説明

ワイヤハーネスのアース接続構造

【課題】ワイヤハーネスのコストアップを抑えつつ、アース接続の作業効率を向上させることができるワイヤハーネスのアース接続構造を提供すること。
【解決手段】取付ブラケット14aは、ワイヤハーネス取り付け用の取付板部50と、取付板部50へのワイヤハーネス11の取り付け方向に沿って逆向きに延出するタブ52とを有し、ワイヤハーネス11は、発泡樹脂からなる発泡モールド体16で一体化されると共に、アース端子34を取り付け方向の前方に開口する姿勢で保持するアース端子保持部22を発泡モールド体16に有し、アース端子保持部22に保持されたアース端子34が、ワイヤハーネス11の取付板部50への取り付けによってタブ52に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインストルメントパネルやドアパネル等に配線されるワイヤハーネスのアース接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のインストルメントパネルやドアパネルには、各種の電装品が取り付けられており、これらの電装品には給電等のためにワイヤハーネスが接続されている。
【0003】
このようなワイヤハーネスから引き出されたアース線のアース端子をアース接続のため車体側に取り付ける場合に、アースボルトを用いることが一般に行われている。この場合、アース端子とボルト穴との位置決めやボルトの締結作業、ボルトのトルク管理等が、アース箇所の分だけ必要となる。よって、作業効率が悪く、時間が掛かり、結果として、コストアップに繋がってしまう。
【0004】
このため、アース端子の形状を工夫することにより車体への取り付けの容易化を図ることが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
また、ワイヤハーネスを保持しつつ車体側のブラケットに取り付けられるクランプに、アース線のアース端子を取り付けるためのアース用取付部を設けたものがある。このクランプでは、アース用取付部にアース端子が取り付けられるとアース線が内部端子に電気接続状態となる。この状態で、クランプがブラケットに取り付けられると内部端子がブラケットに電気接続状態となる。これにより、作業効率を低下させることなく、アース線を車体にアース接続することが可能になる(例えば、特許文献3参照)。また、アース端子が取り付けられた状態のクランプをブラケットに取り付けると、ブラケットが直接アース端子に電気接続状態となるものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−207077号公報
【特許文献2】特開2005−222865号公報
【特許文献3】特開平8−9540号公報
【特許文献4】特開2006−296050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した特許文献1,2に記載のものでは、ワイヤハーネスの車体への取付作業とは別に、アース端子の車体への接続作業を行わなければならず、作業の煩雑化を招いていた。
【0008】
これに対して、特許文献3,4に記載のものは、ワイヤハーネスの車体への取付作業によってアース端子の車体への接続が可能であり、作業の簡略化を図ることができる。しかし、アース端子を取り付けるためのアース用取付部が設けられたクランプをワイヤハーネスの所定の位置に位置決めして装着しなければならず、ワイヤハーネスの製造が煩雑化し、製造コストが嵩んでしまう。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスのコストアップを抑えつつ、アース接続の作業効率を向上させることができるワイヤハーネスのアース接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスのアース接続構造は、下記(1)から(4)のいずれかを特徴としている。
(1) 複数本のケーブルを束ねて一体化してなるワイヤハーネスから引き出されたアース線の端末に設けられたアース端子を車体側金属部材にアース接続させるアース接続構造であって、
前記車体側金属部材は、前記ワイヤハーネス取り付け用のハーネス取付部と、該ハーネス取付部への前記ワイヤハーネスの取り付け方向に沿って逆向きに延出するアース接続部とを有し、
前記ワイヤハーネスは、モールド体で一体化されると共に、前記アース端子を前記取り付け方向の前方に開口する姿勢で保持するアース端子保持部を前記モールド体に一体に有し、
前記アース端子保持部に保持された前記アース端子が、前記ワイヤハーネスの前記ハーネス取付部への取り付けによって前記アース接続部に接続されること。
(2) 上記(1)の構成のワイヤハーネスのアース接続構造において、前記モールド体は、発泡ビーズを発泡させてなる発泡モールド体であること。
