説明

ワーク搬送用容器の開閉機構を備えた搬送装置

【課題】ワーク搬送用容器を開ける際の衝撃を減らし、このときに発生するパーティクルを抑制する。
【解決手段】ワーク搬送用容器19の上蓋20に突出部24を備え、容器開閉機構30に、突出部24の下面を支持可能な固定棚33と、底板21の上面に当接可能な第1押下部材38と、突出部24の上面に当接可能な第2押下部材39と、これらを昇降させる昇降機構部31と、を備え、ロボットハンド32に支持された状態のワーク搬送用容器19に対し、突出部24を第2押下部材39と固定棚33とで狭持し、底板21を第1押下部材38とロボットハンド32とで狭持しながら下降させて容器を開閉するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置においてワークを搬送する搬送装置に関するもので、特に、ワークとして、半導体露光装置に使用され、回路パターンの原版にあたるレチクルを搬送するのにあたって、レチクルを収納するレチクルケースを開閉する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は、ますます狭くなってきている。このような微細な回路パターンを半導体ウエハ上に形成する方法として、所望の回路パターンが形成された数十種類の原画パターンが描かれたレチクルを、ウエハ上の露光領域に高精度に位置決めした後、レーザ光によりパターンを縮小投影露光してウエハ上に転写する方法がある。このようにして作業を行う半導体露光装置においては、作業を行う作業空間をプロセス室内に設け、このプロセス室内を真空状態に保っておく必要がある。ここで、真空状態に保たれたプロセス室に対して、レチクル等のワークを搬入及び搬出する際には、プロセス室に隣接して、ロボットアームを備えたトランスファ室を設置し、プロセス室とほぼ同程度の圧力となるようにトランスファ室を真空状態に保った状態で、ロボットアームにてプロセス室に対してワークを搬入及び搬出する真空搬送装置が使用されている。真空搬送装置では、プロセス室に対してワークを交換するたびに、比較的容積が大きなトランスファ室を真空状態に復帰させるには非常に効率が悪いので、ロードロック室と呼ばれる小部屋を開閉自在のゲートバルブを介してトランスファ室に併設しておき、まずこのロードロック室にワークを置き、そしてロードロック室内を真空状態にした後に、ロードロック室とトランスファ室とを仕切るゲートバルブを開放し、トランスファ室に設置されたロボットアームによって、ワークをロードロック室からトランスファ室に搬入することが行われている。
ここで、ロードロック室が完全に真空状態になった後は、ワークにパーティクルが付着する可能性は極めて低いが、ワークをロードロック室に置いてから、それが十分に真空状態になるまでの時間は、ロードロック室内にはガスの流れ、つまり、気流が発生し、この気流により舞い上がったパーティクルがワークの表面に付着してしまう可能性が極めて高い。このような、ワーク表面の汚染に対して、許容できるパーティクルの大きさは、上述した回路線幅が狭くなるにつれて微小化してきている。
従来、このようなワーク表面へのパーティクルの付着を防ぐため、例えば、特許文献1のように、プロセス室にワークを搬入する際には、清浄雰囲気の中で、フィルタ付きのケーシングと底板とから成るワーク搬送用容器の中にワークを収納し、このワーク搬送用容器ごとロードロック室に搬送した後、ロードロック室の内部を真空にし、ロードロック室が完全に真空状態になった後、ワーク搬送用容器を開けてワークを取り出し、プロセス室へワークを搬入する、ということが行われている。そして、露光等のプロセスが終了した後は、上述とは逆の動きでワークが搬出される。具体的には、プロセス室から取り出したワークを真空状態のロードロック室に搬送してワーク搬送用容器内に再び収納し、ワーク搬送用容器を閉じた後、ロードロック室の真空状態を解除し、ワーク搬送用容器ごとロードロック室より搬出して清浄雰囲気の中でワークを取り出す、ということが行われている。
【0003】
ここで、ワーク搬送用容器からワークを取り出すために使用されるワーク搬送用容器の開閉機構は、ロードロック室内でワーク搬送用容器の底板とケーシングとを係止するロック機構を外した後、昇降機構によってワーク搬送用容器を下降させ、ケーシングをロードロック室の内壁に係止させながら底板をケーシングから分離させる、というものであった。この従来のワーク搬送用容器の開閉機構について説明する。図1は従来のレチクルケースの構造を示す側断面図である。1はワークであるレチクル、3はワーク搬送用容器の上蓋であるケーシング、4はワーク搬送用容器の底板、2はケーシングと底板の間にある外界と環境を遮断するシール材である。なお、図1では図示しないが、ケーシング3と底板4とはメカニカルなロック機構によって互いに係止され、ロック機構を外さない限り分離しないように構成されている。
