説明

三次元での細胞培養のルーチン成長のための基材

我々は、細胞、典型的には哺乳動物細胞の三次元でのルーチン培養で使用するために適合され修飾された高分子化した高内相エマルジョンポリマーを含む細胞培養基材、及び、当該基材の細胞増殖、分化及び機能の実験及び分析のための細胞培養系での使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、細胞、典型的には哺乳動物細胞の成長のための生存細胞培養プラスチック用品の設定及び使用のために適合された、高分子化した高内相エマルジョンポリマー(polyHIPE)を含む細胞培養基材、及びその基材の細胞増殖、分化及び機能の分析のための細胞培養システムにおける使用に関する。
【0002】
真核細胞、例えば哺乳動物細胞の培養は、ルーチン的な手法となっており、細胞が増殖、分化及び機能する細胞培養条件は良く同定されている。典型的には、哺乳動物の細胞培養は、通常はプラスチック(典型的にはポリスチレン)からなる滅菌容器、特定された成長媒体を必要とし、及び支持細胞及び血清、典型的には子ウシ血清を必要とする場合もある。支持細胞は、細胞分化を刺激する及び/又は細胞を未分化状態に維持するシグナルを提供するように機能し、細胞機能に影響を与えうる。原核細胞、例えば細菌細胞の培養も確立された技術であり、有益な分子の製造のために多年にわたり使用されてきた。
【0003】
哺乳動物細胞の培養は多くの応用を有し、細胞培養が実験及び研究に使用される多数のインビトロアッセイ及びモデルが存在する。例えば、ヒト組織光学における細胞の使用、組み換えタンパク質の製造のための哺乳動物発現系の使用、及び薬剤の初期スクリーニングにおける哺乳動物細胞の使用などである。
【0004】
ヒト組織工学は、臨床及び美容外科の多くの領域と密接な関わりを持つ科学である。より詳細には、組織工学は、損傷した及び/又は罹患した組織を置換及び/又は抑制及び/又は修復して組織及び/又は器官を機能状態に戻すことに関係している。例えば、組織工学は、外傷、又は火傷、又は静脈性又は糖尿病性潰瘍の治癒組織の欠損の結果として生ずる創傷の修復のための皮膚移植片の提供に有用である。皮膚組織工学は、置換組織のインビトロでの培養、それに続く修復すべき創傷への組織の外科的適用を必要とする。
【0005】
細胞発現系での組み換えタンパク質の製造は、原核細胞発現又は真核細胞発現のいずれかに基づく。後者は、タンパク質に翻訳後修飾が必要な場合に好ましい。真核細胞系は、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、昆虫細胞、例えばSpodoptera spp、又は酵母細胞、例えばSaccharomyces spp, Pichia sppを含む。組み換えタンパク質の大規模製造は、これらのタンパク質の多く、例えば成長ホルモン、レプチン、エリスロポエチン、プロラクチン、TNF、インターロイキン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(MG−CSF)、絨毛性神経栄養因子(CNTF)、カーディオトロフィン−1(CT−1)、白血病抑制因子(LIF)、オンコステインM(OSM)、インターフェロン、IFNα、INFγが医薬として使用されるため、品質管理の高い標準を必要とする。さらに、ワクチン、特にサブユニットワクチン(同定抗原に基づくワクチン、例えばHIVのgp120)の開発は、アナフィラキシーを引き起こしうる抗原を含まない純粋なタンパク質の多量生産を必要とする。分化して発現されたポリペプチドをプロセスできる細胞において組み換えタンパク質を製造するのが望ましい場合もある。翻訳後プロセシングは、前駆対タンパク質のタンパク質分解処理及び科学基の付加又は除去(例えば、リン酸化、プレニル化、グルコシル化、ファルネシル化)を含む。
【0006】
さらに、哺乳動物細胞は、リード治療薬(例えば、小分子アゴニスト又はアンタゴニスト、モノクローナル抗体、ペプチド治療薬、核酸アプタマー、小阻害性RNA(siRNA))が有効であるか否かを、動物実験が実施される前に特定するための初期薬剤スクリーニングにおいて使用される。
細胞増殖、分化及び機能を信頼性のある方法で分析することを可能にするため、それらの天然状態に技術的に可能な限り近似する細胞集団を提供するように哺乳動物細胞が培養される改良された細胞培養系が必要とされている。
【0007】
細胞培養系は当該分野で知られており、多年にわたり当業者に利用可能となっている。細胞培養は、典型的には閉じた細胞培養容器内で滅菌条件下、単一層での細胞培養を含む。更に最近になって、インビボで観察される状態に極めて類似した3次元で細胞が培養される細胞培養系が開発された。例えば、WO2003/014334は、前立腺表皮細胞が、インビボで見られる前立腺腺房に極めて類似する前立腺−様−腺房を形成することを可能にする培養レジメを提供するインビトロ細胞培養法を開示している。これらは、トランスフォームされた前立腺表皮細胞も細胞培養系において腺房を形成するので、前立腺癌の増殖又は転移の抑制という点で、抗癌剤の有効性の試験において有用である。
【0008】
さらに、WO00/34454には細胞培養基材が記載されており、その内容を参考として本明細書に取り入れるが、それはマイクロセルラー(microcellular)高分子マトリクスを含んでおり、それはpolyHIPEポリマーとして記載されている。これらのポリマーは、孔(ポア)の網状構造を形成し、それらが互いに相互作用して細胞が接着及び増殖できる基材を提供する。polyHIPEの形成プロセスにより、細孔容積が75%から97%まで変化するように正確にコントロールされる。孔サイズは0.1から1000ミクロンまで変化でき、相互に接続された部材は数ミクロンから100ミクロンまで変化できる。さらに、polyHIPEは細胞増殖及び/又は分化を促進する付加的成分と結合することができる。従って、PolyHIPEは、細胞が細胞培養系において接着及び増殖できる多用途基材である。PolyHIPEの製造プロセスは当該分野で良く知られており、WO2004/005355及びWO2004/004880にも開示されており、それらの内容を参考として本明細書に取り入れるものとする。
【0009】
PolyHIPEは商業的に入手可能であり、例えば、油相モノマースチレン、ジビニルベンゼン及び界面活性剤、例えばSpan80ソルビタンモノオレエートを含む。さらに、PolyHIPEの処理中に形成されるポリマーの剛性は、2−エチルヘキシルアクリレート等のモノマーを含有させることにより影響を受ける。エマルジョンからのPolyHIPEの形成プロセスは過硫酸アンモニウムなどの触媒の添加により開始される。
WO00/34454、WO2004/005355及びWO2004/004880におけるPolyHIPEの製造プロセスは、ポリマーの形成のための様々な条件を記載している。例えば、スチレン濃度は15%(w/w)から78%(w/w)まで変化し、界面活性剤濃度は14%(w/w)から15%(w/w)まで変化し、モノマー2−エチルヘキシルアクリレートの添加量は60%(w/w)から62%(w/w)まで変化しうる。さらに、これらの出願の開示は、細胞が接着して成長する単一の細胞支持体の製造に関係している。これらのプロセスで形成された結果物のPolyHIPEは、75%から95%まで変化する細孔容積を有する。
【0010】
ここで我々は、従来技術のプロセスによって形成されたPolyHIPEに比較して、細胞、典型的には哺乳動物細胞のルーチン培養のために特に設計された優れた特性を有するPolyHIPEを形成するプロセスを記載する。そのようにして形成されたPolyHIPEは、およそ90%の気孔率を有し、更に(例えばマイクロトームスライス(切断)によって)薄い膜又は層に加工して存在する細胞培養容器に適合するように改作された複数の薄いPolyHIPEを含む細胞培養基材を製造することができる。また、このPolyHIPEは、有機モノマー及びポリマーを包含して特定の細胞タイプに合わせた細胞培養基材を製造することも可能である。本明細書に開示する細胞培養系は、真核細胞及び原核細胞の両方に適用でき、インビボ条件をより反映する細胞培養を生成し、例えば組織工学、組み換えタンパク質生産及び薬剤スクリーニングにおいてより信頼性のある細胞培養系を提供する。
【0011】
本発明の一態様では、複数のマイクロセルラー高分子材料を含む細胞培養基材であって、前記マイクロセルラー高分子材料の細孔容積が88%から92%である基材が提供される。
細孔容積は、孔を含む材料の全容積の分数として定義され、親となるエマルジョンの滴部分によって決定される。
本発明の好ましい実施態様では、前記細孔容積は約90%である。
【0012】
我々は、約90%の細孔容積を持つマイクロセルラー高分子材料が、細胞成長のための驚くほど有効な基材であることを見出した。我々は、細胞接着、増殖及び機能が、高分子材料の構造に大きく栄養を受けることを示した。細胞は90%多孔性の材料により良く接着し、良好に増殖し、異なる多孔性(例えば95%細孔容積)の高分子材料上で成長した細胞全体が向上した機能を示す。さらに、我々は、90%多孔質材料で成長した細胞の増殖及び機能が、従来の2−次元組織培養プラスチック上での細胞成長に比較して大きく向上したことを示した。
本発明のさらに好ましい実施態様では、前記基材が疎水性エラストマーを、全モノマー量の20%(w/w)から40%(w/w)の濃度で含有する。
【0013】
本発明の好ましい実施態様では、前記疎水性エラストマーは25%(w/w)から35%(w/w)の濃度で提供される。好ましくは、前記濃度は、26%(w/w)、27%(w/w)、28%(w/w)、29%(w/w)、30%(w/w)、31%(w/w)、32%(w/w)、33%(w/w)又は34%(w/w)からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施態様では、前記疎水性エラストマーは30%(w/w)の濃度で提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施態様では、前記エラストマーは、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及びn−ヘキシルアクリレートからなる群から選択される。
本発明の好ましい実施態様では、前記エラストマーは2−エチルヘキシルアクリレートである。好ましくは、前記2−エチルヘキシルアクリレートは、28%(w/w)から32%(w/w)の濃度で提供され、好ましくは、2−エチルヘキシルアクリレートは30%(w/w)の濃度で提供される。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養基材はポリビニルを含む。好ましくは、前記ポリビニルがポリスチレンであり、好ましくはポリスチレンはスチレンモノマー及びジビニルベンゼンを含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養基材は界面活性剤を含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記界面活性剤はエマルジョンのモノマー相の20から30%(w/w)、好ましくは24から26%(w/w)、最も好ましくは、およそ25%(w/w)の濃度で提供される。
【0015】
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養基材は、複数のスライスされたマイクロセルラー高分子材料を含み、前記切片は50〜1000ミクロンの厚さ、好ましくは、約120〜750ミクロンの厚さである。より好ましくは、前記切片は100〜200ミクロンの厚みである。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養基材は、複数のスライスされたマイクロセルラー高分子材料を含み、前記切片は50〜250ミクロンの厚さ、好ましくは、約150ミクロンの厚さである。
本発明の代替的な実施態様では、前記細胞培養基材は、複数のスライスされたマイクロセルラー高分子材料を含み、前記切片は50〜150ミクロンの厚さ、好ましくは、約120ミクロンの厚さである。
本発明の好ましい実施態様では、前記スライスされたマイクロセルラー材料は約300ミクロンの厚みである。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では、細胞培養基材は有機モノマーを更に含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記有機モノマーは、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、3−ビニルベンジルクロリド、4−ビニルベンジルクロリド、パラ−アセトキシスチレンからなる群から選択される。
