説明

三相フィルタ装置

【課題】比較的簡単な構成で高調波電流を効果的に抑制することができる三相フィルタ装置を提供する。
【解決手段】三相フィルタ装置1は、三相交流電源3を整流する整流回路2と、この整流回路の交流入力側の各相に接続されたリアクトル6及び各相間に接続されたコンデンサ7と、整流回路の直流出力側に接続された直流側リアクトル8、平滑用コンデンサ11等から成る平滑回路と、この平滑回路と整流回路の間に接続されたスイッチング素子12と、このスイッチング素子をオン/オフ制御するコントローラ13とを備え、このコントローラは、整流回路の交流入力側に流れる電流に含まれる高調波電流が規制値内となるようスイッチング素子のオン/オフデューティーを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電源を整流し、直流出力として負荷に供給する三相フィルタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より三相交流電源からインバータ回路等に電力を供給する際には、例えば図6に示されるような三相整流装置100が用いられていた。この図において、101は六個のダイオードのブリッジ回路から成る整流回路であり、この整流回路101により三相交流電源102(例えば周波数50Hz、相間電圧AC230V)を整流して負荷103(インバータ回路等)に電力を供給する。この整流回路101の交流入力側の各相(三線)にはそれぞれ交流側リアクトル(例えば2mH)104が接続されている。
【0003】
また、直流出力側の一方の線には直流側リアクトル106(例えば3mH)が接続され、このリアクトル106の後段において直流出力側の二線間には平滑用コンデンサ107(例えば4700μF)が接続されている。そして、この平滑用コンデンサ107の後段の二線に負荷103が接続される。そして、整流回路101で交流入力は整流され、直流として出力される。この直流出力は直流側リアクトル106及び平滑用コンデンサ107で平滑された後、負荷103に供給されるかたちとされている。
【0004】
次に、図7を参照して図6の整流装置100の入力電圧と電流について説明する。この図においてV1〜V3は整流回路101の交流入力側の各相を示しており、V12はV1相とV2相間の電圧、V13はV1相とV3相間の電圧である。また、I1は交流入力側(例えばV1相)に流れる電流を示している。
【0005】
図7からも明らかなようにV1相の電流I1は、通電角においてV1相の電圧>V3相の電圧>V2相の電圧となる区間である区間bでV1相からV2相に流れる。また、V1相の電圧>V2相の電圧>V3相の電圧となる区間である区間cでV1相からV3相に流れる。更に、V2相の電圧>V3相の電圧>V1相の電圧となる区間である区間eでV3相からV1相に流れる。
【0006】
そして、V3相の電圧>V1相の電圧>V2相の電圧となる区間である区間aや、V2相の電圧>V1相の電圧>V3相の電圧となる区間である区間dでは電流I1は流れない(但し、交流側リアクトル104の影響で電流に遅れが生じ、区間a、dの初期ではI1が流れている)。
【0007】
また、V1相とV2相間の電圧V12と、V1相とV3相間の電圧V13は、区間bから区間cに移行する点で区間eから区間fに移行する点で低下(交差)しており、この影響で図7中のα、又は、βの点のように電流I1が低下する。そのため、電流I1は図7に示されるような二山の波形となる。
【0008】
このように交流入力側の電流I1に流れない区間が存在することや二山の波形となることなどの影響で、電流I1は高調波電流を含んだものとなる。このような高調波電流が流れると、同一の電源ラインに接続された機器や配電設備に悪影響を及ぼし、例えば、配電設備の進相コンデンサが焼損したり、トランスが唸るなどの不都合が生じる。そのため、IEC61000−3−2のような規格が定められ、高調波電流を所定の規制値内に納めなければならないようになってきている。
【0009】
このような高調波電流の抑制方法としては、スイッチング素子を六個使用したPWMコンバータと称されるフィルタや(例えば、特許文献1参照)、スイッチング素子一個で構成するフィルタが開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−252749号公報
【特許文献2】特開平11−98847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、前述したPWMコンバータを使用するフィルタでは出力電圧を制御(抑制)して、高調波電流を精度良く抑制できるものの、部品点数が増大するため、機器に組み込む際には問題が多く、更に、コストが高騰すると共に、制御も複雑化してしまう。また、交流電源の相間電圧が高い(例えば、欧州のようなAC230V)場合には、出力される直流電圧は230V×√3×√2=563Vとなって極めて高くなると共に、後者のスイッチング素子一個のフィルタの場合にはこれが更に高くなってしまう。そのため、整流後の回路で使用する回路素子として高電圧対応のものを使用しなければならなくなると云う問題も発生する。
