説明

一組の保持治具及び小型部品保持装置

【課題】保持治具それぞれが小型部品を粘着保持することができると共に、保持治具に粘着保持された多数の小型部品の殆ど全てを他の保持治具に移し替えることのできる一組の保持治具、及び、それを備えた小型部品保持装置を提供すること。
【解決手段】治具本体2A、2Bと、治具本体2A、2Bの表面に設けられて成るところの、粘着保持部5A、5B及び粘着保持部5A、5Bに隣接して設けられた粘着保持不能部4A、4Bを有する弾性部材3A、3Bとを備えた第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bを有する1組の保持治具であって、第1の保持治具1Aにおける第1の粘着保持部5Aは、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着保持部5Bの粘着力よりも大きな粘着力を有し、かつ第2の粘着保持部5Bの表面積に対して101〜110%の表面積を有する一組の保持治具、及び、この一組の保持治具を備えた小型部品保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一組の保持治具及びそれを備えた小型部品保持装置に関し、さらに詳しくは、小型部品を粘着保持することができ、保持治具から他の保持治具に小型部品を所望のように移し替えることのできる一組の保持治具及びそれを備えた小型部品保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサ等の小型部品を製造、搬送等する際に、通常、小型部品を保持する保持治具が用いられる。例えば、小型部品としてチップコンデンサを例に挙げて説明すると、チップコンデンサは長軸を有する角柱形又は円柱形の長軸方向における両端部に電極を形成して成るから、チップコンデンサを製造する際に使用される保持治具には、その表面に粘着保持したチップコンデンサの下端面に電極を形成した後に、そのチップコンデンサを前記保持治具から離脱し、次いで、電極を形成してなる端面を再び保持治具の表面に密着保持させる必要がある。
【0003】
この必要に応える発明として、特許文献1に記載された電子部品チップ用ホルダがある。この特許文献1に記載された電子部品チップ用ホルダは、「互いに対向する第1及び第2の端面を有する電子部品チップを保持するための電子部品チップ用ホルダにおいて、前記電子部品チップ用ホルダは、第1部材と第2部材とを含み、前記第1部材は、前記電子部品チップを保持するための第1の粘着面を備え、前記第2部材は、前記電子部品チップの前記第2の端面に粘着して前記電子部品チップを保持するための、前記第1の粘着面が与える粘着力よりも強い粘着力を与える第2の粘着面を備えることを特徴とする」(特許文献1の請求項1参照。)。この特許文献1には、一方の電子部品チップ用ホルダにおける第2の粘着面の粘着力を、他方の電子部品チップ用ホルダにおける第1の粘着面の粘着力よりも、大きく設定する必要のあることが、記載されている(特許文献2の[0026]及び[0028]欄参照。)。
【0004】
ところで、近年、小型部品はさらに小型化が図られ、小型部品の生産性を向上させる目的で、電子部品チップ用ホルダにおける粘着面には、より多数の小型部品が粘着されて、製造されるようになっている。このように、小型部品がさらに小型化され、粘着面により多数の小型部品が粘着されると、例えば、第1の粘着面に粘着保持させた多数の小型部品を第2の粘着面に移し替えて第2の粘着面に粘着保持させ、しかも第1の粘着面に粘着保持された多数の小型部品の全てを第2の粘着面に移し替えるには、単に第1の粘着面の粘着力と第2の粘着面の粘着力とを相違させるだけでは不十分である。例えば、第1の粘着面に第2の粘着面を正確に重ね合わせることができない場合等には、実際には、いくつかの小型部品が第2の粘着面に移行せず、第1の粘着面に粘着保持されたままになってしまうことがある。したがって、このような場合には、小型部品の生産性を向上させる目的で粘着面に多数の小型部品を保持しても、多数の小型部品を所望のように移し替えることができないことがあるから、かえって小型部品の生産性を低下させるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特許第2682250号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、保持治具それぞれが小型部品を粘着保持することができると共に、保持治具に粘着保持された多数の小型部品の殆ど全てを他の保持治具に移し替えることのできる一組の保持治具、及び、それを備えた小型部品保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、治具本体と、治具本体の表面に設けられて成るところの、粘着保持部及び粘着保持部に隣接して設けられた粘着保持不能部を有する弾性部材とを備えた第1の保持治具及び第2の保持治具を有する一組の保持治具であって、前記第1の保持治具における第1の粘着保持部は、前記第2の保持治具における第2の粘着保持部の粘着力よりも大きな粘着力を有し、かつ、前記第2の粘着保持部の表面積に対して101〜110%の表面積を有することを特徴とする一組の保持治具であり、
請求項2は、前記粘着保持不能部は、前記粘着保持部を包囲するように、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の一組の保持治具であり、
請求項3は、請求項1又は請求項2に記載の一組の保持治具を備えた小型部品保持装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明において、一組の保持治具はそれぞれ、小型部品を粘着保持可能な粘着力を有する粘着保持部を有する弾性部材を備えているから、各保持治具は小型部品を所望のように粘着保持することができる。また、一組の保持治具は、第1の保持治具における第1の粘着保持部が、第2の保持治具における第2の粘着保持部の粘着力よりも大きな粘着力を有し、第2の保持治具における第2の粘着保持部の表面積に対して101〜110%の表面積を有するから、第2の保持治具から第1の保持治具に小型部品を移し替えるときに、第1の保持治具と第2の保持治具との対向位置がずれても、第2の保持治具から第1の保持治具に小型部品を所望のように移し替えることができる。したがって、この発明によれば、保持治具それぞれが小型部品を所望のように粘着保持することができると共に、第2の保持治具に粘着保持された多数の小型部品の殆ど全てを第1の保持治具に移し替えることができる一組の保持治具、及び、それを備えた小型部品保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の一例である一組の保持治具は、治具本体2と、粘着保持部5及び粘着保持部5に隣接して設けられた粘着保持不能部4を有する弾性部材3とを備えた図1に示される保持治具1を2種有している。すなわち、一組の保持治具は、図2に示されるように、第1の保持治具1A(図2(a)参照。)と、第2の保持治具1B(図2(b)参照。)とを備え、例えば、第2の保持治具1Bに粘着保持された小型部品を、第1の保持治具1Aに移し替えて第1の保持治具1Aに小型部品を粘着保持させる。
