説明

不織布の製造方法

【課題】
本発明は、水系溶媒で除去される成分を除去した繊維から不織布を製造するに際して発生する伸びを抑制し、かつ高分子の添加等のために風合いに劣ることがないような不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】
水系溶媒で除去可能な成分を有する繊維から不織布を製造するに際し、不織布を長さ方向に伸長させることなく、以下に示すA、B及びCの工程を順に行う。
A.下記A1及びA2の工程、又はA3の工程
A1.前記水系溶媒を前記不織布へ付与する工程
A2.前記水系溶媒を付与された不織布を80〜200℃で処理する工程
A3.80〜110℃の水系溶媒へ不織布を浸漬する工程。
B.前記A1工程及びA2、又は工程A3を行った不織布に0.1〜50MPaの液体を噴射して洗浄する工程
C.前記B工程を行った不織布を厚み方向に圧縮する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維からなる不織布の製造方法に関し、特に、皮革様シートに有用な、好ましくは極細繊維からなる不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒により除去される成分(以下、除去成分ということがある)とそうでない成分(以下、残存成分ということがある)とからなる繊維から、残存成分からなる繊維を得て、不織布を製造する場合、具体的には、複合繊維からなる複合繊維不織布から極細繊維不織布を製造する場合、まず複合繊維不織布を製造し、次いで、複合繊維の成分の一部を有機溶剤により除去して極細繊維を発生させ、極細繊維不織布とする方法がある。この際、除去成分が存在していた場所に空隙が生じるため、除去後の不織布は非常に伸びやすい構造となる。そこで、有機溶剤では除去されない水溶性高分子を複合繊維不織布に付与して形態を固定し、次いで成分の一部を除去することにより、極細繊維を発生させる際の長さ方向の伸長を抑制する手段がとられている。この長さ方向の伸長を抑制することにより、得られる不織布のタテ方向とヨコ方向の物性や品位差、伸びによって生じる目付班等を抑制することができる。
【0003】
しかし、近年では、環境保全、作業者の健康への配慮等から、成分の一部を水系溶媒により除去可能とし、有機溶剤を使用せずに極細繊維不織布を製造する方法が積極的に検討されている。この場合、前記のような水溶性高分子を付与しても、極細繊維を発生させる際に使用する水系溶媒で一緒に除去されてしまうため、長さ方向の伸長を抑制することは困難となる。
【0004】
そこで、成分の一部を除去する前に、使用する水系溶媒で脱落しないポリウレタン等の高分子を含浸して形態を固定し、次いで水系溶媒で海成分を除去して、極細繊維を発生させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、最終製品まで形態を固定するために使用した多量のポリウレタンが残留するため、不織布の風合いが硬くなるという問題がある。また、リサイクル性に優れる、実質的に繊維素材からなる極細繊維不織布や皮革様シートを得ることは困難である。さらには、極細繊維を発生させた後、高速流体処理によって極細繊維を相互に絡合させる場合、ポリウレタン等がこれを阻害し、目的の絡合強度を得ることが困難となる。
【0005】
一方、ポリウレタン等に代え、複合繊維の一成分を除去するために使用する水系溶媒では除去されないが、他の水系溶媒で容易に除去できる水溶性高分子を付与する方法が考えられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートと5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートからなる複合繊維から、後者の成分をアルカリ水溶液で除去するに際し、当該アルカリ水溶液では除去されにくいが、熱水で容易に除去可能な高ケン化度ポリビニルアルコールを使用する方法がある(例えば、特許文献2参照)。この場合、風合いやリサイクル性等の問題は解決できる。しかし、当該水溶性高分子を熱水で除去する際には、同様に長さ方向の伸長が発生する問題がある。また、除去に引き続き高速流体処理をする場合、流体として水を使用した場合は、当該水溶性高分子が除去されず、前述したポリウレタンと同様、絡合を阻害する問題がある。
【特許文献1】特開2006−45737号公報
【特許文献2】特開2003−213575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水系溶媒で除去される成分を除去した繊維から不織布を製造するに際して発生する長さ方向の伸長を抑制し、かつ高分子の添加等のために風合いに劣ることがないような不織布の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の構成を有する。
【0008】
すなわち、本発明の極細繊維不織布の製造方法は、水系溶媒で除去可能な成分を有する繊維から不織布を製造するに際し、不織布を長さ方向に伸長させることなく、以下に示すA、B及びCの工程を順に行うことを特徴とするものである。
A.下記A1及びA2工程、又はA3工程
A1.前記水系溶媒を前記不織布へ付与する工程
A2.前記水系溶媒を付与された不織布を80〜200℃で処理する工程
A3.80〜110℃の水系溶媒へ不織布を浸漬する工程。
