説明

三次元位置測定構造

【課題】測定作業の効率化および測定精度の向上に資することが可能な測定マーカを提供する。
【解決手段】三次元位置測定器102を使用して被験者104の身体の各部位から位置データを取得する三次元位置測定構造100であって、三次元位置測定器102のプローブ116の先端に設けられた球形のボール部と、プローブ116に取り付ける長尺なジグ部材110と、被験者104の身体の各部位に取り付けられる磁性を有するマーカ部材106とを備える。上記のジグ部材110は、一端に設けられボール部と連結してボールリンクを形成するホルダ部112と、他端に設けられた磁性を有する球体部114とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元位置測定器を使用して対象物の各部位から位置データを取得する三次元位置測定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両開発において、車室内における乗員の身体の寸法を測定することは、車室内の快適性向上のために、また衝突時等の安全性確保のために重要である。その測定方法として、一般的には三次元位置測定器を使用しての測定が行われている。
【0003】
近年、接触式の三次元位置測定器として、設置台等に固定された多関節のアームと、そのアームの先端に設けられたプローブとを備えた三次元位置測定器が普及している。三次元位置測定器のプローブは、直径数ミリ程度の球体や(例えば特許文献1)、尖った形状などになっている。三次元位置測定器はプローブの三次元的な位置データを取得することが可能であって、プローブを測定対象物の各部位に接触させてその位置データを取得することで、測定対象物の形状を三次元的に測定することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−329508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両開発において乗員の姿勢などを測定する場合、上記のプローブを被験者の身体の各部位に接触させることで位置データが取得されている。プローブは、実験者の目視によって被験者の身体の各部位に接触させられる。その際、被験者の身体の各部位には、測定点としてあらかじめ目印を付けておく必要がある。
【0006】
例えば、被験者の皮膚に直接に印を書き加える手法が考えられる。しかし、脱衣が必要となるため、被験者に強い抵抗感を与えてしまう。試験は外部の一般被験者や女性の被験者を対象に行われる場合も考えられるため、このような手法は一般的な人間工学実験では実施が困難である。
【0007】
また、衣服の上から測定を行う手法も考えられるが、その場合には実験者が被験者の身体の各部位を触診して測定点を確認する必要が生じる。その場合の触診を省く手段として、例えば、被験者の身体の各部位に所定のマーカ部材をサポータやベルトで巻きつけて固定しておく方法がある。しかし、被験者の動作に伴って位置がずれるおそれがある。一方、位置ずれを防ぐためにサポータの拘束力を高めてしまっては、被験者に苦痛を与えてしまう。
【0008】
さらには、マーカ部材があらかじめ取り付けられた、被験者の身体に密着する薄手の布地のスーツなども考案されている。しかし、各被験者の身体に合わせた様々な寸法のスーツが必要であってコストがかさむほか、被験者に与える抵抗感も少なくない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、測定作業の効率化および測定精度の向上に資することが可能な三次元位置測定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる三次元位置測定構造の代表的な構成は、三次元位置測定器を使用して対象物の各部位から位置データを取得する三次元位置測定構造であって、三次元位置測定器のプローブの先端に設けられた球形のボール部と、ボール部に取り付ける長尺なジグ部材と、対象物の各部位に取り付けられる磁性を有するマーカ部材とを備え、ジグ部材は、一端に設けられボール部と連結してボールリンクを形成するホルダ部と、他端に設けられた磁性を有する球体部とを有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、球体部とマーカ部材とは磁力によって引き合うため、容易に接触可能である。また上記構成では、三次元位置測定器を動かして球体部を中心にした球表面の位置データ(座標値)を取得し、そこから球体部の座標を算出する。その際、マーカ部材と球体部が磁力により引き合っているため球体部の位置ずれが生じにくく、高い精度で座標値を取得することができる。したがって当該三次元位置測定構造であれば、測定点として設定した位置において、効率よくかつ精度良く三次元位置測定器による測定を行うことが可能となる。なお、上記の球体部とマーカ部材は、少なくともどちらか一方が磁石(例えば永久磁石)であればよい。
【0012】
上記のマーカ部材は、表面中央に球体部の形状に応じて窪んだ凹部を有するとよい。この凹部を有することで、球体部がより接触させやすく、かつ接触させた後により位置ずれが生じにくくなる。したがって、測定をさらに簡易かつ精度良く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、上記構成によれば、測定作業の効率化および測定精度の向上に資することが可能な測定マーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかる三次元位置測定構造の概要を示す図である。
【図2】図1のジグ部材を示す図である。
【図3】図1のマーカ部材を示す図である。
【図4】本実施形態にかかる三次元位置測定構造による三次元位置測定を詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態にかかる三次元位置測定構造100の概要を示す図である。図1(a)は、三次元位置測定構造100の全体構成を示している。当該三次元位置測定構造100は、三次元位置測定器102を使用して対象物の形状の三次元的な測定を行う。本実施形態では被験者104の身体の形状を三次元的に測定する場合を想定している。
【0017】
図1(a)では、マーカ部材106を被験者104の肩部108に取り付けている。このように、マーカ部材106は、測定点として設定した部位に取り付けて使用する。そして、マーカ部材106には、三次元位置測定器102に取り付けたジグ部材110が接触され、三次元位置測定器102によってマーカ部材106の位置における位置データが取得される。
【0018】
図1(b)は、図1(a)のプローブ116を単独で示す図である。図1(b)に示すように、プローブ116は先端に球形のボール部117を有するいわゆるボールプローブである。図1(a)のジグ部材110は、このボール部117に連結している。
