説明

ワンウェイダンパーおよび電子機器

【課題】 大きな制動トルクを得ることができるとともに、制動トルクを一定の精度に保つことのできるワンウェイダンパーを提供する。
【解決手段】 円筒状のハウジング(11,21)と、このハウジング(11,21)内に収容されるシリコーンオイル(31)と、回転中心となる中心部43、この中心部43から半径方向へ起立してハウジング(11,21)内を2分するとともに、流通路46が設けられている起立部45を有し、中心部43および起立部45がハウジング(11,21)内に回転可能に収められるローター41と、中心部43を抱持する抱持部52、この抱持部52の一端から延び、流通路46を開閉する自由端部53で構成されたバルブ体51と、ハウジング(11,21)とローター41との間からシリコーンオイル(31)が漏れるのを防止するOリング61とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回動体が一方向へ回転または回動するのを制動するワンウェイダンパー、および、このワンウェイダンパーを使用した電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上記したワンウェイダンパーとして、円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容される粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立してハウジング内を2分するとともに、ハウジングとの間に連通路を形成する制御壁を有し、中心部および制御壁がハウジング内に回転可能に収められるローターと、一端を中心部の制御壁近傍を回転中心とし、他端がハウジングの内面に当接し、ローターとともに回転する制御弁と、ハウジングとローターとの間から粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したものが提案されている。
【特許文献1】特許第2882109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したワンウェイダンパーは、ハウジングとローターおよび制御弁との隙間がオリフィスとして機能するが、制御弁の回動支点に自由度を持たせているので、制動時のオリフィスが大きく、大きな制動トルクが得られなかった。
【0004】
この発明は、大きな制動トルクを得ることができるとともに、制動トルクを一定の精度に保つことのできるワンウェイダンパー、および、このワンウェイダンパーバルブを使用した電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、以下のような発明である。
(1)この発明のワンウェイダンパーは、円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容される粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したことを特徴とする。
(2)(1)に記載のワンウェイダンパーにおいて、前記自由端部は、前記起立部に対して中心角で1.5度から3.0度回動して離れることにより、前記流通路を開放させて前記ハウジングの内周面に当接することを特徴とする。
(3)(2)に記載のワンウェイダンパーにおいて、前記ハウジングの内周面に当接する前記自由端部の部分を、前記ハウジングの内周面に当接する傾斜面としたことを特徴とする。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載のワンウェイダンパーにおいて、前記抱持部の他端から前記流通路を閉塞しないように延び、前記起立部に当接する当接部を設けたことを特徴とする。
(5)(1)から(4)のいずれか1つに記載のワンウェイダンパーにおいて、前記ローターを、弾性を有する合成樹脂製としたことを特徴とする。
(6)(1)から(5)のいずれか1つに記載のワンウェイダンパーにおいて、前記ローターに、前記バルブ体を配置する窪みを設けたことを特徴とする。
(7)(1)から(6)のいずれか1つに記載のワンウェイダンパーにおいて、前記流通路の断面が前記自由端部側へ向かって順次狭くなっていることを特徴とする。
(8)(1)から(7)のいずれか1つに記載のワンウェイダンパーにおいて、前記ハウジングの内側に、前記ローターの回転を規制する回転規制部を設けたことを特徴とする。
(9)(1)から(8)のいずれか1つに記載のワンウェイダンパーにおいて、前記ローターをガラス入り合成樹脂製とし、前記バルブ体をポリアセタール製としたことを特徴とする。
