不織布帛の特性を変える方法
【課題】製品に使用される要素や材料の数を減らしつつ、製品の様々な領域に異なる特性を付与する。
【解決手段】熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法。この方法は、前記不織布帛の少なくとも一方の面の近傍に遮断素子を配置する工程であって、前記遮断素子が、前記不織布帛の第1の領域には存在せず、前記遮断素子が、前記不織布帛の第2の領域に接触している工程と、前記不織布帛および前記遮断素子を加熱して、前記第1の領域のフィラメントを融着する工程とを含む。
【解決手段】熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法。この方法は、前記不織布帛の少なくとも一方の面の近傍に遮断素子を配置する工程であって、前記遮断素子が、前記不織布帛の第1の領域には存在せず、前記遮断素子が、前記不織布帛の第2の領域に接触している工程と、前記不織布帛および前記遮断素子を加熱して、前記第1の領域のフィラメントを融着する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な製品が、少なくとも部分的に布帛から形成されている。例として、衣料品(例えば、シャツ、ズボン、靴下、ジャケット、下着、履物)や、入れ物(例えば、バックパック、バッグ)、家具の張り物(例えば、椅子、ソファ、車の座席)は、大抵の場合、様々な布帛要素が縫合や接着により結合されて形成される。布帛は、ベッドカバー(例えば、シーツ、毛布)や、テーブルカバー、タオル、旗、テント、帆、パラシュートに利用することもできる。産業目的に利用されている布帛は、一般的に工業布帛と呼ばれ、自動車や航空宇宙の用途のための構造や、フィルター材料、医療用布帛(例えば、包帯、綿棒、インプラント)、盛土補強のための地質用布帛、作物保護のための農業用布帛、熱や放射線からの保護や防護のための工業用衣料品が含まれる。したがって、布帛は、個人用目的にも工業用目的にも様々な製品に組み込むことができる。
【0003】
布帛は、ファイバ、フィラメントまたは糸から製造され、略2次元構造を有する(すなわち、長さおよび幅が、厚さよりも実質的に大きい)製品であると定義することができる。一般的に、布帛は、機械操作による布帛または不織布帛として分類することができる。機械操作による布帛は、通常、織機または編機を含む機械工程により、単糸または複数糸を織成またはインターループ(例えば、編成)することによって形成される。不織布帛は、接着、融着、連結または結合されたフィラメントのウェブまたはマットである。一例として、不織布帛は、移動中のコンベアなどの表面上に複数のポリマーフィラメントをランダムに堆積させることによって形成することができる。様々なエンボス加工やカレンダ加工を利用して、不織布帛を略均一厚にしたり、不織布帛の片面または両面にテクスチャを付与したり、不織布帛内でフィラメント同士を更に接着または融着したりすることもできる。スパンボンド不織布帛は、10〜100ミクロンの断面厚を有するフィラメントから形成される一方、メルトブロー不織布帛は、10ミクロン未満の断面厚を有するフィラメントから形成される。
【0004】
製品の中には1種類の布帛から形成されているものもあるが、様々な領域に異なる特性を付与するために、2種類以上の布帛から形成されている製品も数多くある。一例として、シャツの肩領域および肘領域を、耐久性(例えば、耐摩耗性)や耐伸張性を付与する布帛から形成し、その他の領域を、通気性や快適性、伸縮性、吸湿性を付与する布帛から形成することもできる。別の例として、履物の甲部が、様々な種類の布帛およびその他の材料(例えば、ポリマー発泡体、皮革、合成皮革)から形成された多数の層を含む構造を有していてもよく、これらの層の一部は、異なる特性を付与するために異なる種類の布帛から形成された領域を含んでいてもよい。更に別の例として、バックパックのストラップが、非伸縮性の布帛要素から形成され、バックパックの下部領域が、耐久性および耐水性のある布帛要素から形成され、バックパックのその他の部分が、快適かつ柔軟な(compliant)布帛要素から形成されていてもよい。したがって、製品の様々な部位に異なる特性を付与するために、様々な種類の布帛を組み込んだ製品が数多くある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,086,179号明細書
【特許文献2】米国特許第7,000,335号明細書
【特許文献3】米国特許第7,386,946号明細書
【特許文献4】米国特許第7,131,218号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0271821号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製品の様々な領域に異なる特性を付与するために、複数の材料から形成された布帛要素を所望の形状に裁断して、通常、縫合や接着によって結合しなければならない。製品に組み込む布帛要素の数および種類が増加すると、布帛要素の輸送や貯蔵、裁断、結合に関わる時間および費用も増加する。製品に組み込む布帛要素の数および種類が増加すると、裁断や縫合工程による廃棄材料も、より多く蓄積される。さらに、布帛要素およびその他の材料を多数含む製品は、少数の要素と材料とで形成された製品よりもリサイクルが難しい。したがって、製品に使用される要素や材料の数を減らすことによって、生産効率およびリサイクル性を向上しつつ、廃棄物を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法は、前記不織布帛の少なくとも一方の面の近傍に遮断素子を配置する工程であって、前記遮断素子が、前記不織布帛の第1の領域には存在せず、前記遮断素子が、前記不織布帛の第2の領域に接触している工程と、前記不織布帛および前記遮断素子を加熱して、前記第1の領域のフィラメントを融着する工程とを含む。
【0008】
前記加熱工程は、プレスのプラテンの間に、前記不織布帛および前記遮断素子を配置する工程を含んでもよい。
前記加熱工程は、前記不織布帛および前記遮断素子を圧縮する工程を含んでもよい。
前記加熱工程は、前記第1領域の前記フィラメントを溶融して、非繊維状構造を形成する工程を含んでもよい。
【0009】
この方法は、前記第1の領域および前記第2の領域のうちの一方の形状を、印の形状となるように選択する工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記不織布帛を衣料品に組み込む工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記不織布帛を履物の甲部に組み込む工程をさらに含んでもよい。
不織布帛、および不織布帛を組み込んだ製品を、以下に開示する。不織布帛は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成された複数のフィラメントから形成することができる。ある不織布帛の構成において、前記フィラメントまたは熱可塑性ポリマー材料は、弾性材であってもよく、あるいは、その引張破断前伸度が、少なくとも100%であってもよい。
【0010】
不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有し、第1の領域のフィラメントは、第2の領域のフィラメントよりも高融着度で融着されていてもよい。第1の領域における融着度に応じて、フィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、繊維状のままであってもよいし、非繊維状となっていてもよいし、繊維状と非繊維状とが部分的に存在する中間形状であってもよい。第1の領域内での融着により、透過性、耐久性、耐伸張性などの特性を変えることができる。
【0011】
不織布帛は、衣料品(例えば、シャツ、ズボン、履物)など、様々な製品に組み込むことができる。これらの製品の中には、不織布帛が、他の布帛要素または部材と結合して、継ぎ目を形成するものもある。具体的には、不織布帛の端縁領域が、この継ぎ目において他の布帛要素または部材の端縁領域に熱融着されていてもよい。また、他の製品において、不織布帛の表面が、他の布帛要素または部材(例えば、ポリマーシート、ポリマー発泡体層または様々な紐体)と結合し、複合要素を形成するものであってもよい。
【0012】
不織布帛は、熱可塑性ポリウレタン材料を組み込んだ複数のポリマーフィラメントから形成されていてもよく、この場合、不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
【0013】
前記ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
前記第1の領域は、前記不織布帛の非繊維状部分であってもよい。
前記第1の領域の透過性は、前記第2の領域の透過性よりも小さくてもよい。
前記第1の領域の耐伸張性は、前記第2の領域の耐伸張性よりも大きくてもよい。
前記不織布帛に、第1の表面と、その反対側の第2の表面とが形成されていてもよく、この場合、前記第2の表面の少なくとも一部分が、第2の布帛要素と結合していてもよい。
【0014】
前記不織布帛の前記ポリマーフィラメントは、前記第2の布帛要素のフィラメントに熱融着されていてもよい。
前記不織布帛に、第1の表面と、その反対側の第2の表面とが形成されていてもよく、この場合、前記第2の表面の少なくとも一部分が、ポリマー発泡体要素と結合していてもよい。
【0015】
前記不織布帛は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
衣料品は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成された複数のフィラメントを含む少なくとも1つの不織布帛要素を備えていてもよく、この場合、前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0016】
前記衣料品は、シャツ型衣服であってもよい。
前記第1の領域は、前記シャツ型衣服の肩領域に配置されていてもよい。
前記第1の領域は、前記シャツ型衣服の首開口部、腕開口部およびウェスト開口部のうちの少なくとも1つの周囲に配置されていてもよい。
前記衣料品は、ズボン型衣服であってもよい。
【0017】
前記第1の領域は、前記ズボン型衣服の膝領域に配置されていてもよい。
前記第1の領域は、前記ズボン型衣服のウェスト開口部および脚開口部のうちの少なくとも1つの周囲に配置されていてもよい。
前記熱可塑性ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
【0018】
前記衣料品は、第2の布帛要素をさらに備えていてもよく、この場合、前記不織布帛要素の端縁領域は、前記第2の布帛要素の端縁領域に熱融着されていてもよい。
前記衣料品は、履物であってもよい。
衣料品は、複数の熱可塑性ポリマーフィラメントを含む不織布帛の構成を有する第1の布帛要素と、第2の布帛要素と、前記第1の布帛要素と前記第2の布帛要素との間の継ぎ目とを備えていてもよく、この場合、前記第1の布帛要素の端縁領域が、前記継ぎ目において、前記第2の布帛要素の端縁領域に熱融着されていてもよい。
【0019】
前記熱可塑性ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
前記第2の布帛要素は、複数の熱可塑性ポリマーフィラメントを含む不織布帛であってもよい。
前記第2の布帛要素は、機械的操作による布帛であってもよい。
【0020】
この衣料品は、前記第1の布帛の前記端縁領域および前記第2の布帛要素の前記端縁領域に、縫い目が存在しないものであってもよい。
この衣料品は、前記第1の布帛の前記端縁領域と前記第2の布帛要素の前記端縁領域との間の領域に、接着剤が存在しないものであってもよい。
前記第1の布帛要素は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
【0021】
前記第1の布帛要素は、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有してもよく、この場合、第3の布帛要素は、前記第2の表面に熱融着されていてもよい。
前記第3の布帛要素は、機械的操作による布帛であってもよい。
前記衣料品は、履物であってもよい。
履物は、甲部と、靴底構造体とを備えていてもよく、この場合、前記甲部の少なくとも一部が、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成されていてもよい。
【0022】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
前記第1の領域は、前記靴底構造体に隣接して、前記履物の前部領域に配置されていてもよい。
【0023】
前記第1の領域は、前記甲部の靴紐受入領域の周囲に延びていてもよい。
前記第1の領域は、前記甲部の靴紐受入領域の隣接領域から前記靴底構造体の隣接領域まで延びていてもよい。
前記第1の領域は、前記履物の踵領域から前記履物の前部領域まで延びていてもよい。
前記第1の領域は、前記甲部の足首開口部に隣接していてもよい。
【0024】
前記甲部と前記靴底構造体とを組み合わせた質量の百分率で少なくとも80%が、前記不織布帛の前記熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)前記甲部の他の要素および(b)前記靴底構造体のうちの少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。
前記甲部と前記靴底構造体とを組み合わせた質量の百分率で少なくとも80%が、前記不織布帛の前記熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)前記靴底構造体の流体充填チャンバおよび(b)前記靴底構造体の発泡材料のうちの少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。
【0025】
前記熱可塑性ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
履物は、甲部と、靴底構造体とを備えていてもよく、この場合、前記甲部と前記靴底構造体とを組み合わせた質量百分率で少なくとも80%が、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよく、この場合、前記甲部に組み込まれている布帛材料の少なくとも一部分が、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよい。
【0026】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料は、第1の材料と第2の材料とを含んでもよく、この場合、前記第1の材料は、前記甲部の少なくとも一部分を形成する不織布帛のフィラメントであってもよく、この場合、前記第2の材料は、前記靴底構造体内に存在してもよい。
前記第2の材料は、前記靴底構造体のポリマー発泡体に組み込まれていてもよい。
【0027】
前記第2の材料は、前記靴底構造体の流体充填チャンバに組み込まれていてもよい。
前記甲部は、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料を組み込んでいる複数のフィラメントから形成された不織布帛を含んでいてもよい。
履物は、着用者の足を受け入れるための甲部であって、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛を含む甲部と、前記甲部の下部領域に固定された靴底構造体であって、(a)発泡材料および(b)少なくとも部分的に前記熱可塑性ポリマー材料から形成された流体充填チャンバのうちの少なくとも一方を含む靴底構造体とを備えていてもよい。
【0028】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
前記第1の領域の前記フィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0029】
前記熱可塑性ポリマー材料を含む前記フィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
前記甲部の前記熱可塑性ポリマー材料は、前記靴底構造体の前記熱可塑性ポリマー材料と実質的に同一であってもよい。
履物は、着用者の足を受け入れるための甲部であって、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛を含む甲部と、前記甲部の下部領域に固定された靴底構造体とを備えていてもよく、この場合、前記甲部の前記不織布帛が、前記靴底構造体に熱融着されていてもよい。
【0030】
この履物は、前記甲部の前記不織布帛と前記靴底構造体との間の領域に、縫い目および接着剤が存在していないものであってもよい。
前記靴底構造体において前記甲部に熱融着されている部分は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよい。
前記靴底構造体において前記甲部に熱融着されている部分は、ポリマー発泡材料および流体充填チャンバのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0031】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
履物は、甲部と、前記甲部に固定された靴底構造体とを有してもよく、この場合、前記履物は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記第1の表面に実質的に平行な方向に少なくとも5センチメートルにわたって延びている紐体と備えていてもよい。
【0032】
前記紐体の材料は、炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレンおよび液晶ポリマーからなる群より選択されたものであってもよい。
前記紐体は、前記不織布帛と結合していてもよい。
前記紐体は、(a)前記甲部の靴紐受入領域の隣接領域から前記靴底構造体の隣接領域へと、または(b)前記履物の踵領域から前記履物の前部領域へと延びていてもよい。
【0033】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよく、この場合、前記紐体の少なくとも一部は、前記第1の領域を貫通していてもよい。
【0034】
複合要素を製造する方法は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の表面に近接して部材を配置する工程と、前記部材および前記不織布を加熱、および圧縮して、前記部材を前記不織布帛に結合する工程とを含んでもよい。
前記部材は、布帛であってもよく、ポリマー発泡材料であってもよく、ポリマー材料のシートであってもよい。
【0035】
前記加熱圧縮工程は、プレスのプラテンの間に前記部材および前記不織布帛を配置する工程を含んでもよい。
この方法は、前記部材および前記不織布帛を衣料品に組み込む工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記部材および前記不織布を履物の甲部に組み込む工程をさらに含んでもよい。
【0036】
複合要素を製造する方法は、中間要素の両面に2つの層の不織布帛を配置する工程であって、前記層が、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された層である工程と、前記層および前記中間要素を加熱、および圧縮して、前記中間要素の前記両面に前記層を結合する工程とを含んでもよい。
前記中間要素は、ポリマー発泡材料を含んでもよい。
【0037】
この方法は、別の熱可塑性ポリマー材料を含むように、前記ポリマー発泡材料を選択する工程をさらに含んでもよい。
前記加熱圧縮工程は、プレスのプラテンの間に前記中間要素および前記層を配置する工程を含んでもよい。
前記加熱圧縮工程は、前記中間要素の周囲の少なくとも一部において前記2つの層を互いに結合する工程を含んでもよい。
【0038】
この方法は、前記中間要素および前記層を衣料品に組み込む工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記中間要素および前記層を履物に組み込む工程をさらに含んでもよい。
方法は、第1の不織布帛を第1の製品に組み込む工程であって、前記不織布が、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛である工程と、前記第1の製品から前記熱可塑性ポリマー材料をリサイクルして、第2の不織布帛、ポリマー発泡体およびポリマーシートのうちの少なくとも1つを形成する工程と、前記第2の不織布帛、前記ポリマー発泡体および前記ポリマーシートのうちの前記少なくとも1つを第2の製品に組み込む工程とを含んでもよい。
【0039】
この方法は、前記第1の製品および前記第2の製品のうちの少なくとも一方を、衣料品とするように選択する工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記第1の製品および前記第2の製品のうちの少なくとも一方を、履物とするように選択する工程をさらに含んでもよい。
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記第2の表面に熱融着された部材とを備えていてもよい。
【0040】
前記部材は、第2の布帛を含んでもよく、この場合、前記熱可塑性ポリマー材料は、前記第2の布帛のフィラメントの周囲に拡がって、前記部材を前記第2の表面に固定していてもよい。
前記部材は、ポリマー発泡材料を含んでもよく、この場合、前記熱可塑性ポリマー材料は、前記ポリマー発泡材料内へと延びて、前記部材を前記第2の表面に固定していてもよい。
【0041】
前記部材は、熱可塑性ポリマー発泡材料を含んでもよく、この場合、前記熱可塑性ポリマー材料と前記熱可塑性ポリマー発泡材料とが混ざり合って、前記部材を前記第2の表面に固定していてもよい。
この複合要素は、前記不織布帛および前記部材を貫通する領域に、縫い目が存在しないものであってもよい。
【0042】
この複合要素は、前記第2の表面と前記部材との間の領域に、接着剤が存在しないものであってもよい。
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0043】
前記複合要素は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記不織布帛に固定され、前記第1の表面に実質的に平行な方向に少なくとも5センチメートルにわたって延びている紐体とを備えていてもよい。
【0044】
前記紐体は、前記第1の表面内に埋め込まれていてもよい。
前記紐体は、0.60ギガパスカルを超える引張強度を有してもよい。
前記紐体は、50ギガパスカルを超える引張弾性率を有してもよい。
前記紐体の材料は、炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレンおよび液晶ポリマーからなる群より選択されたものであってもよい。
【0045】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
前記紐体は、少なくとも前記第1の領域を貫通していてもよい。
【0046】
前記複合要素は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
熱可塑性ポリウレタン材料を組み込んだ複数のポリマーフィラメントから形成され、第1の領域と第2の領域とを有する不織布帛は、前記第1の領域が、前記不織布帛の非繊維状部分であってもよく、この場合、前記第2の領域が、前記不織布帛の繊維状部分であってもよい。
【0047】
前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよい。
前記第1の領域の透過性は、前記第2の領域の透過性よりも小さくてもよく、この場合、前記第1の領域の耐伸張性は、前記第2の領域の耐伸張性よりも大きくてもよい。
前記不織布帛は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
【0048】
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛であって、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有し、さらに、第1の領域と第2の領域とを有し、前記第1の領域の前記フィラメントが、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されている不織布帛と、前記不織布帛に縫い込まれ、前記第1の表面から前記第2の表面へと延び、前記第1の領域および前記第2の領域のそれぞれを貫通している糸とを備えていてもよい。
【0049】
前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記第2の表面に固定された接着層とを備えていてもよい。
【0050】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
前記第1の領域の前記フィラメントは、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0051】
この複合要素は、紐体が、前記不織布帛内に埋め込まれており、前記第1の領域を貫通しているものであってもよい。
この複合要素は、紐体が、前記不織布帛内に埋め込まれているものであってもよい。
前記接着層は、アクリル接着剤であってもよい。
本発明の態様を特徴付ける新規な利点および特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に指摘されている。しかし、新規な利点および特徴をよりよく理解するために、本発明に関連する様々な形態および概念を説明、図示した以下の記載事項および添付図面を参照することができる。
【0052】
上記の要旨および下記の詳細な説明を添付図面と併せて読むと、よりよい理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】不織布帛の斜視図である。
【図2】図1において切断線2−2で定義される、不織布帛の横断面図である。
【図3】複数の融着領域を有する不織布帛の斜視図である。
【図4A】図3の切断線4−4で定義される、不織布帛の融着領域の構成を示す横断面図である。
【図4B】図3の切断線4−4で定義される、不織布帛の融着領域の構成を示す横断面図である。
【図4C】図3の切断線4−4で定義される、不織布帛の融着領域の構成を示す横断面図である。
【図5A】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5B】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5C】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5D】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5E】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5F】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5G】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5H】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図6A】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6B】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6C】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6D】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6E】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6F】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図7A】不織布帛に融着領域を形成する第1の方法の斜視図である。
【図7B】不織布帛に融着領域を形成する第1の方法の斜視図である。
【図7C】不織布帛に融着領域を形成する第1の方法の斜視図である。
【図8A】不織布帛に融着領域を形成する第2の方法の斜視図である。
【図8B】不織布帛に融着領域を形成する第2の方法の斜視図である。
【図8C】不織布帛に融着領域を形成する第2の方法の斜視図である。
【図9】不織布帛に融着領域を形成する第3の方法の斜視図である。
【図10】不織布帛を含む第1の複合要素の斜視図である。
【図11】図10において切断線11−11で定義される、第1の複合要素の横断面図である。
【図12A】第1の複合要素を形成する方法の斜視図である。
【図12B】第1の複合要素を形成する方法の斜視図である。
【図12C】第1の複合要素を形成する方法の斜視図である。
【図13】第1の複合要素を形成する別の方法の概略斜視図である。
【図14】不織布帛を含む第2の複合要素の斜視図である。
【図15】図14において切断線15−15で定義される、第2の複合要素の横断面図である。
【図16】不織布帛を含む第3の複合要素の斜視図である。
【図17】図16において切断線17−17で定義される、第3の複合要素の横断面図である。
【図18A】第3の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図18B】第3の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図18C】第3の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図19】不織布帛を含む第4の複合要素の斜視図である。
【図20】図19において切断線20−20で定義される、第4の複合要素の横断面図である。
【図21】不織布帛を含む第5の複合要素の斜視図である。
【図22】図21において切断線22−22で定義される、第5の複合要素の横断面図である。
【図23A】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23B】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23C】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23D】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23E】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23F】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図24】第1の継ぎ目構造により結合された2つの不織布帛要素の斜視図である。
【図25】図24において切断線25−25で定義される、第1の継ぎ目構造の横断面図である。
【図26A】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図26B】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図26C】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図26D】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図27】第1の継ぎ目構造を形成する別の方法の斜視図である。
【図28A】他の要素と結合して第1の継ぎ目構造を形成する不織布帛要素の斜視図である。
【図28B】他の要素と結合して第1の継ぎ目構造を形成する不織布帛要素の斜視図である。
【図29A】第1の継ぎ目構造の更なる例を示す、図25に対応する横断面図である。
【図29B】第1の継ぎ目構造の更なる例を示す、図25に対応する横断面図である。
【図29C】第1の継ぎ目構造の更なる例を示す、図25に対応する横断面図である。
【図30】第2の継ぎ目構造により結合された2つの不織布帛要素の斜視図である。
【図31】図30において切断線31−31で定義される、第2の継ぎ目構造の横断面図である。
【図32A】第2の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図32B】第2の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図32C】第2の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図33】第2の継ぎ目構造を形成する別の方法の斜視図である。
【図34A】第2の継ぎ目構造の更なる構成を示す、図31に対応する横断面図である。
【図34B】第2の継ぎ目構造の更なる構成を示す、図31に対応する横断面図である。
【図34C】第2の継ぎ目構造の更なる構成を示す、図31に対応する横断面図である。
【図35A】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35B】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35C】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35D】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35E】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35F】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35G】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35H】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図36A】図35Aにおいて切断線36A−36Aで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36B】図35Bにおいて切断線36B−36Bで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36C】図35Cにおいて切断線36C−36Cで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36D】図35Dにおいて切断線36D−36Dで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36E】図35Eにおいて切断線36E−36Eで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36F】図35Fにおいて切断線36F−36Fで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36G】図35Gにおいて切断線36G−36Gで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36H】図35Hにおいて切断線36H−36Hで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図37A】不織布帛を含むズボンの構成の正面図である。
【図37B】不織布帛を含むズボンの構成の正面図である。
【図37C】不織布帛を含むズボンの構成の正面図である。
【図38】図37Aにおいて切断線38−38で定義される、ズボンの横断面図である。
【図39A】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39B】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39C】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39D】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39E】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39F】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39G】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図40A】図39Aにおいて切断線40A−40Aで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図40B】図39Bにおいて切断線40B−40Bで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図40C】図39Cにおいて切断線40C−40Cで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図40D】図39Dにおいて切断線40D−40Dで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図41】不織布帛を含む履物の靴紐ループの斜視図である。
【図42A】不織布帛の三次元構造の斜視図である。
【図42B】不織布帛の三次元構造の斜視図である。
【図42C】不織布帛の三次元構造の斜視図である。
【図43A】不織布帛の三次元構造を形成する方法の斜視図である。
【図43B】不織布帛の三次元構造を形成する方法の斜視図である。
【図43C】不織布帛の三次元構造を形成する方法の斜視図である。
【図44A】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図44B】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図44C】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図44D】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図45A】不織布帛のテクスチャ構造を形成する方法の斜視図である。
【図45B】不織布帛のテクスチャ構造を形成する方法の斜視図である。
【図45C】不織布帛のテクスチャ構造を形成する方法の斜視図である。
【図46A】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46B】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46C】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46D】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46E】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46F】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図47】不織布帛を含むテープ要素の斜視図である。
【図48】図47において切断線48−48で定義されるテープの横断面図である。
【図49A】テープ要素の更なる構成の斜視図である。
【図49B】テープ要素の更なる構成の斜視図である。
【図49C】テープ要素の更なる構成の斜視図である。
【図50】リサイクル工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の説明および添付図面により、不織布帛100、および不織布帛100を組み込んだ様々な製品が開示されている。以下、不織布帛100は、例示目的で、様々な衣料品(例えば、シャツ、ズボン、履物)に組み込まれたものとして開示されているが、その他様々な製品にも不織布帛100を組み込むことができる。例えば、不織布帛100は、他の種類の衣料品や、入れ物、家具の張り物に利用することができる。不織布帛100は、ベッドカバーや、テーブルカバー、タオル、旗、テント、帆、パラシュートに利用することもできる。不織布帛100の様々な構成を、産業目的のために、自動車や航空宇宙の用途や、フィルター材料、医療用布帛、地質用布帛、農業用布帛、工業用の衣料品として利用することもできる。したがって、不織布帛100は、個人用目的にも工業用目的にも様々な製品に利用することができる。
I−不織布帛の構成