【0010】
なおここで、小型部品は、例えば、コンデンサチップ(これはチップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品又は未完成品を含み、その寸法は、例えば、長さが2.0mm以下、幅が1.2mm以下、及び、厚さが1.2mm以下の範囲内にある。この発明に係る一組の保持治具は、例えば、このような小型部品の製造、搬送等に有利に使用される。
【0011】
第1の保持治具1Aは、図2(a)に示されるように、第1の治具本体2Aと、第1の治具本体2Aの表面に形成された第1の弾性部材3Aとを有する。また、第2の保持治具1Bは、図2(b)に示されるように、第2の治具本体2Bと、第2の治具本体2Bの表面に形成された第2の弾性部材3Bとを有する。
【0012】
第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bは同じ構造を有していても、また、相違する構造を有していてもよい。いずれにしても第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bは、その表面にそれぞれ第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bを設けることができる限り、各種の材質で形成することができる。例えば、第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bは、図1及び図2に示されるように、方形に形成されて成る盤状体とすることができ、その一例としての寸法は、120mm×120mm×0.8mmを挙げることができる。
【0013】
第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bを形成する材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂、ガラス繊維、ガラス板等のセラミックスが挙げられ、これらの中でも、金属又は樹脂が好適である。
【0014】
第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bにおける第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bを形成する面に、第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bとの密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0015】
第1の弾性部材3Aは、図2(a)に示されるように、第1の粘着保持部5Aと、この粘着保持部5Aに隣接して設けられた第1の粘着保持不能部4Aを有する。第2の弾性部材3Bは、図2(b)に示されるように、第2の粘着保持部5B及びこの粘着保持部5Bに隣接して設けられた第2の粘着保持不能部4Bを有する。第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bは、図1及び図2に示されるように、方形のシート状に形成されて成り、その一例としての寸法は、110mm×110mm×1.8mmを挙げることができる。
【0016】
第1の粘着保持部5A、及び、第2の粘着保持部5Bは、小型部品を粘着保持する。したがって、第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bは、それぞれ小型部品を粘着保持させることのできる粘着力を有している。具体的には、第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bは、通常、7〜50g/mmの粘着力を有しているのがよい。
【0017】
一方、第1の粘着保持不能部4A、及び、第2の粘着保持不能部4Bは、第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bに粘着保持された小型部品を、ブレード等によって、確実に取り外すのに必要である。したがって、第1の粘着保持不能部4A及び第2の粘着保持不能部4Bは、ぞれぞれ、第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bの粘着力よりも弱い粘着力であって、小型部品以外の部品を粘着保持させることができても、小型部品を粘着保持させることのできない粘着力、具体的には、通常、1g/mm以下の粘着力を有しているのがよく、又は、小型部品を粘着しない非粘着性、具体的には、実質的に粘着力を有していないのがよい。特に、第2の粘着保持不能部4Bは、小型部品を粘着しない非粘着性を有しているのがよい。
【0018】
第1の弾性部材3Aは、図1及び図2(a)に示されるように、第1の粘着保持不能部4Aが、第1の粘着保持部5Aを包囲するように、第1の粘着保持部5Aの周縁部に隣接して、設けられている。また、第2の弾性部材3Bも同様に、図1及び図2(b)に示されるように、第2の粘着保持不能部4Bが、第2の粘着保持部5Bを包囲するように、第2の粘着保持部5Bの周縁部に隣接して、設けられている。すなわち、図2に示されるように、第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bは、粘着保持部5と粘着保持不能部4とが同様のパターンで形成されている。第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bが同様のパターンで形成されていると、第2の保持治具1Bから第1の保持治具1Aに小型部品を移し替えるときに、第1の粘着保持部5Aと第2の粘着保持部5Bとが正確に対応するから、第2の保持治具1Bに粘着保持された小型部品を第1の保持治具1Aに所望のように移し替えることができる。
