説明

三次元微細加工方法及び三次元微細構造

【課題】電子ビームによる改質領域を縮小して微細なマスクを精密に形成可能にするとともに、当該マスクを利用して精密な三次元微細構造を作製できる三次元微細加工方法を提供する。
【解決手段】GaAs基板1の表面に、As薄膜2と、Ga23薄膜4と、As薄膜5と、で構成される3層無機レジスト酸化膜10を形成する。選択図の(f)から(g)に示す工程では、真空中で3層無機レジスト酸化膜10の表面に照射した電子ビームによって、Ga23薄膜4とGaAs基板1の表面の一部が密着し、熱耐性を有する改質マスク部17が形成される。(h)に示す工程では、As薄膜2が昇華され、改質マスク部17以外の部分のGa23薄膜4が脱離してGaAs基板1の表面が露出する。(i)に示す工程では、エッチング処理を行って、GaAs基板1の露出部分からGaを優先的に剥離させることで窪み等が形成された三次元微細構造を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、基板の表面に形成されたIII−V族化合物層の表面、又はIII−V族化合物基板の表面に微細構造を形成する三次元微細加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光リソグラフィーを中心とする現在の半導体微細加工は技術的限界に達しており、半導体関連産業が今後も主たる経済産業分野の牽引役として持続するには、新しいパラダイムに基づいた方法論の展開が急務である。その1つがナノテクノロジーであり、光リソグラフィー技術が抱える装置限界(複雑化・巨大化・高コスト化)の呪縛から解き放つものとして期待されている。
【0003】
ターゲットとなるべき技術課題とは、少量多品種型生産を可能(設計変更容易・低コスト)にする三次元ナノ微細化技術の開発である。特に“光・電子デバイス”展開の観点からは、求められるプロセス機能として無損傷・無汚染が前提となり、更に“一括デバイス化”と“その場制御化”が必要になる。
【0004】
リソグラフィーに必要な条件はスループット(レジストの高感度化)及び解像度(レジストの分解能)の2つであり、それらのバランスが重要となる。電子ビームは光に比べて波長が短いことから、電子ビームを用いた電子ビームリソグラフィーが、光リソグラフィーの解像度限界を超えるものとして開発が進められている。
【0005】
電子ビームリソグラフィーでは、10nm以下の微小な電子ビーム径が得られる高加速電子線描画装置(例えば加速電圧を50kV以上に設定可能なもの)が従来から用いられているが、電子線の進入深度が深いためレジスト感度の低下が問題になっている。電子ビームリソグラフィーで用いられるレジストとしては、スループットの観点から光リソグラフィーと同様に有機レジストが一般に用いられている。例えばPMMAは、有機レジストの中で感度は比較的低いものの解像度に優れているため、よく用いられる。しかし、近年は、そのように解像度の比較的良いPMMAに対しても一層の解像度の向上が強く要望されているという状況があった。
【0006】
一方、無機レジストは解像度が有機レジストに比べて優れており、この点で電子ビームリソグラフィーに適合的であるものの、感度が低いために使いにくいというのが一般的な認識となっている。従って、無機レジストの感度をPMMAと同等とするか若しくはそれを凌駕させることが無機レジスト開発の1つのターゲットになっている。なお、代表的な有機レジスト及び無機レジストについて、レジストの感度と解像度の関係を図1に示す。この図1には、本発明の一実施形態で無機材料マスクとして使用される多層無機レジスト酸化膜の位置付けが併せて示されている。
【0007】
また、電子ビームリソグラフィーには、入射電子だけではなく、レジスト及び基板内からの二次電子散乱の影響(proximity効果)により、レジストの反応領域がビーム径より大きくなってしまう問題があった。レジストの反応領域が大きくなれば、電子ビームの隣接する描画ライン間での解像度が影響を受け、後工程で作製される三次元微細構造に影響が生じてしまう。このようなレジストの反応領域の拡大を低減させるために多くの努力がなされており、その一例が多層レジストによる基板内進入電子線の屈折率制御を用いた実効ビーム径の縮小化である。しかし、現状の技術では、このproximity効果が大きな制限となっており、解像度向上の障害となっていた。微細化の進展には、レジスト膜内でのproximity効果の更なる抑制が望まれる。例えば、proximity効果による改質領域の広がりが電子ビーム径の範囲よりも小さくなることが好ましいのである。
【0008】
そこで、proximity効果の抑制や基板表面付近での入射電子の集中によるレジスト感度の向上等を実現する手段として、5kV以下の低加速電圧を用いた電子ビームリソグラフィーが近年注目されている。
【0009】
この種の電子ビームを用いてパターン形成する方法を開示するものとして、例えば非特許文献1がある。非特許文献1においては、帯電効果に対するアプローチ方法の一例として、Drouinらによるランダム描画法が報告されている。ランダム描画法とは、数μm程度のデザインルールを基板表面にパターニングする際に、隣接するデザインを順次描画するのではなくランダムに描画することで、低加速電子ビームリソグラフィーにより生じる基板自体の帯電効果を緩和する手法である。
【0010】
また、低加速電子線直接描画法を用いた三次元微細加工方法を開示するものに非特許文献2及び3と、特許文献1、2及び3がある。これらの文献には、Si基板上にスパッタ蒸着させたNi、Cu等の異種金属材料に、電子線を照射することで熱を発生させてシリサイドを形成し、エッチングマスクとして用いる三次元微細加工方法が開示されている。一般に電子線は、ビームの中心が最も電子密度が高く、中心から遠ざかるにつれて低下する(電子密度はガウス分布で予測できる)ので、電子ビームの散乱中心領域のみ(ビーム径以下の領域)が選択的に改質されて、シリサイドが形成されることになる。
【0011】
ところで、一般にレジストは感度の特徴から2種類に分けることができる。1つは電子ビームのエネルギー照射量に依存し、臨界値で急峻な反応が起きるデジタル型レジストである。もう1つはエネルギー照射量に応じて連続的に反応が進行するアナログ型レジストである。この2種類のうち、サブミクロン領域での微細化には空間分解能を得易いデジタル型が有利とされてきた。即ち、デジタル型レジストを用いる場合、形成された“硬い”反応領域がマスクとして用いられ、後工程のエッチングや成長(再成長と呼ばれる)に対して選択的な機能をもたらしてきた。一方、アナログ型レジストは空間分解能に限界はあるものの、後工程のプロセスに対して“柔らかい”マスクとして機能するため、高低差を制御した構造の作製に用いられてきた。任意(様々な形状)の三次元微細構造を作製する観点からは、空間分解能に優れかつ高低差制御に優れたアナログ型のレジスト開発、及び後工程のプロセス開発が必要であった。
【0012】
マスクパターン形成後の選択的成長プロセスとして、表面拡散長が長いガス種を用いた成長法(CVD、GSMBE、CBE等)が従来から知られている。この手法を用いた選択成長はGaNを含むあらゆる化合物半導体及びSiプロセスに応用され、三次元構造制御手法の1つとして確立されている。例えば、CVD法を用いているものとして、特許文献4に開示されるものがある。この特許文献4は、CVD法の中でも有機金属化学気相蒸着法(以下、MOCVD法とする)を用いて、III−V族化合物半導体を選択成長させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5918143号明細書
【特許文献2】米国特許第6261938号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0106861号明細書
【特許文献4】特開平8−172053号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】D. Drouin et al, Microsc. Microanal.10(2004) 804
【非特許文献2】D. Drouin et al, Jpn. J. Appl. Phys.41(2002) 4122
【非特許文献3】D. Drouin et al, J. Vac. Sci. Technol. A 18(2000)681
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
低加速電圧を用いた電子ビームリソグラフィーを行う場合、電子線の進入深度が非常に浅い(1kV:深度<10nm)ため、厚みが数nm以下の薄膜レジストが必要になる。しかしながら、従来用いられてきた有機レジストはスピンコーティングにより成膜されるものであるため、10nm程度の厚みで基板全面に均一に有機材料をコートすることは困難であった。
【0016】
また、低加速電圧を用いた電子ビームリソグラフィーは、電子同士が反発して、レジスト膜到達時にビーム径が広がってしまうおそれがある。更に、基板表面に電荷が溜まって、電子ビームの描画の妨げや転写パターン形状の歪みの原因となるおそれもあった。従って、低加速電圧を用いた電子ビームリソグラフィーには、改質領域の拡大(レジストに転写された線幅の縮小)の抑制及び帯電を原因とする転写パターン形状の歪みの補正という課題があった。
【0017】
この点、非特許文献1は、金属表面への電子ビームリソグラフィーを行うことで、ランダム描画法による帯電効果の抑制を実証しているものの、帯電し易い酸化膜等をレジストとして使用した場合、帯電効果の影響を確実に排除できる訳ではなかった。また、電子ビームによる改質領域の縮小という観点からも改善の余地があった。
【0018】
また、非特許文献2及び3、特許文献1から3までに開示されるような低加速電子線直接描画法は、強制的な金属蒸着による基板/金属界面の不均一や欠陥等が生じるおそれがあった。従って、金属の強制蒸着に代わる均一な界面が得られる薄膜形成法が求められていた。加えて、シリサイド形成には、高熱の発生(750℃)が必要となるため、高感度化に向けて限界があった。
【0019】
また、表面拡散長が長いガス種を用いた成長法は、サブミクロン領域を含む更に小さな三次元構造制御に対しては、大きな表面拡散長により、極めて微細なマスク領域が埋もれてしまうという問題点がある。この点、特許文献4においても、MOCVD法を用いていることから表面原子の拡散長が長くなり、高密度配列の基板上でのIII−V族化合物半導体の選択成長が十分にはできず、基板を高密度化することが困難であった。また、ナノオーダーで結晶成長方向の各成長結晶膜厚を一定に揃えることができなかった。従って、小さなマスク領域に対応した表面拡散長の短いプロセスと組み合わせる必要があった。
【0020】
また、近年は、デバイス構造がナノスケールになるにつれて、電子ビームリソグラフィーについても分子レベルで正確な加工精度が要求されている。しかし、従来のようなプラズマイオンを用いたドライエッチング法では、エッチング精度は電子線描画の走査精度に依存するため、サブナノオーダの方位精度を要求することは困難であった。従って、電子線の走査方向のズレをサブナノメーター精度で補正する新たなプロセスが必要であった。
【0021】
例えば、電子ビームの形状を変化させることで精密なパターンを転写可能にする方法等が考えられるが、結局のところ電子ビームの走査精度に依存してしまうため、分子レベルの正確なパターニングを基板表面に再現することは困難であった。つまり、パターン形状を電子ビームの走査以外に高精度に補正する手法が必要であった。
【0022】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子ビームによる改質領域を縮小して微細なマスクを精密に形成可能にするとともに、当該マスクを利用して精密な三次元微細構造を作製できる三次元微細加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0023】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0024】