【0017】
本発明の更に好ましい実施態様では、前記細胞培養基材は有機ポリマーを更に含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記有機ポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルアクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(3−ビニルベンジルクロリド)、ポリ(4−ビニルベンジルクロリド)、ポリ(パラ−アセトキシスチレン)からなる群から選択される。
【0018】
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養基材は、該基材に接着する細胞の接着、増殖及び/又は分化を促進するコーティングの提供によって修飾された表面を有する。
本発明の好ましい実施態様では、前記修飾は、タンパク質コーティングの提供である。
本発明の好ましい実施態様では、前記タンパク質コーティングは、ラミニン、コラーゲン、例えばマトリゲルのような細胞支持体、フィブロネクチン、非コラーゲンベースのペプチドマトリクスからなる群から選択される少なくとも1つの分子を含む。
【0019】
そのような非コラーゲンベースのマトリクスの例はPuraMatrix(商品名)である。
本発明の代替的な好ましい実施態様では、前記タンパク質コーティングは、ポリアミノ酸コーティングを含む。
ポリアミノ酸コーティングは、タンパク質、特に細胞が接着し成長できるタンパク質に類似する特性を有する。ポリアミノ酸はホモポリマーでもヘテロポリマーでもよい。細胞培養に有用なポリアミノ酸コーティングは、ポリLオルニチン又はポリLリジンを含む。タンパク質コーティングは当該分野で良く知られている。例えば、Culture of Animal Cells, Ian Freshney, Wiley-Liss 1994を参照し、その内容を本明細書に取り入れるものとする。
【0020】
本発明の代替的な好ましい実施態様では、前記細胞培養基材の表面が物理的に修飾される。
本発明の好ましい実施態様では、前記基材は、ガスプラズマ処理により修飾された表面を有する。
細胞培養基材のガスプラズマ処理は当該分野で知られている。プラズマ処理は、細胞培養表面の物理的特性を変化させるために使用できる。例えば、アンモニア及び酸素が、細胞接着及び細胞培養産物の増殖を促進するためのガスプラズマとして使用されている。プロセスは、ラジオ周波数エネルギーによる低圧室温でのガス生成物の励起を含む。プラズマは自由電子及び他の準安定粒子を含み、それらがポリマー表面を腐食し、化学結合を破壊することにより表面を修飾する。これによりラジカルが生成され、それもまたポリマー表面を修飾する。
【0021】
本発明の更なる態様によると、本発明の細胞培養基材を含む細胞培養容器が提供される。
「細胞培養容器」とは、上記の細胞培養基材を収容するのに適した任意の手段と定義される。典型的には、そのような容器の例は、ペトリ皿、細胞培養ボトル又はフラスコ又はマルチウェルディッシュ又はウェル挿入物である。マルチウェル培養ディッシュは、例えば6、12、48、96及び384ウェル形式のマルチウェルミクロたいたープレートであり、典型的には自動装填及びロボット処理システムに適合するものが用いられる。典型的には、高スループットスクリーニングは試薬と指示物質の均一混合物を使用し、指示物質は変換又は変性してシグナルを生成する。シグナルは適切な手段(例えば、蛍光発光、光学密度、又は放射活性の検出)によって測定され、次いで細胞、基質/試薬及び指示物質化合物を含む各ウェルからのシグナルが合算される。
【0022】
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養容器は前記細胞培養基材、さらに細胞及び細胞培養媒体を含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞が真核細胞であり、前記真核細胞は、哺乳動物細胞、植物細胞、真菌細胞、粘菌からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施態様では、前記哺乳動物細胞は霊長類細胞であり、好ましくは前記霊長類細胞はヒト細胞である。
【0023】
本発明の好ましい実施態様では、前記哺乳動物細胞は、表皮角化細胞、繊維芽細胞(例えば、皮膚、角膜、腸粘膜、口腔粘膜、膀胱、尿道口、前立腺、肝臓)、表皮細胞(例えば、角膜、皮膚、角膜、腸粘膜、口腔粘膜、膀胱、尿道口、前立腺、肝臓)、ニューロングリア細胞又は神経細胞、肝細胞又は肝細胞衛生細胞、間葉細胞、筋細胞(心筋、又は筋管細胞)、腎細胞、血液細胞(例えば、CD4+リンパ球、CD8+リンパ球、膵臓β細胞、内皮細胞からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞は腫瘍由来である。
本発明の代替的な好ましい実施態様では、前記哺乳動物細胞は幹細胞である。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、前記幹細胞が、造血幹細胞、神経幹細胞、骨幹細胞、筋肉幹細胞、間葉幹細胞、表皮幹細胞(皮膚、胃腸管粘膜、腎臓、膀胱、乳腺、子宮、前立腺及び内分泌腺、例えば下垂体等の器官から誘導される)、内皮幹細胞(肝臓、膵臓、肺及び血管等の器官から誘導される)、胚性幹細胞、胚性生殖細胞からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施態様では、前記胚性幹細胞/胚性生殖細胞は、多能性細胞であって全能細胞ではない。
【0025】
本発明の代替的な好ましい実施態様では、前記細胞は原核細胞、好ましくは細菌性細胞である。
本発明のさらに好ましい実施態様では、前記細胞又は細胞系は遺伝学的に変性されている。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養容器はバイオリアクターであり、好ましくは前記バイオリアクターは、前記細胞型び増殖、分化及び機能をスケールアップするように設計される。
【0026】
本発明の一態様では、細胞を培養する方法が提供され、当該方法は、
i)a)細胞、
b)本発明の細胞培養基材、
c)前記細胞の成長を支持するのに十分な細胞培養媒体
を含む細胞培養容器を提供する工程、及び
ii)前記細胞の増殖及び/又は分化及び/又は機能を促進する細胞培養条件を提供する工程を含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞は哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞は肝細胞である。
【0027】
本発明の代替的な好ましい実施態様では、前記細胞は原核細胞、好ましくは細菌性細胞である。
本発明の細胞培養法に微生物が使用される場合、それらは、宿主生物に応じて当業者に馴染み深い方法で成長又は培養される。規則として、微生物は、通常は糖の形態の炭素源、通常は有機窒素源、例えば酵母抽出物又は硫酸アンモニウム等の塩の窒素源、鉄、マンガン及びマグネシウム等の微量元素、必要に応じてビタミンを含有する液体中、0℃から100℃、好ましくは10℃から60℃において、酸素ガス中で成長させる。
【0028】
液状媒体のpHは、一定に維持、即ち培養期間中調節してもしなくてもよい。培養はバッチ式、半バッチ式又は連続式で成長させる。滋養剤は発酵初期に供給するか、又は半連続又は連続的に供与してもよい。生成された製造物は、当業者に知られた方法、例えば抽出、蒸留、結晶化、適切な場合は塩析及び/又は迂路マトグラフィーにより上記の生物から単離される。この最後までに、生物を予め解剖するのが有利であることもある。このプロセスにおいて、pH値は有利にはpH4から12、好ましくはpH6から9、特に好ましくはpH7から8とする。
上記したように、これらの媒体は発明に従って採用でき、通常は1又はそれ以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン及び/又は微量元素を含有する。
【0029】
好ましい炭素源は糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類である。炭素源の例は、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプン又はセルロースを含む。糖は、複雑な化合物、例えば糖蜜又は砂糖精製からの他の副産物を介して添加することもできる。種々の炭素源の混合物を添加するのも有利であり得る。他の可能な炭素源は、油脂、例えばダイズ油、ひまわり油、ピーナッツ油及び/又はココナッツ油、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸及び/又はリノレイン酸、アルコール及び多価アルコール、例えばグリセロール、メタノール及び/又はエタノール、及び/又は有機酸、例えば酢酸及び/又は乳酸である。
【0030】
窒素源は、通常は有機又は無機の窒素化合物又はそれらの化合物を含む材料である。窒素源の例は、液体又は気体のアンモニア、アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム又は硝酸アンモニウム、硝酸塩、尿素、アミノ酸又は複合体窒素源、例えばコーンスティープ酒、ダイズ食品、ダイズタンパク質、酵母抽出物、食肉抽出物、その他を含む。窒素源は個々に又は混合して使用できる。
【0031】
媒体中に存在してもよい無機塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅及び鉄の塩化物、リン酸及び硫酸塩を含む。
無機イオウ含有化合物、例えば硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、スルフィド、又は多の有機イオウ化合物、例えばメルカプタン及びチオールは、イオウ含有ファインケミカル、特にメチオニンの製造のためのイオウ源として使用できる。ホスホン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム又は対応するナトリウム含有塩はリン酸源として使用できる。
溶液中の金属イオンを維持するためにキレート剤を添加してもよい。特に好適なキレート剤は、ジヒドロキシフェノール類、例えばカテコール又はプロトカテクサン塩及び有機酸、例えばクエン酸を含む
【0032】
本発明の更なる態様では、細胞の増殖、分化又は機能に影響する薬剤をスクリーニングする方法が提供され、当該方法は、
i)少なくとも1つの細胞及び本発明の細胞培養基材を提供する工程、
ii)少なくとも1つの試験すべき薬剤を添加する工程、
iii)前記細胞の増殖、分化又は機能に対する薬剤の活性を監視する工程を含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞は肝細胞である。
【0033】
本発明の好ましい方法では、前記スクリーニング法は、上記(iii)の活性データを収集する工程、収集したデータを解析可能な形式に変換する工程、そして必要ならば解析したデータを出力する工程を含む。
細胞発現において生ずる間隔的及び一時的な変化に関する情報を画像化及び抽出する多数の方法が知られており、例えば、蛍光タンパク質及び他の遺伝子発現マーカーであり (Taylor et al Am. Scientist 80: 322-335, 1992参照)、これを参考として本明細書に取り入れる。更に、米国特許第5,989,835号及び米国特許出願第09/031,271号は、参考として本明細書に取り入れるが、生物学的活性について多数の薬剤をスクリーニングするための、細胞内蛍光レポーター分子の分布及び活性を測定するシステムを開示している。上記特許に開示されたシステムは、生成されたデータを加工、記憶及び表示するためのコンピュータ化された方法も記載している。
【0034】
多数の薬剤をスクリーニングするために、細胞の取り扱い及び薬剤の投与のための細胞のアレイを準備することが必要である。アッセイ装置は、例えば、6、12、48、96及び384ウェルなどの形式の標準的なマルチウェルミクロタイタープレートを含み、それらは典型的には自動化及びロボット式の取り扱いシステムに合致するように使用される。典型的には、高スループットスクリーニングは、薬剤と指示化合物との均一混合物を使用し、前記指示化合物は変換又は修飾されてシグナルを生成する。シグナルは適切な手段(例えば、蛍光発光、光学密度、又は放射活性の検出)により測定され、次いで細胞、薬剤及び指示化合物を含む各ウェルからのシグナルが合算される。