(3) 上記(1)または(2)の構成のワイヤハーネスのアース接続構造において、前記アース端子保持部は、前記アース端子から前記取り付け方向の後方に前記アース線を延出させて前記アース端子を保持すること。
(4) 上記(1)から(3)のいずれかの構成のワイヤハーネスのアース接続構造において、前記アース端子は、前記アース端子保持部に保持された状態で前記取り付け方向に直交する基板部と、該基板部の相反位置から前記取り付け方向の前方に延出して相互間に挿入された前記アース接続部を挟持する一対の挟持板部とを有すること。
(5) 上記(1)から(3)のいずれかの構成のワイヤハーネスのアース接続構造において、前記アース端子は、前記アース端子保持部に保持された状態で前記取り付け方向に沿う接触部と、該接触部に沿う前記アース接続部を前記接触部に押し付けるバネと、該バネから突出して前記アース接続部を係止するロック突起とを有すること。
【0011】
上記(1)の構成のワイヤハーネスのアース接続構造では、ワイヤハーネスをモールド体で一体化し、このモールド体に一体に設けられたアース端子保持部にアース端子を保持させたので、クランプをワイヤハーネスに取り付けてアース端子を保持させるものと比較して、煩雑なクランプの取付作業をなくしてワイヤハーネスの製造コストを抑えることができる。
また、このワイヤハーネスが車体側金属部材のハーネス取付部に取り付けられるとき、アース端子は、ワイヤハーネスを一体化しているモールド体のアース端子保持部に、ワイヤハーネスの取り付け方向の前方に開口する姿勢で保持されている。よって、ワイヤハーネスのハーネス取付部への取付時にアース端子は、車体側金属部材からこの取り付け方向に沿って逆向きに延出するアース接続部に接続されることになる。したがって、モールド体で一体化されたワイヤハーネスにアース端子を保持して車体側金属部材へ取り付ければ、アース接続も自動的にできることになる。このため、接続作業時の手間が少なくなり、アース接続の作業効率を向上させることができる。
上記(2)の構成のワイヤハーネスのアース接続構造では、モールド体が発泡ビーズを発泡させた発泡モールド体であるので、大幅な軽量化を図ることができる。
上記(3)の構成のワイヤハーネスのアース接続構造では、アース端子は、取り付け方向の後方にアース線を延出させてアース端子保持部に保持されることになる。このため、ワイヤハーネスのハーネス取付部への取付時にアース線に剪断方向の力を受けることがなくなる。
上記(4)の構成のワイヤハーネスのアース接続構造では、アース端子が、基板部と、基板部の相反位置から延出する一対の挟持板部とを有する構造となる。よって、アース端子が簡素な構造で確実にアース接続部に電気接続できる。
上記(5)の構成のワイヤハーネスのアース接続構造では、アース端子が、接触部と、アース接続部を接触部に押し付けるバネと、アース接続部を係止するロック突起とを有する構造となる。よって、アース端子が簡素な構造で確実にアース接続部に電気接続できる。また、アース端子のアース接続部からの抜けを規制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤハーネスのコストアップを抑えつつ、アース接続の作業効率を向上させることができるワイヤハーネスのアース接続構造を提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1実施形態に係るアース接続構造が適用されたワイヤハーネス及びリーンホースを示す概略図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るアース接続構造を示すもので、図2(a)は図1のII−II線における接続前の断面図、図2(b)は図1のII−II線における接続後の断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体の裏面側の部分斜視図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け前の状態を示す表面側の部分斜視図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け後の状態を示す表面側の部分斜視図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係るアース接続構造のアースコネクタ及びアース線を示す斜視図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係るアース接続構造のアース端子を示す斜視図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係るアース接続構造を示すもので、図8(a)は接続前の断面図、図8(b)は接続後の断面図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係るアース接続構造のアースコネクタ及びアース線を示す斜視図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係るアース接続構造のアース端子を示す断面斜視図である。
