説明

不良検査方法

【課題】設備の大型化や設備コストの増大を招くことなく、検査対象物の不良の有無を高い確実性をもって判別することができる不良検査方法を提供する。
【解決手段】一次判別工程では、複数の検査対象物1の不良の有無を判別する。マーキング工程では、一次判別工程で不良と判別された検査対象物1に、特定波長の光の照射を受けて可視化するインク2を塗布する。二次判別工程では、一次判別工程を経た検査対象物1を搬送しながらこの検査対象物1へ向けて特定波長の光を照射するとともに、特定波長の光を照射を受けて上記インク2が可視化している検査対象物1について、不良の有無を再度判別する。報知工程では、一次判別工程で検査対象物1が不良と判別された場合に、この検査対象物1が二次判別工程で不良の有無の判別がされる前に、前記判別結果を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物を搬送しながらこの検査対象物の不良の有無を判別する不良検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種製品等の製造時には、その製品について、塗装不良、欠け、割れ、寸法異常等の不良の有無を判別する不良検査がおこなわれることが多い。以下、不良検査の対象となる製品等を検査対象物1という。例えば、各種の検査対象物1に塗装を施す場合には、塗装状態の良否を判別する塗装状態検査をおこなう必要がある。特にカーテン状に流下する塗料3に検査対象物1をくぐらせることでこの検査対象物1に塗装を施すフローコートは、塗装効率が高いとともに塗料3の無駄を省くことができる点で有利な塗装法であるが、前記流下する塗料3に途切れ4が生じるなどして塗装不良が発生することがあるため、製品の品質管理のためには塗装状態検査をおこなうことが重要である。
【0003】
検査対象物1の塗装状態検査方法として、例えば塗装後の検査対象物1に光を照射すると共に反射光をカメラで撮像した後、画像処理技術を利用して塗装状態の良否を判別することが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、塗装不良を正確に検出するための閾値を設定することは非常に困難であり、このため塗装不良が発生していないにもかかわらず塗装不良が検出されたり、塗装不良が発生しているにもかかわらず塗装不良が検出されなかったりするという問題がある。特に凹凸形状を有する検査対象物1に対して塗装を施す場合には、検査対象物1の凸状部分からの反射光と凹状部分からの反射光とでは強度が異なってしまうため、塗装状態の良否を画像処理技術を利用して正確に判別することは非常に困難である。
【0005】
また、画像処理技術を利用した自動判別に頼ることなく、図4に示すように、人間の目視による観察結果に基づいて塗装状態の良否を判別することもおこなわれている。
【0006】
この図4に示す例では、ベルトコンベア5で搬送される検査対象物1を、フローコータ6から流下する塗料3にくぐらせることで塗装を施した後、この塗装後の検査対象物1を更にベルトコンベア5で搬送している。この塗装後の検査対象物1の搬送経路の近傍には人間の検査員15が待機しており、この検査員15が塗装後の検査対象物1を目視で観察し、その結果に基づいて塗装状態の良否を判別する。検査員15による検査時には検査対象物1に向けて照明器25から光を照射することで、検査員15が塗装不良を容易に視認できるようにしている。
【0007】
しかし、人間の集中力には限界があるため、順次搬送される複数の検査対象物1を長時間目視で観察していると、塗装状態の不良を見逃す可能性が高くなる。
【0008】
また、上記のように一段階の判別作業のみで塗装状態の良否を判別することには限界があるため、二段階の判別作業で塗装状態の良否を判別することもおこなわれている。
【0009】
