説明

ワイヤレスインターフェースを備えるGNSS受信機

ワイヤレスGNSS受信機、例えばBluetooth(登録商標)受信機は、ホストへの二方向リンクと、Bluetooth(登録商標)リンクによってホストから拡張エフェメリスデータをダウンロードする更新クライアントとを含む。本発明は、拡張エフェメリスデータを受信機まで送信するために、NMEAデータ転送のために使用されるプロトコルを再利用する。したがって、受信機に対する他のどんなタイプの接続も例示することを必要とせずに拡張エフェメリスデータを送信することができる。本発明は、4時間を超えてオフにされたGPS受信機の最初の定点に対する時間を短縮するために拡張エフェメリス技術を利用することを望むBT-GPS受信機のコストおよび複雑さを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、拡張エフェメリスデータまたは位置決定に有用な他のデータをGPS受信機に供給する方法に関する。詳細には、排他的ではないが、本発明は、そのような拡張エフェメリスデータの、ホストシステムにワイヤレスに接続されたGPS受信機への、例えばBluetooth(登録商標)インターフェースによる効率的な転送を可能にするアーキテクチャを提案する。
【背景技術】
【0002】
GPS受信機に関するエフェメリス拡張技術は、受信機が、追跡中の人工衛星から有効なエフェメリスデータを直接的にダウンロードすることを必要とせずに、このデータを得ることを可能にする。これにより、GPS受信機は、ナビゲーションメッセージを復号化するには感知信号レベルが単純に低過ぎるという困難な状況で定点(fix)を得ることが可能となる。拡張エフェメリスは、GPSのナビゲーションメッセージに含まれるエフェメリスよりもずっと長い時間にわたって有効である、人工衛星の位置に関する信頼性の高い情報を与える。受信機は、受信機が4時間を超えてオフになっていた場合であっても、人工衛星からエフェメリスをまずダウンロードすることなくGPS位置定点を得るために、拡張エフェメリスを利用することができる。
【0003】
拡張エフェメリス技術を利用するほとんどのGPS受信機は、携帯電話プラットフォーム内に組み込まれ、例えばGPRSインターネット接続を確立することによって外部サーバから拡張エフェメリスデータがダウンロードされ、または標準電話機同期ソフトウェアが使用され、拡張エフェメリスデータがGPS使用可能プラットフォーム上に配置される。
【0004】
Bluetooth(登録商標)GPS受信機(BT-GPS)は、携帯電話、携帯情報端末、パーソナルコンピュータなどの任意のBluetooth使用可能ホストプラットフォームに通常はNMEAフォーマットでGPS位置データを送信するBluetooth(登録商標)モジュールに結合された、NMEA出力を供給するスタンドアロンGPS受信機から通常は構成される一般的な製品である。BT-GPS受信機は通常、単一方向に機能し、すなわち、受信機がそのホストとペアリングされると、受信機は、ナビゲーションデータの連続的フローを単に送信し、決してホストからデータを受信しない。GPSデータを利用するホスト上で実行中のアプリケーションは通常、GPS受信機に対する通信チャネル、この場合はBluetooth(登録商標)リンクを開くこと、および閉じることに限定される。
【0005】
したがって、BT-GPS受信機は、ホストからは完全に自立し、ホストから全く支援を受けることなく、または最小の支援で、位置定点を計算および送信することができる。ホストシステム内で実行中のソフトウェア(例えば、ナビゲーションソフトウェアまたはトレーニングアシスタント)の役割は、そのような位置データを処理し、それをホストシステムの出力装置上に適切にレンダリングすることである。この手法は、受信機とホストとの間の通信を単純化し、相異なるBT-GPS受信機間の最大のレベルの相互運用性を実現するというメリットを有する。
【0006】
現在のBT-GPS受信機は、GPS使用可能携帯電話と同じレベルのソフトウェアインテグレーションを含まない。すなわち、OBEXプロトコルを使用するファイル転送は、こうした装置ではサポートされず、意図的な、または偶然の改ざんから受信機を効果的に守り、保護するために、不可欠ではないすべてのBluetooth(登録商標)機能が通常は使用不能にされる。このことにより、受信機がホストシステムから受け取ることのできる支援が厳しく制限される。さらに、こうした装置の製造コストが市場での受入れにとって重要であるので、こうした装置は通常、こうしたファイルの記憶、転送、および維持を容易にサポートするのに十分なハードウェアリソースと共には出荷されず、機能は通常、標準GPS受信機ファームウェアにはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、周知の関連システムの制限を克服するGPS受信機を提案することであり、具体的には、単純かつ効果的な方式で、拡張エフェメリス技術を実装する、Bluetooth(登録商標)または類似の接続によってホストシステムと通信するのに適したGPS受信機を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、添付の特許請求の範囲の対象によって達成される。