【0011】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、比較的簡単な構成で高調波電流を効果的に抑制することができる三相フィルタ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の三相フィルタ装置は、三相交流電源を整流する整流回路と、この整流回路の交流入力側の各相に接続されたリアクトル及び各相間に接続されたコンデンサと、整流回路の直流出力側に接続された平滑回路と、この平滑回路と整流回路の間に接続されたスイッチング素子と、このスイッチング素子をオン/オフ制御する制御手段とを備え、この制御手段は、整流回路の交流入力側に流れる電流に含まれる高調波電流が規制値内となるようスイッチング素子のオン/オフデューティーを制御することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明の三相フィルタ装置は、上記において制御手段は、高調波電流を測定する高調波電流測定手段を備え、この高調波電流測定手段により測定された高調波電流の値に基づき、スイッチング素子を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明の三相フィルタ装置は、請求項1の発明において制御手段は、出力される電力に対して、高調波電流が規制値内となるスイッチング素子のオン/オフデューティーに関するデータを備え、このデータに基づき、電力に応じてスイッチング素子を制御することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明の三相フィルタ装置は、請求項1の発明において制御手段は、出力される電力に対して、高調波電流が規制値内と整流回路の直流出力側の電圧に関するデータを備え、このデータに基づき、電力に応じて高調波電流が規制値内となる電圧となるようスイッチング素子を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明の三相フィルタ装置は、請求項1の発明において制御手段は、出力される最大電力において高調波電流が規制値内となるスイッチング素子のオン/オフデューティーに関するデータを備え、このデータ以下のオン/オフデューティーでスイッチング素子を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明の三相フィルタ装置は、請求項1の発明において制御手段は、出力される最大電力において高調波電流が規制値内と整流回路の直流出力側の電圧に関するデータを備え、このデータ以下の電圧となるようスイッチング素子を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
三相交流電源を整流する整流回路と、この整流回路の交流入力側の各相に接続されたリアクトル及び各相間に接続されたコンデンサと、整流回路の直流出力側に接続された平滑回路と、この平滑回路と整流回路の間に接続されたスイッチング素子とを備えて構成される三相フィルタ装置の場合、出力される電力が同じ場合、スイッチング素子のオン/オフデューティーが低い程、整流回路の交流入力側に流れる電流の波形は正弦波に近づき、高調波電流が低減される特性がある。また、スイッチング素子のオン/オフデューティーが同じ場合には、出力される電力が大きい程、交流入力側に流れる電流の波形は正弦波に近づくが、入力電流も増加するため、高調波電流も増加する。
【0019】
そこで、本発明では請求項2乃至請求項6の如き手法を用い、制御手段により整流回路の交流入力側に流れる電流に含まれる高調波電流が規制値内となるようスイッチング素子のオン/オフデューティーを制御するようにしているので、交流入力側の電流に含まれる高調波電流を規制値内に的確に抑制することができるようになる。これにより、高調波電流により引き起こされる不都合を効果的に解消若しくは抑制することができるようになると共に、使用するスイッチング素子も単一であるので構成も簡素化され、部品コストも削減されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明を適用した降圧型三相フィルタ装置1の電気回路を示している。この図において、2は六個のダイオードのブリッジ回路から成る整流回路であり、この整流回路2により三相交流電源3(例えば周波数50Hz、相間電圧AC230V)を整流して負荷4(インバータ回路等)に電力を供給する。この整流回路2の交流入力側のV1〜V3の各相(三線)にはそれぞれ交流側リアクトル(例えば2mH)6が接続されており、各相間には交流側キャパシタ(例えば0.1μFのコンデンサ)7が接続されている。
