説明

ワークの貼り合わせ方法および貼り合わせ装置

【課題】樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラス基板からなる2枚のワークを、接合の一様性を確保しつつ、アライメントずれや破損といった不具合が生じないように貼り合わせること。
【解決手段】第1のワークW1を反転ステージユニット30の反転ステージ31に載置し、第2のワークW2を加圧ステージユニット20のワークステージ21上に載置し、光照射ユニット10からUV光を照射する。次いで、反転ステージ31を180°反転させて、ワークステージ21上でワークW1,W2を重ね合わせ、ワークW1,W2を加圧して仮接合する。そして仮接合状態のワークを、搬送手段により加熱ステージに搬送し、加熱機構で加熱してワーク温度を所定温度まで昇温させて、接合が完了するまでをこの温度を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラス基板からなるワークの貼り合わせ方法および装置に関し、特に、少なくとも一方に微細な流路が形成されているワーク同士を貼り合わせるための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばシリコン、シリコーン、ガラスなどよりなる小さな基板上に、半導体微細加工の技術によってマイクロスケールの分析用チャネルなどを形成したマイクロチップよりなるマイクロリアクタを用いて微量の試薬の分離、合成、抽出、分析などを行う手法が注目されている。
このようなマイクロリアクタを用いた反応分析システムは、マイクロ・トータル・アナリシス・システム(以下、「μTAS」という。)と称されており、μTASによれば、試薬の体積に対する表面積の比が大きくなることなどから高速かつ高精度の反応分析を行うことが可能となり、また、コンパクトで自動化されたシステムを実現することが可能となる。
【0003】
マイクロチップでは、マイクロチャンネルとも呼ばれる流路に、試薬が配置された反応領域など、各種機能を有する領域を設けることにより、様々な用途に適したチップを構成できる。マイクロチップの用途としては、遺伝子解析、臨床診断、薬物スクリーニングなどの化学、生化学、薬学、医学、獣医学の分野における分析、あるいは、化合物の合成、環境計測などが代表的である。
上記したマイクロチップは、典型的には一対の基板が対向して接着された構造を有し、少なくとも1つの上記基板の表面に微細な流路(例えば、幅10〜数100μm、深さ10〜数100μm程度)が形成されている。これまでマイクロチップには、製造が容易であり、光学的な検出も可能であることから、主にガラス基板が用いられている。また、最近では、軽量でありながらガラス基板に比べて破損しにくく、かつ、安価な、樹脂基板を用いたマイクロチップの開発が進められている。
【0004】
マイクロチップの貼り合わせ方法としては、接着剤を使用する方法、熱融着による方法が考えられる。しかしながら、両者は以下の理由により好ましくない。
接着剤を使用する場合、接着剤が微小流路に染みだして流路が閉塞したり、微小流路の一部が狭くなって流路が不均一となったり、また流路壁面の均質な特性の乱れの発生といった問題が発生する。
また、熱融着の場合、加熱溶融温度以上で融着すると加熱段階で流路がつぶれてしまうとか、流路が所定の断面形状に保持できないなどの問題が生じ、熱融着による接着では、マイクロチップの高機能化が困難となる。
そこで、近年は真空紫外光を基板表面に照射して、基板表面を活性化させた後に基板を貼り合わせる方法が一般的である。
【0005】
例えば、特許文献1においては、樹脂からなる複数のマイクロチップ用基板の貼り合わせに際し、例えば、シクロオレフィンポリマー(Cyclo Olefin Polymer:COP)等からなる2枚の樹脂基板の少なくとも一方の基板表面に波長172nmに輝線を有するエキシマランプからの光を照射して、その後、両基板を積層して組成変形温度未満までの温度に加熱したり、あるいは加熱することなく加圧して両者を接合する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2においては、例えば、COP等からなる2枚の樹脂基板の表面それぞれに波長172nmの真空紫外光を照射して、照射後の各表面を互いに接触させた状態で昇温させることで両者を接着させる方法が提案されている。なお、昇温工程は、上記各表面が互いに密着する方向に力を加えながら行っても良い。
【0007】
更には、特許文献3においては、例えば、COPやPMMA(Polymethyl methacrylate)等からなる2枚の樹脂基板の表面それぞれに波長172nmの真空紫外光を照射して照射後の各表面を積層し、両基板に圧力を加えながら上記両基板を接着させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−187730号公報
【特許文献2】特開2008−19348号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/087800A1パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らが鋭意研究の結果、上記した従来の貼り合わせ方法について、以下のことが判明した。
特許文献1や特許文献3に記載されているように樹脂からなるマイクロチップ基板表面に例えば波長172nmの真空紫外光を照射し、光照射後被照射面同士を積層して加圧することにより両マイクロチップ基板を接合する場合、両マイクロチップ基板の接合状態が必ずしも一様ではなく、接合面において十分に接合できている箇所とあまり接合ができていない箇所とが混在していることが判明した。その理由は明らかではないが、少なくとも1枚のマイクロチップ基板には接合時に流路を形成する溝部が形成されており、当該溝部が形成されている領域がマイクロチップ基板表面において偏在していることが多いので、両マイクロチップ基板への加圧が必ずしも均一に行われていない可能性があるためと考えられる。
仮に一様な加圧が実現されていなくても、両マイクロチップ基板への加圧圧力を比較的大きくすると接合面における接合が不十分な箇所の発生を解消できる可能性もある。しかしその場合は、以下のような不具合が発生する可能性がある。
【0010】
上記したように、マイクロチップは、一対の基板が対向して接着された構造を有し、少なくとも1つの上記基板の表面に微細な流路(例えば、幅10〜数100μm、深さ10〜数100μm程度)が形成されている。特に、一対の基板双方に微細な溝部をそれぞれ設け両基板を重ね合わせて対向する各溝部により一つの流路を形成する場合、両マイクロチップ基板の重ね合わせる際、両マイクロチップ基板の高精度の位置合わせ(アライメント)が必要となる。
【0011】
ここで、仮に両マイクロチップ基板への加圧圧力を増大させると、両マイクロチップ基板が変形する可能性がある。特に両マイクロチップ基板の材質がCOPのような樹脂である場合、加圧による変形の可能性が大きくなる。両マイクロチップ基板が変形すると、両マイクロチップ基板のアライメントずれが生じたり、流路自体の変形が発生するといった不具合が発生する。
また、特許文献2に記載されているように樹脂からなるマイクロチップ基板表面に例えば波長172nmの真空紫外光を照射し、照射後の各表面を互いに接触させた状態で昇温させることで両者を接着させる場合は、以下の不具合が発生する。
【0012】
上記したように真空紫外光照射後の各マイクロチップ基板表面を互いに接触させた状態で昇温させると、各マイクロチップ基板には熱膨張が発生する。特に2枚のマイクロチップ基板が異種材料の場合は、それぞれの熱膨張率量が異なるために各マイクロチップ基板の熱膨張の度合いも異なる。そのため、高精度に2枚のマイクロチップ基板を位置合わせして積層したとしても、加熱処理時に2枚のマイクロチップ基板それぞれの表面に形成された微細な溝部同士の位置関係がずれ、結果的に流路形状に不具合が発生してしまう。
特に特許文献2に記載されているように、積層したマイクロチップ基板全体を100℃に昇温しそのまま1時間保持する場合、このような流路形成の不具合が発生する確率が高くなる。
【0013】
本発明は上記したような事情を鑑みなされたものであって、その課題は、樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラス基板からなる2枚の基板(ワーク)の貼り合わせて接合するに際し、接合の一様性の確保が可能であって、かつ、加圧や熱膨張によるアライメントずれといった不具合が抑制されるようなワークの貼り合わせ方法および当該方法を実施するためのワークの貼り合わせ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、上記課題を解決するため、少なくとも一方に微細な流路が形成されている樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラス基板からなる第一および第二のワーク同士を貼り合せるためのワーク貼り合わせを次のように行う。
【0015】
〔工程1〕
少なくとも一方に微細な流路が形成されている一対のワーク(例えば、マイクロチップ基板)の接合面に波長200nm以下の真空紫外光を照射する。なお、真空紫外光を照射するのは、2枚のワークの接合面両方でもよいし、片方でもよい。
この工程により、真空紫外光が照射された接合面が活性化される。
〔工程2〕