図1および図2に、不織布帛100が、第1の表面101と、その反対側の第2の表面102とを有するものとして描かれている。不織布帛100は、主に熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメント103から形成されている。フィラメント103は、不織布帛100全体にランダムに分布し、接着、融着、連結または結合されて、比較的一定の厚さ(すなわち、表面101と表面102との間の距離)を有する構造を形成する。個々のフィラメント103は、第1の表面101上、第2の表面102上、表面101と表面102との間、または両表面101、102上に配置される可能性がある。不織布帛100の形成方法に応じて、個々のフィラメント103の多数の部位が、第1の表面101上に配置され、当該個々のフィラメント103の別の部位が、第2の表面102上に配置され、当該個々のフィラメント103の他の部位が、表面101と表面102との間に配置されていてもよい。連結構造を付与するために、様々なフィラメント103が、互いの周りに巻き付き、互いの上下に延び、不織布帛100の様々な領域を貫通していてもよい。2本以上のフィラメント103が接触する領域において、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料は、接着または融着して、フィラメント103が互いに結合してもよい。したがって、フィラメント103は、様々な態様で効果的に互いに結合し、不織布帛100内で結着構造を形成する。
【0055】
繊維用語において、ファイバは、1ミリメートルないし数センチメートル以上の比較的短い長さを有するものとして定義される場合が多く、フィラメントは、ファイバよりも長い長さ、あるいは不確定長を有するものとして定義される場合が多い。この書類内で用いる場合、用語「フィラメント」またはその変形は、繊維用語の定義からのファイバとフィラメントとの両方の長さを包含するものとして定義される。したがって、ここで言及するフィラメント103またはその他のフィラメントは、一般的に、如何なる長さを有していてもよい。したがって、一例として、フィラメント103は、1ミリメートルないし数百メートル以上に及ぶ長さを有していてもよい。
【0056】
フィラメント103は、熱可塑性ポリマー材料を含む。一般的に、熱可塑性ポリマー材料は、加熱すると溶融し、冷却すると固体状態に戻る。具体的には、熱可塑性ポリマー材料は、充分な熱を受けると、固体状態から軟化または液体状態に転移し、充分に冷却されると、軟化または液体状態から固体状態に転移する。このように、多数のサイクルにわたって、熱可塑性ポリマー材料を溶融、成形、冷却、再溶融、再成形、再冷却してもよい。以下に詳述するように、他の布帛要素、プレート、シート、ポリマー発泡体要素、熱可塑性ポリマー要素、熱硬化性ポリマー要素など、様々な材料から形成された様々な要素に、熱可塑性ポリマー材料を溶接または熱融着することもできる。熱可塑性ポリマー材料とは対照的に、多くの熱硬化性ポリマー材料は、加熱時に溶融せず、むしろ燃焼するだけである。広範な熱可塑性ポリマー材料をフィラメント103用に利用可能であるが、好適な熱可塑性ポリマー材料としては、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィンが例示される。上記の熱可塑性ポリマー材料のいずれを不織布帛100に利用してもよいが、熱可塑性ポリウレタンを利用する利点は、熱融着と着色とに関するものである。以下に詳述するように、他の様々な熱可塑性ポリマー材料(例えば、ポリオレフィン)と比較して、熱可塑性ポリウレタンは、他の要素と比較的結合しやすく、従来の様々な工程により、着色剤を熱可塑性ポリウレタンに添加することができる。
【0057】
各フィラメント103は、その全体を単一の熱可塑性ポリマー材料から形成してもよいが、個々のフィラメント103の少なくとも一部分を多数のポリマー材料から形成してもよい。一例として、個々のフィラメント103が芯鞘構造を有し、個々のフィラメント103の外側の鞘部を第1の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成し、個々のフィラメント103の内側の芯部を第2の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成してもよい。同様の例として、個々のフィラメント103が複合構造を有し、個々のフィラメント103の半分を第1の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成し、個々のフィラメント103の反対側の半分を第2の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成してもよい。ある構成において、芯鞘構造または複合構造のいずれかである場合に、個々のフィラメント103を熱可塑性ポリマー材料と熱硬化性ポリマー材料との両方から形成してもよい。全フィラメント103を全体的に単一の熱可塑性ポリマー材料から形成してもよいが、フィラメント103を多数のポリマー材料から形成してもよい。一例として、複数のフィラメント103の一部を第1の種類の熱可塑性ポリマー材料から形成し、他のフィラメント103を第2の種類の熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。同様の例として、複数のフィラメント103の一部を熱可塑性ポリマー材料から形成し、他のフィラメント103を熱硬化性ポリマー材料から形成してもよい。したがって、各フィラメント103、フィラメント103の一部分、または複数のフィラメント103の少なくとも一部を、1種以上の熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。
【0058】
不織布帛100(すなわち、フィラメント103)に利用される熱可塑性ポリマー材料などの材料を、様々な伸縮性を有するように選択してもよく、この様な材料は、弾性体と考えてもよい。不織布帛100が組み込まれる特定の製品にもよるが、不織布帛100またはフィラメント103の引張破断前伸度が、10%〜800%以上であってもよい。好適な特性として伸縮性を有する衣料品の多くは、不織布帛100またはフィラメント103の引張破断前伸度が、少なくとも100%であるとよい。関連事項として、不織布帛100(すなわち、フィラメント103)に利用される熱可塑性ポリマー材料などの材料を、様々な復元性能を有するように選択してもよい。すなわち、不織布帛100を、伸張後に元の形状に戻るように形成してもよいし、伸張後に長細い形状または伸張形状のままとなるように形成してもよい。衣料品など、不織布帛100を組み込んだ数多くの製品が、伸度100%以上の伸張後、元の形状に回復または復元する特性の利点を活かすことができる。
【0059】
従来の様々な方法を利用して、不織布帛100を製造することができる。一般的に、不織布帛100の製造工程には、(a)熱可塑性ポリマー材料から複数のフィラメント103を押出または形成することと、(b)移動中のコンベアなどの表面上にフィラメント103を収集、載置、または堆積することと、(c)フィラメント103を結合することと、(d)圧縮工程などにより所望の厚さを付与することとが含まれる。フィラメント103は、表面上への堆積時には比較的柔軟であるか、あるいは部分的に溶融しているので、互いに接触しているフィラメント103のポリマー材料は、冷却すると接着または融着する。
【0060】
上記の一般的な製造工程の後、不織布帛100に様々な後処理操作を施してもよい。例えば、エンボス加工やカレンダ加工を利用して、不織布帛100を略一定厚としたり、表面101、102の両方または一方にテクスチャを付与したり、さらにフィラメント103を接着または融着したりしてもよい。また、不織布帛100をコーティングしてもよい。さらに、水流噴射加工、水流交絡加工、ニードルパンチ加工またはステッチボンド加工を利用して、不織布帛100の特性を改良してもよい。
【0061】
不織布帛100は、スパンボンドまたはメルトブロー材料として形成してもよい。スパンボンド不織布帛は、10ないし100ミクロンの断面厚を有するフィラメントから形成し、メルトブロー不織布帛は、10ミクロン未満の断面厚を有するフィラメントから形成する。不織布帛100を、スパンボンド、メルトブロー、またはスパンボンドとメルトブローとの組み合わせにより形成してもよい。さらに、スパンボンド層およびメルトブロー層を有するように、不織布帛100を形成してもよいし、あるいは、フィラメント103がスパンボンドおよびメルトブローの組み合わせとなるように不織布帛100を形成してもよい。
【0062】
個々のフィラメント103の太さの違いに加えて、不織布帛100全体の厚さが大幅に異なっていてもよい。様々な図面を参照すると、不織布帛100およびその他の要素は、不織布帛100に関連する詳細や特徴を示すために、その厚さを強調または増加させることにより、図面に明確に示されている。しかし、数多くの用途において、不織布帛100の厚さは、0.5ミリメートル〜10.0ミリメートルの範囲内であってもよいが、この範囲を超えて大幅に異なっていてもよい。数多くの衣料品に関しては、例えば、1.0〜3.0ミリメートルの厚さが適切であるが、他の厚さも利用可能である。以下に詳述するように、不織布帛100は、ある領域において、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料が他の領域よりも高融着度で融着されるように形成され、融着領域における不織布帛100の厚さが実質的に薄くなっていてもよい。したがって、不織布帛100の厚さが、大幅に異なっていてもよい。
II−融着領域
図3に、不織布帛100が、様々な融着領域104を含むものとして描かれている。融着領域104は、不織布帛100において、この様な融着領域104の特性を選択的に変えるために熱に曝された部分である。不織布帛100、または少なくとも不織布帛100を形成する様々なフィラメント103は、熱可塑性ポリマー材料を含むものとして上記で説明されている。熱可塑性ポリマー材料は、充分な熱を受けると、固体状態から軟化状態または液体状態に転移する。熱可塑性ポリマー材料は、充分に冷却されると、軟化状態または液体状態から固体状態に戻る。したがって、様々なフィラメント103を軟化または溶融するために、不織布帛100、または不織布帛100の任意領域を熱に曝してもよい。下記に詳述するように、不織布帛100の様々な領域(すなわち、融着領域104)を熱に曝すことによって、これらの領域の特性を選択的に変えることができる。熱に関してのみ検討してきたが、融着領域104を形成するために、圧力を単独で、あるいは熱と組み合わせて利用してもよく、ある不織布帛100の構成において、融着領域104を形成するために圧力が必要となる場合もある。
【0063】
融着領域104は、幾何学的な形状(例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形)、または様々な不確定、不規則または非幾何学的な形状など、様々な形状とすることができる。融着領域104の位置は、不織布帛100の端縁部から内側に離隔されていてもよいし、不織布帛100の1以上の端縁部上に配置されていてもよいし、不織布帛100の角部に配置されていてもよい。融着領域104の形状および位置は、不織布帛100の一部を横切って延びるように、あるいは不織布帛100の2つの端縁部間に配置されるように選択してもよい。ある融着領域104の面積を比較的小さくし、他の融着領域104の面積を比較的大きくしてもよい。以下で詳述するように、不織布帛100の別個の2つの要素を結合してもよいし、ある融着領域104が、これらの要素を結合する継ぎ目を横切って延びていてもよいし、あるいは、ある融着領域が、他の部材と不織布帛100とを接着する領域内に延びていてもよい。したがって、融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様が、大幅に異なっていてもよい。
【0064】
不織布帛100の様々なフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、充分な熱、そして、場合により圧力に曝されると、固体状態から軟化状態または液体状態に転移する。フィラメント103の状態変化の度合いに応じて、融着領域104内の様々なフィラメント103は、(a)繊維状構造のままであってもよいし、(b)全体が液状に溶融した状態であって、冷えれば非繊維状構造になる状態であってもよいし、または、(c)あるフィラメント103もしくは個々のフィラメント103の一部が繊維状であり、他のフィラメント103もしくは個々のフィラメント103の一部が非繊維状になる中間構造であってもよい。したがって、融着領域104のフィラメント103は、一般的に、不織布帛100の他の領域のフィラメント103よりも高融着度で融着しているが、融着領域104の融着度は、大幅に異なっていてもよい。
【0065】
図4A〜図4Cに、融着領域104におけるフィラメント103の融着度の差が描かれている。特に図4Aを参照して、融着領域104内の様々なフィラメント103は、繊維状構造のままである。すなわち、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料は、繊維状構造のままであり、個々のフィラメント103は、確認可能な状態のままである。特に図4Bを参照して、融着領域104内の様々なフィラメント103は、全体が液状に溶融した状態であって、冷えれば非繊維状構成になる。すなわち、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、融着領域104において固体ポリマーシートを効率的に形成する非繊維状へと溶融し、個々のフィラメント103は全く確認不可能な状態である。特に図4Cを参照して、様々なフィラメント103は、部分的に繊維状構造のままである。すなわち、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料の一部が、繊維状構造のままであり、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の一部が、融着領域104において固体ポリマーシートを効率的に形成する非繊維状へと溶融する。したがって、融着領域104におけるフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の構造は、繊維状であってもよいし、非繊維状であってもよいし、繊維状と非繊維状との任意の組み合わせまたは比率であってもよい。したがって、各融着領域104における融着度を、一方の繊維状構造から他方の非繊維状構造までの範囲で変化させることができる。
【0066】
不織布帛100の構成および融着領域104の形成方法に関連する様々な要因によって、融着領域104内におけるフィラメント103の融着度が決定される。例として、融着度を決定する要因には、(a)フィラメント103を形成する特定の熱可塑性ポリマー材料、(b)融着領域104が曝される温度、(c)融着領域104が曝される圧力、ならびに(d)融着領域104が高温および/または高圧に曝される時間が含まれる。これらの要因を変更することによって、融着領域104内における結果的な融着度を、一方の繊維状構造から他方の非繊維状構造までの範囲で変化させることができる。
【0067】
図3における融着領域104の構成は、融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様の多様性を例示することを意図している。しかし、融着領域104の構成が、大幅に異なるものであってもよい。図5Aを参照して、不織布帛100は、略線形平行構造を有する複数の融着領域104を備えている。同様に、図5Bには、不織布帛100が、略曲線平行構造を有する複数の融着領域104を備えているものとして描かれている。図5Cに描かれているように、融着領域104は、分割構造を有していてもよい。さらに、不織布帛100は、図5Dのような三角形の繰り返し模様の構成、図5Eのような円形の繰り返し模様の構成、あるいは、その他の形状など、様々な形状の繰り返し模様の構成の融着領域104を複数有するものであってもよい。ある不織布帛100の構成において、図5Fに描かれているように、単一の融着領域104が、連続領域を形成し、不織布帛100の離散的な残部領域が、この連続領域によって輪郭形成されるものであってもよい。融着領域104は、図5Gのチェッカー模様のように、端縁部または角部が互いに接触する構成を有していてもよい。さらに、図5Hのように、様々な融着領域104の形状が、非幾何学的な形状または不規則な形状であってもよい。したがって、融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様が、大幅に異なっていてもよい。
【0068】
不織布帛100の厚さが、融着領域104において薄くなっていてもよい。図4A〜図4Cを参照して、例えば、不織布帛100は、融着領域104における厚さが、その他の領域よりも薄い。上記のように、融着領域104は、フィラメント103が不織布帛100のその他の領域よりも高融着度で融着している領域である。さらに、不織布帛100、または不織布帛100における融着領域104の形成部分が、圧縮されて融着領域104を形成していてもよい。結果的に、融着領域104の厚さが、不織布帛100の他の領域と比較して薄くなっていてもよい。図4A〜図4Cを再び参照して、表面101、102は、両方とも融着領域104と不織布帛100のその他の領域との間で直角な変移または急激な変移を示す。しかし、融着領域104の形成方法に応じて、表面101、102は、他の構成であってもよい。一例として、図6Aにおいて、第1の表面101のみが、融着領域104へと直角な変移を示す。融着領域104の厚さの減少は、直角な変移または急激な変移によって生じてもよいが、図6Bおよび図6Cに描かれているように、曲線的な変移または緩やかな変移を利用してもよい。他の構成において、図6Dのように、不織布帛100の融着領域104とその他の領域との間で傾斜した変移が形成されていてもよい。融着領域104において厚さが薄くなる場合が多いが、図6Eに描かれているように、厚さが全く減少しない場合や厚さがごく僅か減少する場合もある。不織布帛100に使用されている材料や融着領域104の形成方法により、図6Fに描かれているように、融着領域104が実際に膨張したり、厚さが増加したりする場合もある。図6A〜図6Fのそれぞれにおいて、融着領域104は、非繊維状構造を有するものとして描かれているが、繊維状構造または上記の中間構造を有するものであってもよい。
【0069】
上記の検討に基づき、不織布帛100は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメント103から形成されている。フィラメント103は、不織布帛100全体で接着、融着、連結または結合されているが、融着領域104は、フィラメント103が一般的に不織布帛100の他の領域のフィラメントよりも高融着度で融着されている領域である。融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様は、大幅に異なっていてもよい。さらに、フィラメント103の融着度も大幅に異なっていてもよく、繊維状であってもよいし、非繊維状であってもよいし、繊維状と非繊維状との任意の組み合わせや比率であってもよい。
III−融着領域の特性
融着領域104の特性は、不織布帛100の他の領域の特性と異なるものであってもよい。さらに、複数の融着領域104のうちの、ある融着領域104の特性が、別の融着領域104の特性とは異なるものであってもよい。不織布帛100の製造および融着領域104の形成に際して、不織布帛100の様々な領域に特定の特性を付与してもよい。具体的には、不織布帛100の特定の領域に特定の特性を付与するために、融着領域104の形状や、融着領域104の位置、融着領域104の寸法、融着領域104内におけるフィラメント103の融着度、不織布帛100の他の態様を変更してもよい。したがって、不織布帛100は、様々な領域で特定の特性を有するように、操作、設計、または構成することができる。
【0070】
融着領域104の追加または構成により変更される特性としては、透過性、耐久性および耐伸張性が例示される。不織布帛100の特定の領域に、複数の融着領域104のうちの1つを形成することにより、一般的に、その領域の透過性が減少する一方、耐久性および耐伸張性の両方が高まる。以下に詳述するように、フィラメント103の融着度は、透過性、耐久性および耐伸張性の変化に大きな影響を有する。透過性、耐久性および耐伸張性に影響を与える他の要因には、融着領域104の形状、位置および寸法、ならびにフィラメント103を形成する特定の熱可塑性ポリマー材料が含まれる。
【0071】
透過性は、一般的に、空気や水などの流体(気体または液体)が不織布帛100を通過または透過する能力に関連している。透過性は、フィラメント103の融着度により大幅に異なる。一般的に、透過性は、フィラメント103の融着度が最も低い不織布帛100の領域で最も高く、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域で最も低い。このように、フィラメント103の融着度により、透過性は、ある範囲で変化する。融着領域104とは関連のない不織布帛100の領域(すなわち、不織布帛100の非融着領域)は、一般的に、比較的高透過性を示す。フィラメント103の大半が繊維状構造のままである融着領域104では、比較的高透過性を示すが、その透過性は、一般的に、融着領域104とは関連のない領域よりも低い。フィラメント103が繊維状および非繊維状構造である融着領域104では、透過性が低い。結局、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の殆ど全てが非繊維状構造を示す領域では、透過性が比較的低いか、または、透過性が全くない。
【0072】
耐久性は、一般的に、不織布帛100が完全状態、結着状態または非損傷状態にとどまる能力に関連しており、耐摩耗性、耐摩滅性、化学物質/光劣化耐性が含まれる。耐久性は、フィラメント103の融着度により大幅に異なる。一般的に、耐久性は、フィラメント103の融着度が最も低い不織布帛100の領域で最も低く、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域で最も高い。このように、フィラメント103の融着度により、耐久性は、ある範囲で変化する。融着領域104とは関連のない不織布帛100の領域は、一般的に、比較的低耐久性を示す。フィラメント103の大半が繊維状構造のままである融着領域104では、比較的低耐久性を示すが、その耐久性は、一般的に、融着領域104とは関連のない領域よりも高い。フィラメント103が繊維状および非繊維状構造である融着領域104では、耐久性が高い。結局、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の殆ど全てが非繊維状構造を示す領域では、耐久性が比較的高い。融着領域104および不織布帛100の他の領域の一般的な耐久性に影響を及ぼす他の要因としては、不織布帛100の初期厚および密度や、フィラメント103を形成するポリマー材料の種類、フィラメント103を形成するポリマー材料の硬度がある。
【0073】
耐伸張性は、一般的に、不織布帛100が引張力を受けた時に伸張に抵抗する能力に関連する。透過性や耐久性と同様に、不織布帛100の耐伸張性は、フィラメント103の融着度により大幅に異なる。耐久性と同様に、耐伸張性は、フィラメント103の融着度が最も低い不織布帛100の領域で最も低く、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域で最も高い。上記のように、不織布帛100(すなわち、フィラメント103)に使用されている熱可塑性ポリマー材料などの材料は、弾性体であると考えてもよく、あるいは引張破断前伸度が少なくとも100%であってもよい。不織布帛100の耐伸張性は、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域では比較的高くてもよく、融着領域104は、なお弾性的であってもよく、あるいは引張破断前伸度が少なくとも100%であってもよい。融着領域104および不織布帛100の他の領域の一般的な耐伸張性に影響を及ぼす他の要因としては、不織布帛100の初期厚および密度や、フィラメント103を形成するポリマー材料の種類、フィラメント103を形成するポリマー材料の硬度がある。
【0074】
以下に詳述するように、不織布帛100は、様々な衣料品(例えば、シャツ、ズボン、履物)など、様々な製品に組み込むことができる。シャツを例にとれば、不織布帛100は、胴体領域と2つの腕領域とを含むシャツの大部分を形成してもよい。発汗により水分がシャツ内に蓄積されることを考えれば、比較的高透過性を提供するために、融着領域104を含まない不織布帛100の部分から形成するとよい。シャツを着用したときに、シャツの肘領域が比較的高摩耗に曝されることを考えれば、高耐久性を付与するために、複数の融着領域104うちのいくつかを肘領域に配置するとよい。さらに、個人がシャツを着脱するときに、首開口部が伸びることを考えれば、高耐伸張性を付与するために、複数の融着領域104のうちの1つを首開口部の周囲に配置するとよい。したがって、シャツ全体に単一材料(すなわち、不織布帛100)を用いてもよいが、様々な領域を様々な融着度で融着することによって、シャツの様々な領域において特性を好適に変更することができる。
【0075】
上記では、主に透過性、耐久性、耐伸張性の特性に焦点を当てた。融着領域104の追加や構成によって、その他様々な特性を変更することもできる。例えば、不織布帛100の全体密度は、フィラメント103の融着度の増加に伴って増加する。不織布帛100の透明性も、フィラメント103の融着度の増加に伴って増加する。様々な要因により、不織布帛100の色の濃さも、フィラメント103の融着度の増加に伴って増加する。上記で多少検討したが、不織布帛100の全体厚は、フィラメント103の融着度の増加に伴って低下する。伸張後の不織布帛100の回復の程度、不織布帛100の全体的な可撓性、様々な不具合に対する耐性も、フィラメント103の融着度により変化する。したがって、融着領域104を形成することによって、様々な特性を変更することができる。
IV−融着領域の形成
融着領域104を形成するために、様々な方法を用いることができる。図7A〜図7Cを参照すると、方法の一例が、プレスのプラテンである第1のプレート111と第2のプレート112とを含むように描かれている。まず、図7Aに描かれているように、不織布帛100および遮断素子113をプレート111とプレート112との間に配置する。遮断素子113は、開口部114など、融着領域104に対応する不在領域を有する。すなわち、遮断素子113は、不織布帛100において融着領域104に対応する領域を露出する一方、不織布帛100の他の領域を覆う。
【0076】
そして、図7Bに描かれているように、不織布帛100と遮断素子113とを圧縮または接触させるために、プレート111およびプレート112を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着領域104を形成するために、不織布帛100において融着領域104に対応する領域に熱を加えるが、遮断素子113の存在により、不織布帛100の他の領域には殆ど熱が加わらない。すなわち、不織布帛100において融着領域104に対応する様々な領域の温度は上昇するが、他の領域の温度は殆ど上昇しない。この例示の方法においては、第1のプレート111を加熱して、熱伝導により不織布帛100の温度を上昇させる。しかし、不織布帛100には、遮断素子113の存在によって断熱されている領域がある。したがって、不織布帛100において開口部114から露出している領域のみが熱に曝されて、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料が軟化または溶融する。遮断素子113に使用される材料は、様々であり、金属板や紙シート、ポリマー層、発泡体層など、第1のプレート111から不織布帛100へと伝達される熱を制限するその他様々な(例えば、低熱伝導率の)材料が含まれる。ある方法においては、遮断素子113は、第1のプレート111の一体的な部分であってもよく、あるいは第1のプレート111に組み込まれていてもよい。
【0077】
プレート111、112を離間すると、図7Cに描かれているように、不織布帛100および遮断素子113は、互いに離れる。不織布帛100において遮断素子113の開口部114により露出していた領域は、融着領域104を形成する一方、遮断素子113により被覆または保護されていた領域は、実質的に影響を受けない。ある方法においては、ある融着領域104が他の融着領域104よりも高温になるように遮断素子113を構成することによって、ある融着領域104のフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料が、他の融着領域104よりも高融着度で融着されるようにしてもよい。すなわち、様々な融着領域104に異なる特性を付与するために、融着領域104を異なる温度に加熱するように、遮断素子113を構成してもよい。
【0078】
様々な方法を利用して、不織布帛100の特定の領域に熱を加え、融着領域104を形成することができる。上記のように、熱伝導により不織布帛100の温度を上昇させるために、第1のプレート111を加熱してもよい。ある方法においては、プレート111、112の両方を加熱するようにし、2つの遮断素子113を不織布帛100の両側に配置してもよい。熱は、熱伝導によって加えてもよいが、高周波加熱を使用することもでき、この場合、遮断素子113は、特定の波長の電磁波の通過を阻止するものであってもよい。化学的加熱を利用する方法においては、遮断素子113は、化学物質が不織布帛100の領域に接触するのを防止するものであってもよい。放射熱を利用する他の方法においては、遮断素子113は、放射熱によって不織布帛100の様々な領域の温度が上昇するのを防止する反射材料(すなわち、金属箔)であってもよい。熱伝導素子を含む同様の方法を利用することもできる。具体的には、熱伝導素子を使用して、熱を直接的に融着領域104へと伝導してもよい。遮断素子113は、融着領域104に対応する領域には存在しないが、熱伝導素子は、融着領域104に存在して、不織布帛100のこれらの領域に熱を伝導する。
【0079】
図8A〜図8Cに、不織布帛100に融着領域104を形成するために利用可能な別の方法が例示されている。まず、図8Aに描かれているように、不織布帛100を第2のプレート112の近傍または上に配置するか、あるいは別の表面に配置する。図8Bに描かれているように、複数の融着領域104のうちの1つの融着領域104の形状を有する加熱ダイス115を、不織布帛100に接触させて圧縮し、不織布帛100の所定領域を加熱する。ダイス115を取り除くと、融着領域104の1つが現れる。その他の融着領域104の一般形状を有する更なるダイスを使用して、同様に残りの融着領域104を形成することができる。この方法の利点は、ダイス115と他の各ダイスとを異なる温度に加熱し、不織布帛100に異なる時間接触させ、そして異なる力で不織布帛100を圧縮することによって、結果的に得られる様々な融着領域104の特性を多様化できることである。
【0080】
図9に、不織布帛100に融着領域104を形成するために利用可能な更に別の方法が例示されている。この方法においては、第2のプレート112または別の表面の上に不織布帛100を配置し、レーザ装置116を使用して不織布帛100の特定領域を加熱することによって、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料を融着して融着領域104を形成する。レーザ装置116の出力、焦点、および速度のいずれかまたは全てを調節することによって、融着領域104の加熱度を調節または変更することができる。さらに、様々な融着領域104を異なる温度に加熱して、フィラメント103の融着度を変えることによって、結果的に得られる様々な融着領域104の特性を多様化できることである。適切なレーザ装置116の例としては、従来の様々なCO2またはNd:YAGレーザ装置がある。
V−複合要素
不織布帛100は、複合要素を形成するために、様々な布帛、材料または他の部材と結合することができる。不織布帛100と他の部材とを結合することにより、不織布帛100および他の部材の両方の特性が、複合要素に組み込まれる。図10および図11に、部材120が、第2の表面102において不織布帛100に結合されている複合要素の一例が描かれている。部材120は、不織布帛100の寸法と同様の寸法を有するものとして描かれているが、部材120は、その長さが小さくても大きくてもよいし、その幅が小さくても大きくてもよいし、その厚さが小さくても大きくてもよい。例えば、部材120が水分を吸収したり逃がしたりする布帛である場合、不織布帛100と部材120との組み合わせは、衣料品着用者が発汗するようなスポーツ活動中に使用される衣料品に適している。別の例として、部材120がポリマー発泡体などの圧縮可能な材料である場合は、不織布帛100と部材120との組み合わせは、他のスポーツ選手や設備との接触または衝突の可能性のあるスポーツ活動のためのパッドなど、緩衝作用(すなわち、衝撃力の減衰)が好都合な衣料品に適している。更なる例として、部材120がプレートまたはシートである場合、不織布帛100と部材120との組み合わせは、緊急の衝撃からの保護を提供する衣料品に適している。したがって、様々な布帛、材料または他の部材を不織布帛100の表面に結合して、更なる特性を有する複合要素を形成することができる。
【0081】
フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料を用いて、不織布帛100を部材120などの部材に固定してもよい。上記のように、熱可塑性ポリマー材料は、加熱されると溶融し、充分に冷却されると固体状態に戻る。熱可塑性ポリマー材料のこの特性に基づいて、熱融着法を利用し、不織布帛100および部材120など、複合要素の部分を結合する融着部を形成してもよい。ここで使用される用語「熱融着」またはその変形は、2つの要素間の固定技術であって、要素の少なくとも一方において熱可塑性ポリマー材料が、軟化または溶融して、冷却時には要素の材料が互いに固着するような固定技術であると定義される。同様に、用語「融着部」またはその変形は、2つの要素の少なくとも一方において熱可塑性ポリマー材料が、軟化または溶融して、冷却時には要素の材料が互いに固着するような工程を経て2つの要素を結合する結合部、接続部または構造であると定義される。例として、熱融着には、(a)熱可塑性ポリマー材料をそれぞれ組み込んだ2つの要素が溶融または軟化し、熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って(例えば、熱可塑性ポリマー材料の間の境界層を超えて拡散して)、冷却時に共に固定されること、(b)熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ第1の布帛要素が溶融または軟化し、熱可塑性ポリマー材料が第2の布帛要素の構造内に侵入または浸透して(例えば、第2の布帛要素内のフィラメントやファイバの周りに拡がったり、フィラメントやファイバと結合したりして)、冷却時に布帛要素を共に固定すること、(c)熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ布帛要素が溶融または軟化し、熱可塑性ポリマー材料が別の要素(例えば、ポリマー発泡体やシート、プレート、構造素子)に形成された隙間や空洞に侵入または浸透して、冷却時に要素を共に固定することが含まれる。熱融着は、1つの要素のみが熱可塑性ポリマー材料を含んでいる場合や、両方の要素が熱可塑性ポリマー材料を含んでいる場合に実行することができる。さらに、熱融着は、一般的に、縫い目や接着剤の使用を伴わないが、熱を用いて要素を直接的に結合することを伴う。しかし、ある状況においては、融着部や、熱融着による要素の結合を補強するために、縫い目や接着剤を利用してもよい。また、要素の結合や、融着部の補強のために、ニードルパンチ法を利用してもよい。
【0082】
不織布帛100と部材120とを結合する融着部を形成するために、熱融着法を利用してもよいが、融着部の構成は、少なくとも部分的に部材120の材料および構造に左右される。第1の例として、部材120は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成されている場合、不織布帛100および部材120の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に不織布帛100と部材120とが固定される。しかし、部材120の熱可塑性ポリマー材料の融点が、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料よりもかなり高い場合、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、部材120の構造や隙間、空洞に侵入して、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。第2の例として、部材120は、熱可塑性ポリマー材料を含まない布帛から形成されていてもよく、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、部材120内のフィラメントの周りに拡がったり、フィラメントと結合したりして、冷却時にこれらの布帛要素を共に固定するようにしてもよい。第3の例として、部材120は、熱可塑性ポリマー材料を含むポリマー発泡体、ポリマーシートまたはプレートであってもよく、不織布帛100および部材120の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に不織布帛100および部材120を共に固定するようにしてもよい。第4の例として、部材120は、熱可塑性ポリマー材料を含まないポリマー発泡体、ポリマーシートまたはプレートであってもよく、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、部材120内の隙間や空洞に侵入または浸透して、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。図11を参照して、複数の融着部要素105(例えば、不織布帛100および部材120の両方または一方の熱可塑性ポリマー材料)が、不織布帛100と部材120との間に延びてこれらの要素を共に結合しているものとして描かれている。したがって、部材120が様々な材料から形成されていようと、様々な構造のうちの1構造を有していようと、融着部を利用して、不織布帛100と部材120とを結合することができる。
【0083】
図12A〜図12Cを参照して、複合要素を形成するための一般的な製造方法について検討する。まず、図12Aに描かれているように、不織布帛100および部材120を、第1のプレート111と第2のプレート112との間に配置する。そして、図12Bに描かれているように、不織布帛100と部材120とを圧縮または接触させるために、プレート111、112を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着部を形成して不織布帛100と部材120とを結合するために、不織布帛100および部材120に熱を加える。すなわち、不織布帛100および部材120の温度を上昇させて、不織布帛100と部材120との間の界面において熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融させる。不織布帛100および部材120の材料や部材120の全体構造に応じて、熱伝導により不織布帛100および部材120の温度を上昇させるために、第1のプレート111のみを加熱してもよいし、第2のプレート112のみを加熱してもよいし、プレート111、112の両方を加熱してもよい。プレート111、112を離間した後、図12Cに描かれているように、不織布帛100および部材120の両方により形成された複合要素を取り出し、冷却する。
【0084】
図12A〜図12Cに関連して検討した製造方法は、一般的に、(a)不織布帛100と部材120とを別々に形成することと、(b)次に、不織布帛100と部材120とを結合して、複合要素を形成することとを含む。図13を参照して、不織布帛100の製造中に、フィラメント103を部材120上に直接堆積する方法が描かれている。まず、プレート112上に部材120を載置するが、このプレート112は、移動コンベアであってもよい。そして、延長ノズル121により熱可塑性ポリマー材料を押し出し、熱可塑性ポリマー材料から複数のフィラメント103を形成する。フィラメント103を部材120上に落下させて、フィラメント103を部材120の表面上に集積、載置、または堆積することにより、不織布帛100を形成する。冷却すると、不織布帛100は、効果的に部材120と結合し、複合要素を形成する。したがって、フィラメント103は、不織布帛100の製造中に、部材120上に直接堆積することができる。同様の製造方法として、複合要素を形成するために、不織布帛100の表面に対して、材料(例えば、発泡材、溶融ポリマー、コーティング)をスプレーしたり、堆積したり、塗布したりしてもよい。さらに、フィラメント103の層を繰り返し堆積することによって、2層以上の不織布帛100を含む複合要素を形成することもできる。フィラメント103の各層が異なる特性を有している場合や、異なるポリマー材料から形成されている場合、結果的に得られる複合要素は、様々な層の特性を併せ持つことができる。
