説明

不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法

【課題】プロピレン、イソブチレン、第三級ブチルアルコール又はメチル第三級ブチルエーテルから、それぞれに対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を高収率で製造でき、且つ、機械的強度が優れた触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともモリブデン、ビスマス及び鉄の触媒成分を含む溶液又はスラリーをスプレー乾燥した後に焼成して得られる平均粒子径40〜150μmの球状粒子100質量部に、平均粒子径が1〜10nmのシリカゾルを無水ケイ酸(SiO)として0.1〜3質量部2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が10,000mPa・s以上を与える有機結合剤、並びに水及びアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を添加したものを混練、押出成形後に、乾燥及び熱処理する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン、イソブチレン、第三級ブチルアルコール(以下、「TBA」ともいう)又はメチル第三級ブチルエーテル(以下、「MTBE」ともいう)を分子状酸素を用いて気相接触酸化することにより、それぞれに対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を合成する際に使用する機械的強度に優れ、且つ、反応性に優れた触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレンを気相接触酸化してアクロレイン及びアクリル酸を製造する際に用いる触媒や、イソブチレン、TBA又はMTBEを気相接触酸化してメタクロレイン及びメタクリル酸を製造する際に用いる触媒及びその製造方法については数多くの提案がなされている。
【0003】
これらの提案の中で、触媒の機械的強度を付与する方法として、例えば、触媒成分にウィスカーを添加して賦形する方法(特許文献1)、触媒成分に平均粒子径が1〜10nmのシリカゾルを無水ケイ酸として1〜10重量%添加して賦形する方法(特許文献2)及びシリカゾルを無水ケイ酸として1〜6重量部及び長さが30〜300μmの無機繊維を添加して賦形する方法(特許文献3)が報告されている。
【0004】
しかしながら、上記方法で得られた触媒では機械的強度は改良されるが、目的とする不飽和アルデヒドや不飽和カルボン酸の収率はまだ十分ではなく、より高い機械的強度を有し、且つ、高収率で目的生成物を得ることができる触媒及びその製造方法の開発が望まれている。
【0005】
一方、高収率で目的生成物を得ることができる触媒を得る方法として、例えば、触媒成分を含む水性スラリーを熱処理した後、この水性スラリーの粒子を0.5〜10μmに微粒化し、スプレー乾燥機を用いて平均粒子径10〜250μmの球状粒子にした後に焼成し成型する方法(特許文献4)や、少なくとも、粘度が5,000mPa・s以上25,000mPa・s以下の高粘度有機バインダー及び粘度が10mPa・s以上5,000mPa・s未満の低粘度有機バインダーを含む有機バインダーを使用して触媒成分を成形する方法(特許文献5)が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記方法で得られた触媒では目的とする不飽和アルデヒドや不飽和カルボン酸の収率は改良されるが、触媒の機械的強度はまだ十分ではなく、より高い機械的強度を有し、且つ、高収率で目的生成物を得ることができる触媒ならびにその製造方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−183832号公報
【特許文献2】特開平7−16463号公報
【特許文献3】特開平9−52053号公報
【特許文献4】特開平10−258233号公報
【特許文献5】国際出願公開WO2005/058497 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プロピレン、イソブチレン、TBA又はMTBEからそれぞれに対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を高収率で製造でき、且つ、機械的強度が優れた触媒の製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はプロピレン、イソブチレン、TBA又はMTBE(以下、「反応原料」という)を分子状酸素を用いて気相接触酸化することにより、反応原料に対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を合成する際に使用される、少なくともモリブデン、ビスマス及び鉄の触媒成分を含む不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法であって、前記触媒成分を含む溶液又はスラリーをスプレー乾燥した後に焼成して、得られる平均粒子径40〜150μmの球状粒子100質量部に、平均粒子径が1〜10nmのシリカゾルを無水ケイ酸(SiO)として0.1〜3質量部2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が10,000mPa・s以上を与える有機結合剤、並びに水及びアルコールの群から選ばれる少なくとも一種を添加したものを混練して、押出成形した後に、乾燥及び熱処理することを特徴とする不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応原料から、反応原料に対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を高収率で製造でき、且つ、機械的強度が優れた触媒を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で製造される不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸合成用触媒(以下、「触媒」という)は、反応原料を分子状酸素を用いて気相接触酸化し、反応原料に対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸、すなわち、プロピレンからアクロレインとアクリル酸、プロピレン以外からはメタクロレインとメタクリル酸を合成する際に用いられるもので、触媒成分として少なくともモリブデン、ビスマス及び鉄を含むものであって、下記一般式(1)で示される組成のものが好ましい。