図2に従来のワーク搬送用容器の開閉機構の動作を示す。5はケーシングの突出部、6はロードロックチャンバ、7はロードロックチャンバ上蓋、8はロードロックチャンバ6の内壁に設置された、ケーシング3の突出部5を引っ掛ける固定棚部、9はワーク搬送用容器の底板4を支持する容器保持部、10は真空ベローズ、11はロードロックチャンバ6内に昇降動作を導入する昇降機構部である。ワーク搬送用容器を開ける動作は、昇降機構部11がワーク搬送用容器を搭載した容器保持部9を下降させ、突出部5を固定棚部8に引っ掛けることで行われる。なお、このときワーク搬送用容器の図示しないロック機構は外されているものとする。図2(a)はケーシング3の突出部5が固定棚部8にちょうど接触した状態を示している。この後、さらに容器保持部9が下降すると、図2(b)のようにケーシング3が固定棚部8に残ったまま底板4が下降するのでワーク搬送用容器が開く。
【特許文献1】特許第3455072号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のワーク搬送用容器の開閉機構では、底板4とケーシング3との間のシール材2の粘着現象によって、容器を開ける際に衝撃が起こり、底板4と容器保持部9との間、あるいは突出部5と固定棚部8との間で、ずれやたたきが起き、パーティクルが発生するという問題があった。
また、ケーシング3と底板4とがずれ、これらが安全に閉まらなかったりすることがあった。
また、ケーシング3と底板4との位置ずれによってワーク1がロボットアームに対してずれることになり、ワークの搬送ができないことがあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、搬送装置においてワーク搬送用容器を開ける際の衝撃を減らし、このときに発生するパーティクルを抑制するとともに、ワーク搬送用容器のずれを防止することができ、安全に容器を閉め、搬送することができるワーク搬送用容器の開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1記載の発明は、ワークを搭載する底板と、前記ワークを覆って前記底板との間で前記ワークを収容するとともに前記底板と分離可能な上蓋と、を備えたワーク搬送用容器を所定の位置に搬送可能であるとともに昇降自在に構成されたロボットハンドと、前記ロボットハンドが到達可能な位置にあって前記ワーク搬送用容器の前記上蓋と前記底板とを開閉する容器開閉機構と、を備えた搬送装置において、前記ワーク搬送用容器は、前記上蓋に前記ワーク搬送用容器の側面から外側に突出する突出部を備え、前記容器開閉機構は、前記突出部の下面を支持可能な固定棚と、前記底板の上面に当接可能な第1押下部材と、前記突出部の上面に当接可能な第2押下部材と、前記第1押下部材と前記第2押下部材とを昇降させる昇降機構部と、を備え、前記搬送装置は、前記上蓋と前記底板とを分離させる際、前記ロボットハンドに前記底板が支持された状態の前記ワーク搬送用容器に対し、前記第1押下部材と前記第2押下部材を下降させ、前記突出部を前記第2押下部材と前記固定棚とで狭持し、前記底板を前記第1押下部材と前記ロボットハンドとで狭持しながら下降させることを特徴とする搬送装置とするものである。
請求項2記載の発明は、前記第1押下部材と前記第2押下部材は、1つの前記昇降機構部によって同時に昇降するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項3記載の発明は、前記第2押下部材は、前記昇降機構部に対して、上下方向に撓み可能な板ばねを介して固定されていることを特徴とする請求項2記載の搬送装置とするものである。
請求項4記載の発明は、前記ロボットハンドと前記容器開閉機構とが気密な真空容器内に収容され、前記上蓋と前記底板とを分離させる作業が前記真空容器内で行われることを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項5記載の発明は、前記昇降機構部は、前記真空容器上面に対して固定される回転型モータと、前記回転型モータの回転軸に連結されたボールネジと、前記ボールネジのナット部に固定された昇降ベースと、前記昇降ベースを上下に精密に案内するリニアガイドと、前記昇降ベースに一端が固定され、前記真空容器の内部へ貫通するとともに他端に前記第1押下部材と前記第2押下部材とを支持する昇降シャフトと、前記真空容器の上面と前記昇降ベースとの間であって前記昇降シャフトを挿通させる真空ベローズと、で構成されることを特徴とする請求項4記載の搬送装置とするものである。
