説明

一時湿潤強度向上剤

一時湿潤強度向上剤、より詳細には、ポリマー主鎖を含む一時湿潤強度向上剤であって、前記ポリマー主鎖が共架橋モノマー単位、好ましくはとりわけ水の存在下で可逆性の共架橋モノマー単位、ホモ架橋モノマー単位及びカチオン性モノマー単位を含むもの;このような一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体;このような揮発性材料繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品;並びにこのような繊維性構造体及び/又はこのような衛生ティッシュ製品の製造方法。このような繊維性構造体及び衛生ティッシュ製品は、高い初期湿潤引張強度並びに改善されたフラッシャブル性及び/又は低減された目詰まり特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一時湿潤強度向上剤、より詳しくは、ポリマー主鎖を含む一時湿潤強度向上剤であって、前記ポリマー主鎖が、共架橋モノマー単位、好ましくは、とりわけ水の存在下で可逆性の共架橋モノマー単位、ホモ架橋モノマー単位及びカチオン性モノマー単位を含むもの;前記一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体;前記繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品;並びに前記繊維性構造体及び/又は前記衛生ティッシュ製品の製造方法に関する。このような繊維性構造体及び衛生ティッシュ製品は、高い初期湿潤引張強度並びに改善されたフラッシャブル性及び/又は低減された目詰まり特性を示す。
【背景技術】
【0002】
湿潤強度は、ナプキン類、ペーパータオル類、家庭用ティッシュ類(例えば、顔用ティッシュ及び/又はトイレットペーパー)、使い捨ての病院用衣類などのように、使用中に水性流体と接触する多くの使い捨て衛生ティッシュ製品の望ましい特性である。特に、このような衛生ティッシュ製品は、湿った状態又は濡れた状態で使用できるように十分な湿潤強度を有することが、多くの場合、望ましい。とはいえ、トイレットペーパーなど、一時湿潤強度向上剤を含有する衛生ティッシュ製品は、下水道設備及び/又は汚水浄化槽を目詰まりさせないように、比較的短時間で崩壊できなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、衛生ティッシュ製品における一時湿潤強度向上剤の使用には、使用中の衛生ティッシュ製品の十分な湿潤強度と、使用後の水性環境下で迅速に且つ効率よく崩壊する衛生ティッシュ製品の能力とのバランスをとることが求められている。特に、最初に濡れた時はより高い割合の乾燥強度を維持しているが、更に及び/又はその後で水及び/もしくは他の水溶液に触れると、使用済みの衛生ティッシュ製品が効率よく洗い流され、それによって下水道設備及び/又は汚水浄化槽の目詰まりを軽減するように、前記の初期湿潤強度の、好ましくは迅速に且つ効率よく、実質上の崩壊を示す、衛生ティッシュ製品が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体及び/又はそれから製造される衛生ティッシュ製品が十分なフラッシャブル性及び崩壊特性をとりわけ水及び/又は他の水溶液の存在下で示すように、一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体を提供することによって、上記の要求を満たす。
【0005】
本発明の一態様では、共架橋モノマー単位、ホモ架橋モノマー単位及びカチオン性モノマー単位を含むポリマー主鎖を含む一時湿潤強度向上剤が提供される。
【0006】
本発明の別の態様では、約100℃未満のTgを示す一時湿潤強度向上剤が提供される。Tgは、示差走査熱量計を用いて求められる。一実施形態では、約45℃〜約100℃のガラス転移温度、「Tg」を示す一時湿潤強度向上剤が提供される。別の実施形態では、約50℃〜約95℃のTgを示す一時湿潤強度向上剤が提供される。更に別の実施形態では、約55℃〜約90℃のTgを示す一時湿潤強度向上剤が提供される。更にまた別の実施形態では、約60℃〜約85℃のTgを示す一時湿潤強度向上剤が提供される。
【0007】
本発明の更に別の態様では、本発明に係る一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体が提供される。
【0008】
本発明の更にまた別の態様では、本発明の繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品が提供される。
【0009】
本発明の更に別の態様では、本発明の繊維性構造体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の更に別の態様では、本発明の衛生ティッシュ製品の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の更にまた別の態様では、本発明に係る一時湿潤強度向上剤の製造方法が提供される。
【0012】
従って、本発明は、新規な一時湿潤強度向上剤、そのような一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品、そのような繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の製造方法、そのような一時湿潤強度向上剤の製造方法、並びに先行技術の一時湿潤強度向上剤を含有する繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に比べて改善されたフラッシャブル性及び/又は低減された目詰まりを示す、そのような一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(定義)
本明細書で使用する時、「繊維性構造体」とは、不織繊維から形成される基材を意味する。本発明の繊維性構造体は、湿式法、エアレイド法、スパンボンド法などの任意の好適なプロセスによって製造することができる。繊維性構造体は、衛生ティッシュ製品に組み込むのに好適な1以上のプライの形態であってもよく、及び/又は手術用靴カバーを包含する手術用衣類などの不織布衣類、及び/又は手術用タオル及び拭き取り用品などの不織紙製品の形態であってもよい。
【0014】
本明細書で使用する時、「繊維」は、その見かけの幅より非常に大きい見かけの長さを有する、すなわち長さ対直径の比が少なくとも約10である、細長い微粒子を意味する。本明細書で使用する時、より具体的には、「繊維」は抄紙用繊維を指す。本発明は、多様な抄紙用繊維、例えば天然繊維もしくは合成繊維、又はあらゆるその他の好適な繊維、及びそれらのあらゆる組み合わせなどを使用することを企図する。本発明で有用な抄紙用繊維には、木材パルプ繊維として一般的に既知のセルロース繊維が挙げられる。利用可能な木材パルプとしては、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、及び硫酸塩パルプなどの化学パルプ、並びに例えば、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ、及び化学的に改質したサーモメカニカルパルプを包含するメカニカルパルプが挙げられる。しかしながら、化学パルプから作製されたティッシュシートには触知できる優れた柔軟性が付与されることから、化学パルプが好ましいことがある。落葉樹(以下、「広葉樹材」とも呼ばれる)及び針葉樹(以下、「針葉樹材」とも呼ばれる)の両方に由来するパルプを使用してもよい。広葉樹の繊維及び針葉樹の繊維は、混合することができ、あるいは、層状ウェブを提供するために層状に積層することができる。米国特許第4,300,981号及び同第3,994,771号が、広葉樹及び針葉樹の繊維の層化を開示する目的で、本明細書に参考として組み込まれる。また、上記分類のいずれか又はすべて、並びに初めの抄紙を容易にするために使用された充填剤及び接着剤などの他の非繊維性材料を含有してもよい、リサイクル紙に由来する繊維も、本発明に利用できる。上記に加えて、ポリマー類、具体的にはヒドロキシルポリマー類から作製される繊維及び/又は長繊維を本発明に使用してもよい。好適なヒドロキシルポリマー類の非限定的な例としては、ポリビニルアルコール、デンプン、デンプン誘導体類、キトサン、キトサン誘導体類、セルロース誘導体類、ゴム類、アラビナン類、ガラクタン類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