【図11】図11は、第2実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け前の状態を示す表面側の部分斜視図である。
【図12】図12は、第2実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け途中の状態を示す表面側の部分斜視図である。
【図13】図13は、第2実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け後の状態を示す裏面側の部分斜視図である。
【図14】図14は、第2実施形態に係るアース接続構造のタブを示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態の例を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るワイヤハーネスのアース接続構造を説明する。
【0016】
図1は第1実施形態に係るアース接続構造が適用されたワイヤハーネス及びリーンホースを示す概略図、図2は第1実施形態に係るアース接続構造を示すもので、図2(a)は図1のII−II線における接続前の断面図、図2(b)は図1のII−II線における接続後の断面図、図3は第1実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体の裏面側の部分斜視図、図4は第1実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け前の状態を示す表面側の部分斜視図、図5は第1実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け後の状態を示す表面側の部分斜視図、図6は第1実施形態に係るアース接続構造のアースコネクタ及びアース線を示す斜視図、図7は第1実施形態に係るアース接続構造のアース端子を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、ワイヤハーネス11は、自動車のインストルメントパネル周りの計器等に接続される電線を有するもので、車体補強部材であるリーンホースRの長手方向に沿って配索されている。リーンホースRは、車幅方向に延在する導電性の鋼管からなるリーンホース本体13と、リーンホース本体13に固定された複数のブラケット14とから構成されている。ワイヤハーネス11は、発泡樹脂からなる発泡モールド体16で一体化されている。ワイヤハーネス11は、発泡モールド体16から引き出される枝線18を複数有しており、枝線18には、各種のコネクタ19が設けられている。これらのコネクタ19が、インストルメントパネル周りの計器等に接続される。発泡モールド体16は、リーンホースRに沿って延在する本体部21と、本体部21の表面側の複数箇所から突出するアース端子保持部22とを有している。
【0018】
図2(a)、図2(b)及び図3に示すように、ワイヤハーネス11は、幹線24と、幹線24に設けられる複数(図2(a)、図2(b)及び図3では一つのみ図示)のクランプ25とを有している。幹線24は発泡モールド体16の本体部21内に埋設され、クランプ25は発泡モールド体16の本体部21の裏面から突出している。ここで、幹線24は互いに束ねられる複数本のケーブル15から構成されている。発泡モールド体16は、ケーブル15がセットされた型内で複数の発泡ビーズを発泡させて一体化させた発泡スチロールからなる。この発泡モールド体16によってワイヤハーネス11を構成する複数本のケーブル15が束ねられた状態に一体化されてワイヤハーネス11となる。
【0019】
図2(a)、図2(b)及び図4に示すように、発泡モールド体16のアース端子保持部22には、上面から下方に凹む収容凹部28が形成されている。収容凹部28は本体部21の延在方向における位置を一つのクランプ25と一致させている。収容凹部28の本体部21に対し反対側の壁部には、収容凹部28よりも狭い幅で上面から下方に凹んで前後に貫通する配線用凹部29が、収容凹部28の中央位置に形成されている。
【0020】
図2(a)、図2(b)及び図3に示すように、発泡モールド体16の本体部21には、収容凹部28に連通し裏面に開口するブラケット挿入開口部30が形成されている。ブラケット挿入開口部30は、本体部21の延在方向における位置がクランプ25と一致されている。
【0021】
