説明

上皮および/または内皮層を通過するscFv抗体

選択した抗原に特異的に結合し、そして(i)可溶性でそして安定な抗体フレームワークのプールから、抗原に対して特定の結合特異性を持つ非ヒト抗体のフレームワークに最適にマッチする、可溶性でそして安定なフレームワークを選択し、(ii)前記の可溶性でそして安定なフレームワークに、前記抗原に特異的に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかで、scFv抗体を生成し、(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして生成した抗体を、抗原結合に関して試験し、そして(iv)可溶性で、安定で、そして抗原に特異的に結合する、scFVを選択する工程を含む方法によって得られうる、scFv抗体。前記scFv抗体を含む医薬組成物、前記抗体が特異的に結合する抗原の過剰発現に関連する疾患に関する治療法および診断法もまた、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、選択した抗原の過剰発現に依存する疾患の診断および治療における、組織浸透および局所適用のための改善された特徴を持つ、scFv抗体に関する。特に、本発明は、前記の選択した抗原に特異的に結合し、そして該抗原を不活性化する抗体に関する。
【0002】
関連情報
本明細書全体で引用するいかなる特許、特許出願、および参考文献の内容も、その全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多くの疾患の局部治療は、上皮組織に浸透することが可能でなければならない薬剤の局所適用によって起こりうる。隣接する上皮細胞は、密着結合によって封印され、大部分の溶解した分子が、上皮シートの一方から他方に通過するのを防止する(Albertsら, Molecular Biology of the Cell, 第2版)。密着結合は、単純な上皮および内皮において、傍細胞関門の形成および維持に、そして細胞極性に決定的である。これらはまた、血液脳関門にも重要な役割を果たし、該関門は、脳から出て行くかまたは脳に進入する物質を制御する。巨大分子量薬剤は、作用部位に到達するために、これらの組織関門を通過する必要がある。一般的に、抗体は、上皮細胞層の密着結合を横断するには大きすぎる。
【0004】
体の正常な活性の一部として、密着結合は、細胞の内部および外部両方の多様なシグナルに応答して、選択的に開き、そして閉じる。これによって、巨大分子または全細胞さえもが密着結合関門を通過することが可能になる。
【0005】
療法化合物の粘膜投与は、注射および他の投与様式に勝る特定の利点を提供可能であり、こうした利点は例えば、送達の簡便性および迅速さの観点からであり、ならびに注射による送達に伴うコンプライアンスの問題および副作用を減少させるかまたは除去することによる。しかし、生物学的活性剤の粘膜送達は、粘膜関門機構および他の要因によって制限される。これらの理由のため、粘膜薬剤投与は、典型的には、注射による投与より多量の薬剤を必要とする。巨大分子薬剤、ペプチドおよびタンパク質を含む、他の療法化合物は、しばしば、粘膜送達に抵抗性である。
【0006】
送達増進性剤の補助を伴わずに、薬剤が粘膜表面を透過する能力は、分子サイズ、脂溶性、およびイオン化を含む、いくつかの要因に関連するようである。約300〜1,000ダルトン未満の小分子は、しばしば、粘膜関門に浸透可能であるが、分子サイズが増加するにつれて、透過性が迅速に減少する。脂溶性化合物は、一般的に、非脂溶性分子より、粘膜表面を透過可能である。ペプチドおよびタンパク質は、ほとんど脂溶性でなく、そしてしたがって、粘膜表面を渡る吸収特性が劣る。
【0007】
US2006062758は、生物学的活性剤、および哺乳動物被験体における該生物学的活性剤の粘膜送達を増進するのに有効な透過化ペプチドを含む、組成物および方法を提供する。透過化ペプチドは、典型的には、被験体の粘膜上皮表面で上皮結合構造および/または生理を調節することによって、粘膜上皮傍細胞輸送を可逆的に増進する。
【0008】
上皮密着結合の機能を調節可能なペプチドが、先に記載されてきている(Johnson, P.H.およびQuay, S.C.、2000)。CA2379661は、Caludin−6由来ペプチドを含む傍細胞薬剤送達系を提供する。Claudinは、密着結合部分に位置し、そして関門機能を提供する、膜貫通タンパク質のスーパーファミリーに相当する。
【0009】
抗体は、生化学研究および分子生物学研究の強力なツールであり、そして高い親和性で抗原に特異的に結合可能であるために、医学的診断法および療法に広く適用される。典型的には、抗体は、ジスルフィド結合を介して互いに共有結合している、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる。3つの相補性領域(CDR)を含む高可変ドメインは、各鎖のN末端に位置する。重鎖および軽鎖の可変領域は、協調して、抗体の抗原特異性を決定する。一本鎖抗体(scFv)は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインをコードするDNA配列を、柔軟なアミノ酸リンカーをコードするスペーサー配列と連結することによって、操作されている(Birdら、1988)。
【0010】
この形式は、scFvが単一遺伝子によってコードされ、突然変異を容易に導入可能であり、そして生じたscFvを酵母および原核系において発現可能であり、これによって単純な分子生物学により、実質的にいかなるエピトープに対する特異的高親和性結合剤も迅速に選択することが可能になる点で、慣用的な全長抗体に勝る利点を有する。エフェクター機能を欠くため、scFv抗体は、抗体依存性または補体依存性の細胞仲介性細胞傷害性(それぞれ、ADCCまたはCDCC)を介して毒性効果を発揮せず、そして全長抗体とは異なり、scFv抗体は、優れた組織浸透能を示す。
【0011】
多数の異なる抗原に対して、多くの一本鎖抗体(scFv)が生成されてきており、これは特に、ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイなどの技術を用いて、高結合能に関して、これらを容易に選択可能であるためである。さらに、scFv抗体は、療法全長抗体の産生と比較して、より低いコストを伴う微生物系において、産生可能である。
【0012】
慣用的な細胞外およびin vitro適用に加えて、scFvはまた、細胞内適用にも成功裡に用いられてきている(Woernら、2000; Auf der Maurら、2002; Stocks MR、2004);したがって、細胞内抗原に対して向けられるscFvが開発されてきた。一般的に、機能するscFvの細胞内発現は、不安定であり、不溶性であり、そして凝集体を形成する傾向があることによって制限される。このため、いわゆる「品質管理(Quality Control)」スクリーニングを用いて、細胞内環境(例えば核、細胞質)に典型的な還元条件下で、特に可溶性でありそして安定なscFv抗体のためのin vivoスクリーニング系が成功裡に開発され(WO0148017; Auf der Maurら(2001); Auf der Maurら、2004)、そしてこのin vitroスクリーニング系によって、こうした目的のための特に安定でそして可溶性なscFvフレームワーク配列が同定されてきた(WO03097697)。さらに、これらのフレームワークは、細胞外環境において、天然の酸化条件下でもまた、例外的な発現レベル、ならびに増進した安定性および可溶性特性を示す。したがって、これらの好ましい生物物理的および生化学的特性の結果、好ましい高産生収量が得られ、そしてこれらの抗体断片がひとたび特定の抗原に対して向けられたならば、特定の療法領域において、局部にそして/または全身性に、タンパク質療法剤として、適用されることが可能になる。
【0013】
多くの療法適用、特に局部適用において、抗体を使用するためには、重要な要因は、抗体が、組織、そして特に上皮組織関門に浸透する能力である。
局部適用は、特定の場所に現れ、そして全身治療を必要としない障害、例えば眼の疾患の治療に特に望ましい。
【0014】
前部ブドウ膜炎
ブドウ膜炎は、100,000人あたり、30〜40人の有病率を持つ、ブドウ膜の急性または慢性炎症である(LightmanおよびKok 2002)。ブドウ膜炎は、ブドウ膜前部、中間部または後部の位置によって細分される。治療せずに放置すれば、前部ブドウ膜炎は後部ブドウ膜炎に発展し、その後、白内障、網膜炎およびさらに盲目などの合併症を伴う(KokおよびLightman 2004)。<65歳では、ブドウ膜炎の結果として法律上盲目となった個人が、糖尿病性網膜症と同じだけ多くいる(KokおよびLightman 2004)。前部ブドウ膜炎は、眼内炎症性疾患の最も一般的な型であり、症例の50%で、組織適合遺伝子座AアレルB27(HLA−B27)と関連する(Powerら 1998)。これらの患者のうち、約半分のみが、強直性脊椎炎または慢性炎症性腸疾患などのさらなる全身性疾患を患う(El−ShabrawiおよびHermann 2002)。ブドウ膜炎の治療は、主に、炎症プロセスを制御することを目指す(KokおよびLightman 2004)。現在、コルチコステロイドは、ブドウ膜炎の主力療法である(KokおよびLightman 2004)。重要なことに、局部および全身性コルチコステロイド治療は、緑内障および白内障のリスクを有意に増加させ、したがって、その反復使用は制限される(El−ShabrawiおよびHermann 2002)。メトトレキセート、シクロスポリンまたはアザチオプリンを含む他の治療は、効果を生じるために最低6週間の治療を必要とし、患者を、生活の質が非常に制約された状態で長期間放置する(El−ShabrawiおよびHermann 2002、Dickら 1997)。
【0015】
上記から、明らかに明示された医学的必要性が明らかである。局所コルチコステロイドが最も一般的な療法オプションであるが、有意な副作用を有し、実際に、盲目となる長期リスクを悪化させる。
【0016】
最近、ブドウ膜炎患者の房水中に15pg/mlのTNFα濃度が見出され、一方、健康な個体における対応するレベルは、0.56pg/mlであった(Perez−Guijoら 2004)。全身性に適用されたTNFα阻害剤を用いたいくつかの小規模臨床研究は、「即時改善」(El−ShabrawiおよびHermann 2002)または「数日以内の顕著な臨床的改善」(Murphyら 2004)または「2週間以内」(Joseph 2003)または「最初のインフリキシマブ用量後の有意な改善」(Benitez Del Castilloら 2004)を報告する。
【0017】
したがって、TNFαをターゲットとする概念は、臨床的によく検証されている。しかし、TNFα阻害剤の全身適用に関連する安全性の懸念が残り、そしてこのため、さらなる全身性疾患徴候を欠く、ブドウ膜炎患者のかなりの割合での使用は正当化されないであろう。
【0018】
したがって、局所的TNFα阻害剤は、特に前部ブドウ膜炎患者において、よく定義された医学的必要性を満たすであろう。分子量が高いため、市販のTNFα阻害剤は、局所適用不能である(Thielら 2002を参照されたい)。
【0019】
ベーチェット病
ベーチェット病は、特発性、多臓器性、慢性および再発性疾患であり、古典的には一時的な眼性攻撃的炎症性発作、尿生殖器(orogenital)潰瘍および皮膚病変によって特徴付けられた。まれに、ベーチェット病の重症例では、さらに、関節、内耳前庭(audio−vestibular)、胸部、胃腸、心臓血管、腎またはCNS関与もまた観察されうる。眼は、ベーチェット病において、最も一般的に関与がある臓器であり、そして患者における慢性病的状態の主因である。眼性疾患は、片側性(20%)または両側性(80%)虹彩毛様体炎、前房蓄膿、あるいは慢性および再発経過をたどる汎ブドウ膜炎からなる。一般的に、初期の悪化は、より前部および片側性である傾向があり、一方、続く発作は、眼の硝子体腔および後部部分を伴い、両側性になる傾向がある(Evereklioglu 2005)。重度ブドウ膜炎は、日本人およびトルコ人患者などの流行地の患者の間でより一般的に観察され、この集団の70〜90%に影響を及ぼす(Oezen 1999; Tursenら、2003; Tugal−Tutkunら、2004; Yurdakulら、2004; Evereklioglu 2005)。視覚喪失リスクは、進行性に増加し、10年の時点では症例の1/4に達する。さらに、日本などの、該疾患の有病率および重症度が高い国では、法律上の盲目が有意であり、そして症例の50%以上で、最終的に結果として生じる(Boydら、2001; Evereklioglu 2005)。
【0020】
ベーチェット病は、独特の地理的変化を示し、そして特に、日本、韓国、サウジアラビア、イランおよびトルコで、ならびに中国およびイスラエルを含む、古代の「シルクロード」沿いの国々で、風土性により高い(BonfioliおよびOrefice 2005; Evereklioglu 2005)。例えば、ベーチェット病は、米国では、ブドウ膜炎症例のわずか0.2%であるのに比較して、日本およびトルコでは20%を占める。この疾患が風土性である国々では、該疾患はより重症であり、眼性徴候および合併症の頻度がより高く、そして男性、特に若い成人男性でより一般的である(Evereklioglu 2005)。この特有の疫学は、遺伝学(HLA−B51アレルとの関連など(Sakaneら、1999; Verityら、1999; Evereklioglu 2005))、感染性病原体(Direskeneli 2001; Evereklioglu 2005)および環境的要因の組み合わせによって仲介されるようである。ベーチェット病の概算される有病率は、地中海の国々、中東および極東では、1:10,000〜1:1000の間である。日本およびシルクロード沿いのアジアの国々では、有病率は100,000あたり13〜30であり、そして日本の北部で最も高く;全体で最高の有病率は、100,000あたり最大400であり、トルコの特定の地方で観察される。米国には、およそ15,000人のベーチェット病患者がいる(Zierhutら、2003; Evereklioglu 2005)。
【0021】
眼性炎症性発作の結果が、ベーチェット病患者の慢性病的状態の主因である(Evereklioglu 2005)。ベーチェット病の治療は、対症性であり、そして経験的である。ブドウ膜炎の他の型におけるように、局所、眼周囲および全身性コルチコステロイドが、眼性ベーチェット病の主力療法に相当する。しかし、患者における、コルチコステロイドに基づく治療様式の使用は、重大な副作用プロフィールのために限定される。さらに、コルチコステロイドは、眼性ベーチェット病の完全な寛解をめったに誘導せず、そして患者のかなりの割合が、長い間に、ステロイド耐性疾患を発展させる(Evereklioglu 2005)。疾患経過中、治療はしばしば、アザチオプリン、メトトレキセートおよびシクロスポリンAなどの免疫抑制剤を含む。しかし、これらの剤はまた、臨床的安全性の問題と関連するため、この適応症における、効率的でそして安全な新規治療様式に関して、よく表明される医学的必要性がある。
【0022】
TNFαにおける多型変動が、ベーチェット病の重症度に関連していることを示唆する最近の疫学的知見(Verityら、1999b)に加えて、眼性ベーチェット病におけるインフリキシマブの使用を記載する、非常に多様な症例報告および小規模臨床試験が存在する(Ohnoら、2004; Wechslerら、2004; Giansantiら、2004; Lanthierら、2005; Tugal−Tutkunら、2005; Lindstedtら、2005)。実際、これらの研究はすべて、慣用的療法に耐性であった患者においてさえ、眼性ベーチェット病の迅速でそして完全な寛解を報告する(Tugal−Tutkunら、2005)。しかし、いくつかの研究において、インフリキシマブで治療したブドウ膜炎患者における副作用の頻度および重症度は予想外に高く、したがって、この疾患の治療のためにTNFαアンタゴニストを全身性に適用する潜在的可能性が制限される(Rosenbaum 2004; Suhlerら、2005)。
【0023】
TNFαが眼性ベーチェット病において非常に魅力的な薬剤ターゲットであることが臨床的に検証され(Ohnoら、2004; Wechslerら、2004; Giansantiら、2004; Lanthierら、2005; Tugal−Tutkunら、2005; Lindstedtら、2005)、そしてブドウ膜炎患者において、全身でTNFαを抑制すると安全性の懸念があるようである(Rosenbaum 204; Suhlerら、2005)ことから、眼性ベーチェット病用の、特に主に眼性症状を有する患者用の、局所適用可能TNFαアンタゴニストを開発する必要性があることが明らかである。
【0024】
優れた組織浸透能を有し、そして腎クリアランスが迅速であるため、scFv抗体は、局部適用に好ましい。分子が組織関門に浸透する能力には、電荷、ヒドロパシー性および分子量に加えて、可溶性、凝集傾向および熱安定性などの特性が影響を及ぼす。例えば、非常に可溶性である抗体断片は、およそ37℃の生理学的温度で凝集体を形成するならば、上皮関門に浸透することは不能である可能性もある。scFvフレームワーク中の単一アミノ酸残基の突然変異は、一方で、周囲温度での可溶性を改善する可能性もあり、そしてこの突然変異は、熱安定性を改変して、そしてしたがって37℃での部分的アンフォールディングおよび凝集につながる可能性もある。こうした凝集体は、分子量がより高いため、もはや組織関門を通過不能である。
【0025】
組織浸透は、特に局所適用において、効率的な薬剤送達のための重要な要因であるため、安定性が高くそして抗原性が低い、ほかの所望の特徴に加えて、組織浸透能が改善された、療法抗体、特にscFv抗体に関する必要性がある。WO0040262は、それぞれ、眼性障害を治療するかまたは診断する、薬剤または診断ツールとしての、抗体断片、例えばscFvを開示する。0.2〜0.25mg/ml scFvの濃度で、眼への浸透実験を行う。scFvが、浸透増進剤の非存在下では非常に低速で、そして浸透増進剤の存在下ではより高速で角膜の上皮関門に浸透可能であることが示された。浸透増進剤は、細胞傷害効果を有するかまたは上皮改変を引き起こしうるため、scFvおよびその断片による眼性疾患の治療のための代替法および/または改善法に関する必要性がある。特に、比較的高濃度で投与可能な、低い度合いの副作用しか伴わない局部投与による、制御された療法用の抗体が必要である。
【0026】
本明細書に引用するすべての刊行物および参考文献は、その全体が本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】US2006062758
【特許文献2】CA2379661
【特許文献3】WO0148017
【特許文献4】WO0309769
【特許文献5】WO0040262
【非特許文献】
【0028】
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【非特許文献48】Ward et al., (1989) Nature 341:544-546Wechsler et al. (2004). Infliximab in refractory uveitis due to Behcet’s disease. Clin Exp Rheumatol 22 (4 Suppl 34), S14-S16.