真空紫外光が照射された接合面同士を対向させて位置合わせを行い、位置合わせ終了後、接合面同士が接触するように積層する。
【0016】
〔工程3〕
積層された一対のワークを加圧して、加圧状態を所定時間維持する。なお、加圧圧力は、ワーク変形が発生しない圧力に設定される。
この加圧処理により活性化された面同士の接合反応が生じる。ここで上記した所定時間とは、接合面において十分に接合できている箇所とあまり接合ができていない箇所とが混在しているものの両ワークが接合状態となるまでの時間である。
すなわち、本工程3で一対の2枚のワークは「仮接合」される。
〔工程4〕
上記した所定時間加圧後加圧状態を解除し、「仮接合」状態のワークを加熱し、ワーク温度を所定温度まで昇温させて、接合が完了するまでをこの温度を維持する。ここで、所定温度とはワークの変形が生じない程度の温度であり、接合の完了とは、〔工程3〕終了後に接合面に存在していたあまり接合ができていない箇所が十分な接合状態となった状態を示す。
【0017】
すなわち、本発明は、一対のワークの接合面に波長200nm以下の真空紫外光を照射し、真空紫外光が照射された接合面同士を対向させて位置合わせを行って接合面同士が接触するように積層し、積層された一対のワークを加圧して、加圧状態を所定時間維持し、この加圧状態を解除して、ワーク温度を所定温度まで昇温させて、接合が完了するまでをこの温度を維持することを特徴とするものである。このように、加圧解除後、ワークを加熱することにより、前記従来例で説明したような流路形成の不具合等を発生させることなく、樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラス基板からなるワーク同士を良好に接合させることができる。
すなわち、本発明は次のようにして前記課題を解決する。
(1)樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラスからなる第一及び第二のワーク同士を貼り合わせる方法において、両ワークの貼り合わせる面の少なくとも一方に紫外光を照射し、光照射後、両ワークの上記貼り合わせる面同士が接触するように積層し、両ワークを、その接触面が加圧されるように加圧し、加圧を解除後、両ワークを加熱する。
ことを特徴とするワークの貼り合わせ方法。
(2)上記(1)において、両ワークの加熱を加熱手段により行い、当該加熱手段を予め加熱しておく。
(3)上記(1)(2)において、両ワークはマイクロチップ基板であって、ワークの少なくとも一方には微細な流路が形成されている。
(4)樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラスからなる第一および第二のワーク同士を貼り合せる装置を以下のように構成する。
上記第一のワークを保持するステージと、上記ステージに保持された第一のワークの表面に紫外光を照射する光照射ユニットと、上記ステージに保持された第一のワークの光照射面に、第二のワークの一方の面が接触するように積層された上記第一のワークおよび第二のワークの少なくとも上下方向の移動を規制する移動規制機構と、上記積層された状態の第一のワーク及び第二のワークを、その接触面が加圧されるように加圧する加圧機構と、上記ステージとは別箇に設けられ、加圧解除後の上記積層された状態の第一のワーク及び第二のワークを加熱する加熱機構とから構成する。
(5)樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラスからなる第一及び第二のワーク同士を貼り合せる装置を以下のように構成する。
上記第一のワークを保持する第一のステージと、上記第二のワークを保持する第二のステージと、第一のワークの表面及び/または第二のワークの表面に紫外光を照射する光照射ユニットと、少なくとも、上記第一および第二のステージに保持された上記第一、第二のワークの内の一方のワークの光照射面が、他方のワークの表面もしくは光照射面に接触するように両者を積層させるワーク積層機構と、積層された第一及び第二のワークの少なくとも上下方向の移動を規制する移動規制機構と、積層された状態の上記第一のワーク及び第二のワークを、その接触面が加圧されるように加圧する加圧機構と、第一のステージに保持された第一のワークの表面及び/または第二ステージに保持された第二のワークの表面と、上記光照射ユニットとの距離をそれぞれ独立して調整するための間隙設定機構と、上記第一のステージおよび第二のステージとは別箇に設けられ、加圧解除後の上記積層された状態の第一のワーク及び第二のワークを加熱する加熱機構とから構成する。
(6)上記(4)(5)において、加熱機構を、ワークが載置される加熱ステージで構成する。
(7)上記(5)(6)において、両ワークはマイクロチップ基板であって、ワークの少なくとも一方には微細な流路が形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるワークの貼り合わせ方法によれば、一対のワークの接合面へ真空紫外光照射処理し(〔工程1〕)、ワーク同士の位置合わせ(〔工程2〕)を行ったあと、まず両ワークに圧力を加える(〔工程3〕)。この工程3においては、両ワークに熱を加えないので、両ワークが熱による変形が発生することはない。さらには、一対のワークの材質が互いに相違する場合に発生する熱膨張係数の違いに起因するアライメントずれの不具合も当然ながら発生しない。例えば、ワークがマイクロチップ基板の場合、アライメントずれに伴う微細流路形成の不具合を回避することが可能となる。
【0019】
また本工程3は、上記したような「仮接合」工程であるので、接合面における接合が不十分な箇所の発生を解消するために加圧圧力を大きくする必要はなく、加圧によるワークの変形といった不具合も生じない。例えば、ワークがCOP等の樹脂からなる一対のマイクロチップ基板であったとしても、マイクロチップ基板の変形に伴う両マイクロチップ基板のアライメントずれや微細流路自体の変形といった不具合を抑制することができる。また本工程3ではワーク同士の接合がある程度確保されていればよいので、加圧処理時間を長時間かける必要はない。すなわち、従来の貼り合わせ方法における加圧工程に費やす時間よりも加圧時間を短縮することが可能となる。
【0020】
上記した〔工程3〕に続く〔工程4〕は、加圧を解除した状態で「仮接合」されたワークを加熱し、ワーク温度を所定温度まで昇温させて接合が完了するまでをこの温度を維持する。〔工程3〕の時点で接合の一部は十分行われており、〔工程4〕における本加熱工程は接合面に存在していたあまり接合ができていない箇所が十分な接合状態になるまで行うだけなので、従来の貼り合わせ方法における加熱工程に費やす時間よりも加熱時間を短縮することが可能となる。
【0021】
また、既に〔工程3〕で「仮接合」が行われており、また〔工程4〕における所定温度はワークの変形が生じない程度の温度であるので、一対のワークのアライメントずれやワークの変形は発生しない。上記したように加熱時間の短縮化が可能であり、また「仮接合」が既に行われているので、2枚のマイクロチップ基板が異種材料でそれぞれの熱膨張率係数が相違する場合においても、各ワークの熱膨張の度合いが相違することに起因する2枚のワークのアライメントずれは抑制される。
例えば、ワークがCOP等の樹脂からなる一対のマイクロチップ基板であったとしても、マイクロチップ基板の変形に伴う両マイクロチップ基板のアライメントずれが抑制され、2枚のマイクロチップ基板それぞれの表面に形成された微細な溝部同士の位置関係のずれに伴う流路形状の不具合や流路自体の変形といった不具合も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例の装置構成例を示す図である。
【図2】反転ステージユニットを図1の矢印Aの方向から見た図である。
【図3】加圧ステージユニットを図1の矢印Bの方向から見た図である。
【図4】ワーク搬送機構、ワーク加熱機構の例を示す図である。
【図5】本発明の実施例の動作(光照射ユニットの退避)を説明する図(1)である。
【図6】本発明の実施例の動作(反転、加圧動作の準備)を説明する図(2)である。
【図7】本発明の実施例の動作(反転動作)を説明する図(3)である。
【図8】本発明の実施例の動作(加圧動作)を説明する図(4)である。
【図9】本発明の実施例の動作(加圧動作)を説明する図(5)である。
【図10】本発明の実施例の動作(ワークの取り出し)を説明する図(6)である。
【図11】本発明の変形例である各制御部の実行タイミングを制御する上位コントローラを設けた場合の構成例を示す図である。
【図12】貼り合わせ実験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.貼り合わせ装置
以下、本発明によるワークの貼り合わせ方法を実施するための貼り合わせ装置の実施例について説明する。
ワークの貼り合わせ装置は、大きく分けて、A.光照射・ワーク積層・加圧機構、B.ワーク搬送機構、C.ワーク加熱機構からなる。
光照射・ワーク加圧機構は、上記した〔工程1〕〔工程2〕〔工程3〕を実施するためのものである。また、ワーク加熱機構は〔工程4〕を実施するためのものである。なお、ワーク搬送機構は、光照射・ワーク加圧機構により〔工程1〕から〔工程3〕まで施されたワークをワーク加熱機構まで搬送するためのものである。
【0024】
A.光照射・ワーク積層・加圧機構
図1に光照射・ワーク積層・加圧機構の構成例を示す。
