説明

両性リポソームにおけるまたはそれに関する改善

活性因子をカプセル化して、リポソームを形成することが可能な脂質の血清中で安定な混合物であって、前記混合物は、約0.5〜約8の範囲の比でホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンを含んでなる。この混合物が両性であって、pH7.4では負に荷電するかまたは中性であり、そしてpH4では正に荷電するように、この混合物はまた、pH感受性アニオン性およびカチオン性両親媒性物質を含み得る。かかる混合物を含んでなる両性リポソームは、オリゴヌクレオチドおよびDNAプラスミドなどの核酸治療薬をカプセル化するために使用され得る。薬物/脂質比は、リポソームを特定の器官または身体における他の部位に標的化するために調整され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両性リポソームに関し、特に、ヒトまたは動物血清において改善された安定性を有するかかるリポソームについて言及する。本発明はまた、例えば、リポソームおよびかかるリポソームを含んでなる薬学的組成物を形成するための薬物などの活性因子または成分をカプセル化することが可能な脂質の混合物を含む。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドは、タンパク質発現を極めて特異的にダウンレギュレートまたは妨害することができる新規のクラスの薬物を表す。かかるオリゴヌクレオチドとして、アンチセンス、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸(モルホリノ)、低分子干渉RNA(siRNA)および多様な化学の転写因子デコイが挙げられる。かかるオリゴヌクレオチド治療薬の異なる作用機序の詳細な説明については、文献(例えば、非特許文献1;および非特許文献2)において見出すことができる。
【0003】
遺伝子修復アプリケーション(例えば、非特許文献3を参照のこと)およびマイクロRNAのためのオリゴヌクレオチドの使用は、この迅速に成長している分野の他の例である。
【0004】
核酸治療薬は、それらの実際の化学的起源とは関係なく、体液におけるそれらの不安定性のためもしくは細胞への非効率な取り込みの故、または両方により治療効力を欠き得ることが当該技術分野において公知である。上記の変種を含むかかるオリゴヌクレオチドの化学修飾、ならびにリガンドまたはポリマーとのコンジュゲートの形成は、かかる実際の限界を克服するための1つのストラテジーを表す。
【0005】
第2の組のストラテジーは、細胞への増強された取り込みを保護し、標的化し、そして付与するためのキャリアシステム、特に、リポソームの使用に関与する。リポソームは、水性コアを有し、そして疎水性および親水性成分の両方を有する両親媒性分子(両親媒性物質)から形成される人工シグナル、オリゴまたは多重層小胞である。カーゴは、リポソームのコアにおいてトラップされ得、膜層または膜表面に配置される。かかるキャリアシステムは、次の基準の至適スコアに一致すべきである:高いカプセル化効率および経済的製造、コロイド安定性、細胞への増強された取り込みならびにもちろん、低い毒性および免疫原性。
【0006】
キャリアと環境との間で凝集が生じないため、アニオン性または中性リポソームは、しばしば、コロイド安定性に関して優秀である。従って、それらの生体内分布は優秀であり、そして刺激および細胞障害性の可能性は低い。しかし、かかるキャリアはカプセル化効率を欠き、そして細胞へのさらなる取り込みを容易にするエンドソーム分解シグナルを提供しない(非特許文献4)。
【0007】
極めて多くの刊行物がカチオン性リポソームシステムを取り扱っている;例えば、非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7を参照のこと。カチオン性システムは高い充填効率を提供するが、それらは、特に、体液との接触後、コロイド安定性を欠く。タンパク質および/または他のバイオポリマーとのイオン相互作用は、細胞外マトリックスまたは細胞表面とのインサイチュでの凝集体形成をもたらす。カチオン性脂質は、しばしば、毒性であることが見出されており、非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10によって示されている。
【0008】
これらの制限は、立体的安定化をキャリアに提供する成分の添加によって克服された。例えば、体液におけるカチオン性成分の使用に関連する凝集の問題を排除する多様な鎖長のポリエチレングリコールが公知であり、そしてPEG化カチオン性リポソームは、インビボで増強された循環時間を示す(非特許文献11)。しかし、PEGの使用は、カチオン性脂質に関連する固有の毒性の問題を解決していない。PEGは、実質的に、細胞へのかかるリポソームの生産的侵入またはそれらの細胞内送達を阻害することもまた公知である(非特許文献12)。かなり最近、(非特許文献13)は、インビボでsiRNAを肝臓細胞にトランスファーすることが可能であるカチオン性ベクターのための拡散性PEG−脂質について記載した。しかし、かかる解決に対する多大な要求および臨床開発の所定の損耗率は、概念的に独立する解決のための開発の動機をさらに与える。
【0009】
両性リポソームは、pH7.5でアニオン性または中性電荷およびpH4でカチオン性電荷を有するリポソームの最近記載されたクラスを表す。特許文献1、特許文献2および特許文献3(すべてPanznerらによるものであり、本明細書において参考として援用される)は、両性リポソームおよびそれらに適切な脂質の詳細な説明を与える。さらなる開示は、特許文献4および特許文献5(これらもまたPanznerらによるものであり、本明細書において参考として援用される)において行われ、かかる両性リポソームの製造のためのさらにpH感受性脂質について記載している。
【0010】
両性リポソームは優秀な生体内分布を有し、動物において極めて良好に忍容される。それらは、高い効率で核酸分子をカプセル化することができる。
【0011】
哺乳動物における異なる病態または疾患の防止もしくは処置のための薬物のキャリアとしての両性リポソームの使用には、血中へのそれらの注入後のリポソームの安定性が必要である。特に、全身適用では、標的組織または細胞における究極的取り込みまで薬物は、リポソームにおいて安定にカプセル化されなければならない。FDAの指針は、リポソーム処方を含んでなる薬物の特定の前臨床試験を規定する(非特許文献14)。例えば、血流における循環時間中におけるカプセル化された薬物対遊離の薬物の比が、決定されなければならない。
【0012】
リポソームの血流への注入後、血清成分はリポソームと相互作用し、そしてリポソーム膜の透過化をもたらし得る。しかし、リポソームによってカプセル化される薬物の放出はまた、薬物の分子ディメンションにも依存する。これは、数千の塩基対のサイズを伴うプラスミド薬物が、例えば、より小さなオリゴヌクレオチドまたは他の小分子よりかなり緩徐に放出され得ることを意味する。薬物のリポソーム送達では、リポソームの循環中薬物の放出は、可能な限り低いことが必須である。
【特許文献1】WO02/066490
【特許文献2】WO02/066012
【特許文献3】WO03/070735
【特許文献4】WO03/070220
【特許文献5】WO03/070735
【非特許文献1】Crooke in BBA(1999),1489(1),31−44;Tijsterman,et al.in Cell(2004),117(1),1−3
【非特許文献2】Mann,et al.in J Clin Invest,(2000),106(9),1071−5
【非特許文献3】Richardson,et al.in Stem Cells(2002),20,105−118
【非特許文献4】Journal of Pharmacology and experimental Therapeutics(2000),292,480−488 by Klimuk,et al.
【非特許文献5】Molecular Membrane Biology(1999),16,129−140 by Maurer,et al.
【非特許文献6】BBA(2000)1464,251−261 by Meidan,et al.
【非特許文献7】Reviews in Biology and Biotechnology(2001),1(2),27−33 by Fiset & Gounni
【非特許文献8】Filion,et al.in BBA(1997),1329(2),345−356
【非特許文献9】Dass in J.Pharm.Pharmacol.(2002),54(5),593−601
【非特許文献10】Hirko,et al.in Curr.Med.Chem.,10(14),1185−1193
【非特許文献11】BBA(2001)1510,152−166 by Semple,et al.
【非特許文献12】Song,et al.in BBA(2002),1558(1),1−13
【非特許文献13】Morrissey,et al.(Nature Biotechnology(2005),23(8),1002−1007)
【非特許文献14】http://www.fda.gov/cder/guidance/2191dft.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、ヒトまたは動物血清との接触時に改善された安定性を有するリポソームおよびかかるリポソームを形成することが可能な脂質の混合物を提供することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、かかる改善された血清安定性を有する両性リポソームを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、核酸薬物、例えば、オリゴヌクレオチドおよびプラスミドなどの薬物を含む活性因子または成分の標的化された送達のためのキャリアとしてのかかるリポソームを含んでなる薬学的組成物を提供することである。
【0016】
本発明の特定の目的は、ヒトまたは非ヒト動物の炎症、免疫もしくは自己免疫障害の処置あるいは予防のためのかかる薬学的組成物を提供することである。
【0017】
なお本発明の別の目的は、ヒトまたは非ヒト動物の処置のための方法であって、活性因子を含んでなる薬学的組成物が1つ以上の特定の器官、腫瘍あるいは感染または炎症の部位に標的化される、上記方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の1つの態様に従えば、活性因子をカプセル化して、リポソームを形成することが可能な脂質の混合物が提供され、前記混合物は、約0.5〜約8の範囲のホスファチジルエタノールアミン対ホスファチジルコリンの比でホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)を含んでなる。
【0019】
適切には、前記比は、約0.75〜約5、好ましくは、約1〜約4の範囲である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記ホスファチジルコリンは、DMPC、DPPC、DSPC、POPCもしくはDOPCから、または例えば、ダイズPCおよび卵PCなどの天然の供給源由来のホスファチジルコリン類から選択され得る。