図5に示すように、発泡モールド体16の表面側の収容凹部28には、幹線24から分岐するアース線18aの端末のアースコネクタ19aが収容されることになる。その際に、配線用凹部29にはアース線18aが挿入される。ここで、アース線18aは、幹線24から引き出される枝線18の一種となっており、アースコネクタ19aはコネクタ19の一種となっている。アース線18aは、発泡モールド体16の収容凹部28と、本体部21の延在方向の位置を合わせて、本体部21の表面の収容凹部28の上方位置から延出している。そして、アース線18aは、収容凹部28の上方位置から延出し、下側にて折り返して配線用凹部29を通る状態となる。
【0022】
図6に示すように、アースコネクタ19aは、ハウジング33とアース端子34とから構成されている。ハウジング33は、合成樹脂製であり、基板部36と一対の延出板部37と側板部38と固定用突起39と一対の前板部40とを有している。基板部36は、長方形状をなしている。一対の延出板部37は、この基板部36の相反する縁部から同方向に互いに平行に延出する。側板部38は、基板部36及び一対の延出板部37の同側の縁部から内側に突出し、固定用突起39は、側板部38から延出する。一対の前板部40は一対の延出板部37の基板部36とは反対側において互いに近接する方向に突出する。一対の前板部40と側板部38との間にはそれぞれスリット41が形成されている。
【0023】
図7に示すように、アース端子34は、導電性の鋼板が折り曲げ加工されてなるもので、基板部44と一対の挟持板部45と電線接続舌片46とから構成されている。一対の挟持板部45は、この基板部44の縁部から同方向に延出する。ここで、一対の挟持板部45は、基板部44側から先端側にかけての形状が、基板部44から離れるほど互いに近接するように傾斜している。また、先端部の形状が、基板部44から離れるほど互いに離間するように傾斜している。電線接続舌片46は基板部44の中央から一対の挟持板部45とは反対側に切り起こされている。一対の挟持板部45の相互近接位置には、挟持板部45の延出方向に沿うインデント47が挟持板部45毎に複数形成されている。
【0024】
図6に示すように、アース端子34は、基板部44がハウジング33の基板部36と固定用突起39との間に圧入されることになる。この圧入状態で一対の挟持板部45がハウジング33の一対の延出板部37の内側でこれらに沿って延出する。また、圧入状態でハウジング33の基板部36から突出する電線接続舌片46にアース線18aの導体部分が溶接あるいは半田付け等で接続される。
【0025】
図2(a)、図2(b)に示すように、リーンホースRは、リーンホース本体13に、車体側金属部材である取付ブラケット14aが溶接により固定されている。この取付ブラケット14aは、ワイヤハーネス取り付け用のハーネス取付部である取付板部50と、ワイヤハーネス支持用の支持板部51と、アース接続部であるタブ52とを有している。取付板部50は、リーンホース本体13の裏面側に上端部が固定されており、下方に延出する。取付板部50には、クランプ25を嵌合させる取付穴53が貫通形成されている。支持板部51は、取付板部50からリーンホース本体13側に垂直に延出する。タブ52は支持板部51の先端からさらに同じ方向に延出する。この取付ブラケット14aは、ブラケット14の一種となっている。
【0026】
図2(a)に示すように、リーンホースRに取り付けられる前の状態で、ワイヤハーネス11は、そのアース線18aの端末のアースコネクタ19aがアース端子保持部22の収容凹部28に上部開口から挿入される。その際に、アース線18aは配線用凹部29内に配置される。このとき、アースコネクタ19aは、アース端子34の基板部44をブラケット挿入開口部30とは反対側にして挿入される。しかも、アースコネクタ19aは、アース端子34の一対の挟持板部45を上下に配置して挿入される。その結果、アース端子34は発泡モールド体16のブラケット挿入開口部30の方向に開口する状態となる。そして、収容凹部28内に配置されたアースコネクタ19aのアース端子34は、本体部21の延在方向における位置がクランプ25と一致されることになる。また、アース線18aのアース端子34への接続位置も、本体部21の延在方向における位置がクランプ25と一致されることになる。
【0027】
図2(b)に示すように、上記のようにしてアースコネクタ19aをアース端子保持部22に保持した状態のワイヤハーネス11が、車両の組み立てラインで車体のリーンホースRに取り付けられることになる。その際に、ワイヤハーネス11は、ブラケット挿入開口部30にリーンホースRの取付ブラケット14aのタブ52及び支持板部51を挿入しつつ裏面のクランプ25を取付ブラケット14aの支持板部51の取付穴53に嵌合させる。これにより、ワイヤハーネス11が取付ブラケット14aに固定される。この取付時に、ワイヤハーネス11は取付ブラケット14aの支持板部51及びタブ52に沿って移動することになる。よって、タブ52は、支持板部51へのワイヤハーネス11の取り付け方向に沿って逆向きに延出し、アース端子34は、この取り付け方向の前方に開口する姿勢でアース端子保持部22に保持されている。
