説明

三方切換弁

【課題】三方切換弁の切換動作に伴って生じた流体を逃がす配管を外部の配管等に接続する必要がなく、空調装置等に容易に設置可能な三方切換弁を提供する。
【解決手段】密閉空間15とその両側の第1及び第2空間24、25を有する弁本体12と、密閉空間と連通する第1導管20と、互いに隣接して連結されて密閉空間と連通する第2及び第3導管21、22と、第2及び第3導管の各々に連通する開口部18a、18bを有する弁座18と、弁座に摺動可能に配置された弁体17とを備え、第1及び第2空間の圧力差により弁体を一方向又は他方向に摺動させ、第1導管と第2導管との間、又は第1導管と第3導管との間の連通状態を選択的に切り換える主弁11と、第1空間と第2空間との間に圧力差を付与するパイロット弁31とを備える三方切換弁1であって、第1空間又は第2空間から排出された流体を主弁内に導く第4導管46を備える三方切換弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット電磁弁の動作によって主弁を動作させて流体流路を切り換える三方切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイロット電磁弁の動作により主弁の流体流路を一方向から他方向へ切り換える三方切換弁が用いられている。その一例として、特許文献1には、図6に示すような三方切換弁が記載されている。この三方切換弁51は、電磁コイル53への無通電時に、低圧供給キャピラリチューブ55から伝播する低い圧力をキャピラリチューブ65に伝えてポート66を低圧とし、高圧側の管路64と管路63を連通させ、電磁コイル53に通電することで、プランジャ54が電磁コイル53側へ引き込まれ、低圧供給キャピラリチューブ55から伝播する低い圧力をキャピラリチューブ56に伝えてポート57を低圧とし、ポート仕切り板58とポート仕切り板59にかかる圧力差により、弁板60を弁台61に沿って右方向にスライドさせ、閉じていた管路62を開放し、管路63を閉塞させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−58277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の三方切換弁51等は、低圧供給キャピラリチューブ55から伝播する低い圧力をポート57又はポート66に伝え、弁板60によって管路62、管路63を開閉するが、この際、ポート57又はポート66から逃げた流体を導く配管を、該三方切換弁51の外部に存在する配管等に接続する必要があるため、三方切換弁の空調装置等への設置作業が煩雑になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、三方切換弁の切換動作に伴って生じた流体を逃がすための配管を外部の配管等に接続する必要がなく、空調装置等に容易に設置することのできる三方切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、密閉空間とその両側の第1及び第2空間を有する弁本体と、該弁本体に連結されて前記密閉空間と連通する第1導管と、前記弁本体に互いに隣接して連結されて前記密閉空間と連通する第2及び第3導管と、前記弁本体内において前記第2及び第3導管の各々に連通する開口部を有する弁座と、該弁座に摺動可能に配置された弁体とを備え、前記第1及び第2空間の圧力差により前記弁体を一方向又は他方向に摺動させ、前記第1導管と前記第2導管との間、又は前記第1導管と前記第3導管との間の連通状態を選択的に切り換える主弁と、前記第1空間と前記第2空間の間に圧力差を付与するパイロット弁とを備える三方切換弁であって、前記第1空間又は前記第2空間から排出された流体を前記主弁内に導く第4導管を備えることを特徴とする。
【0007】
そして、本発明によれば、三方切換弁の切換動作に伴って第1空間又は第2空間から流体が排出されるが、この流体を第4導管を介して主弁内に導くことができるため、従来のように第1空間又は第2空間から排出された流体のための配管を外部の配管等に接続する必要がない。そのため、三方切換弁を空調装置等に容易に設置することができる。
【0008】
