説明

上部ユニットケースの開閉装置

【課題】上部ユニットケース3を押下するときのみそのケース3が閉止する方向に移動し、開き回動するとき軽快に移動できる開閉装置を提供する。
【解決手段】下部ユニットケース2と上部ユニットケース3とを一側のヒンジ部4にて回動可能に連結し、下部ユニットケース2には直線且つ水平状の下部案内部材6をヒンジ部4から開放端部方向に延びるように備え、上部ユニットケース3には下向き凸湾曲状の上部案内部材7を、ヒンジ部4から開放端部方向に延びるように備え、下部案内部材6と上部案内部材7とは回転体12、13、14を有する開閉連結体10にて移動可能に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部ユニットケースに対して、開閉回動可能に装着される上部ユニットケースの開閉装置に係り、より詳しくはその上部ユニットケースの閉止方向への動作を緩慢にできるようにした上部ユニットケースの開閉装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像記録装置において、給紙部、記録部等を搭載した下部ユニットケースに対して、原稿読取部を搭載した上部ユニットケースの一側をヒンジを介して開閉回動可能に装着し、メンテナンス時や紙詰まり処理などに際して上部ユニットケースを一旦大きく開いた状態から閉じるとき、閉じ終わり区間で、上部ユニットケースの回動に制動を掛ける構成が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、上部ユニットケースと下部ユニットケースとをガススプリングにて連結すると共に、上部ユニットケースの下面自由端側に下向きにコイルスプリングを配置し、上部ユニットケースの閉じ終わり区間でコイルスプリングの一端が下部ユニットケースにおける受け部で支持されて、上部ユニットケースが急激に閉じるのを防止する構成が開示されている。
【0004】
他方、特許文献2では、上部ユニットケース(カバー)の側面に下向きに突設させた円弧状のガイド部材(案内部材)には、円弧状のガイド溝が形成され、下部ユニットケース(筐体)の一側に設けたボルト軸をガイド溝に挿通すると共に、このボルトの頭とバネ材にて案内部材を挟み付けすることにより、上部ユニットケースの任意の回動角度で位置保持できるように構成し、さらに、上部ユニットケースが下部ユニットケースに対して閉止位置では、下部ユニットケースに設けたトーションスプリングにて上部ユニットケースを上向き付勢する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-38714号公報(図1及び図2参照)
【特許文献2】実公平1−29815号公報(第3図及び第6図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献 1及び2の開閉装置では、部品点数が多く、且つガススプリングなどの寸法の大きい部品が必要となる。上部ユニットケースを下部ユニットケースに対して閉じるときの速度を緩慢にするために、ガススプリングに代えて直線状のオイルダンパーを設けたり、ヒンジ部にロータリオイルダンパーを付加することも考えられるが、このようにすると、開閉装置の構成がますます複雑になったり、下部ユニットケース等の製品全体に占める開閉装置の割合が大きくなり、製品が大型化するという問題があった。
【0007】
本発明は、開閉装置の構成部品の簡素化及び小型化を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の上部ユニットケースの開閉装置は、下部ユニットケースと上部ユニットケースとを一側に設けたヒンジ部を介して上下開閉回動可能に装着し、前記下部ユニットケースには下部案内部材を前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、前記上部ユニットケースには上部案内部材を、前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、前記下部案内部材と前記上部案内部材とは、その一方が凸湾曲状に形成され、他方が直線状に形成され、前記下部案内部材と上部案内部材とに移動可能に連結される開閉連結体を有し、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して開放する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記開放端部側から前記ヒンジ部側に順次移動し、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記ヒンジ部側から前記開放端部側に順次移動するように構成されているものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記下部案内部材は直線状であり、前記上部案内部材は下向き凸湾曲状に形成され、