本明細書で使用する時、「衛生ティッシュ製品」とは、排尿及び排便後の清浄のための拭取り用具(トイレットペーパー)、耳鼻咽喉科学的な(otorhinolaryngolical)排泄物のための拭取り用具(顔用ティッシュ)として、並びに多機能な吸収及び洗浄用途(吸収性タオル)に有用な、柔軟で低密度(すなわち、約0.15g/cm3未満)のウェブを意味する。
【0016】
本明細書で使用する時、「プライ」(単数又は複数)は、任意に他のプライと実質的に隣接した向かい合わせの関係に配置されて、多プライの繊維性構造体を形成する、個々の繊維性構造体を意味する。また、単一の繊維性構造体は、例えばそれ自体の上に折り重ねることにより、効果的に2つの「プライ」又は多「プライ」を形成できると考えられる。
【0017】
本明細書で使用する時、「坪量」は、ポンド/3000フィート2又はg/m2で報告されるサンプルの単位面積当りの重量である。坪量は、特定の面積(m2)の1又はそれ以上のサンプルを用意し、本発明に従う繊維性構造体及び/又はそのような繊維性構造体を含む紙製品のサンプルを、0.01gの最小感度を有する上皿天秤で秤量することにより測定される。天秤は、風防を使用することにより、気流及びその他の外乱から保護される。天秤の表示が一定になった時に、重量を記録する。平均重量(g)及びサンプルの平均面積(m2)を算出する。平均重量(g)をサンプルの平均面積(m2)で除算することにより坪量(g/m2)を算出する。
【0018】
本明細書で使用する時、「重量平均分子量」とは、「コロイド及び界面A、物理化学及び工学の状況」(Colloids and Surfaces A.Physico Chemical & Engineering Aspects)162巻、2000年、107〜121頁に見出されるプロトコルに従って、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定される重量平均分子量を意味する。特に指定しない限り、本明細書の分子量の値はすべて、重量平均分子量を指す。
【0019】
本明細書で使用する時、「共架橋」とは、一時湿潤強度向上剤を繊維に共有結合させる、本発明の一時湿潤強度向上剤と繊維との間の反応を意味する。
【0020】
本明細書で使用する時、「ホモ架橋」とは、一時湿潤強度向上剤が互いに共有結合する、本発明の一時湿潤強度向上剤と本発明の別の一時湿潤強度向上剤又は従来の一時湿潤強度向上剤との間の反応を意味する。
【0021】
本明細書で使用する時、「求電子性部分」とは、求核性部分との間で共有結合を形成するために、求核性部分から電子を受容し得る部分を意味する。
【0022】
本明細書で使用する時、「求核性部分」とは、繊維性構造体の製造プロセス中及び/もしくは衛生ティッシュ製品の製造プロセス中、並びに/又は本発明の一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体及び/もしくは衛生ティッシュ製品の貯蔵及び/もしくは使用中に、通常経験される化学的及び/又は物理的条件下で、求電子性部分と共有結合を形成し得る部分を意味する。
【0023】
本発明で使用する時、「不安定な共有結合」とは、水及び/又は水性流体の存在下で可逆的である共有結合を意味する。不安定な共有結合の非限定的な例は、ヒドロキシル部分とアルデヒド部分との反応によって形成されるヘミアセタール結合である。
【0024】
本明細書で使用する時、「安定な共有結合」とは、水及び/又は水性流体の存在下で可逆的ではない共有結合を意味する。安定な共有結合の非限定的な例は、アミド部分とアルデヒド部分との反応によって形成されるアミドール結合である。
【0025】
本明細書で使用する時、「非求核性部分」とは、繊維性構造体の製造プロセス中及び/もしくは衛生ティッシュ製品の製造プロセス中、並びに/又は本発明の一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体及び/もしくは衛生ティッシュ製品の貯蔵及び/もしくは使用中に、通常経験される化学的及び/又は物理的条件下で、求電子性部分と反応して共有結合を形成することができない部分を意味する。
【0026】
本明細書で使用する時、「崩壊」とは、湿潤引張強度の損失割合(percent loss)を意味する。
【0027】
(繊維性構造体/衛生ティッシュ製品)
本発明の繊維性構造体(ウェブ)は、単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品に組み込むことができる。
【0028】
繊維性構造体は、クレーピング、及び/又はミクロ収縮、及び/又は急速移送(rush transferring)などによって短縮されていてもよく、あるいはクレーピングされないもののように短縮されていなくてもよく、またクレーピングドクターブレードを有する円筒形の乾燥機からクレーピングされても、クレーピングドクターブレードを使用せずに円筒形の乾燥機から取り出されても、又は円筒形の乾燥機を用いずに製造されてもよい。
【0029】
本発明の繊維性構造体は、紙、特に従来のフェルト圧縮ティッシュペーパー、パターン圧縮ティッシュペーパー、及び嵩高な非圧縮ティッシュペーパーを包含するが、これらに限定されない衛生ティッシュペーパー製品に有用である。ティッシュペーパーは、均質な構造又は多層構造であってもよく、これらから作製されるティッシュペーパー製品は、単プライ構造又は多プライ構造であってもよい。ティッシュペーパーは、好ましくは約10g/m2〜約120g/m2の坪量と、約0.60g/cc以下の密度を有する。好ましくは、坪量は約35g/m2未満であり、密度は約0.30g/cc以下である。最も好ましくは、密度は、約0.04g/cc〜約0.20g/ccである。
【0030】
繊維性構造体は、空気通過乾燥繊維性構造体、密度差繊維性構造体、湿式繊維性構造体、エアレイド繊維性構造体、従来の繊維性構造体及びこれらの混合物からなる群から選択されてよい。
【0031】
繊維性構造体は、単層の初期の繊維性ウェブを作り出す繊維性完成紙料、又は多層の初期の繊維性ウェブを作り出す繊維性完成紙料から製造することができる。
【0032】
本発明の繊維性構造体及び/又はそのような繊維性構造体を含む紙製品は、約59g/cm(150g/インチ)より大きい、及び/又は約78g/cm(200g/インチ)〜約394g/cm(1000g/インチ)、及び/又は約98g/cm(250g/インチ)〜約335g/cm(850g/インチ)の総乾燥引張強度を有してもよい。
【0033】
本発明の繊維性構造体及び/又はそのような繊維性構造体を含む紙製品は、約9g/cm(25g/インチ)より大きい、及び/又は約11g/cm(30g/インチ)〜約79g/cm(200g/インチ)、及び/又は約59g/cm(150g/インチ)〜約197g/cm(500g/インチ)の総湿潤引張強度を有してもよい。
【0034】
本発明の繊維性構造体を製造するための、非限定的で好適なプロセスは、複数のセルロース繊維及び湿潤強度剤を含む完成紙料を準備する工程、前記完成紙料から繊維性構造体を形成する工程、及び前記繊維性構造体を少なくとも約40℃の温度及び約5%未満の湿分含量まで加熱/乾燥する工程を含む。
【0035】
(繊維性構造体向上剤)
繊維性構造体/衛生ティッシュ製品が、本明細書で記載するように、従来の繊維性構造体/衛生ティッシュ製品に比べて改善された湿潤強度特性を示すのであれば、当業者に公知の湿潤強度向上剤を包含する任意の繊維性構造体/衛生ティッシュ製品向上剤を本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に組み込むことができる。
【0036】
本発明の一時湿潤強度向上剤は、任意の種類の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品構造物において使用できる。これらには、次のものが挙げられる:限定されないが、米国特許第3,301,746号(サンフォード(Sanford)及びシスン(Sisson)、1987年1月31日発行)、米国特許第3,974,025号(エアーズ(Ayres)、1976年8月10日発行)、米国特許第4,191,609号(トロカン(Trokhan)、1980年3月4日発行)、米国特許第3,821,068号(ショー(Shaw)、1974年6月28日発行)、米国特許第3,573,164号(フライドバーグ(Friedberg)ら、1971年3月30日発行)、及び米国特許第3,994,771号(モーガン(Morgan)ら、1976年11月30日発行)に開示されているようなパターン圧縮ティッシュペーパー(前記特許はすべて本明細書に参考として組み込まれる);限定されないが、米国特許第3,812,000号(サルバッチ(Salvucci)ら、1974年5月21日発行)及び米国特許第4,208,459号(ベッカー(Becker)ら、1980年6月17日発行)に開示されているような非圧縮型の非パターン圧縮ティッシュペーパー(前記特許はいずれも本明細書に参考として組み込まれる);並びに湿式ウェブを高温で圧縮し、前記ウェブを脱水及び乾燥させることによって通常製造される、当該技術分野において周知の従来のティッシュペーパー。
