説明

不斉合成における使用のためのキラル配位子

本発明はビアリールビスホスフィン及びその中間生成物に関する。更に、本発明の範囲は、該ビスアリールホスフィンから製造できる触媒並びに不斉合成におけるその使用を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビアリールビスホスフィン及びその中間生成物に関する。更に、本発明の範囲は、該ビアリールビスホスフィンから製造できる触媒並びに不斉合成におけるその使用を包含する。
【0002】
エナンチオマー濃縮されたビアリールビスホスフィン、特に置換されたビナフチレン及びビフェニレンから誘導されるものは、遷移金属錯体触媒の配位子としてしばしば良好もしくは非常に良好なエナンチオ選択性をもたらす(例えばHelv. Chim. Acta 1988, 71, 897 - 929; Acc. Chem. Res. 1990, 23, 345 - 350; Synlett 1994, 501 - 503; Angew. Chem. 2001, 113, 40 - 75を参照のこと)。
【0003】
ビアリール系上の又はホスフィン基内の置換基の種類及び配置によって決められる立体因子及び電子因子は、かかる配位子から製造される触媒のエナンチオ選択性及び活性の両者に影響を及ぼす。
【0004】
個々の場合において、この種のRh及びRu触媒は工業的にエナンチオ選択的なC=C二重結合の異性化及びエナンチオ選択的な水素添加のために使用される。かかる工業的手法の数は従来制限されており、それというのも多数の基質のために広範に効率的に使用できる利用可能な配位子の数が少ないためである。むしろこの分野における総括的な研究は、非常に特異的な基質のためにしばしば”テイラード”である触媒の原則的特性である基質特異性のため、同じ基質グループ内の僅かな変化さえも、非常に類似した生成物のために不可欠なエナンチオマー純度が達成されないことを示している。
【0005】
J. Org. Chem. 2000, 65, 6223 - 6226、WO01/21625から、6,6’位で架橋されたビフェニルビスホスフィンの新規のグループの代表物は公知であり、このグループは、架橋要素の内部のアルキレン基の長さの変更により、この配位子から製造される触媒を特定の基質(ここでは:β−ケトエステル)に適合させることを可能にするため、最適化されたエナンチオ選択性が達成される。J. Org. Chem.において発表された研究の結果として、−(CH−基を有する配位子を有する触媒に関する最適化されたエナンチオ選択性は「架橋単位」(”C4TunaPhos”)と記載されている。
【0006】
上記の刊行物とは無関係に、前記の配位子グループの個々の代表物はEP−A1095946に開示されている。
【0007】
しかしながら一般に高い水準のエナンチオ選択性及び活性の両者を可能にし、そして配位子系における置換基の変更により簡単に特定の基質に適合させることが可能な配位子ないしそれらから製造できる触媒のグループを提供することが要求されている。
【0008】
本発明の対象は、式(I)
【0009】
【化1】