【0021】
前記ホスファチジルエタノールアミン類は、DOPE、DMPEおよびDPPEから選択され得る。
【0022】
好適な中性脂質として、DOPE、POPC、ダイズPCおよび卵PCが挙げられる。
【0023】
コレステロールは、血清の攻撃に対してホスファチジルコリン二分子層を安定化し得ることが公知である。しかし、POPCもDOPEもまたいずれもそれ自体では、血清中で安定な構造を形成しない。驚くべきことに、DOPEおよびPOPCの混合物は、血清中で安定なリポソームを形成し得ることが見出されている。
【0024】
従って、本発明の特定の態様では、前記脂質の混合物は中性であってもよい。いくつかの実施形態では、前記混合物は、上記の範囲の比でホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンよりなるか、または本質的になり得る。
【0025】
本発明の別の態様では、本発明に従う脂質の混合物を含んでなる中性リポソームが提供される。かかるリポソームは、血清中で安定な賦形剤または薬物などの活性因子のキャリアとして使用され得る。
【0026】
しかし、本発明の異なる態様では、前記混合物は、1つもしくはそれ以上の荷電した両親媒性物質をさらに含んでなり得る。
【0027】
好ましくは、前記1つもしくはそれ以上の荷電した両親媒性物質は両性であって、pH7.4では負に荷電するかまたは中性であり、そしてpH4では正に荷電する。
【0028】
本明細書における「両性」とは、アニオン性およびカチオン性の両方の特徴の荷電した基を含んでなる物質、物質の混合物または上掲の分子複合体(例えば、リポソーム)を意味し、
(i)荷電した基の少なくとも1つは4〜8の間のpKを有し、
(ii)カチオン性の電荷はpH4において認められ、そして
(iii)アニオン性の電荷はpH8において認められ、
pH4〜pH8の間の正味の電荷の等電点を生じる。両性イオンは上記範囲のpKを有さないため、両性特徴は、両性イオンの特徴とは異なるこのような規定による。結果として、両性イオンは、pH値の範囲にわたって本質的に中性に荷電しており;ホスファチジルコリン類およびホスファチジルエタノールアミン類は、両性イオン特徴を伴う中性脂質である。
【0029】
従って適切には、前記混合物は、互いに組合わせることで両性特徴を有する複数の荷電した両親媒性物質を含んでなり得る。好ましくは、前記1つもしくはそれ以上の荷電した両親媒性物質は、pH感受性アニオン性脂質およびpH感受性カチオン性脂質を含んでなる。本明細書において、荷電性カチオンおよび荷電性アニオンのかかる組合わせは、「両性II」脂質対と称される。前記荷電性カチオンは、約4〜約8の間、好ましくは、約5.0または5.5〜約7.0または7.5の間のpK値を有し得る。前記荷電性アニオンは、約3.5〜約7の間、好ましくは、約4または4.5〜約6.0または6.5の間のpK値を有し得る。例として、MoChol/CHEMS、DPIM/CHEMSおよびDPIM/DGSuccが挙げられる。
【0030】
「両性I」脂質対は、安定なカチオン(例えば、DDAB/CHEMS、DOTAP/CHEMSおよびDOTAP/DOPS)ならびに荷電性アニオンを含んでなる一方、「両性III」脂質対は、安定なアニオンならびに荷電性カチオン(例えば、MoChol/DOPGおよびMoChol/Chol−SO)を含んでなる。
【0031】
もちろん、本発明の範囲内において、例えば、両親媒性ジカルボン酸、ホスファチジン酸、両親媒性ピペラジン誘導体などのような複数の電荷を伴う両親媒性物質を使用することも可能である。かかる複数の荷電した両親媒性物質は、pH感受性両親媒性物質であってもまたは安定なアニオンもしくはカチオンであり得、あるいはそれらは「混合型の」特徴を有し得る。
【0032】
適切には、前記アニオン性脂質は、DOGSucc、POGSucc、DMGSucc、DPGSuccおよびCHEMSから選択され得る。
【0033】
前記カチオン性脂質は、MoChol、HisCholおよびCHIMから選択され得る。
【0034】
本発明のなお別の態様では、上記の範囲の比のホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン、pH感受性アニオン性脂質ならびにpH感受性カチオン性脂質を含んでなる両性リポソームが提供される。
【0035】
前記両性リポソームは、pH7.4では負または中性に荷電し、そしてpH4ではカチオン性であり得る。
【0036】
本発明の別の特定の態様では、前記リポソームは、少なくとも1つの活性因子をカプセル化する。前記活性因子は薬物を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、前記活性因子は、脊椎動物細胞において1つもしくはそれ以上のRNAに転写されることが可能である例えば、オリゴヌクレオチドまたはDNAプラスミドなどの核酸を含んでなり得、前記RNAは、mRNA、shRNA、miRNAまたはリボザイムであり、前記mRNAは1つもしくはそれ以上のタンパク質またはポリペプチドをコードする。
【0037】
前記オリゴヌクレオチドまたは他の核酸に基づく薬物は、前記両性リポソームにカプセル化され得る。前記オリゴヌクレオチドの実質的部分またはすべては、両性リポソームに物理的にトラップされ得る。血清中で安定な両性リポソーム処方は、薬物の細胞内送達のためか、あるいは哺乳動物または哺乳動物の部分、特にヒトまたはそれらの器官における病態および/または疾患の防止もしくは処置のために使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、CD40をコードする核酸を標的化し、それによって哺乳動物細胞におけるCD40の発現を調整(modulate)するために適応され得る。適切には、前記オリゴヌクレオチドは、CD40のmRNAに対して指向され得る。
【0039】
なお本発明の別の態様では、本発明に従う活性因子充填両性リポソームおよびそれらのための薬学的に許容可能なビヒクルを含んでなる薬学的組成物が提供される。
【0040】
前記組成物は、高または低脂質用量について処方され得、従って、適切には、薬物/脂質比は、所望の脂質濃度に調整され得る。いくつかの実施形態では、前記組成物は、前記薬物/脂質比を減少するために空のリポソームをさらに含んでな得、前記空のリポソームは、前記活性因子充填リポソームと同じまたは類似のサイズおよび組成を有する。前記空のリポソームは、本発明に従う脂質の混合物を含んでなり得る。
【0041】
なお別の態様では、本発明は、ヒトあるいは非ヒト動物の炎症、免疫または自己免疫障害の防止もしくは処置のための本発明に従う薬学的組成物の使用を含み、前記組成物は、哺乳動物細胞においてCD40の発現を調整するためのCD40をコードする核酸を標的化するために適応されるオリゴヌクレオチドを含んでなる。
【0042】
前記組成物は、全身または局所投与のために処方され得る。系統的に使用される場合、本発明は、特に、移植片拒絶、移植片対宿主病、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患、乾癬または甲状腺炎の防止もしくは処置のための前記組成物の使用を含んでなる。
【0043】
局所適用のために処方される場合、本発明は、特に、移植片拒絶、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、喘息、クローン病または大腸炎の防止もしくは処置のための前記組成物の使用を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
上記のように、本発明の両性リポソームは、アニオン性およびカチオン性成分を含んでなり得、両方の成分はpH感受性であり、WO02/066012(その内容は本明細書において参考として援用される)において開示されている。
【0045】
pHに感受性であるカチオン性脂質は、WO02/066489およびWO03/070220、ならびにそれに掲載の参考文献、特に、Budker,et al.1996,Nat Biotechnol.14(6):760−4(それらのすべての内容は本明細書において参考として援用される)において開示されている。
【0046】
好適なカチオン成分はMoChol、HisCholおよびCHIM、特に、MoCholである。
【0047】
好適なアニオン性脂質は:DOGSucc、POGSucc、DMGSucc、DPGSuccおよびCHEMS、特に、DOGSucc、DMGSuccおよびCHEMSを含んでなる群から選択される。
【0048】
脂質については以下の略称が本明細書において使用されるが、該略称の大部分は文献における標準的用途内にある:
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
カチオン性およびアニオン性脂質の間の比(荷電比)は、等電点を決定するだけでなく、組成物の血清安定性に影響を及ぼし得ることが見出されている。従って、前記荷電比は、4:1から1:4まで、好ましくは、3:1〜1:3(カチオン:アニオン)の間で変動し得る。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、カチオンはアニオンより多く存在し得る。好ましくは、前記荷電比は3:1〜2:1の間である。荷電した脂質の全量は、脂質混合物の5から95mol%まで、好ましくは、30から80mol%まで、およびより好ましくは、45または50mol%から75mol%まで変動し得、残りの脂質は中性リン脂質PCおよびPEから形成される。
【0053】
あるいは、カチオンおよびアニオンは、実質的に同じ量で存在し得る。荷電した脂質の全量は、脂質混合物の5から75mol%まで、好ましくは、20から65mol%まで変動し得、残りの脂質は中性リン脂質PCおよびPEから形成される。
【0054】
別の代替物では、アニオンは、カチオンより多く存在し得る。前記荷電比は、1:3〜1:2、好ましくは、約1:2(カチオン:アニオン)の間で存在し得る。荷電した脂質の全量は、脂質混合物の40mol%から75または80mol%まで、好ましくは、45または50mol%から70または75mol%まで、およびより好ましくは、55から65mol%まで変動し得、残りの脂質は中性リン脂質PCおよびPEから形成される。
【0055】
カチオンおよびアニオンの異なる多くの組合わせが、上記の適切な成分のリストから選択され得る。有利なことに、本発明は、荷電性カチオンとしてMoCholまたはCHIMおよび荷電性アニオンとしてCHEMS、DMGSuccまたはDOGSuccを使用して、実行され得る。
【0056】
現在好適なリポソームは、1:1〜1:4の間の比のPOPCおよびDOPEならびに3:1〜1:1の間の比のMoCholおよびCHEMS、MoCholおよびDMGSucc、MoCholおよびDOGSucc、CHIMおよびCHEMS、ならびにCHIMおよびDMGSuccから選択される両性脂質対を含んでなる脂質の混合物から作製され、荷電した脂質の量は、脂質混合物の30〜80mol%の間である。
【0057】
本発明に従うかかるリポソームの具体例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0058】
【表3】