【0028】
そして、クランプ25の支持板部51への取り付け直前に、取付ブラケット14aのタブ52がハウジング33のスリット41にくわえ込まれ、その後、アース端子34の一対の挟持板部45を相反方向に弾性変形させながらこれらの間に入り込むことになる。その際に、一対の挟持板部45は、バネ構造となっているため、タブ52に向けて弾性力を発生させる。よって、タブ52に接触する一対の挟持板部45のインデント47(図7参照)のエッジ部分がタブ52の表面に食い込んで酸化皮膜を削り、金属の新生面と接触する。このようにして、アース端子保持部22に保持されたアース端子34が、ワイヤハーネス11の取付板部50への取り付けによってタブ52にアース接続される。つまり、ワイヤハーネス11の取付板部50への固定との一括作業で、アース端子34がタブ52にアース接続される。なお、アースコネクタ19aはアース端子保持部22の収容凹部28に上下方向のガタつきをもって挿入されている。このため、アース端子34の一対の挟持板部45間へのタブ52のすくい込みがスムーズにできる。
【0029】
上記したワイヤハーネス11の取付板部50への取り付け時に、アース端子保持部22は、アース端子34から、ワイヤハーネス11の取付板部50への取り付け方向の後方にアース線18aを延出させてアース端子34を保持している。また、この取り付け時に、アース端子34は、アース端子保持部22に保持された状態で取り付け方向に基板部44が直交しており、一対の挟持板部45が基板部44の相反位置から、ワイヤハーネスの取付板部50への取り付け方向の前方に延出して相互間に挿入されたタブ52を挟持することになる。さらに、この取り付け時に、アース端子34とタブ52は同一直線上に位置することになり、この直線を含む鉛直面内にクランプ25の中心も含まれる。
【0030】
以上、説明したように、上記第1実施形態に係るワイヤハーネスのアース接続構造によれば、ワイヤハーネス11を発泡樹脂からなる発泡モールド体16で一体化し、この発泡モールド体16に一体に設けたアース端子保持部22にアース端子34を保持させたので、クランプをワイヤハーネスに取り付けてアース端子を保持させるものと比較して、煩雑なクランプの取付作業をなくしてワイヤハーネス11の製造コストを抑えることができる。
【0031】
また、発泡モールド体16は、発泡ビーズを発泡させたものであるので、一般的な樹脂モールドと比較して大幅な軽量化を図ることができる。
【0032】
この発泡樹脂からなる発泡モールド体16は、通常の樹脂モールドと比較してケーブル15との固着力が小さいため、成形後の冷却養生時に、ケーブル15と発泡モールド体16との熱膨張率の相違によるテンションの付与を極力抑えることができる。これにより、冷却養生時におけるテンションが付与されることによるケーブル15や発泡モールド体16への不具合をなくすことができる。
【0033】
また、冷却養生時におけるテンションが抑えられるので、ケーブル15の長手方向にわたって発泡モールド体16で一体化させることができる。
【0034】
また、冷却養生時におけるテンションを考慮する必要がないので、煩雑なケーブル15と発泡樹脂との相性の確認作業を不要とすることができ、製造の容易化を図ることができる。
【0035】
また、このワイヤハーネス11が取付ブラケット14aの取付板部50に取り付けられるとき、アース端子34は、ワイヤハーネス11を一体化している発泡モールド体16のアース端子保持部22に、ワイヤハーネス11の取り付け方向の前方に開口する姿勢で保持されている。よって、ワイヤハーネス11の取付板部50への取付時にアース端子34は、取付ブラケット14aからこの取り付け方向に沿って逆向きに延出するタブ52に接続されることになる。よって、車体組み立てラインにおいて、発泡モールド体16で一体化されたワイヤハーネス11にアース端子34を保持して取付ブラケット14aへ取り付ければ、アース接続も自動的にできることになる。このため、接続作業時の手間が少なくなり、アース接続の作業効率を向上させることができる。その結果、車体組み立てラインでの作業時間の短縮化が図れ、また、作業者の負担も軽減できる。
【0036】
また、アース端子34が発泡モールド体16に収容されるため、アース端子34へのタブ52の挿入に必要な挿入力が大きくなっても、発泡モールド体16の全体を押すことで取り付け作業が容易となる。よって、アース端子34へのタブ52の挿入に必要な挿入力が大きくなっても、作業性を損なわずにアース接続することができる。
【0037】