例えば、図5に示す例では、一次判別工程で画像処理技術を利用して塗装状態の良否を自動判別し、二次判別工程で人間の目視による塗装状態の良否を判別するという、二段階の判別作業をおこなう。この図5に示す例では、検査対象物1をベルトコンベア5で搬送しながら、この検査対象物1をまずフローコータ6から流下する塗料3にくぐらせることで塗装を施す。次に、一次判別工程では、前記検査対象物1を更に搬送しながら、この検査対象物1に照明器7から光を照射するとともに反射光を撮像装置8で撮像する。この撮像画像に基づいて、制御盤10が画像処理技術を利用して塗装状態の良否を判別する。このとき、塗装不良が発生しているにもかかわらず塗装不良が検出されないようなことがないようにするため、判別の基準を厳しく設定しておく。撮像後の検査対象物1は、回動コンベア26へ送られる。この回動コンベア26は、その上流側端部を支点にして、水平な状態と下方に傾斜した状態との間で上下回動駆動するように構成されている。回動コンベア26が水平状態にある場合には検査対象物1は二次判別工程へ搬送され、回動コンベア26が下方に傾斜した状態にある場合には検査対象物1は良品の載積用スペースへ搬送される。この回動コンベア26の上下回動は前記制御盤10によって制御され、塗装状態の不良が検出されなかった場合には制御盤10は回動コンベア26を下方に傾斜させ、検査対象物1を良品の載積用スペースへ搬送する。一方、塗装状態の不良が検出された場合には、制御装置は回動コンベア26を水平な状態とし、検査対象物1を二次判別工程へ送る。二次判別工程では、検査対象物1は更にベルトコンベア5で搬送される。この二次判別工程での検査対象物1の搬送経路の近傍には人間の検査員15が待機しており、この検査員15が目視による観察結果に基づいて塗装状態の良否の最終確認をする。
【0010】
このように二段階の判別作業をおこなうと、一次判別工程において塗装状態が不良と判別された検査対象物1について、二次判別工程において再度塗装状態の良否を判別することで、塗装状態の良否の判別の確実性が増す。
【0011】
しかし、図5に示す例では画像処理技術を利用した塗装状態の良否の自動判別後に、検査対象物1を二次判別工程と品載積用スペースとに振り分ける必要があるため、振り分けのための回動コンベア26のような設備を設けたり、二次判別工程のための設備と品載積用スペースの両方を設けたりしなければならない。このため、塗装状態検査のための設備が大型化して大きなスペースが必要になるとともに、設備コストの増大も招いてしまうという問題がある。
【0012】
また、図5に示す例では、二次判別工程において検査対象物1を観察する際の検査員15の負担は軽減されるが、検査員15は不定期的に搬送されてくる検査対象物1を見逃すことなく観察しなければならない。そのためには検査員15は検査対象物1が搬送されていない期間であっても、ある程度の集中力を発揮していなければならないが、人間がそのような集中力を長時間持続することは難しく、検査員15の集中力が途切れたときに検査対象物1が搬送されてくると、塗装不良が見逃がされてしまうことがある。また、検査対象物1が長時間搬送されない状態が続いた後に検査対象物1が搬送されてきた場合でも、検査員15は瞬時に検査対象物1の全面を短時間で観察する作業に取りかからなければならないが、このような瞬時の行動の切り替えは容易ではないため、このような場合に検査員15が検査対象物1の全面を注意深く観察することは困難である。
【0013】
また、ここでは特に塗装状態検査の場合を例に挙げて、その問題点を示したが、塗装状態検査以外の、欠け、割れ、寸法異常等の種々の不良検査においても、同じ問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−317540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、設備の大型化や設備コストの増大を招くことなく、検査対象物の不良の有無を高い確実性をもって判別することができる不良検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る不良検査方法は、複数の検査対象物1を順次搬送しながらこの検査対象物1の不良の有無を判別する不良検査方法であって、下記の一次判別工程、マーキング工程、報知工程、及び二次判別工程を含むことを特徴とする。
【0017】
前記一次判別工程では、前記複数の検査対象物1の不良の有無を判別する。前記マーキング工程では、前記一次判別工程で不良と判別された検査対象物1に、特定波長の光の照射を受けて可視化するインク2を塗布する。前記二次判別工程では、前記一次判別工程を経た検査対象物1を搬送しながらこの検査対象物1へ向けて前記特定波長の光を照射するとともに、前記特定波長の光の照射を受けて上記インク2が可視化している検査対象物1について、不良の有無を再度判別する。前記報知工程では、前記一次判別工程で検査対象物1が不良と判別された場合に、この検査対象物1が二次判別工程で不良の有無の判別がされる前に、前記判別結果を報知する。