(10)本体に対して入力部が起伏可能に取り付けられた電子機器において、円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容された粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したワンウェイダンパーを回動軸として使用し、前記入力部が起立状態から伏倒するのを制動することを特徴とする。
(11)本体に対してモニター部が起伏可能に取り付けられた電子機器において、円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容された粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したワンウェイダンパーを回動軸として使用し、前記モニター部が前記本体上へ伏倒するのを制動することを特徴とする。
(12)本体に対して入力部を水平方向へ出し入れ可能に収納し、前記本体に対して収納させた前記入力部を付勢部材によって前記本体から押し出す方向へ付勢した電子機器において、円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容された粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したワンウェイダンパーで、前記入力部が前記本体から前記付勢部材の付勢力によって飛び出すのを制動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明のワンウェイダンパーによれば、ローターの起立部に流通路を設け、この流通路をバルブ体の自由端部で開閉する構成としたので、オリフィスとして機能するハウジングとローターとの隙間が狭くなることにより、大きな制動トルクを得ることができるとともに、制動トルクを一定の精度に保つことができる。
そして、自由端部が、起立部に対して中心角で1.5度から3.0度回動して離れることにより、流通路を開放させてハウジングの内周面に当接するようにしたので、流通路を開放させたときに起立部と自由端部との間に残留する粘性流体の量が少なくなることにより、ローターが制動トルクを発生する方向へ回動し始める初期において、起立部と自由端部との間に存在する少量の粘性流体が素速くなくなるため、所期の制動トルクを得ることができる。
さらに、ハウジングの内周面に当接する自由端部の部分を、ハウジングの内周面に当接する傾斜面としたので、自由端部の長さを長くしても自由端部を撓ませることができ、また、自由端部がハウジングの内周面に傾斜面で当接することにより、ハウジングの内周面に当接する自由端部の回動角度(中心角)を精度よく設定することが可能になる。
そして、抱持部の他端から流通路を閉塞しないように延び、起立部に当接する当接部を設けたので、流通路を通過した粘性流体が自由端部に作用して抱持部を中心部から外す力が作用しても、抱持部が中心部から外れるのを当接部が阻止することにより、所期のトルクを安定して発生させることができる。
さらに、ローターを、弾性を有する合成樹脂製としたので、ローターに粘性流体の制動トルクが偏って作用しても、その制動トルクをローターの弾性で吸収できることにより、ローターの損傷、破損を防止することができる。
そして、ローターに、バルブ体を配置する窪みを設けたので、バルブ体の軸方向への移動を規制でき、窪みの深さをバルブ体の厚みとすると、粘性流体の厚さが均一となり、制動トルクの変動がなくなるとともに、制動トルクを一定にすることができる。
さらに、流通路の断面をバルブ体の自由端部側へ向かって順次狭くしたので、非制動方向へのローターの回転にも制動トルクを作用させることができる。
そして、ハウジングの内側に、ローターの回転を規制する回転規制部を設けたので、1回転のワンウェイダンパーとすることができる。
さらに、ローターをガラス入り合成樹脂製とし、バルブ体をポリアセタール製としたので、荷重のかかるローターに強度を持たせることができ、ローターの損傷、破損を防止することができる。
この発明の電子機器によれば、入力部が起立状態から伏倒するのを、または、モニター部が本体上へ伏倒するのを、または、入力部が本体から付勢部材の付勢力によって飛び出すのをワンウェイダンパーによって制動することができ、入力部、モニター部の損傷、破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
【0008】
図1はこの発明の一実施例であるワンウェイダンパーの分解斜視図、図2は図1に示したケースの正面図、図3は図2のA−A線による断面図、図4は図3のB−B線に相当するケースの断面図、図5は図1に示したローターの正面図、図6は図5のC−C線による断面図、図7は図5のD−D線による断面図、図8は図1に示した各部品を組み立てたワンウェイダンパーの正面図、図9は図8に示したワンウェイダンパーの平面図、図10は図8のE−E線による断面図、図11は図9のF−F線による断面図、図12および図13はこの発明の一実施例であるワンウェイダンパーの動作説明図である。
