説明

下屋の屋根と外壁パネルとの境界部の止水構造及びその形成方法

【課題】下屋の屋根と外壁パネルとの境界部を防水シートで施工容易に止水することができ、しかも、しっかりとした止水状態を形成することができる、止水構造及び方法を提供する。
【解決手段】隣り合う外壁パネル3,3の各下端側の背面側から下屋の屋根1側に垂れ下げられた防水シート4,4同士が、外壁パネル3の下端背面側の立ち上がり部分を含めて粘着テープ5で止水状態に接合されている。接合には、上下のガイド板7,8と剥がし操作部6a付き離型紙6を用いるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下屋の屋根と外壁パネルとの境界部の止水構造及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下屋の屋根と外壁パネルとの境界部を止水金物を用いて止水する構造は、従来より種々提案されているが、この境界部を防水シートで止水する技術については、未だ、充分な技術が提供されていない状況にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、下屋の屋根と外壁パネルとの境界部を防水シートで施工容易に止水することができ、しかも、しっかりとした止水状態を形成することができる、止水構造及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、隣り合う外壁パネルの各下端側の背面側から下屋の屋根側に垂れ下げられた防水シート同士が、外壁パネルの下端背面側の立ち上がり部分を含めて粘着テープで止水状態に接合されていることを特徴とする下屋の屋根と外壁パネルとの境界部の止水構造によって解決される。
【0005】
この止水構造では、防水シートが、隣り合う外壁パネルの各下端側の背面側から下屋の屋根側に垂れ下げられて、外壁パネル単位で備えられているので、防水シートを予め外壁パネルに備えさせることで、外壁パネルの設置と防水シートの設置を同時遂行することができ、外壁パネル間を除く外壁一般部への防水シートの設置を施工容易に行うことができる。
【0006】
しかも、外壁パネル内の一般部は、上記の防水シートで止水され、また、外壁パネル間については、隣り合う外壁パネルの防水シート同士が、外壁パネルの下端背面側の立ち上がり部分を含めて粘着テープで止水状態に接合されているので、一般部であるか、外壁パネル間であるかを問わず、しっかりとした止水状態を得ることができる。
【0007】
上記の止水構造を形成する方法として、
片面に防水シート接合用の粘着面を備えた所定の長さの粘着テープと、
該粘着テープの粘着面を下屋屋根側である基端部から外壁パネル側である先端部にわたってカバーすると共に、先端側で折り返されて基端側に延びる剥がし操作部を備える離型紙と、
下屋の屋根の側から外壁パネルの下端背面側に差込み可能で防水シートの背面側に設置される下ガイド板と、
下屋の屋根の側から外壁パネルの下端背面側に差込み可能で防水シートの正面側に設置される上ガイド板と、
を用い、
下ガイド板の正面側と上ガイド板の背面側のいずれか一方又は両方に粘着テープの背面部を弱接合状態に取り付けた後、
上下のガイド板を下屋の屋根の側から外壁パネルの下端背面側に差し込んでガイド板と防水シート間との間に粘着テープを両防水シートにわたすように設置し、しかる後、
下屋の屋根の側から剥がし操作部を引き、離型紙を粘着テープから剥がして、上下のガイド板で粘着テープの粘着面を両防水シートに粘着させると共に、上下ガイド板を粘着テープとの弱接合状態を解除して下屋の屋根の側に引き抜くことを特徴とする形成方法を用いるとよい。
【0008】
この方法では、腰のあるガイド板の使用によって、粘着テープを、屋外側から容易に、外壁パネルの下端背面側の立ち上がり部分に誘導して設置することができる。また、粘着テープの粘着面をカバーする離型紙は、先端側で折り返されて基端側に延びる剥がし操作部を備えているので、該剥がし操作部を屋外側から引いていくことにより、離型紙を粘着テープから容易に剥がし取ることができる。そして、ガイド板の腰を利用して、屋外側からの操作で、粘着テープの粘着面を容易に両防水シートに粘着させることができる。