説明

不斉触媒

【課題】 本発明者らが既に見出したジホスファイト配位子4aを配位子としたパラジウム触媒は、不斉アリル位置換反応において非常に高いエナンチオ選択性が得られる(非特許文献3)。このジホスファイト配位子に種々の置換基を組み込み、この配位子としたパラジウム触媒の不斉アリル位置換反応を検討した。
【解決手段】 このジホスファイト配位子のベンゼン環にトリフロロメチル基などの電子求引基を組み込んだジホスファイト配位子にパラジウムを配位させた触媒は優れた触媒活性及び不斉識別能を有する。本発明は、この含リン酸配位子に白金族金属を配位させてなる不斉触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学活性物質の合成に有効な不斉触媒に関し、より詳細には、含リン酸配位子に白金族金属を配位させてなる不斉触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性物質の真に効率的な供給を可能とする不斉触媒反応の開発には、優れた不斉識別能と触媒回転能を賦与しうる不斉配位子の創出が肝要である。C2−対称スピロ化合物は、剛直かつ特異なねじれ不斉空間を創出するため極めて有効な不斉配位子として機能する可能性を秘めている。近年、光学活性スピロ型配位子を用いた不斉触媒が精力的に開発され、いくつかの反応系において極めて高い不斉収率を獲得している(非特許文献1〜3)。しかし、これらのスピロ化合物はいずれも多段階工程を経て合成したラセミ体の光学分割により調製したものであるため、さらなる不斉収率の向上を目指したスピロ骨格の構造修飾は容易ではない。
本発明者らは最近、エナンチオ選択的分子内二重C−H挿入反応を鍵反応とする1,1'−スピロビインダン−3,3'−ジオン(下記化合物2)のグラムスケール合成法を確立し(非特許文献4)、C2−対称スピロ化合物の不斉合成に成功した。これまでに化合物2のカルボニル基の還元、脱水及びエポキシ化反応を経てC2−対称構造をもつジオール3及びジホスファイト配位子4aの合成に成功し、ジホスファイト配位子4aを配位子としたパラジウムを触媒とする不斉アリル位置換反応において非常に高いエナンチオ選択性(97% ee)が得られることを示した(非特許文献5)。
【化2】

【0003】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 9570.
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 2907.
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4404.
【非特許文献4】Chem. Commun. 2001, 1604
【非特許文献5】日本薬学会第123年会, 長崎, 2003, 27[P1]I-044.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1998年、宮浦、林らは有機ボロン酸のα,β−不飽和カルボニル化合物への触媒的不斉1,4-付加反応がBINAP-ロジウム(I)錯体触媒存在下円滑に進行することを見出した(J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 5579)。更に近年多くのグループにより本反応への種々のキラル配位子の適用が精力的に検討されており、含リン不斉配位子の性能を評価する指標の一つに位置づけられている(Tetrahedron Lett. 2001, 42, 921等)。
本発明者らが既に見出したジホスファイト配位子4aを配位子としたパラジウム触媒は、不斉アリル位置換反応において非常に高いエナンチオ選択性が得られ(非特許文献3)、剛直なビインダン構造がホスファイトの配座を効果的に規制することにより、高いエナンチオ選択性が実現したものと考えられる。
本発明者らは、上記ジケトン2を鍵中間体としてジホスファイト配位子に種々の置換基を組み込み、この配位子としたパラジウム触媒の不斉アリル位置換反応を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その結果、本発明者らは、ベンゼン環に電子求引基を組み込んだジホスファイト配位子にパラジウムを配位させた触媒が優れた触媒活性及び不斉識別能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下式
【化1】

(式中、Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、電子求引基を表し、mは、それぞれ同じであっても異なってもよく、1〜3の整数を表す。)で表される含リン酸配位子に白金族金属を配位させてなる不斉触媒である。
また本発明は、この触媒の前駆体となるこの含リン酸配位子である。
【発明の効果】
【0007】
光学活性1,1'−スピロビインダン誘導体の合成法としてこれまで報告されたものは、いずれも多段階工程を経て合成したラセミ体を光学分割する手法であり、さらなる不斉収率の向上を目指したスピロ骨格の構造修飾は容易ではない。本発明は、独自に開発した分子内不斉C−H挿入反応による光学活性1,1'−スピロビインダン2,2'−ジオールを短工程で構築するものである。グラムスケールで合成可能であることから、このジオールに電子求引性の官能基を導入することにより多様な不斉配位子の開発を行なった。今回は種々のジホスファイトを開発し、パラジウム触媒不斉アリル位置換反応及びロジウム触媒不斉1,4'−付加反応における不斉配位子として機能することを示した。
光学活性化合物は、医薬・農薬・香料・液晶などの合成中間体として付加価値の高い有機化合物である。その製造法には天然物由来、光学分割法、発酵法、不斉合成法があるが、不斉合成法、特に微量の不斉源から原理的には無数の光学活性化合物を与える不斉触媒反応は最も理想的な手法を提供する。本発明のキラル触媒は、光学活性化合物を効率的かつ高立体選択的に合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の含リン酸配位子は下式で表される。
【化1】

は、それぞれ同じであっても異なってもよく、電子求引基を表す。電子求引基としては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基が挙げられる。このハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、このような電子求引基の中で、特にペルハロゲン化アルキル基が好ましく、このハロゲンとしてはフッ素が好ましく、アルキル基としては短鎖アルキル基、特にメチル基が好ましい。
mは、それぞれ同じであっても異なってもよく、1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2、より好ましくは2である。
【0009】
本発明の触媒は、上記の含リン酸配位子を溶液中で白金族金属と混合して作製する。
溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エーテル等が用いられる。
この触媒は任意の濃度と温度で作成可能であるが、通常0.01〜1mol/L及び0〜100℃の範囲で調製される。
用いることができる白金族金属は、Rh、Pd、Ir、Co、NiまたはPt、好ましくはRh,Pdである。
この白金族金属は溶液中で、溶解している形態をとればよく、作製する場合にはこの前駆体を溶液に投入ればよい。この前駆体としては、通常白金金属の塩や錯体が用いられるが、例えば、[Rh(C2H4)2Cl]2、[Pd(η3-C3H5)Cl]2などを用いることができる。
