説明

一方向回転ダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構及びレンジフード

【課題】急激な速度で開口せずに減速された状態で自重により開口し、作業者が手動により開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向へは抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどが可能なレンジフードを提供する。
【解決手段】内周面と外周面とを有する円筒状に形成され、内周面を挿通する軸8の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチ7と、一方向クラッチ7の外周面と内周面で接するように配置された筒状摩擦材6とを備え、軸8に、軸8の回転不能な方向に所定以上の力が作用したとき、又は一方向クラッチ7に、軸8を軸8の回転不能な方向に回転させようとする所定以上の力が作用したときに、一方向クラッチ7の外周面及び筒状摩擦材6の内周面の一方が他方の面上を摺動し、一方向クラッチ7及び筒状摩擦材6の一方が他方に対して相対的に回転する一方向回転ダンパ等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に摩擦摺動抵抗を有するダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構、及び煙吸引部の整流板に該開閉機構を採用したレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厨房や家庭の台所において、コンロ等から生じる調理の際の煙を換気扇によって吸引し屋外へ排出するにあたり、効果的に煙を吸引して排煙する目的でレンジフードが使用される。一般的には、このレンジフードの内部にフィルターが配され、吸引した煙の中の油分等を付着させ、油の飛散を抑えるように構成されている。
【0003】
フィルターには煙中の油分が付着するため、レンジフードの吸引力の低下を防ぐ意味でも、フィルターは定期的に交換することが求められており、一般的には調理器具の上方に位置しているレンジフード内にある汚れたフィルターを取り出し、新規のフィルターに交換することが余儀なくされていた。
【0004】
また、レンジフードへの煙の吸入を効率よく行うため、レンジフードの開口部に整流板を配する構成が用いられている場合には、その整流板を脱着して該フィルターを交換する必要があった。
【0005】
整流板を取り外す場合には、レンジフードに取付ねじで固定されている整流板を落下しないように抑えながら取付ねじを外す必要があり、一人での作業は困難であった。また、整流板の一方を回転支持するようにし、他方を取付ねじ又は嵌め込み等による固定手段で取り付けた構成も提供されているが、固定手段を解放すると整流板の自重により急激に下方に回動し作業者に当たる虞があるため、整流板を手で支持しながらでなければ開放できなかった。
【0006】
整流板の開放方向への速度を抑制する手段として、特許文献1には、閉状態から開状態となる開動作中において、煙吸引部が所定の距離以上下方に達したときにその開動作を減速させ、所定位置に達すると開動作を止めてその状態を保持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−300353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の排煙用レンジフードは、煙吸引部(本願発明における整流板)が所定の距離以上下方に達したときに開動作を減速させるようにステー内にトーションスプリングが配されている構成であるために、煙吸引部を開放した瞬間は、トーションスプリングの付勢力が小さいため開放時の速度は減速されず、煙吸引部の自重とトーションスプリングの弾性力が釣り合った後は、煙吸引部はそれ以上回転できないので開口状態をさらに大きくすることはできないため、作業者が開口の程度をさらに大きくすることが困難であった。
【0009】
このように、特許文献1は、トーションスプリングのような弾性部材を配しているため、開口具合により付勢力が異なり、開放時の速度を減速させると、自重と釣り合う位置が開口具合の小さい位置となり、開口具合を大きくしようとすると、開放時の開放速度が減速されず、作業者に当たる虞があり、トーションスプリングの調整が非常に難しかった。