本発明の第1の観点によれば、基板の表面に形成されたIII−V族化合物層の表面、又はIII−V族化合物基板の表面に微細構造を形成するネガ型の三次元微細加工方法において、以下の工程を含む方法が提供される。即ち、第1工程では、基板の表面にV族原子で構成されるV族膜を形成し、更にそのV族膜の表面にIII−V族化合物膜を形成する。第2工程では、前記第1工程で形成したIII−V族化合物膜を過熱水蒸気によってIII族酸化物膜に改質し、このIII族酸化物膜の表面にV族膜を形成することで3層無機レジスト酸化膜を形成する。第3工程では、真空中で3層無機レジスト酸化膜の表面に照射した電子ビームが、前記第2工程で形成された前記V族膜を通過して前記III族酸化物膜の一部分に作用することで、当該III族酸化物膜から余剰な酸素分子を分離可能にする。そして、前記第1工程で前記基板の表面に形成したV族膜の一部が加熱昇華されながら前記基板の表面の一部が酸化されてIII族酸化物が生成される。これによって、前記III族酸化物膜と基板の表面の一部が密着し、熱耐性を有する改質マスク部が電子ビームの照射部分に応じた形状で形成される。第4工程では、真空中で前記基板を昇温させることにより、前記基板の表面に形成されているV族膜が昇華され、前記改質マスク部以外の部分のIII族酸化物膜が脱離して前記基板の表面が露出する。第5工程では、真空にV族原料を供給した環境下で前記基板を所定温度で加熱して、基板の露出部分からIII族原子を優先的に剥離させるエッチング処理を行うことでネガ型の三次元微細構造を作製する。
【0025】
これにより、過熱水蒸気を用いることで、III−V族化合物膜を化学的に安定なIII族酸化物に高効率に改質し、基板の表面にその場で無機レジスト酸化膜を形成することができる。また、III族酸化物膜の表面に形成されるV族膜に電子ビームのエネルギーが集中するので、電子ビームのエネルギーを有効に活用して高効率に無機レジスト酸化膜を改質することができるとともに、proximity効果を抑制することができる。従って、第3工程の電子ビームによる無機レジスト酸化膜の改質領域を狭めることができ、ネガ型の無機レジスト酸化膜を用いた三次元微細加工をより精密に行うことができる。
【0026】
前記の三次元微細加工方法においては、以下の条件を満たすことが好ましい。即ち、前記第1工程で前記基板の表面に形成されるV族膜の厚みは1nm以上5nm以下であり、前記V族膜の表面に形成されるIII−V族化合物膜の厚みが1nm以上5nm以下である。前記第2工程でIII族酸化物膜の表面に形成されるV族膜の厚みが1nm以上10nm以下である。
【0027】
これにより、進入深度が数nm程度の低加速電圧を用いた電子ビームを用いて無機レジスト酸化膜の改質を行うことができる。低加速電圧を用いた電子ビームは、基板の表面付近で入射電子が集中するので、レジスト感度を効率的に向上させることができる。
【0028】
本発明の第2の観点によれば、基板の表面に形成されたIII−V族化合物層の表面、又はIII−V族化合物基板の表面に微細構造を形成するネガ型の三次元微細加工方法において、以下の工程を含む方法が提供される。即ち、第1工程では、前記基板の表面にV族原子で構成されるV族膜を形成し、更にそのV族膜の表面にIII−V族化合物膜を形成する。第2工程では、前記第1工程で形成したIII−V族化合物膜を過熱水蒸気によってIII族酸化物膜に改質して2層無機レジスト酸化膜を形成する。第3工程では、真空中で2層無機レジスト酸化膜の表面に電子ビームを照射することにより、III族酸化物膜から余剰な酸素分子を分離可能にする。そして、前記第1工程で前記基板の表面に形成したV族膜の一部が加熱昇華されながら、その昇華された部分で前記基板の表面の一部が酸化されてIII族酸化物が生成される。これによって、前記III族酸化物膜と基板の表面の一部が密着し、熱耐性を有する改質マスク部が電子ビームの照射部分に応じた形状で形成される。第4工程では、真空中で前記基板を昇温させることにより、前記基板の表面に形成されているV族膜が昇華され、改質マスク部以外の部分のIII族酸化物膜が脱離して前記基板の表面が露出する。第5工程では、真空にV族原料を供給した環境下で前記基板を所定温度で加熱して、基板の露出部分からIII族原子を優先的に剥離させるエッチング処理を行うことでネガ型の三次元微細構造を作製する。
【0029】
これにより、過熱水蒸気を用いることで、III−V族化合物膜を化学的に安定なIII族酸化物に高効率に改質して、基板の表面にその場で無機レジスト酸化膜を形成することができる。また、電子ビームのエネルギーが基板内部ではなく、基板の表面に形成されるV族膜に集中するので、電子ビームのエネルギーを有効に活用して無機レジスト酸化膜を高効率に改質することができる。また、V族膜にエネルギーが集中する分だけ改質領域を狭めることができる。従って、ネガ型の無機レジスト酸化膜を用いた三次元微細加工を高効率に行うことが可能になる。
【0030】
前記の三次元微細加工方法においては、前記第1工程で前記基板の表面に形成されるV族膜の厚みが1nm以上5nm以下であり、前記V族膜の表面に形成されるIII−V族化合物膜の厚みが1nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0031】
これにより、進入深度が数nm程度の低加速電圧を用いた電子ビームによる無機レジスト酸化膜の改質を行うことができる。低加速電圧を用いた電子ビームは、基板の表面付近で入射電子が集中するので、レジスト感度を効率的に向上させることができる。
【0032】
前記の三次元微細加工方法においては、前記III−V族化合物層又はIII−V族化合物基板は、AlxGaIn1−x−yAs1−z(0≦x<1、0≦y、z≦1)で構成されていることが好ましい。
【0033】
これにより、作製したいパターンに応じて、III−V族化合物層又はIII−V族化合物基板の材料を適宜選択することで、三次元微細構造を効率的に作製することができる。
【0034】
前記の三次元微細加工方法においては、前記第2工程で形成されるIII族酸化物膜は、Al23薄膜又はIn23薄膜であることが好ましい。
【0035】
これにより、三次元微細構造を精度良く形成することができる。
【0036】
前記の三次元微細加工方法においては、Si又はSiCを基板とすることが好ましい。
【0037】
これにより、三次元微細構造を低コストで製造できる。
【0038】
前記の三次元微細加工方法においては、前記第3工程における前記電子ビームの加速電圧は0.5kV以上20kV以下であり、面ドーズ量の範囲は50nC/cm2以上16μC/cm2以下であり、当該電子ビームの照射は単一ラインモードで行うことが好ましい。
【0039】
これにより、改質マスク部を精度良く形成することができるので、微細構造の精度及び再現性を向上させることができる。
【0040】
前記の三次元微細加工方法においては、前記第3工程において電子ビームの描画ラインを複数交差させることが好ましい。
【0041】
これにより、窪み状に形成される微細構造単位が縦横に並ぶ三次元微細構造を容易に形成できる。
【0042】
前記の三次元微細加工方法においては、前記描画ラインは、長手方向の中途部で他の描画ラインに交差することが好ましい。
【0043】
これにより、基板の表面に複数形成される窪みの形状を均一なものにすることができる。
【0044】
前記の三次元微細加工方法においては、以下のような工程を含むことが好ましい。即ち、前記第3工程では、電子ビームは、前記基板の結晶方位[100]、[010]、[011]、[01−1]、[110][−110]、[111]、[−1−1−1]の何れかに一致するラインを描画するように照射される。前記第4工程では、前記基板は300℃以上650℃以下の温度に昇温されるものとする。前記第5工程では、前記基板は300℃以上650℃以下の温度に加熱されるとともに、エッチング速度が0.3ML/sec以下である。
【0045】
これにより、自己組織化によって結晶方位に沿うように三次元微細構造が形成されるので、分子レベルの精密な加工が可能になる。
【0046】
前記の三次元微細加工方法においては、前記第3工程では、電子ビームを同じ場所に繰り返し照射する多重走査を行うことが好ましい。
【0047】
これにより、描画の妨げや転写パターンの歪みの原因となる基板の表面での帯電を抑制することができ、描画パターンの再現性を効果的に向上させることができる。
【0048】
前記の三次元微細加工方法においては、前記多重走査は、同じ場所に電子ビームを照射する際には、前回その場所を走査した時から、電子ビームによって1mmを走査するために必要な時間の10倍以上の時間が経過した後に、電子ビームを照射することが好ましい。
【0049】
これにより、帯電効果を効果的に抑制することができる。
【0050】
前記の三次元微細加工方法においては、前記第3工程では、電子ビームをドーナツ形状のリミッティングアパーチャに通すことで、当該電子ビーム径を収束させて照射することが好ましい。
【0051】
これにより、電子ビーム径を縮小して、より微細な三次元微細加工を行うことができる。
【0052】
前記の三次元微細加工方法においては、固体成長原料を用いた分子線エピタキシャル成長法を行うことで、前記第5工程でエッチング処理を行った部分にIII−V族化合物結晶を選択成長させる第6工程を更に含むことが好ましい。
【0053】
これにより、高密度のパターンであっても、MBE法の成長条件を制御して表面原子拡散長を制御することにより、III−V族化合物結晶の選択成長を容易に行うことができる。また、結晶成長方向の結晶膜厚を一定に揃えることも容易である。更に、III−V族化合物の成長結晶は、その根元部において壁の立ち上がりが良好であり、高精度の微細構造を形成することができる。
【0054】
前記の三次元微細加工方法においては、前記第6工程において、以下の条件を満たすことが好ましい。即ち、前記基板は300℃以上650℃以下の温度に加熱されるものとする。また、固体成長原料のV族とIII族のフラックス比FV/FIIIは1以上100以下である。また、結晶成長速度は0.01ML/sec以上2ML/sec以下である。
【0055】
これにより、三次元微細構造を精度良く形成することができる。
【0056】
前記の三次元微細加工方法においては、ポジ型の三次元微細構造を作製する工程及びネガ型の三次元微細構造を作製する工程を組み合わせて三次元微細構造を多段階で作製することが好ましい。
【0057】
これにより、複雑な形状の三次元微細構造を形成することができる。
【0058】
前記の三次元微細加工方法においては、ポジ型の三次元微細構造の表面に、又はネガ型の三次元微細構造の表面に、III族酸化物膜の改質マスク部を形成し、エッチング処理によって新たな三次元微細構造を更に形成することが好ましい。
【0059】
これにより、三次元微細構造をより精密かつ複雑に作製することができる。
【0060】
本発明の第3の観点によれば、前記三次元微細加工方法により作製される三次元微細構造が提供される。
【0061】
前記の三次元微細構造においては、隣り合う単位構造同士の間隔がサブミクロン以下であることが好ましい。
【0062】
これにより、三次元ナノ微細化技術に好適に適用できる高密度の微細構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】代表的な有機レジスト及び無機レジストのレジスト感度と平均分子量(分解能)の比較を示すグラフ。
【図2】GaAs基板に3層無機レジスト酸化膜を形成する工程を(a)から(e)の順に段階的に示した説明図。
【図3】3層無機レジスト酸化膜を用いて三次元構造体を形成し、当該三次元構造体に固体成長原料を用いた分子線エピタキシャル成長法(MBE)により結晶を選択成長させる様子を(f)から(j)の順に段階的に示した説明図。
【図4】本実施形態の三次元微細加工方法における各工程の温度推移の一例を示すグラフ。
【図5】電子ビームを照射したときの基板内部での電子ビームの広がりの様子を模式的に示した説明図。
【図6】電子ビームを照射したときの基板内部での電子エネルギー分布のシミュレーション結果を示した説明図。
【図7】3層無機レジスト酸化膜を用いた場合のproximity効果の抑制を示した説明図。
【図8】電子ビームのアパーチャにドーナツ形状を用いた場合の改質領域の縮小を示した説明図。
