説明

ワイヤボンディング方法およびワイヤボンディング装置

【課題】上面にカバーガラスが直接貼り付けられた半導体素子の電極パッド上の第1ボンディング位置をカバーガラスに近づけることが可能となり、半導体素子の小型化を図ることができるワイヤボンディング方法を提供する。
【解決手段】ホーン32の先端に形成されたモータの回転子36が一体に設けられた回転軸33の一端に、側部を一部除去したキャピラリ31を取り付け、その除去された部分をカバーガラス側に向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング方法およびワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、ボウ・ティー・アイ・キャピラリのキャピラリ面の縦軸方向がリードの長軸方向に沿うようにキャピラリを回転させるワイヤボンディング装置が開示されている。具体的には、このワイヤボンディング装置は、キャピラリを選定的にロックするロック機構を備えたキャピラリ取付け用レセプタクルをホーンに設けるとともに、電気モータによって回転するドライブシャフトに従って回転する第2の回転要素に嵌合する第1の回転要素をキャピラリに設け、電気モータの動作時に自動的にロック機構がアンロックされるようにコンピュータ制御を通して同期化した構成であり、ロック機構をロックした状態で半導体素子上の電極パッドに第1ボンドを行った後、ロック機構をアンロックすると同時に電気モータを動作させて、キャピラリ面の縦軸方向がリードの長軸方向に沿うようにキャピラリを回転させ、再度ロック機構をロックして、リードに第2ボンドを行う。
【0003】
また、例えば特許文献2には、ボンディング面に対してボールを形成する第1ボンド時にはキャピラリを垂直状態に支持し、ワイヤを圧着する第2ボンド時には、ワイヤの張設方向に対して後傾するようにキャピラリを傾斜状態に支持するワイヤボンディング方法が開示されている。この方法によれば、第1ボンドではキャピラリを垂直状態に支持することでボンディングの接着強度を安定させ、第2ボンドではキャピラリを傾斜させることによりボンディング面に対してワイヤをしっかりとキャピラリにて押さえつけることでボンディングの接着強度を安定させることができる。
【0004】
一方、近年、カメラモジュールに搭載する光デバイスである半導体装置の小型化・薄型化の要求から、CCDチップやCMOSチップ等の半導体素子(光学素子)の画素領域を保護するカバーガラスを、半導体素子の上面に直接貼り付けた半導体装置が登場してきている。この半導体装置においては、半導体素子の小型化の要求から、カバーガラスの端部と電極パッド上のボンディング位置との間の距離を限界まで縮めることが求められている。しかしながら、この半導体装置においては、ワイヤボンディングの際に、キャピラリがカバーガラスに干渉して接続不良が発生することを防ぐ必要があり、従来のワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法では、上記した限界の距離はキャピラリの下部の形状によって決まるため、半導体素子の小型化を図れないという問題があった。
【0005】
すなわち、従来は、半導体素子の上に別の物体、例えばスタック型のパッケージで別の半導体素子が存在することはあっても、厚さとサイズとの関係で、それがワイヤの接続に影響を及ぼすことはないので、キャピラリと他の物体との干渉を考慮する必要がなかった。そのため、従来のワイヤボンディング装置およびワイヤボンディング方法では、電極パッドへの第1ボンド時に、下部が円錐状(ボウ・ティー・アイ・キャピラリも略円錐状である。)のキャピラリを垂直状態に支持して第1ボンドを行うため、カバーガラスの端部と電極パッド上のボンディング位置との間の距離の限界が、キャピラリの下部の形状(円錐形状)により決まり、その限界を超えては、カバーガラスの端部と電極パッド上のボンディング位置との間の距離を縮めることができない。
【0006】
図6、7にカメラモジュールに搭載する光デバイスである半導体装置を示す。図6、図7は、それぞれ半導体装置の製造途中のワイヤボンディング工程前の斜視図、断面図である。
【0007】
図6、図7に示すように、半導体装置11は、上部が開放した容器型のセラミックパッケージ(支持体)12を有する。セラミックパッケージ12は、側壁13のうち対向する一対の側壁13が底部から突出し、他の対向する一対の側壁13が、底部より一段高い段部14から突出している。また、底部の上面(内面)は平坦であり、ダイパッド15となっている。また、ダイパッド15の両側の段部14の上面も平坦であり、それぞれ複数のリード(電極)16が等ピッチで列状に設けられている。リード16には、ワイヤボンディングの第2ボンドが行われる。また、セラミックパッケージ12の裏面には、複数の外部端子17が等ピッチで設けられている。
【0008】
セラミックパッケージ12は、素材の層を複数積み重ねて焼結することで作製される。リード16や外部端子17は、素材の層に金属ペーストが印刷されて形成されており、リード16と外部端子17とは、側面(側壁13の外面)を通して電気的に接続されている。
【0009】
以上のような構成のセラミックパッケージ12のダイパッド15に、接着ペースト18によりCCDチップやCMOSチップ等の半導体素子(光学素子)19が接着されている。半導体素子19の形状は直方体であり、上面の中央部が画素領域となっている。また、半導体素子19の上面の対向する一対の辺の近くには、それぞれワイヤボンディングの第1ボンドが行われる複数の電極パッド20が列状に設けられている。
【0010】
さらに、半導体素子19の上面には、光透過性の蓋体であるカバーガラス21が接着剤22により直接貼り付けられている。このカバーガラス21は、半導体素子19の保護、および、半導体素子19に設けられた画素領域に対して光を透過させる役割を持っている。このようにカバーガラス21を半導体素子19上に直接貼り付けることで、半導体装置の薄型化を図ることができる。カバーガラス21の外形サイズ(面積)は、半導体素子19の外形サイズより一回り小さいものの、半導体素子19の中央部に設けられた画素領域を最大限に大きくできるよう、端部が電極パッド20に近付いている。
【0011】