【非特許文献49】Winnaker, From Genes to Clones (Verlagsgesellschaft, Weinheim, Germany 1987
【非特許文献50】Woern, A., Auf der Maur, A., Escher, D., Honegger, A., Barberis, A., Pluckthun, A. (2000). Correlation between in vitro stability and in vivo performance of anti-GCN4 intrabodies as cytoplasmic inhibitors. J Biol. Chem. 275:2795-803.
【非特許文献51】Yurdakul et al. (2004). Behcet’s syndrome. Curr Opin Rheumatol 16, 38-42.
【非特許文献52】Zierhut et al. (2003). Immunology and functional genomics of Behcet’s disease. Cell Mol Life Sci 60, 1903-1922.
【発明の概要】
【0029】
したがって、選択した抗原に特異的に結合し、そして改善された組織浸透能を有する抗体、好ましくはscFv抗体を提供するのが、本発明の一般的な目的である。
ここで、説明が進むにつれてより容易に明らかになるであろう本発明のこれらの目的、およびさらにさらなる目的を遂行するため、前記抗体は、
(i)可溶性でそして安定なフレームワークのプールから、選択した抗原に結合する特異性を持つ非ヒト抗体のフレームワークに最適にマッチするフレームワークを選択し、
(ii)前記フレームワークに、前記抗原に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかを行い、
(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして
(iv)生成した抗体を、抗原結合に関して試験する
工程を含む方法によって得られうるという特徴によって明示される。
【0030】
場合によって、工程(ii)および(iii)の間に、以下の工程が付加される:
−選択した1以上のCDRおよび/またはフレームワークの部位特異的またはランダム突然変異誘発によって、前記scFv抗体を突然変異させる工程。
【0031】
本発明はまた、可溶性の抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該抗原結合性ポリペプチドが、約8時間未満で、1以上の上皮層、例えば内皮層または中皮層を横断可能である、前記組成物も提供する。例えば、抗原結合性ポリペプチドは、約8、7、6、5、4、3、2、1、またはより短い時間未満で、1以上の上皮層を横断可能である。1つの態様において、抗原結合性ポリペプチドは、約4時間未満で、単数または複数の上皮層を横断可能である。すべての値、ならびにこれらの値および範囲間の範囲は、本発明に含まれると意味されることが理解されるものとする。
【0032】
他の態様において、上皮層は、眼、例えば角膜のもの、例えば角膜上皮および/または内皮である。1つの態様において、上皮層は腸のものである。さらに別の態様において、上皮層は血液脳関門である。
【0033】
さらに他の態様において、抗原結合性ポリペプチドは、約8時間未満で、損なわれていない(intact)哺乳動物角膜を横断可能である。例えば、抗原結合性ポリペプチドは、約8、7、6、5、4、3、2、1、またはより短い時間未満で、損なわれていない哺乳動物角膜を横断可能である。1つの態様において、抗原結合性ポリペプチドは、損なわれていないヒト角膜を横断可能である。1つの態様において、抗原結合性ポリペプチドは、損なわれていないブタまたはウサギ角膜を横断可能である。
【0034】
さらに他の態様において、組成物は、浸透増進剤をさらに含む。特定の態様において、浸透増進剤は、アゾン(Azone(登録商標))、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、シクロデキストリン、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、メタゾールアミド、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、Pz−ペプチド、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩からなる群より選択される。別の態様において、浸透増進剤はカプリン酸ナトリウムである。さらに別の態様において、浸透増進剤には、コロイド系、ポリアクリレートおよび生体接着性ポリマーが含まれる。
【0035】
好ましい態様において、本発明の分子は、浸透増進剤の非存在下で、上皮層、例えば眼の上皮層(角膜)を横断可能である。
いくつかの態様において、ポリペプチドは、少なくとも10E−6Mまたはそれより優れたKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有する。
【0036】
いくつかの側面において、本発明は、約8未満のpHを有する組成物であって、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチド(例えば一本鎖抗体)を含む、前記組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は、約6〜約8の範囲のpHを有する。他の態様において、組成物は、約6、6.5、7.0、7.5、8.0またはその任意の増分値のpHを有する。任意の値、ならびにこれらの値および範囲間の範囲が本発明に含まれると意味されることが理解される。
【0037】
いくつかの側面において、本発明は、約8未満のpHを有する組成物であって、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチド(例えば一本鎖抗体)を含む、前記組成物を提供する。いくつかの側面において、本発明は、可溶性抗原結合性ポリペプチドを含み、そして該ポリペプチドが、約8時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性であり、そして約pH8以下に処方されている、組成物を提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、約4時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性である。他の態様において、組成物は、浸透増進剤をさらに含む。いくつかの態様において、浸透増進剤は、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、浸透増進剤はカプリン酸ナトリウムである。いくつかの態様において、浸透増進剤は、クロルヘキシジンである。
【0038】
いくつかの側面において、本発明は、可溶性抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該抗原結合性ポリペプチドが、約8時間未満で、損なわれていない角膜の1以上の層を横断する、前記組成物を提供する。他の側面において、本発明は、約2.5mg/mlより高い濃度で抗原結合性ポリペプチド(例えば一本鎖抗体)を含み、該ポリペプチドが、約8時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性である、組成物を提供する。該組成物は、約2.5mg/ml以上〜約10.0mg/ml以上の範囲の濃度で、抗原結合性ポリペプチドを含んでもよい。例えば、組成物は、約2.5mg/ml、3.0mg/ml、3.5mg/ml、4.0mg/ml、4.5mg/ml、5.0mg/ml、5.5mg/ml、6.0mg/ml、6.5mg/ml、7.0mg/ml、7.5mg/ml、8.0mg/ml、8.5mg/ml、9.0mg/ml、9.5mg/ml〜約10.0mg/ml以上、またはその任意の増分値の濃度で、抗原結合性ポリペプチドを含んでもよい。すべての値、ならびにこれらの値および範囲間の範囲が本発明に含まれると意味されることが理解されるものとする。いくつかの態様において、抗原結合性ポリペプチドは、約4.0mg/mlより高い濃度である。他の態様において、抗原結合性ポリペプチドは、約10.0mg/mlより高い濃度である。
【0039】
さらに他の態様において、ポリペプチドは、約4時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性である。他の態様において、組成物は、浸透増進剤をさらに含む。いくつかの態様において、浸透増進剤は、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、浸透増進剤はカプリン酸ナトリウムである。他の態様において、浸透増進剤は、クロルヘキシジンである。
【0040】
いくつかの側面において、本発明は、少なくとも10E−6MのKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有し、そして上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性であり、そして生理学的条件下で、単量体型のままである、抗原結合性ポリペプチド(例えば一本鎖抗体)を提供する。
【0041】
他の側面において、本発明は、抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該抗原結合性ポリペプチドが、摂氏約−80度から摂氏約37度の温度で安定である、前記組成物を含む。例えば、組成物は、摂氏−80度、摂氏−70度、摂氏−60度、摂氏−50度、摂氏−40度、摂氏−30度、摂氏−20度、摂氏−10度、摂氏0度、摂氏10度、摂氏20度、または摂氏30度、あるいはその任意の増分値で安定であってもよい。すべての値、ならびにこれらの値および範囲間の範囲が本発明に含まれると意味されることが理解されるものとする。いくつかの態様において、抗原結合性ポリペプチドは、少なくとも約8週間安定なままである。他の態様において、抗原結合性ポリペプチドは、摂氏4度で、少なくとも6週間安定なままである。
【0042】
いくつかの側面において、本発明は、抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該抗原結合性ポリペプチドが、本明細書に開示する図のいずれかの中に実験的に示すような薬力学的または薬物動態学的特徴を有する、前記組成物を提供する。
【0043】
他の側面において、本発明は、少なくとも10E−6Mまたはそれより優れたKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有し、そして約8時間未満で上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である、抗原結合性ポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、約4時間以下で上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である。
【0044】
さらにさらなる他の側面において、本発明は、少なくとも10E−6Mまたはそれより優れたKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有し、そして約8時間未満で上皮密着結合を横断可能な抗原結合性ポリペプチドの通過動態に対応する1/2 Vmax値を有する、抗原結合性ポリペプチドを提供する。
【0045】
他の側面において、本発明には、療法で使用するのに適しているように、標準的Caco−2(ヒト結腸腺癌)上皮細胞単層アッセイで測定した際、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチドが含まれる。多様な側面において、本発明には、療法で使用するのに適しているように、標準的マウス十二指腸透過性アッセイで測定した際、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチドが含まれる。さらに他の側面において、本発明には、療法で使用するのに適しているように、標準的細胞内1ハイブリッドまたは2ハイブリッド可溶性アッセイによって予測した際、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチドが含まれる。さらにさらなる他の側面において、本発明は、療法で使用するのに適しているように、標準的PEG沈殿アッセイまたは自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)アッセイによって予測した際に、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチドを提供する。
【0046】
他の側面において、本発明は、約8時間未満で上皮密着結合を渡る抗原結合性ポリペプチドの通過に対応する1/2 Vmax値を有する抗原結合性ポリペプチドを同定するための方法を提供する。該方法は、以下の工程:誘導性レポーター遺伝子系を有する宿主細胞において、抗原結合性ポリペプチドの候補を細胞内発現させること{ここでレポーター遺伝子系は、前記通過動態を有する抗原結合性ポリペプチドが存在する際に、記録可能なシグナルを生じる};そして、記録可能シグナルに関して前記細胞をスクリーニングすること、{ここで前記シグナルの存在は、候補ポリペプチドが前記通過動態を有する抗原結合性ポリペプチドであると同定する}を含む。本発明はまた、いくつかの側面において、この方法によって同定される、抗原結合性ポリペプチドも提供する。いくつかの側面において、本発明はまた、この方法を実行するためのキットも提供する。
【0047】
他の側面において、本発明は、治療が達成されるように、本明細書の請求項のいずれか1項の抗原結合性ポリペプチドの療法的有効量を局所投与することによって、眼の病気を持つ患者を治療する方法を提供する。いくつかの態様において、眼の病気はブドウ膜炎である。他の態様において、眼の病気は、加齢性黄斑変性症である。
【0048】
いくつかの側面において、本発明は、少なくとも1つの足場領域が隣接した少なくとも1つの抗原結合性モチーフを有するポリペプチド領域を含み、そして約8時間未満で上皮密着結合を横断するのに十分な通過動態を有する、抗原結合性ポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、ポリペプチドは、2つの足場領域が隣接した1つの抗原結合性モチーフ、3つの足場領域が隣接した2つの抗原結合性モチーフ、4つの足場領域が隣接した3つの抗原結合性モチーフ、または4番目および5番目の足場領域の間に介在するリンカー領域を伴う、8つの足場領域が隣接した6つの抗原結合性モチーフを含む。他の態様において、抗原結合性モチーフはCDRであり、そして足場領域は免疫グロブリンフレームワーク領域である。さらにさらなる他の態様において、該ポリペプチドは、3つのCDRおよび4つの介在フレームワーク領域、または6つのCDRおよび8つのフレームワーク領域および介在リンカー領域を含む。
【0049】
いくつかの側面において、本発明は、ターゲット抗原に特異的に結合可能であり、そして約8時間未満で上皮密着結合を横断するのに十分な通過動態を有し、そして式:
Y;または
Z;または
Y−L−Z;または
Z−L−Y
式中、Yは[F1−CDR1−F2−CDR2−F3−CDR3 F4]であり、そしてZは[F5−CDR1−F6−CDR2−F7−CDR3 F8]であり;
Yのフレームワーク領域(F1−F4)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;Zのフレームワーク領域(F5−F6)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;YのCDR(CDR1−3)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;ZのCDR(CDR4−6)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;そしてLは柔軟なポリペプチドリンカーである
によって表される、抗原結合性ポリペプチドも提供する。いくつかの態様において、YおよびZは、本明細書に開示する任意の配列またはそのコンセンサスによって表される。
【0050】
