説明

一体化されたサブナノメートルスケール電子ビームシステム

基板上に形成されたナノ先端電子エミッタおよびトンネル放出接合部と、初期電子ビーム引出し電極と、「ナノサンドイッチアインツェル」電極と、最上部保護層とを有する多層構造を含む固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、非常に小型化された電子ビーム源に関し、具体的には、サブナノメートルスケール電子ビーム源およびシステム、その製造方法、ならびにその使用方法に関する。
【0002】
本明細書で使用される「サブナノメートルスケール電子ビーム」との語は、発生源において、そのエネルギーが約1ナノメートル以下の直径に集中し、また、主焦点で同様のスケールの電子ビームを表す。ビームの他の部分は、特定の応用例に応じて、10倍または100倍まで小さくまたは大きくすることができる。
【0003】
本願は、特に、小スケール電子ビーム源と、サブナノメートルスケール電子ビームの源、システム、製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
本願は、2003年7月8日に出願された、同時係属の米国特許出願第10/615452号および米国特許出願第10/615499号の一部継続出願である。
電子顕微鏡など、多数の分析装置が、基板の形状および表面構造を描画するのに使用されている。これらの装置は、電子の集束ビームを利用して、基板を照らす。これらの電子ビーム源は、しばしば、分析装置の先端部に含まれる。
【0005】
これらの分析装置で利用できる点電子源は、周知である。これらの点電子源は、しばしば原子スケール程度であり、コヒーレント電子ビームの電場放出を供給するように構成される。たとえば、Hans−Werner Fink、Werner Stocker、およびHeinz Schmidらによる「Coherent point source electron beams」、Journal of Vacuum Science and Technology B誌、第8巻、第6号、1990年11/12月、第1323頁〜1324頁、及びA.G.Rinzler、J.H.Hafner、P.Nikolaev、L.Lou、S.G.Kim、D.Tomanek、P.Nordlander、D.T.ColbertおよびR.E.Smalleyらによる「Unraveling nanotubes:field emission from an atomic wire」、Science誌、第269巻、第1550頁〜1553頁(1995年);Heinz Schmid、Hans−Werner Finkらによる「Carbon nanotubes are coherent electron sources」、Applied Physics Letters、第70巻、第20号、第2679頁〜2680頁、1997年5月19日、に記載されている。最初の参考文献では、電子エミッタとして、タングステン原子が原子的に完全な角錐によって終端するタングステン先端部が開示されている。第2および第3の参考文献では、電子エミッタとしてのカーボンナノチューブが開示されている。
【0006】
さらなる例として、米国特許第5654548号(「Source for intense coherent electron pulses」)に、このような電子源をあるタイプの電子顕微鏡検査に使用する方法が開示されている。この米国特許の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
電子ビームは、顕微鏡を構成するのに使用されてきた。たとえば、米国特許第6005247号(Electron beam microscope using electron beam patterns)に、「電子ビーム顕微鏡に、電子ビームパターン源、真空包囲体、電子光学系、検出器、およびプロセッサが含まれる」と開示されている。米国特許第6043491号(「Scanning electron microscope」)に、「本発明の走査型電子顕微鏡は、遅滞方法(retarding method)を使用すること、ならびに電子ビームおよび二次電子または後方散乱される電子との間の干渉を抑止することによって、より高い解像度を有するより明瞭なSEM画像を入手することを可能にする」と開示されている。これらの米国特許のそれぞれの開示全体が、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0008】
電場放出された電子ビームは、「Vacuum Microelectronics」、Wei Zhu編集(John Wiley & Sons、ニューヨーク、2001年)に記載されているように、多数のタイプの真空マイクロエレクトロニクス素子にも有用である。
【0009】
走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で使用される特殊化された先端部の製造は、当業者に周知である。たとえば、米国特許第6020677号(Carbon cone and carbon whisker field emitters)に、「カーボン円錐電場エミッタおよびカーボンウィスカ電場エミッタを開示する。これらの電場エミッタは、電場エミッタカソードおよび前記カソードを利用する表示パネルにおいて特定の有用性を見出す」と開示されている。米国特許第5393647号(Method of making superhard tips for micro−probe microscopy and field emission)に、「シリコンなどの第1材料の先端部を薄くすることにより、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、ビーム電子放出顕微鏡(beam electron emission microscope)、または電場放出のための、マイクロプローブ先端部の形成方法」が開示されている。これらの米国特許のそれぞれの開示全体が、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0010】
原子点源電子ビームエミッタの従来技術の源は、破壊的汚染、化学的劣化、または残留気体イオンによる破壊的イオンボンバードメントからそれらの源を保護するために、通常、約1.33×10-6Pa(10-8Torr)から約1.33×10-8Pa(10-10Torr)程度の非常に低い圧力で操作されなければならない。これは、しばしば、複雑で高価で扱いにくい機器の使用を必要とする。
【0011】
カーボンベースナノチューブを、超伝導ナノチャネルとして構成することができる。ナノチューブは、弾力があり、ナノメートルスケールの鋭い先端部を有する。したがって、ナノチューブは、走査型トンネル顕微鏡および原子間力顕微鏡などの顕微鏡検査装置のマイクロプローブ先端部を作るのに有用である。理想的には先端部頂点で単一原子を有するが、通常は先端部の直径において3原子から10原子であるカーボンベースナノチューブの寸法は、先端部を、導電基板の十分近くに位置決めすることを可能にし、その結果、トンネル電流が、印加されたバイアス電圧の下で先端部と基板との間を流れるようになる。このトンネル電流は、ジョセフソントンネル効果によって説明される、障壁にまたがる電子のトンネリングに類似し、このジョセフソントンネル効果は、障壁によって分離された超伝導材料の2つの層を含むシステムから得られる。この2つの層は、非常に狭い導電ブリッジによって接続されるか、または非導電材料の層によって分離されるか、のいずれかである。このシステムが、超伝導条件(低温)の下にある時に、トンネル効果が発生し、ここで、超伝導電流またはスーパーカレントが、超伝導層の間の障壁にまたがって流れる。
【0012】
カーボンベースの超伝導ナノチューブの場合に、障壁は、超伝導カーボンベースナノチューブと基板との間のマイスナ効果の斥力である。マイスナ効果とは、超伝導状態の材料が、超伝導材料からすべての磁場を追い出す能力である(すなわち、そのような超伝導体は、完全に反磁性であり、0の透磁率を示す)。David E.H.Jonesによる「The Further Inventions of Daedalus」、Oxford Press誌、1999年を参照されたい。「Electric Gas Light on Tap」に関するセクション(第174頁〜第175頁)で、この著者は、住宅向き電子ビームベース配電のために排気された超伝導チューブのマイスナ効果を活用する方法を記述している。さらに、米国特許第4975669号(Magnetic bottle employing Meissner effect)を参照することができる。この米国特許の開示全体は、参照によって本明細書に組み込まれている。原子間力顕微鏡は、基板内の表面原子の電子雲と先端部の表面の電子雲とのオーバーラップによって生成される斥力に頼るが、同一の効果を得るための導電性基板の必要を打ち消す。
【0013】
本明細書で使用される用語「ナノチューブ」は、約0.3ナノメートルから約10ナノメートルまでの直径と、約3ナノメートルから約10000ナノメートルまでの長さとを有する中空構造を指す。一般に、そのようなナノチューブは、少なくとも約1:10から約1:1000のアスペクト比を有する。カーボンベースナノチューブは、95%から100%まで間の炭素原子から構成される中空構造である。一般に、ナノチューブの最も一般的に研究される形態は、銅よりも電気をよく通す物理的特性を有する。通常、カーボンナノチューブは、鋼鉄の100倍の引張強度を有する。カーボンナノチューブは、極低温で超伝導体になる。ナノチューブは、カーボン以外の材料、たとえば二硫化タングステン、二硫化モリブデン、および窒化ホウ素などから製造することができる。カーボンナノチューブは、金属コアによって覆われてもよい。カーボンナノチューブに、他の元素、たとえば金属をドープすることができる。
【0014】
カーボンベースナノチューブは、単層ナノチューブ(single−walled nanotube、SWNT)または多層ナノチューブ(multi−walled nanotube、MWNT)のいずれかとすることができる。MWNTには、それぞれが異なる直径を有する複数のナノチューブが含まれる。したがって、最小直径のナノチューブは、より大きい直径のナノチューブの内部に閉じ込められ、このより大きい直径のナノチューブは、さらにより大きい直径のナノチューブの内部に閉じ込められる。
【0015】
原子点源電子ビームエミッタの従来技術による電子源は、通常、破壊的汚染、化学的劣化、ビーム散乱、または残留気体イオンによる破壊的イオンボンバードメントからそれらの源を保護するために、通常、約1.33×10-6Pa(10-8Torr)から約1.33×10-8Pa(10-10Torr)程度の非常に低い圧力で操作されなければならない。これは、しばしば、複雑で高価で扱いにくい機器の使用を必要とする。
【0016】
カーボンベースナノチューブは、非常に微細な電子ビームまたは他の荷電粒子を誘導し、チャネリングさせる超伝導ナノチャネルを形成するのに使用される。ほぼ完全な真空条件およびウルトラクリーン条件を保つために、超伝導ナノチャネルの出口端は、電子透過性ナノ膜によって密閉される。
【0017】
カーボンベースナノチューブを含む特殊化された先端部の製造と、走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡でのその使用とは、当業者に周知である。たとえば、米国特許第6020677号(Carbon cone and carbon whisker field emitters)に、「カーボン円錐電場エミッタおよびカーボンウィスカ電場エミッタを開示する。これらの電場エミッタは、電場エミッタカソードおよび前記カソードを利用する表示パネルにおいて特定の有用性を見出す」と開示されている。米国特許第5393647号(Method of making super hard tips for micro−probe microscopy and field emission)に、「シリコンなどの第1材料の先端部を薄くすることにより、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、ビーム電子放出顕微鏡、または電場放出のための、マイクロプローブ先端部の形成方法」が開示されている。これらの米国特許のそれぞれの開示全体は、これによって、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0018】
電子透過性ナノ膜は、当業者に周知である。たとえば、米国特許第6300631号(Method of thinning an electron transparent thin film membrane on a TEM grid using a focused ion beam)、米国特許第6194720号(Preparation of transmission electron microscope samples)、米国特許第6188068号、米国特許第6140652号、米国特許第6100639号、米国特許第6060839号、米国特許第5986264号、米国特許第5940678号(Electronic transparent samples)、米国特許第5633502号、米国特許第4680467号、米国特許第3780334号(Vacuum tube for generating a wide beam of fast electrons)などを参照することができる。これらの米国特許のそれぞれの開示全体が、これによって、参照によって本明細書に組み込まれている。
【特許文献1】米国特許第5654548号明細書
【特許文献2】米国特許第6005247号明細書
【特許文献3】米国特許第6043491号明細書
【特許文献4】米国特許第6020677号明細書
【特許文献5】米国特許第5393647号明細書
【特許文献6】米国特許第4975669号明細書
【特許文献7】米国特許第6300631号明細書
【特許文献8】米国特許第6188068号明細書
【特許文献9】米国特許第6140652号明細書
【特許文献10】米国特許第6100639号明細書
【特許文献11】米国特許第6060839号明細書
【特許文献12】米国特許第5986264号明細書
【特許文献13】米国特許第5940678号明細書
【特許文献14】米国特許第5633502号明細書
【特許文献15】米国特許第4680467号明細書
【特許文献16】米国特許第3780334号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