前記開閉連結体は、1つの回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられ、2つの回転体が前記下部案内部材に沿って移動可能に設けられているものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記上部案内部材は直線状であり、前記下部案内部材は上向き凸湾曲状に形成され、
前記開閉連結体は、1つの回転体が前記下部案内部材に沿って移動可能に設けられ、2つの回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられているものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記開閉連結体は、前記 3つの回転体の軸中心を結ぶ形状が三角形に形成され、前記1つの回転体が前記上部案内部材との接点で受ける力の方向が前記2つの回転体の間にあるように構成されているものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2または4に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記1つの回転体の上側部位が前記上部案内部材と接触する位置が、前記1つの回転体の軸中心よりも前記ヒンジ部に近い側に位置するように、前記上部案内部材が形成されているものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2または4または5のいずれかに記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記開閉連結体が前記上下部案内部材のいずれの位置にあるときでも、前記上部ユニットケースの自重及びこの上部ユニットケースに付加される押圧力の合力の前記1つの回転体位置での水平方向成分の大きさは、前記押圧力の鉛直成分と前記開閉連結体の自重による水平方向の摩擦力の大きさと、前記開閉連結体に作用する抵抗力の水平成分の大きさとの和より大きいかまたは等しくなるように設定され、且つ前記押圧力を解除すると、前記上部ユニットケースの開閉姿勢が保持されるように構成したものである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項2また3に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止終了状態となる時の前記開閉連結体における前記2つの回転体のうちヒンジ部から遠い側の回転体が前記下部または上部案内部材の凹み部に嵌まり停止するように構成されているものである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項2乃至7のいずれかに記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記上下両案内部材には、それぞれ前記各回転体がその中心軸方向に脱落不能とするガード辺が形成されているものである。
【0016】
請求項9に記載の発明は、前記上下ユニットケースの閉止状態において、前記下部案内部材と上部案内部材とはその一部が、当該両案内部材の延びる方向からの投影視でユニットケースの高さ方向において重なるものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、下部ユニットケースには下部案内部材をヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、上部ユニットケースには上部案内部材を、前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、前記下部案内部材と前記上部案内部材とは、その一方が凸湾曲状に形成され、他方が直線状に形成され、前記下部案内部材と上部案内部材とに移動可能に連結される開閉連結体を有し、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して開放する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記開放端部側から前記ヒンジ部側に順次移動し、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記ヒンジ部側から前記開放端部側に順次移動するように構成されているものである。
【0018】
従って、上部ユニットケースを閉じ動作する方向に負荷(荷重)を掛けるときのみ、開閉連結体がヒンジ部から離間する方向に移動し、且つその移動速度は増大しないので、ゆっくり閉めることができる。他方、上部ユニットケースを開くときには、逆に軽快に開くことができる。そして、そのための構成が、下部案内部材または上部案内部材のいずれか一方が凸湾曲状に形成され、他方が直線状に形成され、この両案内部材に沿って移動可能に連結される開閉連結体だけであるので、構造がシンプル且つ小型化することができるという効果を奏する。
【0019】
