説明

ワイヤ接続部材、ビードコード、車両用タイヤ及びワイヤの接続方法

【課題】強度低下、バランスの悪化及び接続作業の煩雑化を防止しつつ、ワイヤのずれ動きを防止することができるワイヤ接続部材、ビードコード、車両用タイヤ及びワイヤの接続方法を提供する。
【解決手段】ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを内側に収容し対向状態で接続するワイヤ接続部材10であって、ワイヤ50の直径D未満のスリーブ内径diを有するコイルばね状スリーブからなるものである。ワイヤ50によって押し広げられることでワイヤ50に圧縮抵抗が働き、この圧縮抵抗でワイヤ50のずれ動きを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ同士を接続する接続部材及び接続方法に関し、例えば、環状コアの周囲に側線ワイヤを螺旋状に巻き続けてビードコードを形成する際に、側線ワイヤの両端末がばらけないように接続するためのワイヤ接続部材、ワイヤ接続部材によって始端部及び終端部が接続されたビードコード、ビードコードがビード部に埋め込まれて補強された車両用タイヤ及びワイヤ接続部材を使用するワイヤの接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤのビード部を補強するビードコード1は、図11に示すように、タイヤ100のビード部110に埋め込まれている。このようなビードコード1は、図12に示すように、環状コア40を周方向に回転させながら、環状コア40の輪の外側から側線ワイヤ50のボビン60を輪の中に通し、再び輪の外側から輪の中に通すことにより、環状コア40の周囲に一定径の側線ワイヤ50を螺旋状に巻き続けて製造されている。
【0003】
この環状コア40の周囲への側線ワイヤ50の巻き付けは、一層毎に行われており、図13に示すように、一層毎の側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを、スリーブ形状のワイヤ接続部材70に挿し入れて接続し、側線ワイヤ50のほどけを防止している。
【0004】
このようなワイヤ接続部材としては、図14に示すようなものもある。このワイヤ接続部材80は、環状コア40の周囲に巻き付けた側線ワイヤ50の層外側に被せられる半円筒状形状をなしており、この半円筒形のワイヤ接続部材80の内周に設けた突起81を側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとの間に嵌めるようにして、側線ワイヤ50の始端部と終端部とを固定するようにしている。
【0005】
図13に示すスリーブ形状のワイヤ接続部材70は、特許文献1に開示され、図14に示す半円筒形のワイヤ接続部材80は、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開昭50−122581号公報
【特許文献2】特公昭56−51104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ビードコード1は、タイヤ100のビード部110に埋め込まれて使用されるため、ビードコード1には、繰り返し負荷が加わる。
【0007】
したがって、スリーブ形状のワイヤ接続部材70の場合、ワイヤ接続部材70の寸法精度を厳しく製造していても、挿し入れる側線ワイヤ50の線径の公差などにより、始端部51と終端部51aの部分に生じる隙間により、側線ワイヤ50に沿ってワイヤ接続部材70が繰り返しずれ動きが生じ易く、ずれ動きの際の摩擦でスリーブ形状のワイヤ接続部材70が摩耗し、ワイヤ接続部材70の強度が弱くなり、スリーブ形状のワイヤ接続部材70が折れ曲がったり、スリーブ形状のワイヤ接続部材70から側線ワイヤ50の始端部51や終端部51aが抜け出したりして、側線ワイヤ50の始端部51や終端部51aがいわゆる暴れた状態となり、タイヤ自体の性能に影響を及ぼすという問題があった。
【0008】
また、スリーブ形状のワイヤ接続部材70のずれ動きを防止するために、側線ワイヤ50を挿し入れた後、スリーブ形状のワイヤ接続部材70をかしめて、挿し入れた側線ワイヤ50との一体性を向上させることも行われている。
【0009】
ところが、側線ワイヤ50に曲げ応力がかかると、スリーブ形状のワイヤ接続部材70に中央部分に応力が集中するため、ワイヤ接続部材70が中央部分で折れ易い。特にワイヤ接続部材70をかしめると、かしめ部分で応力が集中し易くなり、かしめ部分がより折損し易くなる。
【0010】
また、かしめ工程を追加することは、工程が増えて手間であり、製造コストが高く付くという問題がある。
【0011】
また、スリーブ形状のワイヤ接続部材70のずれ動きを防止するために、ワイヤ接続部材70と挿し入れた側線ワイヤ50とを接着剤で一体化することも考えられるが、接着剤で一体化することは工程が増えて手間であり、製造コストが高く付くという問題がある。
【0012】
加えて、上記半円筒形の接続部材80を、側線ワイヤ50の層の上から被せるという方法は、半円筒形の接続部材80の質量により、全体の重量バランスを悪くするという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、強度低下、バランスの悪化及び接続作業の煩雑化を防止しつつワイヤのずれ動きを防止することができるワイヤ接続部材、ビードコード、車両用タイヤ及びワイヤの接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決することのできる本発明に係るワイヤ接続部材は、ワイヤの一対の端部を内側に収容し対向状態で接続するワイヤ接続部材であって、前記ワイヤの直径未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなることを特徴としている。
【0015】
このように、本発明に係るワイヤ接続部材はワイヤの直径未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなるため、ワイヤの始端部と終端部とを内側に収容し対向状態で接続する場合に、ワイヤによって径方向に押し広げられることになり、ワイヤに圧縮抵抗が働き、この圧縮抵抗でワイヤのずれ動きを防止する。よって、かしめによる強度低下、重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつワイヤのずれ動きを防止することができる。しかも、ワイヤに張力がかかることで軸方向に延びると縮径しようとするため、ワイヤをより締め付けてずれ動きを確実に防止することができる。
【0016】