【0018】
このため、本発明では、一次判別工程と二次判別工程との二段構えで不良の有無を判別することができる。また、二次判別工程では、報知手段による報知がなされた場合にだけ検査対象物1の不良の有無を判別すればよくなり、二次判別工程における判別作業の頻度を低減することができる。更に、二次判別工程では、一次判別工程で塗装状態が不良と判別された検査対象物1だけが、上記インク2が可視化するため、このインク2の可視化の有無によって、不良の有無を判別すべき検査対象物1を容易に特定することができる。しかも、二次判別工程の前に、一次判別工程を経た検査対象物1を、不良と判別された検査対象物1と不良と判別されない検査対象物1とに振り分ける必要がなくなる。
【0019】
本発明においては、上記一次判別工程及び二次判別工程では、基材の不良の有無の判別にあたって、基材の塗装状態の良否を判別するものであり、上記検査対象物1は、フローコートによる塗装が施された検査対象物1であり、上記一次判別工程では、塗装前の前記検査対象物1に向けて流下する塗料3の途切れ4の有無を検出することでこの検査対象物1の塗装状態の良否を判別することが好ましい。
【0020】
この場合、検査対象物1に塗装が施される前に、この検査対象物1の塗装状態の良否を判別することができる。このため、検査対象物1に塗装が施された後に塗装状態の良否を判別する場合と比べると、一次判別工程で検査対象物1の塗装状態が不良と判別された時点から、二次判別工程でこの検査対象物1について塗装状態の良否を判別するまでの間の時間をより長くとることができ、一次判別工程と二次判別工程の間に報知工程で報知をおこなうための時間的余裕を充分に確保することができる。また、検査対象物1が凹凸形状を有する場合には、この検査対象物1の凹凸形状の影響を受けることなく、塗装状態の良否を正確に判別することが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、上記報知工程では、上記二次判別工程において上記一次判別工程で不良と判別された検査対象物1が上記特定波長の光の照射を受ける時点を基準とした特定のタイミングで報知をおこなうことが好ましい。
【0022】
この場合、二次判別工程では、報知工程で報知がなされた時点を基準として常に同じタイミングで検査対象物1の不良の有無の判別をおこなうことができ、二次判別工程における検査対象物1の不良の有無の判別が更に容易になる。
【0023】
また、本発明においては、上記一次判別工程では、不良と判別された検査対象物1上の不良が検出された位置を導出し、上記マーキング工程では、上記一次判別工程で不良と判別された検査対象物1上における、前記不良が検出された位置と対応する位置に、上記インク2を塗布することが好ましい。
【0024】
この場合、二次判別工程では、検査対象物1上におけるインク2の塗布位置に基づいて、この検査対象物1における、一次判別工程で不良が検出された位置を特定することができ、二次判別工程における検査対象物1の不良の有無の判別が更に容易になる。
【発明の効果】
【0025】
上記のとおり、本発明によれば、一次判別工程と二次判別工程という二段構えで不良の有無を判別すると共に、二次判別工程においては一次判別工程で不良と判別された検査対象物を容易に特定してこの検査対象物についてのみ再度不良の有無を判別することができ、更に二次判別工程における判別作業の頻度を低減することができるため、検査対象物の不良の有無を高い確実性をもって判別することができると共に、二次判別工程に要する負担を軽減することができる。しかも二次判別工程の前に、一次判別工程を経た検査対象物を、不良と判別された検査対象物と不良と判別されなかった検査対象物とに振り分ける必要がなくなり、このような振り分けのための設備が不要となるため、設備の大型化や設備コストの増大を招かないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す概略図である。
【図2】(a)乃至(d)は、同上の実施形態における、塗装不良の検出のための画像処理を示す説明図である。
【図3】同上の実施形態における塗装対象である検査対象物の一例を示す平面図である。