B.前記A1及びA2工程、又はA3工程を行った不織布に0.1〜50MPaの液体を噴射して洗浄する工程
C.前記B工程を行った不織布を厚み方向に圧縮する工程
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水系溶媒で除去される成分を除去した繊維からなる不織布を製造するに際して発生する長さ方向の伸長を抑制することが可能であり、タテ方向とヨコ方向の物性や品位差、伸びによって生じる目付班等が抑制された不織布の製造方法を提供することが可能である。
【0010】
また、長さ方向の伸長の抑制のために高分子の添加等を行う必要がないために、風合いに劣ることがない不織布の製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、繊維からなる不織布、特に、極細繊維からなる不織布を製造する方法に関し、かかる不織布は皮革様シート、特にその表層の不織布として有用である。かかる不織布を構成する繊維の平均単繊維繊度としては、0.0001〜0.5デシテックスが好ましい。平均単繊維繊度が0.0001デシテックス以上であると、不織布の強度が向上し、より長さ方向の伸長を抑制できる点で好ましい。また、平均単繊維繊度が0.5デシテックス以下であると、長さ方向に伸長しやすい点で本発明の効果を発揮できる対象となることから、好ましい。なお、平均単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスである場合でも、本発明の効果が損なわれない範囲で、平均単繊維繊度が0.0001デシテックス未満の繊維もしくは平均単繊維繊度が0.5デシテックスを越える繊維が含まれていてもよい。平均単繊維繊度が0.0001デシテックス未満の繊維及び平均単繊維繊度が0.5デシテックスを越える繊維の含有量は、数にして、当該不織布繊維の30%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、全く含まれないことがもっとも好ましい。
【0012】
本発明でいう平均単繊維繊度は、繊維断面を100個無作為に選んで断面積を測定した後、100個の繊維断面積の数平均を求め、繊維の比重から繊度を計算により求めた値を用いる。なお、繊維の比重は、JIS L 1015 8.14.2(1999)に従って求めた値を用いる。
【0013】
これらの繊維は、水系溶媒で除去可能な成分のみからなる繊維を減量することによって製造することも可能であるが、例えば、除去成分と、そうでない成分(以下、残存成分ということがある)とで構成する複合繊維から、水系溶媒で除去成分を除去して製造することも可能であり、好ましい態様である。残存成分である、水系溶媒で除去されない(又は、除去されにくい)成分としては、除去成分にもよるが、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるポリマーが好ましく用いられる。なお、ここでいう残存成分とは、複合繊維であれば、これを水系溶媒で処理した場合に、除去成分の除去によって、残存成分が繊維として残存できるものをいう。
【0014】
ポリエステルとしては、繊維化が可能なものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリ乳酸等が挙げられる。中でも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレート又は主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体が好適に使用される。
【0015】
また、ポリアミドとしては、たとえばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、等のアミド結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0016】
本発明は、特に極細繊維からなる不織布を製造する方法として有用である。極細繊維からなる不織布はより長さ方向に伸長しやすく、本発明の効果をより発揮できるためである。かかる極細繊維について説明すると、海島型繊維、分割型繊維等を紡糸して複合繊維を形成し、ついで少なくとも1成分を水系溶媒で除去し、除去されにくい成分を極細繊維とし形成することにより製造することができる。ここで、剥離分割によって工程通過性が低下する問題を回避できる点で、海島型繊維によって製造することがより好ましい。また、海島型繊維から極細繊維を製造する場合、極細繊維間にも空隙が生じ、より長さ方向の伸長が生じやすい傾向があることから、本発明を適用するに好ましい態様である。
【0017】
一方で、除去成分として用いるポリマーは、残存成分を構成するポリマーに比べ、80℃以上の熱水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液などの水系溶媒に対し溶解性、分解性の高い化学的性質を有するものとする。例えば、特開昭61-29120号公報、特開昭63−165516号公報、特開昭63−159520号公報、特開平1−272820号公報などに記載されている熱水可溶性ポリエステルなどの熱水可溶性ポリマーや5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸などを共重合したポリエステル、ポリ乳酸、熱水溶性ポリビニルアルコールなどを用いることができるが、紡糸性に優れる点で5−ナトリウムスルホイソフタル酸を有する共重合ポリエステルが好ましい。