好ましくは、前記コイルばね状スリーブの内径が、前記ワイヤの直径の0.79倍以上0.99倍以下の範囲にある。コイルばね状スリーブの内径がワイヤの直径の0.79倍以上であると、ワイヤに対する締め付け力が過大となることを防いでワイヤの接続作業性を良好に保つことができる。コイルばね状スリーブの内径がワイヤの直径の0.99倍以下であると、ワイヤに対する締め付け力を確実に作用させることができる。
【0017】
好ましくは、素線断面が矩形状とされている。これにより、断面が円形状の場合と比較してワイヤとの接触面積が大きくなり、同じ圧縮力でもさらに安定してずれ動きを防止できる。
【0018】
好ましくは、素線径が前記ワイヤの直径の1/3以上とされている。これにより、ワイヤを接続するために要求される剛性を確保でき、ワイヤの剛性に比べて剛性が小さすぎると生じるワイヤの始端部及び終端部付近の折れ曲がりを防止できる。
【0019】
好ましくは、コイル隙間が前記ワイヤの直径の0.2倍以上1.0倍以下の範囲とされている。これにより、コイル隙間にワイヤの始端部及び終端部を挿し入れてコイル隙間に沿って移動させる工程を経てワイヤを接続する場合に、コイル隙間がワイヤの直径の0.2倍以上とすることでコイル隙間への挿し入れに適し、1.0倍以下とすることで巻数を確保するための長さの長大化を防ぐことができる。よって、コイル隙間を押し広げてワイヤの始端部及び終端部を挿し入れるのに要する時間を短縮でき、接続作業の自動化にも良好に対応可能となる。
【0020】
また、上記課題を解決することのできる本発明に係るワイヤ接続部材は、ワイヤの一対の端部を内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続するワイヤ接続部材であって、前記ワイヤの直径の2倍未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなることを特徴としている。
【0021】
このように、ワイヤの直径の2倍未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなるため、ワイヤの始端部と終端部とを内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続する場合に、重なったワイヤで径方向に押し広げられることになり、ワイヤに圧縮抵抗が働き、この圧縮抵抗でワイヤのずれ動きを防止する。よって、かしめによる強度低下、重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつワイヤのずれ動きを防止することができる。しかも、ワイヤに張力がかかることで軸方向に延びると縮径しようとするため、ワイヤをより締め付けてずれ動きを確実に防止することができる。
【0022】
好ましくは、前記コイルばね状スリーブの内径が、前記ワイヤの直径の1.50倍以上1.96倍以下の範囲にある。コイルばね状スリーブの内径がワイヤの直径の1.50倍以上であると、ワイヤに対する締め付け力が過大となることを防いでワイヤの接続作業性を良好に保つことができる。コイルばね状スリーブの内径がワイヤの直径の1.96倍以下であると、ワイヤに対する締め付け力を確実に作用させることができる。
【0023】
好ましくは、素線断面が矩形状とされている。これにより、断面が円形状の場合と比較してワイヤとの接触面積が大きくなり、同じ圧縮力でもさらに安定してずれ動きを防止できる。
【0024】
好ましくは、素線径が前記ワイヤの直径の1/3以上とされている。これにより、ワイヤを接続するために要求される剛性を確保でき、ワイヤの剛性に比べて剛性が小さすぎると生じるワイヤの始端部及び終端部付近の折れ曲がりを防止できる。
【0025】
好ましくは、コイル隙間が前記ワイヤの直径の0.2倍以上1.0倍以下の範囲とされている。これにより、コイル隙間にワイヤの始端部及び終端部を挿し入れてコイル隙間に沿って移動させる工程を経てワイヤを接続する場合に、コイル隙間が前記ワイヤの直径の0.2倍以上とすることでコイル隙間への挿し入れに適し、1.0倍以下とすることで巻数を確保するための長さの長大化を防ぐことができる。よって、コイル隙間を押し広げてワイヤの始端部及び終端部を挿し入れるのに要する時間を短縮でき、接続作業の自動化にも良好に対応可能となる。
【0026】
また、本発明に係るビードコードは、上記ワイヤ接続部材を使用して側線ワイヤの始端部と終端部とを接続したことを特徴としている。このように、上記ワイヤ接続部材を使用することによって、ワイヤ接続部材のかしめによる強度低下、ワイヤ接続部材の重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつワイヤのずれ動きを防止することができる。
【0027】
加えて、本発明に係る車両用タイヤは、上記ワイヤ接続部材を使用したビードコードをビード部に埋め込んだことを特徴としている。このように、上記ワイヤ接続部材を使用したビードコードを埋め込むことによって、ワイヤ接続部材のかしめによる強度低下、ワイヤ接続部材の重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつワイヤのずれ動きを防止することができる。
【0028】
また、本発明に係るワイヤの接続方法は、ワイヤの一対の端部を内側に収容し対向状態で接続し、ワイヤの直径未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなる上記ワイヤ接続部材を使用し、前記ワイヤ接続部材における一方側端部のばね素線と隣り合うばね素線とのコイル隙間にワイヤの始端部を挿し入れ、前記始端部をコイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで通し、前記ワイヤ接続部材の軸方向中間部から外側に突出する余長部を切断除去し、前記ワイヤ接続部材における他方側端部のばね素線と隣り合うばね素線とのコイル隙間に前記ワイヤの終端部を挿し入れ、前記終端部をコイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで通し、前記ワイヤ接続部材の軸方向中間部から外側に突出する余長部を切断除去し、前記ワイヤの前記始端部と前記終端部とを前記ワイヤ接続部材の内側に収容し対向状態で接続することを特徴とするものである。
【0029】
このように、ワイヤ接続部材における端部のばね素線と隣り合うばね素線とのコイル隙間に挿し入れて、コイル隙間に沿ってワイヤ接続部材における軸方向中間部まで通してから余長部を切断するという工程を、ワイヤの始端部と終端部とについて行うため、ワイヤの直径未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなるワイヤ接続部材に対して、円滑かつ確実に、ワイヤの始端部と終端部とをその内側に収容し対向状態で接続することができる。
【0030】
