説明

不飽和脂肪酸誘導体からのα,ω−ジカルボン酸及びそれらのエステルの合成

【課題】α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルの製造方法。
【解決手段】次の工程:a.不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体をオゾン分解する工程、b.オゾン分解から得られた反応混合物を、α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルに酸化する工程、その際に工程b)において、25℃で測定したゼロ以下のpKa値を有する強酸を触媒として添加し、かつその際に前記方法を、溶剤を使用して実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルを、オゾン分解及び引き続き酸化により製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の意味でのオゾン分解は、オゾンの作用による炭素−炭素二重結合の開裂であると理解される。後処理の仕方に応じて、カルボニル化合物、アルコール又はカルボン酸が得られる。
【0003】
α,ω−ジカルボン酸は、2個のカルボキシル基を有するカルボン酸であると理解され、その際に炭素鎖の1位及び末端位がカルボキシル基で置換されている。
【0004】
オレフィンのオゾン分解は、カルボン酸、アルデヒド及びアルコールの重要な製造方法である(Baily, P.S., Ozonation in Organic Chemistry, Academic:New York, NY, 1978, Vol. 1.)。この反応タイプの本質は、一次オゾニド(1,2,3−トリオキソラン、2)の形成下での、オレフィン(1)のC,C−二重結合へのオゾンの1,3−双極性付加環化である。この種は不安定な中間体であり、これは直接、アルデヒドフラグメント(3)及びカルボニルオキシド(4)に分解される(図式1)。
【0005】
【化1】

図式1:オゾン分解及びその後の後処理の機構。
【0006】
カルボニルオキシドは、一方では重合しうるかもしくは1,2,4,5−テトラオキソラン(5)に二量化しうるか、又はさらなる付加環化において二次オゾニド(1,2,4−トリオキソラン,6)に再結合しうる。化合物6から出発して、アルデヒド(7,8)は、還元的後処理を経て製造されることができ、もしくはカルボン酸(9,10)は、酸化的後処理を経て製造されることができる(Kropf, H., Houben-Weyl Methoden Der Organischen Chemie; Kropf H. Ed.; Georg Thieme:Stuttgart, 1988; Vol. E13/2. p.1111.; Smith, M.B., March, J.March's Advanced Organic Chemistry; John Wiley & Sons, Inc; 2001, 5. Ed., p.1522)。前記アルデヒドはそしてまた、アルコールまでさらに還元されることができる。
【0007】
この反応順序の本質的な欠点は、たいてい爆発性の二次オゾニド、ポリマーペルオキシドもしくは1,2,4,5−テトラオキソランの形成であり、これらは一部が安定な化合物であり、例えばその後の反応工程及び後処理工程において蓄積されうるものであり、かなり危険があることを意味する(Kula, J. Chem. Health Saf. 1999, 6, 21; Gordon, P.M. Chem. Eng. News 1990, 68, 2)。さらに、二次オゾニドの酸化的後処理もしくは還元的後処理の際に、1酸化当量もしくは1還元当量が使用されなければならない(酸素、過酸化水素もしくはジメチルスルフィド、トリフェニルホスフィン等)。
【0008】
別の問題は、酸化反応の際に起こる。酸化がより低い温度で実施される場合には、酸化は極めてゆっくりと進行するが、しかしながら温度の増加は、副生物の強められた形成をまねき、これらの副生物は別の処理工程において費用をかけて除去されなければならない。これには、例えば、脱炭酸による鎖分解(Kettenabbau)が含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Baily, P.S., Ozonation in Organic Chemistry, Academic:New York, NY, 1978, Vol. 1.
【非特許文献2】Kropf, H., Houben-Weyl Methoden Der Organischen Chemie; Kropf H. Ed.; Georg Thieme:Stuttgart, 1988; Vol. E13/2. p.1111.