上記三方切換弁において、前記第4導管は、前記弁座の内部、及び前記弁体の前記弁座との摺動面に形成された凹部を介して前記第2導管又は第3導管に連通するように構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、切換動作に伴って生じた流体を逃がすための配管を外部の配管等に接続する必要がなく、空調装置等に容易に設置することのできる三方切換弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる三方切換弁の一実施の形態を示す断面図であって、電磁コイルに通電していない状態を示す。
【図2】図1に示す三方切換弁の主弁を示す断面図である。
【図3】図2の主弁の弁体を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図4】図2の主弁の弁座を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A線断面図である。
【図5】本発明にかかる三方切換弁の一実施の形態を示す断面図であって、電磁コイルに通電した状態を示す。
【図6】従来の三方切換弁の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明にかかる三方切換弁の一実施の形態を示し、この三方切換弁1は、主弁11と、パイロット弁31とで構成され、パイロット弁31を動作させて主弁11で流路の切換を行う。
【0013】
主弁11は、図2に示すように、円筒状に形成された弁本体12と、弁本体12の内部に連通する3本の導管20〜22と、弁体17が摺動する弁座18とを備え、弁体17が弁座18上を摺動することで、導管20と、導管21又は導管22のいずれか一方を選択的に接続する。
【0014】
弁本体12は、両端部に栓体12a、12bが固着され、弁本体12の上側に導管20が接続され、下側に導管21、22が接続され、弁本体12の内部の弁座18の弁口18a、18bに、これらの導管21、22の内部が連通する。
【0015】
弁本体12の内部には、弁座18と栓体12aとの間にピストン13が、弁座18と栓体12bとの間にピストン14が設けられ、ピストン13、14の間に、高圧室15が形成される。ピストン13、14は、各々ボルト26、27によって連結板19に連結され、連結板19によって一体的に移動可能に構成される。
【0016】
また、ピストン13と栓体12aとの間に形成された作動室24と、ピストン14と栓体12bとの間に形成された作動室25とは、導管44、45を介してパイロット弁31に連結されている。パイロット弁31(図1参照)が、作動室24、25の間に介在することにより、作動室24、25のいずれか一方が、導管44、45及び導管43を介して高圧室15に連通するように構成される。
【0017】
弁本体12の内部の弁座18上に載置された弁体17は、連結板19の孔19a内に緩く嵌合されている。これにより、弁体17は、ピストン13、14が左右方向に移動することに伴って弁座18上を摺動し、導管20を導管21又は導管22のいずれか一方と連通させる。
【0018】
この弁体17は、図3に示すように、平面視矩板状の部材が2段に重畳して構成され、上方部材17aが連結板19の孔19aに挿入される(図2参照)。一方、下方部材17bの底面には、凹部17cが形成される。この凹部17cは、図1に示すように、主弁11を組み立てた状態で弁座18の流体流路18dに連通する
【0019】
弁座18は、図4に示すように、平面状の上表面18cに弁口18a、18bが穿設され、内部に形成された流体流路18dの一端に導管46が挿入、固定される。上述のように、流体流路18dは、図1に示すように、弁体17の凹部17cに連通し、これにより、主弁11を組み立てた状態で、導管46は、開口部18e、流体流路18d、凹部17cを介して弁口18a又は弁口18bに連通する。
【0020】
図1に示すように、パイロット弁31は、弁本体32の内部に配置され、左右に移動可能なプランジャ33と、プランジャ33を吸引(右方向へ移動させる)する電磁コイル34と、プランジャ33を電磁コイル34から離れる方向(左方向)へ付勢するコイルばね35と、弁本体32の内部の弁座38上をプランジャ33と共に左右に移動可能な弁体37と、弁本体32の栓体32aにおいて弁本体32の内部に連通可能に接続された導管43と、弁座38の下部に弁本体32の内部に連通可能に接続された導管44〜46とで構成される。
【0021】
次に、上記構成を有する三方切換弁1の動作について説明する。
【0022】