【0085】
不織布帛100および部材120から複合要素を形成するために、上記で検討した一般的な方法を利用してもよいが、他の方法を利用してもよい。熱伝導によって不織布帛100と部材120とを加熱するよりも、むしろ高周波加熱や化学的加熱を含む他の方法を利用してもよい。ある方法においては、プレート111とプレート112との間で圧縮する前に、第2の表面102および部材120の表面を放射加熱により加熱してもよい。融着部を形成する表面のみの温度を上昇させるために放射加熱を利用する利点は、不織布帛100および部材120の他の部分の熱可塑性ポリマー材料があまり加熱されないことである。ある方法においては、融着部を補強するために、不織布帛100と部材120との間で縫い目または接着剤を利用することもできる。
【0086】
図10〜図12Cにおいて、不織布帛100は、融着領域104を含まない構成を有するものとして描かれている。複合要素に様々な特性を付与するために、不織布帛100に融着領域104を形成してもよい。ある方法においては、不織布帛100を別の部材(例えば、部材120)と結合する前に、融着領域104を形成してもよい。しかし、他の方法においては、熱融着工程中または熱融着工程後に、融着領域104を形成してもよい。したがって、複合要素の様々な製造方法において、如何なる段階で融着領域104を形成してもよい。
VI−複合要素の構成
以上、複合要素の一般的な構造と、複合要素の形成方法に関する概念について示した。更に具体的な例として、機械操作による布帛130、シート140,発泡体層150、および複数の紐体160に不織布帛100を結合した様々な複合要素の構成を、以下に開示する。
【0087】
図14および図15に、不織布帛100および機械操作による布帛130を含む複合要素の例が描かれている。不織布帛100は、ランダムに分布するフィラメント103から形成されており、布帛130は、1つ以上の糸131を機械的に操作して織成構造またはインターループ構造を形成することによって形成される。インターループ構造で製造する場合、例えば、平編み、幅広管状丸編み、幅狭管状丸編みジャカード、シングル丸編みジャカード、ダブル丸編みジャカード、経編みジャカード、ダブルニードルバーラッシェル編みなど、様々な編成方法で布帛130を形成することができる。したがって、布帛130は、様々な構造を有することができ、様々な緯編み技術、経編み技術を利用して、布帛130を製造することができる。布帛130の糸131は、少なくとも一部が熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよいが、数多くの機械操作による布帛が、天然繊維(例えば、綿や絹)または熱硬化性ポリマー材料から形成されている。不織布帛100と布帛130との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料は、糸131の周りに拡がったり、糸131に接着したり、あるいは糸131の構造体に侵入したりして、冷却時に不織布帛100および布帛130を共に結合する。具体的には、図15に、様々な融着部要素105が、糸131の周りに拡がったり、糸131に侵入したりして、融着部を形成するものとして描かれている。図12A〜図12Cに関連して上記で検討した方法と同様の方法を利用して、不織布帛100と布帛130との間に融着部を形成してもよい。すなわち、不織布帛100と布帛130との間の融着部は、例えば、プレート111とプレート112との間で要素を圧縮、および加熱することによって形成することができる。
【0088】
不織布帛100と布帛130との組み合わせによって、不織布帛100または布帛130の単独に勝る利点を付与することができる。例えば、布帛130は、一方向伸縮性を示し、糸131の構造によって布帛130が一方向に伸縮可能となっているが、その伸縮性は垂直方向に限定されている。不織布帛100と布帛130とが結合すると、複合要素も、それに応じた一方向伸縮性を示す。別の例として、この複合要素を様々な衣料品に組み込んで、衣料品着用者の皮膚に接触するように布帛130を配置することもでき、布帛130用に選択される材料および布帛130の構造によって、不織布帛100の単独よりも高度な快適性を付与することもできる。これらの利点に加えて、様々な融着領域104を不織布帛100に形成して、異なる程度の透過性、耐久性、耐伸張性を複合要素の特定の領域に付与することができる。したがって、複合要素は、不織布帛100も布帛130も単独では付与不可能な特性を組み合わせて付与する構成を有することができる。
【0089】
図16および図17に、不織布帛100とシート140とを含む複合要素の別の例が描かれている。シート140は、ポリマーのシートまたはプレート、スエード、合成スエード、金属、または木材から形成することができ、例えば、柔軟性があっても無くてもよい。不織布帛100とシート140との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、シート140の隙間や空洞に侵入または浸透して、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。シート140が熱可塑性ポリマー材料から形成されている場合には、不織布帛100およびシート140の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って(例えば、熱可塑性ポリマー材料の間の境界層を超えて拡散して)、冷却時に不織布帛100およびシート140を共に固定するようにしてもよい。図12A〜図12Cに関連して上記で検討した方法と同様の方法を利用して、不織布帛100とシート140との間に融着部を形成してもよい。代替構成として、縫い目や接着剤を利用したり、フィラメント103をシート140内へと押し込み、貫通させるニードルパンチ法を利用したりして、不織布帛100とシート140とを結合したり、融着部を補強したりしてもよい。
【0090】
不織布帛100とシート140との組み合わせは、例えば、緊急の衝撃からの保護を提供する衣料品に適している。不織布帛100とシート140とを結合する縫い目、リベットなどの要素が無いことにより、比較的滑らかな界面が形成される。衣料品に組み込まれた場合、不織布帛100とシート140とを結合する領域に切れ目がなければ、衣料品着用者に快適性を付与することができる。別の例として、シート140の端縁部が、不織布帛100の端縁部から内側に離間しているものとして描かれている。この複合要素が衣料品などの製品に組み込まれる場合、不織布帛100の端縁部を利用して、他の布帛要素または衣料品の一部に複合要素を結合してもよい。これらの利点に加えて、異なる程度の透過性、耐久性、および耐伸張性を複合要素の領域に付与するために、様々な融着領域104を不織布帛100に形成してもよい。
【0091】
シート140は、固体(中実)の連続的な構成を有するものとして描かれているが、複合要素において、シート140が不在の様々な領域があってもよい。図18Aを参照して、シート140は、不織布帛100を横切る様々な材料長尺片の構成を有している。図18Bに、シート140が格子構造を有する同様の構成が描かれている。複合要素への強度および耐引裂性の付与に加えて、シート140の長尺片構造および格子構造は、不織布帛100の一部を露出させることによって、露出領域において透過性を付与することができる。図16〜図18Bの各図において、シート140は、不織布帛100の厚さと同程度の厚さを有するものとして描かれている。しかし、図18Cにおいては、シート140は、不織布帛100の厚さよりもかなり薄い厚さを有するものとして描かれている。シート140は、厚さが薄くても、透過性を付与する一方、強度と耐引裂性とを付与することができる。
【0092】
図19および図20に、2層の不織布帛100と発泡体層150とを備えた複合要素の更なる例が描かれている。発泡体層150は、熱硬化性または熱可塑性の発泡ポリマー材料から形成されたものであってもよい。発泡体層150が熱硬化性ポリマー材料から形成されている構成においては、2層の不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が発泡体層150の両側の隙間または空洞に侵入または浸透して、融着部を形成し、これらの要素を共に固定することができる。発泡体層150が熱可塑性ポリマー材料から形成されている構成においては、2層の不織布帛100および発泡体層150の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、融着部を形成して、これらの要素を共に固定することができる。
【0093】
図12A〜図12Cに関連して上記で検討した方法と同様の方法を利用して、2層の不織布帛100と発泡体層150との間に融着部を形成してもよい。具体的には、発泡体層150を2層の不織布帛100の間に配置して、これら2つの要素をプレート111とプレート112との間に配置するとよい。圧縮、加熱すると、2層の不織布帛100と発泡体層150の両面との間に融着部を形成することができる。さらに、2層の不織布帛100を、発泡体層150の周囲に沿って熱融着してもよい。すなわち、2層の不織布帛100を互いに結合するために、融着部を利用することができる。発泡体層150に加えて、他の中間要素(例えば、布帛130またはシート140)を2層の不織布帛100の間に結合してもよい。フィラメント103を発泡体層150内へと押し込み、貫通させるニードルパンチ法や、縫い目または接着剤を利用して、不織布帛100と発泡体層150とを結合したり、融着部を補強したりしてもよい。
【0094】
2層の不織布帛100と発泡体層150との組み合わせは、他のスポーツ選手や設備との接触または衝突の可能性のあるスポーツ活動のためのパッドなど、緩衝作用(すなわち、衝撃力の減衰)が好都合な衣料品に適している。2層の不織布帛100と発泡体層150とを結合する領域に切れ目がなければ、衣料品着用者に快適性を付与することができる。2層の不織布帛100の端縁部を利用して、他の布帛要素または衣料品の一部に複合要素を結合してもよい。これらの利点に加えて、異なる程度の透過性、耐久性、および耐伸張性を複合要素に付与するために、様々な融着領域104を不織布帛100に形成してもよい。
【0095】
図21および図22に、不織布帛100と複数の紐体160とを含む複合要素の例が描かれている。紐体160は、不織布帛100に固定されており、表面101、102のいずれかに略平行な方向に延びている。図22の断面図を参照して、表面101、102に対する紐体160の相対位置は、大幅に異なっていてもよい。具体的には、第1の表面101上に紐体160を配置してもよいし、第1の表面101内に紐体160を部分的に埋め込んでもよいし、第1の表面101に近接してその下方に紐体160を窪ませてもよいし、第1の表面101から内側に紐体160を離間させて表面101と表面102との間に配置してもよいし、第2の表面102の近傍に紐体160を配置してもよい。熱融着法を利用して、紐体160を不織布帛100に固定してもよい。すなわち、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融して、紐体160を不織布帛100に結合する融着部を形成してもよい。不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料の軟化度または溶融度に応じて、紐体160を第1の表面101上に配置してもよいし、第1の表面101より内側に配置してもよい。
【0096】
紐体160は、長さが実質的に幅および厚さよりも大きい、任意の略1次元材料から形成することができる。使用材料および所望の特性に応じて、紐体160は、個々のフィラメントであってもよいし、複数のフィラメントを含む糸であってもよいし、複数の糸を含む撚糸であってもよい。以下に詳述するように、紐体160の適切な材料としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラアラミド繊維およびメタアラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマーが例示される。ある構成では、紐体160は、金属ワイヤーやケーブルであってもよい。
【0097】
不織布帛100を形成する熱可塑性ポリマー材料と比較して、紐体160用の上記材料の多くは、引張強度および耐伸張性が高い。すなわち、紐体160は、不織布帛100よりも強く、引張力を受けた時の伸縮性が、不織布帛100よりも小さくてもよい。不織布帛100と紐体160との組み合わせは、複合要素が1方向に伸張し、実質的に耐伸張性があり、別の方向に対しては高強度である構造を提供する。図21を参照して、直交する二方向を矢印161、162で定義する。複合要素が、矢印161の方向に引張力を受ける(すなわち、引っ張られる)と、不織布帛100は大幅に伸張することができる。しかし、複合要素が、矢印162の方向に引張力を受ける(すなわち、引っ張られる)と、紐体160は、力に対抗するので、不織布帛100よりも耐伸張性が高い。したがって、紐体160は、複合素子に対して特定の方向の強度と耐伸張性とを付与するように配向させてもよい。ここでは、紐体160は、耐伸張性を付与するものとして検討されているが、大幅に伸張する材料から紐体160を形成してもよい。複合要素に他の特性を付与するために、紐体160を利用してもよい。例えば、紐体160は、電力やデータを伝達するために、導電性であってもよいし、あるいは、特に審美性を付与するために、紐体160を不織布帛100内に配置してもよい。
【0098】
図21には、紐体160が、互いに略平行であるものとして描かれており、紐体160の端部は、不織布帛100の端縁部から内側に離間しているものとして描かれている。他の複合要素構成において、紐体160を他の方向に配置してもよく、全体あるいは一部分のみが、不織布帛100を横切っていてもよい。図23Aを参照して、紐体160は、互いに交差しているものとして描かれている。紐体160が互いに向いている方向の角度を考えると、紐体160は、矢印161の方向の伸縮性を少なくとも部分的に制限するが、複合要素は、矢印162の方向には実質的に耐伸張性がある。図23Bに、紐体160が互いに直角に交差している同様の構成が描かれている。この構成においては、紐体160は、矢印161、162の両方向に耐伸張性を付与することができる。すなわち、複合要素は、紐体160の配置方向により、あらゆる方向に耐伸張性を有することができる。また別の事項として、図23Aにおいては、紐体160の端部が、不織布帛100の端縁部から内側に離間しているのに対し、図23Bにおいては、紐体160の両端が、不織布帛100の端縁部まで延びている。図23Cにおいては、紐体160は、波形または非線形構造を有するものとして描かれている。この構成においては、紐体160は、矢印162の方向に若干の伸縮性が許容されるものであってもよい。しかし、紐体160が伸張により真っ直ぐになると、その後、紐体160は、実質的に耐伸張性を有し、矢印162の方向の強度を提供するものであってもよい。図23Dに、紐体160が非平行に外側に向かって放射状に配置されている別の構成が描かれている。
【0099】
ある複合要素の構成において、複合要素の特性に更に影響を与えるために、融着領域104を追加してもよい。図23Eを参照して、単一の融着領域104が、矢印161の方向に不織布帛100を横切っている。融着領域104が、不織布帛100の他の領域よりも高耐伸張性を示すことを考えれば、図23Eの融着領域により矢印161の方向に若干の耐伸張性を付与し、紐体160により矢印162の方向に耐伸張性を付与するようにしてもよい。ある構成においては、図23Fに描かれているように、融着領域が、紐体160に沿って矢印162の方向に延びていてもよい。したがって、融着領域104を紐体160と共に利用して、複合要素に特定の特性を付与することができる。
【0100】
紐体160の材料特性は、紐体160内で利用される特定の材料に関連する。紐体160の特定の材料選択に関連する材料特性としては、例えば、引張強度、引張弾性率、密度、柔軟性、靭性および耐久性がある。紐体160に適したものとして指摘した各材料は、様々な材料特性の組み合わせを示す。したがって、紐体160の特定の材料選択に際して、これら各材料の材料特性を比較するとよい。引張強度は、引張力を受けた(すなわち、引っ張られた)ときの耐破壊性の尺度である。すなわち、引張力を受けたときに、高引張強度を有する材料は、低引張強度を有する材料よりも、破断する可能性が低い。引張弾性率は、引張力を受けたときの耐伸張性の尺度である。すなわち、引張力を受けたときに、高引張弾性率を有する材料は、低引張弾性率を有する材料よりも、伸張する可能性が低い。密度は、単位体積あたりの質量の尺度である。すなわち、体積が同じであれば、高密度の材料は、低密度の材料よりも重量が重い。
【0101】
ナイロンは、他の各材料と比較すると、引張強度が比較的低く、引張弾性率が比較的低く、密度が平均的である。鋼は、他の材料と比較すると、引張強度が平均的で、引張弾性率が若干高く、密度が比較的高い。ナイロンは、鋼よりも密度が低い(すなわち、鋼よりも軽い)が、ナイロンは、鋼よりも強度が低く、伸張しやすい傾向がある。逆に、鋼は、強度が高く、伸縮性が低く、その一方で、鋼は、密度がかなり高い(すなわち、ナイロンよりも重い)。工業繊維(例えば、炭素繊維やアラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー)は、それぞれ、鋼と同程度の引張強度と引張弾性率とを示す。さらに、工業繊維は、ナイロンと同程度の密度を示す。すなわち、工業繊維は、引張強度および引張弾性率が比較的高いが、密度が比較的低い。一般的に、各工業繊維は、引張強度が0.60ギガパスカルを超え、引張弾性率が50ギガパスカルを超え、密度が、2.0グラム/立法センチメートルである。
【0102】
複合要素の特定の構成を選択する際、材料特性に加えて、紐体160の様々な構成の構造特性を考慮してもよい。紐体160の構造特性は、紐体160を形成するために利用する特定の構造に関連する。紐体160の特定の構成を選択する際に関連する構造特性の例としては、デニール、層の数、破断力、撚糸および個々のフィラメントの数が例示される。
【0103】
上記の検討に基づいて、複合要素を形成するために、(例えば、縫合や接着により)不織布帛100を他の様々な部材に熱融着または結合してもよい。他の部材に不織布帛100を結合する利点は、複合要素が、一般的に不織布帛100および他の部材の両方からの特性の組み合わせを含んでいるということである。例として、複合要素は、布帛130、シート140、発泡体層150、紐体160のいずれかに不織布帛100を結合することにより形成することができる。
VII−継ぎ目の形成
製品に不織布帛100を組み込むために、不織布帛100をその製品の他の要素と結合して継ぎ目を形成する場合がある。例えば、不織布帛100を、他の不織布帛要素、様々な機械操作による布帛要素、またはポリマーシートと結合してもよい。縫合や接着を利用して、不織布帛100を製品の他の要素に結合してもよいが、熱融着法により継ぎ目を形成してもよい。
【0104】
不織布帛100を他の要素に結合する方法の一例として、結合して継ぎ目106を形成する1対の不織布帛100の要素が、図24および図25に描かれている。すなわち、一方の不織布帛100の端縁領域が、継ぎ目106で、他方の不織布帛100の端縁領域に結合されている。具体的には、一方の不織布帛100の第1の表面101を他方の不織布帛100の第1の表面101に熱融着することによって、継ぎ目106を形成する。従来の縫合継ぎ目と同様に、各不織布帛100の第1の表面101を継ぎ目106で内側に向けて対向させ、第1の表面101を互いに結合する。従来の縫合継ぎ目とは対照的に、各不織布帛100の第1の表面101を互いに結合するために、融着部を利用する。しかし、ある構成においては、継ぎ目106を強化するために、縫合または接着を利用してもよい。
【0105】
次に、図26A〜図26Dを参照して、継ぎ目106を形成するための一般的な製造方法について説明する。まず、図26Aに描かれているように、第1の継ぎ目形成ダイス117と第2の継ぎ目形成ダイス118との間に、1対の不織布帛100の要素を配置する。そして、図26Bに描かれているように、1対の不織布帛100の要素の端縁領域を圧縮または接触させるために、継ぎ目形成ダイス117、118を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着部を形成して不織布帛100の要素の端縁領域を結合するために、継ぎ目形成ダイス117、118は、端縁領域に熱を加える。すなわち、継ぎ目形成ダイス117、118は、1対の不織布帛100の要素の端縁領域の温度を上昇させて、端縁領域の間の界面において熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融させる。継ぎ目形成ダイス117、118を離間すると、図26Cに描かれているように、1対の不織布帛100の要素の端縁領域間に継ぎ目106が形成されている。冷却後、図26Dに描かれているように、1対の不織布帛100の要素を開いてもよい。継ぎ目106の形成後、継ぎ目106における1対の不織布帛100の要素の端縁領域の下に延びる程度を制限するために、継ぎ目106をトリミングしてもよい。
【0106】
継ぎ目106を形成するために、上記の一般的な方法を利用してもよいが、その他の方法を利用してもよい。不織布帛100の要素の端縁領域を熱伝導により加熱する代わりに、高周波加熱、化学的加熱または放射加熱など、他の方法を利用してもよい。ある方法においては、1対の不織布帛100の要素の間で、縫合や接着剤を利用して、融着部を補強してもよい。代替方法として、図27に描かれているように、1対の不織布帛100の要素を第2のプレート112などの表面に載置して、加熱ローラ119により継ぎ目106を形成してもよい。
【0107】
融着領域104の形成と同様に、継ぎ目106の形成には、継ぎ目106の領域に配置された様々なフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の軟化または溶融が含まれる。フィラメント103の状態変化の程度に応じて、継ぎ目106の領域の様々なフィラメント103は、(a)繊維状構造のままであってもよいし、(b)全体が液状に溶融した状態であって、冷えれば非繊維状構造になってもよいし、(c)一部のフィラメント103または個々のフィラメント103の一部が繊維状であり、他のフィラメント103または個々のフィラメント103の一部が非繊維状になる中間構造をとってもよい。図25を参照して、フィラメント103は、継ぎ目106の領域において繊維状構造のままであるものとして描かれているが、非繊維状構造へと溶融していてもよいし、中間構造であってもよい。したがって、継ぎ目106の領域のフィラメント103は、一般的に、不織布帛100の他の領域のフィラメント103よりも高融着度で融着しているが、融着度は、大幅に異なっていてもよい。
【0108】
1対の不織布帛100の要素の間に継ぎ目106を形成する際には、様々なフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に共に固定される。不織布帛100を他の種類の要素と結合して、同様の継ぎ目106を形成してもよい。第1の例として、図28Aにおいて、不織布帛100は、機械操作による布帛130と継ぎ目106で結合しているものとして描かれている。布帛130の糸131は、少なくとも一部が熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよいが、機械操作による布帛の多くは、天然繊維(例えば、綿や絹)または熱硬化性ポリマー材料から形成されている。継ぎ目106において不織布帛100と布帛130との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料は、糸131の周りに拡がったり、糸131に結合したり、糸131の構造体に侵入したりして、冷却時に不織布帛100および布帛130を共に固定する。第2の例として、図28Bにおいて、不織布帛100は、継ぎ目106でシート140と結合しているものとして描かれている。ある構成において、シート140は、可撓性のポリマーシートであってもよい。継ぎ目106において不織布帛100とシート140との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料がシート140内の隙間や空洞に侵入したり、浸透したりして、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。シート140が熱可塑性ポリマー材料から形成されている場合には、不織布帛100およびシート140の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に継ぎ目106において不織布帛100およびシート140を共に固定するようにしてもよい。
【0109】
継ぎ目106の領域においても、不織布帛100の要素は、その厚さが実質的に均一なものとして描かれている。継ぎ目106の形成に使用する温度および圧力に応じて、継ぎ目106の構成を変更してもよく、その他様々な構成が含まれる。図29Aを参照して、不織布帛100の要素は、継ぎ目106の領域において厚さが薄くなっており、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、非繊維状構造であるものとして描かれている。図29Bに描かれているように、継ぎ目106は、先の尖った構造であってもよい。図29Cに描かれているように、継ぎ目106の形成に使用する温度および圧力は、段付き構造を付与するものであってもよい。したがって、継ぎ目106における1対の不織布帛100の要素の構成は、大幅に異なるものであってもよい。さらに、不織布帛100を布帛130やシート140など、他の要素と結合すると、継ぎ目106に関して同様の構成が得られる。
【0110】
不織布帛100を他の要素に結合する方法の別の例として、図30および図31に、結合して継ぎ目107を形成する1対の不織布帛100の要素が描かれている。この構成において、一方の不織布帛100の端縁領域は、継ぎ目107において、他方の不織布帛100の端縁領域に重なり合って結合する。1対の不織布帛100の要素を互いに結合するために、融着部を利用するが、継ぎ目107を補強するために縫合や接着を利用してもよい。さらに、布帛130やシート140など、他の種類の要素に単一の不織布帛100を結合して、同様の継ぎ目107を形成してもよい。
【0111】
次に、図32A〜図32Cを参照して、継ぎ目107を形成するための一般的な製造方法について説明する。まず、図32Aに描かれているように、1対の不織布帛100の要素を第1の継ぎ目形成ダイス117と第2の継ぎ目形成ダイス118との間に重ね合わせて配置する。そして、図32Bに描かれているように、1対の不織布帛要素100の端縁領域を圧縮または接触させるために、継ぎ目形成ダイス117、118を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着部を形成して、不織布帛100の要素の端縁領域を結合するために、継ぎ目形成ダイス117、118により端縁領域に熱を加える。すなわち、継ぎ目形成ダイス117、118により1対の不織布帛100の要素の端縁領域の温度を上昇させて、端縁領域間の界面において熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融させる。継ぎ目形成ダイス117、118を離間すると、図32Cに描かれているように、継ぎ目107が、1対の不織布帛100の要素の端縁領域に形成されている。
【0112】
継ぎ目107を形成するために、上記の一般的な方法を利用してもよいが、その他の方法を利用してもよい。1対の不織布帛100の要素の端縁領域を熱伝導により加熱する代わりに、高周波加熱、化学的加熱または放射加熱など、他の方法を利用してもよい。ある方法においては、1対の不織布帛100の要素の間で、縫い目や接着剤を利用して、融着部を補強してもよい。代替方法として、図33に描かれているように、1対の不織布帛100の要素を第2のプレート112などの表面に載置して、加熱ローラ119により継ぎ目107を形成してもよい。図31を参照して、フィラメント103は、継ぎ目107の領域において繊維状構造のままであるものとして描かれているが、非繊維状構造へと溶融していてもよいし、中間構造であってもよい。したがって、継ぎ目107の領域のフィラメント103は、一般的に、不織布帛100の他の領域のフィラメント103よりも高融着度で融着しているが、融着度は、大幅に異なっていてもよい。
【0113】
図30および図31に、1対の不織布帛100の要素の第1の表面101が、互いに同一平面または面一であるものとして描かれている。同様に、1対の不織布帛100の要素の第2の表面102も、互いに同一平面または面一であるものとして描かれている。継ぎ目107の形成に使用する温度および圧力に応じて、継ぎ目107の構成を変更してもよく、その他様々な構成が含まれる。図34Aを参照して、表面101、102は、継ぎ目107において内側に撓んでおり、熱可塑性ポリマー材料は、非繊維状構造を有するものとして描かれている。図34Bにおいては、表面101、102は、内側により急峻な角度となっており、これは、継ぎ目形成ダイス117、118により加わる圧力によって得られる。別の構成として、図34Cにおいて、1対の不織布帛100の要素は、継ぎ目107において非同一平面の構成で結合されているものとして描かれている。したがって、継ぎ目107における1対の不織布帛100の要素の構成は、大幅に異なるものであってもよい。さらに、不織布帛100を布帛130やシート140など、他の要素と結合すると、継ぎ目107に関して同様の構成が得られる。
VIII−一般的な製品の構成
衣料品(例えば、シャツ、ジャケットなどの上着、ズボン、履物)や入れ物、家具の張り物において、不織布帛100や、多数の不織布帛100の要素、様々な複合要素構成を利用することができる。ベッドカバーやテーブルカバー、タオル、旗、テント、帆、パラシュート、さらに、自動車や航空宇宙の用途や、フィルター材料、医療用布帛、地質用布帛、農業用布帛、工業用衣料品など、工業用目的において、不織布帛100の様々な構成を利用することができる。したがって、不織布帛100は、個人用目的にも工業用目的にも様々な製品に利用することができる。
【0114】
不織布帛100は、様々な製品に利用することができるが、以下の説明により、不織布帛100が組み込まれた衣料品を例示する。すなわち、以下の説明により、シャツ200、ズボン300および履物400に不織布帛100を組み込む様々な方法を例示する。さらに、製品における不織布帛100の利用に関連する様々な概念を例示するために、シャツ200、ズボン300および履物400の様々な構成例を提供する。したがって、以下に概説する概念は、具体的に様々な衣料品に適用されているが、この様な概念をその他様々な製品に適用することもできる。
IX−シャツの構成
図35A〜図35Hに、シャツ200の様々な構成が、胴体領域201と、胴体領域201から外側に延びている1対の腕領域202とを含むものとして描かれている。胴体領域201は、着用者の胴体に対応し、着用時に胴体の少なくとも一部を覆う。胴体領域201の上部領域には、首開口部203が形成されており、シャツ200着用時に、そこから着用者の首および頭が突出する。同様に、胴体領域201の下部領域には、ウェスト開口部204が形成されており、シャツ200着用時に、そこから着用者のウェストまたは骨盤領域が突出する。腕領域202は、それぞれ着用者の右腕と左腕とに対応し、シャツ200着用時には、右腕および左腕の少なくとも一部を覆う。腕領域202には、それぞれ腕開口部205が形成されており、シャツ200着用時に、そこから着用者の手、手首または腕が突出する。シャツ200は、シャツ型衣服、特に長袖シャツの構成を有する。一般的に、シャツ型衣服は、着用者の胴体の一部を覆い、着用者の腕に及ぶものであってもよい。更なる例において、シャツ200の一般的な構造を有する衣料品は、半袖シャツやタンクトップ、肌着、ジャケット、コートなど、他のシャツ型衣服の構成を有していてもよい。
【0115】
図35Aおよび図36Aに、シャツ200の第1の構成が描かれている。シャツ200の大部分が、不織布帛100から形成されている。具体的には、胴体領域201および各腕領域202は、主に不織布帛100から形成されている。シャツ200は、不織布帛100の単一要素から形成されていてもよいが、一般的に、不織布帛100の多数の結合要素から形成されている。図示のように、例えば、胴体領域201の少なくとも前部領域が、不織布帛100の単一要素から形成され、各腕領域202は、不織布帛100の異なる要素から形成されている。不織布帛100の様々な要素を共に結合するために、1対の継ぎ目206が、胴体領域201と腕領域202との間に延びている。一般的に、継ぎ目206は、不織布帛100の要素の端縁領域を互いに熱融着した領域に形成されている。図36Aを参照して、継ぎ目206の一方が、継ぎ目106の一般的な構成を有するものとして描かれているが、継ぎ目107または別の種類の継ぎ目の構成を有していてもよい。継ぎ目206の形成または補強のために、縫合や接着を利用してもよい。
【0116】
図35Bおよび図36Bに、シャツ200の第2の構成が描かれている。図35Aの構成と同様に、シャツ200の大部分が、不織布帛100から形成されている。シャツ200の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が、不織布帛100に形成されている。具体的には、融着領域104が、首開口部203、ウェスト開口部204および各腕開口部205の周囲に形成されている。個人がシャツ200を着脱するときに各開口部203〜205が伸張することを考えて、これらの領域に高耐伸張性を付与するために、融着領域104が開口部203〜205の周囲に配置されている。シャツ200の融着領域104内のフィラメント103は、一般的に、シャツ200のその他の領域内のフィラメント103よりも高融着度で融着しており、図36Bに描かれているように、非繊維状構造であってもよい。シャツ200の融着領域104内のフィラメント103は、繊維状構造であってもよいし、中間構造であってもよい。高耐伸張性に加えて、融着領域104は、開口部203〜205の周囲領域に高耐久性を付与する。
【0117】
図35Cおよび図36Cに、シャツ200の第3の構成が、更なる融着領域104を含むものとして描かれている。シャツ200着用時にシャツ200の肘領域が比較的大きな摩耗を受けることを考えて、高耐久性を付与するために、複数の融着領域104のうちの一部を肘領域に配置してもよい。また、シャツ200の肩領域に延びるバックパックのストラップにより、肩領域が摩耗して伸びる可能性がある。したがって、耐久性と耐伸張性との両方を付与するために、更なる融着領域104をシャツ200の肩領域に配置する。図36Cに描かれているように、不織布帛100において肩領域内および継ぎ目206の周囲に位置する領域は、肩領域において効果的に継ぎ目206および融着領域104を形成する。2つの別個の方法を利用して、これらの領域を形成してもよい。すなわち、第1の熱融着方法で継ぎ目206を形成し、第2の加熱方法で肩領域に融着領域104を形成してもよい。しかし、代替として、肩領域における継ぎ目206および融着領域104を単一の熱融着/加熱方法で形成してもよい。
【0118】
シャツ200における融着領域104の寸法は大幅に異なっていてもよいが、一般的に、融着領域104の中には、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有する融着領域104もある。上記のように、不織布帛100の製造工程中に、様々なエンボス加工またはカレンダ加工を利用してもよい。フィラメント103が互いに若干融着している比較的小さな複数の領域(すなわち、1〜10平方ミリメートル)を形成するエンボス加工やカレンダ加工もある。エンボスやカレンダにより形成される領域とは対照的に、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有する融着領域104もある。ここで使用されている「連続領域」またはその変形は、比較的切れ目や途切れのない領域であると定義される。図35Cを参照して、例として、首開口部203の周囲の融着領域104は、個別に連続領域を形成し、シャツ200の肘領域の各融着領域104は、個別に連続領域を形成し、シャツ200の肩領域の各融着領域104は、個別に連続領域を形成する。殆ど融着していない不織布帛100の一部がこれらの融着領域104の間に延びているので、全融着領域104(すなわち、開口部203〜205の周囲および肩領域および肘領域内)が、まとまって単一の連続領域となることはない。
【0119】
図35Dおよび図36Dに、シャツ200の第4の構成が描かれている。図35Bおよび図36Bを参照すると、融着領域104を利用して、開口部203〜205の周囲の領域に耐伸張性を付与している。大略的に図36Dに描かれているように、耐伸張性と共に様々な審美性を付与するために用いる別の構成には、不織布帛100を折り返すことと、様々な結合領域207において不織布帛100をそれ自体に熱融着または固定することが含まれる。この構造を開口部203〜205のいずれに利用してもよいが、布帛100をそれ自体に熱融着した結合領域207は、ウェスト開口部204および腕開口部205の周囲に延びているものとして描かれている。
【0120】
図35Eおよび図36Eに、シャツ200の第5の構成が描かれている。図35A〜図35Dに描かれているシャツ200の構成は、主に不織布帛100から形成されているが、シャツ200のこの構成において腕領域202は、機械的操作による布帛である布帛130から形成されている。上記のように、継ぎ目106、107の構成を有する継ぎ目によって、不織布帛100が布帛130など、他の様々な材料に結合されていてもよい。したがって、継ぎ目206によって、胴体領域201の不織布帛は、腕領域202の布帛130の要素に結合される。様々な種類の布帛材料をシャツ200内で使用することによって、例えば、シャツ200の快適性、耐久性または審美性を高めることができる。腕領域202は、布帛130から形成されたものとして描かれているが、さらに、あるいはその代わりに、その他の領域も布帛130またはその他の材料から形成されていてもよい。例えば、胴体領域201の下部を布帛130から形成してもよいし、首開口部203の周囲の領域のみを布帛130から形成してもよいし、あるいは、胴体領域201を布帛130から形成し、各腕領域202を不織布帛100から形成するように図35Eの構成を逆にしてもよい。布帛130を例として利用するが、シート140または発泡体層150の材料から形成された要素をシャツ200に組み込んだり、不織布帛100と結合したりしてもよい。したがって、シャツ200などの衣料品に、不織布帛100および他の様々な布帛や材料を組み込んでもよい。また、不織布帛100を組み込んだシャツ200の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が、胴体領域201の不織布帛100に形成されている。
【0121】
図35Fおよび図36Fに、シャツ200の第6の構成が描かれており、この構成において、シャツ200の大部分が、不織布帛100および布帛130の複合要素から形成されている。具体的には、シャツ200を形成する材料は、不織布帛100の外層と布帛130の内層とを含む層状構造を有している。不織布帛100と布帛130との組み合わせによって、不織布帛100または布帛130の単独に勝る利点を付与することができる。例えば、布帛130は、一方向伸張性を示し、これにより複合要素に一方向伸張性を付与するものであってもよい。布帛130は、シャツ200の着用者の皮膚に接触するように位置していてもよく、布帛130のために選択した材料および布帛130の構造は、不織布帛100単独よりも高快適性を付与するものであってもよい。更なる事項として、不織布帛100の存在により、要素を熱融着によって結合することができる。図36Fを参照して、不織布帛100を含む複合素材の表面が互いに熱融着されて、胴体領域201および一方の腕領域202の要素を結合している。また、シャツ200の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が領域201、202に形成されている。
【0122】
図35Gおよび図36Gに、シャツ200の第7の構成が描かれている。着用者に防護を提供するために、様々なシート140および発泡体層150が不織布帛100の内面に熱融着されている。具体的には、シャツ200の肩領域に2つのシート140が配置され、腕領域202に2つのシート140が配置され、胴体領域201の側部に2つの発泡体層150が配置されている。また、様々な融着領域104が、不織布帛100に形成されている。具体的には、胴体領域201において発泡体層150が配置されている領域の周囲を1対の融着領域104が取り囲み、腕領域202においてシート140が配置されている領域の上に1対の融着領域104が延びている。例えば、発泡体層150を取り囲む領域を補強し、耐伸張性を付与するために、または、シート140上の領域に高耐久性を付与するために、これらの融着領域104を利用してもよい。