【0059】
さらに現在好適なリポソームは、1:1〜1:4の間の比のPOPCおよびDOPE、DMGSuccまたはDOGSucc、ならびにMoCholを含んでなる脂質の混合物を含んでなり、DMGSuccまたはDOGSuccのモル量はMoCholのモル量を超え、そして荷電した脂質の量は30〜80mol%の間である。好ましくは、荷電比は1:2〜1:3の間であり、そして荷電した成分は、脂質混合物の45または50mol%〜70または75mol%の間の構成分をなす。
【0060】
かかるさらなるリポソームの具体例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0061】
【表4】

【0062】
かかる使用に限定されなければ、本発明に記載の材料は、例えば、オリゴヌクレオチドおよびDNAプラスミドなどの核酸に基づく薬物のキャリアとしての使用に良好に適合される。これらの薬物は、タンパク質、ポリペプチドまたはRNAに対する1つもしくはそれ以上の特異的配列をコードする核酸、およびタンパク質発現レベルを特異的にレギュレートするかまたは特に、スプライシングへの干渉および人工的トランケーションを介してタンパク質構造に影響を及ぼすことができるオリゴヌクレオチドに分類される。
【0063】
従って、本発明のいくつかの実施形態では、核酸に基づく治療薬は、脊椎動物細胞において1つもしくはそれ以上のRNAに転写されることが可能である核酸を含んでなり得、該RNAはmRNA、shRNA、miRNAまたはリボザイムであり得、かかるmRNAは1つもしくはそれ以上のタンパク質またはポリペプチドをコードする。かかる核酸治療薬は、環状DNAプラスミド、WO98/21322もしくはDE19753182において開示されているようなMIDGEベクター(Minimalistic Immunogenically Defined Gene Expression)と同様な線状DNA構築物、または翻訳のために具備されるmRNA(例えば、EP1392341)であってもよい。
【0064】
本発明の別の実施形態では、存在する細胞内核酸またはタンパク質を標的化することができるオリゴヌクレオチドを使用してもよい。前記オリゴヌクレオチドは、転写を減弱もしくは調整する、転写物のプロセシングを改変するまたはそうでなければタンパク質の発現を干渉するために適応されるように、前記核酸は特定の遺伝子をコードし得る。用語「標的核酸」は、特定の遺伝子をコードするDNA、ならびにプレmRNAまたはmRNAであるかかるDNAから誘導されるすべてのRNAを包含する。標的核酸とかかる配列に対して指向される1つもしくはそれ以上のオリゴヌクレオチドとの間の特異的ハイブリダイゼーションは、タンパク質発現の阻害またはモジュレーションを生じ得る。かかる特異的ターゲティングを達成するために、オリゴヌクレオチドは、標的核酸の配列に実質的に相補的であるヌクレオチドの連続ストレッチを適切に含んでなるべきである。
【0065】
上記の基準を満たすオリゴヌクレオチドは、異なる多くの化学およびトポロジーにより構成され得る。オリゴヌクレオチドは、一本鎖であってもまたは二本鎖であってもよい。
【0066】
オリゴヌクレオチドの作用機作は変動し得、そして特に、スプライシング、転写、核−細胞質間輸送および翻訳に対する効果を含んでなり得る。
【0067】
本発明の好適な実施形態では、一般にアンチセンスオリゴヌクレオチドとして公知であるDNAに基づくオリゴヌクレオチド、モルホリノ核酸、2’−修飾オリゴヌクレオチドなどを含むがそれらに限定されない一本鎖オリゴヌクレオチドを使用してもよい。骨格または塩基または糖修飾としては、ホスホチオエートDNA(PTO)、2’O−メチルRNA(2’Ome)、2’O−メトキシエチル−RNA(2’MOE)、ペプチド核酸(PNA)、N3’−P5’ホスホアミデート(NP)、2’フルオロアラビノ核酸(FANA)、ロックト核酸(LNA)、モルホリンホスホアミデート(モルホリノ)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トリシクロ−DNA(tcDNA)などが挙げられ得るが、これらに限定されない。さらに、混合された化学は当該技術分野において公知であり、コポリマー、ブロック−コポリマーもしくはギャップマーなどの1を超えるヌクレオチド種からまたは他の配列で構築される。上記のオリゴヌクレオチドに加えて、タンパク質発現はまた、相補配列モチーフを含有する二本鎖RNA分子を使用して、阻害することができる。かかるRNA分子は、当該技術分野においてsiRNA分子として公知である(例えば、WO99/32619またはWO02/055693)。さらに、多様な化学が、このクラスのオリゴヌクレオチドに適応された。また、DNA/RNAハイブリッドシステムも当該技術分野において公知である。
【0068】
本発明の別の実施形態では、デコイオリゴヌクレオチドを使用することができる。従って、これらの二本鎖DNA分子および化学修飾は、核酸を標的化するが、転写因子を標的化しない。これは、デコイオリゴヌクレオチドが配列特異的DNA結合性タンパク質に結合し、そして転写を干渉することを意味する(例えば、Cho−Chung,et al.in Curr.Opin.Mol.Ther.,1999)。
【0069】
本発明のさらなる実施形態では、生理学的条件下で遺伝子のプロモーター領域にハイブリダイズすることによって、転写に影響を及ぼし得るオリゴヌクレオチドを使用し得る。さらに、多様な化学がこのクラスのオリゴヌクレオチドに順応し得る。
【0070】
なお本発明のさらなる代替物では、DNAザイムを使用してもよい。DNAザイムは、酵素活性を伴う一本鎖オリゴヌクレオチドおよびその化学修飾である。「10〜23」モデルとして公知の典型的なDNAザイムは、生理学的条件下で特異的部位において一本鎖RNAを切断することが可能である。DNAザイムの10〜23モデルは、RNA上の標的配列に相補的な2基質認識ドメインによって隣接される15の高度に保存されたデオキシリボヌクレオチドの触媒ドメインを有する。標的mRNAの切断は、それらの破壊を生じ得、DNAザイムは再循環し、そして複数の基質を切断する。
【0071】
本発明のなお別の実施形態では、リボザイムを使用することができる。リボザイムは、酵素活性を伴う一本鎖オリゴリボヌクレオチドおよびその化学修飾である。それらは、2つの成分、触媒コアを形成する保存されたステム−ループ構造および所定のRNA転写物において標的部位を囲む配列に逆相補的であるフランキング配列に作動可能に分割することができる。フランキング配列は特異性を付与し得、そして一般的に、合計で14〜16ntを構成し得、選択される標的部位の両方部位上に延在する。
【0072】
本発明のなおさらなる実施形態では、タンパク質を標的化するためにアプタマーを使用してもよい。アプタマーは、RNAまたはDNAなどの核酸、および特異的分子標的に緊密に結合するその化学修飾からなる高分子であり、そして典型的に15〜60nt長である。ヌクレオチドの鎖は、分子を複雑な3次元の形状に折り畳む分子内相互作用を形成し得る。アプタマーの形状は、それが、酸性タンパク質、塩基性タンパク質、膜タンパク質、転写因子および酵素を含んでなるがそれらに限定されないその標的分子の表面に対して緊密に結合することを可能にする。アプタマー分子の結合は、標的分子の機能に影響を及ぼし得る。
【0073】
上記のオリゴヌクレオチドのすべては、短くて10、好ましくは15およびさらにより好ましくは18〜50、好ましくは30およびより好ましくは25ヌクレオチドの間の長さで変動し得る。オリゴヌクレオチドと標的配列との間の適合は、オリゴヌクレオチドの各塩基と好ましくは完全であり、上記の数のオリゴヌクレオチドの連続ストレッチにわたる標的核酸上のその相補的塩基と塩基対を形成する。これはそれほど好適ではないが、配列の対は、塩基対の前記連続ストレッチ内に1つもしくはそれ以上のミスマッチを含有してもよい。一般に、かかる核酸のタイプおよび化学組成は、それがインビボであってもまたはインビトロであってもビヒクルとしての本発明のリポソームの性能にほとんど影響を及ぼさず、そして当業者は、本発明のリポソームとの組合わせに適切な他のタイプのオリゴヌクレオチドまたは核酸を見出し得る。
【0074】
しかし、本発明の好適な実施形態では、CD40遺伝子、そのセンスもしくはアンチセンス鎖、その任意のエキソンもしくはイントロンまたは非翻訳領域をコードする核酸を標的化するために適応され、それによって、哺乳動物細胞におけるCD40の発現を調整するオリゴヌクレオチドを使用してもよい。
【0075】
本発明の別の好適な実施形態では、前記オリゴヌクレオチドはCD40の任意のmRNAに対して指向され得、かかるmRNAはプレmRNAおよびそれらのその後の成熟した形態を含む。
【0076】
タンパク質発現は、例えば、アンチセンス、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸(モルホリノ)および多様な化学の低分子干渉RNA(siRNA)などのオリゴヌクレオチドを使用して、特異的にダウンレギュレートさせることができる。
【0077】
CD40については、Pauli,et al.1984(Cancer Immunol.Immunotherapy 17:173−179)によって最初に記載された。タンパク質は、主に、樹状細胞、内皮細胞およびB細胞において発現され、そしてT細胞上のそのリガンド(CD40リガンドまたはCD154)と相互作用する。CD40とCD154との間のシグナル伝達は、体液免疫応答の発達に極めて重要である。経路の過剰刺激は、移植片拒絶、移植片対宿主病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患、乾癬および甲状腺炎を含む多様な免疫関連障害をもたらし得る。CD40過剰発現はまた、腫瘍増殖に関与し得(Gruss,et al.1997,Leuk.Lymphoma.24(5−6):393−422)、そしてCD40の増強されたレベルの可溶性形態はアルツハイマー病に関連することが報告された(Mocali et al.2004,Exp Gerontol.39(10):1555−61。CD40はNF−κB経路にシグナル伝達し、結果的に、転写因子の活性化ならびにIL−1、TNFαおよびIFNγなどのサイトカインの究極的な放出をもたらし、次いで、他の細胞を活性化し、従って、ポジティブフィードバック機構を使用して炎症を促進する。
【0078】
