説明

ワークの受け渡し装置

【課題】 リードフレームのような開口部が多いワークであっても、ワークの引き渡しおよび受け取りを確実に行うことが可能なワーク受け渡し装置を提供する。
【解決手段】 ワークを載置する載置面10が設けられた引渡部30と、ワークを載置面10からエア吸着して受け取る受取面50が設けられた受取部70とを備えるワークの受け渡し装置であって、受取面50には、ワークをエア吸着するための複数の吸着孔42が形成され、載置面10には、吸着孔42の一部またはすべてと対向する配置にエア供給路14が設けられていることを特徴とするワークの受け渡し装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークの受け渡し装置に関し、より詳細には、開口部が多いワークであってもエア吸引により確実にワークを保持して受け渡しすることが可能なワークの受け渡し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアの吸引によりワークを吸着保持し、ワークを所望の位置へ搬送する吸着搬送装置には様々なものが提案されている。しかしながら、リードフレームのような開口部が多いワークを吸着しようとすると、ワークを確実に吸着保持することが困難になり、搬送の途中でワークが落下してしまうことがある。
【0003】
このように、吸着面において、開口部が多いワークを吸着保持する搬送装置に用いられる吸着用チャックとして、例えば、多孔質でゴム弾性を有するスポンジ状の通気性部材が吸着孔内に装着されたものがある。
この吸着用チャックによれば、吸着面にスポンジ状部材が配設されているので、リードフレームのような薄板構造で変形しやすいワークであっても、ワークを傷めることなく吸着することができる。
【特許文献1】特開平5−166850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に説明したような吸着用チャックにおいては、対向させた吸着用チャック間でリードフレーム等の開口部が多いワークの受け渡しを行おうとする場合、リードフレームの引き渡し側の吸着用チャックのエア吸引を解除して受け取り側の吸着部からエア吸引をしても、受け取り側の吸着用チャックにワークを吸着させることができない。
これは、リードフレームのような開口部が多いワークを吸着する場合には、吸着部から大量の空気を吸引することによって生じる気流を利用してワークを保持するのであるが、吸着部どうしを対向させて配置した場合は、エアがワークの側面方向からしか流入せず、ワークの吸着に十分なエアを確保することができないためと考えられる。
【0005】
本発明は、吸引吸着によりワークの引き渡しおよび受け取りをするワーク受け渡し装置であって、リードフレームのような開口部が多いワークであっても、吸着部間でワークの受け渡しを確実に行うことが可能なワーク受け渡し装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワークを載置する載置面が設けられた引渡部と、前記ワークを前記載置面からエア吸着して受け取る受取面が設けられた受取部とを備えるワークの受け渡し装置であって、前記受取面には、前記ワークをエア吸着するための複数の吸着孔が形成され、前記載置面には、前記吸着孔の一部またはすべてと対向する配置にエア供給路が設けられていることを特徴とするワークの受け渡し装置である。
【0007】
また、前記吸着孔は複数列に整列して配設され、前記エア供給路が前記複数列に配設された各列の吸着孔の孔位置に対向して設けられていることを特徴とする。
これにより、吸着孔に対するエアの供給を十分に行うことができるので、確実なワークの吸着保持が可能になる。
【0008】
また、前記載置面に、前記ワークをエア吸着するための吸着孔が設けられていることを特徴とする。
また、前記受取面に、前記載置面に設けられた吸着孔の一部またはすべてと対向する配置にエア供給路が設けられていることを特徴とする。
これらにより、引渡部と受取部を対にすれば、複数回にわたってワークの受け渡しが可能になる。
【0009】
また、前記エア供給路は、前記受取面を横断する凹溝に形成されていることを特徴とする。
また、前記エア供給路は、前記載置面を横断する凹溝に形成されていることを特徴とする。
これらにより、さらに好適にエア吸着時におけるエアの供給が可能になる。
【0010】
また、前記ワークは、リードフレームであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、引渡部の載置面上にあるワークを、受取部で吸着保持しようとする場合、引渡部の載置面には、受取部における吸着孔の位置に対応する位置にエア供給路が形成されており、受取部において十分なエアを吸引することができるため、ワークの受け渡しを確実行うことができる。
このように受取部が吸引するエアの容量が多いため、特に、リードフレーム等の開口部分が多いワークの受け渡しを円滑に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるワークの受け渡し装置についての実施の形態について詳細に説明する。図1は、リードフレームの受け渡しに使用するワークの受け渡し装置において、引渡部と受取部を対向させて配置した状態の断面図である。図2(a)は受取部の底面図であり、図2(b)は引渡部の平面図である。
【0013】