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、一方の端面がヒンジ機構で支持され、他方の端面がヒンジ機構部を中心に上下方向に回動する整流板を開放する場合等において、急激な速度で開口することなく、減速された状態で自重により開口することができ、さらに開口具合を必要に応じて、作業者が手動により、開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向への作動においては抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどを可能とする一方向回転ダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構及びレンジフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、一方向回転ダンパであって、内周面と外周面とを有する円筒状に形成され、該内周面を挿通する軸の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチと、該一方向クラッチの前記外周面と内周面で接するように配置された筒状摩擦材とを備え、前記軸に、該軸の回転不能な方向に所定以上の力が作用したとき、又は前記一方向クラッチに、前記軸を該軸の回転不能な方向に回転させようとする所定以上の力が作用したときに、前記一方向クラッチの外周面及び前記筒状摩擦材の内周面の一方が他方の面上を摺動し、前記一方向クラッチ及び筒状摩擦材の一方が他方に対して相対的に回転することを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、一方の回転方向に対しては軽々と回動でき、他方の回転方向に対しては摩擦力を付与した状態で摺動できるため、他方の回転方向には所定の作用力以上の入力が働かない限り不動に固定でき、摩擦係数から定まる摩擦力以上の力が作用すると動き始め、さらに該摩擦力以上の力が作用している間だけ回動するという一種のトリガー機能を有する一方向回転ダンパを提供することができる。
【0013】
また、本発明は、一方向回転ダンパであって、内周面と外周面とを有する円筒状に形成され、該内周面を挿通する軸の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチと、前記軸の外周面と内周面で接するように配置された筒状摩擦材とを備え、前記軸に、該軸の回転不能な方向に所定以上の力が作用したとき、又は前記一方向クラッチに、前記軸を該軸の回転不能な方向に回転させようとする所定以上の力が作用したときに、前記軸の外周面及び前記筒状摩擦材の内周面の一方が他方の面上を摺動し、前記軸及び筒状摩擦材の一方が他方に対して相対的に回転することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、一種のトリガー機能を有する一方向回転ダンパを提供することができる。
【0014】
上記一方向回転ダンパにおいて、前記一方向クラッチ又は前記軸の外周面と前記筒状摩擦材の内周面との接触圧力を自在に調整する締め付け部材を備えることができ、これによれば、摩擦摺動面へ与える圧力を変化させ、摺動に要する摩擦力を所望の大きさにすることができる。
【0015】
上記一方向回転ダンパにおいて、前記筒状摩擦材を、金属製の裏金と、該裏金の表面に形成された多孔質青銅焼結層と、該多孔質青銅焼結層の孔隙及び表面に充填被覆された合成樹脂組成物のすべり層とからなり、該すべり層を内側にして円筒状に捲回された複層巻き軸受けとすることができる。これによれば、筒状摩擦材に必要な強度を確保しつつ、一方向クラッチの外周面との間で適切な摩擦力を発揮することができる。
【0016】
また、本発明は、ヒンジ機構であって、上記いずれかに記載の一方向回転ダンパを備え、前記軸に連結された第1の部材と、該一方向回転ダンパに連結された第2の部材との間でヒンジ機能を発揮させることを特徴とする。このヒンジ機構によれば、上述のように、一方の回転方向に対しては軽々と回動でき、他方の回転方向には所定の作用力以上の入力が働かない限り不動に固定でき、トリガー機能を有することなどの特徴を備えたヒンジ機構を提供することができる。
【0017】
さらに、本発明は、開閉機構であって、上記ヒンジ機構を備え、前記第1及び第2の部材のいずれか一方が開閉対象物への取付部を備えることを特徴とする。
【0018】
この開閉機構によれば、前記発明と同様に、一方の回転方向に対しては、開閉対象物を軽々と回動させることができ、他方の回転方向に対しては、摩擦力により生じる抵抗力を発揮させながら回動させることができる。また、他方の回転方向へ作用する外力の方向に重力を利用する場合には、開閉対象物の自重により生じる下方への回転モーメントによる回転力と、筒状摩擦部材及び一方向クラッチ間の摩擦力との釣り合いが取れた位置で、一方向クラッチの回転を停止させることができるため、予め摩擦面へ与えられる摩擦力を所定の値に設定することで、摩擦力付与機構を介して回転する他方の回動角度を所望の角度に定めることができる。
【0019】
また、本発明は、レンジフードであって、上記開閉機構を備え、前記開閉対象物が整流板であることを特徴とする。このレンジフードによれば、整流板を開放する場合、急激な速度で開口することなく減速された状態で自重により開口することができ、さらに開口具合を必要に応じて、作業者が手動により、開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向への作動においては抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、急激な速度で開口することなく減速された状態で自重により開口することができ、さらに開口具合を必要に応じて、作業者が手動により、開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向への作動においては抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどを可能とする一方向回転ダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構及びレンジフードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる一方向回転ダンパ(又はヒンジ機構)を備えた開閉機構の第1の実施形態を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は装置側組立体を示す斜視図、(c)は扉側組立体を示す斜視図である。