【0009】
図1において、Dはワンウェイダンパーを示し、剛性を有する合成樹脂製、例えば、ポリカーボネート製のケース11と、このケース11の開放端を閉塞する剛性を有する合成樹脂製、例えば、ポリカーボネート製のキャップ21と、キャップ21で閉塞されるケース11内に収容される粘性流体としてのシリコーンオイル31(図10参照)と、ケース11内に回転可能に収められ、キャップ21の貫通孔23から外部へ突出する作動軸部48を有する合成樹脂製、例えば、ポリアセタール製のローター41と、このローター41に取り付けられる合成樹脂製、例えば、ポリアセタール製のバルブ体51と、キャップ21とローター41との間からシリコーンオイルが漏れるのを防止するシール部材である、例えば、自己潤滑シリコーンゴムで成形したOリング61とで構成されている。
なお、ハウジングは、ケース11と、キャップ21とで構成されている。
【0010】
上記したケース11は、図1〜図4に示すように、有底円筒状のケース本体12と、このケース本体12の底の外側に一体的に形成された第1取付部16と、ケース本体12の外周に軸方向へ一体的に形成され、両端をリブ20で補強された第2取付部18とで構成されている
そして、ケース本体12には、底の内側に円柱状の凹部からなる軸支部13が設けられ、外周の軸方向に、内側へ円弧状に突出させた突出部からなる回動規制部14が底から所定の位置まで軸方向へ設けられ、開放端の内側に、周回した段部15が設けられている。
そして、第1取付部16には取付用切欠17が設けられ、また、第2取付部18には取付孔19が設けられている。
なお、回動規制部14は、ローター41を構成する中心部43の外周、および、バルブ体51を構成する抱持部52の外周に内周が当接し、ローター41を構成するフランジ部47に、ケース本体12の底と反対側が当接する。
【0011】
上記したキャップ21は、図1に示すように、貫通孔23を有する環状の閉塞部22と、貫通孔23の周囲に周回して一体的に設けられ、ケース11の段部15内へ挿入される環状突出部24とで構成されている。
【0012】
上記したローター41は、図1、図5〜図7に示すように、ケース11の軸支部13内に回転可能に挿入される円柱状の支軸42と、この支軸42の一端に同心で連設された円柱状の中心部43と、この中心部43から半径方向へ起立させて連設され、ケース本体12の内周面に当接してケース本体12内を、回動規制部14とともに2つの区画A,B(図10参照)に区画する起立部45と、中心部43の支軸42と反対側に同心で連設され、ケース本体12の段部15内へ回転可能に挿入されるフランジ部47と、このフランジ部47の中心部43と反対側に同心で連設され、キャップ21から突出するIカット状の作動軸部48とで構成されている。
そして、中心部43および起立部45には、起立部45の一側端から中心部43の外周を経由して起立部45の他側端へ至る、軸方向へ延びた窪み44が設けられている。
なお、窪み44の深さは、バルブ体51の抱持部52を中心部43の窪み44に装着すると、中心部43の外周と抱持部52の外周とが面一になる深さ、すなわち、抱持部52の厚さとされ、また、窪み44の長さ(ローター41の軸方向の長さ)は、バルブ体51の長さ(バルブ体51の軸方向の長さ)とされている。
また、起立部45には、窪み44にバルブ体51を装着した状態で、バルブ体51の自由端部53へ向かって順次断面が狭くなる流通路46が設けられている。
そして、流通路46は、長さ(ローター41の軸方向の長さ)が窪み44の長さよりも短く、窪み44の軸方向の両端部分に設けられていない部分がある。
【0013】
上記したバルブ体51は、図1に示すように、ローター41を構成する中心部43の窪み44に装着される円弧状の、中心部43を抱持する抱持部52と、この抱持部53の一端から半径方向と平行に延び、起立部45の窪み44内に位置して流通路46を開閉する自由端部53とで構成されている。
【0014】
次に、ワンウェイダンパーDの組立の一例について説明する。
まず、ケース本体12の開放端側を上側にしてケース11を固定し、ケース本体12内へ適量のシリコーンオイル31を注入する。
そして、自由端部53を流通路46の断面の狭い方に対応させるとともに、抱持部52を窪み44に対向させ、抱持部52の弾性を利用して抱持部52内へ中心部43を挿入して抱持部52に中心部43を抱持させることにより、ローター41にバルブ体51を取り付ける。
次に、支軸42、中心部43、起立部45、フランジ部47の中心部43側およびバルブ体51にシリコーンオイル31を塗布した後、ケース本体12内へ支軸42側からローター41を挿入する。
