説明

ワイヤハーネス及びワイヤハーネスの製造方法

【課題】電線束の断線を防止することが可能な技術を提供する。
【解決手段】電線束10の一方端部及び他方端部には、弱振動箇所に固定される第1圧着端子11及び強振動箇所に固定される第2圧着端子12がそれぞれ圧着される。第2圧着端子12は、電線束10における、電線被覆材で覆われていない剥き出しの他方端部の先端部分に対して圧着されるワイヤバレル121と、当該他方端部の他の部分に圧着されずに当該他の部分を取り囲むインシュレーションバレル122とを有する。断線防止部材13は、第1圧着端子11及び第2圧着端子12が取り付けられた電線束10において、第2圧着端子12の所定箇所から、第1圧着端子11及び第2圧着端子12が取り付けられていない部分の所定箇所までの被覆対象部分200を不織部材が覆った状態で当該不織部材がホットプレスされることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な構造のワイヤハーネスが提案されている。例えば特許文献1には、自動車で使用されるワイヤハーネスの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−285983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、複数の電線から成る電線束に圧着端子が圧着されている。圧着端子が、エンジン等の振動強度が大きい箇所に固定されると、電線束が断線することがある。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、電線束の断線を防止することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るワイヤハーネスは、第1箇所と、当該第1箇所よりも振動強度が大きい第2箇所とを接続するワイヤハーネスであって、電線束と、前記電線束の一方端部に圧着されるとともに、前記第1箇所に固定される第1圧着端子と、前記電線束の他方端部に圧着されるとともに、前記第2箇所に固定される第2圧着端子と、前記第1及び第2圧着端子が取り付けられた前記電線束において、前記第2圧着端子の所定箇所から、前記第1及び第2圧着端子が取り付けられていない部分の所定箇所までの被覆対象部分を覆う断線防止部材とを備え、前記第2圧着端子は、前記電線束における、電線被覆材で覆われていない剥き出しの前記他方端部の先端部分に対して圧着されるワイヤバレルと、当該他方端部の他の部分に圧着されずに当該他の部分を取り囲むインシュレーションバレルとを有し、前記断線防止部材は、不織部材が前記被覆対象部分を覆った状態でホットプレスされることによって形成されている。
【0007】
第2の態様に係るワイヤハーネスは、第1の態様に係るワイヤハーネスであって、前記電線束は、全領域が電線被覆材で覆われていない剥き出しの電線束、あるいは少なくとも前記他方端部において電線被覆材が剥ぎ取られている被覆材付電線束である。
【0008】
第3の態様に係るワイヤハーネスの製造方法は、第1箇所と、当該第1箇所よりも振動強度が大きい第2箇所とを接続し、電線束を有するワイヤハーネスの製造方法であって、(a)前記第1及び第2箇所にそれぞれ固定される第1及び第2圧着端子を、前記電線束の一方端部及び他方端部にそれぞれ圧着する工程を備え、前記第2圧着端子は、前記電線束における、電線被覆材で覆われていない剥き出しの前記他方端部の先端部分に対して圧着されるワイヤバレルと、当該他方端部の他の部分に圧着されずに当該他の部分を取り囲むインシュレーションバレルとを有し、(b)前記第1及び第2圧着端子が取り付けられた前記電線束において、前記第2圧着端子の所定箇所から、前記第1及び第2圧着端子が取り付けられていない部分の所定箇所までの被覆対象部分を不織部材で覆った状態で、当該不織部材をホットプレスすることによって、当該被覆対象部分を覆う断線防止部材を形成する工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0009】
第1乃至第3の態様によれば、第1及び第2圧着端子が取り付けられた電線束において、不織部材が、第2圧着端子の所定箇所から、第1及び第2圧着端子が取り付けられていない部分の所定箇所までの被覆対象部分を覆った状態でホットプレスされることによって断線防止部材が当該被覆対象部分を覆うように形成されるため、断線防止部材を当該被覆対象部分に密着させることができる。これにより、第2圧着端子のインシュレーションバレルと電線束との間の位置関係が変化することを抑制することができ、第2圧着端子のインシュレーションバレルと電線束とが干渉することを抑制することができる。その結果、電線束が断線することを防止することができる。