続いて、図8を用いて、従来のワイヤボンディング装置のヘッド部分に関して説明する。図8は、従来のワイヤボンディング装置のヘッド部分の斜視図である。ヘッド部分は、ワイヤボンディング装置のXYテーブル(図示せず)に載っており、XYテーブルによりキャピラリ23が第1、第2ボンディング位置へ移動される。
【0012】
キャピラリ23に超音波振動を伝えるホーン24は、その先端が、ねじ25によりキャピラリ23を取り付ける構造となっており、ボンディングする際に上下方向に駆動して、キャピラリ23を第1、第2ボンディング面(電極パッド20、リード16)に押し付ける荷重を負荷する。
【0013】
キャピラリ23は、中心軸に対して回転対称な筒形状をしており、その中にワイヤ26が通されている。また、キャピラリ23の上部23aは円柱状、下部23bは円錐状をしており、下部23bの先端面(キャピラリ面)は、円形状をしている。
【0014】
ワイヤクランパ27は、ホーン24の上部にキャピラリ23と一体的に動作するよう設けられており、開閉によりワイヤ26のキャピラリ23に対する相対移動の可否を制御する。また、トーチ電極28は、キャピラリ23の周辺部に設けられており、イニシャルボール29を形成するために、キャピラリ23の先端から出ているワイヤ26の先端に放電を行う。
【0015】
続いて、図9を用いて、図6、7に示す半導体装置(光デバイス)に対する従来のワイヤボンディング方法について説明する。図9(a)はパッド接続前のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図9(b)はパッド接続時(第1ボンド時)のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図9(c)はパッド接続後のキャピラリの最上点での状態を表す工程図、図9(d)はリード接続時(第2ボンド時)のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図9(e)はリード接続後のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図である。この図9では、ヘッド部分のうち、キャピラリ23とワイヤクランパ27のみを示す。また、図9に示す方向は、ワイヤクランパ27を横から見る方向であり、その開閉を図示できない方向であるが、説明のために開閉を示している。ワイヤボンディングは、上面にカバーガラス21が直接貼り付けられた半導体素子19が実装されたセラミックパッケージ12を、ワイヤボンディング装置上で押圧して固定するとともに加熱した状態で行う。
【0016】
まず、図9(a)に示すように、ワイヤクランパ27が閉じた状態で、キャピラリ23の先端から出ているワイヤ26の先端に、トーチ電極28からの放電によりイニシャルボール29を形成する。
【0017】
次に、図9(b)に示すように、ワイヤクランパ27を開き、イニシャルボール29を半導体素子19の電極パッド(第1ボンディング面)20に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ26の一端を電極パッド20に接合する第1ボンドを行う。このときのキャピラリ23の姿勢は、ほぼ垂直となっている。
【0018】
その後、図9(c)、(d)に示すように、キャピラリ23はワイヤ26を繰り出しながら設定した経路を上昇し、最上点まで達した後、ワイヤ26の他端の接続先であるリード16へ向けて円弧状の下降動作を行うことでループを形成する。その後、ワイヤ26の他端を、セラミックパッケージ12の内面に形成されているリード(第2ボンディング面)16に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ26の他端をリード16に接合する第2ボンドを行う。このときのキャピラリ23の姿勢もほぼ垂直となっている。
【0019】
その後、図9(e)に示すように、キャピラリ23は上昇し、その途中からワイヤクランパ27を閉じることで、ワイヤ26のキャピラリ23に対する相対移動を不可として、ワイヤ26を引きちぎる。これにより、最初と同じ、キャピラリ23の先端からワイヤ26の先端が出た状態となる。そして、再度、イニシャルボール29を形成し、以上説明した方法で半導体素子19の次の電極パッド20とセラミックパッケージ12の次のリード16とを接続する。以上の動作を所定のワイヤ本数分繰返して、ワイヤボンディング工程を終了する。
【0020】
以上のように、従来のワイヤボンディング方法およびワイヤボンディング装置では、上面にカバーガラスが直接貼り付けられた半導体素子上の電極パッドに第1ボンドを行う際に、キャピラリの姿勢を電極パッド(第1ボンディング面)に対して垂直にするため、上述したように、カバーガラス21の端部と電極パッド20上のボンディング位置との間の距離を縮めることができず、半導体素子の小型化を図ることができなかった。
【特許文献1】特開平10−256295号公報
【特許文献2】実公平6−25009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記問題点に鑑み、上面にカバーガラスが直接貼り付けられたCCDチップ等の半導体素子上の電極パッドに第1ボンドを行う際に、障害物であるカバーガラスの端面に対向するキャピラリの側面が、略平坦な電極パッド(第1ボンディング面)に対して、その障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるようにキャピラリを支持することにより、半導体素子の小型化を図ることができるワイヤボンディング方法およびワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の請求項1記載のワイヤボンディング方法は、第1ボンドに際し、第1ボンディング位置の近傍に存在する第1の障害物の端面に対向するキャピラリの側面が、第1ボンディング面に対して、前記第1の障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるようにキャピラリを支持することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項2記載のワイヤボンディング方法は、請求項1記載のワイヤボンディング方法であって、第1ボンドに際し、側部の一部