説明

ワークの支持方法及びその装置

【課題】 ワークの投入、排出にかかる時間を短縮できるワークの支持方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 ワークの支持方法は、開始位置で、中心孔に支持軸21を嵌挿させた円筒状の素材W0の両端を第一移動軸受11及び第二移動軸受16で挟持させる第一段階と、支持軸21及び移動軸受11、16と一体に素材W0を軸線方向他方へ移動させ素材W0に加工を施す第二段階と、加工終了後、支持軸21の軸線方向一方外側に加工前の素材W0を投入する第三段階と、支持軸21を開始位置まで移動させ、投入した加工前の素材W0の中心孔に支持軸21を嵌挿する第四段階と、支持軸21の軸線方向他方外側から加工済みの加工品を払い出す第五段階とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のワークを支持するワークの支持方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状のワーク(素材)に必要な加工を施し所定の加工品を成形する場合、例えば歯形成形された歯車素材に仕上げ加工を施し所定寸法の歯車加工品を成形する場合、図5に示す如く、ワークの支持装置及び仕上げ加工装置141を使用していた。
【0003】
ここで歯車素材W0は、棒状のワーク保持具120に固定された状態で、ワーク保持具120の一端端部を支持ユニット111のチャック112により固定され、他端端部を固定治具121のセンター122により押圧固定される。そして歯車素材W0に対して対向する位置に配置される仕上げ加工装置141の仕上げ工具142を歯車素材W0側へ移動させて、仕上げ工具142を歯車素材W0へ押圧しながら回転させることにより、歯車素材W0を所定寸法の歯車加工品W1に仕上げていた。
【特許文献1】特公平7−16815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如きワークWの加工において使用される支持装置110は、ワークWの一端側を固定する支持ユニット111と他端側を固定する固定治具121からなり、ワークWは加工後、支持装置110から取り外され、支持装置110の外側へ排出、連続して加工前のワークWを投入、支持装置110に取り付けられていた。このように支持装置110へのワークWの投入及び排出が同位置で連続的に行われるため、各工程で待機時間が発生し、結果としてトータルの加工時間が長くなるということがある。
【0005】
また、ワークWの投入及び排出が同位置で行われると、加工前のワークWと加工後のワークWが隣接する位置に保管されるためワークWが混同してしまう恐れがあり、更に保管スペースを広くとれないという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワークの支持方法は、開始位置で、中心孔に支持軸を嵌挿させた円筒状の素材の両端を第一移動軸受及び第二移動軸受で挟持させる第一段階と、支持軸及び移動軸受と一体に素材を軸線方向他方へ移動させ素材に加工を施す第二段階と、加工終了後、支持軸の軸線方向一方外側に加工前の素材を投入する第三段階と、支持軸を開始位置まで移動させ、投入した加工前の素材の中心孔に支持軸を嵌挿する第四段階と、支持軸の軸線方向他方外側から加工済みの加工品を払い出す第五段階とからなることを第1の特徴とする。
【0007】
また、本発明のワークの支持方法は上記第1の特徴に加え、支持軸の軸線方向一方端部及び他端端部に当接する第二プッシュロッド及び第一プッシュロッドにて、支持軸を軸線方向に移動させることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明のワークの支持装置は、ワークの中心孔に挿嵌され、軸線方向に移動可能な支持軸と、支持軸に嵌挿されるワークの軸線方向両端を挟持する第一移動軸受及び第二移動軸受とからなることを第3の特徴とする。
【0009】
また、本発明のワークの支持装置は上記第3の特徴に加え、支持軸の軸線方向両端外側に各々同心状に配置され、支持軸を軸線方向へ押圧移動させる第一プッシュロッド及び第二プッシュロッドとを配置することを第4の特徴とする。
【0010】
更に、本発明のワークの支持装置は上記第3又は第4の特徴に加え、第一移動軸受及び第二移動軸受の軸線方向外側に固定され、軸線方向に移動する支持軸を摺動自在に支持する補助軸受を配置することを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴のワークの支持方法によれば、ワークの投入及び排出を異なる位置で連続的に行うことができるため、各工程での待機時間を短くでき、トータルの加工時間も短縮できる。また、加工前のワークと加工後のワークを異なる位置で保管できるため、ワークを混同することがなく、保管スペースも広くとれる。
【0012】
また、本発明の第2の特徴のワークの支持方法によれば、支持軸の軸線方向の移動を確実に行うことができ、支持装置の信頼性を高めることができる。
【0013】
本発明の第3の特徴のワークの支持装置によれば、本発明の第1の特徴のワークの支持方法を容易に実現することができる。