光照射・ワーク積層・加圧機構は、図1に示すように、光照射ユニット10、ベース41上に設けられた加圧ステージユニット20(加圧機構)および反転ステージユニット30(ワーク積層機構)の3つのユニットから構成される。
【0025】
a.光照射ユニット10
光照射ユニット10は、第1のワークW1の表面(接合面)、第2のワークW2の表面(接合面)に真空紫外光を照射して、両表面を活性化するためのものである。光照射ユニット10は、少なくとも1本以上のランプ11aと、ランプ11aから放出される光をワーク側(図1では下方向)に反射する反射ミラー11bと、これらを内包するランプハウス10aとからなる。上記第1のワークW1,第2のワークW2は、それぞれが樹脂基板で構成されるか、あるいは、いずれか一方のワークが樹脂基板であり、他方のワークがガラス基板で構成される。
図1においては、第1のワークと第2のワークの両方に真空紫外光を照射可能なようにランプハウス10a内に、ランプ11a、反射ミラー11bが複数設置されている。
【0026】
ランプ11aとしては、例えば、波長172nmに中心波長を有する単色光の光を放出する真空紫外エキシマランプが採用される。光照射ユニット10の各ランプ11aの点灯制御は、ランプ点灯装置13により行われる。すなわち、ランプ点灯装置13はランプ11aの点灯・消灯を制御したり、ランプ11aへの供給電力の値を調整することにより、ランプ11aから放出されるUV光の強度を調整する機能等を有する。
なお、光照射ユニット10は光照射ユニット駆動部17により図1の左右に駆動可能なように構成される。ここで光照射ユニット駆動部17の動作は、光照射ユニット駆動制御部17aにより制御される。
【0027】
b.反転ステージユニット
反転ステージユニット30は、加圧ステージユニット20と協働して、反転ステージ31に載置された第1のワークW1を加圧ステージユニット20のワークステージ21に載置された第2のワークW2に積層させるためのものである。
図2は反転ステージユニットを図1の矢印Aの方向から見た図である。
反転ステージ31には、第1のワークW1を位置決めするための位置決めピン31cが設けられている。第1のワークW1のような四角形のワークの場合、位置決めピン31cは3本設けられる。このうちの1本は、四角形のワークの短辺に対応し、残り2本は四角形のワークの長辺に対応する。
【0028】
反転ステージ31は、第1のワークW1を真空チャック機構により吸着保持可能となっている。
すなわち、反転ステージ31のワーク載置面には、ワーク(第1のワークW1)形状に対応して構成されている吸着用溝部31aが形成されている。
反転ステージ31の内部には図示を省略した真空供給路が設けられている。この真空供給路の一方は真空供給管35aと接続されていて、真空供給路の他方は吸着用溝部31aに設けられた真空供給用孔部31bと連通している。
第1のワークW1が反転ステージ31上に載置されると、真空供給機構35により真空供給管35aを介して真空供給路、吸着用溝部31a、第1のワークW1の載置面からなる空間に真空が供給される(すなわち、上記空間内が減圧される)。これにより、第1のワークW1は反転ステージ31上に吸着保持される。このような真空チャック機構の制御は、真空チャック駆動制御部35bが真空供給機構35の動作を制御することにより行われる。
【0029】
反転ステージ31の一端側には軸33bが貫通している。この軸33bと反転ステージ31は、例えば、止めねじ等で固定されている。軸は、図1、図2に示すように、反転ステージベース34上に設けられた軸受け部材33dにより、回転可能に保持される。
軸33bの一端は、カップリング33cを介してモータ等の反転ステージ駆動機構33の回転軸33eと連結している。反転ステージ制御部33aは、反転ステージ駆動機構33の動作を制御するものである。例えば、反転ステージ制御部33aの指令により反転ステージ駆動機構33の回転軸33eが(図1において)時計周りに180度回転すると、カップリング33cを介して連結されている軸33bも180度回転する。結果として、軸に固定されている反転ステージ31も180度反転する。
図1において、反転ステージ31は、反転ステージ31に設けられているステージ保持機構32と、上記反転ステージ31に固定されている軸33bを回転可能に保持する軸受け部材33dとによりほぼ水平に保持される。
ステージ保持機構32は、反転ステージ31の背面側からばねを介して反転ステージ31を保持する。ばね定数等のばねの特性は、反転ステージ31がほぼ水平に保持されるように設定される。
【0030】
図1に示す貼り合わせ装置が大気中に設置される場合、光照射ユニット10から第1のワークW1、第2のワークW2に照射される波長172nmのUV光は、大気中で著しく減衰する。よって、大気中においては、光照射ユニット10と第1のワークW1の表面、第2のワークW2の表面とはある程度接近している必要がある。
反転ステージベース34は、高さ調整用スペーサ34aを挿入することにより、その高さを調整することが可能となる。反転ステージベース34の高さが変更されると、反転ステージベース34上面に設置されている軸受部材33dの高さも変わる。その結果、反転ステージ31が傾くことになる。
しかしながら、反転ステージベース34の高さ調整を行う際、ステージ保持機構32の
高さを調整することにより、反転ステージベース34の高さを変化させても、反転ステージ31をほぼ水平に保持することが可能となる。
なお、反転ステージ固定機構36、固定機構駆動部36a、固定機構駆動制御部36bについては、後で説明する。
【0031】
c.加圧ステージユニット
加圧ステージユニット20は、反転ステージユニット30と協働して、反転ステージ31に載置された第1のワークW1を加圧ステージユニット20のワークステージ21に載置された第2のワークW2に積層させるためのものである。
更には、積層された第1のワークW1と第2のワークW2を加圧し、両者を接合するためのものである。
加圧ステージユニット20は、加圧ステージ23と補助ステージ22、および補助ステージ22上に配置されたワークステージ21からなる。加圧ステージ23の上面には、ばね27と当該ばねを内部に収容するばねケース27aとが設置され、補助ステージ22はこのばね27により保持される。
【0032】
また、2本の円柱状の柱26が、加圧ステージ23と補助ステージ22を貫通している。各ステージ23,22の柱26が貫通する部分は軸受構造となっており、各ステージ23,22は柱26に規制された直線方向(すなわち、上下方向)に移動可能となっている。
柱26の頂部にはフランジ部26aが設けられる。また柱26において、前記フランジ部26aと補助ステージ22との間には、高さ調整用カラー26bが挿入される。
後で詳細に述べるが、高さ調整用カラー26bの厚みを調整することにより、ワークステージ21のベース41からの高さ(ワークステージ21上の第2のワークW2の表面と光照射ユニット10との距離)を調整することが可能となる。
加圧ステージ23の下面は、例えばエアシリンダからなるステージ移動機構24と接続されている。ステージ移動機構24が駆動されることにより、加圧ステージ23、補助ステージ22および補助ステージ22上に配置されたワークステージ21は上下方向に移動する。ステージ移動機構24の駆動は、ステージ移動機構駆動制御部24aにより制御される。
【0033】
ワークステージ21上には、第2のワークW2が載置される。図示は省略するが、ワークステージ21には第2のワークW2の位置を位置決めする位置決め機構(図示せず)が設けられる。位置決め機構としては、例えば、反転ステージの場合と同様、位置決めピンが用いられる。
なお、必要に応じて、ワークステージ21は図1の上下方向に対して垂直な方向であって互いに直行するX−Y方向に移動可能なように構成される。また、場合によっては、ワークステージは、中心軸(軸の方向は、図1の上下方向と同じ)に対して回転可能、傾斜可能であるように構成される。
このようなワークステージ21の駆動は、ワークステージ駆動制御部21aにより制御される。
【0034】
図3は加圧ステージユニットを図1の矢印Bの方向から見た図である。
加圧ステージユニット20は、加圧ステージ23と補助ステージ22との間の空間に挿入・離脱可能なストッパ28を有する。ストッパ28は、両ワークを加圧する際、加圧ステージ23と、補助ステージ22との間の空間に挿入される。なお、ストッパの詳細な動作については後で述べる。
【0035】
B.ワーク搬送機構、C.ワーク加熱機構
図4にワーク搬送機構、ワーク加熱機構の例を示す。同図Aは図1−3で説明した光照射・ワーク積層・加圧機構を示し、Bはワーク搬送機構、Cはワーク加熱機構を示す。
ワーク搬送機構は、光射光照射・ワーク積層・加圧機構によって、上記した〔工程1〕〔工程2〕〔工程3〕の処理を施されて「仮接合」されて一体となった2枚のワークを、ワーク加熱機構まで搬送する機構である。光射光照射・ワーク積層・加圧機構の加圧ステージユニット20におけるワークステージ21上に載置された仮接合後のワークWは、ワーク搬送機構における搬送機構37によって、上記ワークステージ21からワーク加熱機構の加熱ステージ29まで搬送される。ここで、搬送機構37の駆動制御は、搬送機構制御部37aによって行われる。
【0036】
ワーク加熱機構における加熱ステージ29は、仮接合されたワークWを加熱し、ワーク温度を所定温度まで昇温させて、所定時間この温度を維持し、その後、降温させるものである。