【図4】従来技術の一例を示す概略図である。
【図5】従来技術の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態の一例を、図1を参照して説明する。
【0028】
図1は、検査対象物1の不良の有無の判別にあたって、塗装状態の良否を判別するための設備を備える塗装装置を示す。この塗装装置は、搬送手段と、この搬送手段による検査対象物1の搬送経路に沿って設けられた塗装手段、一次判別手段、マーキング手段、二次判別手段及び報知手段を備える。
【0029】
搬送手段は塗装前及び塗装後の検査対象物1を搬送するために設けられる。本実施形態では、板状の検査対象物1を水平方向に搬送するベルトコンベア5で搬送手段を構成しているが、検査対象物1の形態や塗装方法などに応じて他の適宜の構成を有する搬送手段を設けてもよい。
【0030】
塗装手段は検査対象物1に塗料3を塗布して塗装をおこなうために設けられる。本実施形態における塗装手段は、上記搬送手段で搬送される検査対象物1の上面へ向けて塗料3をカーテン状に流下するフローコータ6であるが、塗装手段の構成はこれに限定されるものではない。本実施形態では検査対象物1を搬送手段で搬送されながら前記カーテン状に流下する塗料3にくぐらせることで、検査対象物1に塗装を施す。
【0031】
一次判別手段は、検査対象物1の塗装状態の良否の判別をおこなうために設けられる。本実施形態における一次判別手段は、画像処理技術を利用して検査対象物1の塗装状態の良否を自動判別する機能を有し、照明器7、撮像装置8、及び制御部9で構成されるが、一次判別手段の構成はこれに限定されるものではない。
【0032】
一次判別手段における照明器7はフローコータ6からカーテン状に流下する塗料3の近傍に配設され、この塗料3に向けて光を照射する。
【0033】
一次判別手段における撮像装置8もフローコータ6から流下する塗料3の近傍に配設され、且つ前記塗料3に対して前記照明器7と同じ側に配設される。この撮像装置8は前記照明器7から照射された光が前記塗料3で反射された際に、その反射光を受光して撮像する。撮像装置8の一例としては、前記流下する塗料3を走査して撮像するCCDカメラなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
一次判別手段における制御部9は、照明器7や撮像装置8を制御したり、撮像装置8で撮像された画像を画像処理技術を利用して処理することで塗装不良を検出したりするためのプログラムを格納したメモリ等の記憶手段や、前記プログラムに基づいて動作する演算回路等の演算手段などを備える。本実施形態における制御部9は、前記記憶手段や演算手段を備える制御盤10で構成される。この制御盤10には制御部9によって制御される報知ランプ11が設けられている。制御部9における塗装状態の良否を判別するための処理の具体例は後述する。
【0035】
マーキング手段は、一次判別手段によって塗装状態が不良と判別された検査対象物1に、特定波長の光の照射を受けて可視化するインク2を塗布するために設けられる。本実施形態におけるマーキング手段は、塗布装置12と制御部9で構成されている。
【0036】
マーキング手段における塗布装置12は、本実施形態では塗装後の検査対象物1の搬送経路の上方に配設され、この検査対象物1の上面に向けてインク2を噴射することによりこのインク2を検査対象物1に塗布する。この塗布装置12は電磁弁13を具備し、この電磁弁13によって塗布装置12からのインク2の噴射が制御される。塗布装置12はスタンド14によって、搬送手段(ベルトコンベア5)に対して固定されている。前記インク2としては、特定波長の光の照射を受けて蛍光を発するなどして可視化するインク2が使用される。前記特定波長は、可視領域外の波長、或いは可視領域と可視領域外との境界付近の波長であることが好ましい。このようなインク2としては、例えばブラックライトなどから照射される長波長の紫外線の照射を受けて蛍光を発する蛍光インク2が使用される。このような蛍光インク2としては適宜の市販品を使用することができるが、その一例としてシンロイヒ株式会社製の商品名マジクルミノペイントが挙げられる。
【0037】
