説明

一体成形型容器成形方法

【解決手段】金型構造を構成する固定金型Mfに、適当数の樹脂ゲートGfを配設するとともに、前記金型構造を構成する側部スライド金型Msにも、適当数の樹脂ゲートGsを配設し、前記樹脂ゲートGf、Gsから、キャビティーCに溶融樹脂を注入するようにした一体成形型容器成形方法に関するものである。
【効果】樹脂のメルトフローレートMFRを大きくすることなく、キャビティーの全体への溶融樹脂の注入を確実に行うことができる。従って、樹脂のメルトフローレートMFRを大きくしたことによる一体成形型容器の耐衝撃性の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の物品を収容し、運搬、搬送するための一体成形型容器の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一体成形型容器成形方法に使用される金型構造は、一例として、図4に示されているように、固定金型Mfと可動金型Mmとから構成されており、固定金型Mfのみに、適当数の樹脂ゲートGfが形成されている。そして、固定金型Mfと可動金型Mmとの間には、一体成形型容器用のキャビティーCが形成されており、キャビティーCに、固定金型Mfに形成された樹脂ゲートGfから、溶融樹脂を射出することにより、キャビティーCに溶融樹脂が注入されて、一体成形型容器が成形されることになる。なお、Fmは、可動側取付板であり、Ffは、固定側取付板であり、Sは、スペーサーである。
【0003】
上述した一体成形型容器成形方法は、一例として、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−313427公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の一体成形型容器成形方法に示されているように、固定金型Mfのみに、樹脂ゲートGfが形成されている場合には、キャビティーCの全体に、溶融樹脂が、確実に注入されるようにするために、溶融樹脂の注入方向に対して垂直方向のキャビティーCの幅Wを広くするとか、或いは、樹脂のメルトフローレートMFRを大きくすることが行われている。
【0006】
ところで、近年、一体成形型容器の軽量化のために、一体成形型容器の底部や側壁等の肉厚を薄くすることが求められている。一体成形型容器の底部や側壁等の肉厚を薄くすると、キャビティーCの全体に、溶融樹脂が注入されないという問題が発生することになる。
【0007】
このような問題を解決するためには、上述したように、樹脂のメルトフローレートMFRを大きくすることが行われているが、樹脂のメルトフローレートMFRを大きくすると、シャルピー衝撃試験等による衝撃強さが低下し、従って、成形された一体成形型容器の耐衝撃性が低下し、一体成形型容器が損傷されやすくなるという問題があった。
【0008】
樹脂のメルトフローレートMFRを大きくする代わりに、キャビティーCへの溶融樹脂の射出圧力を高めることが行われているが、射出圧力を高めるためには、金型構造を構成する固定金型Mfや可動金型Mm等の金型の肉厚を厚くする等、金型構造の強度や剛性を高めなければならず、従って、金型の製造コストが上昇するという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来の発明が有する課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した目的を達成するために、第1には、金型構造を構成する固定金型に、適当数の樹脂ゲートを配設するとともに、前記金型構造を構成する側部スライド金型にも、適当数の樹脂ゲートを配設し、前記樹脂ゲートから、キャビティーに溶融樹脂を注入するようにしたものであり、第2には、金型構造を構成する固定金型の水平部に、適当数の樹脂ゲートを配設するとともに、前記固定金型の垂直部にも、適当数の樹脂ゲートを配設し、前記樹脂ゲートから、キャビティーに溶融樹脂を注入するようにしたものであり、第3には、一体成形型容器の側壁を成形するための金型に配設された樹脂ゲートが、前記側壁に形成された水平リブと垂直リブとの交点と一致するように、或いは、前記交点付近に位置する水平リブ或いは垂直リブに位置するように構成したものであり、第4には、一体成形型容器の側壁を成形するための金型に配設された樹脂ゲートが、前記側壁に形成された水平リブと垂直リブとの交点付近に位置する板状部に位置するように構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