【0037】
本発明の一時湿潤強度向上剤は、広く様々な紙及び紙製品に有用である。本明細書で使用する時、「紙」及び「紙製品」という用語は、木材パルプ繊維などの自然源に由来してよい繊維性セルロース材料、並びにポリマー主鎖に結合されたヒドロキシル基を有することを特徴とする他の繊維性材料を含有する、シート状の主要部及び成形品を包含する。これらには、ガラス繊維、及びヒドロキシル基で変性された合成繊維が包含される。セルロース繊維が好ましい。加えて、本発明は、セルロース繊維、又はヒドロキシル置換されたポリマー主鎖を有する他の繊維と、当該技術分野で公知の他の繊維性もしくは非繊維性材料との組み合わせから製造される紙を包含する。本発明の紙製品は、セルロース繊維を(乾燥シート製品を基準として)、好ましくは少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約85重量%含有する。好適な非繊維性向上剤は、ヤング、「繊維調製及びアプローチフロー(Fiber Preparation and Approach Flow)」、パルプ及び紙の化学及び化学技術(Pulp and Paper Chemistry and Chemical Technology)、第2巻、881〜882頁に記載されており、前記文献を参考として本明細書に組み込む。
【0038】
本発明の一時湿潤強度向上剤は、トイレットペーパー、顔用ティッシュ、及びペーパータオルのように、セルロース繊維を含有する不織ティッシュペーパー製品に特に有用である。これら製品は、通常は、約8g/m2〜約65g/m2の坪量、及び約0.03g/cm3〜約0.60g/cm3の密度を有する。これらは、当該技術分野に公知のいかなる技術によっても製造することができる。
【0039】
繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の形成において、本発明の一時湿潤強度向上剤は、好ましくは、一時湿潤強度向上剤が習慣的に添加される抄紙プロセスの任意の時点で希釈水溶液として添加される。
【0040】
前記一時湿潤強度向上剤は、通常は、約3.5〜約8.0の範囲内のpH値において水性環境下でセルロース繊維によって容易に吸収される。前記湿潤強度向上剤は、このpH範囲内で繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に湿潤強度を発現させることができる。
【0041】
通常は、本発明の一時湿潤強度向上剤は、その湿潤強度を、室温と、紙を通常は、乾燥又は空気通過乾燥させる温度(87℃〜121℃(190°F〜250°F))の両方において、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に発現させる。
【0042】
本出願人は理論に縛られることを望まないが、本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品における湿潤強度は、本発明の一時湿潤強度向上剤がセルロースと結合した時に形成するヘミアセタール結合の形成によって(共架橋)、及び1つのセルロース繊維に結合している一時湿潤強度向上剤が、別の繊維に結合している別の一時湿潤強度向上剤のヒドロキシル部分と結合する場合に形成するヘミアセタール結合によって(ホモ架橋)、生じると考えられている。湿潤強度を失わせるためには、これら2つの結合を切断しなければならない。これら結合の相対数を制御することによって、濡れた時の前記セルロース製品の湿潤引張強度及び引張強度崩壊速度を制御することができる。
【0043】
本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の形成において、本発明の一時湿潤強度向上剤は、一時湿潤強度向上剤が習慣的に添加される抄紙プロセスの任意の時点で希釈水溶液として添加することができる。このような非繊維性向上剤は、参考として組み込まれる、ヤング、「繊維調製及びアプローチフロー(Fiber Preparation and Approach Flow)」、パルプ及び紙の化学及び化学技術(Pulp and Paper Chemistry and Chemical Technolog)、第2巻、881〜882頁に記載されている。
【0044】
本発明の一時湿潤強度向上剤は、繊維性構造体製造機(すなわち、抄紙機)内の繊維性スラリー及び/又はインラインに適用することができ、及び/又は完成紙料に適用することができ、並びに/あるいは初期の繊維性ウェブ及び/又は本発明の繊維性構造体及び/もしくは衛生ティッシュ製品に、抄紙機での製造時に又はその後で、濡れている間(すなわち、最終乾燥前)又は乾いた状態(すなわち、最終乾燥後)のどちらかに適用することができる。一時湿潤強度向上剤を付与するための適用方法としては、初期の繊維性ウェブへの直接噴霧、あるいは前記ウェブを一時湿潤強度向上剤と接触させる、多孔性のあるワイヤー及び/又は布地及び/又はベルトとの接触、例えば、噴霧及び/又は浸漬及び/又はスロット押出成形及び/又は刷毛塗りによるものが挙げられる。
【0045】
前記繊維の約0.005重量%〜約2重量%の一時湿潤強度向上剤が添加されると、十分な量の初期湿潤強度が、本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に与えられる。通常は、前記繊維の約0.1%〜約0.3%の一時湿潤強度向上剤を添加する場合、及び30モル%〜約85モル%のホモ架橋モノマー単位が前記一時湿潤強度向上剤中に存在する場合に、良好な結果、すなわち、5分で約50%及び30分で約80%の引張強度崩壊が達成される。このホモ架橋モノマー単位の添加される濃度が低い場合、経時的な湿潤引張強度崩壊量が不十分である。85%より多くの非求核性モノマー単位が存在する場合、本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は良好な初期湿潤強度を示さない。
【0046】
本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品で使用するのに好適な一時湿潤強度向上剤の非限定例としては、本明細書で記載される一時湿潤強度向上剤が挙げられる。
【0047】
(一時湿潤強度向上剤)
本発明の繊維性構造体で使用するのに好適な一時湿潤強度向上剤の非限定例は、一般に、約20,000〜約400,000、及び/又は約50,000〜約400,000、及び/又は約70,000〜約400,000、及び/又は約70,000〜約300,000、及び/又は約100,000〜約200,000の重量平均分子量を有する。
【0048】
本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の形成において、一時湿潤強度向上剤は、存在する場合、一時湿潤強度向上剤が習慣的に添加される抄紙プロセスのいずれかの時点で希釈水溶液として添加されることができる。このような非繊維性向上剤は、参考として組み込まれる、ヤング、「繊維調製及びアプローチフロー(Fiber Preparation and Approach Flow)」、パルプ及び紙の化学及び化学技術(Pulp and Paper Chemistry and Chemical Technolog)、第2巻、881〜882頁に記載されている。
【0049】
1つの実施形態では、本発明の繊維性構造体は、約0.005重量%〜約5重量%、及び/又は約0.1重量%〜約2重量%、及び/又は約0.1重量%〜約1重量%の繊維を含んでいる。
【0050】
本発明の一時湿潤強度向上剤は、本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に、湿潤引張り強度特性及び湿潤引張り崩壊特性を付与する。
【0051】
高い重量平均分子量(すなわち、300,000を超える重量平均分子量)を有する一時湿潤強度向上剤は、消費者の目的にとっては許容できないほどゆっくりと崩壊する場合があることが見出された。それらは、5分後に35〜45%よりも良好な、及び/又は30分後に50〜65%よりも良好な湿潤引張り強度崩壊速度を達成しない場合がある。
【0052】
更に、極端に低い重量平均分子量(すなわち70,000未満の重量平均分子量)を有する一時湿潤強度向上剤は、非常に低い湿潤強度を有する場合があり、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品のための一時湿潤強度向上剤として最適ではない場合があることが見出された。
【0053】
本発明に従う一時湿潤強度向上剤は次式を有し:
【0054】
【化1】