【0012】
MoBiFeSi ・・・・・(1)
一般式(1)において、Mo、Bi、Fe、Si及びOはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素及び酸素を示す。Mはコバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Xはクロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタル及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Yはリン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモン及びチタンから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。a、b、c、d、e、f、g、h及びiは各元素の原子比率を表し、a=12のときb=0.01〜3、c=0.01〜5、d=1〜12、e=0〜8、f=0〜5、g=0.001〜2及びh=0〜20であり、iは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比率である。
【0013】
触媒成分の出発原料としては、各元素の酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、アンモニウム塩、ハロゲン化物等が挙げられる。例えば、モリブデン原料としてはパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン等が挙げられる。ビスマス原料としては酸化ビスマス、硝酸ビスマス、炭酸ビスマス等が挙げられる。鉄原料としては硝酸第二鉄・九水塩等が挙げられる。
【0014】
触媒成分の出発原料は各元素について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明においては、触媒成分は、触媒成分を含む溶液又はスラリーをスプレー乾燥した後に焼成することにより平均粒子径40〜150μmの球状粒子とされる。
【0016】
触媒成分の出発原料を含むスラリーを調製する方法としては、触媒成分の著しい偏在を伴わない範囲で、沈殿法、酸化物混合法等の公知の方法を適用することができる。
【0017】
触媒成分を含む溶液又はスラリーをスプレー乾燥する条件としては、スプレー乾燥機の入口温度は100〜500℃が好ましい。また、その出口温度は100℃以上が好ましく、105〜200℃がより好ましい。
【0018】
触媒成分を含む溶液又はスラリーをスプレー乾燥した後の球状の粒子は、触媒成分の出発原料に由来する硝酸塩等の塩を含んでいる場合がある。塩が残存していると触媒の機械的強度が低下する恐れがあるため、乾燥後、塩を分解するために焼成する。焼成条件としては、公知の焼成条件を適用でき、焼成温度は空気雰囲気下、約200〜600℃が好ましい。また、焼成時間は、目的とする触媒に応じて適宜選択される。
【0019】
触媒成分を含む溶液又はスラリーをスプレー乾燥した後に焼成して得られる球状粒子(以下、「焼成球状粒子」という)の平均粒子径は上述したとおり40〜150μmであり、50μm以上が好ましい。焼成球状粒子の平均粒子径を大きくすることにより、焼成球状粒子間に大きな空隙、すなわち触媒に大きな細孔が形成されて目的とする不飽和アルデヒドや不飽和カルボン酸の選択率が向上する傾向がある。
【0020】
焼成球状粒子の平均粒子径は100μm以下が好ましい。焼成球状粒子の平均粒子径を小さくすることにより、単位体積当たりの焼成球状粒子同士の接触点が増加するため、触媒の機械的強度が向上する傾向がある。
【0021】
なお、焼成球状粒子の嵩比重は、取り扱い性の点から、0.5kg/L以上が好ましく、0.8kg/L以上がより好ましい。焼成球状粒子の嵩比重は、性能の点から、1.8kg/L以下が好ましく、1.2kg/L以下がより好ましい。
【0022】
本発明においては、上記焼成球状粒子は、その100質量部に、無水ケイ酸(SiO)として0.1〜3質量部のシリカゾル、2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が10,000mPa・s以上を与える有機結合剤、及び少なくとも水及びアルコールの群から選ばれる1種が添加され、後述のように混練された後に、押出成形される。
【0023】
シリカゾルの添加量は焼成球状粒子100質量部に対して、無水ケイ酸(SiO)として0.1〜4質量部であり、0.5質量部以上が好ましい。またシリカゾルの添加量は3質量部以下が好ましい。添加量が0.1質量部以上で、触媒としたときに十分な機械的強度が得られ、4質量部以下で触媒の活性が低下し難い。シリカゾルの平均粒子径としては1〜10nmが好ましい。
【0024】
有機結合剤は、2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が10,000mPa・s以上を与えるものを用いる。粘度が10,000mPa・s以上の場合、後述する押出成形時の成形性が良く触媒にしたときに十分な機械的強度が得られる。なお、粘度の測定は例えばB型粘度計等の粘度計を用いて測定することができる。
【0025】
このような有機結合剤としては、例えば、微生物起源のβ−1,3−グルカンやセルロース誘導体であるメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0026】
これらの有機結合剤は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
