説明

不燃板及び不燃板の製造方法

【課題】不燃性、断熱性、耐水性、遮音性、及び曲げ加工性等に優れた性能を有する不燃板を提供する。
【解決手段】水酸化マグネシウムを主体として平板状に形成された不燃板11であって、該不燃板11の両面部11a、11a近傍位置には、ガラス繊維の芯材12aを編組して形成したガラス繊維ネット12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料等として用いられる不燃板及び不燃板の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、水酸化マグネシウムを主体として形成され、不燃性、断熱性、耐水性、遮音性、及び曲げ加工性等に優れた性能を有する不燃板及び不燃板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の不燃板としては、例えば次のような構成の難燃ボードが知られている。この難燃ボードは、セルロース繊維と含水無機化合物と炭酸カルシウムとを所定の重量比率で混合して平板状に形成したものである。
【0003】
また、含水無機化合物は、具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、2水和石こう、及びアルミン酸化カルシウムの中の少なくとも1種類である(特許文献1参照)。
【0004】
このような構成の不燃ボードは、難燃性を有し、発煙量が低いという効果を有するほかに、炭酸カルシウムは安価であるので、低価格な難燃ボードを提供できるという利点が有る。
【特許文献1】特開平5−148798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来例の難燃ボードにおいては、柔軟性及び曲げ強度が低く、曲げ加工性が劣るという欠点を有している。
【0006】
また、難燃性は有するものの、耐衝撃性、耐候性、断熱性、遮音性、耐水性、防腐食性、防カビ性、加工性、施工性等の種々の性能の点で劣るという欠点も有している。
【0007】
従って、従来例における難燃ボードにおいては、柔軟性や曲げ強度を向上させて、曲げ加工性に優れた性能を持たせることと、上述の耐衝撃性等の性能を向上させることとに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来例の課題を解決する具体的手段として本発明は、水酸化マグネシウムを主体として平板状に形成された不燃板であって、該不燃板の両面部近傍位置には、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したガラス繊維ネットが設けられていることを特徴とする不燃板を提供するものである。
【0009】
前記不燃板の両面部は、不織布が設けられていること、;
前記不燃板は、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化ナトリウムが混入されていること、;
を含むものである。
【0010】
また、本発明は、水酸化マグネシウムが35〜45重量%の範囲で、酸化マグネシウムが15〜35重量%の範囲で、塩化マグネシウムが15〜25重量%の範囲で、水が5〜20重量%の範囲で、木片が5〜10重量%の範囲で、真珠岩の粉末が5〜10重量%の範囲でそれぞれ混合されて、平板状に形成した不燃板であって、該不燃板の両面部近傍位置には、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したガラス繊維ネットが設けられていることを特徴とする不燃板を提供するものである。
【0011】
更に、本発明は、所定量の塩化マグネシウムと水とを混合した溶液を所定時間放置し、該溶液に所定量の酸化マグネシウムを混合して水酸化マグネシウムを発生させ、該水酸化マグネシウムに所定量の木片と真珠岩の粉末とを混合し、該木片と真珠岩の粉末とを混合した水酸化マグネシウムをローラ圧延成形して平板を形成すると共に、該平板の両面部近傍位置にガラス繊維ネットを設け、該平板に所定の乾燥処理を施してから、必要に応じて所要大きさに切断することを特徴とする不燃板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る不燃板は、水酸化マグネシウムを主体として平板状に形成された不燃板であって、該不燃板の両面部近傍位置には、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したガラス繊維ネットが設けられていることによって、天然の鉱物である水酸化マグネシウムを主体としており、例えばホルムアルデヒドやアスベスト等の有害成分が含まれないので安全性が高い。
更には、不燃性能が高いので煙や有害ガスが発生せず、また、耐候性、断熱性、遮音性、耐水性、防腐食性、防カビ性、加工性、施工性等に優れた性能を有する。
特に、不燃板の両面部近傍位置にはガラス繊維ネットが設けられているので、耐衝撃性に優れ、曲げ強度が高く、曲げ加工性に高い特性を有するという種々の優れた効果を奏する。
【0013】
また、不燃板の両面部は、不織布が設けられていることによって、前述のガラス繊維ネットが設けられていることと相俟って、耐衝撃性に優れ、曲げ強度が高く、曲げ加工特性が向上するという種々の優れた効果を奏する。
【0014】