【図2】図1の開閉機構をレンジフードの整流板の開閉に利用した場合の動作説明図である。
【図3】図2のレンジフードにおける開閉機構の動作を説明するための図である。
【図4】本発明にかかる一方向回転ダンパ(又はヒンジ機構)を備えた開閉機構の第2の実施形態を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は装置側組立体を示す斜視図、(c)は扉側組立体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明にかかる一方向回転ダンパ(又はヒンジ機構)を備えた開閉機構の第1の実施形態を示し、この開閉機構1は、大別して、第1ブラケット2と、摩擦力付与機構の摩擦材として機能する軸受け6と、一方向クラッチ7と、トルク軸8と、第2ブラケット9等で構成される。
【0024】
第1ブラケット2は、装置や建物等への取付部2aと、軸受け収容部2bとを備え、軸受け収容部2bには、軸受け6が収容される。
【0025】
軸受け6は、金属製の裏金と、該裏金の表面に形成された多孔質青銅焼結層と、該多孔質青銅焼結層の孔隙及び表面に充填被覆された合成樹脂組成物のすべり層とからなり、該すべり層を内側にして円筒状に捲回された複層巻き軸受けである。この軸受け6は、軸受け収容部2bに収容され、その内側に一方向クラッチ7等が収容され、ボルト3及びナット4によって締付力が加えられる。
【0026】
一方向クラッチ7は、内周面と外周面とを有する円筒状に形成され、該内周面を挿通するトルク軸8の小径部8bの軸線回りの一方向の回転のみを許容するように、例えば、内周面と外周面との間に介装されたころが楔として機能するように構成される。この一方向クラッチ7には、種々の構成を有するものが存在するが、本発明では、上述のように、前記内周面を挿通する軸の回転を一方向にのみ許容するものであれば用いることができる。
【0027】
トルク軸8は、大径部8aの両側に小径部8b、8cを備え、上述のように、小径部8bが一方向クラッチ7の貫通孔に収容される。
【0028】
第2ブラケット9は、矩形板状の基部9aに円形の開口部9bを有し、基部9aの背面に扉等への取付部9cを備える。尚、第2ブラケット9の開口部9bにトルク軸8の大径部8aを挿入することで、第2ブラケット9とトルク軸8が連結されるが、第2ブラケット9の内側でトルク軸8が回転するのを防止するため、開口部9bの壁面及び大径部8aの外周面には、セレーション加工が施される。
【0029】
次に、上記各部品の組立要領について説明する。
【0030】
一方向クラッチ7にトルク軸8の小径部8bを挿入固定し、さらに軸受け6に一方向クラッチ7を挿入し、軸受け6を第1ブラケット2の軸受け収容部2bに挿入し、軸受け収容部2bをボルト3とナット4で締めることで図1(b)に示すように、装置側組立体10が完成する。一方、図1(c)に示すように、第2ブラケット9は、そのまま扉側組立体11となる。
【0031】
次に、上記装置側組立体10と、扉側組立体11とをレンジフードの整流板の開閉に用いた場合について図2及び図3を参照しながら説明する。
【0032】
図2に示したレンジフード31は、本体32の下部に整流板33を備え、上部に排気ダクト34を備える。図1に示した装置側組立体10を、図2(a)に示すように、本体32の下部に固定し、装置側組立体10と扉側組立体11とを組み合わせ、扉側組立体11の取付部9cに整流板33の左端部を固定する。
【0033】
図3に示すように、開閉機構1において、トルク軸8は、一方向クラッチ7の作用により、矢視B方向にのみ回転が許容され、反対方向へは回転することができない。また、一方向クラッチ7と軸受け6の間では、それらの接触面で構成される摩擦力付与機構により両者の動きが規制され、所定の作用力以上の入力が矢視A方向に働かない限り、軸受け6に対してトルク軸8及び一方向クラッチ7が不動に固定される。そして、所定の作用力以上の入力が矢視A方向に働くと、一方向クラッチ7の外周面が軸受け6の内周面上を摺動し、トルク軸8及び一方向クラッチ7が一体となって矢視A方向に回転する。
【0034】
図2(a)の状態から整流板33を開ける場合、整流板33を矢視A方向に回動させようとすると、最初は、トルク軸8及び一方向クラッチ7が回転しないため、整流板33は開かないが、所定の作用力以上の入力を加えると、一方向クラッチ7の外周面が軸受け6の内周面上を摺動し、トルク軸8及び一方向クラッチ7が回転する。これに伴って、第2ブラケット9が回転し、その結果、整流板33が矢視A方向に回動して整流板33を開けることができる。