【0015】
このようにしてローター41をケース本体12内へ挿入すると、支軸42が軸支部13内に回転可能に嵌合し、中心部43がケース本体12の底に当接し、中心部43および抱持部52が回動規制部14の内周面に当接し、起立部45の外周がケース本体12の内周面に当接するとともに、フランジ部47が回動規制部14および段部15に当接する。
【0016】
そして、ローター41の作動軸部48をOリング61に嵌めた後、環状突出部24側を下側にしてキャップ21の貫通孔23内へ作動軸部48を挿入し、閉塞部22でケース本体12の開放端を閉塞する。
【0017】
このようにしてOリング61およびキャップ21を装着すると、閉塞部22でケース本体12の開放端が閉塞され、また、Oリング61がケース本体12、環状突出部24、フランジ部47および作動軸部48に圧接することにより、ハウジングとローター41との間からシリコーンオイル31が漏れるのを防止する。
【0018】
次に、ケース本体12の上端とキャップ21の外縁との間を、例えば、高周波溶着で周回するように溶着して密閉することにより、図8〜図11に示すように、ワンウェイダンパーDを組み立てることができ、組立が終了する。
【0019】
このようにしてワンウェイダンパーDを組み立てると、ハウジング内は回動規制部14および起立部45により、2つの区画A,Bに区画される。
【0020】
次に、動作について説明する。
なお、ワンウェイダンパーDは、第1取付部16および/または第2取付部18によってハウジングが固定されているものとする。
まず、図12の状態において、ローター41の作動軸部48に反時計方向へ回転させる力が作用すると、起立部45およびバルブ体51も反時計方向へ回転し始めるので、区画A内のシリコーンオイル31が加圧され、加圧されたシリコーンオイル31が自由端部53を起立部45へ押圧し、流通路46を閉塞する。
したがって、区画A内のシリコーンオイル31がハウジングとローター41との隙間(オリフィス)を通過して区画B内へ流れるため、作動軸部48が反時計方向へ回転するのを制動する。
【0021】
次に、図12の状態において、ローター41の作動軸部48に時計方向へ回転させる力が作用すると、起立部45およびバルブ体51も時計方向へ回転し始めるので、区画B内のシリコーンオイル31が加圧され、図13に示すように、加圧されたシリコーンオイル31が流通路46を通過して自由端部53を押圧し、流通路46を開放させる。
したがって、区画B内のシリコーンオイル31が流通路46を通過して区画A内へ流れるため、作動軸部48が時計方向へ回転するのにあまり制動がかからなくなる。
【0022】
上述したように、この発明の一実施例によれば、ローター41の起立部45に流通路46を設け、この流通路46をバルブ体51の自由端部53で開閉する構成としたので、オリフィスとして機能するハウジングとローター41との隙間が狭くなることにより、大きな制動トルクを得ることができるとともに、制動トルクを一定の精度に保つことができる。
そして、ローター41を、弾性を有するポリアセタール製としたので、ローター41にシリコーンオイル31の制動トルクが偏って作用しても、その制動トルクをローター41の弾性で吸収できることにより、ローター41の損傷、破損を防止することができる。
さらに、ローター41に、バルブ体51を配置する窪み44を設けたので、バルブ体51の軸方向への移動を規制でき、窪み44の深さをバルブ体51の厚みとすると、シリコーンオイル31の厚さが均一となり、制動トルクの変動がなくなるとともに、制動トルクを一定にすることができる。
そして、流通路46の断面をバルブ体51の自由端部53側へ向かって順次狭くしたので、非制動方向へのローター41の回転にも制動トルクを作用させることができる。
さらに、ケース本体12の内側に、ローター41の回転を規制する回転規制部14を設けたので、1回転のワンウェイダンパーDとすることができる。
【0023】
図14はこの発明の他の実施例であるワンウェイダンパーの分解斜視図、図15は図14に示したローターの窪みに図14に示したバルブ体を取り付け、X方向から見た図、図16および図17はこの発明の他の実施例であるワンウェイダンパーの動作説明図であり、図1〜図13と同一または相当部分に同一符号が付してある。
【0024】
この実施例が先の実施例と異なるところは、バルブ体51の自由端部53が、図17に示すように、ローター41の起立部45に対して中心角αで1.5度から3.0度、さらに好ましくは起立部45に対して中心角αで2.0度回動して離れることにより、流通路46を開放させてケース11の内周面に当接する点と、ケース11の内周面に当接するバルブ体51の自由端部53の部分を、ケース11の内周面に当接する傾斜面54とした点と、図15に示すように、バルブ体51を構成する抱持部52の他端からローター41の流通路46を閉塞しないように延び、起立部45に当接する当接部55を設けた点とである。