【0010】
さらに、断線防止部材が被覆対象部分と密着することから、電線束における、第1及び第2圧着端子が取り付けられていない部分において振動負荷が集中する箇所を、第2圧着端子との境界部分よりも、振動強度が大きい第2箇所から離れている、断線防止部材との境界部分とすることができる。よって、振動負荷か集中する箇所での振動強度を低減することができる。その結果、電線束が断線することをさらに防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ワイヤハーネスの構造を示す図である。
【図2】ワイヤハーネスの構造を示す図である。
【図3】ワイヤハーネスの構造を示す図である。
【図4】ワイヤハーネスにおける第2圧着端子側の端部を拡大して示す平面図である。
【図5】ワイヤハーネスにおける第2圧着端子側の端部を拡大して示す側面図である。
【図6】ワイヤハーネスの第2圧着端子の断面構造を示す図である。
【図7】比較対象ワイヤハーネスの構造を示す図である。
【図8】比較対象ワイヤハーネスにおける第2圧着端子側の端部を拡大して示す側面図である。
【図9】比較対象ワイヤハーネスの第2圧着端子の断面構造を示す図である。
【図10】ワイヤハーネスの変形例の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜3は実施の形態に係るワイヤハーネス1の構造を示す図である。本実施の形態に係るワイヤハーネス1は、例えば、自動車等の車両で使用される、電気機器を接地するためのアースケーブルである。図1〜3では、互いに異なった方向から見た際の、車両に固定されたワイヤハーネス1が示されている。図1〜3のそれぞれには、どの方向から見た際のワイヤハーネス1が示されているかを容易に理解できるようにXYZ座標系が示されている。
【0013】
本実施の形態に係るワイヤハーネス1では、一端が、接地対象の電気機器、例えばエンジンに固定され、他端が車両のボディー(車体)に固定される。自動車等の車両においては、エンジンは大きく振動し、ボディーはほとんど振動しないことから、ワイヤハーネス1では、一端が比較的振動強度が大きい箇所(以後、「強振動箇所」と呼ぶ)に固定され、他端が比較的振動強度が小さい箇所(以後、「弱振動箇所」と呼ぶ)に固定される。
【0014】
図1〜3に示されるように、本実施の形態に係るワイヤハーネス1は、複数の電線100(後述の図4,5参照)から成る電線束10と、電線束10の一方端部に圧着された第1圧着端子11と、電線束10の他方端部に圧着された第2圧着端子12と、電線束10が断線することを防止するための断線防止部材13とを備えている。第1圧着端子11は車両のボディー(弱振動箇所)に固定され、第2圧着端子12はエンジン(強振動箇所)に固定される。
【0015】
電線束10は、例えば、全領域が電線被覆材で覆われていない剥き出しの電線束である。つまり、本実施の形態に係る電線束10は、電線被覆材で覆われた被覆材付電線束のすべての電線被覆材を剥ぎ取ることによって得られる。
【0016】
第1圧着端子11及び第2圧着端子12のそれぞれは、例えば丸形端子であって、接続対象箇所にボルト等で固定される固定部と、電線束10の端部に圧着される圧着部とを備えている。図4は、ワイヤハーネス1における第2圧着端子12側の端部を拡大して示す平面図であって、図5は当該端部を拡大して示す側面図である。図4,5では、断線防止部材13の外形の概略を二点鎖線で示している。
【0017】
図4,5に示されるように、第2圧着端子12の固定部120には、ボルトが挿入されるボルト穴120aと、回り止め用の突起部120bとが設けられている。第2圧着端子12の圧着部123は、ワイヤバレル121とインシュレーションバレル122とで構成されている。
【0018】
ワイヤバレル121は、被覆材付電線束のうち、電線被覆材が剥ぎ取られた、剥き出しの部分に圧着されるように設計されている。一方で、インシュレーションバレル122は、被覆材付電線束のうち、電線被覆材で覆われている部分に圧着されるように設計されている。被覆材付電線束が第2圧着端子12に圧着される場合には、通常、ワイヤバレル121に圧着される、被覆材付電線束の先端部分のみにおいて電線被覆材が剥ぎ取られる。したがって、ワイヤバレル121は、被覆材付電線束における剥き出しの電線束に圧着され、インシュレーションバレル122は被覆材付電線束の電線被覆材に圧着される。