こうして、各外壁パネルに備えられた腰のない防水シート同士を、粘着テープで、屋外からのアクセスによって施工容易に接合することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のとおりのものであるから、下屋の屋根と外壁パネルとの境界部を防水シートで施工容易に止水することができ、しかも、しっかりとした止水状態を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に示す実施形態の止水構造において、1は下屋の屋根、2は下屋上の外壁であり、外壁2は、図1(イ)に示すように、横方向に並べられた複数の外壁パネル3…によって構成されている。そして、各外壁パネル3には、下端側の背面側から下屋の屋根1側に垂れ下げられた防水シート4が備えられており、隣り合う外壁パネル3,3の防水シート4,4同士が、図1(ロ)(ハ)に示すように、外壁パネル3の下端背面側の立ち上がり部分を含めて両面から粘着テープ5,5で止水状態に接合されている。
【0012】
防水シート4…同士の接合は、次のようにして行うことができる。即ち、粘着テープとして、図2に示すように、片面に接合用の粘着面5aを備えた所定の長さの粘着テープ5、例えばブチルテープを用い、粘着テープ5の粘着面5aには離型紙6を付けておく。
【0013】
離型紙6は、粘着テープ5の粘着面5aを下屋屋根側である基端部から外壁パネル側である先端部にわたってカバーすると共に、先端側で折り返されて基端側に延びる剥がし操作部6aを備えたものを用いる。
【0014】
また、上下のガイド板7,8を用意する。これらガイド板7,8は、下屋の屋根1の側、即ち屋外から外壁パネル3の下端背面側に差込み可能な、対応する湾曲円弧状をしており、上ガイド板7の背面側、及び、下ガイド板8の正面側には、弱粘着部9が備えられている。また、上下のガイド板7,8は、重ね合わせ状態にして、上ガイド板7の基端部に明けられた複数の孔10…に、下ガイド板8の基端部の突起11…を嵌合させることで、その重ね合わせ状態のまま一体的に扱うことができるようになされている。
【0015】
上記の粘着接合関係品を用い、上記の離型紙6を付けた粘着テープ5の背面を上ガイド板7の背面側に沿わせて該粘着テープを弱接着状態に上ガイド板に取り付けると共に、下ガイド板8の正面側にも同じ離型紙6を付けた粘着テープ5の背面を弱接着状態に取り付けた状態にする。
【0016】
次いで、図3(イ)(ロ)に示すように、屋外から、下ガイド板8を、下屋の屋根1と外壁パネル3の間を通じて外壁パネル3の下端背面側の更に防水シート4の背面側に差し込んで、下ガイド板8と、隣り合う防水シート4間との間に、両防水シートにわたすように、粘着テープ5を配置する。
【0017】
また、図3(ハ)及び図4(ニ)に示すように、上ガイド板7も、下屋の屋根1と外壁パネル3の間を通じて外壁パネル3の下端背面側の防水シート4の正面側に差し込んで、上ガイド板7と、隣り合う防水シート4間との間に、両防水シートにわたすように、粘着テープ5を配置する。
【0018】
各粘着テープ5,5は、腰のある上下のガイド板7,8にうまい具合に誘導されて、外壁パネル3の下端背面側の所定の位置に、容易に設置することができる。この配置状態において、上下のガイド板7,8は、基端側の孔10…と突起11…とを嵌合させておくようにするとよい。
【0019】
しかる後、図4(ニ)(ホ)に示すように、離型紙6,6の剥がし操作部6a,6aを屋外側に引いて、離型紙6,6を剥がし取り、粘着テープ5,5の粘着面5aを防水シートに直接対向させる。離型紙6の剥がし操作部6aは粘着テープ5の先端側で折り返されて基端側に延びるように備えられているので、剥がし操作部6a,6aを屋外側から引いていくことにより、離型紙6,6を粘着テープ5,5から容易に剥がし取ることができる。また、上下のガイド板7,8は孔10…と突起11…の嵌合により一体化されているので、離型紙6の取外しによって、上下のガイド板7,8の相対的位置関係に狂いを生じることもない。
【0020】
離型紙6,6の取外し後は、上下のガイド板7,8の腰を利用して、粘着テープ5,5を防水シート4に粘着することができる。上下のガイド板7,8は、粘着テープ5,5を防水シート4に粘着させた後に、図4(ホ)(ヘ)に示すように、屋外側に抜き取るようにしてもよい。屋外側に抜き取るようにしながら粘着テープ5,5を防水シート4に粘着させるようにしてもよい。
【0021】