その結果、含リン酸配位子に白金族金属が配位して不斉触媒が形成される。
この触媒は、上記作成条件で作成した触媒溶液に基質、反応剤もしくは添加剤を加え、室温条件下もしくは加熱して用いる。
【0010】
この触媒は、アリルエステル類の不斉求核置換反応、デヒドロアミノ酸や三置換オレフィン等の炭素-炭素二重結合やケトン、イミン等の炭素-ヘテロ原子二重結合の不斉水素化反応、有機ボロン酸あるいは有機亜鉛化合物を用いたα,β-不飽和カルボニル化合物への不斉共役付加反応、ケトンやオレフィン類の不斉ヒドロシリル化反応、シリルエノールエーテル類とアルデヒドとの不斉向山アルドール反応、イミンとの不斉Mannich反応、ハロゲン化ビニルあるいはハロゲン化アリール、有機トリフラートを用いた不斉Heck反応、各種ジエンとオレフィン類との不斉Diels-Alder反応やアルデヒド、イミンとの不斉ヘテロDiels-Alder反応、エニン類の不斉Pauson-Khand反応や不斉環化異性化反応等の反応に有効である。
【実施例】
【0011】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
本実施例では以下の試薬を用いた。
アルゴン(日本エアリキード)、水素(大同ほくさん)は市販のガスをそのまま使用した。テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ベンゼン及びトルエンはナトリウムとベンゾフェノンから調製したケチル存在下、アルゴン雰囲気下で蒸留したものを用いた。ジクロロメタンは五酸化二リンから蒸留した後、水素化カルシウムからアルゴン雰囲気下再度蒸留したものを用いた。トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジンは水素化カルシウムとアルゴン雰囲気下一晩撹拌した後蒸留したものを用いた。その他の試薬及び溶媒は、市販の特級品をそのまま使用した。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)はMerck 5715(Silica gel 60 F254)を用いた。カラムクロマトグラフィーはシリカゲル60N(関東化学 40-50 mm又は60-210 mm)又はワコーゲル(R)C-200を用いた。UV、ヨウ素、リンモリブデン酸エタノール溶液、リンモリブデン酸硫酸溶液、p-アニスアルデヒド試薬又はニンヒドリン溶液を用いて成分検出を行った。
【0012】
また以下の実施例で機器分析は下記の方法で行った。
融点(mp)はBuchi 535を用い測定し未補正である。赤外吸収スペクトル(IR)はJASCO FT/IR-5300を用い測定し、吸収帯は極大値の波数(cm-1)で表示した。核磁気共鳴スペクトル(NMR)はJEOL EX-270(270 MHz)あるいはJNM-AL400(400 MHz)を用い測定した。1H NMRの化学シフトはテトラメチルシラン(0.00 ppm)又はクロロホルム(7.26 ppm)、13C NMRの化学シフトはクロロホルム(77.0 ppm)を内部標準としたδ値(ppm)で示した。31P NMR の化学シフトはリン酸(0.00 ppm)を外部標準としたδ値(ppm)で示した。シグナルの多重度はs: singlet, d: doublet, t: triplet, q: quartet, m: multiplet, br: broad の略号を用いて示し、結合定数をJ値(Hz)で示した。旋光度はJASCO P-1030を用い測定した。溶媒には市販の吸光分析用溶媒を用いた。質量分析スペクトル(MS)及び元素分析は北海道大学機器分析センターに依頼した。質量分析スペクトル(MS)はイオンピーク(m/z)で示した。高速液体クロマトグラフィー装置(HPLC)はJASCO PU-980(pump)とUV-970(detector, λ=254 nm)を用い、キラルカラムはダイセル化学工業(株)のChiralcel OB, OD, OJ, OB-H, OD-H, OJ-H及びChiralpak AD, AS, AD-H, AS-H(0.46cm×25cm)を用いた。保持時間(retention time)と積分比は島津製作所Chromatopac C-R6A又はCR-8Aを用い測定した。溶出液にはHPLC用ヘキサン(和光純薬)及びHPLC用2-プロパノール(和光純薬)を用いた。流速については各実験項に記載した。
【0013】
合成例1
本合成例では、スピロジオール3を合成した。
ジベンゾスベレノン(Aldrich、150 g, 727.3 mmol)、炭酸ナトリウム(18.5 g, 22.1 mmol)及びアセトン(1.5 L)の混合物を室温で激しく撹拌し、この混合物に過マンガン酸カリウム(320 g, 2.03 mol)を15分おきに5回(5×64 g)に分けて加えた。反応液は濃紫色を呈した。室温にて24時間撹拌した後、反応溶液を濾過して黒色の酸化マンガンを取り除き、残査をアセトン(5×100 mL)で洗い込んだ。黄色濾液をあわせ、10%水酸化ナトリウム水溶液(1 L)を加え濾過した。残査は10%水酸化ナトリウム水溶液(2×100 mL)で洗浄した。このアルカリ性の瀘液を氷冷し、濃塩酸(500 mL)に加え酸性にすると乳白色の固体が析出した。この懸濁液を24時間撹拌したのち個体を吸引瀘取で集め、水(5×100 mL)で洗浄した。この固体を減圧下乾燥してbenzophenone-2,2'-dicarboxylic acid(117 g, 60%)を得た。反応式を下式に示す。
【化3】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.27(2:1:0.1 hexane/EtOAc/AcOH); mp 212-213℃(EtOH); 1H NMR(270 MHz, DMSO-d6)δ 7.37(2H, d, J=7.3 Hz), 7.59(2H, t, J=7.8 Hz), 7.64(2H, d, J=7.6 Hz), 7.77(2H, d, J=6.6 Hz), 13.1(2H, br s).
【0014】
Benzophenone-2,2'-dicarboxylic acid(37 g, 137 mmol)の28%アンモニア水溶液(300 mL)に、水(80 mL)、亜鉛粉末(133 g, 2.03 mol)、硫酸銅・5水和物(1.2 g, 4.8 mmol)を順次加えた。灰色の懸濁液を激しく撹拌しながら、36時間加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却し、灰色の不溶物を濾去し、10%水酸化ナトリウム水溶液(5×30 mL)で洗浄した。淡黄色アルカリ性瀘液を氷冷し、濃塩酸(80 mL)に注ぐと乳白色の懸濁液となった。この懸濁液を室温で24時間撹拌した後、吸引瀘取して白色固体を集め、水(5×30 mL)で洗浄した。減圧下乾燥させ、diphenylmethane-2,2'-dicarboxylic acid(31 g, 88%)を白色固体として得た。反応式を下式に示す。
【化4】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.46(6:1:1 hexane/EtOAc/AcOH); mp 258-259.5℃(EtOH); 1H NMR(270 MHz, DMSO-d6)δ 4.67(2H, s), 6.98(2H, d, J=7.6 Hz), 7.29(2H, t, J=7.6 Hz), 7.42(2H, d, J=7.4 Hz), 7.83(2H, d, J=7.6 Hz), 12.8(2H, br s).