顕微鏡検査装置に関するカーボンベースナノチューブ応用例の従来技術による電子源は、通常、カーボンベースナノチューブを顕微鏡検査プローブの先端部に取り付けられる。しかし、従来技術には、顕微鏡検査応用例の荷電粒子ビームを案内し、操作することができる、カーボンベースナノチューブを含む超伝導ナノチャネルを組み込んだ顕微鏡検査プローブが含まれない。本明細書の残りでは、単層超伝導カーボンナノチューブの使用に言及する。しかし、他の本質的に原子的に完全なナノチューブ構造と同様に、超伝導材料でない場合に、超伝導材料の薄膜が任意選択として外部にコーティングされる多層超伝導カーボンナノチューブを、利用することができることを理解されたい。
【0020】
最近数十年間の半導体集積回路革命は、技術的能力を絶え間なく改善する中で劇的なコスト削減によって駆り立てられ、全市場サイズにおけるはるかに大きい相殺する利益を生成した。これまでは、一部の興味をそそる予備的作業が、真空マイクロエレクトロニクス素子の分野で行われてきたけれども、この注目すべきリソースは、ナノテクノロジに非常に重要ないくつかの主要な電子ビーム技術ために幅広く活用されてこなかった。本発明のサブナノメートルスケール電子ビームシステムの使用によって大幅に改善できる、電子ビームナノリソグラフィおよび特にナノメートル解像度走査型電子顕微鏡の高活用テクノロジでの実質的な改善を伴うナノテクノロジ関連応用分野に関する膨大な利用されていない技術的および商業的可能性がある。
【0021】
これらの技術に対するナノ電子ビーム手法は、本発明のサブナノメートルスケール電子ビームシステムを使用することで、電子ビーム源システムを微小なサブミクロン寸法への大幅な小型化を達成し、コスト削減および高性能を実現する。この手法は、本発明のサブナノメートルスケール電子ビームシステムを大量生産するために集積回路製造技術を活用することができる。本発明のサブナノメートルスケール電子ビームシステムは、システム全体に数千個のナノ電子ビーム源が組み込まれた、例えば基板に集積回路パターンを書き込む電子ビームナノリソグラフィシステムおよびナノメートルスケール構造の詳細な描画用のナノメートル解像度走査型電子顕微鏡などである。このような複数ナノ電子ビームシステム全体は、現在のシステムと比較して、大幅に高められた能力を有するであろう。
【0022】
次を含むがこれらに限定されない、そのような高められた能力の複数の主要な応用分野がある。
1.大規模並列ナノ電子ビーム源は、電子ビームリソグラフィを、ナノリソグラフィ領域にとって適切にし、好ましいものにすることができる。これは、やはり、現在はより一層極端に高価な遠紫外線光学リソグラフィによってますます支配されている半導体製造に関する、電子ビームリソグラフィの実現性を可能にする。
【0023】
2.大規模並列ナノ電子ビームSEM(走査型電子顕微鏡検査)は、材料化学および分子バイオテクノロジでのさまざまな検査動作およびスクリーニング動作に非常に有用であろう。もう1つの実施形態において、微小サイズの個々のSEMまたはより限られた個数の並列SEMを、医療応用のために開発することができる。
【0024】
3.電子ビームベースナノリソグラフィ能力およびナノSEM能力の上記の実施形態を、カーボンナノチューブなどの広範囲のナノ構造を用いる経済的なナノマニピュレーション動作、ナノプロセッシング(たとえば、溶接、切断、堆積)動作、およびナノアセンブリ動作のために組み合わせることができる。
【0025】
4.大規模並列ナノ電子ビーム源は、超高密度高速のデータストレージおよびデータ検索に有用であろう。
5.大規模並列ナノ電子ビーム源は、小型高解像度高速ビデオディスプレイに有用であろう。
【0026】
6.ナノ電子ビームのナノ源は、非常に高性能なアナログ電子システムに関するいくつかの特殊化された実施形態用の構成要素としての使用に対して興味深い潜在能力を有する。
【0027】
7.宇宙応用および航空応用のための、高出力超高周波サブミリメートルマイクロ波ビームに対する、より小さく、軽い、放射線耐性のある源に対する進行中の探求に関する潜在的応用分野がある。
【0028】
本発明の目的は、非常に小型化された電子ビーム源を提供することである。
本発明の目的は、非常に小型化された電子ビームレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、基板上に形成されたナノ先端電子エミッタおよびトンネル放出接合部と、初期電子ビーム引出し電極と、電子ビームレンズと有する固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタが提供される。
【0030】
本発明によれば、さらに、基板上に形成されたナノ先端電子エミッタおよびトンネル放出接合部と、初期電子ビーム引出し電極と、初期電子ビーム引出し電極上に配置された保護層とを有する固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタが提供される。
【0031】
本発明によれば、さらに、電子ビームを方向付けるナノサンドイッチアインツェルレンズであって、下側主電子ビーム加速電極、環状金属電極、および上側金属膜電極を有する、ナノサンドイッチアインツェルレンズが提供される。
【0032】
本発明を、図面を参照することによって説明するが、図面では、類似する符号が、類似する要素を指す。
本発明を、好ましい実施形態に関して説明するが、本発明を、説明される実施形態に限定する意図がないことを理解されたい。むしろ、意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の趣旨および範囲に含めることができるすべての代替形態、修正形態、および同等物を含めることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の全般的な理解のために、図面を参照する。図面では、類似する符号が、終始、同一の要素を指定するのに使用されている。本発明を説明する際に、さまざまな用語が、その説明で使用される。本明細書全体で使用される用語「電子ビーム」は、特に明記しない限り、当業者に既知の通り、荷電粒子を含むすべてのビームを含むことを意図している。
【0034】
原子スケール点源電子ビームは、非常にコンパクトな構成における低電圧での高い解像度の走査型電子顕微鏡検査に関して、多数の潜在的利点を有する。これらの電子ビーム源は、真空マイクロエレクトロニクス素子でも有利に使用される。主な不利益は、イオンボンバードメントによる損傷を避けるために、電場エミッタとして使用されるときに、超高真空での動作が必要となることである。電場放出部分を永久的に囲むのに微小超高真空室を使用することによって、走査型電子顕微鏡の残りの部分に関する真空要件を、大幅に緩和することができ、これは、主な動作の利点および経済的利点をもたらし、コヒーレント電子ビームのこの独自に有利な点源の幅広い実用的応用範囲を提供する。
【0035】
一実施形態において、本願の発明は、従来の電場放出源の代わりの単原子先端部の構造および利用を含み、ビームの発散が小さく、またエネルギー範囲の狭い、はるかに優れた初期電子ビームを供給し、超高解像度イメージングに必要とされる高いビーム電圧および高価な電子光学システムの必要性を大幅に減らす。
【0036】
本明細書で説明する、囲まれた点電子源ビームジェネレータは、電子透過窓を有する微小超高真空包囲体と共に動作することができる。これは、このシステムの残りの部分を、従来の真空条件の下で動作させることを可能にする。このシステムの残りの部分には、従来の、または比較的低い電圧で作られる非常に狭い電子ビーム源に起因して非常に小型である、従来の走査型電子顕微鏡、走査型透過顕微鏡、点投影フレネル顕微鏡、電子ビームリソグラフィシステム、および真空マイクロエレクトロニクス素子を含めることができる。
【0037】
また、従来の電子ビームから低い電圧(約50Vから500V)で非常に微細な電子ビームを生成し、これを超伝導ナノチャネルに結合する代替手段を開示する。そのようなビームは、顕微鏡検査システムおよび真空マイクロエレクトロニクス装置に使用することができる。
【0038】
上のビーム源のいずれかからの非常に微小な電子ビームを、超伝導ナノチャネルによって案内および/または操作することができる。
電子ビームの技術分野の当業者に既知の通り、電子ビームが適切に作成され、形成されたならば、適切に向けられた磁場を使用して、ある距離だけ電子ビームを閉じ込めることができる。本発明の電子ビーム源の小さいサイズと、これを最終的なターゲットの近くに位置決めする能力とが、内部磁場が主電子ビーム軸と平行に向けられている強力な磁場生成システムの内径内に、ソースシステムからターゲットシステムまでの全体を完全に配置することを実現可能にする。この磁場システムは、システムサイズ要件および性能要件に応じて、当業者に周知の一般的な実践に従って、任意選択として磁極片によって増補された、永久磁石、従来の電磁石、または超伝導電磁石を使用することができる。この磁場内にシステム全体を配置することは、通常は主ビーム軸から放射状に発散する電子に、主ビーム軸の回りで螺旋形を描かせるという効果を有する。走査型電子顕微鏡検査または走査型電子ビーム表面変形応用に関して、ソースまたはターゲットのいずれかを、他方に対して相対的に機械的に走査する必要があろう。そのような走査は、当業者に周知の一般的な実践に従って、たとえば、走査型トンネル顕微鏡または原子間力顕微鏡に使用される横方向電気機械走査技法によって実施することができる。
【0039】
本明細書の残りでは、単層超伝導カーボンナノチューブの使用に言及する。しかし、本来的に超伝導体でない場合に、超伝導材料の薄膜を任意選択として外部にコーティングすることができる、すべての他の本質的に原子的に完全なナノチューブ構造と同様に、多層超伝導カーボンナノチューブも利用できることを理解されたい。
【0040】
図1に示された好ましい実施形態には、超高真空室16の末端部14に位置決めされた高品質の電子透過性の薄い壁12を含む先端部アセンブリ10が示されている。
薄い壁12は、電子透過性である。すなわち、電子ビームを、所期の応用に関して大きい分散または減衰なしでこの薄い壁12を通過させることができる。電子透過性は、電気エネルギーと、薄い壁の材料の種類および厚さとの関数である。当業者に周知の手段を使用して、初期電子ビームエネルギーが、特定の薄い壁材料に関する電子透過性の許容可能なレベルを達成するためにセットされ、次に、必要な場合に、電子ビームエネルギーは、その後、所期の応用に適切に高められ、または下げられる。
【0041】
電子透過性の薄い壁と、これらを含む構造および材料とは、当業者に周知である。たとえば、米国特許第6300631号(Method of thinning an electron transparent thin film membrane on a TEM grid using a focused ion beam)、米国特許第6194720号(Preparation of transmission electron microscope samples)、米国特許第6188068号、米国特許第6140652号、米国特許第6100639号、米国特許第6060839号、米国特許第5986264号、米国特許第5940678号(electronic transparent samples)、米国特許第5633502号、米国特許第4680467号、および米国特許第3780334号(Vacuum tube for generating a wide beam of fast electrons)などを参照することができる。これらの米国特許のそれぞれの開示全体が、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0042】
図1をもう一度参照すると、図示の実施形態において、壁12は、好ましくは約1ナノメートルから約50ナノメートルまでの厚さを有する膜であることが好ましい。1つの好ましい実施形態では、膜12が、本質的に、窒化珪素、窒化ホウ素、またはダイヤモンドからなる。
【0043】
壁12は、壁18と組み合わされて、室16を画定する。室16内の真空は、約1.33×10-5Pa(10-7Torr)よりも高真空であることが好ましい。この実施形態の1態様では、室16内の真空が、約1.33×10-5Pa(10-7Torr)から約1.33×10-8Pa(10-10Torr)までである。
【0044】
室16内の真空は、従来の手段によって作成することができる。一実施形態で、(図示せず)先端部アセンブリ10は、そのアセンブリの製造プロセス中に超高真空室(図示せず)内に置かれ、室16は、電子透過性の壁12に真空密閉されて、室16内を超高真空に囲う。
【0045】
室16は、好ましくは約1立方ミリメートル未満の、比較的小さい体積を有する。一実施形態で、室16は、約0.1立方ミリメートル未満の体積を有する。
図1をもう一度参照すると、先端部アセンブリ10は、サンプル真空室20内で利用され、サンプル真空室20の体積は、少なくとも、室16の体積より約1000倍大きいものとすることができる。しかし、室20内の真空度は、室16内の真空度より実質的に低い。室20内の圧力は、通常、少なくとも、室16内の圧力より約10倍から約1000倍高い。
【0046】
図1をもう一度参照すると、この図に示された好ましい実施形態では、先端部アセンブリ10は、サンプル22の上に配置され、本明細書の他所で説明する手段によって移動することができ、その結果、先端部アセンブリ10はサンプル22により近付き、またはより離れることができる。
【0047】
図1をもう一度参照すると、この図に示された好ましい実施形態では、引出し電極アセンブリ24が、室16の回りに配置されることが好ましい。電極アセンブリ24は、導体28および30によって、外部電圧供給源26に電気的に接続される。
【0048】
図示されていないもう1つの実施形態では、引出し電極アセンブリ24が、室20内に配置される。
一実施形態で、引出し電極アセンブリ24は、電場放出先端部32(電子ビーム34の単原子点源である)に関して通常は50Vから500Vまでの範囲内の電位まで帯電する。
【0049】
図1に示された実施形態では、先端部アセンブリ10に、単層もしくは多層のカーボンナノチューブ32またはタングステン単原子点エミッタ(図示せず)のいずれかを含めることができる。米国特許第6159742号(Nanometer−scale microscopy probes)、米国特許第4939363号(Scanning tunneling microscope)などを参照することができる。これらの米国特許のそれぞれの開示全体は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0050】
引出し電極アセンブリ24は、任意選択として、超伝導材料から形成することができ、その超伝導材料の斥力によりエミッタからの電子の放出円錐角を狭めるためにマイスナ効果を利用することができ、従って発する電子の磁場を閉じ込めることができる。マイスナ効果とは、超伝導状態の材料が、それからすべての磁場を追い出す能力である(すなわち、そのような超伝導体は、完全に反磁性であり、0の透磁率を示す)。たとえば、米国特許第4975669号(Magnetic bottle employing Meissner effect)を参照することができる。この米国特許の開示全体は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0051】