[式中、
Bは式−(CHR−(RC=CR)−(CHRの二価の基を表し、その際、R、R、R及びRはそれぞれ互いに無関係に水素又はアルキル、有利にはC〜C−アルキルを表し、n及びmはそれぞれ互いに無関係に0又は1〜8の整数を表すが、但しnとmとからの総和は1〜8、有利には2又は4、特に有利には2であり、更に、
Gは塩素又は水素、有利には水素を表し、かつ
R’及びR’’はそれぞれ互いに無関係にアリール又はアルキルを表すか、又は
Bは式−(CHR−(CR−(CHRの二価の基を表し、その際、R、R、R及びRは都度互いに無関係に水素又はアルキル、有利にはC〜C−アルキルを表し、かつn、m及びoはそれぞれ互いに無関係に0又は1〜8の整数を表すが、但しn、m及びoからの総和は1〜8、有利には3又は4であり、更に、
Gは塩素を表し、かつ
R’及びR’’はそれぞれ互いに無関係にアリール又はアルキルを表す]
の化合物である。
【0010】
純粋な立体異性体もその任意の混合物、例えば特にラセミ混合物も本発明に包含される。95%以上、殊に有利には99%以上の立体異性体純度を有する式(I)の立体異性濃縮された化合物が有利である。2種のエナンチオマー形を生じうる式(I)の化合物の場合においては、従って90%以上のeeは有利であり、98%以上のeeは特に有利であり、99%以上のeeは極めて殊に有利である。
【0011】
本発明の範囲内では、前記又は以下に示される、全ての一般的にか又は有利な範囲で記載される基の定義、パラメータ及び説明は、相互に、即ち各範囲及び有利な範囲の間でも任意に組み合わせられてよい。
【0012】
エナンチオマー濃縮された、とは、本発明の範囲内で、エナンチオマー的に純粋な化合物か、又は一方のエナンチオマーが他方のエナンチオマーと比較してエナンチオマー過剰で(以下でee(エナンチオマー過剰)とも呼称される)存在する化合物のエナンチオマーの混合物を意味する。有利には、このエナンチオマー過剰は10〜100%ee、特に有利には80〜100%ee、極めて特に有利には95〜100%eeである。
【0013】
立体異性体ないし立体異性濃縮された、という概念は、ジアステレオマーをも生じうる化合物と類似して用いられる。
【0014】
アルキルは、例えば、非分枝鎖状、分枝鎖状、環式又は非環式の、非置換であるか又は少なくとも部分的にフッ素、塩素又は非置換もしくは置換のアリール又はC〜C−アルコキシによって置換されていてよいC〜C12−アルキル基を表す。特に有利には、アルキルは分枝鎖状、環式又は非環式の、更に置換されていないC〜C12−アルキル基を表す。
【0015】
アリールは、例えば、6〜18個の骨格炭素原子を有する炭素環式芳香族基又は5〜18個の骨格炭素原子を有する複素芳香族基であって、その中で1つの環あたり1つの骨格炭素原子も窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子によって置換されていないか、1つの環あたり1、2又は3つの骨格炭素原子、しかしながら分子全体では少なくとも1つの骨格炭素原子が窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子によって置換されていてよいものを表す。更に炭素環式芳香族基又は複素芳香族基は、1つの環あたり5つまでの同一又は異なる、遊離の又は保護されたヒドロキシ、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素、シアノ、遊離の又は保護されたホルミル、C〜C12−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、n−オクチル又はイソオクチル、C〜C12−アリール、例えばフェニル、C〜C−アルコキシ、トリ(C〜C−アルキル)シロキシル、例えばトリメチルシロキシル、トリエチルシロキシル及びトリ−n−ブチルシロキシルの群から選択された置換基によって置換されていてよい。
【0016】
6〜18個の骨格炭素原子を有する炭素環式芳香族基の例は、例えばフェニル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル及びフルオレニルであり、5〜18個の骨格炭素原子を有する複素芳香族基であって、その中で1つの環あたり1つの骨格炭素原子も窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子によって置換されていないか、1つの環あたり1、2又は3つの骨格炭素原子、しかしながら分子全体では少なくとも1つの骨格炭素原子が窒素、硫黄又は酸素の群から選択されたヘテロ原子によって置換されていてよいものは、例えばピリジニル、オキサゾリル、チオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、トリアゾリル又はキノリニルである。
【0017】
保護されたホルミルは、本発明の範囲内において、アミナール、アセタール又は混合アミナールアセタール(その際、アミナール、アセタール及び混合アミナールアセタールは非環式又は環式であってよい)への変換によって保護されているホルミル基を表す。
【0018】
保護されたヒドロキシは、本発明の範囲内において、アセタール、カーボネート、カルバメート又はカルボキシレートへの変換によって保護されているヒドロキシ基を表す。その例は、テトラヒドロピラニル付加物、ベンジルオキシカルボニル誘導体、アリルオキシカルボニル誘導体又はt−ブチルオキシカルボニル誘導体への変換である。
【0019】
式(I)の化合物の有利な範囲を以下に定義する。
【0020】
、R、R及びRは有利にはそれぞれ互いに無関係に水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル及びn−ペンチルを表し、特に有利には水素、メチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピルを表し、極めて特に有利にはそれぞれ同一であり水素を表す。
【0021】
R’及びR’’は有利にはそれぞれ互いに無関係に、より有利にはそれぞれ同一であり、非置換であるか、塩素、フッ素、シアノ、フェニル、C〜C−アルコキシ及びC〜C−アルキルの群から選択された基によって一置換又は多置換されているC〜C−アルキル又はC〜C10−アリール、特に有利にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、フェニル、o−、m−、p−トリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−フルオロフェニル、2−、3−フリル、2−、3−チオフェン−イル、2−N−メチルピロリル、N−メチル−2−インドリル及び2−チアゾリルを表す。
【0022】
式(I)の特に有利な化合物として以下のものが挙げられる:
(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−フェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィン並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィン並びに相応するトランス−化合物(その際、上記のシス−化合物が有利である)、並びに
(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−フェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィン並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィン、立体異性体(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニルホスフィン)、立体異性体(R)及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィン)並びにエナンチオマーの任意の混合物。
【0023】
本発明による式(I)の化合物は、例えば、6,6’位で架橋されたビフェニルビスホスフィンの合成に関して既に記載されている自体公知の方法と類似の方法で製造することができる。
【0024】
例えば、5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル]ビスホスフィン又は類似の化合物から、エーテル分解によって、相応する6,6’−ジヒドロキシビスホスフィンを得ることができ、これは引き続き式(II)
−B−X (II)
[式中、
Bは式(I)の説明に記載された意味及び有利な範囲を有し、かつ
及びXはそれぞれ互いに無関係に塩素、臭素又はヨウ素を表す]
の化合物を用いて、自体公知の条件下で(例えばJ. Org. Chem. 2000, 65, 6224を参照のこと)処理することにより、本発明による式(I)の化合物に変換される。
【0025】
式(I)の化合物の製造のために、有利には、
工程a)において、
式(V)
【0026】
【化2】