式中、A(共架橋モノマー単位上に存在する部分)は、独立して、求電子性部分であり、その非限定例には次のものが挙げられ:
【0055】
【化2】

Z(ホモ架橋モノマー単位上に存在する部分)は、独立して、前記求電子性部分と不安定な共有結合を形成できる求核性部分であり、その非限定例としては次のものが挙げられ:
【0056】
【化3】

且つXは、独立して、−O−、−NH−、又は−NCH3−であり;R1及びR2は、独立して、置換もしくは非置換脂肪族基であり;Y1、Y2、及びY3は、独立して、−H、−CH3、又はハロゲンであり;Qは、カチオン性部分であり;且つWは、前記求電子性部分と安定な共有結合を形成しない非求核性部分もしくは求核性部分である。Wに関する部分の非限定例としては、水溶性窒素複素環式部分及び/又は水溶性カルボン酸部分が挙げられる。
【0057】
aのモルパーセントは、約1%〜約47%、好ましくは約5%〜約30%の範囲であり、bのモルパーセントは、約0%〜約60%、好ましくは約0%〜約45%の範囲であり、cのモルパーセントは、約10%〜約90%、好ましくは約30%〜約80%の範囲であり、且つdは、約1%〜約40%、好ましくは約2%〜約20%、より好ましくは約5%〜約12%の範囲である。
【0058】
特に明確に指定しない限り、a、b、c、且つdに対する値は、本発明の一時湿潤強度向上剤のポリマー主鎖におけるモノマー単位の平均数に基づいたモルパーセント値であるものとする。
【0059】
本発明の一時湿潤強度向上剤のポリマー主鎖のモノマー単位は、本明細書に記載されるモルパーセンテージ範囲に対応する比率でポリマー全体に渡って不規則に分布されている。
【0060】
モノマー単位の各部類は、単一のモノマーを包含してもよく、その部類内の2つ以上の異なるモノマーの組み合わせを包含してもよい。モノマー単位の部類内の各モノマー単位のモルパーセントは、独立に選択されてよい。
【0061】
a.共架橋モノマー単位
本発明の一時湿潤強度向上剤の共架橋モノマー単位は求電子性部分を含み、次の構造を有するモノマーから誘導することができ:
【0062】
【化4】

式中、Y1及びAは、上記に定義された通りである。Aが次のものである場合:
【0063】
【化5】

1は、置換又は非置換、分枝状又は線状脂肪族基であることができる。脂肪族基は、好ましくはメチレン又はC2〜C18鎖、より好ましくはメチレン又はC2〜C7鎖、さらにより好ましくはメチレン又はC2鎖を含む。好ましくは、R1が置換されている場合、その置換基(類)はそのアルデヒド部分に関するα−メチレン位に電子求引性官能基を包含する。好適な電子求引性基としては、塩素、フッ素、及び臭素などのハロゲン類;−NHCOR’(式中、各R’は、独立して、置換又は非置換、分枝状又は線状C1〜C12脂肪族基である)のようなアミド類;ヒドロキシル基;アルコキシ基、好ましくはC1〜C8アルキル鎖を有するアルコキシ基;シアノ基、例えば、−CN;及びニトロ基、例えば、−NO2が挙げられるが、これらに限定されない。アルデヒド官能基は、任意に、当該技術分野で公知の技術によって重合時に化学的に保護されることができる。
【0064】
好適な共架橋モノマー単位の非限定例としては、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、アクロレイン、メタクロレイン、グリオキシル化アクリルアミド、3,3−ジメトキシプロピルアクリルアミド、3,3ジエトキシプロピルアクリルアミド、3,3−ジメトキシプロピルメタクリルアミド、2,2−ジメトキシ−1−メチルエチルアクリレート、3,3−ジメトキシプロピルメタクリレート、2−(アクリロイルアミノ)エタノールジメチルアセタール、2−(メタクリロイルアミノ)プロパナールジメチルアセタール、5−(アクリロイルアミノ)ペンタナールジメチルアセタール、8−(アクリロイルアミノ)オクタナールジメチルアセタール、及び3−(N−アクリロイル−N−メチルアミノ)プロパナールジメチルアセタールが挙げられる。N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミドが最も好ましい。他の好適なモノマーは、米国特許第3,410,828号(ケキッシュ(Kekish)、1986年11月12日発行)及び米国特許第3,317,370号(ケキッシュ、1967年5月2日発行)に開示されており、両方の特許を参考として本明細書に組み込む。
【0065】
b.ホモ架橋モノマー単位
本発明の一時湿潤強度向上剤のホモ架橋モノマー単位は、求電子性部分(すなわち共架橋モノマー単位上に存在するアルデヒド部分)と不安定な共有結合を形成できる求核性部分を含む。この不安定な共有結合の結果として、その求核性部分は、それらのうちの少なくとも1つが本発明の一時湿潤強度向上剤である2つ以上の一時湿潤強度向上剤を、1つの一時湿潤強度向上剤上に存在する求核性部分と別の一時湿潤強度向上剤上に存在する求電子性部分の間に形成される不安定な共有結合を介して、互いに架橋することができる。故に、換言すれば、本発明の一時湿潤強度向上剤のみを含む混合物が、上記のように、求核性部分を介して互いに架橋されてもよく、又は本発明の一時湿潤強度向上剤と他の従来の一時湿潤強度向上剤の混合物が、本発明の一時湿潤強度向上剤上に存在する求核性部分を介して互いに架橋されてもよい。
【0066】
好適な求核性部分の非限定例は、ヒドロキシル含有部分である。
【0067】
本発明の一時湿潤強度向上剤のホモ架橋モノマー単位、すなわち式IにおいてZが結合されているモノマー単位は、次の構造を有するモノマーから誘導することができ:
【0068】
【化6】