上記の経路における早期の事象の阻害は、免疫障害または炎症プロセスを阻害するのに有効なストラテジーとして提唱されている。例として、抗体を使用するTNFαの競合結合、TNFα−受容体に対する抗体を使用する受容体遮断およびNF−κB結合の競合阻害が挙げられる。CD40は、三量体リガンド、CD154とのその相互作用を介してシグナル伝達するため、小分子インヒビターによるシグナル伝達事象の阻害は起こりそうになく、従って、治療薬開発ではブロッキング抗体の使用が注目されている。より具体的には、Holstager,et al.2000(J.Biol.Chem.275:15392−15398)またはBaccam&Bishop1999(Eur.J.Immunol.29:3855−3866)によって記載のように、CD40/CD154相互作用を、成分の1つに対して標的化される抗体を使用して阻止してもよい。しかし、開発中のCD40抗体は副反応を生じ、従って、このポイントでの炎症フィードバックループを切断する代替的手段の必要性が存在する。
【0079】
これまでのところ、CD40 mRNAに対して標的化される多くのオリゴヌクレオチド配列が、インビトロで確証されている。例えば、US2004/0186071およびUS6197584(両方ともBennettらによる)には、アンチセンス機構に基づくかかるオリゴヌクレオチドについての詳細な説明がある。Pluvinet,et al.in Blood,2004は、ヒト標的に対するsiRNAを使用するCD40のダウンレギュレーションについて最初に記載した。さらに、ManoharanによるWO2004/090108は、CD40タンパク質の発現を阻害する新規オリゴヌクレオチドの適用性について記載している。CD40発現をダウンレギュレートするための間接的手段については、HeckerおよびWagnerによるDE10049549に記載されており、転写因子IFR−1の阻害を使用している。CD40の発現を調整するための適切な特異的核酸については、以下の実施例11に記載する。
【0080】
従って、本発明の特定の態様では、活性因子としてCD40に対して指向されるオリゴヌクレオチドおよび賦形剤として本発明の両性リポソームを含んでなる薬学的組成物が提供される。かかる処方は、炎症および自己免疫障害の処置において治療上有効であることが見出されており、従って、本発明は、移植片拒絶、移植片対宿主病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、喘息、気管支喘息、炎症性腸疾患、乾癬、甲状腺炎、クローン病(Morbus Crohn)、潰瘍性大腸炎、COPDおよびアトピー性皮膚炎を含む炎症、免疫または自己免疫障害の防止もしくは処置のための本発明の組成物の使用をさらに含む。
【0081】
本発明の薬学的組成物はまた、局所的処置、例えば、炎症のある粘膜の処置のために使用してもよい。特に、本発明の組成物は、炎症性腸疾患または移植片拒絶の処置もしくは予防のために使用してもよい。本発明の組成物はまた、皮膚または肺への局所投与のために適応してもよい。
【0082】
リポソームは、カプセル化された薬物の薬物動態学的および生体内分布プロファイルをインビボで改変するために広範に使用されている。本発明のリポソームは、それらのカーゴと共に、肝臓によって迅速かつ大きな程度で浄化され得る。しかし、薬物動態学的パラメータならびに生体内分布パターンは、以下の実施例において例示されるように、リポソームのサイズおよび/または脂質用量を調整することによって、制御され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明のリポソームは約150nmを超えるサイズを有し得る。かかるリポソームは、低い脂質用量で投与され得る。前記リポソームは、単層、オリゴ層または多重層であってもよい。かかる投与スキームは、肝臓への効果的滑迅速な標的化を可能にし、そして脾臓などの他の器官におけるリポソームおよび薬物の蓄積を回避する。
【0084】
あるいは、約150nmを超えるサイズを有するかかるリポソームは、高い脂質用量で投与され得、肝臓での飽和状態ならびに脾臓および感染もしくは炎症または腫瘍の部位などの循環におけるより遠位の部位におけるリポソームの蓄積の生体内分布パターンの変更をもたらす。身体のこれらの領域は、リポソームをろ過して取り出し得る有窓性または不完全な毛細管を有する。さらに加えて、脾臓ならびに感染または炎症および多くの腫瘍のかかる他の領域は、しばしば、循環からリポソームを取り出すことができる高含有量のマクロファージを有することが公知である。
【0085】
本発明に従う前記薬学的組成物は、異なる方法により高い脂質用量で提供され得る。いくつかの実施形態では、所望の脂質濃度を達成するために組成物の薬物/脂質比を低くすることができる。あるいは、薬物充填リポソームに匹敵する組成およびサイズの空のリポソームを添加することによって、薬学的組成物の脂質濃度を制御してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明に従うリポソームは約150nm未満のサイズを有し得る。前記リポソームは、単層、オリゴ層または多重層であってもよい。脾臓は、所望されない赤血球および血液由来の粒子を取り出すフィルターとして作用する。大きなリポソームはまた、同じ方法で細網フィルターによって保持される。しかし、小さなリポソームは漏出し得、従って脾臓に蓄積しない。従って、150nm未満のサイズを有する本発明に従うリポソームは、器官としての脾臓を迂回し得る。
【0087】
肝臓細胞を標的化するために、150nm未満のサイズを有するかかるリポソームを、低い脂質用量で投与してもよい。かかるリポソームは、肝臓全体に十分に浸透し、そして肝細胞などの肝臓の実質細胞の実質的な部分に到達するように特に良好に適応される。
【0088】
あるいは、感染もしくは炎症または固形腫瘍の領域などの循環におけるより遠位の部位を標的化し、同時に脾臓を迂回するために、150nm未満のサイズを有する前記リポソームを高い脂質用量で投与してもよい。
【0089】
一般に、本発明のリポソームの薬物動態学的プロファイルおよび生体内分布は、多くの因子に依存し得る。リポソームの脂質組成の次に、サイズおよび脂質用量は、リポソームのインビボでの運命を決定する。本発明のリポソームは、それらのサイズにかかわらず、単層、オリゴ層または多重層であってもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明のリポソームは、ヒトまたは非ヒト動物患者に対し、全身投与によって炎症のある肺を標的化するために使用し得る。
【0091】
本明細書において提示されるデータから開始して初めて、当業者は、他の種、特に、他の哺乳動物またはヒトのための適切な投与レジメンを確立することが可能である。具体的には、別の種(例えば、ヒト)における脂質用量が「低い」かまたは「高い」かは、薬物動態学的データによって決定することができる。リポソームの薬物動態学は、2コンパートメントモデルに従う。上記のように、高い脂質用量は、肝臓での飽和および生体内分布パターンの変更をもたらす。これは、薬物動態学的曲線の端部における増強されたCmax値をもたらす。
【0092】
本発明の薬学的組成物は、適切な薬学的に許容可能なビヒクルにおけるコロイドとしての使用のために処方され得る。水、食塩、リン酸緩衝食塩水などのようなビヒクルは、この目的のために当業者に周知である。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、約7〜約8の間の生理学的pHで投与され得る。この目的のために、活性因子、賦形剤およびビヒクルを含んでなる組成物は、この範囲のpHを有するように処方され得る。
【0094】
リポソームを製造するための方法は、当業者に公知である。それらは、規定されたポアサイズの膜を介する押出し、カーゴを含有する水へのエタノール中脂質溶液の注入または高圧ホモジナイゼーションを含むがそれらに限定されない。
【0095】
また、核酸治療薬を、中性のpHで脂質と接触させることができ、核酸を含有する溶液の所定の百分率の容積包含(volume inclusion)を生じることが当該技術分野において公知である。50mM〜150mMの範囲の高濃度の脂質が、薬物の実質的なカプセル化を達成するのに好適である。
【0096】
かかる標準的な手順とは対照的に、両性リポソームは、それらの等電点またはそれ未満において、核酸に結合する個別の利点を付与し、それによって、リポソーム表面における薬物を濃縮する。かかるプロセスは、WO02/066012においてより詳細に記載されている。リポソームのpHを生理学的pH(約pH7.4)にまで上昇する時、負に荷電した核酸は、リポソーム膜から解離する。実際の生成プロセスとは関係なく、カプセル化されていない有効な薬物は、初期の生成工程後、リポソームから取り出すことができ、リポソームは密封容器として形成される。さらに、技術文献およびここに含まれる参考文献は、かかる方法論について詳細に記載し、そして適切なプロセス工程は、サイズ排除クロマトグラフィー、沈降、透析、限外ろ過、透析ろ過などを含み得るが、これらに限定されない。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、80wt%を超える薬物が前記リポソームの内側に配置され得る。
【0098】
しかし、カプセル化されていない材料のかかる取り出しは義務的ではなく、そしていくつかの実施形態では、組成物は、トラップされたならびに遊離の薬物を含んでなり得る。
【0099】
リポソームの粒度は50〜500nmの間、好ましくは、50〜300nmの間であり得る。
【0100】
以下は、本発明の実施形態の添付の図面を参照するあくまでも例示による説明である。
【実施例】
【0101】
実施例1:両性II脂質MoCholおよびCHEMSによるカルボキシフルオレセイン(CF)充填リポソームの調製
クロロホルム中脂質のストック溶液を混合し、最終的に減圧下で乾燥状態まで丸底フラスコにおいてエバポレートした。脂質フィルムを、PBS pH7.5において100mM CFとハイブリダイズさせた。得られた脂質濃度は20mMであった。懸濁液を、45分間、水浴において室温で水和させ、5分間、音波処理し、続いて、−70℃で3回の凍結/融解サイクルを行った。融解後、リポソーム懸濁液を、100nmのポアサイズを伴うポリカーボネート膜を介して15回押出した。カプセル化されていないCFをゲルろ過によって取り出す一方、リポソームを3倍希釈した。脂質の回収率および濃度を、有機リン酸アッセイによって分析した。粒度を、Malvern Zetasizer 3000HSA上で動的光散乱により測定した。
【0102】
【表5】