請求項2及び請求項4に記載の発明によれば、1つの回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられ、前記1つの回転体が前記上部案内部材との接点で受ける力の方向が前記下部案内部材に沿って移動する前記2つの回転体の間にあるように構成されているものであるので、開閉連結体の姿勢が保持され安定して両案内部材に沿って移動させることが容易となる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、上部案内部材が直線状であるので、湾曲状である場合に比べて上部ユニットケースの高さを低くすることができる。従って、装置全体をコンパクトに形成できるという効果を奏する。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前記1つの回転体の上側部位が前記上部案内部材と接触する位置が、前記1つの回転体の軸中心よりも前記ヒンジ部に近い側に位置するように、前記上部案内部材が形成されているものであるので、上部ユニットケースの自重と下向き押圧力の水平方向成分が作用し、上部案内部材の所定の下向き凸湾曲状の形状にて開閉連結体を閉止方向に移動させることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、開閉連結体が前記上下部案内部材のいずれの位置にあるときでも、ユーザーが下向き押圧力を作用させない限り、上部ユニットケースが閉止方向に移動せず、ユーザーが上部ユニットケースから手を離した時不用意に閉止しないから安全であるという効果を奏する。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止終了状態となる時の前記開閉連結体における前記2つの回転体のうちヒンジ部から遠い側の回転体が前記下部または上部案内部材の凹み部に嵌まることで停止するから、閉止終了時の上部ユニットケースが下部ユニットケースに対して完全に閉まりきることができる効果を有する。また、最後に凹みにはまり込む感触により上部ユニットケースが完全に閉まっていることを感覚で認知することが可能となる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、上下両案内部材には、それぞれ前記各回転体がその中心軸方向に脱落不能とするガード辺が形成されているから、開閉連結体が不用意に外れることがなく安全であるという効果を奏する。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、下部ユニットケースに対して上部ユニットケースを閉止した状態のとき、下部案内部材と上部案内部材とはその一部が、当該両案内部材の延びる方向からの投影視でユニットケースの高さ方向において重なっているので、装置全体の高さを低くすることができて、コンパクトに形成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)は第1実施例の下部ユニットケースに対して上部ユニットケースが開いた途中の状態を示す斜視図、(B)は上部ユニットケースを閉じた状態の斜視図である。
【図2】(A)は第1実施例の下部ユニットケースに対して上部ユニットケースが開いた途中の状態を示す概略側面図、(B)は上部ユニットケースを閉じた状態の概略側面図である。
【図3】図2(B)の III−III 線矢視拡大断面図である。
【図4】第1実施例の作用説明図である。
【図5】作用説明のためのグラフである。
【図6】上部ユニットケースを閉じる状態のとき開閉連結体を停止する例を示す概略側面図である。
【図7】下部案内部材が上向き凸湾曲状で、上部案内部材が水平且つ直線状の第2実施例を示し、(A)は第1実施例の下部ユニットケースに対して上部ユニットケースが開いた途中の状態を示す概略側面図、(B)は上部ユニットケースを閉じた状態の概略側面図である。
【図8】第2実施例の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1実施例を図1〜図4を参照して説明する。
【0028】
本実施例の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )に本発明を適用したものであり、図1及び図2に示すように、画像記録装置1における合成樹脂製の下部ユニットケース2の一側部に、上部ユニットケース3はヒンジ部4を介して上下回動可能に連結されている。
【0029】
なお、図示しないが、下部ユニットケース2内にはインクジェット式等の記録部が給紙カセットより上側に配置されており、給紙カセットから給送された用紙(被記録媒体)が、後側に着脱可能に配置されたUターン状の搬送経路体を介して記録部に搬送され、記録後の用紙は給紙カセットの上方であって下部ユニットケース2の側面に開口した開口部から排紙されるように構成されている。給紙カセットも開口部から差込み可能に配置されている。
【0030】
上部ユニットケース3には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読取などのための原稿自動送り装置及び画像読取装置と、原稿載置用ガラス板及びその上面を覆う原稿カバー体と、各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部とが設けられている(共に図示せず)。