【0019】
このように、ワイヤバレル121は、被覆材付電線束のうち、電線被覆材が剥ぎ取られた、剥き出しの部分に圧着されるように設計されており、インシュレーションバレル122は、被覆材付電線束のうち、電線被覆材で覆われている部分に圧着されるように設計されていることから、略筒状のインシュレーションバレル122の内径は、略筒状のワイヤバレル121の内径よりも大きくなっている。
【0020】
本実施の形態では、全領域が電線被覆材で覆われていない電線束10の端部が第2圧着端子12に圧着されることから、ワイヤバレル121では、電線束10が適切に圧着されるものの、ワイヤバレル121よりも内径が大きいインシュレーションバレル122では、電線束10との間に隙間が発生し、電線束10に圧着されないようになる。図6は、電線束10が圧着された第2圧着端子12でのインシュレーションバレル122の断面構造を示す図である。図6に示されるように、被覆材付電線束のうち、電線被覆材で覆われている部分に圧着されるように設計されたインシュレーションバレル122と、それによって取り囲まれている、電線被覆材で覆われていない電線束10との間に隙間が発生しており、インシュレーションバレル122は電線束10に圧着されていない。
【0021】
第1圧着端子11は、第2圧着端子12と同様の構造を有しており、第1圧着端子11の固定部110には、ボルトが挿入されるボルト穴110aと、回り止め用の突起部110bが設けられている。第1圧着端子11の圧着部113は、ワイヤバレル111とインシュレーションバレル112とで構成されている。ワイヤバレル111は、被覆材付電線束のうち、電線被覆材が剥ぎ取られた、剥き出しの部分に圧着されるように設計されており、インシュレーションバレル112は、被覆材付電線束のうち、電線被覆材で覆われている部分に圧着されるように設計されている。そして、ワイヤバレル111では、電線束10が適切に圧着されるものの、インシュレーションバレル112では、電線束10に圧着されずに、電線束10を取り囲むようになっている。
【0022】
なお、図5では、固定部120は圧着部123からまっすぐ延びているように示されているが、実際には、図2,3に示されるように、固定部120は、エンジンに固定し易いように、圧着部123から少し曲がって延びている。同様に、第1圧着端子11では、固定部110は、ボディーに固定し易いように、圧着部113から少し曲がって延びている。
【0023】
断線防止部材13は、第1圧着端子11及び第2圧着端子12が取り付けられた電線束10において、第2圧着端子12の所定箇所から、第1圧着端子11及び第2圧着端子12が取り付けられていない部分(以後、「端子未接続部分10a」と呼ぶ)の所定箇所までの被覆対象部分200の周囲を覆っている。本実施の形態では、被覆対象部分200は、例えば、第2圧着端子12のワイヤバレル121における、固定部120側端の近傍から、電線束10の端子未接続部分10aのうちの、第2圧着端子12との境界から約3分の1までとなっている。なお、図1〜3では、断線防止部材13と、第1圧着端子11及び第2圧着端子12が圧着された電線束10との位置関係が理解し易いように、断線防止部材13に斜線を示すとともに、当該電線束10のうち、断線防止部材13で覆われている部分を実線で示している。
【0024】
断線防止部材13は、不織部材(例えば不織布)が被覆対象部分200の周囲をそれに接触しつつ覆った状態でホットプレスされることによって形成されている。この不織部材としては、加熱工程を経ることにより硬くなることが可能な不織部材を用いることができる。このような不織部材として、基本繊維と、これと絡み合う接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、110℃〜115℃)を有する樹脂である。不織部材を基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱すると、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染みこむ。その後、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織部材が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持される。
