説明

ワーク保持装置

【課題】 構造を簡略化でき、かつ小型化、軽量化を図ることができるワーク保持装置を提供する。
【解決手段】 ワーク40をワーク保持装置1で保持するときには、まず、アーム2を動かしてワーク保持体10を下方へと降下させ、ワーク支持棒20の先端をワーク40の挿入孔40B内に挿入する。次に、エアシリンダ30を伸長させることにより、ワーク支持棒20を傾動させ、この状態でワーク保持体10を引き上げる。ここで、ワーク支持棒20は挿入孔40Bの軸線に対して斜めに傾いているため、ワーク40の挿入孔40Bをワーク支持棒20の外周面に引っ掛けるようにしてワーク40を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車部品等のワークを保持して搬送するためのワーク保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の製造工場において自動車部品等のワークを保持して次の組立ラインまで搬送するためのワーク保持装置が知られている。このようなワーク保持装置としては、例えばワークに設けられた孔にピンを挿入し、このピンの内部に収容したワーク保持体であるL字クランプをピンから出没させてワークの孔に引っ掛けたり、または孔から取り外したりすることで、ワークの保持・搬送を行うようにしたものが知られている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、他のワーク保持装置としては、一対のワーク挟持アームによりワークを両側から挟持し、懸垂して搬送する構成としたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−51956号公報(段落0020〜0027、図1)
【特許文献2】実開平6−16378号公報(段落0006〜0013、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のワーク保持装置は、L字クランプをピンから自動的に出没させるためにピンとL字クランプが取り付けられるホルダ内の構造が複雑化する上に、部品点数が増加するという問題がある。また、ワークに形成される孔が小径の場合は、L字クランプも孔に応じて小さく形成せざるを得ず、ワークの孔に対するL字クランプの引っ掛かり部分が少なくなって保持ミスをする場合があるという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載のワーク保持装置は、一対のワーク挟持アームによりワークを両側から挟持する方式を採用しているため、ワークの外形よりもワーク保持装置が大きくなり、ワーク保持装置を小型化および軽量化するのが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、部品点数を減らして構造を簡略化でき、かつ小型化、軽量化を図ることができるワーク保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべく構成されるものであり、請求項1に記載の発明は、ワーク保持体と、前記ワーク保持体に傾動可能に連結され、ワークに設けられた複数の挿入孔内に挿入可能に配設された複数のワーク支持棒と、前記複数のワーク支持棒を、前記ワークの複数の挿入孔内に挿入した状態でその先端が互いに近づく方向または離れる方向に傾動させる駆動装置と、を備えたことを特徴とするワーク保持装置である。
【0008】
請求項1に記載のワーク保持装置によれば、ワークをワーク保持装置を用いて保持するときには、まず、ワーク保持体を動かして複数のワーク支持棒をそれぞれワークに設けられた複数の挿入孔内に挿入する。次に、駆動装置により複数のワーク支持棒を、その先端が互いに近づく方向または離れる方向に傾動させ、この状態でワーク保持体を引き上げる。ここで、ワーク支持棒は挿入孔の軸線に対して斜めに傾いているため、ワークはワーク支持棒に対して上下動することがない。このため、ワークの挿入孔をワーク支持棒の外周面に引っ掛けるようにしてワークを保持することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、ワーク支持棒が、ワークの複数の挿入孔内に貫通可能な長さを有していることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持装置である。
【0010】
請求項2に記載のワーク保持装置によれば、ワーク支持棒の先端でワークを引っ掛けるようにしてワークを確実に保持することができる。従って、ワークをワーク支持棒で安定して保持することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、ワーク支持棒が、先端に向かうに従って段階的に細くなる形状に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワーク保持装置である。
【0012】
請求項3に記載のワーク保持装置によれば、ワーク支持棒が、先端に向かうに従って太さが段階的に細くなる形状であるから、例えば複数の挿入孔を大小異なる大きさをもって形成した場合でも、穴径の大きな挿入孔に対しては、ワーク支持棒のうち太さの大きな部分を挿入することができると共に、穴径の小さな挿入孔に対しては、ワーク支持棒のうち太さの小さな部分を挿入することができる。このように大小異なる大きさを有する挿入孔に対しても、ワーク支持棒を挿入孔内に確実に挿入することができ、ワーク支持棒によるワークの保持を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、詳述した通り、本発明によれば、ワーク保持体、ワーク支持棒および駆動装置等を用いることによりワーク保持装置全体の構造を簡略化して部品点数を削減できると共に、ワーク保持装置全体の小型化、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るワーク保持装置を図1ないし図6の添付図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係るワーク保持装置およびワークを示す正面図であり、図2は、ワーク保持装置およびワークを図1中の矢示II−II方向からみた断面図である。図3は、ワーク支持棒をワークの挿入孔に挿入した状態を示す図1と同様位置からみた正面図であり、図4は、エアシリンダによりワーク支持棒を傾動させた状態を示す図1と同様位置からみた正面図である。図5は、図4中の支持棒およびワークを拡大して示す断面図であり、図6は、本実施の形態に係るシリンダ保持装置を用いてワークを保持した状態を図1と同様位置からみた正面図である。
