説明

不均一なエチレン/α−オレフィンインターポリマーから作製されるフィルム

少なくとも2つの層を含み、第1の層が、エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンとの第1のインターポリマーを含む多層フィルムであって、第1のインターポリマーが、0.925g/cm未満の密度、並びに、平均M、及び、該インターポリマーと、高結晶性画分との間における谷温度(Thc)を有し、その結果、ATREFから得られるポリマー全体の平均Mによって除される、ATREFから得られるThcを超える画分についての平均M(Mhc/Mhp)が約1.95未満となること、かつ、第1のインターポリマーが60%未満のCDBIを有すること、及び、少なくとも1つの他の第2の層が、エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンとの第2のインターポリマーを含み、但し、第2のインターポリマーは0.925g/cm〜0.965g/cmの密度を有することにおいて特徴づけられる、多層フィルムが開示される。エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンとのインターポリマーはまた、高密度(HD)画分及び総合密度を有し、その結果、xがグラム/立方センチメートルの単位での密度である場合、%HD画分が、0.0168x−29.636x+13036よりも小さくなるとして特徴づけられ得る。本発明の新規な多層フィルムを含む二次加工品(例えば、スタンド・アップ・パウチ(stand up pouch)など)もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国特許出願第61/165,065号(2009年3月31日出願)の優先権を主張する。
【0002】
高い清澄性、大きい剛性及び大きい落槍耐衝撃性を有するフィルムが、包装業界では非常に求められている。清澄性は審美的特性をもたらし、大きい剛性及び大きい落槍特性はダウンゲージ(down-gauge)特性を与える。
【0003】
改善された審美的(光学)特性及び誤用防止(落槍)特性を有するフィルムを作製することができるエチレンα−オレフィンコポリマー樹脂、又は、これらの樹脂を含むフィルム構造物は、最終使用者に対する価値を作り出している。不均一なエチレンα−オレフィンコポリマーは高結晶性画分(厚い結晶)及びコポリマー画分(薄い結晶)の両方を有する。
【背景技術】
【0004】
フィルムの光学特性を、表面光沢、曇り及び清澄性に関して定義することができる。曇りは内部曇り(本体散乱)及び外部曇り(表面散乱)に依存し得る。外部曇り及び内部曇りはともに、フィルムを作製するために使用される樹脂の高結晶性画分含有量及び高結晶性画分分子量の関数であり得る。高結晶性画分が、光を散乱する厚い結晶から作製され得る。従って、高結晶性画分含有量における増大はフィルムの曇りを増大させ、その光学特性を損なう。高結晶性画分の分子量を低下させることにより、高結晶性画分における結晶の厚さを大きくすることができる。高結晶性画分の結晶が厚くなるほど、フィルムの光学特性が悪くなる。従って、高結晶性画分の低下した含有量及び増大した分子量が、改善された光学特性のためには望ましいと考えられ、だが、分子量が大きくなりすぎると、溶融弾性が大きいことに起因する溶融破壊の問題が生じ得る。同様にまた、改善された光学特性のために高結晶性画分の分子量を増大させると、フィルムの落槍特性が損なわれることがある。コポリマー画分のより大きい分子量が、より大きいフィルム落槍のためには望ましい。特定の樹脂メルトインデックス(MI又はI)については、改善された光学特性のために高結晶性画分の分子量を増大させることは、MIが一定で保たれるように、コポリマー画分の分子量を低下させることによってバランスさせなければならない。コポリマー分子量におけるこの低下は落槍特性を損なうことになる。従って、最適な高結晶性画分分子量が、バランスされた落槍特性及び光学特性のためには望ましい。高結晶性画分に由来する厚い結晶は強度をフィルムに与え、これにより、その引裂き特性を改善する。従って、光学特性を改善するために高結晶性画分含有量を低下させることは、フィルムの引裂きを損なうことがある。引裂き特性及び光学特性のバランスを達成するためには、高結晶性画分の最適な含有量が望ましい。
【0005】
フィルムの表面曇りはエチレンα−オレフィンコポリマーの分子量分布に依存し得る。非常に広い分子量分布は通常の場合には樹脂の溶融弾性を増大させ、これにより、表面の溶融破壊を引き起こし、一方、非常に狭い分子量分布は、表面の溶融破壊を引き起こすダイでの加工問題を生じさせ得る。表面の溶融破壊の存在はフィルムの光学特性を損なうので、最適な分子量分布もまた、改善された光学特性のためには要求される。
【0006】
フィルムの落槍特性は分子量分布及びコポリマー画分含有量に依存し得る。分子量分布が狭くなるほど、また、コポリマー画分含有量が大きくなるほど、フィルムの落槍特性が大きくなる。分子量分布が狭くなりすぎると、光学特性及び加工性(フィルムの二次加工)が損なわれることがあり、従って、最適な分子量分布が、加工性、落槍特性及び光学特性のバランスのためには要求される。また、コポリマー画分含有量における増大が、高結晶性画分含有量を犠牲にして達成されることがあり、これはフィルムの引裂きを損なうことがある。従って、加工性、落槍特性、引裂き特性及び光学特性の良好なバランスを達成するためには、分子量分布並びに高結晶性画分含有量及びコポリマー画分含有量の特定の組合せが要求される。
【0007】
フィルムの剛性が樹脂の密度に依存する。樹脂密度が大きくなるほど、結晶性画分が多くなり、それに従って、フィルムの剛性が大きくなる。しかしながら、前記で議論されたように、大きい結晶性画分はフィルムの光学特性及び落槍耐衝撃性を損なうことになり、従って、フィルムの剛性及びフィルムの光学特性/落槍耐衝撃性は、互いに相容れない特性である。
【0008】
本発明は、分子量分布並びに高結晶性画分及びコポリマー画分の含有量及び分子量のこのような特定の組合せを有する特定の樹脂ファミリーから作製される多層フィルムである。密度及びメルトインデックスが同等である場合、樹脂特性のこの組合せは、改善された光学特性、剛性、落槍特性、引裂き及び加工性を有するフィルムをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態において、少なくとも2つの層を含み、第1の層が、エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンとの第1のインターポリマーを含む多層フィルムであって、第1のインターポリマーが、0.925g/cm未満の密度、並びに、平均M、及び、該インターポリマーと高結晶性画分との間における谷温度(Thc)を有し、その結果、ATREFから得られるポリマー全体の平均Mによって除される、ATREFから得られるThcを超える画分についての平均M(Mhc/Mhp)が約1.95未満となり、好ましくは1.7未満となること、かつ、第1のインターポリマーが60%未満のCDBIを有すること、及び、少なくとも1つの他の第2の層が、エチレンと、必要な場合には少なくとも1つのα−オレフィンとの第2のインターポリマーを含み、但し、第2のインターポリマーは0.925g/cm〜0.965g/cmの密度を有することことにおいて特徴づけられる多層フィルム、好ましくは、前記第1のインターポリマーが不均一に分岐する多層フィルム、同様に好ましくは、前記第1のインターポリマーが55%未満のCDBIを有する多層フィルムが特許請求される。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンとの第1のインターポリマーを含む少なくとも1つの層で、第1のインターポリマーが0.925g/cm未満の密度を有すること、並びに、高密度(HD)画分及び総合密度を有し、その結果、xがグラム/立方センチメートルの単位での総合密度である場合、%HD画分が、0.0168x−29.636x+13036よりも小さくなるとして特徴づけられることにおいて特徴づけられる少なくとも1つの層と、エチレンと、必要な場合には少なくとも1つのα−オレフィンとの第2のインターポリマーを含む少なくとも1つの他の層で、第2のインターポリマーが0.925g/cm〜0.965g/cmの密度を有する少なくとも1つの他の層とを含むフィルムである。
【0012】
どちらの実施形態においても、フィルムは、好ましくは、スキンA及びスキンBが同じエチレンインターポリマーを含むスキンA層/コア層/スキンB層、より好ましくは、スキンA及びスキンBがそれぞれ、上記の2つの実施形態において記載される第1のインターポリマーを含むスキンA層/コア層/スキンB層とすることができる。
【0013】
どちらの実施形態においてもまた、120ミクロンのフィルムは、ASTM D1003に従って測定される16パーセント未満の曇りを、とりわけ、少なくとも250グラムの、ASTM D1709を使用して測定される落槍強度(B)、並びに、少なくとも240MPaの、ASTM D882に従って測定される2パーセント割線モジュラス((MD+CD)/2)、並びに、MD方向及びCD方向の両方での少なくとも45Mpaの、ASTM D882に従って測定される極限引張り強さとの組合せで有することができる。
【0014】
どちらの実施形態でもフィルムはさらに、少なくとも1つの他の天然ポリマー又は合成ポリマーを含むことができ、この場合、好ましくは、合成ポリマーは低密度ポリエチレンである。
【0015】
好ましくは、第1のインターポリマーは約0.1g/10分〜約10g/10分のメルトインデックスを含み、及び/又は、約0.922g/cm未満の総合密度を含む。
【0016】
同様に好ましくは、第1のインターポリマーは、1000個のC原子あたり1未満の長鎖分岐、及び/又は、約5未満の分子量分布(M/M)を含む。
【0017】
上記で記載されるフィルムを含む二次加工品(例えば、スタンド・アップ・パウチ(stand up pouch)など)もまた、本発明の実施形態の範囲内である。
【0018】
好ましくは、第2のインターポリマーは約0.1g/10分〜約10g/10分のメルトインデックスを含み、及び/又は、0.925g/cmよりも大きい総合密度を含む。
【0019】
同様に好ましくは、第2のインターポリマーは、大きいMWを高結晶性画分において有する不均一なLLDPE樹脂又はHDPE樹脂を含む。
【0020】
同様に好ましくは、第2のインターポリマーは、1000個のC原子あたり1未満の長鎖分岐、及び/又は、約5未満の分子量分布(M/M)を有する。
【0021】
上記で記載されるフィルムを含む二次加工品(例えば、スタンド・アップ・パウチなど)もまた、本発明の実施形態の範囲内である。
【0022】
第1のインターポリマーが少なくとも5重量%のゲルに対して少なくとも部分的に架橋されている上記で記載されるフィルム実施形態もまた、本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の樹脂例1及び比較用の樹脂例1についてATREFから得られる短鎖分岐分布及びlog Mvのデータをプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
剛性、加工性、落槍特性、引張り特性及び光学特性のバランスが、分子量分布並びに高結晶性画分含有量及びコポリマー画分含有量の特有の組合せを有する樹脂を使用することによって達成された。樹脂特徴及びフィルム特性の詳細が、表1、図1、表2及び表3に示される。高密度画分含有量が著しく低下し、コポリマー画分の含有量が増大した。ポリマー全体の粘度平均分子量に対する高結晶性画分の粘度平均分子量の比率が低下した。このことは高結晶性画分のより低い分子量を示している。ポリマー全体の粘度平均分子量に対するコポリマー画分の粘度平均分子量の比率が増大した。このことはコポリマー画分のより大きい分子量を示している。樹脂特徴におけるこれらの違いが、リアクター温度を約160℃〜約180℃(とりわけ、175℃)に下げ、かつ、Al/Tiモル比を約1:1から約5:1に下げ、とりわけ、1:1から約2.5:1に下げることによって達成された。