【0031】
次に、本発明の下部ユニットケース2と上部ユニットケース3とを開閉可能とする開閉装置について説明する。両ユニットケース2及び3には、前記ヒンジ部4側から開放端部側に延びる下部案内部材6と上部案内部材7とがそれぞれ備えられている。下部案内部材6と上部案内部材7とにわたって配置され開閉連結体10は、上部案内部材7に沿って移動可能な第1回転体12(請求項にいう1つの回転体)と、下部案内部材6に沿って移動可能な第2回転体13、第3回転体14(請求項にいう2つの回転体)とが側面視三角形状等の任意形状のフレーム11にそれぞれ回転可能に装着されたものである。第1〜第3回転体12、13、14はそれぞれコロ状に形成されている。
【0032】
第1実施例では、側面視三角形状のフレーム11の上頂部の表面側に第1回転体12が配置され、第2回転体13、第3回転体14はフレーム11の下辺側両角部(下頂部)のうち裏面側にそれぞれ配置されている。
【0033】
そして、ユーザーが上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して開放する動作につれて、開閉連結体10が上下両部材6、7に沿って開放端部側からヒンジ部4側に近づく方向に順次移動するように構成されている。また、上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して閉止する動作につれて、開閉連結体10が上下両部材6、7に沿ってヒンジ部4側から開放端部側に近づく方向に順次移動するように構成されている。
【0034】
第1実施例では、下部案内部材6はヒンジ部4側から開放端部側に向かって実質的に水平状且つ直線状に延びるように形成されている。他方、上部案内部材7は、ヒンジ部4から開放端部方向に下向き凸湾曲線状に延びるように形成されている(図1(A)、図1(B)、図2(A)及び図2(B)参照)。
【0035】
下部案内部材6及び上部案内部材7は共に断面コ字状に形成され、第1〜第3回転体12、13、14が上記各部材のレール溝15、16内に沿って転がるように構成されている。下部案内部材6は下部ユニットケース2の上面2aに設けられ、溝15は下部ユニットケース2の側方の外面に向かって開口するように配置されている。上部案内部材7は上部ユニットケース3の側面板3aの内面にて溝16が内向きに開口するように配置されている(図3参照)。上部ユニットケース3が下部ユニットケース2に対して閉止された状態で、下向き凸湾曲状の上部案内部材7の中途部が下部ユニットケース2と干渉しないように、側面板3a及び上部案内部材7は下部ユニットケース2の側面板2bよりも外側に位置している(図3参照)。また、上部ユニットケース3に設けられた当接ブロック17が下部ユニットケース2の上面2aの当接部に当たることで、上部ユニットケース3の閉止位置が決まり、それ以上下降動しない。このとき、側面板3aの下端縁3a1の一部が下部ユニットケース2の側面板2bと投影視で重なることになる(図2(B)の二点鎖線状態参照)。
【0036】
さらに、第1回転体12がその中心軸方向に上部案内部材7のレール溝16から脱落しないように、また、第2、第3回転体13、14がその中心軸方向にそれぞれ下部案内部材6のレール溝15から脱落しないように、レール溝15、16には各回転体の外周部位を囲むための上下のガード辺18、19が一体的に突出形成されている(図3参照)。
【0037】
次に、開閉装置における開閉連結体10の動作について説明する。図4(A)のように上部ユニットケース3の自重mg(垂直方向)が重心G(ヒンジ部4の位置(原点O)から距離aだけ離間した位置)に作用し、上部ユニットケース3の任意の個所、例えば自由端側で原点Oから距離bだけ離間した位置にて(荷重W)の力で上部ユニットケース3をユーザーが手で押下しているとする。また、原点Oから重心G及び荷重Wを通る直線がX軸となす角度(2π−θ)とする。
【0038】
そして、開閉連結体10の第1回転体12にて上部ユニットケース3を支えているものとし、上部案内部材7のレール溝16の上案内面に第1回転体12が接触している位置(接点P)が原点OからX軸方向に距離dだけ離間しているものとする。開閉連結体10の第2回転体13及び第3回転体14はX軸と平行な下部案内部材6のレール溝15の下案内面に沿って移動可能であるとする。その場合、接点PはX軸線上に位置するものとする。接点Pにおける上部案内部材7のレール溝16の上摺接面との接線TとX軸とのなす角度kとすると、k=α−θとなる。なお、接点PがX軸上にない場合(図5(B)参照)には、角度k,α,θの関係は、k=2π−θ=α−θとなる。
【0039】
また、上部案内部材7が下向き凸湾曲状であるときは、接点Pは第1回転体12の中心軸よりもヒンジ部4に近い側に位置することはあきらかである。
【0040】
接点Pにおける支持反力Fとするとき、ヒンジ部4(原点O)まわりのモーメントの釣り合い式は、a*mg* cos(2π−θ)+W*b=d*F* coskとなる。(*は乗算の記号です。) cos(2π−θ)= cosθとなるから、