樹脂のメルトフローレートMFRを大きくすることなく、キャビティーの全体への溶融樹脂の注入を確実に行うことができる。従って、樹脂のメルトフローレートMFRを大きくしたことによる一体成形型容器の耐衝撃性の低下を抑制することができる。また、樹脂のメルトフローレートMFRが低い、換言すれば、価格の安い再生樹脂等を使用することができ、従って、一体成形型容器の価格を下げることができる。
【0012】
また、射出圧力を低くすることができ、従って、金型構造を構成する固定金型や可動金型や側部スライド金型の肉厚を薄くすることができ、金型の製造コストを低減化することができる。
【0013】
更に、一体成形型容器の射出成形時間を短縮化することができ、従って、一体成形型容器の射出成形作業効率を高めることができる。
【0014】
更にまた、固定金型に配設された樹脂ゲートから注入される溶融樹脂の色や色相と、側部スライド金型Msに配設された樹脂ゲートから注入される溶融樹脂の色や色相とを、適宜、変えることができ、従って、一体成形型容器の外観的価値を高めることができるとともに、色や色相を変えることによる一体成形型容器の識別性を高めることができる。
【0015】
一体成形型容器の側壁を成形するための金型に配設された樹脂ゲートが、前記側壁に形成された水平リブと垂直リブとの交点に一致するように、或いは、前記交点付近に位置する水平リブ或いは垂直リブに位置するように構成したので、側壁の平板状の板状部への射出圧力の直接影響を抑制することができ、従って、射出圧力による側壁の変形を抑制することができる。
【0016】
一体成形型容器の側壁を成形するための金型に配設された樹脂ゲートが、前記側壁に形成された水平リブと垂直リブとの交点付近に位置する板状部に位置するように構成したので、側壁に形成される印刷領域やシール貼着領域を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一体成形型容器成形方法に使用される金型構造の垂直断面図である。
【図2】図2は、本発明の一体成形型容器成形方法に使用される別の実施例の金型構造の垂直断面図である。
【図3】図3は、本発明の一体成形型容器成形方法により成形された一例としての一体成形型容器の斜視図である。
【図4】図4は、従来の一体成形型容器成形方法に使用される金型構造の垂直断面図である。
【実施例】
【0018】
先ず最初に、図1を用いて、本発明の実施例について説明する。
【0019】
図1において、Mfは、固定金型であり、Mmは、可動金型であり、Msは、側部スライド金型である。また、固定金型Mfと可動金型Mmと側部スライド金型Msとの間には、一体成形型容器用のキャビティーCが形成されており、固定金型Mfには、上述した金型構造と同様に、適当数の樹脂ゲートGfが形成されている。更に、上述した公知の金型構造と同様に、可動側取付板Fmや固定側取付板FfやスペーサーS等が配置されている。このような構成の金型構造は、公知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0020】
本発明においては、固定金型Mfに形成された樹脂ゲートGfに加えて、側部スライド金型Msにも、適当数の樹脂ゲートGsが形成されている。
【0021】
上述したように、一体成形型容器の底部を成形するための固定金型Mfに、適当数の樹脂ゲートGfを配設するとともに、一体成形型容器の側壁を成形するための側部スライド金型Msにも、適当数の樹脂ゲートGsを配設することにより、樹脂のメルトフローレートMFRを大きくすることなく、キャビティーCの全体への溶融樹脂の注入を確実に行うことができる。従って、樹脂のメルトフローレートMFRを大きくしたことによる一体成形型容器の耐衝撃性の低下を抑制することができる。また、樹脂のメルトフローレートMFRが低い、換言すれば、価格の安い再生樹脂等を使用することができ、従って、一体成形型容器の製造コストを下げることができる。
【0022】
また、一体成形型容器の底部を成形するための固定金型Mfに、適当数の樹脂ゲートGfを配設するとともに、一体成形型容器の側壁を成形するための側部スライド金型Msにも、適当数の樹脂ゲートGsを配設することにより、射出圧力を低くすることができ、従って、金型構造を構成する固定金型Mfや可動金型Mmや側部スライド金型Msの肉厚を薄くすることができ、金型の製造コストを低減化することができる。
【0023】
更に、一体成形型容器の底部を成形するための固定金型Mfに、適当数の樹脂ゲートGfを配設するとともに、一体成形型容器の側壁を成形するための側部スライド金型Msにも、適当数の樹脂ゲートGsを配設することにより、一体成形型容器の射出成形時間を短縮化することができ、従って、一体成形型容器の射出成形作業効率を高めることができる。