【0025】
本発明の樹脂から作製されるフィルムは、分子的特徴の特有の組合せを有するので、著しく改善された落槍特性及び光学特性を、MD引裂き及び加工性における犠牲を何ら伴うことなく有した。
【0026】
本発明の樹脂は、光学特性及び落槍特性における改善が、フィルムの二次加工の期間中にフィルムの引裂き特性及び加工性を犠牲にすることなく要求される用途のために使用することができる。
【0027】
低いリアクター温度は、分子量分布を狭くするために有用である。175℃のリアクター温度は、狭い分子量分布を有する製造物を、製造生産量(lb/hr)を著しく低下させることなくもたらした。
【0028】
温度における著しいさらなる低下は分子量分布をさらに狭くし得るが、生産量を著しく低下させる可能性があり、また、製造物に、樹脂の加工性(フィルムの二次加工)を損なうことを生じさせる可能性もある。
【0029】
低いAl/Ti比率は、分子量分布を狭くするために有用であり、また、高結晶性画分を減らし、かつ、コポリマー画分を増やすためにも有用である。3.0のTi/Mg比率を有するHEC−3触媒については、1.5:1のAl/Ti比率は、著しい影響をリアクターの安定性に及ぼすことなく、狭い分子量分布、より少ない高結晶性画分及びより多いコポリマー画分を有する製造物をもたらした。
【0030】
好ましくは、リアクター温度は約160℃〜約180℃である。
【0031】
好ましくは、アルミニウム原子対金属原子(好ましくはAl/Ti)の比率は約1:1〜約5:1である。
【0032】
開示されたエチレン性ポリマーのメルトインデックスは、ASTM1238−04(2.16kg及び190℃)によって測定される場合、約0.01g/10分〜約1000g/10分であり得る。
【0033】
エチレン系ポリマー
【0034】
好適なエチレン系ポリマーをチーグラー・ナッタ触媒により調製することができる。線状エチレン系ポリマーの例には、高密度ポリエチレン(HDPE)及び線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれる。好適なポリオレフィンには、エチレン/ジエンインターポリマー、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、エチレンホモポリマー及びそれらのブレンド混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
第2のインターポリマーのための好適な不均一線状エチレン系インターポリマーには、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれる。例えば、チーグラー・ナッタ触媒を使用して製造されるいくつかのインターポリマーは、約0.925g/cm〜約0.94g/cmの密度を有し、かつ、ASTM1238−04(2.16kg及び190℃)によって測定される場合、約0.01g/10分〜約1,000g/10分のメルトインデックス(I)を有する。好ましくは、メルトインデックス(I)は約0.1g/10分〜約50g/10分が可能であり、かつ、密度は0.925g/cm3超が可能である。不均一線状エチレン系ポリマーは約3.5〜約5の分子量分布(M/M)を有することができる。
【0036】
線状エチレン系ポリマーは、少なくとも50モルパーセントの重合したエチレンモノマーがポリマーに存在する限り、1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーに由来するユニットを含むことができる。
【0037】
高密度ポリエチレン(HDPE)もまた、第2のインターポリマーのために好適であり、これは密度を約0.94g/cm〜約0.97g/cmの範囲に有することができる。HDPEは典型的には、エチレンのホモポリマー、又は、エチレンと、低いレベルの1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーとのインターポリマーである。HDPEは、エチレンと、1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーとの様々なコポリマーと比較して、比較的少ない分岐鎖を含有する。HDPEは、1つ又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来するユニットの5mol%未満から構成され得る。
【0038】
線状エチレン系ポリマー、例えば、線状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレン(ULDPE)などは、結晶化度が低い、高度に分岐した従来のエチレン系ポリマー(例えば、LDPEなど)とは対照的に、長鎖分岐の非存在によって特徴づけられる。不均一線状エチレン系ポリマー(例えば、LLDPEなど)を、様々なプロセスによって、例えば、米国特許第4,076,698号(Andersonら)に開示されるプロセスなどによって、チーグラー・ナッタ触媒の存在下におけるエチレン及び1つ又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーの溶液重合、スラリー重合又は気相重合により調製することができる。これらのクラスの材料及びそれらの調製方法の両方の関連した議論が米国特許第4,950,541号(Taborら)に見出される。LLDPEを作製するための他の特許及び刊行物には、国際公開WO2008/0287634、米国特許第4198315号、米国特許第5487938号、欧州特許第0891381号及び米国特許第5977251号が含まれる。
【0039】
α−オレフィンコモノマーは、例えば、3個〜20個の炭素原子を有することができる。好ましくは、α−オレフィンコモノマーは3個〜8個の炭素原子を有することができる。例示的なα−オレフィンコモノマーには、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン及び1−エイコセンが含まれるが、これらに限定されない。インターポリマーである線状エチレン系ポリマーの市販例には、ATTANE(商標)超低密度(Ultral Low Density)線状ポリエチレンコポリマー、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂、及び、FLEXOMER(商標)超低密度(Very Low Density)ポリエチレンが含まれる(これらのすべてが、The Dow Chemical Companyから入手可能である)。
【0040】
さらなる態様において、エチレンホモポリマー(すなわち、コモノマーを何ら含有しない、従って、短鎖分岐を全く含有しない高密度エチレンホモポリマー)に関連して使用されるとき、用語「均一(な)エチレンポリマー」又は用語「均一(な)線状エチレンポリマー」は、そのようなポリマーを記載するために使用されることがある。
【0041】
第1のインターポリマーのために好適な本明細書中に記載されるエチレン系ポリマーは、短鎖分岐を有し、かつ、比較的低い組成分布幅指数(CDBI)によって特徴づけられる比較的不均質(又は不均一)なエチレンポリマーである。すなわち、そのようなエチレンポリマーは約60パーセント以下のCDBIを有し、好ましくは約55パーセント以下のCDBIを有し、より好ましくは約50パーセント以下のCDBIを有し、しかし、通常、測定可能な高密度(結晶性)ポリマー画分を含む。
【0042】
CDBIは、コモノマー含有量をメジアン総モルコモノマー含有量の50パーセント以内に有するポリマー分子の重量パーセントとして定義され、ベルヌーイ分布について予想されるコモノマー分布に対するポリマーにおけるコモノマー分布の比較を表す。ポリオレフィンのCDBIは便宜的には、当分野で公知である技術から得られるデータから計算することができ、例えば、昇温溶出分画化(「TREF」)(例えば、Wildら、Journal of Polymer Science, Poly. Phys. Ed.、第20巻、441(1982);L.D.Cady、「The Role of Comonomer Type and Distribution in LLDPE Product Performance」、SPE Regional Technical Conference(Quaker Square Hilton、Akron、OH)、107〜119(1985年10月1日〜2日)によって、又は、米国特許第4,798,081号(Hazlittら)及び米国特許第5,008,204号(Stehling)に記載されるような昇温溶出分画化)などから得られるデータから計算することができる。しかしながら、TREF技術では、パージ量(purge quantity)がCDBIの計算において含まれない。より好ましくは、ポリマーのコモノマー分布が、例えば、米国特許第5,292,845号(Kawasakiら)に記載され、また、J.C.Randallによって、Rev. Macromol. Chem. Phys.、C29、201〜317に記載される技術に従って13C−NMR分析を使用して求められる。
【0043】
長鎖分岐の存在を、13C核磁気共鳴(NMR)分光法を使用することによってエチレンホモポリマーにおいて求めることができ、また、長鎖分岐の存在が、Randall(Rev. Macromol. Chem. Phys.、C29、V.2&3、285〜297)によって記載される方法を使用して定量化される。エチレン/1−オクテンインターポリマーを含めて、様々なエチレンポリマーにおける長鎖分岐の存在を求めるために有用な他の公知な技術が存在する。2つのそのような例示的な方法が、小角度レーザー光散乱検出器とつながれるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−LALLS)、及び、示差粘度計検出器とつながれるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−DV)である。これらの技術を長鎖分岐の検出のために使用すること、及び、その根底となる理論が、文献において十分に記載されている。例えば、Zimm,G.H.及びStockmayer,W.H.、J. Chem. Phys.、17、1301(1949)、並びに、Rudin,A.、Modern Methods of Polymer Characterization、John Wiley&Sons、New York(1991)、103〜112を参照のこと。
【0044】
用語「不均一(な)」及び用語「不均一(に)分岐(した)」は、エチレンポリマーが、様々なエチレン対コモノマーモル比を有するインターポリマー分子の混合物として特徴づけられ得ることを意味する。不均一分岐線状エチレンポリマーが、The Dow Chemical Companyから、DOWLEX(商標)線状低密度ポリエチレンとして、また、ATTANE(商標)超低密度ポリエチレン樹脂として入手可能である。不均一分岐線状エチレンポリマーを、様々なプロセスによって、例えば、米国特許第4,076,698号(Andersonら)に開示されるプロセスなどによって、チーグラー・ナッタ触媒の存在下におけるエチレン及び1つ又はそれ以上の随意的なα−オレフィンコモノマーの溶液重合、スラリー重合又は気相重合により調製することができる。不均一分岐エチレンポリマーは、約3〜約5の分子量分布(Mw/Mn)を有するとして典型的に特徴づけられ、そして、そのようなものとして、組成上の短鎖分岐分布及び分子量分布の両方に関して、実質的線状エチレンポリマー及び均一分岐線状エチレンポリマーとは異なる。
【0045】
高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー
本明細書中の新規な不均一エチレンポリマーとブレンド混合することができる高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)など)を、エチレンモノマーを重合するためにフリーラジカル化学を使用する高圧プロセスを使用して作製することができる。典型的なLDPEポリマー密度は約0.91g/cm〜約0.94g/cmである。低密度ポリエチレンは約0.01g/10分〜約150g/10分のメルトインデックス(I)を有することができる。高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー(例えば、LDPEなど)もまた、「高圧エチレンポリマー」と呼ぶことができる。これは、このポリマーが、フリーラジカル開始剤(例えば、過酸化物など)の使用を伴って、13,000psigを超える圧力でのオートクレーブリアクター又は管状リアクターにおいて部分的又は完全にホモ重合又は共重合されることを意味するからである(例えば、米国特許第4,599,392号(McKinneyら)を参照のこと)。このプロセスは、長鎖分岐を含めて、かなりの分岐を有するポリマーをもたらす。
【0046】
高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーは典型的には、エチレンのホモポリマーである;しかしながら、ポリマーは、少なくとも50モルパーセントの重合したエチレンモノマーがポリマーに存在する限り、1つ又はそれ以上のα−オレフィンコポリマーに由来するユニットを含むことができる。
【0047】
高度に分岐したエチレン系ポリマーを形成する際に使用することができるコモノマーには、α−オレフィンコモノマー、典型的には、最大でも20個の炭素原子を有するα−オレフィンコモノマーが含まれるが、これらに限定されない。例えば、α−オレフィンコモノマーは、例えば、3個〜10個の炭素原子を有することができる;又は、代替において、α−オレフィンコモノマーは、例えば、3個〜8個の炭素原子を有することができる。例示的なα−オレフィンコモノマーには、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン及び4−メチル−1−ペンテンが含まれるが、これらに限定されない。代替において、例示的なコモノマーには、α,β−不飽和C〜Cカルボン酸、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸;α,β−不飽和C〜Cカルボン酸の誘導体、例えば、不飽和C〜C15カルボン酸エステル(具体的にはC〜Cアルカノールのエステル)又は無水物、具体的には、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、n−ブチルメタクリラート、ter−ブチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、tert−ブチルアクリラート、メタクリル酸無水物、マレイン酸無水物及びイタコン酸無水物が含まれるが、これらに限定されない。別の代替において、例示的なコモノマーには、ビニルカルボキシラート、例えば、ビニルアセタートが含まれるが、これに限定されない。別の代替において、例示的なコモノマーには、n−ブチルアクリラート、アクリル酸及びメタクリル酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
プロセス
本発明において使用される第1のエチレン系インターポリマーを製造するために、溶液相重合プロセスを使用することができる。典型的には、そのようなプロセスは、約150℃〜約300℃の温度で、好ましくは約160℃〜約180℃の温度で、かつ、約30psi〜約1000psiの圧力で、好ましくは約30psi〜約750psiの圧力で、十分に撹拌されたリアクターにおいて、例えば、ループリアクター又は球型リアクターなどにおいて行われる。そのようなプロセスにおける滞留時間は約2分〜約20分であり、好ましくは約10分〜約20分である。エチレン、溶媒、触媒、及び、必要な場合には1つ又はそれ以上のコモノマーがリアクターに連続的に供給される。これらの実施形態における例示的な触媒には、チーグラー・ナッタ触媒が含まれるが、これに限定されない。例示的な溶媒には、イソパラフィンが含まれるが、これに限定されない。例えば、そのような溶媒が、ISOPAR Eの名称で市販されている(ExxonMobil Chemical Co.、Houston、Texas)。その後、エチレン系ポリマー及び溶媒の得られた混合物がリアクターから取り出され、ポリマーが単離される。溶媒は典型的には、溶媒回収ユニット(すなわち、熱交換器及び蒸気液体セパレータードラム)により回収され、再循環されて重合システムに戻される。
【0049】
高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーを製造するために、高圧でのフリーラジカル開始重合プロセスが典型的に使用される。2つの異なる高圧フリーラジカル開始重合プロセスタイプが公知である。第1のタイプでは、1つ又はそれ以上の反応域を有する撹拌型オートクレーブ容器が使用される。このオートクレーブリアクターは通常、開始剤供給又はモノマー供給又は両方のためのいくつかの注入点を有する。第2のタイプでは、ジャケット付きチューブがリアクターとして使用され、この場合、リアクターは1つ又はそれ以上の反応域を有する。好適な、しかし、限定されないリアクター長さが、約100メートル〜約3000メートルであり得る(好ましくは約1000メートル〜約2000メートル)。どちらかのタイプのリアクターについても反応域の始まりが、反応の開始剤、エチレン、テロマー、コモノマー、並びに、それらの任意の組合せのいずれかの側方注入によって定義される。高圧プロセスをオートクレーブリアクター又は管状リアクターで、或いは、オートクレーブリアクター及び管状リアクターの組合せで行うことができ、この場合、それぞれが1つ又はそれ以上の反応域を有する。
【0050】
実施形態のプロセスで使用される好適な触媒は、エチレン系ポリマー又は高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーのどちらであれ、所望される組成又はタイプのポリマーを調製するために適合化される任意の化合物、又は、化合物の所望の組合せを含む。不均一触媒を用いることができる。いくつかの実施形態プロセスにおいて、周知のチーグラー・ナッタ組成物(とりわけ、第2族金属のハロゲン化物又は混合ハロゲン化物及びアルコキシドに担持される第4族金属のハロゲン化物)、及び、周知のクロム系触媒又はバナジウム系触媒を含めて、不均一触媒を使用することができる。いくつかの実施形態プロセスにおいて、使用される触媒は、比較的純粋な有機金属化合物又は金属錯体(とりわけ、第3族〜第10族又はランタニド系列から選択される金属に基づく化合物又は錯体)を含む均一触媒であり得る。2つ以上の触媒が系で使用されるならば、用いられる触媒はどれも、著しい悪影響を重合条件下で別の触媒の性能に及ぼさないことが好ましい。望ましくは、触媒は、活性が重合条件下で25パーセントを超えて低下せず、より好ましくは10パーセントを超えて低下しない。
【0051】
錯体金属触媒を用いる実施形態プロセスにおいて、そのような触媒は、助触媒(好ましくは、カチオン形成助触媒)、強いルイス酸又はそれらの組合せとの組合せによって、活性な触媒組成物を形成するために活性化することができる。使用される好適な助触媒には、ポリマー状又はオリゴマー状のアルミノキサン(とりわけ、メチルアルミノキサン)、同様にまた、不活性な、適合し得る、配位しないイオン形成化合物が含まれる。いわゆる修飾メチルアルミノキサン(MMAO)又はトリエチルアルミニウム(TEA)もまた、助触媒としての使用に好適である。そのような修飾アルミノキサンを調製するための1つの技術が、米国特許第5,041,584号(Crapoら)に開示される。アルミノキサンはまた、米国特許第5,542,199号(Laiら)、同第4,544,762号(Kaminskyら)、同第5,015,749号(Schmidtら)及び同第5,041,585号(Deavenportら)に開示されるように作製することができる。
【0052】
いくつかの実施形態プロセスにおいて、加工助剤(例えば、可塑剤など)もまた、実施形態のエチレン性ポリマー製造物に含むことができる。これらの補助剤には、フタラート(例えば、ジオクチルフタラート及びジイソブチルフタラートなど)、天然オイル(例えば、ラノリンなど)、並びに、石油精製から得られるパラフィンオイル、ナフテン系オイル及び芳香族オイル、並びに、ロジン供給原料又は石油供給原料から得られる液状樹脂が含まれるが、これらに限定されない。加工助剤として有用な例示的クラスのオイルには、白色鉱油、例えば、KAYDOLオイル(Chemtura Corp.;Middlebury、Conn.)及びSHELLFLEX371ナフテン系オイル(Shell Lubricants;Houston、Tex.)が含まれる。別の好適なオイルがTUFFLOオイル(Lyondell Lubricants;Houston、Tex.)である。
【0053】
いくつかの実施形態プロセスにおいて、実施形態のエチレン性ポリマーは1つ又はそれ以上の安定剤により処理され、例えば、酸化防止剤(例えば、IRGANOX1010及びIRGAFOS168(Ciba Specialty Chemicals;Glattbrugg、スイス)など)により処理される。一般に、ポリマーは、押出しプロセス又は他の溶融プロセスの前に1つ又はそれ以上の安定剤により処理される。他の実施形態プロセスにおいて、他のポリマー添加物には、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、色素、核剤、フィラー、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、安定剤、煙抑制剤(smoke inhibitor)、粘度制御剤及びブロッキング防止剤が含まれるが、これらに限定されない。実施形態のエチレン性ポリマー組成物は、例えば、実施形態のエチレン性ポリマーの重量に基づいて、総合重量比で10パーセント未満の1つ又はそれ以上の添加物を含むことができる。
【0054】
実施形態のエチレン性ポリマーはさらに配合することができる。実施形態によるいくつかのエチレン性ポリマー組成物において、1つ又はそれ以上の酸化防止剤をさらにポリマーに配合し、配合されたポリマーをペレット化することができる。配合されたエチレン性ポリマーは任意の量の1つ又はそれ以上の酸化防止剤を含有することができる。例えば、配合されたエチレン性ポリマーは100万部のポリマーあたり約200部〜約600部の1つ又はそれ以上のフェノール系酸化防止剤を含むことができる。加えて、配合されたエチレン性ポリマーは100万部のポリマーあたり約800部〜約1200部のホスフィト型酸化防止剤を含むことができる。配合された、開示されたエチレン性ポリマーはさらに、100万部のポリマーあたり約300部〜約1250部のステアリン酸カルシウムを含むことができる。
【0055】
架橋剤
いくつかの好適な架橋剤が、Zweifel Hansら、「Plastics Additives Handbook」、Hanser Gardner Publications、Cincinnati、Ohio、第5版、第14章、725頁〜812頁(2001);Encyclopedia of Chemical Technology、第17巻、第2版、Interscience Publishers(1968);及び、Daniel Seern、「Organic Peroxides」、第1巻、Wiley−Interscience(1970)に開示されている(これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる)。
【0056】
好適な架橋剤の限定されない例には、過酸化物、フェノール系化合物、アジド、アルデヒド−アミン反応生成物、置換ウレア、置換グアニジン、置換キサンタート、置換ジチオカルバマート、イオウ含有化合物(例えば、チアゾール系化合物、スルフェンアミド系化合物、チウラミジスルフィド系化合物(thiuramidisulfides)など)、パラキノンジオキシム、ジベンゾパラキノンジオキシム、イオウ、イミダゾール系化合物、シラン及びこれらの組合せが含まれる。