有機結合剤の添加量は、成形性改善の点から、焼成球状粒子100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、成形後の熱処理等の後処理が簡単になる点から、有機結合剤の添加量は、焼成球状粒子100質量部に対して10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0028】
水又はアルコールが後述する混練及び押出成形に用いる液体(以下、「液体」という)として用いられる。アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールが挙げられる。液体としては、経済性と取り扱い性の点から、水が好ましい。
【0029】
なお、液体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
液体の量は、焼成球状粒子の種類、大きさ、液体の種類等によって適宜選択されるが、焼成球状粒子100質量部に対して10〜70質量部が好ましい。この液体の量は焼成球状粒子100質量部に対して20質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましく、35質量部以上が特に好ましい。液体の量が多くなると、得られる触媒に大きな空隙、又は大きな細孔が形成されて目的とする不飽和アルデヒドや不飽和カルボン酸の選択率が向上する傾向がある。また、液体の量は球状粒子100質量部に対して60質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましく、45質量部以下が特に好ましい。液体の量が少なくなると、成形時の焼成球状粒子の付着性が低減して取り扱い性が向上し、且つ、得られる触媒がより密になるため触媒の機械的強度が向上する傾向がある。
【0031】
焼成球状粒子とシリカゾル及び本発明で規定する有機結合剤、更には滑剤、可塑剤等の成形助剤を混練するために用いる混練機は特に限定されず、例えば、双腕型の攪拌羽根を使用するバッチ式の混練機又は軸回転往復式やセルフクリーニング型等の連続式の混練機を使用することができる。中でも、混練物の状態を確認しながら混練を行うことができる点から、バッチ式が好ましい。
【0032】
焼成球状粒子、シリカゾル、本発明で規定する有機結合剤、及び水及びアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を添加して押出成形する際、リング状、円柱状、星形状、ハニカム状などの任意の形状に成形できる。
【0033】
これら任意の形状に成形された成形体は次いで、通常、室温〜150℃で乾燥され、その後空気雰囲気下等で、約300〜600℃で熱処理され、触媒とされる。
【0034】
本発明の方法により製造された触媒の存在下、反応原料と分子状酸素を用いて気相接触酸化反応が行われる。このとき、反応原料と分子状酸素のモル比は1:0.5〜1:3が好ましい。反応原料のガスは不活性ガスで希釈して用いることが経済的である。分子状酸素としては空気を用いることが経済的であるが、必要に応じて純酸素で富化した空気も用いることができる。
【0035】
反応圧力としては大気圧から数気圧までが好ましい。反応温度としては200〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。接触時間は1.5〜15秒が好ましい。
【0036】
反応器中の触媒はシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、セラミックボールやステンレス鋼等の不活性物質で希釈して使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例を用い説明する。以下において、「部」は質量部を示し、原料ガス及び生成物の分析はガスクロマトグラフィーより行った。
【0038】
また、実施例及び比較例中のオレフィン、TBA又はMTBEの反応率、生成する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の選択率、生成する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の合計収率(以下、「合計収率」という)は次式により算出した。
【0039】
反応率(%)=(A/B)×100
不飽和アルデヒドの選択率(%)=(C/A)×100
不飽和カルボン酸の選択率(%)=(D/A)×100
合計収率(%)={(C+D)/B}×100
ここで、Aは反応した反応原料のモル数、Bは供給した反応原料のモル数、Cは生成した不飽和アルデヒドのモル数及びDは生成した不飽和カルボン酸のモル数である。
【0040】
また、触媒の充填粉化率は以下のように定義する。
【0041】
触媒a部を、水平方向に対して垂直に設置した内径30mmφ、長さ5mからなるステンレス鋼管に、ステンレス鋼管上部より充填し、充填後ステンレス鋼管下部より回収する。回収した触媒の内、8メッシュの篩を通過しない触媒がb部であったとき、充填粉化率は以下の式で表される。
【0042】
充填粉化率(%)={(a−b)/a}×100
また、圧壊強度は以下の方法により測定した。
【0043】
圧壊強度:微小圧縮試験機((株)島津製作所製、MCTM−200)で測定し、平均圧壊強度は30個の粒子を測定した平均値である。
【0044】
(実施例1)
純水2000部に、パラモリブデン酸アンモニウム500部、パラタングステン酸アンモニウム12.4部、硝酸セシウム23.0部、三酸化アンチモン27.4部及び三酸化ビスマス33.0部を加え、加熱、攪拌した。更に、硝酸第二鉄209.8部、硝酸ニッケル75.5部、硝酸コバルト453.3部、硝酸鉛31.3部及び85%リン酸5.6部を順次加え、加熱、攪拌し、水性のスラリーとした。この後、この水性のスラリーを回転円板型遠心アトマイザーを備えたスプレー乾燥機を用いて噴霧乾燥し、平均粒子径80μmの球状の乾燥粒子とした。このとき、スプレー乾燥機のアトマイザーの回転数は11,000rpm、スプレー乾燥機の入口温度は165℃、出口温度は125℃であった。次いで、この乾燥球状粒子を300℃で1時間、510℃で3時間焼成を行い、焼成球状粒子とした。このようにして得られた焼成球状粒子の圧壊強度は1.3×10−2Nであった。