もう一度図1を参照すると、この図に示された好ましい実施形態では、放出先端部32は、先端部32を電極24から分離するために、電気的に絶縁性の先端部包囲体36に取り付けられる。電気接続が、電圧供給源26から電極24へ、導体28によって行われる。電気接続が、電圧供給26から先端部32へ、導体30によって行われる。この集団全体が、電気的に絶縁性の支持マウント40に取り付けられる。
【0052】
この好ましい実施形態では、ビーム引出し電圧は、電子窓12に使用される超薄膜材料の種類に従って選択されることが好ましい。というのは、当業者に既知の通り、透過性が、エネルギー依存であるからである。電子窓12を通過した後に、ビーム34を、その後、約20Vから約1000Vまでの範囲内のターゲット相対電圧まで、必要に応じて加速または減速することができる。
【0053】
図2に、先端部32がカーボンナノチューブの形状である、先端部アセンブリ50のもう1つの構成を示す。この実施形態では、先端部32は、0.3ナノメートルから10ナノメートルまでの範囲の、比較的小さい直径を有する。この実施形態では、カーボンナノチューブを、単層または多層の金属タイプカーボンナノチューブからなるものとすることができ、タングステン単原子点エミッタまたは他の適切な材料からなるものとすることができる。
【0054】
もう一度図2を参照すると、先端部32は、支持構造体42内に埋め込まれることが好ましく、支持構造体42は、比較的大きい直径(たとえば、約5ナノメートルから約200ナノメートルまでの範囲内の)の超伝導単層金属タイプカーボンナノチューブ44に対する排熱装置および超高真空密閉体としても働き、超伝導単層金属タイプカーボンナノチューブ44は、電場放出引出し電極としておよび微小超高真空室としても機能する。電気リード43が、支持構造体42を通過して、先端部32と壁44との間の電位差を作成する手段をもたらす。この実施形態では、電子ビーム34は、電場エミッタ32から発生し、超伝導ナノチューブ44によって閉じ込められ、集束される。ビーム34内の電子の運動量は、主に壁44に平行なので、この電子を壁44内に閉じ込めるのには、比較的小さい力が必要である。このビームは、半球形エンドキャップ46を貫通し、これから発される。このエンドキャップは、カーボンナノチューブ44の残りより弱い超伝導性であり、あるいは、全く超伝導性でないものとすることができる。電子ビーム34の運動量は、エンドキャップ46の中央に垂直なので、エンドキャップ46の中央は、ある材料依存電子ビームエネルギーに関する電子窓として働く。任意選択として超伝導性とすることができる材料48の任意選択のコーティングを、真空密閉、強化された機械的強度、または電子ビーム34の強化された超伝導集束のために使用することができる。もう1つの実施形態(図示せず)で、コーティング48を、電気リード43に接続することができ、この場合に、コーティング48は、ナノチューブ44の代わりに電子引出し電極として使用される。
【0055】
図3に、本発明のもう1つの好ましい実施形態を示す。この構成では、固定式のまたは動的なエミッタ先端部位置決めシステム60が、微小超高真空室62および支持構造体64内に囲まれる。先端部32は、たとえば約0.3ナノメートルから約10ナノメートルまでの範囲内の、比較的小さい直径を有することが好ましく、単層金属タイプカーボンナノチューブ32は、電子34の原子点源電場エミッタとして働く。代替案では、原子点源電場エミッタ32を、多層カーボンナノチューブまたはタングステン単原子点エミッタあるいは他の適切な材料とすることができる。この電子エミッタ32は、位置決めシステム60内に埋め込まれる。支持構造体64は、たとえば約5ナノメートルから約200ナノメートルまでの範囲内の比較的大きい直径の超伝導単層金属タイプカーボンナノチューブ66に対する排熱装置および超高真空密閉としても働き、超伝導単層金属タイプカーボンナノチューブ66は、電場放出引出し電極と微小超高真空室との両方として働く。
【0056】
電子ビーム34は、電場エミッタ32から発され、超伝導ナノチューブ66によって閉じ込められ、集束される。電子ビーム34は、半球形エンドキャップ46を貫通し、その端から発される。このエンドキャップは、より弱い超伝導性であり、あるいは、全く超伝導性でないものとすることができる。電子ビームの運動量は、エンドキャップ46に垂直なので、エンドキャップ46は、電子窓として働く。任意選択として超伝導性とすることができる材料48の任意選択のコーティングを、真空密閉、強化された機械的強度、または電子ビームの強化された超伝導集束のために使用することができる。
【0057】
図3に示された実施形態では、電気リード67および68が、電圧源(図示せず)に接続され、この電圧源は、先端部32と電場放出引出し電極66との間の電位差をもたらす。代替案として、材料48の任意選択のコーティングが電場放出引出し電極として利用される場合、任意選択の電気リード69を、電圧供給源(図示せず)に接続することができる。
【0058】
図2および3の比較的より大きい単層カーボンナノチューブは、その直径と比較して非常に長く、たとえば1μm以上程度とすることができ、一般に、そのようなナノチューブは、少なくとも約1:10から約1:1000までのアスペクト比を有する。放出される電子ビームを方向付け、そらし、変調し、または走査するために、材料特性(ナノチューブの強靱性および弾力性など)を、特定の幾何形状に応じて、ナノチューブがキロヘルツからメガヘルツ範囲のさまざまな高周波数共鳴運動パターンを伴う機械的曲げを任意選択で受けることを可能にするように適合させることができる。
【0059】
カーボンナノチューブは、複数の形態がある。一般に、カーボンナノチューブの最も一般的に研究される形態は、銅よりも電気をよく伝導する物理特性を有し、鋼鉄の100倍を超える引張強度を有し、極低温まで冷却されたときに超伝導体になり、機械的な曲げを受けるときにきわめて強靱であり、弾力性がある。
【0060】
図面に示された電子透過性構造体は、図2および3に示されたカーボンナノチューブエンドキャップ46によって形成することができる。その代わりにまたはそれに加えて、これらの電子透過性構造体を、適切に電子透過性の材料のある他の超薄膜をキャップされていないカーボンナノチューブの端に機械的に取り付けることによって、部分的にまたは全体的に置換することができる。
【0061】
超小型の囲まれた点源電子ビームジェネレータ(図1の10と図2および3の32)を、結像されるターゲットの近くで機械的に走査することができ、あるいは、超高解像度の電子顕微鏡検査および分光法のために原子間力顕微鏡の先端部に組み込むことができ、あるいは、そのような点源電子ビームジェネレータ(図1の10と図2および3の32)を、Jeong−Young Parkらによる「Fabrication of electron−beam microcolumn aligned by scanning tunneling microscope」、Journal of Vacuum Science and Technology A誌、第15巻、第3号、1997年5月/6月、第1499頁〜第1502頁に記載のものなどの電子ビームマイクロカラムに組み込むことができる。
【0062】
図21は、囲まれた点源電子ビームジェネレータの他の実施形態の略図である。図21を参照すると、この図に示された好ましい実施形態では、先端部32がカーボンナノチューブの形状である、先端部アセンブリ50のもう1つの構成が示されている。この実施形態では、先端部32は、0.3ナノメートルから10ナノメートルまでの範囲の、比較的小さい直径を有する。この実施形態では、カーボンナノチューブを、単層または多層の金属タイプカーボンナノチューブからなるものとすることができ、その代わりに、タングステン単原子点エミッタまたは他の適切な材料からなるものとすることができる。図10をもう一度参照すると、先端部32は、支持構造体42内に埋め込まれることが好ましく、支持構造体42は、比較的大きい直径(たとえば、約5ナノメートルから約200ナノメートルまでの範囲内の)の超伝導単層金属タイプカーボンナノチューブ44に対する排熱装置および超高真空密閉体としても働き、超伝導単層金属タイプカーボンナノチューブ44は、電場放出引出し電極としておよび微小超高真空室としても機能する。電気リード43が、支持構造体42を通過して、先端部32と壁44との間の電位差を形成する手段をもたらす。この実施形態では、電子ビーム34は、電場エミッタ32から発生し、超伝導ナノチューブ44によって閉じ込められ、集束される。ビーム34内の電子の運動量は、主に壁44に平行なので、この電子を壁44内に閉じ込めるのには、比較的小さい力が必要である。このビームは、半球形エンドキャップ46を貫通し、これから発される。このエンドキャップは、カーボンナノチューブ44の残りの部分より弱い超伝導性であり、あるいは、全く超伝導性でないものとすることができる。電子ビーム34の運動量は、エンドキャップ46の中央に垂直なので、エンドキャップ46の中央は、特定の材料依存電子ビームエネルギーに関する電子窓として働く。任意選択として超伝導性とすることができる材料48の任意選択のコーティングを、真空密閉、強化された機械的強度、または電子ビーム34の強化された超伝導集束のために使用することができる。他の実施形態(図示せず)において、コーティング48を、電気リード43に接続することができ、この場合に、コーティング48は、ナノチューブ44の代わりに電子引出し電極として使用される。
【0063】
この好ましい実施形態において、導電材料、たとえば銀、銅、チタン、金などを含む超薄膜コーティング47が、超伝導ナノチューブ44の内側表面に適用される。薄膜コーティング47の導電率は、超伝導ナノチューブ44の導電率と比較して相対的に低い。したがって、薄膜47は、電子ビーム34には「磁気的に不可視」である。しかし、薄膜コーティング47は、電子ビーム34からの低エネルギー軸外電子を除去するのに十分な磁気的強度を有する。同時に、薄膜コーティング47は、超伝導ナノチューブ44の平均有効真空トンネリングギャップ(ビーム粒子から導体までの距離)を幾何学的に減らし、したがって、電子ビーム34を非常にコヒーレントで集束された状態に保つ。コネクタ49は、電源(図示せず)に接続され、この電源は、薄膜コーティング47に電位を与える。
【0064】
図22に、本発明のもう1つの好ましい実施形態を示す。この実施形態では、薄い絶縁性の膜41が、超伝導ナノチューブ44の内面と導電性の薄膜コーティング47との間に配置される。
【0065】
図23は、図1、2、3、21、または22に示され、本明細書で前に説明されたシステムのいずれかからなるものとすることができる、電子のカーボンナノチューブ点源を含む囲まれたピコSEM(走査型電子顕微鏡)の略図である。空気の平均自由行程より短い作動距離を有する微小ピコSEMは、低真空から中真空で動作することができる。図23を参照すると、デバイス1350には、囲まれた点源電子ビームジェネレータ1356が含まれ、囲まれた点源電子ビームジェネレータ1356は、本明細書で前に説明された電子のカーボンナノチューブ点源であることが好ましい。
【0066】
デバイス1350は、外部細胞膜(external cell membrane)および細胞内膜と埋め込まれた非チャネル分子構造、微小管表面、ならびに関心を持たれている他の生物学的特徴をそのままの状態で走査するのに使用することができる。デバイス1350には、さらに、近端部1353および末端部1355を有する円錐形に先細りにされた包囲体1354が含まれる。円錐形の先細りにされた包囲体1354の近端部1353は、支持部材1358を介して真空チューブ1352に取り付けられる。支持部材1358は、開口部1360を有し、開口部1360は、真空チューブ1352への接続をもたらす。円錐形に先細りにされた包囲体1354の末端部1355には、約10ナノメートルから約300ナノメートルまでの範囲の直径を有する円錐形ピペット先端部ターゲット開口部1364が含まれる。円錐形ピペット先端部ターゲット開口部1364は、防水シール材によってコーティングされる。デバイス1350を、開口部1364がピコSEM1356によって走査される標本の表面1362と接触できる位置に操作することができる。表面1362の一部は、毛管作用によって開口部1364を介して円錐形に先細りにされた包囲体1354内に延びることができる。円錐形に先細りにされた包囲体1354の内側の圧力は、この毛管作用を中和するために、真空チューブ1352の内側の圧力を変更することによって調整することができる。ピコSEM1356から表面1362までの距離は、真空チューブ1352によって供給される背圧を変更することによって調整することができる。
【0067】
図4に、たとえばThomas Georgeによる「Miniature Electron Microscopes Without Vacuum Pumps」、NASA Technical Brief,第22巻、第8号(JPL NEW TECHNOLOGY REPORT NPO−20335)で開示されたデバイスなど、他のデバイスに実質的に改良を加える電子の超小型の囲まれた点源70(図1、2、および3に示されたシステムのいずれかからなるものとすることができる)の使用を示す。低真空から中真空の包囲体72に、このシステム全体が含まれ、一般に、包囲体72内の圧力は、約1.33×10-2Pa(10-3Torr)から約1.33×10-4Pa(10-6Torr)までである。任意選択の超伝導円筒74は、円錐形の発生する電子ビームを狭めるのに使用することができる。任意選択のビーム引出し電極および/またはビーム加速電極もしくはビーム減速電極76を、使用することができる。電極対78および電極80は、走査偏向および集束に使用される。後方散乱電子検出器82が、観察操作ステージ84の上に置かれる。二次電子および後方散乱電子は、マイクロチャネルプレートもしくはチャネルトロンによって、または他の従来の手段によって検出することができる。
【0068】
電子ビームを操作するための超伝導チャネルの使用は、Hidenori Matsuzawaらによる「High Tc bulk superconductor wigglers」、Applied Physics Letters誌、第59巻、第2号、1991年7月8日、第141頁〜第142頁に記載されている。図5に、電子または陽イオンの比較的大きい(約0.1μから約100μまでの直径の範囲内)ビーム90を、超伝導チャネルアセンブリ88によってビーム100状に狭める方法を示す。ビーム90は、集束する漏斗チャネル94を有する超伝導材料92を介して、約1ナノメートルから約100ナノメートルまでの直径の範囲内の寸法を有するチャネル96に進み、接続された単層超伝導カーボンナノチューブ98を通過する。超伝導構造体92を、任意選択として、漏斗軸に垂直な平面内で、各連続するセグメントへの電子の引き付けを容易にするために相互に通電される複数の相互に絶縁性のセグメントに分割することができる。
