説明

不溶性生物活性物質の経口投与用無水組成物

本発明は、油性溶媒の内相及び無水の水溶性溶媒の外相からなるエマルジョンタイプ組成物中に非結晶性又は低結晶性の形で溶解又は分散した水に低溶解性の薬物の組成物を提供し、そして1)乳化安定剤は組成物の小部分であり、そして2)生理的液により希釈された場合に1ミクロン未満の平均液滴サイズのエマルジョンが得られ、そして3)体液中の生物学的活性物質の分散を促進し、そして特に生物学的利用率を向上させ或いは臨床成績を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側が油性溶媒で外側が無水の水溶性溶媒であるエマルジョンタイプの組成物の中に、非結晶性又は低結晶性の形態で溶解しているか又は分散している水溶性の低い薬物の組成物であって、1)乳化安定剤はこの組成物の小部分(low fraction)であり、2)生理的液体による希釈により1ミクロン未満の平均液滴サイズのエマルジョンが得られ、3)生物学的に活性な物質の体液中における分散が促進され、特に生物学的利用率を高めるか又は臨床成績を改善する、組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物が吸収されるためには、水性であるために本来的に不溶性生物活性分子には好ましくない媒体である胃腸の液に可溶化される必要があるので、親油性、両親媒性又は水に難溶な薬物の経口投与用の処方は困難であることが証明されている。
【0003】
経口薬物の送達媒体は、期待する吸収及び生物活性を可能にするような生物的に利用可能な製剤中に充分な薬物濃度を維持しなければならない。また、該薬物送達媒体は溶解した状態で薬物を保持し、薬物の安定性及び剤形(dosage form)を長期の保存期間中維持し、一方生理的に有害な溶媒又は賦形剤の使用を避けなければならない。
【0004】
胃腸液から血液循環中に薬物の移動を可能にする溶解状態は、単一の薬物分子が個別に液体溶媒中に存在する状態である。
【0005】
薬物分子同士の吸引力を解消し、そして胃腸の吸収粘膜において溶解した又は可溶化された状態に疎水性薬物を維持するための一つの方法は、ミセル、自己乳化性ミクロエマルジョン及び関連するコロイド系のような高い含量の界面活性剤を含む送達システムである。
【0006】
ミセルは、両親媒性化合物又は界面活性剤により形成されるコロイドの大きさを有する凝集体である。水溶液において、ミセルは疎水性治療薬をミセルの炭化水素核に取り込むことができる。ミセル製剤の収載能力はミセル界面活性剤への治療用物質の溶解度により制限され、本質的に投与製剤は高い比率の界面活性剤を有する。
【0007】
その他の従来の方法は、トリグリセリドを基にした溶媒のような油性媒体に疎水性薬物を溶解することである。この親油性薬物を油相中に溶解する油性溶液は、さらに二つの方法で処理することができる。一つの方法は、界面活性剤の助けを借りて水性培地中に乳化して水中油型エマルジョンを生成することであるが、これは本来的に不安定な剤形である。そして、第2の方法は、大量の界面活性剤を加えて熱力学的に安定なミクロエマルジョンを生成することであり、これは好ましくは胃腸の液で希釈されることにより自己乳化する。このような油を基にした製剤の性質は、トリグリセリド/治療用物質コロイド粒子のサイズ及び界面活性添加物の有無のような要素により決定される。粒子が小さいほどよく吸収されるので、サイズの管理は吸収に影響する重要な要素である。
【0008】
トリグリセリド含有組成物のそのほかの欠点は、治療薬の吸収が脂肪分解の速度及び程度に依存していることである。コロイド状のエマルジョン粒子は胃腸管の水性環境の中で疎水性治療用物質を輸送することができるが、最終的にトリグリセリドは消化され、治療用物質は腸の粘膜を介して吸収されるために放出されなければならない。
【0009】
ポリエトキシル化ヒマシ油のような医薬用エマルジョンの調製に一般的に使用されている一部の界面活性剤は、それ自身が脂肪分解の阻害物質として作用する可能性がある。最近の研究は、エマルジョン製剤において消化可能な油と組合せて使用した場合に、ある界面活性剤の併用が一部の一般的な医薬用界面活性剤による脂肪分解阻害効果を実質的に減少できることを示しているが(U.S.Pat.No.5,645,856)、該製剤には医薬用エマルジョン及びトリグリセリドに基づく製剤のほかの欠点がまだある。
【0010】
自己乳化システムの例はU.S.patent No.6,054,136(Faraha et al)に記述されている。この発明は、医薬用又は化粧品用で特に経口で投与することができ、体の生理的な液体とその場でミクロエマルジョンを形成することができる組成物に関する。この発明はより具体的には、英語で“SMEDDS”(self−micro−emulsifying drug delivery system)と呼ばれる活性物質の自己ミクロエマルジョン担体システムを提供する組成物に関する。この系はヒト体温において水の中で乳化する性質を有する。
【0011】
この組成物並びに他の自己乳化組成物は、一方では一つ又はそれ以上の可溶性又は難溶性の活性物質を輸送することを意図し、他方では人体の生理的液体とミクロエマルジョンを形成することを意図しており、ミクロエマルジョンの溶液中の一つ又はそれ以上の活性薬物又は成分がより良い生物学的利用能を示すと理解される。しかし、自己乳化システムは20から50%の典型的に高い界面活性剤含量という大きな欠点を有している。
【0012】
高い界面活性剤濃度は脂肪分解を阻害する可能性があり、腸の粘膜にとって不利であり、局所刺激副作用を生じる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、従来のミセル製剤の限界を解決し、しかもトリグリセリド含有製剤の欠点又は高い界面活性剤比率の欠点のない医薬組成物に対するニーズがある。
【0014】
したがって、薬物送達の分野において、親油性及び両親媒性不溶物質、薬物又は栄養素と共に使用することができ、長期間種々の温度において保存することができ、血液又は緩衝溶液又は胃腸液のような水性の液で希釈できるか又はそれと自然に混合し、そして機能する形態で薬物を吸収器官又は膜に供給することができる媒体を開発するニーズが存在する。
【0015】
特に、胃腸の粘膜を刺激する界面活性剤を高く有意な比率で含まないような媒体に対するニーズがある。
【0016】
限定された水溶性を有する生物活性物質のための担体システムであって、高い乳化剤濃度による副作用を避けつつ、体液との混合が可能になるか、又はより良い溶解及び促進された吸収が得られる担体システムを提供することが本発明の目的である。
【0017】
予期せずに、(1)水に不溶な疎水性の薬物の有意な量を、界面活性剤が少ない無水溶媒中油型の安定なエマルジョン系組成物中に、溶解した非晶質の状態で処方することができ、(2)界面活性剤濃度が低いにもかかわらず、胃腸の液中にナノサイズの液滴が存在する良好な混合物が得られ、(3)この系により製剤化された薬物の溶解が促進され、そして(4)組成物中で薬物の安定な非晶質又は結晶性の低い状態を維持できることを見出した。
【0018】
先行技術
米国特許6,056,971(Goldman et al)“比較的不溶な食品添加物及びそれを取り込んだ製品の溶解性を増加するための方法”は、高い界面活性剤濃度20〜90及び2〜50の多価アルコールを使用している。これに対し本発明は、低い界面活性剤の濃度及び少なくとも50%の無水親水性溶媒を教示している。
【0019】
米国特許5,965,160 “水中油型エマルジョンを作る自己乳化製剤”(Benita et al)は油性成分及び界面活性剤を含み、それ自身はエマルジョンではなくむしろ自己乳化し、水又は体液と接触して水中油型エマルジョンになるか又はそれに変換される。これに対して、本発明の組成物は水と混合する前に既にエマルジョンそのものであり、したがって異なる物理的形態である。
【0020】
米国特許5,993,858“水に難溶性の薬物の生物学的利用率を増加するための方法及び製剤”(Amidon et al)は、「薬物の生物学的利用率を増加するための自己ミクロエマルジョン化賦形剤製剤」及び「界面活性剤/補助界面活性剤の濃度の範囲は15〜90%(v/v)の広範囲に亘っており、より好ましい範囲は約45〜55%(v/v)である」ことを記述している。本発明は、もっと低い、約十分の一の界面活性剤濃度を教示している。
【0021】
米国特許6,096,338(Lacy et al)は、30〜45重量%の親水性界面活性剤成分、及び20〜40重量%の親油性界面活性剤成分を含む「疎水性薬物の投与システム」である。「実質的に消化性油のインビボ脂肪分解を阻害する親水性界面活性剤成分」及び「担体は消化性油及び担体を投与した際にインビボにおいて油を分散させるための医薬品として受容し得る界面活性剤成分を含む」が記述されている。これに対して、本発明の担体は真のエマルジョンであり、そして約十分の一の界面活性剤濃度を含むが、生理的液体と良い混合性を維持している。
【0022】
米国特許6,140,375(Nagahama et al)“ミクロエマルジョン”は、「水性溶液で希釈することにより組成物が透明な水性分散液を形成するような量の本発明の医薬組成物の成分」及び「本発明の水性分散液中の粒子のサイズは、小胞性の、エマルジョン又はミクロエマルジョン相のより大きな粒子よりは非常に小さい」と記述する。これに対して、本発明は水又は体液での希釈により濁ったエマルジョンを形成するので、水での希釈により透明な溶液を形成する高い界面活性剤濃度が特徴である上記の製剤とは異なっている。
【0023】
以下の特許は高い界面活性剤含量を含んでいる;米国特許6,309,665(Barthelemy et al)「ミクロエマルジョンを形成することができる、活性成分の持続放出の組成物」及び6,312,70(Farah et al)「摂取した場合に高い生物学的利用率を提供することができる経口投与可能な組成物」このシステムは、「摂取後生理的液により供給される親水性の相と接触して自己ミクロエマルジョン化するシステム」である。
【0024】
米国特許6,383,471(Lipocine corp.)は、「イオン化し得る疎水性治療用物質の投与を改善するための組成物及び方法」において、典型的には30%〜80%の界面活性剤を含有する高比率界面活性剤組成物も教示している。該組成物はエマルジョンではなく、粒子サイズについて言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の要約