マーキング手段における制御部9は、一次判別手段における検査対象物1の塗装状態の良否の判別結果に基づいて塗布装置12を制御するためのプログラムを格納した記憶手段や、前記プログラムに基づいて動作する演算手段などを備える。制御部9は、例えば前記記憶手段や演算手段を備える制御盤10などで構成される。本実施形態では、一次判別手段における制御部9がマーキング手段における制御部9を兼ねている。制御部9による塗布装置12の制御の具体例は後述する。
【0038】
二次判別手段は、一次判別手段によって塗装状態が不良と判別された検査対象物1について、塗装状態の良否の判別を再度おこなうために設けられる。この二次判別手段は、マーキング手段による検査対象物1へのインク2の塗布がおこなわれる位置に対して、この検査対象物1の搬送経路の下流側に設けられる。本実施形態における二次判別手段は、搬送手段で搬送される検査対象物1を人間の検査員15が目視により観察するための作業用スペースである。また、二次判別手段には、検査対象物1の搬送経路の上方に、上記インク2を可視化するための特定波長の光を検査対象物1へ向けて照射する照明器16が設けられている。例えばインク2として上記のような長波長の紫外線の照射を受けて蛍光を発する蛍光インク2が使用される場合には、照明器16としてブラックライトなどが設けられる。
【0039】
報知手段は、一次判別手段によって検査対象物1の塗装状態が不良と判別された場合に、この検査対象物1についての二次判別手段による塗装状態の判別がされる前に、一次判別手段による判別結果を報知するために設けられる。本実施形態では、報知手段は報知器と制御部9とで構成される。
【0040】
報知器として、本実施形態では点灯することにより報知をおこなう報知ランプ17が設けられている。この報知ランプ17は二次判別手段の近傍に設けられ、二次判別手段で目視検査をおこなう検査員15が視認可能な位置に配置される。また報知器として,報知音による報知をおこなう報知ブザを設けてもよく、この場合は二次判別手段で目視検査をおこなう検査員15が報知音を知覚できる位置に報知ブザが設けられる。また報知ランプ17と報知ブザとを併設してもよい。
【0041】
また、報知手段における制御部9は、一次判別手段における検査対象物1の塗装状態の良否の判別結果に基づいて報知器を制御するためのプログラムを格納した記憶手段や、前記プログラムに基づいて動作する演算手段などを備える。制御部9は、例えば前記記憶手段や演算手段を備える制御盤10などで構成される。本実施形態では、一次判別手段における制御部9が報知手段における制御部9を兼ねている。制御部9による報知器の制御の具体例は後述する。
【0042】
このように構成される塗装装置を用いて、検査対象物1に塗装を施すと共にこの検査対象物1の塗装状態を判別する方法を説明する。
【0043】
まず、フローコータ6から塗料3を流下させると共に、搬送手段の始端に塗装前の複数の検査対象物1を順次供給することで、この搬送手段により複数の検査対象物1を順次搬送する。本実施形態における検査対象物1は、図3に示すような窯業系の外装屋根材である。この外装屋根材は、屋根に設置される際に前端側の領域のみ屋外に露出する。このため、前端側の領域には塗装を施す必要がある。一方、外装屋根材の後端側の領域は、その上に他の外装屋根材が重ねられるため、屋外には露出せず、塗装を要しない。以下、検査対象物1における前記前端側の領域のように塗装を要する領域を塗装領域22といい、前記後端側の領域のように塗装を要しない領域を非塗装領域23という。尚、検査対象物1の材質・形状・用途等は本実施形態に限定されない。
【0044】
搬送手段によって搬送される検査対象物1は、まずフローコータ6から流下する塗料3をくぐることにより塗料3が塗布されて、検査対象物1の上面に塗装が施される。このとき、検査対象物1の塗装領域22のみに塗装を施してもよい。この塗装時にフローコータ6から流下する塗料3に途切れ4が生じる場合には、塗装不良が発生する。
【0045】