また、本発明に係るワイヤの接続方法は、ワイヤの一対の端部を内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続し、ワイヤの直径の2倍未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなる上記ワイヤ接続部材を使用し、前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部の隣り合うばね素線同士のコイル隙間を、接続する前記ワイヤの直径の1.5倍以上4.5倍以下に広げておき、ワイヤの始端部を、前記ワイヤ接続部材における一方側端部から内側を通して前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで挿し入れて前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部の隣り合うばね素線同士のコイル隙間から引き出し、ワイヤの終端部を、前記ワイヤ接続部材における他方側端部から内側を通して前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで挿し入れて前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部の隣り合うばね素線同士のコイル隙間から引き出し、コイル隙間から外側に突出する前記ワイヤの前記始端部を、コイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における前記他方側端部まで通すとともに、コイル隙間から外側に突出する前記ワイヤの前記終端部を、コイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における前記一方側端部まで通すことにより、前記ワイヤの前記始端部と前記終端部とを前記ワイヤ接続部材の内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続することを特徴としている。
【0031】
このように、ワイヤ接続部材における端部から内側を通してワイヤ接続部材における軸方向中間部まで挿し入れワイヤ接続部材における軸方向中間部の隣り合うばね素線同士のコイル隙間からワイヤ接続部材の外側に引き出す工程を、ワイヤの始端部と終端部とについて行い、その後、コイル隙間に沿ってワイヤ接続部材における逆の端部まで通す工程を、ワイヤの始端部と終端部とについて行うことで、ワイヤの直径の2倍未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなるワイヤ接続部材に対して、円滑かつ確実に、ワイヤの始端部と終端部とをワイヤ接続部材の内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続することができる。
また、始端部と終端部をコイル隙間から引き出す際には、ワイヤ接続部材の軸方向中間部において、接続する側線ワイヤの直径の1.5倍以上4.5倍以下に広げたコイル隙間から引き出すため、引き出すための作業が容易となり、作業時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、コイルばね状スリーブからなるワイヤ接続部材でワイヤに圧縮抵抗を働かせるため、かしめによる強度低下、重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつワイヤのずれ動きを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[ワイヤ接続部材]
以下、ワイヤ接続部材について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るワイヤ接続部材について図面を参照しつつ説明する。図1は第1実施形態に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す側断面図であり、図2は第1実施形態に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【0034】
図1に示されるように、ワイヤ接続部材10は、断面円形状の金属製のばね素線11を、中心軸に対して同一半径上で螺旋状に巻回したストレート形状のコイルばね状スリーブからなる。
【0035】
ワイヤ接続部材10は、そのスリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径D未満(di<D)となるように形成されている。また、ワイヤ接続部材10は、そのばね素線11の素線径dsが側線ワイヤ50の直径Dの1/3以上(ds≧D/3)に形成されている。さらに、ワイヤ接続部材10は、その軸線方向において隣り合うばね素線11の素線部12同士のコイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上1.0倍以下の範囲となるように形成されている。このワイヤ接続部材10は、鋼線やステンレス線等からなる汎用コイルばねを適宜の長さに切断して使用できる。
【0036】
そして、図2に示されるように、このワイヤ接続部材10によって、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを略均等長さずつ内側に収容することで、始端部51と終端部51aとを対向させて突き合わせた状態、または始端部51と終端部51aの端面間に側線ワイヤ50の直径程度の隙間を有する状態、もしくは始端部51と終端部51aの端面間に小さな圧縮荷重がかかる程度の突合せ状態、の何れかで接続する。
【0037】
このようなワイヤ接続部材10は、側線ワイヤ50の直径D未満のスリーブ内径diを有するコイルばね状スリーブからなるため、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを内側に収容し対向状態で接続する場合に、側線ワイヤ50によって径方向に押し広げられることになり、側線ワイヤ50に圧縮抵抗が働き、この圧縮抵抗で側線ワイヤ50のずれ動きが防止される。よって、かしめによる強度低下、重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつ側線ワイヤ50のずれ動きを防止することができる。しかも、ワイヤ接続部材10は、側線ワイヤ50に張力がかかることで軸方向に延びると縮径しようとするため、側線ワイヤ50をより締め付けてずれ動きを確実に防止する。
【0038】