本発明により、1ミクロン未満の平均液滴サイズの無水エマルジョンの形態の医薬用組成物又は栄養素組成物であって、非結晶又は低結晶の形態で該組成物中に溶解、可溶化又は分散されている少なくとも一つの低溶解性生物活性化合物と、内相を構成するすくなくとも一つの油性溶媒と、有意に低い濃度の少なくとも一つの乳化安定剤と、連続した無水の親水性外相とを含み、該組成物が容易に体液と混合して、1ミクロン未満の平均粒子サイズの均一な分散体を形成し、薬物の改善された溶解性及び溶解を生じさせる、組成物が提供される。
【0026】
したがって、一態様において、本発明は、該活性物質の治療有効量の送達のために、水に低又は難溶性の薬理的活性物質を無水エマルジョンの中に非又は低結晶性分子の形態で処方した混合物を含む。
【0027】
別の態様において、本発明は、水に低又は難溶性の薬理的活性物質の溶解及び経口での利用能を増強する方法であって、ここに記述した可溶化及び溶解を促進する組成物中に薬理的活性物質を混合した混合物を治療を受ける患者に経口投与することを含む、方法を提供する。
【0028】
予期せず本発明の組成物中に使用された乳化安定剤の濃度が低いにもかかわらず、生物学的な液体での希釈によりミクロン以下の液滴の速やかな、安定した溶解が得られることを発見し、そしてまた無水組成物中油型エマルジョン系においては小さく均一な粒子サイズを得るために必要なエネルギー、時間及び圧力は少ないことを見出した。
【0029】
予期せず本発明の組成物では使用された乳化安定剤の濃度が低いにもかかわらず、低溶解性の薬物の適切な可溶化および分子分散が達成され、再結晶化速度は高度に抑制されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、一態様において、1ミクロン未満の平均液滴サイズの無水親水性溶媒中油型エマルジョンを含む組成物であって、(1)その全て又は大部分が非結晶質である、当該組成物中に溶解又は分散されている難又は低溶性薬物と、(2)エマルジョンの内相を構成する少なくとも一つの油性溶媒と、(3)最終組成物中の乳化安定剤含量が低く、典型的には10%未満である少なくとも一つの乳化安定剤と、(4)生理的液体中における生物活性化合物の溶解を促進する効果が得られる、無水の親水性の連続相とを含む、組成物を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、無水組成物中油型のエマルジョンであって、その中の乳化安定剤は少量であるが、室温において組成物が安定であり標的器官の液の環境において適当な対照組成物に比較して薬物又は栄養素の溶解を促進するために充分な量で存在するエマルジョンを包含する。さらに別の態様において、本発明は、組成物中に溶解又は分散された低又は難溶性薬物の併用投与の方法であって、その薬物の大部分は非結晶質であり、そして保存中に再結晶しないか又はわずかしか結晶しない方法を提供する。
【0032】
薬物
本発明の組成物は、溶解度10mg/mL未満の低溶解性薬物にとって好ましく、1mg/mL未満の低溶解性薬物にとってより好ましく、0.1mg/mL未満の低溶解性薬物にとってさらにより好ましい。
【0033】
「低溶解性薬物」の意味は、薬物が生理的に該当するpH(例えば、pH1〜8)における最少水溶性が0.01mg/mL未満である薬物を意味する「実質的に水に不溶」、水溶性が約1〜2mg/mLである「水に難溶」、又は水溶性が約1mg/mLから約20〜40mg/mLの程度の高さである低から中程度の水溶性のいずれかであることである。
【0034】
本明細書で使用される用語「薬物」又は「薬理的活性物質」又は「生物活性物質」は、生体(ヒト又は動物)に投与された場合に、局所的及び/又は全身的作用により目的とする薬理的及び/又は生理的効果を生じる化合物又は組成物を意味するものとする。一般的に、この用語は、医薬の主要な全ての治療又は予防の分野の治療用又は予防用の物質を含む。生物活性物質は、植物性化合物、薬物、栄養物質、ビタミン、ペプチド、オリゴヌクレオチド若しくは糖脂質又はそれらの組み合わせであり得る。
【0035】
好ましい薬物のクラスは、限定はしないが、抗高血圧薬、抗不安薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、血糖低下薬、鬱血除去薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗腫瘍薬、ベーター遮断薬、抗炎症薬、抗精神病薬、向知性薬、抗アテローム性動脈硬化薬、コレステロール低下薬、抗肥満薬、自己免疫疾患の薬、抗不能薬、抗菌及び抗真菌薬、催眠薬、抗パーキンソン病薬、抗アルツハイマー病薬、抗生物質、抗うつ薬、抗ウイルス薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、及びコレステロールエステル転移タンパク質阻害薬を含む。
【0036】
本発明は、非晶質薬物として製剤化することができるいずれの薬物にも有用である。用語「薬物」は通俗的なものであり、動物、特にヒトに投与された場合に有益な予防的及び/又は治療的性質を持つ化合物を意味する。低溶解性の薬物は本発明を使用するのに好ましいクラスであるが、本発明から利益を得るために薬物が低溶解性薬物である必要はない。たとえ望ましい使用環境においてかなりの溶解度を示す薬物であっても、提供された担体での製剤化及び投与により治療の有効性に必要な投与量を減少することができる、又は薬物の有効性の速い発現が望まれる場合に薬物吸収速度を増加することができるならば、本発明により可能になる溶解度/生物学的利用率の増加から利益を受けることが可能である。
【0037】
活性物質は、伝統的に医薬品として使用されており、そして口腔を介して投与されるいずれかの物質であってもよい。このような活性物質としては、ビタミン、化学療法薬;抗真菌薬;経口避妊薬、ニコチン又はニコチン置換薬、ミネラル、鎮痛薬、制酸薬、筋弛緩薬、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、麻酔薬、鎮咳薬、利尿薬、抗炎症薬、抗生物質、抗ウイルス薬、精神治療薬、抗糖尿病薬及び心臓血管薬、栄養補助食品及び栄養補助剤がある。
【0038】
この発明を使用して送達することができるビタミン及び補酵素は、限定しないが、チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、ピリドキシン、パントテン酸、ビオチン、フラビン、コリン、イノシトール及びパラアミノ安息香酸、カルニチン、ビタミンC、ビタミンD及びその同族体、ビタミンA及びカロテノイド、レチノイン酸、ビタミンE及びビタミンK及びコエンザイムQ10を含む。
【0039】
植物性生物活性物質の例は、ポリフェノール、イソフラボン、レスベラトロール、ダイズイソフラボン、ブドウ種子抽出ポリフェノール、クルクミン、エピゲニン;アロエベラ,エキナセア及びカモミールhammamelis抽出物のような抗炎症性植物抽出物、中国のzizipus jujubaのような抗乾癬薬、Hammamelisのような収斂剤、アルテミシア、カモミール、ゴールデンシールのような抗菌薬、エキナセアのような免疫調節薬、抗加齢薬又は抗癌薬又は抗光障害薬、フィーバーヒューパルテノライドのような抗炎症薬、回春薬、カロテノイド、ベータ−カロテン、リコペン、アスタキサントン、ルテイン、トコフェリル及びレチノールである。
【0040】
冠状動脈の薬としては、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビドのような血管拡張薬、ベラパミル、ニフェジピン及びジルチアゼムのようなカルシウム拮抗薬、ジゴキシンのような強心配糖体がある。鎮痛薬としては、例えばモルフィン、ブプレノルフィンなどがあり、局所麻酔薬としては、例えば、リドカインなどがある。
【0041】
コレステロール及びトリグリセリド低下薬の例としては、フェノフィブラート、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン又はセリバスタチンがある。
【0042】
抗不安薬、鎮静薬及び催眠薬としては、ジアゼパム、ニトラゼパム、フルラゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、トリアゾラム、アルプラゾラム、ミダゾラム、テマゼパム、ロルメタゼパム、ブロチゾラム、クロバザム、クロナゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、ブスピロンなどがある。偏頭痛緩和薬としては、スマトリプタン、エルゴタミン及び誘導体などがある。乗り物酔いの薬としては、例えばシンナリジン、抗ヒスタミン薬などがある。制吐薬としては、例えば、オンダンセトロン、トロピセトロン、グラニセトロン、メトクロプラミドなどがある。その他のものとしては、例えばジスルフィラム、ビタミンKなどがある。
【0043】
化学療法薬の例には、シスプラチン(CDDP)、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナム、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びメトトレキサート又はそれらの同族体若しくは誘導体が含まれるが、これに限定されない。
【0044】
抗生物質の例としては、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリンクロラムフェニコールなどのようなテトラサイクリン類;エリスロマイシン及び誘導体などのようなマクロライドなどがあり、抗ウイルス薬としては、アシクロビル、イドクスウリジン、トロマンタジンなどがあり、抗真菌薬としては、ミコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、エコナゾール、テルコナゾール、グリセオフルビン、及びアムホテリシンB又はニスタチンなどのようなポリエンがあり、抗アメーバ薬としては、メトロニダゾール、安息香酸メトロニダゾール及びチニダゾールなどがあり、抗炎症薬としては、ステロイド、又はインドメタシン、イブプロフェン、ピロキシカム、ジクロフェナクなどのようなNSAIDがあり、抗アレルギー薬としては、クロモグリク酸二ナトリウムなどがあり、免疫抑制薬としては、シクロスポリンなどがある。
【0045】
使用することができる抗菌薬には、限定はしないが、ナフィシリン、オキサシリン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、リファンピン、シプロフロキサシン、広範囲ペニシリン、アモキシシリン、ゲンタミシン、セフトリアゾキソン、セフォタキシム、クロラムフェニコール、クラブラン酸、スルバクタム、プロベネシド、ドキシサイクリン、スペクチノマイシン、セフィキシム、ペニシリンG、ミノサイクリン、ベータ‐ラクタマーゼ阻害薬;メジオシリン、ピペラシリン、アズトレオナム、ノルフロキサシン、トリメトプリム、セフタジジム、セフトリアキソン及びダプソンが含まれる。