【0014】
また、本発明の第4の特徴のワークの支持装置によれば、本発明の第2の特徴のワークの支持方法を容易に実現することができる。
【0015】
更にまた、本発明の第5の特徴のワークの支持装置によれば、支持軸を補助軸受が支持するため、支持軸の軸線方向の移動をスムーズに行うことができ、安定してワークを支持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ワークの投入、排出にかかる時間を短縮することを、簡単な方法及び装置で実現した。
【実施例】
【0017】
図1乃至図4は本発明によるワークの支持方法及びその装置の実施例を示すもので、図1はワークの支持装置及び仕上げ加工装置を表す平面図、図2の(ア)乃至(ウ)は支持方法の第一及び第二段階を表す部分断面正面図、図3の(ア)乃至(ウ)は支持方法の第三及び第四段階を表す部分断面正面図、図4の(ア)乃至(ウ)は支持方法の第5段階を表す部分断面正面図である。
【0018】
図1は円筒状のワークW、この場合、外周に歯形6を有する歯車素材W0を支持する支持装置10と、歯車素材W0に仕上げ加工を施す仕上げ加工装置41を示す。
【0019】
まず歯車素材W0を支持する支持装置10を図1及び図2の(ア)に基づいて説明すると、支持装置10は、棒状の支持軸21と支持軸21の軸線方向両端外側に各々同心状に配置されるプッシュロッド22.23と、支持軸21を支持する軸受11,16,31とからなる。支持軸21は、歯車素材W0の中心に形成される中心孔2の内径とほぼ同一の外径を有し、軸線方向へ移動可能である。また、プッシュロッド22,23は、支持軸21の軸線方向一方端部に当接する第二プッシュロッド23と軸線方向他方端部に当接する第一プッシュロッド22とからなり、各々プッシュロッド22,23は図示せぬ駆動装置により軸線方向へ移動可能である。軸受11,16,31は、ベース35に固定される補助軸受31と、アーム12,17と一体に軸線方向へ移動可能な移動軸受11,16とからなり、補助軸受31は支持軸21の軸線方向一方側に配置され、補助軸受31の保持部33が軸線方向に移動する支持軸21を摺動自在に支持する。また、移動軸受11,16は、支持軸21上で軸線方向一端側に配置される第二移動軸受16と他端側に配置される第一移動軸受11とからなり、第二移動軸受16は歯車素材W0の一端端面に当接する第二把持部18を備え、第一移動軸受11は歯車素材W0の他端端面に当接する第一把持部13を備える。
【0020】
次に仕上げ加工装置41を図1に基づいて説明すると、歯車素材W0の歯形6に当接する仕上げ工具42がスピンドル43を介してモータ44に連結され、モータ44は更に工具台45を介してテーブル46に連結される。そしてテーブル46及び工具台45には図示せぬモータが備えられ、このテーブル46及び工具台45を連動させることにより、仕上げ工具42を歯車素材W0に対して進退自在に移動できる。
【0021】
上記支持装置10で歯車素材W0を支持する方法及び支持された歯車素材W0に仕上げ加工を施す工程を説明する。
【0022】
まず図2の(ア)に示す如く、支持軸21に嵌挿させた歯車素材W0の両端を、第一移動軸受11の第一把持部13及び第二移動軸受16の第二把持部18との間で挟持し、仕上げ加工前の開始位置に配置する。このとき補助軸受31の保持部33が支持軸21を摺動自在に軸支する。
【0023】
この状態から第二プッシュロッド23を前進させ、支持軸21及び移動軸受11,16と一体に歯車素材W0を軸線方向他方へ移動させて、図2の(イ)に示す如く、所定の加工位置で歯車素材W0を停止させる。このとき支持軸21は補助軸受31から外れ、第一移動軸受11と第二移動軸受16とにより支持される。そして図1に示す如く、歯車素材W0に対向する位置に配置した仕上げ工具42が前進して、歯形6に当接すると同時に歯形6全周に渡り仕上げ加工を施し、加工終了後、仕上げ工具42は退避する。退避すると同時に第二プッシュロッド23は更に前進し、図2の(ウ)に示す如く、仕上げ加工が終了した歯車加工品W1は終了位置まで移動する。
【0024】
次に、図3の(ア)に示す如く、一旦、第二プッシュロッド23は若干後方へ下がるとともに、この下がることにより発生する第二プッシュロッド23と支持軸21との間の空間に、図3の(イ)に示す如く、新しい歯車素材W0が投入される。そして、図3の(ウ)に示す如く、第一プッシュロッド22を前進させることにより、支持軸21を加工前の開始位置まで移動させて歯車素材W0を嵌挿すると同時に、第二移動軸受16を支持軸21から離し、歯車素材W0の横を通過させて開始位置へ復帰させる。このとき支持軸21は再び補助軸受31に軸支される。
【0025】
その後、図4の(ア)に示す如く、第一プッシュロッド22は歯車加工品W1から外れる位置まで下がり、図4の(イ)に示す如く、歯車加工品W1は支持装置10から排出される。最後に第一移動軸受11を開始位置へ復帰させて加工の開始状態となる。
【0026】
上記ワークWの支持工程を繰り返し行うことにより、連続的に仕上げ加工を行うことができる。
【0027】