【0015】
Diphenylmethane-2,2'-dicarboxylic acid(17.0 g, 66.0 mmol)のトルエン(150 mL)溶液に塩化チオニル(14.5 mL, 200 mmol)、ジメチルホルムアミド(2 mL, 0.6 mmol)を加え2時間加熱還流した。溶媒を減圧留去した後、残査にトルエン(30 mL)を加え、再度溶媒を減圧留去した。得られた酸クロリド(23 g)は精製せず用いた。別に、アルゴン雰囲気下ジイソプロピルアミン(44.3 mL, 254.0 mmol)のTHF(300 mL)溶液を機器分析-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(95.0 mL, 254.0 mmol, 2.66 M in hexane)を滴下ロートを用い30分かけて加えた。同じ温度で60分間撹拌した後、酢酸メチル(220.0 mL, 254.0 mmol)を20分かけて加え-78℃にて1時間撹拌した。先に調製した酸クロリド(23 g)のTHF(50 mL)溶液を滴下ロートを用いて10分かけて加えた。同じ温度で30分撹拌した後、反応溶液を氷冷下10%塩酸(200 mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×500 mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(500 mL)、水(2×250 mL)、飽和食塩水(250 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮して得られた残査(19 g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル300 g, 10:1 → 5:1 hexane/EtOAc)にて精製し2,2'-Bis(2-methoxycarbonyl-1-oxoethyl)diphenylmethane(16.1 g, 71%)を白色個体として得た。反応式を下式に示す。
【化5】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.65(2:1 hexane/EtOAc); mp 69-70.5℃(hexane-EtOAc); IR(CHCl3)ν 3029, 3013, 1742, 1690, 1439, 1321, 1233, 1202, 1028, 714cm-1; 1H-NMR(270 MHz, CDCl3)δ3.72(6H, s), 3.93(4H, s), 4.50(2H, s), 7.06(2H, d, J=7.6 Hz), 7.31(2H, t, J=7.4 Hz), 7.39(2H, t, J=7.1 Hz), 7.68(2H, d, J=7.6 Hz); 13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ37.4(CH2), 48.1(CH2), 52.4(CH3), 126.2(CH), 129.0(CH), 131.7(CH), 132.1(CH), 136.7(C), 141.3(C), 167.9(C), 195.5(C); LRMS(FAB)m/z 369(M++H); HRMS(FAB)Calcd for C21H21O6(M++H): 369.1338. Found: 369.1346; Anal. Calcd for C21H20O6: C, 68.47; H, 5.47. Found: C, 68.45; H, 5.59.
【0016】
2,2'-Bis(2-methoxycarbonyl-1-oxoethyl)diphenylmethane(32.1 g, 87.1 mmol)とトリエチルアミン(38.8 g, 384.0 mmol)のアセトニトリル(90 mL)溶液を0℃に冷却し、メタンスルホニルアジド(23.2 g, 192.0 mmol)を加えた後、室温にて10分間撹拌した。この黄色溶液に水(30 mL)を加え、酢酸エチル(2×150 mL)で抽出した。有機層を10%水酸化ナトリウム水溶液(50 mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(2×30 mL)、水(30 mL)、飽和食塩水(2×20 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮により得られた残査(37 g)をエーテル(120 mL)に溶解し、ヘキサン(150 mL)を加え48時間放置した。析出した結晶を濾取し、ヘキサン(3×10 mL)で洗浄してα-ジアゾ-β-ケトエステル1を黄色プリズム晶(34.5 g, 94%)として得た。反応式を下式に示す。
【化6】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.33(2:1 hexane/EtOAc); mp 97-98℃(Et2O/hexane); IR(CHCl3)ν 3025, 3017, 2149, 1727, 1439, 1333, 1217, 1205, 1130cm-1; 1H-NMR(270 MHz, CDCl3,)δ 3.71(6H, s), 4.13(2H, s), 7.13(2H, d, J=7.3 Hz), 7.23-7.36(6H, m); 13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 35.3(CH2), 52.2(CH3), 125.8(CH), 126.9(CH), 130.3(CH), 130.8(CH), 137.7(C), 137.9(C), 160.7(C), 188.2(C); LRMS(FAB)m/z 421(M++H); HRMS(FAB)Calcd for C21H17N4O6(M++H): 421.1149. Found: 421.1161; Anal. Calcd for C21H16N4O6: C, 60.00; H, 3.84; N, 13.33. Found: C, 59.98; H, 3.96; N, 13.44.
【0017】
アルゴン雰囲気下、α-ジアゾ-β-ケトエステル1(30 g, 71.4 mmol)のトルエン-ベンゾトリフルオロリド(142 mL, 1/1 v/v)溶液を-10℃に冷却し、Rh2(R-PTTL)4・2EtOAc(507.8 mg, 0.357 mmol, 0.5 mo l%)を一度に加えた。ロジウム(II)錯体はすぐに溶解し、緑色の反応溶液からは激しく窒素ガスが発生した。反応開始後約2分で固体が析出し緑色の懸濁液となった。1の消失をTLCで確認した(約10分後)後、溶媒を減圧留去した。緑色残査(31 g)に含水ジメチルスルホキシド(150 mL, 水:DMSO=1:9)を加え、120℃で1.5時間撹拌した。反応液は褐色になった。放冷後、水(100 mL)を加え、酢酸エチル(2×200 mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(2×100 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500 g, 100:0 - 30:1 CH2Cl2/EtOAc)にて精製し、(S)-1,1'-spirobi[indan-3,3'-dione] 2(14.9 g, 84%)を淡橙色固体として得た。反応式を下式に示す。
【化7】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.4(2 :1 hexane/EtOAc); mp. 204-205℃(hexane/EtOAc); [α]D24 +179°(c 0.71, CHCl3, for 72% ee); 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 3.06(2H, d, J=19.0 Hz), 3.15(2H, d, J=18.3 Hz), 7.06(2H, d, J=8.1 Hz), 7.43(2H, t, J=7.3 Hz), 7.56(2H, t, J=7.3 Hz), 7.81(2H, d, J=7.3 Hz).
生成物の鏡像体過剰率(ee)は、キラルカラムを用いたHPLC分析により72% eeと決定した。分析条件:column: Daicel Chiralcel OD-H×OD; eluent: 5:1 hexane/2-propanol; flow: 1.0 mL/min; detection: 254 nm; retention time: 27.7 min(minor enantiomer R), 29.9 min(major enantiomer S).
【0018】
氷冷したジケトン2(4.97 g, 20.0 mmol)のTHF-エタノール(500 mL, 3/2 v/v)溶液に水素化ホウ素ナトリウム(3.0 mg, 80.0 mmol)を加え、反応溶液を室温で撹拌した。TLC(10:1 CHCl3/MeOH)にて原料及び中間体の消失を確認した(約2時間)後、反応液を氷冷した10%塩酸(120 mL)にゆっくり注ぎ、酢酸エチル(2×100 mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(2×100 mL)、飽和食塩水(2×80 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮により粗(S)-1,1'-spirobiindan-3,3'-diol(5.0 g)をジアステレオマーの混合物として得た。これをベンゼン(200 mL)に溶解し、p-トルエンスルホン酸(380 mg, 2.0 mmol)を加えDean-Stark還流装置をつけ加熱還流した。反応液は茶色に変化した。5時間後、TLC(10:1 hexane/EtOAc)にて原料及び中間体の消失を確認した。室温まで冷却した後、水(200 mL)を加え酢酸エチル(2×300 mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(2×200 mL)、飽和食塩水(200 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮して得られた残査(4.5 g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル90 g, 10:1 hexane/EtOAc)にて精製し(S)-1,1'-spirobiindene(4.2 g, 96%)を淡黄色油状物として得た。反応式を下式に示す。
【化8】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.81(10:1 hexane/EtOAc); [α]D25 -671.0°(c 1.00, CHCl3); 1H NMR(CDCl3, 400 MHz)δ 6.07(2H, d, J=5.3 Hz), 6.79(2H, d, J=7.3 Hz), 7.02-7.08(4H, m), 7.25(2H, t, J=7.6 Hz), 7.38(2H, d, J=7.3 Hz).