【0015】
図1において、ワーク保持装置1は、ワーク保持体10、ワーク支持棒20および駆動装置であるエアシリンダ30によって概ね構成されている。
【0016】
ワーク保持体10は、図1に示すように、平板状をなすワーク保持板11と、ワーク保持板11の長手方向両側に離間してワーク保持板11の下面から垂下して設けられた第1のブラケット12,12と、第1のブラケット12,12の下端から互いに接近するように水平方向内向きに延びた第2のブラケット13,13とを備えている。また、第2のブラケット13は、その先端側が図2に示すように、二又状に分岐して支持棒取付部13A,13Aとなっている。そして、ワーク保持板11の上面には、例えば搬送用ロボットのアーム2等がピン結合して取り付けられ、このアーム2によりワーク保持体10は水平方向および垂直方向に移動可能になっている。
【0017】
ワーク支持棒20は、図1および図2に示すように、その下端側が下方に向けて2段階に縮径した段付きの円柱体として形成されている。そして、このワーク支持棒20は、図2に示すように、その下端側に外径寸法d1をもって形成された大径円柱部20Aと、外径寸法d2(d2<d1)をもって形成された小径円柱部20Bとを有している。また、図5に示すように、ワーク支持棒20の先端部は、先端に向かうに従って細くなる第1のテーパ部20Cとなっている。さらに、大径円柱部20Aと小径円柱部20Bとの間、および大径円柱部20Aの基端側には、それぞれワーク支持棒20の先端に向かうに従って細くなる第2のテーパ部20Dおよび第3のテーパ部20Eが形成されている。また、ワーク支持棒20は、その長さ方向中間部が第2のブラケット13の支持棒取付部13A,13Aの間に連結ピン21を介して傾動可能に連結されている。さらに、このワーク支持棒20は、その上端側が連結ピン22を介してエアシリンダ30に回動可能に連結されている。そして、これら2本のワーク支持棒20は、その端部を一方向(本実施の形態では下向き)に向けて並んで配設されている。
【0018】
エアシリンダ30は、図1に示すように、ワーク保持体10の第1のブラケット12とワーク支持棒20との間でロッド30Bが伸縮可能に設けられている。そして、このエアシリンダ30は、一端側が第1のブラケット12に固定して設けられたシリンダ30Aと、このシリンダ30A内で空圧により作動されるロッド30Bとから概ね構成されている。また、エアシリンダ30のロッド30Bの他端側は、図2に示すように二又状に分岐して支持棒取付部30C,30Cとなり、この支持棒取付部30C,30Cの間には前記した連結ピン22を介してワーク支持棒20がピン結合されている。そして、エアシリンダ30は、空圧により第1のブラケット12とワーク支持棒20との間で伸縮動作を行い、図4中に示す矢示a,a′方向へと伸長したときにワーク支持棒20を図4中に示す矢示b,b′方向へと傾動させるものである。
【0019】
符号「40」は自動車部品等のワークを示し、このワーク40の上板40Aには後記するようにワーク支持棒20が挿入される挿入孔40B,40Bが穿設されている。ここで、挿入孔40Bの穴径は図5に示すようにワーク支持棒20の大径円柱部20Aの外径寸法d1よりも僅かに大きく形成されている。
【0020】
次に、このように構成されるワーク保持装置1の動作について説明する。
まず、搬送用のロボットのアーム2を動かしてワーク保持体10を水平方向に移動させ、図1に示すように、ワーク支持棒20の軸線がワーク40の挿入孔40Bの軸線と一致するように芯合わせを行う。
【0021】
次に、図3に示すように、アーム2を動かしてワーク保持体10を下方へと垂直に降下させ、ワーク支持棒20の大径円柱部20Aと小径円柱部20Bとをワーク40の挿入孔40B内に挿入する。
【0022】
次に、図4に示すように、エアシリンダ30のロッド30Bをシリンダ30Aから矢示a,a′方向へと伸長させることにより、ワーク支持棒20を矢示b,b′方向へと傾動させ、図5に示すように、ワーク支持棒20の大径円柱部20Aの外周面をワーク40の挿入孔40Bの内周面に接触させる。
【0023】
そして、最後に図6に示すように、アーム2を上方へと動かす。ここで、ワーク支持棒20の大径円柱部20Aは挿入孔40Bに対して斜めに傾いているため、図5に示すように、大径円柱部20A,20A間の最短距離A−A(ワーク支持棒Aという)と、ワーク40の挿入孔40B,40B間の最短距離A′−A′(ワークA′という)とは、ワーク支持棒A<ワークA′となる関係に設定される。そして、大径円柱部20A,20A間の最長距離B−B(ワーク支持棒Bという)と、ワーク40の挿入孔40B,40B間の最長距離B′−B′(ワークB′という)とは、ワーク支持棒B>ワークB′となる関係に設定される。この結果、ワーク40は、ワーク支持棒20に対して上下動することなく(がたつくことなく)、ワーク支持棒20に対して安定して保持される。これにより、ワーク40はワーク保持装置1と一体となって床50から持ち上げられ、この状態でアーム2を例えば水平方向に動かすことにより、ワーク40はワーク保持装置1に保持されて次の工程場所へと搬送される。
【0024】