が除去されたキャピラリのその除去された部分の面が前記第1の障害物の端面に対向するようにキャピラリを回転させるか、または、キャピラリの上部が前記第1の障害物から遠ざかるようにキャピラリを傾斜させて、キャピラリの側面が前記第1ボンディング面に対して所定の角度となるようにすることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項3記載のワイヤボンディング方法は、請求項2記載のワイヤボンディング方法であって、さらに、第2ボンドに際し、第2ボンディング位置の近傍に存在する第2の障害物の端面に対向するキャピラリの側面が、第2ボンディング面に対して、前記第2の障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるようにキャピラリを支持することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項4記載のワイヤボンディング方法は、請求項3記載のワイヤボンディング方法であって、第2ボンドに際し、側部の一部が除去されたキャピラリのその除去された部分の面が前記第2の障害物の端面に対向するようにキャピラリを回転させるか、または、キャピラリの上部が前記第2の障害物から遠ざかるようにキャピラリを傾斜させて、キャピラリの側面が前記第2ボンディング面に対して所定の角度となるようにすることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項5記載のワイヤボンディング装置は、キャピラリと、前記キャピラリに超音波振動を伝えるホーンと、ボンディング位置の近傍に存在する障害物の端面に対向する前記キャピラリの側面が、ボンディング面に対して、前記障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるように前記キャピラリを支持する機構と、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項6記載のワイヤボンディング装置は、請求項5記載のワイヤボンディング装置であって、前記キャピラリはその側部の一部が除去された形状を有し、前記キャピラリを支持する機構として、前記キャピラリの除去された部分の面が前記障害物の端面に対向するようにキャピラリを回転させる回転機構を備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項7記載のワイヤボンディング装置は、請求項6記載のワイヤボンディング装置であって、前記回転機構は、前記ホーンに固定されたモータの固定子と、一端に前記キャピラリの取り付け部が設けられて前記固定子に対して回転するモータの回転子と、前記回転子の回転位相を検出する位相検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項8記載のワイヤボンディング装置は、請求項5記載のワイヤボンディング装置であって、前記キャピラリを支持する機構として、前記キャピラリの上部が前記障害物から遠ざかるように前記キャピラリを傾斜させる傾斜機構を備えることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項9記載のワイヤボンディング装置は、請求項8記載のワイヤボンディング装置であって、前記傾斜機構は、モータと、前記モータの駆動軸に固定された第1歯車と、一端に前記キャピラリの取り付け部が設けられた揺動体と、前記揺動体に固定された第2歯車と、前記第1歯車および前記第2歯車に嵌合するとともに、前記ホーンの一部に摺動自在に係合する歯板と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の好ましい形態によれば、ボンディング位置の近傍に障害物が存在する場合であっても、その障害物とボンディング位置との間の距離を小さくすることができ、半導体素子の小型化、並びに半導体装置の小型化に寄与することができる。
【0032】
また、キャピラリの一部を除去しても、キャピラリを回転することにより、第2ボンドの際は常にキャピラリの非除去部側でワイヤを押さえることができるため、ワイヤを押さえる面積が少なくなることはなく、良好な接合を行うことができる。
【0033】
また、モータの回転子にキャピラリの取り付け部を設けることで、モータを回転させるだけでキャピラリを回転させることができ、キャピラリの回転をアンロック、ロックさせる制御は不要となる。さらに、同じ回転位相におけるキャピラリの回転角度の再現性が良好となる。また、回転動作を行うための必要動作が少なくなり時間の短縮化が図れる。また、伝達部品の介在なしでキャピラリを回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるワイヤボンディング方法およびワイヤボンディング装置について説明する。図1は本発明の実施の形態1におけるワイヤボンディング装置のヘッド部分の斜視図である。ヘッド部分は、ワイヤボンディング装置のXYテーブル(図示せず)に載っており、XYテーブルによりキャピラリ31が第1、第2ボンディング位置へ移動される。
【0035】
図1に示すように、キャピラリ31は筒形状をしており、その中にワイヤ26が通される。また、キャピラリ31は、その上部31aが中心軸に対して回転対称な円柱状をしているのに対し、下部31bは、その側部の一部が除去された形状をしている。具体的には、円錐形状の一部が除去された形状をしている。この除去された部分の面(切り欠き面)31cを、ボンディング位置の近傍に存在する障害物の端面に対向させることで、その障害物にキャピラリをより近づけることが可能となる。
【0036】
また、キャピラリ31に超音波振動を伝えるホーン32は、ボンディングする際に上下方向に駆動して、キャピラリ31を第1、第2ボンディング面に押し付ける荷重を負荷する。
【0037】
また、ワイヤクランパ27は、ホーン32の上部にキャピラリ31と一体的に動作するよう設けられており、開閉によりワイヤ26のキャピラリ31に対する相対移動の可否を制御する。
【0038】
また、トーチ電極28は、キャピラリ31の周辺部に設けられており、イニシャルボール29を形成するために、キャピラリ31の先端から出ているワイヤ26の先端に放電を行う。
【0039】