【0035】
用語「薬剤」は、任意の小分子、抗体、ポリペプチド、ペプチド、アプタマー、二本鎖又は小阻害RNAを含む。これらは、アゴニスト又はアンタゴニストとして使用できる。
小分子アンタゴニストは、癌などの疾患の治療に有用な化学治療薬を含んでいる。
【0036】
抗体又は免疫グロブリン(Ig)は、2対のポリペプチド鎖からなる構造的に関連するタンパク質であり、一方の対は軽(L)(低分子量)鎖(κ又はλ)であり、他方の対は重(H)鎖(γ、α、μ、δ及びε)であって、4つはジスルフィド結合により合体している。H鎖及びLはともに抗原への結合に寄与し、Ig分子同士で高度に変化する領域を有している。さらに、H鎖及びL鎖は、不変又は定常な領域を含む。L鎖は2つのドメインからなる。カルボキシ末端ドメインは、与えられたタイプのL鎖間で実質的に同一であり、「定常」(C)領域と呼ばれる。アミノ末端ドメインはL鎖によって変化し、抗体の結合部位に寄与する。その可変性により、「可変」(V)領域と呼ばれる。可変領域は相補性決定領域又はCDRを含み、それは抗原結合ポケットを形成する。結合ポケットはH及びL可変領域を含み、抗原認識に寄与している。単一の毛編領域、いわゆる一本鎖抗体可変領域断片(scFV’)を生成することもできる。特異的なモノクローナル抗体のハイブリドーマが存在する場合は、前記ハイブリドーマからRT PCRを介して抽出したmRNAからscFV’を単離することは当業者の知識の範囲内である。あるいは、ファージディスプレースクリーニングは、cFV’を発現するクローンを同定するために実施しうる。あるいは、前記断片は「ドメイン抗体断片」である。ドメイン抗体は抗体の最も小さい結合部分である(およそ13kDa)。この技術の例は、米国特許第6,248,516号、第6,291,158号、第6,127,197号及び欧州特許第EP0368684号に記載され、それらの内容を参考として本明細書に取り入れる。
【0037】
アプタマーは、小さな、通常は安定化された、核酸分子であり、標的分子に対する結合ドメインを含む。アプタマーを同定するスクリーニング法は、米国特許第5,270,163号に記載されており、それを本明細書に取り入れるものとする。アプタマーは、典型的にはオリゴヌクレオチドであり、一本鎖オリゴヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、又は修飾オリゴヌクレオチドデオキシヌクレオチド又はオリゴリボヌクレオチドであってよい。
【0038】
遺伝子機能を特異的に除去する最近の技術は、二本鎖RNAの細胞への誘導を介しており、小阻害又は妨害RNA(siRNA)とも呼ばれ、siRNA分子に含まれる配列に相補的なmRNAの破壊をもたらす。siRAN分子は2つのRNA相補鎖(センス鎖及びアンチセンス鎖)を含み、アニールして互いに二本鎖RNA分子を形成する。siRNA分子は、典型的には除去すべき遺伝子のエクソンから誘導される。RNA妨害のメカニズムは解明されつつある。多くの生物が、siRNAの形成を導くカスケードの活性化により二本鎖RNAの存在に反応する。二本鎖RNAの存在は、RNaseIIIを含むタンパク質複合体を活性化し、それは二本鎖RNAをより小さな分子(siRNA、約21−29ヌクレオチド長)に加工し、それがリボ核タンパク質複合体の一部となる。siRNAはTNase複合体がsiRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNAを切断するガイドとして作用し、それによりmRNAの分解がもたらされる。siRNAに基づく薬剤は、細胞及び/又は分化における特異的な遺伝子の機能の決定に価値を有する。
【0039】
本発明の更なる態様では、細胞分化に関連する遺伝子を同定する方法が提供され、当該方法は、
i)少なくとも1つの細胞及び本発明の細胞培養基材を提供する工程、
ii)前記細胞培養物に含まれる細胞から核酸を抽出する工程、
iii)前記抽出した核酸を核酸アレイと接触させる工程、及び
iv)前記核酸アレイ上の結合パートナーへの前記核酸の結合を示すシグナルを検出する工程を含む。
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞は肝細胞である。
【0040】
好ましくは、前記方法は、
i)前記核酸の前記結合パートナーへの結合によって生成されたシグナルを照合する工程、
ii)照合したシグナルを解析可能な形態に変換する工程、そして場合によって、
iii)解析したデータの出力を提供する工程
を付加的に含む法。
【0041】
細胞分化マーカー及び/又はトランスフォーメーションのマーカーの同定に使用される方法は、免疫源ベースの技術(例えば、細胞正面マーカー等に対する抗血清を発生させるために細胞を複合免疫源として使用する)、核酸ベースの技術(例えば、正常及びトランスフォームした細胞からのcDNAを使用した示差スクリーニング)を含む。また、腫瘍細胞が多くの腫瘍細胞特異的抗原を生成することは多年にわたって知られており、その幾つかは腫瘍細胞表面に提示されている。これらは、一般的に腫瘍拒絶抗原と呼ばれ、腫瘍拒絶抗原前駆体と呼ばれるより大きなポリペプチドから誘導される。腫瘍拒絶抗原はHLAを介して免疫系に提示される。免疫系は、これらの分子を外来物質と認識し、自然に選択してこれらの抗原の細胞発現を破壊する。トランスフォームされた細胞が検出から逃れて確立されると腫瘍が発生する。ワクチンは主要な腫瘍拒絶抗原に基づいて発生し、個人を腫瘍の確立に対する予備生成された防御を提供する。本発明の方法は、腫瘍拒絶抗原の同定手段及び腫瘍の確立を妨害するために患者自身の免疫系を誘発するワクチンの発生に関して有用な前駆体を提供する。
【0042】
本発明の更なる態様では、正常細胞からの癌性細胞の発生を分析するインビトロの方法が提供され、当該方法は、
i)少なくとも1つの細胞及び本発明の細胞培養基材を含む調製物を形成する工程、
ii)細胞トランスフォームを誘発することのできる少なくとも1つの薬剤を添加する工程、
iii)前記細胞のトランスフォームに対する前記薬剤の効果の有無を監視する工程を含む。
【0043】
本発明の好ましい方法では、前記細胞は肝細胞である。
当該分野では、正常細胞を癌性細胞の特徴の多くを持つ形質転換細胞にトランスフォームする薬剤があることが知られている。これらは、例えば例示すると、ウイルス、DNA挿入剤、腫瘍遺伝子、及びテロメラーゼ遺伝子を含む。
【0044】
本明細書で用いられる用語「癌」又は「癌性」は、自立的増殖をする能力を持つ細胞、即ち、迅速な増殖的細胞成長を特徴とする得異常な状態又は病状を意味する。この用語は、組織病理学的タイプ又は侵襲性のステージにかかわらず、あらゆるタイプの癌性成長又は発癌プロセス、転移性組織又は悪性トランスフォームされた細胞、又は器官を含むことを意味する。用語「癌」は、様々な器官システムの悪性腫瘍、例えば、肺、乳房、胸腺、リンパ腺、胃腸管、及び生殖器−尿道に影響するもの、並びにと飛渡の直腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸の癌、食道癌を含む腺癌を含む。用語「癌腫」は技術的に認識されており、呼吸器系癌腫、胃腸管系癌腫、性尿器系癌腫、睾丸癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、生殖器系癌腫、及びメラノーマを含む上皮又は内分泌組織の悪性腫瘍を指す。癌腫の例は、子宮頚部、肺、前立腺、乳房、頭及び頸、直腸及び卵巣の組織から形成されるものを含む。用語「癌腫」は、癌肉腫、例えば、癌腫及び肉腫組織からなる悪性腫瘍も含む。「腺癌」は、腺管腫瘍から誘導される癌腫又は腫瘍細胞が認識可能な腺を形成する癌腫を指す。用語「肉腫」は、技術分野で認識されており、間葉由来の悪性腫瘍を指す。
【0045】
本発明の更なる態様では、マイクロセルラー高分子材料を製造する方法が提供され、当該方法は、
i)疎水性エラストマーを20%(w/w)から40%(w/w)で含有する高内相エマルジョンを含む調製物を形成する工程、
ii)触媒を含む調製物を形成する工程、
iii)(i)及び(ii)の調製物を混合する工程、
iv)混合した調製物をインキュベーションし、高内相エマルジョンポリマーを形成させる工程を含む。
【0046】
本発明の好ましい方法では、前記疎水性エラストマーが、25%(w/w)から35%(w/w)の濃度で提供され、好ましくは前記疎水性エラストマーが、約30%(w/w)の濃度で提供される。
本発明の好ましい方法では、前記エラストマーが、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート及びn−ヘキシルアクリレートからなる群から選択される。
【0047】
本発明の好ましい方法では、前記工程ii)における調製物の温度が50℃から80℃の温度に加熱される。
本発明の更に好ましい方法では、前記工程ii)における調製物が50℃又は60℃又は80℃に加熱される。
【0048】
本発明の更に好ましい方法では、前記工程i)における調製物がスチレンモノマーを含有する。
本発明の更に好ましい方法では、前記工程i)における調製物がジビニルベンゼンを含有する。
【0049】
本発明の更により好ましい方法では、前記工程i)における調製物が、界面活性剤を含有し、それが20〜30%(w/w)、好ましくは24〜26%(w/w)、もっtも好ましくは、およそ25%(w/w)の濃度で提供される。
本発明の好ましい方法では、前記工程i)における調製物が、60%(w/w)のスチレン、30%(w/w)の2−エチルヘキシルアクリレート、10%(w/w)のジビニルベンゼン及び25%の界面活性剤を含有する。
【0050】
本発明の好ましい方法では、前記工程iv)における高内相エマルジョンポリマーがスライス(切断)されており(sectioned)、好ましくは、前記ポリマーは薄い膜又は層にスライスされている。
本発明の好ましい方法では、前記ポリマーが、約50〜150ミクロンの厚みに加工され、好ましくは前記膜は約120ミクロンの厚みである。
【0051】
本発明の更なる態様によれば、本発明の方法によって得られた又は得られうる高内相エマルジョンポリマーが提供される。
本発明の更なる態様によれば、前記高内相エマルジョンポリマーが約90%の細孔容積を有する。
【0052】
本発明の更なる態様によれば、前記高内相エマルジョンポリマーの細胞培養のための使用が提供される。
本発明の好ましい実施態様では、前記高内相エマルジョンポリマーが、約90%、好ましくは90%のの細孔容積を有する。
【0053】
本発明の更なる態様によれば、高内相エマルジョンポリマーを含む基材の、薬剤の肝臓毒性を測定するための使用が提供される。
本発明の好ましい実施態様では、前記薬剤が化学治療薬である。
本発明の代替的な好ましい実施態様では、前記薬剤がウイルス性遺伝子治療ベクターである。
【0054】
本発明の更なる態様によれば、薬剤の肝臓毒性を測定する方法が提供され、当該方法は、
i)少なくとの1つの肝細胞及び請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材を含む細胞培養物を提供する工程、
ii)少なくとも1つの試験すべき薬剤を添加する工程、
iii)前記肝細胞の増殖、分化又は機能に対する薬剤の活性を、当該薬剤の毒性の尺度として監視する工程を含む。
【0055】
請求項83の好ましい方法では、前記薬剤が化学治療薬である。
本発明の代替的な好ましい方法では、前記薬剤がウイルス性遺伝子治療ベクターである。
【0056】
本発明の更なる態様によれば、角化細胞及び/又は角化細胞前駆体幹細胞を成長及び分化させる方法が提供され、当該方法は、
i)本発明の細胞培養基材、繊維芽細胞支持細胞及び細胞培養媒体を含む調製物を形成する工程、
ii)前記支持細胞を培養して、前記支持細胞で実質的に被覆された細胞培養基材を提供する工程、
iii)前記被覆された基材を角化細胞及び/又は角化細胞前駆体幹細胞と接触させる工程、及び
iv)混合した細胞調製物を、前記角化細胞及び/又は角化細胞前駆体幹細胞の成長及び分化を導く条件下で培養する工程を含む。
本発明の好ましい方法では、前記繊維芽細胞支持細胞が皮膚繊維芽細胞である。
【0057】
本発明の代替的な好ましい方法では、前記繊維芽細胞支持細胞が、角膜繊維芽細胞、腸粘膜繊維芽細胞、口腔粘膜繊維芽細胞、尿道口繊維芽細胞、又は膀胱繊維芽細胞からなる群から選択される。