【図9】エッチングによるマスク幅の縮小を段階的に示した説明図。
【図10】3層無機レジスト酸化膜、2層無機レジスト酸化膜及び自然酸化膜における加速電圧に対する感光感度の変化を示すグラフ。
【図11】3層無機レジスト酸化膜を用いた場合のマスク幅と、2層無機レジスト酸化膜を用いた場合のマスク幅の違いを模式的に示した説明図。
【図12】3層無機レジスト酸化膜を用いた場合のマスク幅と、2層無機レジスト酸化膜を用いた場合のマスク幅の違いを示す顕微鏡写真。
【図13】AlAs層を基板に追加して作製された三次元構造体及びAlAs層を追加しないで作製された三次元構造体を模式的に示した説明図。
【図14】AlAs層を基板に追加して作製された三次元構造体及びAlAs層を追加しないで作製された三次元構造体の様子を示した顕微鏡写真。
【図15】In23を含む3層無機レジスト酸化膜が表面に形成されるGaAs基板の様子を模式的に示す説明図。
【図16】In23を含む3層無機レジスト酸化膜を用いて作製された三次元構造体の様子を示す顕微鏡写真。
【図17】エッチング時間の経過に伴うマスク幅の縮小の様子を模式的に示した説明図。
【図18】エッチング時間の経過に伴うマスク幅の縮小の様子を段階的に示した顕微鏡写真。
【図19】電子ビームの描画パターンを示した模式図。
【図20】電子ビームの描画パターンに応じた形状で形成される三次元構造体を示した顕微鏡写真。
【図21】基板の結晶方位に対して10度傾けたラインに沿って電子ビームを照射した場合の結晶の一部の様子を模式的に示した説明図。
【図22】基板の結晶方位に対して10度傾けたラインに沿って電子ビームを照射して作製した三次元構造体の様子を示した顕微鏡写真。
【図23】電子ビームを多重走査して作製した三次元構造体の様子を示す顕微鏡写真。
【図24】電子ビームを多重走査して作製された三次元微細構造にMBE法によってGaAs成長結晶を選択成長させたGaAs基板表面の様子を示す顕微鏡写真。
【図25】ネガ型の三次元構造体にポジ型微細加工によってInAs結晶を成長させる様子を模式的に示した説明図。
【図26】ネガ型の三次元構造体にポジ型微細加工によってInAs結晶を成長させた三次元構造体の様子を示す顕微鏡写真。
【図27】Al23とGa23とが混合した混合酸化膜を無機レジスト酸化膜に用いて三次元構造体を形成した実施例を示す顕微鏡写真。
【図28】Al23とGa23とが混合した混合酸化膜を無機レジスト酸化膜に用いてSi基板にGaAs成長結晶を形成した様子を模式的に示した説明図。
【図29】Si基板に形成されるGaAs結晶成長の様子を示す顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0064】
次に、発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明で「3層無機レジスト酸化膜」とは、V族膜と、このV族膜に隣接するIII族酸化物膜と、このIII族酸化物膜に隣接するV族膜と、の3層から構成される無機レジスト層を意味する。また、「2層無機レジスト酸化膜」とは、V族膜と、このV族膜に隣接するIII族酸化物膜と、の2層から構成される無機レジスト層を意味する。
【0065】
まず、図2、図3及び図4を参照して、III−V族化合物基板に3層無機レジスト酸化膜を形成して三次元微細構造を作製する工程と、この三次元微細構造にIII−V族化合物の成長結晶を生成して三次元微細構造を作製する工程と、を説明する。図2は、GaAs基板1に3層無機レジスト酸化膜10を形成する工程を(a)から(e)の順に段階的に示した説明図である。図3は、3層無機レジスト酸化膜10を用いて形成した三次元構造体に固体成長原料を用いた分子線エピタキシャル成長法(MBE)により結晶を選択成長させる様子を(f)から(j)の順に段階的に示した説明図である。図4は、本実施形態の三次元微細加工方法における各工程の温度推移の一例を示すグラフであり、グラフに示された(a)〜(i)は、図2(a)から図2(e)及び図3(f)から図3(i)にそれぞれ対応している。
【0066】
まず、GaAs基板1の表面に3層無機レジスト酸化膜10を形成する工程について説明する。図2(a)には、微細加工の対象物の一例としてのGaAs基板(III−V族化合物基板)1が示されている。図2(b)に示すように、GaAs基板1の表面に、超高真空環境下で分子線エピタキシャル成長によってAsを堆積させてAs薄膜2を形成する。このAs薄膜2は、厚みが1nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0067】
次に、図2(c)に示すように、As薄膜2の表面にGaAsを堆積させて、GaAs薄膜(III−V族化合物膜)3を形成する。このGaAs薄膜3の厚みは、厚みが1nm以上5nm以下であることが好ましい。次に、図2(d)に示すように、過熱水蒸気処理を行い、GaAs薄膜3に酸化反応を生じさせてGaAs薄膜3を酸化物Ga23薄膜4(III族酸化物)に酸化処理する。過熱水蒸気がGaAsをGa23に改質する化学式を以下に示す。
2GaAs+3H2O → Ga23+As2+3H2
又は、
2GaAs+3H2O → Ga23+2AsH3
なお、この酸化処理は、150℃から250℃の加熱環境下で、300℃の過熱水蒸気を用いて行い、処理時間は1分以上15分以下であることが好ましい。
【0068】
次に、図2(e)に示すように、Ga23薄膜4の表面にAsを堆積させて、As薄膜5を形成する。このAs薄膜5は、厚みが1nm以上10nm以下であることが好ましい。この状態では、GaAs基板1の表面には、GaAs基板1側からAs薄膜2、Ga23薄膜4、As薄膜5の順に3層の薄膜が形成されている。これによって、GaAs基板1の表面に3層無機レジスト酸化膜10が形成されることになる。
【0069】
なお、上記に示すように、3層無機レジスト酸化膜の作製(堆積)は、固体原料を用いた分子線エピタキシャル(MBE)法を用いることが好ましい。MBE法を用いることで、以下のような利点がある。第1に、MBE法による薄膜の形成では、薄膜の無機材料を堆積させる方法であるスパッタ法等で問題となるような、薄膜と基板との界面での欠陥発生を誘発する基板表面の損傷が生じるおそれがない。第2に、MBE法は、有機金属気相成長(MOCVD)法や化学気相成長(CVD)法のようなガス種の化学分解を必要としないため、室温以下の低温環境下で、蒸気圧が高い金属Asを半導体基板表面に堆積させることが可能である。第3に、MBE法は、反射高速電子線回折装置(RHEED)を用いたその場観察により、分子層単位での精密な薄膜制御が可能になる。
【0070】
次に、3層無機レジスト酸化膜10をネガ型の無機レジスト層として用いてGaAs基板1の表面にマスクを形成し、そのマスクを利用して三次元微細構造を形成する工程について説明する。
【0071】
まず、図3(f)に示すように、3層無機レジスト酸化膜が形成されたGaAs基板1を用意する。次に、図3(g)に示すように、真空中で、電子ビーム径及び電流密度等が予め所定の値に設定された電子ビームを3層無機レジスト酸化膜10に照射する。照射された電子ビームは、3層無機レジスト酸化膜10の最上層にあるAs薄膜5を通過して、As薄膜5の下地のGa23薄膜4に作用する。この電子ビームの作用によってGa23薄膜4の一部から酸素分子が分離する。そして、Ga23薄膜4の下地であるAs薄膜2の一部が高効率に加熱昇華されながら、Ga23薄膜4から分離した酸素分子によってGaAs基板1表面が酸化され、化学的に安定なGa23が生成される。As薄膜2の一部が加熱昇華された部分にGa23が生成されることで、GaAs基板1の表面の一部と、Ga23薄膜4と、が密着するような形になる(改質マスク部17の形成)。この基板と密着しているGa23薄膜4の一部(改質マスク部17)が後述の工程でマスクとして機能する。改質マスク部17はGaAs基板1表面の一部と密着することで熱耐性が向上している。今回の説明のように、Ga23薄膜4を含む3層無機レジスト酸化膜10の場合、改質マスク部17は580℃以上の熱耐性を有する。
【0072】
また、改質マスク部17は、電子ビームの描画パターンに応じた形状で形成されることになる。次に、電子ビームの照射について説明する。
【0073】
電子ビームの描画ラインを複数交差させる周期的パターンを描画することで、後述の工程により、GaAs基板1表面の優先剥離(昇華)によって、結晶方位に正確に自己組織化された低指数面で構成される窪みが形成されることになる。なお、窪みの形状を均一なものにする観点から、前記描画ラインは長手方向の中途部で他の描画ラインに交差することが好ましい。
【0074】
なお、高精度のパターンを形成する観点から、電子ビームの照射にあたっては、加速電圧を0.5kV以上20kV以下の範囲とし、0.5から5kVの加速電圧を中核とすることが好ましい。また、面ドーズ量の範囲は50μC/cm2以上16mC/cm2以下であり、電子ビームの照射は単一ラインモードで行うことが好ましい。
【0075】
また、前記電子ビームは、GaAs基板1の結晶方位[100]、[010]、[011]、[01−1]、[110][−110]、[111]、[−1−1−1]の何れかに一致するラインにほぼ合わせて描画することが好ましい。これによって、後述の工程により形成される窪みの形状が、結晶方位[100]、[010]、[011]、[01−1]、[110][−110]のラインに完全に一致することになるからである。
【0076】
更に、電子ビームの照射は、必要な電子ドーズ量を基板表面に一度に照射するのではなく、低い電子ドーズ量を複数回に分けて描画する多重走査を行うことが好ましい。これにより、GaAs基板1の表面の帯電効果が抑制され、描画の妨げや転写パターンの歪みの原因を除去して描画パターンの再現性を効果的に向上させることができる。また、改質マスク部17の端付近(電子ビームガウス分布のテール部分に相当)でのボケを最小限に抑えることができるので、改質マスク部17の端付近の熱耐性が向上する。
【0077】
また、前記多重走査において、同じ場所に電子ビームを照射する際には、所定の時間が経過した後に照射するように設定する。GaAs基板1表面の帯電効果を確実に除去する観点から、電子ビームによって1mmを走査するために必要な時間の10倍以上の時間が経過した後に電子ビームを照射することが好ましい。
【0078】
次に、改質マスク部17以外のGa23薄膜4を脱離する工程について説明する。図3(h)に示す工程では、真空中にAs4を供給した環境下で、300℃以上650℃以下の所定温度で加熱し、As薄膜2、改質マスク部17以外のGa23薄膜4及び最上層のAs薄膜5をGaAs基板1から除去する。このとき、GaAs基板1を図4のグラフに示すように580℃以上で加熱すると、改質マスク部17以外のGa23薄膜4を良好に除去でき、好ましい。その結果、GaAs基板1表面に、後述の工程でマスクとして機能するGa23無機材料マスク6が形成される。前述したように、電子ビームによって周期的なパターンを描画することで、このGa23無機材料マスク6も周期的なものになる。
【0079】
なお、この酸化膜(Ga23薄膜4)の脱離は、以下のような現象により説明できると考えられる。即ち、As薄膜2が加熱昇華されることで、GaAs基板1の表面からGa原子の分離が可能になる。これによって、改質マスク部17以外のGa23薄膜4と、GaAs基板1表面から分離した前記Ga原子と、が反応し、揮発性の高いGa2Oが生成される。この反応によってGa23薄膜4が脱離するのである。ただし、Ga23薄膜4が、As薄膜2とともにリフトオフすることでGaAs基板1から除去されると考えることもできる。
【0080】
次に、エッチング処理について説明する。図3(i)に示す工程では、真空中にAs(V族原料)を供給した環境下で、所定温度(図4の例では650℃)で、GaAs基板1に対する加熱を継続する。本実施形態においては、この所定温度が580℃以上650℃以下であることが好ましい。すると、Ga23無機材料マスク6に覆われていないGaAs基板1の露出部分からGa原子が優先的に剥離されて拡散し、昇華される。電子ビームの描画が周期的なパターンで行われている場合は、拡散したGa原子の一部が描画領域の端部に移動し、堆積する。この結果、GaAs基板1の前記露出部分に、自己組織化的に低指数面で構成される窪み18が周期的に形成された三次元微細構造が作製される。なお、エッチング速度は0.3ML/sec以下であることが好ましい。更に、GaAs基板1のエッチング深さを単一ラインの電子ビーム照射領域程度とすることが好ましい。