【0019】
炭酸水素ナトリウム(262 mg)及び炭酸ナトリウム(1.2 mg, 0.006 mmol)の水溶液(15.6 mL)に、pHが8になるまで(pH試験紙を用いて確認)10%塩酸(約0.6 mL)を加えた後、氷冷下35%過酸化水素水(1.2 mL)を加え過酸化水素の緩衝剤溶液を調製した。(S)-1,1'-Spirobiindene(1.92 g, 8.87 mmol)と硫酸マンガン6水和物(134 mg, 0.89 mmol)のジメチルホルムアミド(23 mL)溶液に、上記の方法で調製した過酸化水素の緩衝剤溶液を6時間かけて滴下し、生じたピンク色の懸濁液を氷冷しながら撹拌した。TLC(3:1 hexane/EtOAc)にて原料及び中間体の消失(6時間後)を確認した後、混合物を氷冷したチオ硫酸ナトリウム水溶液(10 mL, 1 M)にゆっくり注ぎ、酢酸エチル(2×30 mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(20 mL)、水(20 mL)、飽和食塩水(2×10 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮して得られた粗生成物(約2.1 g)は精製せず次の反応に用いた。エポキシ体のジアステレオマー比は、400 MHz 1H-NMR解析によりdesired:undesired=>20:1であった。反応式を下式に示す。
【化9】

生成物の分析データを以下に記す。
(1S,2S,3S,2'S,3'S)-2,3,2',3'-diepoxy-1,1'-spirobiindan(desired diastereomer)
無色油状物質; TLC Rf 0.50(3:1 hexane/EtOAc); [α]D24 -27.1°(c 0.56, CHCl3); IR(CHCl3)ν 3034, 3009, 1254, 1146, 1129, 1073cm-1; 1H NMR(CDCl3, 400 MHz)δ 4.15(2H, d, J=2.4 Hz, CHO), 4.49(2H, d, J=2.4 Hz, CHO), 6.80(2H, d, J=6.8 Hz, aromatic), 7.23(4H, m, aromatic); 7.59(2H, d, J=6.8 Hz, aromatic); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 58.3(CH), 59.4(C), 62.2(CH), 125.2(CH), 125.4(CH), 127.3(CH), 129.2(CH), 140.4(C), 147.1(C); LRMS(FAB)m/z 249(M++H); HRMS(FAB)Calcd for C17H13O2(M++H): 249.0916. Found: 249.0910; Anal. Calcd for C17H12O2: C, 82.24; H, 4.87. Found: C, 82.24; H, 4.99.
【0020】
水素化リチウムアルミニウム(1,29 g, 34.0 mmol)のTHF(30 mL)懸濁液を氷冷し、上記で得たエポキシ体のジアステレオマー混合物(2.1 g)のTHF(20 mL)溶液を5分かけて加えた。反応溶液を室温に昇温した後、1時間撹拌した。反応混合物を再度氷冷し、水(1.3 mL)、15%水酸化ナトリウム(1.3 mL)、水(3.9 mL)を順次ゆっくり滴下すると、灰白色沈殿物が生成した。混合物をセライト濾過し、残渣をTHF(3×30 mL)で洗い込んだ。瀘液を濃縮して得られた粗生成物(約2.5 g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 100 g, 10:1 → 5:1 → 1:1 hexane/EtOAc)にて精製し、スピロジオール3(desired diastereomer, 1.85 g, 80%)、(1S,2S,2'R)-1,1'-spirobiindan-2,2'-diol(undesired diastereomer, 0.11 g, 3%)をいずれも白色固体として得た。反応式を下式に示す。
【化10】

生成物の分析データを以下に記す。
無色針状晶; TLC Rf 0.46(2:1 hexane/EtOAc); mp 97-99℃(benzene/hexane); [α]D24 +65.3°(c 1.03, CHCl3); IR(CHCl3)ν 3530, 3387, 3021, 2924, 1480, 1458, 1415, 1084cm-1; 1H NMR(CDCl3, 400 MHz)δ 3.21(2H, dd, J=7.3, 15.2 Hz), 3.30(2H, dd, J=7.3, 15.2 Hz), 3.50(2H, s), 4.70(2H, t, J=7.3 Hz), 6.85(2H, d, J=7.3 Hz),7.13-7.27(6H, m); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 40.6(CH2), 64.9(C), 84.8(CH), 123.9(CH), 124.6(CH), 127.3(CH), 127.5(CH), 140.7(C), 146.2(C); LRMS(FAB)m/z 253(M++H); HRMS(FAB)Calcd for C17H17O2(M++H): 253.1229. Found: 253.1221; Anal. Calcd for C17H16O2: C, 80.93; H, 6.39. Found: C, 80.80; H, 6.53.
【0021】
合成例2
本合成例では、ジホスファイト配位子4aを合成した。
アルゴン雰囲気下、亜リン酸トリフェニル(和光純薬、44 g, 141.8 mmol)と塩化プロピオニル(13.1 g, 141.8 mmol)を180℃にて8時間加熱還流した。8時間後、反応溶液を室温に戻し塩化プロピオニル(131 mg, 1.4 mmol)を追加し、180℃にて9時間加熱還流した。放冷後、残査(約60 g)を減圧蒸留し、ジフェニルホスホロクロリダイト(25.1 g, 70%)を無色油状物として得た
反応式を下式に示す。
【化11】

生成物の分析データを以下に示す。
TLC Rf 0.25(6:1 hexane/EtOAc); bp 139℃(2 mmHg); 1H-NMR(270 MHz, CDCl3)δ 7.17-7.29(9H, m), 7.33-7.39(6H, m); 31P-NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 158.1.
