からもたらされ、その場合、ベース層のポリマー材料層は、液体へと変化し、硬化され、硬化時に収縮する。表面層の残留応力は、ベース層の厚さが低減されるときに、除去され、又は、顕著に無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の説明を行う。
【0023】
図1は、本発明による方法により製造されるロールを示す。ロールは、ロールフレーム1と、被覆とを含む。被覆は、ベース層2と表面層3を含む。ロールフレーム1の構造は、変更されてもよいが、如何なる場合も、例えば長手方向の通路を介して、内側から熱がもたらされる可能性がある。ベース層2は、強化層4とポリマー材料層5とを含む。図1では、ポリマー材料層5は、ロールフレームに接するが、強化層4がロールフレーム1に接し、ポリマー材料層5が強化層4上にあるような構造も可能である。
【0024】
ロールの被覆は、本発明による方法に従って、塗布後は固体であるポリマー材料層5がロールフレーム1上に塗布される態様で、製造される。高強度繊維から形成される織布のような、自由空間を含有する強化層4が、ポリマー材料層5の上に設定される。強化層の上側の表面4aは、表面層3への接着性が良好なポリマー材料のような材料でシールされる。
【0025】
表面層3は、強化層4の上に塗布され、熱により硬化され、その場合、表面層3は、強化層4に向かって収縮する。この後、ロールフレーム1は、ポリマー材料層5が液体になり、表面3の収縮による応力によってポリマー材料が強化層4の自由空間を満たすような態様で、加熱される。表面3の残留応力は、当該事象に関連して減少する。
【0026】
ロールフレーム1は、例えば、誘導(インダクション)加熱、液体又はガスにより、加熱される。ポリマー材料層5の材料は、熱硬化性又は可塑性であってよい。熱硬化性材料は熱で融解及び硬化し、熱可塑性ポリマーは、熱で融解し、冷却時に固化する。ポリマー材料層6に用いられる適切な材料は、例えば、文献WO98/11166に言及される種類のものであってよい。
【0027】
図2は、本発明による方法により製造されるロールを示す。ロールは、ロールフレーム1と被覆とを含む。ロールフレーム1の構造は、変更されてもよいが、如何なる場合も、例えば長手方向の通路を介して、内側から熱がもたらされる可能性がある。ベース層2は、接着層7と中間層8を含む。接着層7は、ポリマー材料、又は、ポリマー材料と強化繊維からなる構造との組み合わせからなってよい。接着層7の上には、中間層8が塗布される。中間層8の上には、表面層3が塗布され、その処理温度は、中間層8の処理温度よりも低い。表面層3は、熱により硬化され、冷却され、その場合、収縮した応力状態が表面3内に形成される。
【0028】
その後、熱は、ロールフレームにもたらされ、その場合、中間層1が、先ず液体へと融解し、その後硬化する。硬化時、中間層のポリマー材料の特定の容積が減り、表面層3の応力状態が低減する。中間層8に対する適切な材料は、例えば、環状ブチレンテレフタラート(CBTTM樹脂、Cyclics Corporation、米国)であることができる。中間層の材料は、硬化又はポリマー化されたときに収縮することに特徴がある。
【0029】
本発明は、上述に限定されることは無く、請求項の範囲内で変化しうる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による方法により製造されるロールの断面図である。
【図2】本発明による方法により製造されるその他のロールの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールフレーム上にロール被覆を製造する方法であって、該被覆は、ロールフレーム上にベース層と、ベース層上に表面層を含み、前記ベース層が、前記表面層が形成され且つ硬化又は固化された後に最終形態に至らされる、方法において、
前記表面層は、前記ベース層が前記ロールフレーム上に形成された後に、前記ベース層上に形成され、硬化又は固化されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
自由空間を含有するベース層が、先ず、前記ロールフレーム上に形成され、その後、前記表面層が、前記ベース層上に形成され、前記表面層の形成後に、少なくとも前記ベース層の一部が、液体に至らされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベース層が、先ず、前記ロールフレーム上に形成され、硬化及び冷却時に収縮する熱硬化材料から少なくとも部分的になり、その後、前記表面層が、前記ベース層上に形成され、前記表面層の形成後に、前記ベース層が硬化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベース層は、ポリマー材料層と強化層を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ベース層は、互いに異なる材料から形成される、第1ポリマー層、即ち接着層と、第2ポリマー層、即ち中間層とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ポリマー層は、強化繊維を含む、請求項5に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールフレーム上にロール被覆を製造する方法であって、該被覆は、ロールフレーム上に、少なくとも1つのポリマー材料層を含むベース層と、ベース層上に表面層を含み、前記ベース層が、前記ロールフレーム上に形成され、次いで、前記表面層が前記ベース層上に形成され、前記ベース層が、前記表面層が形成され且つ硬化又は固化された後に最終形態に至らされる、方法において、
前記表面層の材料は、その硬化温度又は固化温度が、前記ベース層の最も上層のポリマー材料層の硬化温度又は固化温度よりも低くなうように、選択されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
自由空間を含有するベース層が、先ず、前記ロールフレーム上に形成され、その後、前記表面層が、前記ベース層上に形成され、前記表面層の形成後に、少なくとも前記ベース層の一部が、液体に至らされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベース層が、先ず、前記ロールフレーム上に形成され、硬化及び冷却時に収縮する熱硬化材料から少なくとも部分的になり、その後、前記表面層が、前記ベース層上に形成され、前記表面層の形成後に、前記ベース層が硬化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベース層は、ポリマー材料層と強化層を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ベース層は、互いに異なる材料から形成される、第1ポリマー層、即ち接着層と、第2ポリマー層、即ち中間層とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ポリマー層は、強化繊維を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ロールフレームを含むロールであって、
前記ロールフレーム上に、硬化又は固化温度を有する少なくとも1つのポリマー材料層を含むベース層と、前記ベース層上に、硬化又は固化温度を有する表面層とを含み、
前記表面層の材料は、前記ベース層の最も上層のポリマー材料層の硬化温度又は固化温度よりも低い硬化温度又は固化温度を有することを特徴とする、ロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−525867(P2006−525867A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508335(P2006−508335)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/FI2004/050075
【国際公開番号】WO2004/103582
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(501249157)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (33)
【Fターム(参考)】