【0081】
なお、この自己組織化による三次元構造体の形成において、改質マスク部の端(電子ビームガウス分布のテール部分)は、GaAs基板1に生じる昇華に伴い脱離するため、改質部の幅を電子ビーム径よりも小さくすることが可能になる。
【0082】
次に、分子線エピタキシー法(MBE法)によって窪み18にGaAsを選択成長させる工程について説明する。このMBE法は、GaAsの成長方向をGaAs基板1の面方位(001)に合わせて、以下の条件を満たすように行う。即ち、結晶成長温度を450℃以上600℃以下の所定温度(図4の例では580℃)とし、As4分子とGa原子とのフラックス比(FAs/FGa)は1以上100以下の範囲とする。そして、GaAs結晶成長速度を0.01ML/sec以上2ML/sec以下(分子層/秒:二次元薄膜に対する成長速度換算)として行う。
【0083】
この結果、図3(j)に示すように、窪み18にGaAs成長結晶7が形成されることになる。こうして得られるGaAs成長層膜の厚みは、改質マスク部17と改質マスク部17との間に形成される開口部の大きさにほぼ反比例する。更に、このGaAs成長層膜は、電子ビームを描画する間隔(例えば、隣り合う平行ラインの間隔)程度であることが好ましい。
【0084】
ここで、GaAs結晶成長速度は、試料薄膜や基板の表面状態をその場観察するための反射高速電子線回折装置(以下、RHEEDと称する)を用いて調整することが好ましい。GaAs結晶成長速度が決定されれば、GaAs結晶成長時間の調整により成長結晶の膜厚を制御することができる。
【0085】
以上により、GaAs基板1の表面にGaAs成長結晶7が形成され、ポジ型の三次元微細構造を作製することができる(図3(j))。
【0086】
なお、上記実施形態では、図2(e)の工程で、Ga23薄膜4の表面にAs薄膜5を更に形成しているが、この工程は省略することもできる。この場合、GaAs薄膜3から改質されたGa23薄膜4に直接的に電子ビームを照射することになる。なお、As薄膜5の蒸着工程を省略した場合でも、その他の工程については上記で説明したのと全く同様に行うことができる。
【0087】
次に、図5及び図6を参照しながら、多層無機レジスト酸化膜を用いたレジストの高感度化についてGaAs基板(III−V族化合物基板)1を例にして説明する。
【0088】
まず、図5を参照して、レジスト層として2層無機レジスト酸化膜20を用いた場合の基板内部での電子ビームの広がり方について説明する。図5は、電子ビームを照射したときのGaAs基板1内部での電子ビームの広がりの様子を模式的に示した説明図である。
【0089】
図5(a)には、2層無機レジスト酸化膜20が表面に形成されるGaAs基板1が示されている。この2層無機レジスト酸化膜20は、GaAs基板1上に形成されるAs薄膜2と、このAs薄膜2の上に形成されるGa23薄膜4と、により構成されている。図5(b)には、GaAs自然酸化膜51が表面に形成されるGaAs基板1が示されている。このGaAs自然酸化膜51の表面付近の組成は、2層無機レジスト酸化膜20と同様にGa23を主成分として構成されており、GaAs基板1との界面付近には、金属As52が不均一な状態で沈殿している。
【0090】
5kV以下の低い加速電圧を用いた電子ビームを2層無機レジスト酸化膜20の表面に照射した場合、電子ビーム内部散乱の広がりの中心50は、図5(a)に示すように、As薄膜2又はGaAs基板1表面近傍に位置する。一方、上記と同一の条件で電子ビームをGaAs自然酸化膜51の表面に照射した場合、電子ビーム内部散乱の広がりの中心50は、図5(b)に示すように、GaAs基板1内の表面よりも奥側(図面下側)に位置する。図5(a)と図5(b)を比較すると、2層無機レジスト酸化膜20の方が、電子ビーム内部散乱の広がりの中心50が、As薄膜2又はGaAs基板1表面側に位置することが判る。従って、同じ条件で電子ビームを照射した場合、2層無機レジスト酸化膜20を用いた方が、基板表面に形成されるレジスト層側に電子ビーム内部散乱の中心50が位置するので、当該レジスト層を高効率に改質することができる。
【0091】
次に、図6を参照しながら、GaAs基板1内部の電子ビームのエネルギー分布のシミュレーション結果について説明する。図6は、電子ビームを照射したときのGaAs基板1内の電子エネルギー分布のシミュレーション結果を示した説明図である。なお、以下に示すシミュレーションにおいて、電子ビームの加速電圧は1kV、電子ビーム径は500nmとし、電子の個数は10万個として計算した。
【0092】
図6(a)の左側には、2層無機レジスト酸化膜20が表面に形成されるGaAs基板1の模式図が示されている。この2層無機レジスト酸化膜20は、GaAs基板1上に形成されるAs薄膜2の厚みが1.5nmに、このAs薄膜2の上に形成されるGa23薄膜4の厚みが1.5nmにそれぞれ設定されている。そして、図6(a)の右側には、前述した2層無機レジスト酸化膜20の表面に、前記照射条件で電子ビームを照射した場合におけるGaAs基板1内の電子ビームエネルギー分布のシミュレーション結果が示されている。
【0093】
図6(b)の左側に示すGaAs基板1の表面に形成されるGa23薄膜34は、厚みが3.0nmに設定されている。そして、図6(b)の右側には、GaAs基板1の表面上に形成されているGa23薄膜34に前記照射条件の電子ビームを照射した場合におけるGaAs基板1内の電子ビームエネルギー分布のシミュレーション結果が示されている。
【0094】
図6(a)及び図6(b)に示すシミュレーション結果を比較すると、2層無機レジスト酸化膜20を用いた場合の方が、GaAs基板1表面付近でのビームのエネルギー密度が高くなっていることが判る。これは、2層無機レジスト酸化膜20に電子ビームを照射した場合、GaAs基板1の表面に形成されるAs薄膜2で電子ビームのエネルギーが集中することを示している。
【0095】
このように、電子ビームのエネルギーがGaAs基板1内部ではなく、GaAs基板1の表面に形成されるAs薄膜2に集中するので、電子ビームのエネルギーを有効に活用して高効率に無機レジスト酸化膜を改質することができる。また、As薄膜2に電子ビームのエネルギーが集中するので、改質領域を狭めることができる。
【0096】
次に図7を参照して、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合のproximity効果の抑制について説明する。図7は、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合の電子ビーム照射によるproximity効果の抑制を示した説明図である。
【0097】
図7(a)には、3層無機レジスト酸化膜10の表面に電子ビームを照射したときの基板内での電子ビーム内部散乱の広がりの様子が示されている。図7(b)には、2層無機レジスト酸化膜20の表面に電子ビームを照射したときの基板内での電子ビーム内部散乱の広がりの様子が示されている。なお、図7(a)及び図7(b)に示す何れの場合においても、5kV以下の低い加速電圧を用いた電子ビームを用いている。
【0098】
図7(a)に示すように、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合は、最上層に形成されるAs薄膜5に電子ビームのエネルギーが集中するため、電子ビーム内部散乱の中心50が最上層のAs薄膜5内に位置している。また、As薄膜5で広がった電子ビーム内部散乱の広がりは、下地にあたるGa23薄膜4では小さくなっている。そして、GaAs基板1上に形成されるAs薄膜2では、As薄膜5内での広がりに比べると小さいものの、Ga23薄膜4内より電子ビーム内散乱の広がりが大きくなっている。このように、上下に挟まれるAs薄膜に比べて、Ga23薄膜4での電子ビームの内部散乱の広がりが小さくなっていることが判る。これは、Ga23薄膜4が電子ビームによって改質される領域が小さくなっていることを意味する。
【0099】
また、電子ビームが照射される最上層にAs薄膜5で形成される金属層が存在しているので、改質領域は、電子ビーム径の半値幅より細くなる可能性がある。金属層が表面に存在するレジスト膜表面に低加速の電子ビームを直接描画した場合、改質領域幅が電子ビームのエネルギー分布の半値幅(電子ビーム径)より細くなることが非特許文献1で報告されているからである。本実施形態では、金属層としてNi等を使用していないので、基板と金属層界面において欠陥発生を誘発するスパッタ蒸着をする必要もない。加えて、非特許文献1に示される方法のように、改質に必要な閾値電子ドーズ量を非常に高い値(19mC/cm2程度)に設定する必要もない。このように、本発明を適用することで、電子ビームの改質領域の縮小を効率的に行うことが可能になっているのである。
【0100】
一方、図7(b)では、最上層にはAs薄膜が形成されていないため、電子ビーム内部散乱の広がりの中心は、基板上に形成されるAs薄膜2とGaAs基板1表面との界面近傍に位置している。Ga23薄膜4に直接照射された電子ビームは、Ga23薄膜4よりAs薄膜2内で大きく散乱している。
【0101】
図7(a)と図7(b)を比較した場合、2層無機レジスト酸化膜20よりも3層無機レジスト酸化膜10をGaAs基板1に形成した場合の方が、電子ビーム内部散乱の広がりの中心が最上面側に位置している。この電子ビーム内部散乱の中心50位置の違いは、図5及び図6を用いて既に説明したように、As薄膜内で電子ビームのエネルギーが集中することに起因している。より具体的には、最上層に形成されるAs薄膜5に電子エネルギーが集中するか、GaAs基板1の表面に形成されるAs薄膜2に電子エネルギーが集中するかによって、GaAs基板1に対する電子エネルギーの中心位置が変わってくるのである。
【0102】
このように、3層無機レジスト酸化膜10を用いることで、GaAs自然酸化膜51(図5(b)参照)を無機レジストとして用いる場合よりも、Ga23薄膜4内でのproximity効果を抑制できる。従って、改質領域をより狭くすることができ、高密度の微細構造、例えば隣り合う単位構造同士の間隔がサブミクロン以下であるような微細構造も容易に作製することができる。
【0103】
以上に示したように、本実施形態の三次元微細構造は、以下のような工程を経て作製される。即ち、図2(a)から図2(c)に示す工程では、GaAs基板1の表面にAs薄膜2を形成し、そのAs薄膜2の表面にGaAs薄膜3を形成する。図2(d)から図2(e)に示す工程では、GaAs薄膜3を過熱水蒸気によってGa23薄膜4に改質し、このGa23薄膜4の表面にAs薄膜5を形成して3層無機レジスト酸化膜10を形成する。図3(f)から図3(g)に示す工程では、真空中で3層無機レジスト酸化膜10の表面に照射した電子ビームが、As薄膜5を通過してGa23薄膜4の一部分に作用することで、当該Ga23薄膜4から余剰な酸素分子を分離可能にする。そして、As薄膜2の一部が加熱昇華されながらGaAs基板1の表面の一部が酸化されてGa23が生成される。これによって、Ga23薄膜4とGaAs基板1の表面の一部が密着し、580℃以上の熱耐性を有する改質マスク部17が電子ビームの照射部分に応じた形状で形成される。図3(h)に示す工程では、真空中でGaAs基板1を昇温させることにより、GaAs基板1の表面に形成されているAs薄膜2が昇華され、改質マスク部17以外の部分のGa23薄膜4が脱離してGaAs基板1の表面が露出する。図3(i)に示す工程では、真空にAs4を供給した環境下でGaAs基板1を所定温度で加熱することで、GaAs基板1の露出部分からGaを優先的に剥離させるエッチング処理を行うことで三次元微細構造を作製する。
【0104】
