説明

三層麺およびその製造方法

【課題】茹で調理後経時しても、麺表面がソフトで、中心部に生麺の茹で直後特有のコシが残り、コンビニエンスストアーやスーパーなどで販売される調理麺として好適な麺およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】澱粉類を主体とする原材料を用いて得られる外層と、小麦粉を主体としこれに蛋白質を添加した原材料を用いて得られる内層からなる三層麺であって、外層の厚さと内層の厚さの比率が、外層/内層/外層=1.5〜2.5/1/1.5〜2.5の範囲であり、外層に用いる原材料が、タピオカ澱粉を50〜85質量%およびα化澱粉を5〜15質量%含有することを特徴とする三層麺。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層/内層/外層の三層構造を有する三層麺に関する。本発明の三層麺は、茹で調理後経時しても、茹で直後の食感を保持しており、コンビニエンスストアーやスーパーなどで販売される茹で中華麺や茹でうどんなどの調理麺として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアーやスーパーなどで販売されている調理麺は、製造後経時すると澱粉の老化および麺表面と中心部の水分勾配の均一化により、麺全体の硬さが均一になるため、茹であげ直後と比べて表面が硬く、中心部が柔らかくなり、麺にコシがなくなって、もろい食感となっている。そのため、製造後経時しても、麺表面がソフトで、中心部に生麺の茹で直後特有のコシが残るような調理麺が要望されている。
【0003】
一方、麺類の麺質改良方法として、多層麺とすることが従来より提案されている。例えば、特許文献1には、麺線の外層に比較して内層の蛋白含有率を相対的に大きくすることにより、製麺性、ほぐし、復元性、食味食感などを改良した多層麺が記載されている。該文献には、内層と外層の厚さの比については言及されておらず、該文献に図示されている多層麺は、内層の厚さが外層の厚さよりも大きいものである。
また、特許文献2には、麺線の内層に比較して外層の澱粉含有率を相対的に大きくすることにより、製麺性、ほぐし、復元性、食味食感などを改良した多層麺が記載されている。該文献にも、内層と外層の厚さの比については言及されておらず、該文献に図示されている多層麺は、内層の厚さが外層の厚さよりも大きいものである。
また、特許文献3には、蛋白質原料を含有する内層と、澱粉類を外層全体に対して10〜80重量%含有する外層とからなり、内層の厚さが外層の厚さの1.5倍以上である多層麺が記載されている。
しかし、これらの特許文献1〜3に記載されている多層麺は何れも、調理麺の製造後の老化を防止するものではない。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−92646号公報
【特許文献2】特開昭54−92647号公報
【特許文献3】特開平6−7101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、茹で調理後経時しても、麺表面がソフトで、中心部に生麺の茹で直後特有のコシが残り、コンビニエンスストアーやスーパーなどで販売される調理麺として好適な麺およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、外層/内層/外層の三層構造を有する三層麺において、外層と内層の厚比が、調理麺の製造後の老化防止に関与していることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、澱粉類を主体とする原材料を用いて得られる外層と、小麦粉を主体としこれに蛋白質を添加した原材料を用いて得られる内層からなる三層麺であって、外層の厚さと内層の厚さの比率が、外層/内層/外層=1.5〜2.5/1/1.5〜2.5の範囲であり、外層に用いる原材料が、タピオカ澱粉を50〜85質量%およびα化澱粉を5〜15質量%含有することを特徴とする三層麺を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、上記の本発明の三層麺の製造方法として、内層用シート状生地を小麦粉を主体としこれに蛋白質を添加した原材料を用いて調製し、該内層用シート状生地の厚さの1.5〜2.5倍の厚さを有する外層用シート状生地2枚を澱粉類を主体とする原材料を用いて調製し、上記外層用シート状生地2枚の間に上記内層用シート状生地を配置、積層して三層麺とすることを特徴とする三層麺の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の三層麺は、茹で調理後経時しても、麺表面がソフトで、中心部に生麺の茹で直後特有のコシが残り、コンビニエンスストアーやスーパーなどで販売される茹で中華麺や茹でうどんなどの調理麺として好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の三層麺における外層は、タピオカ澱粉を50〜85質量%およびα化澱粉を5〜15質量%含有する澱粉類を主体とする原材料を用いて得られるものである。