5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合比率としては、処理速度、安定性の点から全酸性分に対し5モル%以上が好ましく、より好ましくは8モル%以上である。5モル%以上とすることで、例えば、残存成分としてポリエチレンテレフタレートを選択した場合、アルカリ水溶液による加水分解を行ったときの除去成分と残存成分との分解速度差により、選択的に除去成分を分解することができる。また重合、紡糸、延伸のしやすさから20モル%以下が好ましく、より好ましくは15モル%以下である。また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸に加え、イソフタル酸を共重合させ、共重合ポリエステルを熱水可溶性とすることも好ましい態様である。例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8〜15モル%、好ましくは10〜12.5モル%とし、さらに、イソフタル酸を共重合することで、熱水可溶性とすることができ、イソフタル酸を5〜40%共重合させると、重合反応速度や乾燥性、熱水可溶性に優れるものが得られるため好ましい。本発明において好ましい組み合わせとしては、残存成分にポリエチレンテレフタレート、除去成分に5-ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合比が5〜20%の共重合ポリエステルを用いることである。
【0018】
なお、上記、除去成分、残存成分を構成するポリマーには、隠蔽性を向上させるためにポリマー中に酸化チタン粒子などの無機粒子を添加してもよいし、その他、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱材、抗菌剤など、種々目的に応じて添加することもできる。
【0019】
除去成分の繊維全体に対する重量比は、繊維が複合繊維の場合、複合繊維に対し除去成分が1〜70重量%であることが好ましい。3重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。1重量%以上とすることで、極細繊維となる残存成分同士の合流を防止し、紡糸安定性が向上する。また、60重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。70重量%以下とすることで、除去成分の使用量を抑えることになるためコスト的に好ましい。また35重量%以下とすると、長さ方向の伸長が抑制できる点で好ましい。
【0020】
さらに繊維の紡糸方法に関して述べると、通常2500m/分以下の紡糸速度で紡糸した未延伸糸を引き取った後、湿熱もしくは乾熱又はその両者の状態にて、1〜3段延伸することによって延伸糸を得て製造することが出来る。液浴延伸により繊維同士の膠着が発生する場合は、例えば多段延伸法を採用することができる。
【0021】
水系溶媒で除去可能な成分を有する繊維の単繊維繊度の範囲について述べると、1〜10デシテックスとすることが好ましい。上限は、より好ましくは8デシテックス以下、さらに好ましくは6デシテックス以下である。また、下限は、より好ましくは2デシテックス以上である。単繊維繊度を前記範囲とすることにより、例えば、水系溶媒で少なくとも1成分を除去する前に、ニードルパンチを行って絡合を十分なものとし、長さ方向の伸長をより抑制することができる。
【0022】
本発明でいう不織布は、長繊維不織布であっても、短繊維不織布であっても良いが、長さ方向の伸長がしやすい短繊維不織布の方が、より本発明の効果を発揮する点で好ましい対象である。具体的には、生産性や風合いを考慮して10cm以下、好ましくは7cm以下の短繊維を含む不織布である。また、繊維長の下限値としては、0.1cm以上とすることが、長さ方向の伸長を抑制できる点で好ましい。
【0023】
さらに、水系溶媒で除去成分を除去するに先立って、ニードルパンチを行うことが、より長さ方向の伸長を抑止できる点で好ましい。この場合、ニードルパンチ後の繊維見掛け密度としては、下限が好ましくは0.120g/cm以上であり、より好ましくは0.150g/cm以上であり、そしてその上限が、好ましくは0.300g/cm以下であり、より好ましくは0.250g/cm以下である。0.120g/cm以上とすることで、絡合を十分なものとし、長さ方向の伸長を抑制することができる。また0.300g/cm以下とすることで、ニードル針の折れや針穴の残留などを防ぐことができる。
【0024】
また、さらに乾熱もしくは湿熱又はその両者によって収縮させて高密度化することが、より長さ方向の伸長を抑制できる点で好ましい。
【0025】
ここで、水系溶媒で除去可能な成分を有する繊維からなる不織布自体も長さ方向の伸長が抑制されていることが好ましく、縦方向の10%伸長時の応力を5〜100N/cmとすることが好ましい。5N/cm以上であると、長さ方向の伸長を抑制することが容易となる点で好ましい。また、100N/cm以下であると、取扱いが容易となり工程通過性が向上するため好ましい。これは、上述のようにニードルパンチを行ったり、繊維の一部を熱融着させたり、水溶性高分子等によって仮固定することによって得ることができる。
【0026】
なお、10%伸長時の応力は、JIS L 1913(1998)6.3.1に準じて、タテ方向に10%伸長した際の荷重を測定し(つかみ間隔は20cmである)、1cmあたりの値として用いる。