F=[a*mg* cosθ+W*b]/[d* cosk] ‥‥式(1)
接点Pにおけるx軸の正方向の力Sとすると、S=(上部ユニットケース3の自重と荷重WとによるX軸方向成分)−(上部ユニットケース3の自重と荷重Wとによる上部案内部材7の個所での摩擦力のX軸方向成分)−(開閉連結体10に作用する負荷のX軸方向成分)となる。ここで、(開閉連結体10に作用する負荷のX軸方向成分)=Nとし、上部案内部材7と第1回転体12との静止摩擦係数をμとする。
【0041】
従って、S=(F*sin k)−(μ*F* cosk)−N ‥‥式(2)
となる。
【0042】
なお、開閉連結体10に作用する負荷は、例えば、開閉連結体10が下部ユニットケース2の下部案内部材6に沿って移動するときの摩擦力やブレーキ力、もしくは、回転体12(13、14)と両案内部材6、7の側面との接触摩擦力や回転体12(13、14)の回転を停止させるブレーキ機構などによるものである。
【0043】
本実施例では、円筒状のケース23内にぜんまいばね(渦巻きバネ)の基端を固定し、このぜんまいばねの自由端にワイヤなどの可撓性を有する紐体24の基端を連結し、このぜんまいばねに予め巻き締め方向の力を与えて、紐体24の大部分がケース23内に巻き込まれるように付勢した付勢手段を利用し、ケース23をヒンジ部4に近い側の下部ユニットケース2内に固定し、紐体24の自由端を開閉連結体10のフレーム11に連結して、開閉連結体10にヒンジ部4向かうような付勢力を与える構成とする(図2(A)及び図2(B)参照)。その他、テレスコピック型の油圧またはガスシリンダを下部ユニットケース2内に固定し、そのピストンロッドの先端をフレーム11に連結して、開閉連結体10にヒンジ部4に向かうような付勢力を与える構成としても良い。
【0044】
式(2)に式(1)を代入してSの値を求めると、
S=[b*( sink−μ*cos k)/(d*cos k)]W+
[a*mg* cosθ*( sink−μ*cos k)]/(d* cosk)−N‥‥式(3)となる。
【0045】
ここで、U=[b*( sink−μ* cosk)/(d* cosk)]とし、
V=a*mg*cosθ*U/bと示せる。U及びVは、上部ユニットケース3の
自重や第1回転体12の位置が決まると定まる定数であるから、関数SはWの一次関数となる。
【0046】
即ち、式(3)の関数は、S(W)=U*W+(V−N) ‥‥式(4)となる。
【0047】
図5のグラフに示すように、横軸にWを採り、縦軸にSを採る。そして、Wを作用させること(W≧0)で、任意の位置の開閉連結体10が閉止方向に動き始める条件(S≧0)を検討してみると、Uは正値であることが必要であり、w1=(V−N)≧0の条件を満足すべきである。Uが負であるとVも負となり上部ユニットケース3は食いついて動かない。またUが正で、w1が負であると、開閉連結体10(移動体)に常に正方向に力が掛かるため、上部ユニットケース3は手を放しても保持することができない。
【0048】
以上のように、本実施例では、上部案内部材7を下向き凸湾曲状に形成する一方、下部案内部材を水平且つ直線状に形成し、その間を開閉連結体10が移動可能となるように構成すれば、ユーザーが上部ユニットケース3の任意の個所に下向きのWという押圧力を作用させるとき、開閉連結体10が閉止方向(ヒンジ部4から離間する方向)に移動し、上記押圧力を作用させない(つまり押圧しない)時には、開閉連結体10が任意の位置で停止することができる。従って、従来のように、下部ユニットケース2に対して上部ユニットケース3を閉止する終端区間で、上部ユニットケース3の閉止方向への回動速度が急激に増大し、下部ユニットケース2に対して上部ユニットケース3が衝突して大きな異音を発生させたりすることがなく、その衝撃により前記装置本体内の部品の位置ずれ、衝突面の部材の破損などの不都合を防止することができる。
【0049】
また、押圧力Wの大きさをユーザーが加減することにより、上部ユニットケース3が閉止位置方向に閉まり回動する動きを緩めることができるという効果を奏する。
【0050】
そして、開閉連結体10は三角形状のフレーム11を有し、このフレーム11の三角形の頂部近傍に設けられた第1回転体12が上部案内部材7との接点Pで受ける力の方向がフレーム11の三角形の底辺側頂部近傍に設けられた第2回転体13と第3回転体14との間にあるように構成されているものであるので、開閉連結体10の姿勢が保持され安定して両案内部材6、7に沿って移動させることが容易となる。
【0051】
なお、上部案内部材7の下向き凸湾曲線を所定の形状に設定することにより、上部ユニットケース3の開き角度の大小に拘らず、ユーザーによる下向き押圧力Wを一定にできるようにすることもできる。
【0052】
なお、本発明では、下部ユニットケース2に対して上部ユニットケース3を開放させるには、ユーザーが上部ユニットケース3の自由端等に上向き力を作用させることで、開閉連結体10が下部案内部材6と上部案内部材7に沿ってヒンジ部4に近づくように移動し、上記上向き力の作用を中止させると、その位置で開閉連結体10が停止し、上部ユニットケース3の開き角度を保持することができる。