【0035】
ここで、装置側組立体10においては、図1に示すように、ボルト3及びナット4を用いて一方向クラッチ7の外周面と軸受け6の内周面との接触圧力を自在に調整することができるため、一方向クラッチ7及び軸受け6の表面材質やその表面状態により適宜ボルト3及びナット4による締付力を調整し、摩擦摺動面へ与える圧力を変化させ、摺動に要する摩擦力を所望の大きさにすることができる。この際、軸受け6の合わせ目にある隙間が縮小し、換言すれば軸受け6が縮径できるため、締め付け部材により締め付けた力は、一方向クラッチ7の外周面との接触圧力として無駄なく作用する。
【0036】
図2に戻り、整流板33が所望の位置まで来ると、整流板33への入力を弱めれば、一方向クラッチ7及び軸受け6からなる摩擦力付与機構により、一方向クラッチ7の摺動が規制されるため、整流板33の回動が停止し、整流板33を所望の位置で停止させることができる。整流板33が停止した状態では、一方向クラッチ7及び軸受け6の間の摩擦力により整流板33がさらに下降したり、上昇することなく停止した状態を維持することができる。また、図3に示すように、軸受け6の合わせ目の位置を締め付け部材である軸受け収容部2bの締代位置に合わせると、軸受け6の縮径が容易に可能となるため、締め付け部材により締め付けた力は、一方向クラッチ7の外周面との接触圧力として、さらに無駄なく作用させることができる。
【0037】
次に、整流板33を閉める場合には、図2(c)において矢視B方向に整流板33を回転させると、扉側組立体11内の一方向クラッチ7の機能により、トルク軸8が矢視B方向に回転可能であるため(図3参照)、僅かな力で整流板33を回転させて閉めることができる。
【0038】
尚、開閉機構1では、重力を利用し、整流板33の自重により生じる下方への回転モーメントによる回転力と、一方向クラッチ7及び軸受け6の間の摩擦力との釣り合いが取れた位置で、トルク軸8及び一方向クラッチ7の回転を停止させることができるため、予めこの摩擦力を所定の値に設定することで、摩擦力付与機構を介して回動する整流板33の回動角度を所望の角度に定めることができる。換言すれば、整流板33の開口具合を所望の位置に調整することができる。
【0039】
尚、図2に示すレンジフード31においては、装置側組立体10を本体32に取り付けるとともに、扉側組立体11を整流板33に取り付けたが、装置側組立体10と扉側組立体11の位置を反転させ、扉側組立体11を本体32に取り付け、装置側組立体10を整流板33に取り付けてもよい。
【0040】
次に、本発明にかかる一方向回転ダンパ(又はヒンジ機構)を備えた開閉機構の第2の実施形態について、図4を参照しながら説明する。
【0041】
この開閉機構41は、大別して、第1ブラケット42と、摩擦力付与機構の摩擦材として機能する軸受け46と、一方向クラッチ47と、トルク軸48と、第2ブラケット49等で構成される。
【0042】
第1ブラケット42は、装置や建物等への取付部42aと、軸受け収容部42bとを備え、軸受け収容部42bには、軸受け46が収容される。
【0043】
軸受け46は、図1に示した軸受け6と同様に構成され、その内側には、トルク軸48の軸部48aが収容され、ボルト43及びナット44によって締付力が加えられる。
【0044】
一方向クラッチ47は、図2に示した一方向クラッチ7と同様に構成され、本実施の形態では、トルク軸48の中央部に固定される。
【0045】
トルク軸48は、上述のように、その中央部が一方向クラッチ47の貫通穴に収容され、一方向クラッチ47の左側の軸部48aが軸受け46に収容され、軸部48aと軸受け46の接触面で摩擦力付与機構が構成される。
【0046】
第2ブラケット49は、矩形板状の基部49aに円形の開口部49bを有し、基部49aの背面に扉等への取付部49cを備える。尚、第2ブラケット49の開口部49bに一方向クラッチ47を挿入することで、第2ブラケット49と一方向クラッチ47が連結されるが、第2ブラケット49の内側で一方向クラッチ47が回転するのを防止するため、開口部49bの壁面及び一方向クラッチ47の外周面には、セレーション加工が施される。
【0047】
次に、上記各部品の組立要領について説明する。
【0048】
トルク軸48の中央部に一方向クラッチ47を挿入固定し、軸受け46にトルク軸48の軸部48aを挿入し、軸受け46を第1ブラケット42の軸受け収容部42bに挿入し、軸受け収容部42bをボルト43とナット44で締めることで図4(b)に示すように、装置側組立体50が完成する。一方、図4(c)に示すように、第2ブラケット49は、そのまま扉側組立体51となる。
【0049】
これら装置側組立体50及び扉側組立体51を、図2の装置側組立体10と扉側組立体11の代わりに用いることで、同様にレンジフードの整流板の開閉を行うことができる。すなわち、トルク軸48が一方向クラッチ47の作用により回転不可能な方向を、図2のA方向とし、トルク軸48が一方向クラッチ47の作用により回転可能な方向を図2のB方向とすることで、図1の開閉機構1を用いた場合と同様にレンジフード31の整流板33を開閉することができる。
【0050】
