説明

一時染毛料

【課題】頭髪へつきやすく、塗布時に伸びやすく、塗布具から垂れにくく、無機顔料及び有機顔料を併用するにも関わらず経時の粘度上昇が小さい一時染毛料を提供すること。
【解決手段】無機顔料及び有機顔料を含み、有機顔料/無機顔料の含有質量比Xが、0.001<X<0.5又は2.5<X<1000であり、粘度が50〜30000mPa・sである一時染毛料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機顔料及び有機顔料を含有する一時染毛料、特に頭髪用一時染毛料に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪を隠したり個人の好みに合わせ髪色を変化させるために、しばしば頭髪に対して染毛が行われる。染毛料は、酸化染料を用いて頭髪中で発色させて着色する永久染毛料(ヘアカラー)、酸性染料を頭髪に浸透吸着させて着色する半永久染毛料(ヘアマニキュア)、頭髪上に顔料を含む着色皮膜を形成して着色する一時染毛料などに分類される。このうち、一時染毛料は、頭髪へのダメージが少なく、また、洗髪により容易に除去でき簡便に用いることができることから、気軽に毛染めを楽しむことができるものとして好まれている。
【0003】
一時染毛料における顔料としては、無機顔料、有機顔料、又はこれらの組合せが用いられる(例えば、特許文献1及び2参照)。一時染毛料は、頭髪へのつきやすさ、塗布時の伸びやすさ、塗布具からの垂れにくさの観点から、適切な粘度であることが望まれるが、本発明者らは、無機顔料と有機顔料を併用した場合には、保存安定性が低下し、経時で粘度が上昇し、使用感が損なわれる場合があることを見出した。
【0004】
【特許文献1】特開昭63-218614号公報
【特許文献2】特開平09-208436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、頭髪へつきやすく、塗布時に伸びやすく、塗布具から垂れにくく、無機顔料及び有機顔料を併用するにも関わらず経時の粘度上昇が小さい一時染毛料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、一時染毛料での有機顔料/無機顔料の質量比X及び一時染毛料の粘度を特定の値とすることにより上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、無機顔料及び有機顔料を含み、前記有機顔料/前記無機顔料の質量比Xが、0.001<X<0.5又は2.5<X<1000であり、粘度が50〜30000mPa・sである一時染毛料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一時染毛料は、頭髪へつきやすく、塗布時に伸びやすく、塗布具から垂れにくく、無機顔料及び有機顔料を併用するにも関わらず経時の粘度上昇が小さいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられる無機顔料としては、黒酸化チタン、亜鉛華、べんがら、酸化クロム、黒色酸化鉄、コバルトブルー、アルミナホワイト、黄色酸化鉄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、群青、鉛白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等が挙げられ、このうち、黒酸化チタン、べんがら、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄が好ましく、さらに黒酸化チタンが好ましい。
【0010】
無機顔料の含有量は、分散安定性の点から本発明の一時染毛料全量中の0.1〜20質量%であるのが好ましい。更に好ましくは、0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜6質量%である。
【0011】
本発明に用いられる有機顔料としては、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色228号、赤色404号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、赤色405号、橙色401号、黄色401号、青色404号等が挙げられ、このうち、赤色202号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、青色404号が好ましい。
【0012】
有機顔料の含有量は、分散安定性の点から本発明の一時染毛料全量中の0.1〜20質量%であるのが好ましい。
【0013】
本発明の一時染毛料において、無機顔料及び有機顔料の合計量は、頭髪の染色性、白髪の隠蔽性、塗布後の感触の点で、一時染毛料全量中の0.1〜20質量%、更に1〜15質量%、特に5〜12質量%が好ましい。
【0014】
本発明の一時染毛料は、含まれる無機顔料と有機顔料の質量比が、有機顔料/無機顔料の質量比X(有機顔料の無機顔料に対する質量比率)を、0.001<X<0.5又は2.5<X<1000とするものである。このうち、0.005<X<0.3又は2.5<X<100、特に0.01<X<0.2又は3<X<5とするのが、頭髪用、特に白髪用の色を設計する点で好ましい。
【0015】
これらの無機顔料及び有機顔料は、分散媒に共存下で粉砕混合してもよい。この場合頭髪への塗布後の感触および発色のよさの点から、この粉砕混合ののちの無機顔料及び有機顔料の最大粒径が20μm未満、好ましくは10μm未満、さらに好ましくは5μm未満となるようにするのが好ましい。ここで顔料の最大粒径の具体的測定においては、染毛料の液を25℃にて振とうし、均一な状態にした後スライドグラスに一滴滴下し、顕微鏡で観察可能な状態まで液を薄く伸ばした後、室温放置にて乾燥させる。これをニコン社の光学顕微鏡(型番ECLIPSE E800)にて倍率を200倍にし、ポラロイド社の顕微鏡用デジタルカメラ(型番PDMCIIi)と、それに付属するソフト(PDMCII)にて5箇所撮影する。この写真よりスケールを用いて各1箇所の撮影に存在する顔料の最大粒径を測定し、撮影した5箇所の平均を顔料の最大粒径とするものとする。
【0016】