上記したように、所定温度とは、ワークWの変形が生じない程度の温度である。また、所定時間とは、ワークWの加熱開始から接合が完了するまでの時間である。なお、上記したように、接合の完了とは、〔工程3〕終了後に接合面に存在していたあまり接合ができていない箇所が十分な接合状態となった状態を示す。
加熱ステージ29内の加熱機構29aは、例えば、ステージ内部にシースヒータを埋設することにより構成される。加熱ステージ29の温度制御は、温度制御部29cにより行われる。温度制御部29cは、図示を省略した温度センサによって計測された加熱ステージ29表面の温度情報に基づき、加熱ステージ29表面の温度が所定の温度となるように加熱機構29aを制御する。なお、加熱ステージ29表面の温度と、ワークの昇温特性やワークの到達温度との相関関係データのテーブルは予め温度制御部29cに記憶されている。
【0037】
以下、本発明のワークの貼り合わせ方法を実施する際の貼り合わせ装置の動作例について、前記図1〜図4及び図5〜図10を参照しながら説明する。ワークとしては、マイクロチップ基板を例に取る。
A.〔前準備〕 動作1(光照射前)
(1)反転ステージユニット30において、第1のワークW1の厚みを考慮して、高さ調整用スペーサ34aにより反転ステージベース34の高さが所定の高さとなるように調整する。この所定の高さとは、反転ステージ31に第1のワークW1を載置し、かつ、第1のワークW1および第2のワークW2が光照射ユニット10の照射領域に位置するように光照射ユニット10が光照射ユニット駆動部17によって位置決めされたときに、ランプ11aの下側と第1のワークW1の照射面との距離がD(図5参照)となるような高さである。すなわち、高さ調整用スペーサ34aは、光照射ユニット10と反転ステージ31に載置された第1のワークW1の表面との距離を設定する間隙設定機構として機能する。
(2)第1のワークW1を反転ステージユニット30の反転ステージ31に載置し、所定の位置に位置決めする。ここで第1のワークW1は四角形形状であるとする。位置決めは、図2に示すように、位置決めピン31cに押し当てることによりなされる。なお、第1のワークW1の設置は、作業者が行ってもよいし、図示、説明を省略した周知の搬送機構を用いて行ってもよい。
【0038】
(3)真空チャック駆動制御部35bが真空供給機構35を駆動し、真空供給管35aを介して反転ステージ31に真空を供給する。すなわち、真空供給路(不図示)、吸着用溝部31a、第1のワークW1の載置面からなる空間内が減圧され、第1のワークW1は反転ステージ31上に吸着保持される。
(4)一方、加圧ステージユニット20において、第2のワークW2をワークステージ21に載置し、所定の位置に位置決めする。位置決めは、例えば第1のワークW1における位置決めと同様であり、ここでは詳細は省略する。なお、第2のワークW2の設置は、作業者が行ってもよいし、図示、説明を省略した周知の搬送機構を用いて行ってもよい。
(5)第2のワークW2の厚みを考慮して、ステージ移動機構駆動制御部24aによってステージ移動機構24を駆動することにより加圧ステージ23、補助ステージ22、ワークステージ21を移動させ、ワークステージ21の高さが所定の高さとなるように調整する。具体的には、ステージ移動機構駆動制御部24aによってステージ移動機構24を駆動し、補助ステージ22表面が高さ調整用カラー26bに接触し、更に高さ調整用カラー26bが柱26のフランジ部26aと接触するまで、加圧ステージ23、補助ステージ22、ワークステージ21を移動させる。
【0039】
補助ステージ22表面の高さは、補助ステージ22と上記フランジ部26aとの間に設けた高さ調整用カラー26bの厚みに依存する。すなわち、補助ステージ22表面に設けられたワークステージ21の高さも高さ調整用カラー26bの厚みに依存し、高さ調整用カラー26bの厚みはワークステージ21の高さが上記した所定の高さとなるように選択される。すなわち、高さ調整用カラー26bは、光照射ユニット10とワークステージ21に載置された第2のワークW2の表面との距離を設定する間隙設定機構として機能する。
ここで、この所定の高さとは、ワークステージ21に第2のワークW2を載置し、かつ、第1のワークW1および第2のワークW2が光照射ユニット10の照射領域に位置するように光照射ユニット10が光照射ユニット駆動部17(図1参照)によって位置決めされたときに、ランプ11aの下側と第2のワークW2の照射面との距離が後述するDとなるような高さである。
すなわち、第1のワークW1の照射面のベース41からの高さと第2のワークW2の照射面のベース41からの高さとは略一致する。
【0040】
(6)温度制御部29c(図4参照)により、加熱ステージ29の温度を予め温度制御する。すなわち、温度制御部29cは、図示を省略した温度センサによって計測された加熱ステージ29表面の温度情報に基づき、加熱ステージ29表面の温度が所定の温度となるように加熱機構29aを制御する。上記したように、加熱ステージ29表面の温度と、ワークの昇温特性やワークの到達温度との相関関係データのテーブルは予め温度制御部29cに記憶されている。温度制御部29cは、ワークが加熱ステージ29に載置された際、ワーク温度が所定温度(ワークの変形が生じない程度の温度)に到達するように、記憶している上記テーブルに基づき加熱ステージ29の温度を昇温させて一定温度に維持する。
このように、予め加熱ステージ29を加熱しておくのは、〔工程3〕から速やかに〔工程4〕に移行させるためである。
【0041】
(1)〜(6)の工程により、反転ステージ31への第1のワークW1の位置決め、ワークステージ21への第2のワークW2の位置決め、第1のワークW1表面の高さと第2のワークW2表面の高さの調整、加熱ステージ29の事前加熱が行われる。
【0042】
B.〔工程1〕 動作2(光照射)
(7)光照射ユニット駆動部17は、光照射ユニット10の照射領域内に反転ステージユニット30が保持する第1のワークW1と加圧ステージユニット20が保持する第2のワークW2が位置するように、光照射ユニット10を駆動する。図1は、光照射ユニット10の照射領域内にワークW1,W2が位置する状態を示している。すなわち、ワークW1、ワークW2の上方に、光照射ユニット10のランプ11aが位置している。
【0043】
なお、上記したように、第1のワークW1の照射面および第2のワークW2の照射面は、ほぼ同一平面上に位置する。また、ランプ11aの下側と第1のワークW1の照射面との距離、ランプ11aの下側と第2のワークW2の照射面との距離をDとする。この距離Dは、ランプから放出される波長172nmのUV光は大気中で著しく減衰することから、例えば、1〜5mmに設定される。上記したように、本実施例においては間隙設定機構として機能する高さ調整用スペーサ34aや高さ調整用カラー26bによって、距離Dが設定される。
【0044】
(8)ランプ点灯装置13(図1参照)によりランプ11aが点灯され、波長172nmのUV光が第1のワークW1に照射されるとともに、第2のワークW2に照射される。なお、ランプ点灯装置13は、第1のワークW1表面および第2のワークW2表面における放射照度が所定の値となるようにランプ11aへの供給電力を制御する。
(9)所定の照射時間経過後、ランプ点灯装置13はランプ11aを消灯する。ここでランプ点灯装置13はランプ点灯時間の設定も行うことができるものとする。
【0045】
上述した(7)〜(9)の工程により、第1のワークW1、第2のワークW2の照射領域への配置、および両ワークへの所定時間の光照射が行われる。
なお、(7)〜(9)の工程では、第1のワークW1および第2のワークW2への光照射を同時に行っているが必ずしも同時に行う必要は無く、例えば、先に第1のワークW1にUV光を照射して、その後、第2のワークW2にUV光を照射してもよい。或いは、先に第2のワークW2にUV光を照射して、その後、第1のワークW1にUV光を照射してもよい。
但し、光照射面の活性化状態にはある程度寿命があるので、第1のワークW1、第2のワークW2の両方に光照射する場合は同時に行うことが望ましい。
上記のように、第1のワークW1と第2のワークW2に対して個別にUV光を照射する場合には、光照射ユニット10を光照射ユニット駆動部17により左右に駆動可能なように構成し、光照射ユニット10から放出されるUV光を第1のワークW1と第2のワークW2に対して個別に照射する。このように構成すれば、光照射ユニット10をコンパクトに構成することが可能となる。
また、2枚のワークW1,W2の一方のみにUV光を照射して、貼り合わせするように構成することも可能である。
【0046】
C.〔工程2〕 動作3(光照射ユニットの退避)
(10)図5に示すように、光照射ユニット駆動部17(図1参照)は光照射ユニット10を退避位置に位置するように駆動する。この退避位置は、反転ステージ31が反転する際、光照射ユニット10と干渉しない位置である。
(10)の工程により、反転ステージ上方から光照射ユニット10が退避した状態となる。
【0047】
D.〔工程2〕 動作4(反転動作、加圧動作の準備)
(11)図6に示すように、ステージ移動機構駆動制御部24aによってステージ移動機構24を駆動することにより加圧ステージ23、補助ステージ22、ワークステージ21を下方向に移動させて、ワークステージ21の高さが所定の高さとなるように調整する。この所定の高さとは、反転ステージ31が反転した際、反転ステージ31上に吸着保持されている第1のワークW1が、ワークステージ21上の第2のワークW2と衝突しない高さである。すなわち、反転ステージ31が反転した際、第1のワークW1と第2のワークW2は所定の間隙をもって保持される。