本発明の更に好ましい方法では、前記角化細胞が表皮角化細胞である。
本発明の好ましい方法では、前記繊維芽細胞がヒト繊維芽細胞である。
【0058】
本発明の更に好ましい方法では、前記角化細胞がヒト角化細胞である。
本発明の好ましい方法では、前記調製物がコラーゲンを更に含む。
本発明の好ましい方法では、コラーゲンが1型コラーゲンである。
【0059】
本発明の更に好ましい方法では、前記コラーゲンがゲルとして提供される。
本発明の代替的な好ましい方法では、前記コラーゲンが溶液として提供される。
本発明の更に好ましい方法では、少なくとも前記角化細胞が置き換わって空気に接触し、それにより角化細胞の層化を誘発する。
【0060】
本発明の好ましい方法では、薬剤の試験方法は提供され、当該方法は、
i)試験すべき薬剤を含有する本発明の調製物を形成する工程、
ii)前記薬剤を含まない対照調製物と比較した角化細胞成長及び/又は分化に対する前記薬剤の効果を監視する工程を含む。
【0061】
本発明の更なる態様によれば、請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材、細胞培養容器及び前記細胞培養容器と協働するように適合され、前記細胞培養基材と前記細胞とを含有する挿入物を具備する細胞培養装置が提供される。
【0062】
本発明の好ましい実施態様では、前記細胞培養基材が繊維芽細胞及び角化細胞を含む。
本発明の更により好ましい態様では、本発明の基材の、分化した皮膚合成物の調製のための使用が提供される。
【0063】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む」及び「含有する」及びその変形、例えば「含み」及び「含んで」は、「含有するが限られない」ことを意味し、他の部分、添加物、成分、数値又は工程を排除することを意図するものではない。
本明細書及び特許請求の範囲を通して、特に言及しない限り、単数は複数も包含する。特に、限定しない物質が使用されるとき、明細書は、特に言及しない限り、単数並びに複数を意図しているものと解される。
本発明の特定の態様、実施態様又は実施例と組み合わせて記載された特徴、数値、特性、化合物、化学的部分又は基は、可能な限り、本明細書に記載した他の態様、実施態様又は実施例にも適用されるものと解される。
本発明の具体例を添付の図面を参照して実施例により以下に記載する。
【0064】
表1は、異なる水相温度及び水混和性添加物で調製されたPolyHIPEのモルホロジーパラメータを示す。
表2は、親HIPEsaにおける水相添加物、及び水自己拡散係数値で調製されたPolyHIPEの平均ボイド及び相互接続半径を示す。
表3は、水相添加物で調製されたPolyHIPEのモルホロジーに対する界面活性剤濃度の影響を示す。
【0065】
細胞培養における常用の成長基材の製造のための材料および方法
材料
ジビニルベンゼン(Aldrich;80容量%ジビニルベンゼン、残部m−およびp−エチルスチレン)、2−エチルヘキシルアクリレート(Aldrich;99%)およびスチレン(Aldrich;99%)を、塩基性活性アルミナ(Aldrich;Brockmann 1)のカラムに通して、いずれの阻害物質(スチレンおよびジビニルベンゼンについては4−tert−ブチルカテコール、ならびに2−エチルヘキシルアクリレートについてはヒドロキノンまたはモノメチルエーテルヒドロキノン)を除去した。過硫酸カリウム(Aldrich)、ソルビタンモノオレエート(SPAN80、Aldrich)、ポリ(エチレングリコール)(Aldrich、M=300)、および塩化カルシウム二水和物(Aldrich)は、提供されたまま用いた。
【0066】
ポリHIPEポリマーの調製および細胞培養のための薄膜の作成
ポリHIPE発泡体は、HIPEの重合を用いて調製した。
・油相は60%のスチレン、30%の2−エチルヘキシルアクリレート、10%のジビニルベンゼンおよび25%の界面活性剤(ソルビタンモノオレエート)(全て重量%)を含んでいた。
・水相は、脱イオンHO中に1%過硫酸カリウムを含んでいた。
【0067】
方法
1.簡単に述べると、油相を、オーバーヘッド撹拌器(D形PTFEパドルを備えたガラス棒)、100mLの側管付き滴下漏斗(側口に挿入された)およびゴム栓を備えた三口250mL丸底フラスコに入れた。混合物を、窒素ガスで15分間パージした。
2.水相を、撹拌器ホットプレートを用いて80℃の温度まで加熱し、次いで、2分間かけて一定の速度で油相に加えた。次いで、エマルジョンをさらに1分間混合した。
3.次いで、エマルジョンを移し、50mlのポリプロピレンチューブに流し込み、60℃で一晩放置して硬化させた。
4.次いで、ポリマーを24時間後にチューブから移し、ソックスレー中で水およびイソプロピルアルコールによりそれぞれ24時間ずつよく洗浄した。
【0068】
薄膜の作成
ポリマーを、厚さ120ミクロンの膜に加工した。このことは、ミクロトームまたはより厚い切片(1mmまで)が要求される場合にビブロトーム(vibrotome)を用いて達成できる。ポリマー材料の膜は、次いで、無水エタノールを用いて滅菌し、一連の段階的エタノール溶液により水和し、その後、使用前に滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄(×3)した。膜は、既製の細胞培養プラスチック容器(例えば6ウェルプレート)の底に直接装填できるか、または細胞培養ウェルインサートに付着させることができる(図12および13参照)。
【0069】
走査型電子顕微鏡
材料の形態を、20〜25kVで動作するFEI XL30 ESEMを用いて調べた。破断セグメントを炭素繊維パッド上に装填し、アルミニウムのスタブに装着し、Edwards Pirani 501スパッタコーターを用いて金被覆した。平均ボイドサイズの算出を、画像分析ソフトウェアImage J(NIH image)を用いて行った。このようにして測定された平均径は、実際の値よりも小さく見積もられる。よって、統計的校正を導入することが必要である。このことは、比R/r(式中、Rはボイド径の中央値であり、rは顕微鏡写真から測定した直径の値である)の平均を評価することにより達成される。統計学的係数は、等式(1)から算出する。
=R−r (1)
中央からの任意の距離(h)で切り出しが起こる確率は、hの全ての値について同じであるので、hの平均の確率の値はR/2である。等式(1)においてこの値を置換すると、R/r=2/(31/2)となる。ボイド径の観察された平均値の乗算により、より正確な値を得ることが可能になる。
【0070】
水銀圧入ポロシメトリー
水銀圧入ポロシメトリー分析を、Micromeritics AutoPore III 9420を用いて行った。130°の圧入および押出し水銀接触角を用いた。1.836mLのステム容積および5mLのバルブ容積の針入度計を用いた。圧入容積は、ステム容積の45〜80%に常に含まれた。ポリHIPEについての圧入圧力は、200psiを超えなかった。
【0071】
H NMR拡散実験
水の自己拡散係数(D)を、Performa II勾配パルス増幅器およびアクティブシールドされた5mmの間接的導入プローブを備える500MHz Varian Unity Inova 500ナローボア分光光度計を用いて測定した。重水素スピンエコーに基づく自動化されたz勾配シムを用いた。全ての測定で用いた温度は、25±0.1℃であった。水拡散係数は、二極パルス対刺激エコー(BPPSTE)パルスシーケンスのようなパルスフィールド勾配を組み込んだパルスシーケンスを用いて測定した。拡散係数は、印加した磁場勾配振幅の関数としてシグナル減衰をモニターし、実験結果を等式(2)にあてはめることにより、BPPSTEスペクトルから得た。
I=Iexp[−D(γδG)(Δ−(δ/2)−(τ/3))] (2)
等式(2)において、Iは、所定の勾配振幅Gについて測定された共鳴強度であり、Iは、勾配パルスの非存在下での強度であり、γは磁気回転比であり、δは二極勾配パルス対の存続期間であり、Δは、拡散遅延時間であり、τは、弛緩およびスピン−スピンカップリング放出が著しくない間の短い勾配回復遅延時間である。
【0072】
肝細胞の細胞培養
ヒト肝細胞癌腫細胞株HepG2を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から得た。HepG2細胞を、37℃、5%CO中で、成長培地(10%(v/v)胎児ウシ血清(FBS、Gibco/BRL)、100μg.mL−1ペニシリンおよび10μg.mL−1ストレプトマイシン(Gibco/BRL)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM、Gibco/BRL))中で培養した。細胞を、5〜7日ごとに継代した。細胞の集密な培養物をPBSで洗浄し、トリプシン/EDTA溶液を用いて剥離し、血球計を用いて細胞数を決定した。次いで、HepG2細胞の懸濁物を標準的な6ウェルプレート(Nunc)のウェル、またはポリマーを載せ、かつ6ウェルプレート中に置いた改変ウェルインサートのいずれかに直接、等しい密度で播種した。培養は、3〜4日ごとにまたは必要により交換される成長培地中で継続した。
【0073】
生細胞数の決定
生細胞の数を、分光光度計(570nm)により検出可能な青色のフォルマザン生成物へのテトラゾリウム塩の変換を伴う細胞活性を測定するためのモスマンの元来の方法に基づく、市販の比色アッセイ(Promega)を用いて決定した[32]。アッセイは、製造業者の指示書に従って、2−Dおよび3−D基材上で、種々の期間、選択可能な成長条件の下で培養されたHepG2細胞に対して行った。
【0074】
メトトレキセート(MTX)毒性研究
細胞を、2−Dおよび3−Dの表面上に3連で播種し、24時間放置して接着させた。次いで、培地を交換し、異なる濃度のMTX(MTXなし(媒体のみ、対照)、8μM、31μMおよび125μM)を含有する培地に置き換えた。その後、細胞を1、3、7または10日間インキュベートし、その後、培養物の試料を採取し、細胞数/生存率をアッセイし、アルブミンおよびトランスグルタミナーゼのレベルを決定した。
【0075】
肝細胞代謝活性
アルブミンの生成は、しばしば、肝細胞代謝活性の指標として用いられる。アルブミンのレベルは、620nmで検出可能な呈色複合体をアルブミンと特異的に形成するブロモクレゾールグリーンを利用する確立された方法に基づく商業的に入手可能なキット(Bioassay systems)を用いて決定した。既知の量のヒトアルブミンを用いて、標準曲線を作成した。アルブミン分泌の具体的なレベルを、(標準的なブラッドフォードアッセイにより決定される)総タンパク質レベルに対して標準化した。
【0076】
走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)のための試料の調製
SEM用の調製において、2−Dまたは3−D基材上で成長した細胞を、ソーレンセンのリン酸緩衝液中の2%パラホルムアルデヒドおよび2.5%グルタルアルデヒド中、室温にて1時間固定した。次いで、試料を0.1Mリン酸緩衝液ですすぎ、1%OsO(水)溶液中に1時間浸漬し、次いで、50%、70%、95%および100%のエタノール中で、それぞれのエタノール交換について4回、5分間ずつ脱水した。次いで、固定された2−Dおよび3−D培養物の試料を小片(約25mm)に切断し、標本ホルダに装填し、38℃で1200psiのCOにより乾燥させた。次いで、試料を7nm層のクロムでスパッタ被覆し、Hitachi S5200 SEMを用いて調べた。
【0077】
TEM分析について、3−D基材上で成長した細胞を、SEMについて上で記載したようにして固定して処理した。しかし、脱水して小片に切断した後に、試料を樹脂(Araldite CY212、Agar Scientific)中に37℃で1時間包埋し、次いで、錐体の型の中に60℃で一晩入れた。2−D表面上で成長した細胞の調製について、培養物を、ソーレンセンのリン酸緩衝液中の2%パラホルムアルデヒドおよび2.5%グルタルアルデヒド中で、室温にて1時間固定した。次いで、細胞を組織培養プラスチックからかきとり、15,000rpmにて10分間沈殿させた。その後、沈殿した細胞を0.1Mリン酸緩衝液ですすぎ、1%OsO(水)溶液に1時間浸漬し、次いで、50%、70%、95%および100%のエタノール中で、それぞれのエタノール交換についてある回数、5分間ずつ脱水した。次いで、脱水した細胞沈殿物を樹脂(Araldite CY212)中に37℃で60分間浸した。固化したら、樹脂に包埋した材料の超薄切片を作製し、その後、TEM(Hitachi H7600)により画像化した。