【0046】
送達することができる抗真菌薬には、限定はしないが、ケトコナゾール、フルコナゾール、ニスタチン、イトラコナゾール、クロミトラゾール及びアムホテリシンBが含まれる。使用することができる抗ウイルス薬には、限定はしないが、アシクロビル、トリフルリジン、イドキソルジン、フォスカルネット、ガンシクロビル、ジドブジン、ジデオキシシトシン、ジデオキシイノシン、スタブジン、ファムシクロビル、ジダノシン、ザルシタビン、リフィマンタジン及びサイトカインが含まれる。
【0047】
抗ヒスタミン薬の代表的なものは、限定はしないが、シメチジン、ラニチジン、ジフェンヒドラミン、プリルアミン、プロメタジン、クロルフェニラミン、クロルサイクリジン、テルフェナジン、マレイン酸カルビノキサミン、フマール酸クレマスチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、マレイン酸プリラミン、塩酸トリペレナミン、クエン酸トリペレナミン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニラミン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸ヒドロキシジン、乳酸シクリジン、塩酸シクリジン、塩酸メクリジン、アクリバスチン、塩酸セチリジン、アステミゾール、塩酸レボカバスチン及びロラタジンがある。
【0048】
鬱血除去薬及び鎮咳薬には、デキストロメトルファン、ナプシル酸レボプロポキシフェン、ノスカピン、カルベタペンタン、カラミフェン、クロフェジアノール、塩酸プソイドエフェドリン、ジフェンヒドラミン、グラウシン、フォルコジン及びベンゾナテートのような物質が含まれる。
【0049】
麻酔薬には、エトミデート、ケタミン、プロポフォール及びベンゾジアゼピン類(例えば、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、クロルエゼペート、ハラゼパム、フルラゼパム、クアゼパム、エスタゾラム、トリアゾラム、アルプロゾルム、ミダゾラム、テマゼパム、オキサゼパム、ロラゼパム)、ベンゾカイン、ジクロニン、ブピバカイン、エチドカイン、リドカイン、メピバカイン、プロモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパルカイン、ロピバカイン、テトラカインが含まれる。その他の有用な物質としては、アモバルチタル、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メフォバルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、チオペンタール、パラール、抱水クロラール、エトクロルビノール、クルテチミド、メトピロン、エチナメート及びメプロバメートが含まれ得る。
【0050】
鎮痛薬は、モルフィンのようなオピオイド、メピジン、デンタニル、スフェントラニル、アルフェンタニル、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、アトリン、イソカム、ミドリン、アキソタール、フィリナール、フレニリン、エルゴット及びエルゴット誘導体(ウイグレイン、カフェルゴット、エルゴスタット、エルゴマル、ジヒドロエルゴタミン)、イミトレックスを含む。
【0051】
利尿薬は、限定しないが、アセタゾールアミド、ジクロルフェナミド、メタゾルアミド、フロセミド、ブメタニド、エタクリン酸、トルセミド、アゾセミド、ムゾリミン、ピレタニド、トリパミド、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ポリチアジド、トリクロルメチアジド、インダパミド、メトラゾン、キネタゾン、アミロリド、トリアムテレン、スピロノラクトン、カンレノン及びカンレノ酸カリウムを含む。
【0052】
抗炎症薬は、限定しないが、サリチル酸誘導体(例えば、アスピリン)、パラアミノフェノール誘導体(例えば、アセトアミノフェン)、インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラク)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラク)、アリールプロピオン酸誘導体(イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フェノプレン、オキサプロジン)、アントラニル酸(メフェナム酸、メクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン及びオキシフェンタトラゾン)を含む。
【0053】
精神治療薬は、ソラジン、セレンチル、メラリル、ミラジン、チンダル、ペルミチル、プロリキシン、トリラフォン、ステラジン、スプラジン、タラクタン、ナバン、クロザリル、ハルドール、ハルペロン、ロキシタン、モバン、オーラップ、リスペルダール、アルプラゾラム、クロルヂアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、ブスピロン、エルバビル、アナフラニル、アダピン、シネカン、トフラニル、スルモンチル、アセンジン、ノルプラミン、ペルトフラン、ルジオミル、パメロール、ビバクチル、プロザック、ルボックス、パキシル、ゾロフト、エフェキソール、ウエリブトリン、セルゾン、デシレル、ナルジル、パルナート、エルデプリルを含む。
【0054】
心臓血管薬は、限定はしないが、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム、カプトプリル、エナラプリル、エナラプリラート、キナプリル、リシノプリル、ラミプリル、ロサルタン、アムリノン、リリノン、ベスナリノン、ヒドララジン、ニコランジル、プロザシン、ドキサゾシン、ブナゾシン、タムロシン、ヨヒンビン、プロパノロール、メトプロロール、ナドロール、アテノロール、チモロール、エスモロール、ピンドロール、アセブトロール、ラベタロール、フェントールアミン、カルベジロール、ブシンドロール、ベラパミル、ニフェジピン、アムロジピン及びドブタミンを含む。
【0055】
半固体又は粘稠液状の薬物含有組成物
薬物は、低溶解性薬物及び半固体マトリックスを含み、分子が分散した状態で組成物中に存在する。分散している薬物の少なくとも大部分は非晶質である。用語薬物の「大部分」とは、薬物の少なくとも60%が結晶状態でなく、非晶質であることを意味する。好ましくは分散状態の薬物は実質的に非晶質である。ここに使用した「実質的に非晶質」とは、非晶質の状態の薬物の量が少なくとも80%であることを意味する。より好ましいのは、分散している薬物が「殆ど完全に非晶質」であり、これはX線回折又は示差走査熱量測定(DSC)又はその他のいずれかの標準的定量法により測定して非晶質の状態の薬物の量が少なくとも90%であることを意味する。
【0056】
非晶質の生物活性物質は半固体又は粘稠液状の薬物/マトリックス中に溶液又は固溶体又は共沈殿物として存在し、そこでは薬物が分散中に均一に分布しているか又は薬物の一部が比較的薬物が多い部分に存在してもよい。好ましくは分散は実質的に均一であり、非晶質の薬物が分散体のどこでも可能な限り均一に分散している。ここに使用した「実質的に均一」とは、分散中の薬物の多い非晶質の部分に存在する薬物の量が20%未満であることを意味する。好ましくは、分散は「完全に均一」であり、これは薬物の多い部分に存在する薬物の量が10%未満であることを意味する。
【0057】
非晶質の化合物は結晶形の化合物より高エネルギーレベルにあり、したがって、固体は結晶状態にあるよりも非晶質であるほうがより溶解し易いであろう。改善された溶解性は速やかでより完全な溶解を生じるであろう。そして難溶性の薬物の場合には生物学的利用率の改善を生じるであろう。
【0058】
内相を構成する油性溶媒
油性の溶媒は、水又は水性媒体と混合しない又はそれに溶解しない性質の点で油性の医薬品又は食品として承認されている物質である。このような油性溶媒は、天然又は合成又は半合成品であり、室温において液体、半固体又は固体の形状であり得る。
【0059】
油性溶媒の例は、鉱物油、植物油、シリコーン油、ラノリン、精製動物油、植物、動物又は海洋産物起源の炭化水素エステル類である。
【0060】
植物油の例は、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、アーモンド油、アボガド油、ココナツ油、分画ココナツ油のカプリン−カプリルトリグリセリド、ナツメグ油、ひまし油、オリーブ油及びオレイン酸、大豆油、ひまわり油、キャノーラ油などである。この油は鹸化できるものであってもできないものであってもよく、室温で液体であっても固体であってもよい。
【0061】
特別な油は、精油又は多価不飽和脂肪酸又は油又はエーテル化油及び修飾された半合成油である。半合成油の例は、30℃〜50℃の融点における水素化やし油とやし種子油(C8−C18トリグリセリド)の間のエステル交換反応の製品である。
【0062】
疎水性溶媒のそのほかの好ましいクラスは、イソステアリン酸誘導体、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン油、ジイソプロピルジメラート、マレイン酸化大豆油、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、乳酸セチル、リシノール酸セチル、酢酸トコフェリル、アセチル化ラノリンアルコール、酢酸セチル、オレイン酸グリセリン、リノール酸トコフェリル、コムギ胚芽グリセリド、プロピオン酸アラキジル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、リシノール酸プロピレングリコール、ラノリン酸イソプロピル、テトラステアリン酸ペンタエリスリチル、ジカプリル酸/ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、水素化ココ‐グリセリド、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル及びイソアジピン酸イソセチルからなる群から選択することができる。
【0063】
その他のクラスとしては、脂肪酸(限定しないが、カプロン酸、カプリン酸、カプリル酸、オレイン酸、パルモン酸、ステアリン酸、リノレール酸、オクタン酸、デカン酸、リノレン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキジン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸及びリグニン酸を含む)又は脂肪アルコール、並びにモノ及びジグリセリドがある。
