説明

不溶性活性物質を伴う医薬製剤

肺投与製剤は、脂質マトリックス中の活性物質粒子を含む微粒子を含み、当該活性物質は1.0mg/ml未満の水溶解度を有する。1態様では、製剤中の活性化合物粒子の少なくとも90%は、3μm未満の幾何学的直径を有する。別の態様では、不溶性活性物質は、アンフォテリシンBを含む。粒子は、エアロゾル製剤を肺深部に送達できるような大きさ及び形状を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に不溶性活性物質を含有する医薬組成物に関するものである。特にこの不溶性活性物質は、好ましくは結晶形態で提供され、マトリックス材料中に組み込まれる。マトリックス材料は、吸入適用のためのエアロゾル分散性または経口もしくは注射用薬物デリバリー適用のための水性分散性等の意図した適用のための望ましい製品特性を提供するように選択する。
【背景技術】
【0002】
背景
ドラッグデリバリー技術は、かつて投与が困難であった薬物の投与のための、新規なおよび/またはより良い機会を創造し続けている。例えば、生物的適合性であるように、活性物質が物理的に安定化するように、活性物質が化学的に安定化するように、ペイロード(payload)を効果的に標的するように、クリアランスを回避するように、および/または活性物質の溶解を制御するように、医薬製剤を作り出すことができる。1つの具体的なチャレンジは、不溶性活性物質、例えば1mg/ml未満の溶解度を有する活性物質を製剤化することである。不溶性薬物を含むドラッグデリバリーシステムのin vivo成績を向上させるかつての試みは、微粉化、粉砕、高圧ホモジナイズ、および超音波による薬物結晶のサイズ縮小、または、例えばエマルジョン、マイクロエマルジョン、固体脂質ナノ粒子、およびシクロデキストリン類の使用による、溶解しにくい薬物を可溶化または複合化させるためのドラッグデリバリー媒質の開発を包含する。
【0003】
薬物結晶は、標準計量式吸入器および乾燥粉末吸入器用に、肺デリバリーのための微粒子として長期間使用されてきた。現在エアロゾルデリバリーに使用されているミクロンサイズの結晶にはかなりの粒子間相互作用が存在し、そのため粉末の流れと分散性を改善するため、結晶を乳糖担体粒子と混和する必要がある。ところが、混和医薬製剤には、(a) 劣悪なデリバリー効率(見掛け用量の5〜30%)、および(b) 肺沈着と、最高吸気流速への著しい依存性、を包含する、肺デリバリーの重大な制限が存在する。
【0004】
これらの欠点は、肺デリバリーのための粒子を特別に製造することによって劇的に改善できる。探求された1つの粒子製造戦略は、吸入用粒子を作り出すためのスプレードライの使用である。スプレードライによる粒子製造は、粒子形態、表面の粗さ、表面エネルギー、粒子密度、吸入成績に劇的な影響を及ぼすパラメータ等の属性に対する制御を提供するが、これは標準的な結晶粉砕技術によっては達成できない。スプレードライ粒子は、肺デリバリー効率の劇的な改善と、受動乾燥粉末吸入器からデリバリーされる際の流速依存性の低下を示した。
【0005】
現在のところ、殆どのスプレードライ戦略は、薬物が連続水相に溶解している水性供給原料の使用を含んでいる。1つの戦略は、薬用物質のアモルファスガラスを形成させることである。このような系については、薬物の溶解度が約1mg/ml未満に低下するために能動的装填および許容可能な供給原料濃度が劇的に低下し、このことは、この溶液法によるスプレードライを、低いスループットと用量限界のため非実用的とする。これは、低いガラス転移温度Tgを持つ薬物の場合、特に当てはまる。
【0006】
Fox方程式は、ガラス形成剤の混合物のガラス転移温度に関するものである。低い固有Tgを持つ活性物質の場合、高いTgを持つ賦形剤(例えば炭水化物、アミノ酸、塩類)の配合によってそのTgを上げることができる。アモルファス混合物のTgであるTg*は、Fox方程式:
【0007】
【数1】

【0008】
[式中、Xiは、アモルファスマトリックス中の成分iの質量分率であり、そしてTgiは、多成分マトリックス中の成分iのガラス転移温度である。]
を用いて見積られる(Fox TG: Bull Am Phys Soc 1956, 1:123)。
【0009】
医薬品開発において、優れた化学的および物理的安定性の達成という見地から、ガラス転移温度は保存温度Tsよりも約50℃高いことが有利である。標準的な医薬品試験は、40℃/75%相対湿度(RH)の保存条件での安定性試験を包含する。よってTg*は好ましくは90℃(363゜K)またはこれ以上であるべきである。幾つかの標準的なガラス安定化賦形剤のTg値は以下の通りである:
【0010】
【表1】

【0011】
製剤設計者の直面するジレンマは、活性物質のTgが低い場合、安定化賦形剤の必要量が多くなることである。このことにより、実際にデリバリーされ得る活性物質の用量が事実上限定される。
【0012】
Fox方程式を利用して、低いTgを持つ活性物質のTgを上げるのに必要なこれらの賦形剤の質量分率を見積もり、許容可能な化学的および物理的安定性を持つ医薬品を製造することができる。Tg*が363゜KでありTgAPI = 283℃であると仮定すると、Tg*の達成に必要なトレハロースまたはトリロイシンの質量分率は0.99である。ロイシンおよびクエン酸ナトリウムについては、賦形剤の質量分率は各々0.70および0.61となる。よって、大きなパーセンテージの用量を実現するために賦形剤が必要となり、これが、デリバリーされ得る用量をさらに限定する。故に、水溶解度が1mg/ml未満の薬物の、効率的且つ再現性ある肺デリバリーに対する必要性が存在する。
【0013】
故に、不溶性活性物質を含む医薬製剤を製造できることが望ましい。さらに、不溶性活性物質を含む医薬製剤を、経済的で再現性がありかつ高装填法で製造することが望ましい。さらに、効果的にアエロゾル化されて使用者の肺にデリバリーされる、不溶性活性物質を含む吸入用医薬製剤を製造することが望ましい。
【発明の開示】
【0014】
要約
本発明はこれらの必要性を満足させる。本発明の一つの態様では、医薬製剤は、疎水性材料を含むマトリックス中に不溶性活性物質を含む。
【0015】
本発明の別の態様では、肺投与のための医薬製剤は、脂質マトリックス中に活性物質粒子を含む微粒子を含み、この活性物質は1.0mg/ml未満の水への溶解度を有する;ここで、該医薬製剤中の活性物質粒子の少なくとも90%は3μm未満の幾何学的直径を有し、該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する。
【0016】
本発明の別の態様では、肺投与のための医薬製剤を製造する方法は、活性物質粒子と疎水性材料を液体供給原料中に懸濁すること、ここで、活性物質粒子の少なくとも90%は3μm未満の幾何学的直径を有する;及び、この供給原料懸濁液をスプレードライして、この疎水性材料中に少なくとも部分的に活性物質粒子が含まれる微粒子を製造すること、を含む。
【0017】
本発明の別の態様では、活性物質粒子と疎水性材料を液体供給原料中に懸濁すること、ここで、活性物質粒子の少なくとも90%は3μm未満の幾何学的直径を有する;及び、この疎水性材料中に少なくとも部分的に活性物質粒子が含まれる微粒子を製造するためにこの供給原料懸濁液をスプレードライすること、によって、医薬製剤を製造する。
【0018】
本発明の別の態様では、肺投与のための医薬製剤は、脂質マトリックス中にアンフォテリシンBを含む微粒子を含み、ここで、この医薬製剤中のアンフォテリシンB粒子の少なくとも90%は3μm未満の幾何学的直径を有し、且つ、該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する。
【0019】
本発明の別の態様では、肺投与のための医薬製剤は、脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を含む微粒子を含み、ここで、該微粒子は中空および/または多孔性であり、且つ、該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する。
【0020】
本発明の別の態様では、肺投与のための薬用製剤は、脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を含む微粒子を含み、ここで、該微粒子は0.5g/cm3未満の嵩密度を有し、且つ、該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する。
【0021】
本発明の別の態様では、肺投与のための医薬製剤を製造する方法は、液体供給原料にアンフォテリシンB粒子と疎水性材料を懸濁すること、ここで、この活性物質粒子の少なくとも90%は3μm未満の幾何学的直径を有する;及び、この供給原料懸濁液をスプレードライして、該疎水性材料中に少なくとも部分的にアンフォテリシンBを含む微粒子を製造すること、を含む。
【0022】
本発明の別の態様では、液体供給原料中にアンフォテリシンB粒子と疎水性材料を懸濁すること、ここで、この活性物質粒子の少なくとも90%は3μm未満の幾何学的直径を有する;及び、この供給原料懸濁液をスプレードライして、該疎水性材料中に少なくとも部分的にアンフォテリシンBを含む微粒子を製造すること、により医薬製剤を製造する。
【0023】
本発明の別の態様では、肺投与のための医薬製剤を製造する方法は、液体供給原料にアンフォテリシンB粒子を懸濁すること、この液体供給原料は、そこに脂質と発泡剤を溶解または懸濁させている;及び、この供給原料懸濁液をスプレードライして、アンフォテリシンBおよび脂質を含む中空および/または多孔性の微粒子を製造すること、を含む。
【0024】
本発明の別の態様では、液体供給原料にアンフォテリシンB粒子を懸濁すること、この液体供給原料は、そこに脂質と発泡剤を溶解または懸濁させている;及び、この供給原料懸濁液をスプレードライして、アンフォテリシンBおよび脂質を含む中空および/または多孔性の微粒子を製造すること、により医薬製剤を製造する。
【0025】
定義
本明細書に記載する「活性物質」とは、何らかの診断的、予防的、または薬理学的(しばしば有益な)効果を提供する、問題となる物質、薬物、化合物、組成物、またはそれらの混合物を包含する。これには、食品、食品添加物、栄養剤、薬物、ワクチン、ビタミン、およびその他の有益な物質を包含する。本明細書中使用するこの語はさらに、患者において局所的または全身的効果を産み出す、生理的または薬理学的活性物質を包含する。デリバリーされ得る活性物質は、抗生物質、抗体、抗ウイルス物質、抗癲癇薬、鎮痛薬、抗炎症物質および気管支拡張薬、ならびにウイルスを包含し、末梢神経、アドレナリン作動性レセプター、コリン作動性レセプター、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経効果器接合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化および排泄系、ヒスタミン系ならびに中枢神経系に作用する薬物を包含するがこれらに限定されない無機および有機化合物であってよい。好適な物質は、例えば多糖類、ステロイド、催眠および鎮静薬、精神賦活薬、トランキライザー、抗痙攣薬、筋弛緩薬、抗感染薬、抗片頭痛薬、抗パーキンソン薬、鎮痛薬、抗炎症薬、筋収縮薬、抗菌薬、抗マラリア薬、避妊薬を包含するホルモン薬、交感神経作用薬、ポリペプチド、および生理作用を誘起できる蛋白、利尿薬、脂質調節薬、抗アンドロゲン薬、抗寄生虫薬、新生物、抗新生物薬、血糖低下薬、栄養剤およびサプリメント、成長サプリメント、脂肪、抗腸炎薬、電解質、ワクチンおよび診断薬から選択できる。
【0026】
本発明において有用な活性物質の例は、モルヒネ、コデイン、フェンタニール、インドメタシン、ナプロキセン、およびピロキシカムといった鎮痛/抗リウマチ薬;フェニラミン、ジメチンデン、テルフェナジン、ロラチジン、およびドキシラミンといった抗アレルギー薬;リファンピシン、エタンブトール、およびチアセタゾンといった抗生物質;カルバマゼピン、クロナゼパム、アルプラゾラム、メダゾラム、メスクシミド、フェニトイン、およびバルプロ酸といった抗癲癇薬;ナタマイシン、アンフォテリシンB、ボリコナゾール、およびミコナゾールといった抗真菌薬;アルドステロン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、およびベクロメトアゾンといったコルチコイド;リスリド、メチセルジド、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミンといった片頭痛薬;ベンゾジアゼピン類およびクロルメチアゾールといった向精神薬;メファラン、カルムスチン、ロムスチン、シクロフォスファミド、イフォサミド、トロフォサミド、クロラムブシル、フルオロウラシル、メトトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、およびカンプトテシン類といった抗癌薬;Ara-C、FudR、および5FUといった細胞増殖抑制薬;AZT、ddC、およびddIといったウイルス増殖抑制薬;GdDTPAのようなMRI造影剤;ならびに非ステロイド性炎症薬、例えばVLA-4インヒビターおよびホスホジエステラーゼインヒビター(例えばPD-4インヒビター)のような喘息薬を包含するが、これらに限定されない。
【0027】