【0078】
トランスグルタミナーゼの酵素アッセイ
組織トランスグルタミナーゼは、実験環境下で線維性の病変の形成において役割を有することが最近示唆されている架橋性酵素である。この酵素の漏出は、in vitro毒性試験のマーカーとしてしばしば用いられ、その存在は、細胞膜への損傷を示す。いくつかのin vivoおよびin vitroでの実験モデル系が、組織トランスグルタミナーゼの発現および活性と、細胞成長の抑制と、プログラムされた細胞死との間の直接的な関係を示す[33〜35]。トランスグルタミナーゼのレベルは、定量的酵素アッセイ(Sigma、UK)により、以前に記載されたようにして[36]分析した。
【0079】
統計分析
実験は、独立して少なくとも3回繰り返して行った。データは、マンホイットニーU検定(5%以上の有意性レベル)を用いて、統計的有意性について分析した。
【0080】
実施例1
水相温度の影響
水相の温度の増加が、ポリHIPE材料の平均の相互接続およびボイド径をともに著しく増加させることが見出された(図2)。平均ボイド径は、50のボイドの組から算出され、それらの直径はSEM顕微鏡写真の画像分析により決定された。算出された平均ボイド径の値(<D>)は、水相温度の増加とともに定常的に増加し(表1)、このことは、おそらく、水相温度の増加に伴いHIPE安定性が減少することによる。水相の温度の増加、およびそのことによる水滴の熱的撹拌は、接触の頻度を増加させ、滴の癒合の可能性がより高まる。Lissantも、エマルジョンを加熱すると、滴同士を分離している界面のフィルム中の界面活性剤が、バルク液相中でより可溶性になり、そのことにより界面から移動することを報告した。このことにより、界面張力が上昇し、よって、滴の癒合が促進される。水相温度が増加すると、HIPEの粘度が減少し、このことは、滴がより高い移動性を有することを示唆することにも注目できる。このことも、癒合を促進する助けになる。
【0081】
癒合を受けるエマルジョンについての滴サイズ分布が、最大が相対的に変化しないままでより大きい滴サイズのほうに伸びるテイルの存在を含有することが、文献に記載されている。ボイドサイズ分布プロット(図3)は、より大きいボイドサイズのほうにテイルが伸びる分布を示す。このテイルは、温度とともに増加し、分布の拡大の増加も観察される。よって、このことは、水相温度の増加によるエマルジョンの不安定性の主要な機構が癒合であるとの意見を強化する。
【0082】
圧入対相互接続径の示差的プロット(図4)は、水相温度が増加すると相互接続サイズが増加することを示す。プロットは、水相温度が増加すると、より高い相互接続径でのより狭い分布と、より低い相互接続径範囲に伸長するテイルとを有する材料が存在することも示す。このことは、各エマルジョンについて、限定的相互接続径が存在することを示唆する。このことは、温度が増加するにつれてより広い分布が得られるボイドサイズ分布とは対照的である。平均の相互接続径(<d>)とボイド径(<D>)との比は、相互接続の程度の基準を提供する。この研究において調製された材料の値を表1に示す。温度が増加すると、ポリHIPE材料の相互接続の程度(<d>/<D>)は減少する。このことは、水相温度が上昇すると、エマルジョンの安定性が減少することを示唆する。
【0083】
実施例2
添加物の影響
エマルジョンの部分的不安定化を、水相中に有機添加物を存在させることにより誘導できる。これらの添加物は、エマルジョンの連続および内部相の両方において部分的に可溶性であるべきであり、このことにより、水分子の滴から滴への拡散が増進され、オストワルド熟成を促進することができる。Lissantは、アセトンまたはメタノールのような共溶媒の添加が、それらの両方の相への可溶性により、界面フィルムを破壊できることを報告した。これらの添加物は、界面の相を希釈し、いくらかの界面活性剤のバルク相への移動を可能にし、そのことによりエマルジョンの滴の癒合を促進する。
【0084】
Mn=300のポリ(エチレングリコール)(PEG300)、メタノールおよびテトラヒドロフラン(THF)を、一連のモル質量および異なる極性を有する種を選択する観点で、水混和性有機種として選択した。各成分を、相分離が生じるまで、漸増量でHIPEに添加した。エマルジョンは、THFまたはPEGよりも多量のメタノールを受容できることが見出され、このことは、それぞれのモル質量を考慮すると特に明らかである(0.1molメタノール、0.02mol THFおよび0.005mol PEG)。これは、少なくともTHFとの比較において、メタノールの水相へのより大きい分配による。THFについてのオクタノール/水の分配係数の値(log Pow)は0.45であり、メタノールについては−0.77である。PEGについてのlog Pow値は見出し得なかった。SEM画像(図5)は、それぞれの添加物が、平均のボイドおよび相互接続サイズの増加を作り出すことを示唆する。SEM顕微鏡写真の画像分析により、ボイドサイズ分布を作成し、これを図6に示す。図6aは、PEGの添加が、添加物が存在しないポリHIPE材料よりも広い分布で、テイルがより大きいボイドサイズのほうに伸長している材料を生成することを示す。このパターンは、メタノール(図6b)およびTHF(図6c)について得られたものと同様であるが、メタノールを用いると、分布への影響はTHFまたはPEGについてのものよりも小さい。THFまたはPEGを用いて調製した材料は、メタノールを用いて調製した材料よりも広い範囲のボイドサイズを含む。PEGおよびTHFは、より高い平均ボイドサイズ値のポリHIPE材料も生成した(表1を参照されたい)。
【0085】
相互接続分布曲線は、用いた全ての添加物について本質的に同様である(図7)。添加物の濃度が増加すると、材料は、より高い平均相互接続径、およびより狭いサイズ分布の方向に行く傾向がある。この傾向の例外は、THFを添加物として用いる場合である。この場合、高いTHF濃度でも、広い分布がまだ得られる。PEGを添加物として用いた場合、平均相互接続径の値は、水相におけるPEG濃度とともに着実に増加する(表1)。この影響は、THFまたはメタノールについては同様に明白でなかった。これらの添加物については、相互接続径に著しい変化を生じるためには、さらにより高い濃度が必要であった。THFの場合、これは平均ボイド径に対して最も著しい影響を有していたので、予期しないことであった。相互接続の程度(<d>/<D>)は、有機成分の最初の添加の後に減少し、このことは、相互接続径に比較してボイド径の大きい増加によりもたらされる。PEGまたはメタノールの最初の添加の後に、相互接続の程度は、水相中の濃度とともに着実に増加する。しかし、THFの場合、相互接続の程度は、濃度の増加とともに減少し続ける。これは、THFが、濃度が1.5%に達するまで相互接続サイズに対して著しい影響を有さないからである。
【0086】
以前の研究においては、共溶媒または添加物の添加に対するポリHIPE材料のボイドサイズの増加は、オストワルド熟成のみを原因としていた。しかし、有機添加物が、エマルジョンの不安定化を導くその他のプロセスに影響することが可能である。以前に論じたように、共溶媒の添加が、バルク相への界面活性剤の移動を引き起こすことにより界面層を破壊でき、このことにより、エマルジョンの滴がより癒合されやすくなる。癒合およびオストワルド熟成の両方の速度を、系への共溶媒の添加により促進し、かつ実際の系に応じて1つのプロセスが支配する(エマルジョン型、界面活性剤型など)ことが可能である。
【0087】
オストワルド熟成の影響を探るために、水の自己拡散係数Dを、8時間の期間にわたって、それぞれの添加物の存在下で監視した(表2)。メタノールが存在する場合、添加物が存在しないエマルジョンに比較して、拡散係数に著しい差はない。PEGおよびTHFを用いる場合、拡散係数に対して著しい影響があり、THFについてより大きい影響が観察される。これらの値は、得られる平均ボイドおよび相互接続径と相関し得る。
【0088】
時間の経過に対する水の拡散係数の変化(ΔD)は、各共溶媒のエマルジョンに対する影響についての可能性がある見識を与え得る(図8)。THFおよびPEGの存在下では、共溶媒が存在しないエマルジョンに比較して、より大きいDwの増加がある。このことは、THFおよびPEGがともに、エマルジョン中の水の拡散速度を増進させ、このことが、オストワルド熟成を増加させ、かつボイドサイズの増加についての説明となる可能性があることを示唆する。添加物についてのオクタノール/水分配係数の値(log Pow)(THF=0.45;メタノール=−0.77)は、THFがメタノールよりも油相中に多く分配され、THFの存在下で安定性がより低いエマルジョンが得られることを示す。
【0089】
メタノールの存在下ではDの著しい増加はなかったので、癒合のようなその他の影響を考慮に入れて、観察されたボイド径の増加を説明しなければならない。癒合は、界面層の希釈、および共溶媒の存在下での界面活性剤の溶解性の増加によるその後の界面活性剤のバルク相への移動により促進され得る。もし事実がそうである場合、界面活性剤の濃度(Cs)が、材料の最終的な形態に影響するはずである。
【0090】
形態(モルホロジー)に対するCの影響を調べるために、異なるCの値を有するポリHIPE材料を、THFおよびメタノールを添加物として用いて調製した。THFは水の拡散を増進させることが示されたので、このことは、THFを用いて得られた形態がオストワルド熟成単独によるものであるのか、または界面からの界面活性剤の喪失も関与するのかを調べることを可能にするだろう。他方、メタノールは、水の拡散速度に対して影響を有さないことが示された。よって、もしメタノールが界面での界面活性剤の濃度に影響していたのならば、Cの増加が形態に対して重大な影響を有するであろうことが予測された。SEM画像(図9a、b)から、HIPEを含有するTHF中の界面活性剤の濃度が増加すると、材料の開放性質は増加するが、ボイド径に対する実際に認識可能な影響はないことが観察できる。しかし、ボイド分布チャートから、界面活性剤の濃度の増加とともに、より低いボイド径への小さいシフトがある(図10a)。しかし、界面活性剤の濃度の減少とともに、分布の平坦化または拡大は観察されない。
【0091】
THFを添加物として用いて、<d>/<D>値(表3)は、界面活性剤の濃度が増加すると増加する。これは、<d>への影響がほとんどなくて<D>がわずかに減少することにより引き起こされ、THFの存在下で界面活性剤の濃度が増加すると、材料の開放性質が増加することのさらなる証拠を提供する。しかし、界面活性剤の濃度の増加とともに平均ボイドサイズのわずかな減少があるが、添加物なしで調製した材料に比較して、<D>の有意な増加がまだ存在する(表3の記載項目3を表1の記載項目1と比較されたい)。このことは、オストワルド熟成が、THFの存在下で調製されたポリスチレンベースのポリHIPE材料の形態を決定する優勢な影響であることを示唆する。
【0092】
界面活性剤濃度も、水相中のメタノールの存在下で増加した。このことは、得られる材料の形態にほとんど影響しなかった(図9c、d)。ボイドサイズ分布プロットから(図10b)、界面活性剤濃度が20から30%w/wに増加すると、分布にほとんど変化はない。界面活性剤濃度が30%w/wまで増加したときに、唯一の認識可能な影響が生じ、このときに、30〜40μmの間の直径を有するボイドの存在する割合が少し増加し、より大きい直径のボイドの存在する割合が減少する。しかし、表3は、<D>の最大値がC=25%のときに得られることを示す。
【0093】
界面活性剤の濃度は、THFを添加物として用いる場合に、相互接続径にほとんど影響しない(図11a)。これとは対照的に、界面活性剤の濃度の20から25%w/wへの増加は、メタノールの存在下では、より大きい相互接続径へのピークのシフトをもたらす(図11b)。しかし、界面活性剤の濃度を25%から30%w/wに増加したときに、<D>の減少も伴うので両方の材料についての<d>/<D>比(表3)は同様であるが、より小さい相互接続径が得られる。
【0094】
これらの結果から、我々は、オストワルド熟成が、メタノールの存在下でのボイド径の増加の原因でないと結論付ける。なぜなら、この添加物は、水の自己拡散速度に影響を有さないからである。水が滴から滴へ輸送され得る別のプロセスは、HIPEの連続相に存在することが知られているw/oミセルの内部にある。界面活性剤濃度の増加は、連続相中のミセルの数を増加させ、このことが、滴間の水の輸送を増進させ得る。界面活性剤の濃度を増加させたときにメタノールを用いて得られる結果を説明するために、我々は、添加された界面活性剤が、2つの相反するプロセスに影響すると結論付ける:これは、メタノールにより喪失された界面活性剤を置き換え、このことによりエマルジョンを安定化し;そしてこれはまた、w/oミセルの数を増加させ、水の輸送を増進させ、エマルジョンを不安定化する。このことについての裏づけは、C=25%での<D>および<d>の観察された最大値に基づき、このことは、2つの独立したプロセスが作動していることを示唆する。最終的な影響は、界面活性剤含量を20から30%(w/w)に増加させたときにメタノールを用いて調製されるポリHIPEの形態にはほとんど変化が観察されないということである。