本実施の形態1では、ボンディング位置の近傍に存在する障害物の端面に対向するキャピラリの側面が、ボンディング面に対して、その障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるようにキャピラリを支持する機構として、キャピラリ31の切り欠き面31cが障害物の端面に対向するようにキャピラリ31を回転させる回転機構を備える。以下、この回転機構について説明する。
【0040】
この回転機構は、ホーン32の先端に形成されたモータの回転軸33の一端にキャピラリ31の取り付け部を設け、その回転軸に設けられたモータの回転子36が、ホーン32に固定されたモータの固定子37に対して回転することで、キャピラリ31を回転させる構成となっている。
【0041】
具体的には、回転軸33は、その中央部が中空となっており、その中にワイヤ26が通される。また、回転軸33の下端はねじ34によりキャピラリ31を取り付ける構造となっており、ワイヤ26は、回転軸33の中を経由してキャピラリ31の先端から一端が出るよう通される。キャピラリ31のように軸対称でないものを取り付ける際には、ねじ34を目印にして取り付けるのがよい。
【0042】
また、回転軸33には、その円周方向に極性が交互に異なる永久磁石が一体的に設けられており、モータの回転子36となっている。回転軸33は、上部と下部の2箇所で、ホーン32に設けた軸受35により支持されている。この構造により、回転軸33および回転子36は、ホーン32に回転自在に支持される。
【0043】
また、ホーン32には回転子36に対向する複数のコイルが設けられており、固定子37となっている。このコイルに選択的に電流を流すことにより、回転子36である永久磁石との間に吸引力、反発力を生じさせて、回転軸33とそれに固定されたキャピラリ31を回転させることができる。
【0044】
また、ホーン32には、固定子37の近傍に、回転子36の回転位相を検出する位相検出手段である磁気型センサ38が複数設けられている。磁気型センサ38は、回転子36の回転位相に応じて信号を出す。この信号を処理することで回転子36の回転位相を検出できる。
【0045】
また、ホーン32に一体形成された2つの突出部39により回転軸33と平行に支持されている中心軸40には、その中心軸40を軸心として回転可能な押圧部材41が係合しており、中心軸40に装着されているねじりばね42により押圧部材41が回転軸33を一方向に押すことで、回転軸33と軸受35との間の円周方向のあそびをなくしている。これにより、同じ回転位相におけるキャピラリの回転角度の再現性が良好となる。また、ボンディングの際に超音波を効率よくキャピラリ31に伝達することができる。
【0046】
この構造は、ダイレクトドライブ方式であり、ホーン32の先端に形成されたモータを回転させることで、同軸に取り付けられたキャピラリ31を、がたつきが生じることなく、回転させることができる。
【0047】
続いて、図2を用いて、本実施の形態1におけるワイヤボンディング方法について、図6、7に示す半導体装置(光デバイス)11に対するワイヤボンディングを例に説明する。図2(a)はパッド接続前のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図2(b)はパッド接続時(第1ボンド時)のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図2(c)はパッド接続後のキャピラリの最上点での状態を表す工程図、図2(d)はリード接続時(第2ボンド時)のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図2(e)はリード接続後のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図である。この図2では、ヘッド部分のうち、キャピラリ31とワイヤクランパ27のみを示す。また、図2に示す方向は、ワイヤクランパ27を横から見る方向であり、その開閉を図示できない方向であるが、説明のために開閉を示している。ワイヤボンディングは、上面にカバーガラス21が直接貼り付けられた半導体素子19が実装されたセラミックパッケージ12を、ワイヤボンディング装置上で押圧して固定するとともに加熱した状態で行う。
【0048】
この半導体装置11では、第1ボンドに際し、半導体素子19の電極パッド20の近傍に存在するカバーガラス21が、ワイヤボンディングの障害物(第1の障害物)となる。カバーガラス21の端面は、略平坦な電極パッド20に対して略直角であるので、カバーガラス21の端面に対向するキャピラリ31の側面が電極パッド20に対して略直角となるように、キャピラリ31の下部31bの除去された部分の面(切り欠き面31c)を予めカバーガラス21側に向けておく。
【0049】
このように、キャピラリ31の切り欠き面を半導体素子19(カバーガラス21)側に向け、図2(a)に示すように、ワイヤクランパ27が閉じた状態で、キャピラリ31の先端から出ているワイヤ26の先端に、トーチ電極28からの放電によりイニシャルボール29を形成する。
【0050】
次に、図2(b)に示すように、ワイヤクランパ27を開き、イニシャルボール29を半導体素子19の電極パッド(第1ボンディング面)20に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ26の一端を電極パッド20に接合する第1ボンドを行う。このとき、キャピラリ31を略垂直に支持して、キャピラリ31の切り欠き面とカバーガラス21の端面を略平行にする。このようにすれば、キャピラリ31は、カバーガラス21と干渉を起こすことなく、カバーガラス21により近付くことが可能となる。ここでは、側部を一部で除去したキャピラリ31を使用しているが、第1ボンドの良否に大きく関係するのは、キャピラリ31の先端面(キャピラリ面)の形状であり、側部の形状や、キャピラリの回転角度はほとんど影響しない。
【0051】