の化合物をエーテル分解によって式(III)
【0027】
【化3】

の化合物に変換し、
工程b)において、
式(III)の化合物を、塩基の存在下での式(II)の化合物との反応によって、式(IV)
【0028】
【化4】

の化合物に変換し、
かつ工程c)において、
式(IV)の化合物を還元し、式(I)
【0029】
【化5】

の化合物に変換するという手段がとられ、
その際、B、G,R’及びR’’は上記で式(I)及び(II)において既に定義されたものと同一の条件及び有利な範囲を有し、
Rは式(V)においてC〜C−アルキルを表す。
【0030】
まだエナンチオマー濃縮されていない式(V)の化合物を式(I)の化合物の製造のために使用するならば、有利には式(IV)の化合物を自体公知のように、例えばキラルな補助試薬との反応によるか又はエナンチオマーの場合にはキラルカラム材料上での連続的又は回分式のクロマトグラフィーによって立体異性体に分割することができる。
【0031】
工程a)によるエーテル分解は、例えば自体公知のようにBBrとの反応及び引き続いての水での処理によって実施してよい。
【0032】
式(III)の化合物と式(II)の化合物との工程b)での反応は、有利には塩基の存在下に有機溶剤中で実施される。
【0033】
溶剤として、特にアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール又はエチレングリコールモノメチルエーテル及びアミド溶剤、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドン又は前記の溶剤の混合物が適当である。
【0034】
塩基として、例えばアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩又はアルコラートを使用してよく、例えば:酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム又はナトリウムメタノラートを挙げることができる。塩基として三級アミン、例えばトリエチルアミン又はトリブチルアミンを使用することもできる。
【0035】
使用される式(III)の化合物と式(II)の化合物とのモル比は、有利には1:1〜1:4であり;一般に、完全な反応のためであっても、僅かに過剰な式(II)の化合物で十分である。塩基は、有利には式(III)の化合物に対して少なくとも当量で使用される。溶剤に不溶な塩基、例えばDMF中の炭酸カリウムを使用する場合には、4〜10倍のモル量を使用し、同時に懸濁液が強力に完全混合されるように配慮することが有利である。
【0036】
工程b)における反応は2相系において実施してもよく、その際、非水相として、生じる式(IV)の生成物が少なくとも主に可溶性である溶剤が使用され、そのために例えばジクロロメタンが適当である。この反応の変法において、相間移動触媒、例えば四級アンモニウム又はホスフィン塩及びテトラブチルアンモニウム塩を使用することが有利である。テトラブチルアンモニウム塩が有利である。
【0037】
式(III)の化合物を反応させて、式(IV)の化合物を生成するにあたっての反応温度は、例えば約20℃〜100℃の範囲内、有利には20℃〜80℃の範囲内であってよい。
【0038】
工程c)における式(IV)の化合物から式(II)の化合物への還元は、有利には自体公知の方法によって、例えば不活性溶剤、例えばトルエン又はキシレン中で、かつ三級アミン、例えばトリ−n−ブチルアミンの存在下に還流温度でトリクロロシランと反応させることによって実施される(例えばEP−A398132、EP−A749973及びEP−A926152を参照のこと)。
【0039】
更に、6,6’位の置換基がアルケンジイル基である本発明による式(IV)の化合物は、上記の意味を有する式(III)の化合物を、まず
・式(VIa)又は(VIb)
−(CHR−(RC=CHR) (VIa)
−(CHR−(RC=CHR) (VIb)
[式中、
及びXはそれぞれ塩素、臭素、ヨウ素又はスルホネートを表し、有利には塩素、臭素又はヨウ素を表し、かつ
、R、R及びRは有利な範囲を含めて上記の意味を有し、かつ
及びRはそれぞれ互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表す]
の化合物と、又は逐次的に式(VIa)及び(VIb)の2種の異なる化合物と反応させ、式(VII)
【0040】
【化6】

の化合物に変換し、次いで式(VII)の化合物をオレフィン−メタセシス触媒の存在下に式(IV)の化合物に変換することによっても製造することができる。
【0041】
次いで、式(IV)の化合物を上記のように還元し、式(I)の化合物に変換することができる。
【0042】
式(III)の化合物と式(VIa)及び/又は(VIb)の化合物との反応に関して、上記された方法の工程b)のために記載された溶剤、温度、モル比及びその他の反応パラメータが同様に当てはまる。
【0043】
式(VII)の化合物から式(IV)の化合物への反応のために、オレフィン−メタセシス触媒、特にルテニウム−カルベン−錯体が適当である。有利なルテニウム−カルベン−錯体は、例えば式(Xa)及び(Xb)
【0044】
【化7】