また、ワイヤ接続部材10は、そのスリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径Dの0.79倍以上0.99倍以下の範囲となるように形成されている。スリーブ内径diが側線ワイヤ50の直径Dの0.79倍未満であると、側線ワイヤ50に対する締め付け力が過大となりやすいが、内径diが直径Dの0.79倍以上であると、側線ワイヤ50に対する締め付け力が過大とならず側線ワイヤ50の接続作業性を良好に保つことができる。一方、スリーブ内径diが側線ワイヤ50の直径Dの0.99倍を超えると、側線ワイヤ50がワイヤ接続部材10を径方向に押し広げる力が作用し難くなるため、側線ワイヤ50に対する締め付け力が作用せずに側線ワイヤ50のずれ動きが生じてしまうが、内径diが直径Dの0.99倍以下であると、側線ワイヤ50に対する締め付け力を確実に作用させることができ、側線ワイヤ50の接続安定性を確保できる。
【0039】
また、ワイヤ接続部材10は、素線径dsが側線ワイヤ50の直径の1/3以上とされているため、側線ワイヤ50を接続するために要求される剛性を確保でき、側線ワイヤ50の剛性に比べて剛性が小さすぎると生じる側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51a付近の折れ曲がりを防止できる。
【0040】
さらに、ワイヤ接続部材10は、コイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上1.0倍以下の範囲とされているため、コイル隙間cに側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを挿し入れてコイル隙間cに沿って移動させる工程(後述する)を経て側線ワイヤ50を接続する場合に、コイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上とすることでコイル隙間cへの挿し入れに適し、1.0倍以下とすることで巻数を確保するための長さの長大化を防ぐことができる。よって、コイル隙間cを押し広げて側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを挿し入れるのに要する時間を短縮でき、接続作業の自動化にも良好に対応可能となる。
【0041】
次に、第1実施形態に係るワイヤ接続部材の変形例について図面を参照しつつ説明する。
図3は変形例に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す側断面図であり、図4は変形例に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【0042】
図3に示されるように、ワイヤ接続部材15は、断面矩形状の金属製のばね素線16を、矩形の一辺が中心軸に平行で内径を形成し、矩形の他の一辺が中心軸に平行で外径を形成するようにして、中心軸に対して同一半径上で螺旋状に巻回したストレート形状のコイルばね状スリーブからなる。
【0043】
ワイヤ接続部材15も、そのスリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径D未満(di<D)となるように形成されている。ワイヤ接続部材15においても、スリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径Dの0.79倍以上0.99倍以下の範囲にあることが好ましい。また、ワイヤ接続部材15は、その軸線方向において隣り合うばね素線16の素線部17同士のコイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上1.0倍以下の範囲となるように形成されている。このワイヤ接続部材15も、鋼線やステンレス線等からなる汎用コイルばねを適宜の長さに切断して使用できる。
【0044】
そして、図4に示されるように、このワイヤ接続部材15によって、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを略均等長さずつ内側に収容することで、始端部51と終端部51aとを対向させて突き合わせた状態、または始端部51と終端部51aの端面間に側線ワイヤ50の直径程度の隙間を有する状態、もしくは始端部51と終端部51aの端面間に小さな圧縮荷重がかかる程度の突合せ状態、の何れかで接続する。
【0045】
このようなワイヤ接続部材15は、前述のワイヤ接続部材10に対して、素線断面が矩形状とされているため、側線ワイヤ50との接触面積が大きくなり、同じ圧縮力でもさらに安定してずれ動きを防止できる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るワイヤ接続部材について図面を参照しつつ説明する。図5は第2実施形態に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す側断面図であり、図6は第2実施形態に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【0047】
図5に示されるように、ワイヤ接続部材20は、断面円形状の金属製のばね素線21を、中心軸に対して同一半径上で螺旋状に巻回したストレート形状のコイルばね状スリーブからなる。
【0048】
ワイヤ接続部材20は、そのスリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径Dの2倍未満(di<2D)となるように形成されている。また、ワイヤ接続部材20は、そのばね素線21の素線径dsが側線ワイヤ50の直径Dの1/3以上(ds≧D/3)に形成されている。さらに、ワイヤ接続部材20は、その軸線方向において隣り合うばね素線21の素線部22同士のコイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上1.0倍以下の範囲となるように形成されている。このワイヤ接続部材20も、鋼線やステンレス線等からなる汎用コイルばねを適宜の長さに切断して使用できる。
【0049】
また、ワイヤ接続部材20は、その軸方向中間部の隣り合うばね素線21同士のコイル隙間cを、接続する側線ワイヤ50の直径Dの1.5倍以上4.5倍以下に広げられている。ワイヤ接続部材20の中間部を広げておいても、その内側には2本の側線ワイヤ50が収容されるため、広げた箇所が折れ曲がるようなことはない。
【0050】
そして、図6に示されるように、このワイヤ接続部材20によって、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとをワイヤ接続部材20の全長にわたって内側に収容することで、始端部51と終端部51aとを中心軸方向に沿って重ねた状態で接続する。
【0051】