この塗装時に、一次判別手段による検査対象物1の塗装状態の良否の判別がおこなわれる(一次判別工程)。本実施形態のように検査対象物1に塗装領域22と非塗装領域23とがある場合には、塗装領域22のみについて塗装状態の良否の判別をおこなえばよい。この一次判別工程では、上記フローコータ6から流下する塗料3の途切れ4に基づいて塗装不良を検出し、塗装不良が検出された場合に検査対象物1の塗装状態を不良と判別する。この一次判別工程では、まず照明器7から照射された光が上記フローコータ6から流下する塗料3で反射し、反射光が撮像装置8で撮像される。図2(a)及び図2(b)に示すように、撮像装置8により生成された画像18では、塗料3の途切れ4が生じていない部分は反射光の強度が強くなるため明るくなり、塗料3の途切れ4が生じている部分では反射光の強度が弱くなるため暗くなる。この撮像装置8で生成された画像のデータは制御部9へ送られる。制御部9は、前記画像を、画像処理技術を利用して処理し、塗装不良を検出する。画像の処理にあたっては、制御部9は例えば撮像画像に平均化フィルタ等のフィルタ処理を施して濃淡画像に変換した後、予め設定されている閾値を基準にして、図2(c)に示すように二値化画像19に変換する。この二値化画像19を図2(d)に示すように適当なセグメント20に分割すると共に、各セグメント20の二値化データを順次識別し、各セグメント20の二値化データと、このセグメント20の周囲で隣り合う他のセグメント20の二値化データとを比較する。これにより、閾値を超える二値化データを有するセグメント20aの連なりの有無、並びに連なりが生じている場合の当該連なっているセグメント20aの数を検知する。そして、図2(d)、閾値を超える二値化データを有するセグメント20aの所定個数以上の連なり21が検知された場合に、制御部9は塗装不良を発生させるような塗料3の途切れ4が発生しているものと判定し、塗装不良を検出する。この場合、二値化処理時の閾値と、塗料3の途切れ4を判定するためのセグメント20の所定の連なり数は、検査対象物1に塗装不良が発生しているにもかかわらず塗装不良が検出されないようなことがないように、適当な値に設定する。
【0046】
この一次判別手段で検査対象物1の塗装状態の不良が判別されたら、その度に制御部9は、後述する報知工程とは別に、制御盤10に設けられた報知ランプ11を点灯させてもよい。この場合、制御盤10の周囲にいる作業者等に塗装不良の発生を報知することができる。
【0047】
次に、塗装が施されると共に塗装状態が不良と判別された検査対象物1に対して、マーキング手段でインク2を塗布する(マーキング工程)。
【0048】
このマーキング工程では、インク2の塗布の前に、制御部9は画像上における塗料3の途切れ4が判定された位置と、塗装時の搬送経路上の検査対象物1の位置とに基づいて、検査対象物1上における塗装不良の検出位置24を導出する。搬送経路上の検査対象物1の位置は、例えば搬送手段に検査対象物1を供給した時刻、搬送経路上の所定位置を検査対象物1が通過した時刻、搬送手段による検査対象物1の搬送速度などを適宜のセンサなどで検出し、これらの検出結果に基づいて決定される。
【0049】
次に、制御部9は、上記検査対象物1上における塗装不良の検出位置24に基づいて、検査対象物1上におけるインク2の塗布位置を決定する。塗装不良の検出位置24と、検査対象物1上におけるインク2の塗布位置との対応関係は、予め制御部9に設定しておく。インク2の塗布位置は、インク2が可視光照射下で視認されないのであれば検査対象物1上のどの位置であってもよいが、外装屋根材における非塗装領域23のような、検査対象物1の使用時に外観に現れない領域に塗布すると、インク2が可視光照射下である程度視認される場合や、可視光照射下で視認されない場合であっても夜間などに偶々特定波長の光の照射を受けるような場合に、インク2が視認されないようにすることができる。
【0050】
本実施形態では、図3に示すように検査対象物1を横方向(塗装領域22と非塗装領域23との並び方向を縦方向とする場合の横方向)に仮想的に複数に分割(本実施形態では三分割)し、同時に塗装領域22と非塗装領域23もそれぞれ仮想的に分割して、縦方向に隣り合う分割された塗装領域22(分割塗装領域22a)と分割された非塗装領域23(分割非塗装領域23a)同士を対応付けている。そして、塗装不良の検出位置24が存在する分割塗装領域22aと対応する分割非塗装領域23aを、インク2の塗布位置としている。この場合、インク2の塗布位置は塗装不良の検出位置24の近傍となるため、インク2の塗布位置に基づいて、塗装不良の検出位置24の大体の位置を把握することができるようになる。
【0051】