【非特許文献3】Smith, M.B., March, J.March's Advanced Organic Chemistry; John Wiley & Sons, Inc; 2001, 5. Ed., p.1522
【非特許文献4】Kula, J. Chem. Health Saf. 1999, 6, 21; Gordon, P.M. Chem. Eng. News 1990, 68, 2
【非特許文献5】Dussault, P.H., Journal of Chemistry 2008, 73, 4688-4690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の技術的課題は、故に、オゾニドの形成を回避し、かつ酸化のために、オゾン分解からの反応生成物の直接反応を可能にする、α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルの改善された製造方法を提供することである。
【0011】
さらなる技術的課題は、前記方法を、オゾン分解から得られた反応混合物の酸化が促進されるように改変することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの技術的課題は、次の工程:
a.不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体をオゾン分解する工程、
b.オゾン分解から得られた反応混合物を、α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルに酸化する工程、その際に工程b)において、25℃で測定してゼロ以下のpKa値を有する強酸が触媒として添加され、かつ
その際に前記方法が溶剤を使用して実施されること
により特徴付けられる、α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルの製造方法により解決される。
【0013】
意外なことに、α,ω−ジカルボン酸もしくはそれらのエステルが、オゾン分解及び引き続き酸化を経る1つの工程において容易に形成されることができることが見出された。その際に、ジカルボン酸の形成が、中間的に形成されるアルデヒドを経て行われ、かつ二次オゾニドの酸化を経て行われないことが本質的である。
【0014】
本発明による方法の場合に、オゾン分解工程において、ポリマーオゾニド及びオリゴマーオゾニドは生じない。前記発明の本質的な一面は、触媒量の強酸の添加による酸化の明らかな促進である。
【0015】
本発明による方法は、オゾン分解及び酸化の組合せとみなすことができる。その際に、オゾン分解の反応混合物は、後処理せずに、ジカルボン酸誘導体へのさらなる酸化の条件にかけられる。
【0016】
好ましい一実施態様において、触媒として、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸又はそれらの混合物からなる群から選択される酸が使用される。濃硫酸又は過塩素酸の使用が特に好ましい。
【0017】
反応の際に、原則的に多様な溶剤が使用されることができる。例えば、アセトン中の水5〜10質量%の溶液の使用により、オレイン酸メチルエステルからオゾン分解を経て、選択的にノナナール及び9−オキソノナン酸メチルエステルが製造できることは知られている(Dussault, P.H., Journal of Chemistry 2008, 73, 4688-4690)。
【0018】
本発明による製造方法において、アセトンに加えて、他の溶剤、例えばメチルエチルケトン、アルコール(例えばイソプロパノール、t−ブタノール等)又はカルボン酸も、匹敵する良好な結果を伴って使用されることができる。
【0019】
好ましい実施態様において、溶剤として、脂肪族カルボン酸は、溶剤の全量を基準として少なくとも0.5質量%の水との混合物で使用される。
【0020】
特に好ましい実施態様において、溶剤は、溶剤の全量を基準として、水1〜20質量%、極めて特に好ましくは水2〜15質量%を含有する。
【0021】
特に好ましい実施態様において、反応混合物中の水の割合は、脂肪酸又は脂肪酸誘導体の反応される二重結合の数に対して少なくとも化学量論量で存在している。
【0022】
好ましくは、溶剤として、C1〜C15−脂肪族カルボン酸、特に好ましくはC3〜C10−脂肪族カルボン酸が使用される。極めて特に好ましくは、プロピオン酸及び/又は酢酸である。
【0023】
二重結合を少なくとも1個有する脂肪酸又はそれらのエステルとして、好ましくは、オレイン酸、オレイン酸アルキルエステル、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸アルキルエステル、エルカ酸、エルカ酸アルキルエステル又はそれらの混合物の群から選択される不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体が使用される。
【0024】
好ましい実施態様において、酸化工程b.は110℃以下、特に好ましくは100℃以下の温度で実施される。本方法は、連続的に又は不連続に実施されることができる。
【0025】