さらなる活性物質は、シクロスポリン、シプロフロキサシン、アミカシン、トブラマイシン、ペンタミジンイセチオナート、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、フルニソリド、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、キシナホ酸サルメテロール、フマル酸ホルメテロール、酒石酸エルゴタミン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、プロゲステロン、ミクロナゾール、ピロキシカム、タクロリムス、シロリムス、インドメタシン、エコナゾール、パラメトキシシンナメート、THC、ニコチン、ハロファントリン、スタチン類、タキソール、タキソテール、アルファクスロン、エリスロマイシン、アルベンダゾール、ニトロスキャナート、ダントロレン、カファロン、チルミコシン、ニタゾキサニド、フルオロキノロン(例えばシプロフロキサシン)、チルミコシン、全トランスレチン酸および類似体、上記物質のアゴニストおよびアンタゴニストを包含するが、これらに限定されない。この活性物質は、様々な形態、例えば不溶性荷電または非荷電分子、分子複合体の成分または薬学上許容し得る塩であってよい。活性物質は天然に存在する分子であっても、組換え生産されたものであってもよく、または、これらは、天然に存在する、または1もしくはそれ以上のアミノ酸が付加または除去された組換え生産された活性物質の、類似体であってもよい。さらに、活性物質は、ワクチンとしての使用に好適な、生存弱毒化ウイルスまたは殺滅したウイルスを含むこともできる。
【0028】
本明細書中使用する「放出用量」または「ED」の語は、粉末単位または容器からの発射または分散事象の後の、適当な吸入装置からの乾燥粉末のデリバリー指標を指す。EDは、見掛け用量(即ち、発射前に適当な吸入装置中に入れた、単位用量当たりの粉末質量)に対する、(下記に詳説する)吸入装置によりデリバリーされた用量の比として定義される。EDは実験的に決定される量であり、典型的には患者への投与を模倣したin vitroの装置設定を用いて決定する。ED値を決定するためには、(上記定義による)乾燥粉末の見掛け用量を適当な乾燥粉末吸入器に入れ、次いでこの吸入器を作動させ、粉末を分散させる。次いで、生成したアエロゾル・クラウドをこの装置から減圧吸引し、装置のマウスピースに取り付けた風袋測定済みフィルターに捕捉する。フィルターに到達した粉末の量が、デリバリーされた用量を構成する。例えば、吸入装置中に入れた5mgの乾燥粉末-含有ブリスターパックについて、この粉末の分散で、上記のような風袋測定済みフィルター上に4mgの粉末が回収されたならば、この乾燥粉末組成物のEDは、4mg(デリバリー用量)/ 5mg(見掛け用量)x 100 = 80% である。
【0029】
本明細書中使用する「不溶性」という語は、約5.0〜8.0という生理学的にほぼ中性のpHで測定した水溶解度が1.0mg/ml未満であることを指す。
【0030】
「質量平均直径」または「MMD」とは、平均粒子径の尺度であるが、これは、本発明に係る粉末が一般には多分散であるためである(即ち、或る範囲を持つ粒子サイズで構成される)。本明細書に報告するMMD値は、遠心沈降によって、及び/またはレーザー回折によって測定するが、平均粒子径の測定には多数の一般的に使用される技術を利用することができる。
【0031】
「質量平均直径」または「MMAD」とは、平均粒子径の尺度であるが、これは、本発明に係る粉末が一般には多分散であるためである(即ち、或る範囲を持つ粒子サイズで構成される)。「質量平均空気力学的直径」または「MMAD」とは、分散した粒子の空気力学的サイズの尺度である。空気力学的直径は、エアロゾル化した粉末をその沈降動作の点から表現するために使用するものであり、一般には空気中で同じ沈降速度を有する、粒子としての単位密度球体の直径である。空気力学的直径は、粒子形状、密度、および粒子の物理的サイズを包含する。本明細書中使用するMMADとは、カスケードインパクションによって測定したエアロゾル化粉末の空気力学的粒子サイズの分布の中心点または平均を指す。
【0032】
本明細書中使用する「受動乾燥粉末吸入器」とは、この装置中に入っている製剤の分散またはエアロゾル化を、患者の呼吸努力に依拠する吸入装置を指し、製剤の分散およびエアロゾル化のためのエネルギーを供給するための手段、例えば加圧気体および振動または回転要素を含む吸入装置を包含しない。
【0033】
説明
本発明は、不溶性活性物質を含む医薬製剤、該医薬製剤の製造、および該医薬製剤の用途に関するものである。このプロセスは、エアロゾル化薬用製剤を調合する状況を説明しているが、本発明は他のプロセスに利用することもでき、本明細書に提供する実施例に限定すべきではない。
【0034】
本発明に係る医薬製剤は、改善されたまたは増強されたバイオアベイラビリティ、デリバリー効率、化学的安定性、物理的安定性、および/または生産可能性を有する不溶性活性物質を提供する。一つの態様では、この医薬製剤は、マトリックス材料に少なくとも部分的に組み込まれた、結晶形態であってよい不溶性活性物質を含む。マトリックス材料は、所望の特性、例えばエアロゾル分散性または液体媒質内部への改善された懸濁を提供するよう選択する。本発明に係る医薬製剤は、徐放または速放用に製造できる。
【0035】
該医薬製剤は殆ど水に溶解しない活性物質を含む。したがって一つの態様では、該医薬製剤は1.0mg/ml未満の水溶性を有する活性物質を含む。特別な態様では、該医薬製剤は0.1mg/ml未満の水溶性を有する活性物質を含む。図1は、粒子径および活性物質の水溶解度の関数として、オストワルト成長の特性時間をプロットしたものを表す。この図から理解できるように、0.1mg/ml未満の水溶性を有する活性物質は、一定範囲の加工条件にわたり、安定性を達成できる。別の具体的な態様では、医薬製剤が0.1mg/ml〜1.0mg/mlの水溶性を有する活性物質を含む。意外なことに、0.1mg/ml〜1.0mg/mlの水溶性を有する活性物質を効果的に製剤化できるということが発見された。これは、0.1〜1.0mg/mlの範囲の溶解度を有する活性物質は、エアロゾル化医薬製剤の製造に一般的に用いられる幅広い加工条件の下で、オストワルト成長を受けるということを予測する、Lifshitz-Slezov-Wagner理論に鑑みると、予想外のことである。
【0036】
一つの態様では、該医薬製剤は、マトリックス材料中に不溶性活性物質粒子を含む。直径の小さい不溶性活性物質粒子の使用が有利であることが発見された。特にエアロゾル化医薬製剤については、直径が3μm未満の不溶性活性物質粒子の使用が望ましいことが判明している。したがって一つの態様では、本発明に係る医薬製剤は、その少なくとも20%が3μm未満の直径を有し、より好ましくはその少なくとも50%が3μm未満の直径を有する不溶性活性物質粒子を使用して製造する。好ましい態様では、該医薬製剤の製造に使用する活性物質粒子質量の少なくとも90%は3.0μm未満の直径であり、より好ましくは該医薬製剤の製造に使用する活性物質粒子質量の少なくとも95%は3.0μm未満の直径である。或いは、またはこれに加えて、該医薬製剤の製造に使用する活性物質粒子質量の少なくとも50%は0.5μm〜3.0μmの間の直径であり、より好ましくは1.0μm〜3.0μmの間である。別の態様では、不溶性活性物質粒子は2.5μm未満、より好ましくは2.0μm未満であることが望ましい。したがってこの態様では、本発明に係る医薬製剤を、殆どの粒子が2.5μm未満、より好ましくは2.0μm未満の直径を有する不溶性活性物質粒子を用いて製造する。一つの態様では、該医薬製剤の製造に使用する活性物質粒子質量の少なくとも90%は2.5μm未満の直径であり、より好ましくは該医薬製剤の製造に使用する活性物質粒子質量の少なくとも95%は2.5μm未満の直径である。或いは、またはこれに加えて、該医薬製剤の製造に使用する活性物質粒子質量の少なくとも50%は0.5μm〜2.5μmの間の直径であり、より好ましくは1.0μm〜2.5μmの間である。不溶性活性物質粒子は結晶形態であってよい。
【0037】
多くの例では、バルク形態の不溶性活性物質は3.0μm以上の、そして多くの例では10μm以上の粒子径を有する。したがって、本発明の一つの態様では、マトリックス材料中に不溶性活性物質粒子を組み入れる前に、このバルク不溶性活性物質をサイズ縮小方法に付し、3ミクロン未満の粒子径に縮小する。好適なサイズ縮小方法は当分野で既知であり、WO95/01221号、WO96/00610号、およびWO98/36825号に開示の超臨界流体加工法、低温粉砕、湿式粉砕、超音波、高圧ホモジナイズ、ミクロ流動化、結晶化方法、および米国特許第5858410号に開示の方法を包含し、これらは全て文献としてその全体を本明細書に援用する。活性物質の望ましい粒子径が達成されたならば、得られた不溶性活性物質粒子を集め、マトリックス材料中に組み入れる。
【0038】
予想外なことには、マトリックス中に組み入れられた活性物質を含む高分散性の均質な組成物を提供するためには、不溶性活性物質粒子の粒子径は、3.0μm未満、好ましくは2.5μm未満、そして最も好ましくは約2.0μm未満とするのが特に有利であるということが見出された。活性物質の粒子径が約3.0ミクロンより大きいと、マトリックス材料に組み込まれた活性物質と、マトリックス材料なしで活性物質を含む粒子とから成る不均質組成物が生成する。この不均質組成物はしばしば劣悪な粉体流動と分散性を示す。したがって、好ましい態様は、組み込まれていない活性物質粒子を含まない、マトリックス材料に組み込まれた活性物質の均質な組成物を目的とする。しかしながら幾つかの場合には、投与しようとする活性物質の望ましい薬動力学的プロファイルを提供するためにこのような不均質組成物が望ましいかも知れず、そのような場合には大きな活性物質粒子を使用する。
【0039】
一つの態様では、離散した微粒子を形成するマトリックスに不溶性活性物質を組み込み、且つこの医薬製剤は多数の該離散微粒子を含む。この微粒子は、それらが有効に投与されるようにおよび/またはそれらが極めてバイオアベイラビリティが高くなるようにサイズ調節できる。例えば、エアロゾル化医薬製剤のためには、この微粒子を、使用者の吸入中にエアロゾル化され気道にデリバリーされるようなサイズとする。したがって一つの態様では、この医薬製剤は、20μm未満、より好ましくは10μm未満、そしてさらに好ましくは5μm未満の質量平均直径を有する微粒子を含む。
【0040】
マトリックス材料は疎水性または部分的に疎水性の材料を含み得る。例えば、マトリックス材料は脂質、例えば燐脂質、および/または疎水性アミノ酸、例えばロイシンおよびトリ-ロイシンを含み得る。燐脂質マトリックスの例はPCT公開WO99/16419号、WO99/16420号、WO99/16422号、WO01/85136号およびWO01/85137号ならびに米国特許第5874064号;第5855913号;第5985309号;および第6503480号に記載されており、これらは全て文献としてその全体を本明細書に援用する。疎水性アミノ酸マトリックスの例は米国特許第6372258号および第6358530号に記載されており、これらはいずれも文献としてその全体を本明細書に引用する。
【0041】
この医薬製剤はスプレードライ法を利用して好都合に製造できる。一つの態様では、3μm未満の直径を持つ不溶性活性物質粒子およびマトリックス材料を水性供給原料に添加し、原料懸濁液とする。次にこの原料懸濁液をスプレードライに付して、マトリックス材料と不溶性活性物質を含む乾燥微粒子を製造する。好適なスプレードライ法は当分野で既知であり、例えばPCT WO99/16419号および米国特許第6077543号、第6051256号、第6001336号、第5985248号、および第5976574号に開示の通りであり、これらは全て引用によりその全体を本明細書の一部とする。
【0042】
場合により、不溶性活性物質粒子のサイズ縮小を、最終的な粒子を形成させる単一工程の一部として達成してもよい。この種の単一工程はPCT WO99/16419号に記載されており、これは文献としてその全体を本明細書に援用する。不溶性活性物質のためにこの工程を適用するに際しては、マトリックス材料中に組み入れる活性物質の粒子径に対して好適な制御を行う必要がある。
【0043】
一つの態様では、燐脂質は飽和燐脂質、例えば1またはそれ以上のホスファチジルコリンである。好ましいアシル鎖長は16:0および18:0(即ちパルミトイルおよびステアロイル)である。燐脂質含有量は、活性物質の活性、デリバリー方法その他の因子によって決定できる。一般に燐脂質含有量は約5%〜99.9%w/w、好ましくは20%w/w〜80%w/wの範囲である。したがって、活性物質の装填は約0.1%〜95% w/w、好ましくは20〜80%w/wの間で変動し得る。
【0044】
本発明には天然および合成の両方の起源の燐脂質が適合し、それらを種々の濃度で使用して構造マトリックスを形成させることができる。一般に、適合燐脂質は、約40℃より高温でゲルから液晶相転移を有する燐脂質を含む。好ましくは、組み入れられる燐脂質は比較的長鎖(即ちC16〜C22)飽和脂質であり、より好ましくは飽和燐脂質を含み、最も好ましくは16:0または18:0(パルミトイルおよびステアロイル)のアシル鎖長を持つ飽和ホスファチジルコリンである。開示した安定化調製物において有用な燐脂質の例は、ホスホグリセリド類、例えばジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジホスファチジルグリセロール、短鎖ホスファチジルコリン類、長鎖飽和ホスファチジルエタノールアミン類、長鎖飽和ホスファチジルセリン類、長鎖飽和ホスファチジルグリセロール類、長鎖飽和ホスファチジルイノシトール類を含む。
【0045】