なお、当接部55は、2つに分割された流通路46に対応する部分に切欠56が設けられることにより、流通路46を閉塞しないようになっている。
【0025】
この実施例のワンウェイダンパーDの組立は先の実施例と同様になるので、その説明を省略し、動作について説明する。
なお、ワンウェイダンパーDは、第1取付部16および/または第2取付部18によってハウジングが固定されているものとする。
【0026】
まず、図16の状態において、ローター41の作動軸部48に反時計方向へ回転させる力が作用すると、起立部45およびバルブ体51も反時計方向へ回転し始めるので、区画A内のシリコーンオイル31が加圧され、加圧されたシリコーンオイル31が自由端部53を起立部45へ押圧し、流通路46を閉塞する。
したがって、区画A内のシリコーンオイル31がハウジングとローター41との隙間(オリフィス)を通過して区画B内へ流れるため、作動軸部48が反時計方向へ回転するのを制動する。
【0027】
次に、図16の状態において、ローター41の作動軸部48に時計方向へ回転させる力が作用すると、起立部45およびバルブ体51も時計方向へ回転し始めるので、区画B内のシリコーンオイル31が加圧され、図17に示すように、加圧されたシリコーンオイル31が流通路46を通過して自由端部53を押圧し、流通路46を開放させる。
このようにして自由端部53が流通路46を開放させるとき、自由端部53はローター41の起立部45に対して中心角αで、例えば、2.0度回動して離れることにより、流通路46を開放させてケース11の内周面に当接する。
したがって、区画B内のシリコーンオイル31が流通路46を通過して区画A内へ流れるため、作動軸部48が時計方向へ回転するのにあまり制動がかからなくなる。
【0028】
この実施例によれば、先の実施例と同様な効果が得られるとともに、自由端部53が、起立部45に対して中心角αで1.5度から3.0度内の2.0度回動して離れることにより、流通路46を開放させてケース11の内周面に当接するようにしたので、流通路46を開放させたときに起立部45と自由端部53との間に残留するシリコーンオイル31の量が少なくなることにより、ローター41が制動トルクを発生する方向へ回動し始める初期において、起立部45と自由端部53との間に存在する少量のシリコーンオイル31が素速くなくなるため、所期の制動トルクを得ることができる。
なお、自由端部53が、起立部45に対して中心角αで5.0度以上回動すると、起立部45と自由端部53との間に残留するシリコーンオイル31の量が多くなることにより、ローター41が制動トルクを発生する方向へ回動し始める初期において、起立部45と自由端部53との間に存在する多量のシリコーンオイル31が素速くなくならないため、所期の制動トルクを得ることができなくなる。
そして、ケース11の内周面に当接する自由端部53の部分を、ケース11の内周面に当接する傾斜面54としたので、自由端部53の長さを長くしても自由端部53を撓ませることができ、また、自由端部53がケース11の内周面に傾斜面54で当接することにより、ケース11の内周面に当接する自由端部53の回動角度(中心角)を精度よく設定することが可能になる。
さらに、抱持部52の他端から流通路46を閉塞しないように延び、起立部45に当接する当接部55を設けたので、流通路46を通過したシリコーンオイル31が自由端部53に作用して抱持部52を中心部43から外す力が作用しても、抱持部52が中心部43から外れるのを当接部55が阻止することにより、所期のトルクを安定して発生させることができる。
【0029】
図18はこの発明のワンウェイダンパーを使用した電子機器の一例を示す説明図である。
【0030】
図18において、PAは電子機器としてのパーソナルコンピュータを示し、本体Oに対して入力部Iが起伏可能に取り付けられ、回動部分Xの回動軸として上記したワンウェイダンパーが使用されている。
そして、ワンウェイダンパーは、本体Oに沿うように起立させた状態から入力部Iを伏倒させるときに制動トルクが発生するように取り付けられている。
【0031】
このパーソナルコンピュータPAを使用する場合、入力部Iを起立状態に維持する、図示を省略してロック機構のロックを解除し、入力部Iの上端を少し手前に引くと、入力部Iが自重で伏倒するが、この入力部Iの伏倒がワンウェイダンパーによって制動される。
【0032】
図19はこの発明のワンウェイダンパーを使用した電子機器の他の例を示す説明図である。
【0033】
図19において、PBは電子機器としてのパーソナルコンピュータを示し、本体Oに対してモニター部Mが起伏可能に取り付けられ、回動部分Xの回動軸として上記したワンウェイダンパーが使用されている。