その後、図2(c)に示すように、キャピラリ31はワイヤ26を繰り出しながら設定した経路を最上点まで上昇する。この半導体装置11では、第2ボンドに際し、セラミックパッケージ12のリード16の近傍に存在するセラミックパッケージ12の側壁13が、ワイヤボンディングの障害物(第2の障害物)となる。側壁13の端面は、略平坦なリード16に対して略直角であるので、側壁13に対向するキャピラリ31の側面がリード16に対して略直角となるように、キャピラリ31が最上点に達した時点で、ホーン32の先端に形成されているモータを回転させてキャピラリ31を約180度回転させ、キャピラリ31の切り欠き面を側壁13側に向ける。
【0052】
このようにキャピラリ31を回転させても、キャピラリ31の内周面とワイヤ26との間には隙間があるため、単にキャピラリ31が回転するのみで、ワイヤ26にねじり等の悪影響を及ぼすことはない。
【0053】
キャピラリ31の回転終了後、図2(c)、(d)に示すように、キャピラリ31がワイヤ26の他端の接続先であるリード16へ向けて円弧状の下降動作を行うことでループが形成される。その後、ワイヤ26の他端を、セラミックパッケージ12の内面に形成されているリード(第2ボンディング面)16に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ26の他端をリード16に接合する第2ボンドを行う。このとき、キャピラリ31を略垂直に支持して、キャピラリ31の切り欠き面と側壁13を略平行にする。このようにすれば、キャピラリ31は、側壁13と干渉を起こすことなく、側壁13により近付くことが可能となる。
【0054】
また、このとき、キャピラリ31の切り欠き面は、ワイヤ26のループ側とは逆の方向を向いており、ワイヤ26を押さえるのはキャピラリ31の非除去部側となる。ここで、図3を用いて、キャピラリ31の回転角度と第2ボンドとの関係について説明する。図3(a)にはキャピラリの非除去部側でワイヤを押さえた場合の第2ボンドの状態を示し、図3(b)にはキャピラリの一部除去部側でワイヤを押さえた場合の第2ボンドの状態を示す。ともに、キャピラリ31は先端近くの断面より下を示しており、キャピラリ31の中に通されているワイヤ26は描いていない。
【0055】
側部を一部で除去したキャピラリ31を使用しても、非除去部側でワイヤを押さえれば、図3(a)に示すような第2ボンドの状態となり問題は生じない。しかし、一部除去部側でワイヤを押さえた場合、キャピラリ31の先端面でワイヤに荷重をかけることができても、先端面に隣接する側部は除去されており、側部でワイヤに加重をかけることができず、図3(b)に示すような第2ボンドの状態となり、接合が行われる面積が減り、ボンディングが不安定となる。
【0056】
第2ボンド後、図2(e)に示すように、キャピラリ31は上昇し、その途中からワイヤクランパ27を閉じることで、ワイヤ26のキャピラリ31に対する相対移動を不可として、ワイヤ26を引きちぎる。これにより、最初と同じ、キャピラリ31の先端からワイヤ26の先端が出た状態となる。
【0057】
この時点で、ホーン32の先端に形成されているモータを回転させてキャピラリ31を約180度回転させ、次の第1ボンドに際してキャピラリ31の切り欠き面がカバーガラス21の端面に対向するように、キャピラリ31の切り欠き面を半導体素子19(カバーガラス21)側に向ける。
【0058】
キャピラリ31の回転終了後、イニシャルボール29を形成し、以上説明した方法で半導体素子19の次の電極パッド20とセラミックパッケージ12の次のリード16とを接続する。以上の動作を所定のワイヤ本数分繰返して、ワイヤボンディング工程を終了する。なお、辺が変わっても、第1、第2ボンドにおける回転位相が入れ替わるだけでボンディング自体に支障を生じることはない。
【0059】
このように、本実施の形態1では、電極パッド近傍またはリード近傍にワイヤボンディングに対する障害物が存在する場合であっても、第1、第2ボンド時に、キャピラリ31の一部除去部側(切り欠き面)を障害物に向けることで、キャピラリ31を障害物に近づけることが可能となり、障害物と第1、第2ボンディング位置との間の距離を小さくすることができ、半導体素子の小型化および半導体装置の小型化に寄与することができる。
【0060】
また、第2ボンドの際に、ワイヤのループ側とは逆の方向にキャピラリ31の一部除去部側(切り欠き面)を向けることで、ワイヤを押さえる面積が減少することはなく、接合に関して不都合が生じることはない。
【0061】
なお、本実施の形態1では、キャピラリを約180度回転させたが、ボンディング位置の近傍に存在する障害物に、キャピラリの一部除去部側(切り欠き面)を向ければよいので、回転位相は変更可能である。但し、第2ボンド時にワイヤをキャピラリの非除去部側で押さえることができる回転位相にするのが好ましい。
【0062】
また、第1ボンド後、キャピラリが最上点に達したときに、キャピラリを回転させたが、キャピラリの回転は、第1ボンドと第2ボンドとの間ならどの時点でも、また、移動途中に行ってもよい。同様に、第2ボンド後のキャピラリの回転についても、第2ボンドと第1ボンドとの間に行えばよい。
【0063】
また、ここでは、カバーガラス21の端面および側壁が、略平坦な電極パッドおよびリードに対して略直角であるので、垂直に支持されたキャピラリの切り欠き面が電極パッドおよびリードに対して略直角となるようにキャピラリの側部を一部除去した。このように、第1、第2ボンド時にキャピラリの切り欠き面と障害物の端面が略平行となるように、障害物の端面の形状に応じて、キャピラリの側部を一部除去するのが好適である。
【0064】
また、ここでは半導体素子の上面の4つの周辺部のうち対向する1対の周辺部にのみ電極パッドが形成されている場合について説明したが、無論、半導体素子の上面の4つの周辺部のうち3つの周辺部または全ての周辺部に電極パッドが形成されている場合についても同様に実施できる。
【0065】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2におけるワイヤボンディング方法およびワイヤボンディング装置について説明する。図4は本発明の実施の形態2におけるワイヤボンディング装置のヘッド部分の斜視図である。ヘッド部分は、ワイヤボンディング装置のXYテーブル(図示せず)に載っており、XYテーブルによりキャピラリ23が第1、第2ボンディング位置へ移動される。
【0066】
キャピラリ23は、中心軸に対して回転対称な筒形状をしており、その中にワイヤ26が通されている。また、キャピラリ23の上部23aは円柱状、下部23bは円錐状をしており、下部23bの先端面(キャピラリ面)は、円形状をしている。