請求項6記載の発明は、請求項1記載の搬送装置を備え、前記ワークがレチクルであることを特徴とする半導体露光装置とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の搬送装置によれば、ワーク搬送用容器の上蓋と底板とを開閉させる際、衝撃のない静かな開閉が実現され、これにより開閉時のパーティクルも防止される。またワーク搬送用容器がロボットハンドに対してずれることを防止することができ、安全にワーク搬送用容器を開閉して搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0008】
図3に本発明で使用するワーク搬送用容器19の構造を示す。(a)は上面図、(b)は側断面図を示している。22はワークであるレチクル、20はワーク搬送用容器19の上蓋、21はワーク搬送用容器19の底板、25は上蓋20と底板21との間にある外界と環境を遮断するシール材である。シール材25は本実施例ではOリングが使用されている。上蓋20と底板21とは図示しないマグネットによって互いに吸着するようになっていて、上下に分離可能である。上蓋20には複数のフィルタ23が設けられている。フィルタ23はワーク22が収容される空間と容器外部との間に存在し、気体は通すが微小なパーティクルを通さないフィルタである。また、ワーク搬送用容器19は図3(a)のように上から見て矩形になっていて、上蓋20の対向する1組の2辺に突出部24が形成されている。突出部24は容器の側面よりも外側に突出している。また、別の1組の2辺には凹部26が形成されている。凹部26は容器の側面よりも内側に窪んでいる。凹部26によって、ワーク搬送用容器19を上から見たときに底板21が見えるようになっている。
なお、本実施例では上蓋20に凹部26が形成されているが、後述の説明から明らかなように、凹部26が形成されていなくても、上から容器を見たときに底板21のみが見える(押下できる)部分があればよい。
【0009】
図5に本発明の搬送装置が適用された半導体露光装置の一部の上面図を示す。以下、本実施例では真空環境下における搬送装置について説明する。図において、41は、真空状態(大気圧よりも低い負圧の状態)、あるいは、真空解除状態(ほぼ大気圧の状態)に圧力調整可能なロードロック室であり、45は、ロードロック室41に隣接して接続されたトランスファ室である。47は、ワーク22が収納されたワーク搬送用容器19を開閉するための容器開閉室であり、トランスファ室45とともに常時真空状態が保たれている。容器開閉室47の室内に、後述するワーク搬送用容器19の開閉機構が設置されている。48は、露光等の処理を行うためのプロセス室であり、トランスファ室45に隣接して接続されている。なお、ロードロック室41、トランスファ室45、容器開閉室47、および、プロセス室48は、いずれも、真空状態が維持できるように気密構造になっている。
トランスファ室45には、ロードロック室41、容器開閉室47、および、プロセス室48に対して、ワーク22を搬入及び搬出するためのロボットアーム46が設置してあり、また、図示していないが、トランスファ室45内のガス(気体)を排気して内部を真空状態にするための真空ポンプと、真空状態を解除するための給気設備が装備されている。
また、ロードロック室41とトランスファ室45との間には、ゲートバルブ49が設けてあり、ゲートバルブ49は、ワーク搬送用容器19を持ったロボットアーム46の先端部が通過するのに十分な広さの開口と、この開口を開閉するためのバルブを備えており、このバルブを閉じれば、ロードロック室41とトランスファ室45の間の気密性を保つことができるようになっている。ゲートバルブ49はロードロック室41側壁の開口部42に連結されている。また、ロードロック室41の他方の側壁には、ワーク22が収納されたワーク搬送用容器19を搬入、搬出するための搬入搬出口43が設けてあり、この搬入搬出口43を塞ぎ、ロードロック室41の内部と外部の間で気密性が保てるようにゲートバルブ50が設けてある。また、図示していないが、ロードロック室41には、ロードロック室41内のガスを排気して内部を真空状態にするための真空ポンプと、真空状態を解除するための給気管が接続されている。給気管の先には、図示しない給気バルブ及び清浄フィルタが接続されており、この給気バルブを開放すると、清浄フィルタを通ってガスがロードロック室41内に流れ込み、ロードロック室41内の真空状態を解除できるようになっている。