このようにワークの支持方法が、開始位置で、中心孔2に支持軸21を嵌挿させた円筒状の歯車素材W0の両端を第一移動軸11受及び第二移動軸受16で挟持させる第一段階と、支持軸21及び移動軸受11,16と一体に歯車素材W0を軸線方向他方へ移動させ歯車素材W0に加工を施す第二段階と、加工終了後、支持軸21の軸線方向一方外側に加工前の歯車素材W0を投入する第三段階と、支持軸21を開始位置まで移動させ、投入した加工前の歯車素材W0の中心孔2に支持軸21を嵌挿する第四段階と、支持軸21の軸線方向他方外側から加工済みの加工品W1を払い出す第五段階とからなると、ワークWの投入及び排出を異なる位置で連続的に行うことができる。
【0028】
また、上記ワークの支持方法に加え、支持軸21の軸線方向一方端部及び他端端部に当接する第二プッシュロッド23及び第一プッシュロッド22にて、支持軸21を軸線方向に移動させると、支持軸21の軸線方向の移動を確実に行うことができる。
【0029】
次にワークの支持装置が、ワークWの中心孔2に挿嵌され、軸線方向に移動可能な支持軸21と、支持軸に嵌挿されるワークWの軸線方向両端を挟持する第一移動軸受11及び第二移動軸受16とからなると、第1のワークの支持方法を実現できる。
【0030】
また、上記ワークの支持装置に加え、支持軸21の軸線方向両端外側に各々同心状に配置され、支持軸21を軸線方向へ押圧移動させる第一プッシュロッド22及び第二プッシュロッド23とを配置すると、第2のワークの支持方法を実現できる。
【0031】
更に、上記ワークの支持装置に加え、第一移動軸受11及び第二移動軸受16の軸線方向外側に固定され、軸線方向に移動する支持軸21を摺動自在に支持する補助軸受31を配置すると、支持軸21を補助軸受31が支持するため、支持軸21の軸線方向の移動をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例のワークの支持装置及び一般的な仕上げ加工装置を表す平面図である。
【図2】本発明の実施例のワークの支持方法を表し、(ア)乃至(ウ)は第一及び第二段階を表す部分断面正面図である。
【図3】本発明の実施例のワークの支持方法を表し、(ア)乃至(ウ)は第三及び第四段階を表す部分断面正面図である。
【図4】本発明の実施例のワークの支持方法を表し、(ア)乃至(ウ)は第五段階を表す部分断面正面図である。
【図5】従来のワークの支持装置及び一般的な仕上げ加工装置を表す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
W ワーク
W0 (歯車)素材
W1 (歯車)加工品
2 中心孔
11 第一移動軸受
16 第二移動軸受
21 支持軸
22 第一プッシュロッド
23 第二プッシュロッド
31 補助軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のワーク(W)を支持するワークの支持方法において、開始位置で、中心孔(2)に支持軸(21)を嵌挿させた円筒状の素材(W0)の両端を第一移動軸受(11)及び第二移動軸受(16)で挟持させる第一段階と、前記支持軸(21)及び移動軸受(11),(16)と一体に素材(W0)を軸線方向他方へ移動させ素材(W0)に加工を施す第二段階と、加工終了後、前記支持軸(21)の軸線方向一方外側に加工前の素材(W0)を投入する第三段階と、前記支持軸(21)を開始位置まで移動させ、投入した加工前の素材(W0)の中心孔(2)に支持軸(21)を嵌挿する第四段階と、該支持軸(21)の軸線方向他方外側から加工済みの加工品(W1)を払い出す第五段階とからなることを特徴とするワークの支持方法。
【請求項2】
支持軸(21)の軸線方向一方端部及び他端端部に当接する第二プッシュロッド(23)及び第一プッシュロッド(22)にて、前記支持軸(21)を軸線方向に移動させることを特徴とする請求項1記載のワークの支持方法。
【請求項3】
円筒状のワーク(W)を支持するワークの支持装置において、ワーク(W)の中心孔(2)に挿嵌され、軸線方向に移動可能な支持軸(21)と、該支持軸(21)に嵌挿されるワーク(W)の軸線方向両端を挟持する第一移動軸受(11)及び第二移動軸受(16)とからなることを特徴とするワークの支持装置。
【請求項4】
支持軸(21)の軸線方向両端外側に各々同心状に配置され、前記支持軸(21)を軸線方向へ押圧移動させる第一プッシュロッド(22)及び第二プッシュロッド(23)とを配置することを特徴とする請求項3記載のワークの支持装置。
【請求項5】
前記第一移動軸受(11)及び第二移動軸受(16)の軸線方向外側に固定され、軸線方向に移動する支持軸(21)を摺動自在に支持する補助軸受(31)を配置することを特徴とする請求項3又は4記載のワークの支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−150521(P2006−150521A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345787(P2004−345787)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000238360)武蔵精密工業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】