あるいは、別の態様において、飽和突然変異誘発によるなどで、抗原結合性ポリペプチドをコードする配列のすべてまたは一部に沿ってランダムに突然変異を導入してもよい。「コンセンサス配列」は、関連配列ファミリー中で、最も頻繁に存在するアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列である(例えば、Winnaker, From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft, ドイツ・ワインハイム 1987))。タンパク質ファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各位は、ファミリーにおいて、その位で最も頻繁に存在するアミノ酸によって占められる。2つのアミノ酸が等しく頻繁に存在する場合、どちらがコンセンサス配列に含まれてもよい。
【0051】
いくつかの側面において、本発明は、少なくとも約100ng/ml以上の眼内濃度を達成するように処方された、抗原結合性ポリペプチドを提供する。さらに他の側面において、本発明は、本明細書に開示するような細胞または動物モデル系に基づいて、100ng/ml以上の眼内濃度を生じる局所投与用に処方された、一本鎖抗体を提供する。
【0052】
他の側面において、本発明は、眼への局所適用用に製剤化され、そして浸透増進剤の非存在下で、角膜を通じて、そして眼内空間内に通過することが可能な、抗原結合性ポリペプチドを提供する。さらに他の側面において、本発明は、請求項のいずれか1項のポリペプチドを用いて、眼の疾患または障害を治療するか、予防するかまたは診断するための方法を提供する。
【0053】
本発明の前述のおよび他の側面、態様、目的、特徴および利点は、付随する図と組み合わせて、以下の説明からより完全に理解可能である。図面において、類似の参照文字は、一般的に、多様な図面を通じて、類似の特徴および構造要素を指す。図は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ、本発明の原理を例示することが重視される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1−1】図1は、再フォールディング工程後の分取用サイズ排除クロマトグラフィー(ゲルろ過)のESBA105(Fig. 1A)、TB−WT(Fig. 1B)およびルセンティス−scFv(Fig. 1C)の溶出プロフィールを示す。mAU:ミリ吸光単位。
【図1−2】図1は、再フォールディング工程後の分取用サイズ排除クロマトグラフィー(ゲルろ過)のESBA105(Fig. 1A)、TB−WT(Fig. 1B)およびルセンティス−scFv(Fig. 1C)の溶出プロフィールを示す。mAU:ミリ吸光単位。
【図2】図2は、分取用ゲルろ過後のESBA105の収集ピーク分画の分析用ゲルろ過の溶出プロフィールを示す。
【図3】図3は、ポリエチレングリコール(PEG)中のESBA105の溶解度を示す。
【図4】図4は、異なる温度および濃度で2週間保存した際の、ESBA105およびQC15.2 scFv抗体の安定性を示す。SDS PAGEによって抗体を分離し、そしてクーマシーブリリアントブルーで染色した。
【図5】図5は、どちらもpH7.4で、37℃または−80℃のいずれかで8週間保存した後、L929アッセイによって決定されたESBA105の活性を示す。三角形は、37℃で保存されたESBA105を、そして正方形は、−80℃で保存されたESBA105を示す。
【図6】図6は、それぞれ、硝子体から、そして前房から液体を除去するシリンジを図式的に示す。1 硝子体腔液、2 前眼液、3 虹彩、4 角膜、13 シリンジ。
【図7】図7は、4時間後、損なわれていないウサギの眼の前房内へのESBA105の浸透を示す。
【図8】図8は、4時間後、損なわれていないウサギの眼の硝子体腔へのESBA105の浸透を示す。
【図9】図9は、Caco−2細胞層を渡るESBA105の浸透を示す。
【図10】図10は、腸薬剤吸収のための非反転嚢モデルにおける、ラット十二指腸を通じた全長IgG形式抗体(インフリキシマブ)および一本鎖形式抗体断片(ESBA105)の浸透効率の比較を示す。黒い正方形は、nMでのESBA105濃度を示し、白い円は、nMでのインフリキシマブ濃度を示す。
【図11−1】図11aは、実施例7に記載する研究経過に渡って試料採取したウサギの眼の房水中に見られる、ng/mlのESBA105の量をグラフで示す。
【0055】
図11bは、実施例7に記載する研究経過に渡って試料採取したウサギの眼の硝子体液中に見られる、ng/mlのESBA105の量をグラフで示す。
【図11−2】図11cは、実施例7に記載する研究経過に渡って試料採取したウサギの眼の神経網膜中に見られる、ng/mlのESBA105の量をグラフで示す。
【0056】
図11dは、実施例7に記載する研究経過に渡って試料採取したウサギの眼の血清中に見られる、ng/mlのESBA105の量をグラフで示す。
【図12】図12は、ウサギの眼におけるESBA105の局部in vitro pKをグラフで示す。網膜抽出物〜500ng/ml。060721 ELISA(#060718ウサギの眼全体由来)、網膜。
【図13】図13は、ウサギの眼における硝子体注射に際してのESBA105の局部半減期をグラフで示す。
【図14】図14は、ESBA105の投与(5滴/日、10mg/ml ESBA105、Peff=2.9x10−5)後の、局部薬剤集積のモデリングをグラフで示す。
【図15】図15は、眼のpKを図示する。4 角膜、5 涙液層、6 前房、7 レンズ、8 硝子体、9 網膜、10 強膜。
【図16】図16は、ESBA105の吸収および排出経路を図示する。11 親水性薬剤、12 脂溶性薬剤。
【図17】図17は、適切なin vivo急性単関節炎(ラット)モデルにおける用量反応データを示す。n=3、TNFα:10μg i.a。
【図18】図18Aは、局所ウサギ眼適用のin vivo結果をグラフで示す。各データ点は、2匹のウサギ(4つの眼)の平均に相当し、これらの眼には、10時間の最大治療期間に渡って、20分ごとに、PBS pH6.5溶液中の10mg/ml ESBA105の1滴(30mcl)を投与した。
【0057】
瞳孔の最上部に滴を適用し、そして続いてまぶたを圧迫して過剰な液体を取り除いた(7mcl残った)。房水、硝子体、および血清中のESBA105濃度をELISAによって決定した。
【図19】図19は、局所ウサギ眼適用のin vivo結果をグラフで示す。10mg/ml ESBA105溶液1滴を、各動物の両眼の下部眼嚢に、最大6日間に渡って、5回適用した。
【0058】
試料採取:示した時点(1、3または6日後)に2滴目を適用した後、2匹の動物を屠殺し、そして両眼ならびに血清を定量的ELISA分析に供した。示すように、房水中(図19A)、硝子体中(図19B)、神経網膜中(図19C)、脈絡膜中(図19D)、および血清中(図19E)でESBA105レベルを決定した。
【0059】
「Carr」は、キャリアーを表し、これはESBA105を含まない緩衝溶液を意味する。データバーは、示した区画で測定された最大値、最小値および中央値ESBA105濃度を表し、そしてこれらをそれぞれの標準偏差と一緒に示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の詳細な説明
明細書および請求項の明らかな理解を提供するため、以下の定義を好適に提供する。
定義
用語「抗体」は、全抗体および任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」、「抗原結合性ポリペプチド」、または「免疫結合剤」)またはその一本鎖を指す。「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された、少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合性部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、VHと略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、VLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域をさらに、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域に細分してもよい。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一構成要素(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介しうる。
【0061】
用語、「抗原結合性」は、抗原に特異的に結合する能力を指す。全長抗体の断片によって、抗体の抗原結合機能を実行可能であることが示されてきている。用語、抗体の「抗原結合性部分」内に含まれる結合性断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなる単一ドメインまたはdAb断片(Wardら, (1989)Nature 341:544−546);および(vi)単離相補性決定領域(CDR)または(vii)場合によって合成リンカーによって連結されてもよい、2以上の単離CDRの組み合わせが含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、組換え法を用いて、VLおよびVH領域が対形成して一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって、これらを連結してもよい(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBirdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883を参照されたい)。当業者に知られる慣用的技術を用いてこれらの抗体断片を得て、そして損なわれていない抗体と同じ方式で、有用性に関して断片をスクリーニングする。
【0062】
本明細書において、「免疫グロブリン」は、IgG、IgA、IgM、IgD、またはIgEなどの免疫グロブリンの任意の認識されるクラスまたはサブクラスを指してもよい。免疫グロブリンは、ヒト、ネズミ、またはウサギ起源など、任意の種に由来してもよい。さらに、免疫グロブリンは、ポリクローナル、モノクローナル、または断片であってもよい。こうした免疫グロブリン断片には、例えば、Fab’、F(ab’)2、FvまたはFab断片、あるいは他の抗原認識性免疫グロブリン断片が含まれてもよい。こうした免疫グロブリン断片は、例えば、タンパク質分解的酵素消化によって、例えば、ペプシンまたはパパイン消化、還元性アルキル化、あるいは組換え技術によって、調製可能である。こうした免疫グロブリン断片を調製するための材料および方法は、当業者に周知である(Parham, (1983)J. Immunology, 131:2895; Lamoyiら, (1983)J. Immunological Methods, 56:235; Parham, (1982)J. Immunological Methods, 53:133;およびMatthewら, (1982)J. Immunological Methods, 50:239)。
【0063】
さらに、免疫グロブリンは、一本鎖抗体(「SCA」)であってもよい。これらは、可変軽鎖(「VL」)および可変重鎖(「VH」)ドメインが、ペプチド架橋によって、またはジスルフィド結合によって連結される、一本鎖Fv断片(「scFv」)からなってもよい。また、免疫グロブリンは、抗原結合活性を所持する、単一VHドメイン(dab)からなってもよい。例えば、G. WinterおよびC. Milstein, Nature, 349, 295(1991); R. Glockshuberら, Biochemistry 29, 1362(1990);およびE.S. Wardら, Nature 341, 544(1989)を参照されたい。
【0064】
本明細書において、用語「ポリペプチド」は、2以上の天然アミノ酸または非天然アミノ酸のポリマーを指す。本発明のポリペプチドは、免疫グロブリン(Ig)分子由来の少なくとも1つのアミノ酸配列を含む。1つの態様において、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリン分子に由来しないアミノ酸配列または1以上の部分を含む。例示的な修飾を以下により詳細に記載する。例えば、1つの態様において、本発明のポリペプチドは、柔軟なリンカー配列を含んでもよい。別の態様において、ポリペプチドを修飾して、機能部分(例えば、PEG、薬剤、または標識)を付加してもよい。
【0065】
本発明の好ましいポリペプチドは、ヒト免疫グロブリン配列に由来するアミノ酸配列を含む。しかし、ポリペプチドは、別の哺乳動物種由来の1以上のアミノ酸を含んでもよい。例えば、霊長類重鎖部分、ヒンジ部分、または結合部位が、対象ポリペプチド中に含まれてもよい。あるいは、ポリペプチド中に1以上のネズミアミノ酸が存在してもよい。本発明の好ましいポリペプチドは、免疫原性でない。
【0066】
一般の当業者には、天然ポリペプチドの所望の活性を保持しつつ、由来した天然存在または天然ポリペプチドから、アミノ酸が変化するように、本発明のポリペプチドを改変してもよいこともまた、理解されるであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基での保存的置換または変化につながるヌクレオチドまたはアミノ酸置換を作製してもよい。コードされるタンパク質内に、1以上のアミノ酸置換、付加または欠失が導入されるように、免疫グロブリンのヌクレオチド配列内に、1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入することによって、免疫グロブリン由来のポリペプチド(例えば免疫グロブリン重鎖部分または軽鎖部分)の非天然変異体をコードする単離核酸分子を生成してもよい。部位特異的突然変異誘発およびPCR仲介性突然変異誘発などの標準的技術によって、突然変異を導入してもよい。
【0067】
本発明のポリペプチドは、1以上の非必須アミノ酸残基での保存的アミノ酸置換を含んでもよい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該技術分野において定義されてきており、これらには、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖を持つアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、ポリペプチド中の非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換される。別の態様において、一連のアミノ酸を、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる、構造的に類似の一連のアミノ酸で置換してもよい。あるいは、別の態様において、飽和突然変異誘発によるなど、免疫グロブリンコード配列のすべてまたは一部に渡って、突然変異をランダムに導入して、そして生じた突然変異体を本発明のポリペプチド内に取り込んで、そして所望のターゲットに結合する能力に関してスクリーニングしてもよい。
【0068】
用語「特異的結合性」、「選択的結合性」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」は、あらかじめ決定された抗原上のエピトープへの抗体結合を指す。典型的には、抗体は、およそ10−6M未満、例えば、およそ10−7M、10−8M、または10−9M未満あるいはそれよりさらに低い数値の親和性(KD)で結合する。
【0069】
用語「KD」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数を指す。典型的には、本発明の抗体は、例えば、BIACORE装置において、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて決定されるように、およそ10−6M未満、例えばおよそ10−7M、10−8Mまたは10−9M未満あるいはそれよりさらに低い解離平衡定数(KD)で、ターゲット抗原に結合する。
【0070】
用語「通過動態」または「薬物動態学」は、本明細書において、薬剤吸収、体組織または体液中の分布、ならびに代謝および/または排出の動態に関するすべての要因を指す。ポリペプチドの吸収、分布、生体内変換および排出にはすべて、細胞膜を横断するポリペプチドの通過が伴うため、この通過動態には、膜を横断するポリペプチドの輸送を制御する、物理化学的要因が伴う。