(12)加圧ステージ23と補助ステージ22との間の空間にストッパ28を挿入する。ストッパ28はストッパ駆動部28a(図3参照)により駆動され、その制御はストッパ駆動制御部28bにより行われる。
(11)〜(12)の工程により、反転ステージ31の反転時に反転ステージ31が吸着保持する第1のワークW1がワークステージ21上の第2のワークW2に衝突しない状態となり、反転ステージ31が反転可能なスタンバイ状態となる。また、以下に続く加圧工程に移行可能な状態となる。
【0048】
E.〔工程2〕 動作5(反転動作)
(13)図7に示すように、反転ステージユニット30において、第1のワークW1を吸着保持する反転ステージ31が反転し、第1のワークW2は第2のワークW2と対向する位置に配置される。
具体的には、図2に示す反転ステージ制御部33aにより反転ステージ駆動機構33が駆動され、反転ステージ駆動機構33の回転軸33eが180度回転する。ここで、反転ステージ31が固定されている軸33bは上記回転軸33eとカップリング33cを介して連結されているので、上記回転軸33eが回転すると、軸33bも回転し、結果的に軸33bに固定されている反転ステージ31も180度反転する。
(14)反転ステージ31の反転後、反転ステージ固定機構36が駆動されて反転ステージ31を固定する。図7において、反転ステージ固定機構36は、反転ステージ31が反時計周りに反転することを規制する。なお、反転ステージ31の時計まわりの回転は図示しないストッパによって規制される。
反転ステージ固定機構36は、固定機構駆動部36aにより駆動される。なお固定機構駆動部36aは、固定機構駆動制御部36bにより制御される。ここで、反転ステージ固定機構36は反転ステージ31が反転した後に駆動するものであり、反転ステージ31が反転する前は反転ステージ31の反転動作を干渉しない位置に退避している。
【0049】
(15)反転ステージ31上の第1のワークW1とワークステージ21上の第2のワークW2は、反転ステージ31の反転後、所定の位置関係となるように位置決めされている。ここで、所定の位置関係とは、以下に続く工程において、第1のワークW1が第2のワークW2に積層される際、第1のワークW1が第2のワークW2に所望の位置関係で重ねあわされるような関係である。
ここで、第1のワークW1と第2のワークW2とを精密に位置合わせする必要がある場合は、予めワークW1およびワークW2にアライメントマークを施しておき、図示を省略したアライメントマーク検出機構により第1のワークW1のアライメントマークと第2のワークW2のアライメントマークとを検出する。そして、検出結果に基づき、両アライメントマークの位置が一致するように、ワークステージ駆動制御部21aによりワークステージ21を駆動する。
(13)〜(15)の工程により、反転ステージ31が反転し、当該反転ステージ31は反転位置に固定される。なお、場合によっては、第1のワークW1と第2のワークW2との位置合わせが行われる。
【0050】
F.〔工程2〕〔工程3〕 動作6(加圧動作)
(16)図8に示すように、加圧ステージユニット20において、ステージ移動機構駆動制御部24aによってステージ移動機構24を駆動することにより、加圧ステージ23、補助ステージ22、ワークステージ21を上方向に移動させて、ワークステージ21に載置された第2のワークW2と反転ステージ31に吸着保持されている第1のワークW1とを接触させる。このとき、ベース41上面と加圧ステージ23表面との距離はS1となる。
【0051】
(17)図9に示すように、加圧ステージユニット20において、第1のワークW1と第2のワークW2とを接触させた後(第2のワークW2上に第1のワークW1を積層した後)も、ステージ移動機構駆動制御部24aによるステージ移動機構24の駆動を続行する。そして、加圧ステージ23の上面がストッパ28に接触したときにステージ移動機構24の駆動を停止する。
上記したように、第1のワークW1を吸着保持している反転ステージ31は、反転ステージ固定機構36により、反時計周りに反転することを規制されている。そのため、第2のワークW2が載置されているワークステージ21を搭載している補助ステージ22は上方向に移動できない。よって、第1のワークW1と第2のワークW2とが接触した位置から加圧ステージ23の上面がストッパ28に接触する位置までの加圧ステージ23の上方向への移動距離(x)の分だけ、加圧ステージ23と補助ステージ22との間に挿入されているばね27が圧縮される。
すなわち、本実施例では、反転ステージ固定機構36が積層された第1のワークW1およびW2のワークの上方向への移動を規制する移動規制機構に相当する。
【0052】
すなわち、加圧ステージ23表面とストッパ28が接触したときのベース41上面と加圧ステージ23表面との距離をS2とすると、上記移動距離xは、x=S2−S1となる。よって、ばね27のばね定数をkとするとき、第1のワークW1と第2のワークW2には、P=|kx|なる大きさの圧力が印加される。
すなわち、第1のワークW1と第2のワークW2へ印加する圧力は、ばね27のばね定数およびストッパ28の挿入位置を調整することにより、所定の値に調節される。
なお、上記圧力の測定は、ワークステージ21に設けられた圧力センサ15(図9参照)を用いて行われる。圧力センサ15によって検出された圧力情報は、例えば、ステージ移動機構駆動制御部24aに送出される。また例えば図示を省略した圧力表示手段に送出される。
【0053】
なお、第1のワークW1と第2のワークW2へ印加する圧力は、加圧中に圧力値を変更することも可能である。例えば、第1のワークW1、第2のワークW2を複数枚貼り合わせる際、ワークによっては厚みにばらつきが存在する。このようなばらつきが存在すると、第2のワークW2と第1のワークW1とが接触したときのベース41上面と加圧ステージ23表面との距離はS1の値もばらつくことなる。よって、上記移動距離x=S2−S1もばらつくことになり、結果として第1のワークW1と第2のワークW2に印加される圧力P=|kx|もばらつくことになる。
【0054】
この場合は、まず加圧ステージ23の上面がストッパ28に接触するまでステージ移動機構を駆動し、第1のワークW1と第2のワークW2にP=|kx|なる大きさの圧力を印加する。この加圧状態を維持したまま、次に圧力センサ15によって検出された圧力Psを確認し、圧力Psが所定の圧力Pに等しくなるようにストッパ28の位置を上下方向に移動する。すなわち、距離S2の値を調整することにより、距離S1のばらつきを補正する。
具体的には、圧力センサ15からの圧力情報に基づき、ストッパ駆動部28aによりストッパ28を駆動して加圧ステージ23と補助ステージ22との間の空間挿入されたストッパ28の上下方向の位置を調整する。なお、上記したように、ストッパ駆動部28aの制御はストッパ駆動制御部28bにより行われる。ストッパ駆動制御部28bは、圧力センサ15からの圧力情報に基づき検出圧力Psが所定の圧力Pに等しくなるようにストッパ駆動部28aを駆動する。なお、図示を省略した圧力表示手段に圧力情報が表示される場合、作業者が表示情報を見ながらストッパ駆動制御部28bを操作してもよい。
【0055】
すなわち、ストッパ28の上下方向の位置を調整することにより、上記距離S2の値を調整して上記移動距離がxとなるようにし、第1のワークW1と第2のワークW2に印加される圧力P=|kx|の大きさが調整される。
(16)〜(18)の工程により、第1のワークW1と第2のワークW2の積層(〔工程2〕)ならびにこれらへの加圧(〔工程3〕)が行われる。
なお、本実施例においては、ストッパ28及びストッパ駆動部28aが、積層された状態の第一のワークW1と第2のワークW2の接触圧力を調整する機構に相当する。
【0056】
G.〔工程3〕 動作7(ワーク(マイクロチップ)の加圧解除)
(19)第1のワークW1と第2のワークW2への圧力印加開始から所定時間経過後、反転ステージユニット30において、真空チャック駆動制御部35bが真空供給機構35の駆動を停止し、反転ステージ31への真空の供給が停止する。そして不図示のパージ機構により反転ステージ31に空気が供給される。すなわち、真空供給路、吸着用溝部31a、第1のワークW1の載置面からなる空間内は、減圧雰囲気から大気圧雰囲気となり、反転ステージ31とマイクロチップ表面(マイクロチップの第1のワークW1側表面)との間の吸着関係が解除される。
なお、上記した所定時間とは、第1のワークW1と第2のワークW2への圧力印加開始から第1のワークW1と第2のワークW2との接合面において十分に接合できている箇所とあまり接合ができていない箇所とが混在しているものの両ワークが接合状態(「仮接合」状態)となるまでの時間である。
【0057】
(20)図10に示すように、加圧ステージユニット20において、ステージ移動機構駆動制御部24aによってステージ移動機構24を駆動することにより加圧ステージ23、補助ステージ22、ワークステージ21を下方向に移動させる。移動位置は、反転ステージ31からマイクロチップ表面が離間状態となり、マイクロチップへの加圧が解除される任意の位置である。
【0058】
(21)固定機構駆動部36aにより反転ステージ固定機構36が駆動されて、反転ステージ固定機構36は反転ステージ31の反転動作を干渉しない位置に退避する。これにより、反転ステージ31の固定が解除される。
