説明

不均一触媒および三酸化硫黄によるメタンのメタノールおよび/またはメタノール誘導体への選択的、部分的、および実質的に溶媒を含まない酸化方法

本発明は、硫酸またはオレウム等の溶媒の不存在下でのメタンの選択的部分酸化に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年7月27日出願の米国仮特許出願第60/962,310号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して、メタノールおよびメタノール誘導体、例えばその硫酸エステルの生成のための方法に関し、メタンの気相酸化によるメタンのメタノール誘導体への部分酸化に重点を置いている。メタノールの生成は、典型的には、加水分解ステップ、例えば硫酸塩と水との間の反応接触を含む。本明細書において使用される場合、「気相酸化」は、硫酸(HSO)等の従来のメタン酸化溶媒を実質的に使用せずに、好ましくは全く使用せずに生じる酸化を指す。より詳細には、本発明は、酸化が選択的かつ部分的であり、それにより二酸化炭素(CO)等の完全酸化生成物の生成を制限するそのような方法に関する。さらにより詳細には、本発明は、遷移金属、好ましくはパラジウムと、酸触媒、好ましくはペルフルオロスルホン酸触媒(例えば、NAFION(登録商標)SAC−13(例えばイオン交換膜としての使用のための、E.I du Pont de Nemours and Companyから市販されているシリカ担体上のペルフルオロ化スルホン酸ポリマー)と、任意選択であるが好ましくは担体(例えばシリカまたはアルミナ)(そのような担体をすでに含有していないペルフルオロスルホン酸触媒の場合)とを含む、不均一触媒の使用に関する。本発明はまた、酸化薬剤としての三酸化硫黄(SO)の使用に関する。前記方法において生成されるメタノールおよび硫酸エステルは、メタノール誘導体の調製を含めて、メタノール(CHOH)の任意の従来の用途において使用することができる。
【背景技術】
【0003】
経済的に満足する収率でメタンをメタノールおよび/またはメタノール誘導体に直接変換する能力は、石油およびガス産業の重要な目標である。メタンは、特に天然ガスの形態で世界中に見られる豊富な材料である。気体では、輸送が困難で費用を要する。液体メタノールに変換すると、より安全でより効率的な輸送が可能となる。さらに、メタノールは、高価値な商業的原料であり、改質原動機燃料の生成において重要な成分であり、またそれ自体環境適合性の燃料である。
【0004】
原料炭化水素の商業的により有用な材料への変換は、現在、複数のステップおよび/または典型的には摂氏300度(℃)を超える高温のプロセスを使用する。これは、高価な反応器、厳しい熱管理の課題、ならびに結果として高い資本および運用コストにつながる。これまで開発された変換では、主要な化学的課題は、C−OH、C=C、他のC−Cまたは他のC−X結合(Xはヘテロ原子(例えば硫黄(S)、窒素(N)もしくはリン(P))、あるいはハロゲン(例えばフッ素(F)、塩素(Cl)もしくは臭素(Br)である))等の機能性結合(functional bond)を生成するための、300℃を下回る、好ましくは大きく下回る温度での、炭化水素のC−HまたはCC結合の直接的および選択的変換である。一般に、C−HおよびC−C変換のための現在の酸化触媒技術は、ラジカル、特にフリーラジカル反応経路の関与に起因して、直接変換プロセスを可能とするほど十分選択的ではない。
【0005】
メタン(CH)のメタノール(CHOH)への触媒変換のための従来の方法は、合成ガス(一酸化炭素および水素の混合)を生成する、CHの水との最初の反応、次に合成ガスのメタノールへの触媒変換を含む。メタンのメタノールへの直接的な1段階酸化がより単純であり、経済的および環境的に好ましい。
【0006】
酸化活性遷移金属を含有するある特定の触媒(例えば、白金パラジウムまたはバナジウム)は、酸化剤としての酸素分子(O)と併用されると、大量のメタノールよりも、さらなる酸化生成物として一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO)を生成する傾向がある。これは、少なくとも部分的に、250℃を超える温度等の高い酸化温度では、メタノール生成よりもメタノールの酸素分子とのさらなる酸化が、速度論的にも熱力学的にも有利であるという見解から導出し得る。
【0007】
米国特許第5,220,080号(Lyonsら)は、クロムが金属酸化物担体表面の酸素に化学的に結合した表面酸化物クロメートを含む触媒の存在下で、軽質アルカン(例えばCH)を酸化剤(例えば空気)と接触させるステップを含む、メタン(CH)のメタノール(CHOH)への直接触媒酸化のための方法を開示している。
【0008】
米国特許第5,306,855号(Perianaら)は、低級アルカンを、炭化水素(望ましくはガソリン沸点範囲内)またはアルコールに変換され得るアルキルオキシ−エステルに変換するための触媒酸化方法を教示している。この方法は、低級アルカン(例えばメタン)を、酸、触媒ならびに酸化薬剤(例えば酸素および/または硫酸(HSO))と接触させるステップを含む。
【0009】
米国特許第2,492,983号(Grosseら)は、225℃から500℃等の温度でのパイロリシスまたは熱分解によりメタンスルホン酸(CHS)を分解することによる、メタノールの調製を開示している。Grosseらは、三酸化硫黄(SO)によるメタンの直接スルホン化を介したメタンスルホン酸の調製に関して、米国特許第2,493,038号を参照している。
【0010】
米国特許第2,493,038号(Snyderら)は、100℃から450℃の範囲内の温度でメタンとSOとの間の反応を触媒するための、周期表の第II−B族の金属(特に水銀(Hg))または金属のサルフェートを含むスルホン化触媒の使用を教示している。Snyderらは、大気圧から5000psig(34,474kPa)の圧力を含む反応条件の選択は、メタンが無機酸化炭素、特に一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO)に完全に酸化される反応条件よりも厳密ではないことを示している。Snyderらは、エステルの形態でのメタノール等の酸化生成物の形成が好ましい場合、SOよりモル過剰のメタンを使用している。
【0011】
G.A.Olahらは、「Selective Monohalogenation of Methane over Supported Acid or Platinum Metal Catalysts and Hydrolysis of Methyl Halides over γ−Alumina−Supported Metal Oxide/Hydroxide Catalysts.A Feasible Path for the Oxidative Conversion of Methane to Methyl Alcohol/Dimethyl Ether」、Journal of the American Chemical Society、第107巻、7097〜7105頁(1985年)において、NAFION(登録商標)−H/フッ化タンタル等の担持固体酸触媒、または硫酸バリウム上のPd等の担持白金金属触媒上での、180℃から250℃の温度におけるメタンの触媒モノハロゲン化(塩素化または臭素化)を教示している。モノハロゲン化メタンのその後の加水分解により、メタノール(メチルアルコールすなわちCHOH)が得られる。