【0071】
臨床医が非常に関心を持つのは、ポリペプチドの生物学的利用能である。この用語は、本明細書において、ポリペプチドがその作用部位に到達するか、またはポリペプチドがその作用部位にアクセスできる生体液に到達する度合いを示す。生物学的利用能に影響を及ぼす要因には、吸収および代謝または被験体からのポリペプチドの排出の速度が含まれる。多くの要因が吸収に影響を及ぼし、これらには、ポリペプチドの可溶性および取り込み機構、ならびに投与部位およびポリペプチドの調合(濃度)および組成などの、膜を横断する輸送に影響を及ぼす多くの物理化学的要因が含まれる。ポリペプチド投与の多様な経路は、顕著に異なる吸収特性を有する。これらの経路には、経口摂取、肺吸収、筋内、皮下、静脈内、動脈内、クモ膜下腔内または腹腔内注射を含む非経口注射、および粘膜、皮膚または眼への局所適用が含まれる。好ましい態様において、眼の疾患を治療するための本発明のポリペプチドは、眼の表面に、例えば点眼剤の形で、局所投与される。例えば、本明細書に開示する細胞または動物に基づく任意の分子を用いて、本発明のポリペプチドの通過動態を決定してもよく、そしてこれは典型的には、血液脳関門、腸、または眼の密着結合を横断する臨床的に適切な通過に適するように選択される。
【0072】
用語「被験体」は、当該技術分野に知られ、そして本明細書において、温血動物、より好ましくは、ヒトに加えて、ラット、マウス、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウマ、ウシなどの非ヒト動物を含む、哺乳動物を指す。好ましい態様において、被験体はヒトである。被験体は、本発明の可溶性抗原結合性ポリペプチドでの治療に感受性であるものである。
【0073】
「浸透増進剤」または「浸透増進剤」は、本明細書において、上皮結合を横断する通過を促進する分子または化合物を指す。本発明で使用するための浸透増進剤には、限定されるわけではないが、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩が含まれる。例えば、いくつかの態様において、浸透増進剤はカプリン酸ナトリウムである。他の態様において、浸透増進剤は、クロルヘキシジンである。
【0074】
本発明の第一の側面において、選択した抗原に特異的に結合し、そして改善された組織浸透能を有するscFv抗体を提供する。前記抗体は、
(i)可溶性でそして安定なフレームワークのプールから、選択した抗原に結合する特異性を持つ非ヒト抗体のフレームワークに最適にマッチするフレームワークを選択し、
(ii)前記フレームワークに、前記抗原に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかを行い、
(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして
(iv)生成した抗体を、抗原結合に関して試験する
工程を含む方法によって得られうる点で特徴付けられる。
【0075】
用語「最適にマッチする」は、一次または三次構造に関して、可能な限り近いことを意味する。
一般的に、本発明の抗体は、VLおよび/またはVHドメインを含むフレームワークを含み、前記フレームワークは、酵母細胞において、高い細胞内安定性および可溶性に関して、抗原非異存性の方法によって、天然ヒト抗体レパートリーの少なくとも一部から選択される。前記方法はまた、抗体フレームワークの「品質管理」スクリーニングとして知られ、そして高い細胞内安定性および可溶性によって特徴付けられる、特に安定でそして可溶性である抗体フレームワークの選択を生じている。例えば、抗原特異性に関する、第二の、酵母に基づくスクリーニング系において、これらのフレームワークを用いてもよい。この場合、特に安定でそして可溶性である抗体のCDRをランダム化して、そして生じた抗体を、ありうる最適の抗原認識に関してスクリーニングしてもよい。あるいは、選択した抗原に強い結合親和性を持つ抗体の既知の抗体CDRを、前記の特に安定でそして可溶性であるフレームワーク上に移植してもよい。場合によって、選択したCDR(単数または複数)および/またはフレームワークを突然変異誘発し、「品質管理系」(WO0148017、Auf der Maurら 2004)において、改善されたクローンを選択することによって、前記抗体をさらに改善してしてもよく、すなわち、1以上の選択したCDRおよび/またはフレームワークの部位特異的またはランダム突然変異誘発によって、前記scFv抗体を突然変異させ、そして同じかまたはよりストリンジェントな条件下で、安定でそして可溶性である抗体を選択することによって、前記抗体をさらに改善してもよい。選択を、酵母品質管理系において、in vivoで行ってもよい。
【0076】
用語「フレームワーク残基」は、抗原結合性ポリペプチド単位のアミノ酸残基、または抗原結合性ポリペプチド・モジュールの対応するアミノ酸残基であって、フォールディング・トポロジーに寄与する、すなわち前記単位(またはモジュール)のフォールディングに寄与するか、または隣接単位(またはモジュール)との相互作用に寄与する、前記アミノ酸残基に関する。こうした寄与は、単位(またはモジュール)中の他の残基との相互作用であってもよいし、あるいは、α−へリックスまたはβ−シート、または直鎖ポリペプチドもしくはループを形成するアミノ酸ストレッチにおいて見られるような、ポリペプチド主鎖コンホメーションに対する影響であってもよい。用語「ターゲット相互作用残基」は、ターゲット物質との相互作用に寄与する、単位のアミノ酸残基、またはモジュールの対応するアミノ酸残基を指す。こうした寄与は、ターゲット物質との直接相互作用であってもよいし、あるいは、例えば前記単位(またはモジュール)の(ポリ)ペプチドのコンホメーションを安定化して、前記ターゲットと直接相互作用する前記残基の相互作用を可能にするかまたは増進することによる、他の直接相互作用残基に対する影響であってもよい。上に引用する物理化学的方法によって得られる構造的データを分析するか、あるいは構造生物学および/またはバイオインフォマティクスの実施者に周知の、既知のおよび関連する構造情報と比較することによって、こうしたフレームワークおよびターゲット相互作用残基を同定してもよい。こうしたフレームワークはまた、より多様なターゲット相互作用残基またはCDRを提示するための支持体を提供するため、足場と称されてもよい。
【0077】
CDRまたはターゲット相互作用残基を、代替足場のような適切なフレームワーク内に移植してもよく、当該技術分野に周知のそのようなフレームワークとしては、限定されるわけではないが、CTLA−4、テンダミスタット、フィブロネクチン(FN3)、ネオカルジノスタチン、CBM4−2、リポカリン、T細胞受容体、プロテインAドメイン(プロテインZ)、Im9、設計アンキリン反復タンパク質(DARPins)、設計TPRタンパク質、ジンクフィンガー、pVIII、鳥類膵臓ポリペプチド、GCN4,WWドメイン、Src相同性ドメイン3(SH3)、Src相同性ドメイン2(SH2)、PDZドメイン、TEM−1 β−ラクタマーゼ、GFP、チオレドキシン、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、PHD−フィンガー、CI−2、BPT1 APPI、HPSTI、エコチン、LACI−D1、LDTI、MTI−II、サソリ毒、昆虫ディフェンシンAペプチド、EETI−II、Min−23、CBD、PBP、チトクロムb562、Ld1受容体ドメインA、γ−クリスタリン、ユビキチン、トランスフェリン(transferring)、およびC型レクチン様ドメインが挙げられ(Binzら(2005 Oct)Nat Biotech 23(10):1257−68を参照されたい)、あるいは免疫グロブリン由来抗原結合性ポリペプチドの適切なフレームワーク内に移植してもよく、当該技術分野に周知のそのようなフレームワークとしては、限定されるわけではないが、VhHドメイン、V−NARドメイン、Vhドメイン、Fab、scFv、Bis−scFv、Camel IG、IfNAR、IgG、Fab2、Fab3、ミニボディ、ディアボディ、トリアボディ、およびテトラボディが挙げられる(Holliger, P.およびHudson, P.(2005), Nat. Biotechnol. 23(9), pp.1126−1136を参照されたい)。
【0078】
好ましくは、本発明の抗体は、以下のさらなる特徴の1以上を有する:
−酵母相互作用アッセイにおいて測定した際、還元条件下で安定であり、該アッセイにおいて、前記scFvに融合した選択可能マーカータンパク質の活性は、細胞内環境における前記scFvの高い安定性および可溶性と相関する。前記酵母相互作用アッセイ、いわゆる「品質管理」は、詳細に記載された(Auf der Maurら(2001); Auf der Maurら、2004;該参考文献はその全体が本明細書に援用される)。
−PBS中、20℃〜40℃、好ましくは37℃で、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2ヶ月間、最も好ましくは少なくとも6ヶ月間安定である。
−生理学的条件下で、単量体のままである。
−>約1mg/ml、好ましくは>約4mg/ml、より好ましくは>約10mg/ml、さらにより好ましくは>約25mg/ml、そして最も好ましくは>約50mg/mlの濃度で、PBS中、周囲温度で可溶性である。
−塩酸グアニジン滴定において、少なくとも1.5M、好ましくは少なくとも1.75M、より好ましくは少なくとも1.9M、最も好ましくは少なくとも2Mの転移中点を示し、すなわち変性に耐性である。
【0079】
用語、抗体は、本発明の範囲内で使用した際、選択した抗原に結合するscFv抗体または抗体断片を指す。したがって、本発明のscFv抗体は、短いリンカーペプチド、例えば、配列GGGGSの1〜4反復を含むリンカー、好ましくは(GGGGS)ペプチド(配列番号16)、より好ましくは配列GGGGSGGGGSGGGGSSGGGS(配列番号17)、またはAlfthanら(1995)Protein Eng. 8:725−731に開示されるようなリンカーによって連結されたVLおよびVHドメインを含む全長scFv、あるいは選択した抗原に対する十分な結合能を有する、単純なVLまたはVHドメインのいずれかであってもよい。VLおよびVHの連結は、どちらの方向であってもよく、VL−リンカ−VHまたはVH−リンカー−VLであってもよい。
【0080】
1つの側面において、本発明は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2ヶ月間安定である抗体を提供する。好ましくは、前記抗体を、生理学的温度、すなわち37℃での安定性に関して試験する。別の好ましい態様において、前記抗体は、PBS中、4℃で維持した際、または凍結乾燥後、室温で、少なくとも6ヶ月間安定である。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)後、クーマシー染色または銀染色などの標準的染色法によって、前記抗体の標準量を分析し、そして全長バンドの染色強度と標準タンパク質のものとを比較することによって、安定性を試験してもよい。さらに、分解産物が存在しないことをチェックする。分解タンパク質はスメアとして泳動されるか、または分解産物が短いために見えないことさえあり、この場合は、全長タンパク質バンドの強度の喪失のみが分解を示す。一般的に、色および/または清澄度の視覚的検査に際して、あるいはUV光散乱によってまたはサイズ排除クロマトグラフィーによって、凝集、沈降および/または変性の徴候がまったく観察されなければ、抗体が物理的に安定であると仮定可能である。
【0081】
特定の時間、保存した後の活性に関する安定性は、本発明の抗体のさらなる重要な特徴である。例えばELISAを用いたin vitroターゲット結合アッセイ、または抗体の阻害強度を測定するin vivo細胞内活性アッセイによって、保存前および保存後の抗体の強度を比較して、こうした安定性を決定してもよい。
【0082】
別の側面において、本発明は、例えばゲルろ過によって判断可能であるように、生理学的条件下で単量体であり、そして単量体のままである、抗体を提供する。単量体状態は、上皮関門に浸透することが可能な抗体の重要な特徴である。
【0083】
さらなる側面において、本発明は、約1mg/mlより高い、好ましくは約4mg/mlより高い、最も好ましくは約10mg/mlの濃度で、PBS中、周囲温度で可溶性である抗体を提供する。PEG3000を用いたPEG沈殿によって、または自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)によって、精製抗体の可溶性を決定してもよい。
【0084】
さらに別の側面において、本発明は、塩酸グアニジン滴定において、少なくとも約1.5M、好ましくは少なくとも約1.75M、より好ましくは少なくとも約1.9M、最も好ましくは少なくとも約2Mの転移中点を示す抗体を提供する。これは、アンフォールディングに対する抵抗性という意味での安定性に関する測定値であり、これによって、塩酸グアニジンの添加によって誘導されるアンフォールディング/変性を、蛍光または円二色分光によって追跡する。
【0085】
本発明のさらなる側面において、前述の生物物理的特性の1以上を有する抗体は、配列番号1(カッパ1型)、配列番号2(カッパ1型)、配列番号3(カッパ3型)または配列番号4(ラムダ1型)、配列番号5(カッパ3型)、配列番号6(ラムダ3型)、または配列番号7(ラムダ3型)を含む群より選択されるVLフレームワークに、少なくとも85%の類似性、好ましくは少なくとも約95%の類似性、最も好ましくは少なくとも約98%の同一性を持つ軽鎖可変ドメイン(VL)のフレームワーク、および/または配列番号8(H3型)、配列番号9(H3型)、配列番号10(H1b型)、または配列番号11(H3型)を含む群より選択されるVHフレームワークに、少なくとも85%の類似性、好ましくは少なくとも約95%の類似性、最も好ましくは少なくとも約98%の同一性を持つ重鎖可変ドメイン(VH)のフレームワークによって構造的に性質決定される。好ましい態様において、配列番号2のVL相同体および配列番号8のVH相同体の間の組み合わせ、配列番号4のVL相同体および配列番号10のVH相同体の間の組み合わせ、または上述のVL配列の相同体のいずれか1つおよび配列番号9のVH相同体の間の組み合わせを用いる。より好ましいのは、配列番号7に>90%の類似性を持つ抗体であり、そしてさらにより好ましいのは、>95%の類似性を持つ抗体である。最も好ましいのは、配列番号7および/または配列番号8の配列の抗体である。本発明は、ターゲット結合特異性が維持される限り、開示するVH配列の任意の1つと組み合わされた、開示するVL配列の任意の1つを含むことも理解される。
【0086】
2つの配列間の類似性パーセントは、タンパク質配列が関連する度合いの測定値である。2つの配列間の類似性の度合いは、配列同一性パーセントおよび/または保存に基づいていてもよい。保存は、元来の残基の物理化学特性を保持する、アミノ酸配列の特定の位での変化を指す。典型的には、配列並列によって、配列間の類似性を決定する。
【0087】
インターネットにおいてアクセス可能なBLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tools; Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W. & Lipman, D.J.(1990)“Basic local alignment search tool.” J. Mol. Biol. 215:403−410を参照されたい)を用いることによって、本明細書で称される類似性が決定されるものとする。XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3でBLASTタンパク質検索を実行して、本発明のタンパク質分子に類似のアミノ酸配列を得てもよい。比較目的のためのギャップを挿入した並列を得るため、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res. 25(17):3389−3402に記載されるようなギャップ化BLASTを利用してもよい。BLASTおよびギャップ化BLASTプログラムを利用する際、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを用いてもよい。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列を最適に並列させるために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位の数の関数である。当業者に周知の数学的アルゴリズムを用いて、配列比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定を達成してもよい。