【0069】
図6に、直径において約0.3ナノメートルから約100ナノメートルまでの範囲内の、Y接合部114に構成された超伝導カーボンナノチューブ110および112の使用を示す。超伝導特性は、接合領域自体で実質的に減らされる可能性が高いので、この領域は、通常、超伝導材料116の薄膜によって外部からコーティングされる。そのようなコーティングに関する高温超伝導体およびすべてのチャネルのコーティングのより一般的な使用は、カーボンナノチューブが、超伝導性であるか、超伝導性になる温度で使用されるという要件を除去する。このシステムは、Y接合部114への入口110および112から単一の同軸出口118へ、電子ビーム120をイオンビーム122または異なるエネルギーレベルの電子の別の供給源と組み合わせるのに使用することができる。そのようなシステムの使用の複数の手段のうちの1つは、ターゲット照射および位置決めのために電子ビームを使用し、過渡的ミリングまたはイオン堆積のためにイオンビームを使用することである。
【0070】
代替案では、図7に示されたY接合部アセンブリ130を使用して、入口134に入る電子ビーム132を、出口140および142から出る2つのビーム136および138に分割することができる。超伝導材料の追加の薄膜コーティング144を、任意選択として使用して、接合部148での超伝導特性を強化することができる。そのような接合部は、分岐角度においてまたはナノチューブ直径に関して対称である必要がない。複数のそのような分割する接合部および併合する接合部を、実際に組み合わせることができ、フィードバックループを含む流体技術のナノスケール電子ビーム類似物を実施するために構築することができる。変調機構を、局所的な超伝導遮蔽レベルを超える外部からパルス駆動される磁場、ナノチャネルループの内側およびその軸に沿ったトラップされた磁場の誘導、超伝導閾値温度を超える局所的に誘導される過渡的熱逸脱、機械的な曲げ、および異なる電位の電気的に絶縁された超伝導チャネルセグメントの使用によって提供することができる。これらは、個々の固体状態カソードおよび個々の固体状態アノードなしの真空電子デバイスシステム内で使用することができる。そのようなシステムは、微小電気機械システムに使用される製造技法を活用することによって、カーボンナノチューブを使用せずに実現することもできる。そのようなデバイスシステムは、アナログタイプおよびディジタルタイプの変換器、信号処理、および計算機能を実施することができる。そのようなシステムの強く変調された電子ビーム出力は、後に、小型化された電子顕微鏡検査実施態様に、および空間的に分解された電気化学プロセスでの結果の使用のために使用することができる。
【0071】
図8に、図5の超伝導チャネルアセンブリ88と共に図2の電子ビームエミッタアセンブリ50の1つの好ましい使用例を示す。材料160は、アセンブリ50をアセンブリ88に取り付けるのに使用される。一実施形態で、材料160は、非導電材料、たとえば、Nylon−6、Nylon−66、Teflon(登録商標)、または類似物であり、アセンブリ50をアセンブリ88から電気的に分離する。もう1つの実施形態で、材料160は、超伝導材料である。
【0072】
電子ビームまたは他の荷電粒子を生成し、案内し、操作する能力は、たとえば走査型トンネル顕微鏡(STM)および原子間力顕微鏡(AFM)などの顕微鏡検査デバイスの本質的特徴である。カーボンベースナノチューブを含む本発明の超伝導ナノチャネル構造を、顕微鏡検査プローブと共に使用することができる。これらは、電子透過窓を有する微小超高真空包囲体と共に動作することもできる。
【0073】
マイクロリソグラフィおよび関連するマイクロ製造技法の当業者に周知の手段によって製造される、独立の柔軟な超伝導ナノメートルスケールチューブと、支持基板上に形成された固定された超伝導ナノメートルスケールチャネルとが、さらに、類似する程度の大きさ(たとえば、2〜3電子ボルト)の波長に対応するエネルギーを有するコヒーレント電子ビームを伝えるのに使用され、ミクロンスケール光ファイバシステムのナノメートルスケール電子ビーム類似物を提供することができる。
【0074】
図9は、超伝導ナノチャネルを含む、荷電粒子ビームを案内するデバイスの一実施形態の略図である。図9を参照すると、デバイス170には、電子ビームまたは他の荷電粒子ビーム180を案内する、チューブの形の超伝導材料178から本質的になる超伝導チャネル171が含まれる。図9に示された実施形態では、ビーム180は、チャネル171内の約90°の曲げ部176を通過し、チャネル末端部174から出る。他の実施形態では、曲げ部176を、90°以外の円弧を有する構造を有するように構成することができる。曲げ部176は、0°を超えることが好ましく、粒子ビーム180の向きが実質的に反転されなければならない実施形態では180°の大きさである。
【0075】
もう1つの実施形態では、荷電粒子ビーム案内デバイス170は、荷電粒子ビームを生成し、案内する装置である。もう一度図9を参照すると、装置170には、超伝導ナノチャネルに結合された点源粒子ビームジェネレータが含まれ、この超伝導ナノチャネルの端は、電子ビーム透過性膜によって密閉されている。図9には、電子ビームエミッタアセンブリ50がコヒーレント電子ビーム180を伝えるために超伝導チャネル171に結合される、好ましい実施形態が示されている。チャネル171の近端部172に、電子源50が取り付けられる。電子透過窓173は、チャネル端174に密閉されて、超高真空領域175を形成し、これを通って電子ビーム180が移動する。超伝導チャネル171のナノスケール寸法のゆえに、超高真空条件を、領域175内に達成することができる。
【0076】
前に説明し、図1、2、または3に示した囲まれた点源電子ビームジェネレータのいずれもが、電子源50に適切であることは明白である。さらに、電子透過性の膜または窓173は、実質的に平面または半球形キャップのいずれかとすることができ、本明細書で前に説明し、図1、2、および3に示した材料からなるものとすることができることが明白である。
【0077】
図10Aは、超伝導ナノチャネルネットワークの側面図の略図であり、図10Bは、図10Aの線10B−10Bに沿った、図10Aの上面図を示す。図10Aおよび10Bには、2−D、「2.5−D」、および3−Dの超伝導ナノチャネルを、リソグラフィ手段またはステレオリソグラフィ手段を使用して基板上に製造できる、好ましい実施形態が示されている。
【0078】
図10Aおよび10Bを参照すると、アセンブリ300には、基板302が含まれ、基板302上に、超伝導材料304が、当技術分野で既知の手段によって堆積される。超伝導ナノチャネル306および308は、リソグラフィまたはステレオリソグラフィ、あるいは他の適切なマイクロ製造手段を使用して形成することができ、材料304の区域303、305、および307は、互いに実質的に平行な縁部を有し、これによって、チャネル306および308を形成する。一実施形態では、超伝導材料の追加の層(図示せず)を、超伝導材料304の上に堆積して、チャネル306および308を完全に囲み、追加チャネル(図示せず)を設け、したがって超伝導チャネルの複雑なネットワークを形成することができる。電子ビームまたは他の荷電粒子を、超伝導体のマイスナ効果(斥力)を利用して、超伝導チャネルのネットワークを介して案内し、操作することができる。絶縁材料の層(図示せず)を堆積することができ、その結果、超伝導ナノチャネルの複雑なネットワークを、1つまたは複数の電源(図示せず)によって異なる電位に保持されるセクションにセグメント化することができるようになる。超伝導材料304に、C60ハイブリッドまたは窒化ホウ素を含めることができる。超伝導ナノチャネルネットワークを、従来の集積回路技術と組み合わせて、一体化された(ナノおよびピコビーム)真空ナノ電子デバイス(ディジタルとアナログの両方)を製造することができる。これらのデバイスは、高解像度イメージング用のナノ電子ビームおよびピコ電子ビームを生成し、変調するのに、または検出器および変換器から入手された情報の収集および処理するのに使用することができる。
【0079】
2次元の実施形態が、図10Aおよび10Bに示されているが、基板302が3次元形態である3次元実施形態をたやすく製造できることは、明白であろう。
図11A、11B、および11Cは、ナノスケール超伝導ロッドを有する超伝導ナノチャネルの実施形態の略図である。図11A、11B、および11Cには、サブナノメートルスケールの電子ビームおよび他の荷電粒子の案内および操作に適切な超伝導ナノチャネルを、ナノスケール超伝導ロッドまたはナノスケール超伝導ワイヤを中心領域の周りに幾何学的に配置することによって形成できる、好ましい実施形態が示されている。
【0080】
図11Aを参照すると、この図に示された実施形態では、実質的に円形の断面を有するロッド352が、設けられる。ロッド352は、互いに物理的に接触して、中心ロッド354の回りに配置される。図11Bを参照すると、中心ロッド354が除去されて、超伝導ロッド352によって取り囲まれた中心超伝導ナノチャネル356が形成される。電子ビームまたは他の荷電粒子は、チャネル356を通って流れることができる。
【0081】
図11Cを参照すると、4つのロッド352を含む代替実施形態において、中心超伝導ナノチャネル358の回りに配置された超伝導ロッド352を通って、電子ビームまたは他の荷電粒子が流れることができる。図11Cに示された実施形態では、超伝導ロッド352は、互いに物理的には接触しない。超伝導ロッド352が、円形断面以外の断面を有することができることを理解されたい。超伝導ロッド352が、その長さに沿って継続的にまっすぐでなくてもよく、断面において中実であってもなくてもよく、電気的に接触していない限り、1つまたは複数の電源(図示せず)によって同一電位に保持されてもされなくてもよいことを理解されたい。超伝導ロッド352に、導電材料(図示せず)をコーティングすることができる。当業者に既知である、多くの任意の適切な骨組みまたは類似するデバイスを使用して、超伝導ロッド352を一緒に保持することができる。
【0082】
図12は、複数の層を有する超伝導ナノチャネルの略図である。図12には、超伝導材料の層404が基板402上に堆積されている好ましい実施形態が示されている。図12を参照すると、非導電材料の層406が、超伝導層404の上に堆積される。次に、超伝導材料のもう1つの層408が、非導電層406の上に堆積される。超伝導チャネル410、412、および414は、従来のリソグラフィ技法を使用して形成することができる。各超伝導ナノチャネル410、412、および414の閉込めの相対的な度合は、特定の応用例に適するように幾何学的に変更することができる。たとえば、超伝導ナノチャネル410および414は、超伝導材料の相対的に大きい包囲体に起因して、超伝導ナノチャネル412より強く閉込め的になるはずである。その一方で、超伝導チャネル412を通って移動する荷電粒子416は、4つの象限420、422、424、および426から発するマイスナ効果斥力を受ける。本発明の本実施形態および他の実施形態で説明される構造を、従来の集積回路および微小電気機械製造技法と組み合わせて、イメージングデバイスおよび検出デバイス(これらに限定されない)を作ることができる。
【0083】
図13Aおよび13Bは、軸方向ですなわちナノチャネルの中心軸に平行に分割された超伝導ナノチャネルの実施形態の略図である。図13Aおよび13Bには、超伝導ナノチャネルが超伝導ナノ円筒である、好ましい実施形態が示されている。図13Aを参照すると、超伝導ナノ円筒450は、小さいギャップ451によって分離された2つの半円筒452および454に軸方向に分割されている。導電材料の層456および458を、半円筒452および454の内側表面に適用することができる。
【0084】
図13Bを参照すると、絶縁材料の層462および464は、半円筒452および454の内側表面と導電材料の層456および458とを分離する。電源(図示せず)によって供給される非常に低い電圧を、導電材料456および458にまたがって印加することができる。この配置は、超伝導チャネル460を通って移動する荷電粒子の電荷分布の対称性が悪い場合に、移動する荷電粒子が、超伝導チャネル460内の電場の方を向くことを強制する。
【0085】
もう1つの実施形態(図示せず)では、超伝導ナノ円筒450を、超伝導チャネル460を通って移動する粒子にトルクを与えるために、二重螺旋スリットを含む他の形状にねじることができる。代替案では、超伝導ナノ円筒450を複数の場所で分割し、超伝導チャネル460を通って移動する粒子に、たやすく可変で電子的に制御される形でトルクを与えるために多相AC信号によって駆動できる、複数の超伝導セグメントを作成することができる。1/3および2/3の半径方向セグメントへの軸方向円筒分割(任意選択の螺旋ねじりを伴う)は、不均一な反発する磁場を「反射し返す」であろう。
【0086】
図14は、支持システムに接続された超伝導ナノチャネルの略図である。図14を参照すると、アセンブリ750が示されており、アセンブリ750内では、超伝導ナノワイヤが、支持システム760に接続される超伝導ループ754、756、および758を作るのに使用される。超伝導ループ754、756、および758は、1つの完全な超伝導チューブに類似する構成である。
【0087】
超伝導チューブを複数の超伝導ループに分割することは、チューブ全体と同一の特性を提供すると同時に、荷電粒子ビームを成形し、変調する追加の手段をもたらす。超伝導ループ754、756、および758を通って移動する荷電粒子752は、マイスナ効果(斥力)を受ける。多数の他の(図示せず)ワイヤ様および/またはリボン様の形状、たとえば、楕円、半円、野球の球の縫い目の曲線、U字形ループなどを、それを通って荷電粒子が移動できる超伝導ナノチャネルの類似品として構成することができる。これらの形状を、さらに、(電流を通すことによって)帯電させるか磁化させることができ、これによって、多数の独特の粒子光効果(particle optical effect)が与えられる。帯電したナノビーム飛翔経路またはピコビーム飛翔経路に対する相対的なそのような形状の超伝導要素の相対サイズおよび位置に応じて、そのような形状は、静電帯電を受ける場合があり、この静電帯電が、それらの形状の粒子光効果を変更するであろう。同様に、使用される支持構造体の種類に応じて、そのような形状は、所定の放電率を有することができ、他の形状に交差結合され得る。さらに、偏向可能な帯電したピコビームの経路内の電気的に分割されたアノードのアノード電流を使用して、さまざまな電気的または磁気的な超伝導形状を区別して駆動し、したがって、同一のまたは他の帯電したナノビームまたはピコビームの飛翔経路に影響を与えることができる。可撓性の形状または可撓性のマウントの使用は、特に、非常に小さい動きであっても、帯電したナノビームまたはピコビームに対する幾何学的に拡大されたてこの効果または小さいギャップにまたがるトンネル電流に対する指数関数的に拡大されたてこの効果を有することができるので、単純な偏向と複数の機械的共振モードの両方に関する可能性のもう1つの次元を追加する。