【0012】
Martinsらは、「Methane activation on superacidic catalysts based on oxoanion modified zirconium oxide」、Applied Catalysis A:General、第308巻、143〜152頁(2006年)において、「超酸」を100%HSOの酸性度より強い酸性度を有する任意の酸として説明している。
【0013】
A.J.Seenは、「Nafion:an excellent support for metal−complex catalysts」、Journal of Molecular Catalysis A:Chemical、第177巻、105〜112頁(2001年)において、担持触媒活性は、NAFION中の金属錯体の担持量に依存すると述べている。Seenは、エテン(エチレン)の二量化のためのカチオン性Pd(II)触媒の担体としてのNAFIONの使用を重点的に研究している。
【0014】
Michalkiewiczらは、「Catalytic system containing metallic palladium in the process of methane partial oxidation」、Journal of Catalysis、第215巻、14〜19頁(2003年)において、オレウム(発煙硫酸中30%三酸化硫黄)に溶解した金属パラジウム上での、メタンの有機酸素化物への酸化を教示している。メタノール生成は、メタンの亜硫酸水素メチルおよび硫酸ジメチルへの転換で開始し、エステル加水分解で終了する。
【0015】
Michalkiewiczは、「The kinetics of homogeneous catalytic methane oxidation」、Applied Catalysis A:General、第307巻、270〜274頁(2006年)において、メタンを亜硫酸水素メチル(CHOSOH)に酸化するための反応媒体としてオレウムを使用した、白金触媒システムを提示している。
【0016】
Mukhopadhyayらは、「A High−Yield,Liquid−Phase Approach for the Partial Oxidation of Methane to Methanol using SO as the Oxidant」、Adv.Synth.Catal.、第347巻、1203〜1206頁(2005年)において、CHからCHOHを生成するための3段階の直接的な手法を開示している。彼らの手法は、フリーラジカル開始剤(例えば、塩化ロジウムとの尿素−過酸化物の組合せ)および溶媒としてメタンスルホン酸(MSA)を使用し、75℃でメタンをSOと反応させてMSAを形成することにより開始する。
【0017】
本明細書全体にわたり、この段落中、続く段落中、または本明細書におけるその他の場所で示される定義は、最初に定義された箇所においてそれらに与えられた意味を有する。これに従い、「触媒」は、本明細書において使用される場合、化学的方法またはプロセスを促進する化学薬剤を指す。本発明の一実施形態において、この用語は、炭化水素C−H結合を活性化するために使用される試薬を説明するために使用される。別の実施形態において、この用語は、それ自体は影響を受けることなく化学反応を開始または加速させる物質を指す。触媒は、炭化水素、酸化剤、溶媒および化学転換のその他の成分の間の化学反応を促進する。
【0018】
「炭化水素C−H結合」という用語は、本明細書において使用される場合、炭化水素分子内に局在する水素と炭素との間の共有結合を指す。C−H結合は、フロンティア分子軌道理論によれば、最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)を有すると説明することができる。
【0019】
「酸化剤」という用語は、化学酸化、反応、プロセスまたは方法において別の物質を酸化する(それから電子を除去する)化合物を指す。その際、酸化性物質または酸化剤と呼ばれる場合もある酸化薬剤は、プロセスにおいて還元される(電子を得る)。酸化化学反応は、広く定義され、いくつかの意味を有し得る。1つの定義では、酸化薬剤は、別の物質(還元剤)から電子を受け取る(受容する)。この意味では、酸化薬剤は、電子受容体と呼ばれる。大まかに言うと、そのような化学的事象は、内圏または外圏として説明することができる2つの別個の経路で生じ得る。別の意味では、酸化剤はO(酸素)原子を還元剤に移動させる。この意味では、酸化薬剤は、酸素供給試薬または酸素原子移動剤と呼ぶことができる。三酸化硫黄(SO)は、本発明の目的に好ましい酸化剤を構成する。
【0020】
「強酸性」という用語は、本明細書において触媒材料(catalyst material)に関して使用される場合、(例えばカルボカチオンを介した)SOとの反応への、メタン等の炭化水素中に含有されるC−H結合の活性化を促進するのに十分強いことを意味する。酸性触媒材料、特に強酸性触媒材料は、ルイス酸として分類される酸(例えばフッ化アンチモン(SbF)等)、またはブレンステッド−ラウリの酸として分類される酸であってもよい。LowryおよびRichardson、「Mechanism & Theory in Organic Chemistry」、363頁(Harper & Row publishers,Inc.)、(1981年)も参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の主要な態様は、三酸化硫黄および気体メタンを酸性触媒材料、好ましくは固体酸性触媒材料、より好ましくは固体強酸性触媒材料と有効に接触(operative contact)させるステップを含む、実質的に溶媒を含まない方法であるメタンの選択的部分酸化のための方法であり、接触は、非気体形態のそのような三酸化硫黄の少なくとも一部を気体三酸化硫黄に変換し、またメタンの少なくとも一部を、メタノールおよびメタノール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の部分酸化生成物に選択的および部分的に酸化するために十分な温度、メタン圧力、および時間の長さの組合せで行われる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
選択的および部分的に酸化されたメタンの一部は、それぞれの場合において三酸化硫黄のモルを基準として、好ましくは1モルパーセント(mol%)を超える、より好ましくは少なくとも1.5mol%(以上(≧))、さらにより好ましくは≧3mol%の部分酸化生成物収率を示す。生成物収率が増加すると、プロセス経済性が改善される。したがって、≧5mol%、≧7mol%、≧10mol%および≧12mol%の生成物収率が、ますます望ましい。生成物収率は、それぞれの場合において三酸化硫黄のモルを基準として、理想的な反応においては100mol%まで高くなることができるが、95mol%以下となることがより多く、90mol%以下、85mol%以下、80mol%以下、75mol%以下、および70mol%以下の収率がますます多い。