のものであり、ここで、
式(Xa)において、
Arはアリールを表し、Halは塩素、臭素又はヨウ素を表し、かつRはそれぞれ無関係にC〜C12−アルキル、C〜C12−アリール又はC〜C13−アリールアルキルを表し、
式(Xb)において、
o−アリールジイルはオルト−二価C〜C24−アリール基を表し、該基は更に、アリールのために既に上記で定義されている基を4個まで有してよく、Halは塩素、臭素又はヨウ素を表し、Bは場合によりC〜C12−アルキル、C〜C12−アリール又はC〜C13−アリールアルキルにより一置換又は二置換された1,2−エタンジイル−又は1,2−エテンジイルを表し、かつRはそれぞれ無関係にC〜C12−アルキル、C〜C12−アリール又はC〜C13−アリールアルキルを表す。
【0045】
最後に記載された式(IV)の化合物の製造法は、式(I)の化合物の製造のために必要な、特に純粋な立体異性体の形とその任意の混合物との双方、特にラセミ混合物の式(IV)及び(VII)の化合物と同様に本発明に包含される。
【0046】
式(VII)の化合物として、以下のものが挙げられる:
(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド。
【0047】
式(IV)の化合物として、以下のものが挙げられる:
(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド並びにそれぞれのトランス−化合物(その際、シス−化合物が有利である)、並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド、立体異性体(R)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−(ジフェニル−ホスフィンオキシド)、立体異性体(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)並びにエナンチオマーの任意の混合物。
【0048】
有利には立体異性濃縮された形の式(I)の化合物は、エナンチオマー濃縮された化合物の製造方法のために触媒として使用できる遷移金属錯体の製造のための配位子として特に適当である。
【0049】
式(I)の化合物についての有利な範囲は、以下で前記と同様に当てはまる。
【0050】
従って本発明は、式(I)の化合物を含有する遷移金属錯体も、本発明による遷移金属錯体を含有する触媒もいずれも包含している。
【0051】
この場合有利な遷移金属錯体は、遷移金属化合物の存在下での式(I)の化合物の反応によって得ることができるものである。
【0052】
有利な遷移金属化合物は、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム及びニッケルの化合物であり、その際、ロジウム、イリジウム及びルテニウムの化合物は更に有利である。
【0053】
有利な遷移金属化合物は、例えば式(VIIIa)
M(Y (VIIIa)
[式中、
Mはルテニウム、ロジウム、イリジウムを表し、かつ
はクロリド、ブロミド、アセテート、ニトレート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はアセチルアセトネートを表す]
の遷移金属化合物、又は式(VIIIb)
M(Y (VIIIb)
[式中、
Mはルテニウム、ロジウム、イリジウムを表し、かつ
はクロリド、ブロミド、アセテート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラ(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート又はテトラフェニルボレートを表し、かつ
pは、ロジウム及びイリジウムの場合には1を表し、かつルテニウムの場合には2を表し、
はそれぞれC〜C12−アルケン、例えばエチレン又はシクロオクテン又はニトリル、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル又はベンジルニトリルを表すか、又は
は一緒になって(C〜C12)−ジエン、例えばノルボルナジエン又は1,5−シクロオクタジエンを表す]
の遷移金属化合物、又は式(VIIIc)
[MB (VIIIc)
[式中、
Mはルテニウムを表し、かつ
はアリール基、例えばシメン、メシチル、フェニル又はシクロオクタジエン、ノルボルナジエン又はメチルアリルを表す]
の遷移金属化合物、又は式(VIIId)
Me[M(Y] (VIIId)
[式中、
Mはイリジウム又はロジウムを表し、かつ
はクロリド又はブロミドを表し、かつ
Meはリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す]
の遷移金属化合物、又は式(VIIIe)
[M(B]An (VIIIe)
[式中、
Mはイリジウム又はロジウムを表し、かつ
は(C〜C12)−ジエン、例えばノルボルナジエン又は1,5−シクロオクタジエンを表し、
Anは非配位性又は弱配位性のアニオン、例えばメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラ(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート又はテトラフェニルボレートを表す]
の遷移金属化合物である。
【0054】
更に、遷移金属化合物として、シクロペンタジエニルRu、Rh(acac)(CO)、Ir(ピリジン)(1,5−シクロオクタジエン)又は多核の架橋錯体、例えば[Rh(1,5−シクロオクタジエン)Cl]及び[Rh(1,5−シクロオクタジエン)Br]、[Rh(エテン)Cl]、[Rh(シクロオクテン)Cl]、[Ir(1,5−シクロオクタジエン)Cl]及び[Ir(1,5−シクロオクタジエン)Br]、[Ir(エテン)Cl]及び[Ir(シクロオクテン)Cl]が有利である。
【0055】
極めて特に有利に使用される遷移金属化合物は以下の通りである:
[Rh(cod)Cl]、[Rh(cod)Br]、[Rh(cod)]ClO、[Rh(cod)]BF、[Rh(cod)]PF、[Rh(cod)]OTf、[Rh(cod)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、[Rh(cod)]SbF、RuCl(cod)、[(シメン)RuCl、[(ベンゼン)RuCl、[(メシチル)RuCl、[(シメン)RuBr、[(シメン)RuI、[(シメン)Ru(BF、[(シメン)Ru(PF、[(シメン)Ru(BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、[(シメン)Ru(SbF、[Ir(cod)Cl]、[Ir(cod)]PF、[Ir(cod)]ClO、[Ir(cod)]SbF、[Ir(cod)]BF、[Ir(cod)]OTf、[Ir(cod)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、RuCl、RhCl、[Rh(nbd)Cl]、[Rh(nbd)Br]、[Rh(nbd)]ClO、[Rh(nbd)]BF、[Rh(nbd)]PF、[Rh(nbd)]OTf、[Rh(nbd)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、[Rh(nbd)]SbF、RuCl(nbd)、[Ir(nbd)]PF、[Ir(nbd)]ClO、[Ir(nbd)]SbF、[Ir(nbd)]BF、[Ir(nbd)]OTf、[Ir(nbd)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、Ir(ピリジン)(nbd)、RuCl、[Ru(DMSO)Cl]、[Ru(CHCN)Cl]、[Ru(PhCN)Cl]、[Ru(cod)Cl、[Ru(cod)(メチルアリル)]及び[Ru(アセチルアセトネート)]。
【0056】
特に有利な遷移金属錯体は、式(VIIIa、b、c)
[M(I)Hal] (VIIIa)
[M(cod)(I)]An (VIIIb)
[M(nbd)(I)]An (VIIIc)
[式中、
Mはロジウム又はイリジウムを表し、かつ
Halはクロリド、ブロミド又はヨージドを表し、かつ