【0022】
アルゴン雰囲気下、合成例1で得たスピロジオール3(180.0 mg, 0.71 mmol)とピリジン(337.0 mg, 4.26 mmol)のTHF(20 mL)溶液を0℃に冷却し、クロロ亜リン酸ジフェニル(790.6 mg, 3.13 mmol)のTHF(7 mL)溶液を滴下した。氷冷下30分間撹拌後、反応溶液を水(20 mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×30 mL)で抽出した。有機層を水(2×30 mL)、飽和食塩水(2×20 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮して得られた残査(約600 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200、25 g, 100:1:1 hexane:EtOAc:Et3N)にて精製しジホスファイト配位子4a(454.8 mg, 93%)を無色の粘性油状物として得た。反応式を下式に示す。
【化12】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.35(10:1 hexane/EtOAc); [α]D21 -41.6°(c 1.01, CHCl3); IR(CHCl3)ν 3073,3040, 3011, 1593, 1489, 1233, 1194, 1049cm-1; 1H NMR(270 MHz, CDCl3,)δ 325(2H, dd, J=7.9, 14.9 Hz, PhCH2), 3.70(2H, dd, J=9.6, 14.9 Hz, PhCH2), 5.42(2H, dd, J=7.9, 9.6 Hz, CHOP), 6.60(2H, dd, J=1.0, 8.6 Hz, aromatic), 7.00-7.28(24H, m, aromatic); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 38.9(CH), 64.5(C), 84.7(CH2), 120.2(CH), 123.5(CH), 123.6(CH), 124.0(CH), 124.6(CH), 127.5(CH), 128.0(CH), 129.4(CH), 129.6(CH), 141.4(C), 144.3(C), 151.9(C), 152.2(C); 31P NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 129.0; LRMS(FAB)m/z 685(M++H); HRMS(FAB)Calcd for C41H35O6P2(M++H): 685.1909. Found: 685.1924; Anal. Calcd for C41H34O6P2: C, 71.93; H, 5.01. Found: C, 72.13; H, 5.25.
【0023】
実施例1
本実施例では、ジホスファイト配位子4c〜eを合成した。
(1)ジホスファイト配位子4cを合成した。
アルゴン雰囲気下、三塩化リン(68.75 g, 0.5 mol)のEt2O溶液(300 mL)を0℃に冷却し、ジエチルアミン(73 g, 1 mol)を1.5時間かけて滴下した。反応溶液は滴下直後に淡黄色懸濁液となった。反応溶液を室温にて12時間撹拌した後セライトろ過し、残渣をEt2O(5×50 mL)で洗浄した。あわせた瀘液を濃縮し得られた粗生成物(約140 g)を減圧蒸留(0.5 mmHg, 油浴72-78℃)にて精製し、N,N-Diethylphosphoroamidous dichloride(66.5 g, 76%)を無色液体として得た。生成物の純度は1H-NMR 及び31P-NMR解析から>99%以上であることを確認した。bp. 40-42℃(0.5 mmHg); 1H-NMR(270 MHz, CDCl3,)δ 0.71(6H, dd, J=10.8 Hz), 2.85(4H, sext, J=9.8 Hz); 31P-NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 210.4.
【0024】
アルゴン雰囲気下、4-ブロモフェノール(東京化成、693.8 mg, 4 mmol)、トリエチルアミン(518.1 mg, 5.12 mmol)及び上記で得たN,N-diethylphosphoroamidous dichloride(348 mg, 2 mmol)のTHF溶液(2 mL)を10分かけて滴下した。反応溶液は滴下直後に白色懸濁液となった。反応溶液を室温にて10時間撹拌した後反応溶液をセライトを用いろ過し、残渣をEt2O(3×1 mL)で洗浄した。あわせた瀘液を濃縮し得られた粗生成物(約1 g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200 20 g, hexane/EtOAc/Et3N=100:1:10)にて精製し、bis(4-bromophenyl)N,N-diethylphosphoramidite(794.1 mg, 89%)を白濁粘性油状物として得た。粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200 20 g, hexane/EtOAc/Et3N=100:1:10)にて精製した。反応式を下式に示す。
【化13】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.43(10:1 hexane/EtOAc); IR(CHCl3)ν 3021, 1221, 1073, 920, 737, 669cm-1; 1H NMR(400 MHz, CDCl3,)δ 1.07(6H, dd, J=7.2 Hz), 3.22(4H, dq, J=7.2, 10.2 Hz), 6.90-6.92(4H, m), 7.36-7.40(4H, m); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 14.69(CH3), 14.73(CH3), 37.74(CH2), 37.96(CH2), 115.35(C), 115.38(C), 121.52(CH), 121.61(CH), 132.25(CH), 152.53(C), 152.61(C); 31P-NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 188.4; LRMS(FAB)m/z 445(M++H), 374, 372, 276, 274; HRMS(FAB)calcd for C16H19Br2NO2P(M++H): 445.9520; found: 445.9522.
【0025】
合成例1で得たスピロジオール3(25.2 mg, 0.1 mmol)及び上記で得たbis(4-bromophenyl)N,N-diethylphosphoramidite(111.8 mg, 0.25 mmol)の混合物をトルエンで共沸(2×2 mL)した後THF(3 mL)を加えた。氷冷下、この溶液に塩化水素ガスを5秒間吹き込んだ。生じた白色懸濁液を室温で1時間撹拌した後セライトろ過し、残渣をEt2O(3×1 mL)で洗浄した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200, 3 g, hexane/EtOAc/Et3N=100:1:1)にて精製し、ジホスファイト4c(84.2 mg, 84%)を無色の粘性油状物として得た。反応式を下式に示す。
【化14】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.32(10:1 hexane/EtOAc); [α]D22 +9.5°(c 1.61, CHCl3); IR(CHCl3)ν 3013, 2930, 1584, 1482, 1437, 1237, 1190, 1011, 970, 936cm-1; 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 3.07(1H, d, J=17.2 Hz), 3.45-3.71(3H, m), 5.03(2H, m), 6.49(1H, d, J=7.9 Hz), 6.69(1H, d, J=8.6 Hz), 6.90-7.48(22H, m); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 38.88(CH2), 64.40(C), 86.04(CH), 121.95(CH), 122.11(CH), 124.08(CH), 124.49(CH), 124.53(CH), 124.92(CH), 127.23(CH), 127.95(CH), 128.70(CH), 128.96(CH), 129.51(CH), 129.60(CH), 130.28(C), 130.30(C), 131.17(C), 131.22(C), 141.22(C), 143.79(C), 149.01(C), 149.06(C), 149.85(C), 149.92(C); 31P NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 141.5.