【0067】
また、キャピラリ23に超音波振動を伝えるホーン51は、ボンディングする際に上下方向に駆動して、キャピラリ23を第1、第2ボンディング面に押し付ける荷重を負荷する。
【0068】
ワイヤクランパ27は、ホーン51の上部にキャピラリ23と一体的に動作するよう設けられており、開閉によりワイヤ26のキャピラリ23に対する相対移動の可否を制御する。
【0069】
また、トーチ電極28は、キャピラリ23の周辺部に設けられており、イニシャルボール29を形成するために、キャピラリ23の先端から出ているワイヤ26の先端に放電を行う。
【0070】
本実施の形態2では、ボンディング位置の近傍に存在する障害物の端面に対向するキャピラリの側面が、ボンディング面に対して、その障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるようにキャピラリを支持する機構として、キャピラリ23の上部23aが障害物から遠ざかるようにキャピラリ23を傾斜させる傾斜機構を備える。以下、この傾斜機構について説明する。
【0071】
この傾斜機構は、モータ52と、モータ52の駆動軸53に固定された原動歯車(第1歯車)54と、一端にキャピラリ23の取り付け部が設けられた揺動体55と、揺動体55に固定された揺動歯車(第2歯車)58と、原動歯車54および揺動歯車58に嵌合するとともに、ホーン51の一部に摺動自在に係合する歯板59と、を備える。
【0072】
具体的には、揺動体55は、ホーン51の両側に設けられた左右一対の中心軸57に、その中心軸57を軸心として回転可能に取り付けられている。また、揺動体55の下端はねじ56によりキャピラリ23を取り付ける構造となっている。また、揺動体55には、片側にのみ一体的に、中心軸57を軸心とする揺動歯車58が設けられている。
【0073】
また、ホーン51には、モータ52が取り付けられており、その駆動軸53には原動歯車54が固定されている。また、ホーン51には、揺動歯車58側の側面にガイド枠60が2つ設けられており、このガイド枠60に、原動歯車54および揺動歯車58に嵌合する歯部を有する歯板59が摺動自在に係合している。
【0074】
以上の構造により、モータ52を回転させることで、原動歯車54、歯板59、揺動歯車58の順に駆動され、揺動体55の傾斜角度が変化する。また、モータ52の回転方向を変えれば、揺動体55は左右一対の中心軸57の回りに逆回転する。これにより、モータ52を両方向に回転させることで、揺動体55の先端に付いたキャピラリ23を揺動させることができる。
【0075】
また、中心軸57にはねじりばね61が装着されており、一方の腕がホーン51に設けられた係止ピン62に係止し、他方の腕が揺動体55に設けられた係止ピン63に係止しており、このねじりばね61が揺動体55を一方向に押して揺動歯車58と歯板59との間のあそびをなくしている。これにより、同じ回転位相におけるキャピラリの揺動角度の再現性が良好となる。また、ボンディングの際に、超音波を効率よくキャピラリ23に伝達することができる。
【0076】
続いて、図5を用いて、本実施の形態2におけるワイヤボンディング方法について、前記した実施の形態1と同様に、図6、7に示す半導体装置(光デバイス)11に対するワイヤボンディングを例に説明する。
【0077】
図5(a)はパッド接続前のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図5(b)はパッド接続時(第1ボンド時)のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図5(c)はパッド接続後のキャピラリの最上点での状態を表す工程図、図5(d)はリード接続時(第2ボンド時)のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図、図5(e)はリード接続後のキャピラリおよび半導体装置の状態を表す工程図である。この図5では、ヘッド部分のうち、キャピラリ23とワイヤクランパ27のみを示す。また、図5に示す方向は、ワイヤクランパ27を横から見る方向であり、その開閉を図示できない方向であるが、説明のために開閉を示している。ワイヤボンディングは、上面にカバーガラス21が直接貼り付けられた半導体素子19が実装されたセラミックパッケージ12を、ワイヤボンディング装置上で押圧して固定するとともに加熱した状態で行う。
【0078】
まず、カバーガラス21の端面が電極パッド20に対して略直角であるので、第1ボンドに際して、カバーガラス21の端面に対向するキャピラリ23の側面が、電極パッド20に対して略直角(所定の角度)となるように、キャピラリ23の上部がカバーガラス21から遠ざかる方向へ傾斜させた状態でキャピラリ23を支持し、図5(a)に示すように、ワイヤクランパ27が閉じた状態で、キャピラリ23の先端から出ているワイヤ26の先端に、トーチ電極28からの放電によりイニシャルボール29を形成する。
【0079】
次に、図5(b)に示すように、ワイヤクランパ27を開き、イニシャルボール29を半導体素子19の電極パッド(第1ボンディング面)20に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ26の一端を電極パッド20に接合する第1ボンドを行う。
【0080】
このとき、キャピラリ23は、その上部23aがカバーガラス21から遠ざかる方向に傾斜しており、キャピラリ23のカバーガラス21側の側面とカバーガラス21の端面が略平行となっている。このようにすれば、キャピラリ23は、カバーガラス21と干渉を起こすことなく、カバーガラス21により近付くことが可能となる。また、キャピラリ23を傾斜させているものの第1ボンドはボール接合であるため、傾斜に対する許容度が大きく、接合に関して特に問題が生じることはない。
【0081】
その後、図5(c)に示すように、キャピラリ23はワイヤ26を繰り出しながら設定した経路を最上点まで上昇する。このワイヤ26の繰り出しにおいては、ワイヤ26とキャピラリ23とのなす角度が大きくなるが、それによる摺動抵抗の増加はわずかであり問題が生じることはない。このことは以降の動作についても同じである。