【0019】
第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bは、第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bの表面上に設けられていればよいが、第2の保持治具1Bから第1の保持治具1Aに小型部品を移し替えるときに、第1の粘着保持部5Aと第2の粘着保持部5Bとが正確に対応するように、第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bの表面に設けられて成るのがよい。このように第1の弾性部材3A及び第2の弾性部材3Bが設けられていると、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとの対向位置がずれても、また、保持治具1A及び1Bにおける粘着保持部5の面積寸法精度が悪くても、第2の保持治具1Bに粘着保持された小型部品の殆ど全てを第1の保持治具1Aに所望のように移し替えることができる。
【0020】
特に、第2の保持治具1Bから第1の保持治具1Aに小型部品を移し替えるときに、第2の弾性部材3Bにおける第2の粘着保持部5Bの表面全体を第1の粘着保持部5Aが完全に覆うように、すなわち、第2の保持治具1Bから第1の保持治具1Aに小型部品を移し替えるときに、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを対向させた状態において、第2の粘着保持部5Bの表面全体を第1の粘着保持部5Aが完全に覆うように、第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bがそれぞれ、第1の治具本体2A及び第2の治具本体2Bの表面に設けられて成るのがよい。このように第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bが設けられていると、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとの対向位置が大きくずれても、また、保持治具1A及び1Bにおける粘着保持部5の面積寸法精度が著しく悪くても、第2の保持治具1Bに粘着保持された小型部品の殆ど全てを第1の保持治具1Aに所望のように移し替えることができる。
【0021】
第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bは前記範囲の粘着力を有し、かつ、第1の粘着保持部5Aは第2の粘着保持部5Bよりも大きな粘着力を有している。第1の粘着保持部5Aが第2の粘着保持部5Bよりも大きな粘着力を有していると、第2の保持治具1Bに粘着保持された小型部品を第1の保持治具1Aに容易に移し替えることができる。具体的には、第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bは、通常、23〜50g/mm、7〜23g/mmの粘着力を有しているのがよい。
【0022】
さらに、第1の粘着保持部5Aと第2の粘着保持部5Bとは、15〜30g/mmの粘着力の差を有しているのが、好ましい。第1の粘着保持部5Aと第2の粘着保持部5Bとの粘着力の差が前記範囲内にあると、第2の保持治具1Bに粘着保持された多数の小型部品を第1の保持治具1Aに好適に移し替えることができる。第1の粘着保持部5Aと第2の粘着保持部5Bとの粘着力の差は18〜22g/mmであるのがより好ましい。
【0023】
ここで、弾性部材3における粘着保持部5及び粘着保持不能部4の粘着力は、次のようにして求める。次の粘着力の測定方法は、出願人により案出されたので、信越ポリマー法と称する。まず、弾性部材3を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱をなしたステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。次いで、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に弾性部材3を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で弾性部材3の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を、25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を弾性部材の粘着力とする。なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAl MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0024】
前記した粘着力をそれぞれ有する第1の粘着保持部5A及び第2の粘着保持部5Bは、それらの表面積が次の関係を有する。すなわち、第1の粘着保持部5Aは、第2の粘着保持部5Bの表面積に対して101〜110%の表面積を有する。前記した粘着力を有する第1の粘着保持部5Aが、前記した粘着力を有する第2の粘着保持部5Bの表面積に対して前記範囲の表面積を有すると、第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bそれぞれが小型部品を所望のように粘着保持することができると共に、第2の保持治具1Bから第1の保持治具1Aに小型部品を移し替えるときに、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとの対向位置がずれても、また、保持治具1A及び2Bにおける粘着保持部5の面積寸法精度が悪くても、第2の保持治具1Bに粘着保持された多数の小型部品の殆ど全てを第1の保持治具1Aに所望のように移し替えることができる。なお、この発明において、第1の粘着保持部5Aにおける表面積の上限は、特に限定されず、110%を超えて、例えば、120%でも、130%でもよい。しかし、第1の粘着保持部5Aが第2の粘着保持部5Bの表面積に対して110%を超える表面積を有すると、多数の小型部品の移し替えは確実に実行することができるが、第2の保持治具1Bにおける粘着保持部5Bの大きさが小さくなり、粘着保持される小型部品数が少なく、生産性の向上を図ることができない場合がある。第2の保持治具1Bに粘着保持された多数の小型部品の殆ど全てを第1の保持治具1Aに、より一層確実に移し替えることができると共に、生産性の向上を図ることができる点で、第1の粘着保持部5Aは、第2の粘着保持部5Bの表面積に対して、102〜108%の表面積を有するのが好ましく、103〜106%の表面積を有するのが特に好ましい。