このようなワイヤ接続部材20は、側線ワイヤ50の直径Dの2倍未満のスリーブ内径diを有するコイルばね状スリーブからなるため、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続する場合に、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとによって押し広げられることになり、側線ワイヤ50に圧縮抵抗が働き、この圧縮抵抗で側線ワイヤ50のずれ動きが防止される。よって、かしめによる強度低下、重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつ側線ワイヤ50のずれ動きを防止することができる。しかも、側線ワイヤ50に張力がかかることで軸方向に延びると縮径しようとするため、側線ワイヤ50をより締め付けてずれ動きを確実に防止する。
【0052】
また、ワイヤ接続部材20は、そのスリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径Dの1.50倍以上1.96倍以下の範囲となるように形成されている。スリーブ内径diが側線ワイヤ50の直径Dの1.50倍未満であると、側線ワイヤ50に対する締め付け力が過大となりやすいが、内径diが直径Dの1.50倍以上であると、側線ワイヤ50に対する締め付け力が過大とならず側線ワイヤ50の接続作業性を良好に保つことができる。一方、スリーブ内径diが側線ワイヤ50の直径Dの1.96倍を超えると、側線ワイヤ50がワイヤ接続部材10を径方向に押し広げる力が作用し難くなるため、側線ワイヤ50に対する締め付け力が作用せずに側線ワイヤ50のずれ動きが生じてしまうが、内径diが直径Dの1.96倍以下であると、側線ワイヤ50に対する締め付け力を確実に作用させることができ、側線ワイヤ50の接続安定性を確保できる。
【0053】
また、ワイヤ接続部材20は、素線径dsが側線ワイヤ50の直径Dの1/3以上とされているため、側線ワイヤ50を接続するために要求される剛性を確保でき、側線ワイヤ50の剛性に比べて剛性が小さすぎると生じる側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51a付近の折れ曲がりを防止できる。
【0054】
さらに、ワイヤ接続部材20は、コイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上1.0倍以下の範囲とされているため、コイル隙間cに側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを挿し入れてコイル隙間cに沿って移動させる工程(後述)を経て側線ワイヤ50を接続する場合に、コイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上とすることでコイル隙間cへの挿し入れに適し、1.0倍以下とすることで巻数を確保するための長さの長大化を防ぐことができる。よって、コイル隙間cを押し広げて側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを挿し入れるのに要する時間を短縮でき、接続作業の自動化にも良好に対応可能となる。
【0055】
次に、第2実施形態に係るワイヤ接続部材の変形例について図面を参照しつつ説明する。図7は変形例に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す側断面図であり、図8は変形例に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【0056】
図7に示されるように、ワイヤ接続部材25は、断面矩形状の金属製のばね素線26を、矩形の一辺が中心軸線に平行で内径を形成し、矩形の他の一辺が中心軸線に平行で外径を形成するようにして、中心軸線に対して同一半径上で螺旋状に巻回したストレート形状のコイルばね状スリーブからなる。
【0057】
ワイヤ接続部材25も、そのスリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径Dの2倍未満(di<2D)となるように形成されている。ワイヤ接続部材25においても、スリーブ内径diが、側線ワイヤ50の直径Dの1.50倍以上1.96倍以下の範囲にあることが好ましい。また、ワイヤ接続部材25は、その軸線方向において隣り合うばね素線26の素線部27同士のコイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの0.2倍以上1.0倍以下の範囲となるように形成されている。このワイヤ接続部材25も、鋼線やステンレス線等からなる汎用コイルばねを適宜の長さに切断して使用できる。
【0058】
また、このワイヤ接続部材25も、その軸方向中間部の隣り合うばね素線26同士のコイル隙間cを、接続する側線ワイヤ50の直径Dの1.5倍以上4.5倍以下に広げられている。ワイヤ接続部材25の中間部を広げておいても、その内側には2本の側線ワイヤ50が収容されるため、広げた箇所が折れ曲がるようなことはない。
【0059】
そして、図8に示されるように、このワイヤ接続部材25によって、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとをワイヤ接続部材25の全長にわたって内側に収容することで、始端部51と終端部51aとを中心軸方向に沿って重ねた状態で接続する。
【0060】
このようなワイヤ接続部材25は、前述のワイヤ接続部材20に対して、素線断面が矩形状とされているため、側線ワイヤ50との接触面積が大きくなり、同じ圧縮力でもさらに安定してずれ動きを防止できる。
【0061】
なお、これまでは、ストレート形状のワイヤ接続部材10,15,20,25を例示して説明したが、側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aも環状コア40(図12参照)に合わせて湾曲させるのが好ましく、よって、ワイヤ接続部材10,15,20,25を環状コア40に沿わせて予めくせ付けして、湾曲形状に形成しておいても良い。
【0062】
そして、上述の各ワイヤ接続部材10,15,20,25を使用して側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを接続したビードコード1は、ワイヤ接続部材のかしめによる強度低下、ワイヤ接続部材の重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつ側線ワイヤ50のずれ動きを防止することができる。したがって、重量バランスの良い、ほつれが生じにくいビードコード1とすることができる。
【0063】