【0064】
乳化安定剤
乳化安定剤は、両親媒性を有し、そしてエマルジョンを安定化することができる、医薬用、化粧品用又は食用の品級の界面活性剤の全てである。界面活性剤は親水性、疎水性の界面活性剤又は親水性及び疎水性の界面活性剤の混合物を使用することができる。
【0065】
例としては、ポリエトキシル化脂肪酸、PEG‐脂肪酸ジエステル、EG‐脂肪酸モノ‐及びジ‐エステルの混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、アルコール‐油エステル転移製品、ポリグリセル化脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステル‐グリセロールエステルの混合物、モノ‐及びジグリセリド、ステロール及びステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、糖エステル、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤がある。
【0066】
好ましい乳化安定剤は、非イオン性でPEGを含まない界面活性剤であり、例えば:炭水化物及び脂肪酸の非イオン性の縮合物、例えば;脂肪酸のスクロースエステル及び脂肪酸のグルコシド及び脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のモノ‐及びジグリセリドの種々のエステル及びスクログリセリド、アスコルビン酸エステル、グリセリンエステル、セテアリールグルコシド、脂肪酸のポリ酸糖エステル、脂肪酸のクエン酸エステル及びコロイド状ゴムなどがある。
【0067】
好ましい乳化安定剤のその他の例は、ポリグリセリル‐10‐脂肪酸のようなポリグリセリル脂肪酸エステル、例えば、ポリグリセリル‐10‐テトラリノール酸又はポリグリセリル‐10‐オレイン酸又はポリグリセリル‐10‐ステアリン酸又はポリグリセリル‐10‐ラウリン酸である。
【0068】
好ましい乳化安定剤のその他の例は、両親媒性のポリマー、例えばセルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、エチルセルロース)及びアクリル酸誘導体(例えばBF Goodrich USAのPemulene(ペムレン)(登録商標)タイプ)である。また、コロイドシリカ又はキサンタンゴムのような天然ゴム並びに微結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムとの微結晶セルロース混合物は実用的乳化安定剤である。
【0069】
好ましいスクロースエステルは、遊離モノエステルと混合されるステアリン酸スクロース及びパルミチン酸スクロース(Sisterna SP50及びSP50C又はSisterna SP70)である。界面活性剤乳化安定剤の好ましいHLBは6から18であり、より好ましいのは10から15である。
【0070】
低い界面活性剤比
低濃度の乳化安定剤が実際に適用され、必要な保存安定性が得られそして1ミクロン未満の平均粒子サイズが維持されることが認められた。典型的な低い界面活性剤比は、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましいのは1%から5%である。
【0071】
「自己乳化送達システム」における20%〜50%の範囲の界面活性剤の著しい量の装填とは逆に、胃腸内容物又は擬似内容物のような生理的液体により希釈された場合に、低い界面活性剤比の組成物がミクロン以下即ちナノ‐サイズの平均油滴サイズを維持することが予期せずに発見された。このナノ‐サイズ平均液滴直径は、生理的薬物吸収に関連する時間及び胃腸系に関連するpH及び生理的条件において維持される。
【0072】
また、「自己乳化投与システム」を得るために必要なポリオキシエチレン誘導体界面活性剤及び混合界面活性剤(複合乳化剤)を使用せずに、体液による希釈の後にナノ‐サイズの液滴を得ることが可能であることも発見された。
【0073】
連続的な無水で親水性の相
連続した無水で親水性の相は、水及び生理的液体と完全に直ちに混和することができる有機溶媒から作られている。
【0074】
医薬品として受容でき、水と混和可能で無水の本発明の無水組成物に使用するのに適する好ましい溶媒としては、限定はしないが、プロピレングリコール及びグリセリンのようなグリコール、種々の分子量のポリエチレングリコールなど及びそれらの混合物を含む。
【0075】
水と中程度又は部分的にしか混和できない有機溶媒は余り好ましくない。
【0076】
他の好ましい溶媒および可能な共溶媒の例としては、ポリオール又はアミド又はエステル、ブタンジオール及びその異性体、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、ジメチルイソソルビド、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコールPEG又はメトキシPEGのような平均分子量約200から約6000をもつポリエチレングリコールのエーテル;アミド類、例えば2−ピロリドン、2−ピペリドン、F−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド;エステル類、例えばプロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、酪酸エチル、トリアセチン、二酢酸プロピレングリコール、イプシロン‐カプロラクトン及びその異性体、デルタ‐バレロラクトン及びその異性体、ベータ‐ブチロラクトン及びその異性体;及びこの技術分野において既知のその他の可溶化剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N‐メチルピロリドン、トランスクトールである。上記溶媒の混合物及びいずれかの組み合わせは最も好ましい。
【0077】
賦形剤及び添加物
無水エマルジョン組成物中の油性溶媒はさらに、安定剤、着色剤、ポリマー、抗酸化剤、矯味剤及び香料、中和剤及び増量剤のような賦形剤又は不活性成分又は添加物を含むことができる。
【0078】
用語「ポリマーの」は通常使用されているように、モノマーが互いに結合して大きな分子を形成してできた化合物を意味する。ポリマー成分は一般的に少なくとも約20個のモノマーから構成される。したがって、ポリマー成分の分子量は一般的に約2000ダルトン又はそれ以上であろう。ポリマーマトリックス成分は、非ポリマーマトリックス成分に比較して改善された濃度増強を伴う分散を生じるであろう。添加物として使用するための代表的ポリマー成分としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレン‐プロピレングリコールコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリジノン(ポリビニルピロリドン又はポビドン又はPVPとも称される)、ポリビニルアルコール、ポリエチレン‐ビニルアルコールコポリマー、ポリビニルアルコール酢酸ポリビニルコポリマー、キサンタンゴム、カラゲナン、プルラン、ゼイン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボン酸官能化ポリメタアクリル酸、アミン官能化ポリメタアクリル酸、キトサン、キチン、ポリデキストロース、デキストリン及びスターチが含まれる。また、ゼラチン及びアルブミンのような高分子量のタンパク質もこの定義の中に含まれる。
【0079】
ポリマーは、コーティング用生体接着ポリマー、陽性荷電ポリマー、又は除放性ポリマーを形成するマトリックスである可能性もある。本組成物は、さらに除放用又は生体接着又は荷電ポリマーの生体適合マトリックスに封入することができる。
【0080】
剤形
本発明により得られる低溶解性の生物活性物質を含む組成物は、直接経口投与するか、経口投与に適した媒体で希釈するか、カプセルに充填するか、又は当業者には明らかな別の方法により投与することができる。この組成物は室温で液体又は半固体であってもよいし、体温のような上昇した温度において液体又は半固体であってもよい。
【0081】
この組成物の好ましい稠度は室温において粘稠な液体又は半固体であり、少なくとも1,000cpsの粘度、好ましくは5,000cpsを超える粘度である。好ましい粘度は可塑性或いは擬可塑性であり、降伏値がないか低いことがより好ましい。
【0082】
好ましい剤形はソフトゼラチンカプセル又はハード植物性カプセルである。より好ましいのは、動物由来のゼラチンカプセルでなく植物起源のポリマーから作られた植物性のカプセルである。剤形は皮膜又は腸溶皮膜したものでもよく、また種々の大きさと形に成形することができる。
【0083】
本発明の送達システムは、可溶化の促進を生じ、該生物活性物質の経口による生物学的利用率及び溶解性の改善のために、又は製剤化することが困難な薬物を安全に全身投与するために使用することができる。好ましい注射用の剤形は、使用前希釈用のバイアル中に滅菌製造され、そして注入装置のラインにおいて5又は2ミクロンフィルターを通される。
【0084】
半固体組成物はまた、保存中に結晶化して活性を失う傾向がある皮膚科用の又は化粧品用の生物活性物質の局所適用に適している。低溶解性の局所用薬物を溶解した状態で半固体マトリックス中に安定化することにより、保管中に薬物活性を保持することができるし、或いは結晶状態よりも薬物吸収を増加させることができる。
【0085】
組成物の調製
本発明の無水ナノ送達システム製造プロセスは、基本的な連続する二つのステップを含んでいる:第1のステップは、均一性が得られるまで油性溶媒相中に液体又は固体の薬物を可溶化又は溶解することにより生物活性物質を含む油性溶媒相を調製することであり、そして第2ステップは、親水性で無水の相で油相を乳化及び均質化することである。
【0086】
高融点の生物活性物質は、油性溶媒のみで又は可溶化剤、乳化安定剤又は補溶媒と共に、温水又は100℃以上が必要な場合には加熱油浴で共溶融される。本発明のナノ無水エマルジョンの製造における第1ステップは、疎水性薬物を溶解するのに適した油性溶媒を選択することである。種々の補溶媒及び乳化安定剤を選択することも、油性溶媒相製造及び疎水性薬物を分子の均一溶解状態で取り込むことの一部である。
【0087】
その他に、生物活性物質は適当な有機溶媒中に油性溶媒と共に溶解され、有機溶媒を蒸発させ、乳化安定剤の助けにより混合物を無水溶媒中に乳化する。加熱及び温度は使用される油性溶媒及び乳化安定剤の組成物による。成分及び熱の異なる相を共に溶融する必要がある。しかし、内相又は外相の一つの相のみを加熱することも可能であり、同様に最近の冷却乳化方法も適用することができる。200℃をこえるような高融点の多数の疎水性薬物は、その融点に比較してかなり低い温度において充分に選択した油性溶媒混合物と共溶融するようになる。