また、アース端子34は、取り付け方向の後方にアース線18aを延出させてアース端子保持部22に保持されることになる。このため、ワイヤハーネス11の取付板部50への取付時にアース線18aに剪断方向の力を受けることがなくなる。
【0038】
また、アース端子34が、基板部44と、基板部44の相反位置から延出する一対の挟持板部45とを有する構造となる。よって、アース端子34が簡素な構造で確実にタブ52に電気接続できる。
【0039】
また、タブ52にバネ力をもって接触する一対の挟持板部45にはインデント47が形成されている。このため、インデント47のエッジ部分がタブ52の表面に食い込んで酸化皮膜を削り、金属の新生面と接触する。したがって、電気的接触が安定する。
【0040】
なお、アース端子34へのタブ52の挿入に必要な挿入力が大きい場合に、アースコネクタ19aにLIF(Low Insertion Force)レバーを追加して低挿入力構造とし、タブ52にレバーの引っ掛け形状部を追加すれば、取り付け作業がさらに容易となる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るワイヤハーネスのアース接続構造を、第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。
【0042】
図8は第2実施形態に係るアース接続構造を示すもので、図8(a)は接続前の断面図、図8(b)は接続後の断面図、図9は第2実施形態に係るアース接続構造のアースコネクタ及びアース線を示す斜視図、図10は第2実施形態に係るアース接続構造のアース端子を示す断面斜視図、図11は第2実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け前の状態を示す表面側の部分斜視図、図12は第2実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け途中の状態を示す表面側の部分斜視図、図13は第2実施形態に係るアース接続構造の発泡モールド体へのアースコネクタの組み付け後の状態を示す裏面側の部分斜視図、図14は第2実施形態に係るアース接続構造のタブを示す部分斜視図である。
【0043】
図8(a)、図8(b)に示すように、第2実施形態では、第1実施形態とは異なるアースコネクタ61が用いられており、これに合わせて発泡モールド体16に第1実施形態とは異なるアース端子保持部62が形成されている。また、取付ブラケット14aは取付板部50の下端縁からタブ52がリーンホース本体13側に垂直に延出している。
【0044】
図9に示すように、アースコネクタ61は、ハウジング63とハウジング63内に配置されるアース端子64とから構成されている。ハウジング63は、合成樹脂製であり、長さ方向の一端に挿入口65が形成された本体部66を有している。本体部66の上面の幅方向の中央には上方に突出する立壁部67が形成されており、立壁部67の上端には幅方向両側に突出する一対のフランジ部68が形成されている。
【0045】
図8(a)、図8(b)に示すように、本体部66内には、長さ方向に沿って基板部70が形成されており、この基板部70の挿入口65側の下面にはレバー部71が形成されている。レバー部71は挿入口65から離れる方向に延出する片持ち形状となっており、その中間位置には上方に突出する作動片部72が形成されている。作動片部72は、基板部70に形成された通過穴73を通過して基板部70から上側に突出している。
【0046】
図10に示すように、アース端子64は、導電性の鋼板が折り曲げ加工されてなるもので、長さ方向の一側にタブ接続部76が、長さ方向の他側にアース線接続部77が形成されている。タブ接続部76は、底板部79と、底板部79の一側の縁部から立ち上がる側板部80と、底板部79の逆側の縁部から立ち上がる側板部81と、底板部79の上側のバネ板部82とを有している。
【0047】
側板部80には、アース線接続部77とは反対側に開口するスリット84がアース端子64の長さ方向に沿って形成されている。スリット84の開口端の上下には一対の面取り85が形成されている。側板部81は、その上縁部の上下方向位置及び前後方向位置をスリット84の下縁部と合わせている。側板部80のスリット84の下縁部がタブ52に接触する接触部86となり、側板部81の上縁部もタブ52に接触する接触部87となる。接触部87の先端は面取りされずエッジ88となっている。
【0048】
バネ板部82は前端部が側板部80の前端部に繋がっており、後方に片持ち状態で延出している。バネ板部82は、その中間板部91が底板部79に近接するように段状をなしており、端板部92が中間板部91から下方に延出している。バネ板部82の中間位置には下方に突出するロック突起93が形成されている。
【0049】