式中、Y3及びZは、上記で定義された通りである。Zが、次のものである場合:
【0069】
【化7】

2は、置換又は非置換、分枝状又は線状脂肪族基であることができる。脂肪族基は、好ましくはC2〜C18鎖、より好ましくはC2〜C7鎖、さらにより好ましくはC2〜C4鎖を含む。Zが−OHである場合、ホモ架橋モノマー単位中のヒドロキシル基は、当該技術分野で周知の技術によって重合時に化学的に保護される必要がある。
【0070】
好適なホモ架橋モノマー単位の非限定例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリルモノ−メタクリレート、グリセリルモノ−アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノ−メタクリレート、ソルビトールメタクリレート、メチル2−ヒドロキシメチルアクリレート、3−メチルブタノール−2メタクリレート、3,3−ジメチルブタノール−2メタクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、2−アクリルアミドグリコール酸、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、及びアクリルアミドトリスヒドロキシメチルメタンが挙げられる。
【0071】
ホモ架橋モノマー単位のさらなる非限定例としては、次式を有するポリ(エチレングリコール)アクリレートが挙げられ:
【0072】
【化8】

式中、nは、2〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜30の整数であり、次式を有するホモ架橋モノマー単位が挙げられる:
【0073】
【化9】

c.カチオン性モノマー単位
カチオン性モノマー単位は、重合後に本発明の一時湿潤強度向上剤に正電荷を付与するあらゆる重合可能なモノマーから誘導することができる。カチオン性モノマー単位は、水に溶解された場合に正に帯電することがあり、正に帯電するのが好ましい。好適な対イオンとしては、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、サルフェート、メチルサルフェート、ホスフェートなどを挙げることができる。
【0074】
好適なカチオン性モノマー単位の非限定例としては、3−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2−ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(p−ビニルフェニル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリメチル(p−ビニルベンジル)アンモニウムクロリド、p−ジメチルアミノエチルスチレン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−メチルアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート(2-methylacrloyloxyethyltrimethyl ammonium methylsulfate)、及び3−アクリルアミド−3−メチルブチルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0075】
本発明の好適なカチオン性モノマー単位のさらなる非限定例としては、次のものが挙げられる:
【0076】
【化10】

d.非求核性及び/又は求核性モノマー単位
求電子性部分(すなわち共架橋モノマー単位上に存在するアルデヒド部分)と安定な共有結合を形成しない非求核性及び/又は求核性モノマー単位(Wを含有するモノマー単位)は、任意に、本発明の一時湿潤強度向上剤に組み込まれることができる。
【0077】
非求核性モノマー単位は、次の構造を有するモノマーから誘導することができ:
【0078】
【化11】

式中、W及びY2は、上記で定義された通りであるが、Y2は、好ましくはHである。好ましくは、Wは、親水性である。Wが疎水部分である場合、組み込まれる量(b)は、非水溶性であるコポリマーを生じ得るレベルよりも低くなければならない。
【0079】
好適な非求核性モノマー単位の非限定例としては、窒素複素環式部分を含有するモノマー単位、例えばビニルオキサゾリドン類、ビニルイミダゾール類、ビニルイミダゾリン類、ビニルピリジン類、及びN−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドンなどのようなビニルピロリドン類が挙げられる。
【0080】
モノマー単位出発試薬として有用な他の具体的な窒素複素環としては、N−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリジン、N−ビニル−2−オキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。これら窒素複素環類のうち好ましいのは、ビニルピロリドン類である。
【0081】
非求核性親水性モノマー単位の他の非限定例は、N,N−ジメチルアクリルアミド及びメトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレートである。
【0082】
非求核性疎水性モノマー単位の非限定例としては、アルキル、特にC1〜C4、アクリレート及びメタクリレートエステル類及びスチレン類が挙げられる。
【0083】
好適な非求核性モノマー単位の非限定例としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソ−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソ−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、α−メチルスチレン、ベンジルアクリレート、及びエチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0084】
1つの実施形態では、非求核性疎水性モノマー単位はブチルアクリレートを包含する。
【0085】
求電子性部分と安定な共有結合を形成しない求核性モノマー単位の非限定例としては、カルボン酸が挙げられる。好適なカルボン酸の非限定例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ビニル酢酸、ビニルプロピオン酸、クロトン酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、これらの塩類、及びこれらの混合物からなる群から選択されてよい、C38モノカルボン酸類及びC48ジカルボン酸類が挙げられる。
【0086】
より好ましくは、そのC38モノカルボン酸類、C48ジカルボン酸類、これらの塩類、及びこれらの混合物は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸からなる群から選択されてよい。
【0087】
驚くべきことに、一時湿潤強度向上剤、特に一時湿潤強度向上剤、より詳細にはブチルアクリレートなどの非求核性モノマー単位及び/又はポリ(エチレングリコール)アクリレート部分を含むホモ架橋モノマー単位を含む一時湿潤強度向上剤を含む繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品では、例えば、その繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の湿潤引張り強度へのクレーピングの悪影響が最小限に抑えられ、並びに/あるいは本明細書に記載されるもの以外の一時湿潤強度向上剤を含有する繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品と比較して、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の柔軟性が改善されるということが見出された。
【0088】
理論に束縛されるものではないが、本発明の一時湿潤強度向上剤は、従来の一時湿潤強度向上剤よりも低いTgを示し、それ故、結果としてクレーピングプロセス時の破砕が回避されるものと考えられる。クレーピングプロセス時に破砕しないことによって、こうした一時湿潤強度向上剤を含み、特にこの一時湿潤強度向上剤が約100℃未満のTgを示す繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品における湿潤引張り強度の損失が、軽減され、又は阻止される。
【0089】
本発明の一時湿潤強度向上剤は、バルク、溶液、エマルション、又は懸濁液重合を包含する多種多様な技術によって作製することができる。重合方法及び重合のための技術は、高分子科学技術百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Technology)、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)(ニューヨーク)、第7巻、361〜431頁(1967年)、及びカーク・オスマー工業化学百科事典(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第3版、第18巻、740〜744頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)(ニューヨーク)、1982年に概ね記載されており、これらの両方を参考として本明細書に組み込む。ソレソン,W.P.(Sorenson,W.P.)及びキャンベル,T.W.(Campbell,T.W.)、高分子化学の調製方法(Preparative Methods of Polymer Chemistry)、第2版、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)(ニューヨーク)、1968年、248〜251頁も、本発明のための一般的な反応技術として参照し、本明細書に参考として組み込む。好ましくは、一時湿潤強度向上剤は、フリーラジカル共重合によって、水溶性反応開始剤を使用して製造される。好適なフリーラジカル反応開始剤としては、熱的反応開始剤、レドックス対、及び光化学反応開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。レドックス及び光化学反応開始剤は、約30℃(86°F)より低い温度で開始される重合プロセスのために好ましい。こうした反応開始剤は、本明細書に参考として組み込まれる、カーク・オスマー工業化学百科事典(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)(ニューヨーク)、第13巻、355〜373頁(1981年)に概ね記載されている。30℃以下でラジカルを与えることのできる典型的な水溶性反応開始剤には、過硫酸カリウム/硝酸銀、及びアスコルビン酸/過酸化水素などのレドックス対が挙げられる。好ましい方法では、約40℃(104°F)より高い温度で行われる重合プロセスにおいて熱的反応開始剤を利用する。40℃(104°F)以上でラジカルを与えることのできる水溶性反応開始剤が使用できる。これらには、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい方法の1つでは、水溶性の出発モノマーが水性アルコール溶媒中60℃(140°F)で、反応開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドを使用して重合される。溶媒は、典型的には、重合反応媒体のゲル化を防止するために少なくとも約10体積%のアルコールを含有しなければならない。このような反応に使用するのに好適なアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールなどであるが、これらに限定されない低分子量アルコールが挙げられる。
【0090】
別の技術は、米国特許第3,317,370号(ケキッシュ(Kekish)、1967年5月2日発行)、及び米国特許第3,410,828号(ケキッシュ、1968年11月12日発行)に記載されているような、溶液重合であり、これらの特許は両方とも本明細書に参考として組み込まれる。こうしたプロセスに従い、アクロレイン、又は他のアルデヒド系モノマーが、非求核性水溶性窒素複素環式重合可能モノマー及びレドックス反応開始剤系と共に共重合される。次にコポリマーは、そのコポリマーを水溶性アミン又はアミン四級化物と反応させることによってカチオン性となされる。アミン四級化物類を包含する有用なアミン類としては、一級、二級、及び三級アミン類、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン;又は前記のアミン類のいずれかの部分的にもしくは完全に四級化された誘導体類;ヒドラジド類及びその四級化物類、例えばベタインヒドラジドクロリド、N−N−ジメチルグリシンヒドラジド、非対称ジメチルヒドラジド類;ポリマー類、例えば、尿素とポリアルキレンポリアミン類、グアニジン類、ビグアニド類、グアニル尿素類、モノ及びポリヒドロキシポリアミン類並びにそれらの四級化物等との反応によって形成されるポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない。このエマルション共重合法を用いる場合、分子量を本明細書に提示した範囲内となるように制御することが必要である。このための好適な方法を以下で説明する。
【0091】
一般に、一時湿潤強度向上剤の重量平均分子量が減少されると、初期湿潤強度は小さくなり、湿潤強度崩壊が速くなる。本発明の一時湿潤強度向上剤は、少なくとも約20,000、好ましくは少なくとも約70,000の分子量を有するべきである。分子量の上限は、以下に更に説明される強度崩壊の望ましいレベルを付与するための向上剤の能力と、パルプスラリーもしくはパルプシートへと適用するための十分に低い粘度並びにこのような高分子量の向上剤の形成に関する技術的な及び経済的な問題のような現実的な考慮点との組み合わせによって制限されることになる。一般に、分子量は、約400,000未満、好ましくは約300,000未満、より好ましくは約200,000未満でなければならない。
【0092】
分子量は当業者には既知のこうした方法、例えば、反応温度を変化させること(温度の増加は典型的には分子量の減少をもたらす)、フリーラジカル反応開始剤の濃度を変化させること、及び連鎖移動剤を利用することによって制御することができる。好適な連鎖移動剤としては、β−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、グリセロール、アセトン、及びイソプロパノールが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な連鎖移動剤としては、参考として本明細書に組み込まれる、高分子便覧(Polymer Handbook)、第2版、J.ブランラップ(J.Brandrup)及びE.H.イマーギュット(E.H.Immergut)、編集者、ワイリー・インターサイエンシーズ(Wiley-Intersciences)(ニューヨーク)、(1975年)、II−57頁〜II−104頁に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
[実施例]
(非限定的な合成例)
(実施例I)
以下の構造を有する、本発明に係る一時湿潤強度向上剤の調製:
【0094】
【化12】