酸化剤として、前記反応の際に、好ましくは過酸化水素及び/又はペルオキソカルボン酸が使用される。開裂される二重結合1個あたり1当量の過酸化水素は、オゾン分解の際に水と一次オゾニドとの反応により生じ、ついで特に好ましくは酸化工程において使用されることができる。ペルオキソカルボン酸も同様に好ましい、なぜなら、過酸化水素から、溶剤として存在しているカルボン酸と共に形成されうるからである。
【0026】
本方法は、公知の方法と比べてその安全な実施により特徴付けられる。オゾニドもしくは中間的に生じるカルボニルオキシドは、直接、水により捕捉される。オゾニド及び水からのヒドロペルオキシド11と呼ばれる付加物は、アルデヒド12及び過酸化水素との平衡で存在する(図式2)。
【0027】
【化2】

図式2:水でのカルボニルオキシド4の捕捉及び引き続き過酸化水素の可逆的脱離。
【0028】
オゾン分解の際の過酸化水素の形成は、目下、酸化的後処理の際に特に有利に利用されることができる。危険なオゾニドの形成の既に述べた回避に加えて、反応の際に直接、1酸化当量が形成される。
【0029】
図式2に示された平衡は、カルボニル基をカルボキシル基に酸化するために、適切な反応条件に調節して利用されることができる。図式3に示されるように、過酸化水素はまず最初に可逆的に、アルデヒド3に付加して、ヒドロペルオキシド13を形成する。水素イオンが脱離して、付加物13から不可逆的にカルボキシル化合物9が形成される。この反応は好ましくは、100〜200℃、好ましくは150℃のより高い温度で進行する。
【0030】
【化3】

図式3:過酸化水素の付加及び引き続きカルボン酸へのヒドロペルオキシドの分解。
【0031】
100℃未満のより低い温度での酸化は、触媒なしでは比較的ゆっくりと進行し、かつ温度の増加は、副生物の強められた形成に基づき、考慮に値しない。
【0032】
触媒量の酸の添加が、ヒドロペルオキシドの分解を、ひいては酸化を、全体で著しく促進することが見出された。一方では、それにより、反応期間が著しく短縮されることができ、他方では、それに付随して、目下、明らかにより低い温度での反応が可能である。高温での長い反応時間による望ましくない副生物の形成は、それにより回避されることができる。ヒドロペルオキシド基のプロトン化により、分解が優先されることが考えられる(図式4)。
【0033】
【化4】

図式4:酸触媒作用によるカルボン酸へのヒドロペルオキシドの促進された分解。
【0034】
明らかな触媒効果を示すのは、しかしながら、前記の反応の際に、25℃で測定して0以下の十分に小さいpKa値を有する酸のみである。
【0035】
そして、前記反応は、例えば、触媒量の濃硫酸又は過塩素酸により著しく促進される。しかしながら、特に好ましいのは、触媒としての硫酸の使用である。
【0036】
図式4に示された、カルボキシル基へのカルボニル基と過酸化水素との直接反応に加えて、反応条件下ではペルオキソカルボン酸による酸化も考えられる。ペルオキソカルボン酸は、酸触媒作用下に、溶剤として使用されるカルボン酸及び過酸化水素から形成される。ペルオキソカルボン酸は、カルボニル基に付加し、かつ2個のカルボキシル基の形成下に再び崩壊する。
【0037】
オゾン分解の2個のフラグメント(図式1、化合物3及び4)を相応するカルボン酸に酸化させるために、目下、さらに1酸化当量が必要とされる。本発明による方法において、これは特に単純に、さらに1当量の過酸化水素の添加により達成され、それによりカルボン酸への完全な酸化が行われる(図式5)。
【0038】
【化5】

図式5:オゾン分解及び引き続き過酸化水素の添加による酸化。
【0039】
酸化剤としての過酸化水素の使用は、そのうえ、良好に配量されることができ、かつ反応後に水のみが分解生成物として生じるという利点を有する。これは、工業的方法にとって、例えば酸化剤としての空気酸素の使用に比べて決定的な利点である、それというのも、反応系は一相で存在し、爆発性のガス混合物が形成されず、かつ廃ガス流中の飛沫同伴された反応混合物の費用のかかる分離が行われる必要がないからである。酸化は、バッチ式に又は連続的に実施されることができる。連続酸化の場合に、好ましくは、良好な熱交換が与えられているキャピラリー反応器が使用される。
【0040】
酸触媒された酸化のさらなる利点は、相応する脂肪酸エステルの使用の際のエステル基の同時の開裂にある。それにより、前記生成物の1つは、ジカルボン酸モノエステルとしてではなく、ジカルボン酸として存在し、このことは反応混合物の後処理を明らかに簡素化する。
【0041】
脂肪酸又は脂肪酸誘導体として、少なくとも1個の二重結合を有するものが使用される。その際に、脂肪酸及び脂肪酸誘導体として、特に好ましくは、オレイン酸、オレイン酸アルキルエステル、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸アルキルエステル、エルカ酸、エルカ酸アルキルエステル又はそれらの混合物の群から選択される化合物である。
【0042】