【0088】
生物活性物質は油性溶媒に溶解され、混合物は無水の親水性溶媒及び選択された乳化安定剤の中に加えられ、そして激しく混合される。
【0089】
無水の親水性の相は、乳化の時点では粘稠な液体でありそして好ましくは環境温度に冷却された場合には粘度がかなり増加するような成分からなる。好ましい例は、グリセリン、マクロゴール‐1500のようなポリエチレングリコール又は目的とする粘度プロフィールを得るための液体及び固体マクロゴールの混合物、例えば:液体マクロゴール‐600と固体マクロゴール‐4000である。マクロゴールの選択的混合物は薬物放出動態にも影響するであろう、そしてそれは溶解速度及び薬物動態に影響を与えるための当業者の道具である。
【0090】
低粘度の無水溶媒は、最終製品の目的とする粘度及び半固体状態を得るために、ゲル化剤のような固形化剤を混合することが好ましいであろう。
【0091】
好ましい態様において、無水エマルジョン組成物を製造するプロセスは、透明な溶液が得られるまで、疎水性薬物を油性溶媒及び乳化安定剤及び必要があれば補溶解剤と共に共溶融することによる。透明溶液は、結晶又は明らかに固体の部分がないか、光学顕微鏡の下で検査される。親水性で無水の外相組成物は90℃〜100℃に加熱され、そして激しい攪拌下に徐々に熱い油相に加えられ、そして熱源を取り除き、冷却する。均質化は混合物が液体である間及び室温に冷却して固化する前及びそれまでに行う。
【0092】
無水溶媒中油型エマルジョンを製造するためのエマルジョン化装置は、医薬品又は化粧品産業におけるエマルジョン、ローション又は分散系を調製するために使用される装置と異ならず、典型的にミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、加圧ホモジナイザー、回転ブレンダー、などである。ミクロフルイダイザー又は高圧ホモジナイザーのような特殊な装置も使用することができる。
【0093】
本発明の好ましい態様において、以下の量が好ましい:
a)該油性溶媒は、約1〜40wt/wt%、より好ましくは2〜20wt/wt%の範囲の量で存在する;そして
b)該乳化安定剤は、約0.1〜20wt/wt%、又は約0.1〜5wt/wt%の範囲の量で存在する;そして
c)該低又は難水溶性生物活性成分は、約0.1〜20wt/wt%の範囲の量で存在する。
【0094】
本発明の好ましい態様は、無水ナノサイズ液滴半固体エマルジョン中の疎水性薬物の均一非晶質分散を製造するための以下のプロセスである:
A−薬物及び選択した油及び乳化安定剤を、固体物質のない透明溶液が得られるまで加熱して共溶融する。
B−無水親水性相を80℃〜100℃に加熱する。
C−攪拌及び混合の下に熱い無水相(B)を少しずつ熱い油相(A)に加える。
D−熱い液体が半固体状態に冷却するまでエマルジョン(C)をホモジナイズする。
【0095】
組成物はソフトゼラチンカプセル及び選択した植物性カプセルに充填するのに適しており、充填工程は組成物が軟らかく、室温に冷却されない間に行うのが好ましい。
【0096】
最も好ましい態様において、該乳化安定剤は生分解性(すなわち、ヒト体内及び環境において分解されうるもの)であり、そして実質的にポリオキシエチレンを含まず、そして脂肪分解を阻害せず、植物起源であることが好ましい。
【0097】
本発明のさらに好ましい態様において、該無水溶媒は該エマルジョンの連続相を構成し、水の小部分が該相に含まれる。
【0098】
本発明の好ましい態様において、無水溶媒中の油の組み合わせは、生体に適合し、安全で便利な剤形において、水に不溶な生物活性成分又は薬物の分散及び溶解を促進するエマルジョンを形成する。
【0099】
理解されるように、本発明は、アルコール及び/又は水を含まず、長い保存期間と長期間上昇した温度に耐える改善された熱安定性を持つエマルジョンを提供する。さらに、無水溶媒中油型エマルジョンは氷点下温度に耐える。即ち冷凍に際して安定であり、マイナス20℃で壊れない。無水溶媒中油型エマルジョンの解凍は簡単であり、元の性質に影響しない。
【0100】
無水溶媒中油型エマルジョンは容易に調製される。5〜10ミクロンの液滴サイズの粗無水溶媒中油型エマルジョンは、高剪断型混合機を使用せず、単純に攪拌することにより製造することができる。適切な混合装置の使用及びエネルギーの投入により液滴サイズの調節も容易である。平均液滴サイズが1ミクロン未満の微細な無水溶媒中油型エマルジョンは、通常のホモジナイザー又は“Silverson”タイプの混合機を使用して中速から高速において短時間混合することにより達成される。高剪断型ホモジナイザー混合は0.5〜1ミクロンの平均液滴サイズを含むエマルジョンを得るのに充分であり、したがって、高圧ホモジネーションは0.5〜0.1平均粒子サイズを作る。平均液滴サイズは特別な処方にも依存し、乳化装置の選択は当業者によって行われる。
【0101】
無水溶媒中油型エマルジョンは種々の加熱又は冷却法により調製することができる。加熱法では、油相及び無水溶媒相は別々に、全ての成分が溶融し、そしてよく溶解するまで80℃に加熱される。それらの相を混合しながら合併する。混合は、エマルジョンを製造するために使用されるミキサー、ブレンダー、ホモジナイザーなどのいずれかにより行うことができる。無水溶媒中油型エマルジョンはまた、油、無水溶媒および乳化安定剤を含む全ての成分を一度にまとめて加熱し、固体の溶融を達成するように加熱し、そして室温に冷却するまで乳化を促進するために混合を継続することによっても調製できる。
【0102】
生物活性物質は油相の中で共溶融される。この油相は疎水性の生物活性物質を特異的に溶解するように処方される。油相中への生物活性物質の溶解又は可溶化を促進する方法は、例えば:後に蒸発されるエタノールのような有機溶媒、好ましくは低いHLBの補乳化剤、前記油性溶剤リストに記述した脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル又はイソアジピン酸イソプロピルのような油性補溶媒リン脂質及び/又は短時間高温度の加熱の使用である。生物活性物質又は薬物は、エマルジョン製造の間に、又はその一部として処方することができ、或いは予め準備したエマルジョン組成物中へ加熱しながら、又は加熱せずに導入することができる。
【0103】
溶媒が使用される場合に、適する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールのような低級アルキルアルコール、又は低溶解性生物活性物質及び油性溶媒がかなりの溶解度を持つ医薬品として受容し得る他の有機溶媒が含まれる。
【0104】
再結晶化する傾向がある生物活性物質の再結晶化を避けるために、粘度調節剤、塩、ポリマーのような錯イオン剤又は前に列記したジメチルイソソルビドなどの補溶媒のような結晶化阻害物質を加えることにより、注意を払うべきである。再結晶化の阻害は、必要がある場合に当業者によりそれぞれの薬物に合わせて個別に行われる。
【0105】
典型的な無水溶媒中油型エマルジョンは10,000〜100,000センチポアズの粘度を有し、また環境温度においてニュートン流動をすることが特徴である。粘度は水を加えることにより低下する可能性がある。無水溶媒中油型エマルジョンの粘度は、カルボマー、カルボポール、セルロース誘導体又はキサンタンゴムのような天然ゴム又はコロイドヒュームドシリカのような粘度形成剤の添加により調節することができる。また、同じ添加物により非ニュートン流体の性質も容易に達成することができる。
【0106】
無水溶媒中油型エマルジョンは、ヒト及び動物に経口、直腸、膣、局所及び経皮適用で使用するのに適している。静脈内、筋肉内、皮下などの注射用製剤は、投与前に、滅菌食塩液又はスクロース溶液のような生理的液で希釈する調製ステップにより、生理的に受容し得る滅菌、等張製品を得ることが可能である。
【0107】
したがって、本発明は、一態様において、胃腸の粘膜を介する薬理活性物質の吸収の程度又は速度を増強する方法であって、無水溶媒中油型エマルジョンを含む溶解増強組成物中に選択した物質を併用する方法に関する。
【0108】
生理的液体との混合
該組成物の人工の胃液又は腸液中における希釈は、速やかで完全な分散を生じ、そして平均液滴サイズ1ミクロン未満でかすんだ半透明の外観の水中油型のエマルジョンが得られる。USPに記載されている溶解試験により、極めて速やかで完全な溶解を示す可能性があるが、その媒地中に認められるのは低溶解性薬物の溶媒中における本当の溶解ではなく可溶化である。薬物吸収に必要な時間、光学顕微鏡下で結晶は観察されない。
【0109】
診療所又は病院で入手できる注射用等張滅菌水溶液による該組成物の希釈によっても、非経口静脈内投与に安全であるミクロン以下の水中油型製品を生じる。簡単な装備で該組成物の希釈は可能であり、等張性および該組成物中の非常に低い界面活性剤濃度そして希釈後はさらに低い界面活性剤濃度のために血液溶解性のない製剤を得ることができる。
【0110】
用語
ここに使用されている平均液滴サイズ1ミクロン未満又は「ミクロン以下」又は「ナノ‐サイズ」は、数ナノメートルから1,000ナノメートルの範囲の実際の平均液滴サイズを示す。
【0111】
用語HLBは、界面活性剤の親水性/親油性バランスを示す0〜40の任意のスケールである。低いHLBの製品はより脂溶性である。高いHLBは優れた水溶性を示す。HLBは界面活性剤の分子構造に基づいて数的に計算された数字であり、測定されたパラメーターではないことを特筆する。
【0112】
用語、無水(anhydrous,non−hydrous 及び Nonaqueous)は互換性であり、無水(non water)又は非水性(non aqueous)の媒体のことである。
【0113】
用語「生物活性物質」は、哺乳類の身体に有用な生物学的活性を示す、合成又は天然起源の、薬物又は栄養素、小型又は大型の分子の化合物のいずれかである。
【0114】
本発明は、その態様がより充分に理解され評価されるように、以下の実施例において好ましい態様と関連して記述されるが、これらの個別の態様に本発明を限定することは意図されていない。これとは逆に、付属する請求項に定義された本発明の範囲内に含まれる可能性のある全ての代替物、修飾物及び同等品を含むことが意図されている。したがって、好ましい態様を含む以下の実施例は、この発明の実施を説明するのに役立つものであり、示された詳細は、本発明の好ましい態様の例及び説明考察のためにのみ示され、本発明の製剤工程並びに原理と概念的側面に関する最も有用で容易なよく理解されている記述と考えられるものを提供するために示されていることは理解されるべきである。
【実施例】
【0115】
実施例
実施例1:ロバスタチン又はアトルバスタチン組成物
【表1】


カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(MCT油)、スクロースエステル及びモノステアリン酸グリセリルを80℃に加熱し、共溶融する。ロバスタチンを加えて、共溶融するまで混合物を加熱する。80℃に加熱したグリセリンを加えて、組成物をホモジナイズし、室温に冷却して、ハード植物カプセルに充填し、40℃及び5℃において安定性を評価する。ロバスタチンはこの組成物中に充分に溶解され、1ヶ月5℃で保管した後に組成物中に元の結晶は観察されない。
【0116】
人工胃液(SGF)又は人工腸液(SIF)で希釈して緩和に攪拌した後の平均粒子サイズは1ミクロン未満であり、希釈後2時間はミクロン以下を維持する。
【0117】
実施例2:リコペン又はアスタキサンチン組成物
【表2】


リコペン及びスクロースエステルを熱油浴上で、共溶融してリコペンの結晶が検出されなくなるまで加熱する。MCT油を80℃に加熱し、リコペン/スクロースエステル混合物中に激しく混合しつつ加える。混合物が80℃に冷却するまで混合を継続する。激しく攪拌しつつグリセリンを加え、高剪断混合しつつ組成物を室温に冷却する。リコペンの大部分、約80%は油相に溶解し、リコペンの大部分は非晶質であり、環境温度において6ヶ月間保管した後に元の典型的な結晶に再結晶しない。
【0118】
人工胃液(SGF)又は人工腸液(SIF)による希釈により、平均粒子サイズ1ミクロン未満の油/水エマルジョンが得られる。
【0119】
実施例3:リコペン又はアスタキサンチン組成物
【表3】