図8(a)、図8(b)に示すように、アース線接続部77には、アース線18aの導体部分が圧着される。アース線接続部77に圧着されたアース線18aはアース端子64からその長さ方向に沿って延出する。また、このときアース線18aは側板部80,81間の中央、つまり接触部86,87間の中央に位置する。このようにアース線接続部77にアース線18aを接続した状態のアース端子64がハウジング63内に嵌合される。この嵌合状態で、アース端子64のスリット84がハウジング63の挿入口65と位置を合わせることになる。また、この嵌合状態でハウジング63の作動片部72がアース端子64の端板部92と上下に対向する。
【0050】
図11及び図12に示すように、発泡モールド体16には、その本体部21の下部に切り欠き形状のアース端子保持部62が形成されている。このアース端子保持部62には、本体部21の表面側からアースコネクタ61が嵌合する。つまり、アース端子保持部62は、ハウジング63の本体部66を嵌合させる本体部嵌合部97と、立壁部67を嵌合させる立壁部嵌合部98と、一対のフランジ部68を嵌合させる一対のフランジ部嵌合部99とを有する。
【0051】
図13に示すように、ブラケット挿入開口部30は、アース端子保持部62の本体部嵌合部97の位置に形成されている。そして、ブラケット挿入開口部30は、アース端子保持部62に嵌合されたアースコネクタ61の挿入口65と位置を合わせる。
【0052】
図14に示すように、取付ブラケット14aのタブ52には、ロック穴100が上下方向に貫通して形成されている。
【0053】
図8(a)に示すように、リーンホースRに取り付けられる前の状態で、ワイヤハーネス11は、そのアース線18aの端末のアースコネクタ61がアース端子保持部62に本体部21の正面から圧入される。このとき、アースコネクタ61は、スリット84及び挿入口65を先頭にして圧入される。その結果、アースコネクタ61内のアース端子64は発泡モールド体16の裏面方向に開口する状態となり、スリット84をブラケット挿入開口部30と一致させる。なお、アースコネクタ61を圧入でアース端子保持部62に固定する以外に、ランス係止で固定しても良い。
【0054】
図8(b)に示すように、上記のようにして、アースコネクタ61をアース端子保持部62に保持した状態のワイヤハーネス11が、車両の組み立てラインで車体のリーンホースRに取り付けられることになる。その際に、ワイヤハーネス11は、ブラケット挿入開口部30及び挿入口65にリーンホースRの取付ブラケット14aのタブ52を挿入しつつ裏面のクランプ25を取付ブラケット14aの支持板部51の取付穴53に嵌合させる。これにより、ワイヤハーネス11が取付ブラケット14aに固定される。
【0055】
クランプ25の支持板部51への取り付け直前に、取付ブラケット14aのタブ52が、バネ板部82を接触部86,87から離間する方向に弾性変形させながらこれらの間に嵌り込むことになる。その際に、バネ板部82は、バネ構造となっているため、タブ52に向けて弾性力を発生させる。よって、タブ52に接触する接触部87のエッジ88がタブ52の表面に食い込んで酸化皮膜を削り、金属の新生面と接触する。このようにして、アース端子保持部62に保持されたアース端子64が、ワイヤハーネス11の取付板部50への取り付けによってタブ52にアース接続される。つまり、ワイヤハーネス11の取付板部50への固定との一括作業で、アース端子64がタブ52にアース接続される。タブ52がスリット84内の所定位置に達するとロック穴100にロック突起93が係合し、タブ52にアース端子64を含むアースコネクタ61が固定される。
【0056】
上記したワイヤハーネス11の取付板部50への取り付け時に、アース端子保持部62は、アース端子64から、ワイヤハーネス11の取付板部50への取り付け方向の後方にアース線18aを延出させてアース端子64を保持している。また、アース端子34は、アース端子保持部62に保持された状態で、ワイヤハーネス11の取付板部50への取り付け方向に接触部86,87が沿うことになる。そして、これら接触部86,87に沿うタブ52をバネ板部82が接触部86,87に押し付ける。つまり、バネ板部82と接触部86,87とがタブ52を挟持する。さらに、この取り付け時に、アース端子64とタブ52は同一直線上に位置することになり、この直線を含む鉛直面内にクランプ25の中心が含まれる。
【0057】
以上、説明したように、上記第2実施形態に係るワイヤハーネスのアース接続構造の場合も、ワイヤハーネス11を発泡樹脂からなる発泡モールド体16で一体化し、この発泡モールド体16に一体に設けたアース端子保持部62にアース端子64を保持させたので、クランプをワイヤハーネスに取り付けてアース端子を保持させるものと比較して、煩雑なクランプの取付作業をなくしてワイヤハーネス11の製造コストを抑えることができる。
【0058】
また、発泡モールド体16は、発泡ビーズを発泡させたものであるので、一般的な樹脂モールドと比較して大幅な軽量化を図ることができる。