さらに、このビードコード1をビード部110に埋め込んだ車両用タイヤ100は、ワイヤ接続部材のかしめによる強度低下、ワイヤ接続部材の重量によるバランスの悪化及び接着剤やかしめによる接続作業の煩雑化を防止可能としつつ側線ワイヤ50のずれ動きを防止することができる。つまり、重量バランスが良く、ほつれが生じにくいビードコード1をビード部110に埋め込むことにより、長期間にわたって性能を維持することができる。
【0064】
[ワイヤの接続方法]
上記第1実施形態に係るワイヤ接続部材10を用いた側線ワイヤ50の接続方法について図面を参照しつつ説明する。図9は第1実施形態に係るワイヤ接続部材10を用いた側線ワイヤ50の接続方法を示すものであって、(a)は始端部挿入工程、(b)は始端部移動工程後、(c)は始端部切断工程後、(d)は終端部移動工程後をそれぞれ示す側断面図である。
【0065】
まず、図9(a)に示すように、ワイヤ接続部材10における一方側端部のばね素線11の素線部12と隣り合うばね素線11の素線部12とのコイル隙間に、これら素線部12,12同士を離間させながら側線ワイヤ50の始端部51を挿し入れる。このとき、始端部51として十分な余長をとり、側線ワイヤ50の始端部51の先端側がワイヤ接続部材10の外側に位置し、始端部51の逆側がワイヤ接続部材10の内側に位置するように挿し入れる(始端部挿入工程)。
【0066】
次に、この始端部51をその先端側がワイヤ接続部材10の外側に位置する状態を維持しながら、螺旋状のコイル隙間に沿って回転させながら移動させることで、図9(b)に示すように、ワイヤ接続部材10における軸方向中間部までワイヤ接続部材10の内側に通す(始端部移動工程)。
【0067】
次いで、ワイヤ接続部材10における軸方向中間部から外側に突出する始端部51の余長部52を切断除去して、図9(c)に示すように始端部51の全体をワイヤ接続部材10の内側に収容する(始端部切断工程)。
【0068】
上記と同様にして、ワイヤ接続部材10における他方側端部のばね素線11の素線部12と隣り合うばね素線11の素線部12とのコイル隙間に、これら素線部12,12同士を離間させながら側線ワイヤ50の終端部51aを挿し入れる。このときも、終端部51aとして十分な余長をとり、側線ワイヤ50の終端部51aの先端側がワイヤ接続部材10の外側に位置し、終端部51aの逆側がワイヤ接続部材10の内側に位置するように挿し入れる(終端部挿入工程)。
【0069】
その後、この終端部51aをその先端側がワイヤ接続部材10の外側に位置する状態を維持しながら、螺旋状のコイル隙間に沿って回転させながら移動させることで、図9(d)に示すように、ワイヤ接続部材10における軸方向中間部までワイヤ接続部材10の内側に通す(終端部移動工程)。
【0070】
次に、ワイヤ接続部材10における軸方向中間部から外側に突出する終端部51aの余長部52aを切断除去して図2に示すように終端部51aの全体をワイヤ接続部材10内に収容する(終端部切断工程)。
【0071】
以上の工程によって、ワイヤ接続部材10に、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを略均等長さずつ内側に収容することになり、始端部51と終端部51aとを突き合わせ状態で接続する。
【0072】
このような接続方法によれば、側線ワイヤ50の直径未満のスリーブ内径を有するコイルばね状スリーブからなるワイヤ接続部材10に対して、円滑かつ確実に、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとをその内側に収容し対向状態で接続することができる。
【0073】
なお、上記工程は、始端部51と終端部51aとを対向状態で接続できれば、上記順番に限らない。例えば、始端部挿入工程と終端部挿入工程とを同時に行い、始端部移動工程と終端部移動工程とを同時に行って、始端部切断工程と終端部切断工程とを同時に行うことが可能であり、このようにすれば、自動化した場合の時間短縮を図れる。
【0074】
次に、上記第2実施形態に係るワイヤ接続部材20を用いた側線ワイヤ50の接続方法について図面を参照しつつ説明する。図10は第2実施形態に係るワイヤ接続部材20を用いた側線ワイヤ50の接続方法を示すものであって、(a)は始端部挿入工程前、(b)は始端部引出工程後、(c)は終端部引出工程後、(d)は終端部移動工程後をそれぞれ示す側断面図である。
【0075】
まず、図10(a)に示すように、側線ワイヤ50の始端部51を、ワイヤ接続部材20における一方側端部からワイヤ接続部材20の内側を通してワイヤ接続部材20における軸方向中間部(コイル隙間を広げた箇所)まで挿し入れる(始端部挿入工程)。
【0076】
次に、ワイヤ接続部材20の内側にある側線ワイヤ50の始端部51を、ワイヤ接続部材20における軸方向中間部の隣り合うばね素線21の素線部22,22同士の広げたコイル隙間cから、図10(b)に示すように、ワイヤ接続部材20の外側に引き出す(始端部引出工程)。このとき、引き出す始端部51に十分な余長をとる。
【0077】
次いで、側線ワイヤ50の終端部51aを、上記と同様にして、ワイヤ接続部材20における他方側端部からワイヤ接続部材20の内側を通してワイヤ接続部材20における軸方向中間部(コイル隙間を広げた箇所)まで挿し入れる(終端部挿入工程)。
【0078】
さらに、ワイヤ接続部材20の内側にある側線ワイヤ50の終端部51aを、ワイヤ接続部材20における軸方向中間部の隣り合うばね素線21の素線部22,22同士の広げたコイル隙間cから、図10(c)に示すようにワイヤ接続部材20の外側に引き出す(終端部引出工程)。このときも、引き出す終端部51aに十分な余長をとる。
【0079】
始端部51と終端部51aをコイル隙間から引き出す際には、ワイヤ接続部材20の軸方向中間部において、接続する側線ワイヤ50の直径Dの1.5倍以上4.5倍以下に広げたコイル隙間cから引き出すため、引き出すための作業が容易となり、作業時間を短縮することができる。なお、コイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの1.5倍未満であると、隙間を広げる効果が得られにくくなり、コイル隙間cが側線ワイヤ50の直径Dの4.5倍を超えると、ワイヤ接続部材20が不必要に長くなってしまう。
【0080】
その後、ワイヤ接続部材20における軸方向中間部の素線部22,22同士のコイル隙間から外側に突出する側線ワイヤ50の始端部51を、螺旋状のコイル隙間に沿って回転させて移動させることによりワイヤ接続部材20における他方側端部までワイヤ接続部材20の内側に通す(始端部収容工程)。
【0081】