【0103】
【表6】

【0104】
【表7】

【0105】
実施例2:両性II脂質MoCholおよびDMGSuccによるカルボキシフルオレセイン(CF)充填リポソームの調製
リポソームを、実施例1に記載のとおりに調製した。
【0106】
【表8】

【0107】
【表9】

【0108】
【表10】

【0109】
実施例3:両性II脂質MoCholおよびDOGSuccによるカルボキシフルオレセイン(CF)充填リポソームの調製
リポソームを、実施例1に記載のとおりに調製した。
【0110】
【表11】

【0111】
実施例4:両性II脂質CHIMおよびCHEMSによるカルボキシフルオレセイン(CF)充填リポソームの調製
リポソームを、実施例1に記載のとおりに調製した。
【0112】
【表12】

【0113】
実施例5:両性II脂質CHIMおよびDMGSuccによるカルボキシフルオレセイン(CF)充填リポソームの調製
リポソームを、実施例1に記載のとおりに調製した。
【0114】
【表13】

【0115】
実施例6:実施例1および2のCF充填両性リポソームの血清安定性試験
カルボキシフルオレセイン(CF)をモデル薬物として使用し、両性リポソームの血清安定性を決定した。オリゴヌクレオチドと同様に、CFは負に荷電している。
【0116】
25μlのCF充填リポソームを、100μlの予め加温した完全ヒト血清またはPBSとそれぞれ混合し、37℃でインキュベートした。規定された時間ポイントで5μlのサンプルを、96ウェルマイクロタイタープレートへ20μlのPBS、pH7.5または20μlの20%Triton X−100に対して移した。最後に、275μlのPBSを各ウェルに添加し、475/530nmで蛍光強度を測定した。
【0117】
蛍光測定を介してリポソームからのCFの放出を決定することによって、4時間にわたって血清安定性を観察した。CFの放出量(%で)を、規定された時間ポイントならびに界面活性剤(Triton X−100)によるリポソームの処置後に測定し、100%放出値を得た。
【0118】
結果:
POPCおよびDOPEの混合物は、血清において安定である。POPC自体は、血清からの攻撃に耐えるリポソームを形成しない。さらに、DOPEはリポソームを全く形成しない。かなり驚くべきことに、両方の成分からの混合物は、極めて安定であり、血清攻撃に対して耐性であることを見出した。本実施例において、0.75〜5のDOPE/POPC比は、1.5〜5の間の広範な至適条件を伴う安定な構造を形成することを見出した(図1および2もまた参照のこと)。
【0119】
荷電した成分および中性脂質は、独立変数である。MoChol/CHEMSまたはMoChol/DMGSucc両方の1:1の比に対する血清感受性は低い〜極めて低く、広範な混合物にわたって安定な粒子が形成される。全体で荷電した成分の少なくとも60または70mol%が、二分子層の安定性に有意な影響を及ぼすのに必要であった。
【0120】
70%の荷電した成分を含有する脂質混合物(表2および5を参照のこと)の血清安定性を図3に示す。一般に、過剰のMoCholは安定化効果を有する。
【0121】
血清安定性について試験した表3および6の処方は、2:1または4:1のいずれか一方の比でDOPEおよびPOPCを有する。荷電した脂質の全量を、80%から50%まで降順に滴定した。結果を図4に示す。
【0122】
実施例7:血清中で安定な両性リポソームの生体内分布
クロロホルム中脂質(+/−1%14C−DPPC)のストック溶液を混合し、最終的に減圧下で乾燥状態まで丸底フラスコにおいてエバポレートした。脂質フィルムを、1.5mlのPBS、pH7.5中3H−イヌリンまたは5mlのPBS単独で水和した。得られた脂質濃度は100mMであった。懸濁液を、45分間、水浴において室温で水和させ、30分間、音波処理し、続いて、−70℃で3回の凍結/融解サイクルを行った。融解後、リポソーム懸濁液を、適切なポアサイズを伴うポリカーボネート膜を介して15回押出した。リポソームを、超遠心分離によって、カプセル化されていない3H−イヌリンから分離した(2回)。
【0123】
脂質の回収率および濃度を有機リン酸アッセイによって分析し、放射性標識粒子の場合、液体シンチレーションによってカプセル化効率を測定した。粒度を、Malvern Zetasizer 3000HSA上で動的光散乱により測定した。得られた非標識および放射性標識調製物を混合し、PBSで最終脂質濃度まで希釈した。
【0124】
【表14】

【0125】
生体内分布研究
39匹の雄性ウィスター(Wistar)系ラット(Charles River)を5つのグループに分け、尾静脈を介して静脈内注入した。特定の時間ポイントで、血液サンプル(PKについて)および/または組織サンプル(BDについて)を回収し、高温下での触媒的酸化により分析した。サンプル間のキャリーオーバーの百分率を決定し、データの組の分析に含めた。
【0126】
【表15】

【0127】
生体内分布研究の結果を図5〜6に示し、肝臓および脾臓における異なるリポソーム処方の生体内分布を示す。他の器官におけるリポソームの蓄積は5%を超えなかったため、従って、示していない。図5は、低い脂質用量で投与される場合、サイズ>150nmを有する本発明の両性リポソームは、単独で肝臓に蓄積することを明らかに実証する。対照的に、高脂質用量で同じリポソーム処方を投与することによって、生体内分布パターンが変化することが示され得る。肝臓に次いで、サイズ>150nmを伴うリポソームは脾臓にも蓄積する。
【0128】
図6は、サイズ<150nmで調製された本発明の両性リポソームの生体内分布を示す。低い脂質用量で投与されるこれらのリポソームの生体内分布は、サイズ>150nmを伴うリポソームとは異ならない一方、高い脂質用量のサイズ<150nmを有するリポソームの投与は、脾臓における蓄積をもたらさないことが実証され得る。
【0129】
実施例8:コラーゲン誘導性関節炎マウスにおけるCy5.5標識CD40アンチセンスをカプセル化した両性リポソームの生体内分布
クロロホルム中脂質のストック溶液を混合し、最終的に減圧下で乾燥状態まで丸底フラスコにおいてエバポレートした。脂質フィルムを、10mM NaAc、50mM NaCl、pH4.5中Cy5.5標識CD40アンチセンスで水和した。得られた脂質濃度は20mMであった。懸濁液を、45分間、水浴において50℃で水和させ、5分間、音波処理し、続いて、−70℃で凍結/融解サイクルを行った。融解後、200nmポリカーボネート膜を介して、リポソーム懸濁液を19回押出した。押出しプロセス後、1/10容積の1M HEPES、pH8を添加することによって、リポソーム懸濁液のpHをpH7.5に移した。カプセル化されていないCy5.5標識CD40アンチセンスを、高速沈降(2回)および上清を廃棄することによって取り出した。
【0130】
脂質の回収率および濃度を、有機リン酸アッセイによって分析した。カプセル化効率を、蛍光分光学によって測定した。粒度を、Malvern Zetasizer 3000HSA上で動的光散乱により測定した。
【0131】
空のリポソームを、10Vol%のエタノール性脂質溶液(15mol%POPC、45mol%DOPE、20mol%MoCholおよび20mol%CHEMSの混合物)を10mM NaAc、50mM NaCl、pH4.5に注入することによって、生成した。得られた脂質濃度は2mMであった。1/10容積の1M Hepes、pH8でこの溶液のpHを直ちに移した。希釈されたリポソームを濃縮するために、懸濁液を透析ろ過した。
【0132】
【表16】

【0133】
マウスにおける生体内分布研究では、充填されたおよび空のリポソームを、以下のとおり混合した:
200μlのCy5.5リポソームおよび41μlの空のリポソーム
DBA/1系マウスを、完全フロイントアジュバントにおいて乳化したII型コラーゲン(200μg/マウス)の皮下注入によって免疫した。マウスに、関節炎誘導の1日目(II型コラーゲンによる単回免疫後の約21日目)にリポソーム懸濁液(241μl)により静脈内注入した。1日目を、炎症が著明であった(少なくとも2のR.O.Williamsに従う臨床スコア)日として規定した。
【0134】
マウスを、リポソーム懸濁液の注入の10時間後に屠殺した。器官および足を取り出し、直ちに液体窒素中に凍結した。リポソームにカプセル化されたCy5.5標識CD40アンチセンスの生体内分布をNIR画像化によって評価し、非処置マウスの組織サンプルと比較した。活動期の疾患を伴うマウスの炎症のある足に、特定の増強が見出された。より具体的には、両性リポソームの蓄積は、個々の足または足指もしくは指における疾患の高度に活動期の部位と一致する(図7を参照のこと)。
【0135】
実施例9:高度充填手順によるCD40−ODN含有リポソームの調製
リポソームを、10Vol%のエタノール性脂質溶液(15mol%POPC、45mol%DOPE、20mol%MoCholおよび20mol%CHEMSの混合物)を、CD40に対する60μg/mlの18bpアンチセンスを含有する10mM NaAc、50mM NaCl、pH4.5に注入することによって、生成した。
【0136】
得られた脂質濃度は2mMであった。1/10容積の1M Hepes、pH8でこの溶液のpHを直ちに移した。希釈されたリポソームを濃縮するために、懸濁液を、T865ローター(Sorvall Ultra Pro80)において、2時間5分間、65,000rpm、20℃で沈降させた。その後、処方を0.45μmを介して滅菌ろ過した。
【0137】
【表17】

【0138】
カプセル化されたODNの量を、260nmにより光学密度(OD)を確認することによって、測定した。以下の量のODNをSmarticle処方にカプセル化した。
【0139】
【表18】

【0140】
実施例10:関節炎における治療効力
DBA/1系マウスを、完全フロイントアジュバントにおいて乳化したII型コラーゲン(200μg/マウス)の皮下注入によって免疫した。Smarticleまたはコントロールによる処置を、関節炎誘導の1日目(II型コラーゲンによる単回免疫後の約21日目)に開始し、3および5日目に反復した。1日目を、炎症が著明であった(少なくとも2のR.O.Williamsに従う臨床スコア)日として規定した。
【0141】
処置研究について、リポソームCD40−ODNを、確立された炎症を伴うラットの尾静脈に静脈内注入した。それぞれの用量は、体重1Kgあたり4mgのCD40−ODN(カプセル化されたCD40−ODN)を含有した。
【0142】
実験中、足の浮腫が観察され、臨床関節炎スコアを決定した。
【0143】
図8および9により明示されるように、両性リポソームにおいてカプセル化されたCD40−ODNによる処置後、足の浮腫の有意な減少が認められた。また、臨床スコアは、かかるリポソームにおいてカプセル化されたCD40−ODNによる処置後に有意に減少した。
【0144】
実施例11:材料
本実施例は、CD40の発現を調整し、本発明に従う組成物の使用に適切であるオリゴヌクレオチドによって標的化され得るCD40ヌクレオチド配列の非制限的例を提供する。
【0145】
ヒトCD40 mRNA(GenBank受託番号X60592)
本発明に従う標的化のためのヒトCD40 mRNA配列を配列番号1に提示する。関連する配列情報は、Bennettらによるpublished patent application number US2004/0186071(即ち、配列番号85)およびBennettらによるUS patent no.6197584(即ち、配列番号85)ならびにPluvinet,et al.,Blood,2004,104(12),3642−3646(それらの内容は、本明細書において参考として援用される)において見出される。
【0146】
【表19】