【0023】
方法は、バッチ式の方法、連続式の方法、または半バッチ式の方法として実行することができる。後者は、バッチ式の方法と連続式の方法の混合であり、それぞれのいくつかの特徴を組み込んでいる。
【0024】
「有効に接触」とは、本明細書において使用される場合、メタンの少なくとも一部をメタノール誘導体に部分的および選択的に酸化するために十分な温度およびメタン圧力の条件下で、少なくとも一部が気体形態である三酸化硫黄と気体メタンとを、固体酸性触媒材料、好ましくは固体強酸性触媒材料の少なくとも反応性表面部分と接触させることを意味する。
【0025】
触媒材料は、ペルフルオロ化有機スルホン酸部分を含む、固体触媒材料、好ましくは固体酸性触媒材料、より好ましくは固体強酸性触媒材料であり、より好ましくはペルフルオロ化有機ポリマー、さらにより好ましくはペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー(例えば、E.I.du Pont de Nemours and Companyからイオン交換ポリマーとして販売されているNAFION(登録商標)SAC13)を含む材料である。触媒材料はまた、好ましくは、有機スルホン酸部分を有するポリマー、ペルフルオロ化およびスルホン化された有機ポリマーまたはペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー(いずれか適切な方)との組合せで遷移金属を含み、遷移金属は、「不均一触媒」または「不均一超酸触媒」と呼ばれる場合がある。遷移金属は、好ましくは、例えば、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー、好ましくはペルフルオロ化およびスルホン化有機ポリマーの少なくとも表面部分上に堆積される。遷移金属は、好ましくは、メタン炭素−水素(C−H)結合を活性化する能力を有し、より好ましくは、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、銅(Cu)、イリジウム(Ir)、タンタル(Ta)、およびニオブ(Nb)からなる群から選択されるが、好ましくはPdである。望ましい場合は、メタンC−H結合を活性化する能力を有する他の遷移金属を使用することができるが、おそらくは上記群より有効性が低い。触媒材料は、好ましくは、金属酸化物担体表面をさらに含み、金属は、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウムおよびこれらの組合せから選択される。そのような金属酸化物担体表面に関する教示は、参照により本明細書に組み込まれる上述の米国特許第5,220,080号(Lyonsら)を参照されたい。
【0026】
有機スルホン酸部分を含有する固体強酸性触媒材料は、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー(例えば、NAFION(商標)、特に上述のNAFION(商標)SAC−13の商品名で販売されているもの等)、ならびに硫酸化ジルコニア、アルミノシリケート(例えばZeolyst International社から市販されているZMS−5等)、γ(ガンマ)アルミナ、シリコアルミノフォスフェート(例えばUOP社から市販されているSAPO−34等)、 およびモルデナイトゼオライトを含む。
【0027】
有機スルホン酸部分を提供するためのペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー、および遷移金属としてPdを含む不均一触媒を使用した例示として、好ましいPd担持量は、1重量パーセント(wt%)超から4wt%以下の範囲であり、各wt%は、全担持触媒重量を基準としている。より好ましくは、Pd担持量は、2.2wt%以上3wt%以下の範囲であり、さらにより好ましくは、2.4wt%以上2.9wt%以下であり、各wt%は全担持触媒重量を基準としている。当業者は、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー上のPdに関して提供された指針を使用して、必要以上の実験を行うことなく、他の触媒担体上のPdの好ましい担持量、およびペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマーまたはペルフルオロ化有機スルホン酸部分を含有する別の触媒のいずれかに対する上述の他の金属の好ましい担持量を、容易に決定することができる。
【0028】
気体メタン(CH)および三酸化硫黄(SO)の酸性触媒材料、特に強酸性触媒材料との接触は、好ましくは、メタンC−H結合のSOとの反応への触媒活性化を促進するために十分な温度(典型的には少なくとも100℃、好ましくは少なくとも125℃、より好ましくは少なくとも150℃、さらにより好ましくは少なくとも175℃であるが、酸性触媒材料が不安定となる温度未満(より高い温度は、少なくともいくつかの酸性触媒材料に関しては効果的であるが、メタンの選択的部分酸化の達成には必要ではないため、典型的には約230℃以下)で生じる。また、特に、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマーおよび多孔質無機担体の複合材、ならびに担持触媒(担持触媒は、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマーおよび多孔質無機担体の複合材上のパラジウム、バナジウムおよびセリウムからなる群から選択される遷移金属を含む)から選択される超酸触媒を、220℃以下、好ましくは215℃以下、さらにより好ましくは210℃以下、さらにより好ましくは200℃以下の温度で用いると、満足のいく結果が得られる。この温度はまた、典型的には、非気体(つまり固体、液体またはこれらの混合)SOの少なくとも一部を気体SOに変換するために十分である。酸性触媒材料が不安定となる温度より高い温度を避ける追加的な理由は、そのようなより高い温度が、完全またはほぼ完全な酸化生成物(例えば、Snyderらにより米国特許第2,493,038号(上述)において教示されるようなCOおよびCO等の形成を促進する傾向があるためである。
【0029】
接触は、好ましくは、メタンをその完全酸化生成物である一酸化炭素および二酸化炭素のうちの少なくとも1つに完全に変換するために十分な時間より短い時間(「滞留時間」と呼ばれる場合もある)、150℃からの温度範囲内の温度で測定される(25ポンド/平方インチゲージ(psig)(170キロパスカル(KPa))から2000psig(13,790KPa)の範囲内のメタン(CH)圧力で行われる。滞留時間は、好ましくは、30秒・5分超から100時間以下の範囲内である。150℃の温度で測定されるメタン圧力は、より好ましくは150psig(1034KPa)から1500psig(10,342KPa)の範囲内、さらにより好ましくは250psig(1724KPa)から1000psig(6,895KPa)の範囲内、さらにより好ましくは500psig(3447KPa)から1000psig(6,895KPa)の範囲内にある。期間または滞留時間は、より好ましくは、5分から6400分の範囲内、さらにより好ましくは30分から300分の範囲内、さらにより好ましくは30分から90分の範囲内にある。