次に、ワイヤ接続部材20における軸方向中間部の素線部22,22同士のコイル隙間から外側に突出する側線ワイヤ50の終端部51aを、螺旋状のコイル隙間に沿って回転させて移動させることによりワイヤ接続部材20における一方側端部までワイヤ接続部材20の内側に通す(終端部収容工程)。これにより、図10(d)に示すように、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとをワイヤ接続部材20の内側を通す状態となる。
【0082】
最後に、ワイヤ接続部材10における端部から外側に突出する始端部51及び終端部51aの余長部52,52aを切断除去し、図6に示すように、始端部51及び終端部51aの全体をワイヤ接続部材20内に収容する(始端部切断工程、終端部切断工程)。
【0083】
以上の工程によって、ワイヤ接続部材20の全長にわたって、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとを収容することで、始端部51と終端部51aとを中心軸方向に沿って重ねた状態で接続する。
【0084】
このような接続方法によれば、側線ワイヤ50の直径の2倍未満のスリーブ内径を有するコイルばね状スリーブからなるワイヤ接続部材20に対して、円滑かつ確実に、側線ワイヤ50の始端部51と終端部51aとをその内側に収容し中心軸方向に沿って重ねた状態で接続することができる。
【0085】
なお、上記工程は、始端部51と終端部51aとを中心軸方向に沿って重ねた状態で接続できれば、上記順番に限らない。例えば、自動化した場合には、始端部挿入工程と終端部挿入工程とを同時に行い、始端部引出工程と終端部引出工程とを同時に行って、始端部移動工程と終端部移動工程とを同時に行い、始端部切断工程と終端部切断工程とを同時に行うことが可能であり、このようにすれば、自動化した場合の時間短縮を図れる。
【実施例】
【0086】
第1実施形態に係るワイヤ接続部材10を用いて上記接続方法で接続した場合の実施例を説明する。
(実施例1)
環状コアの径に対して0.6倍の径で予めくせ付けしたワイヤ接続部材10を用い、線径Dが1.4mmの側線ワイヤ50を接続した。
ワイヤ接続部材10は、ピアノ線A種(SWP−A)からなり、素線径dsが0.90mm、スリーブ内径diが1.2mm、巻数nが8、コイル隙間cが0.8mmである。
このような実施例1で側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aをワイヤ接続部材10の内側に対向状態で接続した。その結果、良好に側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを接続することができた。
【0087】
(実施例2)
環状コアの径に対して1.0倍の径にて予めくせ付けしたワイヤ接続部材10を用い、線径Dが1.4mmの側線ワイヤ50を接続した。
ワイヤ接続部材10は、ピアノ線A種(SWP−A)からなり、素線径dsが1.2mm、スリーブ内径diが1.1mm、巻数nが10、コイル隙間cが0.5mmである。
このような実施例2で側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aをワイヤ接続部材20の内側に対向状態で接続した。その結果、良好に側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを接続することができた。
【0088】
第2実施形態に係るワイヤ接続部材20を用いて上記接続方法で接続した場合の実施例を説明する。
(実施例3)
環状コアの径に対して0.6倍の径にて予めくせ付けしたワイヤ接続部材10を用い、線径Dが1.4mmの側線ワイヤ50を接続した。
ワイヤ接続部材20は、ピアノ線A種(SWP−A)からなり、素線径dsが0.60mm、スリーブ内径diが2.4mm、巻数nが10、コイル隙間cが0.6mm、中央部のコイル隙間cが3.8mmである。
このような実施例3で側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aをワイヤ接続部材20の内側に軸方向に重ねた状態で接続した。その結果、良好に側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを接続することができた。
【0089】
(実施例4)
環状コアの径に対して1.0倍の径にて予めくせ付けしたワイヤ接続部材10を用い、線径Dが1.4mmの側線ワイヤ50を接続した。
ワイヤ接続部材20は、ピアノ線A種(SWP−A)からなり、素線径dsが1.2mm、スリーブ内径diが2.2mm、巻数nが12、コイル隙間cが0.4mm、中央部のコイル隙間cが4.9mmである。
このような実施例4で側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aをワイヤ接続部材20の内側に軸方向に重ねた状態で接続した。その結果、良好に側線ワイヤ50の始端部51及び終端部51aを接続することができた。
【0090】
なお、上記実施形態のワイヤ接続部材10,15,20,25は、車両用タイヤのビードワイヤの側線ワイヤの接続以外の種々のワイヤの接続にも適用可能である。例えば、無端金属ベルトや伝動ベルトに使用される環状金属コードの外層部を接続することにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1実施形態に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す分解側断面図である。
【図2】第1実施形態に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【図3】第1実施形態の変形例に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す分解側断面図である。
【図4】第1実施形態の変形例に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【図5】第2実施形態に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す分解側断面図である。
【図6】第2実施形態に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【図7】第2実施形態の変形例に係るワイヤ接続部材とこれによって接続される側線ワイヤの始端部及び終端部を示す分解側断面図である。
【図8】第2実施形態の変形例に係るワイヤ接続部材による側線ワイヤの始端部及び終端部の接続状態を示す側断面図である。
【図9】第1実施形態に係るワイヤ接続部材を用いた側線ワイヤの接続方法を示すものであって、(a)は始端部挿入工程、(b)は始端部移動工程後、(c)は始端部切断工程後、(d)は終端部移動工程後をそれぞれ示す側断面図である。