【0147】
ハツカネズミ(Mus musculus)CD40 mRNA
本発明に従う標的化のためのネズミCD40 mRNA配列を配列番号2に提示する。関連する配列情報は、Bennettらによるpublished patent application number US2004/0186071(即ち、配列番号132)(その内容は、本明細書において参考として援用される)において見出される。
【0148】
【表20】

【0149】
ラットCD40 mRNA(GenBank受託番号AF 241231)
本発明に従う標的化のためのラットCD40 mRNA配列を配列番号3に提示する(Gao,Ph.D.thesis,Goettingen2003を参照のこと)。
【0150】
【表21】

【0151】
ブタCD40cDNA
本発明に従う標的化のためのブタCD40 cDNA配列を配列番号4に提示する(図10)。関連する配列情報は、Rushworth,et al.,Transplantation,2002,73(4),635−642(その内容は、本明細書において参考として援用される)において見出される。
【0152】
さらに、以下は、本発明における使用に適切であるアンチCD40オリゴヌクレオチド、例えば、アンチセンスCD40核酸配列の非制限的例を提供する:
【0153】
ヒトCD40に対するオリゴヌクレオチド
ヒトアンチセンスCD40オリゴヌクレオチドの例を以下に提示する。さらなる配列情報は、Bennettらによるpublished patent application number US2004/0186071およびUS Patent No.6197584(それらの内容は、本明細書において参考として提供される)において見出される。Bennettらにより言及された配列番号を右側に提供する。
【0154】
【表22】

【0155】
【表23】


【0156】
以下のsiRNA配列は、本発明における使用に適切である。(例えば、Pluvinet,et al.,Blood,2004,104(12),3642−3646を参照のこと)、その内容は、本明細書において参考として援用される。
【0157】
【表24】

【0158】
すべてのsiRNAは、3’末端に2ヌクレオチド突出部を含有する。
【0159】
ネズミCD40に対するオリゴヌクレオチド
ネズミアンチセンスCD40オリゴヌクレオチドの例を以下に提示する。さらなる配列情報は、Bennettらによるpublished patent application number US2004/0186071(その内容は、本明細書において参考として援用される)において見出される。Bennettらにより言及された配列番号を右側に提供する。
【0160】
【表25】


【0161】
ラットCD40に対するオリゴヌクレオチド
ラットアンチセンスCD40オリゴヌクレオチドの例を以下に提示する(Gao,Ph.D.thesis,2003,University of Goettingen,Germanyを参照のこと)。
【0162】
【表26】

【0163】
ブタCD40に対するオリゴヌクレオチド
ブタアンチセンスCD40オリゴヌクレオチドの例を以下に提示する。Rushworth,et al.,Transplantation,2002,73(4),635−642を参照のこと(その内容は、本明細書において参考として援用される)。
【0164】
【表27】