【0088】
NWSgapdna、CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または80のギャップ加重、および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用い、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントを決定してもよい。また、PAM120加重残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられている、E. MeyersおよびW. Miller(CABIOS, 4:11−17(1989))のアルゴリズムを用いて、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定してもよい。さらに、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ加重および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用い、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み入れられている、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol.(48):444−453(1970))アルゴリズムを用いて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定してもよい。
【0089】
別の側面において、本発明の抗体を化学的に修飾する。化学的修飾は、安定性、可溶性、抗原結合特性または親和性、in vivo半減期、細胞傷害性、および組織浸透能などの、抗体の特性を変化させうる。化学的修飾は、当業者に周知である。本発明の抗体の好ましい化学的修飾はPEG化である。
【0090】
別の好ましい側面において、本発明の抗体の親和性は、約100nM未満、好ましくは約10nM未満、そして最も好ましくは約1nM未満の解離定数Kdによって特徴付けられる。表面プラズモン共鳴(BiaCore)またはELISAによって抗体の同族抗原への親和性などの結合パラメーターを決定する。これらの方法は当該技術分野に周知である。
【0091】
好ましくは、本発明の抗体が結合する抗原は、TNFα(腫瘍壊死因子アルファ)である。TNFαはカケクチンとしても知られ、内毒素または他の刺激に反応して、単球およびマクロファージを含む、多くの細胞種によって産生される、天然存在哺乳動物サイトカインである。TNFαは、炎症、免疫学的、および病理生理学的反応の主な仲介因子である(Grell, M.ら(1995)Cell, 83:793−802)。多数の障害が、TNFαレベルの上昇と関連しており、これらの多くは医学的に有意に重要である。TNFαは、関節リウマチ(RA)、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸障害、敗血症、鬱血性心不全、気管支ぜんそく、ならびに多発性硬化症などの慢性疾患を含む、多くのヒト疾患において上方制御されることが示されてきている。TNFαはまた、炎症促進性サイトカインとも称される。しかし、TNFαは、眼の疾患、例えば黄斑変性症、ブドウ膜炎、緑内障、白内障、網膜炎、ドライアイ症候群、強膜炎、結膜炎、および角膜炎などの、局部徴候を持つ障害にもまた関与する。本発明の抗体は、局部および局所に、例えば点眼剤によって眼の疾患用に適用可能であるため、こうした疾患の治療に特に適している。
【0092】
本発明はまた、本発明の抗体をコードするDNA配列、ならびに前記DNA配列を含有するクローニングまたは発現ベクターも提供する。さらに、前記DNA配列で形質転換された適切な宿主細胞を提供する。これは、原核または真核細胞、特に大腸菌(E. coli)、酵母、植物、昆虫または哺乳動物細胞であってもよい。
【0093】
組換え遺伝学の分野でルーチンの技術を用いて、本発明の抗体を生成してもよい。ポリペプチドの配列がわかっている場合、遺伝子合成によって、該ポリペプチドをコードするDNAを生成してもよい。
【0094】
さらに、本発明の抗体を産生するための方法であって、前記抗体をコードするDNAで形質転換された宿主細胞を、前記抗体の合成を可能にする条件下で培養し、そして前記培養から前記分子を回収する工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、前記方法は、大腸菌封入体から、または用いたscFv構築物が、ポリペプチドを周辺質に向けるシグナル配列を含む場合は、大腸菌周辺質から精製されたscFv抗体を提供する。
【0095】
本発明の別の側面は、診断、好ましくはin vitro診断のためのツールとしての、および/または薬剤としての、本発明が提供する抗体の使用である。この使用は、任意のTNFα関連の病態に関係して特に好ましい。抗TNFα scFvまたはその断片で治療すべき疾患は、好ましくは、TNFαの過剰発現に関連する疾患である。TNFαの過剰発現が、異常な細胞機能につながるならば、過剰なTNFαに結合し、そしてしたがってこれを中和可能な抗体は、前記抗体がTNFα過剰の場所に到達可能であるならば、こうした疾患を治療するために理想的な薬剤である。この場所が細胞内部であるならば、抗体は、細胞に進入可能でなければならない。この場所が細胞外であるならば、抗体は、組織中の細胞外マトリックスに到達可能でなければならず、すなわち、抗体は、通常、上皮細胞層である、組織の少なくとも一番外側の細胞層を横断しなければならない。本発明の別の態様において、抗体は、内皮に浸透可能である。
【0096】
IV.医薬組成物および薬剤投与
A.組成および投与
大部分の場合、本発明の抗体は、医薬組成物中で用いられ、前記医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる化合物を含む。好ましくは、これは、薬学的に許容されうるキャリアー、希釈剤または賦形剤と組み合わせられるであろう。賦形剤は、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、密着結合開放ペプチドおよびペプチド誘導体、密着結合開放タンパク質およびタンパク質誘導体を含む群より選択されてもよい。好ましくは、賦形剤は、塩化ベンザルコニウム、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、およびクロルヘキシジンを含む群より選択される。カプリン酸塩もまた使用可能である。こうした物質は、浸透増進剤として作用しうる。
【0097】
大部分の場合、本発明の抗体を含む医薬組成物は、全身性ではなく、局部適用されるであろう。本発明の抗体は、そのscFv形式が小型であり、そしてフレームワークが上皮組織関門に浸透可能な物理化学特性を有するため、局部適用に特に適している。局部適用は、眼、鼻腔、口腔、腸管、皮膚、口腔および尿生殖器の粘膜、関節および関節腔、脳、脊髄などの比較的限定された領域中の適用であり、この場合、十分に濃縮された抗体の比較的少量の適用が有効である。他方、局所適用は、体部分の表面への適用である。
【0098】
本発明の医薬組成物の投与の好ましい型は、局所適用による;しかし、例えば、抗体を肺上皮に浸透させる予定であるならば、他の型は、吸入による。吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を含む製剤を用いて、肺送達を達成してもよい。
【0099】
局所適用のため、好ましい部位は眼である。本発明の抗体は、主に3つの組織層、すなわち、上皮、角膜実質および内皮からなる、角膜に浸透するのに特に適している。したがって、眼の多くの疾患の治療に、該抗体を用いてもよい。
【0100】
B.薬剤送達系
本発明における使用のための局所眼性薬剤送達系の限定されない例には、浸透増進剤、角膜コラーゲンシールド、眼性イオントフォレーシス、マイクロ粒子またはナノ粒子、眼性挿入物、粘膜接着性ポリマー、in situゲル化系、デンドリマー、脂質エマルジョン、および眼性挿入物が含まれる(Sultanaら(2007)Future Drugs, 2(2), 309−323(2007)iを参照されたい)。
【0101】
i.浸透増進剤
本発明の医薬組成物には、浸透増進剤が含まれてもよい。浸透増進剤の例は当該技術分野に周知であり、そしてこれには、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、シクロデキストリン、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、メタゾールアミド、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、Pz−ペプチド、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩が含まれてもよい(Sultanaら(2007)Future Drugs, 2(2), 309−323(2007)を参照されたい)。別の態様において、浸透増進剤は、カプリン酸ナトリウムである。さらに別の態様において、浸透増進剤には、コロイド系、ポリアクリレートおよび生体接着性ポリマーが含まれる。U.S.S.N. 60/___,___(2007年7月10日出願の「Improved penetration Enhancers for the Delivery of Therapeutic Proteins」と題される代理人整理番号第ES5−016−1号)もまた参照されたい。
【0102】
ii.角膜コラーゲンシールド
本発明の抗体はまた、角膜コラーゲンシールドを用いても投与可能である。いくつかの態様において、12、24および72時間の溶解時間のコラーゲンシールドを用いてもよい。他の態様において、コラーゲンシールドを、ガチフロキサシンおよび/またはモキシフロキサシンの溶液中にあらかじめ浸しておく。
【0103】
iii.眼性イオントフォレーシス
本発明の抗体はまた、眼性イオントフォレーシスによっても送達可能である。1つの態様において、経角膜イオントフォレーシスによって、眼の前部に抗体を送達してもよい。別の態様において、高くそして持続される濃度の本発明の抗体を、経強膜イオントフォレーシスによって、硝子体および網膜に送達してもよい。所望の期間、イオントフォレーシスを適用する。いくつかの態様において、約1〜約4分間、イオントフォレーシスを適用する。他の態様において、1分間未満、イオントフォレーシスを適用する。別の態様において、4分間より長く、イオントフォレーシスを適用する。
【0104】
iv.マイクロ粒子およびナノ粒子
本発明の抗体はまた、マイクロ粒子またはナノ粒子送達系を用いても送達可能である。いくつかの態様において、マイクロ粒子はマイクロカプセルである。他の態様において、マイクロ粒子はマイクロスフェアである。さらなる態様において、マイクロ粒子は、浸食性、生体分解性、非浸食性、またはイオン交換樹脂である、ポリマーを含む。別の態様において、マイクロ粒子送達系は、ベタキソロール0.25%を含有するBetoptic S(登録商標)である。
【0105】
1μmより小さい粒子であるナノ粒子もまた使用可能である。1つの態様において、ナノ粒子はナノカプセルである。別の態様において、ナノ粒子はナノスフェアである。1つの態様において、ナノ粒子は、ポリアクリルシアノアクリレート(PACA)を含む。別の態様において、ナノ粒子は、ポリ−a−カプロラクトンを含む。特定の態様において、ナノ粒子は、リン酸ヘキサデシルとともに、2.5%トブラマイシンを含有する固形脂質ナノ粒子を含む。別の態様において、ナノ粒子は、Eudragit RS 100またはEudragit RL 100を含み、そして場合によってクロリクロメンをさらに含む。さらなる態様において、ナノ粒子には、フルルビプロフェン(FB)装填アクリレートポリマー・ナノ懸濁物が含まれる。
【0106】
v.眼性挿入物
本発明の抗体はまた、眼性挿入物を用いても投与可能である。いくつかの態様において、眼性挿入物は、不溶性、可溶性または生体浸食性挿入物である。不溶性挿入物には、分散系、浸透系および親水性コンタクトレンズが含まれる。可溶性挿入物は、天然、合成、または半合成ポリマーで構成されてもよい。生体浸食性挿入物は、生体浸食性ポリマーで構成されてもよい。
【0107】
vi.粘膜接着性ポリマー
本発明の医薬組成物には、粘膜接着性ポリマーが含まれてもよい。粘膜接着性ポリマーの例は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、キトサン(CS)、Ch−HCLおよびN−カルボキシメチルキトサン(CMCh)、N−トリメチルキトサン(TMC)ポリマー、ピロカルピン装填CS/Carbopol(登録商標)、ポリアクリル酸(PAA)、多糖、キシログルカン、タマリンド種子多糖(TSP)、およびチオール化ポリマーまたはチオマーが含まれる。
【0108】
vii. in situゲル化系
本発明の医薬組成物には、in situゲル化系が含まれてもよい。in situゲル化系の例は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、pH仲介性in situゲル化系、温度仲介性in situゲル化系およびイオン仲介性in situゲル化系が含まれる。pH仲介性in situゲル化系には、例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP)およびCarbopol(登録商標)などのポリマーが含まれてもよい。温度仲介性in situゲル化系には、例えば、プルロニクス、テトラオニクスおよびエチルヒドロキシエチルセルロースが含まれてもよい。in situゲル化系にはまた、Gelrite(登録商標)(脱アセチル化ジェランガム(DCG))、アルギネート、例えばアルギネート−ポリ(L−リジン)、マレイン酸チモロール点眼剤、例えばTimoptol XEおよびLizmon TG(登録商標)、およびその組み合わせが含まれてもよい。
【0109】
viii.デンドリマー
本発明の医薬組成物には、デンドリマーが含まれてもよい。デンドリマーの例は当該技術分野に周知であり、そしてこれにはTMポリアミドアミン(PAMAM)が含まれる。
【0110】
C.製剤
別の態様において、製剤は、当業者に知られるような、遅延、延長、または時間放出製剤、マイクロスフェア、マイクロカプセル、リポソームなどのキャリアー製剤であってもよい。上述の送達系はいずれも、局所、眼内、結膜下に、または移植によって投与されて、長期にわたる剤の持続放出を生じることも可能である。製剤は、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ無水物、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリアミノ酸、ポリエチレンオキシド、アクリル末端ポリエチレンオキシド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)などの生体適合性ポリマー、および各々、その全体が本明細書に明確に援用される、米国特許第6,667,371号;第6,613,355号;第6,596,296号;第6,413,536号;第5,968,543号;第4,079,038号;第4,093,709号;第4,131,648号;第4,138,344号;第4,180,646号;第4,304,767号;第4,946,931号に開示されるものなどの他のポリマーの、マイクロもしくはマクロカプセル、またはマトリックス、あるいはマイクロスフェアまたはリポソームとして製剤化されてもよい脂質などのビヒクルの形であってもよい。微視的または巨視的製剤を、局所的にまたは針を通じて投与してもよいし、あるいは移植してもよい。ビヒクルの多様な配合を通じて、遅延または延長放出特性を提供してもよい(被覆または非被覆マイクロスフェア、被覆または非被覆カプセル、脂質またはポリマー構成要素、単層または多層構造、および上記の組み合わせ等)。マイクロスフェア、マイクロカプセル、リポソームなど、およびその眼性移植物の製剤および装填が当業者に知られ、例えば、Vitreoretinal Surgical Techniques, Peymanら監修(Martin Dunitz, London 2001, 第45章); Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, Wise監修(Marcel Dekker, New York 2000)に開示される、サイトメガロウイルス網膜炎を治療するためのガンシクロビル持続放出移植物の使用があり、該文献の関連セクションは、その全体が本明細書に援用される。例えば、硝子体腔への移植のため毛様体扁平部を通じて、持続放出眼内移植物を挿入してもよい。眼内注射は硝子体内(硝子体内)、または結膜の下(結膜下)、または眼の後ろ(眼球後)、またはテノン嚢の下(テノン嚢下)であってもよく、そしてデポ型であってもよい。レンズ材料内に組成物が取り込まれた(例えば製造時に、またはレンズ溶液中に含有させて)眼の外表面に適用したコンタクトレンズを介して組成物を投与してもよい。眼に移植された眼内レンズ(IOL)を介して組成物を投与してもよい。移植可能レンズには、限定されるわけではないが、Bausch and Lomb(ニューヨーク州ロチェスター)、Alcon(テキサス州フォートワース)、Allergan(カリフォルニア州アービン)、およびAdvanced Medical Optics(カリフォルニア州サンタアナ)によって製造されたものを含む、白内障手術後、患者の罹患水晶体の代わりに用いられる、いかなるIOLも含まれる。Degim, I.TおよびCelebi, N.(2007), Current Pharmaceutical Design, 13, 99−117]もまた参照されたい。レンズを水晶体嚢内に移植すると、組成物が、所望の効果を眼に提供する。移植物(レンズおよび他のタイプ)およびコンタクトレンズ投与に適した濃度は、当業者に認識されるであろうように、多様でありうる。例えば、移植物を多量の剤とともに装填するが、上記範囲内の必要な濃度が持続的に放出されるように製剤化するかまたは制御してもよい(例えば遅延放出製剤)。