このように、本実施の形態では、ワーク支持棒20の先端でワーク40を引っ掛けるだけでワーク40を確実に保持することができる。このため、前記特許文献1で述べたようにL字クランプ等を用いた複雑な構造を採用する必要がなくなり、ワーク保持装置1の部品点数を削減して構造を簡略化することができる。また、ワーク40の挿入孔40Bが小径の場合でも、大径円柱部20Aと小径円柱部20Bのうち、小径円柱部20Bを挿入孔40B内に挿入してワーク支持棒20を傾動させることにより、ワーク40を安定して保持することができる。
【0025】
従って、特許文献1で述べたようにL字クランプの引っ掛かり部分が少なくて保持ミスが生じるような不具合を解消でき、ワーク保持装置1の性能、信頼性等を高めることができる。また、このようにワーク支持棒20の先端側に大径円柱部20Aと小径円柱部20Bとを設けたことにより、ワーク40の挿入孔40Bの孔径が比較的大きな場合には挿入孔40Bに大径円柱部20Aを挿入し、挿入孔40Bの孔径が比較的小さな場合には挿入孔40Bに小径円柱部20Bを挿入することで、ワーク支持棒20と挿入孔40Bとの間のクリアランスを一定にでき、これによりワーク支持棒20を傾動させるためのエアシリンダ30のストロークを常に同一に設定することができ、エアシリンダ30の操作性を高めることができる。
【0026】
また、ワーク保持装置1は、ワーク40の端部を挟持するのではなく、ワーク支持棒20をワーク40に設けられた挿入孔40B内に挿入する構成としたので、前記特許文献2で述べたように、挟持アームをワークの外側からはみ出すように配置する必要がなくなり、ワーク保持装置1の小型化、軽量化を図ることができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、ワーク支持棒20,20をそれぞれ別々のエアシリンダ30,30で作動させる構成とした場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、複数のワーク支持棒20をリンク機構等を介して1個のエアシリンダのみで傾動させる構成としてもよい。
【0028】
また、本実施の形態では、第1のブラケット12をワーク保持板11に固定して取り付ける場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、ワーク40に穿設される挿入孔40Bの取付位置に応じてワーク保持板11に対する第1のブラケット12の取付位置をサーボモータ等を用いて可変にしてもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、ワーク支持棒20は円柱状に形成する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、ワークの挿入孔に合わせてワーク支持棒20の横断面形状を変更してもよく、例えば多角形断面にしてもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、ワーク支持棒20の本数を2本に設定する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば3本以上にしてもよい。
【0031】
さらに、ワーク保持装置1でワーク40を保持するときに、ワーク支持棒20とワーク40の挿入孔40Bとの間で発生する摩擦力を高めるために、ワーク支持棒20とワーク40の挿入孔40Bとの接触面にローレット等の滑り止めの加工を施してもよい。
【0032】
さらに、本実施の形態では、駆動装置をエアシリンダ30で構成する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、油圧シリンダで構成してもよいし、モータ等で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係るワーク保持装置およびワークを示す正面図である。
【図2】ワーク保持装置およびワークを図1中の矢示II−II方向からみた断面図である。
【図3】ワーク支持棒をワークの挿入孔に挿入した状態を図1と同様位置からみた正面図である。
【図4】エアシリンダによりワーク支持棒を傾動させた状態を図1と同様位置からみた正面図である。
【図5】図4中の支持棒およびワークを拡大して示す断面図である。
【図6】実施の形態に係るシリンダ保持装置を用いてワークを保持した状態を図1と同様位置からみた正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ワーク保持装置
10 ワーク保持体
20 ワーク支持棒
30 エアシリンダ(駆動装置)
40 ワーク
40B 挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク保持体と、
前記ワーク保持体に傾動可能に連結され、ワークに設けられた複数の挿入孔内に挿入可能に配設された複数のワーク支持棒と、
前記複数のワーク支持棒を、前記ワークの複数の挿入孔内に挿入した状態でその先端が互いに近づく方向または離れる方向に傾動させる駆動装置と、
を備えたことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
前記ワーク支持棒は、前記ワークの複数の挿入孔内に貫通可能な長さを有していることを特徴とする請求項1に記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記ワーク支持棒は、先端に向かうに従って段階的に細くなる形状に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワーク保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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