【0026】
(2)実施例1(1)の操作例に従い、ジホスファイト配位子4dを合成した
ジアリールホスホロアミダイトの合成法の代表的操作例に従い、4-トリフルオロメチルフェノール(650.1 mg, 4 mmol)、トリエチルアミン(518.1 mg, 5.12 mmol)及び N,N-diethylphosphoroamidous dichloride(348 mg, 2 mmol)からbis[(4-trifluoromethyl)phenyl] N,N-diethylphosphoramidite(708.6 mg, 83%)を白濁粘性油状物として得た。粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200 20 g, hexane/EtOAc/Et3N=100:1:10)にて精製した。反応式を下式に示す。
【化15】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.30(10:1 hexane/EtOAc); IR(CHCl3)ν 3021, 1223, 1165, 1075, 1020, 984, 787, 739, 720cm-1; 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 1.09(6H, dd, J=7.2 Hz), 3.26(4H, dq, J=7.2, 10.4 Hz), 7.12(4H, d, J=8.3 Hz), 7.55(4H, d, J=8.6 Hz); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 14.61(CH3), 14.64(CH3), 38.01(CH2), 38.23(CH2), 119.77(CH), 119.86(CH), 124.24(d, JC-F=270 Hz, C), 125.09(q, JC-F=32 Hz, C), 126.85(CH), 126.89(CH), 126.93(CH), 126.96(CH), 154.45(C), 156.53(C); 31P-NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 187.3; LRMS(FAB)m/z 426(M++H), 353, 264; HRMS(FAB)calcd for C18H19F6NO2P(M++H): 426.1058; found: 426.1046.
【0027】
合成例1で得たスピロジオール3(25.2 mg, 0.1 mmol)及び上記で得たbis[4-(trifluoromethyl)phenyl] N,N-diethylphosphoramidite(111.8 mg, 0.25 mmol)からジホスファイト合成を行った。原料消失確認後(1 時間)後処理を行い、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200, 2 g, hexane/EtOAc/Et3N=100:1:10)にて精製し、ジホスファイト4d(67.9 mg, 71%)を無色の油状物として得た。
TLC Rf 0.29(10:1 hexane/EtOAc); [α]D22 +130.4°(c 1.45, CHCl3); IR(CHCl3)ν3021, 1279, 1223, 1181, 1142, 1105, 1026, 1003, 943, 797, 737cm-1; 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 3.12(1H, m), 3.50-3.80(3H, m), 4.91(1H, m), 5.08(1H, m), 6.55(1H, m), 7.01-7.45(19H, m), 7.54-7.62(4H, m); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 39.05(CH2), 39.91(CH2), 55.58(CH3), 62.80(C), 74.99(CH), 75.83(CH), 114.43(CH), 114.58(CH), 114.63(CH), 120.76(CH), 120.85(CH), 120.99(CH), 121.06(CH), 121.14(CH), 121.21(CH), 121.52(CH), 121.59(CH), 122.98(CH), 124.01(CH), 125.00(CH), 125.36(CH), 127.06(CH), 127.37(CH), 127.79(CH), 127.90(CH), 144.12(C), 144.51(C), 144.93(C), 144.96(C), 145.79(C), 145.87(C), 147.22(C), 147.29(C), 155.11(C), 155.13(C), 155.61(C), 156.02(C), 156.04(C); 31P NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 164.87, 164.94.
【0028】
(3)実施例1(1)の操作例に従い、ジホスファイト配位子4eを合成した
3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール(922.7 mg, 4 mmol)、トリエチルアミン(518.1 mg, 5.12 mmol)及びN,N-diethylphosphoroamidous dichloride(348 mg, 2 mmol)からbis[3,5-bis(trifluoromethyl)phenyl] N,N-diethylphosphoramidite(865.5 mg, 77%)を無色油状物として得た。粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200 20 g, hexane/EtOAc/Et3N=100:1:10)にて精製した。反応式を下式に示す。
【化16】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf 0.46(10:1 hexane/EtOAc); IR(CHCl3)ν 2978, 1279, 1175, 1140, 1107, 1026, 891, 702, 681cm-1; 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 1.15(6H, dd, J=10.8 Hz), 3.32(4H, dq, J=10.8, 15.6 Hz), 7.47(4H, s), 7.59(2H, s); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 14.98(CH3), 15.02(CH3), 21.50(CH3), 38.05(CH2), 38.27(CH2), 117.86(CH), 117.88(CH), 117.95(CH), 117.97(CH), 122.83(d, JC-F=272 Hz, C), 139.09(q, JC-F=32 Hz, C), 153.91(C), 153.98(C); 31P-NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 189.0; LRMS(FAB)m/z 560(M++H), 489, 332; HRMS(FAB)calcd for C20H15F12NO2P(M++H): 560.0649; found: 560.0659.
【0029】
合成例1で得たスピロジオール3(25.2 mg, 0.1 mmol)及び上記で得たbis[3,5-bis(trifluoromethyl)phenyl] N,N-diethylphosphoramidite(140.3 mg, 0.25 mmol)からジホスファイト合成を行った。原料消失確認後(6 時間)後処理を行い、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC-200, 3 g, hexane/EtOAc/Et3N=100:1:10)にて精製し、ジホスファイト4e(98.3 mg, 80%)を無色の油状物として得た。
TLC Rf 0.62(4:1 hexane/EtOAc); [α]D21 +67.0°(c 0.92, CHCl3); IR(CHCl3)ν 3029, 3013, 1264, 1231, 1167, 1090, 868cm-1; 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 3.07(1H, d, J=17.2 Hz), 3.45-3.71(3H, m), 5.03(2H, m), 6.49(1H, d, J=7.9 Hz), 6.69(1H, d, J=8.6 Hz), 6.90-7.48(18H, m); 13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ 38.98(CH2), 39.83(CH2), 64.46(C), 74.95(CH), 75.73(CH), 117.38(CH), 117.46(CH), 117.61(CH), 117.70(CH), 117.73(CH), 117.81(CH), 118.30(CH), 118.36(CH), 122.97(CH), 124.04(CH), 124.36(CH), 124.99(CH), 125.05(CH), 125.26(CH), 125.34(CH), 125.70(CH), 127.02(CH), 127.36(CH), 127.77(CH), 127.88(CH), 138.98(C), 139.06(C), 139.26(C), 139.29(C), 139.35(C), 141.26(C), 144.07(C), 144.50(C), 151.42(C), 151.45(C), 152.19(C), 152.27(C), 153.61(C), 153.68(C); 31P NMR(107 MHz, CDCl3,)δ 147.7; LRMS(FAB)m/z 1227(M+-H), 999, 723, 489, 217; HRMS(FAB)calcd for C49H25F24O6P2(M+-H): 1227.0743; found: 1227.0778.