【0009】
例示によって与えられ、各図に示される一実施形態の説明により、本発明をより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一態様によるBT-GPS受信機に対する拡張エフェメリスの応用を単純かつ概略的に示す図である。
【図2】図1のBT-GPS受信機の構造を概略的に示す図である。
【図3】ホストシステムからBT-GPS受信機に拡張エフェメリスデータを転送するプロセスを例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、拡張エフェメリスの原理を概略的に示す。宇宙飛行体32が、レンジング無線信号を放射し、レンジング無線信号は、無線位置測定受信機50が位置定点を計算することを可能にする。GPS、Galileo、およびGLONASSが属する全地球的衛星航法システム(GNSS)の原理は周知であり、ここではそれを繰り返さない。話を簡単にするために、以下の説明がGPSシステムに焦点を当てるとしても、本発明はこの特定のケースに限定されず、任意のGNSSシステムに拡張できることを理解されたい。
【0012】
サーバ38は、拡張エフェメリスデータを供給する。エフェメリスデータは改良型軌道モデルから得られ、宇宙飛行体32からナビゲーション信号受信機で符号化されたエフェメリスよりも長い期間にわたって有効である。拡張エフェメリスは、受信機50が、追跡中の人工衛星からダウンロードされるナビゲーションメッセージに依拠することなく、有効な人工衛星位置を得ることを可能にする。これにより、感知信号レベルがナビゲーションメッセージを復号化するには単純に低過ぎるという困難な状況で定点を得ることが可能となる。サーバ38はまた、拡張エフェメリスに加えて、または拡張エフェメリスの代わりに、GPS受信機50にとって有用である可能性のある他のデータをも供給することができ、本発明はこの変形形態をも含むものとする。
【0013】
BT-GPS 50は、宇宙飛行体32の無線信号を受信および処理し、測位データを計算する任を担う受信機部分51と、互換Bluetooth(登録商標)インターフェース46を含むホストシステム40との通信を可能にするBluetooth(登録商標)モジュール55とを備える。Bluetooth(登録商標)モジュール55およびインターフェース46(図1ではBTモジュールおよびBTインターフェースと表示される)を、Wibree、UWB、WiHD、またはワイヤレスUSBインターフェース、あるいは任意の他の適切なワイヤレスインターフェースで置き換えることができる。
【0014】
ホストシステム40は、BT-GPS 50と通信することができ、GT-GPS 50から来る測位データを処理することのできる任意のシステムを示す。通常、ホストシステム40は、固定コンピュータまたはポータブルポータブルコンピュータ、PDA、あるいは携帯電話でよく、測位データを解析し、データ内に符号化された測位情報を利用するアプリケーションモジュール42を含む。例えば、アプリケーションモジュール42は、車両ナビゲーションソフトウェア、トレーニングアシスタント、または測位データに依拠する任意の他のアプリケーションでよい。
【0015】
ホストシステム40はまた、以下で説明するように、拡張エフェメリスの更新の任を担うアップデータ(updater)モジュール44をも含む。通常の場合、アップデータモジュール44は、ナビゲーションアプリケーション42内に含まれる1つのソフトウェアとなる。しかし、本発明は、アップデータがホストシステムのファームウェア内にある変形形態、またはアップデータがホストシステム40とは別々の1つのハードウェア内で実行される変形形態をも含む。
【0016】
ホストシステムは、最新の拡張エフェメリスモデルを提供する拡張エフェメリスサーバ38にアクセスすることができる。拡張エフェメリスをあまり頻繁に更新する必要がなく、エフェメリスは大量のデータを表さないので、サーバ38との間の接続31は重要ではなく、ホストシステムの性質に従って接続31を変更することができる。とりわけ、GPRS、EDGE、UMTSなどの携帯電話データプロトコルを使用することができる。
【0017】