【0025】
この発明における弾性部材3は前記粘着力を有する限り様々の弾性材料で形成されることができる。好適な弾性材料としては、例えば、粘着性組成物、有利には耐熱性を有する粘着性シリコーンゴム組成物を硬化してなる硬化物が挙げられ、粘着性シリコーンゴム組成物としては、具体的には、シリコーン生ゴム(a)と、架橋成分(b)と、粘着成分(c)と、触媒(d)と、シリカ系充填材(e)とを含有する組成物を挙げることができる。
【0026】
前記シリコーン生ゴム(a)としては、例えば、付加反応により架橋可能なアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、下記(1)式で示されるポリオルガノシロキサンを好適に用いることができる。
(3−a)SiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(3−b) (1)式
ただし、(1)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、Xはアルケニル含有有機基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数であり、a、b及びmは同時に0とはならない。
【0027】
ここで、Rとしては、炭素数1〜10の前記炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。また、Xで示されるアルケニル基含有有機基としては、炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の炭素二重結合含有炭化水素基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、メタクリロイルメチル基等の(メタ)アクリロイルアルキル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基、ビニルオキシプロピル基等を挙げることができる。
【0028】
シリコーン生ゴム(a)は、オイル状、粘土状の性状を有していてもよく、その粘度は25℃において50mPa・s以上であるのが好ましく、特に100mPa・s以上であるのが好ましい。
【0029】
シリコーン生ゴム(a)は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
前記架橋成分(b)は、シリコーン生ゴム(a)と架橋反応可能な成分であり、例えば、1分子中にSi原子に結合したH原子を少なくとも2個以上、好ましくは3個以上有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(以下、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと称することもある。)を用いることができる。
【0031】
このポリオルガノシロキサンとしては、直鎖状、分枝状、環状のポリオルガノシロキサンの中から適宜に選択して使用することができ、例えば、下記(2)式又は(3)式で示されるポリオルガノシロキサンを好適例として挙げることができる。
HcR(3−c)SiO−(HRSiO)−(RSiO)−SiR(3−d) (2)式
【0032】
【化1】

【0033】
前記(2)式及び(3)式において、Rは前記と同様の1価の炭化水素基であり、同一であっても、異なっていてもよい。また、c、dは0〜3の整数、x、y、sは0以上の整数、rは1以上の整数であり、c、d、xは同時に0とはならず、さらに、x+y≧0である。また、r+s≧3、好ましくは8≧r+s≧3である。
【0034】
これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中でも、オイル状の性状を有し、粘度が25℃において1〜5000mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0035】
架橋成分(b)は、その一種を単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
架橋成分(b)の配合割合は、適宜に選択可能であるが、シリコーン生ゴム(a)がアルケニル基を含有すると共に、架橋成分(b)がSiH結合を含有する場合、シリコーン生ゴム(a)のアルケニル基に対する架橋成分(b)中のSiH結合のモル比が0.5〜20であるのが好ましく、特に1〜15の範囲であるのが好ましい。このモル比が0.5未満では、後述する硬化後の架橋密度が低くなり、弾性部材の形状を保持しにくくなることがある。一方、前記モル比が20を超えると、得られる弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0037】
前記粘着成分(c)は、粘着力を向上するために配合される粘着力向上剤であり、例えば、ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、RSiO1/2単位及びSiO単位(ただし、Rは脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基である。)を含有するものを好適に用いることができる。ここで、Rとしては、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0038】
粘着成分(c)は、一般的に粘着性をより高度に確保するために、シリコーン生ゴム(a)及び架橋成分(b)と共に架橋反応を生じない、又は、生じ難い構造を有するものが好ましい。
【0039】
粘着成分(c)としてポリオルガノシロキサンを用いる場合は、RSiO1/2単位/SiO単位のモル比が0.6〜1.7となるものが好ましい。このモル比が0.6未満では、弾性部材の粘着性が高くなり過ぎ、又はシリコーン生ゴム(a)と相溶し難くなって、分離して粘着性を発現しなくなることがある。一方、前記モル比が1.7を超えると弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0040】
なお、このポリオルガノシロキサンは、Si原子に結合するOH基を含有していてもよく、その場合、OH基含有量が0〜4.0モル%とするのが好ましい。
【0041】