【0022】
また、直流出力側の一方の線には直流側リアクトル8(例えば3mH)が接続され、このリアクトル8の後段には逆流阻止ダイオード9が接続されている。この逆流阻止ダイオード9は負荷4側が順方向とされている。この逆流阻止ダイオード9(省くことも可能)の後段において直流出力側の二線間には平滑用コンデンサ11(例えば4700μF)が接続されている。これら直流側リアクトル8、逆流阻止ダイオード9及び平滑用コンデンサ11等から平滑回路が構成される。そして、この平滑用コンデンサ11の後段の二線に前記負荷4が接続される。
【0023】
更に、整流回路2と直流側リアクトル8間の一方の線には、例えばIGBTから成るスイッチング素子12が接続されており、このスイッチング素子12のゲート入力端子は制御手段としてのコントローラ13に接続されている。更に、このスイッチング素子12と直流側リアクトル8間の一方の線と他方の線間にはフライホイールダイオード14が接続されている。
【0024】
尚、16は整流回路2の交流入力側の電流(以下、入力電流)(I1(例えばV1相の電流)を測定する入力電流検出器であり、その出力はコントローラ13に入力される。また、17及び18は負荷に出力される整流回路2の直流出力側の電圧(以下、出力電圧)VO及び電流(以下、出力電流)I2を測定する出力電圧検出器及び出力電流検出器であり、これらの出力もコントローラ13に入力される。
【0025】
そして、コントローラ13によりスイッチング素子12がオンされると、整流回路2で交流入力は整流され、直流として出力される。この直流出力はスイッチング素子12、直流側リアクトル8、逆流阻止ダイオード9及び平滑用コンデンサ11で平滑された後、負荷4に供給される。
【0026】
コントローラ13は前記各検出器16〜18の出力に基づいてスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する。この場合、スイッチング素子12のオン/オフデューティーとは、1サイクル(スイッチング信号の周波数は20kHz)の全期間に対してスイッチング素子12がオンしている期間の比を意味しており、オン期間が長くなればオン/オフデューティーは大きくなり、逆にオフ期間が長くなればオン/オフデューティーは小さくなる。コントローラ13はこのスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御することで、直流出力側の電圧(負荷に印加される電圧)V2を制御(降圧)する。
【0027】
ここで、コントローラ13によりスイッチング素子12がオンされると、交流側リアクトル6を経て整流回路2の直流出力側に電流が流れる。そして、コントローラ13によりスイッチング素子12がオフされると交流側リアクトル6を流れていた入力電流(I1)は交流側キャパシタ7を充電するため、整流回路2の入力、例えばV1相の入力点BD1の電位が上昇する。従って、スイッチング素子12のオフの期間が長い程、即ち、スイッチング素子12のオン/オフデューティーが小さい程、交流側キャパシタ7を充電する時間が長くなり、BD1の電位の上昇は大きくなる。
【0028】
次に、コントローラ13によりスイッチング素子12がオンされると、三相交流電源3から交流側リアクトル6を経て整流回路2の直流出力側に電流が流れると共に、交流側キャパシタ7からも放電された電流が直流出力側に流れる。即ち、図1の回路では、図6の回路と比較して、スイッチング素子12のオン/オフデューティー比が小さい程、整流回路2の入力点BD1〜BD3(BD2はV2相、BD3はV3相の入力点)の電位が高くなるため、図7の通電角の区間b及び区間c、又は、区間e及び区間fが広がる。また、図7のα及びβの点における電流の低下の割合が小さくなる。これらにより入力電流I1の波形は改善され、正弦波に近づくので、それに含まれる高調波電流も低減されることになる。
【0029】
この場合の実施例では、コントローラ13は入力電流検出器16により測定される入力電流I1からそれに含まれる高調波電流の値を測定する回路(高調波電流測定手段)を備えている。そして、この測定された高調波電流の値が規制値(図2乃至図4参照。3次は2.300(A)、5次は1.140(A)、7次は0.770(A)等)内となるようにスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する。実際には、測定された高調波電流の値が規制値に上昇した場合、所定のディファレンシャルだけ低下するまでオン/オフデューティーを低下させる動作を実行することになる。
