説明

不定形耐火物の耐爆裂性評価方法及び評価装置、溶融金属容器の内張り耐火物の形成方法、並びにプログラム

【課題】不定形耐火物の耐爆裂性を、煩雑な作業を伴わずに、定量的に正確に評価することができる方法を提供する。
【解決手段】不定形耐火物の耐爆裂性評価方法は、(a)不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを作製する工程S13と、(b)作製した小型サンプルを加熱し、この加熱による小型サンプルの重さの減少量を測定する工程S14と、(c)その測定結果に基づいて、小型サンプル内における水分の移動のし易さを表すパラメータであって、加熱による小型サンプルの重さの減少量とは非線形の関係にある通水特性値kを求める工程S15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形耐火物の耐爆裂性評価方法及び評価装置、溶融金属容器の内張り耐火物の形成方法、並びにプログラムに関する。
【0002】
本明細書において、溶融金属容器とは、溶銑鍋、溶鋼鍋、タンディッシュ、混銑車、樋の他、転炉や脱ガス炉等の炉も含む概念とする。
【背景技術】
【0003】
溶融金属容器の内張り耐火物は、加水混練された不定形耐火物を容器内面に施工し、得られた施工体を養生したのち、ガスバーナやマイクロ波発生装置等の加熱機を用いて乾燥させてなる。施工体を乾燥させる際に留意すべき点に爆裂という問題がある。爆裂は、施工体内の水分が加熱により蒸発し、施工体の内部水蒸気圧が施工体の強度を上回ったときに起こると考えられる。この爆裂のトラブルを回避するためには、施工体の乾燥状況をモニタすることが有効である。
【0004】
特許文献1は、施工体の乾燥状況をモニタする方法として、(イ)施工体に熱電対を埋め込み、施工体の表層部及び内部の温度を測定する方法、(ロ)シリコーン油を充填した中空細管を施工体内に埋め込んで施工体内の蒸気圧を測定する方法、(ハ)施工体に一対の電極を埋め込み、それら電極間の電気抵抗値から残留水分量を推定する方法、(二)中性子水分計を用いる方法、及び(ホ)施工体の重量を測定する方法があると説明している。
【0005】
特許文献2では、上記(ホ)の方法の一態様として、不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを電気炉で乾燥させ、乾燥開始から1分毎に小型サンプルの重さの減少量を測定している。その測定値から小型サンプルの含水率を算出するとともに、その含水率によって不定形耐火物の乾燥特性を考察している。また、小型サンプルを厚さ方向の位置によって複数の層に分割し、層毎の含水率の時間変化を測定して、小型サンプル内における水分の移動について考察している。
【特許文献1】内之倉,「不定形耐火物と粉体工学(その27)第5章不定形耐火物の乾燥,焼成−乾燥プロセス,伝統的方法から最近の動向−」,耐火物,57〔11〕,2005年、p590〜597
【特許文献2】渡辺ら,「不定形耐火物の乾燥に関する一考察」,耐火物,37−590,1985年,p30〜33
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の(イ)〜(二)の方法によると、施工体の乾燥状況を正確にモニタできるが、モニタに必要な装置の構成が大がかりであるとともに、その設置作業に手間を要するきらいがある。施工現場に、複雑な装置を持ち込んで、煩雑な作業を行うことは望まれない。また、(イ)〜(ハ)の方法によると、施工体にセンサを埋め込まなくてはならないため、埋め込みによって施工体に損傷を与えることとなる。
【0007】
特許文献2の方法は、小型サンプルの重さの減少量をみるだけであるので、上記(イ)〜(二)の方法に比べると手間はかからないが、重さの減少量のみに基づく耐爆裂性の評価はやや正確性に欠けると考えられる。
【0008】
なお、特許文献2では、加熱による小型サンプルの重さの減少量から、含水率や乾燥速度を算出しているが、重さの減少量と含水率や乾燥速度とは線形の関係にあって両者は実質的に等価な物理量であるため、含水率や乾燥速度を算出したからといって、耐爆裂性の評価精度が向上する訳ではない。
【0009】
本明細書において、加熱による小型サンプルの重さの減少量というときは、これと線形の関係にある物理量、例えば小型サンプルの乾燥速度や含水率等を含む概念とする。
【0010】
特許文献2ではまた、小型サンプル内の水分の移動について考察しているが、そのためには小型サンプルを実際に複数の層に切断しており、作業が非常に煩雑になるとともに、層毎の含水率の時間変化をモニタしただけでは、小型サンプル内の水分の移動のし易さを定量的に評価することはできない。
【0011】
本発明の目的は、不定形耐火物の耐爆裂性を、煩雑な作業を伴わずに、定量的に正確に評価することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、(a)不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを作製する工程と、(b)作製した小型サンプルを加熱し、この加熱による小型サンプルの重さの減少量Qmを測定する工程と、(c)その測定結果Qmに基づいて、前記小型サンプル内における水分の移動のし易さを表すパラメータであって、加熱による小型サンプルの重さの減少量とは非線形の関係にある通水特性値を求める工程とを有する不定形耐火物の耐爆裂性評価方法が提供される。