【0088】
図15A、15B、および15Cは、不均等に分割された超伝導ナノチャネルの実施形態の略図である。図15Aおよび15Bにおいて、超伝導円筒900、たとえば円筒900の中心軸901に平行なまっすぐの分割線906および908により長さ方向に沿って不均等に分割される超伝導ナノチューブの好ましい実施形態が示されている。図15Bは、図15Aに示された実施形態の透視図である。図15Aおよび15Bを参照すると、超伝導円筒900は、大超伝導セグメント902および小超伝導セグメント904に分割され、大超伝導セグメント902および小超伝導セグメント904は、異なる円弧変位を有するが、同一の曲率半径を有する。ギャップ906および908内の非超伝導材料を使用して、超伝導セグメント902および904を一緒に保持することができる。
【0089】
図15Cに、超伝導円筒950が、まっすぐでない分割線910および912によって大超伝導セグメント902および小超伝導セグメント904に分割される、もう1つの実施形態を示す。超伝導セグメント952および小超伝導セグメント954は、異なるサイズおよび異なる形状を有する。前に説明したように、非超伝導材料を使用して、超伝導セグメント952および954を一緒に保持することができる。
【0090】
図16A〜16Dは、超伝導ナノチャネルを併合する実施形態の略図である。図14に示された実施形態で説明した超伝導ナノチャネル類似品を、同様の手法により一緒に併合することもできる。併合された超伝導ナノチャネルは、注入された荷電粒子を混合するのに使用することができる。併合された超伝導ナノチャネルは、荷電粒子のトランスポートアセンブリとして、またはある荷電粒子ビームを別の荷電粒子ビームによって変調するのに、使用することもできる。併合された超伝導ナノチャネルは、荷電粒子の飛翔経路をあるナノチャネルから別のナノチャネルに動的に切り替えるのに使用することもできる。
【0091】
図16Aを参照すると、超伝導アセンブリ1000が示されており、超伝導アセンブリ1000内では、荷電粒子ビーム1014および1016が注入され、混合される超伝導ナノチャネル1002および1004が、まず一緒に併合され、その後、分離され、出口超伝導ナノチャネル1006および1008を形成し、この出口超伝導ナノチャネル1006および1008から、荷電粒子ビーム1018および1020が発される。電気リード1010および1012は、電源(図示せず)によって供給される電力を供給するのに使用することができる。
【0092】
図16Bに、図16Aの線16B−16Bを通る、併合された超伝導ナノチャネルの断面図を示す。図16Bに示された実施形態では、超伝導アセンブリ1000の内側表面上に置かれた電気導体1030および1032が設けられる。図16Aおよび16Bを参照すると、電気的に分離された電気導体1030および1032に電位差を与えることによって、荷電粒子ビーム1014および/または1016は、その出口飛翔経路を超伝導ナノチャネル1006と1008との間で切り替えられて、荷電粒子ビーム1018または1020として発される。図16Aに示された超伝導アセンブリ1000の壁を、ほぼ連続するが電気的に分離されたセグメントに区分することで、別々の電気導体1030および1032を備える必要性を打ち消すことができる。
【0093】
図16Cに、図11A〜11Cに示された実施形態で前に説明した、超伝導ナノワイヤから作られた超伝導ロッドが、超伝導ナノチューブの類似品を形成するのに使用される、好ましい実施形態を示す。図16Cを参照すると、超伝導ナノチャネル1002(図16Aを参照されたい)は、超伝導ナノチャネル1050を画定するために、超伝導ロッド1042、1044、1046、および1048によって近似される。同様に、超伝導ナノチャネル1004(図16Aを参照されたい)は、超伝導ナノチャネル1060を画定するために、超伝導ナノロッド1052、1054、1056、および1058によって近似される。超伝導ナノチャネル1050および1060を通って移動する電子ビームまたは他の荷電粒子を、マイスナ効果(斥力)を利用して案内し、操作することができる。
【0094】
図16Dを参照すると、線16B−16B(図16Aに図示)によって定義される平面での超伝導ナノチャネル1002および1004の併合によって作成される超伝導ナノチャネルの断面図は、超伝導ナノチャネル1062によって画定される類似品によって置換されている。超伝導ナノチャネル1062は、超伝導ロッド1042、1044、1046、1048、1052、1054、1056、および1058によって作成され、これらの超伝導ロッドは、八角形の頂点に位置決めされる。電源(図示せず)によって供給される電圧を、電気導体1064および1068に印加して、超伝導ナノチャネル1062を通って移動する電子ビームまたは他の荷電粒子を案内し、操作することができる。したがって、超伝導ナノチャネル1062は、図16Aに示された実施形態で説明したように電子ビームまたは他の荷電粒子を所望の出口チャネルに案内できる、スイッチング領域になる。
【0095】
図17は、超伝導ナノチャネルY接合部の略図である。図17には、超伝導ガラス毛管を使用して電子ビームおよび他の電荷粒子を案内し、操作することができる、好ましい実施形態が示されている。約10ナノメートルの小ささの出口ポートを有する超伝導ガラス毛管は、有利に非晶質で構造的に滑らかな表面を有する。これらの超伝導ガラス毛管は、たとえば、X線(硬X線と軟X線の両方)および電子ビーム(ナノビームとピコビームの両方)または他の荷電粒子を併合するのに使用することができる。超伝導ガラス毛管は、1000以上程度の幾何学的ビームエネルギー集中利得(geometric beam energy concentration gain)を生むことができる場合がある。
【0096】
図17を参照すると、その内側表面をガラス層1114によってコーティングされ、その外側表面を超伝導材料の層1112によってコーティングされたY字形のガラス毛管1100が示されている。超伝導ガラス毛管1100には、入口ポート1104および1108と、非常に狭い出口ポート1116とが含まれる。制御可能に間欠的なX線ビーム1102が、ポート1104に導入され、ガラス層1114によって案内されると同時に、制御可能に間欠的な電子ビームまたは他の荷電粒子ビーム1106が、横分岐カプラ(図示せず)によってポート1108に導入され、超伝導材料層1112によって案内される。荷電粒子ビーム1106は、X線ビーム1102に最小限に影響し、これを最小限に遮断するために、X線ビーム1102に対して相対的に適切な角度で導入される。交差区域1110(すなわち、共有空間)に達した後に、ビーム1102と1106の両方は、狭い出口ポート1116を通って超伝導ガラス毛管1100を出る前に、その広がりを狭め始める。ビーム1102と1106の両方が、どちらのビーム(モード)が動作中であるかを選択するために、適切な手段(図示せず)によって制御可能にオンおよびオフに切り替えられる。
【0097】
これらのハイブリッド超伝導ナノチャネルは、複数のビームを案内し、操作する能力のゆえにそのように記述されるが、マルチモードイメージング、微量分析、リソグラフィ、およびステレオリソグラフィに使用することができる。このモード切替を、2つの別個の機能をほぼ同時に実行するのにどのように使用できるかの応用例は、次のように説明される。第1モードで、荷電粒子を、第2モードによる後続X線照射のための基板の形状または他の特徴の結像および識別のために案内し、操作することができる。もう1つの応用例では、電子ビームまたは他の荷電粒子ビームを、強く集中されたX線との共有空間にまたがって変調する(または、電子エネルギーおよびナノチャネル直径の適切な調整を用いて、その逆を行う)ことができる。過渡的な電子状態およびイオン化を含む他のタイプの荷電粒子またはナノ粒子ビームを伴う追加の相互作用は、本発明の範囲内と考えられなければならない。
【0098】
図18は、内部超伝導ワイヤを有する超伝導ナノチャネルの略図である。図18には、超伝導ナノチャネルがめいめいの端で異なる直径を有する、好ましい実施形態が示されている。一方向伝搬の場合に、ビーム入力端は、ビーム出口端より大きい直径を有する。より大きい直径は、超伝導ナノチャネルが、同軸構造を画定する複数の超伝導ワイヤを内部に収容することを可能にし、この同軸構造は、直線構成、螺旋構成、または他の適切な構成で配置することができる。電源(図示せず)によって供給される電位を、この同軸構造に印加して、超伝導ナノチャネルを通って移動する電子ビームまたは他の荷電粒子の軸方向および半径方向の速度成分を変調することができる。
【0099】
図18を参照すると、ビーム入力端552およびビーム出口端554を有する超伝導ナノチャネル550が示されている。ビーム入力端552の直径は、ビーム出口端554の直径より大きい。ビーム入力端552は、超伝導ナノワイヤ560を含む同軸構造を収容する。電源(図示せず)によって供給され、超伝導ナノワイヤ560に印加される電位を使用して、中心チャネル556を通って移動する電子ビームまたは他の荷電粒子ビーム558の軸方向および半径方向の速度成分を変調することができる。
【0100】
図19は、フィールドイオナイザ(field ionizer)としての超伝導ナノチャネルの略図である。図19には、超伝導ナノチャネルが磁気ナノ粒子のボルケーノフィールドイオナイザ(volcano field ionizer)として使用される、好ましい実施形態が示されている。ボルケーノフィールドイオナイザは、非常に高い電場勾配を有する領域に材料を注入するのに、比較的小さい直径の中空カソードチューブを利用し、この非常に高い電場勾配が、注入された材料をイオン化する。
【0101】
図19を参照すると、任意選択の曲げ部領域614を有する超伝導ナノチャネル606が、示されている。超伝導ナノチャネル606には、ビーム入力端610およびビーム出口端(ノズル)612が含まれる。磁気ナノ粒子のビーム608が、ビーム入力端610を介して超伝導ナノチャネル606に注入され、ノズル612を介して出る。電極602および604は、電極602と604とノズル612との間の大きい電位差をもたらす。この大きい電位差は、ノズル612の高電場領域616付近の磁気粒子608をイオン化する。電極602および604は、任意選択として、もう1つの後続超伝導ナノチャネルセグメントの一部とすることができる。
【0102】
もう1つの実施形態(図示せず)で、超伝導ナノチャネルを使用して、腫瘍を殺すなどの医療応用のために移動する反陽子を集束し、案内することができる。適切なエーロゲルベースの超断熱を使用する適切な液体窒素毛管マイクロトランスポートシステムを、超伝導ナノチャネルを冷やすのに使用することができる。したがって、複数の角度から腫瘍をたたくのに高エネルギービームを使用しなければならない(これは、そのような各経路に沿った他の健康な組織に損傷を与える、すなわち、オーバーシュートおよびアンダーシュート)のではなく、単一のより低い速度のビームを、本明細書の他所で説明されるタイプの薄い超伝導ナノチャネルプローブまたは薄い超伝導マイクロチャネルプローブによって、最終的なターゲットに直接に送ることができる。低速ビームは、マイクロ偏向コイルまたはマイクロ偏向電極によって、腫瘍部位で高速ビームよりたやすく偏向する(ターゲットに導く)ことができる。物質/反物質相互作用領域が、これによって非常に局所化されるので、反陽子/陽子消滅の(たとえば、γ線)放射の相対密度および分布も、非常に局所化されるであろう。
【0103】
図20A〜20Cは、音波検出器システムの構成要素としての超伝導ナノチャネルの略図である。図20A〜20Cには、超伝導ナノチャネルを音波検出器の一体の構成要素として使用できる、好ましい実施形態が示されている。コヒーレントな(すなわち、非常に単色でよくコリメートされた)電子ビームまたは他の荷電粒子ビームまたは磁気ナノビームまたは磁気ピコビームが、音波によって変形可能な超伝導ナノチャネルに注入される場合に、その音波は、電子ビームまたは他の荷電粒子ビームまたは磁気ナノビームまたは磁気ピコビームが超伝導ナノチャネルを通って移動する際に、これらのビームの明白な揺動を生じさせる。荷電粒子は、揺動された状態で超伝導ナノチャネルを出る。
【0104】
図20Aを参照すると、荷電粒子ビーム1254は、超伝導ナノチャネル1252に注入され、これを通って移動し、超伝導ナノチャネル1252は、支持体1256に取り付けられる。エンドキャップ1266は、超伝導ナノチャネル1252をキャップし、超伝導ナノチャネル1252の領域1268内の真空を保つのに使用される。音波がない場合に、超伝導ナノチャネル1252は、動かない。
【0105】
図20Bおよび20Cを参照すると、矢印1260の向きに伝搬する音波1258は、超伝導ナノチャネル1252を前後に振動させ、したがって、荷電粒子ビーム1262および1264が超伝導ナノチャネル1252を出るときに、荷電粒子ビーム1262および1264を偏向する。位置感知ビーム検出器(図示せず)を使用して、偏向されたビーム1262および1264が超伝導ナノチャネル1252を出るときに、これらのビームを検出することができる。これらの超伝導ナノチャネル構成は、偏向された荷電粒子を利用するが、アナログ信号処理デバイス、高感度および高帯域幅のナノ振動センサ、ピコビームの走査動作およびチョッピング動作などに使用することができる。さらに、偏向された荷電粒子を変調できる、超伝導ナノチャネルを含むシステムを、荷電粒子走査パターンを生成するために、適切に機械的に装填し、機械的に駆動することができる。
【0106】
カーボンベースナノチューブまたは他のタイプのナノチューブを含む本発明の超伝導ナノチャネル構造を、顕微鏡検査プローブと共に使用することができる。これらの超伝導ナノチャネル構造は、電子透過窓を有する微小超高真空包囲体と共に動作することもできる。さらに、これらの構造を、従来の集積回路および微小電気機械製造技法と組み合わせて、イメージングデバイスおよび検出デバイス(これらに限定されない)を含むさまざまなデバイスを作ることができる。
【0107】
図24Aは、本発明の固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタ(任意選択の一体化された静電レンズと一緒に図示)の一実施形態の断面略図(原寸通りではない)である。図24Bは、図24Aの線24B−24Bに沿った、図24Aの固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタの上面図である。図24Aおよび24Bを参照すると、エミッタ200は、基板201上、好ましくはシリコンチップ基板上に形成される。エミッタ200は、基板201上に形成されたナノ先端電子エミッタおよびトンネル放出接合部202と、初期電子ビーム引出し電極204と、「ナノサンドイッチアインツェルレンズ」電極230と、最上部保護層220とを含む多層構造である。