【0030】
実験室規模では、非気体形態のSO(液体および固体)の取扱いが気体三酸化硫黄の取扱いよりも実用上の利点を有し、固体三酸化硫黄が液体および気体形態の三酸化硫黄の双方よりも容易であることが、当業者には認識される。また、当業者には、2つ以上の形態のSO(例えば、固体、液体および気体形態のSO)が共存することができ、また多くの場合共存することが認識される。また、当業者には、温度および圧力を選択し、SOをその温度および圧力に曝すことにより、ある量のSOのどの形態が閉じた容器内に存在するかを操作することができることが認識される。
【0031】
本発明の方法は、濃硫酸(HSO)、発煙HSOまたはオレウム等の液体強酸の使用が必須である液相酸化と対照的に、実質的に、より好ましくは全く溶媒を含まない(分析定量限界内で、および溶媒、特に液体強酸の反応ゾーンへの添加の不存在下で)、また実質的でなければ優先的に、またはより好ましくは完全に気相の酸化反応を使用する。一部のSOは濃縮(例えば液体)相に存在し得るが、濃縮SOは、本発明の目的における溶媒を構成しない。
【0032】
好ましくは、本発明の範囲内の気相酸化は、有益に、またより頻繁に、好ましくは超酸触媒(SAC)を使用する一酸化反応である。オキソアニオン改質ジルコニア(例えば、Applied CatalysisA General 308(2006年)143〜152頁およびCatalysis Today 81(2003年)17〜30頁に開示されるような硫酸化、モリブデン化、タングステン化ジルコニア)、ペルフルオロ化イオン交換ポリマー、およびOlahにより彼の論文「Selective Monohalogenation of Methane over Supported Acid or Platinum Metal Catalysts and Hydrolysis of Methyl Halides over γ−Alumina−Supported Metal Oxide/Hydroxide Catalysts.A Feasible Path for the Oxidative Conversion of Methane into Methyl Alcohol/Dimethyl Ether」、Journal of the American Chemical Society(JACS)、第107巻、7097〜7105頁(1985年)において列挙されたもの等、数多くの超酸触媒が存在するが、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー(NAFION(登録商標)SAC、E.I.du Pont de Nemours and Company製)を遷移金属の触媒担体の成分として使用することにより、好ましい結果が得られる。シリカ担体(「多孔質ナノ複合材」と呼ばれる場合がある)上に10%から20%担持されたNAFION(登録商標)ポリマーを含む強酸性担持触媒材料、NAFION(登録商標)SAC−13が、特に好ましい結果をもたらす。
【0033】
酸化薬剤はSO、好ましくは、取扱いの容易性のために実質的に非気体形態(例えば固体および/または液体)のSOであり、特に本明細書に記載のSAC/遷移金属の組合せと併用され、また本明細書に開示される動作パラメータおよび条件に従い使用された場合、好ましい酸化薬剤として機能する。SOは、好ましくは、部分酸化生成物、例えばメタノール誘導体の高い選択性を提供する一方で、過酸化生成物、特にCOおよびCOの形成を最小限化する量で存在する。その量は、好ましくは、SO1モルあたりCH10分の1(0.1)モルから、SO1モルあたりCH10モル(0.1:1から10:1のCH:SOモル比)、より好ましくは、CH1モル対SO5モル(1:1から5:1のCH:SOモル比)、さらにより好ましくは、SO1モルあたりCH2モルから、SO1モルあたりCH5モル(2:1から5:1のCH:SOモル比)の範囲内である。
【0034】
分析手順
H NMRに使用される分析手順は、Jack L.Koeningによる「Spectroscopy of Polymers」という表題のACS Professional Reference Bookに記載のような標準的方法に基づく。Whatman0.45マイクロメートル(μm)PURADISC(商標)25Nylフィルタを使用した濾過により調製に必要な程度までまず固体を除去することにより、H NMR分析に関して以下に示される例から試料の一定量を調製する。ある量、典型的には1gから1.5gの試料の一定量を、内標準物質としての100ミリグラム(mg)の氷酢酸、およびロック溶媒(lock solvent)としての0.2ミリリットル(mL)の重水(DO)と組み合わせる。H NMR分析には、5mmQNP H/13C/31P/19F Probe(製造番号Z8352/0008)を備えたBruker Biospin(商標)AVANCE(商標)300MHz Nuclear Magnetic Resonance Spectrometer(製造番号BH045999)を使用する。
【0035】
2回の試料調製および分析を行い、H NMR分析結果を平均する。酢酸に対する化学シフトに基づきH NMRピークの構造的帰属を行い、2.04パーツパーミリオン(ppm)を酢酸に、3.3ppmをメタノール(CHOH)に、3.7ppmをメチルスルホン酸(硫酸水素メチルすなわちCHOSOH)に、2.8ppmをメタンスルホン酸(メチルスルホン酸すなわちCHSOH)、および4.3ppmを亜硫酸水素メチル(CH(SOH))に帰属させる。
【0036】
以下のようにCHOX(式中、X=水素またはスルホン酸部分である)の量を計算する。
【0037】
CHOXのmmol=1,000mmol/mol×(CHOXピーク面積÷酢酸ピーク面積)×(添加した酢酸の重量(グラム(g))÷酢酸の分子量(1モルあたり60グラム))×(全クエンチ試料重量÷添加クエンチ試料の量(例えば1gから1.5g))。
【0038】
「CHOXピーク面積」は、メタノールおよび亜硫酸水素メチルの結合面積を表す。
【0039】
「クエンチ試料重量」は、Parr反応器から得られた液体の総重量である(例えば下記Ex1)。
【0040】
以下の実施例は、本発明を例示するがこれを制限しない。すべての部およびパーセンテージは、別段の指定がない限り、重量に基づく。すべての温度は℃単位である。本発明の実施例(Ex)は、アラビア数字で指定され、比較例(Comp Ex)は、大文字のアルファベット文字で指定される。本明細書において別段の指定がない限り、「室温」および「周囲温度」は、通常20℃である。
【0041】
触媒調製