【0030】
実施例2
アルゴン雰囲気下、実施例1(3)で得たジホスファイト配位子4e(4.9 mg, 0.004 mmol)のジオキサン(0.5 mL)溶液に[Rh(C2H4)2Cl] 2(0.58 mg, 0.0015 mmol)を室温にて加え、30分間撹拌した。TLC( 1:1 hexane/EtOAc)にて錯体形成を確認(5分後)した。黄色反応溶液に水(0.1 mL)、トリエチルアミン(10 mg, 0.1 mmol)を加えた後、2-シクロヘキセノン(12)(9.6 mg, 0.1 mmol)のジオキサン(0.5 mL)溶液及びフェニルボロン酸(13)(18.3 mg, 0.15 mmol)を加えた。反応溶液は黄土色に変化した。TLC(4:1 hexane/EtOAc)にて原料の消失を確認(10分後)した後、反応溶液に10%塩酸(1 mL)を加え、酢酸エチル(2×5 mL)で抽出した。あわせた有機層を10%水酸化ナトリウム水溶液(2×3 mL)、水(3 mL)、飽和食塩水(2×3 mL)で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、溶媒を減圧留去して得られた残査(30 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル1 g, 10:1 hexane/EtOAc)にて精製し化合物14(16.2 mg, 93%)を無色油状物として得た。
TLC Rf=0.70(2:1 hexane/EtOAc); [α]D24 -21.0°(c 0.67, CHCl3)for 98%; 1H NMR(270 MHz, CDCl3)δ 1.77(1H, qdd, J=12.6, 6.0, 3.1 Hz), 1.85(1H, qd, J=12.3, 3.3 Hz), 2.07(1H, dm, J=13.1 Hz), 2.14(1H, ddq, J=12.6, 6.0, 3.1 Hz), 2.37(1H, tdd, J=12.6, 6.3, 1.1 Hz), 2.45(1H, dm, J=14.5 Hz), 2.52(1H, td, J=12.4, 1.1 Hz), 2.59(1H, ddt, J=14.0, 4.5, 2.0 Hz), 3.00(1H, tt, J=19.9, 3.8 Hz), 7.19-7.25(3H, m), 7.32(2H, t, J=7.5 Hz).
生成物の鏡像体過剰率(ee)はキラルカラムを用いたHPLC分析により99% eeと決定した。分析条件:column: Daicel Chiralcel OD-H; eluent: 50:1 hexane/2-propanol; flow: 1.0 mL/min; detection: 254 nm; retention time: 12.7 min(major enantiomer S), 13.8 min(minor enantiomer R).
【0031】
ジホスファイト配位子4eの代わりに、ジホスファイト配位子4c、d、及び比較のためジホスファイト配位子4aを用いて同様に反応を行なった。その結果を表1に示す。
【表1】

【0032】
実施例3
実施例1(3)で得たジホスファイト4e(4.9 mg, 0.005 mmol)のジオキサン(0.5 mL)溶液にアルゴン雰囲気下、室温にて[Rh(C2H4)2Cl](Strem、0.78 mg, 0.002 mmol)を加え30分間撹拌した。TLC( 1:1 hexane/EtOAc)にて錯体形成を確認(5分後)した。黄色反応溶液に水(0.1 mL)、トリエチルアミン(20.2 mg, 0.2 mmol)を加えた後、シンナムアルデヒド(15)(和光純薬、26.4 mg, 0.2 mmol)のジオキサン(0.5 mL)溶液及び4-フルオロフェニルボロン酸(16)(東京化成、56.0 mg, 0.4 mmol)を加えた。反応溶液は黄土色に変化した。TLC(4:1 hexane/EtOAc)にて原料の消失を確認(3時間後)した後、反応溶液に10%塩酸(1 mL)を加え、酢酸エチル(2×5 mL)で抽出した。あわせた有機層を水(3 mL)、飽和食塩水(2×3 mL)で順次洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮して得られた粗生成物(100 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル5 g, 10:1 hexane/EtOAc)で精製し、化合物17(38.8 mg, 85%)を無色油状物として得た。
TLC Rf=0.43(4:1 hexane/EtOAc); [α]D21 +1.0°(c 1.46, CHCl3); 1H NMR(270 MHz, CDCl3)δ 3.10(2H, dd, J=18, 7.5 Hz), 4.60(1H, t, J=12.4 Hz), 6.98(2H, m), 7.17-7.33(7H, m), 9.74(1H, t, J=1.8 Hz).
生成物の鏡像体過剰率(ee)はアルデヒド17をエタノール中NaBH4で処理し対応するアルコールに変換した後、キラルカラムを用いたHPLC分析により93% eeと決定した。分析条件:column: Daicel Chiralcel OJ-H; eluent: 9:1 hexane/2-propanol; flow: 1.0 mL/min; detection: 254 nm; retention time: 11.8 min(major enantiomer S), 18.0 min(minor enantiomer R).
【0033】
ジホスファイト配位子4eの代わりに、ジホスファイト配位子4c、d、及び比較のためジホスファイト配位子4aを用いて同様に反応を行なった。その結果を表2に示す。
【表2】

【0034】
実施例4
本実施例ではジホスファイト配位子4e、及び比較のためジホスファイト配位子4aを用いて、パラジウム-ホスファイト錯体を触媒とするアリル位アミノ化反応を行った。
基質となるエステル5は以下のように合成した。
アルゴン雰囲気下、1,3-ジフェニル-2-プロペノール(東京化成、1.98 g, 7.83 mmol)とピリジン(1.58 mL, 19.6 mmol)の塩化メチレン溶液(20 mL)に0℃にて無水酢酸(959 mg, 9.4 mmol)を一度に加えた。反応溶液を室温に戻しながら撹拌した。20時間後、反応溶液を氷水(5 mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×10 mL)で抽出した。あわせた有機層を10%塩酸(2×5 mL)、飽和重曹水(2×5 mL)、水(5 mL)、飽和食塩水(2×5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濾過、濃縮して得られた粗生成物(約1.9 g)をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60 g, 20:1 hexane/EtOAc)で精製しエステル5(1.33 g, 68%)を無色油状物として得た。
反応式を下式に示す。
【化17】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf=0.47(2:1 hexane/EtOAc); 1H NMR(270 MHz, CDCl3)δ2.07(3H, s), 6.33(1H, dd, J=8.1, 15.4 Hz), 6.42(1H, d, J=7.3 Hz), 6.62(1H, d, J=15.9 Hz), 7.22-7.41(10H, m).
【0035】
実施例1(3)で得たジホスファイト4e(25.8 mg, 0.021 mmol)と[Pd(η3-C3H5)Cl]2(Aldrich、3.7 mg, 0.01 mmol)のTHF(0.5 mL)溶液をFTP(freeze-thaw-pump)法で3回脱気し、アルゴン雰囲気下、室温で30分撹拌した。淡黄色の反応溶液に上記で得たエステル5(50.5 mg, 0.2 mmol)の THF(0.5 mL)溶液を加え30分間撹拌した。ベンジルアミン(64.2 mg, 0.6 mmol)のTHF(0.5 mL)溶液を加え、再度FTP法で3回脱気した後、アルゴン雰囲気下室温で24時間撹拌した。反応溶液に10%塩酸(2 mL)を加え,酢酸エチル(2×8 mL)で抽出した。あわせた有機層を飽和重曹水(2×5 mL)、水(5 mL)、飽和食塩水(2×5 mL)で順次洗浄し,無水硫酸ナトリウムで乾燥した.乾燥剤を濾去し,溶媒を減圧留去して得られた残査(200 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル5 g, 20:1 hexane/EtOAc)にて精製し(S,E)-N-benzyl-1,3-diphenylprop-2-en-1-amine 6(51.5 mg, 86%)を無色油状物として得た。反応式を下式に示す。
【化18】

生成物の分析データを以下に記す。
TLC Rf=0.40(3:1 hexane/EtOAc); [α]D21 +22.0(c 1.31, CHCl3)for 98% ee [lit., [α]D23 -21.6°(c 1.2, CHCl3)for 89% ee]; 1H NMR(270 MHz, CDCl3)δ 1.78(1H, brs, NH), 3.73(2H, dd, J=13.2, 15.9 Hz, PhCH2NH), 4.39(1H, d, J=7.4 Hz, CHPh), 6.31(1H, dd, J=7.4, 15.9 Hz, PhCH=CH), 6.58(1H, d, J=15.9 Hz, PhCH=CH), 7.17-7.45(15H, m, aromatic).