N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド(1.006g、5.807ミリモル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.645g、48.58ミリモル)、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(0.763g、3.46ミリモル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(0.0475g、0.175ミリモル)、2−プロパノール(5mL)、及び水(45mL)を、電磁攪拌棒を入れた250mL丸底フラスコに加える。この溶液をアルゴンで25分間拡散し、次にフラスコの口に、アルゴンマニホールドに接続されたガス導入アダプターを取り付ける。フラスコを油浴中、60℃で20時間加熱する。このポリマーは、アセタール保護基を有することになる。少量の分析試料をゲル浸透クロマトグラフィー及びプロトンNMR分光法のために確保し、その後、水(75mL)及び1N HCl(14mL)を加える。溶液をアルゴン下、40℃で4時間加熱して保護基を加水分解する。室温まで冷却した後、溶液を1N NaOHでpH5に調整し、次に水で16時間透析する(Mwカットオフ = 3,500)。このポリマーの重量平均分子量は、典型的に約140,000となり、またa、c、且つdはそれぞれ、約9%〜約11%、約83%〜約85%、及び約5%〜約7%となる。このポリマーのTgは、典型的に約77℃となる。
【0095】
(実施例II)
以下の構造を有する、本発明に係る一時湿潤強度向上剤の調製:
【0096】
【化13】

N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド(61.54g、0.3553モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(330.01g、2.842モル)、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(78.41g、0.3552モル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(2.891g、10.7ミリモル)、2−プロパノール(230mL)、及び水(2.83L)を、機械的攪拌器、温度プローブ及びガス導入アダプターを取り付けた12Lの三口丸底フラスコに加える。この溶液にアルゴンを30分間拡散し、次いでアルゴン下で一定の攪拌を行いながら室温から55℃まで加熱し、この時点で反応が発熱反応となる。反応がもはや発熱性でなくなるまで、反応温度を約58℃〜約65℃に維持する。更に20時間、溶液を60℃に加熱する。このポリマーは、アセタール保護基を有することになる。実施例Iに記載した通りに、分析試料を確保して特性を調べる。減圧下で2−プロパノールを除去し、次いで粘稠な溶液を水(5.74L)の入った22L三口丸底フラスコに移し、次に濃HCl(77mL)を加える。溶液を窒素下で、40℃で4時間加熱して保護基を加水分解する。室温まで冷却した後、NaOHで溶液をpH5に調整する。このポリマーの重量平均分子量は、典型的に約160,000となり、a、c、且つdはそれぞれ、典型的に、約7%〜約11%、約80%〜約83%、及び約9%〜約11%となる。このポリマーのTgは、典型的に約60℃となる。
【0097】
(実施例III)
以下の構造を有する、本発明に係る一時湿潤強度向上剤の調製:
【0098】
【化14】

N−ビニルピロリンジノン(N-Vinylpyrrolindinone)(202.60g、1.823モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(70.55g、0.6076モル)、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(67.07g、0.3038モル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(8.23g、3.03ミリモル)、2−プロパノール(525mL)、及び水(2.1L)を、機械的攪拌器、温度プローブ、及びガス導入アダプターを取り付けた5Lの三口丸底フラスコに加える。この溶液を、アルゴンで30分間拡散し、次にアクリルアミド(21.59g、0.3037モル)を加える。溶液をアルゴン下で一定の攪拌を行いながら室温から58℃まで加熱すると、この時点で反応が発熱性となる。反応がもはや発熱性でなくなるまで、反応温度を約58℃〜約60℃に維持する。更に20時間、溶液を60℃に加熱する。実施例Iに記載した通りに、分析試料を確保して特性を調べる。減圧下で2−プロパノールを除去し、次いでグリオキサール(40%溶液44.07g、0.3037モル)を加える。10% NaOHを加えて溶液をpH8に8時間維持し、その後室温で一晩攪拌する。次に、1N HClを加えて溶液をpH5に調整する。このポリマーの重量平均分子量は、典型的に約150,000となり、a、b、c、且つdはそれぞれ、典型的に、約8%〜約11%、約59%〜約61%、約19%〜約21%、及び約9%〜約11%となる。このポリマーのTgは、典型的に約98℃となる。
【0099】
(実施例IV)
以下の構造を有する、本発明に係る一時湿潤強度向上剤の調製:
【0100】
【化15】