【0057】
好適な有機過酸化物系架橋剤の限定されない例には、アルキルペルオキシド、アリールペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシカルボナート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシケタール、環状ペルオキシド及びこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態において、有機過酸化物は、ジクミルペルオキシド、t−ブチルイソプロピリデンペルオキシベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチル−クミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン又はこれらの組合せである。1つの実施形態において、有機過酸化物はジクミルペルオキシドである。有機過酸化物系架橋剤に関するさらなる教示が、C.P.Park、「Polyolefin Foam」、Handbook of Polymer Foams and Technology(編集:D.Klempner及びK.C.Frisch、Hanser Publishers、198頁〜204頁、Munich(1991))の第9章に開示される(これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0058】
好適なアジド系架橋剤の限定されない例には、アジドホルマート、例えば、テトラメチレンビス(アジドホルマート)など、芳香族ポリアジド、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアジドなど、及び、スルホンアジド、例えば、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルアジド)などが含まれる。アジド系架橋剤の開示が、米国特許第3,284,421号及び同第3,297,674号に見られる(これらの両方が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0059】
ポリ(スルホニルアジド)は、本明細書中に開示されるエチレン/α−オレフィンインターポリマーに対して反応性である少なくとも2つのスルホニルアジド基(すなわち、−SO)を有するいずれかの化合物である。いくつかの実施形態において、ポリ(スルホニルアジド)はX−R−Xの構造(式中、それぞれのXが−SOであり、Rが、非置換又は不活性置換のヒドロカルビル基、ヒドロカルビルエーテル基又はケイ素含有基を表す)を有する。いくつかの実施形態において、R基は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーと、スルホニルアジド基との間における容易な反応を十分に可能にするようにスルホニルアジド基を隔てるための十分な炭素原子、酸素原子又はケイ素原子(好ましくは炭素原子)を有する。他の実施形態において、R基は、少なくとも1個、少なくとも2個又は少なくとも3個の炭素原子、酸素原子又はケイ素原子(好ましくは炭素原子)をスルホニルアジド基の間に有する。用語「不活性置換(された)」は、得られた架橋ポリマーの所望される反応又は所望される特性を望ましくないほどに妨害しない原子又は基による置換を示す。そのような基には、フッ素、脂肪族又は芳香族のエーテル、及び、シロキサンなどが含まれる。Rの好適な構造の限定されない例には、アリール基、アルキル基、アルカリール基、アリールアルキル基、シラニル基、ヘテロシクリル基及び他の不活性な基が含まれる。いくつかの実施形態において、R基は少なくとも1つのアリール基をスルホニル基の間に含む。他の実施形態において、R基は少なくとも2つのアリール基を含む(例えば、Rが4,4’ジフェニルエーテル又は4,4’−ビフェニルであるとき)。Rが1つのアリール基であるとき、アリール基は、ナフチレンビス(スルホニルアジド)系化合物の場合のように2つ以上の環を有することが好ましい。いくつかの実施形態において、ポリ(スルホニルアジド)には、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、及び、平均して1個〜8個の塩素原子と、約2個〜5個のスルホニルアジド基とを分子あたり含有する、塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジド、並びに、それらの組合せが含まれる。他の実施形態において、ポリ(スルホニルアジド)には、オキシ−ビス(4−スルホニルアジドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)及びビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン、並びに、それらの組合せが含まれる。
【0060】
好適なアルデヒド−アミン反応生成物の限定されない例には、ホルムアルデヒド−アンモニア、ホルムアルデヒド−エチルクロリド−アンモニア、アセトアルデヒド−アンモニア、ホルムアルデヒド−アニリン、ブチルアルデヒド−アニリン、ヘプタアルデヒド−アニリン及びそれらの組合せが含まれる。
【0061】
好適な置換ウレアの限定されない例には、トリメチルチオウレア、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア、トリペンチルチオウレア、1,3−ビス(2−ベンゾチアゾリルメルカプトメチル)ウレア、N,N−ジフェニルチオウレア及びそれらの組合せが含まれる。
【0062】
好適な置換グアニジンの限定されない例には、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、ジフェニルグアニジンフタラート、ジカテコールボラートのジ−o−トリルグアニジン塩、及び、それらの組合せが含まれる。
【0063】
好適な置換キサンタートの限定されない例には、亜鉛エチルキサンタート、ナトリウムイソプロピルキサンタート、ブチルキサントゲン酸ジスルフィド(butylxanthic disulfide)、カリウムイソプロピルキサンタート、亜鉛ブチルキサンタート及びそれらの組合せが含まれる。
【0064】
好適なジチオカルバマートの限定されない例には、銅ジメチルジチオカルバマート、亜鉛ジメチルジチオカルバマート、テルルジエチルジチオカルバマート、カドミウムジシクロヘキシルジチオカルバマート、鉛ジメチルジチオカルバマート、鉛ジメチルジチオカルバマート、セレンジブチルジチオカルバマート、亜鉛ペンタメチレンジチオカルバマート、亜鉛ジデシルジチオカルバマート、亜鉛イソプロピルオクチルジチオカルバマート及びそれらの組合せが含まれる。
【0065】
好適なチアゾール系化合物の限定されない例には、2−メルカプトベンゾチアゾール、亜鉛メルカプトチアゾリルメルカプチド、2−ベンゾチアゾリル−N,N−ジエチルチオカルバミルスルフィド、2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)及びそれらの組合せが含まれる。
【0066】
好適なイミダゾール系化合物の限定されない例には、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプト−4,4,6−トリメチルジヒドロピリミジン及びそれらの組合せが含まれる。
【0067】
好適なスルフェンアミド系化合物の限定されない例には、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−(2,6−ジメチルモルホリノ)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジエチルベンゾチアゾールスルフェンアミド及びそれらの組合せが含まれる。
【0068】
好適なチウラミジスルフィド系化合物の限定されない例には、N,N’−ジエチルチウラミジスルフィド、テトラブチルチウラミジスルフィド、N,N’−ジイソプロピルジオクチルチウラミジスルフィド、テトラメチルチウラミジスルフィド、N,N’−ジシクロヘキシルチウラミジスルフィド、N,N’−テトララウリルチウラミジスルフィド及びそれらの組合せが含まれる。
【0069】
いくつかの実施形態において、架橋剤はシランである。本明細書中に開示されるエチレン/α−オレフィンインターポリマー又はポリマーブレンド混合物へのグラフト化、及び/或いは、本明細書中に開示されるエチレン/α−オレフィンインターポリマー又はポリマーブレンド混合物の架橋を効果的に行うことができるシランはどれも使用することができる。好適なシラン系架橋剤の限定されない例には、エチレン性不飽和ヒドロカルビル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基又はγ−(メタ)アクリルオキシアリル基など)及び加水分解可能な基(例えば、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルボニルオキシ基及びヒドロカルビルアミノ基など)を含む不飽和シランが含まれる。好適な加水分解可能な基の限定されない例には、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アルキルアミノ基及びアリールアミノ基が含まれる。他の実施形態において、シランは、インターポリマーにグラフト化することができる不飽和アルコキシシランである。これらのシランのいくつか及びそれらの調製方法が米国特許第5,266,627号においてより詳しく記載される(これは参照により本明細書に組み込まれる)。さらなる実施形態において、シラン系架橋剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びそれらの組合せである。
【0070】
シラン系架橋剤の量は、エチレン/α−オレフィンインターポリマー又はポリマーブレンド混合物の性質、用いられるシラン、加工条件、グラフト化開始剤の量、最終的用途及び他の要因に依存して広範囲に変化し得る。ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)が使用されるとき、VTMOSの量は一般に、シラン系架橋剤及びインターポリマー又はポリマーブレンド混合物の総合重量に基づいて少なくとも約0.1重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセント又は少なくとも約1重量パーセントである。
【0071】
使用
実施形態のエチレン性ポリマーは、少なくとも1つのフィルム層(例えば、単層フィルムなど)を含む物体、或いは、少なくとも1つの層を、キャストコーティングプロセス、ブローン(blown)被覆プロセス、圧着(calendered)被覆プロセス又は押出し被覆プロセスによって調製される多層フィルムに含む物体、成形品(例えば、ブロー成形品、射出成形品又は回転成形品など)、押出し物、繊維、及び、織布又は不織布を含めて、有用な物品を製造するための様々な従来の熱可塑性物質二次加工プロセスにおいて用いることができる。実施形態のエチレン性ポリマーを含む熱可塑性組成物には、他の天然物又は合成物、ポリマー、添加物、強化剤、耐着火性添加物、酸化防止剤、安定剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤及び可塑剤とのブレンド混合物が含まれる。
【0072】
実施形態のエチレン性ポリマーは、繊維を他の用途のために製造する際に使用することができる。実施形態のエチレン性ポリマー又はそのブレンド混合物から調製することができる繊維には、ステープルファイバー、トウ、多成分、シース/コア、加撚処理されたもの、及び、モノフィラメントが含まれる。好適な繊維形成プロセスは、米国特許第4,340,563号(Appelら)、同第4,663,220号(Wisneskiら)、同第4,668,566号(Nohrら)及び同第4,322,027号(Reda)に開示されるようなスパンボンデッド(spunbonded)技術及びメルトブローン(melt blown)技術、米国特許第4,413,110号(Kaveshら)に開示されるようなゲルスパン(gel spun)繊維、米国特許第3,485,706号(May)に開示されるような織布及び不織布、又は、そのような繊維から作製される構造物(他の繊維(例えば、ポリエステル、ナイロン又は綿など)とのブレンド混合物を含む)、熱成形品、押出し形状物(プロファイル押出し物及び共押出し物を含む)、カレンダー加工品、並びに、引抜き、加撚又はけん縮による糸又は繊維を含む。