(I)は式(I)の化合物を表し、かつ
Anは非配位性又は弱配位性のアニオン、例えばメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラ(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート又はテトラフェニルボレートを表す]
の化合物、及び式(IXa、b、c、d、e、f)
[Ru(AcO)(I)] (IXa)
[RuCl(I)NEt] (IXb)
[RuHal(I)(AR)] (IXc)
[Ru(I)](An) (IXd)
[{RuHal(I)}(μ−Hal)[(R’’’)NH (IXe)
[RuHal(I)(ジアミン)] (IXf)
[式中、
Halはクロリド、ブロミド又はヨージドを表し、かつ
(I)は式(I)の化合物を表し、かつ
Anは非配位性又は弱配位性のアニオン、例えばメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラ(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート又はテトラフェニルボレートを表し、かつ
基R’’’はそれぞれ無関係にC〜C−アルキルを表し、かつ
ジアミンは、有利には(S,S)−及び(R,R)−1,2−ジフェニル−エチレン−ジアミン及び(R)−又は(S)−1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−3−メチル−1,2−ブタンジアミンの群から選択されたキラルの1,2−ジアミンを表し、かつ
ARは、有利にはベンゼン、p−シメン及びメシチレンの群から選択されたアレン配位子を表す]
の化合物である。
【0057】
かかる種類の錯体の製造は原則的に公知であり、例えばChemistry Letters, 1851, 1989;J. Organomet. Chem., 1992, 428, 213 (VIIIa、b、c);J. Chem. Soc., Chem. Commun., 922, 1985 (IXa、b、c、d)、EP−A945457(IXe)及びPure Appl. Chem., Vol. 71, 8, 1493-1501, 1999 (IXf))に記載される方法に類似の方法で実施できる。
【0058】
本発明による遷移金属錯体及び触媒は、エナンチオマー濃縮された化合物の遷移金属触媒による製造法における使用のため、及びC=C二重結合の異性化のために特に適当であり、それも同様に本発明に包含される。
【0059】
ここで、単離された遷移金属錯体、例えば式(VIIIa−c)及び(IXa−e)の遷移金属錯体も、その場で製造される遷移金属錯体も両者とも使用できるが、その際、後者が有利である。
【0060】
該遷移金属錯体及び触媒は、有利には不斉水素添加のために使用される。有利な不斉水素添加は、例えばプロキラルなC=C結合、例えばプロキラルなエナミン、オレフィン、エノールエーテル、C=O結合、例えばプロキラルなケトン及びC=N結合、例えばプロキラルなイミンの水素添加である。特に有利な不斉水素添加は、プロキラルなケトン、特にα−及びβ−ケトエステル、例えばクロロアセト酢酸メチル−又はエチルエステル並びにアセト酢酸メチル−又はエチルエステルの水素添加である。
【0061】
ここで、使用される遷移金属化合物又は使用される遷移金属錯体の量は、例えば使用される基質に対して0.001〜5モル%、有利には0.01〜2モル%であってよい。
【0062】
本発明により製造できるエナンチオマー濃縮された化合物は、特に農薬、医薬又はその中間生成物の製造のために特に適当である。
【0063】
本発明の利点は、本発明の触媒を用いて、従来類似の触媒を使用して達成不可能であったエナンチオ選択性及び活性が達成されることである。
【0064】
実施例
実施例1
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジヒドロキシビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)の製造
CaH上で乾燥させ、撹拌容器中で湿分を排除して−78℃に冷却した塩化メチレン160ml中の(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)8gの溶液に、BBr 3.4ml(=8.77g)を撹拌しながら滴加し、この温度で1時間保持した。次いで温度を2時間以内で室温にまで上昇させ、この温度で更に24時間撹拌した。氷冷却しながら、全体で50mlの水を引き続き1時間以内で十分に完全混合しながら滴加し、次いで塩化メチレンを留去し、更に水110mlを添加した後に、撹拌しながら80℃で6時間保持した。室温に冷却した後に、生じた沈殿物をガラス濾過フリットを介して吸引濾過し、水100mlで、次いで塩化メチレン200mlで強力に完全混合しながら洗浄した。残留した生成物の乾燥後、純粋な(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジヒドロキシビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)6.3g(=理論値の82%)、融点:236〜237℃が得られた。
【0065】
使用した中間生成物38mgの他に、上記の式の(S)−シス−化合物123mg、
融点:126℃〜128℃、[a]=+57.6゜(c=1.0、CHCl)及び
上記の式の(S)−トランス−化合物118mg、
融点:141℃〜142℃、[a]=−48.4゜(c=1.4、CHCl
も得られる。
【0066】
実施例2
シス−及びトランス−(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)の製造
DMF10ml中の(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジヒドロキシビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)0.50g(0.76ミリモル)と炭酸カリウム0.42g(3.04ミリモル)との混合物を室温で30分間強力に撹拌する。更に強力に撹拌しながら、塩化アリル0.223g(3.04ミリモル)を添加し、この混合物を40℃で26時間保持する。引き続き、反応混合物を実施例1に記載された処理方法と類似の方法で後処理する。使用したジクロロジヒドロキシビフェニルホスフィンオキシド0.136g、及び、モノアリルオキシ−及びビスアリルオキシ−ジクロロビスフェニルビスホスフィンオキシドからの混合フラクション58mgの他に、純粋な(S)−[6,6’−ビスアリルオキシ−5,5’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)0.395gが得られる。
【0067】
融点:214℃〜215℃(分解)、[a]=−56.8゜(c=1.0、CHCl
無水CHCl40ml中の第1世代のGrubbs触媒18mgの溶液に、室温で1時間にわたって撹拌しながら、かつアルゴン雰囲気下で、CHCl40ml中に溶解させた上記の中間生成物295mgを滴加する。その後、該混合物を40℃で5時間還流下に保持し、室温で24時間にわたって保持する。次いで、空気下で撹拌することにより(1時間)、触媒を分解させ、得られた生成物混合物をシリカゲル上で濾過し、粗生成物を実施例1の処理方法と類似の方法でクロマトグラフィーにより分離する。
【0068】
実施例3
(R)−(1,4−ブト−2−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)の製造
ジメチルホルムアミド50ml中の(R)−(6,6’−ジヒドロキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)4.1g(6.99ミリモル)及び炭酸カリウム3.85g(27.96ミリモル)との混合物を、室温で1時間強力に撹拌する。その後、更に強力に撹拌した該混合物に、DMF5.0ml中に溶解させたシス−1,1−ジクロロ−ブト−2−エン0.96g(7.69ミリモル)を滴加し、該混合物を室温で更に12時間撹拌し、80℃で8時間撹拌する。冷却後、該反応混合物を濾過する。