こうして、図4(ヘ)及び図1(ハ)に示すように、隣り合う外壁パネル3,3に備えられた防水シート4,4同士を、容易に、外壁パネル3の下端背面側の立ち上がり部分を含めて両面から粘着テープ5,5で止水状態に接合した状態にすることができる。
【0022】
上記の止水構造によれば、防水シート4…が外壁パネル3…単位で備えられているので、防水シート4を予め外壁パネル3に備えさせることで、外壁パネル3の設置と防水シート4の設置を同時遂行することができ、外壁パネル3,3間を除く外壁一般部への防水シート4…の設置を施工容易に行うことができる。
【0023】
しかも、外壁パネル3内の一般部は、外壁パネル3に備えられた防水シート4で止水され、また、外壁パネル3,3間については、隣り合う外壁パネル3,3の防水シート4,4同士が、外壁パネル3の下端背面側の立ち上がり部分を含めて粘着テープ5,5で止水状態に接合されているので、一般部であるか、外壁パネル3,3間であるかを問わず、しっかりとした止水状態を得ることができる。
【0024】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、隣り合う防水シートを両面から粘着テープで接合した場合を示しているが、片面のみを粘着テープで接合するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の止水構造を示すもので、図(イ)はテープ粘着前の状態を示す斜視図、図(ロ)はテープ粘着後の状態を示す斜視図、図(ハ)は断面平面図である。
【図2】図(イ−1)及び図(ロ−1)はそれぞれ、ガイド板と粘着テープと離型紙を分離状態にして示す斜視図、図(イ−2)及び図(ロ−2)はそれぞれこれらを組み合わせた状態の斜視図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)はそれぞれ、図4(ニ)〜(ヘ)とともに、隣り合う防水シート同士を接合する方法を順次に示す側面図である。
【図4】図(ニ)〜図(ヘ)はそれぞれ、図3(イ)〜(ハ)とともに、隣り合う防水シート同士を接合する方法を順次に示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…下屋の屋根
3…外壁パネル
4…防水シート
5…粘着テープ
5a…粘着面
6…離型紙
6a…剥がし操作部
7…上ガイド板
8…下ガイド板
9…弱粘着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う外壁パネルの各下端側の背面側から下屋の屋根側に垂れ下げられた防水シート同士が、外壁パネルの下端背面側の立ち上がり部分を含めて粘着テープで止水状態に接合されていることを特徴とする下屋の屋根と外壁パネルとの境界部の止水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の止水構造を形成する方法であって、
片面に防水シート接合用の粘着面を備えた所定の長さの粘着テープと、
該粘着テープの粘着面を下屋屋根側である基端部から外壁パネル側である先端部にわたってカバーすると共に、先端側で折り返されて基端側に延びる剥がし操作部を備える離型紙と、
下屋の屋根の側から外壁パネルの下端背面側に差込み可能で防水シートの背面側に設置される下ガイド板と、
下屋の屋根の側から外壁パネルの下端背面側に差込み可能で防水シートの正面側に設置される上ガイド板と、
を用い、
下ガイド板の正面側と上ガイド板の背面側のいずれか一方又は両方に粘着テープの背面部を弱接合状態に取り付けた後、
上下のガイド板を下屋の屋根の側から外壁パネルの下端背面側に差し込んでガイド板と、隣り合う防水シート間との間に粘着テープを両防水シートにわたすように設置し、しかる後、
下屋の屋根の側から剥がし操作部を引き、離型紙を粘着テープから剥がして、上下のガイド板で粘着テープの粘着面を両防水シートに粘着させると共に、上下ガイド板を粘着テープとの弱接合状態を解除して下屋の屋根の側に引き抜くことを特徴とする形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−9283(P2006−9283A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184318(P2004−184318)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】