次に、塗装後の検査対象物1は二次判別手段へ搬送される。この二次搬送手段では、順次搬送されてくる検査対象物1へ向けて照明器7から特定波長の光が照射され、この特定波長の光を照射を受けて可視化するインク2が塗布された検査対象物1について、塗装状態の良否が再度判別される(二次判別工程)。本実施形態におけるこの塗装状態の良否の判別は、検査員15が検査対象物1を目視によって観察し、その観察結果に基づいて検査員15が塗装不良の有無を判定することでおこなわれる。検査員15は、検査対象物1の塗装状態が不良と判別したら、その検査対象物1を搬送手段から抜き取って廃棄することができる。
【0052】
この二次判別工程では、検査員15は照明器16からの特定波長の光の照射を受けた検査対象物1を観察することで、順次搬送されてくる複数の検査対象物1のうちからインク2が塗布された検査対象物1(すなわち一次判別工程で塗装状態が不良と判別された検査対象物1)を容易に特定することができる。このため、検査員15は、前記特定された検査対象物1についてのみ、塗装状態の良否の判別をおこなえばよくなり、判別作業の負担が軽減される。また、二次判別手段へは一次判別工程を経た全ての検査対象物1を搬送することができるようになり、一次判別工程において塗装状態が不良と判別された検査対象物1と、不良と判別されなかった検査対象物1とを振り分ける必要がなくなると共に、振り分けのための設備やスペースを設ける必要もなくなる。
【0053】
また、本実施形態のように検査対象物1におけるインク2の塗布位置が、一次判別工程における塗装不良の検出位置24の近傍であれば、検査員15は検査対象物1におけるインク2の塗布位置を確認することで塗装不良の検出位置24の大体の位置を把握することができ、塗装状態の良否の判別の確実性が増す。尚、検査対象物1に塗布されたインク2に基づいて塗装不良の検出位置24を把握可能となるためには、マーキング工程においてインク2の塗布位置と塗装不良の検出位置24とを一致させたり、インク2を塗装不良の検出位置24に対応する種々の大きさや形状に塗布したりしてもよい。
【0054】
また、上記の一連の工程とは別に、一次判別工程で検査対象物1の塗装状態が不良と判別された後、この検査対象物1が二次判別工程で塗装状態の判別がされる前に、報知手段で前記判別結果を報知する(報知工程)。
【0055】
この報知工程では、制御部9は一次判別工程で検査対象物1の塗装状態の不良を判別した後、報知器(報知ランプ17)を作動させる。これにより、二次判別手段で待機している検査員15に、一次判別工程で塗装状態が不良と判別された検査対象物1が搬送されてくることを知らせて、注意を喚起することができ、二次判別工程における検査対象物1の塗装状態の良否の判別が更に容易になる。
【0056】
また、制御部9は報知器を作動させるにあたって、上記一次判別工程で塗装状態が不良と判別された検査対象物1が、二次判別手段に設けられた照明器7から特定波長の光の照射を受ける時点を基準とした、この時点より前の特定のタイミングで報知器を作動させて報知をおこなうことが好ましい。この場合、検査員15は報知手段による報知後、常に同じタイミングで検査対象物1の塗装状態の良否の判別作業をおこなうことができるようになり、二次判別工程における検査対象物1の塗装状態の良否の判別が更に容易になる。
【0057】
以上のとおり、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要件を満たす限り、上記説明中で言及した事項を含め、発明の具体化に対応した種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、一次判別工程において、フローコータ6から流下する塗料3の撮像結果に基づいて塗装状態の良否を判別しているが、塗装が施された後の検査対象物1の塗膜の撮像結果に基づいて塗装状態の良否を判別してもよい。
【0059】
但し、上記実施形態のようにフローコータ6から流下する塗料3の撮像結果に基づいて塗装状態の良否を判別することは、検査対象物1に塗装が施される前にこの検査対象物1の塗装状態の良否を判別することができるという点で有利である。この場合、一次判別工程で検査対象物1の塗装状態が不良と判別された時点から、二次判別工程でこの検査対象物1について塗装状態の良否を判別するまでの間の時間をより長くとることができ、一次判別工程と二次判別工程の間に報知工程で報知をおこなうための時間的余裕を充分に確保することができる。また、検査対象物1が凹凸形状を有する場合には、この検査対象物1の凹凸形状の影響を受けることなく、塗装状態の良否を正確に判別することが可能となる。