本発明による方法の出発物質として、しかし、他の不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体も使用されることができる。これらには、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセン酸、セトレイン酸及びネルボン酸及びそれらのエステルが含まれる。これらは、モノ不飽和脂肪酸である。さらに、ポリ不飽和脂肪酸、例えばリノール酸、リノレン酸、カレンド酸(Calendulasaeure)、プニカ酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、イワシ酸(Clupanodonsaeure)及びセルボン酸又はそれらのエステルも使用されることができる。
【0043】
本発明による方法は、次のように実施される。オゾン分解は、まず最初に、好ましくはカルボン酸である溶剤中で実施される。特に適しているのは、例えばプロピオン酸、酢酸又はペラルゴン酸である。不飽和脂肪酸エステルは、0.1〜1モル/Lの濃度で存在する。より高い濃度の脂肪酸エステルの場合に、添加される水の量が、反応される二重結合の数に対して常に少なくとも化学量論的に存在することが考慮されなければならない。反応混合物は、好ましくは一相で存在する。原則的に、前記反応はしかしまた多相の反応混合物を用いて行われることができる。オゾン分解は、好ましくは0〜50℃の温度範囲内で実施され、特に好ましいのは20〜30℃の反応温度である。
【0044】
本発明の意味でのオゾン分解は、脂肪酸又は脂肪酸誘導体とオゾンとの反応であると理解される。
【0045】
通常、オゾン発生のためにオゾン発生装置が利用される。このオゾン発生装置は、フィードガスとして工業用空気、あるいは二酸化炭素と酸素との混合物を使用する。オゾン発生装置中で、オゾンは、無音放電により製造される。その際に、酸素ラジカルが形成され、これらは酸素分子と反応してオゾンに変換される。
【0046】
オゾン分解から得られる反応混合物は、さらに後処理及び分離をせずに、酸化工程にかけられることができる。このためには、好ましくは過酸化水素又はペルオキシカルボン酸である酸化剤が使用される。基質(脂肪酸又は脂肪酸誘導体)中の二重結合の数を基準として、さらに1当量の酸化剤が添加され、かつ前記混合物は、110℃以下、好ましくは100℃以下の範囲内の温度に加熱される。極めて特に好ましくは、前記反応は、90〜110℃の温度範囲内で実施される。酸化は、より低い温度でも実施されることができるが、その際にしかしながらここでは反応はよりゆっくりと進行する。110℃を上回る温度では、反応生成物の形成は確かに促進されているが、しかしより高濃度の副生物が生じる。
【0047】
オゾン分解及び酸化の反応順序は、連続的に実施されることができ、その際にオゾン分解は好ましくは、トリクルベッド反応器中で行われ、その中で反応物は向流中で充填物(Fuellkoerperschuettung)に導かれる。オゾン分解部に直接接続されているのはキャピラリー反応器であり、その中で酸化が行われる。前記装置のオゾン分解部と酸化部の間で、反応混合物に、連続的に酸化剤、好ましくは過酸化水素が計量供給される。
【0048】
本発明による方法は、次の利点を有する:
二次オゾニド及びオリゴマーオゾニドは、水の添加により回避される。これにより、本発明による方法はより安全に実施される、それというのも、これらの物質は爆発性だからである。
【0049】
さらなる利点は、本発明による方法の場合に、2つの作りうるアルデヒド中間生成物の各1当量及び酸化のためのさらなる反応の際に使用される過酸化水素1当量の形成が直接、行われることができることにある。
【0050】
さらなる利点は、酸化が完全に行われ、その際に中間生成物として生じるアルデヒドが、追加の1当量のみの過酸化水素の添加により、相応するカルボン酸へと反応するのに対し、他の当量はオゾン分解の際に反応により生じることである。
【0051】
さらに、前記反応は、触媒量の強酸の添加により促進され、それゆえより経済的に実施されることができる。
【0052】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するものである。
【実施例】
【0053】
例1 − 比較例
オゾン分解及び酸添加なしでの酸化
プロピオン酸及び水(二重結合1モルを基準として15当量)の溶剤混合物中のオレイン酸メチルエステル(95%純度)の0.182質量モル濃度溶液20gを、ガス導入管及び還流冷却器を備えた二口フラスコ中に装入する。二酸化炭素中の酸素5体積%からなるフィードガスを、40mL/min.の流速でオゾン発生装置に導通する。オゾン発生装置は、その際に、最大出力に達している。オゾン含有ガス混合物を、撹拌しながら、反応混合物中へ導通する。廃ガス流を、ガス洗浄びんを経て、5%ヨウ化カリウム水溶液中へ導通する。60分後に、基質は変換されており、そのうえで、ガス導入を中断する。反応混合物は、GC分析によれば、9−ノナナール39.5質量%及び9−オキソ−ノナン酸メチルエステル38.2質量%の含量を有する。
【0054】
反応混合物を、ついで過酸化水素(30%水溶液0.454g)の添加後に、油浴中で100℃に加熱する。120分後に、ノナナールもしくは9−オキソノナン酸メチルエステルは完全に、それぞれのカルボキシル化合物へと変換されている。GC分析:ペラルゴン酸41.05%、アゼライン酸モノメチルエステル39.65%(FID信号、データ[面積%]、未補正)。
【0055】
例2
オゾン分解及び酸添加を伴う酸化