マトリックス材料として燐脂質を利用する場合、PCT WO01/85136号およびPCT WO01/85137号(これは文献としてその全体を本明細書に援用する)に開示のように多価カチオンを供給原料中にさらに配合するのが好ましい。好適な多価カチオンは、好ましくはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などを包含する二価カチオンである。この多価カチオンは、微粒子組成物が、その保存温度Tsよりも少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃高いTmを示すよう、燐脂質のTmを高くするのに有効な量で存在する。燐脂質に対する多価カチオンのモル比は少なくとも0.05、好ましくは0.05〜2.0、そして最も好ましくは0.25〜1.0とすべきである。多価カチオン:燐脂質のモル比は約0.50が特に好ましい。カルシウムが特に好ましい多価カチオンであり、これは塩化カルシウムとして供給する。
【0046】
燐脂質に加えて、共剤または界面活性剤の組み合わせ、液相中で1またはそれ以上の使用及び微粒子組成物に1またはそれ以上を添加した使用を含み、本発明の範囲内にあると考えられる。「結合しまたは含む」とは、微粒子組成物がその界面活性剤を配合し、吸着し、吸収し、それによって被覆され、またはそれによって形成されることを意味する。界面活性剤はフッ素化および非フッ素化化合物を包含し、飽和および不飽和脂質、非イオン性洗浄剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、およびこれらの組み合わせより成る群から選ばれる。安定化分散を含むこのような態様では、係る非フッ素化界面活性剤は、その懸濁媒質に比較的不溶性であることが好ましい。強調すべきは、前記の界面活性剤に加えて、好適なフッ素化界面活性剤は本明細書の教示に適合し、所望の製剤の提供に使用できる。
【0047】
共剤として適当な適合性非イオン性洗浄剤は、トリオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)85)、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンを包含するソルビタンエステル類、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、グリセロールエステル類、ならびにスクロースエステル類を含む。その他の好適な非イオン性洗浄剤は、文献としてその全体を本明細書に援用するMcCutcheon's Emulsifiers and Detergents(McPublishing Co., Glen Rock, New Jersey)を用いて容易に確認できる。好ましいブロックコポリマーは、ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F-68)、ポロキサマー407(Pluronic(登録商標)F-127)、およびポロキサマー338を包含するポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのジブロックおよびトリブロックコポリマーを包含する。スルホコハク酸ナトリウムのようなイオン性界面活性剤、および脂肪酸石鹸もまた利用できる。
【0048】
糖脂質、ガングリオシドGM1、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、カルジオリピンを包含するその他の脂質;ポリエチレングリコール、キチン、ヒアルロン酸、またはポリビニルピロリドン等のポリマー鎖と結合した脂質;スルホン化モノ-、ジ-、およびポリサッカライドと結合した脂質;パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸等の脂肪酸;コレステロール、コレステロールエステル類、ならびにコレステロールヘミスクシナートもまた本発明の教示に従って使用できる。
【0049】
本発明に係る医薬製剤は、所望により2またはそれ以上の活性成分の組み合わせを含有できるということが、さらに理解できる。それらの物質は、単一種の微粒子組成物中に合して供給することも、また、別々の微粒子組成物種に個別的に供給することもできる。例えば、2またはそれ以上の活性物質を単一の供給原料調製物に組み込み、スプレードライに付して、複数の活性物質を含む単一の微粒子組成物種を提供することができる。逆に、個々の活性物質を別個の原料に添加し、別々にスプレードライして、異なる組成を有する複数の微粒子組成物種を得ることもできる。これら各々の種を所望の比率で懸濁媒質または乾燥粉末投与区画に加え、下記のようなエアロゾルデリバリー系に配置することができる。さらに、該薬用製剤を1またはそれ以上の他の活性または生物活性物質と組み合わせて、所望の分散安定性または粉末分散性を提供することができる。
【0050】
前記の内容に基づき、開示した微粒子組成物中に多岐にわたる活性物質を配合できるということが、当業者には理解できるであろう。したがって、本明細書に列挙する好ましい活性物質の一覧は例に過ぎず、限定を意図している訳ではない。物質の適正な量および投与のタイミングは、既に存在している情報に従い、過度の実験をすることなく、その微粒子組成物用に決定できるということもまた当業者には理解できるであろう。
【0051】
本発明に係る医薬製剤はまた、生物適合性、好ましくは生分解性のポリマー、コポリマー、またはその混合物もしくはその他の組み合わせをも包含する。この点において、有用なポリマーは、ポリラクチド類、ポリラクチド-グリコリド類、シクロデキストリン類、ポリアクリレート類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール類、ポリ無水物、ポリラクタム類、ポリビニルピロリドン類、多糖類(デキストラン、澱粉、キチン、キトサン等)、ヒアルロン酸、蛋白質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチン等)を含む。穿孔インキ微粒子の調製に有用なポリマー樹脂の例は、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、スチレン-アクリロニトリル、エチレン-ビニルアセテート、エチレン-アクリレート、エチレン-アクリル酸、エチレン-メチルアクリレート、エチレン-エチルアクリレート、ビニル-メチルメタクリレート、アクリル酸-メチルメタクリレート、およびビニルクロリド-ビニルアセテートを包含する。当業者は、適切なポリマーを選択することにより、微粒子組成物のデリバリー効率および/または分散安定性を、活性物質または物質の有効性を最適化するように調節できることが理解できるであろう。
【0052】
前述のポリマー材料および界面活性剤の他に、他の賦形剤を微粒子組成物に添加して、粒子硬度、製造収率、放出用量および沈降、貯蔵寿命および患者許容性を改善することが望ましい。このような任意の賦形剤には、着色料、味隠蔽剤、緩衝剤、吸湿剤、抗酸化剤、および化学的安定剤が包含されるがこれらに限定される訳ではない。さらに、種々の賦形剤を該微粒子マトリックスに配合または添加して、該微粒子組成物に構造と形状を提供することができる(即ち、ラテックス粒子等のマイクロスフェア)。この点に関し、選択的溶媒抽出等の製造後技術を用いて硬化成分を除去できるということが理解できるであろう。
【0053】
その他の賦形剤には、単糖類、二糖類および多糖類を包含する炭水化物が包含され得るがこれらに限定されない。例えば、デキストロース(無水および一水和物)、ガラクトース、マンニトール、D-マンノース、ソルビトール、ソルボース等の単糖類;乳糖、マルトース、スクロース、トレハロース等の二糖類;ラフィノース等の三糖類;ならびに澱粉(ヒドロキシエチル澱粉)、シクロデキストリンおよびマルトデキストリン等のその他の炭水化物。本発明と共に使用するために好適な、アミノ酸を包含するその他の賦形剤は、WO95/31479号、WO96/32096号、およびWO96/32149号に開示される技術で知られている。炭水化物とアミノ酸との混合物もまた本発明の範囲内にある。無機(例えば塩化ナトリウム等)、有機酸およびそれらの塩(例えばカルボン酸およびそれらの塩、例えばクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン等)ならびに緩衝剤の包含もまた企図されている。塩類および有機固体、例えば炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムまたはカンファーの包含もまた企図されている。
【0054】
医薬製剤のさらに別の態様は、接触点での滞留時間を延長し、または粘膜への浸透を亢進する荷電種を含み、またはそれらで被覆されている微粒子組成物を包含する。例えば、負電荷は粘膜付着に有利であることが知られ、一方正電荷は、生成したミクロ微粒子を遺伝物質のような負に荷電した生物活性物質と結合させるのに使用できる。電荷はポリアクリル酸、ポリリジン、ポリ乳酸およびキトサン等のポリアニオンまたはポリカチオン材料との結合またはそれらの配合によって付与され得る。
【0055】
いかなる成分を選択しようとも、微粒子製造の第一段階は、典型的には供給原料の調製を含む。使用する活性物質の濃度は、最終的な粉末中に必要とされる物質の量、および、使用するデリバリー装置の性能に依存する(例えば、MDIまたはDPIのための微粒子用量)。必要に応じて、ポロキサマー188またはスパン80等の共剤をこの付加溶液中に分散させる。加えて、糖類および澱粉類等の賦形剤も添加できる。
【0056】
場合により、多価カチオン含有水中油型エマルジョンを、その後別容器中で形成させることができる。使用する油は好ましくは燐脂質で乳化されるフルオロカーボン(例えばパーフルオロオクチルブロミド、パーフルオロオクチルエタン、パーフルオロデカリン)である。例えば、多価カチオンと燐脂質を、適当な高剪断メカニカルミキサー(例えばUltra-TurraxモデルT-25混合機)を用いて8000rpmで2〜5分間、熱蒸留水(例えば60℃)中でホモジナイズする。典型的には5〜25gのフルオロカーボンを、分散させた界面活性剤溶液に、混合しつつ滴下する。得られた多価カチオン含有パーフルオロカーボンの水中エマルジョンを、次に高圧ホモジナイザーを用いて加工し、粒子サイズを縮小する。典型的にはこのエマルジョンを12000〜18000psi、5回の個別的通過により加工する。
【0057】
次いでこの不溶性活性物質懸濁液とパーフルオロカーボンとのエマルジョンを混合し、スプレードライ装置に供給する。入口および出口の温度、供給速度、霧化圧力、乾燥用空気の流速、およびノズルの形状等の操作条件は、必要な粒子サイズおよび得られる乾燥粒子の製造収率を得るために、製造者の指針に従って調節できる。設定の一例は以下の通りである:空気入口の温度、60℃〜170℃の間;空気出口、40℃〜120℃;供給速度、毎分3ml〜約15ml;そして吸引空気流、300L/分、および霧化空気流速、25〜50L/分の間。適切な装置および加工条件の選択は、本明細書の教示に鑑み、充分に当業者の範囲内にあり、過度の実験をすることなく達成できる。いずれにせよ、これらのそして実質上同等の方法を使用することにより、肺へのエアロゾル沈着に適切な粒子径を有する空気力学的に軽量の微粒子を生成させることができる。
【0058】
この医薬製剤は、乾燥粉末の形態で使用できる、または非水相を含む安定化した分散剤の形態で使用できる微粒子を含むよう調合することができる。したがって本発明に係る分散剤または粉末を、PCT公開WO99/16422号に記載の計量式吸入器(MDI)、PCT公開WO99/16419号に記載の乾燥粉末吸入器(DPI)、PCT公開WO99/16420号に記載のネブライザー、および/またはPCT公開WO99/16421号に記載の液体用量点滴注入(LDI)技術と組み合せて使用して、有効な薬物デリバリーを行うことができる。
【0059】
一つの態様では、医薬製剤を乾燥粉末の形態で使用者の肺にデリバリーできる。したがって、医薬製剤は、肺深部または別の標的部位に効果的にデリバリーできる乾燥粉末を含む。この態様に従う医薬製剤は、肺胞内への浸透を可能にするように選択した粒子径を有する粒子から成る乾燥粉末の形態である。このデリバリーのためには、粒子の質量平均空気力学的直径は5μm未満、好ましくは3μm未満、そして最も好ましくは1μm〜3μmの間であるのが理想的である。粒子の質量平均直径は、20μm未満、より好ましくは10μm未満、より好ましくは6μm未満、そして最も好ましくは2μm〜4μmである。この粉末のデリバリー用量効率(DDE)は、30%以上、より好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、そして最も好ましくは70%以上である。これら乾燥粉末は、約15重量%未満、より好ましくは約10重量%未満、そして最も好ましくは約5重量%未満の水分を有する。このような粉末は、WO95/24183号、WO96/32149号、WO99/16419号、WO99/16420号、およびWO99/16422号に記載されており、これらは全て文献としてその全体を本明細書に援用する。
【0060】