【0095】
結論として、広い範囲のボイドサイズおよび相互接続サイズを有するポリHIPE材料を製造するために、種々の方法を用いてエマルジョン安定性を制御できることが示された。これらのパラメータの制御は、種々のタイプの細胞の3D培養に用いるためにそれぞれ仕立てられかつ注文に応じた異なる足場構造の製造を可能にする。
【0096】
実施例3
ポリHIPE材料の構造を制御する能力は、三次元の様式での培養細胞の最適成長を確実にするために不可欠である。我々は、スチレンベースのポリマー足場を、in vitroでの日常的な細胞成長に適する薄膜に工学的に改変することにより、薄膜の使用を既成の組織培養プラスチック容器に適合することにより、上記の目的のためのこれらの材料の新規な応用を開発した(例:図12および13を参照されたい)。大きい表面積を有する薄膜を用いるアプローチにより、以下のことが可能になる:(1)静的または動的播種のいずれかにより、材料の構造内への細胞の良好なアクセスが可能になる;酸素および栄養素の良好なアクセス(膜の両側からの場合もある−図12、例1を参照されたい)、ならびに廃棄物および二酸化炭素の除去が可能になり、より大きい寸法のポリマー足場で発生することが見られるような壊死の機会が最小限になる。これらのことにより、三次元での培養細胞の生存性が促進される;(2)三次元で成長している細胞への外因性物質(例えば試験化合物)の良好なアクセスが可能になる;(3)三次元細胞成長の後に、さらなる分析のために、トリプシンを用いるインキュベーションのような酵素処理を用いて、細胞を足場から回収することが可能になる(データは示さず);(4)足場内で成長している細胞および組織を、電子顕微鏡または光学顕微鏡で視覚化できる(それぞれ図14および20)。
【0097】
ポリマー材料の構造を構成する寸法を制御する能力は、細胞成長および挙動の最適化のために必須である。これらの材料の多孔性の微妙な差は、足場に接着し、増殖し、分化しかつ機能する細胞の能力に著しい意味を有する(図15〜17)。90%の細孔容積で製造され、かつin vitro細胞成長のために最適化されたスチレンベースのポリマー材料も、従来の二次元細胞培養プラスチック容器に比較して、細胞の増殖、分化および機能を増進する(図18〜24)。
【0098】
実施例4
代替基材上で成長するHepG2細胞の形態学的特徴
走査型電子顕微鏡により、2−Dまたは3−Dのいずれかの基材上で培養されたHepG2細胞の見かけに著しい差が見出された(図25)。2−D平面上で成長した細胞は、7日後に平坦な伸長した構造を形成した。一般に、2−D培養物は、不均質で無秩序に見える。14日後に、組織培養プラスチック上で培養した細胞は、集団になり、集合体を形成し始めた。14〜21日間成長させた2−D培養物のいくつかの領域では、HepG2細胞は不健全に見え、集まっているものや、崩壊しているものがあった(データは示さず)。3−Dポリスチレン上で培養した細胞は、端から端まで、かつ足場の構造内部に広がっていた。細胞は、当初、集団になってポリマーの物質内に密に詰まった細胞のコロニーを形成し、小さい多数の細胞集合体のようであった。これは、足場上で成長している近接する細胞間のより大きい接着および相互作用を示した。7日後に、3−Dで成長したHepG2細胞の培養物は、2−Dの対応物より均質に見えた。より低い播種密度で成長する培養物では、足場に接着し、ボイドの端から端まで広がる細胞が見られた。このことは、3−Dで成長した細胞が、近接する細胞およびインキュベーション培地と相互作用することにより、どのようにしてそれらの表面積を最大限にし得るかを示す。さらに、3−Dで成長した個々の細胞のより大きい倍率での画像化により、2−D表面で成長した細胞に比較して、微繊毛の数が著しくより多いことが明らかになった。
【0099】
透過型電子顕微鏡を用いて、異なる材料上で培養したHepG2細胞の超微細構造の特徴を調べた(図26)。一般に、2−Dまたは3−Dのいずれかの基材上で成長した無処置の細胞全体の分析は、ミトコンドリア、核、小胞体および脂質小滴を含むほとんどの哺乳動物細胞に典型的な一連の細胞小器官を含んでいた。3−Dで成長した細胞調製物の超薄切片は、細胞が、どれほど密接にポリスチレン足場の周囲および内部で成長しているかを明確に示した。3−D表面で培養した細胞は、肝臓組織に典型的な多数の形態学的特徴を示した。核膜は正常に見えた。視覚化された多数のミトコンドリアは、正常範囲内の構造的な多様性を示した。滑面もしくは粗面小胞体、ゴルジ複合体、またはグリコーゲン含量のいずれにおいても、特に病的な変化は検出できなかった。これらの超微細構造の特徴の存在は、3−D基材で成長したHepG2細胞に、代謝活性があることを示した。哺乳動物の肝臓および腎臓に豊富にある偏在細胞小器官であるペルオキシソームの集団の存在(図26B)は、特に助長していた。肝臓ペルオキシソームは、分化した肝細胞に関連する経路である胆汁酸合成の過程においてコレステロールの側鎖のβ酸化を担うことが知られている[8]。
【0100】
天然の肝臓組織では、肝細胞は、洞様血管に面する2または3の基底面を有する極性を有し、一方、近接する細胞は毛細胆管を形成する。3−Dで成長した細胞の顕微鏡写真により、密な接合をもって並んだ微繊毛が並んだチャネルをしばしば共有する、近接する肝細胞が明らかになった。この観察は、培養HepG2細胞が極性を有し、毛細胆管に類似のチャネルを形成可能であることを示唆する[9]。これらの構造は、微繊毛において豊富であることが知られており、細胞で代謝される胆汁の成分は、通常、細管に分泌される。
【0101】
実施例5
3−D細胞成長の間に増進された細胞生存性:
我々は、この研究において用いた表面が、生存HepG2細胞の成長を支持するように生物適合性であるかを調べた。図27Aは、2−D対照表面および我々の3−D足場で成長した肝細胞についてのMTT吸光度の値を示す。生存細胞は、21日目まで両方の基材上でうまく培養された。このアッセイにより、細胞生存性は、3−Dで成長したときに著しく増進されたことが明らかになった。足場上で成長する細胞が、細胞当たりの空間が限られている平面に比較して、より大きい接着および成長の表面積を有することに注目すべきである。可能であれば、この差を考慮に入れ、in vitroアッセイについて値を標準化した。
【0102】
実施例6
3−D細胞成長の間に増進された細胞代謝:
HepG2細胞の代謝活性を、アルブミン分泌のレベルの決定により評価した。図27Bは、2−D組織培養プラスチック足場および3−D足場上でのアルブミン分泌の時間経過を示す。値は、細胞数のいずれの違いも考慮に入れて標準化した。試験した全ての時間点において、2−Dで成長した細胞に比較して、3−D表面上で成長した培養物において、アルブミン濃度が著しくより高いことが明らかに観察できる。平坦組織培養プラスチック上で成長した培養物中のアルブミンのレベルは、14日目にピークになり、21日目に迅速に減少した。このことは、3−D足場で成長した培養物には起こらず、3−D環境が細胞機能のよりよい助けになることを示す。
【0103】
実施例7
2−Dおよび3−Dで成長した細胞に対するメトトレキセートの影響:
2−Dおよび3−Dのフォーマットで成長したHepG2細胞を、種々の濃度のMTXで処理して、公知の細胞毒に対するそれらの耐性を評価した。それぞれの処理期間の後に、培養物を生化学的(図28)および形態学的な変化(図29および30)について研究した。
【0104】
図28Aは、種々の濃度のMTXで処理した1および7日後の細胞生存性を示す。HepG2単層をMTXで処理すると、24時間後に15μMのMTXで吸光度が漸増したが、7日目に吸光度のレベルは低下し始めた(データは示さず)。MTX濃度の増加とともに、2−D表面上で成長する細胞の生存性は、特に高レベルの細胞毒で明らかに減少した。3−D培養物において、MTXに対する感受性は、より低い濃度のMTXでは明確でなかった。62μMのMTXでのみ、対照の値に比較して吸光度のレベルが著しく低下した。このパターンは、7日間成長した3−D培養物においても見られたが、単層で7日間成長した細胞は、125μMのMTX濃度で吸光度レベルの急激な減少を示した。これらの結果は、これらの条件下で2−D表面上で培養した細胞が、3−D足場で培養した細胞に比較して、より短い期間生存可能であることを意味する。
【0105】
HepG2細胞の代謝活性は、MTXの濃度を増加させることにより著しく減少した(図28B)。2−Dで成長した細胞は、試験した最低のMTX濃度(8μM)まで感受性であったが、3−Dで成長した細胞によるアルブミン分泌にはこのレベルは大きく影響しなかった(データは示さず)。しかし、MTXの増加したレベル(15.6μM)では、足場上で培養された細胞によるアルブミン分泌が減少し始めた。細胞毒性攻撃の間に、2−D材料に比較して、3−Dプラスチック上で成長した細胞において、より高いレベルのアルブミン分泌が観察された。これらのデータは、肝細胞の細胞機能が、MTXの存在下で、用量依存的な様式で損なわれ、3−Dで成長した細胞は細胞毒に対してより耐性であるようであることを示す。
【0106】
トランスグルタミナーゼの測定は、MTX濃度の増加に応答するHepG2細胞毒性についての試験として行った。我々は、MTXのトランスグルタミナーゼレベルに対する影響を、細胞毒に対する曝露の1、7および10日後の2−Dおよび3−D培養物で調べた。(図28C)。MTXを添加していない対照培養において、トランスグルタミナーゼのレベルは、最少でかつ同様のレベルであることが見出された。31μMのMTXのような薬剤の濃度の増加とともに、2−D培養物は、3−D培養物とは異なって、著しくより高いレベルのトランスグルタミナーゼを分泌し、これは用量依存的な様式で増加した。これらの違いは、3−D対応物と比較して、7および10日目の2−D培養物の全てで統計的に有意であった。3−D培養物において、より高い薬剤の濃度では培養培地中に分泌された酵素レベルが徐々に上昇したが、MTX濃度の増加はトランスグルタミナーゼレベルの著しい増加を引き起こさなかった。これらのデータは、3−D多孔性材料上の細胞が、細胞毒攻撃のレベルの増加に対してより耐性であることをさらに示唆する。
【0107】
走査型(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)は、MTXでの処置の後の細胞構造の濃度依存的変化を示した。このような形態学的変化の代表的な例を図29および30に示す。正常で健全なHepG2細胞は、それらの細胞表面に多数の微繊毛を発現する。MTXで攻撃すると、2−D表面上で成長した細胞は、用量依存的な様式でそれらの微繊毛を徐々に失ったが、足場上で成長した細胞は、この構造的特徴を発現し続けた(図29)。MTXのレベルの増加に応答して、単層として成長したHepG2細胞の表面は、まず、微繊毛の数が減少し、次いで、平坦になり始め、そして崩壊し始めた。試験した最高のMTX濃度(125μM)で成長した細胞の微繊毛は平坦化の徴候を示し始めたが、3−D足場上で成長したHepG2細胞の構造についてはそのような変化は観察されなかった。
【0108】
TEMによるさらなる試験により、細胞毒により攻撃された細胞についての超微細構造の変化が明らかになった(図30)。2−D表面上で成長した細胞は、対照培養物において肉眼で確認できる核小体を有する顕著な核を有する健全な形態を有した。8μMのMTXでの処理の後に、良好な核の構造を有する細胞は、細胞壊死の領域も明確であったが、2−D培養物中に肉眼で確認可能なままであった。増加するMTXのレベルで処理した肝細胞2−D培養物は、著しい細胞毒性を示し、ほとんどの細胞は高レベルのMTXで壊死し始めた。小胞体の脱顆粒およびリボソームゴーストの存在のような特徴も観察された。さらに、組織化された構造を通常は欠く顆粒状細胞形質および塊になった染色性顆粒が核のいたるところに散在していた。アポトーシスの細胞レベル下での証拠も観察された。原形質膜は破裂し、おそらく脂質小滴および細胞変性の存在を反映する著しい量の空胞化が観察された。細胞の収縮とともに、細胞間の接触の喪失とそれに続くアポトーシス体(オートファゴリソソーム)の形成および細胞死も明らかであった。最高濃度では、細胞の残存物の「ゴースト」が観察され、より高いレベルのMTXに曝露された2−Dで成長した細胞が、細胞死の進行した段階を経たことを示す。