そして、不燃板は、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化ナトリウムが混入されていることによって、不燃性、耐候性、断熱性、遮音性、耐水性、防腐食性、防カビ性、加工性、施工性等が一層向上するという優れた効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る不燃板は、水酸化マグネシウムが35〜45重量%の範囲で、酸化マグネシウムが15〜35重量%の範囲で、塩化マグネシウムが15〜25重量%の範囲で、水が5〜20重量%の範囲で、木片が5〜10重量%の範囲で、真珠岩の粉末が5〜10重量%の範囲でそれぞれ混合されて、平板状に形成した不燃板であって、該不燃板の両面部近傍位置には、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したガラス繊維ネットが設けられていることによって、製造工程で所定の乾燥処理をおこなえば、真珠岩の粉末が水酸化マグネシウム等の化学物質及び木片と化学反応をおこして発熱して発泡するので、平板が発泡状態に形成されることとなる。
そのような発泡状態の不燃板は、不燃性、断熱性、遮音性等の性能が一層向上し、また、軽量化が図れるという優れた効果を奏する。
【0016】
更に、本発明に係る不燃板の製造方法は、所定量の塩化マグネシウムと水とを混合した溶液を所定時間放置し、該溶液に所定量の酸化マグネシウムを混合して水酸化マグネシウムを発生させ、該水酸化マグネシウムに所定量の木片と真珠岩の粉末とを混合し、該木片と真珠岩の粉末とを混合した水酸化マグネシウムをローラ圧延成形して平板を形成すると共に、該平板の両面部近傍位置にガラス繊維ネットを設け、該平板に所定の乾燥処理を施してから、必要に応じて所要大きさに切断することによって、乾燥処理工程において、真珠岩の粉末が水酸化マグネシウム等の化学物質及び木片と化学反応をおこして発熱して発泡するので、平板が発泡状態に形成されることとなる。
そのような発泡状態の不燃板は、不燃性、断熱性、遮音性等の性能が一層向上し、また、軽量化が図れるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1は、第1実施例に係る不燃板11の一部を拡大して示す断面図であり、この不燃板11は、水酸化マグネシウムを主体として平板状に形成されており、この不燃板11の両面部11a、11a近傍位置には、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したガラス繊維ネット12が設けられている。
【0018】
不燃板11の大きさの一例を上げると、例えば縦寸法が1220mmであり、横寸法が2440mmであり、厚さが3〜21mmに形成される。
【0019】
不燃板11の厚さが3mmの場合を例に上げると、両面部11a、11aの約0.4mm内側に、ガラス繊維ネット12が埋設した状態に設けられている(図1参照)。
【0020】
水酸化マグネシウムは、理論上は水とマグネシウムとが化学反応を起こしたものである。マグネシウムは、所謂、活性マグネシウムと、惰性マグネシウムとが有り、活性マグネシウムの成分が多い原材料の場合は、生産過程で水酸化マグネシウムに化学変化する量が多くなる。また、活性マグネシウムを多く含有すると、不燃板11の腰の曲がりが良好になる。
【0021】
ガラス繊維ネット12は、図2に示すように、ガラス繊維の芯材12aを網目状に編組して形成したものである。また、ガラス繊維ネット12は、厚さが、例えば0.4mm程度のものが望ましく、重量は1m当たり0.2kgであることが望ましい。
【0022】
以上のような構成の不燃板11は、天然の鉱物である水酸化マグネシウムを主体としており、ホルムアルデヒドやアスベスト等の有害な化学物質が含まれないので安全性が高い。そして、不燃板11は、不燃性能が高いので煙や有害ガスが発生せず、また、耐候性、断熱性、遮音性、耐水性、防腐食性、防カビ性、加工性、施工性等に極めて優れた性能を有する。
【0023】
また、不燃板11は、ネジやクギの保持力が高く、施工性に優れており、ノコギリやカッターによる加工性にも優れている。
【0024】
そして、不燃板11の両面部近傍位置にはガラス繊維ネット12が設けられているので、耐衝撃性に優れ、曲げ強度が高い。特に、曲げ加工性に優れているので、壁面等の湾曲した部位に沿って、不燃板11を配設することができる。つまり、曲面を有するデザイン性のある部位に対して、外装材又は内装材として使用することができるし、あるいは、曲げ加工が必要な家具やその他の種々の什器等にも使用することができる。
【0025】
更には、壁紙やシート等の貼り物については、不燃板11との間にガスが発生しないので、その結果、下地処理の手間がかからない。また、塗装についても、塗料が不燃板11に馴染みやすいので、美しい仕上がりになる。
【0026】
次に、縦寸法1220mm、横寸法2440mmの不燃板11の、厚さが3mm、6mm、9mm、12mm、15mm、及び18mmにそれぞれ形成したものの、密度(比率)、含水率%、曲げ破壊荷重N(kgf)、釘抜き力N(kgf)、難燃性800℃釜内燃焼(3.5時間)時の釜内温升と燃焼時間と質量損失率、熱伝導率W/m・k、吸湿性kg/m(3.5時間水中付け)、吸水後長さ変化率、及び単位面積当たりの質量(kg/m)について測定した。その数値を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
次に、図3及び図4に第2実施例に係る不燃板13を示す。この第2実施例において、前記第1実施例の不燃板11と同一部分には同一符号を付してその詳細は省略する。
【0029】
この不燃板13は、両面部に、不織布14が設けられている。不織布14は、比重(密度)が15g/m程度であることが望ましく、また、ガラス繊維を抄き込んだタイプであることが望ましい。
【0030】
このように、不燃板13の両面部に不織布14が設けられていることによって、前述のガラス繊維ネット12が設けられていることと相俟って、耐衝撃性に優れ、曲げ強度が高く、曲げ加工特性が一層向上する。また、耐候性、断熱性、遮音性、耐水性、防腐食性、防カビ性、加工性、施工性等に一層優れた性能を有することとなる。