一つの態様では、医薬製剤は燐脂質マトリックス中に組み込まれた不溶性活性物質を含む。医薬製剤は、前記WO99/16419号、WO99/16420号、WO99/16422号、WO01/85136号およびWO01/85137号に記載のように、活性物質を組み込んだ、そして中空および/または多孔性微細構造である微粒子の形態である燐脂質マトリックスを含み得る。この中空および/または多孔性微細構造は、この中空および/または多孔性微細構造の密度、サイズ、および空気力学的性質が使用者の吸入の際、肺深部へと運搬されるのに理想的であるため、活性物質の肺へのデリバリーにとりわけ有用である。加えて、燐脂質型の中空および/または多孔性微細構造は、粒子間引力を低下させ、エアロゾル化中に医薬製剤を容易に脱凝集させ、及び医薬製剤の流動性を改善してこれを加工し易くする。この中空および/または多孔性微細構造は、空隙、細孔、欠損、空洞、間隙、隙間、窓、穿孔または穴を示し、または定義し、または含み、そして球形の、虚脱した、変形した、または破断した微粒子であることもある。
【0061】
この中空および/または多孔性微細構造は、WO99/16419号に開示のようにスプレードライによって形成できる。スプレードライ工程は、大きな内部空隙の境界を画定する比較的薄い多孔性壁を有する微粒子を含む医薬製剤の生成をもたらす。スプレードライ工程はまた、生成する粒子が加工中または脱凝集化中に、より破断しにくいという点で、他の方法よりもしばしば有利である。スプレードライしようとする調製物または供給原料は、選択したスプレードライ装置を用いて霧化できる任意の溶液、粗懸濁液、スラリー、コロイド分散液、またはペーストであってよい。不溶性活性物質の場合、供給原料は上記のような懸濁液を含むことができる。或いは、希釈溶液および/または1もしくはそれ以上の溶媒を供給原料中に利用できる。好ましい態様では、供給原料は、エマルジョン、逆相エマルジョン、マイクロエマルジョン、多相エマルジョン、微粒子分散液、またはスラリー等のコロイド系を含む。典型的には、供給原料を、フィルターを通した加温気流中にスプレーし、これが溶媒を蒸発させ、乾燥した製品を捕集機に運搬する。その後、使用済みの空気は溶媒と共に排出される。Buchi Ltd.またはNiro Corp.の製造した市販のスプレードライ装置を、医薬製剤の製造に使用するために改良することができる。本発明に係る乾燥粉末の製造にとって好適なスプレードライ方法および系の例は、米国特許第6077543号、第6051256号、第6001336号、第5985248号、および第5976574号に開示されており、これらは全て文献としてその全体を本明細書に援用する。
【0062】
幾つかの例では、前記WO99/16419号に記載のように、発泡剤を用いてスプレードライされた医薬製剤の分散安定性および分散性を改善できる。この工程は、典型的には、水性連続相に分散させた、水と混和しない発泡剤のミクロン以下の液滴を含む、配合させた界面活性剤により任意に安定化されていてもよいエマルジョンを形成する。発泡剤はスプレードライ工程中に気化して一般に中空多孔性の空気力学的に軽量のマイクロスフェアを残す、フッ素化化合物(例えばパーフルオロヘキサン、パーフルオロオクチルブロミド、パーフルオロオクチルエタン、パーフルオロデカリン、パーフルオロブチルエタン)であってよい。その他の好適な液体発泡剤は、非フッ素化油、クロロホルム、フレオン、酢酸エチル、アルコール類、炭化水素、窒素、および二酸化炭素気体を包含する。
【0063】
この微粒子組成物は好ましくは上記の発泡剤を用いて製造するが、幾つかの例では発泡剤の添加は必要なく、薬物および/または賦形剤の水性分散液を直接スプレードライするということが理解できるであろう。係る例においては、医薬製剤は、このような技術における使用にとってそれを特に好適とする、特別な物理化学的性質(例えば、高い結晶性、上昇した融点、界面活性等)を有し得る。
【0064】
一つの態様では、供給原料懸濁液をスプレードライすることによって医薬製剤を製造する。この微粒子製造の第一段階は、典型的には供給原料の調製を含む。燐脂質型微粒子を不溶性活性物質の担体として働かせようとする場合、選択した活性物質を、液体、例えば水の中に導入して、濃縮溶液または懸濁液を生成させる。下記に考察するように多価カチオンをこの活性物質溶液または燐脂質エマルジョンに添加できる。活性物質をこのエマルジョンに直接分散させてもよい。別法として、活性物質を固体微粒子分散の形態で組み込むこともできる。使用する活性物質濃度は、最終粉末において必要とされるこの物質の量および利用するデリバリー器具の性能に依存する。一つの態様では、次いで多価カチオン含有水中油型エマルジョンを別個の容器中で形成させる。使用する油は好ましくは燐脂質で乳化されるフルオロカーボン(例えばジステアロイルホスファチジルコリン、パーフルオロオクチルブロミド、パーフルオロオクチルエタン、パーフルオロデカリン)である。例えば、多価カチオンと燐脂質とを適当な高剪断メカニカルミキサー(例えばUltra-TurraxモデルT-25混合機)を用いて8000rpmで2〜5分間、熱蒸留水(例えば60℃)中でホモジナイズする。典型的には5〜25gのフルオロカーボンを、分散させた界面活性剤溶液に混合しつつ滴下する。得られた多価カチオン含有パーフルオロカーボンの水中エマルジョンを、次に高圧ホモジナイザーを用いて加工し、粒子サイズを縮小する。典型的にはこのエマルジョンを12000〜18000psi、5回の個別的通過により加工し、50〜80℃に保持する。次いでこの活性物質とパーフルオロカーボンエマルジョンをスプレードライ装置に供給する。
【0065】
入口および出口の温度、供給速度、霧化圧力、乾燥用空気の流速、およびノズルの形状等の操作条件は、必要な粒子サイズおよび得られる乾燥粒子の製造収率を得るために調節できる。設定の一例は以下の通りである:空気入口の温度、60℃〜170℃の間;空気出口、40℃〜120℃の間;供給速度、毎分3ml〜約15ml;そして吸引空気流、300L/分、および霧化空気流速、25〜50L/分の間。記載の方法を利用することにより、上記のように、肺へのエアロゾル沈着にとって適切な粒子径を有する空気力学的に軽量の微粒子である、中空および/または多孔性微細構造の形成が可能となる。
【0066】
本発明において有用な微粒子組成物はまた、凍結乾燥によって製造することもできる。凍結乾燥は、凍結させた後に水を組成物から昇華させる、凍結-乾燥工程である。凍結乾燥工程に随伴する特別な利点は、水溶液中で比較的不安定な生物製剤や薬剤を温度を上昇させることなく乾燥し、その後、安定性の問題が殆ど無い乾燥状態で保存できることである。本発明に関して、係る技術は、ペプチド、蛋白質、遺伝子材料ならびにその他の天然および合成高分子を生理活性を損なうことなく微粒子組成物中に配合することに極めて適合している。微細な泡様構造を含有する凍結乾燥ケーキを当分野で既知の技術を用いて微粉化し、所望サイズの粒子を得ることができる。
【0067】
一つの態様では、医薬製剤は、0.5g/cm3未満、より好ましくは0.3g/cm3未満、より好ましくは0.2g/cm3未満、そして時には0.1g/cm3未満の嵩密度を有する中空および/または多孔性の微細構造から成る。極めて低い嵩密度を持つ粒子を提供することにより、単位用量容器中に充填できる最小粉末質量が低下し、これにより担体粒子の必要性が排除される。即ち、本発明に係る比較的低い密度の粉末は、比較的低用量の薬用化合物の再現性ある投与を提供する。さらに、大きな乳糖粒子はそれらのサイズに起因する喉および上気道に悪影響を与えることから、担体粒子の排除は、喉への沈着と「嘔気」作用を恐らくは最小化する。
【0068】
この粉末医薬製剤は、エアロゾル化装置を用いて投与できる。エアロゾル化装置は、ネブライザー、計量式吸入器、液体用量点滴注入装置、または乾燥粉末吸入器であってよい。粉末医薬製剤は、WO99/16420号に記載のネブライザーによって、WO99/16422号に記載の計量式吸入器によって、WO99/16421号に記載の液体用量点滴注入装置によって、そして米国特許出願番号09/888311号(2001年6月22日出願)、WO02/83220号、米国特許第6546929号、および米国特許出願番号第10/616448号(2003年7月8日出願)に記載の乾燥粉末吸入器によってデリバリーでき、これらの特許および特許出願は全て文献としてその全体を本明細書に援用する。
【0069】
一つの態様では、医薬製剤は乾燥粉末の形態であって単位用量貯蔵容器に入っており、この容器をエアロゾル化装置の内部または近傍に挿入して、この医薬製剤の単位用量をエアロゾル化することができる。この態様は、乾燥粉末形態がその単位用量貯蔵容器中に長期間安定に保存できるという点で有用である。加えて、この態様は、エアロゾル化のために冷蔵または外部動力源を要しないという点で好都合である。
【0070】
幾つかの例では、一回の吸入で単位用量、例えば5mgまたはそれ以上の活性物質を肺にデリバリーすることが望ましい。上記の燐脂質中空および/または多孔性乾燥粉末微粒子は、一回の吸入で、5mgまたはそれ以上、しばしば10mg以上、そして時には25mg以上の用量を有利にデリバリーすることができる。これを達成するためには、粉末の嵩密度は好ましくは0.5g/cm3未満、より好ましくは0.2g/cm3未満である。一般に、必要とされる肺用量が5mg以上である場合、5%以上、より好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、そして最も好ましくは40%以上の薬物装填もまた望ましい。
【0071】
これらの単位用量医薬製剤は、エアロゾル化装置に挿入できるカプセルに含まれる。このカプセルは、医薬製剤を内包し且つ使用可能な状態で提供するための適当な形状、サイズ、および材質を持っている。例えば、このカプセルは、医薬製剤と望ましくない反応をしない材料を含む壁を含み得る。加えてこの壁は、カプセルを開いて医薬製剤をエアロゾル化させる材料を含み得る。一つの態様では、この壁は、1またはそれ以上のゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール-複合HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、寒天等を含む。一つの態様では、このカプセルは、例えば米国特許第4247066号(これは文献としてその全体を本明細書に援用する)に記載のような伸縮自在の接合部分を含み得る。カプセルのサイズは医薬製剤の用量を十分に含むように選択できる。このサイズは一般に、約4.91mm〜9.97mmの範囲の外径、約11.10mm〜約26.14mmの範囲の高さ、そして約0.13ml〜約1.37mlの範囲の容量をそれぞれ有する、サイズ5〜サイズ000の範囲である。好適なカプセルは、例えばShionogi Qualicaps Co.(Nara, Japan)およびCapsugel in Greenwood, South Carolinaから商業的に入手できる。充填後、米国特許第4846876号、米国特許第6357490号、およびPCT出願WO00/07572号(2000年2月17日公開)(これらは全て文献としてその全体を本明細書に援用する)に記載のように、カプセルの形状を形作り、粉末をカプセルの中に入れるために上部分を下部分に被せる。
【0072】
本発明に係る医薬製剤100のエアロゾル化において特に有用な乾燥粉末エアロゾル化装置の一例を図7Aに模式的に示す。エアロゾル化装置200は、1またはそれ以上の空気入口215および1またはそれ以上の空気出口220を有する、室210の境界を画定するハウジング205を含む。室210は、エアロゾル化医薬製剤を入れたカプセル225を収容できるようなサイズである。穿刺機構230は、室210の内部で動かせる穿刺部材235を含む。出口220の近傍にまたはこれと隣接して、使用者の口または鼻に受容されるようなサイズおよび形状の末端部分240があり、その結果、使用者は出口220と連絡している末端部分240にある開口部245を介して吸入することができる。
【0073】
乾燥粉末エアロゾル化装置200は、室210を通過する気流を利用してカプセル225内の医薬製剤をエアロゾル化する。例えば、図7Aないし7Eはエアロゾル化装置200の一つの態様の操作を説明するものであり、ここで、入口215を通過する気流を用いて医薬製剤がエアロゾル化され、そしてエアロゾル化されたこの医薬製剤は出口220を通って流動し、その結果、これは末端部分240にある開口部245を通って使用者にデリバリーされ得る。乾燥粉末エアロゾル化装置200の初期状態を図7Aに示す。カプセル225は室210の中にあり、医薬製剤はカプセル225の中に入っている。
【0074】
エアロゾル化装置200を使用するためには、カプセル225の中の医薬製剤を暴露してエアロゾル化できるようにする。図7Aないし7Eの態様では、穿刺機構230に力250を加えることにより、穿刺機構230を室210内に前進させる。例えば、使用者は、図7Bに示すように、穿刺機構230の表面255を押して穿刺機構230をハウジング205内部にスライドさせ、その結果、穿刺部材235が室210内のカプセル225に接触するようにさせることができる。図7Cに示すように、力250を加え続けることにより、穿刺部材235はカプセル225の壁内に前進し、これを貫通する。穿刺部材は、カプセル225の壁を貫通する前進を容易にするため、1またはそれ以上の鋭利な先端252を含む。次いで穿刺機構230は図7Dに示す位置に後退し、カプセル225の壁の開口部260が残ってカプセル225の中にある医薬製剤を暴露させる。
【0075】
次に、図7Eの矢印265に示すように、空気またはその他の気体が入口215を通って流れる。この空気の流れが医薬製剤のエアロゾル化を惹起する。使用者が末端部分240を介して270を吸入する時、エアロゾル化した医薬製剤が使用者の気道にデリバリーされる。一つの態様では、気流265が使用者の吸入270によって惹起される。別の態様では、圧縮空気またはその他の気体を入口215に注入してエアロゾル化する気流265を引き起こす。
【0076】