これにより、過熱水蒸気を用いることで、GaAs薄膜3を化学的に安定なGa23薄膜4に高効率に改質し、GaAs基板1の表面にその場で無機レジスト酸化膜を形成することができる。また、電子ビームのエネルギーがGa23薄膜4の表面に形成されるAs薄膜5に集中するので、電子ビームのエネルギーを有効に活用して高効率に無機レジスト酸化膜を改質することができるとともに、proximity効果を抑制することができる。従って、電子ビームによる無機レジスト酸化膜の改質領域を狭めることができ、ネガ型の無機レジスト酸化膜を用いた三次元微細加工をより精密に行うことができる。
【0105】
また、本実施形態の三次元微細加工方法においては、以下の条件を満たしている。GaAs基板1の表面に形成されるAs薄膜2の厚みは1nm以上5nm以下である。図2(c)の工程で、As薄膜2の表面に形成されるGaAs薄膜3の厚みが1nm以上5nm以下である。Ga23薄膜4の表面に形成されるAs薄膜5の厚みが1nm以上10nm以下である。
【0106】
これにより、進入深度が数nm程度の低加速電圧を用いた電子ビームを用いて無機レジスト酸化膜の改質を行うことができる。低加速電圧を用いた電子ビームは、GaAs基板1の表面付近で入射電子が集中するので、レジスト感度を効率的に向上させることができる。
【0107】
また、本実施形態の三次元微細加工方法においては、固体成長原料を用いたMBE法を行うことで、エッチング処理を行うことで形成された窪み18に、GaAs成長結晶7を選択成長させる図3(j)に示す工程を更に含んでいる。
【0108】
これにより、高密度のパターンであっても、MBE法の成長条件を制御して表面原子拡散長を制御することにより、GaAs成長結晶7の選択成長を容易に行うことができる。また、結晶成長方向の結晶膜厚を一定に揃えることも容易である。更に、GaAs成長結晶7の成長結晶は、その根元部において壁の立ち上がりが良好であり、高精度の微細構造を形成することができる。
【0109】
なお、上記実施形態では通常のポイントビームによって電子ビームを照射しているが、電子ビームの照射の形態を変更することもできる。次に、図8を参照して、ドーナツ形状のリング型アパーチャを用いた場合の電子ビームの照射について説明する。図8(a)には、2層無機レジスト酸化膜20が形成されたGaAs基板1に、電子ビームをドーナツ形状のリミッティングアパーチャに通すことで、当該電子ビーム径を収束させて照射した場合の電子ビームエネルギー分布及び改質領域が模式的に示されている。図8(b)には、2層無機レジスト酸化膜20が形成されたGaAs基板1に通常のポイントビームを用いて電子ビームを照射した場合の電子ビームエネルギー分布及び改質領域が模式的に示されている。
【0110】
図8(a)に示すように、ドーナツ形状のリング型アパーチャを用いた場合の電子ビームは、そのビーム径が絞られる。これにより、通常のポイントビームを用いる場合と比較して、改質領域幅をより小さくすることができる。従って、3層無機レジスト酸化膜10及び2層無機レジスト酸化膜20と組み合わせることで、より精密な三次元微細構造を作製することが可能になる。
【0111】
次に図9を参照して、GaAs基板1の昇華エッチングの際に生じるGa23無機材料マスク6幅の縮小について説明する。図9は、エッチングによるGa23無機材料マスク6幅の縮小を段階的に示した説明図である。
【0112】
図9(a)に示すように、GaAs基板1の表面に形成された2層無機レジスト酸化膜20に所定条件の電子ビームを照射することで、当該2層無機レジスト酸化膜20が改質される。次に、GaAs基板1を真空中で加熱処理する。この加熱処理により、GaAs基板1が分解され、GaAs基板1の表面からGa原子が融解する。融解した前記Ga原子の殆どは、真空中に昇華エッチングされ、GaAs基板1の表面に結晶面で構成された三次元構造体が自己組織化される。しかしながら、融解した前記Ga原子の一部は、GaAs基板1の表面をマイグレーションするため、マイグレーションしたGa原子は、Ga23無機材料マスク6と反応する。この反応によって揮発性の高いGa2Oが生成され、Ga23無機材料マスク6の幅が縮小していくことになる。
【0113】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。なお、各実施例において、MBE法における結晶成長速度はRHEEDを用いて測定及び制御した。
【0114】
まず、図10を参照して、多層無機レジスト酸化膜を用いた場合の感光感度の向上について説明する。図10は、3層無機レジスト酸化膜10、2層無機レジスト酸化膜20及び自然酸化膜における電子ビーム加速電圧に対する感光感度の変化を示すグラフである。
【0115】
図10に示すように、それぞれの無機レジスト酸化膜は加速電圧が低下するにつれて、感光感度の絶対値が低下(高感度化)している。一方、それぞれの無機レジスト酸化膜における感光感度の違いに着目すると、自然酸化膜より2層無機レジスト酸化膜20及び3層無機レジスト酸化膜10の方が、その感光感度が高くなっていることが判る。また、それぞれは加速電圧の変化に応じて感光感度が変化するものの、自然酸化膜、2層無機レジスト酸化膜20及び3層無機レジスト酸化膜10の間での感光感度の相対的な関係には殆ど変化がない。即ち、自然酸化膜、2層無機レジスト酸化膜20及び3層無機レジスト酸化膜10は、略一定の比率で加速電圧が増加するに伴って感光感度の絶対値が増加する挙動をそれぞれ示している。この結果は、加速電圧の増加に伴うそれぞれの無機レジスト酸化膜における感光感度の悪化が、表面酸化膜内で反応する電子の減少数にのみ依存していることを示し、それぞれの無機レジスト酸化膜における電子ビームによる酸化膜改質機構が同一であることを意味している。
【0116】
次に、図11及び図12を参照して、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合のGa23無機材料マスク6の幅と、2層無機レジスト酸化膜20を用いた場合のGa23無機材料マスク26の幅と、の違いについて説明する。図11(a)は、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合のGa23無機材料マスク6の様子を模式図で示し、図11(b)は、2層無機レジスト酸化膜20を用いた場合のGa23無機材料マスク26の様子を模式図で示している。図12(a)は、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合のGa23無機材料マスク6の様子を顕微鏡写真で示し、図12(b)は、2層無機レジスト酸化膜20を用いた場合のGa23無機材料マスク26の様子を顕微鏡写真で示している。
【0117】
なお、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合及び2層無機レジスト酸化膜20を用いた場合の何れの場合も、電子ビームの描画条件として、加速電圧が1kV、面ドーズ量が500μC/cm2となるように設定されている。また、電子ビームの描画パターンは、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が垂直に交差するように設定されている。なお、複数の前記平行ラインは、そのライン間隔が2.4μmになるように描画された。ここで、本明細書においてライン間隔とは、電子ビームを単一ラインモードで照射し、次に照射するラインまで平行移動させる距離(電子ビームの幅方向中心線間の距離)をいう。
【0118】
以下、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合について説明する。即ち、自然酸化膜を脱離させたGaAs基板1の(001)面に、超高真空(分子線エピタキシャル成長)環境下でAs薄膜2を1.5nmの厚みで堆積した。また、そのAs薄膜2上にGaAsを1.5nm堆積させた。その後、過熱水蒸気酸化処理を行い、GaAs基板1表面にGa23薄膜4を形成した。この酸化処理は、200℃の加熱環境下で、300℃の過熱水蒸気を用いて5分間行われた。そして、Ga23薄膜4上に再びAs薄膜5を5nm堆積した。このようにして作製した3層無機レジスト酸化膜10に対して上記条件の電子ビームを照射することで、図11(a)の上側に示すようにGaAs基板1とGa23薄膜4を選択的に(描画パターンの形状に応じた形で)密着させた。
【0119】
次に、GaAs基板1を真空中で580℃以上に加熱し、電子ビームによって改質されていない部分のGa23薄膜4を剥離させた。その後、0.7ML/secのAs4分子供給下でGaAs基板を650℃で3時間加熱した。これによって、Ga23無機材料マスク6によってマスクされていないGaAs基板1の表面部分でのGaAs昇華が促され、図11(a)の下側に示すように、GaAs基板1表面に開口部が形成された三次元構造体が形成された。
【0120】
2層無機レジスト酸化膜20を用いる場合においても、同様の条件でGaAs基板1表面に三次元構造体を形成させた。なお、この場合の三次元構造体を形成する方法としては、Ga23薄膜4上にAs薄膜5を5nm堆積する工程が省略される以外は、上述した3層無機レジスト酸化膜10の場合と同様である。
【0121】
この結果、図12に示すように、3層無機レジスト酸化膜10及び2層無機レジスト酸化膜20の何れの場合にも、Ga23無機材料マスク6が表面に形成された三次元構造体が自己組織化されて、GaAs基板1上に縦横に整列する開口部が形成された。この三次元構造体は、(110)面と(111)A面とから構成されている。図12(a)と図12(b)とを比較すると、3層無機レジスト酸化膜10を用いた場合の方が、2層無機レジスト酸化膜20を用いた場合よりも、Ga23無機材料マスク幅が細くなっていることが判る。これは、Ga23薄膜4上に堆積させたAs薄膜5に電子ビームのエネルギーが集中することで、GaAs基板1と3層無機レジスト酸化膜10との界面における電子ビームの広がり(proximity効果)が効果的に抑制されたことを実証しているといえる。
【0122】
次に、図13及び図14を参照して、GaAs基板1上にAlAs層11を形成して三次元構造体を作製する実施例について説明する。図13(a)は、GaAs基板1にAlAs層11を追加した場合に作製される三次元構造体の様子を模式図で示している。図13(b)は、AlAs層11を追加しなかった場合に作製される三次元構造体の様子を模式図で示している。図14(a)は、AlAs層11を追加して作製された三次元構造体の様子を顕微鏡写真で示し、図14(b)は、AlAs層11を追加せずに作製された三次元構造体の様子を顕微鏡写真で示している。
【0123】
まず、自然酸化膜を脱離させたGaAs基板1の(001)面に、厚みが10nmのAlAs層を堆積させた。このときの条件としては、成長温度580℃、Al供給速度0.5ML/sec、As4供給速度2.0ML/secとした。
【0124】
そして、このAlAs層11の表面に、厚みが100nmのGaAs層15を更に堆積させた。このときの条件としては、成長温度580℃、Ga供給速度0.5ML/sec、As供給速度2.0ML/secとした。
【0125】
次に、過熱水蒸気酸化処理を行ってGaAs層15の表面部分を酸化し、当該表面をGa23薄膜に改質した。本実施例では、200℃の加熱環境下で、300℃の過熱水蒸気を用いて5分間この酸化処理を行うことで、Ga23薄膜をGaAs層15上部に形成した。
【0126】
次に、GaAs層15上部に形成されたGa23薄膜に電子ビームを照射することで、GaAs基板1表面に、580℃以上の熱耐性を有する改質マスク部を選択的に形成した。この電子ビームの照射は、加速電圧が5kV、面ドーズ量が8mC/cm2となるように設定して行った。また、電子ビームの描画パターンは、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が垂直に交差するように設定された。なお、複数の前記平行ラインは、そのライン間隔が2.4μmになるように描画された。
【0127】
次に、真空環境下でGaAs基板1を580℃以上に加熱し、電子ビームによって改質されていない部分(熱安定なGa23に改質されていない部分)のGa23を剥離させた。これによって、AlAs層11の上に形成されたGaAs層15の表面にGa23無機材料マスク16が形成されることになる。そして、GaAs基板1を650℃で5時間加熱することで、GaAs層15のGa23無機材料マスク16に覆われていない表面からGaAsの昇華を促した。この結果、図13(a)及び図14(a)に示すように、Ga23無機材料マスク16に覆われていない部分に開口部が形成された三次元構造体を得ることができた。