図1は、パイロット弁31の電磁コイル34に通電しない状態を示し、この状態では、プランジャ33がコイルばね35によって付勢されて左方に移動している。これにより、弁体37が弁座38上を左方に移動した状態となり、導管43と導管45とを連通させ、導管44と導管46とを連通させている。その結果、主弁11の作動室25へ、導管43及び導管45を介して弁本体12の内部の高圧流体の圧力が加わり、ピストン14を介して連結板19及び弁体17が左方へ移動している。この状態で、弁口18aが閉塞し、導管20から導管22へ流体が流れる。
【0023】
図1に示す状態から、パイロット弁31の電磁コイル34に通電すると、プランジャ33が電磁コイル34に吸引されて右方へ移動し、これに伴って弁体37も弁座38上を右方へ移動し、図5に示すように、導管43と導管44とが連通し、導管45と導管46が連通する。その結果、主弁11の作動室24へ、導管43及び導管44を介して弁本体12の内部の高圧流体の圧力が加わり、ピストン13を介して連結板19及び弁体17が右方へ移動する。これにより、弁口18bが閉塞し、導管20から導管21へ流体が流れる。この際、図1において作動室25内に存在した流体は、ピストン14の右方への移動により導管45に押し出され、パイロット弁31の弁座38の下部に接続された導管46を介して弁座18の流体流路18d、開口部18e(図4参照)、弁体17の凹部17c(図3参照)を経て弁口18bから導管22に流れ、主弁11内で処理される。
【0024】
また、図5の電磁コイル34への通電状態から、通電を切って図1の状態に移行する際には、作動室24内の流体がピストン13の左方への移動により導管44に押し出され、パイロット弁31の弁座38の下部に接続された導管46を介して弁座18の流体流路18d、開口部18e(図4参照)、弁体17の凹部17c(図3参照)を経て弁口18aから導管21に流れ、主弁11内で処理される。
【0025】
この三方切換弁によれば、切換動作に伴って作動室24又は25から排出される流体を導管46を介して弁体17内に導くため、従来のように切換動作に伴って生じた流体を逃がすための配管を外部に配管等に接続する必要がなく、空調装置等への設置作業が容易となる。
【符号の説明】
【0026】
1 三方切換弁
11 主弁
12 弁本体
12a、12b 栓体
13、14 ピストン
15 高圧室(密閉空間)
17 弁体
17a 上方部材
17b 下方部材
17c 凹部
18 弁座
18a、18b 弁口
18c 上表面
18d 流体流路
18e 開口部
19 連結板
19a 孔
20 導管(第1導管)
21 導管(第2導管)
22 導管(第3導管)
24 作動室(第1空間)
25 作動室(第2空間)
26、27 ボルト
31 パイロット弁
32 弁本体
32a 栓体
33 プランジャ
34 電磁コイル
35 コイルばね
37 弁体
38 弁座
43〜45 導管
46 導管(第4導管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間とその両側の第1及び第2空間を有する弁本体と、該弁本体に連結されて前記密閉空間と連通する第1導管と、前記弁本体に互いに隣接して連結されて前記密閉空間と連通する第2及び第3導管と、前記弁本体内において前記第2及び第3導管の各々に連通する開口部を有する弁座と、該弁座に摺動可能に配置された弁体とを備え、前記第1及び第2空間の圧力差により前記弁体を一方向又は他方向に摺動させ、前記第1導管と前記第2導管との間、又は前記第1導管と前記第3導管との間の連通状態を選択的に切り換える主弁と、
前記第1空間と前記第2空間との間に圧力差を付与するパイロット弁とを備える三方切換弁であって、
前記第1空間又は前記第2空間から排出された流体を前記主弁内に導く第4導管を備えることを特徴とする三方切換弁。
【請求項2】
前記第4導管は、前記弁座の内部、及び前記弁体の前記弁座との摺動面に形成された凹部を介して前記第2導管又は第3導管に連通することを特徴とする請求項1に記載の三方切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−159100(P2012−159100A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17372(P2011−17372)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】