【0013】
工程(a)の前に、(w)前記不定形耐火物の熱伝導率、比熱、かさ比重その他の物性値及び含有水分量と、前記小型サンプルの寸法及び加熱条件を含む予め決まっている工程(b)での測定条件と、前記小型サンプル内における水分の移動のし易さを表す通水特性値knとを用いて、工程(b)の加熱による該小型サンプルの重さの減少量の推定値Qを算出する工程であって、knを順次変化させてkn別にQを算出することにより、knとQとの関係Q[kn]を求める工程を有し、工程(c)では、Q[kn]がQmと一致又は近似するときのknの値を、前記通水特性値kとすることが好ましい。
【0014】
工程(c)が、(c1)前記不定形耐火物の熱伝導率、比熱、かさ比重その他の物性値及び含有水分量と、前記小型サンプルの寸法及び加熱条件を含む予め決まっている工程(b)での測定条件とを用いて、前記小型サンプルの通水特性値が或る値k´である場合の、工程(b)の加熱による該小型サンプルの重さの減少量の推定値Qcを算出する工程と、(c2)算出したQcと工程(b)の測定結果Qmとを比較し、両者の差が小さくなるようにk´の値を変更する工程と、(c3)工程(c1)及び(c2)を複数回繰り返したのちのk´の値を、前記通水特性値kとする工程とを含むことも好ましい。
【0015】
本発明の他の観点によれば、不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを加熱する加熱機、及び該加熱機の加熱による小型サンプルの重さの減少量を測定する質量計を有する乾燥装置と、前記質量計の測定結果Qmに基づいて、前記小型サンプル内における水分の移動のし易さを表すパラメータであって、加熱による小型サンプルの重さの減少量とは非線形の関係にある通水特性値を求める演算手段を有するコンピュータとを備えた不定形耐火物の耐爆裂性評価装置が提供される。
【0016】
前記コンピュータが、小型サンプルの通水特性値knと、前記加熱機の加熱による該小型サンプルの重さの減少量の推定値Qとを対応付けたQ[kn]を記憶した記憶手段を有し、前記演算手段が、Q[kn]と前記質量計の測定結果Qmとを照合し、両者が一致又は近似するときのknの値を、前記通水特性値とすることが好ましい。
【0017】
前記演算手段が、前記不定形耐火物の熱伝導率、比熱、かさ比重その他の物性値及び含有水分量と、前記小型サンプルの寸法及び加熱条件を含む前記乾燥装置での測定条件とに基づいて、前記小型サンプルの通水特性値が或る値k´である場合の、前記加熱機の加熱による小型サンプルの重さの減少量の推定値Qcを算出する処理と、算出したQcとQmとを比較して両者の差が小さくなるようk´の値を変更する処理とを複数回繰り返すことも好ましい。
【0018】
本発明のさらに他の観点によれば、(A)施工現場にて不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを作製する工程と、(B)作製した小型サンプルを加熱し、この加熱による小型サンプルの重さの減少量を測定する工程と、(C)その測定結果に基づいて、前記小型サンプル内における水分の移動のし易さを表すパラメータであって、加熱による小型サンプルの重さの減少量とは非線形の関係にある通水特性値を求める工程と、(D)前記不定形耐火物を溶融金属容器の内面に施工して得られる施工体を所与の養生条件に従って養生させ、かつ所与の乾燥条件に従って乾燥させるにあたり、該養生条件及び/又は乾燥条件の良否を、前記通水特性値に基づいて判定する工程とを有する内張り耐火物の形成方法が提供される。
【0019】
工程(D)が、(D1)工程(C)で求めた通水特性値と、前記不定形耐火物の熱伝導率、比熱、かさ比重その他の物性値及び含有水分量と、前記所与の乾燥条件とに基づき、前記施工体の内部水蒸気圧P[x,t]を求める工程と、(D2)求めた内部水蒸気圧P[x,t]を或る閾値PPと比較する工程とを含むことが好ましい。さらに、(D3)工程(D2)の比較結果に応じて前記施工体の養生条件及び/又は乾燥条件を修正する工程と、(D4)工程(D1)〜(D3)を複数回繰り返す工程とを含むことがより好ましい。
【0020】
本発明のさらに他の観点によれば、不定形耐火物の耐爆裂性を評価するためにコンピュータに、(i)不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを或る加熱条件に従って加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の推定値Qを、該小型サンプル内における水分の移動のし易さを表す通水特性値knを用いて算出する手順であって、knを順次変化させてkn別にQを算出することにより、knとQとの関係Q[kn]を求める手順と、(ii)前記小型サンプルを前記加熱条件に従って実際に加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の測定値Qmを取得する手順と、(iii)前記手順(i)で求めたQ[kn]とQmとを照合し、両者が一致又は近似するときのknの値を求める手順とを実行させるためのプログラムが提供される。
【0021】