【0128】
図13(a)に示すように、上記の方法で得られた三次元構造体は、GaAs基板1の(100)面に対して垂直方向に伸びる(1−10)面で形成されていた。また、エッチング深さは100nmであった。これは、AlAs層11に堆積したGaAs層15の厚みであり、AlAs層11に達すると、深さ方向のエッチングが停止するためである。
【0129】
一方、図13(b)及び図14(b)に示すAlAs層11を追加しない場合においても同様の条件で三次元微細構造体を作製した。この結果、図13(b)及び図14(b)に示すように、(111)A面と(110)面とで構成された三次元構造体が自己組織化される結果となった。
【0130】
以上に示すように、III−V族化合物層にAlAsを追加することで、GaAs基板1の(100)面に対して垂直方向に伸びる(1−10)面で構成された三次元構造体を得ることができた。
【0131】
次に、図15及び図16を参照して、In23を含んだ3層無機レジスト酸化膜30を用いて三次元構造を形成する実施例について説明する。図15は、In23を含む3層無機レジスト酸化膜30が表面に形成されるGaAs基板1の様子を模式的に示す説明図である。図16は、In23を含む3層無機レジスト酸化膜30を用いて作製された三次元構造体の様子を示す顕微鏡写真である。
【0132】
まず、自然酸化膜を脱離させたGaAs基板1の(001)面に、MBE法を用いて超高真空環境下で、As薄膜2を1.5nm堆積させ、このAs薄膜2の上にIn薄膜を1.5nm堆積させた。次に、200℃の環境下で、過熱水蒸気酸化処理を5分間行って前記In薄膜を酸化し、In23薄膜8に改質した。このようにして形成されたIn23薄膜8の上にAs薄膜5を更に堆積させた。
【0133】
上記のように形成された3層無機レジスト酸化膜30に電子ビームを照射することで、580℃以上の熱耐性を有する改質マスク部をIn23薄膜8の一部として形成した。この電子ビームの照射は、加速電圧が1kV、面ドーズ量が200μC/cm2となるように設定して行った。また、電子ビームの描画パターンは、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が交差するように設定した。なお、複数の前記平行ラインは、そのライン間隔が2.0μmになるように描画された。
【0134】
次に、GaAs基板1を真空中で580℃以上に加熱し、電子ビームによって改質されていない部分(熱安定なIn23に改質されていない部分)のIn23を剥離させた。これにより、GaAs基板1にIn23無機材料マスクが形成されることになる。次に、GaAs基板1を650℃で4時間加熱することで、GaAs基板1のIn23無機材料マスクに覆われていない表面からGaAsの昇華を促して、エッチング処理を行った。これによって、図16に示すように、基板上に開口部が形成される三次元構造体を得ることができた。このように、In23を3層無機レジスト酸化膜30に用いた場合においても、三次元微細構造を精度良く形成することができる。
【0135】
ところで、図5(b)を用いて既に説明したように、GaAs自然酸化膜はGa23を主成分として構成されており、当該自然酸化膜とGaAs基板1との界面の近傍には金属Asが沈殿している。また、図10を参照した説明で述べたように、無機レジスト酸化膜における電子ビームによる酸化膜改質機構は自然酸化膜を用いた場合と同一であるといえる。
【0136】
即ち、上記実施形態で説明してきた3層無機レジスト酸化膜10や2層無機レジスト酸化膜20の電子ビームによる酸化膜の改質は、自然酸化膜の電子ビームによる酸化膜の改質と、改質領域の違い等はあるものの、本質的には同様であるといえる。次に、無機レジスト酸化膜として自然酸化膜を利用した実施例を用いてエッチングや電子ビームの描画方法について説明する。なお、以下に示す実施例は、3層無機レジスト酸化膜10や2層無機レジスト酸化膜20を無機レジストとして用いた場合でも適用できるものである。
【0137】
まず、図17を参照して、エッチング時間の経過に伴う改質領域の幅の縮小に関する実施例について説明する。図17は、エッチング時間の経過に伴うマスク幅の縮小の様子を模式的に示した説明図である。図18は、エッチング時間の経過に伴うマスク幅の縮小の様子を段階的に示した顕微鏡写真である。
【0138】
GaAs基板1の(001)面に形成されている自然酸化膜表面に電子ビームを描画することで、電子ビームの照射部分の自然酸化膜が、化学的に安定した酸化物Ga23(III族酸化物)に置換される。このGa23は、高い熱耐性(580℃以上)を有する無機材料マスクとして機能する。この電子ビームの照射は、加速電圧が5kV、面ドーズ量が8mC/cm2となるように設定して行った。また、電子ビームの描画パターンは、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が交差するように設定した。更に、電子ビーム径は500nmに設定されており、これによって、電子ビーム照射によって形成されるマスク幅は1μm以上になっている。
【0139】
次に、真空環境下でGaAs基板1を580℃以上に加熱し、Ga23に置換された部分以外の自然酸化膜を熱脱離して除去した。その後、0.7ML/secのAs4分子供給下でGaAs基板を650℃に加熱することで、GaAs基板の酸化膜が剥離した部分のGaAs基板1表面のGaAs昇華を促し、自己組織化した三次元構造体を作製した。
【0140】
図17に示すように、この昇華エッチングによって、{001}面、{110}面、及び{111}A面から構成された三次元構造体が自己組織化される結果になった。また、エッチング初期に1μm以上あったマスク幅は、エッチング時間が長くなるにつれてそのマスク幅が縮小していった。より具体的には、図18に示すように、マスク幅は、3時間のエッチングでは600nmになり、5時間のエッチングでは400nmになり、10時間のエッチングでは、50nm程度に縮小加工される結果となった。
【0141】
次に、図19及び図20を参照して、電子ビームの描画ラインを複数交差させる周期的パターンについて説明する。図19は、電子ビームの描画パターンを示した模式図である。図20は、電子ビームの描画パターンに応じた形状で形成される三次元構造体を示した顕微鏡写真である。
【0142】
図19(a)及び図19(b)は何れも、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が垂直に交差する描画パターンである。図19(a)の描画パターンは、複数の平行ラインの一側の端部(図面下側の端部)が、異なる方向に伸びる平行ラインに接した状態になっている。一方、図19(b)の描画パターンは、図19(a)のように、平行ラインの一側の端部が異なる方向に伸びる平行ラインをオーバーランするように交差している。
【0143】
この19(a)又は19(b)に示される描画パターンに従って電子ビームの照射を行って、後述の工程により図20(a)又は図20(b)の顕微鏡写真に示される三次元構造体を得ることができた。図20に示すように、電子ビームが2方向の複数の平行ラインに沿って描写されることで、GaAs基板上には、開口部が周期的に形成されている。
【0144】
図20(a)と図20(b)とを比較すると、図20(a)に示される描画パターンは、平行ライン下側の端部近傍(点線で囲まれる範囲)に形成される開口部の形状が、中央部に形成される開口部の形状と異なったものとなり、開口部の形状が不均一となった。一方、図20(b)に示すように、オーバーランさせる描画パターンは、平行ライン下側の端部近傍の開口部と、中央部に配置される開口部と、に形状の違いがなく、全体を通じて均一な開口部が形成された。この結果は、描画パターンの終端をオーバーランするように電子ビームを描写することで、描画パターン全体(終端部分を含む)での表面拡散が均一化されたことを意味する。
【0145】
なお、本実施例は以下の条件に基づいて行った。即ち、GaAs基板1の(001)面に形成されている自然酸化膜表面に電子ビームを照射することとし、この照射条件は、加速電圧が5kV、面ドーズ量が8mC/cm2となるように設定した。電子ビームを照射した後は、真空環境下でGaAs基板1を580℃以上に加熱し、Ga23に置換された部分以外の自然酸化膜を熱脱離により除去した。その後、0.7ML/secのAs4分子供給下でGaAs基板を650℃で3時間加熱することで、GaAs基板の酸化膜が剥離した部分の表面のGaAs昇華を促し、自己組織化した三次元構造体を形成させた。
【0146】
次に、図21及び図22を参照して、結晶方位に対して所定角度傾けた方向に電子ビームを照射した場合の三次元構造体について説明する。図21は、GaAs基板1の結晶方位に対して描画ラインを10度傾けて電子ビームを照射した場合の結晶の一部の様子を模式的に示した説明図である。図22(a)は、GaAs基板1の結晶方位に対して10度傾けて電子ビームを照射して作製された三次元構造体の様子を示した顕微鏡写真である。図22(b)は、GaAs基板の結晶方位に対して描画ラインを傾けることなく電子ビームを照射して作製された三次元構造体の様子を示した顕微鏡写真である。
【0147】
なお、本実施例においても、GaAs基板1の(001)面に形成されている自然酸化膜表面に電子ビームを描画することとした。本実施例の電子ビームの照射は、加速電圧が5kV、面ドーズ量が8mC/cm2となるように設定して行った。
【0148】
まず、図21に示すように、電子ビームの描画ラインの方向を結晶方位の方向から所定角度傾けた場合について説明する。本実施例では、GaAs基板1の[010]方向に一致する複数の平行ラインと、[100]方向から10度傾けた方向に一致する複数の平行ラインと、が交差するように電子ビームの描画パターンを設定して、電子ビームの照射を行った。この描画パターンに従った電子ビームの照射を行った後、GaAsの昇華エッチングを行うことで得られたのが図22(a)に示す顕微鏡写真である。
【0149】
図22(a)に示すように、GaAs基板上には、電子ビームの描画パターンに応じた三次元構造体が形成されており、複数の開口部が縦横に形成されている。図22(a)において[010]方向に着目すると、開口部は当該[010]方向に沿って直線状に整列するように配置されている。一方、[100]方向に着目すると、当該[100]方向で隣り合う開口部は、[010]方向に若干オフセットする位置関係になっている。なお、個々の開口部の輪郭は、[010]方向及び[100]方向のそれぞれに対して一致する部分を有している。
【0150】
また、同様の条件で、電子ビームの描画方向をGaAs基板1の[010]方向に一致する複数の平行ラインと、[100]方向に一致する複数の平行ラインと、が直角に交差するように描画したものを示すものが図22(b)の顕微鏡写真である。図22(b)に示すように、結晶方位に沿うラインに従って電子ビームが描画されると、上記のような隣り合う開口部の間のオフセットが生じず、縦横に綺麗に整列することが判る。また、個々の開口部の輪郭は、[010]方向及び[100]方向の何れにも沿うように形成されている。
【0151】
図22(a)と図22(b)とを比較すると、個々の開口部(窪み)の向きは同じであり、[010]方向及び[100]方向の何れにも沿うように自己組織化されている点では共通している。このことから、結晶方位に沿うように平行ラインを描画することで、開口部の向きが結晶方位に沿うように自己組織化することが判る。これによって、電子ビームの走査精度の限界を超えて分子レベルで正確な三次元微細構造を作製することができる。なお、描画間隔を3μm以上として電子ビームを描画した場合には、[100]方向に沿うことなく、図22の状態と比較した場合には、開口部が傾くような状態となった。従って、結晶方位に沿って自己組織化させるという観点からは、ライン間隔は3μm未満であることが好ましい。
【0152】
次に、図23を参照して、電子ビームを多重走査して作製された三次元構造体の実施例について説明する。図23は、電子ビームを多重走査して作製した三次元構造体の様子を示す顕微鏡写真である。