N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド(45.71g、0.2369モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(214.55g、1.8477モル)、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(58.27g、0.2640モル)、n−ブチルアクリレート(33.83g、0.2682モル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(2.147g、7.917ミリモル)、2−プロパノール(152mL)、アセトン(650mL)、及び水(1.48L)を、機械的攪拌器、温度プローブ、及び還流凝縮器を取り付けた5L三口丸底フラスコに加える。この溶液にアルゴンを30分間拡散し、次いでアルゴン下で一定の攪拌を行いながら室温から55℃まで加熱し、この時点で反応が発熱反応となる。反応がもはや発熱性でなくなるまで、反応温度を約58℃〜約60℃に維持する。更に20時間、溶液を60℃に加熱する。このポリマーは、アセタール保護基を有することになる。実施例Iに記載した通りに、分析試料を確保して特性を調べる。減圧下で2−プロパノール及びアセトンを除去し、次いで粘稠な溶液を水(2.9L)の入った12L三口丸底フラスコに移し、次に濃HCl(49mL)を加える。溶液を窒素下で、40℃で4時間加熱して保護基を加水分解する。室温まで冷却した後、NaOHで溶液をpH5に調整する。このポリマーの重量平均分子量は、典型的に約92,000となり、a、b、c、且つdは、典型的にそれぞれ、約9%〜約11%、約9%〜約11%、約69%〜約71%、及び約9%〜約11%となる。このポリマーのTgは、典型的に約75℃となる。
【0101】
(実施例V)
以下の構造を有する、本発明に係る一時湿潤強度向上剤の調製:
【0102】
【化16】

N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド(0.997g、5.76ミリモル)、N−ビニルピロリジノン(1.925g、17.32ミリモル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(0.339g、2.92ミリモル)、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(0.639g、2.89ミリモル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(0.0778g、0.287ミリモル)、2−プロパノール(5mL)、及び水(20mL)を、電磁攪拌棒を入れた100mL丸底フラスコに加える。この溶液をアルゴンで25分間拡散し、次にフラスコの口に、アルゴンマニホールドに接続されたガス導入アダプターを取り付ける。フラスコを油浴中、60℃で20時間加熱する。このポリマーは、アセタール保護基を有することになる。実施例Iに記載した通りに、分析試料を確保して特性を調べ、次に溶液を、水(55mL)の入った250mL丸底フラスコ移す。1N HCl(6.5mL)を加え、溶液をアルゴン下において40℃で4時間加熱して、保護基を加水分解する。室温まで冷却した後、溶液を1N NaOHでpH5に調整し、次に水で16時間透析する(Mwカットオフ = 3,500)。このポリマーの重量平均分子量は、典型的に約260,000となり、a、b、c、且つdはそれぞれ、典型的に、約18%〜約20%、約59%〜約61%、約9%〜約11%、及び約9%〜約11%となる。このポリマーのTgは、典型的に約177℃となる。
【0103】
(実施例VI)
以下の構造を有する、本発明に係る一時湿潤強度向上剤の調製:
【0104】
【化17】

N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド(29.00g、0.1674モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(149.70g、1.289モル)、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(36.96g、0.1674モル)、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(18.84g、0.0502モル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(1.37g、5.05ミリモル)、2−プロパノール(250mL)、及び水(1.42L)を、オーバーヘッド攪拌器及び温度プローブを取り付けた5L三口丸底フラスコに加え、溶液をアルゴンで30分間拡散した。フラスコの3つ目の口に、アルゴンマニホールドに接続されたガス導入アダプターを取り付けた。加熱マントルを用いて、溶液を58℃に加熱した。反応がもはや発熱性でなくなるまで、反応温度を約58℃〜約60℃に維持する。更に20時間、溶液を58℃に加熱する。このポリマーは、アセタール保護基を有することになる。実施例Iに記載した通りに、分析試料を確保して特性を調べる。減圧下で2−プロパノールを除去し、次いで粘稠な溶液を水(1.74L)の入った12L三口丸底フラスコに移し、次に濃HCl(30mL)を加える。溶液を窒素下で、40℃で4時間加熱して保護基を加水分解する。室温まで冷却した後、NaOHで溶液をpH4に調整する。このポリマーの重量平均分子量は、典型的に約121,000となり、a、c1、c2、且つdはそれぞれ、典型的に、約9%〜約11%、約2%〜約4%、約76%〜約78%、及び約9%〜約11%となる。このポリマーのTgは、典型的に約67℃となる。
【0105】
(試験方法)
(崩壊%(% Decay)試験方法)
a.サンプル調製−手抄き紙)
サンプル繊維構造体がない場合には、崩壊%(% Decay)を試験するためにサンプル手抄き紙を調製することができる。手抄き紙は、100%未叩解ノーザン・ソフトウッド・クラフト(NSK)から、NSKとユーカリとの混合物から、又は所望されるような他の繊維から形成することができる。NSK、又は他の繊維を水中に分散させた後、一時湿潤強度樹脂を離解されたパルプに加え、そのスラリーを1〜60分の範囲の一定時間攪拌する。手抄き紙は、次のことを除いては本質的にTAPPI標準T205に従って作製される:
(1)シートをポリエステルワイヤ上で形成し、圧搾ではなく吸引によって脱水する;
(2)初期ウェブを真空によってポリエステル抄紙布地へと移動させる;
(3)シートを次にロータリードラム乾燥機上で蒸気により乾燥させる。
【0106】
b.試験
1.試験される繊維性構造体又は衛生ティッシュ製品の11.33cm(4.5インチ)幅×10.16cm(4インチ)長さのストリップを用意する。2.54cm(1インチ)幅のサンプルストリップをその繊維性構造体又は衛生ティッシュ製品から切断する。
【0107】
2.温度23±3℃(73±4°F)及び相対湿度50±10%にコンディション調整された室内で、サンプルストリップ[2.54cm(1インチ)幅]を電子引張り試験機、スウィング・アルバート・インストルメント・カンパニー(Thwing Albert Instrument Company)から市販されているEJA引張り試験機型番1376−18に取り付ける。2.54cm/分(1インチ/分)のクロスヘッドスピードで引張り試験機を作動させる。引張り装置を、水平ロッドがクランプ面と平行になり及び他の点ではクランプに対して対称に配置されるように、引張り試験機の下方クランプ内で固定する。下方クランプの位置を、ロッドの水平軸が上方クランプよりも正確に2.54cm(1インチ)低くなるように調節する。
【0108】
3.液体容器に、その最上面から0.3175cm(1/8インチ)の位置までカルシウムイオンを23ppm、マグネシウムイオンを7ppm、及び重炭酸ナトリウムを67ppm含有する標準的な水道水を満たす。測定用サンプルストリップを湿潤引張り装置中のロッドの下に通す。サンプルストリップの両端を一緒に配置し、緩みを取り除いて上方クランプを締める。サンプルストリップを、水平ロッド及び上方クランプに関して中心に配置する。液体容器を持ち上げてサンプルストリップのループ状の端部を、少なくとも1.9cm(3/4インチ)の深さまで浸漬する。液体容器を所定位置に持ち上げてから液体容器を所定位置に保持したままの状態で、正確に5秒後に、引張り試験機を係合させた。荷重を記録する。湿潤引張り強度はg/2.54cm(g/インチ)の単位で表される。
【0109】
【数1】