本発明のさらに他の観点によれば、不定形耐火物の耐爆裂性を評価するためにコンピュータに、(I)不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを或る加熱条件に従って加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の測定値Qmを取得する手順と、(II)小型サンプル内における水分の移動のし易さを表す通水特性値を或るk´と定め、このk´の値を用いて、前記小型サンプルを前記加熱条件に従って加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の推定値Qcを算出する手順と、(III)算出したQcと、前記工程(I)で取得したQmとを比較し、両者の差が小さくなるようにk´の値を変更する手順と、(IV)前記手順(II)及び(III)を複数回繰り返す手順とを実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
不定形耐火物の耐爆裂性の評価においては、加熱による小型サンプルの重さの減少量(乾燥速度や含水率等を含む)がどうかというよりも、小型サンプル内における水分の移動のし易さがどうかということの方が重要である。発明者の研究によると、小型サンプル内における水分の移動のし易さの程度は、加熱による小型サンプルの重さの減少量と単純な比例関係にない。両者は、非線形の関係にある。小型サンプル内における水分の移動のし易さを考慮して耐爆裂性を評価することにより、重さの減少量のみに基づく従来の評価に比べると、より現実に即した正確な評価を得ることができる。
【0023】
小型サンプル内における水分の移動のし易さの程度をパラメータ(通水特性値)として算出することにより、耐爆裂性を定量的に評価することが可能となる。
【0024】
評価にあたっては、加熱による小型サンプルの重さの減少量を測定するだけでよいので、実際の施工現場において、不定形耐火物の耐爆裂性の評価を、煩雑な作業を伴わずに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、実施例による不定形耐火物の耐爆裂性評価装置を示す。この評価装置は、熱風発生機1、パイプ2、乾燥室3、及び電子天秤6を有する乾燥装置8と、CPU12及びメモリ13を有するコンピュータ10とで構成される。
【0026】
乾燥装置8では、熱風発生機1が、熱風を発生する。発生された熱風は、パイプ2を通して乾燥室3内に送り込まれる。乾燥室3内には、小型サンプル4が配置されている。小型サンプル4は、評価対象とする不定形耐火物の成形体よりなり、未乾燥状態において例えば3〜15質量%の水分を含有する。
【0027】
なお、小型サンプル4のサイズは特に限定されないが、小型サンプル4の作製の容易性や本評価装置の小型化等の観点から、小型サンプル4のサイズは、例えば1000cm以下であることが好ましい。
【0028】
熱風によって小型サンプル4が加熱され、小型サンプル4中の水分が蒸発する。これにより、小型サンプル4が乾燥し、その重さが減少する。小型サンプル4から蒸発した水分は、乾燥室3に形成された排気口5を通じて外部に排気される。
【0029】
乾燥室3は、電子天秤6に載っている。小型サンプル4を期間tmにわたって乾燥させたときの、小型サンプル4の重さの減少量Qmが、電子天秤6により測定され、測定結果Qmがデータ通信用配線7を介してコンピュータ10に取り込まれる。以下、乾燥装置8にてQmを測定する操作を、乾燥測定という。
【0030】
コンピュータ10では、CPU12が、メモリ13内の評価プログラム13aに従い、入力インターフェース11を介して取得したQmと、メモリ13に予め記憶された小型サンプル温度データ(Ts[x,t])13b及び施工体温度データ(Tr[x,t])13cとに基づいて、不定形耐火物の耐爆裂性を評価するための演算を行う。この演算の内容については、図3〜図5を参照して後述する。
【0031】
本評価装置を不定形耐火物の施工現場に配置しておけば、溶融金属容器の内面に施工された不定形耐火物の施工体の乾燥に先立ち、又は乾燥と並行して、その不定形耐火物よりなる小型サンプル4の乾燥測定を行うことで、所与の乾燥昇温スケジュールに従った場合の、施工体の爆裂の可能性の評価をコンピュータ10で事前に得ることができ、その評価結果に応じて所与の乾燥昇温スケジュールの良否を判定できる。所与の乾燥昇温スケジュールがきびしいと判定されれば、それを事前に修正できるため施工体の爆裂を回避できる。
【0032】
本評価装置においては、小型サンプル4の重さの減少量Qmを測定するだけで施工体の耐爆裂性の評価を得ることができるから、評価にあたって施工要員に煩雑な作業が要求されることはない。
【0033】
本評価装置は、小型で占有面積が小さく、かつ構成が簡素であるから、施工現場に配置してもなんら支障なく、従来の熱電対等のセンサを施工体に埋め込む方法や、中性子水分計を用いる方法等に比べると、手軽かつ速やかに乾燥測定を行うことができる。
【0034】
図2は、小型サンプル4の物理モデルを示す。コンピュータ10で行う演算の説明に先立ち、その演算に使用する各種変数等について説明する。小型サンプルの或る仮想断面内にX軸20を想定する。例えば、小型サンプルが円柱状であれば、その半径方向にX軸を想定する。X軸20上において、仮想断面の一端の位置をx=0、他端の位置をx=Lとする。