【0027】
水系溶媒で除去可能な成分を有する繊維から、除去成分を除去する手段としては、例えば液流染色機やジッガー染色機等を用いて行う方法も考えられるが、長さ方向の伸長やシワ、素抜けが発生する問題があり、本発明で得られる効果が得られない。一方、本発明の方法においては、これらの問題を回避することが可能である。
【0028】
本発明は、水系溶媒を、かかる水系溶媒によって除去可能な成分を有する繊維からなる不織布へ付与して処理する工程(以下、A工程という)を必須とする。A工程を行う方法として、本発明には2通りの方法がある。1つは、水系溶媒を不織布へ付与する工程(A1工程)、と、A1工程によって水系溶媒を付与された不織布を80〜200℃で処理する工程(A2工程)を行う方法であり、もう1つの方法は、80〜110℃の水系溶媒へ不織布を浸漬する工程(A3工程)である。いずれの方法を採る場合においても、A工程において、不織布を長さ方向に伸長させないことが重要である。長さ方向に伸長させないとは、工程前後で長さ方向の伸びが10%以下であることをいい、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下であることをいう。例えば、A1工程においては、水系溶媒を付与する前の不織布と、水系溶媒を付与した後の不織布の伸びが10%以下であることをいう。
【0029】
A1工程において、水系溶媒を付与する手段は特に限定されず、例えば、パッド法やスプレー法等が挙げられる。水系溶媒とは、水又は水溶解性の物質が溶解された水溶液をいい、例えば熱水可溶性やアルカリ易分解性の金属スルホネート基を有する共重合ポリエステルを1成分とする複合繊維の場合、熱水やアルカリ水溶液等が挙げられる。
【0030】
次いで、本発明の第1の方法では、上記A1工程において水系溶媒を付与された不織布を80〜200℃で処理する工程(以下、A2工程という)を経る。A1工程で水系溶媒が付与された不織布の除去成分は、A2工程によって、より短時間で分解、溶解等され除去することが可能となる。例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8モル%共重合したポリエステルを除去成分とし、水系溶媒としてアルカリ水溶液をA1工程で付与した場合、そのままでは除去成分の加水分解に長時間を要するが、A2工程によって時間を短縮することが可能となる。ここで、温度が80℃以上であると、時間短縮の効果がより期待できるため好ましい。また、200℃以下であると、繊維の染色性低下を抑制できる点で好ましい。
【0031】
本発明においては、後述するように、例えばコンベア等の支持体に載せる等の手段によって、不織布を長さ方向に伸長させることなく、極力張力がかからないように搬送するものであるが、処理時間が長い程搬送工程が長くなり、不織布に張力がかかる懸念がある。しかしながら、A2工程によってこの加水分解を短時間で行うことによって、長さ方向の伸長の原因となる張力を抑制でき、結果として長さ方向の伸長を抑制する効果が期待できる。
【0032】
A2工程を行う際にも、不織布を長さ方向に伸長させないことが重要である。本発明では、長さ方向に伸長させない好ましい手段として、上述したA1工程、A2工程、B工程及びC工程の少なくともいずれか1の工程で、不織布を支持体上に載せて行うことが好ましい。特に、除去成分の除去が促進されるA2工程においては、除去成分の除去により生じた空隙の増加、及び、繊維の細径化によって長さ方向に伸長しやすくなるため、当該手段がより好ましい。これにより、縦方向の張力が低減され、長さ方向の伸長を抑制することができる。ここで、拡布状とは、不織布を幅方向に広げて行うことのみならず、縦方向にも折りたたむことなく、広げた状態であることを意味する。通常の織物であれば、折りたたむことにより効率化を図るのが一般的であるが、不織布の場合、均一に折りたたむことが困難であると共に、おりたたみ皺が残存して品位を低下させるため好ましくない。
【0033】
コンベアとしては、ネットコンベアやラチスコンベアがあるが、ネットコンベアが好ましく用いられ、ネットコンベアとしては、網状の金属又は合成繊維等で構成する通水性を有するものが好ましく用いられる。
【0034】
また、A2工程においては、スチーム存在下で行うことが、均一な処理の点で好ましい。スチームを吹き込むことで80〜105℃、好ましくは102〜105℃とするか、又は、加熱ヒーターによって、スチームを吹き込みながら200℃まで加熱して処理することができる。スチームを存在させることにより、水系溶媒のマイグレーションを抑制しつつ、加熱することができ、均一な処理が可能となる。
【0035】
さらに、A2工程において、少なくとも1回以上、不織布の表裏を反転させることにより、厚みのある不織布において、表裏の処理ムラを抑制できる点で好ましい。反転回数は2回以上であることがより好ましく、3回以上がさらに好ましい。表裏を反転させる手段としては、例えば、コンベアを上下に多段に配し、上段と下段のコンベアの進行方向を逆転させ、上段から下段へ不織布を降下させる際に、表裏を反転させる方法等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の別の態様であるA3工程について、A1工程及びA2工程で行う場合と比較して製造コストが高くなる傾向にあるが、均一な処理が可能であり、特に高密度不織布を熱処理した際に生じる処理ムラを抑制することが可能である。例えば、吊練方式等で処理することもできる。80℃以上であると、短時間で除去が可能となる点で好ましい。また110℃以下であると、染色性低下を抑制できる点で好ましい。なお、A3工程は拡布状で行うことが、皺を抑制する点で好ましい。また、長さ方向に伸長させずに行うことが好ましく、例えば、不織布を吊り下げた状態で水系溶媒中を移動させる手段等で行うことで達成することができる。