粉砕混合の際に用いられる分散媒としては、適度に粘稠で無機顔料及び有機顔料を分散できれば制限されないが、特にグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ソルビットなどのポリオール類の1種又は2種以上等が挙げられ、分散媒の粘度が10〜10000mPa・sのものが好ましく、特に50〜5000mPa・sのものが好ましい。
【0017】
顔料の粉砕混合は、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機などにより行うことができる。
【0018】
本発明の一時染毛料の粘度は、頭髪へのつきやすさ、塗布時の伸びやすさ、塗布具からの垂れにくさの点で、50mPa・s〜30000mPa・sである。特に本発明の一時染毛料をマスカラブラシによって頭髪に塗布する場合、さらに好ましい粘度は、伸びのよさの点で、60mPa・s〜15000mPa・s、特に70mPa・s〜10000mPa・s、更に80mPa・s〜5000mPa・sである。ここで粘度は、一時染毛料40gをマルエム社のスクリュー管No.7(50cc)に入れ、BM型粘度計(VISCOMETER、TOKIMEC社)を使用し、25℃にて1分間ローターを回転させた後に測定したものとする。ここで測定する一時染毛料が100mPa・s未満の場合には、ローターNo.2を用い回転数60rpmで、100mPa・s以上2000mPa・s未満の場合には、ローターNo.2を用い回転数12rpmで、2000mPa・s以上8000mPa・s未満の場合には、ローターNo.3を用い回転数12rpmで、8000mPa・s以上40000mPa・s未満の場合には、ローターNo.4を用い回転数12rpmで測定するものとする。また、ここでマスカラブラシとは、特開2004-229748号公報の図1のように芯体にブラシ毛を装着させた塗布具をいう。
【0019】
本発明の一時染毛料には、これらのほかに、通常染毛料に用いられる成分を添加することができ、例えば、被膜形成ポリマー;界面活性剤;香料;油脂;難揮発性炭化水素類;シリコーンオイル;水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤;防腐剤;紫外線吸収剤;キレート剤;酸化防止剤;植物抽出物などを例示することができる。
【0020】
被膜形成ポリマーは、髪の表面に被膜を形成して頭髪セット性を示すものである。被膜形成ポリマーとしてはノニオンポリマー、カチオンポリマー、アニオンポリマー及び両性ポリマーが挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ノニオンポリマーとしては、例えばルビスコールK12、17、30、60、80、90(以上、BASF社)、PVP K15、30、60、90(以上、GAF社)等のポリビニルピロリドン;ルビスコールVA28、37、55、64、73、VA37E(以上、BASF社)、PVP/VA E-735、E-635、E-535、E-335、S-630、W-735(以上、GAF社)等のポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;ルビスコールVAP343(BASF社)等のポリビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元コポリマー;Dowtex(ダウ・ケミカル社)等の酢酸ビニル/N-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリンコポリマー等が挙げられる。
【0022】
カチオンポリマーとしては、例えばルビカットFC370、FC550、FC905、HM552、MonoCP(以上、BASF社)等のビニルイミダゾリウムクロライド/ビニルピロリドンコポリマー;セルカットH-100(粘度1000cps)、L-200(粘度100cps)(以上、ナショナル・スターチ社)等のヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド;ガフカット734、755N、755(以上、GAF社)等のビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー;ルビフレックス(BASF社)、コポリマー845、937、958(以上、GAF社)等のポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレートコポリマー;コポリマーVC-713(GAF社)等のポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタムコポリマー;ガフカットHS-100(ISP社)等のビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウムコポリマー;特開平2-180911号公報に記載の水溶性高分子化合物等のアルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレートコポリマー、N-プロピオニルポリエチレンイミン/メチルポリシロキサンコポリマー、アクリル酸アミド/アクリル酸/アルキルメタクリル酸/メトキシポリエチレングリコールコポリマー、アクリル酸アミド/アクリル酸エステルコポリマー等が挙げられる。
【0023】
アニオンポリマーとしては、例えばガントレッツES-225、ES-425、SP-215(以上、GAF社)等のメチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステルコポリマー;レジン28-1310(ナショナル・スターチ社)、ルビセットCA(BASF社)等の酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー;レジン28-2930(ナショナル・スターチ社)等の酢酸ビルニ/クロトン酸/ネオデカン酸ビニルコポリマー;ルビセットCAP(BASF社)等の酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニルコポリマー;ADVANTAGECP(ISP社)等の酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソポロニルアクリレートコポリマー;プラスサイズL53P、L-75CB、L-9540B(互応化学社)、ダイヤホールド(三菱化学社)等の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー;ウルトラホールド8、ウルトラホールド・ストロング(以上、BASF社)、アンフォーマーV-42(ナショナル・スターチ社)等のアクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミドコポリマー;ルビフレックスVBM35(BASF社)等のポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸コポリマー等が挙げられる。