【0019】
図2は、図1のジグ部材110を示す図である。図2(a)は、ジグ部材110を単独で示している。図2(a)に例示するように、ジグ部材110は長尺な形状の部材であって、一端にホルダ部112を有し、他端に球体部114を有している。
【0020】
ホルダ部112は、図1(b)に示した三次元位置測定器102のボール部117と連結する部位である。図2(b)は、図2(a)のホルダ部112を分解させた図である。図2(b)に示すように、ホルダ部112には、樹脂製のキャップ部118がはめ込まれている。このキャップ118は、ボール部117(図1(b)参照)を通してプローブ116に取り付けられた後、ホルダ部112へはめ込まれることでホルダ部112とボール部117とを連結させる。これにより、ホルダ部112とボール部117はボールリンクを形成し、円滑に動く関節として機能することが可能になる。
【0021】
なお、以上説明したボールリンクの構成は例示に過ぎない。例えば、ホルダ部が多少の弾性を有するよう樹脂で構成し、そのホルダ部へボール部117をはめ込む構成とすれば、キャップ部は必要なくなる。このように、ホルダ部112とボール部117(図1(b)参照)とがボールリンクを形成し間接として機能することができれば、本実施形態のジグ部材110に好適に用いることができる。
【0022】
図2(b)の球体部114は、材質に磁性を有する金属素材が用いられている。この球体部114は、図1(a)に示したマーカ部材106に接触させる部位である。球体部114が磁性を有し球形を描いている理由は、マーカ部材106に接触させやすくさせ、また接触させた際にジグ部材110を円滑に傾けられるようにするためである。
【0023】
図3は、図1のマーカ部材106を示す図である。図3(a)は、マーカ部材106の拡大図である。図1に示すように、マーカ部材106は円板形状であって、被験者の104の皮膚に粘着テープ等で取り付けることができる。マーカ部材106は、材質に磁性を有する金属素材が用いられていて、磁力を有している。この構成によって、マーカ部材106と球体部114(図2(a)等参照)とは磁力によって引き合い、互いに接触させやすい構成となっている。
【0024】
なお、マーカ部材106と球体部114とは磁力によって引き合う構成であればよく、どちらか一方のみが磁石であってもよい。また、互いに磁石となっている構成である場合は、それぞれの対向する部位が互いに異なる磁極を有すると好適であることは言うまでもない。
【0025】
マーカ部材106は、表面128の中央に凹部130を有している。図2(b)は図2(a)のA−A断面図である。図2(b)に示すように、マーカ部材106の凹部130は、曲面132を描いて窪んでいる。この曲面132は、図2(a)等に示した球体部114の形状に応じたものである。このような凹部130を有することで、球体部114がより接触しやすくなり、かつ接触した後に球体部114の位置ずれがより生じにくくなる。
【0026】
マーカ部材106は、凹部130やその中央付近に磁極を有する構成としてもよい。例えば、円筒状の磁石を用いて凹部とし、その周囲の部位を合成樹脂等で形成した構成としてもよい。また、ラジアル着磁で着磁したリング型磁石を利用した構成としてもよい。
【0027】
図4は、本実施形態にかかる三次元位置測定構造100による三次元位置測定を詳細に示す図である。図4に示すように、当該三次元位置測定構造100は、ジグ部材110を介して三次元位置測定器102をマーカ部材106に接触させ、そのマーカ部材106の位置における位置データを取得する。詳細には、三次元位置測定器102はボール部117の中心における座標値を取得する構成であって、三次元位置測定装置102を動かすことで球体部114を中心にした球表面(軌跡R1)の座標値を取得する。そして、取得した座標値からジグ部材110の形状等を考慮して、マーカ部材106と接触した皮膚表面の中心座標を算出する(例えば3箇所で測定を行い、各測定位置がなす三角形から皮膚表面への垂線を算出する方法などが考えられる。)。このようにして被験者104の身体の各測定点における座標を算出し、被験者104の身体の三次元的な測定を行う。
【0028】
なお、マーカ部材106の変形例として、一つのマーカ部材に複数の凹部を設けた構成としてもよい。例えば3つの凹部を設けて、各凹部に球体部114を接触させて測定を行い、3つの座標値から皮膚表面への垂線を算出する構成も実現可能である。
【0029】
以上説明したように、当該三次元位置測定構造100によれば、球体部114とマーカ部材106とが磁力によって引き合うため、例えばマーカ部材106が衣服134に覆われていてもマーカ部材106と球体部114とは容易に接触可能となっている。また、磁力により引き合っていることで、マーカ部材106と球体部114とは接触した後において位置ずれが生じにくい。これらによって当該三次元位置測定構造100は、測定点として設定したマーカ部材106の位置において、効率よくかつ精度良く三次元位置測定器102による測定を行うことが可能となっている。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、三次元位置測定器を使用して対象物の各部位から位置データを取得する三次元位置測定構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
100 …三次元位置測定構造、102 …三次元位置測定器、104 …被験者、106 …マーカ部材、108 …肩部、110 …ジグ部材、112 …ホルダ部、114 …球体部、116 …プローブ、117 …ボール部、118 …キャップ部、128 …表面、130 …凹部、132 …曲面、134 …衣服、R1 …軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元位置測定器を使用して対象物の各部位から位置データを取得する三次元位置測定構造であって、
前記三次元位置測定器のプローブの先端に設けられた球形のボール部と、
前記ボール部に取り付ける長尺なジグ部材と、
前記対象物の各部位に取り付けられる磁性を有するマーカ部材とを備え、
前記ジグ部材は、一端に設けられ前記ボール部と連結してボールリンクを形成するホルダ部と、他端に設けられた磁性を有する球体部とを有することを特徴とする三次元位置測定構造。
【請求項2】
前記マーカ部材は、表面中央に前記球体部の形状に応じて窪んだ凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の三次元位置測定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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