説明

ワーク取出し・供給装置

【課題】 シンプルな構造で確実に環状ワークを把持することができるワーク取出し・供給装置を提供する。
【解決手段】 ワーク把持治具1はフレーム2にガイドパイプ3を取り付け、ガイドパイプ3内に芯出しシャフト5を挿通し、このシャフト5に固着したフランジ6をガイドパイプ3の外側に設けたスプリング7によって突出方向に付勢している。前記フレーム2の下面にはフィンガー8が設けられている。このフィンガー8は例えば3本周方向に等間隔で設けられ、前記シャフト5の軸方向と直交する径方向に開閉自在とされ且つ図示しないスプリングによって閉じ方向に付勢されている。そして、3本のフィンガー8の開閉中心と前記シャフト5とが一致するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリングやオイルシールなどのように貫通孔を有するワークを収納容器から取出して所定の場所に移動させるワーク取出し・供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオイルシールなどを1個づつ切り離して他の部材の所定の箇所に嵌合させる先行技術として、特許文献1〜3に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1には、旋回テーブルに立設された柱状マガジンにオイルシールを段積みして嵌挿し、段積みしたオイルシールを徐々に上昇させることで、最上段のオイルシールをマガジンの上端部にセットした可動部の外周面に形成された凸部に圧入嵌合することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、オイルシールを1個づつ分離して供給する装置として、治具台に互いに平行な上下方向の第1ガイド孔及び第2ガイド孔を形成し、これら第1及び第2のガイド孔をつなぐ横孔にスライダを挿入し、スライダに形成した受入孔に第1ガイド孔内のオイルシールを入れ込み、スライダを摺動させることで受入孔内のオイルシールを第2ガイド孔内に送り込む構造が開示されている。
【0005】
特許文献3には、オイルシールを積層してガイド棒に嵌挿し、ガイド棒の上端から突出したオイルシールをチャックにて把持し、下段のオイルシールと移動体を下方に移動することで分離する内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−277846号公報
【特許文献2】実開昭63−144129号公報
【特許文献3】実開平03−113326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した先行技術はいずれもオイルシールなどのワークを供給装置に段積みした後に、1個づつ切り離して所定箇所に圧入するものであり、バケット内に収納されているワークを供給装置にセットするのは、専ら人手によって行っている。
【0008】
バケット内に収納されているワークを供給装置にセットするまでをロボットによって行うことができれば、作業効率が大幅に向上する。しかしながら、段積みされた状態のワークを整列させてクランプすることが難しく、また、バケットの底部に残された最後の段のワークをロボットのフィンガーで把持することは困難で、特にバケットの底面がワークの重さなどで撓んでいる場合には、尚更把持することが困難となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本発明は、バケット内に収納された貫通孔を有するワークを取出して別の場所に供給するワーク取出し・供給装置において、この装置は前記貫通孔に挿入されるシャフトと、このシャフトが挿入された状態のワークを把持するチャックとを備え、前記シャフトは前記チャックを構成する複数のフィンガーの開閉中心に位置する構成とした。
【0010】
前記シャフトについては、軸方向に移動可能とされるとともにスプリングにて軸方向の突出方向に付勢され、シャフトがスプリングに抗して軸方向に後退するようにし、これをセンサで検出することでバケットの底面を感知する構成とすることができる。
【0011】
また、前記シャフトをバケット底面と平行に移動可能とすることで、ワークは段積みされた状態でバケット内に収納されたワークを整列させることが可能となる。
【0012】
また、前記バケットは傾斜軸を中心として回転可能とされた台に載置してもよい。このようにすることで、ラフな整列が可能となる。
【0013】