【図10】第2実施形態に係るワイヤ接続部材を用いた側線ワイヤの接続方法を示すものであって、(a)は始端部挿入工程、(b)は始端部引出工程後、(c)は終端部引出工程後、(d)は終端部移動工程後をそれぞれ示す側面図である。
【図11】車両用タイヤの部分断面図である。
【図12】ビードコードの製造図である。
【図13】(a)はスリーブ形状の接続部材のビードコードへの取付図、(b)はその拡大図である。
【図14】(a)は半円筒形状の接続部材の斜視図、(b)はそのビードコードへの取付図である。
【符号の説明】
【0092】
1…ビードコード、10,15,20,25…ワイヤ接続部材、50…側線ワイヤ(ワイヤ)、51…端部、100…車両用タイヤ、110…ビード部、c…コイル隙間、D…ワイヤの直径、di…スリーブ内径、ds…素線径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤの一対の端部を内側に収容し対向状態で接続するワイヤ接続部材であって、前記ワイヤの直径未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤ接続部材であって、
前記コイルばね状スリーブの内径が、前記ワイヤの直径の0.79倍以上0.99倍以下の範囲にあることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワイヤ接続部材であって、
素線断面が矩形状であることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項4】
請求項1または2に記載のワイヤ接続部材であって、
素線径が前記ワイヤの直径の1/3以上であることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のワイヤ接続部材であって、
コイル隙間が前記ワイヤの直径の0.2倍以上1.0倍以下の範囲にあることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項6】
ワイヤの一対の端部を内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続するワイヤ接続部材であって、前記ワイヤの直径の2倍未満の内径を有するコイルばね状スリーブからなることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項7】
請求項6に記載のワイヤ接続部材であって、
前記コイルばね状スリーブの内径が、前記ワイヤの直径の1.50倍以上1.96倍以下の範囲にあることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項8】
請求項6または7に記載のワイヤ接続部材であって、
素線断面が矩形状であることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項9】
請求項6または7に記載のワイヤ接続部材であって、
素線径が前記ワイヤの直径の1/3以上であることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項10】
請求項6から9の何れか一項に記載のワイヤ接続部材であって、
コイル隙間が前記ワイヤの直径の0.2倍以上1.0倍以下の範囲にあることを特徴とするワイヤ接続部材。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載のワイヤ接続部材を使用して、側線ワイヤの始端部と終端部とを接続したことを特徴とするビードコード。
【請求項12】
請求項11に記載のビードコードをビード部に埋め込んだことを特徴とする車両用タイヤ。
【請求項13】
請求項1から5の何れか一項に記載のワイヤ接続部材を使用し、
前記ワイヤ接続部材における一方側端部のばね素線と隣り合うばね素線とのコイル隙間にワイヤの始端部を挿し入れ、前記始端部をコイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで通し、前記ワイヤ接続部材の軸方向中間部から外側に突出する余長部を切断除去し、
前記ワイヤ接続部材における他方側端部のばね素線と隣り合うばね素線とのコイル隙間に前記ワイヤの終端部を挿し入れ、前記終端部をコイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで通し、前記ワイヤ接続部材の軸方向中間部から外側に突出する余長部を切断除去し、
前記ワイヤの前記始端部と前記終端部とを前記ワイヤ接続部材の内側に収容し対向状態で接続することを特徴とするワイヤの接続方法。
【請求項14】
請求項6から10の何れか一項に記載のワイヤ接続部材を使用し、
前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部の隣り合うばね素線同士のコイル隙間を、接続する前記ワイヤの直径の1.5倍以上4.5倍以下に広げておき、
ワイヤの始端部を、前記ワイヤ接続部材における一方側端部から内側を通して前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで挿し入れて前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部の隣り合うばね素線同士のコイル隙間から引き出し、
ワイヤの終端部を、前記ワイヤ接続部材における他方側端部から内側を通して前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部まで挿し入れて前記ワイヤ接続部材における軸方向中間部の隣り合うばね素線同士のコイル隙間から引き出し、
コイル隙間から外側に突出する前記ワイヤの前記始端部を、コイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における前記他方側端部まで通すとともに、コイル隙間から外側に突出する前記ワイヤの前記終端部を、コイル隙間に沿って前記ワイヤ接続部材における前記一方側端部まで通すことにより、前記ワイヤの前記始端部と前記終端部とを前記ワイヤ接続部材の内側に収容し軸方向に沿って重ねた状態で接続することを特徴とするワイヤの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−238808(P2008−238808A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308788(P2007−308788)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【出願人】(504211429)栃木住友電工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】