【0035】
x=0の位置からx=Lの位置にわたり、X軸20に沿って配列したL/Δx個の直方体状のセル21を考える。各セル21の幅はΔxであり、隣合うセル21どうしは接している。セル21の側面、即ち隣のセル21と接する面の面積をAとする。
【0036】
各セル21は、不定形耐火物を構成する耐火性粒子によって囲まれてできる微小空間を再現する。セル21毎に、そのセル内の温度Ts、圧力P、及び水分残量mを考える。面積Aの側面を通じて、或るセルから隣のセルに水分が移動することに伴い、Ts、P、及びmの値は、セル21毎に、かつ時間毎に変化すると考えるのが妥当であろう。従って、これらの変数は、位置xと時刻tの二次元配列、即ちTs[x,t]、P[x,t]、m[x,t]と表記される。
【0037】
このうちTs[x,t]は、予め分かっている不定形耐火物の熱伝導率、比熱、かさ比重その他の物性値と、小型サンプルの初期水分量と、予め決まっている図1の乾燥装置8による加熱条件とに基づいて、有限要素法により予め求められ、図1のコンピュータ10のメモリ13内に、小型サンプル温度データ13bとして記憶されている。
【0038】
ここで、小型サンプルの初期水分量とは、小型サンプルの乾燥測定前の含有水分量のことである。本実施例では、小型サンプルの初期水分量は、不定形耐火物の混練水分量に等しいと近似するものとする。
【0039】
なお、湿潤した対象物の物性値と初期水分量と加熱条件とから、有限要素法により対象物の内部温度分布の時間変化を求めるアルゴリズムは公知であるから、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図3に、実施例による溶融金属容器の内張り耐火物の形成方法のフローチャートを示す。ステップS1〜S12及びS15は、図1のコンピュータ10が評価プログラム13aに従って行う演算である。他のステップは、施工要員が行う処理である。
【0041】
まず、初期値として変数x、t、Q、及び配列P[0,0]にそれぞれ0を代入し、水分残量を表す配列m[0,0]、m[Δx,0]、…m[L,0]に、小型サンプルの初期水分量(不定形耐火物の混練水分量)を代入する(ステップS1)。即ち、t=0では、図2の各セル21内の水分残量は、不定形耐火物の混練水分量に等しい。
【0042】
次に、knをkmin〜kmaxまで変化させる第1のループ(ステップS2〜S12)と、tを0〜tm(tmは図1の乾燥装置8で小型サンプル4を乾燥させる期間)まで変化させる第2のループ(ステップS3〜S10)と、xをΔx〜L(Lは小型サンプル4の厚さ)まで変化させる第3のループ(ステップS4〜S8)との三重ループ内で、下記の式1〜式3を計算する。
【0043】
P[x,t]=f(Ts[x,t])・m[x,t]…(式1;ステップS5)
【0044】
式1で、fは、飽和水蒸気圧を示す関数である。即ち、空気中の飽和水蒸気圧は、温度によって一意に定まる。fには、例えばTetensの近似式を用いる。なお、温度Ts[x,t]が有限要素法により予め求められていることは既述のとおりである。
【0045】
式1では、図2の各セル21内の圧力を、単純に飽和水蒸気圧fに等しいとみなすのではなく、これに水分残量m[x,t]に応じた重み付けをすることにより、具体的には、水分残量m[x,t]の値をかけることにより、各セル21内の水蒸気圧を忠実に再現することができる。
【0046】
q[x,t]=kn・(A/Δx)・{P[x−Δx,t]−P[x,t]}…(式2;ステップS6)
【0047】
式2で、q[x,t]は、図2の或るセル21から、隣のセル21に面積Aの側面を通じて移動する水分量を表す。q[x,t]は、その符号によって、水分が移動する向きも表す。即ち、q[x,t]が負の場合は、図2のX軸の負方向に水分が移動し、正の場合は、図2のX軸の正方向に水分が移動する。
【0048】
knは、式2から分かるように、小型サンプル内の水分の移動のし易さ、具体的には、セル21間の水分の移動のし易さを表すパラメータ(以下、通水特性値という。)である。
【0049】
m[x,t+Δt]=m[x,t]−q[x,t]…(式3;ステップS7)
【0050】
式3は、式2で求めたq[x,t]を用いて、Δt経過後のセル21内の水分残量を定義する。即ち、或るセル21から隣のセル21に水分が移動した場合、その移動した水分量q[x,t]だけ、或るセル21内の水分残量m[x,t]が減る。
【0051】
次に、xを変化させる第3のループ(ステップS4〜S8)が終わる毎に、tを変化させる第2のループ(ステップS3〜S10)内で次の式4を計算する。
【0052】
Q=Q+q[L,t]+q[0,t]…(式4;ステップS9)
【0053】
式4では、変数Qに、q[L,t]+q[0,t]の値を足してゆく。q[0,t]は図2のX軸方向一端のセル21から外部(大気)に出る水分量を表し、q[L,t]はX軸方向他端のセル21から外部に出る水分量を表す。小型サンプルから外部に抜け出す水分量の合計が、小型サンプルの重さの減少量である。
【0054】
式4が、tを変化させる第2のループ内に配置されていることから分かるように、式4は、t=0〜tmにわたって小型サンプルから外部に抜け出す水分量の時間積分値である。この値が、図1の乾燥装置8の加熱による小型サンプル4の重さの減少量の推定値である。