Aldrich社は、触媒調製に使用される以下の材料を供給している:NAFION(商標)SAC−13ロッド;酢酸パラジウム;硫酸バナジル三〜五水和物(VO(SO)・3〜5HO);硫酸ジルコニウム一水和物(Zr(SO)・HO);水酸化ジルコニウム(IV)(硫酸化)(H16Zr);および硫酸セリウム(Ce(SO)。
【0042】
手順A
10.1gの一定量のペルフルオロスルホン酸触媒(NAFION(商標)SAC−13、Aldrich社製)(0.15ミリ当量/gに基づき約1.5mmolのSOH、0.6mL/gに基づき6mLの細孔容積)を、約30分間(0.5hr)周囲温度で高真空下(<10mmHg)に置き、乾燥一定量を得る。0.515g(2.3mmol)の酢酸パラジウム(II)および10.5mlのジクロロメタン(methylene dichloromethane)(CHCl)からなる混合物(不透明な暗色)を、0.45マイクロメートル(um)のGHP ACRODISK(商標)GF(Gelman社製)フィルタを通して別個に濾過し、暗色の、視覚的に均質なCHCl溶液を得る。CHCl溶液の移動および分布を補助するために最大5mlのCHClを使用しながら、CHCl溶液を用いて乾燥一定量を湿潤させ、それにより「湿潤触媒」を得る。湿潤触媒を、周囲温度で高真空下(<10mmHg)に一晩(約12hr)置き、全固体重量を基準として約2.4wt%の推定名目(nominal)パラジウム(Pd)含量を有する10.3gの黄褐色/淡褐色固体を得る。
【0043】
手順B
より高い名目Pd含量を提供するために変更を加えて手順Aを繰り返す。ペルフルオロスルホン酸触媒の量を20.6g(3.09mmol)に増加し、真空下での時間を約1時間30分(1.5hr)に増加し、乾燥一定量の生成を加速するために1200ワットの温風ガン(MHT Products Inc.製、型番500)を使用して時折加熱する。混合物量を、1.26g(5.6mmol)の酢酸パラジウム(II)および約20mlの塩化メチレン(全部で28.0g)に増加し、暗色の、視覚的に均質な塩化メチレン溶液27.1gを得る。溶液のすべてを使用して乾燥一定量を湿潤させる。過剰の液体をデカンテーションし、39.3gの湿潤触媒を得る。湿潤触媒を、10分間気体窒素流に曝し、湿潤触媒から過剰溶媒の少なくとも一部を蒸発させる。湿潤触媒を、高真空下(<10mmHg)で、温風ガンを使用して時折加熱しながら、約1.5hr、一定重量となるまで乾燥させ、全固体重量を基準として2.9wt%の推定名目Pd含量を有する20.4gの黄褐色/淡褐色固体を得る。
【0044】
手順C
手順Bに従い生成された6.93gの一定量の黄褐色/淡褐色固体を、4.32gの1N硫酸(1規定HSO)で湿潤させる。湿潤固体を手順Aに記載のように真空下に置くが、周囲温度での時間を約65時間(hr)に増加し、それにより6.98gの固体触媒材料を得る。
【0045】
手順D
80℃の設定温度に加熱され、真空除去器具および隔壁を装備したバス中に設置したフラスコに、10.0gの一定量のペルフルオロスルホン酸触媒を入れ、手順Aに記載のように真空処理に供する。真空処理により、0.5gの重量損失(窒素で真空を破った後に決定される)となり、白色固体材料を得る。白色固体材料を、6.91gの硫酸バナジルVO(SO)水溶液(1.01gの硫酸バナジル三〜五水和物(VO(SO)・3〜5×HO)および9.75gの脱イオン水から調製されるアクアブルーの溶液)で処理し、湿潤固体を得る。湿潤固体を手順Aに記載のように真空下で乾燥させるが、80℃の設定温度で2.5hr乾燥させ、10.2gの青色固体を得る。
【0046】
手順E
1.56gの1N HSO、0.5gの硫酸セリウム(Ce(SO)および4.44gの脱イオン水を使用して懸濁液(懸濁液の総重量は6.50gに等しい)を調製するが、これは、30分間超音波照射し5滴の1N HSOを添加しても不透明な黄色である。0.22umナイロンフィルタを通して懸濁液を濾過して固体材料を除去し、6.5gの黄色溶液を得る。この溶液を使用して、10.55gのペルフルオロスルホン酸触媒を湿潤固体に変換する。周囲温度で約12時間、次いで50℃の設定温度で1hr、そして最後に100℃の設定温度で約2時間半(2.5hr)、または固体(黄色)が10.55gの一定重量を維持するまで、湿潤固体を手順Aに記載のように真空処理に供する。
【0047】
手順F
0.49gの硫酸ジルコニウム一水和物(Zr(SO・HOの脱イオン水7.12g中の無色溶液を使用して、10.07gのペルフルオロスルホン酸触媒を湿潤させ、これにより湿潤材料を得る。湿潤材料を100℃の設定温度で約4時間(4hr)乾燥させ、10.13gの一定重量を有する白色固体材料を得る。
【0048】
手順G
0.948gのPd(OAc)(酢酸パラジウム)および20.7gの塩化メチレンの混合物(暗色、不透明)を、手順Aに記載のようにフィルタを通過させるが、フィルタ細孔径は0.25umであり、20.5gの均質暗色溶液を得る。この溶液および19.8gの硫酸化水酸化ジルコニウム(IV)のスラリーを調製する。水流吸引による真空下でロータリーエバポレータを使用してスラリーを濃縮する。濃縮中に凝集が生じた場合は、20mlの塩化メチレンで固体を再スラリー化し、ロータリーエバポレータで濃縮を繰り返す。いずれの場合でも、ロータリーエバポレーションにより20.0gの暗色粉末が得られる。空気乾燥炉内で2時間(2hr)で600℃の設定温度まで加熱し、炉およびその内容物を3時間(3hr)設定温度に維持してから一晩(約12時間)冷却することにより粉末を焼成し、13.5gの褐色固体を得る。暗色粉末と褐色固体との間の重量差は、移動損失およびロータリーエバポレーション中の損失に帰属させる。
【0049】
手順H
Pd金属担持量1wt%の、市販の4×10メッシュ(スクリーンの名目開口径2mm×4.76mm)の炭素に担持されたPd触媒(Mallinckrodt社製)を使用する。
【0050】
手順I
Pd金属担持量0.5wt%の、市販のα−アルミナに担持されたPd触媒(Engelhard Industries社製)を使用する。
【0051】
手順J
4.5gの水和硫酸セリウム(Ce(SO・HO)を15.5gの脱イオン水に溶解し、セリウム溶液を調製する。5.1gのセリウム溶液を使用して13.2gの未焼成酸化水酸化ジルコニウム(ZrO(OH))を含浸し、それにより含浸材料を得る。含浸材料を、1時間で25℃から125℃の設定温度に加熱することにより焼成し、125℃の設定温度で2時間維持し、次いで4時間で600℃の設定温度に加熱し、その設定温度で4時間保持し、次いで3時間で130℃の設定温度に冷却し、次いでその温度に維持してから、炉から取り出してデシケータに移動し周囲温度までさらに冷却する。焼成された材料は、11.4gの重量を有する。
【0052】
手順K
より低い名目Pd含量を提供するために変更を加えて手順Aを繰り返す。ペルフルオロスルホン酸触媒の一定量のサイズを10.5g(約1.6mmol)に増加するが、供給されたものをそのまま使用する(乾燥させない、または真空の適用を使用しない。酢酸パラジウム(II)/塩化メチレン混合物は、10mg(0.045mmol)の酢酸パラジウム(II)および約8mlの塩化メチレンを含有する。混合物を濾過した後、11gの重量の視覚的に均質な淡黄色溶液を得る。溶液のすべてを使用して乾燥一定量を湿潤させる。湿潤触媒を80℃の設定温度で一定重量となるまで乾燥させ、全固体重量を基準として0.05wt%の推定名目Pd含量を有する、20.08gのオフホワイトの固体を得る。