以上の構成において、まず、図示しない清浄雰囲気の中で、ワーク22をワーク搬送用容器19の中に収納する。このとき、ロードロック室41、トランスファ室45、容器開閉室47、プロセス室48はいずれも真空状態とする。トランスファ室45側のゲートバルブ49を閉じて、ロードロック室41のみを真空解除する。外部側のゲートバルブ50を開けて、図示しない大気搬送用ロボットアームにて、ワーク22を収納したワーク搬送用容器19をロードロック室41内に載置する。外部側のゲートバルブ50を閉じた後、ロードロック室41の内部を真空にする。次に、トランスファ室45側のゲートバルブ49を開けて、ロボットアーム46により、ロードロック室45からワーク搬送用容器19を搬出し、容器開閉室47へ搬入する。ワーク搬送容器19を真空雰囲気外に搬出する場合は上記と逆の手順による。
【0010】
ロボットアーム46は、アーム全体もしくは少なくともロボットハンド32を上下に昇降させる昇降機構を有するものである。ロボットアーム46は複数のアームが連結されている水平多関節形のアームであり、アームの連結部を回転させることによってロボットアーム46の先端に備えたフォーク形状のロボットハンド32をロボットアーム46基端の旋回中心に対して伸縮動作させる。また、ロボットアーム46全体はその基端の旋回中心で回転可能であって、この動作によってロードロック室41、プロセス室48、及び容器開閉室47の各方向にロボットハンド32を向けることができる。ロボットハンド32はワーク搬送用容器19の底板21の両サイドが載置できるように形成されている。
【0011】
ワーク搬送用容器19の開閉場所である容器開閉室47には本発明の搬送装置における容器開閉機構30が設置されている。図4は容器開閉機構30を示す図であって、ロボットハンド32によってワーク搬送用容器19が搬送されてきたときを示している。(a)は上面図であって容器開閉室47のチャンバ蓋36及び後述する昇降機構部31を透視して図示している。(b)は(a)において矢印X方向から見た側断面図、(c)は(a)において矢印Y方向から見た側断面図である。(b)、(c)図においては解りやすくするため、一部を省略して図示している。
容器開閉機構30は、図4のように、容器開閉室47の室内にワーク搬送用容器19の上蓋20の突出部24の下面と当接可能な固定棚33を備えている。固定棚33はロボットハンド32の幅よりもやや広い間隔に設置されている。一方、
容器開閉室47のチャンバ蓋36の上面には容器開閉機構30の昇降機構部31が設置されている。昇降機構部31は、例えば図6に示すように、容器開閉室47のチャンバ蓋36に対して固定される回転型モータ51と、回転型モータ51の回転軸に連結されたボールネジ52と、ボールネジ52のナット部に固定された昇降ベース53と、昇降ベース53を上下に精密に案内するリニアガイド55と、昇降ベース53に一端が固定され、容器開閉室47の内部へ貫通する昇降シャフト54と、容器開閉室47の気密性を確保し、かつ昇降シャフト54の昇降を妨げないように、容器開閉室47の上面と昇降ベース53との間に設けられた真空ベローズ56とで構成されている。そして、昇降シャフト54の他端にプレート34が固定されている。
【0012】
図4のように、プレート34は水平方向に延在する板状の部材である。プレート34の両端には第1押下部材38が固定されている。第1押下部材38は、ロボットハンド32によってワーク搬送用容器19が図4(a)のように搬送されてきたとき、ワーク搬送用容器19の上蓋20の凹部26の上に位置するようになっていて、上蓋20とは接触せず、底板21の上面と当接可能に形成されている。一方、プレート34には4枚の板ばね35のそれぞれの一端が固定されている。そして、それぞれの板ばね35の他端には第2押下部材39が固定されている。第2押下部材39は、ロボットハンド32によってワーク搬送用容器19が図4(a)のように搬送されてきたとき、ワーク搬送用容器19の上蓋20の突出部24の上に位置するようになっていて、突出部24の上面と当接可能に形成されている。第2押下部材39の先端は球状に形成されている。また、上述のように突出部24の下面は固定棚33と当接可能な位置にあるので、突出部24は上下方向において第2押下部材39と固定棚33との間に位置することになる。
以上のように、昇降機構部31の動作によって、第1押下部材38と第2押下部材39は同時に昇降可能であって、これらが下降したとき、第1押下部材38はワーク搬送用容器19の底板21の上面と当接し、第2押下部材39はワーク搬送用容器19の上蓋20の突出部24の上面と当接する。