【0055】
次に、tを変化させる第2のループ(ステップS3〜S10)が終わる毎に、knを変化させる第1のループ(ステップS2〜S12)内で、次の式5を計算する。
【0056】
Q[kn]=Q…(式5;ステップS11)
【0057】
式5は、通水特性値がknであるときのステップS9の時間積分値Qを、そのknと対応付けて記憶することを意味する。Q[kn]は、Qとknとを対応付ける一次元配列である。
【0058】
式5(ステップS11)が、knを順次変化させる第1のループ内に配置されていることから分かるように、通水特性値kn別にQを算出することにより、knとQとの関係Q[kn]を求める。求められたQ[kn]は、図1のコンピュータ10のメモリ13に格納される。
【0059】
なお、以上までの計算は、特に施工現場で行わなくてもよいため、図1のコンピュータ10が以上までの計算を行うのではなく、他のコンピュータで事前にQ[kn]を求め、その結果を図1のメモリ13に格納するようにしてもよい。この場合は、Ts[x,t](小型サンプル温度データ13b)をメモリ13に記憶しておく必要がない。予めQ[kn]を求めておくことにより、施工現場にて以上までの計算を行わなくて済み、その分、耐爆裂性の評価結果を得るのに要する時間を短縮できる利点がある。
【0060】
次に、施工要員は、施工現場にて、不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを作製する(ステップS13)。小型サンプルは、内張り耐火物を形成するために準備された不定形耐火物の一部を、小型サンプル用の型枠内に施工し、養生した成形体よりなる。
【0061】
成形体の養生時間は、実際の施工体の養生時間と一致させることが好ましい。また、小型サンプル用の型枠内への不定形耐火物の施工方法は、溶融金属容器内面への不定形耐火物の施工方法と一致させることが好ましい。
【0062】
例えば、溶融金属容器へ流し込み施工する場合は、小型サンプル用の型枠内へ流し込み施工することが好ましい。流し込みにあたって振動を付与する場合は、振動付与後の施工体から一部を小型サンプル用の型枠内にすくい取るようにしてもよい。また、溶融金属容器に湿式又は乾式法で吹付け施工する場合は、それに用いる吹付け施工装置によって、小型サンプル用の型枠内に吹付け施工することが好ましい。
【0063】
小型サンプルの作製条件によって、加熱による小型サンプルの重さの減少量Qmが変わる。小型サンプルの作製条件を、対応する内張り耐火物の形成条件と一致させることにより、より現実に即した正確な耐爆裂性評価を得ることが可能となる。
【0064】
次に、施工要員は、図1の乾燥装置8を用いて、小型サンプルを加熱し、この加熱による小型サンプルの重さの減少量Qmを測定する(ステップS14)。具体的には、未乾燥状態の小型サンプルの重さを測定し、この値をgとする。次に、期間tmにわたって小型サンプルを加熱したのちに、再び小型サンプルの重さを測定し、この値をgとする。Qmは、g−gである。
【0065】
なお、Qmとして、乾燥速度を表す(g−g)/tmを用いてもよい。但し、tmは不定形耐火物間で共通の定数とするため、乾燥速度(g−g)/tmは、重さの減少量g−gと実質的に等価な物理量である。
【0066】
次に、コンピュータ10は、ステップS14の測定結果Qmと、ステップS12までで求めたQ[kn]とを照合し、QmとQ[kn]とが一致又は近似するときのknの値を、変数kに代入する(ステップS15)。
【0067】
図4に、Q[kn]をプロットしたグラフを示す。通水特性値knが大きい程、即ち小型サンプル内における水分の移動のし易さの程度が大きい程、加熱による小型サンプルの重さの減少量Qが大きくなる。図4のグラフの形状から分かるように、knとQ[kn]とは、非線形の関係にある。
【0068】
図5は、図3に続くフローチャートである。ステップS16〜S25は、図1のコンピュータ10が評価プログラム13aに従って行う演算である。他のステップは、施工要員が行う処理である。
【0069】
まず、x、t、P[0,0]に、それぞれ初期値として0を代入し、m[0,0]、m[Δx,0]、…m[LL,0]に、不定形耐火物の混練水分量を代入したのち(ステップS16)、tを0〜TTまで変化させる第4のループ(ステップS17〜S23)と、xをΔx〜LLまで変化させる第5のループ(ステップS18〜S22)との二重ループ内で、ステップS19〜S21の計算を行う。
【0070】
実際の施工体に対しても、図2の物理モデルと同様の物理モデルを想定し、ステップS19〜S21の計算を行う。図5では便宜上、実際の施工体を表現する物理モデルの各セル内の圧力P、水分残量m、セル間の移動水分量qを表す二次元配列に、それぞれ小型サンプルの場合と同じラベルを付している。
【0071】
ステップS19〜S21の計算式の物理的意味は、図3のステップS5〜S7で計算した式1〜式3と同じであるため、以下、相違点についてのみ説明する。図3では、通水特性値kを求めるためにステップS5〜S7の繰り返し演算を行ったが、ここでは、施行体の内部水蒸気圧P[x,t]を求めるために、ステップS19〜S21の繰り返し演算を行う。
【0072】
ステップS17で、TTとは、実際の施行体の乾燥期間を表す。この値は、施工体に対する所与の乾燥昇温スケジュールによって決められる。