【0111】
scFvでは、抗体濃度は通常、最大1mg/mlの範囲で達成されるが、これはさらなる浸透増進剤を添加しなければ、上皮浸透にそれほど有効ではないことが見出されている(WO0040262)。本発明は非常に可溶性である抗体を提供するため、対応する抗原関連疾患の有効な治療において、より高い濃度、すなわち約2mg/mlより高い、好ましくは約5mg/mlより高い、最も好ましくは約10mg/mlより高い濃度で、前記抗体を含む医薬組成物を調製し、そして用いることも可能である。
【0112】
したがって、本発明は、抗原関連疾患の治療法であって、抗原−抗体相互作用部位への抗体の送達が、密着結合を含む組織、特に上皮および/または内皮への浸透を必要とする、前記方法を提供する。上皮は、細胞層で構成される組織であり、そして生物の外部(皮膚)および内部(例えば腸)の両方を裏打ちする。上皮にはまた、口腔および体腔の内側を裏打ちする粘膜も含まれ、そして上皮は、死んだ扁平上皮細胞、ならびに肺、胃腸管、および生殖器官および尿路の内側を裏打ちする上皮細胞を含む。内皮は、薄く扁平な細胞の層であり、これら細胞が、血管および臓器の内部表面を裏打ちする。血管系において、内皮は管腔中を循環する血液および血管壁の残りの間の界面を形成する。内皮細胞は、心臓から最小の毛細管まで、全循環系を裏打ちする。小さい血管および毛細管では、内皮細胞は、しばしば、存在する唯一の細胞種である。内皮細胞はまた、血流内へのそして外への物質の通過も制御する。いくつかの臓器には、特殊化された「ろ過」機能を実行する、非常に分化した内皮細胞が存在する。こうしたユニークな内皮構造の例には、腎糸球体および血液脳関門が含まれる。内皮組織は、上皮組織の特殊化されたタイプである。
【0113】
本発明の好ましい態様において、角膜への浸透が達成可能である。角膜上皮は、角膜正面を覆い、そしていくつかの細胞層からなり、このために、抗体による浸透がさらになお困難となる。本発明の抗体は、好ましくは、角膜全体に浸透可能である。
【0114】
ブドウ膜炎の治療に理想的な薬剤は、4つの重大な特性を含まなければならない:1)急性症状に対して、迅速な効果発現を提供し、2)標準的局所コルチコステロイドと比較した際、匹敵する効能を示し、3)標準的局所コルチコステロイドと比較した際、優れた安全性プロフィールを示し、4)標準的コルチコステロイドまたは標準的モノクローナル抗体と比較した際、角膜への局所適用、ならびに硝子体内注射を可能にする、好ましい薬物動態学的特性を有する。
【0115】
適切な薬物動態学的特性を含む、TNFαの局部適用阻害剤は、これらの側面すべてに取り組むことも可能である。抗TNFα scFv抗体ESBA105は、眼の前部に優れた浸透を示し、TNFα中和活性が高いことと合わせて、最終的に、前部ブドウ膜炎に対する療法的効能に非常によく適した眼内濃度を達成する。罹患した眼で見られるTNFαレベルが15pg/mlであり、そしてESBA105濃度が眼の前部に関しては最大40,000ng/ml(図7を参照されたい)であり、そして硝子体部分に関しては最大125ng/ml(図8を参照されたい)であることを考慮すると、ESBA105は、前部ブドウ膜炎の治療に適しているだけでなく、例えば眼性ベーチェット病などの、異なる型の汎ブドウ膜炎の治療にも適していると結論づけられる。したがって、本発明は、眼への局所適用による、眼性障害の治療、特に任意の型のブドウ膜炎、ベーチェット病、網膜炎、ドライアイ症候群、緑内障、シェーグレン症候群、糖尿病(糖尿病性ニューロパシーを含む)、強膜炎、結膜炎および角膜炎の治療のための抗体を提供する。投与は、好ましくは、点眼剤、眼の軟膏によって、またはコンタクトレンズなどのデポ・デバイスから起こる。
【0116】
本発明の別の好ましい態様において、抗体は腸上皮に浸透しなければならない。
肺における治療の場合、吸入を用いて、抗体を運び、肺上皮に本発明の抗体を適用しなければならない。
【0117】
本発明のさらに別の側面において、抗体は診断ツールとして用いられる。
本発明の配列は、以下の通りである:
【0118】
【化1−1】

【0119】
【化1−2】

【0120】
【化1−3】

【0121】
【化1−4】

【実施例】
【0122】
例示
実施例全体で、別に記載しない限り、以下の材料および方法を用いる。
材料および方法
一般的に、本発明の実施は、別に示さない限り、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば免疫グロブリン技術)および畜産の慣用的な技術を使用する。例えば、Sambrook, FritschおよびManiatis, Molecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989); Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology), 510, Paul, S., Humana Pr(1996); Antibody Engineering: A Practical Approach(Practical Approach Series, 169), McCafferty監修, Irl Pr(1996); Antibodies: A Laboratory Manual, Harlowら, C.S.H.L. Press, Pub.(1999); Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら監修, John Wiley & Sons(1992)を参照されたい。
【0123】
実施例1: scFvの産生
封入体として発現させ、その後、再フォールディングおよびクロマトグラフィー工程を行って、scFv抗体を産生した。3つの一本鎖抗体を産生した。これには、非常に可溶性であり、特に安定でそして単量体であるという基準をおそらく満たさない、2つの慣用的scFvが含まれる。このうち一方は、TB−wt(配列番号14)であり、ネズミ抗TNFαモノクローナル抗体Di62(Doringら、1994)の天然VLおよびVH配列を連結することによって構築された。もう一方のものは、ルセンティス−scFvであり、VEGF特異的Fab断片ラニビズマブのVLおよびVH配列を連結することによって構築された(配列番号15)。ESBA105は、Di62のCDRを所持し、そしてTNFαに対して、ナノモル範囲のKd値を示す、scFvである。いわゆる品質管理系(Auf der Maurら、2004)によって選択したscFvフレームワークを使用することによって、ESBA105の可溶性、安定性、および単量体性の振る舞いを最適化した。ESBA105のアミノ酸配列を配列番号13に開示する。
【0124】
図1は、再フォールディング工程に続く、分取用ゲルろ過のESBA105(A)、TB−wt(B)およびルセンティス−scFv(C)の溶出プロフィールを示す。ESBA105のプロフィールは、主に、300mAU(吸収に関する相対的単位)に達する、1つの鋭いピークからなる一方、TB−wtおよびルセンティス−scFvのプロフィールでは、それぞれ16および55mAUが最高値の、いくつかの広いピークが見られうる。これは、封入体の品質およびまたは再フォールディングプロセスのいずれかが、ESBA105に比較した際、TB−wtおよびルセンティス−scFvでははるかに効率的でないことを示す。
【0125】
以下に、ESBA105に関する産生法を詳細に記載する。
ESBA105を発現するためのプラスミドpGMP002の構築:
ESBA105コード配列を、pET−24d(+)(Novagen、カタログ番号69752−3)のNcoI−HindIII部位内に連結した。続いて、Bpu11021およびNotI消化によって生じた粘着端をT4ポリメラーゼ反応によって埋めた後、平滑端連結によって、生じた構築物のBpu11021−NotI断片を除去して、pGMP003を生じた。pET−24d(+)から、Bpu11021−NotIを直接除去することによって、pGMP002を産生した。
【0126】
大腸菌におけるESBA105の発現:
ESBA105を発現するため、大腸菌BL21(DE3)(Novagen)を発現プラスミドpGMP002で形質転換した。1%グルコース、1ml/lの微量元素溶液(WangおよびLee, Biotechnol. Bioeng 58:325−328)および50μg/mlカナマイシンを含有するM9培地(Sambrookら, Molecular Cloning, A laboratory manual)中で培養した単一コロニーから、グリセロールストック培養物を調製した。細胞を37℃で一晩増殖させ、グリセロールを20%まで添加して、そして1mlアリコットをグリセロールストックとして−80℃で保存した。
【0127】
第一の前培養のため、1%グルコース、1ml/lの微量元素溶液および50μg/mlカナマイシンを含有する50mlの合成定義培地(Korzら, J. Biotechnol. 1995, 39:59−65)に、1mlのグリセロールストックを接種した。前培養を、37℃で、そしてバッフル振盪フラスコ中、200rpmで一晩増殖させた。同じ培地250mlを用いた第二の前培養に、第一の前培養を接種し、そして37℃でさらに3時間増殖させた。
【0128】
前培養に用いたものと同じ合成培地3lの初期体積を含有する、5lのバイオリアクター(BioFlo 110、New Brunswick Scientific)中で、バイオリアクター培養を実行した。培養温度を37℃に設定した。25%アンモニア水および1Mリン酸を添加することによって、培養pHを7.0に調整した。全通気速度4l/分で、純酸素率を変化させることによって、溶解酸素レベルが空気飽和レベルの20%を超えるように維持した。バイオリアクターに第二の前培養を摂取し、そして10〜12のOD600まで、バッチモードで操作した。次いで、10g/l MgSO・7HOおよび5ml/l微量元素溶液を含有する50%グルコース溶液を用いて、指数関数的グルコース供給を、0.15h−1の速度で開始した。16時間後、IPTGを1mMまで添加することによって、タンパク質発現を誘導し、そして指数関数的供給を3時間続けた。次いで、4,600rpmで1時間遠心分離することによって、細胞を採取した。
【0129】
封入体調製:
封入体を調製するため、1kgの湿細胞ペーストを、5lのTBS緩衝液(10mM Tris、150mM NaCl、pH7.3)中に再懸濁した。1gの固形リゾチームを添加し、そして細胞懸濁物を30〜60分間インキュベーションした。細胞を破壊するため、懸濁物を1,000バールの高圧ホモジナイザー(Niro Soavi, Panda 2K)に2回通過させた。破壊された細胞を4,600rpmで1時間遠心して、そして生じた封入体を、0.5% LDAO(N−,N−ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、Fluka)を含有する2lのTBS緩衝液中に再懸濁した。洗浄上清中に、有意な残渣タンパク質が検出されなくなるまで、封入体を繰り返して洗浄した。最後に、LDAOを含まないTBS緩衝液で封入体を2回洗浄した。
【0130】
ESBA105の再フォールディング:
pH8.0で6Mグアニジン−HCl、100mM Tris、1mM EDTAおよび20mM DTTを含有する10倍体積の可溶化緩衝液中で封入体を可溶化し、そして室温で一晩インキュベーションした。次いで、pH8.5で3M尿素、100mM Tris、ならびに各2mMのシステインおよびシスチンを含有する再フォールディング緩衝液中に、1:50希釈することによって、可溶化タンパク質を再フォールディングした。再フォールディングを室温で24時間続けた。再フォールディング後、深層ろ過によって沈殿物を除去し、そして再フォールディング溶液を最初の体積の50%に濃縮した。次いで、濃縮した再フォールディング溶液を4倍体積のPBS緩衝液(50mMリン酸Na、150mM NaCl、pH6.5)に対して透析し、そしておよそ1mg/mlのタンパク質濃度になるまでさらに濃縮した。
【0131】
クロマトグラフィーによるESBA105の精製:
ESBA105を2つのクロマトグラフィー工程で精製した:ゲルろ過および陽イオン交換クロマトグラフィー。AKTA精製系(GE Healthcare)によって、すべてのクロマトグラフィー工程を行った。
【0132】
分取用ゲルろ過クロマトグラフィーのため、泳動緩衝液としてPBS緩衝液(50mM リン酸Na、150mM NaCl、pH6.5)を用い、Sephadex S75 26/60カラム(GE Healthcare)を用いた。収集したESBA105分画は、単一ピークとして、およそ185mlの保持体積で溶出した。
【0133】
Fractogel EMD SO(M)(Merck)を第二のクロマトグラフィー工程のカラム樹脂として用いた。5カラム体積の平衡緩衝液(50mM酢酸Na、pH5.5)で樹脂を平衡化した。ゲルろ過由来のESBA105ピーク分画を50mM酢酸Na、pH5.5で10倍に希釈して、そして次いで流速5ml/分でカラム上に装填した。装填後、5カラム体積の平衡緩衝液でカラムを洗浄した。ESBA105の溶出には、60分以内および5ml/分の0〜35%の溶出緩衝液(50mMリン酸Na、500mM NaCl、pH5.5)からの直線勾配を用いた。溶出後の最も顕著なピークを収集し、そしてこれはESBA105と同定された。収集したESBA105分画をPBS(50mMリン酸Na、150mM NaCl、pH6.5)に対して最終的に透析し、そして−80℃で保存した。
【0134】
実施例2: scFvの生物物理的特性
「薬剤らしさ(drug−likeness)」を調べるため、ESBA105およびその誘導体のいくつかを、生物物理的に性質決定した。性質決定には、(1)可溶性パラメーター(PEG沈殿およびB22値;B22値は、タンパク質自己相互作用の測定値であり、この値は、タンパク質結晶成長、可溶化および凝集に重要である。Valenteら, Biophys J. 2005 Dec;89(6):4211−8. Epub 2005 Sep 30を参照されたい)、(2)pI値、(3)熱およびカオトロピック変性、ならびに(4)オリゴマー分画と比較した際の単量体分画の定量化の決定が伴った。項目1〜3の結果を表1に要約し、該表にはまた、それぞれ、L929およびKYM−1アッセイによって決定した際の相対強度値も含まれる。
【0135】
表1.いくつかのESBA105誘導体に対するデータの要約
【0136】
【表1−1】

【0137】
【表1−2】

【0138】
実施例3:保存中のscFvの安定性