【0123】
図35Hおよび図36Hに、シャツ200の第8の構成が描かれている。不織布帛100に形成されている様々な融着領域104に加えて、例えば、シャツ200の特定領域に耐伸張性や更なる強度を付与するために、複数の紐体160が不織布帛100の内部に埋め込まれている。具体的には、7本の紐体160が胴体領域201の上部の1点から外側に向かって下方に放射状に延びており、2本の紐体160が各腕領域202に沿って平行に延びており、少なくとも1本の紐体160がシャツ200の肩領域において継ぎ目206を横切っている。一部の紐体160は、例えば、紐体160の周囲領域に更なる耐伸張性や耐久性を付与する様々な融着領域104を貫通している。胴体領域201において、各紐体160は、複数の融着領域104のうちの1つを貫通し、紐体160のうちの2つの紐体160は、1対の融着領域104に沿って延びている。シャツ200の肩領域においては、1対の紐体160の全体が、融着領域104内部に配置されている。したがって、紐体160を単独で用いてもよいし、融着領域104と組み合わせてもよい。
【0124】
上記の検討に基づいて、不織布帛100をシャツ200などの衣料品に利用することができる。ある構成においては、継ぎ目106または107の構成を有する継ぎ目206を用いて、不織布帛100の要素などの布帛要素を結合してもよい。シャツ200の領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104を形成してもよいし、様々な種類の布帛をシャツ200に組み込んでもよいし、布帛130やシート140、発泡体層150、紐体160など、様々な部材のうちの1以上の部材を不織布帛100に結合することによって複合要素を形成してもよい。不織布帛100に融着領域104を形成し、不織布帛100を他の部材に結合して、複合要素を形成することにより、様々な特性および特性の組み合わせをシャツ200の様々な領域に付与してもよい。すなわち、ここに開示されている様々な概念を個別または組み合わせて利用して、シャツ200の特性を設計し、特定の目的のためにシャツ200を仕立てることができる。不織布帛100に熱可塑性ポリマー材料が組み込まれていることを考えると、継ぎ目206および複合要素を熱融着により形成することもできる。
X−ズボンの構成
図37A〜図37Cに、ズボン300の様々な構成が、骨盤領域301と、骨盤領域301から下方に延びる1対の脚領域302とを含むものとして描かれている。骨盤領域301は、着用者の胴体下部および骨盤に対応し、着用時に胴体下部の少なくとも一部を覆う。骨盤領域301の上部領域には、ウェスト開口部303が形成され、ズボン300着用時には、そこを胴体が貫通する。脚領域302は、それぞれ着用者の右脚と左脚とに対応し、ズボン300着用時には、右脚および左脚の少なくとも一部を覆う。各脚領域302には、足首開口部304が形成され、ズボン300着用時には、そこから着用者の足首および足が突出する。ズボン300は、ズボン型衣服、特にスポーツ用ズボンの構成を有する。一般的に、ズボン型衣服は、着用者の胴体下部を覆い、着用者の脚部に及ぶ。更なる例において、ズボン300の一般的な構成を有する衣料品は、ショートパンツやジーンズ、ブリーフ、水着、下着など、他のズボン型衣服の構成を有していてもよい。
【0125】
図37Aに、ズボン300の第1の構成が描かれている。ズボン300の大部分は、不織布帛100から形成されている。具体的には、骨盤領域301および各脚領域302が、主に不織布帛100から形成されている。ズボン300は、不織布帛100の単一要素から形成されていてもよいが、ズボン300は、一般的に、不織布帛100の多数の結合要素から形成されている。図示されていないが、継ぎ目106、107または206と同様の継ぎ目を利用して、不織布帛100の様々な要素を共に結合してもよい。また、継ぎ目の形成や補強のために、縫合や接着を利用してもよい。
【0126】
ポケット305が、ズボン300に形成されており、比較的小さな物体(例えば、鍵、札入れ、身分証明カード、携帯電話、携帯音楽プレーヤー)を保持、収容するために使用してもよい。図38に描かれているように、重なり合う2層の不織布帛100を使用してポケット305を形成する。具体的には、結合領域306を利用して、不織布帛100の層を互いに熱融着する。しかし、不織布帛100の一方の層の中央部は、結合されておらず、物体を収容するためのポケット305の内部領域を形成する。また、ポケット305と同様のポケットを、シャツ200など、他の製品や衣料品に形成してもよい。
【0127】
図37Bに、ズボン300の第2の構成が描かれている。図37Aの構成と同様に、ズボン300の大部分は、不織布帛100から形成されている。ズボン300の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が不織布帛100に形成されている。具体的には、融着領域104が、ウェスト開口部303と各足首開口部304の周囲に形成されている。各開口部303、304およびポケット305の開口部が伸張することを考えれば、融着領域104を利用して、これらの領域に耐伸張性を付与してもよい。すなわち、ズボン300の融着領域104内のフィラメント103は、一般的に、ズボン300の他の領域内のフィラメント103よりも高融着度で融着されており、上記の繊維状構造、非繊維状構造、および中間構造のいずれを有していてもよい。融着領域104は、高耐伸張性の付与に加えて、高耐久性を付与する。ズボン300着用時に、ズボン300の膝領域が比較的高摩耗を受けることを考えれば、高耐久性を付与するために、更なる融着領域104を膝領域に配置してもよい。
【0128】
図37Cに、ズボン300の第3の構成が描かれている。シャツ200と同様に、ズボン300の様々な領域に特性を付与するために、融着領域104、布帛130、シート140、発泡体層150および紐体160を利用してもよい。脚領域302において、例えば、布帛130が、不織布帛100の内面に熱融着されている。1対のシート140が、骨盤領域301の側部領域においてズボン300に熱融着されており、ウェスト開口部303の周囲における融着領域104の一部が、シート140の下に延びている。また、1対の発泡体層150が、ズボン300の膝領域に配置されており、脚領域302に沿って延びている紐体160が、発泡体層150の下に(すなわち、不織布100と発泡体層150との間に)延びている。また、紐体160の端部領域は、脚領域302の下部領域において融着領域104内へと延びている。したがって、ズボン300の様々な領域に特性を付与するために、融着領域104、布帛130、シート140、発泡体層150および紐体160を様々な方法で利用したり、組み合わせたりしてもよい。図35Gにおいて、シート140および発泡体層150の様々な要素が、シャツ200の内面に熱融着されているが、図37Cにおいては、シート140および発泡体層150の様々な要素が、ズボン300の外面に熱融着されていてもよい。様々な構造上および審美性の要因に応じて、複合要素および複合要素を含む衣料品に、部材(例えば、布帛130、シャツ140、発泡体層150、紐体160)を不織布帛100の外面または内面に配置して形成してもよい。
【0129】
上記の検討に基づいて、不織布帛100をズボン300などの衣料品に利用することができる。様々な種類の継ぎ目を用いて、不織布帛100の要素などの布帛要素を結合してもよい。ズボン300の領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104を形成してもよいし、様々な種類の布帛をシャツ200に組み込んでもよいし、布帛130やシート140、発泡体層150、紐体160など、様々な部材のうちの1以上の部材を不織布帛100に結合することによって複合要素を形成してもよい。不織布帛100に融着領域104を形成し、不織布帛100を他の部材に結合して、複合要素を形成することにより、様々な特性および特性の組み合わせをズボン300の様々な領域に付与してもよい。すなわち、ここに開示されている様々な概念を個別または組み合わせて利用して、ズボン300の特性を設計し、特定の目的のためにズボン300を仕立てることができる。不織布帛100に熱可塑性ポリマー材料が組み込まれていることを考えれば、継ぎ目および複合要素を熱融着により形成することもできる。
XI−履物の構成
図39A〜図39Gに、履物400の様々な構成が、靴底(ソール)構造体410と甲部(アッパー)420とを含むものとして描かれている。靴底構造体410は、甲部420に固定され、着用者の足に履物400が装着されると、足と床との間に拡がる。粘着摩擦(トラクション)の付与に加えて、靴底構造体410は、歩行中、走行中、その他の歩行活動中に、足と床との間で圧縮されたときに、床からの反力を減衰することができる。図示のように、靴底構造体410は、流体充填チャンバ411と、チャンバ411の外面に結合し、周囲を取り囲む補強構造412と、チャンバ411の下面に固定された外底413とを備えており、本発明に引用により組み込まれているドジャンらの上記特許文献1に開示されている靴底構造体と同様である。靴底構造体410の構成は、大幅に異なっていてもよく、その他様々な従来の構造または従来にない構造が含まれる。例として、靴底構造体410は、チャンバ411および補強構造412の代わりにポリマー発泡体要素を組み込んだものであってもよく、本発明に引用により組み込まれているスイガートらの上記特許文献2およびグッドウィンの上記特許文献3のいずれかに開示されているように、ポリマー発泡体要素は、少なくとも部分的に流体充填チャンバを封入したものであってもよい。別の例として、靴底構造体410は、本発明に引用により組み込まれているチンドラーの上記特許文献4に開示されているように、内部発泡体引張部材を有する流体充填チャンバを組み込んだものであってもよい。したがって、靴底構造体410は、様々な構成を有することができる。
【0130】
甲部420は、靴底構造体410に対して足を受け入れ固定するために、履物400内に空間を形成する。具体的には、甲部420は、足の側部に沿って、そして足の中央側に沿って延び、足を覆い、足の下に延びて、甲部420内の空間が足を収容するような形状になるように構成されている。前記空間へは、履物400の少なくとも踵領域に位置する足首開口部421から到達できる。靴紐422が、甲部420の様々な靴紐孔423を貫通しており、着用者が、足の寸法比率に合わせるために、甲部420の寸法を変更できるようになっている。また、靴紐422によって、着用者は、甲部420をゆるめ、空間に対して容易に足を出し入れできるようになっている。図示されていないが、甲部420は、履物400の快適性や調整力を高めるために、靴紐422の下に延びている舌革部を備えていてもよい。
【0131】
図39Aおよび図40Aに、履物400の第1の構成が描かれている。足の側部に沿って延び、足を覆い、足の下に延びている甲部420の各部分は、不織布帛100の様々な要素から形成することができる。図示されていないが、継ぎ目106、107と同様の継ぎ目を用いて、不織布帛100の要素を結合してもよい。履物の多くは、甲部と靴底構造体とを結合するために、縫い目や接着剤を利用している。しかし、靴底構造体410を、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。具体的には、チャンバ411および補強構造412の少なくとも一部分を、融着部により甲部420に結合する熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。すなわち、融着法を利用して、靴底構造体410と甲部420とを結合してもよい。ある構成においては、縫い目や接着剤を利用して、靴底構造体410と甲部420とを結合してもよいし、縫い目や接着剤により融着部を補強してもよい。
【0132】
履物400の比較的大部分を熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。上記のように、不織布帛100、チャンバ411および補強構造412を、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。靴紐422は、一般的に、接着や縫合により甲部420に結合されていないが、靴紐422も、熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。同様に、外底413も、熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。熱可塑性ポリマー材料を組み込むか、あるいは全体的に熱可塑性ポリマー材料から形成されている履物400の要素の数に応じて、熱可塑性ポリマー材料から形成されている履物の質量百分率は、30%〜100%である。ある構成において、甲部420と靴底構造体410とを組み合わせた質量百分率で少なくとも60%が、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)甲部420の他の要素(すなわち、靴紐422)、および(b)靴底構造体410の要素(すなわち、チャンバ411、補強構造412、および外底413)の少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。更なる構成において、甲部420と靴底構造体410とを組み合わせた質量百分率で少なくとも80%または少なくとも90%が、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)甲部420の他の要素、および(b)靴底構造体410の要素の少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。したがって、履物400の大部分または全体を、1種以上の熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。
【0133】
図39Bおよび図40Bに、履物400の第2の構成が描かれており、この構成において、3つの略線形の融着領域104が、履物400の踵領域から前部領域まで延びている。上記に詳述したように、不織布帛100のフィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料は、融着領域104において、不織布帛100の他の領域よりも高融着率で融着している。また、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、不織布帛100の非繊維状部分を形成するものであってもよい。したがって、3つの融着領域104は、フィラメント103が甲部420の他の領域よりも高融着率で融着している領域を形成する。融着領域104は、一般的に、不織布帛100の他の領域よりも高耐伸張性を有する。融着領域104が、履物400の踵領域と前部領域との間を長手方向に延びていることを考えれば、融着領域104は、履物400の長手方向の伸張量を低減することができる。すなわち、融着領域104は、踵領域と前部領域との間において前記方向に関して高耐伸張性を履物400に付与することができる。また、融着領域104は、甲部420の耐久性を高め、甲部420の透過性を低減することができる。
【0134】
図39Cおよび図40Cに、履物400の第3の構成が描かれている。様々な融着領域104が、不織布帛100に形成されている。融着領域104の一つが、足首開口部421に隣接してその周囲を取り囲んでおり、これによって、足首開口部421の周囲領域に高耐伸張性を付与し、甲部420内の足をしっかりと保持するのに役立つ。別の融着領域104が、踵領域に配置され、履物の後部周りに延びて、甲部420内の踵の移動に対抗する踵カウンタを形成する。更なる融着領域104が、前部領域において靴底構造体に近接して配置されており、前部領域に高耐久性を付与する。特に、甲部420の前部領域は、甲部420の他の部分よりも摩耗が激しい可能性があり、前部領域への融着領域104の追加によって、前部領域における履物400の耐摩耗性を高めることができる。更なる融着領域104が、いくつかの靴紐孔423の周囲を取り囲んでおり、これにより、靴紐422を受ける領域の耐久性および耐伸張性を高めることができる。また、履物400の側部に沿って耐伸張性を高めるために、融着領域104が、靴紐孔423の隣接領域から靴底構造体410の隣接領域へと下方に延びている。特に、靴紐422の張力は、甲部420の側部に張力を付与する可能性がある。甲部420の側部に沿って下方に延びる融着領域104を形成することによって、甲部420における伸張を抑制することができる。
【0135】
履物400における融着領域104の寸法は、大幅に異なっていてもよいが、融着領域104は、一般的に、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有している。上記のように、不織布帛100の製造工程中に、様々なエンボス加工またはカレンダ加工を利用してもよい。エンボス加工またはカレンダ加工により、フィラメント103が互いに若干融着している比較的小さな領域(すなわち、1〜10平方ミリメートル)を複数個形成してもよい。エンボスまたはカレンダによって形成される領域とは対照的に、融着領域104は、上記に定義されているような、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有している。
【0136】
甲部420の大部分を単層の不織布帛100から形成してもよいが、複数層を用いてもよい。図40Cを参照して、甲部420は、2層の不織布帛100の間に中間発泡体層150を備えている。この構成の利点は、発泡体層が甲部420の側部に更なる緩衝性を付与することによって、足を保護し、足に高快適性を付与することである。一般的に、図19および図20に関連して上記で説明した複合要素の一般的な構成を有するように、甲部420において発泡体層150を組み込んだ部分を形成してもよい。さらに、図12A〜図12Cに関連して上記で説明した方法と同様の熱融着法を利用して、甲部420において発泡体層150を組み込んだ部分を形成してもよい。発泡体層150の代わりに、布帛130またはシート140を履物400の不織布帛100に熱融着してもよい。したがって、様々な複合要素を履物400に組み込むことによって、層状構造に様々な特性を付与することができる。
【0137】
図39Dおよび図40Dに、履物400の第4の構成が描かれており、この構成において、様々な紐体160が不織布帛100に埋め込まれている。不織布帛100を形成する熱可塑性ポリマー材料と比較して、紐体160に関する上記の材料の多くは、高引張強度および高耐伸張性を示す。すなわち、紐体160は、不織布帛100よりも強く、引張力を受けたときに不織布帛100よりも低伸張性を示す。したがって、紐体160を履物400内で利用すると、不織布帛100よりも高強度および高耐伸張性を付与することができる。
【0138】
紐体160は、不織布帛100内に埋め込まれたり、あるいは不織布帛100に接着されたりする。紐体160の多くは、少なくとも5センチメートルの距離にわたって不織布帛100の表面に略平行な方向に延びている。少なくとも一部の紐体160を少なくとも5センチメートルの距離にわたって延びるように形成することの利点は、履物400のある領域に加わる引張力を、紐体160に沿って履物400の別の領域へと伝達可能なことである。ある群の紐体160は、履物400の踵領域から前部領域へと延びて、強度を高め、履物400内における長手方向の伸張量を低減する。すなわち、これらの紐体160は、踵領域と前部領域との間において前記方向に関して高強度および高耐伸張性を履物400に付与することができる。別の群の紐体160は、履物400の側部に沿って強度および耐伸張性を高めるために、靴紐孔423の隣接領域から靴底構造体410の隣接領域へと下方に延びている。特に、靴紐422における張力が、甲部420の側部に張力を与える可能性がある。紐体160を甲部420の側部に沿って延びるように配置することによって、甲部420における伸張を低減する一方、強度を高めることができる。また、更に別の群の紐体160が、踵領域に配置され、履物400の安定性を高める踵カウンタを効果的に形成している。紐体160と同様の紐体を含む構成を有する履物の更なる詳細は、ここに引用により組み込まれているメシュターの上記特許文献5に開示されている。
【0139】
図39Eに、履物400の第5の構成が描かれている。図39Dおよび図40Dの構成とは対照的に、様々な融着領域104が不織布帛100に形成されている。具体的には、融着領域104は、(a)靴紐孔423の隣接領域から靴底構造体410の隣接領域へと下方に延びる紐体160や(b)踵領域に配置された紐体160の各群の領域に配置されている。紐体160の少なくとも一部は、融着領域104を貫通し、紐体160を組み込んだ甲部420の領域に更なる耐伸張性および高耐久性を付与することによって、紐体160をさらに保護する。融着領域104は、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有し、融着領域104内のフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、繊維状であってもよいし、非繊維状であってもよいし、繊維状と非繊維状との組み合わせであってもよい。
【0140】
図39Fに、履物400の第6の構成が描かれている。履物400の側部における3つの融着領域104は、文字「A」「B」「C」の形状を有する。上記のように、融着領域104を利用して、透過性や耐久性、耐伸張性の特性など、不織布帛100の様々な特性を改良することができる。一般的に、融着領域104を形成することによって、不織布帛100の透明性や色の濃さなど、様々な審美特性を改良することができる。すなわち、融着領域104の色を、不織布帛100の他の部分の色よりも暗くすることができる。この様な審美特性の変化を利用して、履物400の領域に印を形成するために、融着領域104を利用することができる。すなわち、融着領域104を利用して、チームや会社の名前やロゴ、個人の名前やイニシャル、または審美的な模様や図、要素を不織布帛100に形成することができる。同様に、融着領域104を利用して、シャツ200やズボン300など、不織布帛100を組み込んだその他の製品に印を形成することができる。
【0141】
図39Fに描かれているように、融着領域104を利用して、履物400の側部、そしてシャツ200やズボン300など、不織布帛100を組み込んだその他様々な製品に印を形成することができる。関連事項として、不織布帛100の要素を様々な製品に熱融着したり、結合したりして、印を形成することができる。例えば、甲部が主に合成皮革から形成されている履物の側部に、文字「A」「B」「C」の形状を有する不織布帛100の要素を熱融着してもよい。不織布帛100が、その他様々な材料に熱融着可能であることを考えれば、印の形成のために、不織布帛100の要素を製品に熱融着してもよい。
【0142】
継ぎ目106、107と同様の継ぎ目を使用して、履物400の任意の構成において不織布帛100の要素を結合することができる。図39Fを参照して、1対の継ぎ目424が、甲部420を貫通して略斜め方向に延びており、不織布帛100の様々な要素を結合している。継ぎ目424を形成するために、熱融着を利用してもよいが、縫い目や接着剤を利用してもよい。上記のように、靴底構造体410は、チャンバ411と補強構造412とを備えた構造に加えて、様々な構造を有するものであってもよい。図39Fを再び参照して、熱可塑性ポリマー発泡材料425をチャンバ411および補強構造412の代わりに利用し、甲部420を発泡材料425に熱融着して、靴底構造体410を甲部420に結合してもよい。熱硬化性ポリマー発泡材料を靴底構造体410内で使用する場合も、熱融着部を利用することができる。
【0143】
図39Gに、履物400の第7の構成が描かれており、この構成において、不織布帛100を利用して、靴紐422の代替または補強用の1対のストラップ426が形成されている。一般的に、ストラップ426によって、着用者は、足の寸法比率に合わせるために、甲部420の寸法を変更できるようになっている。また、ストラップ426によって、着用者は、甲部420をゆるめ、空間に対して容易に足を出し入れできるようになる。ストラップ426の一方端部は、恒久的に甲部420に固定されており、ストラップ426の他の部分は、例えば、フック/ループファスナーに結合されていてもよい。この構成によって、着用者は、ストラップを調節することができる。上記のように、不織布帛100は、伸張し、伸張後に元の構造に戻ることができる。この特性を利用して、着用者は、ストラップ426を伸ばして張力を付与することによって、足の周囲の甲部420を締め付ける。ストラップを持ち上げることによって、張力は開放され、足を出し入れすることができる。
【0144】
足を受け入れる空間を形成するために、甲部420において足に沿ってその周囲を取り囲む部分を形成することに加え、不織布帛100により履物400の構造要素を形成してもよい。例として、図41に、靴紐ループ427が描かれている。靴紐ループ427は、1つ以上の様々な靴紐孔の代用または代替として、甲部420に組み込まれていてもよい。靴紐孔423は、靴紐422を受ける甲部420を貫通する開口部であるが、靴紐ループ427は、靴紐422が貫通する経路を形成する不織布帛100の折り畳み領域または重なり領域である。靴紐ループ427を形成する際、経路を形成するために、不織布帛100は、結合領域428においてそれ自体に熱融着される。
【0145】
上記の検討に基づいて、履物400などの履物の構成を有する衣料品に不織布帛100を利用することができる。履物400の領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104を形成してもよいし、様々な種類の布帛を履物400に組み込んでもよいし、布帛130やシート140、発泡体層150、紐体160など、様々な部材のうちの1つ以上の部材を不織布帛100に結合することによって複合要素を形成してもよい。不織布帛100には熱可塑性ポリマー材料が組み込まれていることを考えれば、熱融着法を利用して、甲部420を靴底構造体410に結合することもできる。
XII−不織布帛の形成、テクスチャ加工および着色
図1に描かれている不織布帛100の構成は、略平面構造を有している。不織布帛100は、様々な3次元構造を示すものであってもよい。例として、図42Aに、不織布帛100が、波形または凹凸の構成を有するものとして描かれている。図42Bに、正方形の波形を有する同様の構成が描かれている。別の例として、図42Cに描かれているように、不織布帛100は、卵梱包箱(鶏卵用クレート)のような構造を付与するために2方向に延びる波形を有するものであってもよい。したがって、不織布帛100は、様々な非平面構造または3次元構造を有するように形成することができる。
【0146】
不織布帛100に3次元構造を形成するために、様々な方法を利用することができる。図43A〜図43Cを参照して、方法の一例が、第1のプレート111と第2のプレート112とを含むものとして描かれており、これらのプレートは、それぞれ、結果的に得られる不織布帛100の3次元形状に対応する表面を有している。まず、図43Aに描かれているように、不織布帛100をプレート111とプレート112との間に配置する。そして、図43Bに描かれているように、不織布帛100に接触、圧縮するために、プレート111、112を互いに近接するように、平行移動または移動する。不織布帛100に3次元構造を形成するために、プレート111、112の一方または両方からの熱を不織布帛100に加え、フィラメント103内の熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融する。プレート111、112を離間すると、図43Cに描かれているように、不織布帛100は、プレート111、112の表面からの3次元構造を呈する。熱は、熱伝導により加えてもよいが、高周波加熱または放射加熱を使用してもよい。不織布帛100に3次元構造を形成するために利用可能な方法の別の例として、不織布帛100を製造する方法において、フィラメント103を3次元表面上に直接堆積してもよい。
【0147】
3次元形状を有するように不織布帛100を形成することに加えて、表面101、102の一方または両方にテクスチャを付与してもよい。図44Aを参照して、不織布帛100は、第1の表面101が複数の波形形状を含むようにテクスチャ加工されている。図44Bに、第1の表面101が複数のx字形状を含むようにテクスチャ加工されている別の構成が描かれている。図44Cにおいて、第1の表面101に形成された一連の英数字のような情報を表示するためにテクスチャを利用してもよい。さらに、図44Dにおいて、合成皮革のテクスチャなど、他の素材の外観を付与するために、テクスチャを利用してもよい。
【0148】
様々な方法を利用して、不織布帛100にテクスチャを付与することができる。図45A〜図45Cを参照して、方法の一例が、テクスチャ加工された表面をそれぞれ有する第1のプレート111と第2のプレート112とを含むものとして描かれている。まず、図45Aに描かれているように、不織布帛100をプレート111とプレート112との間に配置する。そして、図45Bに描かれているように、不織布帛100に接触し、圧縮するために、プレート111、112を互いに近接するように、平行移動または移動する。不織布帛100にテクスチャ構造を付与するために、プレート111、112の一方または両方からの熱を不織布帛100に加え、フィラメント103内の熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融する。プレート111、112を離間すると、図45Cに描かれているように、不織布帛100は、プレート111、112の表面からのテクスチャを呈する。熱は、熱伝導により加えるが、高周波加熱または放射加熱を使用してもよい。不織布帛100にテクスチャ表面を形成するために利用可能な方法の別の例として、不織布帛100に近接してテクスチャ離型紙を配置してもよい。圧縮し、加熱すると、離型紙からのテクスチャを不織布100に転写することができる。
【0149】
不織布帛100に利用するポリマー材料の種類に応じて、不織布帛100を着色するために、様々な着色工程を利用することができる。印やグラフィック、ロゴなどの審美的な特徴を形成するために、例えば、デジタル印刷法を利用して、表面101、102のいずれかに染料または着色料を堆積してもよい。指示書や寸法識別子などの情報を不織布帛100上に印刷してもよい。さらに、不織布帛100を製品に組み込む前または後に、着色工程を利用してもよい。着色したり、不織布100の一部の全体色を変更したりするために、スクリーン印刷やレーザ印刷など、その他の着色工程を使用してもよい。
【0150】
上記の検討に基づいて、不織布帛100の3次元構造、テクスチャ構造および着色構造を形成することができる。これらの特徴を製品(例えば、シャツ200、ズボン300、履物400)に組み込むと、製品を構造的かつ審美的に向上することができる。例えば、3次元構造は、表面積を増やすことによって、衝撃力減衰を高めたり、高透過性を提供したりすることができる。テクスチャ加工によって、滑り抵抗を増加したり、様々な審美可能性を提供したりすることができる。さらに、不織布帛100の着色を利用することによって、情報を表示したり、製品の視認性を高めたりすることができる。
XIII−縫い目構造
縫合を利用して、不織布帛100の要素を、不織布帛100の他の要素、他の布帛、または、その他様々な材料に結合することができる。上記のように、不織布帛100を結合するために、縫合を単独、または熱融着や接着剤と組み合わせて利用することができる。さらに、縫合や、刺繍、ステッチボンドを使用して、複合要素を形成したり、構造要素または審美要素を不織布帛100に付与したりすることができる。図46Aを参照して、糸163が不織布帛100に縫い付けられ、不織布帛100を横切って延びる複数の平行線を形成している。紐体160は、表面101、102の一方に略平行な方向に延びているが、糸163は、表面101と表面102との間を繰り返し往復して(すなわち、不織布帛100を貫通して)、縫い目構造を形成している。しかし、紐体160と同様に、糸163は、耐伸張性を付与したり、不織布帛100の全体強度を高めたりすることができる。また、糸163は、不織布帛100の全体的な審美性を高めることもできる。不織布帛100を有する製品(例えば、シャツ200、ズボン300、履物400)に糸163を組み込むと、糸163は、製品を構造的かつ審美的に向上することができる。
【0151】
糸163を縫い込んで、様々な縫い目構造を提供することができる。例として、糸163は、図46Bにおいてジグザグ状の縫い目構造を有し、図46Cにおいて鎖状の縫い目構造を有する。糸163は、図46Aおよび図46Bにおいては、略平行な縫い目ラインを形成しているが、図46Cにおいて、糸163により形成されている縫い目は、非平行であり、互いに交差している。また、糸163は、図46Dに描かれているように、様々な構造を形成するために刺繍してもよい。図46Eに描かれているように、糸163でさらに複雑な構造を形成するために、縫目形成を利用してもよい。さらに、図46Fに描かれているように、不織布帛100が様々な融着領域104を含んでいてもよく、糸163により形成された縫い目が、不織布帛100の融着領域および非融着領域の両方を貫通していてもよい。したがって、糸163を利用して、耐伸張性を付与したり、強度を高めたり、不織布帛100の全体的な審美性を高めたりする様々な種類の縫い目を形成することができる。さらに、不織布帛100に融着領域104を形成して、その他の特性を改良することもできる。
XIV−接着テープ
図47および図48に、テープ170の要素が、不織布帛100と接着テープ171とを備えた複合要素の構成を有するものとして描かれている。梱包用テープや絵画用テープ、医療/治療用テープなど、様々な目的のためにテープ170を利用することができる。テープ170を医療/治療用テープとして利用する利点は、例えば、他の特性の中でも透過性および耐伸張性を調節できることである。透過性に関しては、個人の皮膚に貼り付ける(すなわち、接着層171を有する)テープ170の場合、通気性を付与し、その下にある皮膚の洗浄または浄化のために、空気や水がテープ170を透過することができる。テープ170は、個人の皮膚に貼り付けられると、耐伸張性があり、周囲の軟組織に対する支持を提供する。接着層171の適切な材料には、例えば、医療用グレードのアクリル接着剤など、テープ型製品に利用されている従来のあらゆる接着剤が含まれる。
【0152】
テープ170に特定の度合いの耐伸張性を付与するために様々な構造を利用することができる。例として、テープ170の耐伸張性は、不織布帛100の厚さ、または不織布帛100のフィラメント103を形成する材料によって調節することができる。図49Aを参照して、耐伸張性を調節するために、テープ170に融着領域104を形成してもよい。図49Bに描かれているように、高耐伸張性を付与するために、紐体160をテープ170に組み込んでもよい。さらに、図49Cに描かれているように、ある構成のテープ170は、融着領域104および紐体160の両方を備えていてもよい。
XV−不織布帛のリサイクル
不織布帛100のフィラメント103は、熱可塑性ポリマー材料を含んでいる。ある不織布帛100の構成では、フィラメント103の大多数または殆ど全てが、熱可塑性ポリマー材料から形成されている。シャツ200およびズボン300の構成の多くが、主に不織布帛100から形成されていることを考えれば、シャツ200およびズボン300の大部分または殆ど全てが、熱可塑性ポリマー材料から形成されている。同様に、履物400も、大部分が熱可塑性ポリマー材料から形成されている。数多くの衣料品とは異なり、シャツ200、ズボン300および履物400の材料は、その耐用年数の後、リサイクルすることができる。
【0153】
シャツ200を例にとると、シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料を抽出し、リサイクルして、不織布帛やポリマー発泡体、ポリマーシートとして、他の製品(例えば、衣料品、入れ物、張り物)に組み込むことができる。図50に、この工程が大略的に示されており、この工程において、シャツ200は、リサイクルセンター180でリサイクルされ、シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料は、別のシャツ200、ズボン300、履物400のうちの1以上に組み込まれる。さらに、シャツ200の大部分または殆ど全てが、熱可塑性ポリマー材料から形成されていることを考えれば、熱可塑性ポリマー材料の大部分または殆ど全てを、リサイクルの後に別の製品に利用してもよい。シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料は、最初は不織布帛100内で使用されていたが、その後、例えば、シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料を不織布帛100の別の要素、熱可塑性ポリマー材料を含む別の布帛、ポリマー発泡体またはポリマーシートに使用してもよい。不織布帛100を組み込んでいるズボン300や履物400などの製品は、同様の工程でリサイクルすることができる。したがって、上記の様々な構成を有するシャツ200やズボン300、履物400などの製品を形成する利点は、リサイクル性に関連する。
XVI−結論
不織布帛100は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成されている複数のフィラメント103を含む。様々な融着領域104を不織布帛100に形成して、透過性や耐久性、耐伸張性などの特性を改良することができる。また、不織布帛100に更なる特性または利点を付与するために、(例えば、熱融着によって)様々な部材(布帛、ポリマーシート、発泡体層、紐体)を不織布帛100に固定したり、組み合わせたりすることができる。さらに、不織布帛100に様々な構成を付与するために、融着領域104および部材を組み合わせることができる。
【0154】
本発明は、様々な構成を参照して、上記および添付図面に開示されている。しかし、本開示が果たす目的は、本発明に関する様々な特徴および概念を例示することであり、本発明の範囲を限定することではない。当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上記の構成に対して数々の変形および変更が可能で
あることを認識するであろう。
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な製品が、少なくとも部分的に布帛から形成されている。例として、衣料品(例えば、シャツ、ズボン、靴下、ジャケット、下着、履物)や、入れ物(例えば、バックパック、バッグ)、家具の張り物(例えば、椅子、ソファ、車の座席)は、大抵の場合、様々な布帛要素が縫合や接着により結合されて形成される。布帛は、ベッドカバー(例えば、シーツ、毛布)や、テーブルカバー、タオル、旗、テント、帆、パラシュートに利用することもできる。産業目的に利用されている布帛は、一般的に工業布帛と呼ばれ、自動車や航空宇宙の用途のための構造や、フィルター材料、医療用布帛(例えば、包帯、綿棒、インプラント)、盛土補強のための地質用布帛、作物保護のための農業用布帛、熱や放射線からの保護や防護のための工業用衣料品が含まれる。したがって、布帛は、個人用目的にも工業用目的にも様々な製品に組み込むことができる。
【0003】
布帛は、ファイバ、フィラメントまたは糸から製造され、略2次元構造を有する(すなわち、長さおよび幅が、厚さよりも実質的に大きい)製品であると定義することができる。一般的に、布帛は、機械操作による布帛または不織布帛として分類することができる。機械操作による布帛は、通常、織機または編機を含む機械工程により、単糸または複数糸を織成またはインターループ(例えば、編成)することによって形成される。不織布帛は、接着、融着、連結または結合されたフィラメントのウェブまたはマットである。一例として、不織布帛は、移動中のコンベアなどの表面上に複数のポリマーフィラメントをランダムに堆積させることによって形成することができる。様々なエンボス加工やカレンダ加工を利用して、不織布帛を略均一厚にしたり、不織布帛の片面または両面にテクスチャを付与したり、不織布帛内でフィラメント同士を更に接着または融着したりすることもできる。スパンボンド不織布帛は、10〜100ミクロンの断面厚を有するフィラメントから形成される一方、メルトブロー不織布帛は、10ミクロン未満の断面厚を有するフィラメントから形成される。
【0004】