Si原子に結合するOH基を含有するものを用いる場合、シリコーン生ゴム(a)として、下記(4)式に示されるポリオルガノシロキサンを含有するときには、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とが一部縮合反応物を形成していてもよい。
【0042】
(OH)RYSiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(OH) (4)式
ただし、(4)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよく、YはR又はアルケニル基含有有機基である。Xはアルケニル含有有機基である。また、pは1以上の整数、qは100以上の整数である。1価の炭化水素基及びアルケニル基含有有機基は前記したのと同様である。
【0043】
このようなシリコーン生ゴム(a)と粘着成分(c)との縮合反応物を形成するには、トルエン等の溶剤に溶解したシリコーン生ゴム(a)及び粘着成分(c)の混合物を、アルカリ性触媒の存在下で、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0044】
粘着成分(c)は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
この粘着成分(c)は、シリコーン生ゴム(a)/粘着成分(c)の質量比として20/80〜80/20の範囲で用いるのが好ましく、特に、30/70〜70/30とするのが好適である。この範囲を超えて粘着成分(c)が少ないと粘着性が不足し易くなり、一方、多いと弾性部材が硬くなると共に弾性力が強く、弾性部材が変形し難くなり、何れにおいても、小型部品を粘着保持しにくくなることがある。
【0046】
前記触媒(d)は、主として、シリコーン生ゴム(a)と架橋成分(b)との架橋反応を促進する触媒であり、通常、ハイドロサイレーションの触媒として使用されるものであればよく、例えば、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物等が挙げられる。
【0047】
触媒(d)の配合割合は、シリコーン生ゴム(a)と架橋成分(b)との合計質量に対し、白金成分として1〜5,000ppmとするのが好ましく、特に5〜2,000ppmとすることが好適である。配合割合が1ppm未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなって弾性部材の粘着力が低下することがあり、一方、5,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0048】
前記シリカ系充填材(e)は、弾性部材の機械的強度を補強すると共に、弾性部材を構成する成分、特に、粘着性を付与する粘着成分(c)を弾性部材に分散させて、小型部品の確実な粘着保持に寄与する成分である。
【0049】
特に、シリカ系充填材(e)としては、その比表面積が100m/g以上400m/g以下であるのが好適である。比表面積が100m/g以上であれば、弾性部材の引っ張り強度等の機械的強度を向上させることができると共に粘着性を付与する成分が脱離し難くなり、微細な削りカスやのり残りが生じ難くなる。なお、比表面積が400m/gを超えるものは、製造に手間を要し、高価であるため実用的でない。ここで、比表面積はBET吸着法により測定される比表面積である。
【0050】
シリカ系充填材(e)としては、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカであっても、沈降シリカ、シリカゲル等の湿式法により合成されたシリカであってもよい。これらの中でも、比表面積を前記範囲内に調整しやすい点で、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好適である。シリカ系充填材(e)は、必要に応じて、その表面を、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で処理したものを用いてもよい。
【0051】
シリカ系充填材(e)は、一種単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0052】
シリカ系充填材(e)の配合割合は、シリコーン生ゴム(a)と粘着成分(c)との合計100質量部に対して、1〜30質量部とするのが好ましく、5〜20質量部とするのがより好ましい。配合割合が1質量部未満であると、弾性部材の強度が低下して、十分な効果が得られ難くなり、また、使用時にのり残りが発生しやすくなることがある。一方、配合割合が30質量部を超えると、弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0053】
この発明においては、シリコーン生ゴム(a)からシリカ系充填材(e)の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。例えば、前記成分を混合する時の架橋反応を抑制するための反応制御剤を添加することができる。この反応制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられる。この反応制御剤を添加する場合、その配合割合は、シリコーン生ゴム(a)と粘着成分(c)との合計100質量部に対して、0〜5.0質量部とすることができ、特に0.05〜2.0質量部とするのが好ましい。この反応制御剤の配合割合が5.0質量部を超えると粘着性組成物の硬化時に硬化し難くなることがある。
【0054】
また、この反応制御剤の他にも、この発明では、適宜、任意成分を添加することが可能であり、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等の非反応性のポリオルガノシロキサン、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、顔料等を使用することができる。
【0055】
前記粘着性シリコーンゴム組成物は、以上の各成分を混合することにより適宜製造してもよく、また、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、前記シリカ系充填材(e)を含有しない組成物である信越化学工業株式会社製の商品名「KE1214」、「X−40−3098」等の「X−40系」及び「X−34−632A/B」等の「X−34系」組成物等が入手可能である。