【0120】
実施例4:コエンザイムQ10組成物
【表4】


コエンザイムQ10をカプリル/カプリン酸トリグリセリド、スクロースエステル及びレシチンと70℃で共溶融し、PVPで予め分散したプロピレングリコールを加え、そしてミクロン以下の液滴サイズが得られるまで混合物をホモジナイズする。
【0121】
実施例5:インドメタシン組成物
【表5】


インドメタシン、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、モノステアリン酸グリセリル及びスクロースエステルを一緒に混合し、共溶融するまで加熱し、グリセリン混合物及び予め分散したPVP中で乳化する。400ナノメートルの平均粒子サイズが得られる。
【0122】
実施例6:ベンゾジアゼピン組成物
【表6】


ベンゾジアゼピンをMCT油及びArlacel 481と油浴上で共溶融する。他の成分を混合して、別に80℃に加熱し、激しく攪拌しつつヒドロコルチゾン及びMCT油相に徐々に加える。次いで、混合物を高速攪拌型ホモジナイザーでホモジナイズしてミクロン未満の液滴サイズを得る。
【0123】
実施例7:ニフェジピン組成物
【表7】


ニフェジピンとカプリル/カプリン酸トリグリセリド、ステアリン酸及びソルビタンの混合物を共溶融するまでマイクロ波オーブン中で加熱し、透明溶液を得る。他の成分全てを混合し、ホットプレート上で70℃に加熱し、ニフェジピン油相の中に激しく攪拌しつつ徐々に加える。熱源から100グラムのエマルジョンを離し、冷却しつつultra‐turaxタイプの高速攪拌型ホモジナイザーで1分間均一化する。組成物は環境温度で徐々に冷却させる。
【0124】
実施例8:ピロキシカム組成物
【表8】


均質化はultra‐turaxタイプの高速攪拌型ホモジナイザーを使用して行う。実施例7の半固体組成物の平均液滴サイズは光子相関分光分析により測定され、600ナノメートルの平均液滴サイズ及び均一性の低い分散であった。熱い組成物を高圧ホモジナイザーに通すことにより平均液滴サイズは400ナノメートル未満に減少した。
【0125】
実施例9:ケトコナゾール又はイトラコナゾール組成物
【表9】