【0165】
従って、本発明は、哺乳動物血清との接触時にカプセル化された薬物をそれほどまたは全く放出しない改善された安定性を示す両性リポソームの処方を提供する。かかるリポソーム処方は、血流への全身投与後の薬物の送達に有用であり得る。かかる使用に対して制限されなければ、本発明は、オリゴヌクレオチド、現在開発中の新たなクラスの薬物、およびDNAプラスミドの送達に特に適する。かかる化合物の大部分は、細胞内に作用部位を有する。搬送システムは、かかる物質の乏しい取り込みを克服するために使用され、しばしば、必要不可欠な前提条件である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、完全なヒト血清における4時間のインキュベーション後の以下の表1のMoChol/CHEMS処方からのカルボキシフルオレセイン(CF)放出のグラフである。CF放出を、消光したCFシグナルの%として表す。X軸は、MoCholとCHEMSとの間の1:1の比で荷電した脂質の全量を示す。
【図2】図2は、完全なヒト血清における4時間のインキュベーション後の以下の表4のMoChol/DMGSucc処方からのCF放出のグラフである。CF放出を、消光したCFシグナルの%として表す。X軸は、MoCholとDMGSuccとの間の1:1の比で荷電した脂質の全量を示す。
【図3】図3は、完全なヒト血清における37℃でのインキュベーション後のMoChol/CHEMSまたはMoChol/DMGSuccを含有するリポソームからのCF放出のグラフである。CF放出を、消光したCFシグナルの%として表す。過度のカチオンは、血清の攻撃に対してリポソームを安定にする。DMGSuccは、CHEMS対等物よりかなり安定である。
【図4】図4は、完全なヒト血清における37℃でのインキュベーション後の以下の表3および6のMoChol/CHEMSおよびMoChol/DMGSucc処方からのCF放出のグラフである。処方は、2および4のDOPE/POPC比を有し、カチオン性対アニオン性脂質比は1未満である。放出を、消光したCFシグナルの%として表す。
【図5】図5は、低および高脂質用量でラット肝臓および脾臓に投与される場合、サイズ>150nmを有する処方POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 15:45:20:20の生体内分布を示す棒グラフである(以下の実施例7を参照のこと)。
【図6】図6は、低および高脂質用量でラット肝臓および脾臓に投与される場合、サイズ<150nmを有する処方POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 15:45:20:20の生体内分布を示す棒グラフである(以下の実施例7を参照のこと)。
【図7】図7は、NIR画像化によって得られる屠殺されたコラーゲン誘導性関節炎マウスの肢の写真であり、Cy5.5標識CD40アンチセンスをカプセル化する両性リポソームの生体内分布を示す(以下の実施例8を参照のこと)。
【図8】図8は、炎症マウスの足浮腫に対するCD40アンチセンスを含有する両性リポソームによる処置の効果を示すグラフである。
【図9】図9は、CD40アンチセンスを含有する両性リポソームで処置したマウスの評価された臨床スコアのグラフである。
【図10】図10は、本発明に従って標的化するためのブタCD40cDNA配列(配列番号4)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性因子をカプセル化して、リポソームを形成することが可能な脂質の混合物であって、約0.5〜約8の範囲のホスファチジルエタノールアミン対ホスファチジルコリンの比でホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンを含んでなる、混合物。
【請求項2】
前記比が約0.75〜約5の範囲にある、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記比が約1〜約4の範囲にある、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記ホスファチジルコリンが、DMPC、DPPC、DSPC、POPC、DOPC、ダイズPCまたは卵PCから選択される、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
前記ホスファチジルエタノールアミンは、DOPEまたはDMPEまたはDPPEから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
前記混合物が中性である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の混合物を含んでなる中性リポソーム。
【請求項8】
1つもしくはそれ以上の荷電した両親媒性物質をさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
前記1つもしくはそれ以上の荷電した両親媒性物質が両性であって、pH7.4では負に荷電するかまたは中性であり、そしてpH4では正に荷電する、請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
前記混合物は、互いに組合わせることで両性の特徴を有する、複数の荷電した両親媒性物質を含んでなる、請求項9に記載の混合物。
【請求項11】
前記1つもしくはそれ以上の荷電した両親媒性物質が少なくとも1つのpH感受性アニオン性脂質および少なくとも1つのpH感受性カチオン性脂質を含んでなる、請求項10に記載の混合物。
【請求項12】
前記アニオン性脂質が、DOGSucc、POGSucc、DMGSucc、DPGSuccおよびCHEMSから選択される、請求項11に記載の混合物。
【請求項13】
前記カチオン性脂質が、MoChol、HisCholおよびCHIMから選択される、請求項11または12に記載の混合物。
【請求項14】
カチオン性およびアニオン性脂質の間の比(電荷比)が4:1〜1:4の範囲にある、請求項11、12または13のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項15】
カチオン性脂質対アニオン性脂質の比が3:1〜2:1の範囲にあり、そして前記混合物が、5〜95mol%の荷電した脂質ならびに95〜5mol%のホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンを含んでなる、請求項11〜14のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項16】
カチオン性脂質対アニオン性脂質の比が約1:1であり、そして前記混合物が、5〜75mol%の荷電した脂質ならびに95〜25mol%のホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンを含んでなる、請求項11〜14のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項17】
カチオン性脂質対アニオン性脂質の比が1:3〜1:2の範囲にあり、そして前記混合物が、40〜75mol%の荷電した脂質ならびに60〜25mol%のホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンを含んでなる、請求項11〜14のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項18】
前記混合物が、
1:1〜1:4の範囲の比の70〜20mol%のPOPCおよびDOPE;ならびに
30および80mol%の両性対の荷電した脂質(前記対は、MoCholおよびCHEMS、MoCholおよびDMGSucc、MoCholおよびDOGSucc、CHIMおよびCHEMSまたはCHIMおよびDMGSuccから選択され、カチオン性対アニオン性脂質の比は3:1〜1:1の範囲にある)、
を含んでなる、請求項10〜14のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項19】
前記混合物が、
POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 6:24:47:23 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 15:45:20:20 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 10:30:30:30 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 6:24:47:23 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 16:24:30:30 (mol.%)
から選択される処方よりなる、請求項18に記載の混合物。
【請求項20】
前記混合物が、
1:1〜1:4の範囲の比の70〜20mol%のPOPCおよびDOPE;ならびに
30および80mol%のMoCholおよびDMGSuccまたはDOGSucc(ここで、DMGSuccまたはDOGSuccのモル量はMoCholのモル量を超える)、
を含んでなる、請求項11〜14または17のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項21】
カチオン性対アニオン性脂質の比が1:3〜1:2の範囲にあり、そして前記混合物が、30〜50mol%のPOPCおよびDOPEならびに70〜50mol%の荷電した脂質を含んでなる、請求項20に記載の混合物。
【請求項22】
前記混合物が、
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 6:24:23:47(mol%)