なお、本実施例では第1押下部材38と第2押下部材39を1つの昇降機構部31に対して固定している例を示しているが、勿論、昇降機構部31を別にもう1機設け、第1押下部材38と第2押下部材39とを別々に昇降可能に構成してもよい。但し、この場合、各々の昇降機構部31はある程度同時に昇降できるような制御が必要である。
【0013】
以上で構成された本発明の搬送装置について、ワーク搬送用容器19を開ける際の動作を図4で説明する。ワーク搬送用容器19を開ける動作は、ロボットアーム46と容器開閉機構30とを同時に動作させながら、ワーク搬送用容器19の上蓋20の突出部24を固定棚33に引っ掛けることで行われる。以下、この動作を説明する。
ここでは、ロボットアーム46がロードロック室41などからワーク搬送用容器19をロボットハンド32に搭載して容器搬送室47へ搬送してきているものとする。
まず、図4(a)のように、ロボットアーム46が、ロボットハンド32にワーク搬送用容器19を搭載して容器開閉室47に搬送する。このとき、容器開閉機構30の第1押下部材38と第2押下部材39は、ロボットハンド32とワーク搬送用容器19に干渉しない程度に上方に位置している。
次に、図4(b)(c)のように、ロボットハンド32を下降させ、ワーク搬送用容器19の上蓋20の突出部24の下面が固定棚33にちょうど接触する高さでロボットハンド32の下降動作を停止させる。そしてこのとき、容器開閉機構30の第1押下部材38と第2押下部材39を、第1押下部材38がワーク搬送用容器19の底板21の上面と当接し、第2押下部材39がワーク搬送用容器19の上蓋20の突出部24の上面と当接する位置まで下降させる。
次に、以上の状態で、ロボットハンド32と容器開閉機構30の第1押下部材38と第2押下部材39を同時にわずかに(数ミリ程度)下降させる。このときの状態を示すのが(b’)(c’)図である。同図(b’)のように、ワーク搬送用容器19の上蓋20は、その突出部24が第2押下部材39と固定棚33とに狭持されて固定棚33に係止する。一方、同図(c’)のようにワーク搬送用容器19の底板21は第1押下部材38の下降動作によって押し下げられ、このときロボットハンド32も同時に下降するので、底板21は上蓋20から分離してロボットハンド32に載置される。また、底板21に搭載されているワーク22もそのままロボットハンド32に搭載される。また、第1押下部材38が底板21を上蓋20から分離させる程度まで下降する一方で、第2押下部材39は突出部24を介して固定棚33で係止するので絶対的に下降しないが、上記の板ばね35が上下方向に撓むように配置されているので、(b’)図のように、板ばね35の撓み作用により、第1押下部材38は問題なく底板21を上蓋20から分離させる程度に下降可能である。
ここで従来技術によれば、第1押下部材38によって底板21が押し下げられ、底板21と上蓋20とが分離したときに、シール材25の粘着(癒着)によって上蓋20が跳ね上がることがあるが、本発明においては、底板21が押下されている間は、板ばね35が撓みながら第2押下部材39によって上蓋20を押さえつけ、上蓋20を固定棚33とともに動かないようにするので、上蓋20が跳ね上がることがない。
以上の動作により、
衝撃なくワーク搬送用容器19は開き、底板21及びワーク22はロボットハンド32上に静かに載置されることになり、
ワーク搬送用容器19の開放時のパーティクルもほとんど発生しない。
またワーク搬送用容器19がロボットハンド32に対してずれることもなく、ワーク搬送用容器19を閉める動作も安全に確実に行うことができる。また、ワーク搬送用容器19のずれがないことで、ワーク22の搬送ミスも低減できる。なお、ワーク搬送用容器19を閉める動作は上述の逆の順路を辿ればよいことはいうまでもないので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本実施例はワーク搬送用容器として特にレチクルを収納する容器を想定しているが、同様な構造の容器において開閉時の衝撃が問題となる場合には本発明のような容器開閉機構を備える搬送装置が使用できる。また、本実施例における搬送装置は、トランスファ室内や容器開閉室など真空環境下における例を説明したが、搬送装置としては、昇降可能なロボットハンド及びロボットハンドがアクセスできる上記容器開閉機構を少なくとも備えていれば、真空環境下を問わず、例えば清浄な雰囲気のクリーンルームなど大気圧環境下でも本発明は利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のレチクルケースの構造説明図