湿潤引張り強度を機械方向(MD)及び機械横方向(CD)に対して計算する。
【0110】
総湿潤引張り強度(TWT)=平均湿潤引張り強度(MD)+平均湿潤引張り強度(CD)
4.次に、サンプルストリップを上記の工程3で記載したようにインテレクト(Intelect)500に挟む。前記液体容器をその一番上の位置まで持ち上げて、試験片のループ状の端部を少なくとも1.9cm(3/4インチ)の深さまで標準的な水道水に浸漬する。液体容器を所定の位置に持ち上げてから5分後に、湿潤引張り荷重を再び読み取る。
【0111】
【数2】

5.サンプルストリップを標準的な水道水(tap wate)に5分間ではなく30分間浸漬すること以外は、工程4を繰り返す。崩壊%(% Decay)を次のように計算する:
【0112】
【数3】

本発明の非限定的な実施形態を例示するために、実施例I〜Vの一時湿潤強度樹脂及び先行技術の湿潤強度向上剤、パレッツ(Parez)(登録商標)(バイエル・ケミカルズ社(Bayer Chemicals))を含む手抄き紙を本明細書に記載したように調製して、崩壊試験法で説明したようにして、初期湿潤引張強度及び崩壊%を試験した。結果を以下に示す:
【0113】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー主鎖を含む一時湿潤強度向上剤であって、前記ポリマー主鎖が、共架橋モノマー単位、ホモ架橋モノマー単位、及びカチオン性モノマー単位を含むことを特徴とする、一時湿潤強度向上剤。
【請求項2】
前記一時湿潤強度向上剤が、
以下の式を有し、
【化1】

式中:Aが、
【化2】

であり、
Zが、
【化3】

であり、
Xが、−O−、−NH−、又は−NCH3−であり、R1及びR2が、置換又は非置換脂肪族基であり:Y1、Y2、及びY3が、独立して、−H、−CH3、又はハロゲンであり;Qが、カチオン性モノマー単位であり;且つWが、求電子性部分と安定な共有結合を形成しない非求核性部分又は求核性部分であり、ここでaのモル百分率が、1%〜47%であり、bのモル百分率が、0%〜70%であり、cのモル百分率が、10%〜90%であり、且つdのモル百分率が、1%〜40%であり、好ましくは、aが、5%〜30%であり、bが、0%〜60%であり、cが、30%〜80%であり、且つdが、2%〜20%であり;且つ前記一時湿潤強度向上剤の重量平均分子量が、少なくとも70,000であり、好ましくは前記重量平均分子量が、70,000〜400,000である、請求項1に記載の一時湿潤強度向上剤。
【請求項3】
前記式中、Aが、
【化4】

であり、R1がC2〜C7脂肪族鎖から構成される、請求項2に記載の一時湿潤強度向上剤。
【請求項4】
前記式中、Zが、
【化5】

であり、R2がC2〜C4脂肪族鎖である、請求項2に記載の一時湿潤強度向上剤。
【請求項5】
前記式中、Zが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリルモノ−メタクリレート、グリセリルモノ−アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノ−メタクリレート、ソルビトールメタクリレート、メチル2−ヒドロキシメチルアクリレート、3−メチルブタノール−2メタクリレート、3,3−ジメチルブタノール−2メタクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、2−アクリルアミドグリコール酸、及びアクリルアミドトリスヒドロキシメチルメタンからなる群より選択される、請求項4に記載の一時湿潤強度向上剤。
【請求項6】
前記式中、Wが、ビニルピロリドン類、ビニルオキサゾリドン類、ビニルイミダゾール類、ビニルイミダゾリン類、N,N−ジアルキルアクリルアミド類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、メトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート類、及びカルボン酸類からなる群より選択される、請求項2に記載の一時湿潤強度向上剤。
【請求項7】
前記式中、Wが、ビニルピロリジノンであり、Zが、2−ヒドロキシエチルアクリレートであり、Aが、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、アクロレイン、メタクロレイン、3,3−ジメトキシプロピルアクリルアミド、3,3−ジエトキシプロピルアクリルアミド、3,3−ジメトキシプロピルメタクリルアミド、2,2−ジメトキシ−1−メチルエチルアクリレート、3,3−ジメトキシプロピルメタクリレート、2−(アクリロイルアミノ)エタナールジメチルアセタール、2−(メタクリロイルアミノ)プロパナールジメチルアセタール、5−(アクリロイルアミノ)ペンタナールジメチルアセタール、8−(アクリロイルアミノ)オクタナールジメチルアセタール、及び3−(N−アクリロイル−N−メチルアミノ)プロパナールジメチルアセタールから選択される、請求項2に記載の一時湿潤強度向上剤。
【請求項8】
前記一時湿潤強度向上剤が、100℃未満のTgを示すことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の一時湿潤強度向上剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の一時湿潤強度向上剤を含む、繊維性構造体。
【請求項10】
前記繊維性構造体が、前記繊維性構造体の0.005重量%〜5重量%の一時湿潤強度向上剤を含む、請求項9に記載の繊維性構造体。
【請求項11】
請求項9及び10のいずれか一項に記載の繊維性構造体を含む、単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品。
【請求項12】
請求項9及び10のいずれか一項に記載の繊維性構造体を含む、手術用衣類。
【請求項13】
a)繊維性完成紙料を準備する工程と;
b)前記繊維性完成紙料を多孔性の紙層形成用表面上に堆積させて初期の繊維性ウェブを形成する工程と;
c)繊維性構造体が形成されるように前記初期の繊維性ウェブを乾燥させる工程と;及び
d)前記繊維性完成紙料及び/又は前記初期の繊維性ウェブ及び/又は前記繊維性構造体にポリマー主鎖を含む一時湿潤強度向上剤を付与する工程と、前記ポリマー主鎖が、共架橋モノマー単位、ホモ架橋モノマー単位、及びカチオン性モノマー単位を含むことを特徴とし、
を含む、請求項9及び10のいずれか一項に記載の繊維性構造体の製造方法。
【請求項14】
衛生ティッシュ製品における、請求項9及び10のいずれか一項に記載の繊維性構造体の使用。
【請求項15】
a)共架橋モノマー単位;ホモ架橋モノマー単位及びカチオン性モノマー単位を準備する工程と;
b)前記工程a)からの前記モノマー単位を重合して、一時湿潤強度向上剤
を形成する工程とを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の一時湿潤強度向上剤の製造方法。


【公表番号】特表2007−513260(P2007−513260A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535593(P2006−535593)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/033654
【国際公開番号】WO2005/038132
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】