【0108】
ナノ先端電子エミッタ202は、基板201上に形成され、好ましくは原子点エミッタまたはほぼ原子点のエミッタである。「ナノサンドイッチアインツェルレンズ」電極230は、電子ビームレンズ(すなわち、静電集束レンズ)として機能し、下側金属膜および主電子ビーム加速電極232と、環状金属電極240と、上側金属膜電極234とを含む。好ましい実施形態では、内側領域297およびその真下の内側領域291は、材料が全くなく、ナノ真空室を構成する。最上部保護層220は、好ましくはダイヤモンドのナノ層であり、あるいは、窒化珪素または酸化アルミニウムなどの他の適切な電子透過性材料である。類似する電子透過性材料が、電極204、232、240、234の間で、ナノ層203、205、233、および235のスペーシングとしても使用され、ダイヤモンドが、耐久性、熱伝導率、および負電子親和力に起因して、1つの好ましい材料である。
【0109】
動作中に、ナノ先端エミッタ202から放出された電子は、矢印299によって示されるように、領域222内で保護層220を通って放出される。静電集束レンズ230の構造およびエミッタ200の実施形態の製造に関するさらなる詳細は、後で本明細書で提示する。
【0110】
一実施形態で、エミッタ200は、厚さが約10ナノメートルから約1000ナノメートルまでの間の層203、厚さが約1ナノメートルから約100ナノメートルまでの間の層205、厚さが約1ナノメートルから約100ナノメートルまでの間の層233、厚さが約1ナノメートルから約100ナノメートルまでの間の層235、および厚さが約1ナノメートルから約10ナノメートルまでの間の保護層220を用いて製造される。エミッタ200は、図24Aおよび24Bでは、形状において実質的に円筒形であるものとして示されているが、ナノ先端エミッタ202と、電極204、232、240、および234と、層203、205、233、235、および220との間の空間的関係が維持されるならば、円筒からのさまざまな変形が許容される。一実施形態で、約10ナノメートルから約1000ナノメートルまでの間の直径を有する、実質的に円筒形の直径エミッタ200が提供される。
【0111】
電極204、232、240、および234は、好ましくは金属膜から形成され、好ましくは約1ナノメートルから約10ナノメートルまでの間の厚さである。一実施形態で、環状電極は、直径が約10ナノメートルから約100ナノメートルまでの間の開口部297を有する。一実施形態として、電極204、232、240、および234は、約0.1ナノメートルの厚さ(すなわち、単原子層)から約5ナノメートルの厚さ(すなわち、複数原子層)までのカーボングラフェン膜/シート/膜から形成される。
【0112】
一実施形態で、ナノ先端エミッタ202は、実質的に円錐の形状で形成され、基板201から上向きに約20ナノメートルから約80ナノメートルまでの間、好ましくは約50ナノメートルの高さと、初期電子ビーム引出し電極204から約1ナノメートルの分離距離298まで延び、初期電子ビーム引出し電極204は、一実施形態では多結晶質の白金から製造される。円錐形状と異なる他の先端形状を設けることができ、動作要件は、そのような形状が、引出し電極に最も近い先端部原子から量子トンネリング放出が発生するように、その形状の上側の端または末端部で、引出し電極の十分近くに位置決めされた鋭い先端部で終端することである。この状態は、金属質のサンプル上の走査型トンネル顕微鏡先端部の場合に似ているが、先端部およびトンネリングギャップが、堅く安定し頑丈な保護固体状態構造体に埋め込まれるという決定的な相違がある。一般に、ナノ先端エミッタの末端部と保護層220の上面221との間の距離は、約1ナノメートルから約10ナノメートルまでの間、より好ましくは約2ナノメートルから約5ナノメートルまでの間である。
【0113】
一実施形態では、層205が省略され、電極232および204が引出し電極および静電レンズの電極の二重機能を満足する単一の電極に併合される。約10ナノメートル未満の電極スペーシング230という極端に小さい寸法を用いるこのケースのもう1つの実施形態では、排気された領域297が、層233および235にも使用される絶縁性の電子透過性材料で充たされる。
【0114】
一実施形態では、静電レンズサブシステムが省略され、保護層220が引出し電極204を直接にカバーする。
排気された環境での鋭く尖った電場放出電極の使用は、高いビーム品質および非常に微細な集束を必要とする応用例のために電子ビームを生成する最も一般的な手段の1つである。そのような電場放出システムで、鋭い先端部幾何形状は、非常に局所化され強く集中された電場勾配につながり、この電場勾配は、印加される適度な電圧を用いて電子ビームを引き出すことを可能にする。
【0115】
マイクロカラムと称する微小電子ビーム源が、電子ビームリソグラフィでの使用のために研究され、試験されてきた(たとえば、本明細書で前に引用された、前述のJeong−Young Parkらの「Fabrication of electron−beam microcolumn aligned by scanning tunneling microscope」を参照されたい)。そのような研究でのマイクロカラムに特有の寸法は、ミクロン(10-6メートル)程度である。マイクロカラムタイプの構造は、微小走査型電子顕微鏡についても検討されており、たとえば、Thomas George(1998)による「Miniature Electron Microscopes Without Vacuum Pumps」、NASA Technical Brief誌、第22巻、第8号を参照されたい。
【0116】
本発明システムのナノエミッタシステムは、材料のある種のナノスケール電子特性を有利に利用し、かつ/またはそれから生じる、劇的に小型化されたマイクロカラムと考えることができる。したがって、本出願人は、そのような電子ビームリソグラフィシステムおよび電子顕微鏡検査システムでの本発明のナノエミッタシステムの使用が、そのめいめいの応用において優れた性能を提供すると考える。
【0117】
図24Aのナノエミッタシステム200のさまざまな実施形態は、前に開示されたマイクロカラムシステムに対する重要な改善をもたらす。一実施形態は、ナノ先端エミッタ202を対象とし、ここで、比較的粗い(ナノスケールで)円錐形電場エミッタの使用ではなく、1つの放出する原子を有する完全なタングステン四面体先端部などの原子点エミッタ、または小さい直径のカーボンナノチューブなどのほぼ原子点のエミッタが提供される。そのようなタングステンおよびカーボンナノチューブのエミッタ先端部は、図1、2、3、および21に示された囲まれた点源電子ビームジェネレータの実施形態に関して、本明細書で前に説明した。前に引用したH.W.Fink共著の論文に示されているように、超高真空で動作するそのような原子点電場エミッタを使用して、狭いエネルギーの広がりを有する非常に狭く集束された電子ビームを生成することができ、この電子ビームは、コヒーレントでもある。すなわち、そのような集束ビームは、干渉パターンを生成することができる。ある種のカーボンナノチューブから形成されたナノエミッタ先端部は、そのような収束電子ビームの生成においてほぼ同様に効果的である。
【0118】
しかし、ある種の情況で、そのようなエミッタの一部は、電子ビームエミッタ先端部として使用するために十分に堅牢かつ安定ではない。たとえば、そのようなエミッタ先端部は、特にそのような先端部が固体状態デバイス内ではなく超高真空室内に配置される応用例で、リバースイオンボンバードメント(reverse ion bombardment)によって劣化し得る。これにもかかわらず、これらのエミッタは、ある電子エネルギーで、その中に形成されるある種の絶縁ナノ層および金属ナノ層が、効果的に電子透過性なので、本発明の固体状態ナノエミッタで有用である可能性がある。
【0119】
本発明のデバイス内の極端に小さい電子経路距離にわたって、通常高真空の電子ビーム経路の一部またはすべてが、図24Aおよび24Bに関して前に具陳したものなどの中実材料によって賢明に置換される。最小限として、非常に重要なエミッタ先端部は、たとえば図24Aのエミッタ200の層203内の先端部202の内部への閉込め等により、保護的に内部に閉じ込められる。最大限として、エミッタカラム250全体およびその中の静電集束レンズ230(1つまたは複数のレンズ)は、固体状態であり、ナノ先端部202の末端部から保護層220の表面221までの必要な電子ビーム経路全長が、十分に減らされる。
【0120】
本発明のナノエミッタシステム200の一実施形態では、金属−真空−金属量子トンネリング現象が有利に利用される。そのような現象は、Kruitの米国特許第5587586号、発明の名称「Particle−optical apparatus comprising an electron source with a needle and a membrane−like extraction electrode」に記載されており、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。金属−真空−金属量子トンネリング現象のそのような使用は、エミッタ先端部が初期電子ビーム引出し電極として機能する電子透過性金属膜204の極近傍に配置されるように、デバイス200のエミッタ−エクストラクタ電極間距離298を減らすことによって行われる。一実施形態で、このデバイスのエミッタ−エクストラクタ電極間距離298は、約1ナノメートルである。
【0121】
本発明のナノエミッタシステム200の好ましい実施形態では、電子透過性金属膜電極は、このシステムの静電レンズのサイズが大幅に減らされるように、システム200に組み込まれる。システム200の1つのそのような好ましい静電レンズ230の構造を、後で本明細書で説明する。
【0122】
本発明のナノエミッタシステム200の前述の構造は、システム200のさまざまな実施形態を既知の真空マイクロ電子デバイス(vacuum micro−electronic device、VMED)の小型化された固体状態類似物として表現する形で組み合わされる。これらのデバイスは、VMEDの幅広い商業的応用を遅れさせてきた生産問題、信頼性問題、および安定性問題の多くを回避し、したがって、VMEDおよび他の電子エミッタデバイスを上回る多数の利点を有する。
【0123】
従来の固体状態電子デバイスと比較して、真空電子デバイスは、電子が弾道的に伝搬するという利点を有し、実質的により高いトランスポート速度を(穏当な電圧で)達成することができ、絶対零度を超える高温(室温など)で相互コヒーレンスを維持することができる。しかし、極端に短いナノスケール距離にわたって(適切な材料システムにおいて、適切な電子エネルギーで)、上の利点は、本発明のナノエミッタにおいて実質的な度合まで維持される。というのは、通常の種類の破壊的な散乱させる相互作用が、支配的になるためにいくぶん長い距離を必要とするからである。そのような距離は、本発明のナノエミッタには存在しない。
【0124】
さらに、ナノエミッタの非常に小さいプローブサイズは、ビームデマグニフィケーション(beam demagnification)要件を最小にする。約1ミリラジアンの収束角を有する電子ビームが、よい被写界深度のために必要である。さらに、静電レンズの収差は、減少するレンズサイズに伴って減少する傾向があり、したがって、ナノエミッタのナノサンドイッチアインツェルレンズの極端に小さいサイズは、最小限の収差を有するレンズである。非常に低い電圧でのナノ電子ビーム構成要素の動作は、残留気体分子の電子衝突イオン化および後続のイオンスパッタリング(すなわちリバースイオンボンバードメント)を引き起こさない空気中での動作を可能にする。また、一体化された固体状態エミッタにとってより有利なクリーニングの問題およびプロセスは、より問題が少ない。
【0125】
高解像度ナノSEMおよびウルトラナノリソグラフィ(ultra−nanolithography)に関する本発明の頑丈なナノ電子ビーム源の効果的な使用は、大気圧の下であっても、空気分子の平均自由行程に匹敵する距離で、すなわち約100ナノメートル範囲で、実現可能でなければならない(いくつかの実験的超高性能磁気ディスクドライブの読取り/書込みヘッドの「浮上高」が、現在はこの範囲に達していることは、注目すべきである)。
【0126】
ナノ電子ビームエミッタ源に加えて、本発明のナノエミッタシステム200に一体化された1つまたは複数の電子レンズは、非常に重要な構成要素である。システム200の非常に小さい寸法では、一般に、特に室温で、磁気レンズよりも静電レンズを利用することの方が簡単である。電子透過性金属ナノ層をシステム200内で静電レンズ電極として使用することによって、従来のアインツェル静電レンズの超コンパクトでより汎用的なナノスケール類似物が、可能にされ、システム200に一体化される。電子顕微鏡のアブレイションコレクタ(aberration corrector)としての極端に薄い金属箔の使用が、R.H.van Aken、C.W.Hagen、J.E.Barth、およびP.Kruitらによる「Low−energy foil aberration corrector」Ultramicroscopy誌、第93巻、2002年、第321頁−第330頁に記載されている。対照的に、本明細書に記載のシステムは、サブナノメートル電子ビーム源との直接一体化を意図された自己完結型の内部に閉じ込められるナノスケール静電レンズである。
【0127】
図25は、通過する電子ビームを集束する従来のアインツェル静電集束レンズの断面概略図である。図25を参照すると、レンズ330には、第1環状電極340が含まれ、その上下に、それぞれ第2環状電極334および第3環状電極332が配置されている。通常、集束電圧Vfが、電極340に印加され、電極332および334は、接地(0)電位である。電子ビーム源(図示せず)から放出された電子は、矢印399によって示されるように、レンズを通る総一般的飛翔経路に従う。そのような電子は、領域395で発散する飛翔経路396に沿ってレンズ390に入る。電極340、332、および334による静電場効果は、電場の線393によって示されているように、領域394での電子飛翔経路396の収束と、焦点393での電子ビームの集束とをもたらす。
【0128】