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 10:30:20:40(mol%)
から選択される処方よりなる、請求項21に記載の混合物。
【請求項23】
請求項9〜22のいずれか一項に記載の脂質の混合物を含んでなる両性リポソーム。
【請求項24】
前記リポソームが50〜500nmの範囲のサイズを有する、請求項23に記載の両性リポソーム。
【請求項25】
前記リポソームが少なくとも1つの活性因子をカプセル化する、請求項23または24に記載の両性リポソーム。
【請求項26】
前記活性因子が、脊椎動物細胞において1つもしくはそれ以上のRNAに転写されることが可能である核酸を含んでなり、前記RNAが、mRNA、shRNA、miRNAまたはリボザイムであり、前記mRNAが1つもしくはそれ以上のタンパク質またはポリペプチドをコードする、請求項25に記載の両性リポソーム。
【請求項27】
前記核酸が環状DNAプラスミド、線状DNA構築物またはmRNAである、請求項26に記載の両性リポソーム。
【請求項28】
前記活性因子がオリゴヌクレオチドである、請求項25に記載の両性リポソーム。
【請求項29】
前記オリゴヌクレオチドが、デコイオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、転写に影響を及ぼす因子、スプライシングに影響を及ぼす因子、リボザイム、DNAザイムまたはアプタマーである、請求項28に記載の両性リポソーム。
【請求項30】
前記オリゴヌクレオチドが、それらのホスフェートまたはホスホチオエート型においてDNA、RNA、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、2’O−メチルRNA(2’Ome)、2’O−メトキシエチルRNA(2’MOE)などの修飾ヌクレオシドを含んでなる、請求項28または29に記載の両性リポソーム。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチドが15〜30塩基対長のアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項32】
前記オリゴヌクレオチドが15〜30塩基対長のsiRNAである、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項33】
前記オリゴヌクレオチドが15〜30塩基対長のデコイオリゴヌクレオチドである、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項34】
前記オリゴヌクレオチドが15〜30塩基対長の転写に影響を及ぼす因子である、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項35】
前記オリゴヌクレオチドが25〜50塩基対長のDNAザイムである、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項36】
前記オリゴヌクレオチドが25〜50塩基対長のリボザイムである、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項37】
前記オリゴヌクレオチドが15〜60塩基対長のアプタマーである、請求項28、29または30のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項38】
前記オリゴヌクレオチドが、CD40遺伝子、そのセンスもしくはアンチセンス鎖、その任意のエキソンもしくはイントロンまたは非翻訳領域をコードする核酸を標的化するために適合され、それによって、哺乳動物細胞におけるCD40の発現を調節する、請求項28〜37のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項39】
前記オリゴヌクレオチドがCD40の任意のmRNAに対して指向され、かかるmRNAがプレmRNAおよびそれらのその後の成熟した形態を含む、請求項38に記載の両性リポソーム。
【請求項40】
前記脂質の混合物が、
POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 6:24:47:23 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 15:45:20:20 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/CHEMS 10:30:30:30 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 6:24:47:23 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 16:24:30:30 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 6:24:23:47 (mol.%)
POPC/DOPE/MoChol/DMGSucc 10:30:20:40 (mol.%)
から選択される処方よりなる、請求項38または39に記載の両性リポソーム。
【請求項41】
少なくとも80wt%の前記オリゴヌクレオチドが前記リポソームの内部に配置される、請求項28〜40のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項42】
前記リポソームがカプセル化されていないオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項28〜41のいずれか一項に記載の両性リポソーム。
【請求項43】
請求項25〜42のいずれか一項に記載の活性因子充填両性リポソームおよびその薬学的に許容可能なビヒクルを含んでなる薬学的組成物。
【請求項44】
前記リポソームが約150nmを超えるサイズを有する、請求項43に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記リポソームが約150nm未満のサイズを有する、請求項43に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
前記組成物が、前記活性因子充填両性リポソームに類似の組成およびサイズを有する空のリポソームをさらに含んでなる、請求項43、44または45のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
ヒトまたは非ヒト動物の炎症性、免疫もしくは自己免疫障害の防止あるいは処置のための請求項38、または請求項38に従属する場合の請求項39〜42のいずれか一項に記載の両性リポソームの使用。
【請求項48】
移植片拒絶、移植片対宿主病、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患、乾癬もしくは甲状腺炎の防止または処置のための請求項38、または請求項38に従属する場合の請求項39〜42のいずれか一項に記載の両性リポソームの使用であって、前記両性リポソームは全身投与のために処方される、使用。
【請求項49】
移植片拒絶、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、喘息、クローン病または大腸炎の防止または処置のための防止または処置のための請求項38、または請求項38に従属する場合の請求項39〜42のいずれか一項に記載の両性リポソームの使用であって、前記両性リポソームは局所投与のために処方される、使用。
【請求項50】
低脂質用量で請求項43〜46のいずれか一項に記載の薬学的組成物をそれに全身投与することによってヒトまたは非ヒト動物を処置する方法であって、前記リポソームが150nmを超えるサイズを有し、それによって、前記活性因子を肝臓に標的化する、方法。
【請求項51】
高脂質用量で請求項43〜46のいずれか一項に記載の薬学的組成物をそれに全身投与することによってヒトまたは非ヒト動物を処置する方法であって、前記リポソームが150nmを超えるサイズを有し、それによって、前記活性因子を脾臓、感染および炎症の部位もしくは固形腫瘍に標的化する、方法。
【請求項52】
低脂質用量で請求項43〜46のいずれか一項に記載の薬学的組成物をそれに全身投与することによってヒトまたは非ヒト動物を処置する方法であって、前記リポソームが150nm未満のサイズを有し、それによって、活性因子を肝臓に標的化する、方法。
【請求項53】
高脂質用量で請求項43〜46のいずれか一項に記載の薬学的組成物をそれに全身投与することによってヒトまたは非ヒト動物を処置する方法であって、前記リポソームが150nm未満のサイズを有し、それによって、前記活性因子を脾臓を含まない感染および炎症の部位もしくは固形腫瘍に標的化する、方法。
【請求項54】
薬物/脂質比を所望の脂質濃度に低下させることをさらに含んでなる、請求項51または53に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物において、前記活性因子充填リポソームに類似のサイズおよび組成を有する空のリポソームを封入することをさらに含んでなる、請求項51または53に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2009−507876(P2009−507876A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530426(P2008−530426)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009013
【国際公開番号】WO2007/031333
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503300306)ノヴォソム アクチェンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】