(22)反転ステージユニット30において、第1のワークW1を吸着保持する反転ステージ31が工程(15)とは逆方向に反転し、マイクロチップ上方から反転ステージ31が退避する。
具体的には、反転ステージ制御部33aにより反転ステージ駆動機構33が駆動し、反転ステージ31が固定されている軸33bとカップリング33cを介して連結されている反転ステージ駆動機構33(図2参照)の回転軸33eが図10に示すように−180度回転する。
(19)〜(22)の工程により、積層された第1のワークW1と第2のワークW2の「仮接合」(〔工程3〕)と、積層されたワークへの加圧解除(〔工程3〕)が行われる。
【0059】
H.〔工程4〕 動作8(ワーク(マイクロチップ)の搬送)
(23)図4に示すように、ワーク搬送機構における搬送機構37は、加圧ステージユニット20において、ワークステージ21上に載置されている「仮接合」されたワークW(マイクロチップ)を掴み、当該ワークWをワークステージ21から退避させ、加熱ステージ29まで搬送する。なお、ワークWのワークステージ21から加熱ステージ29までの搬送は、作業者が実施してもよい。この場合、搬送機構37は不要となる。
(24)搬送機構37は、加熱ステージ29まで搬送してきたワークを加熱ステージ29上に載置する。
(23)〜(24)の工程により、ワークW(マイクロチップ)のワークステージ21から加熱ステージ29までの搬送、加熱ステージ29上へのワークWの設置が行われる。
【0060】
I.〔工程4〕 動作9(ワーク(マイクロチップ)の加熱)
(25)温度制御部29cにより、加熱ステージ29の温度制御を開始する。上記したように、加熱ステージ29は事前加熱されているので、加熱ステージ29上へワークWが設置された時点からワークWの温度制御が開始される。
温度制御部29cは、加熱ステージ29にワークWが設置された時点から、ワーク温度が所定温度(ワークWの変形が生じない程度の温度)まで到達して、所定時間(ワークの加熱開始から接合が完了するまでの時間)この温度が維持されて、その後降温するように、加熱機構29aを制御する。この加熱機構29aの制御は、温度制御部29cが記憶している加熱ステージ29表面の温度とワークWの昇温特性やワークWの到達温度との相関関係データのテーブルに基づき行われる。
【0061】
なお、ワーク温度の降温は、加熱機構29aへのエネルギー供給を停止(例えば、ステージ内部に埋設されたシースヒータへの電力供給を停止)することにより行われる。
加熱機構29aへのエネルギー供給を停止すると、加熱ステージ29上のワーク(マイクロチップ)は室温まで冷却される。
なお、冷却時間を短縮する場合は、加熱ステージ29内に図示を省略した冷却機構を設けてもよい。冷却機構としては、例えば、加熱ステージ29内に冷却管を埋設し、当該冷却管に冷媒を流す。そして冷媒と加熱ステージ29との熱交換により、加熱ステージ29の冷却を実施する。なお、冷却機構の制御も、例えば、温度制御部29cにより行われる。温度制御部29cは、例えば、シースヒータへの電力供給を停止後、冷却機構を動作させ、図示を省略した温度センサによって計測された加熱ステージ29表面の温度情報に基づき、加熱ステージ29表面の温度が室温となるように冷却機構を制御する。
【0062】
上記した貼り合わせ装置の各構成要素の動作は、図1〜図4に示した各制御部で行われる。
すなわち、ランプ点灯装置13はUVランプ11aの点灯・消灯、ランプ点灯時間の制御を行う。真空チャック駆動制御部35bは、真空チャック機構を動作させるための真空供給機構35の動作を制御する。
反転ステージ制御部33aは、反転ステージ31を反転させるための反転ステージ駆動機構33の動作を制御する。
ステージ移動機構駆動制御部24aは、加圧ステージ23、補助ステージ22、ワークステージ21を上下方向に移動させるステージ移動機構24の動作を制御する。
ワークステージ駆動制御部21aは、必要に応じて第1のワークW1、第2のワークW2の位置合わせを行うためにワークステージ21を駆動制御する。
【0063】
ストッパ駆動制御部28bは、マイクロチップへの加圧に寄与するストッパ28を駆動するためのストッパ駆動部28aの動作を制御する。
固定機構駆動制御部36bは、反転ステージ31が図8において反時計周りに反転することを規制するための反転ステージ固定機構36を駆動する固定機構駆動部36aの動作を制御する。
【0064】
搬送機構制御部37aは、ワークステージ上に載置された「仮接合」後のワークを加熱ステージ29まで搬送する搬送機構37の動作を制御する。
温度制御部29cは、図示を省略した温度センサによって計測された加熱ステージ29表面の温度情報に基づき、加熱ステージ29表面の温度が所定の温度となるように加熱機構29aを制御する。また、必要に応じて温度制御部29cは、上記温度情報に基づき、加熱ステージ29表面の温度が所定の温度となるように図示を省略した冷却機構29bを制御する。
これらの制御部は、上記した〔工程1〕〜〔工程4〕の各工程において、その都度制御を行う。
【0065】
上述した本発明における接合プロセスはまだ明解には判明していないが、以下のようにしてワークの接合がおこなわれるものと考えられる。
〔工程1〕
通常、ワーク接合面への真空紫外光の照射は大気中で行われる。ワークの接合面に波長200nm以下の真空紫外光を照射すると活性酸素が生成され、この活性酸素により接合面が酸化される。例えばワークが樹脂の場合、活性酸素の酸化力により、基板表面の樹脂の分子間結合が切断されたり揮発され、ワーク表面の付着有機物等は分解・除去される。すなわち、ワーク表面はクリーニングされ、樹脂表面の高分子主鎖が切断されてラジカルが生成される。
また、ワーク(樹脂)表面に真空紫外光が照射されることにより、光照射面においてヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アルデヒド基(−CHO)等の反応性の高い官能基の生成やワーク表面がこれらの官能基で置換されたり、真空紫外光照射により樹脂表面の高分子主鎖が直接切断され、光照射面にラジカルが随所に発生するものと考えられる。
すなわち、真空紫外光照射によるワークの接合面の活性化は、例えばワークが樹脂の場合、ワーク表面でのラジカル生成や樹脂自体の結合ダメージに伴う反応性の高い官能基等を発生させて、接合面自体が化学反応を起こしやすい状態にすることと考えられる。
【0066】
〔工程2〕
〔工程1〕により表面が活性化された接合面同士を対向させて位置合わせを行った後、接合面同士を接触させて積層することにより、接合面同士の化学反応が発生するものと考えられる。例えば、各接合面に存在するラジカル同士の結合や上記官能基を介した何らかの結合反応が進むものと考えられる。すなわち、このような化学反応によりワーク同士の接合が進むものと考えられる。なお、1枚のワークがガラス基板でもう1枚のワークが樹脂の場合は、例えば、OHラジカルを介した化学反応や、活性酸素を介した結合反応によりワーク同士の接合が進むものと考えられる
【0067】
〔工程3〕
積層された一対のワークを加圧して、加圧状態を所定時間維持することにより、〔工程2〕において開始した化学反応(ワーク同士の接合)が促進されるものと思われる。なお、ワークの光照射面の形状(例えば、ワークがマイクロチップ基板の場合は、光照射面の一部には流路を形成する溝部構造を有する)の影響により、接合面への加圧が必ずしも均一に行われていない可能性があり、上記した化学反応の促進も必ずしも均一に行われないこと有りうる。よって、場合によっては接合面において十分に接合できている箇所とあまり接合ができていない箇所とが混在するものと考えられる。
〔工程4〕
上記した所定時間加圧後加圧状態を解除し、「仮接合」状態のワークを加熱し、ワーク温度を所定温度まで昇温させて、接合が完了するまでをこの温度を維持ことにより、各ワークの活性化された表面におけるラジカルや反応性の高い官能基等が拡散するものと考えられる。よって、〔工程3〕終了後に接合面に存在していたあまり接合ができていない箇所においても拡散してきたラジカルや反応性の高い官能基等による化学反応が進み、結果としてこのような箇所においても結合の強度が増加し、十分な接合状態となるものと考えられる。
【0068】
〔貼り合わせ装置の変形例〕
前記したように、貼り合わせ装置の各構成要素の動作は、図1〜図4に示した、ランプ点灯装置13、光照射ユニット駆動制御部17a、光照射ユニット駆動部17、真空チャック駆動制御部35b、真空供給機構35、反転ステージ制御部33a、反転ステージ駆動機構33、ステージ移動機構駆動制御部24a、ステージ移動機構24、ワークステージ駆動制御部21a、ストッパ駆動制御部28b、ストッパ駆動部28a、固定機構駆動制御部36b、固定機構駆動部36a、搬送機構制御部37a、搬送機構37、温度制御部29c、加熱機構29a、冷却機構29b等により制御されるが、図11に示すように、これらの各制御部等の実行タイミングを指令する制御部である上位コントローラ50を設け、本発明の貼り合わせ装置における一連の工程を自動的に実施するように構成してもよい。
上位コントローラ50は、上記した〔工程1〕〜〔工程4〕の工程手続きに関する指令内容を予め記憶しており、この指令内容に基づき、上記した各制御部を制御する。
【0069】