【0109】
これとは対照的に、3−D培養物で成長し、かつMTXに曝露されたHepG2細胞は、細胞毒の影響に対して、著しくより耐性であった。MTXのより低い濃度で処理した細胞の超微細構造は、その細胞質中に正常な細胞小器官を有した(RER、リボソーム、ミトコンドリアおよび脂質小滴)。核は、正常な異質染色質および核小体を示した。これらの特徴は、試験したMTXのほとんどの濃度で良好に維持された。しかし、125μMのMTXの存在下の一部の細胞では、核膜が不規則な形態を有し、ミトコンドリアのようなその他の細胞内特徴部は、わずかに異常と思われた。よって、より高い濃度のMTXでは、3−D培養物の細胞は、著しくより低い濃度の細胞毒で観察された2−Dで培養された細胞が経験したものと同様の変化を受け始めているようである。
【0110】
結論として、既成の細胞培養プラスチック容器での使用に適合されたスチレンベースのポリマー足場上での細胞の成長は、in vitroでの三次元細胞成長の機会を提供する。細胞の挙動は、細胞が成長する環境により影響され、三次元での細胞成長は、より実際的であり、体内で細胞が通常経験する成長条件により似ている。本明細書に記載される器具は、細胞モデルおよびアッセイからのより正確な読み取りのために非常に貴重な三次元で細胞を日常的に成長させる機会を研究者に提供する。この器具は、不活性で、使用が容易であり、滅菌可能であり、製造および生産が安価でもあり、頑強で再生可能であり、不定の貯蔵寿命を有し、かつ多くの応用に適合可能である。
【0111】
実施例8
ポリスチレン足場の使用についてのさらなる応用において、我々は、足場内のコラーゲンゲルまたは溶液コーティングの存否での皮膚繊維芽細胞の層上の培地/空気界面で成長する表皮ケラチン細胞の層状のシートからなる哺乳動物の皮膚の器官型モデルを開発した。この系は、天然の皮膚に非常に類似する極性を有する上皮の長期間の成長および維持を可能にする。この技術は、基礎科学、医薬の開発および化合物の毒性の評価を含む広い範囲の応用において、皮膚上皮細胞の機能を調べるために用い得る。
【0112】
哺乳動物の皮膚の成長のための器官型モデルは、よく確立されており、このことをin vitroで達成するために多くの手順が開発されている(例えばBohnertら 1986;Ikutaら 2006;Prunierasら 1983;Schoopら 1999)。現存する手順は、コラーゲンゲル混合物内の皮膚繊維芽細胞の成長を必要とし、その際にケラチン細胞は2層のサンドイッチ内に播種される。ゲルは時間が経過すると収縮する。次いで、これを空気/培地界面に上昇させて、細胞成長および活性の変化を可能にする。ゲルの取扱いは難しく、時間、技術および集中を要する。その結果、このモデルはハイスループットスクリーニングの方策、または変動の減少が必要でありかつ取扱いの容易さが必要とされる状況下には容易に適合可能でない。
【0113】
ここに、我々は、器官型皮膚共培養のための皮膚繊維芽細胞およびコラーゲンゲルの日常的な使用および取扱いをより容易に可能にする我々の3Dポリスチレン足場の使用を示す。簡単に、皮膚繊維芽細胞の培養物を、適切な成長培地中の我々の3Dポリスチレン足場の表面上に播種する(図31a)。細胞は、3D膜の表面上および構造の中に成長する(図32)。このことは、コラーゲン溶液/ゲルまたはコラーゲン溶液での足場のプレコーティングの存否で達成できる(例えばI型コラーゲン)。不活性の3Dプラスチック足場は、培養繊維芽細胞のための支持を提供する。繊維芽細胞が存在する足場は、容易に取扱いでき、必要であれば、新鮮な細胞培養プラスチック容器(例えば6ウェルプレート)に移動できる。さらに、キャストコラーゲンゲルの収縮が最小限になり、このことにより実験間の変動が減少する。繊維芽細胞培養物の確立の後に、器官型共培養を、繊維芽細胞の表面上に上皮ケラチン細胞(例えばHaCaT細胞)を播種することにより設定する(図31b)。ケラチン細胞培養が確立されたときに(約2日間)、ポリスチレン足場の表面を空気−液体界面まで上昇させる。空気曝露は、ケラチン細胞の層化を誘導する(図31cおよび33)。
【0114】
哺乳動物皮膚の器官型共培養のために3D多孔性ポリスチレン足場を用いることの利点は、次のとおりである:
・細胞(および適切であればゲル)の支持、および皮膚繊維芽細胞培養のための3D環境を提供する。
・繊維芽細胞培養/コラーゲンゲル混合物の取扱いの容易さを可能にし、ゲル/培養物の破壊または損傷を回避する。
・コラーゲンゲルの収縮を最小限にする。
・器官型培養物を他の容器に容易に自由に移動することを可能にする。
・培地のレベルを低減するかまたは足場自体を上昇させることにより、空気/液体界面へ培養物を上昇させる(例えばアダプタとともにウェルインサートの構成を用いて、インサートの高さを増加させる)。
【0115】
(参考文献)
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【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】PolyHIPE材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図1における球状キャ日ティはボイドであり、隣接するボイドを繋ぐホールが相互接続と呼ばれる。スケールバー=20μm
【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロセルラー高分子材料を含む細胞培養基材であって、前記マイクロセルラー高分子材料の細孔容積が88%から92%である基材。
【請求項2】
前記細孔容積が約90%である、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記基材が、疎水性エラストマーを20%(w/w)から40%(w/w)の濃度で含有する、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
前記疎水性エラストマーが、25%(w/w)から35%(w/w)の濃度である、請求項3に記載の基材。
【請求項5】
前記疎水性エラストマーが、30%(w/w)の濃度で提供される、請求項3又は4に記載の基材。
【請求項6】
前記エラストマーが、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及びn−ヘキシルアクリレートからなる群から選択される、請求項3から5のいずれか一項に記載の基材。
【請求項7】
前記エラストマーが、2−エチルヘキシルアクリレートである、請求項6に記載の基材。
【請求項8】
2−エチルヘキシルアクリレートが28%(w/w)から32%(w/w)の濃度で提供される、請求項6又は7に記載の基材。
【請求項9】
2−エチルヘキシルアクリレートが30%(w/w)の濃度で提供される、請求項8に記載の基材。
【請求項10】
前記細胞培養基材がポリビニルを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の基材。
【請求項11】
前記ポリビニルがポリスチレンである、請求項10に記載の基材。
【請求項12】
前記ポリスチレンがスチレンモノマー及びジビニルベンゼンを含む、請求項11に記載の基材。
【請求項13】
前記細胞培養基材が界面活性剤を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の基材。
【請求項14】
前記界面活性剤が、20から30%(w/w)の濃度で提供される、請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記界面活性剤が、24から26%(w/w)の濃度で提供される、請求項14に記載の基材。
【請求項16】
前記界面活性剤が、25%(w/w)の濃度で提供される、請求項15に記載の基材。
【請求項17】
前記細胞培養基材が、高分子材料からなる複数の膜又は薄層を含み、前記膜/層が50〜1000ミクロンの厚さである、請求項1から16のいずれか一項に記載の基材。
【請求項18】
前記膜/層が、約120〜150ミクロンの厚さである、請求項17に記載の基材。
【請求項19】
前記マイクロセルラー高分子材料が有機モノマーを更に含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の基材。
【請求項20】
前記有機モノマーが、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、3−ビニルベンジルクロリド、4−ビニルベンジルクロリド、パラ−アセトキシスチレンからなる群から選択される、請求項19に記載の基材。
【請求項21】
前記マイクロセルラー高分子材料が有機ポリマーを更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の基材。
【請求項22】
前記有機ポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルアクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(3−ビニルベンジルクロリド)、ポリ(4−ビニルベンジルクロリド)、ポリ(パラ−アセトキシスチレン)からなる群から選択される、請求項21に記載の基材。
【請求項23】
前記細胞培養基材が、該基材に接着する細胞の接着、増殖及び/又は分化を促進するコーティングの提供によって修飾された表面を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の基材。
【請求項24】
前記修飾が、タンパク質コーティングの提供である、請求項23に記載の基材。
【請求項25】
前記タンパク質コーティングが、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、非コラーゲンベースのペプチドマトリクスからなる群から選択される少なくとも1つの分子を含む、請求項24に記載の基材。
【請求項26】
前記タンパク質コーティングが、ポリアミノ酸コーティングを含む、請求項24に記載の基材。
【請求項27】
前記ポリアミノ酸コーティングが、ポリLオルニチン又はポリLリジンを含む、請求項26に記載の基材。
【請求項28】
前記細胞培養基材の表面が物理的に修飾される、請求項23に記載の基材。
【請求項29】
前記基材が、ガスプラズマ処理により修飾された表面を含む、請求項28に記載の基材。
【請求項30】
前記表面が、アンモニアを含むガスプラズマ処理によって修飾される、請求項29に記載の基材。
【請求項31】
前記表面が、酸素を含むガスプラズマ処理によって修飾される、請求項29に記載の基材。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材を含む細胞培養容器。
【請求項33】
前記細胞培養基材が、細胞及び細胞培養媒体を更に含む、請求項32に記載の容器。
【請求項34】
前記細胞が真核細胞である、請求項33に記載の容器。
【請求項35】
前記真核細胞が、哺乳動物細胞、植物細胞、真菌細胞、粘菌からなる群から選択される、請求項34に記載の容器。
【請求項36】
前記哺乳動物細胞が霊長類細胞である、請求項35に記載の容器。
【請求項37】
前記霊長類細胞はヒト細胞である、請求項36に記載の容器。
【請求項38】
前記哺乳動物細胞が、表皮角化細胞、繊維芽細胞、表皮細胞、ニューロングリア細胞又は神経細胞、肝細胞又は肝細胞衛生細胞、間葉細胞、筋細胞、腎細胞、血液細胞、膵臓β細胞、内皮細胞からなる群から選択される、請求項35から37のいずれか一項に記載の容器。
【請求項39】
前記細胞が腫瘍由来である、請求項35から38のいずれか一項に記載の容器。
【請求項40】
前記細胞が遺伝学的に変性されている、請求項33から31のいずれか一項に記載の容器。
【請求項41】
前記哺乳動物細胞が幹細胞である、請求項35から40のいずれか一項に記載の容器。
【請求項42】
前記幹細胞が、造血幹細胞、神経幹細胞、骨幹細胞、筋肉幹細胞、間葉幹細胞、表皮幹細胞、内皮幹細胞、胚性幹細胞、胚性生殖細胞からなる群から選択される、請求項41に記載の容器。
【請求項43】
前記細胞が、原核細胞又は遺伝学的に変性された原核細胞である、請求項33に記載の容器。
【請求項44】
前記原核細胞が細菌性細胞である、請求項43に記載の容器。
【請求項45】