尚、本実施の形態においても、装置側組立体50と扉側組立体51の位置を反転させ、扉側組立体51を本体32に取り付け、装置側組立体50を整流板33に取り付けてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態においては、摩擦力付与機構に用いる筒状摩擦材を、合わせ目を有する軸受け(複層巻き軸受け)6、46により構成したが、他の構成をとる筒状摩擦材であってもよく、締め付け部材により外周方向からの圧力が無駄なくトルク軸8、48の小径部8b、軸部48aの外周表面に作用するように縮径可能な構成であればよい。具体的には、軸方向に複数のスリットを設けて縮径可能な構成とした筒状摩擦部材であっても、網目構造、例えばエキスバンドメタルからなる部材を用いた筒状摩擦部材であってもよい。
【0052】
また、摩擦力付与機構に用いる筒状摩擦材を締め付け部材により締め付ける構成に代えて、締め付け部材の内周表面自体を摩擦摺動に適した状態として用いることもできる。具体的には、締め付け部材の内周表面に摩擦摺動に適した樹脂等をコーティング又は焼付塗装する構成や、締め付け部材の内周表面に固体潤滑剤等の摩擦摺動に適した部材を埋め込む構成、さらに、締め付け部材自体を摩擦摺動に適した合金、焼結合金、樹脂からなる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 開閉機構
2 第1ブラケット
2a 取付部
2b 軸受け収容部
3 ボルト
4 ナット
6 軸受け
7 一方向クラッチ
8 トルク軸
8a 大径部
8b 小径部
9 第2ブラケット
9a 基部
9b 開口部
9c 取付部
10 装置側組立体
11 扉側組立体
31 レンジフード
32 本体
33 整流板
34 排気ダクト
41 開閉機構
42 第1ブラケット
42a 取付部
42b 軸受け収容部
43 ボルト
44 ナット
46 軸受け
47 一方向クラッチ
48 トルク軸
48a 軸部
49 第2ブラケット
49a 基部
49b 開口部
49c 取付部
50 装置側組立体
51 扉側組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面と外周面とを有する円筒状に形成され、該内周面を挿通する軸の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチと、
該一方向クラッチの前記外周面と内周面で接するように配置された筒状摩擦材とを備え、
前記軸に、該軸の回転不能な方向に所定以上の力が作用したとき、又は前記一方向クラッチに、前記軸を該軸の回転不能な方向に回転させようとする所定以上の力が作用したときに、前記一方向クラッチの外周面及び前記筒状摩擦材の内周面の一方が他方の面上を摺動し、前記一方向クラッチ及び筒状摩擦材の一方が他方に対して相対的に回転することを特徴とする一方向回転ダンパ。
【請求項2】
内周面と外周面とを有する円筒状に形成され、該内周面を挿通する軸の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチと、
前記軸の外周面と内周面で接するように配置された筒状摩擦材とを備え、
前記軸に、該軸の回転不能な方向に所定以上の力が作用したとき、又は前記一方向クラッチに、前記軸を該軸の回転不能な方向に回転させようとする所定以上の力が作用したときに、前記軸の外周面及び前記筒状摩擦材の内周面の一方が他方の面上を摺動し、前記軸及び筒状摩擦材の一方が他方に対して相対的に回転することを特徴とする一方向回転ダンパ。
【請求項3】
前記一方向クラッチ又は前記軸の外周面と前記筒状摩擦材の内周面との接触圧力を自在に調整する締め付け部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向回転ダンパ。
【請求項4】
前記筒状摩擦材は、金属製の裏金と、該裏金の表面に形成された多孔質青銅焼結層と、該多孔質青銅焼結層の孔隙及び表面に充填被覆された合成樹脂組成物のすべり層とからなり、該すべり層を内側にして円筒状に捲回された複層巻き軸受けであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の一方向回転ダンパ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の一方向回転ダンパを備え、前記軸に連結された第1の部材と、該一方向回転ダンパに連結された第2の部材との間でヒンジ機能を発揮させることを特徴とするヒンジ機構。
【請求項6】
請求項5に記載のヒンジ機構を備え、前記第1及び第2の部材のいずれか一方が開閉対象物への取付部を備えることを特徴とする開閉機構。
【請求項7】
請求項6に記載の開閉機構を備え、前記開閉対象物が整流板であることを特徴とするレンジフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7245(P2011−7245A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150464(P2009−150464)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】