また、チャックの構造としてはチャックを構成する複数のフィンガーが外側または内側の何れからワークを把持するかは任意である。ワークに応じてフィンガーの動きを選択することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るワーク取出し・供給装置によれば、バケット内に収納されて搬入されたワークを積み替えなどを行うことなく、またそのまま段積み個数を変えることなくバケットから取出し、エンジンの組立ラインなどに供給することができるので、作業効率が向上する。
【0015】
また、シャフトを軸方向に移動可能とすることで、バケットの底面位置を検知することができ、仮にバケット底面がワークの重さで湾曲している場合でも、バケットからワークを取出すことができる。
【0016】
また、段積みされたワークの貫通孔にシャフトを挿通した状態でシャフトをバケット底面と平行に移動させるだけで、段積みされたワークの整列を簡単に行うことができ、その後の作業が簡単になる。
【0017】
また、バケットを斜めにした状態で載置できる台を設けることで、段積みしたワークのラフな位置決めを行うことができ、チャックによってワークを確実に把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るワーク取出し・供給装置を適用したエンジン組み立てラインの正面図
【図2】本発明に係るワーク取出し・供給装置を適用したエンジン組み立てラインの平面図
【図3】本発明に係るワーク取出し・供給装置のチャックがバケット底面を検知する前の状態を示す図
【図4】本発明に係るワーク取出し・供給装置のチャックがバケット底面を検知した状態を示す図
【図5】本発明に係るワーク取出し・供給装置のチャックがワーク把持した状態を示す図
【図6】バケット台の別実施例を示す斜視図
【図7】(a)〜(f)は別実施例に係るワーク取出し・供給装置の作用を説明した図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、エンジン組み立てラインLを跨いでワーク(ベアリング)圧入ユニットUが配置され、この圧入ユニットUの側方に本発明に係るワーク取出し・供給装置Rが配置されている。
【0020】
エンジン組み立てラインLにはシリンダバレルを等間隔で搬送するコンベアCVを備え、圧入ユニットUは圧入パンチPとこの圧入パンチPを昇降させるシリンダCYを備え、ワーク取出し・供給装置Rはワーク把持治具1を備えている。
【0021】
図3に示すように、ワーク把持治具1はフレーム2にガイドパイプ3を取り付け、このガイドパイプ3をシリンダ4にて軸方向に進退可能にしている。そしてガイドパイプ3内に芯出しシャフト5を挿通し、このシャフト5に固着したフランジ6をガイドパイプ3の外側に設けたスプリング7によって突出方向に付勢している。
【0022】
前記フレーム2の下面にはフィンガー8が設けられている。このフィンガー8は例えば3本周方向に等間隔で設けられ、前記シャフト5の軸方向と直交する径方向に開閉自在とされ且つ図示しないスプリングによって閉じ方向に付勢されている。そして、3本のフィンガー8の開閉中心と前記シャフト5とが一致するように設定されている。
【0023】
また、前記ガイドパイプ3の外周でフィンガー8で囲まれる部分にはカム9が上下2段に亘って形成され、このカム9と当接するカムフォロア10がフィンガー8の内側部に形成されている。カム9を上下2段に亘って設けているのは、フィンガー8の動きをシャフト5と平行にするためである。
【0024】
また、前記フレーム2の側面にはセンサ11を取り付けている。このセンサ11は図4に示すように、ワーク把持治具1が降下しシャフト5の下端がバケット12の底面に当接し、更にシャフト5が相対的に若干上昇してシャフト5に取り付けたフランジ6がセンサ11の位置に近接したことを検知する。
【0025】
センサ11がフランジ6を検知した位置から予め設定した量、即ち段積みされているワークWの高さだけワーク把持治具1を降下させることで、図示したようにバケット11の底面がワークWの重さで仮に撓んでいる場合でも、確実に段積みされているワークW内の正確な深さまでワーク把持治具1を進入させることができる。
【0026】
ワーク把持治具1が所定位置まで進入したならば、シリンダ4を作動してガイドパイプ3を下げる。すると図5に示すように、ガイドパイプ3と一体的にカム9も下がり、フィンガー8が径方向外側に開き、ワークWの貫通孔を内側から把持する。
【0027】
この後、ワーク取出し・供給装置Rのワーク把持治具1でワークWを保持したままマガジンMに移載され、切り出しを終了した後、圧入ユニットUのバッファコンベア上にワークWを1個づつ移載し、ワークWを1個づつ圧入パンチPによってシリンダバレルに圧入する。
【0028】