【0073】
実施形態のエチレン性ポリマーは、清澄性収縮フィルム、コレーション(collation)収縮フィルム、キャストストレッチ(cast stretch)フィルム、サイレージ(silage)フィルム、ストレッチフーダー(stretch hooder)フィルム、シーラント、スタンド・アップ・パウチ(stand up pauch)フィルム、ライナーフィルム及びおむつバックシート(これらに限定されない)を含めて、様々なフィルムにおいて使用することができる。
【0074】
実施形態のエチレン性ポリマーはまた、他の直接的な最終用途適用において有用である。実施形態のエチレン性ポリマーは、ワイヤ及びケーブルの被覆操作のために、また、真空形成操作のためのシート押出しにおいて、また、射出成形プロセス、ブロー成形プロセス又は回転成形プロセスの使用を含めて、成形品を形成する際に有用である。実施形態のエチレン性ポリマーを含む組成物はまた、従来のポリオレフィン加工技術を使用して二次加工品にすることができる。
【0075】
実施形態のエチレン性ポリマーのための他の好適な用途には、フィルム及び繊維、軟らかい感触の品物(例えば、歯ブラシの柄、及び、電気器具の取っ手など)、ガスケット及び異形材、接着剤(ホットメルト接着剤及び感圧接着剤を含む)、履き物(靴底及び靴ライナーを含む)、自動車内装部品及び異形材、フォーム品(連続気泡フォーム及び独立気泡フォームの両方)、他の熱可塑性ポリマー(例えば、高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン又は他のオレフィンポリマーなど)のための耐衝撃性改良剤、コーティング布、ホース、管材料、目詰め材、キャップライナー、床材、並びに、潤滑剤のための粘度指数改良剤(これはまた、流動点改良剤として公知である)が含まれる。
【0076】
実施形態のエチレン性ポリマーのさらなる処理を、実施形態のエチレン性ポリマーを他の最終用途のために適用するために行うことができる。例えば、分散物(水性及び非水性の両方)もまた、本発明のポリマー又は本発明のポリマーを含む配合物を使用して形成することができる。実施形態のエチレン性ポリマーを含むフロスト(frothed)フォームもまた、PCT公開番号2005/021622(Strandburgら)に開示されるように形成することができる。実施形態のエチレン性ポリマーはまた、いずれかの公知手段によって架橋することができ、例えば、過酸化物、電子ビーム、シラン、アジド又は他の架橋技術の使用などによって架橋することができる。実施形態のエチレン性ポリマーはまた化学的に修飾することができ、例えば、グラフト化(例えば、マレイン酸無水物(MAH)、シラン又は他のグラフト化剤の使用によるグラフト化)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン化又は他の化学的修飾などによって化学的に修飾することができる。
【0077】
添加物及び補助剤を実施形態のフィルム構造に加えることができる。好適な添加物には、フィラー(例えば、有機粒子又は無機粒子など、これらには、粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末化金属、有機繊維又は無機繊維(炭素繊維、窒化ケイ素繊維、スチールワイヤ又はスチールメッシュ、及び、ナイロン又はポリエステルのひもを含む)、ナノサイズの粒子、粘土及びその他が含まれる)、粘着性付与剤、エキステンダー油(パラフィン系オイル又はナフタレン系オイルを含む)、並びに、他の天然ポリマー及び合成ポリマー(実施形態の方法に従って作製されるか、又は、実施形態の方法に従って作製することができる他のポリマーを含む)が含まれる。
【0078】
実施形態のエチレン性ポリマーと、他のポリオレフィンとのブレンド混合及び混合を行うことができる。実施形態のエチレン性ポリマーとブレンド混合するための好適なポリマーには、天然ポリマー及び合成ポリマーを含めて、熱可塑性のポリマー及び熱可塑性でないポリマーが含まれる。ブレンド混合のための例示的なポリマーには、ポリプロピレン(耐衝撃性を改良するポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン及びランダムエチレン/プロピレンコポリマーの両方)、様々なタイプのポリエチレン(高圧フリーラジカルLDPE、チーグラー・ナッタLLDPE、メタロセンPE(多段リアクターPE(チーグラー・ナッタPE及びメタロセンPEの「リアクター内」ブレンド混合物、例えば、米国特許第6,545,088号(Kolthammerら)、同第6,538,070号(Cardwellら)、同第6,566,446号(Parikhら)、同第5,844,045号(Kolthammerら)、同第5,869,575号(Kolthammerら)及び同第6,448,341号(Kolthammerら)に開示される製造物など)、エチレン−ビニルアセタート(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝撃性が改良されたポリスチレン、ABS、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー及びその水素化誘導体(SBS及びSEBS)、並びに、熱可塑性ポリウレタンが含まれる。均一ポリマー(例えば、オレフィンプラストマー及びオレフィンエラストマーなど)、エチレン及びプロピレンに基づくコポリマー(例えば、VERSIFY(商標)プラストマー&エラストマー(The Dow Chemical Company)及びVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)の商品名で入手可能なポリマー)もまた、実施形態のエチレン性ポリマーを含むブレンド混合物における成分として有用であり得る。
【0079】
実施形態のエチレン性ポリマーのブレンド混合物及び混合物は、熱可塑性ポリオレフィンのブレンド混合物(TPO)、熱可塑性エラストマーのブレンド混合物(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)及びスチレン系ポリマーのブレンド混合物を含むことができる。TPEブレンド混合物及びTPVブレンド混合物を、実施形態のエチレン性ポリマー(その官能化誘導体又は不飽和誘導体を含む)を必要に応じて使用されるゴム(従来のブロックコポリマー、とりわけ、SBSブロックコポリマーを含む)及び必要な場合には架橋剤又は加硫剤と一緒にすることによって調製することができる。TPOブレンド混合物は一般に、実施形態のポリマーをポリオレフィン及び必要な場合には架橋剤又は加硫剤とブレンド混合することによって調製される。前記のブレンド混合物は、成形物体を形成し、得られた成形品を必要な場合には架橋する際に使用することができる。異なる成分を使用する類似した手順が以前には米国特許第6,797,779号(Ajbaniら)に開示されている。
【0080】
定義
用語「組成物」は、使用される場合、組成物を構成する物質の混合物、同様にまた、組成物の物質から形成される反応生成物及び分解生成物を含む。
【0081】
用語「ブレンド混合物」又は用語「ポリマーブレンド混合物」は、使用される場合、2つ以上のポリマーの均質な物理的混合物(すなわち、反応を伴わない)を意味する。ブレンド混合物は(分子レベルで相分離しない)混和性であってもよく、又は、混和性でなくてもよい。ブレンド混合物は相分離してもよく、又は、相分離しなくてもよい。ブレンド混合物は、当分野で公知である透過電子顕微鏡観察、光散乱、X線散乱及び他の方法から求められるような1つ又はそれ以上のドメイン形態を含有してもよく、或いは、ドメイン形態を含有しなくてもよい。ブレンド混合物は、2つ以上のポリマーをマクロレベルで物理的に混合すること(例えば、樹脂を溶融ブレンド混合すること、又は、配合すること)によって、又は、2つ以上のポリマーをミクロレベルで物理的に混合すること(例えば、同じリアクターの中で同時に形成すること)によって達成することができる。
【0082】
用語「線状」は、ポリマーのポリマー骨格が測定可能又は実証可能な長鎖分岐を有しないポリマーを示し、例えば、ポリマーが1000個の炭素あたり平均して0.01未満の長い分岐により置換されるポリマーを示す。
【0083】
用語「ポリマー」は、同じタイプのモノマー又は異なるタイプのモノマーであれ、モノマーを重合することによって調製される高分子化合物を示す。従って、総称用語のポリマーは、用語「ホモポリマー」(これは通常、1つだけのタイプのモノマーから調製されるポリマーを示すために用いられる)、及び、定義されるような用語「インターポリマー」を包含する。用語「エチレン/α−オレフィンポリマー」は、記載されるようなインターポリマーを示す。
【0084】
用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを示す。総称用語のインターポリマーには、コポリマー(これは通常、2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを示すために用いられる)、及び、3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーが含まれる。
【0085】
用語「エチレン系(ethylene-based)ポリマー」は、(重合可能なモノマーの総量に基づいて)50モルパーセントを超える重合したエチレンモノマーを含有し、かつ、必要な場合には、少なくとも1つのコモノマーを含有することがあるポリマーを示す。
【0086】
用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」は、(重合可能なモノマーの総量に基づいて)50モルパーセントを超える重合したエチレンモノマーと、少なくとも1つα−オレフィンとを含有するインターポリマーを示す。
【0087】
用語「エチレン性(ethylenic)ポリマー」は、エチレン系ポリマーと、少なくとも1つの高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーとを結合することから得られるポリマーを示す。
【0088】
試験方法
密度
密度(g/cm)が、イソプロパノールにおいてASTM−D792−03(方法B)に従って測定される。試料が、成形の1時間以内で、イソプロパノール浴での状態調節を23℃で8分間行って、熱的平衡を測定前に達成した後で測定される。試料は、約190℃での5分の最初の加熱期間及び15℃/分の冷却速度を手順Cによって用いるASTM D−4703−00(付録A)に従って圧縮成形される。試料は、「触って冷えた」となるまで、継続した冷却によりプレス機において45℃に冷却される。
【0089】
メルトインデックス
メルトインデックス又はIが、ASTM D1238(190℃/2.16kgの条件)に従って測定され、10分あたりの溶出したグラム数で報告される。I10が、ASTM D1238(190℃/10kgの条件)に従って測定され、10分あたりの溶出したグラム数で報告される。
【0090】
DSC結晶化度
示差走査熱量測定法(DSC)を使用して、ポリマーの融解挙動及び結晶化挙動を広い温度範囲にわたって測定することができる。例えば、RCS(冷凍冷却システム)及びオートサンプラーを備える、TA Instruments社のQ1000DSCを使用して、この分析を行うことができる。試験期間中、50ml/分の窒素パージガス流が使用される。それぞれのサンプルが約175℃で薄いフィルムに溶融圧縮される;その後、融解サンプルは室温(約25℃)に空冷される。3mg〜10mgの、直径6mmの試料が、冷却されたポリマーから取り出され、重量測定され、軽いアルミニウム皿(約50mg)に入れられ、圧着により閉じられる。その後、分析が、その熱特性を求めるために行われる。