経時的なscFvの安定性は、薬剤との関連で、重要な特徴である。図4は、異なる温度(−80℃:レーン1、3、5、7、9、および11)または40℃:レーン2、4、6、8、10および12)および濃度(20mg/ml:レーン1、2、7および8; 10mg/ml;レーン3、4、9および10; 1mg/ml:レーン5、6、11および12)で2週間保存した後、SDS−PAGEによって分離し、そしてクーマシーで染色した、ESBA105 scFv(レーン1〜6)およびQC15.2 scFv(レーン7〜12)の分析を示す。抗体は、温度全範囲に渡って、そして試験したすべての濃度で安定のままであり、そして分解または凝集の徴候はまったく見られなかった。
【0139】
特定の時間に渡って安定である抗体はまた、完全な活性も保持するはずである。したがって、本発明者らは、37℃または−80℃で8週間保存した後、活性に関してL929アッセイにおいて、ESBA105を試験した。結果を図5に提示し、そして2つの温度間には、相違はまったく見られなかった。
【0140】
実施例4:ウサギの眼全体へのESBA105のex vivo浸透
ex vivo設定において、多様な条件下で、ウサギの眼全体の異なる区画内に浸透したESBA105の量を試験した。これらの一連の実験に関して、表面にくぼみを有するインキュベーション試験プレート上に、ウサギの眼を置いた。くぼみはESBA105試験溶液を含有し、そして角膜が試験溶液と接触するように、試験プレート上にウサギの眼を置いた。37℃で4時間インキュベーションした後、ESBA105含量に関して、異なる眼の区画を分析した。この分析のため、シリンジを用いて、目的の区画からプローブを除去して(図6を参照されたい)、そしてELISAによって、プローブのESBA105濃度を決定した。
【0141】
上述の実験設定で、以下の条件を評価した:1、2、5および10mg/mlの濃度で、ESBA105を試験した。0.5%カプリン酸の存在下で、1mg/mlの濃度をさらに試験した。0.5%カプリン酸は、角膜を通じた浸透を増進することが、Thielら(Clin. Exp. Immunol. 2002 Apr;128(1):67−74)によって以前示された。0.5%カプリン酸の存在下で、1mg/mlを投与した場合、眼の前部のESBA105濃度が約40μg/mlであると測定され、これは、カプリン酸の非存在下で10mg/ml投与した後に測定された濃度と比較して、ほぼ同じであった(図7)。興味深いことに、これらの2つの投与様式の結果を硝子体液中で比較すると、カプリン酸を伴う1mg/mlの投与では約40ng/mlと測定され、そしてカプリン酸を伴わない10mg/mlの投与では、約125ng/mlと測定された(図8)。カプリン酸の非存在下では、2つの区画で測定される濃度は、1、2、5および10mg/mlの適用濃度に明らかな依存を示した(図8)。
【0142】
眼のインキュベーション試験プレートを、ブロッキング緩衝液(PBS、pH7.4中の5%低脂肪粉乳)と、4℃で一晩プレインキュベーションした。翌日、プレートをPBSで洗浄し、そしてその後、37℃で30分間インキュベーションすることによって、乾燥させた。乾燥したプレートのウェルに各125μlの試験溶液を満たし、そして単離したウサギの眼を、角膜のみが試験溶液と接触するような方式で、ウェルに入れた。37℃および100%湿度で4時間インキュベーションした後、眼をPBSで3時間洗浄した。前房には25G針を用いて、そして硝子体には22G針を用いて、穿刺術を実行した。
【0143】
ELISAによって、以下のように、プローブ中のESBA105の濃度を決定した:13,000rpmで5分間、室温で、実験台微量遠心分離装置を用いて、プローブを遠心分離した。ELISA試験のため、0.5%低脂肪粉乳を含有するTBST(0.005%Tweenを補ったTBS)(以後、希釈溶液と称する)中で、前部区画由来のプローブを1:10、1:100および1:1000に希釈し、硝子体区画由来のプローブを1:5に希釈した。
【0144】
ELISA96ウェルプレート(Nunc Maxisorb;カタログ番号442404)を0.5μg/mlヒトTNFαで4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートを室温で3回、TBSTで洗浄し、そしてウェルあたり300μlのブロッキング緩衝液(TBST中、5%低脂肪粉乳)と、振盪装置(500〜600rpm)上、室温で60分間インキュベーションした。ブロッキング工程後、プレートをTBSTで3回洗浄した後、50μlの希釈プローブを各ウェルに添加して、そして振盪装置(500〜600rpm)上、室温で90分間インキュベーションした。このインキュベーション工程後、プレートをTBSTで3回洗浄し、その後、二次抗体AKA3A−ビオチン化の1:10,000溶液(希釈溶液中で希釈)50μlを各ウェルに添加した。AKA3A−ビオチン化は、(標準的ビオチン化プロトコルにしたがって)新鮮にビオチン化したポリクローナルウサギ抗ESBA105抗体である。振盪装置(500〜600rpm)上、室温で90分間インキュベーションした後、プレートをTBSTで3回洗浄し、その後、ストレプトアビジンとカップリングした西洋ワサビ(horseradish)・ペルオキシダーゼ(ストレプトアビジン−ポリHRP40、1mg/ml;SDT;#SP40C)の1:2000希釈(希釈溶液中で希釈)50μlを添加した。振盪装置(500〜600rpm)上、室温で60分間インキュベーションした後、プレートをTBSTで3回、そしてddHOで2回洗浄した。各ウェルに、50μlのBM Blue POD基質(Roche Diagnostics、カタログ番号1484281)を添加して、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)活性を検出した。暗所中、室温で6〜12分間インキュベーションした後、各ウェルに50μlの1M HClを添加することによって、HPR反応を停止した。TECAN Genios読み取り装置中、450nmでの分光測定によって、HPR反応を定量化した。
【0145】
平行して産生した標準曲線に比較することによって、プローブのESBA105濃度を最終的に決定した。
実施例5:ESBA105による、Caco−2細胞単層への浸透
ヒト結腸腺癌(Caco−2)細胞を、24トランスウェルプレートの透過可能支持体上に植え付け、そして5%CO大気中、37℃で21日間培養して、密着単層の形成を可能にした。透過性アッセイを行う前に、各ウェルにおいて、経上皮電気抵抗を測定して、単層の完全性を検証した。次いで、Caco−2単層を生理食塩水溶液(HBSS)で3回洗浄して、そしてカプリン酸塩を含むまたは含まない1μMのESBA105のいずれかを含有する混合物、あるいはアッセイ培地のみを、対照としてトランスウェルの上部区画に添加した。明示した時点後、下部区画の内容物を収集し、そして新鮮なアッセイ培地と交換した。続いて、収集した試料を、定量的ELISAによって分析して、Caco−2上皮単層に浸透したESBA105の量を決定した(図9)。
【0146】
実施例6:マウス十二指腸への浸透
動物を安楽死させた直後に、およそ5cmのマウス十二指腸を切除し、そして酸素飽和リンガー−クレブス緩衝液中でインキュベーションし、そしてリンガー−クレブス緩衝液で3回フラッシュした。3.5cmのセクションを、外科絹糸で結紮し、そして1mg/mlの各抗体形式(インフリキシマブおよびESBA105)を含有する200mcl抗体混合物で満たした。反転嚢区画のおよそ1cm遠位で、第二の結紮を加えて、区画が堅固であることを確実にした。最初の結紮のみが緩衝液と接触するように、10mlの酸素飽和リンガー−クレブス緩衝液10mlを含有するビーカーガラス内に、反転嚢を入れた。プロテアーゼ阻害剤をこのレセプター区画に添加して、抗体の分解を防止した。腸組織に浸透した各抗体の量を決定するため、明示した時点後、レセプター区画から200mclプローブを採取し、そして続いて定量的ELISAによって分析した。
【0147】
実施例7:可溶性抗原結合性ポリペプチドの局所適用
ウサギの眼における、in vivoでの可溶性抗原結合性ポリペプチド、ESBA105の局所適用の薬力学および薬物動態学を研究した。4つの異なる製剤を調製した。第一の製剤(本明細書において、「B15」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸緩衝液中の9.6mg/mlのESBA105で構成された。第二の製剤(本明細書において、「B16」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸ナトリウム緩衝液中の10.3mg/mlのESBA105および0.01%(w/v)クロルヘキシジンで構成された。第一の対照(本明細書において、「B15−0」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸ナトリウム緩衝液で構成された。第二の対照(本明細書において、「B16−0」と称される)は、pH6の0.15Mリン酸ナトリウム緩衝液中の0.01%(w/v)クロルヘキシジンで構成された。すべての製剤を使用前に滅菌し、そして4℃で保存した。本明細書において、「OTT」は、未治療を示す。
【0148】
眼におけるESBA105の薬力学を研究するため、各製剤に関して6匹のウサギを用いた。ウサギの両眼において、製剤を試験した。抗体断片を伴わない各製剤に関しては2匹のウサギ(4つの眼)を用い、そして未処置対照として2匹のウサギ(4つの眼)を用いた。この研究には、総数18匹のウサギを用いた。
【0149】
6日間の経過に渡って、製剤を眼に局部適用した。ウサギを毎日5回、7時、10時、13時、17時、および20時に治療した。屠殺日には、7時および10時にウサギを2回治療し、そして最後の適用の1時間後に屠殺した。
【0150】
第1日、第3日、および第6日に眼を評価した。製剤あたり2匹のウサギを用いて、各時点での薬物動態学的データを集めた。第1日および第3日に房水試料および血清試料を採取した。第6日、房水試料および血清試料を採取し、そして異なる眼の組織における抗体断片の分布を研究するために、ウサギの眼を組織に切り分けた。この研究の結果を図11a〜11dにグラフで示す。
【0151】
さらなる研究を実行して、ESBA105の可溶性、薬力学および薬物動態学を研究した。結果を図12〜16に記録する。これらの図からわかるように、ESBA105は、ウサギおよびブタの角膜組織層に浸透することが示された。ESBA105は、硝子体中に集積し、そして局部半減期は約25時間である。前房中のESBA105の局部半減期は、硝子体中より有意に低い。局所治療に際して、全身曝露は非常に低く、例えば最高局部濃度のおよそ2%である。さらに、ウサギ局所実験に基づいて、1日あたり局所5滴程度に低くても、療法薬剤レベル(TNFに関して、およそ16,000倍)に到達可能である。したがって、TNF阻害性scFv抗体断片の局所適用は、眼のより後部部分、例えば硝子体および網膜に位置する疾患において、有効な療法でありうる。
【0152】
実施例8:ラット急性単関節炎モデルにおける用量反応
用量反応を研究するため、図17に示すようにESBA105を投与した。比較として、図17に示すように、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)を投与した。この実験のため、TNFαをESBA105またはインフリキシマブの3つの異なる投薬量(156μg、45μg、または11μg)とともに投与した。対照として、PBS、およびTNFのみ(10μg i.a.)、またはscFvのみを用いた。結果を図17に示す。
【0153】
実施例9: in vivoの局所適用
局所投与の1日の間の最大全身曝露および局部薬剤レベルを決定するため、10時間の期間に渡って20分ごとに1滴を投与した。ELISAによって房水、硝子体および血清中の薬剤レベルを測定した。ESBA105をPBS、pH6.5中、10mg/mlとして処方した。各滴に関して、30mclを瞳孔の最上部に適用し、そして次いでまぶたを圧迫して過剰な液体を取り除いた。結果を図18および表2に示す。
【0154】
表2:図18Aのレジェンドに記載するように、実験の経過中に、示す区画で測定した、最大ESBA105濃度(Cmax)を示す。割合値は、総適用用量(累積用量)に比較した際のCmaxの割合を示す。
【0155】
【表2】

【0156】
実施例10:可溶性抗原結合性ポリペプチドの局所適用
長期局所低頻度治療中の最大全身曝露および局部薬剤レベルを決定するため、最大6日間、1滴を1日5回、2匹のウサギ(4つの眼)に適用した。各滴に関して、30mclのESBA105を眼の下部の嚢内に適用し(主に強膜に薬剤を提示する)、30mclすべてが眼球表面上に残った。
【0157】
第2日、第3日、および第6日の第2滴後に、眼を評価した。ELISAによって、房水、硝子体、神経網膜、脈絡膜および血清中の薬剤レベルを測定した。この研究の結果を図19a〜図19eにグラフで示す。
【0158】
表3は、示す区画中、投与第6日後に見られる、[ng/ml]の中央値scFv ESBA105濃度を要約する。
表3:投与第6日後に見られる中央値scFv ESBA105濃度
【0159】
【表3】

【0160】
先行する説明を考慮して、当業者には、本発明の多くの修飾および代替態様が明らかであろう。したがって、この説明は例示のみであると見なされ、そして当業者に、本発明を実行する最適な様式を解説する目的のためである。構造詳細は、本発明の精神から実質的に逸脱することなく、変化させることも可能であり、そして付随する請求項の範囲内に属するすべての修飾の独占的使用が留保される。本発明は、付随する請求項、および適用可能な法規則によって必要とされる度合いにまでしか限定されないことが意図される。
【0161】
特許、特許出願、記事、書籍、論文、学位論文およびウェブページを含めて、本出願に引用するすべての文献および類似の資料は、こうした文献および類似の資料の形式に関わらず、その全体が、明確に本明細書に援用される。援用される文献および類似の資料の1以上が、定義された用語、用語使用法、記載する技術等を含めて、本出願と異なるかまたは矛盾する場合は、本出願が統制する。
【0162】
本明細書で用いるセクション見出しは、構成する目的のみのためであり、そしていかなる方式でも、記載する主題を限定するとは見なされないものとする。
本発明は、多様な態様および実施例と組み合わせて記載されているが、本解説がこうした態様または実施例に限定されるとは意図されない。逆に、当業者に認識されるであろうように、本発明は、多様な代替物、修飾、および同等物を含む。
【0163】
請求項は、その効果に言及しない限り、記載する順序または要素に限定されると解釈されてはならない。付随する請求項の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の多様な変化を作製してもよいことを理解しなければならない。したがって、以下の請求項およびその同等物の範囲および精神に属するすべての態様が請求される。
【0164】
参考文献:
【0165】
【化2−1】

【0166】
【化2−2】

【0167】
【化2−3】

【0168】
【化2−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性の抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、前記ポリペプチドが、8時間未満で、特に4時間未満で、損なわれていない(intact)角膜の少なくとも1つの層を通過する、前記組成物。
【請求項2】
ポリペプチドが、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性であり、そして組成物のpHが8未満である、請求項1の組成物。
【請求項3】
可溶性の抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該ポリペプチドが、8時間未満で、特に4時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性であり、そして該組成物が8未満のpHを有する、前記組成物。
【請求項4】
1以上の浸透増進剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