【0025】
基本繊維は、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得る繊維であればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。また、芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0026】
基本繊維と接着樹脂の組み合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ250℃であり、接着樹脂の融点は110℃〜150℃である。このため、不織部材を110℃〜250℃の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織部材が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、不織部材は硬くなって加熱時の成形形状を維持する。
【0027】
また、ホットプレスとは、加工対象物である不織部材を金型間に挟込み、加熱状態で金型に圧を加えて不織部材を成型加工することをいう。
【0028】
不織部材によって被覆対象部分200の周囲を覆う方法としては、例えば、幅の狭い帯状かつシート状の不織部材を、被覆対象部分200に対して、一部重ねながら螺旋状に巻き付ける方法を採用しても良い。あるいは、被覆対象部分200の長さと同じ幅を有する帯状かつシート状の不織部材を、被覆対象部分200に対して、幅方向の両端が揃うように複数回巻き付ける方法を採用しても良い。
【0029】
第1圧着端子11及び第2圧着端子12を電線束10の一方端部及び他方端部にそれぞれ圧着し、その後、被覆対象部分200に不織部材を巻き付けた状態で当該不織部材をホットプレスすることによって、被覆対象部分200の周囲を覆う断線防止部材13を形成することができる。
【0030】
なお、ホットプレスの際に使用する金型の形状は、車両に固定後(配線後)のワイヤハーネス1の形状に合わせても良いし、合わせなくても良い。前者の場合には、ホットプレスが完了すると同時に、断線防止部材13の形状が、車両に固定後のワイヤハーネス1の形状に合うように成形される。一方で、後者の場合には、ホットプレスが完了し、不織部材が硬くなる前に、車両に固定後のワイヤハーネス1の形状に合うように断線防止部材13の形状を成形することになる。
【0031】
次に断線防止部材13によって電線束10の断線を防止できる理由について説明する。以下では、図7に示されるワイヤハーネス500と本実施の形態に係るワイヤハーネス1とを比較しながら、断線防止部材13によって電線束10の断線を防止できる理由について説明する。以後、ワイヤハーネス500を「比較対象ワイヤハーネス500」と呼ぶ。
【0032】
図7に示されるように、比較対象ワイヤハーネス500は、被覆材付電線束510と、当該被覆材付電線束510の一方端部に圧着された上述の第1圧着端子11と、当該被覆材付電線束510の他方端部に圧着された上述の第2圧着端子12とを備えている。以後、被覆材付電線束510における、第1圧着端子11及び第2圧着端子12が取り付けられていない部分を「端子未接続部分510a」と呼ぶ。
【0033】
被覆材付電線束510の一方端部の先端部分では電線被覆材が剥ぎ取られており、当該先端部分に第1圧着端子11のワイヤバレル111が圧着されている。そして、第1圧着端子11のインシュレーションバレル112は、被覆材付電線束510の一方端部のうちの先端部分を除く部分、つまり被覆材付電線束510の一方端部のうちの電線被覆材で覆われた部分に圧着されている。
【0034】
同様に、被覆材付電線束510の他方端部の先端部分では電線被覆材が剥ぎ取られており、当該先端部分と第2圧着端子12のワイヤバレル121が圧着されている。そして、第2圧着端子12のインシュレーションバレル122は、被覆材付電線束510の他方端部のうちの先端部分を除く部分、つまり被覆材付電線束510の他方端部のうちの電線被覆材で覆われた部分に圧着されている。第1圧着端子11は車両のボディ(弱振動箇所)に固定され、第2圧着端子12はエンジン(強振動箇所)に固定される。
【0035】