【0091】
サンプルの熱挙動が、温度プロフィルに対する熱の流れを生じさせるためにサンプル温度を上げ下げすることによって求められる。最初に、サンプルが、その熱履歴を除くために180℃に急速加熱され、3分間にわたって等温保持される。次いで、サンプルは10℃/分の冷却速度で−40℃に冷却され、−40℃で3分間にわたって等温保持される。その後、サンプルは10℃/分の加熱速度で150℃に加熱される(これは「2回目の熱」傾斜である)。冷却曲線及び2回目の加熱の曲線が記録される。冷時曲線が、ベースラインの端点を結晶化の開始から−20℃まで設定することによって分析される。熱時曲線が、ベースラインの端点を−20℃から融解終了まで設定することによって分析される。求められた値が、ピーク融解温度(T)、ピーク結晶化温度(T)、融解熱(H)(ジュール/グラム)、及び、下記の式を使用するポリエチレンサンプルについての計算された%結晶化である:
%結晶化度=((H)/(292J/g))×100。
【0092】
融解熱(H)及びピーク融解温度が2回目の熱時曲線から報告される。ピーク結晶化温度が冷却曲線から求められる。
【0093】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
GPCシステムが、内蔵された示差屈折率計(RI)を備えるWaters社(Milford、MA)の150C高温クロマトグラフからなる(他の好適な高温GPC装置には、Polymer Laboratories社(Shropshire、英国)のモデル210及びモデル220)が含まれる。さらなる検出器には、Polymer ChAR社(Valencia、スペイン)から得られるIR4赤外検出器、Precision Detectors社(Amherst、MA)の2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、及び、Viscotek社(Houston、TX)の150R 4毛細管溶液粘度計が含まれ得る。最後の2つの独立した検出器と、最初の検出器の少なくとも1つとを有するGPCはときには「3D−GPC」と呼ばれ、一方で、用語「GPC」はそれだけでは一般に、従来のGPCを示す。サンプルに依存して、光散乱検出器の15度の角度又は90度の角度のどちらかが計算目的のために使用される。データ収集が、Viscotek TriSECソフトウエア(バージョン3)及び4チャンネルのViscotek Data Manager DM400を使用して行われる。システムはまた、Polymer Laboratories社(Shropshire、英国)から得られるオンライン溶媒脱ガスデバイスを備える。好適な高温GPCカラムを使用することができる:例えば、4本の長さ30cmのShodex HT803(13ミクロン)カラム、又は、4本の30cmの、20ミクロンの混合細孔サイズ充填のPolymer Labsカラム(MixA LS、Polymer Labs)など。サンプル回転ラック区画が140℃で操作され、カラム区画が150℃で操作される。サンプルが、50ミリリットルの溶媒における0.1グラムのポリマーの濃度で調製される。クロマトグラフィー溶媒及びサンプル調製溶媒は200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する。両方の溶媒が窒素によりスパージされる。ポリエチレンサンプルが160℃で4時間穏やかに撹拌される。注入体積が200マイクロリットルである。GPCを流れる流速が1ml/分で設定される。
【0094】
GPCカラムセットが、21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物を流すことによって、実施例を行う前に較正される。標準物の分子量(MW)は580グラム/モルから8,400,00グラム/モルにまで及ぶ。標準物は6個の「カクテル」混合物に含有される。それぞれの標準物混合物は個々の分子量の間に少なくとも10進法で1桁の隔たりを有する。標準物混合物が、Polymer Laboratories社(Shropshire、英国)から購入される。ポリスチレン標準物は、1,000,000グラム/モル以上の分子量については50mLの溶媒において0.025gで調製され、1,000,000グラム/モル未満の分子量については50mlの溶媒において0.05gで調製される。ポリスチレン標準物を、30分間の穏やかな撹拌とともに、80℃で溶解した。狭い標準物混合物が、分解を最小限に抑えるために、最初に、そして、最大分子量成分が小さくなる順で流される。ポリスチレン標準物のピーク分子量が、マーク・ホーウィンクのKと、ポリスチレン及びポリエチレンについて後で述べられる値(これはときにはαと呼ばれる)とを使用して、ポリエチレンMに変換される。この手順の実演については実施例の節を参照のこと。
【0095】
3D−GPCにより、絶対的重量平均分子量(「Mw,Abs」)及び固有粘度もまた、前記で述べられた同じ条件を使用して、好適な狭いポリエチレン標準物から独立して得られる。これらの狭い線状ポリエチレン標準物を、Polymer Laboratories社(Shropshire、英国)から得ることができる(部品番号PL2650−0101及び同PL2650−0102)。
【0096】
多重検出器のオフセットを求めるための体系的方法が、Dow1683の幅広いポリスチレン(American Polymer Standards Corp.;Mentor、OH)又はその同等物から得られる三連検出器のlog(Mw及び固有粘度)の結果を狭いポリスチレン標準物の較正曲線から得られる狭い標準物のカラム較正結果に対して最適化する、Balke、Moureyら(Mourey及びBalke、Chromatography Polym.、第12章(1992))(Balke、Thitiratsakul、Lew、Cheung、Mourey、Chromatography Polym.、第13章(1992))によって発表された様式と一致する様式で行われる。検出器の体積オフセットの決定を説明する分子量データが、Zimm(Zimm,B.H.、J. Chem. Phys.、16、1099(1984))及びKratochvil(Kratochvil,P.、Classical Light Scattering from Polymer Solutions、Elsevier、Oxford、NY(1987))によって発表された様式と一致する様式で得られる。分子量の決定において使用される全般的な注入濃度が、好適な線状ポリエチレンホモポリマー、又は、ポリエチレン標準物の1つから導かれる質量検出器面積及び質量検出器定数から得られる。計算された分子量が、述べられたポリエチレン標準物の1つ又はそれ以上から導かれる光散乱定数と、0.104の屈折率濃度係数(dn/dc)とを使用して得られる。一般には、質量検出器応答及び光散乱定数は、約50,000ダルトンを超える分子量を有する線状標準物から決定されなければならない。粘度計の較正を、製造者によって記載される方法を使用して達成することができ、又は、代替では、好適な線状標準物(例えば、Standard Reference Materials(SRM)1475a、同1482a、同1483又は同1484aなど)の発表された値を使用することによって達成することができる。クロマトグラフィー濃度は、扱っている第2ビラル(viral)係数の影響(分子量に対する濃度影響)を排除するために十分に低いと想定される。
【0097】
分析的昇温溶出分画化(ATREF)
高密度画分(パーセント)が分析的昇温溶出分画化分析(ATREF)により測定される。ATREF分析が、米国特許第4,798,081号に記載される方法、及び、Wilde,L.、Ryle,T.R.、Knobeloch,D.C.、Peat,I.R.、ポリエチレン及びエチレンコポリマーにおける分岐分布の決定、Journal of Polymer Science、20、441〜455(1982)に従って行われる。分析される組成物がトリクロロベンゼンに溶解され、温度を0.1℃/分の冷却速度で20℃にゆっくり下げることによって、不活性な担体(ステンレススチールショット)を含有するカラムにおいて結晶化させられる。カラムは赤外検出器を備える。その後、ATREFクロマトグラム曲線が、溶出溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を1.5℃/分の速度で20℃から120℃にゆっくり上げることにより、結晶化ポリマーサンプルをカラムから溶出することによってもたらされる。溶出しているポリマーの粘度平均分子量(Mv)が測定され、報告される。ATREFプロットは、短鎖分岐分布(SCBD)プロットと、分子量プロットとを有する。SCBDプロットは、3つのピーク、すなわち、高結晶性画分についてのピーク(典型的には90℃を超える)、コポリマー画分についてのピーク(典型的には30℃〜90℃の間)、及び、パージ画分についてのピーク(典型的には30℃未満)を有する。曲線はまた、谷を、コポリマー画分と、高結晶性画分との間に有する。Thcがこの谷における最低温度である。%高密度(HD)画分が、Thcを超える曲線の下側の面積である。Mvが、ATREFから得られる粘度平均分子量である。Mhcが、Thcを超える画分についての平均Mvである。Mcが、60℃〜90℃の間におけるコポリマーの平均Mvである。Mpがポリマー全体の平均Mvである。
【0098】
高速昇温溶出分画化(F−TREF)
高速TREFを、組成モードでのIR−4赤外検出器(Polymer ChAR、スペイン)と、光散乱(LS)検出器(Precision Detector Inc.、Amherst、MA)とを用いて、オルトジクロロベンゼン(ODCB)において、Polymer ChAR(Valencia、スペイン)によるCrystex装置により行うことができる。
【0099】
F−TREFを試験するとき、120mgのサンプルが40mlのODCBとともにCrystexリアクター容器の中に加えられ、サンプルの溶解を達成するために機械的撹拌とともに160℃で60分間保持される。サンプルがTREFカラムに負荷される。その後、サンプル溶液が2段階で冷却される:(1)40℃/分で160℃から100℃に、及び、(2)ポリマー結晶化プロセスが0.4℃/分で100℃から30℃まで開始される。次いで、サンプル溶液が30℃で30分間にわたって等温保持される。昇温溶出プロセスが、0.6ml/分の流速とともに、1.5℃/分で30℃から160℃まで始まる。サンプル負荷体積が0.8mlである。サンプルの分子量(M)が、IR−4検出器の測定センサーからのシグナルに対する15°又は90°のLSシグナルの比率として計算される。LS−MW較正定数が、ポリエチレンの国立標準局SRM1484aを使用することによって得られる。溶出温度が実際のオーブン温度として報告される。TREFと、検出器との間における配管遅延体積が、報告されたTREF溶出温度において明らかにされる。
【0100】
調製的昇温溶出分画化(P−TREF)
昇温溶出分画化方法(TREF)を使用して、ポリマーを調製的に分画化することができ(P−TREF)、この方法は、カラムの大きさ、溶媒、流速及び温度プログラムを含めて、Wilde,L.、Ryle,T.R.、Knobeloch,D.C.、Peat,I.R.、「Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers」、J. Polym. Sci.、20、441〜455(1982)から導かれる。赤外(IR)吸光度検出器が、カラムからのポリマーの溶出をモニターするために使用される。別個の温度プログラムされた液体浴(カラム負荷のために1つ、及び、カラム溶出のために1つ)もまた使用される。
【0101】