【0024】
両性ポリマーとしては、例えばユカフォーマーR205、R205S、510、SM、301、AMPHOSET、104D、202(以上、三菱化学社)等の(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー;アンフォーマー28-4910、LV-71(以上、ナショナル・スターチ社)等のアクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミドコポリマー等が挙げられる。
【0025】
これらの被膜形成ポリマーのうち、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましく、この中でも(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー(例えば、ユカフォーマー202、三菱化学社)が好ましい。
【0026】
被膜形成ポリマーを用いる場合、その含有量は、本発明の一時染毛料全量中の3質量%〜15質量%とするのが、固着性、髪の感触の点で好ましい。
【0027】
低級アルコールとしてはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられるが、特にエタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0028】
低級アルコールを用いる場合、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、一時染毛料全量中の35質量%〜80質量%が好ましい。
【0029】
これらの成分の本発明の一時染毛料への混合方法は、特に制限されないが、顔料を分散媒共存下で粉砕混合する場合には、顔料の分散混合効率の観点から、あらかじめ分散媒と顔料を粉砕混合し顔料ペーストを得たのち、得られた顔料ペーストにこれらの成分を混合するのが好ましいが、これら全ての成分を一度に混合して粉砕混合を行ってもよい。
【0030】
本発明の一時染毛料の容器としては、当該染毛料を頭髪に適量塗布するに適したものであれば特に制限されないが、好ましくは、簡便性の点から市販されているマスカラ容器のように染毛料が充填された樹脂容器本体および塗布具と一体となったキャップから構成される容器が挙げられる。
【実施例】
【0031】
実施例1〜2及び比較例1〜5
常法に従って、表1に示す組成の各一時染毛料を製造した。得られた各一時染毛料につき、以下の評価方法に従って、「頭髪へのつきやすさ」、「塗布時の伸びやすさ」及び「塗布具からの垂れにくさ」を評価するとともに、経時の粘度変化を調べた。
【0032】
評価方法
1gの日本人トレスに各一時染毛料0.2gをマスカラブラシ(型番PH-1E、篠原社)で塗布し、乾燥後、5人の専門パネラーが評価した。各自1〜5の5段階で「頭髪へのつきやすさ」、「塗布時の伸びやすさ」及び「塗布具からの垂れにくさ」を評価し、それぞれにつき平均値を求めた。その値Yが4<Y≦5なら◎、3<Y≦4なら○、2<Y≦3なら△、1≦Y≦2なら×とした。結果を表1に併せて示す。
【0033】
粘度
得られた一時染毛料を40℃で1ヶ月保存し、保存後の染毛料及び製造直後の染毛料につき粘度を測定した。保存後のものの粘度から製造直後のものの粘度を減じ、得られた値を粘度変化(Δ粘度)とした。結果を表1に併せて示す。なお、粘度の測定は、それぞれの一時染毛料40gをスクリュー管No.7(50cc)(マルエム社)に入れ、BM型粘度計(VISCOMETER、TOKIMEC社)を使用し、25℃にて1分間ローターを回転させた後に行った。また、粘度測定でのローター及び回転数は、一時染毛料の粘度が100mPa・s未満のものは、ローターNo.2、60rpmとし、100mPa・s以上2000mPa・s未満のものは、ローターNo.2、12rpmとし、2000mPa・s以上8000mPa・s未満のものは、ローターNo.3、12rpmとし、8000mPa・s以上40000mPa・s未満のものは、ローターNo.4、12rpmとした。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示すように、実施例1及び2の一時染毛料は、頭髪へつきやすく、塗布時に伸びやすく、塗布具から垂れにくく、無機顔料及び有機顔料を併用するにも関わらず経時の粘度上昇が小さいものであった。
これに対し、比較例1及び4の一時染毛料は、経時による粘度上昇の問題はないものの、初期粘度が低すぎるため、塗布具から垂れやすく、一時染毛料として使用しにくいものであった。また、比較例2、3及び5の一時染毛料は、経時の粘度上昇が大きく、また、頭髪へのつきやすさや塗布時の伸びやすさの点で劣った。比較例5の一時染毛料は、製造直後のものであっても粘度が高く、一時染毛料としては使用できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料及び有機顔料を含み、前記有機顔料/前記無機顔料の質量比Xが、0.001<X<0.5又は2.5<X<1000であり、粘度が50〜30000mPa・sである一時染毛料。
【請求項2】
無機顔料が黒酸化チタンである請求項1記載の一時染毛料。

【公開番号】特開2008−63253(P2008−63253A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240674(P2006−240674)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】