このような比較対象ワイヤハーネス500では、第2圧着端子12が強振動箇所に固定されることから、被覆材付電線束510の端子未接続部分510aにおける、第2圧着端子12との境界部分600に振動負荷が集中するようになる。よって、被覆材付電線束510が当該境界部分600で断線することがある。
【0036】
そこで、被覆材付電線束510の電線被覆材を、少なくとも、第2圧着端子12のインシュレーションバレル122が圧着する部分まで剥ぎ取り、本実施の形態に係るワイヤハーネス1のように、インシュレーションバレル122が、被覆材付電線束510に圧着しないようにすることによって(上述の図6参照)、上記の境界部分600に振動負荷が集中することを抑制することができる。この場合には、第2圧着端子12は、電線被覆材に圧着されることになく、剥き出しの電線束に対してだけ圧着されることになる。以後、被覆材付電線束510のうち、電線被覆材が剥ぎ取られた部分を「剥き出しの電線束510b」と呼ぶ。
【0037】
このように、被覆材付電線束510の電線被覆材を、少なくとも、第2圧着端子12のインシュレーションバレル122が圧着する部分まで剥ぎ取った場合には、インシュレーションバレル122と、剥き出し電線束510bとの間に隙間が生じることから、強振動箇所に固定された第2圧着端子12が振動することによって、第2圧着端子12と剥き出し電線束510bとが干渉する(当たる)ようになる。したがって、上記の境界部分600に振動負荷が集中することは抑制できるものの、この干渉により被覆材付電線束510が断線する可能性がある。
【0038】
このような問題を解決するために、図8に示されるように、第2圧着端子12の所定箇所から、端子未接続部分510aの所定箇所までを熱収縮チューブ600で覆い、当該熱収縮チューブ600を加熱して熱収縮させることによって、第2圧着端子12と剥き出し電線束510bとの間の位置関係が変化することを抑制し、これによって、第2圧着端子12と剥き出しの電線束510bとが干渉することを抑制することが考えられる。図8では、熱収縮後の熱収縮チューブ600が二点鎖線で示されている。また、図9は、図8に示されるインシュレーションバレル122の断面構造を示す図である。図9では、熱収縮前の熱収縮チューブ600の形状が実線で示されている。また図9では、熱収縮後の熱収縮チューブ600のうち、端子未接続部分510aを取り囲む部分の形状が波線で示されている。
【0039】
このように、熱収縮チューブ600を使用することによって、第2圧着端子12と剥き出し電線束510bとの間の位置関係が変化することをある程度抑制することができる。しかしながら、第2圧着端子12のインシュレーションバレル122の外径と、剥き出し電線束510bの外径との差に起因して、図8,9に示されるように、熱収縮チューブ600と剥き出し電線束510bとの間にはどうしても隙間700が生じてしまう。そのため、熱収縮チューブ600を使用したとしても、第2圧着端子12と剥き出し電線束510bとの間の位置関係が変化してしまい、第2圧着端子12と剥き出し電線束510bとが干渉してしまう。その結果、熱収縮チューブ600を使用したとしても、被覆材付電線束510が断線する可能性がある。
【0040】
これに対して、本実施の形態に係るワイヤハーネス1では、第1圧着端子11及び第2圧着端子12が圧着された電線束10において、不織部材が、第2圧着端子12の所定箇所から電線束10の端子未接続部分10aの所定箇所までの被覆対象部分200を覆った状態でホットプレスされることによって断線防止部材13が当該被覆対象部分200を覆うように形成されるため、断線防止部材13を当該被覆対象部分200に密着させることができる。これにより、第2圧着端子12と電線束10との間の位置関係が変化することを抑制することができ、第2圧着端子12と電線束10とが干渉することを抑制することができる。その結果、電線束10が断線することを防止することができる。
【0041】
さらに、断線防止部材13が被覆対象部分200と密着することから、端子未接続部分10aにおいて振動負荷が集中する箇所を、第2圧着端子12との境界部分(比較対象ワイヤハーネス500での境界部分600に相当する部分)ではなく、それよりも強振動箇所(エンジン)から離れている、断線防止部材13との境界部分300(図2参照)にすることができる。よって、振動負荷か集中する箇所での振動強度を低減することができる。その結果、電線束10が断線することをさらに防止することができる。