【0073】
ステップS18で、LLとは、施行体の厚さを表す。即ち、施工体の厚さ方向にx軸を想定し、溶融金属容器の稼動面側の位置をx=0、溶融金属容器の鉄皮側の背面の位置をx=LLとする。
【0074】
ステップS19で、Tr[x,t]とは、所与の乾燥昇温スケジュールに従って加熱中の施工体内の温度分布を示す。Tr[x,t]も、Ts[x,t]と同様、予め分かっている不定形耐火物の熱伝導率、比熱、かさ比重その他の物性値と、施工体の初期水分量(=不定形耐火物の混練水分量)と、所与の乾燥昇温スケジュールとに基づいて、有限要素法により予め求められ、図1のコンピュータ10のメモリ13内に、施工体温度データ13cとして記憶されているものとする。
【0075】
ステップS20で、kとは、図3のステップS15で求めた小型サンプルの通水特性値である。この通水特性値kを加味して、施工体内の圧力分布P[x,t]を求めるため、P[x,t]は実際の施工体内の圧力分布を忠実に再現したものとなる。
【0076】
次に、コンピュータ10は、求めたP[x,t]を図1の表示装置14に表示出力するとともに(ステップS24)、P[x,t]の値が或る閾値PPよりも大きいか否かを判定する(ステップS25)。なお、閾値PPは、例えば、施工体の曲げ強度に基づいて定められる。即ち、爆裂が起きるときの施工体の内部水蒸気圧は、施工体の曲げ強度と相関があることが知られている。
【0077】
P[x,t]がPPより大きければ(ステップS25:yes)、図1の表示装置14にその旨が表示され、施工要員はそれに基づいて、施行体に対する所与の乾燥昇温スケジュールを修正する(ステップS26)。P[x,t]がPP以下であれば(ステップS25:no)、処理を終える。
【0078】
図6に、図5のステップS24で表示装置14に表示出力されるグラフを例示する。横軸は時刻tを示し、縦軸は施工体内の最大発生蒸気圧を示す。時刻t1における最大発生蒸気圧とは、P[x,t]の時刻t1における時間的断面P[x]の最大値のことである。
【0079】
直線PPは、閾値を示す。ここでは、0.5MPaとした。このように、閾値も表示出力することにより、施工体内の最大発生蒸気圧が閾値を超えたか否かを視覚的に判定できる。
【0080】
曲線P1で示す圧力変動は、乾燥開始から約12時間経過後に、閾値PPを超えている。図5のステップS24で、このような結果が得られた場合は、施工体に対する所与の乾燥昇温スケジュールを修正する必要がある。
【0081】
曲線P2で示す圧力変動は、閾値PPを超えない。図5のステップS24でこのような場合には、乾燥昇温スケジュールを修正する必要がない。
【0082】
図7に、乾燥昇温スケジュールのグラフを例示する。横軸は時刻を示し、縦軸は目標加熱温度を示す。
【0083】
第1の乾燥昇温スケジュールS1は、初期の乾燥昇温レートは緩やかであるが、時刻t=約5〜7時間の期間に乾燥昇温レートを高めているため、その分、施工体の乾燥に要する時間を短縮できる。
【0084】
第2の乾燥昇温スケジュールS2は、時刻t全域にわたって乾燥昇温レートが緩やかであるため、爆裂の生じる懸念はないが、その分、施工体の乾燥に要する時間が長くなる弊害もある。
【0085】
例えば、第1の乾燥昇温スケジュールS1に従った場合、図6の曲線P1で示す圧力変動が得られるような場合は、第1の乾燥昇温スケジュールS1を、第2の乾燥昇温スケジュールS2に修正するとよいであろう。これにより、図6の曲線P1で示す圧力変動は、曲線P2で示すような圧力変動となって爆裂を回避できる。
【0086】
第1の乾燥昇温スケジュールS1も、爆裂を回避できるように定められていることは当然である。ところが、現実には、この乾燥昇温スケジュールに従って施工体を乾燥させているにも関らず、爆裂が起きてしまう場合がある。即ち、同じ乾燥昇温スケジュールに従ったとしても、爆裂が起きる場合と起きない場合とがある。この原因は当業者にも厳密には判っていないが、例えば、不定形耐火物の混練時に添加する水分量が必ずしも一定でないこと、混練に使用するミキサーの攪拌翼の磨耗によって不定形耐火物の混練の度合いが変わってくること、混練場の温度や湿度が必ずしも一定でないこと等の施工現場における外乱が原因しているのではないかと推定される。
【0087】
本実施例では、施工現場にて実際に施工に供される不定形耐火物から小型サンプルを作製するので、ステップS14で測定する小型サンプルの重さの減少量Qmの値には、そのような外乱要因も反映される。このため、爆裂の可能性を的確に評価でき、従来予測できなかった爆裂を予測できるようになる。乾燥昇温レートをS1からS2へと小さく修正することで乾燥に要する時間が長くなったとしても、爆裂を回避できることの意義は極めて大である。
【0088】
なお、乾燥昇温スケジュールの修正の仕方は、特に限定されない。図7では、乾燥昇温スケジュールの昇温レートをS1からS2へ低下させた例を示したが、例えば、施工体の乾燥工程において、図6の圧力変動がピーク値を示す時刻と対応する時刻よりも前に、昇温レートをゼロにする温度保持期間を挿入したり、昇温レートを負にした温度低下期間を挿入するといった修正を行ってもよい。
【0089】