【0056】
この発明における弾性部材3は、図1及び図2に示されるように、治具本体2の表面に設けられる。通常の場合、弾性部材3は、次のようにして、治具本体2の表面にシート状に形成される。すなわち、治具本体2の一方の表面に粘着性組成物を積層して金型等にてプレス成形し、又は金型内に治具本体2をインサートして粘着性組成物を金型内に注入してシート状に成形する。シート状に形成された粘着性組成物の厚みは、通常、0.2〜10mmである。治具本体2の表面に設けられた粘着性組成物の硬化は、例えば80〜130℃に3〜40分加熱することにより達成される。もっとも、粘着性組成物の組成等に応じて、硬化条件としての上記温度及び時間が変更されることがある。
【0057】
弾性部材3における粘着保持部5と粘着保持不能部4とは、それぞれ異なる材料で形成されてもよく、同じ粘着性組成物で形成された後、例えば後述する(1)〜(4)に示す処理等が施されて形成されてもよい。粘着保持部5と粘着保持不能部4とがそれぞれ異なる材料で形成される場合には、粘着保持部5は前記粘着性組成物の硬化物で形成され、粘着保持不能部4は弱粘着性材料又は非粘着性材料の硬化物で形成される。弱粘着性材料又は非粘着性材料は、例えば、弱粘着性又は非粘着性のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、これらを含む組成物等が挙げられる。粘着保持部5と粘着保持不能部4とを一体に形成する場合には、例えば、(1)粘着性組成物を前記のようにして硬化させた硬化物の表面にマスキング部材を載置し、粘着保持不能部4を形成する部分にマスキング部材上から照射量を制御して紫外線を照射する処理、(2)粘着保持不能部4を形成する部分に弱粘着性材料又は非粘着性材料を塗布する処理、(3)粘着保持不能部4を形成する部分の表面を粗面化する処理、(4)弱粘着性材料又は非粘着性材料を用いてシート状に成形し、粘着保持部5を形成する部分に強粘着性材料を塗布する処理等が行われる。
【0058】
このように、この発明に係る一組の保持治具によれば、保持治具それぞれが小型部品を所望のように粘着保持することができると共に、第2の保持治具に粘着保持された多数の小型部品の殆ど全てを第1の保持治具に移し替えることができる。
【0059】
次に、この発明の一例である小型部品保持装置10を図面に基づいて説明する。小型部品保持装置10は、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを備え、小型部品を粘着保持すると共に、第2の保持治具1Bから第1の保持治具1Aに小型部品を移し替えることのできる装置である。
【0060】
小型部品保持装置10は、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを含む一組の保持治具を備えた装置であり、その一例として、例えば、図3に示されるように、軌条11、軌条11に沿って運動可能に取り付けられた保持治具変位手段12、保持治具変位手段12から下方に延在する支持アーム13、支持アーム13の先端に設けられた支持部材14、及び、支持部材14に固定された第2の保持治具1Bを有する弱粘着性保持装置20と、軌条11とほぼ直交する軌条15、軌条15に沿って運動可能に取り付けられた保持治具変位手段16、保持治具変位手段16から上方に延在する支持アーム17、支持アーム17の先端に設けられた支持部材18、及び、支持部材18に固定された第1の保持治具1Aを有する強粘着性保持装置30とを少なくとも有する。
【0061】
弱粘着性保持装置20は、図3に示されるように、第2の保持治具1Bが支持部材14に固定され、保持治具変位手段12に支持されて成る。この保持治具変位手段12は、軌条11に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、支持アーム13を上下方向に運動可能に構成されている。さらに、保持治具変位手段12は、軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段12がこのように回転運動可能であると、第2の保持治具1Bの状態を、小型部品を第2の粘着保持部5Bにより懸垂保持する状態(図3参照。)、及び、小型部品を第2の粘着保持部5Bにより立設保持する状態(図示しない。)に所望のように変えることができるようになる。したがって、弱粘着性保持装置20における第2の保持治具1Bは、水平方向及び上下方向に自在に移動可能とされ、さらに、軌条11を中心軸にして回転運動可能とされている。
【0062】
強粘着性保持装置30は、図3に示されるように、第1の保持治具1Aが支持部材18に固定され、保持治具変位手段16に支持されて成る。この保持治具変位手段16は、軌条15に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、支持アーム17を上下方向に運動可能に構成されている。さらに、保持治具変位手段16は、軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段16がこのように回転運動可能であると、第1の保持治具1Aの状態を、小型部品を第1の粘着保持部5Aにより立設保持する状態(図3参照。)、及び、小型部品を第1の粘着保持部5Aにより懸垂保持する状態(図示しない。)に所望のように変えることができるようになる。したがって、強粘着性保持装置30における第1の保持治具1Aは、水平方向及び上下方向に自在に移動可能とされ、さらに、軌条15を中心軸にして回転運動可能とされている。
【0063】
前記保持治具変位手段12及び前記保持治具変位手段16における運動機構は、特に限定されず、例えば、駆動力を発生する駆動手段、例えば、モータと、このモータの出力を軌条11又は15、及び、支持アーム13又は17に伝達する伝達手段、例えば、歯車、ワイヤ等とを備えた運動機構が挙げられる。この運動機構は、通常のパソコン等によって、制御しても、手動で制御してもよい。
【0064】
小型部品保持装置10は、図3に示されるように、軌条11と軌条15が交差する位置近傍で、第2の保持治具1Bと第1の保持治具1Aとが相対向可能となるように、構成されている。これにより、弱粘着性保持装置20における第2の保持治具1Bに粘着保持された小型部品を、強粘着性保持装置30における第1の保持治具1Aに移し替えることができる。
【0065】
次に、小型部品保持装置10を用いたこの発明に係る小型部品の移し替え方法を、小型部品の一例であるチップコンデンサ本体に電極を形成する方法を例にして、説明し、併せてこの小型部品保持装置10の作用について説明する。