図2は、BT-GPS 50の様々な要素を示す。当技術分野で周知のように、宇宙飛行体32からの無線位置測定信号を受信し、相関データを生成するのに、RFフロントエンド510およびベースバンドプロセッサ520が使用される。信号取得が十分に進んだ後に、ナビゲーションエンジン525は、GPS自体の中に含まれるエフェメリスにより、または組込み更新クライアントモジュール530によって供給される拡張エフェメリスデータを使用することにより、位置定点を計算することができる。例えばNMEA文字列としてフォーマットされた位置データが、UARTユニット560によってBluetooth(登録商標)モジュール55に対して処理され、Bluetooth(登録商標)モジュール55より、位置データがホストシステムに送信される。環境に従って、受信機51は単一チップユニットとして実現される。しかし、ある場合には、RFフロントエンド510または他の構成要素を別々のユニットとして実現することが有利なことがある。
【0018】
後で説明するように、好ましくは、UART 560は、Bluetooth(登録商標)インターフェースを介する拡張エフェメリスデータの受信をも可能にする二方向インターフェースである。ワイヤレスBluetooth(登録商標)インターフェースとBT-GPS受信機の他の構成要素との間のデータ転送は二方向であり、したがって、ホストシステム40からBT-GPS 50に対する、拡張エフェメリスデータの更新、または位置決定に有用な他の補助データの供給が可能となる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、Bluetooth(登録商標)インターフェースは、入力と出力のどちらについても、BT-GPS受信機上の同一のSPP(シリアルポートプロファイル)通信チャネルを使用し、したがって、二方向シリアルワイヤレスリンク60を実現する。この解決策は、構成可能データ転送速度を可能にし、したがって、GPS受信機が、拡張エフェメリスデータを低優先順位バックグラウンドタスクとして更新しながら、GPS受信機の通常動作を続行することを可能にする。この手法は、既存のシステム内の既存のハードウェア構成要素およびソフトウェア構成要素の再利用を最大にする。
【0020】
専用アップデータソフトウェアモジュール44が、ホストシステム40内で動作する。このアプリケーションは、拡張エフェメリスダウンロードプロセスを開始し、データをBT-GPS受信機に送信し、拡張エフェメリスダウンロードプロセスを終了し、受信機にアップロードされたデータの妥当性をチェックするために、コマンドをBT-GPS装置50に送信する。
【0021】
図3は、BT-GPS受信機50(左側)およびアップデータ44(右側)でのエフェメリス更新に至るステップを概略的に示す。好ましくは、BT-GPS受信機は、データダウンロードに着手することのできる最大速度と、このダウンロードに対して使用すべき最適なパケットサイズとをアップデータソフトウェアに示すために、開始段階(ステップ310)中に制御パラメータをホストに送信する。図3の対応するステップ410では、アップデータは、将来の使用のために通信パラメータをメモリ内に格納する。好ましくは、BT-GPS装置は、同一のアップデータソフトウェアが多数の異なるプラットフォームにわたって働くことを可能にするために、プラットフォーム特有の通信パラメータをアップデータに通信する。
【0022】
開始段階が終了すると、アップデータは、必要ならサーバ38から拡張エフェメリスデータを収集し(ステップ420)、クライアントの更新が必要であるかどうかを判定する(ステップ430)。肯定的なケースでは、アップデータは、開始パラメータに従って構成されたデータパケットを組込み更新クライアント530に送信し(ステップ450)、組込み更新クライアント530は、更新が進行中であることを認識し(ステップ330)、拡張エフェメリスデータを組込み更新クライアント530の不揮発性メモリ内に保存する(ステップ340)。このステップの間に、転送する目的で、圧縮し、符号化し、あるいは別の表現に移すために、拡張エフェメリスデータのデータ表現を修正することができる(ステップ440)。次いで、組込み更新クライアントは、逆方向の変換を行い、すなわちフルデータセットを回復する任を担う。
【0023】
パケット破壊を早期に検出し、データ破壊のためにシステムによって省かれたデータパケットの再送信を迅速に開始するために、各データパケットにチェックサムが追加される。すべてのデータパケットが送られると、チェックサム方式または同等の機構を使用することにより、保存されたデータの完全性が検証される。データが検証されると、GPSソフトウェアの残りの部分にデータを渡し、将来のGPS位置定点を加速させるために使用することができる。次いで、アップデータは、拡張エフェメリスデータの新しい更新が必要となるまでアイドル状態460に入り、一方、BT受信機は、その通常動作を続行し、ステップ340で格納された拡張エフェメリスデータを用いて、位置データのフローを生成する(ステップ320)。
【0024】
先の例では、話を簡単にするために、拡張エフェメリスの更新および位置データの生成が排他的動作として示された。しかし、実際の実装では、2つの動作を同時に行うことができ、BT-GPSが中断なしに位置定点を生成すると共に、拡張エフェメリスデータが更新されることに留意されたい。
【0025】