通常の00サイズの植物ハードカプセルに実施例8のケトコナゾール組成物を充填し、40℃及び75相対湿度のプラスチックバッグ中で30日間保管後に安定であり、形と外観を維持していることが認められた。
【0126】
実施例10:ケトコナゾール又はイトラコナゾール組成物
【表10】

【0127】
実施例11:ケトコナゾール又はイトラコナゾール組成物
【表11】

【0128】
実施例12:タクロリムス又はピクロリムス組成物
【表12】

【0129】
実施例13:ヒドロコルチゾン組成物
【表13】

【0130】
実施例14:ゲニステイン組成物
【表14】

【0131】
実施例15:シクロスポリン組成物
【表15】


シクロスポリンをカプリル/カプリン酸トリグリセリド、トリアセチン、オレイン酸、ポリグリセリル−10 オレイン酸及びスクロースエステルと均一になるまで共溶融する。混合しつつ熱グリセリンを徐々に加えて、組成物をホモジナイズする。
平均液滴サイズは600ナノメートルで、シクロスポリンは組成物中に均一に分散し、シクロスポリンの大部分は非結晶性である。
【0132】
実施例16:冷工程、基本基剤組成物
【表16】


この例示組成物の調整は環境温度或いは任意に緩和な加熱において行われ、好ましくは熱に弱い生物活性物質の製剤化に適している。この組成物は、トリアセチン又はジメチルイソソルバイドのような多くの補溶媒を含むこともできる。
【0133】
実施例17:シクロスポリン又はペプチド薬物の冷工程組成物
【表17】


安定性に最適なpHを必要とするペプチドに適した組成物のpHを調節するためにトリエタノールアミン又は水酸化ナトリウムが加えられる。
【0134】
実施例18:アムホテリシン組成物
【表18】

【0135】
実施例19:セフトリアキソン組成物
【表19】

【0136】
実施例20:グリセオフルビン組成物
【表20】

【0137】
実施例21:COX−2阻害物質組成物
【表21】

【0138】
実施例22:プロゲステロン又はエストラジオール組成物
【表22】

【0139】
実施例23:オメガ3脂肪酸組成物
【表23】

【0140】
実施例24:グリベンクラミド組成物
【表24】

【0141】
実施例25:エトポシド又はタキソール組成物
【表25】


エトポシドをトリアセチン、リノール酸トコフェリル、モノステアリン酸グリセリル、ジメチルイソソルビド及びスクロースエステルと共に油浴上で、均一液体が得られ、光学顕微鏡で観察してエトポシド結晶の大部分が溶融するまで共溶融する。激しく混合しながら熱グリセリンを徐々に加える。ペムレンを組成物に混合しつつ振り掛ける。組成物をホモジナイズし、室温に冷却する。組成物をカプセルに充填する。平均液滴サイズは、均質化の程度及び装置の選択により2,000〜200ナノメートルに調節する。液滴サイズは人工腸液で希釈・混合しても維持される。
【0142】
実施例26:アシクロビル又はヌクレオシド同族体組成物
【表26】


アシクロビルを50℃でジメチルイソソルビドに溶解し、MCT油及びスクロースエステルを加えて、70℃で共溶融する。ヒドロキシプロピルセルロースをグリセリンに加え、90℃に加熱し、ホモジナイズしつつアシクロビル相へ徐々に加える。室温に冷却するまで均質化を続ける。
【0143】
本発明は前記説明用の実施例の詳細に限定されず、そして本発明はその本質的特性から離れることなく他の特別な形に具体化することができることは当業者には明白であろう、したがって、この態様及び実施例は全ての点で、制限のためでなく説明のために、前記説明でなく付属する請求項に対して行われる参照と考えられることが求められ、したがって、請求項と同等の意味及び範囲に入る全ての変更はこの中に含められることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水親水性溶媒中に油性溶媒を分散した医薬組成物において、
a)該組成物中に溶解又は分散されている低溶解性の薬物であって、該組成物中においてその大部分は非結晶性である薬物と、
b)エマルジョン分散の内相を構成する少なくとも一つの油性溶媒と、
c)少なくとも一つの乳化安定剤と、
d)連続した無水親水性溶媒相と
からなり、生理的液で希釈した場合にミクロン以下の平均液滴サイズが得られる、医薬組成物。
【請求項2】
薬物の大部分が結晶性でなく、保存中に再結晶化しないか又はわずかしか結晶化しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
生物活性物質の溶解促進が達成される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
生物学的液中における生物活性化合物の溶解効果が促進され、油性粒子は体液で希釈された際に全身吸収に必要な時間その粒子サイズを維持している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
生物活性薬物の少なくとも大部分が、組成物中に均一に、分子として分散している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
水性又は体の液と混合した際に100〜2,000ナノメートルの平均粒子サイズを持つ前記組成物の均一な分散が容易に達成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
200から800ナノメートルの間の平均液滴サイズを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記生物活性成分が約0.1〜40wt/wt%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記油性溶媒が約1〜40wt/wt%の範囲の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該乳化安定剤が約0.1〜20wt/wt%の範囲の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記乳化安定剤が約0.1〜10wt/wt%の範囲の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記乳化安定剤が約0.1〜5wt/wt%の範囲の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記乳化安定剤が、脂肪酸又は酸のスクロースエステル及び脂肪酸のグルコシド及び脂肪酸のソルビタンエステル及び脂肪酸のモノ‐及びジグリセリドの種々のエステル及び脂肪酸のスクログリセリド及びポリグリセロールエステル及び脂肪酸のプロパン‐1,2‐ジオールエステル及び脂肪酸のポリ酸糖エステルから選択される糖及び脂肪酸の非イオン性縮合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記生物活性成分が、10mg/ml未満の水溶性(aqueous solubility)を有する植物抽出物、薬物、ペプチド若しくはポリペプチド、ヌクレオチド又は糖脂質からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
無水親水性相が、グリセリン又はプロピレングリコール又はポリエチレングリコール又はジメチルイソソルビド及びそれらの混合物から選択されるポリアルコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
無水組成物が乳化プロセスの温度50℃〜100℃において液体であり、環境温度において半固体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
液滴粒子がポリマーでコートされている請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
生物活性物質を徐々に放出するために前記組成物と体液の混合を遅らせるためのポリマーマトリックスの中に該組成物が埋め込まれている、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
無水ナノサイズの液滴半固体エマルジョン中の疎水性薬物の均一な非晶質分散体を製造する方法であって、
A−該薬物及び選択した油及び乳化安定剤を固体物質がなく透明な溶液が得られるまで加熱して共溶融し;
B−無水親水性相を80℃〜100℃に加熱し;
C−攪拌及び混合しつつ熱油相(A)に熱無水相(B)を徐々に加え;
D−熱い液体が半固体状態へ冷却されるまでエマルジョンをホモジナイズする、製造方法。
【請求項20】
水に低又は難溶性の薬理活性物質の溶解性及び経口による生物学的利用能を促進する方法であって、
A.組成物中に溶解又は分散されている低溶解性の薬物であって、その大部分はその組成物中で非結晶質の薬物と、
B.エマルジョン分散の内相を構成する少なくとも一つの油性溶媒と、
C.少なくとも一つの乳化安定剤と、
D.連続する無水親水性溶媒相と
からなる、生理的液体により希釈された場合にミクロン以下の平均液滴サイズが得られる薬理的活性物質の混合物を、治療を受けている患者に経口投与することを含む、促進方法。

【公表番号】特表2007−517859(P2007−517859A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548573(P2006−548573)
【出願日】平成16年12月19日(2004.12.19)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001144
【国際公開番号】WO2005/065652
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506231515)
【Fターム(参考)】