【0030】
このようなコントローラ13によるスイッチング素子12の制御によって、入力電流I1に含まれる高調波電流を規制値内に的確に抑制することができるようになり、高調波電流により引き起こされる不都合を効果的に解消若しくは抑制することができるようになる。このとき、使用されているスイッチング素子12は単一であるのでPAMコンバータと比較して構成も簡素化され、部品コストも削減される。
【実施例2】
【0031】
次に、コントローラ13によるスイッチング素子12の制御に関して、他の実施例を説明する。図2乃至図4は本発明の三相フィルタ装置1から負荷4に出力される電力毎に、スイッチング素子12のオン/オフデューティーと、出力電圧VO、入力電流I1、力率、THD(全高調波歪率)、電流I1に含まれる高調波電流の測定値と各高調波電流の規制値をそれぞれ示しており、図2は電力5kW、図3は電力4kW、図4は電力3kWの場合を示している。
【0032】
各図から明らかな如く、電力5kWではオン/オフデューティー0.70以下で高調波電流は規制値内となり、そのときの出力電圧VOは354V以下となることが分かる。また、電力4kWでもオン/オフデューティー0.70以下で高調波電流は規制値内となり、そのときの出力電圧VOは373V以下となることが分かる。また、電力3kWでもオン/オフデューティー0.70以下で高調波電流は規制値内となり、そのときの出力電圧VOは381V以下となることが分かる。
【0033】
同様に2kWではオン/オフデューティー0.80以下で高調波電流は規制値内となり、そのときの出力電圧VOは435V以下、1kWではオン/オフデューティー0.90以下で高調波電流は規制値内となり、そのときの出力電圧VOは490V以下でありことが実験により測定されている。
【0034】
この実施例では負荷4に出力される電力(負荷4で消費される電力)の各値5kW〜1kWに対して、高調波電流が規制値内となるスイッチング素子12のオン/オフデューティーとそのときの出力電圧VOに関するデータ(図5に示す)をコントローラ13が保有している。そして、コントローラ13は出力電圧検出器17及び出力電流検出器18が測定する出力電圧VO及び出力電流I2に基づき、三相フィルタ装置1から負荷4に出力されている電力を判定し、前記図5のデータに基づき、この電力の値に応じてスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する。
【0035】
実際には、コントローラ13は三相フィルタ装置1から出力されている電力が5kW、4kW、又は、3kWである場合は、スイッチング素子12のオン/オフデューティーを0.7以下として制御する。また、電力が2kWである場合は、スイッチング素子12のオン/オフデューティーを0.8以下として制御する。更に、電力が1kWである場合は、スイッチング素子12のオン/オフデューティーを0.9以下として制御することになる。
【0036】
このようなコントローラ13によるスイッチング素子12の制御によって、同様に入力電流I1に含まれる高調波電流を規制値内に的確に抑制することができるようになり、高調波電流により引き起こされる不都合を効果的に解消若しくは抑制することができるようになる。また、同様に使用されているスイッチング素子12は単一であるのでPAMコンバータと比較して構成も簡素化される共に、実施例1のような高調波電流の値を測定する回路(高調波電流測定手段)やフィードバック制御も不要となるので、一層のコスト削減を図ることができるようになる。
【実施例3】
【0037】
次に、コントローラ13によるスイッチング素子12の制御に関して、もう一つの他の実施例を説明する。前述したようにこの実施例の場合も、コントローラ13は負荷4に出力される電力(負荷4で消費される電力)の各値5kW〜1kWに対して、高調波電流が規制値内となるスイッチング素子12のオン/オフデューティーとそのときの出力電圧VOに関するデータ(図5)を保有している。
【0038】
そして、この場合コントローラ13は出力電圧検出器17及び出力電流検出器18が測定する出力電圧VO及び出力電流I2に基づき、三相フィルタ装置1から負荷4に出力されている電力を判定する。次に、前記図5のデータに基づき、この電力の値に応じて高調波電流が規制値内となる出力電圧VOを選択し、選択された出力電圧VOとなるように出力電圧検出器7に基づいてスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する。
【0039】