【0053】
図6は、下部案内部材6における下案内面のうちヒンジ部4から離間した位置に設けられた凹み部20であり、下部ユニットケース2に対する上部ユニットケース3の閉止位置において開閉連結体10が存在する位置での第3回転体14を凹み部20に下向きに嵌める。この嵌め込みにより、第2回転体13を中心に第1回転体12と第3回転体14が下向きに移動するので、閉止間際での開閉連結体10に対するX軸の負の方向への負荷が軽減され完全閉止することができる。
【0054】
図7(A)及び図7(B)に示す第2実施例では、下部ユニットケース2に上向き凸湾曲状の下部案内部材31をヒンジ部4側から開放端部側に延びるように配置し、上部ユニットケース3にはそれを閉じた状態で直線状且つ水平状の上部案内部材32をヒンジ部4側から開放端部側に延びるように配置する。そして、開閉連結体33は下向き三角形状のフレーム34を有する。フレーム34の下端には第1回転体35が回転可能に装着され、フレーム34の上辺には第2回転体36と第3回転体37とがそれぞれ回転可能に装着されている。そして、ユーザーが上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して開放する動作につれて、開閉連結体33が上下両案内部材31、32に沿って開放端部側からヒンジ部4に近づく方向に順次移動するように構成されている。また、上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して閉止する動作につれて、開閉連結体33が上下両部材31、32に沿ってヒンジ部4側から開放端部に近づく方向に順次移動するように構成されている。この閉止するときは、第1回転体35は下部案内部材31のレール溝下面に接触して転がり、第2回転体36と第3回転体37とは上部案内部材32のレール溝上面に接触して転がる。各回転体35〜37と上下両案内部材31、32の構成は第1実施例と同じである。上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して閉止した状態では、下部案内部材と上部案内部材とはその一部が、当該両案内部材の延びる方向からの投影視でユニットケースの高さ方向において重なっている。また、紐体24を有するケース23を上部ユニットケース3のヒンジ部4に近い側に固定し、紐体24の自由端をフレーム34に連結して、開閉連結体33にヒンジ部4方向への負荷を作用させている。
【0055】
この構成により、図8に示すように、上部ユニットケース3の自重mg(垂直方向)が重心Gに作用し、閉止するときには、上部ユニットケース3の自由端側等の任意の個所にて(荷重W)の力で上部ユニットケース3をユーザーが手で押下しているとする。
【0056】
そして、開閉連結体33の第2及び第3回転体36、37上部ユニットケース3を支えているものとし、これらの荷重をただ1つの第1回転体35にて支える。上向き凸湾曲状の下部案内部材31のレール溝の下案内面に第1回転体35が接触している位置(接点P)が原点OからX軸方向に所定の距離だけ離間しているものとする。開閉連結体33の第2回転体36及び第3回転体37はX軸と平行な上部案内部材32に沿って移動可能であるとする。その場合、接点PはX軸線上に位置するものとする。接点Pにおける下部案内部材31の接線TとX軸とのなす角度kとする。
【0057】
接点Pにおけるx軸の正方向の力Sとすると、S=(上部ユニットケース3の自重と荷重WとによるX軸方向成分)−(上部ユニットケース3の自重と荷重Wとによる下部案内部材31の個所での摩擦力のX軸方向成分)−(開閉連結体33に作用する負荷のX軸方向成分)となる。ここで、(開閉連結体33に作用する負荷のX軸方向成分)=Nとし、下部案内部材31と第1回転体35との静止摩擦係数をμとする。
【0058】
従って、S=(F*sin k)−(μ*F* cosk)−N となる。しかして、これは第1実施例の式(2)と同じであるから、第2実施例の構成でも、第1実施例と同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
本発明は上記の実施形態の他、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。即ち、上部案内部材や下部案内部材が直線状であるとき、上部ユニットケースが閉止状態のときに水平状である必要はなく、開放端部側に向かって下向きまたは上向きの傾斜状配置であっても良い。また、上下ユニットケースは、画像記録装置の他、電気製品や家具などの什器類の本体とその蓋体に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1画像記録装置
2下部ユニットケース
3上部ユニットケース
4ヒンジ部
6,31下部案内部材
7,32上部案内部材
11フレーム
12,35第1回転体
13,36第2回転体
14,37第3回転体
15下部案内部材のレール溝