サンプルが、撹拌を提供する磁石撹拌子を用いて、およそ0.5%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有するトリクロロベンゼン(TCB)に160℃で溶解することによって調製される。サンプル負荷量がカラムあたりおよそ150mgである。125℃で負荷した後、カラム及びサンプルがおよそ72時間かけて25℃に冷却される。その後、冷却されたサンプル及びカラムは第2の温度プログラム可能な浴に移され、4ml/分の一定流速のTCBにより25℃で平衡化される。直線温度プログラムが、温度をおよそ0.33℃/分で上昇させるために開始され、これにより、102℃の最高温度をおよそ4時間で達成する。
【0102】
分画物が、回収びんをIR検出器の出口に置くことによって手作業で集められる。以前のATREF分析に基づいて、最初の画分が56℃から60℃まで集められる。その後の小さい画分(これはサブ画分と呼ばれる)が、92℃に至るまで4℃毎に集められ、その後、102℃に至るまで2℃毎に集められる。サブ画分は、サブ画分が集められる中間溶出温度によって示される。
【0103】
サブ画分は多くの場合、試験を行うために、中間温度の範囲によってより大きい画分にまとめられる。画分はさらに、試験目的のために、より大きい画分に一緒にすることができる。
【0104】
重量平均溶出温度が、それぞれのサブ画分についての溶出温度範囲の平均と、サンプルの総重量に対するサブ画分の重量とに基づいてそれぞれの画分について求められる。重量平均温度は下記のように定義される:
【数1】

式中、T(f)は、狭いスライス又はセグメントの中間温度であり、A(f)は、そのセグメントにおける、ポリマーの量に比例するセグメントの面積である。
【0105】
データがデジタル的に保存され、EXCEL(Micrsoft Corp.、Redmond、WA)のスプレッドシートを使用して処理される。TREFプロット、ピーク最大温度、画分の重量百分率及び画分の重量平均温度を、スプレッドシードプログラムにより計算した。
【0106】
曇りが、ASTM−D1003に従って求められる。
【0107】
光沢(45°)が、ASTM−2457に従って求められる。
【0108】
エルメンドルフ引裂き抵抗が、ASTM−D1922に従って測定される。
【0109】
弾性率試験及び引張り試験が、ASTM D882に従って測定される。
【0110】
落槍衝撃強さが、ASTM−D1709−04(方法B)に従って測定される。
【0111】
C13−NMRによるコモノマー含有量
ポリマー組成を決定するためにNMR分光学的方法を使用することが周知である。ASTM D5017−96、J.C.Randallら、「NMR and Macromolecules」、ACSシンポジウムシリーズ247(J.C.Randall編、Am.Chem.Soc.、Washington,D.C.(1984)、第9章)、及び、J.C.Randall、「Polymer Sequence Determination」(Academic Press、New York(1977))は、NMR分光法によるポリマー分析の一般的方法を提供する。
【0112】
ゲル含有量の測定
単独である場合又は組成物に含有される場合のどちらであっても、エチレンインターポリマーが少なくとも部分的に架橋されるとき、架橋の程度を、組成物を指定された期間にわたって溶媒に溶解し、パーセントゲル又は非抽出成分を計算することによって測定することができる。パーセントゲルは通常、架橋レベルの増大とともに大きくなる。本発明による硬化品については、パーセントゲル含有量が望ましくは、ASTM D−2765に従って測定される場合、少なくとも約5パーセント〜100パーセントの範囲にある。
【実施例】
【0113】
エチレン系ポリマーの調製
多成分触媒
1つの例示的な多成分触媒系は、マグネシウム及びチタンを含有するプロ触媒(procatalyst)と、助触媒とを含むチーグラー・ナッタ触媒組成物を含む。プロ触媒は、Mg:Tiのモル比が40:1.0であることによって特徴づけられるチタン担持MgClチーグラー・ナッタ触媒である。助触媒はトリエチルアルミニウムである。プロ触媒はTi:Mg比を1.0:40〜5.0:40の間に有することができる(好ましくは3.0:40)。プロ触媒成分及び助触媒成分は、それらがリアクターに入る前に、又は、リアクター内で、そのどちらかで接触させることができる。プロ触媒は、例えば、どのような他のチタン系チーグラー・ナッタ触媒であってもよい。助触媒成分対プロ触媒成分のAl:Tiのモル比は約1:1〜約5:1とすることができる。
【0114】
多成分触媒系の一般的記載
多成分触媒系は、本明細書中で使用される場合、マグネシウム及びチタンを含有するプロ触媒と、助触媒とを含むチーグラー・ナッタ触媒組成物を示す。プロ触媒は、例えば、二塩化マグネシウム、アルキルアルミニウムジハリド及びチタンアルコキシドの反応生成物を含むことができる。
【0115】
オレフィン重合用プロ触媒前駆体は、下記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を組み合わせることから得られる生成物を含む:
(A)下記の成分:
(1)一般式R”R’MgxAlR’3(式中、それぞれのR”及びR’はアルキル基である)によって表される少なくとも1つの炭化水素可溶性のマグネシウム成分、
(2)少なくとも1つの非金属ハロゲン化物源又は金属ハロゲン化物源
を、反応温度が約60℃を超えないような条件のもとで、好ましくは、反応温度が約40℃を超えないような条件のもとで、最も好ましくは、反応温度が約35℃を超えないような条件のもとで接触させることによって調製されるマグネシウムハロゲン化物;
(B)式Tm(OR)yXy−x(式中、Tmは、周期表の第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族又は第VIII族の金属であり、Rは、1個〜約20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、好ましくは1個〜約10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)によって表される少なくとも1つの遷移金属化合物、
(C)所望される過剰なX:Mg比を与えるために十分でない量の成分(A−2)が存在するならば、さらなるハロゲン化物源。
【0116】
特に好適な遷移金属化合物には、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、四塩化バナジウム、四塩化ジルコニウム、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラブトキシチタン、ジエトキシチタンジブロミド、ジブトキシチタンジクロリド、テトラフェノキシチタン、トリ−イソプロポキシバナジウムオキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、及び、それらの混合物などが含まれる。
【0117】
この場合の遷移金属成分として用いることができる他の好適なチタン化合物には、
(A)式Ti(OR)xX4−x(式中、それぞれのRは独立して、1個〜約20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、好ましくは約1個〜約10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、最も好ましくは約2個〜約4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Xはハロゲンであり、xはゼロ〜4の値である)によって表される少なくとも1つのチタン化合物を、
(B)少なくとも1つの芳香族ヒドロキシル基を含有する少なくとも1つの化合物と
反応することから得られるそのようなチタン錯体及び/又はチタン化合物が含まれる。
前記のプロ触媒成分は、以前に述べられたような原子比を与えるために十分な割合で組み合わされる。
【0118】
前記のプロ触媒作用反応生成物は好ましくは、不活性な希釈剤の存在下で調製される。触媒成分の濃度は好ましくは、触媒作用反応生成物の必須成分が組み合わされるとき、得られるスラリーがマグネシウムに関して約0.005モル濃度〜約1.0モル濃度(モル/リットル)であるようにされる。好適な不活性有機希釈剤の一例として、液化エタン、プロパン、イソブタン、n−ブタン、n−ヘキサン、様々な異性体ヘキサン、イソオクタン、8個〜12個の炭素原子を有するアルカンのパラフィン混合物、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロヘキサン、ドデカン、飽和炭化水素又は芳香族炭化水素から構成される工業用溶媒(例えば、ケロセン、ナフサなど、とりわけ、何らかのオレフィン化合物及び他の不純物が除かれるとき)、とりわけ、沸点を約−50℃〜約200℃の範囲に有するものを挙げることができる。プロ触媒成分を、所望される触媒作用反応生成物を提供するために混合することが好都合には、不活性な雰囲気(例えば、窒素、アルゴン又は他の不活性ガスなど)のもと、約−100℃〜約200℃の範囲の温度で、好ましくは約−20℃〜約100℃の範囲の温度で調製され、但し、この場合、マグネシウムハロゲン化物の担体が、反応温度が約60℃を超えないように調製される。触媒作用反応生成物の調製において、炭化水素可溶性成分を反応生成物の炭化水素不溶性成分から分離することは必要ない。
【0119】
プロ触媒組成物は、助触媒との組合せで、チーグラー・ナッタ触媒組成物の1つの成分として働く。助触媒は好ましくは、1:1〜100:1の、プロ触媒中のチタンに基づくモル比で用いられ、しかし、より好ましくは1:1〜5:1のモル比で用いられる。
【0120】
本発明の樹脂例1
本発明の樹脂例1が下記の手順に従って作製される:不均一に分岐したエチレン/α−オレフィンコポリマーが、エチレン及び1つ又はそれ以上のα−オレフィンコモノマー(例えば、1−オクテン)を、溶液条件のもとで稼動する、連続して連結される2つの断熱式球型リアクターにおいて(共)重合するために好適な本明細書中上記で記載されるような多成分触媒系を使用して調製される。エチレンモノマー、1−オクテンコモノマー及び水素を、溶媒(例えば、Isopar(登録商標)E、これはExxonMobilから市販されている)と一緒にした。供給流は、極性不純物(例えば、水、一酸化炭素、イオウ化合物)及び不飽和化合物(例えば、アセチレンなど)が取り除かれ、リアクターに入る前に13℃に冷却される。反応の大部分(85%〜90%)が、直径が10フィートである最初の球型リアクターにおいて行われる。混合が、ポリマー/触媒/助触媒/溶媒/エチレン/コモノマー/水素の溶液を、混合ブレードを備える攪拌機を用いて循環することにより達成される。供給物(エチレン/コモノマー/溶媒/水素)が底部からリアクターに入り、触媒/助触媒が、供給物とは別に、かつ、同様にまた底部からリアクターに入いる。第1段リアクター温度が約175℃であり、リアクター圧力が約500psiである。第1段リアクターと連続している第2段リアクターの温度が、およそ10%〜15%の残る反応が行われることにより、かつ、さらなる流れが加えられることなく、202℃に上がる。触媒/助触媒のAl/Tiモル供給比が1.5で設定される。平均リアクター滞留時間が、その目的のために特別に設計される流体によるリアクター後の停止の前で球型リアクターあたり約8分である。ポリマー溶液がリアクターから出た後、未転換のエチレンモノマー及び1−オクテンコモノマーを含む溶媒が2段階の揮発分除去装置システムによりポリマー溶液から除かれ、その後、再循環される。再循環流は、再びリアクターに入る前に精製される。ポリマー溶融物が、水中ペレット化のために特別に設計されるダイからポンプ送出される。ペレットは、大きすぎるサイズの粒子及び小さすぎるサイズの粒子を除くために分級機ふるいに移される。その後、完成ペレットが貨車に移される。この不均一分岐エチレン/α−オレフィンコポリマーの特性が表1に示される。図1は本発明の樹脂例1のATREFである。
【0121】