【0024】
更にまた、一体成形型容器の底部を成形するための固定金型Mfに、適当数の樹脂ゲートGfを配設するとともに、一体成形型容器の側壁を成形するための側部スライド金型Msに樹脂ゲートGsを配設することにより、固定金型Mfに配設された樹脂ゲートGfから注入される溶融樹脂の色や色相と、側部スライド金型Msに配設された樹脂ゲートGsから注入される溶融樹脂の色や色相とを、適宜、変えることができ、従って、一体成形型容器の外観的価値を高めることができるとともに、色や色相を変えることによる一体成形型容器の識別性を高めることができる。
【0025】
図2には、本発明の別の実施例が示されている。この実施例においては、上述した実施例における側部スライド金型Msが、固定金型Mfと一体に形成されているものであり、それ以外の構成は、上述した実施例と同じである。即ち、固定金型Mfは、水平部Mf1と該水平部Mf1の両端部から立設された垂直部Mf2とにより構成されている。そして、固定金型Mfを構成する垂直部Mf2に、上述した実施例における側部スライド金型Msに配設された樹脂ゲートGsが配設されることになる。
【0026】
図3には、一例として、上述した一体成形型容器成形方法により成形される一体成形型容器が示されている。
【0027】
一体成形型容器Vは、底部1と、相対する長側壁2と、相対する短側壁3とを有しており、一体成形型容器Vの上端には、一体成形型容器Vの外側に延在する上端水平フランジ4が形成されている。また、底部1の裏面1aには、適当数の嵌合部1bが垂設されており、嵌合部1bは、周壁1b1と、該周壁1b1内に形成された交差リブ1b2とにより構成されている。更に、相対する長側壁2の外面2aには、適当数の水平リブ2bや適当数の垂直リブ2cが形成されている。同様に、相対する短側壁3の外面3aにも、適当数の水平リブ3bや適当数の垂直リブ3cが形成されている。
【0028】
上述した一体成形型容器Vの底部1を成形するための固定金型Mfに配設された樹脂ゲートGfは、底部1の裏面1aに形成された嵌合部1bの交差リブ1b2の交点P1に一致するように配置することができる。なお、樹脂ゲートGfを、底部1の平板状の板状部1cに位置するように配置することもできる。このように構成することにより、成型後の湯道の下端が、交差リブ1b2の下端から突出するようなことがなく、従って、一体成形型容器Vの底部1を構成する嵌合部1bの水平面が平坦性が損なわれるようなことがなく、ひいては、床等に載置された一体成形型容器Vの安定性が損なわれるようなことを防止することができる。
【0029】
また、一体成形型容器Vの長側壁2を成形するための側部スライド金型Msや固定金型Mfを構成する垂直部Mf2に配設された樹脂ゲートGsは、長側壁2に形成された水平リブ2bと垂直リブ2cとの交点P2に一致するように配置することが好ましい。更に、一体成形型容器Vの短側壁3を成形するための側部スライド金型Msや固定金型Mfを構成する垂直部Mf2に配設された樹脂ゲートGsは、短側壁3に形成された水平リブ3bと垂直リブ3cとの交点P3に一致するように配置することが好ましい。このように構成することにより、長側壁2の平板状の板状部2dや短側壁3の平板状の板状部3d等の薄肉部への射出圧力の直接影響を抑制することができ、従って、射出圧力による長側壁2や短側壁3の変形を抑制することができる。
【0030】
ところで、肉厚が、2mm以下の一体成形型容器を射出成形する場合に、従来のように、固定金型Mfのみに、樹脂ゲートGfが形成されている場合には、樹脂のメルトフローレートMFR(SI単位が、g/10minで、測定方法が、JISK7210、ISO1133で、且つ、試験条件 230℃)が、少なくとも、45以上でなければならず、45未満であると、キャビティーC内に、満遍なく、溶融樹脂が行き渡らないとう問題がり、また、一体成形型容器のシャルピー衝撃強さ(SI単位が、kJ/m2 で、測定方法が、JISK7111、ISO179で、且つ、試験条件 23℃)が、5.5以下となり、一体成形型容器の衝撃強さが低下することになる。
【0031】
本発明においては、一体成形型容器の底部を成形するための固定金型Mfに、適当数の樹脂ゲートGfを配設するとともに、一体成形型容器の側壁を成形するための側部スライド金型Msにも、適当数の樹脂ゲートGsを配設することにより、肉厚が、2mm以下の一体成形型容器を射出成形する場合においても、上述したメルトフローレートMFRを、30以下とすることができ、従って、一体成形型容器のシャルピー衝撃強さを、7以上とすることができる。