なお、図9に示した圧力センサ15は、第1のワークW1と第2のワークW2へ印加される圧力を検出し、例えば前述したようにステージ移動機構駆動制御部24aに送出されるが、上位コントローラ50を設ける場合には、圧力センサ15の出力を上位コントローラ50に送り、上位コントローラ50を介してステージ移動機構駆動制御部24aを制御するようにしてもよい。
なお、周知の搬送機構を用いて第1のワークW1、第2のワークW2をそれぞれ反転ステージ31、ワークステージ21に搬入、設置、搬出を行う場合、このような搬送機構を制御する制御部を上位コントローラ50と接続してもよい。
【0070】
本実施例に示した貼り合わせ装置は、A.光照射・ワーク積層・加圧機構、B.ワーク搬送機構、C.ワーク加熱機構を有しているので、本発明の貼り合わせ方法の〔工程1〕〔工程2〕〔工程3〕〔工程4〕を実施することが可能となる。
特に、本貼り合わせ装置は、上記のように3つの機構に分割しているので、予めワーク加熱機構の加熱ステージ29を予備加熱しておくことが可能となり、〔工程3〕のワーク加圧・ワーク加圧解除後、加熱ステージ29に搬送されてきたワークを速やかに加熱することが可能となる。
【0071】
また、A.光照射・ワーク積層・加圧機構においては、第1のワークW1の光照射面と第2のワークW2の光照射面とをほぼ同じ高さに調節することが可能であり、更にはこれらの照射面と光照射ユニット10との距離とを任意に設定することができる。
例えば、光照射ユニット10から両ワークの照射面に照射されるUV光が中心波長172nmのUV光であるとき、ランプの下側と両ワークの照射面との距離を例えば、1〜5mmに設定することが可能となる。よって、大気中で著しく減衰する波長172nmのUV光を照射する際、照射雰囲気が大気中であっても第1のワークW1表面と、第2のワークW2表面を改質することが可能となる。すなわち、UV光照射雰囲気を波長172nmのUV光が減衰しない真空雰囲気にする必要がないので、装置全体をよりコンパクトに構成することができる。
【0072】
なお、上記したように本実施例では、間隙設定機構として機能する高さ調整用スペーサ34aにより、反転ステージ(第1のステージ)31に保持された第1のワークW1の表面と、光照射ユニット10との距離を調整することができる。また、同様に間隙設定機構として機能する高さ調整用カラー26bにより、ワークステージ(第2のステージ)21に保持された第2のワークW2の表面と、光照射ユニット10との距離を調整することができる。すなわち、本実施例では、間隙設定機構により、反転ステージ(第1のステージ)31に保持された第1のワークW1の表面との距離および/またはワークステージ(第2のステージ)21に保持された第2のワークW2の表面と光照射ユニット10との距離をそれぞれ独立に調整することができる。
【0073】
II.貼り合わせ実験
以下、本発明の貼り合わせ方法の実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
〔実験1〕
ポリジメチルシロキサン (Polydimethylsiloxane: PDMS)製の板状ワークとガラス製ワークとを一対のワークとして用い、当該一対のワークを本発明の貼り合わせ方法により接合した。なお、比較として、同様のワークを従来の貼り合わせ方法により接合し、両者の接合強度を調査した。
【0074】
ワークの形状は以下の通りである。
図12(a)に示すように、第1のワークW1は、厚さ2mm、縦10mm×横10mmのPDMS製の板状樹脂102を、厚み1mm、縦30mm×横50mmの長方形の金属板101に接着剤にて固定したものである。
一方、第2のワークW2は、厚さ1mm、縦15mm×横20mmのガラス板104を、厚み1mm、縦30mm×横50mmの長方形の金属板103に接着剤にて固定したものである。
接合は、第1のワークW1の板状樹脂部分と第2のワークW2のガラス板部分との間で行った。
第1のワークW1と第2のワークW2との接合には、上記した貼り合わせ装置を用いた。
【0075】
実験条件は以下の通りである。
〔工程1〕中心波長172nmのエキシマランプから放出される光を照射した。ワークの照射面とランプ下面との距離Dは3mm、ワーク表面における放射照度は10mW/cmであり、照射時間は120秒とした。
〔工程2〕
光照射された接合面同士を対向させて接合面同士が接触するように積層した。両者の位置合わせは、反転ステージ31、ワークステージ21に設けた位置決めピンを用いて行った。
積層は、図12(a)のように長方形の金属板101,103の長手方向が交差するように行った。なお、第1のワークW1の金属板101には、第2のワークW2と重ならない部分に貫通穴101aが2箇所設けてある。
〔工程3〕
1kgf/cmの圧力で加圧した。加圧時間は10秒とし、その後、加圧状態を解除した。
〔工程4〕
予め150℃に加熱していた加熱ステージ29上にワークを乗せ、5秒後ワークを加熱ステージ29から取り出した。
【0076】
なお、比較例として、特許文献3のような真空紫外光照射および加圧処理のみからなる貼り合わせ方法で、上記したのと同様のワークを接合した。なお、実験条件は、上記した〔工程1〕〔工程2〕〔工程3〕と同じである。
【0077】
上記した2つの貼り合わせ方法にて接合したワークの接合強度を比較した。接合強度は以下のような方法で測定した。
図12(b)に示すように、接合した第1のワークW1、第2のワークW2を固定板110に固定する。具体的には、固定板110に設けたねじ穴と第1のワークW1に設けた貫通穴101aとを用いて、固定板110に接合した第1のワークW1、第2のワークW2をねじ留めする。
次に、プッシュプルゲージ112の先端に取り付けられたフック111を第2のワークW2に掛けて引っ張る。そして、第1のワークW1のPDMS板102と第2のワークW2の
ガラス板104との接合が破壊され、両者が剥がれたときの力をプッシュプルゲージ112によって測定し、この測定値を接合強度とした。
【0078】
下記表にその結果を示す。なお、実験は、同じ仕様のワーク4枚について実施し、そのうち2枚を本発明の貼り合わせ方法で接合し、残り2枚を従来の真空紫外光照射および加圧処理のみからなる貼り合わせ方法で接合した。
【0079】
【表1】

【0080】
上記結果から明らかなように、〔工程4〕まで実施する本発明による貼り合わせ方法の方が接合強度が高い。これは、〔工程3〕の加圧工程に要した時間が10秒と短く、〔工程4〕を実施しない従来法では、接合面において十分に接合できている箇所とあまり接合ができていない箇所との混在が顕著であるためと考えられる。
【0081】
〔実験2〕
次に、〔工程4〕の加熱工程において、適切な加熱範囲(基板温度範囲)を調査した。
【0082】
〔実験2−1〕
PDMS(ポリジメチルシロキサン)製樹脂ワークとガラス製ワークについて加熱範囲(基板温度範囲)を調査した。
ワークの形状は以下の通りである。
第1のワークは、厚さ2mm、縦10mm×横10mmのPDMS製の板状樹脂であり、第2のワークは、厚さ1mm、縦15mm×横20mmのガラス板である。第1のワークと第2のワークとの接合には、上記した貼り合わせ装置を用いた。
【0083】
実験条件は以下の通りである。
〔工程1〕中心波長172nmのエキシマランプから放出される光を照射した。ワークの照射面とランプ下面との距離Dは3mm(実験1と同じにした)、ワーク表面における放射照度は10mW/cmであり、照射時間は300秒とした。
〔工程2〕
光照射された接合面同士を対向させて接合面同士が接触するように積層した。両者の位置合わせは、反転ステージ、加圧ステージに設けた位置決めピンを用いて行った。
〔工程3〕
1kgf/cmの圧力で加圧した。加圧時間は10秒とし、その後、加圧状態を解除した。
【0084】
〔工程4〕
以下の4つの条件で加熱を行った。
(条件1)基板温度を室温とした(すなわち、加熱しない)。
(条件2)予め100℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、5秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
(条件3)予め125℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、5秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
(条件4)予め150℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、5秒後ワークを加熱ステージから取り出した。下記表2にその結果を示す。
【0085】
【表2】

【0086】
ここで接合結果の判定は、作業者による引っ張り試験により両ワークが剥がれたか剥がれなかったかにより行った。
PDMSの軟化点は250℃、ガラスの軟化点は一般に500℃以上であるので、本実験における〔工程4〕に適切な温度範囲は、100℃以上250℃未満と考えられる。
【0087】
〔実験2−2〕環状オレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copolymer:以下COCとも言う)製樹脂ワークとCOC製樹脂ワークについて加熱範囲(基板温度範囲)を調査した。
【0088】
ワークの形状は以下の通りである。
第1のワークは、厚さ2mm、縦10mm×横10mmのCOC製の板状樹脂であり、第2のワークは、厚さ2mm、縦10mm×横10mmのガラス板である。第1のワークと第2のワークとの接合には、上記した貼り合わせ装置を用いた。