上記タピオカ澱粉としては、エーテル化タピオカ澱粉、エーテル化架橋タピオカ澱粉、アセチル化タピオカ澱粉、アセチル化架橋タピオカ澱粉などを用いることもでき、特に、タピオカ澱粉が、エーテル化タピオカ澱粉またはエーテル化架橋タピオカ澱粉であることが好ましい。
これらのタピオカ澱粉およびα化澱粉に加えて、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦粉澱粉、米澱粉、コーンスターチなどのその他の澱粉類を配合することもできる。
【0010】
上記の外層用原材料は、麺の種類に応じてタピオカ澱粉の含有量を調整することが好ましく、例えば、中華麺の場合はタピオカ澱粉の含有量を50〜60質量%の範囲内とするのが好ましく、うどんの場合はタピオカ澱粉の含有量を70〜85質量%の範囲内とするのが好ましい。また、α化澱粉の含有量は、7.5〜12.5質量%の範囲内とするのが好ましい。
上記の外層用原材料中のタピオカ澱粉の配合量が50質量%未満であると、麺表面が硬い食感となりやすく、タピオカ澱粉の配合量が85質量%を超えると、麺表面が柔らかく、くちゃついた食感となりやすい。
また、上記の外層用原材料中のα化澱粉の配合量が5質量%未満であると、麺表面が硬い食感となりやすく、α化澱粉の配合量が15質量%を超えると、麺表面が柔らかく、くちゃついた食感となりやすい。
【0011】
上記の外層用原材料には、上記澱粉の他に、小麦粉、卵白粉、小麦グルテン、アルギン酸およびその塩、増粘多糖類、酵素剤などを、目的とする麺の種類に応じて適宜配合することができる。但し、蛋白質を配合する場合には、外層の蛋白質含有量が内層の蛋白質含有量よりも多くならないようにすることが好ましい。また、小麦粉を配合した方が好ましいが、その配合量は40質量%以下とすることが好ましい。
【0012】
本発明の三層麺における内層は、小麦粉を主体としこれに蛋白質を添加した原材料、好ましくは小麦粉を50〜97質量%および蛋白質を3〜15質量%、より好ましくは小麦粉を70〜90質量%および蛋白質を5〜10質量%配合した原材料を用いて得られるものである。この場合、蛋白質は、上記配合量の範囲内で、内層用原材料中の総蛋白質含量が11〜25質量%となるように配合するのが好ましい。
上記蛋白質としては、小麦グルテン(例えば小麦グルテン粉末)、卵白、全卵、卵黄、大豆蛋白質などが挙げられ、これらのなかでも、小麦グルテンおよび/または卵白を用いることが好ましい。
上記の内層用原材料中の蛋白質の配合量が3質量%未満であると、調理麺のコシが低くなりやすく、蛋白質の配合量が15質量%を超えると、硬さのみが目立ち、弾力性が乏しくなりやすい。
また、上記の内層用原材料中の小麦粉の配合量が50質量%未満であると、麺に十分な硬さを付与することができず、もろくなってしまう。
【0013】
上記の内層用原材料には、上記の小麦粉、蛋白質の他に、澱粉類、米粉、アルギン酸およびその塩、増粘多糖類、酵素剤などを、目的とする麺の種類に応じて適宜配合することができる。
【0014】
本発明の三層麺は、上記の内層用原材料を用いて調製した1本の麺線(内層)の両側に、上記の外層用原材料を用いて調製した2本の麺線(外層)を積層した、外層/内層/外層の三層構造を有するものである。
【0015】
本発明の三層麺は、外層の厚さと内層の厚さの比率が、外層/内層/外層=1.5〜2.5/1/1.5〜2.5の範囲であり、好ましくは外層/内層/外層=1.5〜2.0/1/1.5〜2.0である。
内層の厚さに対する外層の厚さの比が1.5未満であると、麺中心部の硬さが目立ちすぎるため、麺表面のソフト感が感じられない。また、内層の厚さに対する外層の厚さの比が2.5を超えると、麺表面が柔らかすぎて、中心の弾力が感じられなくなる。
【0016】
本発明の三層麺は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、上記の内層用原材料を加水して混捏し、得られた生地を圧延して内層用シート状生地を調製する。一方、上記の外層用原材料を用いて同様にして、外層用シート状生地2枚を調製する。このとき、上記外層用シート状生地は、その厚さが、上記内層用シート状生地の厚さの1.5〜2.5倍となるように調製する。なお、上記外層用シート状生地の厚さは、好ましくは5〜20mm、より好ましくは5〜10mmであり、上記内層用シート状生地の厚さは、好ましくは3〜13mm、より好ましくは3〜7mmである。