前記細胞培養容器はバイオリアクターである、請求項33から44のいずれか一項に記載の容器。
【請求項46】
細胞を培養する方法であって、
i)a)細胞、
b)請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材、
c)前記細胞の成長を支持するのに十分な細胞培養媒体
を含む細胞培養容器を提供する工程、及び
ii)前記細胞の増殖及び/又は分化を促進する細胞培養条件を提供する工程を含む方法。
【請求項47】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞は肝細胞である、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が原核細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記原核細胞が細菌性細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
細胞の増殖、分化又は機能に影響する薬剤をスクリーニングする方法であって、
i)少なくとも1つの細胞及び請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材を提供する工程、
ii)少なくとも1つの試験すべき薬剤を添加する工程、
iii)前記細胞の増殖、分化又は機能に対する薬剤の活性を監視する工程を含む方法。
【請求項53】
前記細胞が肝細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
細胞分化に関連する遺伝子を同定する方法であって、
i)少なくとも1つの細胞及び請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材を提供する工程、
ii)前記細胞培養物に含まれる細胞から核酸を抽出する工程、
iii)前記抽出した核酸を核酸アレイと接触させる工程、及び
iv)前記核酸アレイ上の結合パートナーへの前記核酸の結合を示すシグナルを検出する工程を含む方法。
【請求項55】
前記細胞が肝細胞である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項52から55のいずれか一項に記載の方法において、
i)前記核酸の前記結合パートナーへの結合によって生成されたシグナルを照合する工程、
ii)照合したシグナルを解析可能な形態に変換する工程、そして場合によって、
iii)解析したデータの出力を提供する工程を付加的に含む方法。
【請求項57】
正常細胞からの癌性細胞の発生を分析するインビトロの方法であって、
i)少なくとも1つの細胞及び請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材を含む調製物を形成する工程、
ii)細胞トランスフォームを誘発することのできる少なくとも1つの薬剤を添加する工程、
iii)前記細胞のトランスフォームに対する前記薬剤の効果の有無を監視する工程を含む方法。
【請求項58】
前記細胞が肝細胞である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
マイクロセルラー高分子材料を製造する方法であって、
i)疎水性エラストマーを20%(w/w)から40%(w/w)で含有する高内相エマルジョンを含む調製物を形成する工程、
ii)触媒を含む調製物を形成する工程、
iii)(i)及び(ii)の調製物を混合する工程、
iv)混合した調製物をインキュベーションし、高内相エマルジョンポリマーを形成させる工程を含む方法。
【請求項60】
前記疎水性エラストマーが、25%(w/w)から35%(w/w)の濃度で提供される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記疎水性エラストマーが、約30%(w/w)の濃度で提供される、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
前記エラストマーが、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート及びn−ヘキシルアクリレートからなる群から選択される、請求項59から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
請求項59から62のいずれか一項に記載の方法において、
前記工程ii)における調製物の温度が50℃から80℃の温度に加熱される方法。
【請求項64】
前記工程ii)における調製物が50℃又は60℃又は80℃に加熱される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記工程i)における調製物がスチレンモノマーを含有する、請求項59から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記工程i)における調製物がジビニルベンゼンを含有する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記工程i)における調製物が、20〜30%(w/w)の濃度で提供される界面活性剤を含有する、請求項59から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記界面活性剤が、24〜26%(w/w)の濃度で提供される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記界面活性剤が、およそ25%(w/w)の濃度で提供される、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記工程i)における調製物が、60%(w/w)のスチレン、30%(w/w)の2−エチルヘキシルアクリレート、10%(w/w)のジビニルベンゼン及び25%の界面活性剤を含有する、請求項59に記載の方法。
【請求項71】
前記工程iv)における高内相エマルジョンポリマーがスライスされている、請求項59から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記ポリマーが、50〜1000ミクロンの厚みの部材にスライスされている、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記区分が約120ミクロンの厚みである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
請求項59から73のいずれか一項に記載の方法によって得られた又は得られうる高内相エマルジョンポリマー。
【請求項75】
前記高内相エマルジョンポリマーが90%の細孔容積を有する、請求項74に記載のポリマー。
【請求項76】
請求項1から31のいずれか一項に記載の高内相エマルジョンポリマーを含む基材の細胞培養のための使用。
【請求項77】
前記高内相エマルジョンポリマーが、およそ90%の細孔容積を有する、請求項76に記載の使用。
【請求項78】
前記高内相エマルジョンポリマーが、およそ90%の細孔容積を有する、請求項77に記載の使用。
【請求項79】
請求項1から31のいずれか一項に記載の高内相エマルジョンポリマーを含む基材の、薬剤の肝臓毒性を測定するための使用。
【請求項80】
前記薬剤が化学治療薬である、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
前記薬剤がウイルス性遺伝子治療ベクターである、請求項79に記載の使用。
【請求項82】
薬剤の肝臓毒性を測定する方法であって、
i)少なくとの1つの肝細胞及び請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材を含む細胞培養物を提供する工程、
ii)少なくとも1つの試験すべき薬剤を添加する工程、
iii)前記肝細胞の増殖、分化又は機能に対する薬剤の活性を、当該薬剤の毒性の尺度として監視する工程を含む方法。
【請求項83】
前記薬剤が化学治療薬である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記薬剤がウイルス性遺伝子治療ベクターである、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
角化細胞及び/又は角化細胞前駆体幹細胞を成長及び分化させる方法であって、
i)請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材、繊維芽細胞支持細胞及び細胞培養媒体を含む調製物を形成する工程、
ii)前記支持細胞を培養して、前記支持細胞で実質的に被覆された細胞培養基材を提供する工程、
iii)前記被覆された基材を角化細胞及び/又は角化細胞前駆体幹細胞と接触させる工程、及び
iv)混合した細胞調製物を、前記角化細胞及び/又は角化細胞前駆体幹細胞の成長及び分化を導く条件下で培養する工程を含む方法。
【請求項86】
前記繊維芽細胞支持細胞が皮膚繊維芽細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記繊維芽細胞支持細胞が、角膜繊維芽細胞、腸粘膜繊維芽細胞、口腔粘膜繊維芽細胞、尿道口繊維芽細胞、又は膀胱繊維芽細胞からなる群から選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記角化細胞が表皮角化細胞である、請求項85から87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記繊維芽細胞がヒト繊維芽細胞である、請求項85から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記角化細胞がヒト角化細胞である、請求項85から89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記調製物がコラーゲンを更に含む、請求項85から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
コラーゲンが1型コラーゲンである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記コラーゲンがゲルとして提供される、請求項91又は92に記載の方法。
【請求項94】
前記コラーゲンが溶液として提供される、請求項91又は92に記載の方法。
【請求項95】
少なくとも前記角化細胞が移動して空気に接触し、それにより角化細胞の層化を誘発する、請求項85から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞培養基材が、およそ300ミクロンの厚みを持つ複数のスライスされたマイクロセルラー高分子材料を含む、請求項85から95にいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
薬剤の試験方法であって、
i)試験すべき薬剤を含有する請求項85から96のいずれか一項に記載の調製物を形成する工程、
ii)前記薬剤を含まない対照調製物と比較した角化細胞成長及び/又は分化に対する前記薬剤の効果を監視する工程を含む方法。
【請求項98】
請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材、細胞培養容器及び前記細胞培養容器と協働するように適合され、前記細胞培養基材と前記細胞とを含有する挿入物を具備する細胞培養装置。
【請求項99】
前記細胞培養基材が繊維芽細胞及び角化細胞を含む、請求項98に記載の装置。
【請求項100】
請求項1から31のいずれか一項に記載の細胞培養基材の、分化した皮膚合成物の調製のための使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−535025(P2009−535025A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507144(P2009−507144)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001464
【国際公開番号】WO2007/125288
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(509058210)レインナーベート リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】REINNERVATE LIMITED
【Fターム(参考)】