乾燥粉末エアロゾル化装置200の具体的態様が、米国特許第4069819号および米国特許第4995385号に記載されており、いずれも文献としてその全体を本明細書に援用する。そのような配置では、室210は一般に吸入方向である縦軸を含み、カプセル225は室210内部に縦に挿入可能であり、その結果、カプセルの縦軸は室210の縦軸に平行となる。室210は、カプセルが室210の内部で動くように、医薬製剤の入ったカプセル225を収容できるサイズである。入口215は接線方向のスロットを多数含む。使用者が末端部分から吸入すると、この接線スロットを通って外気が流入する。この気流は室210内部に渦流を作り出す。この渦気流によってカプセル225が隔壁と接触し、次いで医薬製剤がカプセル225から出て渦気流の中で飛沫同伴するように、カプセルが室210内部で動く。この態様は、高用量の医薬製剤を一貫してエアロゾル化する際にとりわけ有効である。一つの態様では、カプセルの縦軸が室の縦軸から80度未満、好ましくは45度未満の角度を維持するように、カプセル225が室210の中で回転する。室210の中のカプセル225のこの動作は、カプセル225の長さより短い室210の幅によって引き起こされる。1つの特別な態様では、室210は縁で終結する先細部分を含む。室210内に空気の渦流がある間、カプセル225の前端は隔壁に接触してその位置にあり、カプセル225の側壁は縁に接触し、この縁に沿ってスライドおよび/または回転する。カプセルのこの動きは、カプセル225の後方にある1またはそれ以上の開口部260を通って大量の医薬製剤を押し出すのに特に有効である。
【0077】
別の態様では、乾燥粉末エアロゾル化装置200を、図7Aないし7Eに示したものとは異なって形作る。例えば、米国特許第3991761号に記載のように、カプセル225が吸入方向と直行するように、室210をカプセル225を受容するようなサイズおよび形状とする。やはり米国特許第3991761号に記載のように、穿刺機構230はカプセル225の両端を穿刺することができる。別の態様では、例えば米国特許第4338931号および米国特許第5619985号に記載のように、空気がカプセル225を通り抜けるように、室がカプセル225を受容する。別の態様では、医薬製剤のエアゾール化を、例えば米国特許第5458135号、米国特許第5785049号、および米国特許第6257233号に記載のように、入口を通り抜ける加圧気体によって、またはPCT公開WO00/72904号および米国特許第4114615号に記載のように推進薬によって達成することができる。上の参考文献は全て文献としてその全体を本明細書に援用する。
【0078】
本明細書に開示した医薬製剤は、例えば計量式吸入器を用いて、エアロゾル化によって患者の鼻または肺の空気の通路に投与できる。このような安定した調製物の利用は、WO99/16422号に開示のように(これは文献としてその全体を本明細書に援用する)、卓越した用量再現性および改善された肺沈着を提供する。MDIは当分野で周知であり、過度の実験なしに本件が主張する分散剤の投与に容易に利用することができる。呼吸作動型MDI、ならびに開発されたまたは開発されるであろうその他の種類の改善を含むMDIもまた、安定化分散剤および本発明に適合し、したがって本発明の範囲内にあると考えられる。しかしながら、好ましい態様では、この安定化分散剤が、局所、経鼻、肺または経口を包含するがこれらに限定されない幾つかの異なる経路により、MDIを用いて投与できるということを強調すべきである。当業者は、このような経路が周知であること、そして本発明に係る安定化分散剤のための用量および投与方法が容易に誘導できるということが理解できるであろう。
【0079】
前記の態様に加えて、本発明に係る安定化分散剤を、それを必要とする患者の肺の気道に投与できるエアロゾル化医薬を提供するために、PCT WO99/16420号(その内容は文献として全体を本明細書に援用する)に開示のようなネブライザーと組み合わせて使用することもできる。ネブライザーは当分野で周知であり、過度の実験をすることなく、本発明が主張する分散剤の投与に容易に利用できる。呼吸作動型ネブライザー、および開発されたまたは開発されるであろうその他の種類の改善を含むネブライザーもまた、安定化分散剤および本発明に適合し、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0080】
DPI、MDIおよびネブライザーに加えて、本発明に係る安定化分散剤を、例えばWO99/16421号(文献としてその全体を本明細書に援用する)に開示のような液体用量点滴注入またはLDI技術と組み合わせて使用できるということも理解できるであろう。液体用量点滴注入は、肺への安定化分散剤の直接投与を含む。この点において、生物活性化合物の直接肺投与は、特に肺の疾病部分の劣悪な血液循環が薬物の静脈内デリバリーの有効性を低下させるような疾病の処置においてとりわけ効果的である。LDIに関して、安定化分散剤は好ましくは部分液体換気法または全液体換気法と組み合わせて使用する。さらに本発明は、生理学的に許容し得る気体(例えば一酸化窒素または酸素)の治療上有益な量を、投与の前、最中、または後に薬用微分散剤へと導入することをも含み得る。
【0081】
本明細書に開示する微粒子組成物は、空隙、細孔、欠損、空洞、間隙、隙間、窓、穿孔もしくは穴を示し、または定義し、または含む、構造マトリックスを含むということが理解できるであろう。この穿孔微細構造の絶対的形状(形態に対比して)は一般に重要でなく、所望の特性を提供する任意の総合的な形状が本発明の範囲内にあると考えられる。したがって、好ましい態様は、ほぼ微小球形の形状を含み得る。しかしながら、崩壊した、変形した、または破断した微粒子もまた適合し得る。
【0082】
本明細書の教示によれば、この微粒子組成物は好ましくは「乾燥」状態で供給する。これは、該微粒子が、この粉末を周囲温度で保存中に化学的および物理的に安定であり続けるようにさせ、且つ容易に分散可能とするような水分を保有するということである。したがって、この微粒子の水分は、典型的には6重量%未満、好ましくは3重量%未満である。幾つかの例では、水分は1重量%しかない。水分は、少なくとも部分的にはその製剤によって規定され、使用する工程条件、例えば入口温度、供給濃度、ポンプ速度、ならびに発泡剤の種類、濃度および後乾燥によって調節される。結合水の低減は、燐脂質型粉末の分散性と流動性に著しい改善をもたらし、粉末化した肺界面活性剤または燐脂質に分散させた活性物質を含む微粒子組成物に極めて効率的なデリバリー可能性をもたらす。この改善された分散性により、単純な受動DPI装置をこれらの粉末を効果的にデリバリーするために使用することが可能となる。
【0083】
この粉末組成物は吸入療法に使用するのが好ましいが、本発明に係る粉末は、経口、筋肉内、静脈内、気管内、腹腔内、皮下、および経皮を包含するがこれらに限定される訳ではない当分野で既知のその他の技術によって、カプセル剤、錠剤、乾燥粉剤、再構成粉剤、または懸濁剤のいずれかとして投与することもできる。
【0084】
したがって、本発明の一つの態様は、微粒子組成物の経口投与を目的とするものである。この態様によれば、本発明に係る組成物をカプセル剤、キャプレット剤、錠剤、トローチ剤等の単位用量形態で提供し、または、後に液体懸濁剤として投与するため適当な媒質中に懸濁する。本発明に係る微細粉末は大きな表面積を持ち、よって即時放出製剤を提供する。
【0085】
別の態様によれば、活性物質含有組成物の放出速度を調節する。好ましい態様によれば、本発明に係る組成物は、マトリックス材料に組み込まれた不溶性活性物質が小サイズ、即ち3ミクロン未満であるが故に、即時放出を提供する。或いは、本発明に係る組成物は、活性物質の所望放出速度を提供するために、マトリックス材料に組み込まれた活性物質と組み込まれていない活性物質の非均質混合物として提供され得る。この態様によれば、本発明に係るエマルジョン系製造工程を用いて製剤化された活性物質は、肺または経口経路のいずれかで投与した場合、速放出適用に役立つ。速放出は、(a) 低密度多孔性粉末の表面積が大きい;(b) 組み込まれた薬物結晶が小サイズである;及び(c) 粒子表面の燐脂質について長距離秩序が欠如していることに起因する該粒子の低い表面エネルギー、によって促進する。
【0086】
燐脂質分子の表面充填の性質は、スプレードライ供給原料中におけるそれらの充填の性質および乾燥状態、ならびに利用するその他の製剤成分の影響を受ける。小さな単層小胞(SUV)または多層小胞(MLV)内で可溶化された活性物質のスプレードライの場合、活性物質は、まずまずの長さスケールにわたって高度の長距離秩序を持つ多数の二分子層の中に内包されたままである。この場合、スプレードライされた製剤は徐放特性を示す。
【0087】
対照的に、エマルジョン小滴を含み本明細書の教示に従って活性物質を分散または溶解させている供給原料のスプレードライは、より低い長距離規則度を持つ燐脂質マトリックスをもたらし、それにより速放出を促進する。特定の理論に拘束されるわけではないが、これは、部分的には、活性物質が形式的に燐脂質中に内包されないという事実、及び燐脂質が(リポソームの場合のような二分子層ではなく)単分子層としてエマルジョン小滴表面に最初に存在するという事実に起因すると考えられる。スプレードライDSPC粒子では20mN/mという低値が観察された(逆ガスクロマトグラフィーで測定)本発明に係るエマルジョン系製造工程で製造されたスプレードライ粒子で観察される高度の無秩序性は、極めて低い表面エネルギーに反映されている。スプレードライ燐脂質粒子で実施した小角X線散乱(SAXS)試験は、この脂質について、散乱ピークが不鮮明な高度の無秩序性と、幾つかの例では数個の最近隣接基を越えて伸長するに過ぎない長さスケールをも示した。
【0088】
ゲルから液晶への相転移温度が高いことが、それだけで徐放達成に充分でないことに留意すべきである。二分子層構造にとって充分な長さスケールを持つこともまた重要である。速放出を促進するためには、高い多孔性(大きな表面積)を持つエマルジョン系、および薬物と燐脂質間に相互作用がないことが好ましい。この医薬製剤の生成工程は、二分子層構造を破壊するその他の製剤成分(例えば、Pluronic F-68のような小ポリマー;炭水化物、塩類、ヒドロトロープ剤)の添加も企図できることを含む。
【0089】
徐放を達成するために、二分子層形態の燐脂質を組み込むことが、特に活性物質をその中に内包される場合には好ましい。この場合、燐脂質のTmを上げることにより、二価対イオンまたはコレステロールの取り込みにより利益が提供される。同様に、イオン対の形成(負に荷電した活性物質 + ステアリルアミン、正に荷電した活性物質 + ホスファチジルグリセロール)による燐脂質と薬用物質間の相互作用の増大は、溶解速度を低下させる傾向がある。活性物質が両親媒性である場合、界面活性物質/界面活性物質の相互作用もまた、能動的溶解を減速するかも知れない。
【0090】
長鎖飽和ホスファチジルコリン類に対する二価対イオン(例えばカルシウムまたはマグネシウムイオン)の添加は、両性イオン頭部基の負に荷電した燐酸部分と正に荷電した金属イオンの間の相互作用をもたらす。これは、水和の水の置換と、詰め込まれた燐脂質の脂質頭部基とアシル鎖の縮合をもたらす。さらに、これは燐脂質のTmの上昇をもたらす。頭部基の水和の低下は、水接触時のスプレードライ燐脂質粒子の拡散性質に甚大な影響を及ぼし得る。完全に水和したホスファチジルコリン分子は、水相を介した分子拡散により、分散した結晶に極めてゆっくりと拡散する。燐脂質の水溶性は非常に低いため(DPPCで約10-10mol/L)、この工程は極めてゆっくりである。この現象を克服しようとした先行技術の試みは、結晶を燐脂質の存在下にホモジナイズすることを含む。この場合、ホモジナイズされた結晶の高度の剪断および曲率半径が、結晶上での燐脂質の被覆を促進する。対照的に、本発明に係る「乾燥」燐脂質粉末は水相と接触した時に速やかに拡散でき、それにより、高エネルギーを適用する必要なく、拡散した結晶を被覆できる。例えば、空気/水界面におけるスプレードライDSPC/Ca混合物の表面張力は、測定実施と同じくらい迅速に平衡値(約20mN/m)まで低下する。対照的に、DSPCのリポソームは何時間もの間、表面張力を殆ど低下させず(約50mN/m)、しかもこの低下は燐脂質中の遊離脂肪酸等の加水分解生成物の存在によるようである。単尾脂肪酸は、疎水性の親化合物よりもずっと迅速に空気/水界面に拡散できる。よって、ホスファチジルコリンへのカルシウムイオンの添加は、より迅速な、且つ適用エネルギーのより低い、結晶性薬物の内包を促進できる。
【0091】
別の態様では、医薬製剤は、ナノ結晶を水中パーフルオロカーボン型エマルジョンと共に同時スプレードライすることにより達成した低密度微粒子を含む。
【0092】
前記の説明は以下の実施例を参照することで、より完全に理解できる。しかしながらこのような実施例は、本発明を実施する好ましい方法の典型に過ぎず、本発明の範囲を限定するものと読み取るべきではない。
【実施例】
【0093】
実施例I
スプレードライアンフォテリシンB粒子の製造
アンフォテリシン粒子を二段階工程で製造した。第一段階では、アンフォテリシンB (Alpharma, Copenhagen, Denmark)10.52g、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)(Genzyme, Cambridge, MA)10.12g、および塩化カルシウム(JT Baker, Phillipsburg, NJ)0.84gをUltra-Turrax混合機(モデルT-25)を使用し10000rpmで2〜5分間、熱脱イオン水(T=70℃)1045gに分散させた。DSPCとアンフォテリシンBが視覚的に消失したように見えるまで混合を続けた。