また、乾燥昇温スケジュールの修正は、施工要員が行ってもよいし、図1のコンピュータ10が行うようにしてもよい。いずれにしても、修正後の乾燥昇温スケジュールの候補となるものを複数パターン準備しておき、ステップS24で表示出力されるP[x,t]の傾向に応じて、最適なものをその複数パターンの中から選択するようにすると、修正を容易に行える。
【0090】
また、図5のステップS26で、乾燥昇温スケジュールを変更後、再びステップS16に戻るようにし、P[x,t]の値がPPを下回ることが確認されるまで、ステップS16〜S26の処理を繰り返すようにしてもよい。この場合は、変更後の乾燥昇温スケジュールを考慮してTr[x,t]を修正してもよいし、変更前の乾燥昇温スケジュールに対応したTr[x,t]をそのまま用いてもよい。
【0091】
なお、図5では、ステップS25でyesと判定した場合に、乾燥昇温スケジュールだけを修正することとしたが、養生条件を修正してもよい。養生温度や養生期間の長さの修正によっても施工体の爆裂を防止しうる。具体的には、図5のステップS25でyesと判定した場合に、養生温度を高めたり、養生期間を延長するといった修正を行ってもよい。
【0092】
図8は、小型サンプルの乾燥測定を行う期間を示すタイミングチャートである。
【0093】
例1は、施工体の養生中に、乾燥測定が終了するようにしたものである。これによると、施工体の乾燥開始から乾燥終了までの間の乾燥昇温スケジュールの良否を事前に判定できる。また、乾燥測定の終了時点以降の、施工体の養生条件も判定できる。
【0094】
例2は、施工体の養生前に、乾燥測定が終了するようにしたものである。これによると、施工体の養生開始から養生終了までの間の養生条件、及び乾燥開始から乾燥終了までの間の乾燥昇温スケジュールの良否を事前に判定できる。
【0095】
例3は、施工体の乾燥中に、乾燥測定が終了するようにしたものである。乾燥開始から乾燥終了までの間の乾燥昇温スケジュールの良否を事前に判定するという観点からは、例1や例2のように、遅くとも施工体の乾燥開始前に、乾燥測定が終了していることが好ましいが、例3のように、乾燥測定の終了時点が施工体の乾燥途中であっても、乾燥測定の終了時点以降における施工体の乾燥昇温スケジュールの良否を判定でき、必要に応じてこれを修正することができる。
【0096】
統計的に、爆裂は、乾燥開始から概ね10時間後あたりで発生する場合が多いので、例3のケースでは、乾燥測定の終了時点が、施工体の乾燥開始後10時間以内であることが好ましい。
【0097】
図9は、他の実施例による溶融金属容器の内張り耐火物の形成方法のフローチャートである。ステップS31及びS32は、施工要員が行う処理である。ステップS33〜S46は、図1のコンピュータ10が、評価プログラム13aに従って行う演算処理である。
【0098】
まず、施工要員は、施工現場にて、不定形耐火物の施工体よりなる小型サンプルを作製し(ステップS31)、作製した小型サンプルを図1の乾燥装置8で乾燥させ、その重さの減少量Qmを測定する(ステップS32)。
【0099】
次に、コンピュータは、初期値として変数x、t、Qc、及び配列P[0,0]にそれぞれ0を代入し、水分残量を表す配列m[0,0]〜m[L,0]に不定形耐火物の混練水分量を代入し、さらにk´に或る適当な値を代入する(ステップS33)。
【0100】
次に、tを0〜tmまで変化させる第1のループ(ステップS34〜S41)と、xをΔx〜Lまで変化させる第2のループ(ステップS35〜S39)との二重ループ内で、ステップS36〜S38の計算を行う。
【0101】
なお、ステップS36〜S38で計算する式の物理的意味は、図3のステップS5〜S7で計算した式1〜3と同じであるため、重複する説明は省略する。図3と異なるのは、ステップS37で使用するk´を、予めステップS33で適当に与える点である。
【0102】
次に、tを変化させる第1のループ(ステップS34〜S41)内で、xを変化させる第2のループ(ステップS35〜S39)が終わる毎に、ステップS40の計算を行う。ステップS40の計算の意味は、図3のステップS9と同様である。ステップS40では、小型サンプルの通水特性値がk´であるときの、図1の乾燥装置8の加熱による小型サンプルの重さの減少量の推定値Qcを算出する。
【0103】
次に、ステップS40で求めたQcと、ステップS32の測定結果Qmとを比較し、両者の差の絶対値が、或る閾値εより小さいか否か判定する(ステップS42)。
【0104】
QcとQmとの差の絶対値が閾値ε以上であれば(ステップS42;no)、その差が小さくなるようにk´の値を変更する。具体的には、Qc>Qmであれば(ステップS43:yes)、k´の値をκだけ小さくし(ステップS44)、再びステップS34に戻る。一方、Qc≦Qmであれば(ステップS43:no)、k´の値をκだけ大きくし(ステップS45)、再びステップS34に戻る。
【0105】
QcとQmとの差の絶対値が閾値ε未満となれば(ステップS42;yes)、そのときのk´の値をkに代入し(ステップS46)、図5のフローチャートに進む。
【0106】
本実施例によると、ステップS33でk´に与える値によっては、ステップS46のkを求めるまでの計算量を、図3の実施例の場合よりも低減しうる利点がある。