【0069】
濾別した沈殿物から、2N塩酸での酸性化後、使用したジヒドロキシビスフェニルビスホスフィンオキシド0.71gをそのままで純粋な形で回収する。
【0070】
濾液を0.5ミリバールで60℃に加熱しながら慎重に乾燥させ、次いで無水ジクロロメタン60ml中に溶解させる。12時間後、シリカゲルを濾過助剤として添加しながらこの溶液を濾過する。濾別された固体の生成物から、更に、使用したビスホスフィンオキシド0.13gを回収する。
【0071】
濾液を蒸発させ、粗生成物3.41gを得て、該粗生成物をクロマトグラフィーにより分離する(シリカゲル Merck 9385型、溶離液:エチルアセテート/メタノール/水、500:50:5)。上記の式の純粋な生成物2.76gを得る。
融点:116℃〜118℃、[a]=−161.1゜(c=1.0、CHCl
【0072】
実施例4
実施例3と類似して、(S)−シス−[6,6’−(1,6−ヘキス−3−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル’]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)を製造する。
融点:234℃〜235℃、[a]=−99゜(c=0.5、EtOH)
【0073】
実施例5
実施例3と類似して、(R)−トランス−[6,6’−(1,4−ブト−2−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル’]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)を製造する。
融点:192℃〜194℃(分解)、[a]=+86.8゜(c=0.5、CHCl
【0074】
実施例6
(R)−シス−[6,6’−(1,4−ブト−2−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィンの製造
実施例3からのホスフィンオキシド(0.686g、1ミリモル)をキシレン(18ml)と一緒にアルゴン下で装入し、得られる混合物をまずトリ−(n−ブチル)アミン(3.5ml、15ミリモル)及びトリクロロシラン(1.5ml、15ミリモル)と混合し、次いで還流下に2時間加熱した。これを冷却し、脱気したNaOH溶液(30%、15ml)と短時間後撹拌し、脱気水25mlを添加し、相を分離させた。水相をメチル−tert.−ブチルエーテル(10ml)で3回抽出し、合液した有機相をまず飽和食塩溶液で洗浄し、次いでMgSO上で乾燥させた。有機溶剤を真空中で除去し、生成物を無色の粉末として得た。
収率:理論値の95%
【0075】
実施例7
(S)−シス−[6,6’−(1,4−ヘキス−3−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィンの製造
実施例4からのホスフィンオキシドを完全に実施例6と類似の方法で還元し、91%の収率で得た。
【0076】
実施例8
(S)−シス−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,4−ブト−2−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)ホスフィンの製造
実施例2からのホスフィンオキシドを完全に実施例6と類似の方法で還元し、94%の収率で得た。
【0077】
アセト酢酸メチルエステル(S1)のエナンチオ選択的水素添加
実施例9
(S)−シス−[6,6’−(1,4−ヘキス−3−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(4.4mg、2モル%)、RuCl(1.4mg、1モル%)及びS1 75mgをメタノール(1.3ml)中に装入し、該混合物を水素圧10バール下で23時間に亘って50℃に加熱した。この時間の後、97.3%eeのエナンチオマー純度を検出した。
【0078】
実施例10
(R)−シス−[6,6’−(1,4−ブト−2−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(4.4mg、2モル%)、RuCl(1.4mg、1モル%)及びS1 75mgをメタノール(1.3ml)中に装入し、該混合物を水素圧10バール下で23時間に亘って50℃に加熱した。この時間の後、98.6%eeの生成物のエナンチオマー純度を検出した。
【0079】
実施例11
(S)−シス−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,4−ブト−2−エンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(4.4mg、2モル%)、RuCl(1.4mg、1モル%)及びS1 75mgをメタノール(1.3ml)中に装入し、該混合物を水素圧10バール下で5時間に亘って50℃に加熱した。この時間の後、98.3%eeの生成物のエナンチオマー純度を検出した。
【0080】
実施例12(比較のため)
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシ−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(4.4mg、2モル%)、RuCl(1.4mg、1モル%)及びS1 75mgをメタノール(1.3ml)中に装入し、該混合物を水素圧10バール下で23時間に亘って50℃に加熱した。この時間の後、96.4%eeの生成物のエナンチオマー純度を検出した。
【0081】
実施例13
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)の製造
強力撹拌機を用いて効率的に完全混合した、DMF75ml中の(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジヒドロキシビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)5.0g及び炭酸カリウム4.2gの溶液ないし懸濁液に、22℃で1,3−ジブロモプロパン1.69gを添加した。その後、反応混合物を室温で更に72時間撹拌し、次いで濾過した。濾液から、真空蒸留によって溶剤を除去した。副生成物として生じる(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ビス(3−ブロモプロポキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)(0.34g)をクロマトグラフィーにより分離した(シリカゲル Merck 9385型、溶離液:エチルアセテート/ヘキサン/メタノール、10:1:1)。主生成物は、このクロマトグラフィーの後になお不純物として使用した基質を少量含有していた。この不純物を除去するために、この生成物をDMF40ml中に溶解させ、炭酸カリウム160mg及びブロモ酢酸メチルエステル0.15mgを添加し、該混合物を室温で一晩撹拌した。濾過及び真空中での蒸発による溶剤の除去の後、得られた生成物を上記と同一の条件下でクロマトグラフィーにより分離した。上記の式の純粋な生成物4.0gを得た。
融点:135℃〜137℃、[a]=+151.3゜(c=1.0、CHCl
【0082】
実施例14
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,4−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)の製造
強力撹拌機を用いて効率的に完全混合した、DMF25ml中の(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジヒドロキシビフェニル−2,2’−ジイル]ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)1.0g及び炭酸カリウム0.84gの溶液ないし懸濁液に、22℃で1,4−ジブロモブタン0.329gを添加した。その後、反応混合物をまず室温で12時間撹拌し、次いで80℃で更に36時間撹拌した。次いで、得られた生成物混合物を濾過し、濾液から、真空蒸留によって溶剤を除去した。