【0089】
実験条件は以下の通りである。
〔工程1〕中心波長172nmのエキシマランプから放出される光を照射した。ワークの照射面とランプ下面との距離Dは2.6mm、ワーク表面における放射照度は5mW/cmであり、照射時間は300秒とした。
〔工程2〕
光照射された接合面同士を対向させて接合面同士が接触するように積層した。両者の位置合わせは、反転ステージ、加圧ステージに設けた位置決めピンを用いて行った。
〔工程3〕
10000Paの圧力で加圧した。加圧時間は10秒とし、その後、加圧状態を解除した。
〔工程4〕
以下の4つの条件で加熱を行った。
(条件1)基板温度を室温とした(すなわち、加熱しない)。
(条件2)予め60℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、120秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
(条件3)予め70℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、120秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
(条件4)予め87℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、120秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
下記表にその結果を示す。
【0090】
【表3】

【0091】
ここで接合結果の判定は、作業者による引っ張り試験により両ワークが剥がれたか剥がれなかったかにより行った。
【0092】
上記結果より、本実験における〔工程4〕に適切な温度範囲は60℃以上87℃以下であると考えられる。COCの軟化点は87℃であるので、適切な温度範囲は、(COCの軟化点−10度)以上COCの軟化点以下と考えられる。
【0093】
〔実験2−2〕
シクロオレフィンポリマー(Cyclo Olefin Polymer:以下COPとも言う)製樹脂ワークとCOP製樹脂ワークについて加熱範囲(基板温度範囲)を調査した。
【0094】
ワークの形状は以下の通りである。
第1のワークは、厚さ2mm、縦10mm×横10mmのCOP製の板状樹脂であり、第2のワークは、厚さ2mm、縦10mm×横10mmのガラス板である。第1のワークと第2のワークとの接合には、上記した貼り合わせ装置を用いた。
【0095】
実験条件は以下の通りである。
〔工程1〕中心波長172nmのエキシマランプから放出される光を照射した。ワークの照射面とランプ下面との距離Dは2.6mm、ワーク表面における放射照度は5mW/cmであり、照射時間は300秒とした。
〔工程2〕
光照射された接合面同士を対向させて接合面同士が接触するように積層した。両者の位置合わせは、反転ステージ、加圧ステージに設けた位置決めピンを用いて行った。
〔工程3〕
10000Paの圧力で加圧した。加圧時間は10秒とし、その後、加圧状態を解除した。
【0096】
〔工程4〕
以下の4つの条件で加熱を行った。
(条件1)基板温度を室温とした(すなわち、加熱しない)。
(条件2)予め127℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、120秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
(条件3)予め132℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、120秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
(条件4)予め137℃に加熱しておき加熱していた加熱ステージ上にワークを乗せ、120秒後ワークを加熱ステージから取り出した。
下記表にその結果を示す。
【0097】
【表4】

【0098】
ここで接合結果の判定は、作業者による引っ張り試験により両ワークが剥がれたか剥がれなかったかにより行った)。
上記結果より、本実験における〔工程4〕に適切な温度範囲は、127℃より大きく137℃以下であると考えられる。COPの軟化点は137℃であるので、適切な温度範囲は、(COPの軟化点−10度)以上COPの軟化点以下と考えられる。
【符号の説明】
【0099】
10 光照射ユニット
10a ランプハウス
11a UVランプ
11b 反射ミラー
13 ランプ点灯装置
15 圧力センサ
17 光照射ユニット駆動部
17a 光照射ユニット駆動制御部
20 加圧ステージユニット
21 ワークステージ
21a ワークステージ駆動制御部
22 補助ステージ
23 加圧ステージ
24 ステージ移動機構
24a ステージ移動機構駆動制御部
25 駆動軸
26 柱
26a フランジ部
26b 高さ調整用カラー
27 ばね
27a ばねケース
28 ストッパ
28a ストッパ駆動部
28b ストッパ駆動制御部
29 加熱ステージ
29a 加熱機構
29b 冷却機構
29c 温度制御部
30 反転ステージユニット
31 反転ステージ
31a 吸着用溝部
31b 真空供給用孔部
31c 位置決めピン
32 ステージ保持機構
33 反転ステージ駆動機構
33a 反転ステージ制御部
33b 軸
33c カップリング
33d 軸受け部材
33e 回転軸
34 反転ステージベース
34a 高さ調整用スペーサ
35 真空供給機構
35a 真空供給管
35b 真空チャック駆動制御部
36 反転ステージ固定機構
36a 固定機構駆動部
36b 固定機構駆動制御部
37 搬送機構
37a 搬送機構制御部
41 ベース
50 上位コントローラ
101,103 金属板
101a 貫通穴
102 PDMS板
104 ガラス板
111 フック
112 プッシュプルゲージ
W,W1,W2 ワーク




【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラスからなる第一及び第二のワーク同士を貼り合わせる方法であって、
両ワークの貼り合わせる面の少なくとも一方に紫外光を照射し、
光照射後、両ワークの上記貼り合わせる面同士が接触するように積層し、
両ワークを、その接触面が加圧されるように加圧し、
加圧を解除後、両ワークを加熱する
ことを特徴とするワークの貼り合わせ方法。
【請求項2】
両ワークの加熱は加熱手段により行われ、当該加熱手段は予め加熱されている
ことを特徴とする請求項1記載のワークの貼り合わせ方法。
【請求項3】
両ワークはマイクロチップ基板であって、
ワークの少なくとも一方には微細な流路が形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のワークの貼り合わせ方法。
【請求項4】
樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラスからなる第一および第二のワーク同士を貼り合せる装置であって、
上記第一のワークを保持するステージと、
上記ステージに保持された第一のワークの表面に紫外光を照射する光照射ユニットと、
上記ステージに保持された第一のワークの光照射面に、第二のワークの一方の面が接触するように積層された上記第一のワークおよび第二のワークの少なくとも上下方向の移動を規制する移動規制機構と、
上記積層された状態の第一のワーク及び第二のワークを、その接触面が加圧されるように加圧する加圧機構と、
上記ステージとは別箇に設けられ、加圧解除後の上記積層された状態の第一のワーク及び第二のワークを加熱する加熱機構とを備えた
ことを特徴とするワーク貼り合わせ装置。
【請求項5】
樹脂と樹脂もしくは樹脂とガラスからなる第一及び第二のワーク同士を貼り合せる装置であって、
上記第一のワークを保持する第一のステージと、
上記第二のワークを保持する第二のステージと、
第一のワークの表面及び/または第二のワークの表面に紫外光を照射する光照射ユニットと、
少なくとも、上記第一および第二のステージに保持された上記第一、第二のワークの内の一方のワークの光照射面が、他方のワークの表面もしくは光照射面に接触するように両者を積層させるワーク積層機構と、
積層された第一及び第二のワークの少なくとも上下方向の移動を規制する移動規制機構と、
積層された状態の上記第一のワーク及び第二のワークを、その接触面が加圧されるように加圧する加圧機構と、
第一のステージに保持された第一のワークの表面及び/または第二ステージに保持された第二のワークの表面と、上記光照射ユニットとの距離をそれぞれ独立して調整するための間隙設定機構と、
上記第一のステージおよび第二のステージとは別箇に設けられ、加圧解除後の上記積層された状態の第一のワーク及び第二のワークを加熱する加熱機構とを備えた
ことを特徴とするワーク貼り合わせ装置。
【請求項6】
上記加熱機構が、ワークが載置される加熱ステージである
ことを特徴とする請求項4または請求項5のいずれか一項に記載のワーク貼り合わせ装置。
【請求項7】
両ワークはマイクロチップ基板であって、
ワークの少なくとも一方には微細な流路が形成されている
ことを特徴とする請求項5または請求項6のいずれか一項に記載のワークの貼り合わせ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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