製品の中には1種類の布帛から形成されているものもあるが、様々な領域に異なる特性を付与するために、2種類以上の布帛から形成されている製品も数多くある。一例として、シャツの肩領域および肘領域を、耐久性(例えば、耐摩耗性)や耐伸張性を付与する布帛から形成し、その他の領域を、通気性や快適性、伸縮性、吸湿性を付与する布帛から形成することもできる。別の例として、履物の甲部が、様々な種類の布帛およびその他の材料(例えば、ポリマー発泡体、皮革、合成皮革)から形成された多数の層を含む構造を有していてもよく、これらの層の一部は、異なる特性を付与するために異なる種類の布帛から形成された領域を含んでいてもよい。更に別の例として、バックパックのストラップが、非伸縮性の布帛要素から形成され、バックパックの下部領域が、耐久性および耐水性のある布帛要素から形成され、バックパックのその他の部分が、快適かつ柔軟な(compliant)布帛要素から形成されていてもよい。したがって、製品の様々な部位に異なる特性を付与するために、様々な種類の布帛を組み込んだ製品が数多くある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,086,179号明細書
【特許文献2】米国特許第7,000,335号明細書
【特許文献3】米国特許第7,386,946号明細書
【特許文献4】米国特許第7,131,218号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0271821号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製品の様々な領域に異なる特性を付与するために、複数の材料から形成された布帛要素を所望の形状に裁断して、通常、縫合や接着によって結合しなければならない。製品に組み込む布帛要素の数および種類が増加すると、布帛要素の輸送や貯蔵、裁断、結合に関わる時間および費用も増加する。製品に組み込む布帛要素の数および種類が増加すると、裁断や縫合工程による廃棄材料も、より多く蓄積される。さらに、布帛要素およびその他の材料を多数含む製品は、少数の要素と材料とで形成された製品よりもリサイクルが難しい。したがって、製品に使用される要素や材料の数を減らすことによって、生産効率およびリサイクル性を向上しつつ、廃棄物を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法は、前記不織布帛の少なくとも一方の面の近傍に遮断素子を配置する工程であって、前記遮断素子が、前記不織布帛の第1の領域には存在せず、前記遮断素子が、前記不織布帛の第2の領域に接触している工程と、前記不織布帛および前記遮断素子を加熱して、前記第1の領域のフィラメントを融着する工程とを含む。
【0008】
前記加熱工程は、プレスのプラテンの間に、前記不織布帛および前記遮断素子を配置する工程を含んでもよい。
前記加熱工程は、前記不織布帛および前記遮断素子を圧縮する工程を含んでもよい。
前記加熱工程は、前記第1領域の前記フィラメントを溶融して、非繊維状構造を形成する工程を含んでもよい。
【0009】
この方法は、前記第1の領域および前記第2の領域のうちの一方の形状を、印の形状となるように選択する工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記不織布帛を衣料品に組み込む工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記不織布帛を履物の甲部に組み込む工程をさらに含んでもよい。
不織布帛、および不織布帛を組み込んだ製品を、以下に開示する。不織布帛は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成された複数のフィラメントから形成することができる。ある不織布帛の構成において、前記フィラメントまたは熱可塑性ポリマー材料は、弾性材であってもよく、あるいは、その引張破断前伸度が、少なくとも100%であってもよい。
【0010】
不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有し、第1の領域のフィラメントは、第2の領域のフィラメントよりも高融着度で融着されていてもよい。第1の領域における融着度に応じて、フィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、繊維状のままであってもよいし、非繊維状となっていてもよいし、繊維状と非繊維状とが部分的に存在する中間形状であってもよい。第1の領域内での融着により、透過性、耐久性、耐伸張性などの特性を変えることができる。
【0011】
不織布帛は、衣料品(例えば、シャツ、ズボン、履物)など、様々な製品に組み込むことができる。これらの製品の中には、不織布帛が、他の布帛要素または部材と結合して、継ぎ目を形成するものもある。具体的には、不織布帛の端縁領域が、この継ぎ目において他の布帛要素または部材の端縁領域に熱融着されていてもよい。また、他の製品において、不織布帛の表面が、他の布帛要素または部材(例えば、ポリマーシート、ポリマー発泡体層または様々な紐体)と結合し、複合要素を形成するものであってもよい。
【0012】
不織布帛は、熱可塑性ポリウレタン材料を組み込んだ複数のポリマーフィラメントから形成されていてもよく、この場合、不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
【0013】
前記ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
前記第1の領域は、前記不織布帛の非繊維状部分であってもよい。
前記第1の領域の透過性は、前記第2の領域の透過性よりも小さくてもよい。
前記第1の領域の耐伸張性は、前記第2の領域の耐伸張性よりも大きくてもよい。
前記不織布帛に、第1の表面と、その反対側の第2の表面とが形成されていてもよく、この場合、前記第2の表面の少なくとも一部分が、第2の布帛要素と結合していてもよい。
【0014】
前記不織布帛の前記ポリマーフィラメントは、前記第2の布帛要素のフィラメントに熱融着されていてもよい。
前記不織布帛に、第1の表面と、その反対側の第2の表面とが形成されていてもよく、この場合、前記第2の表面の少なくとも一部分が、ポリマー発泡体要素と結合していてもよい。
【0015】
前記不織布帛は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
衣料品は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成された複数のフィラメントを含む少なくとも1つの不織布帛要素を備えていてもよく、この場合、前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0016】
前記衣料品は、シャツ型衣服であってもよい。
前記第1の領域は、前記シャツ型衣服の肩領域に配置されていてもよい。
前記第1の領域は、前記シャツ型衣服の首開口部、腕開口部およびウェスト開口部のうちの少なくとも1つの周囲に配置されていてもよい。
前記衣料品は、ズボン型衣服であってもよい。
【0017】
前記第1の領域は、前記ズボン型衣服の膝領域に配置されていてもよい。
前記第1の領域は、前記ズボン型衣服のウェスト開口部および脚開口部のうちの少なくとも1つの周囲に配置されていてもよい。
前記熱可塑性ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
【0018】
前記衣料品は、第2の布帛要素をさらに備えていてもよく、この場合、前記不織布帛要素の端縁領域は、前記第2の布帛要素の端縁領域に熱融着されていてもよい。
前記衣料品は、履物であってもよい。
衣料品は、複数の熱可塑性ポリマーフィラメントを含む不織布帛の構成を有する第1の布帛要素と、第2の布帛要素と、前記第1の布帛要素と前記第2の布帛要素との間の継ぎ目とを備えていてもよく、この場合、前記第1の布帛要素の端縁領域が、前記継ぎ目において、前記第2の布帛要素の端縁領域に熱融着されていてもよい。
【0019】
前記熱可塑性ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
前記第2の布帛要素は、複数の熱可塑性ポリマーフィラメントを含む不織布帛であってもよい。
前記第2の布帛要素は、機械的操作による布帛であってもよい。
【0020】
この衣料品は、前記第1の布帛の前記端縁領域および前記第2の布帛要素の前記端縁領域に、縫い目が存在しないものであってもよい。
この衣料品は、前記第1の布帛の前記端縁領域と前記第2の布帛要素の前記端縁領域との間の領域に、接着剤が存在しないものであってもよい。
前記第1の布帛要素は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
【0021】
前記第1の布帛要素は、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有してもよく、この場合、第3の布帛要素は、前記第2の表面に熱融着されていてもよい。
前記第3の布帛要素は、機械的操作による布帛であってもよい。
前記衣料品は、履物であってもよい。
履物は、甲部と、靴底構造体とを備えていてもよく、この場合、前記甲部の少なくとも一部が、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成されていてもよい。
【0022】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
前記第1の領域は、前記靴底構造体に隣接して、前記履物の前部領域に配置されていてもよい。
【0023】
前記第1の領域は、前記甲部の靴紐受入領域の周囲に延びていてもよい。
前記第1の領域は、前記甲部の靴紐受入領域の隣接領域から前記靴底構造体の隣接領域まで延びていてもよい。
前記第1の領域は、前記履物の踵領域から前記履物の前部領域まで延びていてもよい。
前記第1の領域は、前記甲部の足首開口部に隣接していてもよい。
【0024】
前記甲部と前記靴底構造体とを組み合わせた質量の百分率で少なくとも80%が、前記不織布帛の前記熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)前記甲部の他の要素および(b)前記靴底構造体のうちの少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。
前記甲部と前記靴底構造体とを組み合わせた質量の百分率で少なくとも80%が、前記不織布帛の前記熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)前記靴底構造体の流体充填チャンバおよび(b)前記靴底構造体の発泡材料のうちの少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。
【0025】
前記熱可塑性ポリマーフィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
履物は、甲部と、靴底構造体とを備えていてもよく、この場合、前記甲部と前記靴底構造体とを組み合わせた質量百分率で少なくとも80%が、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよく、この場合、前記甲部に組み込まれている布帛材料の少なくとも一部分が、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよい。
【0026】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料は、第1の材料と第2の材料とを含んでもよく、この場合、前記第1の材料は、前記甲部の少なくとも一部分を形成する不織布帛のフィラメントであってもよく、この場合、前記第2の材料は、前記靴底構造体内に存在してもよい。
前記第2の材料は、前記靴底構造体のポリマー発泡体に組み込まれていてもよい。
【0027】
前記第2の材料は、前記靴底構造体の流体充填チャンバに組み込まれていてもよい。
前記甲部は、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマー材料を組み込んでいる複数のフィラメントから形成された不織布帛を含んでいてもよい。
履物は、着用者の足を受け入れるための甲部であって、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛を含む甲部と、前記甲部の下部領域に固定された靴底構造体であって、(a)発泡材料および(b)少なくとも部分的に前記熱可塑性ポリマー材料から形成された流体充填チャンバのうちの少なくとも一方を含む靴底構造体とを備えていてもよい。
【0028】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
前記第1の領域の前記フィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0029】
前記熱可塑性ポリマー材料を含む前記フィラメントの引張破断前伸度は、少なくとも100%であってもよい。
前記甲部の前記熱可塑性ポリマー材料は、前記靴底構造体の前記熱可塑性ポリマー材料と実質的に同一であってもよい。
履物は、着用者の足を受け入れるための甲部であって、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛を含む甲部と、前記甲部の下部領域に固定された靴底構造体とを備えていてもよく、この場合、前記甲部の前記不織布帛が、前記靴底構造体に熱融着されていてもよい。
【0030】
この履物は、前記甲部の前記不織布帛と前記靴底構造体との間の領域に、縫い目および接着剤が存在していないものであってもよい。
前記靴底構造体において前記甲部に熱融着されている部分は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよい。
前記靴底構造体において前記甲部に熱融着されている部分は、ポリマー発泡材料および流体充填チャンバのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0031】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
履物は、甲部と、前記甲部に固定された靴底構造体とを有してもよく、この場合、前記履物は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記第1の表面に実質的に平行な方向に少なくとも5センチメートルにわたって延びている紐体と備えていてもよい。
【0032】
前記紐体の材料は、炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレンおよび液晶ポリマーからなる群より選択されたものであってもよい。
前記紐体は、前記不織布帛と結合していてもよい。
前記紐体は、(a)前記甲部の靴紐受入領域の隣接領域から前記靴底構造体の隣接領域へと、または(b)前記履物の踵領域から前記履物の前部領域へと延びていてもよい。
【0033】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよく、この場合、前記紐体の少なくとも一部は、前記第1の領域を貫通していてもよい。
【0034】
複合要素を製造する方法は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の表面に近接して部材を配置する工程と、前記部材および前記不織布を加熱、および圧縮して、前記部材を前記不織布帛に結合する工程とを含んでもよい。
前記部材は、布帛であってもよく、ポリマー発泡材料であってもよく、ポリマー材料のシートであってもよい。
【0035】
前記加熱圧縮工程は、プレスのプラテンの間に前記部材および前記不織布帛を配置する工程を含んでもよい。
この方法は、前記部材および前記不織布帛を衣料品に組み込む工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記部材および前記不織布を履物の甲部に組み込む工程をさらに含んでもよい。
【0036】
複合要素を製造する方法は、中間要素の両面に2つの層の不織布帛を配置する工程であって、前記層が、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された層である工程と、前記層および前記中間要素を加熱、および圧縮して、前記中間要素の前記両面に前記層を結合する工程とを含んでもよい。
前記中間要素は、ポリマー発泡材料を含んでもよい。
【0037】
この方法は、別の熱可塑性ポリマー材料を含むように、前記ポリマー発泡材料を選択する工程をさらに含んでもよい。
前記加熱圧縮工程は、プレスのプラテンの間に前記中間要素および前記層を配置する工程を含んでもよい。
前記加熱圧縮工程は、前記中間要素の周囲の少なくとも一部において前記2つの層を互いに結合する工程を含んでもよい。
【0038】
この方法は、前記中間要素および前記層を衣料品に組み込む工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記中間要素および前記層を履物に組み込む工程をさらに含んでもよい。
方法は、第1の不織布帛を第1の製品に組み込む工程であって、前記不織布が、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛である工程と、前記第1の製品から前記熱可塑性ポリマー材料をリサイクルして、第2の不織布帛、ポリマー発泡体およびポリマーシートのうちの少なくとも1つを形成する工程と、前記第2の不織布帛、前記ポリマー発泡体および前記ポリマーシートのうちの前記少なくとも1つを第2の製品に組み込む工程とを含んでもよい。
【0039】
この方法は、前記第1の製品および前記第2の製品のうちの少なくとも一方を、衣料品とするように選択する工程をさらに含んでもよい。
この方法は、前記第1の製品および前記第2の製品のうちの少なくとも一方を、履物とするように選択する工程をさらに含んでもよい。
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記第2の表面に熱融着された部材とを備えていてもよい。
【0040】
前記部材は、第2の布帛を含んでもよく、この場合、前記熱可塑性ポリマー材料は、前記第2の布帛のフィラメントの周囲に拡がって、前記部材を前記第2の表面に固定していてもよい。
前記部材は、ポリマー発泡材料を含んでもよく、この場合、前記熱可塑性ポリマー材料は、前記ポリマー発泡材料内へと延びて、前記部材を前記第2の表面に固定していてもよい。
【0041】
前記部材は、熱可塑性ポリマー発泡材料を含んでもよく、この場合、前記熱可塑性ポリマー材料と前記熱可塑性ポリマー発泡材料とが混ざり合って、前記部材を前記第2の表面に固定していてもよい。
この複合要素は、前記不織布帛および前記部材を貫通する領域に、縫い目が存在しないものであってもよい。
【0042】
この複合要素は、前記第2の表面と前記部材との間の領域に、接着剤が存在しないものであってもよい。
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0043】
前記複合要素は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記不織布帛に固定され、前記第1の表面に実質的に平行な方向に少なくとも5センチメートルにわたって延びている紐体とを備えていてもよい。
【0044】
前記紐体は、前記第1の表面内に埋め込まれていてもよい。
前記紐体は、0.60ギガパスカルを超える引張強度を有してもよい。
前記紐体は、50ギガパスカルを超える引張弾性率を有してもよい。
前記紐体の材料は、炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレンおよび液晶ポリマーからなる群より選択されたものであってもよい。
【0045】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよく、この場合、前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
前記紐体は、少なくとも前記第1の領域を貫通していてもよい。
【0046】
前記複合要素は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
熱可塑性ポリウレタン材料を組み込んだ複数のポリマーフィラメントから形成され、第1の領域と第2の領域とを有する不織布帛は、前記第1の領域が、前記不織布帛の非繊維状部分であってもよく、この場合、前記第2の領域が、前記不織布帛の繊維状部分であってもよい。
【0047】
前記第1の領域および前記第2の領域は、それぞれ、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有してもよい。
前記第1の領域の透過性は、前記第2の領域の透過性よりも小さくてもよく、この場合、前記第1の領域の耐伸張性は、前記第2の領域の耐伸張性よりも大きくてもよい。
前記不織布帛は、衣料品に組み込まれていてもよく、履物に組み込まれていてもよい。
【0048】
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛であって、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有し、さらに、第1の領域と第2の領域とを有し、前記第1の領域の前記フィラメントが、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されている不織布帛と、前記不織布帛に縫い込まれ、前記第1の表面から前記第2の表面へと延び、前記第1の領域および前記第2の領域のそれぞれを貫通している糸とを備えていてもよい。
【0049】
前記第1の領域のフィラメントの前記熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
複合要素は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成され、第1の表面と、その反対側の第2の表面とを有する不織布帛と、前記第2の表面に固定された接着層とを備えていてもよい。
【0050】
前記不織布帛は、第1の領域と第2の領域とを有してもよく、この場合、前記第1の領域の前記フィラメントは、前記第2の領域の前記フィラメントよりも、高融着度で融着されていてもよい。
前記第1の領域の前記フィラメントは、溶融して、前記不織布帛の非繊維状部分を形成していてもよい。
【0051】
この複合要素は、紐体が、前記不織布帛内に埋め込まれており、前記第1の領域を貫通しているものであってもよい。
この複合要素は、紐体が、前記不織布帛内に埋め込まれているものであってもよい。
前記接着層は、アクリル接着剤であってもよい。
本発明の態様を特徴付ける新規な利点および特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に指摘されている。しかし、新規な利点および特徴をよりよく理解するために、本発明に関連する様々な形態および概念を説明、図示した以下の記載事項および添付図面を参照することができる。
【0052】
上記の要旨および下記の詳細な説明を添付図面と併せて読むと、よりよい理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】不織布帛の斜視図である。
【図2】図1において切断線2−2で定義される、不織布帛の横断面図である。
【図3】複数の融着領域を有する不織布帛の斜視図である。
【図4A】図3の切断線4−4で定義される、不織布帛の融着領域の構成を示す横断面図である。
【図4B】図3の切断線4−4で定義される、不織布帛の融着領域の構成を示す横断面図である。
【図4C】図3の切断線4−4で定義される、不織布帛の融着領域の構成を示す横断面図である。
【図5A】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5B】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5C】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5D】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5E】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5F】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5G】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図5H】不織布帛の融着領域の更なる構成の斜視図である。
【図6A】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6B】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6C】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6D】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6E】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図6F】不織布帛の融着領域の更なる構成を示す、図4A〜図4Cに対応する横断面図である。
【図7A】不織布帛に融着領域を形成する第1の方法の斜視図である。
【図7B】不織布帛に融着領域を形成する第1の方法の斜視図である。
【図7C】不織布帛に融着領域を形成する第1の方法の斜視図である。
【図8A】不織布帛に融着領域を形成する第2の方法の斜視図である。
【図8B】不織布帛に融着領域を形成する第2の方法の斜視図である。
【図8C】不織布帛に融着領域を形成する第2の方法の斜視図である。
【図9】不織布帛に融着領域を形成する第3の方法の斜視図である。
【図10】不織布帛を含む第1の複合要素の斜視図である。
【図11】図10において切断線11−11で定義される、第1の複合要素の横断面図である。
【図12A】第1の複合要素を形成する方法の斜視図である。
【図12B】第1の複合要素を形成する方法の斜視図である。
【図12C】第1の複合要素を形成する方法の斜視図である。
【図13】第1の複合要素を形成する別の方法の概略斜視図である。
【図14】不織布帛を含む第2の複合要素の斜視図である。
【図15】図14において切断線15−15で定義される、第2の複合要素の横断面図である。
【図16】不織布帛を含む第3の複合要素の斜視図である。
【図17】図16において切断線17−17で定義される、第3の複合要素の横断面図である。
【図18A】第3の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図18B】第3の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図18C】第3の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図19】不織布帛を含む第4の複合要素の斜視図である。
【図20】図19において切断線20−20で定義される、第4の複合要素の横断面図である。
【図21】不織布帛を含む第5の複合要素の斜視図である。
【図22】図21において切断線22−22で定義される、第5の複合要素の横断面図である。
【図23A】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23B】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23C】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23D】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23E】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図23F】第5の複合要素の更なる構成の斜視図である。
【図24】第1の継ぎ目構造により結合された2つの不織布帛要素の斜視図である。
【図25】図24において切断線25−25で定義される、第1の継ぎ目構造の横断面図である。
【図26A】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図26B】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図26C】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図26D】第1の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図27】第1の継ぎ目構造を形成する別の方法の斜視図である。
【図28A】他の要素と結合して第1の継ぎ目構造を形成する不織布帛要素の斜視図である。
【図28B】他の要素と結合して第1の継ぎ目構造を形成する不織布帛要素の斜視図である。
【図29A】第1の継ぎ目構造の更なる例を示す、図25に対応する横断面図である。
【図29B】第1の継ぎ目構造の更なる例を示す、図25に対応する横断面図である。
【図29C】第1の継ぎ目構造の更なる例を示す、図25に対応する横断面図である。
【図30】第2の継ぎ目構造により結合された2つの不織布帛要素の斜視図である。
【図31】図30において切断線31−31で定義される、第2の継ぎ目構造の横断面図である。
【図32A】第2の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図32B】第2の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図32C】第2の継ぎ目構造を形成する方法の側面図である。
【図33】第2の継ぎ目構造を形成する別の方法の斜視図である。
【図34A】第2の継ぎ目構造の更なる構成を示す、図31に対応する横断面図である。
【図34B】第2の継ぎ目構造の更なる構成を示す、図31に対応する横断面図である。
【図34C】第2の継ぎ目構造の更なる構成を示す、図31に対応する横断面図である。
【図35A】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35B】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35C】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35D】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35E】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35F】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35G】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図35H】不織布帛を含むシャツの構成の正面図である。
【図36A】図35Aにおいて切断線36A−36Aで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36B】図35Bにおいて切断線36B−36Bで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36C】図35Cにおいて切断線36C−36Cで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36D】図35Dにおいて切断線36D−36Dで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36E】図35Eにおいて切断線36E−36Eで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36F】図35Fにおいて切断線36F−36Fで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36G】図35Gにおいて切断線36G−36Gで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図36H】図35Hにおいて切断線36H−36Hで定義される、シャツの構成の横断面図である。
【図37A】不織布帛を含むズボンの構成の正面図である。
【図37B】不織布帛を含むズボンの構成の正面図である。
【図37C】不織布帛を含むズボンの構成の正面図である。
【図38】図37Aにおいて切断線38−38で定義される、ズボンの横断面図である。
【図39A】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39B】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39C】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39D】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39E】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39F】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図39G】不織布帛を含む履物の構成の側面図である。
【図40A】図39Aにおいて切断線40A−40Aで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図40B】図39Bにおいて切断線40B−40Bで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図40C】図39Cにおいて切断線40C−40Cで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図40D】図39Dにおいて切断線40D−40Dで定義される、履物の構成の横断面図である。
【図41】不織布帛を含む履物の靴紐ループの斜視図である。
【図42A】不織布帛の三次元構造の斜視図である。
【図42B】不織布帛の三次元構造の斜視図である。
【図42C】不織布帛の三次元構造の斜視図である。
【図43A】不織布帛の三次元構造を形成する方法の斜視図である。
【図43B】不織布帛の三次元構造を形成する方法の斜視図である。
【図43C】不織布帛の三次元構造を形成する方法の斜視図である。
【図44A】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図44B】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図44C】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図44D】不織布帛のテクスチャ構造の斜視図である。
【図45A】不織布帛のテクスチャ構造を形成する方法の斜視図である。
【図45B】不織布帛のテクスチャ構造を形成する方法の斜視図である。
【図45C】不織布帛のテクスチャ構造を形成する方法の斜視図である。
【図46A】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46B】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46C】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46D】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46E】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図46F】不織布帛の縫い目構造の斜視図である。
【図47】不織布帛を含むテープ要素の斜視図である。
【図48】図47において切断線48−48で定義されるテープの横断面図である。
【図49A】テープ要素の更なる構成の斜視図である。
【図49B】テープ要素の更なる構成の斜視図である。
【図49C】テープ要素の更なる構成の斜視図である。
【図50】リサイクル工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の説明および添付図面により、不織布帛100、および不織布帛100を組み込んだ様々な製品が開示されている。以下、不織布帛100は、例示目的で、様々な衣料品(例えば、シャツ、ズボン、履物)に組み込まれたものとして開示されているが、その他様々な製品にも不織布帛100を組み込むことができる。例えば、不織布帛100は、他の種類の衣料品や、入れ物、家具の張り物に利用することができる。不織布帛100は、ベッドカバーや、テーブルカバー、タオル、旗、テント、帆、パラシュートに利用することもできる。不織布帛100の様々な構成を、産業目的のために、自動車や航空宇宙の用途や、フィルター材料、医療用布帛、地質用布帛、農業用布帛、工業用の衣料品として利用することもできる。したがって、不織布帛100は、個人用目的にも工業用目的にも様々な製品に利用することができる。
I−不織布帛の構成
図1および図2に、不織布帛100が、第1の表面101と、その反対側の第2の表面102とを有するものとして描かれている。不織布帛100は、主に熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメント103から形成されている。フィラメント103は、不織布帛100全体にランダムに分布し、接着、融着、連結または結合されて、比較的一定の厚さ(すなわち、表面101と表面102との間の距離)を有する構造を形成する。個々のフィラメント103は、第1の表面101上、第2の表面102上、表面101と表面102との間、または両表面101、102上に配置される可能性がある。不織布帛100の形成方法に応じて、個々のフィラメント103の多数の部位が、第1の表面101上に配置され、当該個々のフィラメント103の別の部位が、第2の表面102上に配置され、当該個々のフィラメント103の他の部位が、表面101と表面102との間に配置されていてもよい。連結構造を付与するために、様々なフィラメント103が、互いの周りに巻き付き、互いの上下に延び、不織布帛100の様々な領域を貫通していてもよい。2本以上のフィラメント103が接触する領域において、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料は、接着または融着して、フィラメント103が互いに結合してもよい。したがって、フィラメント103は、様々な態様で効果的に互いに結合し、不織布帛100内で結着構造を形成する。
【0055】
繊維用語において、ファイバは、1ミリメートルないし数センチメートル以上の比較的短い長さを有するものとして定義される場合が多く、フィラメントは、ファイバよりも長い長さ、あるいは不確定長を有するものとして定義される場合が多い。この書類内で用いる場合、用語「フィラメント」またはその変形は、繊維用語の定義からのファイバとフィラメントとの両方の長さを包含するものとして定義される。したがって、ここで言及するフィラメント103またはその他のフィラメントは、一般的に、如何なる長さを有していてもよい。したがって、一例として、フィラメント103は、1ミリメートルないし数百メートル以上に及ぶ長さを有していてもよい。
【0056】
フィラメント103は、熱可塑性ポリマー材料を含む。一般的に、熱可塑性ポリマー材料は、加熱すると溶融し、冷却すると固体状態に戻る。具体的には、熱可塑性ポリマー材料は、充分な熱を受けると、固体状態から軟化または液体状態に転移し、充分に冷却されると、軟化または液体状態から固体状態に転移する。このように、多数のサイクルにわたって、熱可塑性ポリマー材料を溶融、成形、冷却、再溶融、再成形、再冷却してもよい。以下に詳述するように、他の布帛要素、プレート、シート、ポリマー発泡体要素、熱可塑性ポリマー要素、熱硬化性ポリマー要素など、様々な材料から形成された様々な要素に、熱可塑性ポリマー材料を溶接または熱融着することもできる。熱可塑性ポリマー材料とは対照的に、多くの熱硬化性ポリマー材料は、加熱時に溶融せず、むしろ燃焼するだけである。広範な熱可塑性ポリマー材料をフィラメント103用に利用可能であるが、好適な熱可塑性ポリマー材料としては、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィンが例示される。上記の熱可塑性ポリマー材料のいずれを不織布帛100に利用してもよいが、熱可塑性ポリウレタンを利用する利点は、熱融着と着色とに関するものである。以下に詳述するように、他の様々な熱可塑性ポリマー材料(例えば、ポリオレフィン)と比較して、熱可塑性ポリウレタンは、他の要素と比較的結合しやすく、従来の様々な工程により、着色剤を熱可塑性ポリウレタンに添加することができる。
【0057】