本実施の形態におけるリードフレームの受け渡し装置は、吸着孔12と、エア供給路である凹溝14が形成された吸着板10および吸着板10を支持する本体部20を有する引渡部30と、吸着孔42とエア供給路である凹溝44が形成された吸着板50および吸着板50を支持する本体部60を有する受取部70と、引渡部および受取部にそれぞれ接続された吸引手段(図示せず)と、引渡部30と受取部70をそれぞれ任意の方向に移動可能に設けられた移動手段(図示せず)とを具備している。
吸引手段としては、例えば真空ポンプが用いられる。また、移動手段としては、例えば流体シリンダ、レール、チェーンベルトをそれぞれ単独または組み合わせたものが用いられる。
【0014】
引渡部30と受取部70における吸着板10、50は金属板あるいは樹脂板により形成される。吸着板10、50には、板体の厚さ方向に貫通する吸着孔12、42が所要間隔をあけた複数の列状に設けられ、吸着孔12、42の列間に吸着板10および50の表面を直線的に横断するように凹溝14、44が形成されている。
【0015】
図1、図2に示すように、引渡部30の吸着板10に形成された吸着孔12は、受取部70の吸着板50に形成された凹溝44と対向するように配設され、引渡部30の吸着板10に形成された凹溝14は、受取部70の吸着板50に形成された吸着孔42に対向するように配設されている。それぞれの凹溝14、44の幅寸法は、対向する吸着孔42、12の径寸法よりも大きく形成されている。また、凹溝14、44の両端縁は、各々吸着板10、50の外縁(部)に連通している。
【0016】
引渡部30と受取部70の各本体部20、60は、略長方形の開口部を有する漏斗状に形成されている。吸着板10、50の対向面は、それぞれ本体部20、60の開口縁部から凹溝14、44の深さ分以上突出するように取り付けられている。すなわち、吸着板10、50は、本体部20、60に取り付けられた状態で、凹溝14、44の両端部が本体部20、60の縁部によって遮蔽されず大気中に開放された状態になっている。
吸着板10、50と本体部20、60とは、図示しないシール部材を介して嵌合又はネジ止め等の支持方法により取り付けされている。
リードフレーム受け渡し装置は、以上のように形成されている。
【0017】
次に、本リードフレームの受け渡し装置を用いたリードフレームの受け渡しについて説明する。図3〜5は、本実施の形態において、リードフレームの受け渡し方法を示す説明断面図である。
【0018】
搬送装置から搬送されてきたリードフレーム90は、自動機または手動により引渡部30の吸着板10に位置合わせして載置され、本体部20に接続された吸引手段によりエア吸引することにより、リードフレーム90は、吸着孔12からエア吸引されて吸着板10に吸着保持される(図3)。
リードフレーム90が吸着保持された後、制御手段により移動手段(共に図示せず)を作動させ、引渡部30を引き渡し位置まで移動し、引渡部30の吸着板10を受渡部70の吸着板50に対向させて、リードフレーム90を吸着板50に接触させた状態にする(図4)。
【0019】
リードフレーム90が受取部70の吸着板50に接触した後、制御手段は、引渡部30の吸引手段を停止させると共に、受取部70の吸引手段を作動させる。受取部70の吸引手段が吸引を開始すると、引渡部30の吸着板10に形成された凹溝14部分から空気が供給される。先述のとおり、凹溝14は、受取部70に設けられた吸着孔42と対向する位置に設けられ、かつ、凹溝14の両端部が大気中に連通しているため受取部70の吸引手段が吸引を開始した際に、十分な空気の吸引量が確保されることになる。これにより、リードフレーム90を受取部70の吸着板50に確実に吸着保持させることができる(図5)。
リードフレーム90を吸着保持した受取部70は、図示しない移動手段により、任意の方向に移動されたのち、次の処理に移される。
【0020】
(第2の実施形態)
図6は、リードフレームの受取装置の第2の実施形態における引渡部の平面図と受取部の底面図を示したものである。第1の実施形態においては、吸着板10、50に設けられた凹溝14、44は、吸着板10、50を一方向のみに直線的に横断するように設けられている(図1、図2参照)が、図6に示すように、例えば、吸着板10の吸着面に十字状の平面配置に設けることも可能である。また、凹溝14(第1の実施形態においては44も同様)は、必ずしも両端部が共に大気中に連通していなくてもよく、いずれか一方の端部のみが大気中に連通する形態であってもよい。この場合も、吸着孔42が直接的に凹溝14からエア吸引することができるため、リードフレーム90を吸着保持するのに必要なエア吸引量は十分に確保することができる。
【0021】
(第3の実施形態)
図7は、リードフレームの受け渡し装置の第3の実施形態の構成を示す断面図である。図8は、リードフレームの受け渡し装置の第3の実施形態における受取部の底面図と引渡部の平面図である。
本実施の形態においては、受取部70について吸着孔42を所要間隔をあけた複数列状に配置する一方、引渡部30については、受取部70に設けられた吸着孔42の各列配置に合わせて一列とばしの位置に凹溝14が形成されている。引渡部30では凹溝14のみを設け、吸着孔を設けず、受取部70では吸着孔42のみを設け、凹溝を設けていない。凹溝14と吸着孔42とを対向配置させる構成は、先の実施形態と同様である。このような構成のリードフレームの受け渡し装置は、引渡部30が上下方向のみに移動する場合や、引渡部30を移動させる移動手段の動作が緩やかである場合において採用可能であり、リードフレームの受け渡し装置の製造コストを低減させることができる。
【0022】
(第4の実施形態)
図9は、リードフレームの受け渡し装置の第4の実施形態における受取部の底面図と引渡部の平面図である。図9のうち(a)が、受取部の底面図であり、(b)が、引渡部の平面図である。