【0053】
手順L
より低い名目Pd含量を提供するために変更を加えて手順Kを繰り返す。ペルフルオロスルホン酸触媒の一定量のサイズを10.0g(約1.5mmol)に低減する。酢酸パラジウム(II)/塩化メチレン混合物は、107.6mg(0.479mmol)の酢酸パラジウム(II)および約7.5mlの塩化メチレンを含有する。混合物を濾過した後、10gの視覚的に均質な塩化メチレン溶液を得る。手順Kに記載のように乾燥させると、全固体重量を基準として0.54wt%の推定名目Pd含量を有する、9.4gの淡黄色固体を得る。
【0054】
手順M
643mg(2.29mmol)の水和硫酸コバルト(CoSO・7HO)(Mallinckrodt社から市販されている)を、50℃の設定温度で超音波照射しながら10.0gの脱イオン水に溶解し、赤色溶液を得る。溶液を周囲温度まで冷却後、触媒をすべて湿潤させる目的で、溶液を重量10.0g(1.5mmol)のペルフルオロスルホン酸の一定量の触媒に滴下する。手順Kに記載のように乾燥させると、全固体重量を基準として1.35wt%の推定名目Co含量を有する、10.1gの紫色固体を得る。
【0055】
手順N
マンガン(Mn)含有触媒を調製するために変更を加えて手順Mを繰り返す。まず、383mg(2.27mmol)の水和硫酸マンガン(MnSO・7HO)(Aldrich社から市販されている)で水和硫酸コバルトを置き換える。次に、超音波照射、50℃の設定温度の使用、および周囲温度への冷却を省略する。手順Kに記載のように湿潤触媒を調製し乾燥させると、全固体重量を基準として1.24wt%の推定名目Mn含量を有する、10.1gの無色(白色)固体を得る。
【0056】
手順O
銅(Cu)含有触媒を調製するために変更を加えて手順Nを繰り返す。まず、582mg(2.33mmol)の水和硫酸銅(CuSO・5HO)(Aldrich社から市販されている)で水和硫酸マンガンを置き換える。手順Nに記載のように溶解させると、青色溶液を得る。手順Nに記載のように湿潤触媒を調製し乾燥させると、全固体重量を基準として1.48wt%の推定名目Cu含量を有する、10.1gの薄緑がかった青色固体を得る。
【0057】
手順PおよびQ
硫酸バリウム(BaSO)触媒担体の調製
撹拌棒を含み、還流冷却器および側管付き添加用漏斗を備え、加熱マントル内に配置された2リットル(L)の3口フラスコに、1200mLの脱イオン水、72gの塩化バリウム(BaCl)、および86gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを投入する。撹拌しながら、フラスコの内容物を85℃の設定温度まで加熱し、次いで、過剰の発泡および放熱を最小限化する、好ましくは排除するために十分な速度で、50.5mlの硫酸ジメチルを添加用漏斗から滴下によりフラスコに投入する。2Lのフラスコに2時間かけて添加すると、満足のいく結果が得られる。当業者には、より大容量の容器の使用が、それよりもずっと速い速度での硫酸ジメチルの添加を可能とし得ることが認識される。
【0058】
硫酸ジメチル添加の完了後、85℃の設定温度で36時間フラスコの内容物の撹拌を続け、次いでフラスコの内容物を周囲温度まで冷却し18時間にわたり静置する。デカンテーションおよび遠心分離により、フラスコの固体内容物を回収する。固体1グラムあたり10mlのジエチルエーテルおよびエタノールの体積比2:1の混合物中に懸濁させ、デカンテーションし、遠心分離することにより、固体内容物を2回洗浄する。2回目の洗浄、デカンテーションおよび遠心分離手順の後、手で触れる程度まで乾燥して見えるまで、70℃の設定温度で固体内容物を乾燥させる。乾燥温度は重要ではなく、周囲温度から100℃の範囲の温度が満足のいく結果をもたらすが、周囲温度では70℃または100℃よりも長い時間が必要であり、時間について調節する。
【0059】
ドデシルベンゼンスルホン酸塩除去手順1
多孔質メソ構造BaSO触媒担体の一部を、エタノールおよびジエチルエーテルの体積比2:1の混合物中に、30分間撹拌しながら懸濁させる。触媒担体の懸濁液を形成する限り、エタノール/ジエチルエーテル混合物の量は重要ではない。フラスコの内容物を遠心分離し、次いで液体をフラスコからデカンテーションする。上記手順を2回繰り返す。
【0060】
ドデシルベンゼンスルホン酸塩除去手順2
ドデシルベンゼンスルホン酸塩除去手順1を、変更を加えて繰り返す。まず、エタノールおよび濃塩酸の5:1(重量比)混合物で、エタノール/ジエチルエーテル混合物を置き換える。次に、二回目の遠心分離抽出後、固体を2回ジエチルエーテル中に懸濁させ、次いで懸濁した固体を遠心分離し、固体からジエチルエーテルをデカンテーションし、固体を空気乾燥させる。
【0061】
ドデシルベンゼンスルホン酸塩除去手順3
BaSO触媒担体のある量を、試薬用アセトン中に懸濁させ、懸濁した担体/アセトン混合物を撹拌しながら18時間還流加熱する。周囲温度まで冷却後、混合物を遠心分離して混合物から固体を回収し、固体を空気乾燥させる。
【0062】
ドデシルベンゼンスルホン酸塩除去手順はそれぞれ、多孔質メソ構造BaSO触媒担体の実質的に定量的な回収を提供する。
【0063】
Pdによる含浸(手順P)
水15mL中0.32gの酢酸パラジウムと、ドデシルベンゼンスルホン酸塩除去手順3を使用して調製された5gのBaSOとを使用してペーストを調製する。70℃の設定温度でペーストを一晩乾燥させる。担体の調製と同様に、本発明の精神または範囲から逸脱せずに、粉砕を促進するのに十分低い湿度を得る限り、所望により時間および温度を容易に調節することができる。粉砕された固体が#45の篩(354マイクロメートル(μmの篩開口)を通過するように、乾燥ペーストを粉砕する。粉砕された固体は、全粉砕固体重量を基準として3wt%の名目Pd金属含量を有する。
【0064】
Pdによる含浸(手順Q)
0.48gの硫酸バナジル(VOSO)で酢酸パラジウムを置き換えるように変更を加えて、手順Pを繰り返す。粉砕された固体は、全粉砕固体重量を基準として3wt%の名目V金属含量を有する。
【0065】
実施例1
反応容器として、容器中への気体材料(CHおよび窒素(N))導入用の付属品、温度測定用の内部熱電対、内部容器圧力測定用のトランスデューサ、および過圧気体の洗浄器への通気用の通気ラインを備える100ミリリットル(mL)の耐腐食性(HASTELLOY(商標)C276)Parr圧力容器を使用する。炉内で反応器を乾燥させ、次いで不活性ガス(N)雰囲気を有するグローブボックスに移す。反応器に、手順Aに従い調製された0.9グラム(g)の黄褐色/淡褐色固体を触媒として投入し、次いで反応器およびその内容物をグローブボックスから取り出す。気体反応物を供給する気体ライン、内部熱電対、トランスデューサおよび通気ラインに反応器を接続する。気体窒素で反応器を圧力試験し、次いで反応器を110℃の温度で圧力/通気サイクルに供し、反応器または触媒中に存在し得る潜在的残留湿度を除去する。