各フィラメント103は、その全体を単一の熱可塑性ポリマー材料から形成してもよいが、個々のフィラメント103の少なくとも一部分を多数のポリマー材料から形成してもよい。一例として、個々のフィラメント103が芯鞘構造を有し、個々のフィラメント103の外側の鞘部を第1の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成し、個々のフィラメント103の内側の芯部を第2の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成してもよい。同様の例として、個々のフィラメント103が複合構造を有し、個々のフィラメント103の半分を第1の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成し、個々のフィラメント103の反対側の半分を第2の種類の熱可塑性ポリマー材料で形成してもよい。ある構成において、芯鞘構造または複合構造のいずれかである場合に、個々のフィラメント103を熱可塑性ポリマー材料と熱硬化性ポリマー材料との両方から形成してもよい。全フィラメント103を全体的に単一の熱可塑性ポリマー材料から形成してもよいが、フィラメント103を多数のポリマー材料から形成してもよい。一例として、複数のフィラメント103の一部を第1の種類の熱可塑性ポリマー材料から形成し、他のフィラメント103を第2の種類の熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。同様の例として、複数のフィラメント103の一部を熱可塑性ポリマー材料から形成し、他のフィラメント103を熱硬化性ポリマー材料から形成してもよい。したがって、各フィラメント103、フィラメント103の一部分、または複数のフィラメント103の少なくとも一部を、1種以上の熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。
【0058】
不織布帛100(すなわち、フィラメント103)に利用される熱可塑性ポリマー材料などの材料を、様々な伸縮性を有するように選択してもよく、この様な材料は、弾性体と考えてもよい。不織布帛100が組み込まれる特定の製品にもよるが、不織布帛100またはフィラメント103の引張破断前伸度が、10%〜800%以上であってもよい。好適な特性として伸縮性を有する衣料品の多くは、不織布帛100またはフィラメント103の引張破断前伸度が、少なくとも100%であるとよい。関連事項として、不織布帛100(すなわち、フィラメント103)に利用される熱可塑性ポリマー材料などの材料を、様々な復元性能を有するように選択してもよい。すなわち、不織布帛100を、伸張後に元の形状に戻るように形成してもよいし、伸張後に長細い形状または伸張形状のままとなるように形成してもよい。衣料品など、不織布帛100を組み込んだ数多くの製品が、伸度100%以上の伸張後、元の形状に回復または復元する特性の利点を活かすことができる。
【0059】
従来の様々な方法を利用して、不織布帛100を製造することができる。一般的に、不織布帛100の製造工程には、(a)熱可塑性ポリマー材料から複数のフィラメント103を押出または形成することと、(b)移動中のコンベアなどの表面上にフィラメント103を収集、載置、または堆積することと、(c)フィラメント103を結合することと、(d)圧縮工程などにより所望の厚さを付与することとが含まれる。フィラメント103は、表面上への堆積時には比較的柔軟であるか、あるいは部分的に溶融しているので、互いに接触しているフィラメント103のポリマー材料は、冷却すると接着または融着する。
【0060】
上記の一般的な製造工程の後、不織布帛100に様々な後処理操作を施してもよい。例えば、エンボス加工やカレンダ加工を利用して、不織布帛100を略一定厚としたり、表面101、102の両方または一方にテクスチャを付与したり、さらにフィラメント103を接着または融着したりしてもよい。また、不織布帛100をコーティングしてもよい。さらに、水流噴射加工、水流交絡加工、ニードルパンチ加工またはステッチボンド加工を利用して、不織布帛100の特性を改良してもよい。
【0061】
不織布帛100は、スパンボンドまたはメルトブロー材料として形成してもよい。スパンボンド不織布帛は、10ないし100ミクロンの断面厚を有するフィラメントから形成し、メルトブロー不織布帛は、10ミクロン未満の断面厚を有するフィラメントから形成する。不織布帛100を、スパンボンド、メルトブロー、またはスパンボンドとメルトブローとの組み合わせにより形成してもよい。さらに、スパンボンド層およびメルトブロー層を有するように、不織布帛100を形成してもよいし、あるいは、フィラメント103がスパンボンドおよびメルトブローの組み合わせとなるように不織布帛100を形成してもよい。
【0062】
個々のフィラメント103の太さの違いに加えて、不織布帛100全体の厚さが大幅に異なっていてもよい。様々な図面を参照すると、不織布帛100およびその他の要素は、不織布帛100に関連する詳細や特徴を示すために、その厚さを強調または増加させることにより、図面に明確に示されている。しかし、数多くの用途において、不織布帛100の厚さは、0.5ミリメートル〜10.0ミリメートルの範囲内であってもよいが、この範囲を超えて大幅に異なっていてもよい。数多くの衣料品に関しては、例えば、1.0〜3.0ミリメートルの厚さが適切であるが、他の厚さも利用可能である。以下に詳述するように、不織布帛100は、ある領域において、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料が他の領域よりも高融着度で融着されるように形成され、融着領域における不織布帛100の厚さが実質的に薄くなっていてもよい。したがって、不織布帛100の厚さが、大幅に異なっていてもよい。
II−融着領域
図3に、不織布帛100が、様々な融着領域104を含むものとして描かれている。融着領域104は、不織布帛100において、この様な融着領域104の特性を選択的に変えるために熱に曝された部分である。不織布帛100、または少なくとも不織布帛100を形成する様々なフィラメント103は、熱可塑性ポリマー材料を含むものとして上記で説明されている。熱可塑性ポリマー材料は、充分な熱を受けると、固体状態から軟化状態または液体状態に転移する。熱可塑性ポリマー材料は、充分に冷却されると、軟化状態または液体状態から固体状態に戻る。したがって、様々なフィラメント103を軟化または溶融するために、不織布帛100、または不織布帛100の任意領域を熱に曝してもよい。下記に詳述するように、不織布帛100の様々な領域(すなわち、融着領域104)を熱に曝すことによって、これらの領域の特性を選択的に変えることができる。熱に関してのみ検討してきたが、融着領域104を形成するために、圧力を単独で、あるいは熱と組み合わせて利用してもよく、ある不織布帛100の構成において、融着領域104を形成するために圧力が必要となる場合もある。
【0063】
融着領域104は、幾何学的な形状(例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形)、または様々な不確定、不規則または非幾何学的な形状など、様々な形状とすることができる。融着領域104の位置は、不織布帛100の端縁部から内側に離隔されていてもよいし、不織布帛100の1以上の端縁部上に配置されていてもよいし、不織布帛100の角部に配置されていてもよい。融着領域104の形状および位置は、不織布帛100の一部を横切って延びるように、あるいは不織布帛100の2つの端縁部間に配置されるように選択してもよい。ある融着領域104の面積を比較的小さくし、他の融着領域104の面積を比較的大きくしてもよい。以下で詳述するように、不織布帛100の別個の2つの要素を結合してもよいし、ある融着領域104が、これらの要素を結合する継ぎ目を横切って延びていてもよいし、あるいは、ある融着領域が、他の部材と不織布帛100とを接着する領域内に延びていてもよい。したがって、融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様が、大幅に異なっていてもよい。
【0064】
不織布帛100の様々なフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、充分な熱、そして、場合により圧力に曝されると、固体状態から軟化状態または液体状態に転移する。フィラメント103の状態変化の度合いに応じて、融着領域104内の様々なフィラメント103は、(a)繊維状構造のままであってもよいし、(b)全体が液状に溶融した状態であって、冷えれば非繊維状構造になる状態であってもよいし、または、(c)あるフィラメント103もしくは個々のフィラメント103の一部が繊維状であり、他のフィラメント103もしくは個々のフィラメント103の一部が非繊維状になる中間構造であってもよい。したがって、融着領域104のフィラメント103は、一般的に、不織布帛100の他の領域のフィラメント103よりも高融着度で融着しているが、融着領域104の融着度は、大幅に異なっていてもよい。
【0065】
図4A〜図4Cに、融着領域104におけるフィラメント103の融着度の差が描かれている。特に図4Aを参照して、融着領域104内の様々なフィラメント103は、繊維状構造のままである。すなわち、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料は、繊維状構造のままであり、個々のフィラメント103は、確認可能な状態のままである。特に図4Bを参照して、融着領域104内の様々なフィラメント103は、全体が液状に溶融した状態であって、冷えれば非繊維状構成になる。すなわち、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、融着領域104において固体ポリマーシートを効率的に形成する非繊維状へと溶融し、個々のフィラメント103は全く確認不可能な状態である。特に図4Cを参照して、様々なフィラメント103は、部分的に繊維状構造のままである。すなわち、フィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料の一部が、繊維状構造のままであり、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の一部が、融着領域104において固体ポリマーシートを効率的に形成する非繊維状へと溶融する。したがって、融着領域104におけるフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の構造は、繊維状であってもよいし、非繊維状であってもよいし、繊維状と非繊維状との任意の組み合わせまたは比率であってもよい。したがって、各融着領域104における融着度を、一方の繊維状構造から他方の非繊維状構造までの範囲で変化させることができる。
【0066】
不織布帛100の構成および融着領域104の形成方法に関連する様々な要因によって、融着領域104内におけるフィラメント103の融着度が決定される。例として、融着度を決定する要因には、(a)フィラメント103を形成する特定の熱可塑性ポリマー材料、(b)融着領域104が曝される温度、(c)融着領域104が曝される圧力、ならびに(d)融着領域104が高温および/または高圧に曝される時間が含まれる。これらの要因を変更することによって、融着領域104内における結果的な融着度を、一方の繊維状構造から他方の非繊維状構造までの範囲で変化させることができる。
【0067】
図3における融着領域104の構成は、融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様の多様性を例示することを意図している。しかし、融着領域104の構成が、大幅に異なるものであってもよい。図5Aを参照して、不織布帛100は、略線形平行構造を有する複数の融着領域104を備えている。同様に、図5Bには、不織布帛100が、略曲線平行構造を有する複数の融着領域104を備えているものとして描かれている。図5Cに描かれているように、融着領域104は、分割構造を有していてもよい。さらに、不織布帛100は、図5Dのような三角形の繰り返し模様の構成、図5Eのような円形の繰り返し模様の構成、あるいは、その他の形状など、様々な形状の繰り返し模様の構成の融着領域104を複数有するものであってもよい。ある不織布帛100の構成において、図5Fに描かれているように、単一の融着領域104が、連続領域を形成し、不織布帛100の離散的な残部領域が、この連続領域によって輪郭形成されるものであってもよい。融着領域104は、図5Gのチェッカー模様のように、端縁部または角部が互いに接触する構成を有していてもよい。さらに、図5Hのように、様々な融着領域104の形状が、非幾何学的な形状または不規則な形状であってもよい。したがって、融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様が、大幅に異なっていてもよい。
【0068】
不織布帛100の厚さが、融着領域104において薄くなっていてもよい。図4A〜図4Cを参照して、例えば、不織布帛100は、融着領域104における厚さが、その他の領域よりも薄い。上記のように、融着領域104は、フィラメント103が不織布帛100のその他の領域よりも高融着度で融着している領域である。さらに、不織布帛100、または不織布帛100における融着領域104の形成部分が、圧縮されて融着領域104を形成していてもよい。結果的に、融着領域104の厚さが、不織布帛100の他の領域と比較して薄くなっていてもよい。図4A〜図4Cを再び参照して、表面101、102は、両方とも融着領域104と不織布帛100のその他の領域との間で直角な変移または急激な変移を示す。しかし、融着領域104の形成方法に応じて、表面101、102は、他の構成であってもよい。一例として、図6Aにおいて、第1の表面101のみが、融着領域104へと直角な変移を示す。融着領域104の厚さの減少は、直角な変移または急激な変移によって生じてもよいが、図6Bおよび図6Cに描かれているように、曲線的な変移または緩やかな変移を利用してもよい。他の構成において、図6Dのように、不織布帛100の融着領域104とその他の領域との間で傾斜した変移が形成されていてもよい。融着領域104において厚さが薄くなる場合が多いが、図6Eに描かれているように、厚さが全く減少しない場合や厚さがごく僅か減少する場合もある。不織布帛100に使用されている材料や融着領域104の形成方法により、図6Fに描かれているように、融着領域104が実際に膨張したり、厚さが増加したりする場合もある。図6A〜図6Fのそれぞれにおいて、融着領域104は、非繊維状構造を有するものとして描かれているが、繊維状構造または上記の中間構造を有するものであってもよい。
【0069】
上記の検討に基づき、不織布帛100は、熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメント103から形成されている。フィラメント103は、不織布帛100全体で接着、融着、連結または結合されているが、融着領域104は、フィラメント103が一般的に不織布帛100の他の領域のフィラメントよりも高融着度で融着されている領域である。融着領域104の形状、位置、寸法、その他の態様は、大幅に異なっていてもよい。さらに、フィラメント103の融着度も大幅に異なっていてもよく、繊維状であってもよいし、非繊維状であってもよいし、繊維状と非繊維状との任意の組み合わせや比率であってもよい。
III−融着領域の特性
融着領域104の特性は、不織布帛100の他の領域の特性と異なるものであってもよい。さらに、複数の融着領域104のうちの、ある融着領域104の特性が、別の融着領域104の特性とは異なるものであってもよい。不織布帛100の製造および融着領域104の形成に際して、不織布帛100の様々な領域に特定の特性を付与してもよい。具体的には、不織布帛100の特定の領域に特定の特性を付与するために、融着領域104の形状や、融着領域104の位置、融着領域104の寸法、融着領域104内におけるフィラメント103の融着度、不織布帛100の他の態様を変更してもよい。したがって、不織布帛100は、様々な領域で特定の特性を有するように、操作、設計、または構成することができる。
【0070】
融着領域104の追加または構成により変更される特性としては、透過性、耐久性および耐伸張性が例示される。不織布帛100の特定の領域に、複数の融着領域104のうちの1つを形成することにより、一般的に、その領域の透過性が減少する一方、耐久性および耐伸張性の両方が高まる。以下に詳述するように、フィラメント103の融着度は、透過性、耐久性および耐伸張性の変化に大きな影響を有する。透過性、耐久性および耐伸張性に影響を与える他の要因には、融着領域104の形状、位置および寸法、ならびにフィラメント103を形成する特定の熱可塑性ポリマー材料が含まれる。
【0071】
透過性は、一般的に、空気や水などの流体(気体または液体)が不織布帛100を通過または透過する能力に関連している。透過性は、フィラメント103の融着度により大幅に異なる。一般的に、透過性は、フィラメント103の融着度が最も低い不織布帛100の領域で最も高く、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域で最も低い。このように、フィラメント103の融着度により、透過性は、ある範囲で変化する。融着領域104とは関連のない不織布帛100の領域(すなわち、不織布帛100の非融着領域)は、一般的に、比較的高透過性を示す。フィラメント103の大半が繊維状構造のままである融着領域104では、比較的高透過性を示すが、その透過性は、一般的に、融着領域104とは関連のない領域よりも低い。フィラメント103が繊維状および非繊維状構造である融着領域104では、透過性が低い。結局、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の殆ど全てが非繊維状構造を示す領域では、透過性が比較的低いか、または、透過性が全くない。
【0072】
耐久性は、一般的に、不織布帛100が完全状態、結着状態または非損傷状態にとどまる能力に関連しており、耐摩耗性、耐摩滅性、化学物質/光劣化耐性が含まれる。耐久性は、フィラメント103の融着度により大幅に異なる。一般的に、耐久性は、フィラメント103の融着度が最も低い不織布帛100の領域で最も低く、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域で最も高い。このように、フィラメント103の融着度により、耐久性は、ある範囲で変化する。融着領域104とは関連のない不織布帛100の領域は、一般的に、比較的低耐久性を示す。フィラメント103の大半が繊維状構造のままである融着領域104では、比較的低耐久性を示すが、その耐久性は、一般的に、融着領域104とは関連のない領域よりも高い。フィラメント103が繊維状および非繊維状構造である融着領域104では、耐久性が高い。結局、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の殆ど全てが非繊維状構造を示す領域では、耐久性が比較的高い。融着領域104および不織布帛100の他の領域の一般的な耐久性に影響を及ぼす他の要因としては、不織布帛100の初期厚および密度や、フィラメント103を形成するポリマー材料の種類、フィラメント103を形成するポリマー材料の硬度がある。
【0073】
耐伸張性は、一般的に、不織布帛100が引張力を受けた時に伸張に抵抗する能力に関連する。透過性や耐久性と同様に、不織布帛100の耐伸張性は、フィラメント103の融着度により大幅に異なる。耐久性と同様に、耐伸張性は、フィラメント103の融着度が最も低い不織布帛100の領域で最も低く、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域で最も高い。上記のように、不織布帛100(すなわち、フィラメント103)に使用されている熱可塑性ポリマー材料などの材料は、弾性体であると考えてもよく、あるいは引張破断前伸度が少なくとも100%であってもよい。不織布帛100の耐伸張性は、フィラメント103の融着度が最も高い不織布帛100の領域では比較的高くてもよく、融着領域104は、なお弾性的であってもよく、あるいは引張破断前伸度が少なくとも100%であってもよい。融着領域104および不織布帛100の他の領域の一般的な耐伸張性に影響を及ぼす他の要因としては、不織布帛100の初期厚および密度や、フィラメント103を形成するポリマー材料の種類、フィラメント103を形成するポリマー材料の硬度がある。
【0074】
以下に詳述するように、不織布帛100は、様々な衣料品(例えば、シャツ、ズボン、履物)など、様々な製品に組み込むことができる。シャツを例にとれば、不織布帛100は、胴体領域と2つの腕領域とを含むシャツの大部分を形成してもよい。発汗により水分がシャツ内に蓄積されることを考えれば、比較的高透過性を提供するために、融着領域104を含まない不織布帛100の部分から形成するとよい。シャツを着用したときに、シャツの肘領域が比較的高摩耗に曝されることを考えれば、高耐久性を付与するために、複数の融着領域104うちのいくつかを肘領域に配置するとよい。さらに、個人がシャツを着脱するときに、首開口部が伸びることを考えれば、高耐伸張性を付与するために、複数の融着領域104のうちの1つを首開口部の周囲に配置するとよい。したがって、シャツ全体に単一材料(すなわち、不織布帛100)を用いてもよいが、様々な領域を様々な融着度で融着することによって、シャツの様々な領域において特性を好適に変更することができる。
【0075】
上記では、主に透過性、耐久性、耐伸張性の特性に焦点を当てた。融着領域104の追加や構成によって、その他様々な特性を変更することもできる。例えば、不織布帛100の全体密度は、フィラメント103の融着度の増加に伴って増加する。不織布帛100の透明性も、フィラメント103の融着度の増加に伴って増加する。様々な要因により、不織布帛100の色の濃さも、フィラメント103の融着度の増加に伴って増加する。上記で多少検討したが、不織布帛100の全体厚は、フィラメント103の融着度の増加に伴って低下する。伸張後の不織布帛100の回復の程度、不織布帛100の全体的な可撓性、様々な不具合に対する耐性も、フィラメント103の融着度により変化する。したがって、融着領域104を形成することによって、様々な特性を変更することができる。
IV−融着領域の形成
融着領域104を形成するために、様々な方法を用いることができる。図7A〜図7Cを参照すると、方法の一例が、プレスのプラテンである第1のプレート111と第2のプレート112とを含むように描かれている。まず、図7Aに描かれているように、不織布帛100および遮断素子113をプレート111とプレート112との間に配置する。遮断素子113は、開口部114など、融着領域104に対応する不在領域を有する。すなわち、遮断素子113は、不織布帛100において融着領域104に対応する領域を露出する一方、不織布帛100の他の領域を覆う。
【0076】
そして、図7Bに描かれているように、不織布帛100と遮断素子113とを圧縮または接触させるために、プレート111およびプレート112を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着領域104を形成するために、不織布帛100において融着領域104に対応する領域に熱を加えるが、遮断素子113の存在により、不織布帛100の他の領域には殆ど熱が加わらない。すなわち、不織布帛100において融着領域104に対応する様々な領域の温度は上昇するが、他の領域の温度は殆ど上昇しない。この例示の方法においては、第1のプレート111を加熱して、熱伝導により不織布帛100の温度を上昇させる。しかし、不織布帛100には、遮断素子113の存在によって断熱されている領域がある。したがって、不織布帛100において開口部114から露出している領域のみが熱に曝されて、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料が軟化または溶融する。遮断素子113に使用される材料は、様々であり、金属板や紙シート、ポリマー層、発泡体層など、第1のプレート111から不織布帛100へと伝達される熱を制限するその他様々な(例えば、低熱伝導率の)材料が含まれる。ある方法においては、遮断素子113は、第1のプレート111の一体的な部分であってもよく、あるいは第1のプレート111に組み込まれていてもよい。
【0077】
プレート111、112を離間すると、図7Cに描かれているように、不織布帛100および遮断素子113は、互いに離れる。不織布帛100において遮断素子113の開口部114により露出していた領域は、融着領域104を形成する一方、遮断素子113により被覆または保護されていた領域は、実質的に影響を受けない。ある方法においては、ある融着領域104が他の融着領域104よりも高温になるように遮断素子113を構成することによって、ある融着領域104のフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料が、他の融着領域104よりも高融着度で融着されるようにしてもよい。すなわち、様々な融着領域104に異なる特性を付与するために、融着領域104を異なる温度に加熱するように、遮断素子113を構成してもよい。
【0078】
様々な方法を利用して、不織布帛100の特定の領域に熱を加え、融着領域104を形成することができる。上記のように、熱伝導により不織布帛100の温度を上昇させるために、第1のプレート111を加熱してもよい。ある方法においては、プレート111、112の両方を加熱するようにし、2つの遮断素子113を不織布帛100の両側に配置してもよい。熱は、熱伝導によって加えてもよいが、高周波加熱を使用することもでき、この場合、遮断素子113は、特定の波長の電磁波の通過を阻止するものであってもよい。化学的加熱を利用する方法においては、遮断素子113は、化学物質が不織布帛100の領域に接触するのを防止するものであってもよい。放射熱を利用する他の方法においては、遮断素子113は、放射熱によって不織布帛100の様々な領域の温度が上昇するのを防止する反射材料(すなわち、金属箔)であってもよい。熱伝導素子を含む同様の方法を利用することもできる。具体的には、熱伝導素子を使用して、熱を直接的に融着領域104へと伝導してもよい。遮断素子113は、融着領域104に対応する領域には存在しないが、熱伝導素子は、融着領域104に存在して、不織布帛100のこれらの領域に熱を伝導する。
【0079】
図8A〜図8Cに、不織布帛100に融着領域104を形成するために利用可能な別の方法が例示されている。まず、図8Aに描かれているように、不織布帛100を第2のプレート112の近傍または上に配置するか、あるいは別の表面に配置する。図8Bに描かれているように、複数の融着領域104のうちの1つの融着領域104の形状を有する加熱ダイス115を、不織布帛100に接触させて圧縮し、不織布帛100の所定領域を加熱する。ダイス115を取り除くと、融着領域104の1つが現れる。その他の融着領域104の一般形状を有する更なるダイスを使用して、同様に残りの融着領域104を形成することができる。この方法の利点は、ダイス115と他の各ダイスとを異なる温度に加熱し、不織布帛100に異なる時間接触させ、そして異なる力で不織布帛100を圧縮することによって、結果的に得られる様々な融着領域104の特性を多様化できることである。
【0080】
図9に、不織布帛100に融着領域104を形成するために利用可能な更に別の方法が例示されている。この方法においては、第2のプレート112または別の表面の上に不織布帛100を配置し、レーザ装置116を使用して不織布帛100の特定領域を加熱することによって、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料を融着して融着領域104を形成する。レーザ装置116の出力、焦点、および速度のいずれかまたは全てを調節することによって、融着領域104の加熱度を調節または変更することができる。さらに、様々な融着領域104を異なる温度に加熱して、フィラメント103の融着度を変えることによって、結果的に得られる様々な融着領域104の特性を多様化できることである。適切なレーザ装置116の例としては、従来の様々なCO2またはNd:YAGレーザ装置がある。
V−複合要素
不織布帛100は、複合要素を形成するために、様々な布帛、材料または他の部材と結合することができる。不織布帛100と他の部材とを結合することにより、不織布帛100および他の部材の両方の特性が、複合要素に組み込まれる。図10および図11に、部材120が、第2の表面102において不織布帛100に結合されている複合要素の一例が描かれている。部材120は、不織布帛100の寸法と同様の寸法を有するものとして描かれているが、部材120は、その長さが小さくても大きくてもよいし、その幅が小さくても大きくてもよいし、その厚さが小さくても大きくてもよい。例えば、部材120が水分を吸収したり逃がしたりする布帛である場合、不織布帛100と部材120との組み合わせは、衣料品着用者が発汗するようなスポーツ活動中に使用される衣料品に適している。別の例として、部材120がポリマー発泡体などの圧縮可能な材料である場合は、不織布帛100と部材120との組み合わせは、他のスポーツ選手や設備との接触または衝突の可能性のあるスポーツ活動のためのパッドなど、緩衝作用(すなわち、衝撃力の減衰)が好都合な衣料品に適している。更なる例として、部材120がプレートまたはシートである場合、不織布帛100と部材120との組み合わせは、緊急の衝撃からの保護を提供する衣料品に適している。したがって、様々な布帛、材料または他の部材を不織布帛100の表面に結合して、更なる特性を有する複合要素を形成することができる。
【0081】
フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料を用いて、不織布帛100を部材120などの部材に固定してもよい。上記のように、熱可塑性ポリマー材料は、加熱されると溶融し、充分に冷却されると固体状態に戻る。熱可塑性ポリマー材料のこの特性に基づいて、熱融着法を利用し、不織布帛100および部材120など、複合要素の部分を結合する融着部を形成してもよい。ここで使用される用語「熱融着」またはその変形は、2つの要素間の固定技術であって、要素の少なくとも一方において熱可塑性ポリマー材料が、軟化または溶融して、冷却時には要素の材料が互いに固着するような固定技術であると定義される。同様に、用語「融着部」またはその変形は、2つの要素の少なくとも一方において熱可塑性ポリマー材料が、軟化または溶融して、冷却時には要素の材料が互いに固着するような工程を経て2つの要素を結合する結合部、接続部または構造であると定義される。例として、熱融着には、(a)熱可塑性ポリマー材料をそれぞれ組み込んだ2つの要素が溶融または軟化し、熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って(例えば、熱可塑性ポリマー材料の間の境界層を超えて拡散して)、冷却時に共に固定されること、(b)熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ第1の布帛要素が溶融または軟化し、熱可塑性ポリマー材料が第2の布帛要素の構造内に侵入または浸透して(例えば、第2の布帛要素内のフィラメントやファイバの周りに拡がったり、フィラメントやファイバと結合したりして)、冷却時に布帛要素を共に固定すること、(c)熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ布帛要素が溶融または軟化し、熱可塑性ポリマー材料が別の要素(例えば、ポリマー発泡体やシート、プレート、構造素子)に形成された隙間や空洞に侵入または浸透して、冷却時に要素を共に固定することが含まれる。熱融着は、1つの要素のみが熱可塑性ポリマー材料を含んでいる場合や、両方の要素が熱可塑性ポリマー材料を含んでいる場合に実行することができる。さらに、熱融着は、一般的に、縫い目や接着剤の使用を伴わないが、熱を用いて要素を直接的に結合することを伴う。しかし、ある状況においては、融着部や、熱融着による要素の結合を補強するために、縫い目や接着剤を利用してもよい。また、要素の結合や、融着部の補強のために、ニードルパンチ法を利用してもよい。
【0082】
不織布帛100と部材120とを結合する融着部を形成するために、熱融着法を利用してもよいが、融着部の構成は、少なくとも部分的に部材120の材料および構造に左右される。第1の例として、部材120は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成されている場合、不織布帛100および部材120の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に不織布帛100と部材120とが固定される。しかし、部材120の熱可塑性ポリマー材料の融点が、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料よりもかなり高い場合、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、部材120の構造や隙間、空洞に侵入して、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。第2の例として、部材120は、熱可塑性ポリマー材料を含まない布帛から形成されていてもよく、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、部材120内のフィラメントの周りに拡がったり、フィラメントと結合したりして、冷却時にこれらの布帛要素を共に固定するようにしてもよい。第3の例として、部材120は、熱可塑性ポリマー材料を含むポリマー発泡体、ポリマーシートまたはプレートであってもよく、不織布帛100および部材120の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に不織布帛100および部材120を共に固定するようにしてもよい。第4の例として、部材120は、熱可塑性ポリマー材料を含まないポリマー発泡体、ポリマーシートまたはプレートであってもよく、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、部材120内の隙間や空洞に侵入または浸透して、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。図11を参照して、複数の融着部要素105(例えば、不織布帛100および部材120の両方または一方の熱可塑性ポリマー材料)が、不織布帛100と部材120との間に延びてこれらの要素を共に結合しているものとして描かれている。したがって、部材120が様々な材料から形成されていようと、様々な構造のうちの1構造を有していようと、融着部を利用して、不織布帛100と部材120とを結合することができる。
【0083】
図12A〜図12Cを参照して、複合要素を形成するための一般的な製造方法について検討する。まず、図12Aに描かれているように、不織布帛100および部材120を、第1のプレート111と第2のプレート112との間に配置する。そして、図12Bに描かれているように、不織布帛100と部材120とを圧縮または接触させるために、プレート111、112を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着部を形成して不織布帛100と部材120とを結合するために、不織布帛100および部材120に熱を加える。すなわち、不織布帛100および部材120の温度を上昇させて、不織布帛100と部材120との間の界面において熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融させる。不織布帛100および部材120の材料や部材120の全体構造に応じて、熱伝導により不織布帛100および部材120の温度を上昇させるために、第1のプレート111のみを加熱してもよいし、第2のプレート112のみを加熱してもよいし、プレート111、112の両方を加熱してもよい。プレート111、112を離間した後、図12Cに描かれているように、不織布帛100および部材120の両方により形成された複合要素を取り出し、冷却する。
【0084】
図12A〜図12Cに関連して検討した製造方法は、一般的に、(a)不織布帛100と部材120とを別々に形成することと、(b)次に、不織布帛100と部材120とを結合して、複合要素を形成することとを含む。図13を参照して、不織布帛100の製造中に、フィラメント103を部材120上に直接堆積する方法が描かれている。まず、プレート112上に部材120を載置するが、このプレート112は、移動コンベアであってもよい。そして、延長ノズル121により熱可塑性ポリマー材料を押し出し、熱可塑性ポリマー材料から複数のフィラメント103を形成する。フィラメント103を部材120上に落下させて、フィラメント103を部材120の表面上に集積、載置、または堆積することにより、不織布帛100を形成する。冷却すると、不織布帛100は、効果的に部材120と結合し、複合要素を形成する。したがって、フィラメント103は、不織布帛100の製造中に、部材120上に直接堆積することができる。同様の製造方法として、複合要素を形成するために、不織布帛100の表面に対して、材料(例えば、発泡材、溶融ポリマー、コーティング)をスプレーしたり、堆積したり、塗布したりしてもよい。さらに、フィラメント103の層を繰り返し堆積することによって、2層以上の不織布帛100を含む複合要素を形成することもできる。フィラメント103の各層が異なる特性を有している場合や、異なるポリマー材料から形成されている場合、結果的に得られる複合要素は、様々な層の特性を併せ持つことができる。
【0085】
不織布帛100および部材120から複合要素を形成するために、上記で検討した一般的な方法を利用してもよいが、他の方法を利用してもよい。熱伝導によって不織布帛100と部材120とを加熱するよりも、むしろ高周波加熱や化学的加熱を含む他の方法を利用してもよい。ある方法においては、プレート111とプレート112との間で圧縮する前に、第2の表面102および部材120の表面を放射加熱により加熱してもよい。融着部を形成する表面のみの温度を上昇させるために放射加熱を利用する利点は、不織布帛100および部材120の他の部分の熱可塑性ポリマー材料があまり加熱されないことである。ある方法においては、融着部を補強するために、不織布帛100と部材120との間で縫い目または接着剤を利用することもできる。
【0086】
図10〜図12Cにおいて、不織布帛100は、融着領域104を含まない構成を有するものとして描かれている。複合要素に様々な特性を付与するために、不織布帛100に融着領域104を形成してもよい。ある方法においては、不織布帛100を別の部材(例えば、部材120)と結合する前に、融着領域104を形成してもよい。しかし、他の方法においては、熱融着工程中または熱融着工程後に、融着領域104を形成してもよい。したがって、複合要素の様々な製造方法において、如何なる段階で融着領域104を形成してもよい。
VI−複合要素の構成
以上、複合要素の一般的な構造と、複合要素の形成方法に関する概念について示した。更に具体的な例として、機械操作による布帛130、シート140,発泡体層150、および複数の紐体160に不織布帛100を結合した様々な複合要素の構成を、以下に開示する。
【0087】
図14および図15に、不織布帛100および機械操作による布帛130を含む複合要素の例が描かれている。不織布帛100は、ランダムに分布するフィラメント103から形成されており、布帛130は、1つ以上の糸131を機械的に操作して織成構造またはインターループ構造を形成することによって形成される。インターループ構造で製造する場合、例えば、平編み、幅広管状丸編み、幅狭管状丸編みジャカード、シングル丸編みジャカード、ダブル丸編みジャカード、経編みジャカード、ダブルニードルバーラッシェル編みなど、様々な編成方法で布帛130を形成することができる。したがって、布帛130は、様々な構造を有することができ、様々な緯編み技術、経編み技術を利用して、布帛130を製造することができる。布帛130の糸131は、少なくとも一部が熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよいが、数多くの機械操作による布帛が、天然繊維(例えば、綿や絹)または熱硬化性ポリマー材料から形成されている。不織布帛100と布帛130との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料は、糸131の周りに拡がったり、糸131に接着したり、あるいは糸131の構造体に侵入したりして、冷却時に不織布帛100および布帛130を共に結合する。具体的には、図15に、様々な融着部要素105が、糸131の周りに拡がったり、糸131に侵入したりして、融着部を形成するものとして描かれている。図12A〜図12Cに関連して上記で検討した方法と同様の方法を利用して、不織布帛100と布帛130との間に融着部を形成してもよい。すなわち、不織布帛100と布帛130との間の融着部は、例えば、プレート111とプレート112との間で要素を圧縮、および加熱することによって形成することができる。
【0088】