【0045】
このようにして得られた焼成球状粒子100部に対して2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が10,000mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース5部を加え、乾式混合した。この混合物に純水36部及び平均粒子径7〜9nmのシリカゾルを無水ケイ酸として0.8部添加して双腕型の攪拌羽根をもつバッチ式の混練機を用いて混練した後、押出成形機にて、外径5mm、内径2mm及び長さ5mmのリング状物を成形した。
【0046】
次いで、得られた成形物を熱風乾燥機を用いて110℃で乾燥し、更に400℃で3時間焼成を行い、触媒を得た。
【0047】
得られた触媒の酸素以外の元素の組成は、Mo120.2Bi0.6Fe2.2Sb0.8Ni1.1Co6.6Pb0.40.2Cs0.5であった。
【0048】
この触媒をステンレス鋼製反応管に充填し、イソブチレン5%、酸素12%、水蒸気10%及び窒素73%(各々、容量%)の混合ガスを用い、常圧下、接触時間3.6秒、反応温度340℃で反応させた。その反応結果は、イソブチレンの反応率が97.1%、メタクロレインの選択率が89.9%及びメタクリル酸の選択率が4.0%であった。その充填粉化率は0.04%であった。これらの結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
実施例1において、リング状物を成形する際に平均粒子径7〜10nmのシリカゾルを無水ケイ酸として3部添加した。それ以外は実施例1と同様にして触媒を得、イソブチレンを反応させた。その結果、イソブチレンの反応率が96.5%、メタクロレインの選択率が90.0%、メタクリル酸の選択率が4.0%であった。その充填粉化率は0.02%であった。これらの結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
実施例1において、リング状物を成形する際に2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が30,000mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース5部を添加した。それ以外は実施例1と同様にして触媒を得、イソブチレンを反応させた。その結果、イソブチレンの反応率が97.2%、メタクロレインの選択率が89.7%、メタクリル酸の選択率が3.8%であった。その充填粉化率は0.04%であった。これらの結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1において、リング状物を成形する際にシリカゾルを添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして触媒を得、イソブチレンを反応させた。その結果、イソブチレンの反応率が96.1%、メタクロレインの選択率が89.9%、メタクリル酸の選択率が4.0%であった。その充填粉化率は0.87%であった。これらの結果を表1に示す。
【0052】
(比較例2)
実施例1において、リング状物を成形する際に2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が4,000mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース5部を添加し、シリカゾルを添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして触媒を得、イソブチレンを反応させた。その結果、イソブチレンの反応率が97.1%、メタクロレインの選択率が89.6%、メタクリル酸の選択率が3.5%であった。その充填粉化率は1.24%であった。これらの結果を表1に示す。
【0053】
(比較例3)
実施例1において、リング状物を成形する際に平均粒子径7〜10nmのシリカゾルを無水ケイ酸として10部添加した。それ以外は実施例1と同様にして触媒を得、イソブチレンを反応させた。その結果、イソブチレンの反応率が95.4%、メタクロレインの選択率が86.5%、メタクリル酸の選択率が4.7%であった。その充填粉化率は0.04%であった。これらの結果を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン、イソブチレン、第三級ブチルアルコール又はメチル第三級ブチルエーテルを分子状酸素を用いて気相接触酸化することにより、それぞれに対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を合成する際に使用される、少なくともモリブデン、ビスマス及び鉄の触媒成分を含む不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法であって、前記触媒成分を含む溶液又はスラリーをスプレー乾燥した後に焼成して得られる平均粒子径40〜150μmの球状粒子100質量部に、平均粒子径が1〜10nmのシリカゾルを無水ケイ酸(SiO)として0.1〜3質量部2質量%水溶液としたときの20℃における粘度が10,000mPa・s以上を与える有機結合剤、並びに水及びアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を添加したものを混練して、押出成形した後に、乾燥及び熱処理することを特徴とする不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸合成用触媒の製造方法。

【公開番号】特開2012−130919(P2012−130919A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37256(P2012−37256)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【分割の表示】特願2007−262565(P2007−262565)の分割
【原出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】