16上部案内部材のレール溝
20凹み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ユニットケースと上部ユニットケースとを一側に設けたヒンジ部を介して上下開閉回動可能に装着し、
前記下部ユニットケースには下部案内部材を前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、
前記上部ユニットケースには上部案内部材を、前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるように備え、
前記下部案内部材と前記上部案内部材とは、その一方が凸湾曲状に形成され、他方が直線状に形成され、
前記下部案内部材と上部案内部材とに移動可能に連結される開閉連結体を有し、
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して開放する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記開放端部側から前記ヒンジ部側に順次移動し、
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止する動作につれて、前記開閉連結体が前記上下両部材に沿って前記ヒンジ部側から前記開放端部側に順次移動するように構成されていることを特徴とする上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項2】
前記下部案内部材は直線状であり、前記上部案内部材は下向き凸湾曲状に形成され、
前記開閉連結体は、1つの回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられ、2つの回転体が前記下部案内部材に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項3】
前記上部案内部材は直線状であり、前記下部案内部材は上向き凸湾曲状に形成され、
前記開閉連結体は、1つの回転体が前記下部案内部材に沿って移動可能に設けられ、2つの回転体が前記上部案内部材に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項4】
前記開閉連結体は、前記3つの回転体の軸中心を結ぶ形状が三角形に形成され、
前記1つの回転体が前記上部案内部材との接点で受ける力の方向が前記2つの回転体の間にあるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項5】
前記1つの回転体の上側部位が前記上部案内部材と接触する位置が、前記1つの回転体の軸中心よりも前記ヒンジ部に近い側に位置するように、前記上部案内部材が形成されていることを特徴とする請求項2または4に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項6】
前記開閉連結体が前記上下部案内部材のいずれの位置にあるときでも、前記上部ユニットケースの自重及びこの上部ユニットケースに付加される押圧力の合力の前記1つの回転体位置での水平方向成分の大きさは、前記押圧力の鉛直成分と前記開閉連結体の自重による水平方向の摩擦力の大きさと、前記開閉連結体に作用する抵抗力の水平成分の大きさとの和より大きいかまたは等しくなるように設定され、且つ前記押圧力を解除すると、前記上部ユニットケースの開閉姿勢が保持されるように構成したことを特徴とする請求項2または4または5のいずれかに記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項7】
前記上部ユニットケースを前記下部ユニットケースに対して閉止終了状態となる時の前記開閉連結体における前記2つの回転体のうちヒンジ部から遠い側の回転体が前記下部または上部案内部材の凹み部に嵌まり停止するように構成されていることを特徴とする請求項2また3に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項8】
前記上下両案内部材には、それぞれ前記各回転体がその中心軸方向に脱落不能とするガード辺が形成されていることを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項9】
前記上下ユニットケースの閉止状態において、前記下部案内部材と上部案内部材とはその一部が、当該両案内部材の延びる方向からの投影視でユニットケースの高さ方向において重なることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の上部ユニットケースの開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−227480(P2011−227480A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67255(P2011−67255)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】