生成物の鏡像体過剰率(ee)はキラルカラムを用いたHPLC分析により98% eeと決定した。分析条件:column: Daicel Chiralcel OJ-H; eluent: 9:1 hexane/2-propanol; flow: 1.0 mL/min; detection: 254 nm; retention time: 13.1 min(major enantiomer S), 17.1 min(minor enantiomer R).
lit., von Matt, P.; Loiseleur, O.; Koch, G.; Pfaltz, A.; Lefeber, C.; Feucht, T.; Helmchen, G. Tetrahedron: Asymmetry 1994, 5, 573.
【0036】
実施例1(1)で得たジホスファイト4a(14.7 mg, 0.021 mmol)と[Pd(η3-C3H5)Cl]2(3.7 mg, 0.01 mmol)のTHF(0.5 mL)溶液をFTP(freeze-thaw-pump)法で3回脱気し、アルゴン雰囲気下、室温で30分撹拌した。淡黄色の反応溶液にエステル5(50.5 mg, 0.2 mmol)の THF(0.5 mL)溶液を加え30分間撹拌した。反応溶液にマロン酸ジメチル(79.3 mg, 0.6 mmol)とN,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(182 mg, 0.6 mmol)のTHF(0.5 mL)溶液を加えた後、酢酸リチウム(1.3 mg, 0.02 mmol)を素早く加えた。淡黄色懸濁液を再度FTP法で3回脱気し、アルゴン雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応溶液に10%塩酸(2 mL)を注ぎ、酢酸エチル(2×8 mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(2×5 mL)、水(5 mL)、飽和食塩水(2×5 mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過、濃縮して得られた残査(200 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル5 g, 20:1 hexane/EtOAc)にて精製し、(S,E)-N-benzyl-1,3-diphenylprop-2-en-1-amine 6(62.3 mg, 96%)を無色油状物として得た。生成物の鏡像体過剰率(ee)はキラルカラムを用いたHPLC分析により98% eeと決定した。
TLC Rf=0.47(6:1 hexane/EtOAc); [α]D25 +20.6°(c 1.27, CHCl3)for 98% ee of 6 [lit., [α]D23 -22.0°(c 1.13, CHCl3)for 98% ee of 6].; 1H NMR(270 MHz, CDCl3)δ 3.46(3H, s, CO2CH3), 3.64(3H, s, CO2CH3), 3.95(1H, d, J=10.6 Hz, CHCO2CH3), 4.27(1H, dd, J=8.6, 10.6 Hz, CHPh), 6.33(1H, dd, J=8.6, 15.8 Hz, PhCH=CH), 6.48(1H, d, J=15.8 Hz, PhCH=CH), 7.10-7.29(10H, m, aromatic).
生成物の鏡像体過剰率(ee)はキラルカラムを用いたHPLC分析により98% eeと決定した。分析条件:column: Daicel Chiralcel AD; eluent: 9:1 hexane/2-propanol; flow: 1.0 mL/min; detection: 254 nm; retention time: 12.3 min(minor enantiomer S), 16.9 min(major enantiomer R).
【0037】
これらの結果から、ジホスファイト配位子のフェノキシ基に電子求引基を組み込んだジホスファイト(ジホスファイト配位子4c,4d,4e)を用いたロジウム(I)触媒は、ジホスファイト配位子4aを用いたロジウム(I)触媒を用いた場合に比べて、反応は室温で円滑に進行し目的とする1,4-付加生成物が高収率かつ極めて高い不斉収率で得られ、更に不斉識別能を損なうことなく触媒活性が向上し、特にジホスファイト配位子4d,4eを用いた場合には反応時間が大幅に短縮される(表1、表2)。
本発明の配位子を用いた場合、従来の不斉ホスフィン配位子では困難なシンナムアルデヒド誘導体へのアリールボロン酸の1,4-付加反応を機軸とする3,3-ジアリールプロパナールの不斉合成において極めて高い不斉収率を実現する。特に、ジホスファイト配位子4d,4eを用いた場合は室温でも速やかに反応が完結する。
Rh(I)錯体を触媒とするアリールボロン酸のα,β−不飽和カルボニル化合物への1,4-付加反応は、用いる配位子の電子供与能の低下に伴いアリール基のトランスメタル化が促進され、続く共役付加反応が円滑に進行する。ホスファイト配位子は含リン配位子の中で最もπ−電子受容能が高く、金属−ホスファイト錯体は金属−ホスフィン錯体に比べ電子密度の低い状態の金属中心を創出することが知られている。本反応においてもジホスファイトのフェノキシ基に電子求引基を組み込むことにより、より高い触媒活性が実現したものと考えられる。
特に、ジホスファイト配位子4eは、パラジウムを触媒とする不斉アリル位置換反応においても母型配位子4aを用いた場合と同等の不斉収率を保ちつつ大幅に反応性を向上させる(実施例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式
【化1】

(式中、Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、電子求引基を表し、mは、それぞれ同じであっても異なってもよく、1〜5の整数を表す。)で表される含リン酸配位子に白金族金属を配位させてなる不斉触媒。
【請求項2】
前記電子求引基がハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基又はニトロ基である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記白金族金属がロジウム又はパラジウムである請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
溶液に前記含リン酸配位子と前記白金族金属を溶解させることにより形成された請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒の不斉アリル位置換反応、不斉1,4-付加反応、不斉水素化反応、不斉Heck反応、不斉ヒドロシリル化反応、不斉アルドール反応、不斉Mannich反応、不斉Diels-Alder反応、不斉ヘテロDiels-Alder反応、不斉Pauson-Khand又は不斉環化異性化反応における使用。
【請求項6】
下式
【化1】

(式中、Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、電子求引基を表し、mは、それぞれ同じであっても異なってもよく、1〜5の整数を表す。)で表される含リン酸配位子。
【請求項7】
前記電子求引基がハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基又はニトロ基である請求項6に記載の配位子。

【公開番号】特開2007−203269(P2007−203269A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28542(P2006−28542)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】