【0031】
次に、第3実施例に係る不燃板及びその製造方法について説明する。まず、重量比が15〜25重量%の範囲の塩化マグネシウム(MgCl・6HO)と、重量比が5〜20重量%の範囲の水(HO)とを混合して溶液を作り、この溶液を約24時間放置する。
【0032】
この溶液に、重量比が15〜35重量%の範囲の酸化マグネシウム(MgO)を混合して、水酸化マグネシウム(Mg(OH))を発生させる。この水酸化マグネシウムの重量比は、35〜45重量%の範囲であることが望ましい。
【0033】
この水酸化マグネシウムに対して、重量比が5〜10重量%の範囲の木片と、重量比が5〜10重量%の範囲の真珠岩の粉末とを混合する。木片は、不燃板の軽量化及び発泡状態の促進のために混合される。また、木片の形状は、チップ状又はおが屑状であることが望ましい。真珠岩は、パーライトとも言われる火山岩の一種であり、所定温度で処理を施すと発泡体となる性質がある。
【0034】
この木片と真珠岩の粉末とを混合した水酸化マグネシウムに対して、2枚のガラス繊維ネットを引張しながら、ローラ圧延成形して平板を形成すると共に、この平板の両面部近傍位置にガラス繊維ネットを設ける。このガラス繊維ネットは、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したものである。
【0035】
このように形成した平板に対して、所定の乾燥処理を施す。まず、平板を約24時間放置して自然乾燥させる。次に、自然乾燥させた平板を乾燥炉の中に入れて、約60℃の温度で、約4時間乾燥させる。
【0036】
このような乾燥処理工程において、真珠岩の粉末が水酸化マグネシウム等の化学物質及び木片と化学反応をおこして発熱して発泡するので、平板が発泡状態に形成されることとなる。更に、乾燥炉から出した平板を、4日間放置して自然乾燥させる。
【0037】
このように乾燥処理を施した平板を、前述のように、例えば縦寸法1220mm、横寸法2440mmに切断して不燃板を形成する。このように形成された不燃板は、発泡状態に形成されるので、不燃性、断熱性、遮音性等の性能が一層向上し、また、不燃板の軽量化が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の不燃板は、壁下地材、外壁材、壁パネル、基礎化粧板、天井材、天井下地材、軒天板、瓦材、床下地材、フロアー材、及びトンネル天井材等の様々な建築用材料として用いる他に、家庭用家具、業務用家具、オフィス用什器、看板下地材、サイン下地材、及びオブジェ等の種々な物品に応用して用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施例に係る不燃板11の一部を拡大して示す断面図である。
【図2】ガラス繊維ネット12の配設状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る不燃板13の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】ガラス繊維ネット12及び不織布14の配設状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
11 不燃板
11a面部
12 ガラス繊維ネット
12a芯材
13 不燃板
14 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化マグネシウムを主体として平板状に形成された不燃板であって、
該不燃板の両面部近傍位置には、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したガラス繊維ネットが設けられていることを特徴とする不燃板。
【請求項2】
前記不燃板の両面部は、不織布が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の不燃板。
【請求項3】
前記不燃板は、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化ナトリウムが混入されていることを特徴とする請求項1に記載の不燃板。
【請求項4】
水酸化マグネシウムが35〜45重量%の範囲で、酸化マグネシウムが15〜35重量%の範囲で、塩化マグネシウムが15〜25重量%の範囲で、水が5〜20重量%の範囲で、木片が5〜10重量%の範囲で、真珠岩の粉末が5〜10重量%の範囲でそれぞれ混合されて、平板状に形成した不燃板であって、
該不燃板の両面部近傍位置には、ガラス繊維の芯材を網目状に編組して形成したガラス繊維ネットが設けられていることを特徴とする不燃板。
【請求項5】
所定量の塩化マグネシウムと水とを混合した溶液を所定時間放置し、
該溶液に所定量の酸化マグネシウムを混合して水酸化マグネシウムを発生させ、
該水酸化マグネシウムに所定量の木片と真珠岩の粉末とを混合し、
該木片と真珠岩の粉末とを混合した水酸化マグネシウムをローラ圧延成形して平板を形成すると共に、該平板の両面部近傍位置にガラス繊維ネットを設け、
該平板に所定の乾燥処理を施してから、必要に応じて所要大きさに切断すること
を特徴とする不燃板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−279713(P2008−279713A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127827(P2007−127827)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(507155731)株式会社アート・ユニオン (1)
【Fターム(参考)】