不織布帛100と布帛130との組み合わせによって、不織布帛100または布帛130の単独に勝る利点を付与することができる。例えば、布帛130は、一方向伸縮性を示し、糸131の構造によって布帛130が一方向に伸縮可能となっているが、その伸縮性は垂直方向に限定されている。不織布帛100と布帛130とが結合すると、複合要素も、それに応じた一方向伸縮性を示す。別の例として、この複合要素を様々な衣料品に組み込んで、衣料品着用者の皮膚に接触するように布帛130を配置することもでき、布帛130用に選択される材料および布帛130の構造によって、不織布帛100の単独よりも高度な快適性を付与することもできる。これらの利点に加えて、様々な融着領域104を不織布帛100に形成して、異なる程度の透過性、耐久性、耐伸張性を複合要素の特定の領域に付与することができる。したがって、複合要素は、不織布帛100も布帛130も単独では付与不可能な特性を組み合わせて付与する構成を有することができる。
【0089】
図16および図17に、不織布帛100とシート140とを含む複合要素の別の例が描かれている。シート140は、ポリマーのシートまたはプレート、スエード、合成スエード、金属、または木材から形成することができ、例えば、柔軟性があっても無くてもよい。不織布帛100とシート140との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が、シート140の隙間や空洞に侵入または浸透して、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。シート140が熱可塑性ポリマー材料から形成されている場合には、不織布帛100およびシート140の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って(例えば、熱可塑性ポリマー材料の間の境界層を超えて拡散して)、冷却時に不織布帛100およびシート140を共に固定するようにしてもよい。図12A〜図12Cに関連して上記で検討した方法と同様の方法を利用して、不織布帛100とシート140との間に融着部を形成してもよい。代替構成として、縫い目や接着剤を利用したり、フィラメント103をシート140内へと押し込み、貫通させるニードルパンチ法を利用したりして、不織布帛100とシート140とを結合したり、融着部を補強したりしてもよい。
【0090】
不織布帛100とシート140との組み合わせは、例えば、緊急の衝撃からの保護を提供する衣料品に適している。不織布帛100とシート140とを結合する縫い目、リベットなどの要素が無いことにより、比較的滑らかな界面が形成される。衣料品に組み込まれた場合、不織布帛100とシート140とを結合する領域に切れ目がなければ、衣料品着用者に快適性を付与することができる。別の例として、シート140の端縁部が、不織布帛100の端縁部から内側に離間しているものとして描かれている。この複合要素が衣料品などの製品に組み込まれる場合、不織布帛100の端縁部を利用して、他の布帛要素または衣料品の一部に複合要素を結合してもよい。これらの利点に加えて、異なる程度の透過性、耐久性、および耐伸張性を複合要素の領域に付与するために、様々な融着領域104を不織布帛100に形成してもよい。
【0091】
シート140は、固体(中実)の連続的な構成を有するものとして描かれているが、複合要素において、シート140が不在の様々な領域があってもよい。図18Aを参照して、シート140は、不織布帛100を横切る様々な材料長尺片の構成を有している。図18Bに、シート140が格子構造を有する同様の構成が描かれている。複合要素への強度および耐引裂性の付与に加えて、シート140の長尺片構造および格子構造は、不織布帛100の一部を露出させることによって、露出領域において透過性を付与することができる。図16〜図18Bの各図において、シート140は、不織布帛100の厚さと同程度の厚さを有するものとして描かれている。しかし、図18Cにおいては、シート140は、不織布帛100の厚さよりもかなり薄い厚さを有するものとして描かれている。シート140は、厚さが薄くても、透過性を付与する一方、強度と耐引裂性とを付与することができる。
【0092】
図19および図20に、2層の不織布帛100と発泡体層150とを備えた複合要素の更なる例が描かれている。発泡体層150は、熱硬化性または熱可塑性の発泡ポリマー材料から形成されたものであってもよい。発泡体層150が熱硬化性ポリマー材料から形成されている構成においては、2層の不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料が発泡体層150の両側の隙間または空洞に侵入または浸透して、融着部を形成し、これらの要素を共に固定することができる。発泡体層150が熱可塑性ポリマー材料から形成されている構成においては、2層の不織布帛100および発泡体層150の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、融着部を形成して、これらの要素を共に固定することができる。
【0093】
図12A〜図12Cに関連して上記で検討した方法と同様の方法を利用して、2層の不織布帛100と発泡体層150との間に融着部を形成してもよい。具体的には、発泡体層150を2層の不織布帛100の間に配置して、これら2つの要素をプレート111とプレート112との間に配置するとよい。圧縮、加熱すると、2層の不織布帛100と発泡体層150の両面との間に融着部を形成することができる。さらに、2層の不織布帛100を、発泡体層150の周囲に沿って熱融着してもよい。すなわち、2層の不織布帛100を互いに結合するために、融着部を利用することができる。発泡体層150に加えて、他の中間要素(例えば、布帛130またはシート140)を2層の不織布帛100の間に結合してもよい。フィラメント103を発泡体層150内へと押し込み、貫通させるニードルパンチ法や、縫い目または接着剤を利用して、不織布帛100と発泡体層150とを結合したり、融着部を補強したりしてもよい。
【0094】
2層の不織布帛100と発泡体層150との組み合わせは、他のスポーツ選手や設備との接触または衝突の可能性のあるスポーツ活動のためのパッドなど、緩衝作用(すなわち、衝撃力の減衰)が好都合な衣料品に適している。2層の不織布帛100と発泡体層150とを結合する領域に切れ目がなければ、衣料品着用者に快適性を付与することができる。2層の不織布帛100の端縁部を利用して、他の布帛要素または衣料品の一部に複合要素を結合してもよい。これらの利点に加えて、異なる程度の透過性、耐久性、および耐伸張性を複合要素に付与するために、様々な融着領域104を不織布帛100に形成してもよい。
【0095】
図21および図22に、不織布帛100と複数の紐体160とを含む複合要素の例が描かれている。紐体160は、不織布帛100に固定されており、表面101、102のいずれかに略平行な方向に延びている。図22の断面図を参照して、表面101、102に対する紐体160の相対位置は、大幅に異なっていてもよい。具体的には、第1の表面101上に紐体160を配置してもよいし、第1の表面101内に紐体160を部分的に埋め込んでもよいし、第1の表面101に近接してその下方に紐体160を窪ませてもよいし、第1の表面101から内側に紐体160を離間させて表面101と表面102との間に配置してもよいし、第2の表面102の近傍に紐体160を配置してもよい。熱融着法を利用して、紐体160を不織布帛100に固定してもよい。すなわち、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融して、紐体160を不織布帛100に結合する融着部を形成してもよい。不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料の軟化度または溶融度に応じて、紐体160を第1の表面101上に配置してもよいし、第1の表面101より内側に配置してもよい。
【0096】
紐体160は、長さが実質的に幅および厚さよりも大きい、任意の略1次元材料から形成することができる。使用材料および所望の特性に応じて、紐体160は、個々のフィラメントであってもよいし、複数のフィラメントを含む糸であってもよいし、複数の糸を含む撚糸であってもよい。以下に詳述するように、紐体160の適切な材料としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラアラミド繊維およびメタアラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマーが例示される。ある構成では、紐体160は、金属ワイヤーやケーブルであってもよい。
【0097】
不織布帛100を形成する熱可塑性ポリマー材料と比較して、紐体160用の上記材料の多くは、引張強度および耐伸張性が高い。すなわち、紐体160は、不織布帛100よりも強く、引張力を受けた時の伸縮性が、不織布帛100よりも小さくてもよい。不織布帛100と紐体160との組み合わせは、複合要素が1方向に伸張し、実質的に耐伸張性があり、別の方向に対しては高強度である構造を提供する。図21を参照して、直交する二方向を矢印161、162で定義する。複合要素が、矢印161の方向に引張力を受ける(すなわち、引っ張られる)と、不織布帛100は大幅に伸張することができる。しかし、複合要素が、矢印162の方向に引張力を受ける(すなわち、引っ張られる)と、紐体160は、力に対抗するので、不織布帛100よりも耐伸張性が高い。したがって、紐体160は、複合素子に対して特定の方向の強度と耐伸張性とを付与するように配向させてもよい。ここでは、紐体160は、耐伸張性を付与するものとして検討されているが、大幅に伸張する材料から紐体160を形成してもよい。複合要素に他の特性を付与するために、紐体160を利用してもよい。例えば、紐体160は、電力やデータを伝達するために、導電性であってもよいし、あるいは、特に審美性を付与するために、紐体160を不織布帛100内に配置してもよい。
【0098】
図21には、紐体160が、互いに略平行であるものとして描かれており、紐体160の端部は、不織布帛100の端縁部から内側に離間しているものとして描かれている。他の複合要素構成において、紐体160を他の方向に配置してもよく、全体あるいは一部分のみが、不織布帛100を横切っていてもよい。図23Aを参照して、紐体160は、互いに交差しているものとして描かれている。紐体160が互いに向いている方向の角度を考えると、紐体160は、矢印161の方向の伸縮性を少なくとも部分的に制限するが、複合要素は、矢印162の方向には実質的に耐伸張性がある。図23Bに、紐体160が互いに直角に交差している同様の構成が描かれている。この構成においては、紐体160は、矢印161、162の両方向に耐伸張性を付与することができる。すなわち、複合要素は、紐体160の配置方向により、あらゆる方向に耐伸張性を有することができる。また別の事項として、図23Aにおいては、紐体160の端部が、不織布帛100の端縁部から内側に離間しているのに対し、図23Bにおいては、紐体160の両端が、不織布帛100の端縁部まで延びている。図23Cにおいては、紐体160は、波形または非線形構造を有するものとして描かれている。この構成においては、紐体160は、矢印162の方向に若干の伸縮性が許容されるものであってもよい。しかし、紐体160が伸張により真っ直ぐになると、その後、紐体160は、実質的に耐伸張性を有し、矢印162の方向の強度を提供するものであってもよい。図23Dに、紐体160が非平行に外側に向かって放射状に配置されている別の構成が描かれている。
【0099】
ある複合要素の構成において、複合要素の特性に更に影響を与えるために、融着領域104を追加してもよい。図23Eを参照して、単一の融着領域104が、矢印161の方向に不織布帛100を横切っている。融着領域104が、不織布帛100の他の領域よりも高耐伸張性を示すことを考えれば、図23Eの融着領域により矢印161の方向に若干の耐伸張性を付与し、紐体160により矢印162の方向に耐伸張性を付与するようにしてもよい。ある構成においては、図23Fに描かれているように、融着領域が、紐体160に沿って矢印162の方向に延びていてもよい。したがって、融着領域104を紐体160と共に利用して、複合要素に特定の特性を付与することができる。
【0100】
紐体160の材料特性は、紐体160内で利用される特定の材料に関連する。紐体160の特定の材料選択に関連する材料特性としては、例えば、引張強度、引張弾性率、密度、柔軟性、靭性および耐久性がある。紐体160に適したものとして指摘した各材料は、様々な材料特性の組み合わせを示す。したがって、紐体160の特定の材料選択に際して、これら各材料の材料特性を比較するとよい。引張強度は、引張力を受けた(すなわち、引っ張られた)ときの耐破壊性の尺度である。すなわち、引張力を受けたときに、高引張強度を有する材料は、低引張強度を有する材料よりも、破断する可能性が低い。引張弾性率は、引張力を受けたときの耐伸張性の尺度である。すなわち、引張力を受けたときに、高引張弾性率を有する材料は、低引張弾性率を有する材料よりも、伸張する可能性が低い。密度は、単位体積あたりの質量の尺度である。すなわち、体積が同じであれば、高密度の材料は、低密度の材料よりも重量が重い。
【0101】
ナイロンは、他の各材料と比較すると、引張強度が比較的低く、引張弾性率が比較的低く、密度が平均的である。鋼は、他の材料と比較すると、引張強度が平均的で、引張弾性率が若干高く、密度が比較的高い。ナイロンは、鋼よりも密度が低い(すなわち、鋼よりも軽い)が、ナイロンは、鋼よりも強度が低く、伸張しやすい傾向がある。逆に、鋼は、強度が高く、伸縮性が低く、その一方で、鋼は、密度がかなり高い(すなわち、ナイロンよりも重い)。工業繊維(例えば、炭素繊維やアラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー)は、それぞれ、鋼と同程度の引張強度と引張弾性率とを示す。さらに、工業繊維は、ナイロンと同程度の密度を示す。すなわち、工業繊維は、引張強度および引張弾性率が比較的高いが、密度が比較的低い。一般的に、各工業繊維は、引張強度が0.60ギガパスカルを超え、引張弾性率が50ギガパスカルを超え、密度が、2.0グラム/立法センチメートルである。
【0102】
複合要素の特定の構成を選択する際、材料特性に加えて、紐体160の様々な構成の構造特性を考慮してもよい。紐体160の構造特性は、紐体160を形成するために利用する特定の構造に関連する。紐体160の特定の構成を選択する際に関連する構造特性の例としては、デニール、層の数、破断力、撚糸および個々のフィラメントの数が例示される。
【0103】
上記の検討に基づいて、複合要素を形成するために、(例えば、縫合や接着により)不織布帛100を他の様々な部材に熱融着または結合してもよい。他の部材に不織布帛100を結合する利点は、複合要素が、一般的に不織布帛100および他の部材の両方からの特性の組み合わせを含んでいるということである。例として、複合要素は、布帛130、シート140、発泡体層150、紐体160のいずれかに不織布帛100を結合することにより形成することができる。
VII−継ぎ目の形成
製品に不織布帛100を組み込むために、不織布帛100をその製品の他の要素と結合して継ぎ目を形成する場合がある。例えば、不織布帛100を、他の不織布帛要素、様々な機械操作による布帛要素、またはポリマーシートと結合してもよい。縫合や接着を利用して、不織布帛100を製品の他の要素に結合してもよいが、熱融着法により継ぎ目を形成してもよい。
【0104】
不織布帛100を他の要素に結合する方法の一例として、結合して継ぎ目106を形成する1対の不織布帛100の要素が、図24および図25に描かれている。すなわち、一方の不織布帛100の端縁領域が、継ぎ目106で、他方の不織布帛100の端縁領域に結合されている。具体的には、一方の不織布帛100の第1の表面101を他方の不織布帛100の第1の表面101に熱融着することによって、継ぎ目106を形成する。従来の縫合継ぎ目と同様に、各不織布帛100の第1の表面101を継ぎ目106で内側に向けて対向させ、第1の表面101を互いに結合する。従来の縫合継ぎ目とは対照的に、各不織布帛100の第1の表面101を互いに結合するために、融着部を利用する。しかし、ある構成においては、継ぎ目106を強化するために、縫合または接着を利用してもよい。
【0105】
次に、図26A〜図26Dを参照して、継ぎ目106を形成するための一般的な製造方法について説明する。まず、図26Aに描かれているように、第1の継ぎ目形成ダイス117と第2の継ぎ目形成ダイス118との間に、1対の不織布帛100の要素を配置する。そして、図26Bに描かれているように、1対の不織布帛100の要素の端縁領域を圧縮または接触させるために、継ぎ目形成ダイス117、118を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着部を形成して不織布帛100の要素の端縁領域を結合するために、継ぎ目形成ダイス117、118は、端縁領域に熱を加える。すなわち、継ぎ目形成ダイス117、118は、1対の不織布帛100の要素の端縁領域の温度を上昇させて、端縁領域の間の界面において熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融させる。継ぎ目形成ダイス117、118を離間すると、図26Cに描かれているように、1対の不織布帛100の要素の端縁領域間に継ぎ目106が形成されている。冷却後、図26Dに描かれているように、1対の不織布帛100の要素を開いてもよい。継ぎ目106の形成後、継ぎ目106における1対の不織布帛100の要素の端縁領域の下に延びる程度を制限するために、継ぎ目106をトリミングしてもよい。
【0106】
継ぎ目106を形成するために、上記の一般的な方法を利用してもよいが、その他の方法を利用してもよい。不織布帛100の要素の端縁領域を熱伝導により加熱する代わりに、高周波加熱、化学的加熱または放射加熱など、他の方法を利用してもよい。ある方法においては、1対の不織布帛100の要素の間で、縫合や接着剤を利用して、融着部を補強してもよい。代替方法として、図27に描かれているように、1対の不織布帛100の要素を第2のプレート112などの表面に載置して、加熱ローラ119により継ぎ目106を形成してもよい。
【0107】
融着領域104の形成と同様に、継ぎ目106の形成には、継ぎ目106の領域に配置された様々なフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料の軟化または溶融が含まれる。フィラメント103の状態変化の程度に応じて、継ぎ目106の領域の様々なフィラメント103は、(a)繊維状構造のままであってもよいし、(b)全体が液状に溶融した状態であって、冷えれば非繊維状構造になってもよいし、(c)一部のフィラメント103または個々のフィラメント103の一部が繊維状であり、他のフィラメント103または個々のフィラメント103の一部が非繊維状になる中間構造をとってもよい。図25を参照して、フィラメント103は、継ぎ目106の領域において繊維状構造のままであるものとして描かれているが、非繊維状構造へと溶融していてもよいし、中間構造であってもよい。したがって、継ぎ目106の領域のフィラメント103は、一般的に、不織布帛100の他の領域のフィラメント103よりも高融着度で融着しているが、融着度は、大幅に異なっていてもよい。
【0108】
1対の不織布帛100の要素の間に継ぎ目106を形成する際には、様々なフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に共に固定される。不織布帛100を他の種類の要素と結合して、同様の継ぎ目106を形成してもよい。第1の例として、図28Aにおいて、不織布帛100は、機械操作による布帛130と継ぎ目106で結合しているものとして描かれている。布帛130の糸131は、少なくとも一部が熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよいが、機械操作による布帛の多くは、天然繊維(例えば、綿や絹)または熱硬化性ポリマー材料から形成されている。継ぎ目106において不織布帛100と布帛130との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料は、糸131の周りに拡がったり、糸131に結合したり、糸131の構造体に侵入したりして、冷却時に不織布帛100および布帛130を共に固定する。第2の例として、図28Bにおいて、不織布帛100は、継ぎ目106でシート140と結合しているものとして描かれている。ある構成において、シート140は、可撓性のポリマーシートであってもよい。継ぎ目106において不織布帛100とシート140との間に融着部を形成するために、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料がシート140内の隙間や空洞に侵入したり、浸透したりして、冷却時にこれらの要素を共に固定するようにしてもよい。シート140が熱可塑性ポリマー材料から形成されている場合には、不織布帛100およびシート140の熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合って、冷却時に継ぎ目106において不織布帛100およびシート140を共に固定するようにしてもよい。
【0109】
継ぎ目106の領域においても、不織布帛100の要素は、その厚さが実質的に均一なものとして描かれている。継ぎ目106の形成に使用する温度および圧力に応じて、継ぎ目106の構成を変更してもよく、その他様々な構成が含まれる。図29Aを参照して、不織布帛100の要素は、継ぎ目106の領域において厚さが薄くなっており、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、非繊維状構造であるものとして描かれている。図29Bに描かれているように、継ぎ目106は、先の尖った構造であってもよい。図29Cに描かれているように、継ぎ目106の形成に使用する温度および圧力は、段付き構造を付与するものであってもよい。したがって、継ぎ目106における1対の不織布帛100の要素の構成は、大幅に異なるものであってもよい。さらに、不織布帛100を布帛130やシート140など、他の要素と結合すると、継ぎ目106に関して同様の構成が得られる。
【0110】
不織布帛100を他の要素に結合する方法の別の例として、図30および図31に、結合して継ぎ目107を形成する1対の不織布帛100の要素が描かれている。この構成において、一方の不織布帛100の端縁領域は、継ぎ目107において、他方の不織布帛100の端縁領域に重なり合って結合する。1対の不織布帛100の要素を互いに結合するために、融着部を利用するが、継ぎ目107を補強するために縫合や接着を利用してもよい。さらに、布帛130やシート140など、他の種類の要素に単一の不織布帛100を結合して、同様の継ぎ目107を形成してもよい。
【0111】
次に、図32A〜図32Cを参照して、継ぎ目107を形成するための一般的な製造方法について説明する。まず、図32Aに描かれているように、1対の不織布帛100の要素を第1の継ぎ目形成ダイス117と第2の継ぎ目形成ダイス118との間に重ね合わせて配置する。そして、図32Bに描かれているように、1対の不織布帛要素100の端縁領域を圧縮または接触させるために、継ぎ目形成ダイス117、118を互いに近接するように、平行移動または移動する。融着部を形成して、不織布帛100の要素の端縁領域を結合するために、継ぎ目形成ダイス117、118により端縁領域に熱を加える。すなわち、継ぎ目形成ダイス117、118により1対の不織布帛100の要素の端縁領域の温度を上昇させて、端縁領域間の界面において熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融させる。継ぎ目形成ダイス117、118を離間すると、図32Cに描かれているように、継ぎ目107が、1対の不織布帛100の要素の端縁領域に形成されている。
【0112】
継ぎ目107を形成するために、上記の一般的な方法を利用してもよいが、その他の方法を利用してもよい。1対の不織布帛100の要素の端縁領域を熱伝導により加熱する代わりに、高周波加熱、化学的加熱または放射加熱など、他の方法を利用してもよい。ある方法においては、1対の不織布帛100の要素の間で、縫い目や接着剤を利用して、融着部を補強してもよい。代替方法として、図33に描かれているように、1対の不織布帛100の要素を第2のプレート112などの表面に載置して、加熱ローラ119により継ぎ目107を形成してもよい。図31を参照して、フィラメント103は、継ぎ目107の領域において繊維状構造のままであるものとして描かれているが、非繊維状構造へと溶融していてもよいし、中間構造であってもよい。したがって、継ぎ目107の領域のフィラメント103は、一般的に、不織布帛100の他の領域のフィラメント103よりも高融着度で融着しているが、融着度は、大幅に異なっていてもよい。
【0113】
図30および図31に、1対の不織布帛100の要素の第1の表面101が、互いに同一平面または面一であるものとして描かれている。同様に、1対の不織布帛100の要素の第2の表面102も、互いに同一平面または面一であるものとして描かれている。継ぎ目107の形成に使用する温度および圧力に応じて、継ぎ目107の構成を変更してもよく、その他様々な構成が含まれる。図34Aを参照して、表面101、102は、継ぎ目107において内側に撓んでおり、熱可塑性ポリマー材料は、非繊維状構造を有するものとして描かれている。図34Bにおいては、表面101、102は、内側により急峻な角度となっており、これは、継ぎ目形成ダイス117、118により加わる圧力によって得られる。別の構成として、図34Cにおいて、1対の不織布帛100の要素は、継ぎ目107において非同一平面の構成で結合されているものとして描かれている。したがって、継ぎ目107における1対の不織布帛100の要素の構成は、大幅に異なるものであってもよい。さらに、不織布帛100を布帛130やシート140など、他の要素と結合すると、継ぎ目107に関して同様の構成が得られる。
VIII−一般的な製品の構成
衣料品(例えば、シャツ、ジャケットなどの上着、ズボン、履物)や入れ物、家具の張り物において、不織布帛100や、多数の不織布帛100の要素、様々な複合要素構成を利用することができる。ベッドカバーやテーブルカバー、タオル、旗、テント、帆、パラシュート、さらに、自動車や航空宇宙の用途や、フィルター材料、医療用布帛、地質用布帛、農業用布帛、工業用衣料品など、工業用目的において、不織布帛100の様々な構成を利用することができる。したがって、不織布帛100は、個人用目的にも工業用目的にも様々な製品に利用することができる。
【0114】
不織布帛100は、様々な製品に利用することができるが、以下の説明により、不織布帛100が組み込まれた衣料品を例示する。すなわち、以下の説明により、シャツ200、ズボン300および履物400に不織布帛100を組み込む様々な方法を例示する。さらに、製品における不織布帛100の利用に関連する様々な概念を例示するために、シャツ200、ズボン300および履物400の様々な構成例を提供する。したがって、以下に概説する概念は、具体的に様々な衣料品に適用されているが、この様な概念をその他様々な製品に適用することもできる。
IX−シャツの構成
図35A〜図35Hに、シャツ200の様々な構成が、胴体領域201と、胴体領域201から外側に延びている1対の腕領域202とを含むものとして描かれている。胴体領域201は、着用者の胴体に対応し、着用時に胴体の少なくとも一部を覆う。胴体領域201の上部領域には、首開口部203が形成されており、シャツ200着用時に、そこから着用者の首および頭が突出する。同様に、胴体領域201の下部領域には、ウェスト開口部204が形成されており、シャツ200着用時に、そこから着用者のウェストまたは骨盤領域が突出する。腕領域202は、それぞれ着用者の右腕と左腕とに対応し、シャツ200着用時には、右腕および左腕の少なくとも一部を覆う。腕領域202には、それぞれ腕開口部205が形成されており、シャツ200着用時に、そこから着用者の手、手首または腕が突出する。シャツ200は、シャツ型衣服、特に長袖シャツの構成を有する。一般的に、シャツ型衣服は、着用者の胴体の一部を覆い、着用者の腕に及ぶものであってもよい。更なる例において、シャツ200の一般的な構造を有する衣料品は、半袖シャツやタンクトップ、肌着、ジャケット、コートなど、他のシャツ型衣服の構成を有していてもよい。
【0115】
図35Aおよび図36Aに、シャツ200の第1の構成が描かれている。シャツ200の大部分が、不織布帛100から形成されている。具体的には、胴体領域201および各腕領域202は、主に不織布帛100から形成されている。シャツ200は、不織布帛100の単一要素から形成されていてもよいが、一般的に、不織布帛100の多数の結合要素から形成されている。図示のように、例えば、胴体領域201の少なくとも前部領域が、不織布帛100の単一要素から形成され、各腕領域202は、不織布帛100の異なる要素から形成されている。不織布帛100の様々な要素を共に結合するために、1対の継ぎ目206が、胴体領域201と腕領域202との間に延びている。一般的に、継ぎ目206は、不織布帛100の要素の端縁領域を互いに熱融着した領域に形成されている。図36Aを参照して、継ぎ目206の一方が、継ぎ目106の一般的な構成を有するものとして描かれているが、継ぎ目107または別の種類の継ぎ目の構成を有していてもよい。継ぎ目206の形成または補強のために、縫合や接着を利用してもよい。
【0116】
図35Bおよび図36Bに、シャツ200の第2の構成が描かれている。図35Aの構成と同様に、シャツ200の大部分が、不織布帛100から形成されている。シャツ200の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が、不織布帛100に形成されている。具体的には、融着領域104が、首開口部203、ウェスト開口部204および各腕開口部205の周囲に形成されている。個人がシャツ200を着脱するときに各開口部203〜205が伸張することを考えて、これらの領域に高耐伸張性を付与するために、融着領域104が開口部203〜205の周囲に配置されている。シャツ200の融着領域104内のフィラメント103は、一般的に、シャツ200のその他の領域内のフィラメント103よりも高融着度で融着しており、図36Bに描かれているように、非繊維状構造であってもよい。シャツ200の融着領域104内のフィラメント103は、繊維状構造であってもよいし、中間構造であってもよい。高耐伸張性に加えて、融着領域104は、開口部203〜205の周囲領域に高耐久性を付与する。
【0117】
図35Cおよび図36Cに、シャツ200の第3の構成が、更なる融着領域104を含むものとして描かれている。シャツ200着用時にシャツ200の肘領域が比較的大きな摩耗を受けることを考えて、高耐久性を付与するために、複数の融着領域104のうちの一部を肘領域に配置してもよい。また、シャツ200の肩領域に延びるバックパックのストラップにより、肩領域が摩耗して伸びる可能性がある。したがって、耐久性と耐伸張性との両方を付与するために、更なる融着領域104をシャツ200の肩領域に配置する。図36Cに描かれているように、不織布帛100において肩領域内および継ぎ目206の周囲に位置する領域は、肩領域において効果的に継ぎ目206および融着領域104を形成する。2つの別個の方法を利用して、これらの領域を形成してもよい。すなわち、第1の熱融着方法で継ぎ目206を形成し、第2の加熱方法で肩領域に融着領域104を形成してもよい。しかし、代替として、肩領域における継ぎ目206および融着領域104を単一の熱融着/加熱方法で形成してもよい。
【0118】
シャツ200における融着領域104の寸法は大幅に異なっていてもよいが、一般的に、融着領域104の中には、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有する融着領域104もある。上記のように、不織布帛100の製造工程中に、様々なエンボス加工またはカレンダ加工を利用してもよい。フィラメント103が互いに若干融着している比較的小さな複数の領域(すなわち、1〜10平方ミリメートル)を形成するエンボス加工やカレンダ加工もある。エンボスやカレンダにより形成される領域とは対照的に、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有する融着領域104もある。ここで使用されている「連続領域」またはその変形は、比較的切れ目や途切れのない領域であると定義される。図35Cを参照して、例として、首開口部203の周囲の融着領域104は、個別に連続領域を形成し、シャツ200の肘領域の各融着領域104は、個別に連続領域を形成し、シャツ200の肩領域の各融着領域104は、個別に連続領域を形成する。殆ど融着していない不織布帛100の一部がこれらの融着領域104の間に延びているので、全融着領域104(すなわち、開口部203〜205の周囲および肩領域および肘領域内)が、まとまって単一の連続領域となることはない。
【0119】
図35Dおよび図36Dに、シャツ200の第4の構成が描かれている。図35Bおよび図36Bを参照すると、融着領域104を利用して、開口部203〜205の周囲の領域に耐伸張性を付与している。大略的に図36Dに描かれているように、耐伸張性と共に様々な審美性を付与するために用いる別の構成には、不織布帛100を折り返すことと、様々な結合領域207において不織布帛100をそれ自体に熱融着または固定することが含まれる。この構造を開口部203〜205のいずれに利用してもよいが、布帛100をそれ自体に熱融着した結合領域207は、ウェスト開口部204および腕開口部205の周囲に延びているものとして描かれている。
【0120】
図35Eおよび図36Eに、シャツ200の第5の構成が描かれている。図35A〜図35Dに描かれているシャツ200の構成は、主に不織布帛100から形成されているが、シャツ200のこの構成において腕領域202は、機械的操作による布帛である布帛130から形成されている。上記のように、継ぎ目106、107の構成を有する継ぎ目によって、不織布帛100が布帛130など、他の様々な材料に結合されていてもよい。したがって、継ぎ目206によって、胴体領域201の不織布帛は、腕領域202の布帛130の要素に結合される。様々な種類の布帛材料をシャツ200内で使用することによって、例えば、シャツ200の快適性、耐久性または審美性を高めることができる。腕領域202は、布帛130から形成されたものとして描かれているが、さらに、あるいはその代わりに、その他の領域も布帛130またはその他の材料から形成されていてもよい。例えば、胴体領域201の下部を布帛130から形成してもよいし、首開口部203の周囲の領域のみを布帛130から形成してもよいし、あるいは、胴体領域201を布帛130から形成し、各腕領域202を不織布帛100から形成するように図35Eの構成を逆にしてもよい。布帛130を例として利用するが、シート140または発泡体層150の材料から形成された要素をシャツ200に組み込んだり、不織布帛100と結合したりしてもよい。したがって、シャツ200などの衣料品に、不織布帛100および他の様々な布帛や材料を組み込んでもよい。また、不織布帛100を組み込んだシャツ200の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が、胴体領域201の不織布帛100に形成されている。
【0121】
図35Fおよび図36Fに、シャツ200の第6の構成が描かれており、この構成において、シャツ200の大部分が、不織布帛100および布帛130の複合要素から形成されている。具体的には、シャツ200を形成する材料は、不織布帛100の外層と布帛130の内層とを含む層状構造を有している。不織布帛100と布帛130との組み合わせによって、不織布帛100または布帛130の単独に勝る利点を付与することができる。例えば、布帛130は、一方向伸張性を示し、これにより複合要素に一方向伸張性を付与するものであってもよい。布帛130は、シャツ200の着用者の皮膚に接触するように位置していてもよく、布帛130のために選択した材料および布帛130の構造は、不織布帛100単独よりも高快適性を付与するものであってもよい。更なる事項として、不織布帛100の存在により、要素を熱融着によって結合することができる。図36Fを参照して、不織布帛100を含む複合素材の表面が互いに熱融着されて、胴体領域201および一方の腕領域202の要素を結合している。また、シャツ200の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が領域201、202に形成されている。
【0122】
図35Gおよび図36Gに、シャツ200の第7の構成が描かれている。着用者に防護を提供するために、様々なシート140および発泡体層150が不織布帛100の内面に熱融着されている。具体的には、シャツ200の肩領域に2つのシート140が配置され、腕領域202に2つのシート140が配置され、胴体領域201の側部に2つの発泡体層150が配置されている。また、様々な融着領域104が、不織布帛100に形成されている。具体的には、胴体領域201において発泡体層150が配置されている領域の周囲を1対の融着領域104が取り囲み、腕領域202においてシート140が配置されている領域の上に1対の融着領域104が延びている。例えば、発泡体層150を取り囲む領域を補強し、耐伸張性を付与するために、または、シート140上の領域に高耐久性を付与するために、これらの融着領域104を利用してもよい。
【0123】
図35Hおよび図36Hに、シャツ200の第8の構成が描かれている。不織布帛100に形成されている様々な融着領域104に加えて、例えば、シャツ200の特定領域に耐伸張性や更なる強度を付与するために、複数の紐体160が不織布帛100の内部に埋め込まれている。具体的には、7本の紐体160が胴体領域201の上部の1点から外側に向かって下方に放射状に延びており、2本の紐体160が各腕領域202に沿って平行に延びており、少なくとも1本の紐体160がシャツ200の肩領域において継ぎ目206を横切っている。一部の紐体160は、例えば、紐体160の周囲領域に更なる耐伸張性や耐久性を付与する様々な融着領域104を貫通している。胴体領域201において、各紐体160は、複数の融着領域104のうちの1つを貫通し、紐体160のうちの2つの紐体160は、1対の融着領域104に沿って延びている。シャツ200の肩領域においては、1対の紐体160の全体が、融着領域104内部に配置されている。したがって、紐体160を単独で用いてもよいし、融着領域104と組み合わせてもよい。
【0124】
上記の検討に基づいて、不織布帛100をシャツ200などの衣料品に利用することができる。ある構成においては、継ぎ目106または107の構成を有する継ぎ目206を用いて、不織布帛100の要素などの布帛要素を結合してもよい。シャツ200の領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104を形成してもよいし、様々な種類の布帛をシャツ200に組み込んでもよいし、布帛130やシート140、発泡体層150、紐体160など、様々な部材のうちの1以上の部材を不織布帛100に結合することによって複合要素を形成してもよい。不織布帛100に融着領域104を形成し、不織布帛100を他の部材に結合して、複合要素を形成することにより、様々な特性および特性の組み合わせをシャツ200の様々な領域に付与してもよい。すなわち、ここに開示されている様々な概念を個別または組み合わせて利用して、シャツ200の特性を設計し、特定の目的のためにシャツ200を仕立てることができる。不織布帛100に熱可塑性ポリマー材料が組み込まれていることを考えると、継ぎ目206および複合要素を熱融着により形成することもできる。
X−ズボンの構成
図37A〜図37Cに、ズボン300の様々な構成が、骨盤領域301と、骨盤領域301から下方に延びる1対の脚領域302とを含むものとして描かれている。骨盤領域301は、着用者の胴体下部および骨盤に対応し、着用時に胴体下部の少なくとも一部を覆う。骨盤領域301の上部領域には、ウェスト開口部303が形成され、ズボン300着用時には、そこを胴体が貫通する。脚領域302は、それぞれ着用者の右脚と左脚とに対応し、ズボン300着用時には、右脚および左脚の少なくとも一部を覆う。各脚領域302には、足首開口部304が形成され、ズボン300着用時には、そこから着用者の足首および足が突出する。ズボン300は、ズボン型衣服、特にスポーツ用ズボンの構成を有する。一般的に、ズボン型衣服は、着用者の胴体下部を覆い、着用者の脚部に及ぶ。更なる例において、ズボン300の一般的な構成を有する衣料品は、ショートパンツやジーンズ、ブリーフ、水着、下着など、他のズボン型衣服の構成を有していてもよい。
【0125】
図37Aに、ズボン300の第1の構成が描かれている。ズボン300の大部分は、不織布帛100から形成されている。具体的には、骨盤領域301および各脚領域302が、主に不織布帛100から形成されている。ズボン300は、不織布帛100の単一要素から形成されていてもよいが、ズボン300は、一般的に、不織布帛100の多数の結合要素から形成されている。図示されていないが、継ぎ目106、107または206と同様の継ぎ目を利用して、不織布帛100の様々な要素を共に結合してもよい。また、継ぎ目の形成や補強のために、縫合や接着を利用してもよい。
【0126】