【0066】
チップコンデンサは、通常、例えば、四角柱体をなすコンデンサ本体の両端部それぞれに電極が形成されて成る。
【0067】
このようなチップコンデンサを形成するには、まず、図3に示された保持治具変位手段12を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、第2の弾性部材3Bを上側に向けて、例えば、立設配置板等を用いて、第2の粘着保持部5Bに、所定数のチップコンデンサ本体を立設保持させる(図示しない。)。次いで、保持治具変位手段12を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、第2の保持治具1Bを回転させて、図3に示されるように、第2の弾性部材3Bを下側に向けると、第2の粘着保持部5Bに所定数のチップコンデンサ本体(図示しない。)が懸垂保持された状態になる。次いで、保持治具変位手段12を軌条11に沿って水平方向に運動させて、導電ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させ、保持治具変位手段12により支持アーム13を下方向次いで上方向に運動させて、チップコンデンサ本体6の下端部を導電ペースト浴に浸漬させ、第2の粘着保持部5Bに懸垂保持された各チップコンデンサ本体の下端部に電極を形成する。
【0068】
次いで、保持治具変位手段12を軌条11に沿って水平方向に運動させて、第1の保持治具1Aの上方に、第2の保持治具1Bを水平移動させる。次いで、保持治具変位手段12により支持アーム13を下方向に運動させて、第1の保持治具1A向かって、第2の保持治具1Bを下降させる。なお、第1の保持治具1Aはその弾性部材3Aを上側に向けた状態にある(図3参照。)。
【0069】
さらに、第1の保持治具1Aを下降させ、第1の保持治具1Aにおける第1の粘着保持部5Aに、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着保持部5Bに懸垂保持された複数のチップコンデンサ本体の、電極が形成された下端部を、粘着させる。このとき、前記したように、第1の粘着保持部5Aは、第2の粘着保持部5Bよりも表面積が大きく形成されているから、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとの対向位置、すなわち、重なり位置がずれても、また、保持治具における粘着保持部5の面積寸法精度が悪くても、第1の粘着保持部5Aは、第2の粘着保持部5Bの表面全体を覆うように位置し、かつ、第1の粘着保持部5Aは第2の粘着保持部5Bの粘着力よりも大きな粘着力を有しているから、第2の粘着保持部5Bに懸垂保持された小型部品は殆ど全てが第1の粘着保持部5Aに接する。次いで、保持治具変位手段12により支持アーム13を上方向に運動させて、第2の保持治具1Bを上昇させると、第1の弾性部材5Aの粘着力によりチップコンデンサ本体が電極を介して第1の粘着保持部5Aに強固に立設保持される。それ故、第2の粘着保持部5Bからチップコンデンサ本体が離脱し、第1の粘着保持部5Aに保持される。このようにして、第2の保持治具1Bから第1の保持治具1Aにチップコンデンサ本体の殆ど全てを所望のように容易に移し替えることができる。
【0070】
次いで、保持治具変位手段16を軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動させ、第1の保持治具1Aが回転されて、チップコンデンサ本体が懸垂保持された状態にされる。次いで、保持治具変位手段16を軌条15に沿って水平方向に運動させて、第1の保持治具1Aを導電ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させて、前記したのと同様にして、第1の粘着保持部5Aに懸垂保持された各チップコンデンサ本体の下端部に電極を形成する。
【0071】
このようにして、第1の保持治具1Aの粘着保持部5Aには、チップコンデンサ本体の両端部に電極が形成されてなるチップコンデンサが懸垂された状態で粘着保持されている。この第1の保持治具1Aに粘着保持されたチップコンデンサは、第1の粘着保持部5Aの表面上にストリッパ(図示せず。)を摺接することにより、第1の粘着保持部5Aに懸垂保持されていたチップコンデンサが離脱し、落下する。このとき、ストリッパは、第1の弾性部材3Aにおける第1の粘着保持不能部4Aの1つを始点とし、この第1の粘着保持不能部4Aと対向する他の第1の粘着保持不能部4Aを終点とするように、第1の粘着保持部5Aの表面上を摺接する。したがって、ストリッパの終点が第1の粘着保持不能部4Aであるから、この第1の粘着保持不能部4Aの近傍に粘着保持された小型部品はストリッパの摺接により第1の粘着保持不能部4Aの方向に移動され、第1の粘着保持不能部4Aによって粘着保持状態が解除されて、第1の粘着保持部5Aから確実に取り外される。
【0072】
このように、粘着保持部5の表面積が異なる一組の保持治具を備えた小型部品保持装置10は、保持治具それぞれが小型部品を所望のように粘着保持することができると共に、第2の保持治具に粘着保持された多数の小型部品の殆ど全てを第1の保持治具に移し替えることができる。
【0073】
この発明において、保持治具1、治具本体2、弾性部材3、粘着保持不能部4及び粘着保持部5は何れも方形に形成されているが、これらの形状は方形に限定されず、例えば、円形、多角形等に形成されてもよく、また、それぞれが互いに異なる形状に成型されてもよい。また、第1及び第2の保持治具1、治具本体2、弾性部材3、粘着保持不能部4及び粘着保持部5は、それぞれ同一の形状とされているが、第1及び第2の保持治具1等は異なる形状とされてもよい。
【0074】
また、粘着保持不能部4A及び4Bはそれぞれ、粘着保持部5A及び5Bを包囲するように、粘着保持部5A及び5Bの周縁部に隣接して形成されているが、粘着保持不能部4A及び4Bはこのように形成される必要はなく、例えば、粘着保持部5A及び5Bにおける対向する両周縁部に隣接して形成されてもよい。
【0075】
この発明における一組の保持治具は、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとからなるが、一組の保持治具は2種の保持治具に限定されず、例えば、3種以上の保持治具を備えた一組の保持治具とされてもよい。
【0076】