【0037】
次いで、本発明は、0.1〜50MPaの液体を噴射して洗浄する工程(以下、B工程という)を経る。この工程で、先のA工程で分解、溶解等した除去成分を、液体により除去する。液体としては、水を用いることが、不織布の変質がなく、好ましいため、以下、水を用いるものとして述べる。また、B工程においても、先のA2工程同様、非常に長さ方向に伸長しやすい構造となっているため、この工程においても、不織布を長さ方向に伸長させないことが重要である。具体的には、コンベア等の支持体上に不織布を拡布状に載せ、搬送しつつ行うことが好ましい。通常、洗浄方法としては、バイブロ水洗機やオープンソーパー等が用いられるが、長さ方向に伸長しやすいことから高度の張力管理が必要であり、その制御や再現性を得ることが困難となる。一方、本発明においては、水を噴射して洗浄することにより、容易に再現性よく長さ方向の伸長を抑制することができる。水は、ノズルやスリット等から0.1MPa以上の噴射圧力で噴射することにより、不織布に浸透すると共に、繊維同士の絡合も促進して長さ方向の伸長を抑制する効果がある。水の噴射時の圧力は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることがより好ましい。一方、水の噴射圧力の上限は50MPaである。圧力が高い程、洗浄効果と絡合効果が期待できるが、50MPaを超えると繊維の損傷により強力が低下するとともに、コストも大幅に増加する。好ましくは40MPa以下である。なお、本工程で、極細繊維同士を絡合させる高速流体処理を兼ねることが可能である。しかし、当該高速流体処理は後述するように、10MPa以上が好ましいが、一般的に、洗浄に比べて、高圧力で行う処理であり、除去成分やアルカリ水溶液等の水系溶媒が残存している不織布に10MPa以上の高圧力の水を噴射するとこれらの液体が飛散しやすくなり、作業環境を悪化させる恐れがある。よって、B工程は10MPa以下で行い、洗浄を十分に行ってから、再度、絡合のために高速流体処理を行うことが好ましい。高速流体処理における他の好ましい詳細な条件については、後述する。
【0038】
なお、B2工程において、不織布に織物を積層して水の噴射圧力等を利用して積層一体化させることは、その後の長さ方向の伸長を抑制することができる点で好ましい。この場合、不織布と織物の剥離を防止するため、噴射圧力は5MPa以上が好ましく、8MPa以上がより好ましい。織物としては、通水性があるものであれば特に限定されないが、例えばJIS L 1096 8.27.1(1999)A法(フラジール形)によって測定される通気量が60〜500cc/cm/secのものが好ましく適用できる。
【0039】
また、水を噴射すると、水はある程度不織布の反対面へ突き抜けるが、不織布が高密度の場合、表面で反射されるため、洗浄効果が低下する。特に、複数回噴射して処理する場合、最初の処理によって不織布に水が多量に含まれることがあるため、その傾向が強くなる。そこで、水を噴射した後に、噴射面と反対面からサクション等で減圧脱水するF工程を行うことが好ましい。複数回水を噴射する場合は、その都度、又は複数回の噴射の後に減圧脱水することが好ましい。
【0040】
次いで、本発明では、B工程を行った後の不織布について、厚み方向に圧縮する工程(以下、C工程という)を経る。不織布に含まれた水系溶媒や除去成分を除去するには、例えば延伸脱水機やテンター乾燥機があるが、皺や長さ方向の伸長が発生しやすい点で好ましくない。一方、厚み方向に圧縮して行うことは、長さ方向の伸びを抑制することが容易である点で有効な手段である。C工程においても、不織布は特に伸びやすい状態であるため、この際も、不織布を長さ方向に伸長させないことが重要である。具体的には、コンベア等の支持体上に不織布を拡布状に載せ、搬送しつつ行うことが、長さ方向の伸長を抑制できる点で好ましい。本発明では、特にA2工程、B工程、C工程の全てにおいて、不織布を拡布状にして支持体上に載せて行うことが、伸びを抑制することが容易になる点で好ましい。この操作によって、上記のB工程によって水が含まれた不織布から、効率的に水を除去することができる。上述のように、減圧脱水でも水を除去することは可能であるが、圧縮によりさらに除去する方法は、洗浄効果やコストに優れる点で好ましい。圧縮と減圧脱水を組み合わせることより、洗浄効果は向上する。
【0041】
圧縮する際には、通常のマングルを使用することができ、コンベア上に不織布を載せたまま、コンベアと不織布を上下から圧縮することによっても、本目的を達成することができる。
【0042】
水の噴射(B工程)と厚み方向の圧縮(C工程)は、それぞれ少なくとも1回以上行うことを必須とするが、不織布の目付、密度等が増加した場合、洗浄効果は低下するため、2回以上行うことが好ましく、3回以上行うことがより好ましい。この場合、水の噴射と厚み方向の圧縮は、それぞれ交互で行うことが好ましいが、水の噴射を複数回行った後、厚み方向の圧縮を行っても良い。
【0043】