ポケット305が、ズボン300に形成されており、比較的小さな物体(例えば、鍵、札入れ、身分証明カード、携帯電話、携帯音楽プレーヤー)を保持、収容するために使用してもよい。図38に描かれているように、重なり合う2層の不織布帛100を使用してポケット305を形成する。具体的には、結合領域306を利用して、不織布帛100の層を互いに熱融着する。しかし、不織布帛100の一方の層の中央部は、結合されておらず、物体を収容するためのポケット305の内部領域を形成する。また、ポケット305と同様のポケットを、シャツ200など、他の製品や衣料品に形成してもよい。
【0127】
図37Bに、ズボン300の第2の構成が描かれている。図37Aの構成と同様に、ズボン300の大部分は、不織布帛100から形成されている。ズボン300の特定領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104が不織布帛100に形成されている。具体的には、融着領域104が、ウェスト開口部303と各足首開口部304の周囲に形成されている。各開口部303、304およびポケット305の開口部が伸張することを考えれば、融着領域104を利用して、これらの領域に耐伸張性を付与してもよい。すなわち、ズボン300の融着領域104内のフィラメント103は、一般的に、ズボン300の他の領域内のフィラメント103よりも高融着度で融着されており、上記の繊維状構造、非繊維状構造、および中間構造のいずれを有していてもよい。融着領域104は、高耐伸張性の付与に加えて、高耐久性を付与する。ズボン300着用時に、ズボン300の膝領域が比較的高摩耗を受けることを考えれば、高耐久性を付与するために、更なる融着領域104を膝領域に配置してもよい。
【0128】
図37Cに、ズボン300の第3の構成が描かれている。シャツ200と同様に、ズボン300の様々な領域に特性を付与するために、融着領域104、布帛130、シート140、発泡体層150および紐体160を利用してもよい。脚領域302において、例えば、布帛130が、不織布帛100の内面に熱融着されている。1対のシート140が、骨盤領域301の側部領域においてズボン300に熱融着されており、ウェスト開口部303の周囲における融着領域104の一部が、シート140の下に延びている。また、1対の発泡体層150が、ズボン300の膝領域に配置されており、脚領域302に沿って延びている紐体160が、発泡体層150の下に(すなわち、不織布100と発泡体層150との間に)延びている。また、紐体160の端部領域は、脚領域302の下部領域において融着領域104内へと延びている。したがって、ズボン300の様々な領域に特性を付与するために、融着領域104、布帛130、シート140、発泡体層150および紐体160を様々な方法で利用したり、組み合わせたりしてもよい。図35Gにおいて、シート140および発泡体層150の様々な要素が、シャツ200の内面に熱融着されているが、図37Cにおいては、シート140および発泡体層150の様々な要素が、ズボン300の外面に熱融着されていてもよい。様々な構造上および審美性の要因に応じて、複合要素および複合要素を含む衣料品に、部材(例えば、布帛130、シャツ140、発泡体層150、紐体160)を不織布帛100の外面または内面に配置して形成してもよい。
【0129】
上記の検討に基づいて、不織布帛100をズボン300などの衣料品に利用することができる。様々な種類の継ぎ目を用いて、不織布帛100の要素などの布帛要素を結合してもよい。ズボン300の領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104を形成してもよいし、様々な種類の布帛をシャツ200に組み込んでもよいし、布帛130やシート140、発泡体層150、紐体160など、様々な部材のうちの1以上の部材を不織布帛100に結合することによって複合要素を形成してもよい。不織布帛100に融着領域104を形成し、不織布帛100を他の部材に結合して、複合要素を形成することにより、様々な特性および特性の組み合わせをズボン300の様々な領域に付与してもよい。すなわち、ここに開示されている様々な概念を個別または組み合わせて利用して、ズボン300の特性を設計し、特定の目的のためにズボン300を仕立てることができる。不織布帛100に熱可塑性ポリマー材料が組み込まれていることを考えれば、継ぎ目および複合要素を熱融着により形成することもできる。
XI−履物の構成
図39A〜図39Gに、履物400の様々な構成が、靴底(ソール)構造体410と甲部(アッパー)420とを含むものとして描かれている。靴底構造体410は、甲部420に固定され、着用者の足に履物400が装着されると、足と床との間に拡がる。粘着摩擦(トラクション)の付与に加えて、靴底構造体410は、歩行中、走行中、その他の歩行活動中に、足と床との間で圧縮されたときに、床からの反力を減衰することができる。図示のように、靴底構造体410は、流体充填チャンバ411と、チャンバ411の外面に結合し、周囲を取り囲む補強構造412と、チャンバ411の下面に固定された外底413とを備えており、本発明に引用により組み込まれているドジャンらの上記特許文献1に開示されている靴底構造体と同様である。靴底構造体410の構成は、大幅に異なっていてもよく、その他様々な従来の構造または従来にない構造が含まれる。例として、靴底構造体410は、チャンバ411および補強構造412の代わりにポリマー発泡体要素を組み込んだものであってもよく、本発明に引用により組み込まれているスイガートらの上記特許文献2およびグッドウィンの上記特許文献3のいずれかに開示されているように、ポリマー発泡体要素は、少なくとも部分的に流体充填チャンバを封入したものであってもよい。別の例として、靴底構造体410は、本発明に引用により組み込まれているチンドラーの上記特許文献4に開示されているように、内部発泡体引張部材を有する流体充填チャンバを組み込んだものであってもよい。したがって、靴底構造体410は、様々な構成を有することができる。
【0130】
甲部420は、靴底構造体410に対して足を受け入れ固定するために、履物400内に空間を形成する。具体的には、甲部420は、足の側部に沿って、そして足の中央側に沿って延び、足を覆い、足の下に延びて、甲部420内の空間が足を収容するような形状になるように構成されている。前記空間へは、履物400の少なくとも踵領域に位置する足首開口部421から到達できる。靴紐422が、甲部420の様々な靴紐孔423を貫通しており、着用者が、足の寸法比率に合わせるために、甲部420の寸法を変更できるようになっている。また、靴紐422によって、着用者は、甲部420をゆるめ、空間に対して容易に足を出し入れできるようになっている。図示されていないが、甲部420は、履物400の快適性や調整力を高めるために、靴紐422の下に延びている舌革部を備えていてもよい。
【0131】
図39Aおよび図40Aに、履物400の第1の構成が描かれている。足の側部に沿って延び、足を覆い、足の下に延びている甲部420の各部分は、不織布帛100の様々な要素から形成することができる。図示されていないが、継ぎ目106、107と同様の継ぎ目を用いて、不織布帛100の要素を結合してもよい。履物の多くは、甲部と靴底構造体とを結合するために、縫い目や接着剤を利用している。しかし、靴底構造体410を、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。具体的には、チャンバ411および補強構造412の少なくとも一部分を、融着部により甲部420に結合する熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。すなわち、融着法を利用して、靴底構造体410と甲部420とを結合してもよい。ある構成においては、縫い目や接着剤を利用して、靴底構造体410と甲部420とを結合してもよいし、縫い目や接着剤により融着部を補強してもよい。
【0132】
履物400の比較的大部分を熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。上記のように、不織布帛100、チャンバ411および補強構造412を、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。靴紐422は、一般的に、接着や縫合により甲部420に結合されていないが、靴紐422も、熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。同様に、外底413も、熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。熱可塑性ポリマー材料を組み込むか、あるいは全体的に熱可塑性ポリマー材料から形成されている履物400の要素の数に応じて、熱可塑性ポリマー材料から形成されている履物の質量百分率は、30%〜100%である。ある構成において、甲部420と靴底構造体410とを組み合わせた質量百分率で少なくとも60%が、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)甲部420の他の要素(すなわち、靴紐422)、および(b)靴底構造体410の要素(すなわち、チャンバ411、補強構造412、および外底413)の少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。更なる構成において、甲部420と靴底構造体410とを組み合わせた質量百分率で少なくとも80%または少なくとも90%が、不織布帛100の熱可塑性ポリマー材料、ならびに(a)甲部420の他の要素、および(b)靴底構造体410の要素の少なくとも一方の熱可塑性ポリマー材料によるものであってもよい。したがって、履物400の大部分または全体を、1種以上の熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。
【0133】
図39Bおよび図40Bに、履物400の第2の構成が描かれており、この構成において、3つの略線形の融着領域104が、履物400の踵領域から前部領域まで延びている。上記に詳述したように、不織布帛100のフィラメント103を形成する熱可塑性ポリマー材料は、融着領域104において、不織布帛100の他の領域よりも高融着率で融着している。また、フィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、溶融して、不織布帛100の非繊維状部分を形成するものであってもよい。したがって、3つの融着領域104は、フィラメント103が甲部420の他の領域よりも高融着率で融着している領域を形成する。融着領域104は、一般的に、不織布帛100の他の領域よりも高耐伸張性を有する。融着領域104が、履物400の踵領域と前部領域との間を長手方向に延びていることを考えれば、融着領域104は、履物400の長手方向の伸張量を低減することができる。すなわち、融着領域104は、踵領域と前部領域との間において前記方向に関して高耐伸張性を履物400に付与することができる。また、融着領域104は、甲部420の耐久性を高め、甲部420の透過性を低減することができる。
【0134】
図39Cおよび図40Cに、履物400の第3の構成が描かれている。様々な融着領域104が、不織布帛100に形成されている。融着領域104の一つが、足首開口部421に隣接してその周囲を取り囲んでおり、これによって、足首開口部421の周囲領域に高耐伸張性を付与し、甲部420内の足をしっかりと保持するのに役立つ。別の融着領域104が、踵領域に配置され、履物の後部周りに延びて、甲部420内の踵の移動に対抗する踵カウンタを形成する。更なる融着領域104が、前部領域において靴底構造体に近接して配置されており、前部領域に高耐久性を付与する。特に、甲部420の前部領域は、甲部420の他の部分よりも摩耗が激しい可能性があり、前部領域への融着領域104の追加によって、前部領域における履物400の耐摩耗性を高めることができる。更なる融着領域104が、いくつかの靴紐孔423の周囲を取り囲んでおり、これにより、靴紐422を受ける領域の耐久性および耐伸張性を高めることができる。また、履物400の側部に沿って耐伸張性を高めるために、融着領域104が、靴紐孔423の隣接領域から靴底構造体410の隣接領域へと下方に延びている。特に、靴紐422の張力は、甲部420の側部に張力を付与する可能性がある。甲部420の側部に沿って下方に延びる融着領域104を形成することによって、甲部420における伸張を抑制することができる。
【0135】
履物400における融着領域104の寸法は、大幅に異なっていてもよいが、融着領域104は、一般的に、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有している。上記のように、不織布帛100の製造工程中に、様々なエンボス加工またはカレンダ加工を利用してもよい。エンボス加工またはカレンダ加工により、フィラメント103が互いに若干融着している比較的小さな領域(すなわち、1〜10平方ミリメートル)を複数個形成してもよい。エンボスまたはカレンダによって形成される領域とは対照的に、融着領域104は、上記に定義されているような、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有している。
【0136】
甲部420の大部分を単層の不織布帛100から形成してもよいが、複数層を用いてもよい。図40Cを参照して、甲部420は、2層の不織布帛100の間に中間発泡体層150を備えている。この構成の利点は、発泡体層が甲部420の側部に更なる緩衝性を付与することによって、足を保護し、足に高快適性を付与することである。一般的に、図19および図20に関連して上記で説明した複合要素の一般的な構成を有するように、甲部420において発泡体層150を組み込んだ部分を形成してもよい。さらに、図12A〜図12Cに関連して上記で説明した方法と同様の熱融着法を利用して、甲部420において発泡体層150を組み込んだ部分を形成してもよい。発泡体層150の代わりに、布帛130またはシート140を履物400の不織布帛100に熱融着してもよい。したがって、様々な複合要素を履物400に組み込むことによって、層状構造に様々な特性を付与することができる。
【0137】
図39Dおよび図40Dに、履物400の第4の構成が描かれており、この構成において、様々な紐体160が不織布帛100に埋め込まれている。不織布帛100を形成する熱可塑性ポリマー材料と比較して、紐体160に関する上記の材料の多くは、高引張強度および高耐伸張性を示す。すなわち、紐体160は、不織布帛100よりも強く、引張力を受けたときに不織布帛100よりも低伸張性を示す。したがって、紐体160を履物400内で利用すると、不織布帛100よりも高強度および高耐伸張性を付与することができる。
【0138】
紐体160は、不織布帛100内に埋め込まれたり、あるいは不織布帛100に接着されたりする。紐体160の多くは、少なくとも5センチメートルの距離にわたって不織布帛100の表面に略平行な方向に延びている。少なくとも一部の紐体160を少なくとも5センチメートルの距離にわたって延びるように形成することの利点は、履物400のある領域に加わる引張力を、紐体160に沿って履物400の別の領域へと伝達可能なことである。ある群の紐体160は、履物400の踵領域から前部領域へと延びて、強度を高め、履物400内における長手方向の伸張量を低減する。すなわち、これらの紐体160は、踵領域と前部領域との間において前記方向に関して高強度および高耐伸張性を履物400に付与することができる。別の群の紐体160は、履物400の側部に沿って強度および耐伸張性を高めるために、靴紐孔423の隣接領域から靴底構造体410の隣接領域へと下方に延びている。特に、靴紐422における張力が、甲部420の側部に張力を与える可能性がある。紐体160を甲部420の側部に沿って延びるように配置することによって、甲部420における伸張を低減する一方、強度を高めることができる。また、更に別の群の紐体160が、踵領域に配置され、履物400の安定性を高める踵カウンタを効果的に形成している。紐体160と同様の紐体を含む構成を有する履物の更なる詳細は、ここに引用により組み込まれているメシュターの上記特許文献5に開示されている。
【0139】
図39Eに、履物400の第5の構成が描かれている。図39Dおよび図40Dの構成とは対照的に、様々な融着領域104が不織布帛100に形成されている。具体的には、融着領域104は、(a)靴紐孔423の隣接領域から靴底構造体410の隣接領域へと下方に延びる紐体160や(b)踵領域に配置された紐体160の各群の領域に配置されている。紐体160の少なくとも一部は、融着領域104を貫通し、紐体160を組み込んだ甲部420の領域に更なる耐伸張性および高耐久性を付与することによって、紐体160をさらに保護する。融着領域104は、少なくとも1平方センチメートルの連続領域を有し、融着領域104内のフィラメント103の熱可塑性ポリマー材料は、繊維状であってもよいし、非繊維状であってもよいし、繊維状と非繊維状との組み合わせであってもよい。
【0140】
図39Fに、履物400の第6の構成が描かれている。履物400の側部における3つの融着領域104は、文字「A」「B」「C」の形状を有する。上記のように、融着領域104を利用して、透過性や耐久性、耐伸張性の特性など、不織布帛100の様々な特性を改良することができる。一般的に、融着領域104を形成することによって、不織布帛100の透明性や色の濃さなど、様々な審美特性を改良することができる。すなわち、融着領域104の色を、不織布帛100の他の部分の色よりも暗くすることができる。この様な審美特性の変化を利用して、履物400の領域に印を形成するために、融着領域104を利用することができる。すなわち、融着領域104を利用して、チームや会社の名前やロゴ、個人の名前やイニシャル、または審美的な模様や図、要素を不織布帛100に形成することができる。同様に、融着領域104を利用して、シャツ200やズボン300など、不織布帛100を組み込んだその他の製品に印を形成することができる。
【0141】
図39Fに描かれているように、融着領域104を利用して、履物400の側部、そしてシャツ200やズボン300など、不織布帛100を組み込んだその他様々な製品に印を形成することができる。関連事項として、不織布帛100の要素を様々な製品に熱融着したり、結合したりして、印を形成することができる。例えば、甲部が主に合成皮革から形成されている履物の側部に、文字「A」「B」「C」の形状を有する不織布帛100の要素を熱融着してもよい。不織布帛100が、その他様々な材料に熱融着可能であることを考えれば、印の形成のために、不織布帛100の要素を製品に熱融着してもよい。
【0142】
継ぎ目106、107と同様の継ぎ目を使用して、履物400の任意の構成において不織布帛100の要素を結合することができる。図39Fを参照して、1対の継ぎ目424が、甲部420を貫通して略斜め方向に延びており、不織布帛100の様々な要素を結合している。継ぎ目424を形成するために、熱融着を利用してもよいが、縫い目や接着剤を利用してもよい。上記のように、靴底構造体410は、チャンバ411と補強構造412とを備えた構造に加えて、様々な構造を有するものであってもよい。図39Fを再び参照して、熱可塑性ポリマー発泡材料425をチャンバ411および補強構造412の代わりに利用し、甲部420を発泡材料425に熱融着して、靴底構造体410を甲部420に結合してもよい。熱硬化性ポリマー発泡材料を靴底構造体410内で使用する場合も、熱融着部を利用することができる。
【0143】
図39Gに、履物400の第7の構成が描かれており、この構成において、不織布帛100を利用して、靴紐422の代替または補強用の1対のストラップ426が形成されている。一般的に、ストラップ426によって、着用者は、足の寸法比率に合わせるために、甲部420の寸法を変更できるようになっている。また、ストラップ426によって、着用者は、甲部420をゆるめ、空間に対して容易に足を出し入れできるようになる。ストラップ426の一方端部は、恒久的に甲部420に固定されており、ストラップ426の他の部分は、例えば、フック/ループファスナーに結合されていてもよい。この構成によって、着用者は、ストラップを調節することができる。上記のように、不織布帛100は、伸張し、伸張後に元の構造に戻ることができる。この特性を利用して、着用者は、ストラップ426を伸ばして張力を付与することによって、足の周囲の甲部420を締め付ける。ストラップを持ち上げることによって、張力は開放され、足を出し入れすることができる。
【0144】
足を受け入れる空間を形成するために、甲部420において足に沿ってその周囲を取り囲む部分を形成することに加え、不織布帛100により履物400の構造要素を形成してもよい。例として、図41に、靴紐ループ427が描かれている。靴紐ループ427は、1つ以上の様々な靴紐孔の代用または代替として、甲部420に組み込まれていてもよい。靴紐孔423は、靴紐422を受ける甲部420を貫通する開口部であるが、靴紐ループ427は、靴紐422が貫通する経路を形成する不織布帛100の折り畳み領域または重なり領域である。靴紐ループ427を形成する際、経路を形成するために、不織布帛100は、結合領域428においてそれ自体に熱融着される。
【0145】
上記の検討に基づいて、履物400などの履物の構成を有する衣料品に不織布帛100を利用することができる。履物400の領域に異なる特性を付与するために、様々な融着領域104を形成してもよいし、様々な種類の布帛を履物400に組み込んでもよいし、布帛130やシート140、発泡体層150、紐体160など、様々な部材のうちの1つ以上の部材を不織布帛100に結合することによって複合要素を形成してもよい。不織布帛100には熱可塑性ポリマー材料が組み込まれていることを考えれば、熱融着法を利用して、甲部420を靴底構造体410に結合することもできる。
XII−不織布帛の形成、テクスチャ加工および着色
図1に描かれている不織布帛100の構成は、略平面構造を有している。不織布帛100は、様々な3次元構造を示すものであってもよい。例として、図42Aに、不織布帛100が、波形または凹凸の構成を有するものとして描かれている。図42Bに、正方形の波形を有する同様の構成が描かれている。別の例として、図42Cに描かれているように、不織布帛100は、卵梱包箱(鶏卵用クレート)のような構造を付与するために2方向に延びる波形を有するものであってもよい。したがって、不織布帛100は、様々な非平面構造または3次元構造を有するように形成することができる。
【0146】
不織布帛100に3次元構造を形成するために、様々な方法を利用することができる。図43A〜図43Cを参照して、方法の一例が、第1のプレート111と第2のプレート112とを含むものとして描かれており、これらのプレートは、それぞれ、結果的に得られる不織布帛100の3次元形状に対応する表面を有している。まず、図43Aに描かれているように、不織布帛100をプレート111とプレート112との間に配置する。そして、図43Bに描かれているように、不織布帛100に接触、圧縮するために、プレート111、112を互いに近接するように、平行移動または移動する。不織布帛100に3次元構造を形成するために、プレート111、112の一方または両方からの熱を不織布帛100に加え、フィラメント103内の熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融する。プレート111、112を離間すると、図43Cに描かれているように、不織布帛100は、プレート111、112の表面からの3次元構造を呈する。熱は、熱伝導により加えてもよいが、高周波加熱または放射加熱を使用してもよい。不織布帛100に3次元構造を形成するために利用可能な方法の別の例として、不織布帛100を製造する方法において、フィラメント103を3次元表面上に直接堆積してもよい。
【0147】
3次元形状を有するように不織布帛100を形成することに加えて、表面101、102の一方または両方にテクスチャを付与してもよい。図44Aを参照して、不織布帛100は、第1の表面101が複数の波形形状を含むようにテクスチャ加工されている。図44Bに、第1の表面101が複数のx字形状を含むようにテクスチャ加工されている別の構成が描かれている。図44Cにおいて、第1の表面101に形成された一連の英数字のような情報を表示するためにテクスチャを利用してもよい。さらに、図44Dにおいて、合成皮革のテクスチャなど、他の素材の外観を付与するために、テクスチャを利用してもよい。
【0148】
様々な方法を利用して、不織布帛100にテクスチャを付与することができる。図45A〜図45Cを参照して、方法の一例が、テクスチャ加工された表面をそれぞれ有する第1のプレート111と第2のプレート112とを含むものとして描かれている。まず、図45Aに描かれているように、不織布帛100をプレート111とプレート112との間に配置する。そして、図45Bに描かれているように、不織布帛100に接触し、圧縮するために、プレート111、112を互いに近接するように、平行移動または移動する。不織布帛100にテクスチャ構造を付与するために、プレート111、112の一方または両方からの熱を不織布帛100に加え、フィラメント103内の熱可塑性ポリマー材料を軟化または溶融する。プレート111、112を離間すると、図45Cに描かれているように、不織布帛100は、プレート111、112の表面からのテクスチャを呈する。熱は、熱伝導により加えるが、高周波加熱または放射加熱を使用してもよい。不織布帛100にテクスチャ表面を形成するために利用可能な方法の別の例として、不織布帛100に近接してテクスチャ離型紙を配置してもよい。圧縮し、加熱すると、離型紙からのテクスチャを不織布100に転写することができる。
【0149】
不織布帛100に利用するポリマー材料の種類に応じて、不織布帛100を着色するために、様々な着色工程を利用することができる。印やグラフィック、ロゴなどの審美的な特徴を形成するために、例えば、デジタル印刷法を利用して、表面101、102のいずれかに染料または着色料を堆積してもよい。指示書や寸法識別子などの情報を不織布帛100上に印刷してもよい。さらに、不織布帛100を製品に組み込む前または後に、着色工程を利用してもよい。着色したり、不織布100の一部の全体色を変更したりするために、スクリーン印刷やレーザ印刷など、その他の着色工程を使用してもよい。
【0150】
上記の検討に基づいて、不織布帛100の3次元構造、テクスチャ構造および着色構造を形成することができる。これらの特徴を製品(例えば、シャツ200、ズボン300、履物400)に組み込むと、製品を構造的かつ審美的に向上することができる。例えば、3次元構造は、表面積を増やすことによって、衝撃力減衰を高めたり、高透過性を提供したりすることができる。テクスチャ加工によって、滑り抵抗を増加したり、様々な審美可能性を提供したりすることができる。さらに、不織布帛100の着色を利用することによって、情報を表示したり、製品の視認性を高めたりすることができる。
XIII−縫い目構造
縫合を利用して、不織布帛100の要素を、不織布帛100の他の要素、他の布帛、または、その他様々な材料に結合することができる。上記のように、不織布帛100を結合するために、縫合を単独、または熱融着や接着剤と組み合わせて利用することができる。さらに、縫合や、刺繍、ステッチボンドを使用して、複合要素を形成したり、構造要素または審美要素を不織布帛100に付与したりすることができる。図46Aを参照して、糸163が不織布帛100に縫い付けられ、不織布帛100を横切って延びる複数の平行線を形成している。紐体160は、表面101、102の一方に略平行な方向に延びているが、糸163は、表面101と表面102との間を繰り返し往復して(すなわち、不織布帛100を貫通して)、縫い目構造を形成している。しかし、紐体160と同様に、糸163は、耐伸張性を付与したり、不織布帛100の全体強度を高めたりすることができる。また、糸163は、不織布帛100の全体的な審美性を高めることもできる。不織布帛100を有する製品(例えば、シャツ200、ズボン300、履物400)に糸163を組み込むと、糸163は、製品を構造的かつ審美的に向上することができる。
【0151】
糸163を縫い込んで、様々な縫い目構造を提供することができる。例として、糸163は、図46Bにおいてジグザグ状の縫い目構造を有し、図46Cにおいて鎖状の縫い目構造を有する。糸163は、図46Aおよび図46Bにおいては、略平行な縫い目ラインを形成しているが、図46Cにおいて、糸163により形成されている縫い目は、非平行であり、互いに交差している。また、糸163は、図46Dに描かれているように、様々な構造を形成するために刺繍してもよい。図46Eに描かれているように、糸163でさらに複雑な構造を形成するために、縫目形成を利用してもよい。さらに、図46Fに描かれているように、不織布帛100が様々な融着領域104を含んでいてもよく、糸163により形成された縫い目が、不織布帛100の融着領域および非融着領域の両方を貫通していてもよい。したがって、糸163を利用して、耐伸張性を付与したり、強度を高めたり、不織布帛100の全体的な審美性を高めたりする様々な種類の縫い目を形成することができる。さらに、不織布帛100に融着領域104を形成して、その他の特性を改良することもできる。
XIV−接着テープ
図47および図48に、テープ170の要素が、不織布帛100と接着テープ171とを備えた複合要素の構成を有するものとして描かれている。梱包用テープや絵画用テープ、医療/治療用テープなど、様々な目的のためにテープ170を利用することができる。テープ170を医療/治療用テープとして利用する利点は、例えば、他の特性の中でも透過性および耐伸張性を調節できることである。透過性に関しては、個人の皮膚に貼り付ける(すなわち、接着層171を有する)テープ170の場合、通気性を付与し、その下にある皮膚の洗浄または浄化のために、空気や水がテープ170を透過することができる。テープ170は、個人の皮膚に貼り付けられると、耐伸張性があり、周囲の軟組織に対する支持を提供する。接着層171の適切な材料には、例えば、医療用グレードのアクリル接着剤など、テープ型製品に利用されている従来のあらゆる接着剤が含まれる。
【0152】
テープ170に特定の度合いの耐伸張性を付与するために様々な構造を利用することができる。例として、テープ170の耐伸張性は、不織布帛100の厚さ、または不織布帛100のフィラメント103を形成する材料によって調節することができる。図49Aを参照して、耐伸張性を調節するために、テープ170に融着領域104を形成してもよい。図49Bに描かれているように、高耐伸張性を付与するために、紐体160をテープ170に組み込んでもよい。さらに、図49Cに描かれているように、ある構成のテープ170は、融着領域104および紐体160の両方を備えていてもよい。
XV−不織布帛のリサイクル
不織布帛100のフィラメント103は、熱可塑性ポリマー材料を含んでいる。ある不織布帛100の構成では、フィラメント103の大多数または殆ど全てが、熱可塑性ポリマー材料から形成されている。シャツ200およびズボン300の構成の多くが、主に不織布帛100から形成されていることを考えれば、シャツ200およびズボン300の大部分または殆ど全てが、熱可塑性ポリマー材料から形成されている。同様に、履物400も、大部分が熱可塑性ポリマー材料から形成されている。数多くの衣料品とは異なり、シャツ200、ズボン300および履物400の材料は、その耐用年数の後、リサイクルすることができる。
【0153】
シャツ200を例にとると、シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料を抽出し、リサイクルして、不織布帛やポリマー発泡体、ポリマーシートとして、他の製品(例えば、衣料品、入れ物、張り物)に組み込むことができる。図50に、この工程が大略的に示されており、この工程において、シャツ200は、リサイクルセンター180でリサイクルされ、シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料は、別のシャツ200、ズボン300、履物400のうちの1以上に組み込まれる。さらに、シャツ200の大部分または殆ど全てが、熱可塑性ポリマー材料から形成されていることを考えれば、熱可塑性ポリマー材料の大部分または殆ど全てを、リサイクルの後に別の製品に利用してもよい。シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料は、最初は不織布帛100内で使用されていたが、その後、例えば、シャツ200からの熱可塑性ポリマー材料を不織布帛100の別の要素、熱可塑性ポリマー材料を含む別の布帛、ポリマー発泡体またはポリマーシートに使用してもよい。不織布帛100を組み込んでいるズボン300や履物400などの製品は、同様の工程でリサイクルすることができる。したがって、上記の様々な構成を有するシャツ200やズボン300、履物400などの製品を形成する利点は、リサイクル性に関連する。
XVI−結論
不織布帛100は、少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成されている複数のフィラメント103を含む。様々な融着領域104を不織布帛100に形成して、透過性や耐久性、耐伸張性などの特性を改良することができる。また、不織布帛100に更なる特性または利点を付与するために、(例えば、熱融着によって)様々な部材(布帛、ポリマーシート、発泡体層、紐体)を不織布帛100に固定したり、組み合わせたりすることができる。さらに、不織布帛100に様々な構成を付与するために、融着領域104および部材を組み合わせることができる。
【0154】
本発明は、様々な構成を参照して、上記および添付図面に開示されている。しかし、本開示が果たす目的は、本発明に関する様々な特徴および概念を例示することであり、本発明の範囲を限定することではない。当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上記の構成に対して数々の変形および変更が可能で
あることを認識するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法であって、
前記不織布帛の少なくとも一方の面の近傍に遮断素子を配置する工程であって、前記遮断素子が、前記不織布帛の第1の領域には存在せず、前記遮断素子が、前記不織布帛の第2の領域に接触している工程と、
前記不織布帛および前記遮断素子を加熱して、前記第1の領域のフィラメントを融着する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記加熱工程が、プレスのプラテンの間に、前記不織布帛および前記遮断素子を配置する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱工程が、前記不織布帛および前記遮断素子を圧縮する工程を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱工程が、前記第1領域の前記フィラメントを溶融して、非繊維状構造を形成する工程を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の領域および前記第2の領域のうちの一方の形状を、印の形状となるように選択する工程をさらに含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記不織布帛を衣料品に組み込む工程をさらに含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不織布帛を履物の甲部に組み込む工程をさらに含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
熱可塑性ポリマー材料を含む複数のフィラメントから形成された不織布帛の特性を変える方法であって、
前記不織布帛の少なくとも一方の面の近傍に遮断素子を配置する工程であって、前記遮断素子が、前記不織布帛の第1の領域には存在せず、前記遮断素子が、前記不織布帛の第2の領域に接触している工程と、
前記不織布帛および前記遮断素子を加熱して、前記第1の領域のフィラメントを融着する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記加熱工程が、プレスのプラテンの間に、前記不織布帛および前記遮断素子を配置する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱工程が、前記不織布帛および前記遮断素子を圧縮する工程を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱工程が、前記第1領域の前記フィラメントを溶融して、非繊維状構造を形成する工程を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の領域および前記第2の領域のうちの一方の形状を、印の形状となるように選択する工程をさらに含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記不織布帛を衣料品に組み込む工程をさらに含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不織布帛を履物の甲部に組み込む工程をさらに含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図23E】
【図23F】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図26D】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図33】
【図34A】
【図34B】
【図34C】
【図35A】
【図35B】
【図35C】
【図35D】
【図35E】
【図35F】
【図35G】
【図35H】
【図36A】
【図36B】
【図36C】
【図36D】
【図36E】
【図36F】
【図36G】
【図36H】
【図37A】
【図37B】
【図37C】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図39C】
【図39D】
【図39E】
【図39F】
【図39G】
【図40A】
【図40B】
【図40C】
【図40D】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
【図43A】
【図43B】
【図43C】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図44D】
【図45A】
【図45B】
【図45C】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図46D】
【図46E】
【図46F】
【図47】
【図48】
【図49A】
【図49B】
【図49C】
【図50】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図23E】
【図23F】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図26D】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図33】
【図34A】
【図34B】
【図34C】
【図35A】
【図35B】
【図35C】
【図35D】
【図35E】
【図35F】
【図35G】
【図35H】
【図36A】
【図36B】
【図36C】
【図36D】
【図36E】
【図36F】
【図36G】
【図36H】
【図37A】
【図37B】
【図37C】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図39C】
【図39D】
【図39E】
【図39F】
【図39G】
【図40A】
【図40B】
【図40C】
【図40D】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
【図43A】
【図43B】
【図43C】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図44D】
【図45A】
【図45B】
【図45C】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図46D】
【図46E】
【図46F】
【図47】
【図48】
【図49A】
【図49B】
【図49C】
【図50】
【公開番号】特開2012−67434(P2012−67434A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225838(P2011−225838)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2011−549186(P2011−549186)の分割
【原出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2011−549186(P2011−549186)の分割
【原出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
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