実際には、コントローラ13は三相フィルタ装置1から出力されている電力が5kWである場合、出力電圧VOが354V以下となるようにスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する(0.7以下となる)。また、電力が4kWである場合、出力電圧VOが373V以下となるようにスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する(0.7以下となる)。更に、電力が3kWである場合、出力電圧VOが381V以下となるようにスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する(0.7以下となる)。更にまた、電力が2kWである場合、出力電圧VOが435V以下となるようにスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する(0.8以下となる)。更に、電力が1kWである場合、出力電圧VOが490V以下となるようにスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する(0.9以下となる)。
【0040】
このようなコントローラ13によるスイッチング素子12の制御によって、同様に入力電流I1に含まれる高調波電流を規制値内に的確に抑制することができるようになり、高調波電流により引き起こされる不都合を効果的に解消若しくは抑制することができるようになる。また、同様に使用されているスイッチング素子12は単一であるのでPAMコンバータと比較して構成も簡素化される共に、同様に実施例1のような高調波電流の値を測定する回路(高調波電流測定手段)やフィードバック制御も不要となるので、一層のコスト削減を図ることができるようになる。
【実施例4】
【0041】
次に、コントローラ13によるスイッチング素子12の制御に関して、更にもう一つの他の実施例を説明する。例えば実施例の三相フィルタ装置1が負荷4に供給できる電力の最大値が5kWであるとした場合、図5から明らかな如くスイッチング素子12のオン/オフデューティーを常に0.7以下で制御すれば、全ての運転領域において高調波電流は規制値内に抑制することができる。
【0042】
そこで、この実施例ではコントローラ13がこの電力の最大値5kWのときのオン/オフデューティーに関するデータ(0.7以下)を保有しており、全ての運転領域においてスイッチング素子12のオン/オフデューティーを0.7以下として制御する。
【0043】
このようなコントローラ13によるスイッチング素子12の制御によって、同様に入力電流I1に含まれる高調波電流を規制値内に的確に抑制することができるようになり、高調波電流により引き起こされる不都合を効果的に解消若しくは抑制することができるようになる。また、同様に使用されているスイッチング素子12は単一であるのでPAMコンバータと比較して構成も簡素化される共に、実施例1のような高調波電流の値を測定する回路(高調波電流測定手段)やフィードバック制御も不要となり、更に、実施例2や実施例3のように制御のために電力を測定する必要も無くなるので、一層のコスト削減を図ることができるようになる。
【実施例5】
【0044】
次に、コントローラ13によるスイッチング素子12の制御に関して、更にもう一つの他の実施例を説明する。この場合も例えば実施例の三相フィルタ装置1が負荷4に供給できる電力の最大値が5kWであるとした場合、図5から明らかな如く出力電圧VOを常に354V以下で制御すれば、全ての運転領域において高調波電流は規制値内に抑制することができる。
【0045】
そこで、この実施例ではコントローラ13がこの電力の最大値5kWのときの出力電圧VOに関するデータ(354V以下)を保有しており、全ての運転領域において出力電圧VOが354V以下となるようにスイッチング素子12のオン/オフデューティーを制御する(0.7以下となる)。
【0046】
このようなコントローラ13によるスイッチング素子12の制御によって、同様に入力電流I1に含まれる高調波電流を規制値内に的確に抑制することができるようになり、高調波電流により引き起こされる不都合を効果的に解消若しくは抑制することができるようになる。また、同様に使用されているスイッチング素子12は単一であるのでPAMコンバータと比較して構成も簡素化される共に、実施例1のような高調波電流の値を測定する回路(高調波電流測定手段)やフィードバック制御も不要となり、更に、実施例2や実施例3のように制御のために電力を測定する必要も無くなるので、一層のコスト削減を図ることができるようになる。
【0047】
尚、上記各実施例で示した数値は、それに限られるものでは無く、実際に適用される各素子の種類や容量、負荷の違いにより相違して来ることは云うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を適用した一実施例の三相フィルタ装置の電気回路図である。