【0066】
気体ライン、熱電対、トランスデューサおよび通気ラインから反応器を外し、反応器をグローブボックスに戻し、次いでそれに5.3g(66ミリモル(mmol))の固体SO(Aldrich社製、227692−40G、安定化)を投入する。反応器の上部分を反応器に封止し、反応器にSOを投入した後、反応器をグローブボックスから取り出し、次いで反応器の上部分を気体ライン、熱電対、トランスデューサおよび通気ラインに再び接続する。
【0067】
反応器をCHで508ポンド/平方インチゲージ(psig)(3.5メガパスカル(MPa))に加圧し、それにより2.2/1のCH:SOモル比を提供し、次いで反応器の内容物を150℃の設定温度に加熱し、4.5時間その温度で内容物を維持してから、反応器の内容物を周囲温度まで冷却する。反応器の内容物を周囲温度まで冷却した後、反応器を徐々に10リットル(L)のTEDLAR(商標)バッグに通気して揮発性成分を回収し、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析する。
【0068】
15.59gの1N水酸化ナトリウム(NaOH)を反応器の内容物に添加し、反応器の内容物およびNaOHをかき混ぜてそれらを混合する(以降「リンス1」)。Parr容器の上部分を取り外し、pHが1未満で、ある程度固体を含有する黄色液体(15.6g)を容器からピペットで取り出す。
【0069】
ロック溶媒として重水(DO)、内標準物質として酢酸を使用したプロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)(200603233−15)による、黄色液体の2つの試料(それぞれ1g)の分析に基づき、液体は、約8.5mmolの計算CHOX(式中、X=水素(H)またはスルホン酸(SOH)部分である)含量を有する。CHOX含量は、反応物としての66mmolのSOを基準として、約13モルパーセント(mol%)の収率に等しい。
【0070】
SOの代わりに酸化薬剤として酸素分子(O)または二酸化硫黄(SO)を用いて実施例1を繰り返すと、H NMR分析では部分酸化生成物(例えばメタノール)の検出可能な量は得られない。
【0071】
比較例A
変更を加えて実施例1を繰り返す。触媒を、Pdを担持せずに供給されたままの状態で使用される0.95gのペルフルオロスルホン酸と置き換え、SOの量を4.45g(56mmol)まで、初期CH圧力を113psig(0.8MPa)まで低減する。反応器または触媒中に存在し得る潜在的残留湿度を除去するための110℃の温度での圧力/通気サイクルを省略する。反応器の内容物が150℃の設定温度に達すると、圧力トランスデューサは、299psig(2.1MPa)のCH圧力を示す。CH圧力が595psig(4.1MPa)に達するのに十分なCHを添加し、次いで反応器の内容物を150℃の設定温度で1.5時間維持してから、反応器の内容物を175℃の設定温度にさらに1.5時間加熱する。1N NaOHの量を15.63gに変更する。CH:SOのモル比は1:0.62である。
【0072】
実施例1に記載のような反応器の内容物(pHが1未満で、ある程度固体を含有する16.4gの黄色液体)の2つの1.3g試料一定量の分析では、0.39mmolの計算CHOX含量が得られ、これは56mmolのSOを基準として、0.7mol%の収率に等しい。
【0073】
実施例1の収率(13mol%)とこの比較例の収率(0.7mol%)の比較は、有機スルホン酸部分を含有する固体酸性触媒材料の一部としての遷移金属の含有の実用性を実証している。0.7mol%の収率は、有機スルホン酸部分を含むが遷移金属を含まない触媒材料を使用すると、達成されるCHの選択的部分酸化の程度が制限され得ることを実証している。選択的部分酸化がある程度生じることは実証しているものの、収率は十分低く、その収率および1mol%以下のその他の任意の収率は多くの場合経済的に魅力的ではないとみなされ得る。最適化されてはいないものの、より高い13mol%の収率は、経済的観点から、ずっとより魅力的である。
【0074】
実施例2から18、および比較例または比較例BからM
以下の表2に示すようなCHOXの収率を提供するように、以下の表1に示すように変化を加えて実施例1を繰り返す。「リンス2」は、リンス1において使用された1N NaOHを脱イオン水で置換している。実施例10、12、13および14、比較例D、比較例G、および比較例Hは、触媒をバスケット内に入れるように修正される。
【0075】
触媒バスケット(Wewark Wire Companyから入手可能)は、開いた上部を有し、高さ2センチメートル(2cm)、幅2.5cmのHastelloy(商標)C200メッシュスクリーンからなる。バスケットに触媒を加えた後、バスケットの周囲および下、ならびに容器の蓋のポートを通して巻いた長さ10cmのInconel(商標)ワイヤを使用して、バスケットの上部をParr容器の蓋にしっかりと固定する。
【0076】
実施例13、実施例14および比較例Hは、2.5cm×0.8cmのポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))で被覆された磁気駆動撹拌棒を触媒バスケット内で使用して、そこに堆積する触媒を撹拌するように修正される。デジタルRPM読出しを備えたSuper Magnetic(商標)Stirrer(Cole Parmer社製)を用いて、撹拌棒の回転を毎分約850回転(rpm)で行う。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
上記表2に示す結果は、特にそのような結果を上記実施例1および比較例Aの結果と組み合わせると、いくつかの見解を裏付ける。第1に、手順Aまたは手順Bに従い調製された触媒(Pd担持ペルフルオロスルホン酸触媒)は、Nafion SAC−13 SAC触媒上のその他の金属の使用から得られる結果を超える結果をもたらす。例えば、実施例2(手順D、V担持触媒)と比較して実施例1、実施例3、実施例4、実施例11および実施例16を参照されたい。第2に、実施例1のように、Pd担持ペルフルオロスルホン酸触媒は、実施例7(手順G)で使用されたスルホン化水酸化ジルコニウム等のPdの代替触媒担体よりも優れた結果をもたらす。第3に、本明細書に提示されたような小規模の実験は、実施例1および実施例11により明らかなように、結果の再現にある程度の変動をもたらす。第4に、実施例14(0.54wt%)のように、低い担持量のPdは、実施例1(2.4wt%)または実施例2(1.1wt%)のようなより高い担持量と比べて、CHOX収率の低下へとつながる。第5に、手順C(1N HSOによる触媒ドープ(または処理))は、実施例9(4.5wt%CHOX)対実施例11(9.0wt%CHOX)で示されるように、CHOX生成に悪影響を及ぼすようである。第6に、CHのCHOXへの選択的部分酸化は、125℃(実施例5)では150℃(実施例1)よりも実質的に遅く生じるようである。第7に、CHのCHOXへの選択的部分酸化は、実施例1から実施例18に示されるようなCH:SOモル比にわたり生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三酸化硫黄および気体メタンを固体酸性触媒材料と有効に接触させるステップを含む、実質的に溶媒を含まない方法であるメタンの選択的部分酸化のための方法であって、接触は、非気体形態のそのような三酸化硫黄の少なくとも一部を気体三酸化硫黄に変換し、またメタンの少なくとも一部を、メタノールおよびメタノール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の部分酸化生成物に選択的および部分的に酸化するために十分な温度、メタン圧力、および時間の長さの組合せで行われる方法。