【0082】
キャピラリ23が最上点に達すると、セラミックパッケージ12の側壁13がリード16に対して略直角であるので、第2ボンドに際して、側壁13に対向するキャピラリ23の側面がリード16に対して略直角(所定の角度)となるように、キャピラリ23の上部が側壁13から遠ざかる方向にモータ52を回転させてキャピラリ23を傾斜させる。また、それと同時にキャピラリ23の先端の位置が変わらないようにヘッド部分が載ったXYテーブルを駆動する。この二つの動作により、ワイヤ26を無理に引っ張ることなく、キャピラリ23の傾斜方向を変更することができる。なお、このキャピラリ23の傾斜方向の変更は、キャピラリ23を上昇させた位置で行っているので、キャピラリ23と他の物体との間で干渉が生じることはない。
【0083】
次に、図5(c)、(d)に示すように、キャピラリ23がワイヤ26の他端の接続先であるリード16へ向けて円弧状の下降動作を行うことでループが形成される。その後、ワイヤ26の他端を、セラミックパッケージ12の内面に形成されているリード(第2ボンディング面)16に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ26の他端をリード16に接合する第2ボンドを行う。
【0084】
このとき、キャピラリ23は、その上部23aが側壁13から遠ざかる方向に傾斜しており、キャピラリ23の側壁13側の側面と側壁13が略平行となっている。このようにすれば、キャピラリ23は、側壁13と干渉を起こすことなく、側壁13により近付くことが可能となる。また、キャピラリ23は、ワイヤ26のループ側に傾斜しているので、ワイヤ26をより強く押さえることができ、より良好な接合を行うことができる。
【0085】
第2ボンド後、図5(e)に示すように、キャピラリ23は上昇し、その途中からワイヤクランパ27を閉じることで、ワイヤ26のキャピラリ23に対する相対移動を不可として、ワイヤ26を引きちぎる。これにより、最初と同じ、キャピラリ23の先端からワイヤ26の先端が出た状態となる。
【0086】
この時点で、次の第1ボンドに際して、カバーガラス21に対向するキャピラリ23の側面が電極パッド20に対して略直角(所定の角度)となるように、キャピラリ23の上部がカバーガラス21から遠ざかる方向にモータ52を回転させてキャピラリ23を傾斜させる。また、それと同時にキャピラリ23の先端の位置が変わらないようにヘッド部分が載ったXYテーブルを駆動する。この二つの動作により、キャピラリ23の傾斜方向を変更することができる。なお、このキャピラリ23の傾斜方向の変更は、キャピラリ23を上昇させた位置で行っているので、キャピラリ23と他の物体との間で干渉が生じることはない。
【0087】
モータ52の回転終了後、イニシャルボール29を形成し、以上説明した方法で半導体素子19の次の電極パッド20とセラミックパッケージ12の次のリード16とを接続する。以上の動作を所定のワイヤ本数分繰返して、ワイヤボンディング工程を終了する。なお、辺が変わっても、第1、第2ボンドにおける傾斜方向が入れ替わるだけでボンディング自体に支障を生じることはない。
【0088】
このように、本実施の形態2では、電極パッド近傍またはリード近傍にワイヤボンディングに対する障害物が存在する場合であっても、第1、第2ボンド時に、キャピラリの上部が障害物から遠ざかる方向にキャピラリを傾斜させることで、干渉が先に起きるキャピラリの上部を逃がすことができ、キャピラリを障害物に近づけることが可能となる。よって、障害物と第1、第2ボンディング位置との間の距離を小さくすることができ、半導体素子の小型化および半導体装置の小型化に寄与することができる。また、第2ボンド時に、ワイヤのループ側にキャピラリを傾斜させているので、確実な接合を実現することができる。
【0089】
なお、ここでは、障害物の端面に対向するキャピラリの側面をボンディング面に対して略垂直にしたが、キャピラリの傾斜角度は、接合において問題が起きず、且つ障害物との干渉が起きない範囲で任意に設定可能である。また、傾斜角度は、第1ボンドと第2ボンドで同じであってもよいし違ってもよい。
【0090】
また、第1ボンド後、キャピラリが最上点に達したときに、キャピラリの傾斜方向を変更したが、これに限らず、第1ボンドと第2ボンドとの間なら、キャピラリが他の物体と干渉を起こさない限り、どの時点で行ってもよい。また、移動途中に、第1ボンディング位置から第2ボンディング位置へキャピラリを移動させるXYテーブルの動作と融合させながら、キャピラリの傾斜方向を変更してもよい。同様に、第2ボンド後のキャピラリの傾斜方向の変更についても、第2ボンドと第1ボンドとの間に行えばよい。また、キャピラリを常に傾斜させておく必要はなく、一連の動作の中で姿勢をほぼ垂直とする区間を設けてもよい。
【0091】
また、ここでは半導体素子の上面の4つの周辺部のうち対向する1対の周辺部にのみ電極パッドが形成されている場合について説明したが、無論、半導体素子の上面の4つの周辺部のうち3つの周辺部または全ての周辺部に電極パッドが形成されている場合についても同様に実施できる。
【0092】
また、図4にはキャピラリを傾斜させる機構として1軸の揺動機構を示したが、半導体素子の上面の4つの周辺部のうち3つの周辺部または全ての周辺部に電極パッドが形成されている場合には、同様の機構を方向を変えてさらに設けて軸数を増やしてよいし、ホーンとキャピラリとを全方向に傾斜可能なボールジョイントでつなぎ、傾き方向と角度を制御するようにしてもよい。キャピラリを傾斜させる機構は、第1、第2ボンド時にキャピラリの上部が障害物から遠ざかるようにキャピラリの傾斜方向を変更できればよく、図4に示す機構に限るものではない。
【0093】