【0059】
また、このワイヤハーネス11が取付ブラケット14aの取付板部50に取り付けられるとき、アース端子64は、ワイヤハーネス11を一体化している発泡モールド体16のアース端子保持部62に、ワイヤハーネス11の取り付け方向の前方に開口する姿勢で保持されている。よって、ワイヤハーネス11の取付板部50への取付時にアース端子64は、取付ブラケット14aからこの取り付け方向に沿って逆向きに延出するタブ52に接続されることになる。よって、車体組み立てラインにおいて、発泡モールド体16で一体化されたワイヤハーネス11にアース端子64を保持して取付ブラケット14aへ取り付ければ、アース接続も自動的にできることになる。このため、接続作業時の手間が少なくなり、アース接続の作業効率を向上させることができる。その結果、車体組み立てラインでの作業時間の短縮化が図れ、また、作業者の負担も軽減できる。
【0060】
また、アース端子64が、接触部86,87と、タブ52を接触部86,87に押し付けるバネ板部82と、タブ52を係止するロック突起93とを有する構造を有している。よって、アース端子64が簡素な構造で確実にタブ52に電気接続でき、また、アース端子64のタブ52からの抜けを規制できる。ここで、ロック状態から、レバー部71を上側に押す操作がなされると、作動片部72が端板部92に当接してこれを押し上げる。その結果、バネ板部82が変形してロック突起93がロック穴100から外れ、アースコネクタ61がアース端子保持部62から取り外し可能となる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、製造方法を含めて、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0062】
11 ワイヤハーネス
14a 取付ブラケット(車体側金属部材)
16 発泡モールド体
18a アース線
22,62 アース端子保持部
34,64 アース端子
44 基板部
45 挟持板部
50 取付板部(ハーネス取付部)
52 タブ(アース接続部)
82 バネ板部(バネ)
86,87 接触部
93 ロック突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のケーブルを束ねて一体化してなるワイヤハーネスから引き出されたアース線の端末に設けられたアース端子を車体側金属部材にアース接続させるアース接続構造であって、
前記車体側金属部材は、前記ワイヤハーネス取り付け用のハーネス取付部と、該ハーネス取付部への前記ワイヤハーネスの取り付け方向に沿って逆向きに延出するアース接続部とを有し、
前記ワイヤハーネスは、モールド体で一体化されると共に、前記アース端子を前記取り付け方向の前方に開口する姿勢で保持するアース端子保持部を前記モールド体に一体に有し、
前記アース端子保持部に保持された前記アース端子が、前記ワイヤハーネスの前記ハーネス取付部への取り付けによって前記アース接続部に接続されることを特徴とするワイヤハーネスのアース接続構造。
【請求項2】
前記モールド体は、発泡ビーズを発泡させてなる発泡モールド体であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスのアース接続構造。
【請求項3】
前記アース端子保持部は、前記アース端子から前記取り付け方向の後方に前記アース線を延出させて前記アース端子を保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネスのアース接続構造。
【請求項4】
前記アース端子は、前記アース端子保持部に保持された状態で前記取り付け方向に直交する基板部と、該基板部の相反位置から前記取り付け方向の前方に延出して相互間に挿入された前記アース接続部を挟持する一対の挟持板部とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のワイヤハーネスのアース接続構造。
【請求項5】
前記アース端子は、前記アース端子保持部に保持された状態で前記取り付け方向に沿う接触部と、該接触部に沿う前記アース接続部を前記接触部に押し付けるバネと、該バネから突出して前記アース接続部を係止するロック突起とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のワイヤハーネスのアース接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−131271(P2012−131271A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283318(P2010−283318)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】