【請求項2】
温度が、固体強酸性触媒材料が不安定となる温度未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体酸性触媒材料が、少なくとも1種の固体強酸性触媒材料である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
固体強酸性触媒材料が、不均一超酸触媒であり、超酸触媒は、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマー、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマーおよび多孔質無機担体の複合材、ならびに担持触媒から選択され、担持触媒は、ペルフルオロ化有機スルホン酸ポリマーおよび多孔質無機担体の複合材上のパラジウム、バナジウムおよびセリウムからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
接触が、約230℃以下の温度で行われる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
時間の長さが、メタンのその完全酸化生成物、一酸化炭素および二酸化炭素への実質的に完全な変換を達成するために十分な時間未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
時間の長さが、0.5分超から100時間以下の範囲内である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
範囲が、15分から6400分である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
範囲が、30分から300分である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
150℃の温度で測定されたメタン圧力が、25psig(170キロパスカルKPa)から2000psig(13,790KPa)の範囲内にある、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
範囲が、150psig(1034KPa)から1500psig(10,342KPa)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
範囲が、250psig(1724KPa)から1000psig(6,895KPa)である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
範囲が、500psig(3447KPa)から1000psig(6,895KPa)である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
担持触媒の遷移金属がパラジウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
担持触媒が、1重量パーセント超から4重量パーセント以下の範囲内のパラジウム金属担持量を有し、各重量パーセントは、全担持触媒重量を基準とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
パラジウム金属担持量が、2.2重量パーセント以上3重量パーセント以下の範囲内であり、各重量パーセントは、全担持触媒重量を基準とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
パラジウム金属担持量が、2.4重量パーセント以上2.9重量パーセント以下の範囲内であり、各重量パーセントは、全担持触媒重量を基準とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
三酸化硫黄およびメタンが、三酸化硫黄1モルあたりメタン0.1モルから三酸化硫黄1モルあたりメタン10モルの範囲内にある、三酸化硫黄のモルに対するメタンのモルの比率で存在する、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
範囲が、三酸化硫黄1モルあたりメタン2モルから、三酸化硫黄1モルあたりメタン5モルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
多孔質無機担体が、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウムおよびこれらの混合物から選択される金属の酸化物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項21】
選択的および部分的に酸化されたメタンの一部が、三酸化硫黄のモルを基準として、1モルパーセントを超える部分酸化生成物収率を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
部分酸化生成物収率が、三酸化硫黄のモルを基準として、少なくとも1.5モルパーセントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
部分酸化生成物収率が、三酸化硫黄のモルを基準として、少なくとも3モルパーセントである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
バッチ式の方法である、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
連続式の方法である、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
半バッチ式の方法である、請求項1から23のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−534658(P2010−534658A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518262(P2010−518262)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/068877
【国際公開番号】WO2009/017925
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】