なお、上記した実施の形態1、2では、下部の基本形状が円錐形のキャピラリを用いたが、より先端を細くしたボトルネック型のキャピラリを用いてもよい。また、セラミックパッケージを用いた半導体装置を例に説明したが、セラミックパッケージに限らず、他のパッケージを用いた半導体装置であってもよい。また、キャピラリと干渉する可能性のある障害物として、半導体素子上に直接貼り付けられたカバーガラスとセラミックパッケージの側壁を例に説明したが、無論、障害物はこれに限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明にかかるワイヤボンディング方法およびワイヤボンディング装置は、半導体素子の電極パッド近傍に障害物が存在する場合であっても、その障害物とキャピラリとの干渉を起こさずに、障害物と第1ボンディング位置との間の距離を縮めることができ、半導体素子の小型化、並びに半導体装置の小型化を図ることができ、CCDチップやCMOSチップを実装したパッケージの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1におけるワイヤボンディング装置のヘッド部分の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1におけるワイヤボンディング工程の工程断面図
【図3】本発明の実施の形態1における第2ボンドを説明するための図
【図4】本発明の実施の形態2におけるワイヤボンディング装置のヘッド部分の斜視図
【図5】本発明の実施の形態2におけるワイヤボンディング工程の工程断面図
【図6】本発明の実施の形態1および2並びに従来の半導体装置のワイヤボンディング工程前の斜視図
【図7】本発明の実施の形態1および2並びに従来の半導体装置のワイヤボンディング工程前の断面図
【図8】従来のワイヤボンディング装置のヘッド部分の斜視図
【図9】従来のワイヤボンディング工程の工程断面図
【符号の説明】
【0096】
11 半導体装置
12 セラミックパッケージ
13 側壁
14 段部
15 ダイパッド
16 リード
17 外部端子
18 接着ペースト
19 半導体素子
20 電極パッド
21 カバーガラス
22 接着剤
23 キャピラリ
23a キャピラリの上部
23b キャピラリの下部
24 ホーン
25 ねじ
26 ワイヤ
27 ワイヤクランパ
28 トーチ電極
29 イニシャルボール
31 キャピラリ
31a キャピラリの上部
31b キャピラリの下部
31c 切り欠き面
32 ホーン
33 モータの回転軸
34 ねじ
35 軸受
36 モータの回転子
37 モータの固定子
38 磁気型センサ
39 突出部
40 中心軸
41 押圧部材
42 ねじりばね
51 ホーン
52 モータ
53 モータの駆動軸
54 原動歯車
55 揺動体
56 ねじ
57 中心軸
58 揺動歯車
59 歯板
60 ガイド枠
61 ねじりばね
62 係止ピン
63 係止ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボンドに際し、第1ボンディング位置の近傍に存在する第1の障害物の端面に対向するキャピラリの側面が、第1ボンディング面に対して、前記第1の障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるようにキャピラリを支持することを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項2】
第1ボンドに際し、側部の一部が除去されたキャピラリのその除去された部分の面が前記第1の障害物の端面に対向するようにキャピラリを回転させるか、または、キャピラリの上部が前記第1の障害物から遠ざかるようにキャピラリを傾斜させて、キャピラリの側面が前記第1ボンディング面に対して所定の角度となるようにすることを特徴とする請求項1記載のワイヤボンディング方法。
【請求項3】
請求項2記載のワイヤボンディング方法であって、さらに、第2ボンドに際し、第2ボンディング位置の近傍に存在する第2の障害物の端面に対向するキャピラリの側面が、第2ボンディング面に対して、前記第2の障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるようにキャピラリを支持することを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項4】
第2ボンドに際し、側部の一部が除去されたキャピラリのその除去された部分の面が前記第2の障害物の端面に対向するようにキャピラリを回転させるか、または、キャピラリの上部が前記第2の障害物から遠ざかるようにキャピラリを傾斜させて、キャピラリの側面が前記第2ボンディング面に対して所定の角度となるようにすることを特徴とする請求項3記載のワイヤボンディング方法。
【請求項5】
キャピラリと、前記キャピラリに超音波振動を伝えるホーンと、ボンディング位置の近傍に存在する障害物の端面に対向する前記キャピラリの側面が、ボンディング面に対して、前記障害物の端面の形状に応じた所定の角度となるように前記キャピラリを支持する機構と、を備えることを特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記キャピラリはその側部の一部が除去された形状を有し、前記キャピラリを支持する機構として、前記キャピラリの除去された部分の面が前記障害物の端面に対向するようにキャピラリを回転させる回転機構を備えることを特徴とする請求項5記載のワイヤボンディング装置。
【請求項7】
前記回転機構は、前記ホーンに固定されたモータの固定子と、一端に前記キャピラリの取り付け部が設けられて前記固定子に対して回転するモータの回転子と、前記回転子の回転位相を検出する位相検出手段と、を備えることを特徴とする請求項6記載のワイヤボンディング装置。
【請求項8】
前記キャピラリを支持する機構として、前記キャピラリの上部が前記障害物から遠ざかるように前記キャピラリを傾斜させる傾斜機構を備えることを特徴とする請求項5記載のワイヤボンディング装置。
【請求項9】
前記傾斜機構は、モータと、前記モータの駆動軸に固定された第1歯車と、一端に前記キャピラリの取り付け部が設けられた揺動体と、前記揺動体に固定された第2歯車と、前記第1歯車および前記第2歯車に嵌合するとともに、前記ホーンの一部に摺動自在に係合する歯板と、を備えることを特徴とする請求項8記載のワイヤボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−288473(P2008−288473A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133577(P2007−133577)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】