図26Aは、図24Aのナノエミッタシステム200の「ナノサンドイッチアインツェル」レンズ230の一実施形態の詳細断面図である。図26Aを参照すると、レンズ230には、環状金属電極240が含まれ、その上下に、それぞれ上側金属膜電極234および主電子ビーム加速電極232が配置されている。電子ビームを集束するのに使用される1つの動作モードでは、集束電圧Vfが、電極240に印加され、電極232および234は、接地(0)電位である。エミッタ先端部202(図24Aを参照されたい)から放出された電子は、矢印299によって示されるように、レンズを通る総一般的飛翔経路に従う。そのような電子は、領域295で発散する飛翔経路296に沿ってレンズ290に入る。電極240、232、および234による静電場効果は、電場の線293によって示されているように、領域294での飛翔経路296の収束と、焦点293での電子ビームの集束とをもたらす。
【0129】
レンズ230の構造の極端に小さいスケールは、このレンズに、従来のアインツェル静電レンズを上回る重要な利点を与える。レンズ230の幾何形状は、このレンズの高い構造的強度をもたらす。荷電粒子を集束することしかできない従来のアインツェルレンズと異なって、レンズ230の動作は、集束モードと焦点ずれモード(収束モードと発散モード)の両方をもたらすために変更することができる。「ナノサンドイッチ」レンズ230の極端にコンパクトなサイズ(特に、電子ビーム軸299の方向に沿った)は、図26Aに示され、本明細書で前に説明したナノ電子ビームエミッタ200について図24Aに示されているように、固体状態サンドイッチ構造を使用する時に、許容できる電子ビーム集束性能をもたらす。図26Aのレンズ230および図24Aのエミッタ200に関して、内部真空ではなく、その内部領域203、205、233、および235は、ダイヤモンド、窒化珪素、または酸化アルミニウムなどの適切な電子透過性材料の薄い膜が充填される。そのような構造は、レンズデバイスおよびエミッタデバイスの大量生産を単純にし、高性能電子光学系を必要とする応用例のための、追加レンズステージの積み重ね、すなわち、近接する金属ナノ層電極を共有する直列のレンズの形成を容易にする。
【0130】
もう1つの実施形態では、図26Aのレンズ230を、環として形成するのではなく、セグメント化される中心電極を有して形成することができる。図26Bは、図26Aの線26B−26Bに沿った、図26Aのレンズ230の軸方向断面図である。図26Bを参照すると、レンズ230には、内径297を有する一体の環状金属電極240が含まれる(図24Aも参照されたい)。図26Cは、その中心電極241が複数のセグメントからなる、図26Aのレンズ230の軸方向断面図である。図26Cに示された実施形態では、中心電極241は、セグメント242、244、246、および248を含む。動作中に、電子ビームの集束、焦点ずれ、および/またはレンズの中心軸から離れるステアリングをもたらすために、これらのセグメントに、静的にまたは動的に異なる電圧をセットすることができる。図26Cに示された4セグメント化された実施形態以外の、電極セグメントの多数の他の構成および量が可能であることは、明白であろう。
【0131】
これらの複数セグメント化された電極からなるレンズの能力は、それを通る電子ビームの収差訂正の可能性を提供する。そのような能力は、従来の原子解像度を有する大量生産ナノスケール走査型電子顕微鏡をも可能にすることができる。
【0132】
本発明の固体状態ナノ電子ビームエミッタおよびレンズの極端にコンパクトなサイズは、これらを、たとえば微小光学システムで使用されるタイプのチルトアップ要素など、微小電気機械システムまたはマイクロシステムの移動する部分の上に製造することをも可能にする。本発明のナノ電子ビームナノレンズのアレイは、従来の電子ビーム源を有するナノリソグラフィまたはナノ顕微鏡検査のいずれかのために、ナノ電子ビーム源と独立に製造し、使用することができる。そのようなナノレンズアレイは、それ自体の複製を製造し、その後、そのようなレンズと一緒にナノ電子ビームエミッタのアレイを製造するのに後に使用できる新しいタイプのフォトマスクとして働くこともできる。
【0133】
本発明のナノレンズは、望み通りの動作をするために、強い局所化された電場を必要とする。前に述べた、そのような場をもたらす手段に加えて、ナノ電子ビームナノレンズに必要な強い局所化された電場をもたらす、以下の従来にない代替の手段がある。
【0134】
1.ナノレンズ用の組込み静電場をもたらすためのナノ層p−n半導体界面およびナノ層半導体−金属界面を使用し、曲がった電場をもたらすための類似する材料の球形(および他の円柱形状)の多層ナノ粒子「オニオン(onions)」を使用する。プロトエミッタ(すなわち、部分的に形成されたエミッタ)の過渡的オーバードライブを使用して、熱拡散、エレクトロマイグレーション、およびリバースイオンボンバードメントからの材料特性の正確に位置合せされた半径方向の変動を誘導することもできる。
【0135】
2.(内部または外部の)電極を動的に帯電させる(すなわち、集束し、偏向し、または切り替える)ために二次電子放出を活用する。
3.ナノ電子レンズのための紫外光によって駆動されるプロセス(たとえば、光電子放出帯電および/またはプラズモン)を使用する。
【0136】
図24Aをもう一度参照すると、一実施形態で、非常に小型のナノエミッタ先端部202は、まず、C60バッキーボールを堆積することによって基板201上に形成される。もう1つの実施形態では、ナノエミッタ先端部202を、キャッピングされたカーボンナノチューブとすることができる。
【0137】
層203の形成で原子点エミッタ電極と電子透過性金属ナノ層との間のトンネルギャップを調整するのに走査型トンネル顕微鏡(STM)を使用するのではなく、エミッタの上へのダイヤモンド、窒化珪素、または酸化アルミニウムのナノ層の制御された堆積が、層203を形成するのに使用される。引出し電極204の適切な高融点金属のナノ層が、次に堆積され、下にある材料のもう1つのナノ層205がこれに続く。静電レンズ230の下側電極としても働く加速電極232と、カバー層233とが、似た形で形成される。
【0138】
好ましい製造プロセス実施形態では、環状ナノサンドイッチ電極240が、「後方」または「逆」電子ビームナノリソグラフィの非常に局所化された形のために、下にあるエミッタ202を活用することによって形成されることが好ましい。従来の電子ビームレジストが、使用され、すなわち、堆積され、露光され、現像されて、電極240のイメージを形成するが、この電子ビームが、表面221側からではなく基板201側から電極240のイメージを露光しまたは書き込んでいるという相違がある。これは、自動的に自動位置合せするプロセスであり、固有に並列の生産プロセスである。環状電極240が形成されたならば、もう1つの絶縁層235が、追加され(任意選択で、ある埋め戻しプロセスステップおよび平坦化プロセスステップを伴う)、これに、もう1つの金属ナノ層234の堆積が続く。
【0139】
適切な外部電極ビーム源を使用するもう1つの実施形態では、デバイスの製造後または製造中に、ナノサンドイッチアインツェルレンズ構造を、エミッタ「微調整」すなわち、原子点エミッタ電極202と電子透過性金属ナノ層204との間のトンネルギャップを調整するかエミッタ電極202(図24Aを参照されたい)の先端部を鋭くするために、逆に動作させることができる。
【0140】
デバイス製造のもう1つの実施形態では、紫外光を使用する支持材料の硬化が、エミッタ202および引出しグリッドの正確な位置決めに続いて実行される。
デバイス製造のもう1つの実施形態では、エミッタによって活性化されたリバースイオンボンバードメントが、自動位置合せされた処理を実行するために使用される。
【0141】
本発明の電子ビームエミッタの追加の実施形態およびその応用例は、次の通りである。
−エミッタ先端部がタングステン四面体ナノ粒子またはタングステン八面体ナノ粒子を使用するタングステン先端部付きカーボンナノチューブを含む、エミッタ。
【0142】
−トンネル接合電場エミッタ用の非常に鋭い先端部の代わりに、従来の先端部の端または平らな表面の上のナノ粒子を使用するエミッタ。
−トンネル接合ナノ電場エミッタを形成するのにナノワイヤまたはカーボンナノチューブのクロスオーバー接合部(好ましくは大きいクロスハッチアレイでの)を使用するエミッタ(これは、点から面への強い電場勾配集中とおおむね同等の効果を得るための、2つのほぼ交差する軸方向にセンタリングされた強い電場勾配集中を垂直に組み合わせることになる)。
【0143】
−回折モード透過電子レンズを含むエミッタ(十分にコヒーレントなナノ電子ビームについて、複数層ナノ粒子「オニオン」が、1つの実施形態である)。
−原子間力顕微鏡の先端部にすぐに近接して配置された本発明のナノエミッタを使用する近距離場電子顕微鏡検査/分光法の実行。
【0144】
−量子井戸、量子ドットおよび/または超格子構造からなるエミッタ。
−フォトニック結晶のナノ電子ビーム類似物である本発明のエミッタ。
本発明のナノ電子ビームナノ電場エミッタの多数の潜在的応用分野があり、これらについて、本発明のナノ電子ビームナノ電場エミッタの極端に小さいサイズおよび性能は、以前には達成されなかった適用結果または以前には実現されていない新しい能力を提供する。走査型電子顕微鏡検査で本発明のエミッタを使用する際には、その電子源および電子光学系の非常に小さいサイズが、標本真空室を非常に小さくすることを可能にする。したがって、真空室の真空引き時間を、極端に短くすることができる。さらに、低真空および大気圧での走査型電子顕微鏡の動作が、サブナノメートルスケール電子ビームエミッタの使用から生じる極端に短い経路長に起因して可能である。
【0145】
ナノ電子ビームのコヒーレント特性を、信号処理および計算に活用することができる。たとえば、Usaguawa他の米国特許第5233205号、「Quantum Wave Circuit」、およびMori他の米国特許第5247223号、「Quantum Interference Semiconductor Device」を参照されたい。これらの米国特許の開示は、参照によって本明細書に組み込まれている。本発明のナノエミッタのアレイから供給できる複数の高品質ナノ電子ビームは、これらの特許で開示されたデバイスおよび方法の可能な使用を機能強化する。
【0146】
電子ビームレンズに関して、本発明のナノ電子ビームレンズのトンネリングバンドギャップを滑らかに変更することができる。たとえば、Tavkhelidze他の米国特許第6680214号、「Artificial Band Gap」を参照されたい。米国特許第6680214号は、参照によって本明細書に組み込まれる。広い面積(非点、非ビーム)トンネルエミッタの有効仕事関数を均一に下げるこの方法は、本発明の狭い間隔をおかれたナノエミッタ電極の対を用いるレンズ要素として機能するために、不均一に半径方向に変化する形で適用することができる。
【0147】
さらに、Coxの米国特許第6214651号、「Doped Diamond for Vacuum Diode Heat Pumps and Vacuum Diode Thermionic Generators」で開示されているように、サンドイッチアインツェルレンズの非金属電極を提供することができる。米国特許第6214651号は、参照によって本明細書に組み込まれる。そのようなアインツェルレンズでは、非金属導体が、薄膜電極の金属の代わりに、好ましくは中心環状電極の代わりにも、使用される。金属膜が電子に対して比較的不透明である電子エネルギーでは、特にダイヤモンドが電極間材料として既に使用されている場合に、ドーピングされたダイヤモンドを使用することが有利である場合がある。さらに、滑らかに変化する形でのドーピングプロセスの使用は、静電レンズ場の成形に関する追加の幾何学パラメータの使用を可能にする。
【0148】
トンネル放出冷却システムを実現するために、本発明のナノエミッタを適用することもできる。たとえば、Tavkhelidze他の米国特許第6417060号、「Method for Making a Diode Device」を参照されたい。米国特許第6417060号は、参照によって本明細書に組み込まれる。この特定の犠牲層プロセスは、バルクの機械的な動きとそれに続く正確な位置決めとに依存する。しかし、極端に一致する表面要件および極端な相対位置決め要件を有する大きい接続された放出表面の必要は、多数の本発明の個々の点ナノエミッタを使用するコレクション電極からのトンネルギャップを要因として含めることによって、除去することができる。これは、代替幾何構成の実施に関するはるかに高い柔軟性を有するシステムをも提供する。
【0149】
本発明のナノエミッタは、高出力電子ビームシステム用の、通常よりはるかに高い出力レベルで駆動される他のエミッタシステムのきわめて一体化された冷却を提供するのにも使用することができる。冷却エミッタアレイは、同心円に配列されて、さまざまな医療応用例および科学応用例の粒子ビームの伝搬にマイスナ効果を活用する毛管超伝導チューブの極低温冷却をもたらす。たとえば、多くの医療応用例および研究応用例で、ジョセフソン接合センサ用のほぼ顕微鏡的な極低温クーラーを有することが、有利であろう。
【0150】
もう1つの応用実施形態で、ナノ真空室を製造することができる。そのような製造には、レンズ、エミッタ、および他の構造の(横および垂直の)電子経路用のナノ真空室を形成するための、堆積後冷却が強力な局所化された座屈応力を誘導するバイメタル材料の薄い層を使用することが含まれる。好ましい実施形態では、バイメタル材料またはニチノール(NiTi)のより不安定な形の絶縁性類似物の薄膜の適切なパターンが、おそらくはひずみを与えられたダイヤモンドの層を用いてキャップされて、形成される。そのような構造の目的は、膜が適当な波長のレーザーによって極端にすばやくスポット加熱される時に、安定した「真空ブリスタ」を形成することである。いくつかのタイプの材料および界面について、元の薄膜の形に戻ることができない、材料の平らにされた中心の落下を形成することができる。用いられるスケールに起因して、過渡的熱パルスは、周囲の材料に非常にすばやく散逸され、周囲の領域に対する無視できる影響を有するほぼ瞬間的な冷却をもたらす。これらは、ガラス状合金状態をその下で形成できる条件であり、これによって、構造的に強いブリスタが形成される。
【0151】
もう1つの応用実施形態では、本発明のナノ電場エミッタの大きいアレイを有する集積回路チップが、従来のチップ間ボンディングプロセスではなく、電子ビームによって誘導される炭素堆積プロセス(とりわけ)を利用することができる。はるかに小さい相互接続を有する劇的により小さいボンディングパッドを、使用することができる。この応用例は、樹状突起接続を成長させる神経に多少似ている。この実施形態では、面するチップからの成長する接続が、最終的に、ナノ電場エミッタに直接に近接する(および、おそらくはそのまわりを一周する)電気接点と接触する。最も単純な場合に、ナノサンドイッチアインツェルレンズを省略することができる。追加のビームステアリング能力を有するより複雑な場合では、多数の軸外「樹状突起」が、成長させられ、1つの導体に接続され、この導体が、最終的に、近接するターゲット電極と接触する。
【0152】