【0153】
本実施例においても、GaAs基板1の(001)面に形成されている自然酸化膜表面に電子ビームを描画することとし、その描画条件としては、加速電圧が5kV、1回の走査の面ドーズ量が0.04μC/cm2となるように設定した。そして、電子ビームを3秒間隔で[−110]方向に200回の多重走査を行った。なお、200回走査を繰り返すことで、基板に照射された電子ドーズ量の合計は8mC/cm2となった。
【0154】
次に、真空環境下でGaAs基板1を580℃以上に加熱し、Ga23に置換された部分以外の自然酸化膜を熱脱離して除去した。その後、0.7ML/secのAs4分子供給下でGaAs基板を650℃で5時間加熱することで、GaAs基板の酸化膜が剥離した部分の表面のGaAs昇華を促し、自己組織化した三次元構造体を形成させた。こうして得られた三次元構造を示すのが図23(a)の顕微鏡写真である。
【0155】
なお、比較のために、電子ビームの面ドーズ量を8mC/cm2に設定して電子ビームの照射を1回行ったものについても、三次元構造体を作製した。この比較例としての三次元構造体を図23(b)の顕微鏡写真に示す。
【0156】
図23(a)と図23(b)とを比較すると、図23(b)に示すような1回走査によって得られた無機材料のマスク幅よりも、多重走査によって得られた無機材料のマスク幅の方が太くなっていることが判る。この結果は、多重走査によって、マスク部の端付近(電子ビームガウス分布のテール部分に相当)の熱耐性が向上したことを示している。
【0157】
次に、図24を参照して、電子ビームを照射する際に前記多重走査を行うことで、MBE成長による選択成長において個々の三次元構造体の分離特性が向上した実施例を示す。図24は、電子ビームを多重走査して作製された三次元微細構造にMBE法によってGaAs成長結晶を選択成長させたGaAs基板表面の様子を示す顕微鏡写真である。
【0158】
本実施例においても、GaAs基板1の(001)面に形成されている自然酸化膜表面に電子ビームを描画して改質マスク部を作製した。電子ビームの照射は、加速電圧が5kV、面ドーズ量が0.04μC/cm2となるように設定して行った。また、電子ビームの描画パターンは、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が垂直に交差するように設定した。複数の前記平行ラインは、そのライン間隔が2.0μmになるように描画された。そして、本実施例では、[−110]方向に200回の多重走査を行った(全電子ドーズ量は8mC/cm2であった)。
【0159】
次に、真空環境下でGaAs基板1を610℃で20分間加熱保持した。これによって、Ga23に置換された部分以外の自然酸化膜が熱脱離して除去され、GaAs基板1表面に無機材料マスクが形成されることになる。その後、無機材料マスクが形成されたGaAs基板に対して、固体原料のGa原子とAs4分子を用いたMBE法を行った。このMBE法の条件としては、成長温度を580℃、Ga供給速度を0.5ML/sec、As供給速度を2.0ML/secとし、当該条件下でGaAsを35分間堆積させた。このようにして得られた三次元構造体を示すのが図24(a)の顕微鏡写真である。
【0160】
また、比較のために、電子ビームの電子ドーズ量を8mC/cm2に設定して電子ビーム走査を1回だけ行う以外は上記多重走査を行った場合と同様の条件で、GaAsを結晶成長させ、三次元構造体を作製した。この比較例の三次元構造体を図24(b)の顕微鏡写真に示す。
【0161】
図24(a)と図24(b)とを比較すると、多重走査を行った場合は図24(a)に示すように、マスク間に形成されるGaAsの結晶は、マスクを挟んで隣り合う成長結晶と一体化することなく、それぞれが独立した状態で分離している。一方、図24(b)に示す1回走査の場合、隣り合うGaAsの結晶が互いに接続してしまい、混然一体となってしまっている。この結果から、多重走査を行うことで、MBE成長による選択成長において、個々の三次元構造体の分離特性が向上することが判る。これは、多重走査によって帯電の影響が小さくなっているからである。
【0162】
次に、図25及び図26を参照して、エピタキシー選択成長が結晶方位に正確に配列する実施例について説明する。図25は、ネガ型の三次元構造体にポジ型微細加工によってInAs結晶40を成長させる様子を模式的に示した説明図である。図26は、ネガ型の三次元構造体にポジ型微細加工によってInAs結晶を成長させた三次元構造体の様子を示す顕微鏡写真である。
【0163】
本実施例においても、GaAs基板1の(001)面に形成されている自然酸化膜表面に電子ビームを描画することとし、その照射条件としては、加速電圧が5kV、面ドーズ量が8.0μC/cm2となるように設定されている。また、電子ビームの描画パターンは、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が交差するように設定した。なお、複数の前記平行ラインは、そのライン間隔が1.8μmになるように設定された。
【0164】
次に、真空環境下でGaAs基板1を580℃以上に加熱し、Ga23に置換された部分以外の自然酸化膜を熱脱離により除去した。この結果、Ga23無機材料マスク36がGaAs基板1上に形成されることになる。図25(a)に示すように、0.7ML/secのAs4分子供給下でGaAs基板を650℃で5時間加熱することで、GaAs基板1の酸化膜が剥離した部分の表面のGaAsが昇華するように促し、自己組織化した三次元構造体を作製した。このようにして得られた三次元構造体が、図26(a)の左側に顕微鏡写真として示されている。
【0165】
また、平行ラインの間隔が1.8μmから3.0μmに変更された以外は同様の条件で行って得られた三次元構造体が、図26(a)の右側に示されている。このようにネガ型微細加工が行われることによって、(110)面と(111)A面とで構成された三次元構造体が得られることになる。
【0166】
更に、このように形成された三次元構造体に対して、図26(b)に示すように、InAs結晶40をMBE法によって成長させた。このときの結晶成長温度は580℃とし、As4分子とGa原子とのフラックス比(FAs/FGa)を7とし、InAs結晶成長速度を0.3ML/sec(分子層/秒;二次元薄膜に対する成長速度換算)とし、結晶成長時間を20分とした。この結果、ポジ型微細加工が行われ、図26(b)に示すような表面構造を有する基板が得られた。
【0167】
以上に本発明の実施形態及び実施例を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0168】
上記実施形態及び実施例では、無機レジスト酸化膜としてGa23薄膜4及びIn23薄膜8を用いたが、この構成に限定されるものではない。例えば、Al23薄膜や、Al23とGa23とが混合した酸化膜を、3層無機レジスト酸化膜10や2層無機レジスト酸化膜20に用いることが可能である。この場合、GaAs基板1の表面にAs薄膜2を形成し、このAs薄膜2の上にAl23とGa23とが混合した混合酸化膜を形成し、この混合酸化膜の更に上にAs薄膜5を形成して3層無機レジスト酸化膜を形成する方法等が考えられる。
【0169】
以下、Al23とGa23とが混合した酸化膜を無機レジスト酸化膜に使用した実施例を説明する。なお、以下の実施例では、As薄膜2等のV族膜を形成せずに、Al23とGa23とが混合した混合酸化膜のみを無機レジスト酸化膜として三次元構造体を作製している。図27(a)は、Al23とGa23とが混合した酸化膜を含んだ2層無機レジスト酸化膜を用いて電子ビームを描画した後、610℃で20分間加熱した状態のGaAs基板1表面の様子を示すAFM像である。図27(b)は、GaAs基板1表面に選択成長させたGaAs成長結晶の様子を示す断面SEM像である。
【0170】
本実施例では、まず、自然酸化膜を脱離させたGaAs基板1の(001)面に、厚みが1nmのAlGaAs薄膜を堆積させた。このときの条件は、基板温度が580℃、Al供給速度が0.1ML/sec、Ga供給速度が0.4ML/sec、As供給速度が2.0ML/secであり、当該条件でAlGaAsを7秒間堆積させた。その後、200℃の加熱環境下で、300℃の過熱水蒸気を用いて過熱水蒸気酸化処理を1分間行うことで、Al23とGa23が混合した混合酸化膜をGaAs基板表面に形成した。
【0171】
次に、上記のようにして形成されたAl23とGa23との混合酸化膜に電子ビームを照射することで、580℃以上の熱耐性を有する改質マスク部を選択的に形成した。この電子ビームの照射は、加速電圧が5kV、面ドーズ量が5mC/cm2となるように設定して行った。また、電子ビームは、GaAs基板1の[110]方向に一致する複数の平行ラインを、ライン間隔が1.6μmの間隔になるように描画した。
【0172】
次に、真空環境下で、GaAs基板1を610℃で20分間加熱保持することで、電子ビームによって改質されていない部分を剥離させた。この結果、図27(a)に示すように、GaAs基板1上に無機材料マスク領域が形成されることになる。このマスク領域が形成されたGaAs基板1に対して、固体原料のGa原子とAs4分子を用いたMBE成長を行った。このときの条件としては、成長温度を580℃、Ga供給速度を0.5ML/sec、As供給速度を2.0ML/secとし、この条件下でGaAsを35分間堆積させた。これにより、酸化膜が剥離した部分の表面に選択的にGaAsを結晶成長させた。
【0173】
この結果から、図27(b)に示すようなGaAs成長結晶を得ることができた。このGaAs成長結晶は、(001)面に対して、垂直方向に伸びる{1−10}面と(111)B面、(001)面から構成された三次元構造体の開口部が[110]方向に沿って配列する結果となった。これは、Al23とGa23とが混合された酸化膜材料が電子ビームの描画によって580℃以上の熱耐性を有し、かつ、MBE法を用いた選択成長用のマスクとして機能したことを意味する。
【0174】
次に、図28及び図29を参照して、Al23とGa23とを混合させた酸化膜を含む2層無機レジスト酸化膜を用いて三次元構造体をSi基板41の表面に形成した実施例について説明する。図28は、Al23とGa23とが混合した酸化膜を含む2層無機レジスト酸化膜を用いてSi基板にGaAs成長結晶を形成した様子を模式的に示した説明図である。図29は、Si基板41に形成されるGaAs成長結晶47の様子を示す顕微鏡写真である。なお、図29は、Si基板の(001)面を45度傾けた状態で、基板上に形成されたGaAs成長結晶47を観察したものである。
【0175】
Si基板41にGaAs成長結晶47を形成する工程について説明する。まず、自然酸化膜を脱離させたSi基板41の(001)面に、厚みが3nmのAlGaAs薄膜を堆積させた。このときの条件は、室温下であって、Al供給速度を0.005ML/sec、Ga供給速度を0.1ML/sec、As供給速度を2.0ML/secとし、AlGaAsを101秒間堆積させた。これにより、Si基板41の表面に前記AlGaAs薄膜を形成した。その後、200℃の加熱環境下で、300℃の過熱水蒸気を用いて過熱水蒸気酸化処理を5分間行うことで、Al23とGa23が混合した混合酸化膜を含む2層無機レジスト酸化膜をSi基板41表面に形成した。
【0176】
次に、上記のように形成されたAl23とGa23との混合酸化膜に電子ビームを照射して、580℃以上の熱耐性を有する改質マスク部を選択的に形成した。電子ビームの照射は、加速電圧が5kV、面ドーズ量が8mC/cm2となるように設定して行った。電子ビームの描画パターンは、Si基板41の[110]方向に一致する複数の平行ラインと、[−110]方向に一致する複数の平行ラインと、が垂直に交差するように設定した。なお、複数の前記平行ラインは、そのライン間隔が1.8μmになるように描画された。
【0177】