【0060】
また、上記実施形態では、一次判別工程で画像処理技術を利用して塗装状態の良否を自動判別し、二次判別工程で人間の目視によって塗装状態の良否を判別しているが、各判別工程における塗装状態の良否の判別方法はこれに制限されるものではない。例えば二次判別工程において、本実施形態のような人間の目視による塗装状態の良否の判別に代えて、或いは人間の目視による塗装状態の良否の判別と共に、検査対象物1上の塗膜を撮像し、一次判別工程と同様の画像処理技術により塗装状態の良否を自動判別してもよい。この場合、撮像結果の画像処理時における二値化処理時の閾値と、二値化画像中における塗装不良を検出するためのセグメント20の所定の連なり数は、一次判別工程の場合とは異なり、検査対象物1に塗装不良が発生していないにもかかわらず塗装不良が検出されることがないような、適当な値に設定することが好ましい。
【0061】
また、ここでは特に検査対象物1の塗装状態検査をおこなう場合の実施形態を示したが、本発明は塗装状態検査以外にも、各種の検査対象物1についての欠け、割れ、寸法異常等の種々の不良検査に適用可能である。すなわち、例えば各種の複数の検査対象物1を搬送しながら、一次判別工程において画像処理技術を利用した自動判別などによって欠け、割れ、寸法異常等の不良の有無を判別し、一次判別工程において検査対象物1の不良が判別された場合にマーキング工程においてこの検査対象物1に対してインク2を塗布すると共に報知工程で判別結果を報知し、一次判別工程において不良が判別された検査対象物1について人間の目視などによって不良の有無を判別することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 検査対象物
2 インク
3 塗料
4 途切れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検査対象物を順次搬送しながらこの検査対象物の不良の有無を判別する不良検査方法であって、下記の一次判別工程、マーキング工程、二次判別工程、及び報知工程を含むことを特徴とする不良検査方法;
前記一次判別工程では、前記複数の検査対象物の不良の有無を判別し、
前記マーキング工程では、前記一次判別工程で不良と判別された検査対象物に、特定波長の光の照射を受けて可視化するインクを塗布し、
前記二次判別工程では、前記一次判別工程を経た検査対象物を搬送しながらこの検査対象物へ向けて前記特定波長の光を照射するとともに、前記特定波長の光の照射を受けて上記インクが可視化している検査対象物について、不良の有無を再度判別し、
前記報知工程では、前記一次判別工程で検査対象物が不良と判別された場合に、この検査対象物が二次判別工程で不良の有無の判別がされる前に、前記判別結果を報知する。
【請求項2】
上記一次判別工程及び二次判別工程では、基材の不良の有無の判別にあたって、基材の塗装状態の良否を判別するものであり、上記検査対象物がフローコートによる塗装が施された検査対象物であり、上記一次判別工程では、塗装前の前記検査対象物に向けて流下する塗料の途切れの有無を検出することでこの検査対象物の塗装状態の良否を判別することを特徴とする請求項1に記載の不良検査方法。
【請求項3】
上記報知工程では、上記二次判別工程において上記一次判別工程で不良と判別された検査対象物が上記特定波長の光の照射を受ける時点を基準とした特定のタイミングで報知をおこなうことを特徴とする請求項1又は2に記載の不良検査方法。
【請求項4】
上記一次判別工程では、不良と判別された検査対象物上の不良が検出された位置を導出し、上記マーキング工程では、上記一次判別工程で不良と判別された検査対象物上における、前記不良が検出された位置と対応する位置に、上記インクを塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の不良検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230576(P2010−230576A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80160(P2009−80160)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】