【0083】
そのようにして得られる生成物をクロマトグラフィーにより分離した(シリカゲル Merck 9385型、溶離液:エチルアセテート/ヘキサン/メタノール、75:1.5:1.0)。上記の式の純粋な生成物0.67gを得た。
融点:138℃〜140℃、[a]=+15.2゜(c=1.0、CHCl
【0084】
実施例15
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)の立体異性体の製造
DMF5.0ml中の(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジヒドロキシビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)250mg及び炭酸カリウム210mg及びラセミ1,3−ジブロモブタン90mgの溶液ないし懸濁液を室温で12時間強力に撹拌し、次いで80℃で10時間強力に撹拌した。その後、該反応混合物を濾過し、得られた濾液を真空中で乾燥するまで濃縮させた。得られた粗生成物から、クロマトグラフィーにより、それぞれ上記の式に相当する二種の純粋なジアステレオマーを純粋な形で単離した(シリカゲル Merck 9385型、溶離液:エチルアセテート/ヘキサン/メタノール、75.0:1.5:1.0)。
【0085】
ジアステレオマー 4A(64mg):
融点:132℃〜135℃、[a]=+62.4゜(c=1.0、CHCl
ジアステレオマー 4B(42mg):
融点:118℃〜119℃、[a]=+137.7゜(c=1.0、CHCl
【0086】
実施例16
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,4−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィンの製造
実施例14からのホスフィンオキシド(0.687g、1ミリモル)をキシレン(18ml)と一緒にアルゴン下で装入し、得られる混合物をまずトリ−(n−ブチル)アミン(3.5ml、15ミリモル)及びトリクロロシラン(1.5ml、15ミリモル)と混合し、次いで還流下に2時間加熱した。これを冷却し、脱気したNaOH溶液(30%、14ml)と短時間後撹拌し、脱気水20mlを添加し、相を分離させた。水相をメチル−tert.−ブチルエーテル(MTBE)で4回抽出し、合液した有機相をまず飽和食塩溶液で洗浄し、次いでMgSO上で乾燥させた。有機溶剤を真空中で除去し、生成物を無色の粉末として得た。
収率:理論値の97%
31P−NMR(161.9MHz、CDCl):−13.61ppm
【0087】
実施例17
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィンの製造
実施例16と完全に類似の方法で、生成物を収率98%で得た。
31P−NMR(161.9MHz、CDCl):−10.91ppm
【0088】
クロロアセト酢酸エチルエステル(S2)及びアセト酢酸メチルエステル(S3)のエナンチオ選択的水素添加
実施例18
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(3.2mg、0.02モル%)、[(p−シメン)RuCl](1.5mg、0.01モル%)及びS2 4gをエタノール(10ml)中に装入し、該混合物を水素圧90バール下で1時間に亘って80℃に加熱した。この時間の後、96.5%eeの生成物のエナンチオマー純度を検出した。
【0089】
実施例19(比較のため)
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシ−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(3.2mg、0.02モル%)、[(p−シメン)RuCl](1.5mg、0.01モル%)及びS2 4gをエタノール(10ml)中に装入し、該混合物を水素圧90バール下で1時間に亘って80℃に加熱した。この時間の後、95.1%eeの生成物のエナンチオマー純度を検出した。
【0090】
実施例20
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,4−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(4.4mg、2モル%)、RuCl(1.4mg、1モル%)及びS3 75mgをメタノール(1.3ml)中に装入し、該混合物を水素圧10バール下で5時間に亘って50℃に加熱した。この時間の後、97.1%eeの生成物のエナンチオマー純度を検出した。
【0091】
実施例21(比較のため)
(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシ−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル)−ホスフィン(4.4mg、2モル%)、RuCl(1.4mg、1モル%)及びS3 75mgをメタノール(1.3ml)中に装入し、該混合物を水素圧10バール下で5時間に亘って50℃に加熱した。この時間の後、96.4%eeの生成物のエナンチオマー純度を検出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Bは式−(CHR−(RC=CR)−(CHRの二価の基を表し、その際、R、R、R及びRはそれぞれ互いに無関係に水素又はアルキルを表し、n及びmはそれぞれ互いに無関係に0又は1〜8の整数を表すが、但しnとmとからの総和は1〜8であり、更に、
Gは塩素又は水素を表し、
R’及びR’’はそれぞれ互いに無関係にアリール又はアルキルを表すか、又は
Bは式−(CHR−(CR−(CHRの二価の基を表し、その際、R、R、R及びRは都度互いに無関係に水素又はアルキル、有利にはC〜C−アルキルを表し、n、m及びoはそれぞれ互いに無関係に0又は1〜8の整数を表すが、但しn、m及びoからの総和は1〜8、有利には3又は4であり、更に、
Gは塩素を表し、かつ
R’及びR’’はそれぞれ互いに無関係にアリール又はアルキルを表す]
の化合物。
【請求項2】
、R、R及びRがそれぞれ互いに無関係に水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル及びn−ペンチルを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R’及びR’’がそれぞれ互いに無関係に、非置換であるか、塩素、フッ素、シアノ、フェニル、C〜C−アルコキシ及びC〜C−アルキルの群から選択された基によって一置換又は多置換されているC〜C−アルキル又はC〜C10−アリールを表す、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
以下の化合物:
(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−フェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィン並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィン並びに相応するトランス−化合物、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−フェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィン並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィン、立体異性体(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィン]、立体異性体(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィン)並びにエナンチオマーの任意の混合物
である、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
式(IV)
【化2】