【0094】
次いでパーフルオロオクチルエタン(PFOE)381gを、混合しながら約50〜60ml/分の速度でゆっくりと加えた。添加完了後、このエマルジョン/薬物分散液をさらに5分間以上12000rpmで混合した。次いでこの粗エマルジョンを12000〜18000psiで3回、続いて20000〜23000psiで2回、高圧ホモジナイザー(Avestin, Ottawa, Canada)に通した。
【0095】
得られた微細エマルジョンを第二段階、即ちNiro Mobile Minorによるスプレードライのための供給原料として利用した。以下のスプレー条件を使用した:全体流速 = 70SCFM、入口温度 = 110℃、出口温度 = 57℃、供給ポンプ = 38mL/分、アトマイザー圧力 = 105psig、アトマイザー流速 = 12SCFM。
【0096】
自由流動する淡黄色粉末をサイクロン分離器を用いて捕集した。アンフォテリシンB製剤の捕集効率は60%であった。このアンフォテリシンB粒子の幾何学的直径をレーザー回折(Sympatech Helos H1006, Clausthal-Zellerfeld, Germany)により確認したところ、体積加重平均直径(VMD)2.44μmが判明した。走査電子顕微鏡(SEM)分析は、この粉末が、著しい表面荒さを持つ小さな多孔性粒子であることを示した。各々の捕集機について得られた5つのSEM視野に、組み込まれていないAmB結晶の証拠は無かった。乾燥粒子の示差走査熱量測定分析は、この粉末中のアンフォテリシンBのtmが78℃であることを示し、これは整然としたスプレードライ物質における観察と同様である。
【0097】
実施例II
スプレードライ アンフォテリシンB粒子のエアロゾル成績
実施例Iで製造した乾燥アンフォテリシンB粒子を#2 HPMCカプセル(Shionogi, Japan)に手で充填し、15%〜20%RHで一夜平衡化させた。およそ10mgの充填質量を使用したが、これは#2カプセルの充填容量のほぼ1/2であった。
【0098】
空気力学的粒子径分布をAndersenカスケードインパクタ(ACI)で重量測定により測定した。粒子径分布はTurbospin DPI装置を使用し、28.3L/分(即ち快適な吸入努力)および56.6L/分(即ち激しい吸入努力)の流速で測定した。合計体積2リットルをこの装置から吸入した。高い方の流速では、校正した流速28.3L/分で2つのACIを並行して使用し、この装置を通過した合計流量は56.6L/分であった。いずれの場合も、設定は、ACIインパクタープレートが校正された条件を示している。2.6μm未満のMMADおよび72%以上のFPF<3.3μmにより証明されるように、優れたエアロゾル特性が観察された。成績に及ぼす流速の効果もまた、Turbospin(登録商標)(PH&T, Italy)DPI装置を56.6L/分(並行して使用した2つのACIへの流入)で稼働させて評価した。高い方の流速において、沈着プロファイルに有意差は観察されず、これは、流速依存性が極めて低い作動性であることを証明している。この上記実施例は、本発明に係る粉末のエアロゾル成績が流速に依存せず、これが、より再現性ある患者への投薬につながることを証明している。
【0099】
実施例III
スプレードライ アンフォテリシンB粒子のエアロゾル成績に及ぼす安定性保持効果
実施例Iで製造した乾燥アンフォテリシンB粒子を#2 HPMCカプセル(Shionogi, Japan)に手で充填し、15%〜20%RHで一夜平衡化させた。およそ10mgの充填質量を使用したが、これは#2カプセルの充填容量のほぼ1/2であった。充填したカプセルを個別に索引を付したガラスバイアルに入れ、これをラミネートホイルでシールしたパウチに包装し、その後25℃/60%RHまたは40℃/75%RHで保存した。
【0100】
放出用量(ED)の測定は、米国特許第4069819号および米国特許第4995385号に記載のTurbospin(登録商標)(PH&T, Italy)DPI装置を最適サンプリング流速60L/分で操作し総容量2リットルで実施した。各々の保存変数について合計10の測定値を決定した。
【0101】
空気力学的粒子径の分布をAndersenカスケードインパクタ(ACI)で重量測定により測定した。粒子径分布はTurbospin(登録商標) DPI装置を使用し、流速28.3L/分で、合計容量2リットルで測定した。
【0102】
平均ED 93%±5.3%、MMAD = 2.6μmおよびFPF<3.3μm =72%(図3および4)によって立証されるように、優れたエアロゾル特性が観察された。上昇させた温度および湿度で保存した後のエアロゾル成績(ED、MMADまたはFPF)に有意な変化は観察されず、これは優れた安定性を証明するものである。現行仕様書のED成績は、デリバリーされた用量の90%より高い用量がラベルクレイムの±25%以内にあり、10%未満が用量±35%であると規定している。FDA[10]が公開した最近の指針の草案では、例えばデリバリーされた用量の90%より高い用量がラベルクレイムの±20%以内にあり、±25%から外れるものはない、というように、範囲をより厳格にすることを提唱している。統計学的に述べると、提唱されたFDA仕様を満たすには6%のRSDが必要となる。
【0103】
前記実施例の結果は、現行の指針内にあるだけでなく提唱された指針の限界内にあり、該製剤により供与される優れた分散性、エアロゾル特性および安定性の強力な証拠でもある。
【0104】
実施例IV
種々のホスファチジルコリン類を含むスプレードライ アンフォテリシンB粒子
実施例Iに記載の二段階工程に従い、界面活性剤として種々のホスファチジルコリン(PC)を使用して、約50%のアンフォテリシンBを含むスプレードライ粒子を製造した。製剤はDPPC(Genzyme, Cambridge, MA)、DSPC(Genzyme, Cambridge, MA)およびSPC-3(Lipoid KG, Ludwigshafen, Germany)を用いて製造した。供給溶液は、そこに記載のものと同一の設備および工程条件を用いて製造した。この50%アンフォテリシンB製剤は以下の通りである:
アンフォテリシンB 0.733g
PC 0.714g
CaCl2 60mg
PFOB 32g
DI水 75g
【0105】
得られた多微粒子エマルジョンを第二工程、即ちB-191 Mini Spray-Drier(Buchi, Flawil, Switzerland)によるスプレードライ用の供給原料として利用した。以下のスプレー条件を使用した:吸引=100%、入口温度=85℃、出口温度=60℃、供給ポンプ=1.9mL/分、アトマイザー圧力=60〜65psig、アトマイザー流速=30〜35cm。吸引流(69〜75%)は、排気バッグ圧=30〜31mbarを維持するように調節した。自由流動する黄色粉末を、標準サイクロン分離器を用いて捕集した。アンフォテリシンB粒子の幾何学的直径をレーザー回折(Sympatech Helos H1006, Clausthal-Zellerfeld, Germany )によって確認したところ、体積加重平均直径(VMD)は類似し、2.65μm〜2.75μmの範囲であることが判明した。走査電子顕微鏡(SEM)分析は、この粉末が著しい表面荒さを持つ小さな多孔性粒子であることを示した。
【0106】
空気力学的粒子径分布をAndersenカスケードインパクタ(ACI)で重量測定により測定した。粒子径分布はTurbospin DPI装置を使用し、56.6L/分(即ち激しい吸入努力)の流速で測定した。合計体積2リットルをこの装置から吸入した。2つのACIを、校正した流速28.3L/分で並行して使用し、この装置を通過した合計流量は56.6L/分であった。同様のエアロゾル特性が3種類のホスファチジルコリンを用いて製造したアンフォテリシンBにおいて観察でき、MMADが2.5μm未満、そしてFPF<3.3μmが72%以上であった。この上記実施例は、使用するホスファチジルコリンの種類に依存しない、アンフォテリシンB粉末を生成する製剤技術の柔軟性を説明している。
【0107】
実施例V
70%アンフォテリシンBスプレードライ粒子の製造
実施例Iに記載の二段階工程に従い、アンフォテリシン粒子を製造した。供給溶液は、そこに記載のものと同一の設備および工程条件を用いて製造した。この70%アンフォテリシンB製剤は以下の通りである:
アンフォテリシンB 0.70g
DSPC 0.265g
CaCl2 24mg
PFOB 12g
DI水 35g
【0108】
得られた多微粒子エマルジョンを第二工程、即ちB-191 Mini Spray-Drier(Buchi, Flawil, Switzerland)によるスプレードライ用の供給原料として利用した。以下のスプレー条件を使用した:吸引=100%、入口温度=85℃、出口温度=60℃、供給ポンプ=1.9mL/分、アトマイザー圧力=60〜65psig、アトマイザー流速=30〜35cm。吸引流(69-75%)は、排気バッグ圧=30〜31mbarを維持するように調節した。自由流動する黄色粉末を、標準サイクロン分離器を用いて捕集した。アンフォテリシンB粒子の幾何学的直径をレーザー回折(Sympatech Helos H1006, Clausthal-Zellerfeld, Germany)によって確認したところ、体積加重平均直径(VMD)が2.96μmであることが判明した。走査電子顕微鏡(SEM)分析は、この粉末が著しい表面粗さを持つ小さな多孔性粒子であることを示した。この上記実施例は、本明細書に記載する多微粒子アプローチを使用して高いアンフォテリシンB含有量を導く、本発明に係る粉末工業技術の柔軟性を説明している。
【0109】
実施例VI
種々のDPI装置におけるスプレードライアンフォテリシンB粒子のエアロゾル成績
実施例Vで製造した乾燥アンフォテリシンB粒子を#2 HPMC(Shionogi, Japan)または#3(Capsugel, Greenwood, SC)カプセルに手で充填し、15%〜20%RHで一夜平衡化させた。およそ10mgの充填質量を使用したが、これは#2カプセルの充填容量のほぼ1/2、または#3カプセルの5/8であった。エアロゾル特性を、Turbospin(登録商標)(PH&T, Italy)、Eclipse(登録商標)(Aventis, UK)およびCyclohaler(登録商標)(Novartis, Switzerland)DPI装置を用いて調べた。Cyclohalerでは#3カプセルを、一方TurbospinとCyclohalerではサイズ#2カプセルを使用した。
【0110】
空気力学的粒子径分布をAndersenカスケードインパクタ(ACI)で重量測定により測定した。粒子径分布は、TurbospinとEclipse DPI装置については激しい吸入努力を表す流速56.6L/分で、そしてCyclohalerについては快適な吸入努力の流速で測定した。合計体積2リットルをこの装置から吸入した。校正した流速28.3L/分で、そしてこの装置を通過した合計流量56.6L/分で、2つのACIを並行して使用した。2.5μm未満のMMADおよび71%以上のFPF<3.3μmにより証明されるように、全ての装置において類似のエアロゾル特性が観察された。この上記実施例は、本発明に係る粉末のエアロゾル成績が、中等度および低い抵抗性を有する装置の設計に依存しないということ、そして、カプセルサイズが、被験アンフォテリシンB粉末の分散性に対して重要な意味を持つということを示している。
【0111】
実施例VII
吸入された分子Bの製剤化
0.14mg/ml(20℃)の水溶解度を有する不特定分子Bをエアロゾル化可能製剤に製剤化した。ホモジナイズした結晶は平均直径1.5ミクロン(レーザー回折)であり、オストワルト成長の特性時間は約3時間であると推定された。
【0112】
Ultra Turrax混合機で分散させながら、2:1モル比のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC):塩化カルシウムを熱DI水(>70℃)に加え、必要ならば発泡剤パーフルオロオクチルブロミド(PFOB)を加えることにより、まずパーフルオロカーボンエマルジョンを製造した。次にこのエマルジョンをEmulsiFlex-C5ホモジナイザーを用いて高圧でホモジナイズした。この材料は12〜16Kpsiで2回ホモジナイザーを通過させた。次いでエマルジョンを氷水浴で約5℃に冷却した。次に、入手したままの分子Bをエマルジョンに加えた。この懸濁液を氷水浴中の攪拌プレート上でおよそ3分間激しく攪拌し、その後EmulsiFlex-C5ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。材料は、循環氷水浴で覆ったホモジナイザーを3回通過させたが、14〜18Kpsiで1回、そして18〜22Kpsiで2回通過させた。この懸濁液をスプレードライの前および最中に氷水浴中で絶えず攪拌した。
【0113】
懸濁液製剤のスプレードライの間に、加工条件(温度、圧力、固体含有量、および発泡剤濃度)を変えて、生成する初期粒子のサイズを調節した。
【0114】
保存時間および温度の変化に対するスプレードライ供給原料(エマルジョン + 微結晶)の安定性を評価する実験を行った。スプレードライした微結晶のメジアン粒子径をレーザー回折(Sympatec)によって(表1)、そして空気力学的サイズをAndersenカスケードインパクションによって(表2)、そして薬物含有量および純度を測定することにより、安定性を評価した。供給原料を周囲条件で72時間保存した後の物理的または化学的安定性に相違は認められなかった。特徴的な成長時間はおよそ3時間であると推定された。よって、この供給原料の長期間安定性は、これらの複雑系におけるオストワルト成長工程の予測に関しては意外なものである。