もう1つの応用実施形態では、チルトアップナノ電場エミッタのアレイを有する微小電気機械(MEMS)チップが、電子ビームイメージングおよび電子ビーム処理を利用して、それ自体を配線し、溶接し、同様に、さまざまな自己拡張型生産後プロセスでお互いに影響し、結合する。
【0153】
本発明のナノエミッタのさらなる応用は、電子ビームウルトラナノリソグラフィ、超高密度データストレージおよび超高密度データ検索、ナノマニピュレーション、ナノプロセッシング、ナノアセンブリ、VMED(バキュームマイクロエレクトロニックデバイス)ディスプレイの代替、および水和生物分子のイメージング/分光法用の極薄壁を有する極マイクロピペットナノチャネルとのナノエミッタの一体化である。
【0154】
したがって、本発明に従って、固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタおよびナノサンドイッチアインツェル電子ビームレンズが提供されたことは明白である。本発明を、その好ましい実施形態に関して説明したが、多数の代替形態、修正形態、および変形形態が当業者に明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広義の範囲に含まれるそのような代替形態、修正形態、および変形形態のすべてを包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】囲まれた点源電子ビームジェネレータを示す略図である。
【図2】囲まれた点源電子ビームジェネレータを示す略図である。
【図3】囲まれた点源電子ビームジェネレータを示す略図である。
【図4】囲まれた点源電子ビームジェネレータを使用する微小走査型電子顕微鏡を示す略図である。
【図5】超伝導ナノチャネルの電子ビーム集束カプラを示す略図である。
【図6】超伝導ナノチャネルY接合部を示す略図である。
【図7】超伝導ナノチャネルY接合部を示す略図である。
【図8】電子ビーム集束超伝導ナノチャネルに結合された点源電子ビームジェネレータを示す略図である。
【図9】超伝導ナノチャネルを含む、荷電粒子ビームを案内するデバイスの一実施形態を示す略図である。
【図10】図10Aは、超伝導ナノチャネルネットワークの側面図を示す略図である。図10Bは、図10Aの線10B−10Bに沿った、図10Aの表現を示す上面図である。
【図11】図11Aは、ナノスケール超伝導ロッドを有する超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。図11Bは、ナノスケール超伝導ロッドを有する超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。図11Cは、ナノスケール超伝導ロッドを有する超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。
【図12】複数の層を有する超伝導ナノチャネルを示す略図である。
【図13】図13Aは、軸方向で分割された超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。図13Bは、軸方向で分割された超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。
【図14】支持システムに接続された超伝導ナノチャネルを示す略図である。
【図15】図15Aは、等しくない部分に分割された超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。図15Bは、等しくない部分に分割された超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。図15Cは、等しくない部分に分割された超伝導ナノチャネルの実施形態を示す略図である。
【図16A】超伝導ナノチャネルを併合する実施形態を示す略図である。
【図16B】超伝導ナノチャネルを併合する実施形態を示す略図である。
【図16C】超伝導ナノチャネルを併合する実施形態を示す略図である。
【図16D】超伝導ナノチャネルを併合する実施形態を示す略図である。
【図17】超伝導ナノチャネルY接合部を示す略図である。
【図18】内部超伝導ワイヤを有する超伝導ナノチャネルを示す略図である。
【図19】フィールドイオナイザとしての超伝導ナノチャネルを示す略図である。
【図20】図20Aは、音波検出器システムの構成要素としての超伝導ナノチャネルを示す略図である。図20Bは、音波検出器システムの構成要素としての超伝導ナノチャネルを示す略図である。図20Cは、音波検出器システムの構成要素としての超伝導ナノチャネルを示す略図である。
【図21】囲まれた点源電子ビームジェネレータのもう1つの実施形態を示す略図である。
【図22】囲まれた点源電子ビームジェネレータのもう1つの実施形態を示す略図である。
【図23】囲まれた点源電子ビームジェネレータを含む囲まれたピコSEM(走査型電子顕微鏡)を示す略図である。
【図24A】本発明の固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタの一実施形態を示す(原寸通りではない)断面略図である。
【図24B】図24Aの線24B−24Bに沿った、図24Aの固体状態サブナノメートルスケール電子ビームエミッタを示す上面図である。
【図25】それを通過する電子ビームを集束する従来のアインツェル静電集束レンズを示す断面概略図である。
【図26A】図24Aのナノエミッタシステムの「ナノサンドイッチアインツェル」レンズの一実施形態を示す詳細断面図である。
【図26B】図26Aの線26B−26Bに沿った、図26Aのレンズを示す軸方向断面図である。
【図26C】その中心電極が複数のセグメントからなる、図26Aのレンズを示す軸方向断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状態サブナノメートルスケールの電子ビームエミッタであって、基板上に形成されたナノ先端電子エミッタおよびトンネル放出接合部と、初期電子ビーム引出し電極と、電子ビームレンズとを有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記電子ビームレンズは、ナノサンドイッチアインツェルレンズ電極を有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項3】
請求項2に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノサンドイッチアインツェルレンズ電極は、下側主電子ビーム加速電極、環状金属電極、および上側金属膜電極を有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項4】
請求項3に記載の電子ビームエミッタであって、前記初期電子ビーム引出し電極は、更に前記ナノサンドイッチアインツェルレンズ電極の前記下側主電子ビーム加速電極を形成することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項5】
請求項3に記載の電子ビームエミッタであって、前記初期電子ビーム引出し電極と、前記ナノサンドイッチアインツェルレンズ電極の前記下側金属膜電極および前記主電子ビーム加速電極との間に配置されたスペーシング層をさらに有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項6】
請求項3に記載の電子ビームエミッタであって、前記下側主電子ビーム加速電極は、約1ナノメートルから約10ナノメートルまでの間の厚さを有し、前記環状金属電極は、約1ナノメートルから約10ナノメートルまでの間の厚さを有し、前記上側金属膜電極は、約1ナノメートルから約10ナノメートルまでの間の厚さを有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項7】
請求項6に記載の電子ビームエミッタであって、前記環状金属電極は、直径が約10ナノメートルから約100ナノメートルまでの間の、電子が通過する開口部を有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項8】
請求項2に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノサンドイッチアインツェルレンズ電極は、物質がなく且つナノ真空室を形成する内側領域を有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項9】
請求項2に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノサンドイッチアインツェルレンズ電極は、本質的に電子透過性材料からなる内側領域を有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項10】
請求項2に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノサンドイッチアインツェルレンズ電極上に配置された電子透過性保護層をさらに有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項11】
請求項10に記載の電子ビームエミッタであって、前記電子透過性保護層は、本質的に、ダイヤモンド、窒化珪素、および窒化アルミニウムからなる群から選択される材料からなることを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項12】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記エミッタは、実質的に円筒形の形状を伴って形成されることを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項13】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記基板は、本質的にシリコンからなることを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項14】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノ先端電子エミッタは、前記ナノ先端電子エミッタを前記初期電子ビーム引出し電極から分離するスペーシング層内に埋め込まれることを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項15】
請求項14に記載の電子ビームエミッタであって、前記スペーシング層は、本質的にダイヤモンドからなることを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項16】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノ先端電子エミッタは、円錐形形状を伴って形成されることを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項17】
請求項16に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノ先端電子エミッタは、前記基板から、約20ナノメートルから約80ナノメートルまでの間の距離だけ延びることを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項18】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノ先端電子エミッタは、タングステン四面体先端部を有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項19】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノ先端電子エミッタは、カーボンナノチューブを有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項20】
請求項1に記載の電子ビームエミッタであって、前記ナノ先端電子エミッタは、C60バッキーボールを有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項21】
固体状態サブナノメートルスケールの電子ビームエミッタであって、基板上に形成されたナノ先端電子エミッタおよびトンネル放出接合部と、初期電子ビーム引出し電極と、前記初期電子ビーム引出し電極上に配置された保護層とを有することを特徴とする電子ビームエミッタ。
【請求項22】
電子ビームを方向付けるナノサンドイッチアインツェルレンズであって、下側主電子ビーム加速電極、環状金属電極、および上側金属膜電極を有することを特徴とするレンズ。
【請求項23】
請求項22に記載のレンズであって、前記下側主電子ビーム加速電極は、第1電子透過スペーシング層によって前記環状金属電極から分離され、前記環状金属電極は、第2電子透過スペーシング層によって前記上側金属膜電極から分離されることを特徴とするレンズ。
【請求項24】
請求項23に記載のレンズであって、前記第1電子透過スペーシング層および前記第2電子透過スペーシング層は、本質的に、ダイヤモンド、窒化珪素、および窒化アルミニウムからなる群から選択される材料からなることを特徴とするレンズ。
【請求項25】
請求項22に記載のレンズであって、電子を方向付ける電圧は、前記環状金属電極に印加されることを特徴とするレンズ。
【請求項26】
請求項22に記載のレンズであって、前記環状金属電極は、単体であることを特徴とするレンズ。
【請求項27】
請求項22に記載のレンズであって、前記環状金属電極は、少なくとも第1セグメントおよび第2セグメントにセグメント化されることを特徴とするレンズ。
【請求項28】
請求項27に記載のレンズであって、第1の電子を方向付ける電圧は、前記環状金属電極の前記第1セグメントに印加され、第2の電子を方向付ける電圧は、前記環状金属電極の前記第2セグメントに印加されることを特徴とするレンズ。
【請求項29】
請求項27に記載のレンズであって、前記環状金属電極は、約90°の間隔で4つのセグメントにセグメント化されることを特徴とするレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【公表番号】特表2008−519423(P2008−519423A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540377(P2007−540377)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/039501
【国際公開番号】WO2006/052549
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507146913)バイオメド・ソリューションズ・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】