【0107】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限られない。この他、種々の設計変更、改良、及び組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施例による耐爆裂性評価装置の概略図である。
【図2】小型サンプルの物理モデルを示す概念図である。
【図3】実施例による内張り耐火物の形成方法を示すフローチャートである。
【図4】knとQ[kn]の関係を示すグラフである。
【図5】図3又は図9に続くフローチャートである。
【図6】不定形耐火物の施工体内の最大発生蒸気圧の時間変化を示すグラフである。
【図7】乾燥昇温スケジュールを示すグラフである。
【図8】乾燥測定を行う期間を示したタイミングチャートである。
【図9】他の実施例による内張り耐火物の形成方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
1…熱風発生機(加熱機)、2…パイプ、3…乾燥室、4…小型サンプル、5…排気口、6…電子天秤(質量計)、7…データ通信用配線、8…乾燥装置、10…コンピュータ、11…インターフェース、12…CPU(演算手段)、13…メモリ(記憶手段)、13a…評価プログラム(プログラム)、13b…小型サンプル温度データ、13c…施工体温度データ、20…X軸、21…セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを作製する工程と、
(b)作製した小型サンプルを加熱し、この加熱による小型サンプルの重さの減少量を測定する工程と、
(c)その測定結果に基づいて、前記小型サンプル内における水分の移動のし易さを表すパラメータであって、加熱による小型サンプルの重さの減少量とは非線形の関係にある通水特性値を求める工程と
を有する不定形耐火物の耐爆裂性評価方法。
【請求項2】
不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを加熱する加熱機、及び該加熱機の加熱による小型サンプルの重さの減少量を測定する質量計を有する乾燥装置と、
前記質量計の測定結果に基づいて、前記小型サンプル内における水分の移動のし易さを表すパラメータであって、加熱による小型サンプルの重さの減少量とは非線形の関係にある通水特性値を求める演算手段を有するコンピュータと
を備えた不定形耐火物の耐爆裂性評価装置。
【請求項3】
(A)施工現場にて不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを作製する工程と、
(B)作製した小型サンプルを加熱し、この加熱による小型サンプルの重さの減少量を測定する工程と、
(C)その測定結果に基づいて、前記小型サンプル内における水分の移動のし易さを表すパラメータであって、加熱による小型サンプルの重さの減少量とは非線形の関係にある通水特性値を求める工程と、
(D)前記不定形耐火物を溶融金属容器の内面に施工して得られる施工体を所与の養生条件に従って養生させ、かつ所与の乾燥条件に従って乾燥させるにあたり、該養生条件及び/又は該乾燥条件の良否を、前記通水特性値に基づいて判定する工程と
を有する内張り耐火物の形成方法。
【請求項4】
不定形耐火物の耐爆裂性を評価するためにコンピュータに、
(i)不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを或る加熱条件に従って加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の推定値Qを、該小型サンプル内における水分の移動のし易さを表す通水特性値knを用いて算出する手順であって、knを順次変化させてkn別にQを算出することにより、knとQとの関係Q[kn]を求める手順と、
(ii)前記小型サンプルを前記加熱条件に従って実際に加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の測定値Qmを取得する手順と、
(iii)前記手順(i)で求めたQ[kn]とQmとを照合し、両者が一致又は近似するときのknの値を求める手順と
を実行させるためのプログラム。
【請求項5】
不定形耐火物の耐爆裂性を評価するためにコンピュータに、
(I)不定形耐火物の成形体よりなる小型サンプルを或る加熱条件に従って加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の測定値Qmを取得する手順と、
(II)小型サンプル内における水分の移動のし易さを表す通水特性値を或るk´と定め、このk´の値を用いて、前記小型サンプルを前記加熱条件に従って加熱した場合の該小型サンプルの重さの減少量の推定値Qcを算出する手順と、
(III)算出したQcと、前記工程(I)で取得したQmとを比較し、両者の差が小さくなるようにk´の値を変更する手順と、
(IV)前記手順(II)及び(III)を複数回繰り返す手順と
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−304330(P2008−304330A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151919(P2007−151919)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】