[式中、
B、G、R’及びR’’は請求項1に記載された意味を有する]
の化合物の製造法において、式(III)
【化3】

の化合物を式(VIa)又は(VIb)
−(CHR−(RC=CHR) (VIa)
−(CHR−(RC=CHR) (VIb)
[式中、
及びXはそれぞれ塩素、臭素、ヨウ素又はスルホネートを表し、かつ
、R、R及びRは請求項1に記載された意味を有し、かつR及びRはそれぞれ互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表す]
の化合物と、又は逐次的に式(VIa)及び(VIb)の2種の異なる化合物と反応させ、式(VII)
【化4】

の化合物に変換し、次いで式(VII)の化合物をオレフィン−メタセシス−触媒の存在下に式(IV)の化合物に変換することを特徴とする、式(IV)の化合物の製造法。
【請求項6】
引き続き、式(VII)の化合物を還元し、請求項1記載の式(I)の化合物に変換する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
式(VII)
【化5】

[式中、
、R、R、R、R’及びR’’は請求項1に記載された意味を有し、かつ
及びRはそれぞれ互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表す]
の化合物。
【請求項8】
以下の化合物:
(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(ビス−アリルオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド
である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
式(IV)
【化6】

[式中、
B、R’及びR’’は請求項1に記載された意味を有する]
の化合物。
【請求項10】
以下の化合物:
(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(シス−1,4−ブト−2−エン−ジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド並びにそれぞれのトランス−化合物並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−シクロヘキシル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド並びに(R)−及び(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−プロパンジオキシ)−ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス−[(ジ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド、立体異性体(R)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)、立体異性体(S)−[5,5’−ジクロロ−6,6’−(1,3−ブタンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル]−ビス(ジフェニル−ホスフィンオキシド)並びにエナンチオマーの任意の混合物
である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物を含有する遷移金属錯体。
【請求項12】
請求項11記載の遷移金属錯体を含有する触媒。
【請求項13】
エナンチオマー濃縮された化合物の遷移金属触媒による製造法において、請求項12記載の触媒の存在下に実施することを特徴とする、エナンチオマー濃縮された化合物の遷移金属触媒による製造法。

【公表番号】特表2006−527221(P2006−527221A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515817(P2006−515817)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005930
【国際公開番号】WO2004/111063
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】D−51369 Leverkusen、 Germany
【Fターム(参考)】