【0017】
次いで、上記外層用シート状生地2枚の間に上記内層用シート状生地を配置して積層し、圧延して多層麺帯とした後、該麺帯を切り出して麺線とすることにより、本発明の三層麺が得られる。
【0018】
本発明の三層麺は、内層用原材料および外層用原材料として、それぞれ上記の特定の原材料を使用すること、および、外層用シート状生地の厚さを、内層用シート状生地の厚さの1.5〜2.5倍とすること以外は、通常の多層麺の製造方法と同様にして製造することができる。
【0019】
本発明の三層麺が適用される麺の種類としては、特に制限されるものではなく、中華麺、うどん、きしめん、ひやむぎ、そうめんなどが挙げられ、中でも、中華麺、うどんが特に好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1〜3および比較例1〜4(中華麺)
中力小麦粉100質量部および小麦グルテン粉末5質量部からなる原料粉に、かんすい2質量部および水35質量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、厚さ4mmの内層用シート状生地を得た。また、表1に示す配合の原料粉に、かんすい0.5質量部および水47質量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、厚さ8mmの外層用シート状生地を得た。
上記外層用シート状生地2枚の間に上記内層用シート状生地を配置して積層し、圧延して、外層と内層の厚比が外層/内層/外層=2/1/2の三層麺帯とした後、#18の切り刃を通して、麺線とし、三層中華麺をそれぞれ得た。
【0022】
得られた三層中華麺について、茹で調理後24時間経過後の食感を次のようにして評価した。三層中華麺を茹で歩留(対穀粉)が220%になるように茹でを行い、茹で中華麺を得た。得られた茹で中華麺を24時間冷蔵保存した後、下記評価基準により、パネラー10人に官能評価させた。その結果(パネラー10人の平均点)を表1に示す。
【0023】
評価基準
5点 対照品に比べ、表面がソフト、中心にコシがあり、粘弾性のバランスが極めて良好
4点 対照品に比べ、表面がソフト、中心にコシがあり、粘弾性のバランスが良好
3点 対照品(表面がややソフト、中心にややコシがあり、粘弾性のバランスがやや良好)
2点 対照品に比べ、表面が硬く、中心にコシが無く、粘弾性のバランスがやや悪い
1点 対照品に比べ、表面が硬く、中心にコシが無く、粘弾性のバランスが極めて悪い
なお、対照品は下記の中華麺である。
中力小麦粉70質量部、タピオカ澱粉30質量部、小麦グルテン粉末3質量部、卵白0.5質量部、かんすい1質量部および水38質量部を減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延し、#18の切り刃を通して、麺線の厚みが1.4mmの中華麺を得た。
得られた中華麺を茹で歩留が260%になるように茹でを行い、茹で中華麺を得た。得られた茹で中華麺を24時間冷蔵保存した後、パネラー10人に官能評価させ、その結果を3点とした。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例4〜5および比較例5〜7(うどん)
中力小麦粉70質量部、タピオカ澱粉30質量部および小麦グルテン粉末5質量部からなる原料粉に、食塩3質量部および水35質量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、厚さ5mmの内層用シート状生地を得た。また、表2に示す配合の原料粉に、食塩3質量部および水45質量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、厚さ7.5mmの外層用シート状生地を得た。
上記外層用シート状生地2枚の間に上記内層用シート状生地を配置して積層し、圧延して、外層と内層の厚比が外層/内層/外層=1.5/1/1.5の三層麺帯とした後、#9の切り刃を通して、麺線とし、三層うどんをそれぞれ得た。
【0026】
得られた三層うどんについて、茹で調理後24時間経過後の食感を次のようにして評価した。三層うどんを茹で歩留(対穀粉)が270%になるように茹でを行い、茹でうどんを得た。得られた茹でうどんを24時間冷蔵保存した後、実施例1と同様な評価基準により、パネラー10人に官能評価させた。その結果(パネラー10人の平均点)を表2に示す。