【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
重量測定により定量しても薬物特異的方法によって定量しても、空気力学的粒子径分布が同等であることに留意するのは価値あることである。これは、(レーザー回折、Malvernにより得られる)平均サイズ約1.5μm結晶が、空気力学的粒子径の分布全体に均一に行き渡っていることを示している。
【0118】
スプレードライ粉末の物理的安定性もまた評価した。25℃/60%RHまたは40℃/75%RHで3ヶ月間保存した後に、放出用量(60L/分での受動Turbospin吸入器から)、MMADまたはFPDに有意差は認められなかった。
【0119】
【表4】

【0120】
また、同じ保存条件下で化学的安定性の喪失は認められなかった(表4)。これは、凍結乾燥粉末または薬物がアモルファス状態で存在するスプレードライ粉末とは対照的である。これらの粉末では、保存中に活性物質の著しい加水分解が認められる。薬物を結晶状態に維持することにより、この化学的安定性の問題が克服できる。
【0121】
【表5】

【0122】
実施例VIII
吸入された分子Cの製剤化
不特定分子Cは、Tg<20℃および水溶解度C=0.6mg/ml(25℃)という特性を持つ。分子Cのスプレードライ脂質製剤を、分子Bについて上に記載したエマルジョン系製造法によって製造した。Monohalerから流速90L/分でデリバリーされたこのスプレードライ粉末の空気力学的粒子径分布を、多段階液体インピンジャーで評価した。9〜28mgの範囲のカプセル充填質量を評価した。カプセル充填質量には殆ど相違が認められず、このことは、一回の吸入でFPD5.0μm>10mgが達成できていることを示している。
【0123】
【表6】

【0124】
表6に示すように、40℃/75%RHで2週間保存した後にエアロゾル成績の喪失は認められなかった。
【0125】
【表7】

【0126】
実施例IX
吸入された分子Dの製剤化
不特定分子Dの物理的特性は、Tg 約10℃、C=0.53mg/ml(25℃)である。分子Bについて上に記載したものと同じ方法により、分子Dの製剤を製造した。この製剤は、分子D 61%、DSPC 36%、および塩化カルシウム3%を含んでいた。薬物のエアロゾル成績と化学的安定性は下に詳説する。流速60L/分のTurbospin装置からデリバリーした後にAndersenカスケードインパクションによってエアロゾル成績を測定した。薬物の純度とエアロゾル成績は、周囲条件で4週間保存した後も維持された。
【0127】
【表8】

【0128】
実施例X
分子Eの製剤化
Monohaler装置から流速90L/分でデリバリーした不溶性不特定分子Eのエアロゾル成績を下に示す。許容できるエアロゾル成績および物理的安定性が、加速保存下で2週間にわたり認められる。加工中または保存中に化学的純度の変化は認められなかった。
【0129】
【表9】

【0130】
本発明を、幾つかの好ましい態様に関してかなり詳細に説明してきたが、その他の態様もまた可能であり、記載した態様の改変、入れ替えおよび同等物は、本明細書を読み図面を検討するならば当業者には明らかとなろう。例えば、エアロゾル化装置中の要素の相対位置は変えることができ、可撓性部品は、この可撓性部品の作用を模倣するためにちょうつがいを付けまたはその他の方法で可動性とした、より剛性の部品に交換できる。加えて、通路は必ずしも図面に示すような実質上直線である必要はなく、例えば湾曲または折れ曲がっていてもよい。さらに、本明細書に記載の態様の種々の特徴を様々に組み合わせ、本発明のさらなる態様を提供することもできる。また、或る種の用語は説明を明瞭にする目的で使用したものであり、本発明を限定するためのものではない。故に、付記した請求項はいずれも本明細書に内包した好ましい態様の説明に限定されるべきではなく、このような改変、入れ替え、および同等物を全て本発明の真の精神および範囲内に包含すべきである。
【0131】
本発明のこれらの特徴、態様、および利点は、本発明の例示的特徴を説明している以下の説明、付記した請求項、および添付図面を考慮する時、より良好に理解できる。しかしながら各々の特長は、本発明において一般的に利用できるものであり、特定の図面の状況においてのみ利用できるものではなく、且つ、本発明はこれらの特徴の任意の組み合わせを包含するものであるということを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、粒子径および活性物質の水溶解度の関数として、オストワルト成長の特性時間をプロットしたものを表す。
【図2】図2は、Andersonカスケード・インパクタ(ACI)におけるアンフォテリシンB粉末の沈降の流速依存性をプロットしたものを表す。
【図3】図3は、60L/分でTurbospin DPI装置を使用して、アンフォテリシンB粉末の放出用量効率の安定性をプロットしたものを表す。
【図4】図4は、28.3L/分でTurbospin DPI装置を使用して、アンフォテリシンB粉末のエアロゾル成績の安定性をプロットしたものを表す。
【図5】図5は、種々のホスファチジルコリンを含むアンフォテリシンB粉末のエアロゾル成績をプロットしたものを表す。
【図6】図6は、種々の受動DPI装置を56.6L/分で使用して、70%アンフォテリシンB粉末のエアロゾル成績をプロットしたものを表す。
【図7】図7Aないし7Eは、本発明に係る医薬製剤のエアロゾル化に利用できる、乾燥粉末吸入器の操作を示す、模式的側面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺投与用医薬製剤であって、脂質マトリックス中に、1.0mg/ml未満の水溶解度を有する活性物質粒子を含む微粒子を含み;
ここで、当該医薬製剤中の活性物質粒子の少なくとも90%は、3μm未満の幾何学的直径を有し、且つ当該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する、前記医薬製剤。
【請求項2】
前記微粒子が10μm未満の質量平均直径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記微粒子が5μm未満の質量平均直径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記活性物質粒子の少なくとも95%が3μm未満の幾何学的直径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記活性物質粒子の少なくとも50%が、0.5μm〜3μmの間の幾何学的直径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記活性物質粒子の少なくとも50%が、1μm〜3μmの間の幾何学的直径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記脂質マトリックスが1以上の燐脂質を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記脂質マトリックスが1以上のジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジホスファチジルグリセロール、短鎖ホスファチジルコリン類、長鎖飽和ホスファチジルエタノールアミン類、長鎖飽和ホスファチジルセリン類、長鎖飽和ホスファチジルグリセロール類、および長鎖飽和ホスファチジルイノシトール類を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記微粒子が中空である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記微粒子が多孔性である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記微粒子が中空且つ多孔性である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記医薬製剤が0.5g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記医薬製剤が0.3g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記医薬製剤が0.2g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記微粒子が、乾燥粉末吸入器中でエアロゾル化のための乾燥粉末形態である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記微粒子が、計量式吸入器中でエアロゾル化のための推進剤中に懸濁されている、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記微粒子が、ネブライザー中でエアロゾル化のための液体中に懸濁されている、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記活性物質粒子が結晶性である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記微粒子が多価カチオンをさらに含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記活性物質が0.1mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記微粒子がスプレードライにより形成される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項22】
前記不溶性活性物質が抗真菌剤を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項23】
肺投与のための医薬製剤の製造方法であって、当該方法が活性物質粒子と疎水性材料を液体供給原料中に懸濁すること、ここで、当該活性物質粒子の少なくとも90%が3μm未満の幾何学的直径を有する;及び、
当該供給原料懸濁液をスプレードライして、活性物質粒子を該疎水性材料中に少なくとも部分的に含む微粒子を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記供給原料が水を含み、且つ前記活性物質が1.0mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記微粒子を捕集することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記捕集した微粒子が20μm未満の質量平均直径を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記捕集した微粒子が10μm未満の質量平均直径を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記活性物質粒子の95%が3μm未満の幾何学的直径を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記疎水性材料が脂質を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記疎水性材料が燐脂質を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記疎水性材料が疎水性アミノ酸を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記供給原料に乳化剤を添加することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記乳化剤がジステアロイルホスファチジルコリンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記供給原料に発泡剤を添加することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記供給原料に多価カチオンを添加することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記供給原料が0.5g/cm3未満の嵩密度を有する微粒子を生成する方法でスプレードライされる、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
請求項23に記載の方法により製造された医薬製剤。
【請求項38】
肺投与のための医薬製剤であって、
脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を含む微粒子
を含み;
ここで、当該医薬製剤中のアンフォテリシンB粒子の少なくとも90%は、3μm未満の幾何学的直径を有し、且つ当該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する、前記医薬製剤。
【請求項39】
前記微粒子が10μm未満の質量平均直径を有する、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記微粒子が5μm未満の質量平均直径を有する、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項41】