次に、真空環境下で、Si基板41を610℃で20分間加熱保持した後、580℃に温度を下げ、固体原料のGa原子と、As4分子を用いたMBE成長を行った。このMBE成長の条件としては、成長温度を580℃、Ga供給速度を0.1ML/sec、As供給速度を2.0ML/secとし、この条件下でMBE法によってGaAsを59分間堆積させた。この結果、図28に示されるようなGaAs成長結晶47を得ることができた。また、図29に顕微鏡写真として示すように、Si基板41の表面に混合無機材料マスク46が周期的に(電子ビームの描画パターンに応じて)配列されるとともに、前記Si基板41の表面にGaAs成長結晶47が選択的に形成される結果となった。
【0178】
この結果から、Al23とGa23が混合した混合酸化膜が無機レジスト酸化膜として機能したことが判る。即ち、電子ビームの照射によって、Al23とGa23が混合した混合酸化膜の一部が580℃以上の熱耐性機能を有する改質マスク部に改質される。次に、電子ビームによって改質されていない混合酸化膜がエッチング処理によって除去されることで、電子ビームが照射された部分がSi基板41の表面に形成され、MBE法を用いた選択成長用のマスクとして機能したのである。
【0179】
以上の実施例により、Al23とGa23とを混合した混合酸化膜は無機レジスト酸化膜として機能することが示された。従って、これらの無機レジスト酸化膜を3層無機レジスト酸化膜及び2層無機レジスト酸化膜に用いて三次元微細構造を作製することも可能である。
【0180】
また、上記実施形態に示した3層無機レジスト酸化膜10及び2層無機レジスト酸化膜20を用いて三次元微細構造を作製する際の基板の材料として、Si又はSiCを選択することができる。例えば、Si又はSiCで構成された基板の表面にGaAs層を形成し、このGaAs層に上記3層無機レジスト酸化膜10又は2層無機レジスト酸化膜20を形成する構成に変更することもできる。
【0181】
上述してきたように、本発明を用いた三次元微細加工方法においては、ポジ型の三次元微細構造を作製する工程及びネガ型の三次元微細構造を作製する工程を任意に組み合わせて三次元微細構造を多段階で作製することができる。例えば、ポジ型の三次元微細構造の表面に、又はネガ型の三次元微細構造の表面に、III族酸化物膜の改質マスク部を形成し、エッチング処理によって新たな三次元微細構造を更に形成するような形態も可能である。また、電子ビームの設定や温度等の各種の条件も、上記実施形態に限定される訳ではなく、事情に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0182】
1 GaAs基板(III−V族化合物基板)
2 As薄膜(V族膜)
3 GaAs薄膜(III−V族化合物膜)
4 Ga23薄膜(III族酸化物膜)
5 As薄膜(V族膜)
7 GaAs成長結晶(III−V族化合物結晶)
10 3層無機レジスト酸化膜
20 2層無機レジスト酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成されたIII−V族化合物層の表面、又はIII−V族化合物基板の表面に微細構造を形成する三次元微細加工方法において、
前記基板の表面にV族原子で構成されるV族膜を形成し、更にそのV族膜の表面にIII−V族化合物膜を形成する第1工程と、
前記第1工程で形成したIII−V族化合物膜を過熱水蒸気によってIII族酸化物膜に改質し、このIII族酸化物膜の表面にV族膜を形成することで3層無機レジスト酸化膜を形成する第2工程と、
真空中で3層無機レジスト酸化膜の表面に照射した電子ビームが、前記第2工程で形成された前記V族膜を通過して前記III族酸化物膜の一部分に作用することで、当該III族酸化物膜から余剰な酸素分子を分離可能にし、前記第1工程で前記基板の表面に形成したV族膜の一部が加熱昇華されながら前記基板の表面の一部が酸化されてIII族酸化物が生成されることで、前記III族酸化物膜と基板の表面の一部が密着し、熱耐性を有する改質マスク部が電子ビームの照射部分に応じた形状で形成される第3工程と、
真空中で前記基板を昇温させることにより、前記基板の表面に形成されているV族膜が昇華され、前記改質マスク部以外の部分のIII族酸化物膜が脱離して前記基板の表面が露出する第4工程と、
真空にV族原料を供給した環境下で前記基板を所定温度で加熱して、基板の露出部分からIII族原子を優先的に剥離させるエッチング処理を行うことでネガ型の三次元微細構造を作製する第5工程と、
を含むことを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第1工程で前記基板の表面に形成されるV族膜の厚みは1nm以上5nm以下であり、前記V族膜の表面に形成されるIII−V族化合物膜の厚みが1nm以上5nm以下であり、
前記第2工程でIII族酸化物膜の表面に形成されるV族膜の厚みが1nm以上10nm以下であることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項3】
基板の表面に形成されたIII−V族化合物層の表面、又はIII−V族化合物基板の表面に微細構造を形成する三次元微細加工方法において、
前記基板の表面にV族原子で構成されるV族膜を形成し、更にそのV族膜の表面にIII−V族化合物膜を形成する第1工程と、
前記第1工程で形成したIII−V族化合物膜を過熱水蒸気によってIII族酸化物膜に改質して2層無機レジスト酸化膜を形成する第2工程と、
真空中で2層無機レジスト酸化膜の表面に電子ビームを照射することにより、III族酸化物膜から余剰な酸素分子を分離可能にし、前記第1工程で前記基板の表面に形成したV族膜の一部が加熱昇華されながら、その昇華された部分で前記基板の表面の一部が酸化されてIII族酸化物が生成されることで、前記III族酸化物膜と基板の表面の一部が密着し、熱耐性を有する改質マスク部が電子ビームの照射部分に応じた形状で形成される第3工程と、
真空中で前記基板を昇温させることにより、前記基板の表面に形成されているV族膜が昇華され、改質マスク部以外の部分のIII族酸化物膜が脱離して前記基板の表面が露出する第4工程と、
真空にV族原料を供給した環境下で前記基板を所定温度で加熱して、基板の露出部分からIII族原子を優先的に剥離させるエッチング処理を行うことでネガ型の三次元微細構造を作製する第5工程と、
を含むことを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第1工程で前記基板の表面に形成されるV族膜の厚みが1nm以上5nm以下であり、前記V族膜の表面に形成されるIII−V族化合物膜の厚みが1nm以上5nm以下であることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
前記III−V族化合物層又はIII−V族化合物基板は、AlxGayIn1−x−yAs1−z(0≦x<1、0≦y、z≦1)で構成されていることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第2工程で形成されるIII族酸化物膜は、Al23薄膜又はIn23薄膜であることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
Si又はSiCを基板とすることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第3工程における前記電子ビームの加速電圧は0.5kV以上20kV以下であり、面ドーズ量の範囲は50nC/cm2以上16μC/cm2以下であり、当該電子ビームの照射は単一ラインモードで行うことを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第3工程において電子ビームの描画ラインを複数交差させることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項10】
請求項9に記載の三次元微細加工方法であって、
前記描画ラインは、長手方向の中途部で他の描画ラインに交差することを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第3工程では、電子ビームは、前記基板の結晶方位[100]、[010]、[011]、[01−1]、[110][−110]、[111]、[−1−1−1]の何れかに一致するラインを描画するように照射され、
前記第4工程では、前記基板は300℃以上650℃以下の温度に昇温されるものとし、
前記第5工程では、前記基板は300℃以上650℃以下の温度に加熱されるとともに、エッチング速度が0.3ML/sec以下であることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第3工程では、電子ビームを同じ場所に繰り返し照射する多重走査を行うことを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項13】
請求項12に記載の三次元微細加工方法であって、
前記多重走査は、同じ場所に電子ビームを照射する際には、前回その場所を走査した時から、電子ビームによって1mmを走査するために必要な時間の10倍以上の時間が経過した後に、電子ビームを照射することを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項14】
請求項1から13までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第3工程では、電子ビームをドーナツ形状のリミッティングアパーチャを通すことで、電子ビーム径を収束させて照射することを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
固体成長原料を用いた分子線エピタキシャル成長法を行うことで、前記第5工程でエッチング処理を行った部分にIII−V族化合物結晶を選択成長させる第6工程を更に含むことを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項16】
請求項15に記載の三次元微細加工方法であって、
前記第6工程において、前記基板は300℃以上650℃以下の温度に加熱されるものとし、固体成長原料のV族とIII族のフラックス比FV/FIIIは1以上100以下であり、結晶成長速度は0.01ML/sec以上2ML/sec以下であることを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項17】
請求項1から16までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法であって、
ポジ型の三次元微細構造を作製する工程及びネガ型の三次元微細構造を作製する工程を組み合わせて三次元微細構造を多段階で作製することを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項18】
請求項17に記載の三次元微細加工方法であって、
ポジ型の三次元微細構造の表面に、又はネガ型の三次元微細構造の表面に、III族酸化物膜の改質マスク部を形成し、エッチング処理によって新たな三次元微細構造を更に形成することを特徴とする三次元微細加工方法。
【請求項19】
請求項1から18までの何れか一項に記載の三次元微細加工方法により作製されることを特徴とする三次元微細構造。
【請求項20】
請求項19に記載の三次元微細構造であって、隣り合う単位構造同士の間隔がサブミクロン以下であることを特徴とする三次元微細構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図19】
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【図21】
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【図25】
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【図28】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−237539(P2010−237539A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86680(P2009−86680)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】