このようにして得られた不織布は、除去成分が除去されたことにより生じた空隙の存在により繊維が動きやすく、一旦巻き取る場合は型崩れしやすくなる。特に極細繊維の場合、その傾向が強い。そのため、洗浄を終えた後は、水溶性高分子を付与する工程(E工程)を行うことによって、形態を仮固定することが巻取りや保存、取り扱い性等が容易となる点で好ましい。仮固定された後でも、水溶性高分子であれば容易に除去することができる。また、後述のように、引き続き高速流体処理を行う場合には、水溶性高分子は当該処理によって除去されるものを選択することが好ましい。水溶性高分子としては、水で容易に除去できることが好ましく、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等を使用することができる。
【0044】
このようにして得られた不織布は、次いで、高速流体処理を行う工程(D工程)によって繊維同士を絡合させることが好ましい。特に、極細繊維不織布は長さ方向に伸長しやすい傾向があるが、極細繊維同士を絡合させることによって、これを抑制することができる。また、D工程において織編物を積層し、長さ方向の伸長を一層抑制することもできる。高速流体処理によって、高い物性と緻密な表面を有する極細繊維不織布とすることができる。従来技術のように、長さ方向の伸長を抑制するためにポリウレタン等の高分子弾性体による補強をした場合、高速流体処理で期待する絡合効果を得ることは困難となるが、本願発明の方法であれば、高分子弾性体による補強が必要ないため、期待する絡合を得ることが可能となる。この点で、本願発明は、高速流体処理を必要とする極細繊維不織布を製造する場合において、特に効果を奏する。
【0045】
高速流体処理としては、作業環境の点で、水流を使用するウォータージェットパンチ処理が好ましい。ウォータージェットパンチ処理においては、水を柱状流の状態として行うことが好ましい。柱状流状態は、通常、直径0.06〜1.0mmのノズルから噴射圧力1〜60MPaで水を噴出させることで得られる。ここで、効率的な絡合及び良好な表面品位の不織布を得るために、ノズルの直径は0.06〜0.15mm、間隔は5mm以下であることが好ましく、直径0.08〜0.14mm、間隔は1mm以下がより好ましい。ノズルの直径が0.15mmを超えると不織布の表面平滑性も低下するため好ましくない。ノズル直径は小さい方が好ましいが、0.06mm未満となるとノズル詰まりが発生しやすくなるため、水を高度に濾過する必要が生じ、製造コストが高くなり好ましくない。また、ノズル間隔が5mmを超えると、不織布に発生する筋が目立ちやすくなるため好ましくない。なお、厚さ方向に均一な交絡を達成する目的又は不織布表面の平滑性を向上させる目的で、高速流体処理を複数回繰り返して行うことが好ましい。
【0046】
流体の圧力は、処理する不織布の目付によって適宜決定すればよいが、高目付のものほど高圧力とすることが好ましい。さらに、極細繊維同士を高度に絡合させ、目的の引張強力、引裂強力、耐摩耗性等の物性を得るため、少なくとも1回は10MPa以上の圧力で処理することが好ましい。圧力は、15MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることがさらに好ましい。また圧力が上昇するほどコストが高くなり、低目付不織布の場合は不織布が不均一になりやすく、繊維の切断により毛羽が発生する場合もあるため、好ましくは60MPa以下であり、より好ましくは50MPa以下である。
【0047】
なお、ここでいう1回の処理とは、複数のノズル孔を有するノズルプレートを含む1ノズルヘッド(1インジェクター)で1回処理することを意味する。連続的に複数のノズルヘッドで処理した場合は、その複数ノズルヘッド数の回数を処理したものとする。
【0048】
このようにして得られた不織布は、好適には皮革様シートとして用いることができる。皮革様シートとする場合には、適宜、染色、起毛、高分子弾性体や柔軟剤、各種堅牢度向上剤等の付与、等を行うことが好ましい。本発明の製造方法によれば、特に、高分子弾性体を付与することなく、長さ方向の伸長を抑制することが可能であり、実質的に繊維素材からなる皮革様シートを製造する場合に、好適に使用することができる。
【0049】
ここで、実質的に繊維素材からなるとは、実質的に高分子弾性体を含まないことを言う。また、ここでいう実質的に高分子弾性体を含まないとは、本発明の効果を損なわない範囲の高分子弾性体が含まれていることを許容する。具体的には、皮革様シートに含まれる高分子弾性体が5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、全く高分子弾性体を含まないことが最も好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。ここで、部は重量部を意味する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
【0051】
(1)繊維目付、繊維見掛け密度
繊維目付はJIS L 1096 8.4.2(1999)に記載された方法で測定した。また、厚みはダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)を用い、各サンプル10点測定した平均値とし、目付の値を厚みの値で割って繊維見掛け密度を求めた。
【0052】
(2)10%伸長時応力
JIS L 1913(1998)6.3.1に準じて、タテ方向に10%伸長した際の荷重を測定した(つかみ間隔は20cmである)。得られた測定値と測定に使用した試料の幅と厚みから、以下の式により求めた。