【図2】図1の三相フィルタ装置から負荷に出力される電力が5kWの場合のスイッチング素子のオン/オフデューティーと出力電圧、入力電流、力率、THD、入力電流に含まれる高調波電流と各高調波電流の規制値を示す図である。
【図3】図1の三相フィルタ装置から負荷に出力される電力が4kWの場合のスイッチング素子のオン/オフデューティーと出力電圧、入力電流、力率、THD、入力電流に含まれる高調波電流と各高調波電流の規制値を示す図である。
【図4】図1の三相フィルタ装置から負荷に出力される電力が3kWの場合のスイッチング素子のオン/オフデューティーと出力電圧、入力電流、力率、THD、入力電流に含まれる高調波電流と各高調波電流の規制値を示す図である。
【図5】図1の三相フィルタ装置から負荷に出力される各電力毎に高調波電流を規制値内とすることができるスイッチング素子のオン/オフデューティーと出力電圧を示す図である。
【図6】通常の三相整流装置の電気回路図である。
【図7】図6の回路の交流電源の各相の電圧と相間電圧、入力電流の波形を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 三相フィルタ装置
2 整流回路
3 三相交流電源
4 負荷
6 交流側リアクトル
7 交流側キャパシタ
8 直流側リアクトル
9 逆流阻止ダイオード
11 平滑用コンデンサ
12 スイッチング素子
13 コントローラ
16 入力電流測定器
17 出力電圧測定器
18 出力電流測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源を整流する整流回路と、該整流回路の交流入力側の各相に接続されたリアクトル及び各相間に接続されたコンデンサと、前記整流回路の直流出力側に接続された平滑回路と、該平滑回路と前記整流回路の間に接続されたスイッチング素子と、該スイッチング素子をオン/オフ制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、前記整流回路の交流入力側に流れる電流に含まれる高調波電流が規制値内となるよう前記スイッチング素子のオン/オフデューティーを制御することを特徴とする三相フィルタ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記高調波電流を測定する高調波電流測定手段を備え、該高調波電流測定手段により測定された高調波電流の値に基づき、前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1に記載の三相フィルタ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、出力される電力に対して、高調波電流が規制値内となる前記スイッチング素子のオン/オフデューティーに関するデータを備え、該データに基づき、前記電力に応じて前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1に記載の三相フィルタ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、出力される電力に対して、高調波電流が規制値内と前記整流回路の直流出力側の電圧に関するデータを備え、該データに基づき、前記電力に応じて高調波電流が規制値内となる前記電圧となるよう前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1に記載の三相フィルタ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、出力される最大電力において高調波電流が規制値内となる前記スイッチング素子のオン/オフデューティーに関するデータを備え、該データ以下のオン/オフデューティーで前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1に記載の三相フィルタ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、出力される最大電力において高調波電流が規制値内と前記整流回路の直流出力側の電圧に関するデータを備え、該データ以下の電圧となるよう前記スイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1に記載の三相フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−211896(P2008−211896A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45451(P2007−45451)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】