【図2】従来のレチクルケースの開閉機構を説明する図
【図3】本発明において使用するワーク搬送用容器の構造説明図
【図4】本発明における容器開閉機構を説明する図
【図5】本発明の搬送装置が適用された半導体露光装置の一部の上面図
【図6】本発明の容器開閉機構の昇降機構部の構成を示す側面図
【符号の説明】
【0016】
1 ワーク
2 シール材
3 ケーシング
4 底板
5 突出部
6 ロードロックチャンバ
7 ロードロックチャンバ上蓋
8 固定棚部
9 容器保持部
10 真空ベローズ
11 昇降機構部
19 ワーク搬送用容器
20 上蓋
21 底板
22 ワーク
23 フィルタ
24 突出部
25 シール材
26 凹部
30 容器開閉機構
31 昇降機構部
32 ロボットハンド
33 固定棚
34 プレート
35 板ばね
36 チャンバ蓋
38 第1押下部材
39 第2押下部材
41 ロードロック室
42 開口部
43 搬入搬出口
45 トランスファ室
46 ロボットアーム
47 容器開閉室
48 プロセス室
49 ゲートバルブ
50 ゲートバルブ
51 モータ
52 ボールネジ
53 昇降ベース
54 昇降シャフト
55 リニアガイド
56 真空ベローズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搭載する底板と、前記ワークを覆って前記底板との間で前記ワークを収容するとともに前記底板と分離可能な上蓋と、を備えたワーク搬送用容器を所定の位置に搬送可能であるとともに昇降自在に構成されたロボットハンドと、
前記ロボットハンドが到達可能な位置にあって前記ワーク搬送用容器の前記上蓋と前記底板とを開閉する容器開閉機構と、を備えた搬送装置において、
前記ワーク搬送用容器は、前記上蓋に前記ワーク搬送用容器の側面から外側に突出する突出部を備え、
前記容器開閉機構は、前記突出部の下面を支持可能な固定棚と、前記底板の上面に当接可能な第1押下部材と、前記突出部の上面に当接可能な第2押下部材と、前記第1押下部材と前記第2押下部材とを昇降させる昇降機構部と、を備え、
前記搬送装置は、前記上蓋と前記底板とを分離させる際、前記ロボットハンドに前記底板が支持された状態の前記ワーク搬送用容器に対し、前記第1押下部材と前記第2押下部材を下降させ、前記突出部を前記第2押下部材と前記固定棚とで狭持し、前記底板を前記第1押下部材と前記ロボットハンドとで狭持しながら下降させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第1押下部材と前記第2押下部材は、1つの前記昇降機構部によって同時に昇降するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第2押下部材は、前記昇降機構部に対して、上下方向に撓み可能な板ばねを介して固定されていることを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記ロボットハンドと前記容器開閉機構とが気密な真空容器内に収容され、前記上蓋と前記底板とを分離させる作業が前記真空容器内で行われることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項5】
前記昇降機構部は、前記真空容器上面に対して固定される回転型モータと、前記回転型モータの回転軸に連結されたボールネジと、前記ボールネジのナット部に固定された昇降ベースと、前記昇降ベースを上下に精密に案内するリニアガイドと、前記昇降ベースに一端が固定され、前記真空容器の内部へ貫通するとともに他端に前記第1押下部材と前記第2押下部材とを支持する昇降シャフトと、前記真空容器の上面と前記昇降ベースとの間であって前記昇降シャフトを挿通させる真空ベローズと、で構成されることを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
請求項1記載の搬送装置を備え、前記ワークがレチクルであることを特徴とする半導体露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−27809(P2010−27809A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186497(P2008−186497)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】