【0053】
10%伸長時応力(N/cm)=10%伸長した際の荷重(N)/試料幅(cm)
(3)長さ方向の伸び
複合繊維不織布の全長をL0とし、海成分溶出後シート状物の全長をL1として、以下の式により求めた。なお、全長は幅中央位置について、長さ方向に5点測定した値の平均値を用いた。
【0054】
伸び(%)=(L1−L0)/L0×100
[実施例1]
海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成分に対し8モル%含む共重合ポリエステル30部、島成分としてポリエチレンテレフタレート70部からなる平均単繊維繊度2.3デシテックス、36島、平均繊維長51mmの海島型複合短繊維を、カード機及びクロスラッパーに通して目付が280g/mの短繊維ウェブを作製した。得られた短繊維ウェブを1バーブ型のニードルパンチ機を用いて、1500本/cmの打ち込み密度でニードルパンチ処理し、目付が300g/m、厚み1.3mm、繊維見掛け密度0.230g/cmとした。次に、これを98℃の熱水に2分間浸積した後、100℃にて乾燥して水分を除去し、複合繊維不織布を得た。この複合繊維不織布の長さ方向の10%伸長時の応力を測定したところ、10N/cmであった。
【0055】
この複合繊維不織布を、水酸化ナトリウムを150g/L、界面活性剤を15g/L含むアルカリ水溶液を用いてパディングし(A1工程)、ネットコンベアの上に拡布状に載せて搬送し、スチームを吹き込んで102℃としたボックス内で5分間、加熱処理した(A2工程)。この時、30秒ごとに不織布の表と裏を反転させた。
【0056】
次に、洗浄のため別のネットコンベアに移した後、ネットコンベア上で0.1mmの直径のノズルが0.7mm間隔で配置されたノズルプレートが挿入されたノズルヘッドを有する水洗機にて1MPaの圧力で水を噴射し(B工程)、マングルで絞る操作を6回繰り返した(C工程)。
【0057】
この際の長さ方向の伸びは8%であった。また、このようにして得られた極細繊維不織布の平均単繊維繊度は0.04デシテックスであり、未脱海部分はほとんど確認できなかった。
[実施例2]
実施例1で得られた極細繊維不織布に、ネットコンベア上でポリビニルアルコール水溶液をスプレーした後(E工程)、ネットコンベア上で搬送しながら100℃で乾燥して一旦巻き取った。
【0058】
次に、上記操作によって得られた不織布を、ネットコンベア上で、0.1mmの直径で、0.6mm間隔のノズルプレートが挿入されたノズルヘッドを有するウォータージェットパンチ機にて、17MPaの圧力で3回処理し、ついで裏側から同様に3回処理した(D工程)。この時、先に付与したポリビニルアルコールは脱落していた。
【0059】
ついで、株式会社菊川鉄工所製のワイドベルトサンダを用い、粒度が#320の炭化ケイ素砥粒のサンドペーパーにてバフィングした後、液流染色機にて染色し、実質的に繊維素材からなる皮革様シートを得た。得られた皮革様シートは、目付班による外観不良の問題は発生せず、良好な品位を有していた。
[実施例3]
実施例1と同様にして得られた、乾燥後、アルカリ水溶液中に浸漬する前の複合繊維不織布を、水酸化ナトリウムを150g/L、界面活性剤を15g/L含むアルカリ水溶液を用いてパディングし(A1工程)、ネットコンベアの上に拡布状に載せて搬送し、スチームを吹き込んで102℃としたボックス内で5分間、加熱処理した(A2工程)。この時、30秒ごとに表と裏を反転させた。
【0060】
次に、洗浄のため別のネットコンベアに移した後、ネットコンベア上で実施例1と同じ水洗機にて1MPaの圧力で水を噴射し(B工程)、反対側から不織布を通さない状態で9kPaとなる圧力で減圧脱水し(F工程)、次に5MPaの圧力で水を吹き付け(B工程)、反対側から不織布を通さない状態で9kPaとなる圧力で減圧脱水し(F工程)、さらに1MPaの圧力で水を噴射して(B工程)マングルで絞る操作を2回繰り返した(C工程)。
【0061】
この際の長さ方向の伸びは7%であった。また、極細繊維不織布の平均単繊維繊度は0.04デシテックスであり、未脱海部分はほとんど確認できなかった。
【0062】
[実施例4]
実施例1と同様にして得られた、乾燥後、アルカリ水溶液中に浸漬する前の複合繊維不織布を5g/Lのアルカリ水溶液にほぼ無張力の状態で浸漬させ、100℃で10分処理した(A3工程)。
【0063】
次に、洗浄のため別のネットコンベアに移した後、ネットコンベア上で実施例1と同じ水洗機にて1MPaの圧力で水を吹き付け(B工程)、マングルで絞る操作を6回繰り返した(C工程)。
【0064】
この際の長さ方向の伸びは10%であった。また、極細繊維不織布の平均単繊維繊度は0.04デシテックスであり、未脱海部分は確認できなかった。
【0065】
[実施例5]
実施例3において、最初に水を噴射する際(B工程)の水の噴射圧力を1MPaから8MPaに変更し、噴射する面と反対の不織布面に、56デシテックス12フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維からなる平織物を積層した以外は、実施例3と同様に処理した。
【0066】
この際の長さ方向の伸びは5%であった。また、極細繊維不織布の平均単繊維繊度は0.04デシテックスであり、未脱海部分は確認できなかった。
[比較例1]