そして、ワンウェイダンパーは、起立状態のモニターMを本体O上へ伏倒させるときに制動トルクが発生するように取り付けられている。
【0034】
このパーソナルコンピュータPBの使用を終了する場合、起立しているモニター部Mの上端を手前に引いてモニター部Mを本体O上へ伏倒させると、モニター部Mの伏倒がワンウェイダンパーによって制動される。
【0035】
図20はこの発明のワンウェイダンパーを使用した電子機器のさらに他の例を示す説明図である。
【0036】
図20において、PCは電子機器としてのパーソナルコンピュータを示し、本体Oに対して入力部Iを水平方向へ出し入れ可能に収納し、本体Oに対して収納させた入力部Iを、図示を省略した付勢部材によって本体Oから押し出す方向へ付勢する構成とされている。
そして、ワンウェイダンパーは、本体Oから入力部Iが突出するときに制動トルクが発生するように取り付けられている。
【0037】
このパーソナルコンピュータPCを使用する場合、本体Oに入力部Iを収納させた状態で、図示を省略してロック機構のロックを解除すると、付勢部材の付勢力によって入力部Iが本体Oから突出するが、例えば、この入力部Iを搬送する搬送台に設けられているラックに噛み合う歯車機構がワンウェイダンパーの作動軸部を回動させることにより、本体Oから飛び出す入力部Iがワンウェイダンパーによって制動される。
【0038】
上述したように、この発明のパーソナルコンピュータPA〜PCによれば、入力部Iが起立状態から伏倒するのを、または、モニター部Mが本体O上へ伏倒するのを、または、入力部Iが本体Oから付勢部材の付勢力によって飛び出すのをワンウェイダンパーによって制動することができ、入力部I、モニター部Mの損傷、破損を防止することができる。
【0039】
上記した実施例では、ローター41をポリアセタール樹脂で成形した例を示したが、ローター41を、30重量%のガラス入り合成樹脂製とすることにより、荷重のかかるローター41に強度を持たせることができるとともに、熱膨張率を小さく抑えることができ、ローター41の損傷、破損を防止することができるとともに、温度変化による寸法の変化を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施例であるワンウェイダンパーの分解斜視図である。
【図2】図1に示したケースの正面図である。
【図3】図2のA−A線による断面図である。
【図4】図3のB−B線に相当するケースの断面図である。
【図5】図1に示したローターの正面図である。
【図6】図5のC−C線による断面図である。
【図7】図5のD−D線による断面図である。
【図8】図1に示した各部品を組み立てたワンウェイダンパーの正面図である。
【図9】図8に示したワンウェイダンパーの平面図である。
【図10】図8のE−E線による断面図である。
【図11】図9のF−F線による断面図である。
【図12】この発明の一実施例であるワンウェイダンパーの動作説明図である。
【図13】この発明の一実施例であるワンウェイダンパーの動作説明図である。
【図14】この発明の他の実施例であるワンウェイダンパーの分解斜視図である。
【図15】図14に示したローターの窪みに図14に示したバルブ体を取り付け、X方向から見た図である。
【図16】この発明の他の実施例であるワンウェイダンパーの動作説明図である。
【図17】この発明の他の実施例であるワンウェイダンパーの動作説明図である。
【図18】この発明のワンウェイダンパーを使用した電子機器の一例を示す説明図である。
【図19】この発明のワンウェイダンパーを使用した電子機器の他の例を示す説明図である。
【図20】この発明のワンウェイダンパーを使用した電子機器のさらに他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
D ワンウェイダンパー
11 ケース(ハウジング)
12 ケース本体
13 軸支部
14 回動規制部
15 段部
16 第1取付部
17 取付用切欠
18 第2取付部
19 取付孔
20 リブ
21 キャップ(ハウジング)
22 閉塞部
23 貫通孔
24 環状突出部
31 シリコーンオイル(粘性流体)
41 ローター
42 支軸
43 中心部
44 窪み
45 起立部
46 流通路
47 フランジ部
48 作動軸部
51 バルブ体
52 抱持部
53 自由端部
54 傾斜面
55 当接部
56 切欠
61 Oリング(シール部材)
A,B 区画
α 中心角
PA パーソナルコンピュータ(電子機器)
PB パーソナルコンピュータ(電子機器)
PC パーソナルコンピュータ(電子機器)
O 本体
I 入力部
M モニター部
X 回動部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のハウジングと、