浸透増進剤が、アゾン(登録商標)、塩化ベンザルコニウム(BzCl)、BL−7、BL−9、Brij35、Brij78、Brij98、Brij99、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン1800、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、コール酸塩、ヒマシ油、コーン油、クレモフォア−EL、DMSO、臭化デカメトニウム、デオキシコール酸塩、デキストラン硫酸、EDTA、EDETATE二ナトリウム、エタノール、フシジン酸塩、グリココール酸塩、ラウリル硫酸、L−α−リソホスファチジロコリン、N−ラウロイルザルコシン、NMP、オレイン酸、リン脂質、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、サポニン、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、タウロコール酸塩、およびタウロデオキシコール酸塩、特にカプリン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項4の組成物。
【請求項6】
損なわれていない角膜が、哺乳動物、特にヒト、ウサギまたはブタである、先行する請求項いずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
ポリペプチドが、少なくとも10E−6M以下のKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有する、先行する請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
抗原結合性ポリペプチドが、8時間未満で、損なわれていない角膜を通過する、先行する請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
2.5mg/mlより高い濃度で抗原結合性ポリペプチドを含み、該ポリペプチドが、8時間未満で、特に4時間未満で、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性である、先行する請求項のいずれか記載の組成物。
【請求項10】
抗原結合性ポリペプチドを含み、該抗原結合性ポリペプチドが、摂氏−80度から摂氏37度の温度で安定である、先行する請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
抗原結合性ポリペプチドが、少なくとも8週間安定である、請求項10の組成物。
【請求項12】
抗原結合性ポリペプチドが、摂氏4度で、少なくとも6週間安定である、請求項10の組成物。
【請求項13】
抗原結合性ポリペプチドが、本明細書に開示する図のいずれかの中に実験的に示すような薬力学的または薬物動態学的特徴を有する、先行する請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも10E−6M以下のKDの、ターゲット抗原に対する結合親和性を有し、そして上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である、抗原結合性ポリペプチド。
【請求項15】
以下の基準:
a)ポリペプチドが、生理学的条件下で単量体型のままである
b)ポリペプチドが、8時間未満で、好ましくは4時間未満で、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である
c)ポリペプチドが、8時間未満で上皮密着結合を横断可能な抗原結合性ポリペプチドの通過動態に対応する1/2 Vmax値を有する
の1以上を満たす、請求項14のポリペプチド。
【請求項16】
療法で使用するのに適しているように、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である請求項14または15記載のポリペプチドであって、可溶性が、標準的Caco−2上皮細胞単層アッセイで測定され、そして/または標準的細胞内1ハイブリッドまたは2ハイブリッド可溶性アッセイによって予測され、そして/または標準的マウス十二指腸透過性アッセイにおいて測定される、前記ポリペプチド。
【請求項17】
療法で使用するのに適しているように、標準的PEG沈殿アッセイまたは自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)アッセイによって予測されるとおりに、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である、請求項14または15記載のポリペプチド。
【請求項18】
8時間未満で上皮密着結合を渡る抗原結合性ポリペプチドの通過に対応する1/2 Vmax値を有する抗原結合性ポリペプチドを同定するための方法であって
(i)誘導可能なレポーター遺伝子系を有する宿主細胞において、抗原結合性ポリペプチド候補を細胞内で発現させる工程であって、前記通過動態を有する抗原結合性ポリペプチドが存在する際に、レポーター遺伝子系が記録可能なシグナルを生じるものである当該工程、
(ii)そして記録可能なシグナルに関して前記細胞をスクリーニングする工程であって、前記シグナルの存在により候補ポリペプチドが前記通過動態を有する抗原結合性ポリペプチドであると同定する当該工程
を含む、前記方法。
【請求項19】
請求項18の方法によって同定される、抗原結合性ポリペプチド。
【請求項20】
請求項18の方法を実行するためのキット。
【請求項21】
治療が達成されるように、本明細書の請求項のいずれか1項記載の抗原結合性ポリペプチドの療法的有効量を局所投与することによって、眼の病気を持つ患者を治療する方法。
【請求項22】
眼の病気がブドウ膜炎である、請求項21の方法。
【請求項23】
眼の病気が、加齢性黄斑変性症である、請求項22の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの足場領域が隣接した少なくとも1つの抗原結合性モチーフを有するポリペプチド領域を含み、そして8時間未満で上皮密着結合を横断するのに十分な通過動態を有する、抗原結合性ポリペプチド。
【請求項25】
2つの足場領域が隣接した1つの抗原結合性モチーフ、3つの足場領域が隣接した2つの抗原結合性モチーフ、4つの足場領域が隣接した3つの抗原結合性モチーフ、または4番目および5番目の足場領域の間に介在するリンカー領域を伴う8つの足場領域が隣接した6つの抗原結合性モチーフを含む、請求項24のポリペプチド。
【請求項26】
抗原結合性モチーフがCDRであり、そして足場領域が免疫グロブリンフレームワーク領域である、請求項24または25のポリペプチド。
【請求項27】
3つのCDRおよび4つの介在フレームワーク領域、または6つのCDRおよび8つのフレームワーク領域および1つの介在リンカー領域を含む、請求項26のポリペプチド。
【請求項28】
式:
Y;または
Z;または
Y−L−Z;または
Z−L−Y
式中、Yは[F1−CDR1−F2−CDR2−F3−CDR3 F4]であり、そしてZは[F5−CDR1−F6−CDR2−F7−CDR3 F8]であり;Yのフレームワーク領域(F1−F4)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;
Zのフレームワーク領域(F5−F6)は1以上のヒト軽鎖フレームワークに由来し;
YのCDR(CDR1−3)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;
ZのCDR(CDR4−6)はターゲット抗原に結合可能な1以上のドナーCDRに由来し;そして
Lは柔軟なポリペプチドリンカーである
によって表される、請求項14〜17、19、24〜27のいずれか1項の抗原結合性ポリペプチド。
【請求項29】
YおよびZが、本明細書に開示する任意の配列またはそのコンセンサスによって表される、請求項28のポリペプチド。
【請求項30】
少なくとも100ng/ml以上の眼内濃度を達成するように製剤化された、請求項28〜29のいずれか1項記載の抗原結合性ポリペプチドを含む、組成物。
【請求項31】
本明細書に開示するような細胞または動物モデル系に基づいて、100ng/ml以上の眼内濃度を生じる局所投与用に製剤化された、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
高濃度で可溶性のままであるように製剤化された、請求項30記載の組成物。
【請求項33】
眼への局所適用用に製剤化され、そして浸透増進剤の非存在下で、角膜を通じて、そして眼内空間内に通過することが可能な、請求項30〜32記載の製剤。
【請求項34】
請求項のいずれか1項のポリペプチドを用いて、眼の疾患または障害を治療するか、予防するかまたは診断するための方法。
【請求項35】
(1)配列番号1、2、3、4、5、6、および7からなる群より選択されるVLフレームワークに少なくとも約85%の類似性を持つ、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク;ならびに
(2)配列番号8、9、10および11を含む群より選択されるVHフレームワークに少なくとも約85%の類似性を持つ、重鎖可変ドメイン(VH)フレームワーク
の少なくとも1つを含む抗体。
【請求項36】
配列番号2に少なくとも約85%の類似性を持つ軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク、および配列番号8に少なくとも約85%の類似性を持つ重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークを含む、請求項35の抗体。
【請求項37】
配列番号4に少なくとも約85%の類似性を持つ軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク、および配列番号10に少なくとも約85%の類似性を持つ重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークを含む、請求項35の抗体。
【請求項38】
配列番号7または配列番号8、あるいは配列番号7および配列番号8に、少なくとも約95%の配列類似性を含む、請求項35〜36のいずれか1項記載の抗体。
【請求項39】
抗原に対する親和性が、約100nM未満の解離定数KDによって特徴付けられる、請求項35〜38のいずれか1項記載の抗体。
【請求項40】
ヒトTNFαに特異性を有する、請求項35〜39のいずれか1項記載の抗体。
【請求項41】
化学的に修飾されている、先行する請求項のいずれか1項記載の抗体。
【請求項42】
請求項35〜40のいずれか1項記載の抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項43】
請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド分子を含む、クローニングまたは発現ベクター。
【請求項44】
請求項43記載の発現ベクターで形質転換された適切な宿主細胞。
【請求項45】
原核細胞または真核細胞、特に大腸菌(E. coli)、酵母、植物、昆虫または哺乳動物細胞である、請求項43の宿主細胞。
【請求項46】
請求項35〜41のいずれか1項記載の抗体または抗体誘導体を産生するための方法であって、前記抗体分子の合成を可能にする条件下で、請求項44または45の宿主細胞を培養し、そして前記培養から前記抗体分子を回収する工程を含む、前記方法。
【請求項47】
薬剤としての、請求項35〜41のいずれか1項記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項48】
請求項35〜41のいずれか1項記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項49】
薬学的に許容されうるキャリアー、希釈剤または賦形剤をさらに含む、請求項48の医薬組成物。
【請求項50】
賦形剤が、塩化ベンザルコニウム、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80およびクロルヘキシジンを含む群より選択される、請求項49の医薬組成物。
【請求項51】
局部適用用の、特に局所適用用の組成物である、請求項48〜50のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項52】
抗体が>2mg/mlの濃度で存在する、請求項48〜51のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項53】
抗原−抗体相互作用部位への請求項35〜41のいずれか1項記載の抗体の送達が、密着結合を含む組織への浸透を必要とする、抗原関連疾患の治療のための方法。
【請求項54】
薬剤としてのまたは診断用の、請求項35〜41のいずれか1項記載の抗体の使用。
【請求項55】
抗原に特異的に結合するscFv抗体を同定するための方法であって:
(i)可溶性でそして安定な抗体フレームワークのプールから、抗原に対して特定の結合特異性を持つ非ヒト抗体のフレームワークに最適にマッチする、可溶性でそして安定なフレームワークを選択し、
(ii)前記の可溶性でそして安定なフレームワークに、前記抗原に特異的に結合するCDRを提供するか、または前記非ヒト抗体のフレームワークを、前記の可溶性でそして安定なフレームワークの配列へと突然変異させるかのいずれかで、scFv抗体を生成し、
(iii)生成した抗体を、可溶性および安定性に関して試験し、そして生成した抗体を、抗原結合に関して試験し、そして
(iv)安定で、可溶性で、そして抗原に特異的に結合する、scFVを選択する
工程を含む、前記方法。
【請求項56】
工程(ii)および(iii)の間に
−選択した1以上のCDRおよび/またはフレームワークの部位特異的またはランダム突然変異誘発によって、前記scFv抗体を突然変異させる
工程をさらに含む、請求項55の方法。
【請求項57】
酵母系において選択を行う、請求項56の方法。
【請求項58】
PBS中、37℃で、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2ヶ月間安定である、請求項56〜57のいずれか1項記載の方法。
【請求項59】
生理学的条件下で単量体のままである、請求項56〜57のいずれか1項記載の方法。
【請求項60】
抗体が、以下の基準:
a)>1mg/mlの濃度で、PBS中、周囲温度で可溶性である;
b)塩酸グアニジン滴定において、少なくとも1.5Mの転移中点を示す;
c)>1mg/mlの濃度で、PBS中の生理学的条件下で単量体のままである
の1以上を満たす、先行する請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項61】
抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該ポリペプチドが、損なわれていない角膜を通過するのに十分に可溶性であり、そして該組成物が8未満のpHを有する、前記組成物。
【請求項62】
可溶性抗原結合性ポリペプチドを含む組成物であって、該抗原結合性ポリペプチドが、8時間未満で、損なわれていない角膜の1以上の層を通過する、前記組成物。
【請求項63】
療法で使用するのに適しているように、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である抗原結合性ポリペプチドであって、可溶性が、標準的Caco−2上皮細胞単層アッセイで測定され、そして/または標準的細胞内1ハイブリッドまたは2ハイブリッド可溶性アッセイによって予測され、そして/または標準的マウス十二指腸透過性アッセイにおいて測定される、前記ポリペプチド。
【請求項64】
療法で使用するのに適しているように、標準的PEG沈殿アッセイまたは自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)アッセイによって予測されるとおりに、上皮密着結合を通過するのに十分に可溶性である、抗原結合性ポリペプチド。
【請求項65】
眼への局所適用用に製剤化され、そして浸透増進剤の非存在下で、角膜を通じて、そして眼内空間内に通過することが可能な、抗原結合性ポリペプチドを含む組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−542232(P2009−542232A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518698(P2009−518698)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000334
【国際公開番号】WO2008/006235
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(502233344)エスバテック・アーゲー (19)
【Fターム(参考)】