実施例1と同様にして得られた、乾燥後、アルカリ水溶液中に浸漬する前の複合繊維不織布を、パッド−スチーム型のロール方式連続減量機を用い、水酸化ナトリウムを150g/L、界面活性剤を15g/L含むアルカリ水溶液を用いてパディングし(A1工程)、不織布をローラーの半数を駆動させて搬送し、スチームを吹き込んで102℃としたボックス内で5分間加熱処理した(A2工程)。次いで、水槽及びマングルを有する洗浄機で水洗した。水槽及びマングルを有する洗浄機で水洗した。
【0067】
この際の長さ方向の伸びは45%であった。また、極細繊維不織布の平均単繊維繊度は0.04デシテックスであり、未脱海部分はほとんど確認できなかった。
【0068】
[比較例2]
比較例1で得られた極細繊維不織布を、株式会社菊川鉄工所製のワイドベルトサンダを用い、粒度が#320の炭化ケイ素砥粒のサンドペーパーにてバフィングした。
【0069】
次いで、液流染色機にて染色し、実質的に繊維素材からなる皮革様シートを得た。得られた皮革様シートは、目付班により、立毛の長さや方向がムラとなって外観不良を起こし、品位に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系溶媒で除去可能な成分を有する繊維から不織布を製造するに際し、不織布を長さ方向に伸長させることなく、以下に示すA、B及びCの工程を順に行うことを特徴とする不織布の製造方法。
A.下記A1及びA2工程、又はA3工程
A1.前記水系溶媒を前記不織布へ付与する工程
A2.前記水系溶媒を付与された不織布を80〜200℃で処理する工程
A3.80〜110℃の水系溶媒へ不織布を浸漬する工程。
B.前記A1及びA2工程、又はA3工程を行った不織布に0.1〜50MPaの液体を噴射して洗浄する工程
C.前記B工程を行った不織布を厚み方向に圧縮する工程
【請求項2】
平均単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスである不織布を製造することを特徴とする請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記A1、A2、B及びC工程の少なくともいずれか1の工程において、不織布を拡布状にして支持体上に載せることを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記A工程において前記A1及びA2工程を行う場合であって、前記A2、B及びCの全ての工程において、不織布を拡布状にして支持体上に載せて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記B工程において不織布に織物を積層一体化することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記A工程において前記A1及びA2工程を行う場合であって、前記A1工程を行う前の不織布の縦方向の10%伸長時の応力が5〜100N/cmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記C工程を行った後、さらに以下の工程を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の不織布の製造方法。
D.高速流体処理を行う工程
【請求項8】
前記A工程において前記A1及びA2工程を行う場合であって、前記A2工程をスチーム存在下で行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
前記A工程において前記A1及びA2工程を行う場合であって、前記A2工程において不織布の表裏を1回以上反転させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項10】
前記C工程を行った後、かつ、前記D工程を行う場合は、D工程を行う前に、以下の工程を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の不織布の製造方法。
E.水溶性高分子を付与する工程。
【請求項11】
前記B及びC工程をそれぞれ2回以上行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項12】
前記B工程の後に、以下の工程を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の不織布の製造方法。
F.噴射する面と反対の面から減圧脱水を行う工程。
【請求項13】
前記水系溶媒で除去可能な成分が5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエステルであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項14】
前記不織布が、皮革様シートであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【請求項15】
前記皮革様シートが実質的に繊維素材からなることを特徴とする請求項14に記載の不織布の製造方法。

【公開番号】特開2009−74203(P2009−74203A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244857(P2007−244857)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】