このハウジング内に収容される粘性流体と、
回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、
前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、
前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成した、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記自由端部は、前記起立部に対して中心角で1.5度から3.0度回動して離れることにより、前記流通路を開放させて前記ハウジングの内周面に当接する、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項3】
請求項2に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記ハウジングの内周面に当接する前記自由端部の部分を、前記ハウジングの内周面に当接する傾斜面とした、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記抱持部の他端から前記流通路を閉塞しないように延び、前記起立部に当接する当接部を設けた、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記ローターを、弾性を有する合成樹脂製とした、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記ローターに、前記バルブ体を配置する窪みを設けた、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記流通路の断面が前記自由端部側へ向かって順次狭くなっている、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記ハウジングの内側に、前記ローターの回転を規制する回転規制部を設けた、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のワンウェイダンパーにおいて、
前記ローターをガラス入り合成樹脂製とし、
前記バルブ体をポリアセタール製とした、
ことを特徴とするワンウェイダンパー。
【請求項10】
本体に対して入力部が起伏可能に取り付けられた電子機器において、
円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容された粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したワンウェイダンパーを回動軸として使用し、前記入力部が起立状態から伏倒するのを制動する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
本体に対してモニター部が起伏可能に取り付けられた電子機器において、
円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容された粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したワンウェイダンパーを回動軸として使用し、前記モニター部が前記本体上へ伏倒するのを制動する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項12】
本体に対して入力部を水平方向へ出し入れ可能に収納し、前記本体に対して収納させた前記入力部を付勢部材によって前記本体から押し出す方向へ付勢した電子機器において、
円筒状のハウジングと、このハウジング内に収容された粘性流体と、回転中心となる中心部、この中心部から半径方向へ起立して前記ハウジング内を2分するとともに、流通路が設けられている起立部を有し、前記中心部および前記起立部が前記ハウジング内に回転可能に収められるローターと、前記中心部を抱持する抱持部、この抱持部の一端から延び、前記流通路を開閉する自由端部で構成されたバルブ体と、前記ハウジングと前記ローターとの間から前記粘性流体が漏れるのを防止するシール部材とで構成したワンウェイダンパーで、前記入力部が前記本体から前記付勢部材の付勢力によって飛び出すのを制動する、
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−71097(P2006−71097A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226575(P2005−226575)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】