図6はバケット台の別実施例を示す斜視図であり、このバケット台20は円板状をなすとともにバケット12のコーナ部を固定する位置決め片21が設けられ、更にバケット台20の軸22は垂直面内でθだけ傾動可能とされ、また軸22を中心としてa方向に回動可能とされている。
【0029】
軸22を垂直として水平状態のバケット台20にバケット12をセットし、次いでθだけ傾動させた状態で、軸22を中心として左右に回動することで、バケット12内に収納されている段積み状態のワークがある程度整列させられるので、例えば、段積み状態のワークの貫通穴に挿入した芯出しシャフト5がバケット12の底面に当接しないという不具合の発生を防げる。
【0030】
また、図7(a)〜(f)は別実施例に係るワーク取出し・供給装置の作用を説明した図であり、この実施例ではバケット12を斜めにセットするとともに、フィンガー8がワークWを外側から把持するようにしている。
【0031】
先ず図7(a)に示すように、段積みされたワークの貫通孔の位置にシャフト5を合わせ、次いで(b)に示すように、ワーク把持治具1を前進させてワークの貫通孔の位置にシャフト5を挿入する。そして(c)に示すように、ワーク把持治具1をバケット12の底面と平行に移動し、段積みされたワークを隣接する段積みされたワークから離し、間に隙間を形成するとともに整列させる。
【0032】
この後、(d)に示すように、ワーク把持治具1を更に前進させてフィンガー8を段積みされたワークの周囲に入れ、(e)に示すように、フィンガー8を閉じ、更に(f)に示すように、バケット12からワークWを取出す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るワーク取出し・供給装置はエンジンの組立ラインにおいて、オイルシールやベアリングなどの貫通孔を有するワークをバケットに収納されている状態から、人手をかけずに組付け位置などに供給する場合等に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1…ワーク把持治具、2…フレーム、3…ガイドパイプ、4…シリンダ、5…芯出しシャフト、6…フランジ、7…スプリング、8…フィンガー、9…カム、10…カムフォロア、11…センサ、12…バケット、20…バケット台、21…位置決め片、22…バケット台の軸。
L…エンジン組み立てライン、U…ワーク圧入ユニット、R…ワーク取出し・供給装置、P…圧入パンチ、CY…シリンダ、M…マガジン、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット内に収納された貫通孔を有するワークを取出して別の場所に供給するワーク取出し・供給装置において、この装置は前記貫通孔に挿入されるシャフトと、このシャフトが挿入された状態のワークを把持するチャックとを備え、前記シャフトは前記チャックを構成する複数のフィンガーの開閉中心に位置することを特徴とするワーク取出し・供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク取出し・供給装置において、前記シャフトは軸方向に移動可能とされるとともにスプリングにて軸方向の突出方向に付勢され、シャフトがスプリングに抗して軸方向に後退することでバケットの底面を感知することを特徴とするワーク取出し・供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載のワーク取出し・供給装置において、前記ワークは段積みされた状態でバケット内に収納され、前記シャフトがバケット底面と平行に移動することで段積みされたワークが段積み方向に整列されることを特徴とするワーク取出し・供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載のワーク取出し・供給装置において、前記バケットをセットするバケット台を備え、このバケット台は軸を有し、この軸は垂直方向に対し傾動可能で且つ前記軸を中心としてバケット台は回転可能であることを特徴とするワーク取出し・供給装置。
【請求項5】
請求項1に記載のワーク取出し・供給装置において、前記チャックを構成する複数のフィンガーは外側または内側からワークを把持することを特徴とするワーク取出し・供給装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載のワーク取出し・供給装置において、前記ワークは環状をなすオイルシールまたはベアリングであることを特徴とするワーク取出し・供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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