第1のエチレン/α−オレフィンコポリマーを含むco−exフィルムがさらに、直径が250mmのダイを有するReifenhauserインフレートフィルムラインでのインフレートフィルム押出しプロセスにより加工される。ダイは2.59mmの隙間を有する。フィルムが約2.2:1のブローアップ比及び約30インチのフロストライン高さにより吹き込まれる。フィルムのレイフラット(layflat)幅が約880mmであり、一方、フィルムの厚さが表3に示される。3層co−ex樹脂が環状の円形ダイから溶融押出しされる。高温の溶融物がダイから出て、それにより、チューブを形成する。チューブは空気によって広げられ、同時に、冷却された空気により、ウエブが固体状態に冷やされる。その後、フィルムチューブはローラーのV字型フレームの中で折り畳まれ、気泡内の空気を捕らえるためにフレームの端部で挟まれる。ニップロールはまた、フィルムをダイから引き出す。チューブは切り開かれ、単フィルム層としてロール上に巻かれる。比較フィルム及び本発明のフィルムの特性が表3に示される。
【0122】
比較用の樹脂例1
比較用の樹脂例1(線状低密度ポリエチレン)が190Cのリアクター温度及び3.5:1のAl/Ti比で作製される。すべての他の条件は本発明の実施例1と同じままである。比較例1の特性が表1に示される。図1は比較例1のATREFである。比較例1が、上記で記載されるようにインフレートフィルム押出しプロセスにより加工される。比較例1が環状の円形ダイから溶融押出しされる。高温の溶融物がダイから出て、それにより、チューブを形成する。チューブは空気によって広げられ、同時に、冷却された空気により、ウエブが固体状態に冷やされる。その後、フィルムチューブはローラーのV字型フレームの中で折り畳まれ、気泡内の空気を捕らえるためにフレームの端部で挟まれる。ニップロールはまた、フィルムをダイから引き出す。チューブは切り開かれ、単フィルム層としてロール上に巻かれる。比較フィルム1の特性が表2に示される。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

比較樹脂2:溶液プロセス及びZ−N触媒によって作製されるオクテン系LLDPE。I(190℃、2.16KG):1g/10分。密度:0.920g/cm
比較樹脂3:溶液プロセス及びZ−N触媒によって作製されるオクテン系LLDPE。I(190℃、2.16KG):1g/10分。密度:0.935g/cm
本発明の樹脂2:溶液プロセス及び修飾型Z−N触媒によって、本発明の樹脂1の場合のように作製されるオクテン系LLDPE。I(190℃、2.16KG):0.5g/10分。密度:0.917g/cm
比較樹脂4:0.85g/10分の全体的I(190℃、2.16KG)を有するオクテン系LLDPE。また、0.918g/cmの全体的密度、樹脂4の41.4wt%が0.898g/cmの密度及び0.27g/10分のMIを有し、樹脂4の58.6wt%が0.929g/cmの密度及び9.24g/10分のMIを有する;樹脂4は米国特許第5,844,045号(Kolthammerら)の教示に従って作製される。
比較樹脂5:二連リアクター溶液プロセスによって作製されるオクテン系LLDPE。I(190℃、2.16KG):1.3g/10分。密度:0.941g/cm。第1リアクターにおけるポリマーは25.92%であり、密度が0.924g/cm3であり、MIが0.65g/10分である;第2リアクターにおけるポリマーは74.08%であり、密度が0.947g/cm3であり、MIが5.45g/10分である;
比較樹脂6:溶液プロセス及びZ−N触媒によって作製されるオクテン系LLDPE。I(190℃、2.16KG):1g/10分。密度:0.925g/cm
【0125】
二次加工条件:
比較例6:100%の比較樹脂6から作製される140ミクロンのフィルム;
比較例2:100%の本発明の樹脂1から作製される45ミクロンのフィルム;
比較例3:比較樹脂2/比較樹脂5/比較樹脂2から作製される120ミクロンのフィルム(層比:1/3/1);
比較例4:比較樹脂4/比較樹脂5/比較樹脂4から作製される120ミクロンのフィルム(層比:1/3/1);
比較例5:比較樹脂2/比較樹脂3/比較樹脂2から作製される120ミクロンのフィルム(層比:1/3/1);
本発明の実施例1:本発明の樹脂1/比較樹脂3/本発明の樹脂1から作製される120ミクロンのフィルム(層比:1/3/1);
本発明の実施例2:本発明の樹脂2/比較樹脂3/本発明の樹脂2から作製される120ミクロンのフィルム(層比:1/3/1)。
フィルムのすべてがReifenhauserインフレートフィルムラインで作製された。
溶融物温度:220℃
ブローアップ比:2.2/1
ダイ隙間:2.59mm
【0126】
【表3】

表3における結果は下記のことを示す:
1.本発明のフィルム1は、より大きい密度(より大きい結晶性画分)、及び、比較フィルム1と同程度の剛性(弾性率)を有しており、しかし、300%より低い曇り及び落槍耐衝撃性における70%の改善を有する。
2.本発明のフィルム2は、比較フィルム1よりもわずかに低い密度及び10%低い剛性を有しており、しかし、300%より低い曇り及び3.3倍大きい落槍耐衝撃性を有する。
3.比較フィルム2が、主張されるように完全に第1のインターポリマーによって製造され、だが、このフィルムは、本発明のフィルム1及び本発明のフィルム2のほんの27%の厚さでしかない45ミクロンのフィルムの場合を除いて、より低い全体的密度及びより低い弾性率を有しており、しかし、その曇りは、120ミクロンの本発明のフィルムに近い。
4.比較フィルム3、比較フィルム4、比較フィルム5はすべてが、改善された剛性及び全体的フィルム密度を有する場合でさえ、比較フィルム1よりも著しく低い曇りを有する。このことは、MDPE及びLLDPEの共押出しがフィルムの曇りを低下させることができ、それに従ってフィルムの清澄性を増大させることができることを立証する。
5.比較フィルム3、比較フィルム4、比較フィルム5はすべてが、本発明のフィルムよりも著しく大きい曇りを有しており、だが、それらの剛性及び密度はほんのわずかに大きいだけである。このことは、コア層及びスキン層における樹脂の選択もまた、高清澄性かつ高剛性のフィルムを製造するために非常に重要であることを立証する。第1のインターポリマーLLDPEをスキン層において適用することは、スキン層がより低い割合の高MW高密度画分を有する場合、改善された落槍耐衝撃性を有する、最も良い清澄性の剛性フィルムをもたらす。
6.同程度の剛性及び密度を有する比較フィルム3、比較フィルム4、比較フィルム5については、比較フィルム5が最も低い曇りを有し、次いで、比較フィルム3であり、比較フィルム4が最も大きい曇りを有する。高MWのHDFを有する、LLDPE及びMDPEから作製されるco−exフィルムは、低MWのHDFを有する、LLDPE及びMDPEから作製されるフィルムよりも良好な清澄性を有する。同じ樹脂をスキン層において用いる場合、比較例3の曇りが比較例5よりも大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの層を含み、第1の層が、エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンとの第1のインターポリマーを含む多層フィルムであって、第1のインターポリマーが、0.925g/cm未満の密度、並びに、平均M、及び、該インターポリマーと、高結晶性画分との間における谷温度(Thc)を有し、その結果、ATREFから得られるポリマー全体の平均Mによって除される、ATREFから得られるThcを超える画分についての平均M(Mhc/Mhp)が約1.95未満となること、かつ、第1のインターポリマーが60%未満のCDBIを有すること、及び、少なくとも1つの他の第2の層が、エチレンと、必要な場合には少なくとも1つのα−オレフィンとの第2のインターポリマーを含み、但し、第2のインターポリマーは0.925g/cm〜0.965g/cmの密度を有することにおいて特徴づけられる、多層フィルム。
【請求項2】
前記第1のインターポリマーが不均一に分岐する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記第1のインターポリマーが55%未満のCDBIを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記第1のインターポリマーが約1.7未満のMhc/Mhpを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記第2のインターポリマーが、0.925g/ccを超える密度、及び、0.1g/10分〜10g/10分の間のMIを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記第2のポリマーが、LLDPE及びHDPEから選択される不均一ポリマーである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンとの第1のインターポリマーを含む少なくとも1つの層であって、第1のインターポリマーが0.925g/cm未満の密度を有すること、並びに、高密度(HD)画分及び総合密度を有し、その結果、xがグラム/立方センチメートルの単位での総合密度である場合、%HD画分が、0.0168x−29.636x+13036よりも小さくなるとして特徴づけられることにおいて特徴づけられる少なくとも1つの層と、エチレンと、必要な場合には少なくとも1つのα−オレフィンとの第2のインターポリマーを含む少なくとも1つの他の層で、第2のインターポリマーが0.925g/cm〜0.965g/cmの密度を有する少なくとも1つの他の層とを含むフィルム。
【請求項8】
少なくとも1つの他の天然ポリマー又は合成ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
前記合成ポリマーが低密度ポリエチレンである、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記第1のインターポリマーが約0.1g/10分〜約10g/10分のメルトインデックスを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
前記第1のインターポリマーが約0.922g/cm未満の総合密度を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
前記第1のインターポリマーが1000個のC原子あたり1未満の長鎖分岐を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
前記第1のインターポリマーが約5未満の分子量分布(M/M)を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項14】
請求項1に記載されるフィルムを含む二次加工品。
【請求項15】
前記第1のインターポリマーが少なくとも5重量%のゲルに対して少なくとも部分的に架橋されている、請求項1に記載のフィルム。
【請求項16】
厚さが約120ミクロンであり、ASTM D1709を使用して測定される落槍強度(B)が少なくとも250グラムであり、ASTM D1003に従って測定されるパーセント曇りが16パーセント未満であり、かつ、ASTM D882に従って測定される(MD+CD)/2によって計算される2パーセント割線モジュラスが少なくとも240MPaである、請求項1に記載のフィルム。

【図1】
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【公表番号】特表2012−522660(P2012−522660A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502423(P2012−502423)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075646
【国際公開番号】WO2010/111869
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】