前記微粒子の少なくとも幾らかが、脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を多数含む、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記アンフォテリシンB粒子が結晶性である、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記脂質マトリックスが1以上の燐脂質を含む、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項44】
前記脂質マトリックスが1以上のジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジホスファチジルグリセロール、短鎖ホスファチジルコリン類、長鎖飽和ホスファチジルエタノールアミン類、長鎖飽和ホスファチジルセリン類、長鎖飽和ホスファチジルグリセロール類、および長鎖飽和ホスファチジルイノシトール類を含む、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項45】
前記微粒子が中空および/または多孔性である、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項46】
前記微粒子が0.5g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項47】
前記微粒子が0.3g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記微粒子が0.2g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記微粒子が、乾燥粉末吸入器中でエアロゾル化のための乾燥粉末形態である、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項50】
前記微粒子が、計量式吸入器中でエアロゾル化のための駆出剤中に懸濁されている、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記微粒子が、ネブライザー中でエアロゾル化のための液体中に懸濁されている、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項52】
前記微粒子が多価カチオンをさらに含む、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項53】
前記微粒子がスプレードライにより形成される、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項54】
肺投与のための医薬製剤であって、
脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を含む微粒子
を含み;
ここで、当該微粒子は中空および/または多孔性であり、且つ当該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する、前記医薬製剤。
【請求項55】
前記微粒子が10μm未満の質量平均直径を有する、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項56】
前記微粒子が5μm未満の質量平均直径を有する、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項57】
前記該微粒子の少なくとも幾らかが、脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を多数含む、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項58】
前記アンフォテリシンB粒子が結晶性である、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項59】
前記脂質マトリックスが1以上の燐脂質を含む、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項60】
前記脂質マトリックスが1以上のジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジホスファチジルグリセロール、短鎖ホスファチジルコリン類、長鎖飽和ホスファチジルエタノールアミン類、長鎖飽和ホスファチジルセリン類、長鎖飽和ホスファチジルグリセロール類、および長鎖飽和ホスファチジルイノシトール類を含む、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項61】
前記微粒子が0.5g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項62】
前記微粒子が0.3g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項63】
前記微粒子が0.2g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項64】
前記微粒子が、乾燥粉末吸入器中でエアロゾル化のための乾燥粉末形態である、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項65】
前記微粒子が、計量式吸入器中でエアロゾル化のための推進剤中に懸濁されている、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項66】
前記微粒子が、ネブライザー中でエアロゾル化のための液体中に懸濁されている、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項67】
前記微粒子が多価カチオンをさらに含む、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項68】
前記微粒子がスプレードライにより形成される、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項69】
肺投与のための医薬製剤であって、
脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を含む微粒子
を含み;
ここで、当該微粒子は0.5g/cm3未満の嵩密度を有し、且つ当該微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する、前記医薬製剤。
【請求項70】
前記微粒子が10μm未満の質量平均直径を有する、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項71】
前記微粒子が5μm未満の質量平均直径を有する、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項72】
前記微粒子の少なくとも幾らかが、脂質マトリックス中にアンフォテリシンB粒子を多数含む、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項73】
前記アンフォテリシンB粒子が結晶性である、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項74】
前記脂質マトリックスが1以上の燐脂質を含む、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項75】
前記脂質マトリックスが1以上のジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジホスファチジルグリセロール、短鎖ホスファチジルコリン類、長鎖飽和ホスファチジルエタノールアミン類、長鎖飽和ホスファチジルセリン類、長鎖飽和ホスファチジルグリセロール類、および長鎖飽和ホスファチジルイノシトール類を含む、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項76】
前記微粒子が中空および/または多孔性である、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項77】
前記微粒子が0.3g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項78】
前記微粒子が0.2g/cm3未満の嵩密度を有する、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項79】
前記微粒子が、乾燥粉末吸入器中でエアロゾル化のための乾燥粉末形態である、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項80】
前記微粒子が、計量式吸入器中でエアロゾル化のための推進剤中に懸濁されている、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項81】
前記微粒子が、ネブライザー中でエアロゾル化のための液体中に懸濁されている、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項82】
前記微粒子が多価カチオンをさらに含む、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項83】
前記微粒子がスプレードライにより形成される、請求項69に記載の医薬製剤。
【請求項84】
肺投与のための医薬製剤の製造法であって、当該方法がアンフォテリシンB粒子と疎水性材料を液体供給原料中に懸濁すること、ここで、当該活性物質粒子の少なくとも90%は3μm未満の幾何学的直径を有する;及び、
当該供給原料懸濁液をスプレードライして、アンフォテリシンB粒子を該疎水性材料中に少なくとも部分的に含む微粒子を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項85】
前記微粒子を捕集することをさらに含む、ここで、当該捕集された微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記微粒子を捕集することをさらに含む、ここで、当該捕集された微粒子は10μm未満の質量平均直径を有する、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記疎水性材料が脂質を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記疎水性材料が燐脂質を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記疎水性材料が疎水性アミノ酸を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項90】
前記供給原料に乳化剤を添加することをさらに含む、請求項84に記載の方法。
【請求項91】
前記供給原料に発泡剤を添加することをさらに含む、請求項84に記載の方法。
【請求項92】
前記供給原料に多価カチオンを添加することをさらに含む、請求項84に記載の方法。
【請求項93】
前記供給原料が0.5g/cm3未満の嵩密度を有する微粒子を生成する方法でスプレードライされる、請求項84に記載の方法。
【請求項94】
請求項84に記載の方法により製造された医薬製剤。
【請求項95】
肺投与のための医薬製剤の製造法であって、当該方法がアンフォテリシンB粒子を液体供給原料に懸濁すること、ここで当該液体供給原料は、脂質および発泡剤がそこに溶解または懸濁されている;及び、
当該供給原料懸濁液をスプレードライして、アンフォテリシンBおよび脂質を含む中空および/または多孔性微粒子を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項96】
前記微粒子を捕集することをさらに含む、ここで、当該捕集された微粒子は20μm未満の質量平均直径を有する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記微粒子を捕集することをさらに含む、ここで、当該捕集された微粒子は10μm未満の質量平均直径を有する、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記脂質が燐脂質を含む、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
前記供給原料に乳化剤を添加することをさらに含む、請求項95に記載の方法。
【請求項100】
前記供給原料に多価カチオンを添加することをさらに含む、請求項95に記載の方法。
【請求項101】
前記供給原料が0.5g/cm3未満の嵩密度を有する微粒子を生成する方法でスプレードライされる、請求項95に記載の方法。
【請求項102】
請求項95に記載の方法により製造された医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−513236(P2006−513236A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564917(P2004−564917)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/041703
【国際公開番号】WO2004/060351
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(597148884)ネクター セラピューティクス (30)
【Fターム(参考)】