本発明は、拡張エフェメリスデータを受信機まで送信するために、NMEAデータ転送のために使用される標準プロトコルを再利用する。したがって、受信機に対する他のどんなタイプの接続も例示することを必要とせずに拡張エフェメリスデータを送信することができ、NMEA構文解析アプリケーションにより、システムが実行中であってもそれを行うことができる。
【0026】
GPS受信機ソフトウェアの再プログラミングにより、およびある環境では、限定されたハードウェア修正を行うことによって着信Bluetooth(登録商標)データチャネルを使用可能にすることにより、拡張エフェメリスサポートを追加するために既存のBT-GPS製品を修正することができる。
【0027】
本発明の主な利点は、4時間を超えてオフにされたGPS受信機の最初の定点に対する時間を短縮するために拡張エフェメリス技術を利用することを望むBT-GPS受信機のコストおよび複雑さを低減することである。
【0028】
さらに、ホストプラットフォーム上で実行中のマッピングアプリケーションおよび他のソフトウェアが、任意の受信機上で通常の受信機動作中にこの技術をバックグラウンドで使用して拡張エフェメリスデータを暗黙のうちに更新することができるので、この解決策の使い易さにより、拡張エフェメリスデータの供給を、ユーザに対してずっと透過的にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
31 接続
32 宇宙飛行体
38 拡張エフェメリスサーバ
40 ホストシステム
42 アプリケーションモジュール
44 アップデータモジュール
46 インターフェース
50 無線位置測定受信機
51 受信機部分
60 二方向シリアルワイヤレスリンク
55 Bluetooth(登録商標)モジュール
510 RFフロントエンド
520 ベースバンドプロセッサ
525 ナビゲーションエンジン
530 組込み更新クライアントモジュール
560 UARTユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線位置測定人工衛星から受信された無線信号に基づいて、受信機の位置を表す位置データを計算するように構成された、RFフロントエンド(510)、信号プロセッサ(520)、およびナビゲーションエンジン(525)を含み、位置データをホストシステム(40)に通信するワイヤレスインターフェース(55)をさらに含むGNSS受信機(50)であって、前記ワイヤレスインターフェース(55)と受信機(50)の他の構成要素との間の通信が二方向であることを特徴とするGNSS受信機。
【請求項2】
前記ワイヤレスインターフェース(55)から補助データを受信するように動作可能に構成されたクライアントモジュール(530)をさらに備え、前記補助データが、位置データの計算を支援するために使用される請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項3】
前記補助データが拡張エフェメリスデータを含む請求項2に記載のGNSS受信機。
【請求項4】
前記ワイヤレスインターフェース(55)がBluetooth(登録商標)インターフェースまたはWibreeインターフェースである請求項1から3のいずれかに記載のGNSS受信機。
【請求項5】
前記ワイヤレスインターフェース(55)と受信機(50)の他の構成要素との間の通信のための二方向UART(560)をさらに備える請求項1から4のいずれかに記載のGNSS受信機。
【請求項6】
前記ワイヤレスインターフェースが、前記GNSS受信機と前記ホスト(40)との間の二方向SPP通信チャネルを使用するように構成される請求項1から5のいずれかに記載のGNSS受信機。
【請求項7】
受信機とホストとの間の二方向ワイヤレスシリアルリンク(60)を生成するためにGNSS受信機(55)の前記ワイヤレスインターフェースと相互運用可能なホストワイヤレスインターフェース(46)と、GNSS受信機(50)の前記クライアントモジュール(530)に前記補助データを送信するように構成された前記ホスト装置(40)のアップデータモジュール(44)とを備えるホスト装置(40)と組み合わされる請求項2から6のいずれかに記載のGNSS受信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−534329(P2010−534329A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517422(P2010−517422)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060985
【国際公開番号】WO2009/027322
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(507364838)クアルコム,インコーポレイテッド (446)
【Fターム(参考)】