【0042】
なお、電線束10の端子未接続部分10aにおける、第1圧着端子11との境界部分に振動負荷が集中すると、電線束10は断線し易い。このことを考慮すると、断線防止部材13の第1圧着端子11側の一端が強振動箇所から離れるほど振動負荷が集中する箇所での振動強度を低減することができるものの、断線防止部材13の第1圧着端子11側の一端は、端子未接続部分10aにおける、第1圧着端子11との境界部分まで延びない方が好ましい。なお、図10は、断線防止部材13の第1圧着端子11側の一端を、端子未接続部分10aにおける、第1圧着端子11との境界部分まで延ばした様子を示す図である。
【0043】
また、本実施の形態では、電線束10として、被覆材付電線束の全領域の電線被覆材を剥ぎ取って得られる、全領域が電線被覆材で覆われていない電線束を使用したが、少なくとも、第2圧着端子12が取り付けられる端部の全領域において電線被覆材が剥ぎ取られている被覆材付電線束を使用しても良い。つまり、電線束10については、強振動箇所(エンジン)に固定される第2圧着端子12の圧着部123(ワイヤバレル121及びインシュレーションバレル122)が取り付けられる端部において電線被覆材が剥ぎ取られていれば、その他の部分においては電線被覆材が剥ぎ取られていても、剥ぎ取られていなくても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 ワイヤハーネス
10 電線束
10a 端子未接続部分
11 第1圧着端子
12 第2圧着端子
13 断線防止部材
121 ワイヤバレル
122 インシュレーションバレル
200 被覆対象部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1箇所と、当該第1箇所よりも振動強度が大きい第2箇所とを接続するワイヤハーネスであって、
電線束と、
前記電線束の一方端部に圧着されるとともに、前記第1箇所に固定される第1圧着端子と、
前記電線束の他方端部に圧着されるとともに、前記第2箇所に固定される第2圧着端子と、
前記第1及び第2圧着端子が取り付けられた前記電線束において、前記第2圧着端子の所定箇所から、前記第1及び第2圧着端子が取り付けられていない部分の所定箇所までの被覆対象部分を覆う断線防止部材と
を備え、
前記第2圧着端子は、前記電線束における、電線被覆材で覆われていない剥き出しの前記他方端部の先端部分に対して圧着されるワイヤバレルと、当該他方端部の他の部分に圧着されずに当該他の部分を取り囲むインシュレーションバレルとを有し、
前記断線防止部材は、不織部材が前記被覆対象部分を覆った状態でホットプレスされることによって形成されている、ワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスであって、
前記電線束は、全領域が電線被覆材で覆われていない剥き出しの電線束、あるいは少なくとも前記他方端部において電線被覆材が剥ぎ取られている被覆材付電線束である、ワイヤハーネス。
【請求項3】
第1箇所と、当該第1箇所よりも振動強度が大きい第2箇所とを接続し、電線束を有するワイヤハーネスの製造方法であって、
(a)前記第1及び第2箇所にそれぞれ固定される第1及び第2圧着端子を、前記電線束の一方端部及び他方端部にそれぞれ圧着する工程を備え、
前記第2圧着端子は、前記電線束における、電線被覆材で覆われていない剥き出しの前記他方端部の先端部分に対して圧着されるワイヤバレルと、当該他方端部の他の部分に圧着されずに当該他の部分を取り囲むインシュレーションバレルとを有し、
(b)前記第1及び第2圧着端子が取り付けられた前記電線束において、前記第2圧着端子の所定箇所から、前記第1及び第2圧着端子が取り付けられていない部分の所定箇所までの被覆対象部分を不織部材で覆った状態で、当該不織部材をホットプレスすることによって、当該被覆対象部分を覆う断線防止部材を形成する工程をさらに備える、ワイヤハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−8517(P2013−8517A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139499(P2011−139499)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】