この発明に係る小型部品保持装置10は、第2の保持治具1Bを備えた弱粘着性保持装置20が上方に配置され、第1の保持治具1Aを備えた強粘着性保持装置30が下方に配置されているが、弱粘着性保持装置20と強粘着性保持装置30との配置は特に限定されず、例えば、弱粘着性保持装置20が下方に配置され、強粘着性保持装置30が上方に配置されてもよい。
【0077】
また、小型部品保持装置10は、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを備えているが、小型部品保持装置は2種の保持治具を備えた装置に限定されず、例えば、3種類以上の保持治具を備えた装置とされてもよい。
【0078】
また、小型部品保持装置10においては、軌条11と軌条15とがほぼ直角に交差するように配設されているが、軌条11と軌条15とは略平行に配設され、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを水平方向に運動させて、小型部品の移し替えをしてもよい。
【0079】
さらに、小型部品保持装置10においては、保持治具変位手段12及び保持治具変位手段16は軌条11及び軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動に構成されているが、保持治具変位手段12及び保持治具変位手段16は回転運動をしないように構成されてもよい。この場合には、第2の粘着保持部5Bに小型部品を粘着保持させた第2の保持治具1Bを保持治具変位手段12に支持させ、第1の粘着保持部5Aに小型部品を粘着保持した第1の保持治具1Aを保持治具変位手段16から取り外して、小型部品を第1の粘着保持部5Aから取り外せばよい。
【実施例】
【0080】
120mm×120mm×0.8mmに切り出したステンレス鋼の一方の表面に、前記成分(a)〜前記成分(d)を含有する組成物(商品名「X−34−632A/B」、信越化学工業株式会社製)99質量%と(e)成分としてシリカ系充填材(株式会社龍森製、商品名「クリスタライト」)1質量%との混合組成物を積層して金型等にてプレス成形し、弾性部材を110mm×110mm×1.8mmの厚さを有するシート状に成形した。次いで、成形した弾性部材に、所定の大きさを持つマスキング部材を載置し、紫外線を照射することによって、弾性部材の周縁部に粘着保持不能部を形成し、図1及び図2に示されるような、一辺の長さが100mm、99mm、95mm及び92mmを有する正方形の粘着保持部を有する保持治具I〜IVをそれぞれ作製した。
【0081】
作製した保持治具I〜IVにおける粘着保持部と粘着保持不能部との粘着力を前記した方法により測定したところ、粘着保持部の粘着力は35g/mmであり、粘着保持不能部の粘着力は1g/mmであった。
【0082】
次に、表1に示す保持治具の組み合わせに従って、一組の保持治具を選択し、図3に示される小型部品保持装置を組み立てた。小型部品は、長さが0.6mm、幅が0.3mm、及び、厚さが0.3mmのチップコンデンサを用いた。このチップコンデンサを表1に示す第2の保持治具における粘着保持部に、表1に示す個数をほぼ等間隔で立設保持され、次いで、粘着保持されたチップコンデンサが粘着保持部に懸垂保持されるように第2の保持治具を回転させた(すなわち、図3に示される第2の保持治具1Bと同じ状態である。)。この状態を維持しつつ、第2の保持治具を、表1に示す第1の保持治具に向かって下降させ、第2の保持治具に粘着保持されたチップコンデンサを、第1の保持治具における弾性部材に押圧した。その後、第2の保持治具を第1の保持治具から引き離した。引き離された第2の保持治具における粘着保持部に粘着保持されたまま、第1の保持治具に移し替えられなかったチップコンデンサの数を確認した。この操作を10回行い、その算術平均値から、チップコンデンサが取り残された数を以下のように評価して表1に評価結果を示した。評価は、第2の保持治具に取り残されたチップコンデンサが少ない順に、「◎」、「○」及び「×」の3段階で、行った。なお、評価「×」は、実用可能ではない程度に、チップコンデンサが第2の保持治具に取り残された状態であった。
【0083】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、この発明の一組の保持治具を構成する保持治具の概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明の一実施例である一組の保持治具を示す概略上面図であり、図2(a)は、第1の保持治具1Aを示す概略上面図であり、図2(b)は、第2の保持治具1Aを示す概略上面図である。
【図3】図3は、この発明の一実施例である小型部品保持装置を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 保持治具
2 治具本体
3 弾性部材
4 粘着保持不能部
5 粘着保持部
10 小型部品保持装置
11、15 軌条
12、16 保持治具変位手段
13、17 支持アーム
14、18 支持部材
20 弱粘着性保持装置
30 強粘着性保持装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具本体と、治具本体の表面に設けられて成るところの、粘着保持部及び粘着保持部に隣接して設けられた粘着保持不能部を有する弾性部材とを備えた第1の保持治具及び第2の保持治具を有する一組の保持治具であって、
前記第1の保持治具における第1の粘着保持部は、前記第2の保持治具における第2の粘着保持部の粘着力よりも大きな粘着力を有し、かつ、前記第2の粘着保持部の表面積に対して101〜110%の表面積を有することを特徴とする一組の保持治具。
【請求項2】
前記粘着保持不能部は、前記粘着保持部を包囲するように、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の一組の保持治具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の一組の保持治具を備えた小型部品保持装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−242814(P2007−242814A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61788(P2006−61788)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】