【0032】
なお、一体成形型容器Vの底部1を成形するための固定金型Mfに配設された樹脂ゲートGfを、底部1の裏面1aに形成された嵌合部1bの交差リブ1b2の交点P1に配置する代わりに、交点P1付近に位置する交差リブ1b2や、交差リブ1b2付近に位置する底部1の裏面1aに配置することができる。
【0033】
同様に、一体成形型容器Vの長側壁2を成形するための側部スライド金型Msや固定金型Mfを構成する垂直部Mf2に配設された樹脂ゲートGsを、長側壁2に形成された水平リブ2bと垂直リブ2cとの交点P2に配置する代わりに、交点P2付近に位置する水平リブ2b或いは垂直リブ2cや、交点P2付近に位置する長側壁2の外面2aに配置することができる。このように、交点P2付近に位置する水平リブ2b或いは垂直リブ2cに、樹脂ゲートGsを配置した場合には、上述した交点P2に樹脂ゲートGsを配置したと同様に、長側壁2の平板状の板状部2d等の薄肉部への射出圧力の直接影響を抑制することができ、従って、射出圧力による長側壁2の変形を抑制することができる。また、樹脂ゲートGsを、交点P2付近に位置する長側壁2の外面2aに配置することにより、長側壁2に形成される印刷領域やシール貼着領域を大きくすることができる。
【0034】
同様に、一体成形型容器Vの短側壁3を成形するための側部スライド金型Msや固定金型Mfを構成する垂直部Mf2に配設された樹脂ゲートGsを、短側壁3に形成された水平リブ3bと垂直リブ3cとの交点P3に配置する代わりに、交点P3付近に位置する水平リブ3b或いは垂直リブ3cや、交点P3付近に位置する短側壁3の外面3aに配置することができる。このように、交点P3付近に位置する水平リブ3b或いは垂直リブ3cに、樹脂ゲートGsを配置した場合には、上述した交点P3に樹脂ゲートGsを配置したと同様に、短側壁3の平板状の板状部3d等の薄肉部への射出圧力の直接影響を抑制することができ、従って、射出圧力による短側壁3の変形を抑制することができる。また、樹脂ゲートGsを、交点P3付近に位置する短側壁3の外面3aに配置することにより、短側壁3に形成される印刷領域やシール貼着領域を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0035】
C・・・・・・・・・・・・キャビティー
Gf、Gs・・・・・・・・樹脂ゲート
Mf・・・・・・・・・・・固定金型
Mm・・・・・・・・・・・可動金型
Ms・・・・・・・・・・・側部スライド金型
V・・・・・・・・・・・・一体成形型容器
1・・・・・・・・・・・・底部
2・・・・・・・・・・・・長側壁
3・・・・・・・・・・・・短側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型構造を構成する固定金型に、適当数の樹脂ゲートを配設するとともに、前記金型構造を構成する側部スライド金型にも、適当数の樹脂ゲートを配設し、前記樹脂ゲートから、キャビティーに溶融樹脂を注入するようにしたことを特徴とする一体成形型容器成形方法。
【請求項2】
金型構造を構成する固定金型の水平部に、適当数の樹脂ゲートを配設するとともに、前記固定金型の垂直部にも、適当数の樹脂ゲートを配設し、前記樹脂ゲートから、キャビティーに溶融樹脂を注入するようにしたことを特徴とする一体成形型容器成形方法。
【請求項3】
一体成形型容器の側壁を成形するための金型に配設された樹脂ゲートが、前記側壁に形成された水平リブと垂直リブとの交点に一致するように、或いは、前記交点付近に位置する水平リブ或いは垂直リブに位置するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の一体成形型容器成形方法。
【請求項4】
一体成形型容器の側壁を成形するための金型に配設された樹脂ゲートが、前記側壁に形成された水平リブと垂直リブとの交点付近に位置する板状部に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の一体成形型容器成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−20265(P2011−20265A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164370(P2009−164370)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】