プロピオン酸及び水(二重結合1モルを基準として15当量)の溶剤混合物中のオレイン酸メチルエステル(95%純度)の0.182質量モル濃度溶液20gを、ガス導入管及び還流冷却器を備えた二口フラスコ中に装入する。二酸化炭素中の酸素5体積%からなるフィードガスを、40mL/min.の流速でオゾン発生装置に導通する。オゾン発生装置は、その際に、最大出力に達している。オゾン含有ガス混合物を、撹拌しながら、反応混合物中へ導通する。廃ガス流は、ガス洗浄びんを経て、約5%ヨウ化カリウム水溶液中へ導通する。60分後に、基質は変換されており、そのうえで、ガス導入を中断する。反応混合物は、GC分析によれば、9−ノナナール39.5%及び9−オキソ−ノナン酸メチルエステル38.2%の含量を有する。
【0056】
反応混合物を、過酸化水素(30%水溶液0.454g)及び硫酸(0.019g、95%)の添加後に、油浴中で100℃に加熱する。75分後に、ノナナールもしくは9−オキソ−ノナン酸メチルエステルは完全にそれぞれのカルボキシル化合物に変換されている。GC分析:ペラルゴン酸40.22%、アゼライン酸誘導体38.50%(アゼライン酸−モノ−メチルエステル21.90%+アゼライン酸16.6%)(FID信号、データ[面積%]、未補正)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルの製造方法であって、次の工程:
a.不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体をオゾン分解する工程、
b.オゾン分解から得られた反応混合物を、α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルに酸化する工程、その際に工程b)において、25℃で測定したゼロ以下のpKa値を有する強酸を触媒として添加し、かつ
その際に前記方法を、溶剤を使用して実施すること
を特徴とする、α,ω−ジカルボン酸又はそれらのエステルの製造方法。
【請求項2】
触媒を、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸又はそれらの混合物からなる群から選択する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶剤として、溶剤の全量を基準として少なくとも0.5質量%の水と混合した脂肪族カルボン酸を用いて方法を実施する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
溶剤が、溶剤の全量を基準として水1〜20質量%を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
溶剤が、溶剤の全量を基準として水2〜15質量%を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溶剤が、溶剤の全量を基準として水5〜10質量%を含有するが、しかし水は脂肪酸又は脂肪酸誘導体の反応される二重結合の数に対して少なくとも化学量論量で存在する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
二重結合を少なくとも1個有する脂肪酸又は脂肪酸誘導体を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
オゾン分解(工程a))及び酸化(工程b))を、オゾン分解からの反応混合物を単離又は後処理せずに、直接、連続して実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸誘導体として、オレイン酸、オレイン酸アルキルエステル、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸アルキルエステル、エルカ酸、エルカ酸アルキルエステルの群から選択される化合物を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
溶剤として、C1〜C15脂肪族カルボン酸、好ましくはC3〜C10脂肪族カルボン酸を使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
溶剤としてプロピオン酸及び/又は酢酸を使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
酸化(工程b))を、110℃以下、好ましくは100℃以下の温度で実施する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
方法を連続的に又はバッチ式に実施する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
酸化工程b)において、過酸化水素及び/又はペルオキソカルボン酸を酸化剤として使用する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2012−201685(P2012−201685A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−69700(P2012−69700)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】