以上に説明した本実施の形態におけるリードフレームの受け渡し装置においては、吸着孔12、42は、所要間隔をあけた複数列(いわゆるマトリクス状)に配設されているが、吸着孔12、42の配設状態は、このような配設状態に限定されるものではない。本実施形態においては、図9に示すように複数の吸着孔12、42を散点的に配設する形態を採用したものである。
【0023】
本実施形態においては、引渡部30と受取部70のうち、凹溝14は、引渡部30のみに設けられていて、しかも凹溝14の配設位置は、受取部70の吸着孔42のうち、複数の吸着孔42を連続させて形成した経路46と対向する位置に設けられている。凹溝14の一端部または両端部は、吸着板10の外縁部に連通し、大気中に開放されているのはもちろんである。
このような凹溝14の配設形態であっても、受取部70の吸着孔42によりエア吸引した際に、吸着孔42へのエア供給が十分に行うことができるため、リードフレームの受け渡しは確実かつ円滑に行うことができる。
【0024】
これと同様にして、受取部70にも引渡部30の吸着孔12のうち、複数の吸着孔12を連続させて形成した経路と対向する配置に凹溝を形成することもできる。この場合には、引渡部30と受取部70とでリードフレームをクランプした状態で対向させた場合に、引渡部30の凹溝14と受取部70の凹溝が重複しないように配設するようにする。
【0025】
以上の実施形態においては、引渡部30と受取部70が共に移動可能とした状態に構成されているが、引渡部30は必ずしも移動可能でなければならないものではない。固定式の引渡部30の一例として、支持脚等を有する載置板において、載置板の厚さ方向に貫通し、両端部が載置板の外部に連通する貫通孔が形成された形態のものや、ピン支持によりリードフレームを支持した形態のものが考えられる。要は、受取部70においてエア吸引をした際に吸着孔42に十分なエアを供給することができればよいのである。
【0026】
また、引渡部30のエア供給路12および受取部70のエア供給路42の形態は、必ずしも凹溝や貫通孔でなくてもよく、一方がエア吸引した際に、他方の吸着孔に十分なエアを供給することができれば、他の形状を採用することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】リードフレームの受け渡しに使用するワークの受け渡し装置において、引渡部と受取部を対向させて配置した状態の断面図である。
【図2】図1における受取部の底面図と引渡部の平面図である。
【図3】リードフレームの受け渡し方法を示す説明断面図である。
【図4】リードフレームの受け渡し方法を示す説明断面図である。
【図5】リードフレームの受け渡し方法を示す説明断面図である。
【図6】リードフレームの受取装置の第2の実施形態における引渡部の平面図と受取部の底面図を示したものである。
【図7】リードフレームの受け渡し装置の第3の実施形態の構成を示す断面図である。
【図8】リードフレームの受け渡し装置の第3の実施形態における受取部の底面図と引渡部の平面図である。
【図9】リードフレームの受け渡し装置の第4の実施形態における受取部の底面図と引渡部の平面図である。
【符号の説明】
【0028】
10、50 吸着板
10A 載置板
12、42 吸着孔
14、44 凹溝(エア供給路)
46 経路
20、60 本体部
30 引渡部
70 受取部
90 リードフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置する載置面が設けられた引渡部と、
前記ワークを前記載置面からエア吸着して受け取る受取面が設けられた受取部とを備えるワークの受け渡し装置であって、
前記受取面には、前記ワークをエア吸着するための複数の吸着孔が形成され、
前記載置面には、前記吸着孔の一部またはすべてと対向する配置にエア供給路が設けられていることを特徴とするワークの受け渡し装置。
【請求項2】
前記吸着孔は複数列に整列して配設され、前記エア供給路が前記複数列に配設された各列の吸着孔の孔位置に対向して設けられていることを特徴とする請求項1記載のワークの受け渡し装置。
【請求項3】
前記載置面に、前記ワークをエア吸着するための吸着孔が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のワークの受け渡し装置。
【請求項4】
前記受取面に、前記載置面に設けられた吸着孔の一部またはすべてと対向する配置にエア供給路が設けられていることを特徴とする請求項3記載のワークの受け渡し装置。
【請求項5】
前記エア供給路は、前記受取面を横断する凹溝に形成されていることを特徴とする請求項4記載のワークの受け渡し装置。
【請求項6】
前記エア供給路は、前記載置面を横断する凹溝に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項記載のワークの受け渡し装置。
【請求項7】
前記ワークは、リードフレームであることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項記載のワークの受け渡し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−179725(P2006−179725A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372242(P2004−372242)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】