なお、評価基準の対照品は下記のうどんである。
中力小麦粉65質量部、タピオカ澱粉35質量部、小麦グルテン粉末3質量部、食塩5質量部および水38質量部を減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延し、#10の切り刃を通して、麺線の厚みが2.2mmのうどんを得た。
得られたうどんを茹で歩留が260%になるように茹でを行い、茹でうどんを得た。得られた茹でうどんを24時間冷蔵保存した後、パネラー10人に官能評価させ、その結果を3点とした。
【0027】
【表2】

【0028】
実施例6〜8および比較例8(中華麺)
中力小麦粉45質量部、エーテル化タピオカ澱粉50質量部およびα化澱粉5質量部からなる原料粉に、かんすい1質量部および水47重量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、厚さ8mmの外層用シート状生地を得た。また、表3に示す配合の原料粉に、かんすい2質量部および水35質量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、厚さ4mmの内層用シート状生地を得た。
上記外層用シート状生地2枚の間に上記内層用シート状生地を配置して積層し、圧延して、外層と内層の厚比が外層/内層/外層=2/1/2の三層麺帯とした後、#18の切り刃を通して、麺線とし、三層中華麺をそれぞれ得た。
【0029】
得られた三層中華麺について、茹で調理後24時間経過後の食感を実施例1と同様にして評価した。その結果(パネラー10人の平均点)を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
実施例9〜11および比較例9〜10(中華麺)
中力小麦粉45質量部、エーテル化タピオカ澱粉50質量部およびα化澱粉5質量部からなる原料粉に、かんすい1質量部および水47重量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、外層用シート状生地を得た。また、強力小麦粉100質量部および小麦蛋白質5質量部からなる原料粉に、かんすい2質量部および水35質量部からなる溶液を加えて減圧(-0.093MPa) 下で混捏し、圧延して、内層用シート状生地を得た。これらの外層用シート状生地および内層用シート状生地の厚さは、三層中華麺の外層と内層の厚比が表4に示す厚比となるように調製した。
上記外層用シート状生地2枚の間に上記内層用シート状生地を配置して積層し、圧延して、外層と内層の厚比が表4に示す厚比の三層麺帯とした後、#18の切り刃を通して、麺線とし、三層中華麺をそれぞれ得た。
【0032】
得られた三層中華麺について、茹で調理後24時間経過後の食感を実施例1と同様にして評価した。その結果(パネラー10人の平均点)を表4に示す。
【0033】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉類を主体とする原材料を用いて得られる外層と、小麦粉を主体としこれに蛋白質を添加した原材料を用いて得られる内層からなる三層麺であって、外層の厚さと内層の厚さの比率が、外層/内層/外層=1.5〜2.5/1/1.5〜2.5の範囲であり、外層に用いる原材料が、タピオカ澱粉を50〜85質量%およびα化澱粉を5〜15質量%含有することを特徴とする三層麺。
【請求項2】
内層に用いる蛋白質が、小麦グルテンおよび/または卵白である請求項1記載の三層麺。
【請求項3】
タピオカ澱粉が、エーテル化タピオカ澱粉またはエーテル化架橋タピオカ澱粉である請求項1または2記載の三層麺。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の三層麺の製造方法であって、内層用シート状生地を小麦粉を主体としこれに蛋白質を添加した原材料を用いて調製し、該内層用シート状生地の厚さの1.5〜2.5倍の厚さを有する外層用シート状生地2枚を澱粉類を主体とする原材料を用いて調製し、上記外層用シート状生地2枚の間に上記内層用シート状生地を配置、積層して三層麺とすることを特徴とする三層麺の製造方法。

【公開番号】特開2008−29273(P2008−29273A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207640(P2006−207640)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】