両親媒性ブロック共重合体及びそれを含む薬剤送達用高分子組成物
本発明は、親水性ブロック及び、末端ヒドロキシル基を有する疎水性ブロックとの両親媒性ブロック共重合体であって、疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されているものに関する。また、本発明は、水溶液中で安定なミセルを形成しうる高分子組成物であって、両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体を含み、ポリ乳酸の1以上の末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しているものに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性ブロック及び、末端ヒドロキシル基を有する疎水性ブロックを含む両親媒性ブロック共重合体であって、疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されているものに関する。また、本発明は、両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体を含む高分子組成物であって、ポリ乳酸の1以上の末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しているものに関する。さらに本発明は、金属イオンで固定された高分子組成物であって、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基が、二価または三価金属イオンで固定されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤が生体に投与されると、投与された薬剤のうち極微量のみが標的部位に達し、投与された大部分は標的でない部位へ送達され、望ましくない副作用を引き起こすことがある。従って、ここ20年においては、適切な担体を利用して薬剤を部位特異的に送達するための効率的なシステムを開発することに研究が集中されてきており、このような担体には、リポソーム、小分子界面活性剤ミセル、高分子ナノ粒子及び高分子ミセル(硬質ミセルでできている高分子ナノ粒子)が含まれる。リポソームを薬剤担体として使用することは、主に封入効率が低い、薬剤の不安定性、急速な薬剤流出及び低い貯蔵安全性のような問題のために制限されることが分かっている。小分子界面活性剤ミセルは、体内投与後、体液で希釈されて容易に分解するので、薬剤担体として十分な役割を遂行することは難しい。
【0003】
最近、生分解性高分子を利用する高分子ナノ粒子と高分子ミセルが、このような問題を克服するのに非常に有用であることが報告された。これらは静脈内投与薬剤の生体内における分布を変化させることにより副作用を減少して効能を向上させ、薬剤の特異的な細胞標的化や放出制御といった利点を呈する。これらはまた、体液との適合性に優れ、水難溶性薬剤の溶解度と生体利用効率を向上させる。
【0004】
親水性表面を有するナノメートルサイズの薬剤担体は、細網内皮系[reticulo-endothelial systems(RES)]による認識と取込みを回避して、血液中に長時間循環できることが明らかにされている。これらの親水性ナノ粒子の別の長所としては、サイズが非常に小さいために、粒子が受動的標的化メカニズムを通じて固体癌のような病変に到達できることがある。しかし、薬剤を特異的な標的位置へ上手く送達するためには、循環中、担体が薬剤を安定に保持することが要求される。薬剤標的化は長い循環時間を必要とするものと見られ、担体は長時間血液成分に露出されるので、速かに除去される担体に比べて薬剤−担体の結合安全性を改善させる必要がある。
【0005】
親水性表面を持つナノメートルサイズの薬剤担体において、高分子ミセルは通常数百個のブロック共重合体からなり、その直径は約20〜50nmである。高分子ミセルは、2つの球形の共通−中心部位、即ち、疎水性薬剤を封入する役割を有する疎水性物質で稠密に充填されたコアと、体内RESを回避して血液中で長時間循環できるようにする親水性物質でできている外皮を持つ。これらの担体はサイズが小さく、溶解度が高く、滅菌過程が簡単で薬剤を放出制御できるという際立った長所を示すにもかかわらず、導入された薬剤が生体内で急速に放出され得るので、その物理的安定性が重大な課題である。
【0006】
ミセルは、総共重合体濃度が臨界ミセル濃度(CMC)より高くなると、熱力学的に安定となる。従って、CMC値が低い共重合体システムを用いれば、ミセルの生体内における安定性を向上させることができる。力学的安定性は、ミセルの分解速度を意味する。この分解速度は、ミセルコアの物理的状態に依存する。ガラス転移温度が高い疎水性ブロックを含む共重合体で形成されたミセルは、ガラス転移温度が低いものに比べて、ゆっくり分解される傾向がある。また、ミセル間でユニマー(unimer)交換速度に影響を及ぼす多くの因子によっても影響され得る。ユニマー交換速度は、コア内の溶媒含量、共重合体の疎水性成分含量及び親水性と疎水性ブロックの長さのような多くの因子に依存することが見出されている。
【0007】
水難溶性薬剤を封入でき、安定性と効能が改善された生分解性で且つ生体適合性のコア−シェル型薬剤担体を開発するための鋭意研究が為されてきた。高分子ミセルを化学的に固定する製造方法であって、当該高分子がシェルとして親水性ポリエチレンオキサイドと、コアとして水溶液中で架橋結合した疎水性生分解性高分子を含むコア−シェル型ポリマーである方法が、EP 0,552,802 A2に開示されている。しかし、この高分子ミセルは、コアを形成する高分子が安定な構造を示すように、架橋結合剤をA−B型ジブロックまたはA−B−A型トリブロック共重合体の親水性成分へ導入しなければならないので、製造することが難しい。また、人体に適用したことがない架橋結合剤を使用することは、安全性問題を引き起こし得る。
【0008】
ミセル形成ブロック共重合体−薬剤複合体が、米国特許第6,080,396号に開示されている。高分子ブロック共重合体が親水性高分子分画と疎水性高分子分画を有する高分子ブロック共重合体−薬剤複合体は、外皮として親水性分画を持つミセルを形成し、その疎水性内核にアントラサイクリン抗癌剤を含有する。抗癌剤分子は、ミセルのコア内に共有結合される。しかし、薬剤が高分子ミセル内に共有結合されれば、薬剤−共重合体結合の分解速度を制御することが難しくなる。
【0009】
一方、親水性高分子であるポリアルキレングリコール誘導体と、脂肪酸ポリエステルまたはポリアミノ酸のような疎水性生分解性高分子を含む二重または三重ブロック共重合体からなる高分子ミセルを用いて、疎水性薬剤を可溶化し得ることが報告された。米国特許第5,449,513号は、親水性高分子であるポリエチレングリコール、及び疎水性高分子であるポリアミノ酸誘導体、例えば、ポリベンジルアスパラギン酸などを含むジブロック共重合体を開示している。このジブロック共重合体は、例えば、ドキソルビシンのような疎水性抗癌剤や、インドメタシンのような抗炎症剤を可溶化することができる。しかし、ポリアミノ酸誘導体は生体内で加水分解されないことから、免疫反応による副作用を誘発する。
【0010】
高分子ミセルの安全性を向上する方法としては、高分子の疎水性を増加させる方法がある。そのためには、高分子の分子量や濃度を調節しなければならない。しかし、分子量が増加するにつれて生分解効率が低下し、体外への排泄が難しくなり、臓器に蓄積されて毒性を示す。米国特許第5,429,826号は、親水性ポリアルキレングリコールと疎水性ポリ乳酸を含むジブロックまたはマルチブロック共重合体を開示している。具体的には、上記特許は、アクリル酸誘導体がジブロックまたはマルチブロック共重合体の末端基に結合されたジブロックまたはマルチブロック共重合体をミセル化した後、水溶液中で高分子を架橋結合させて高分子ミセルを形成することによって、高分子ミセルを安定化する方法を開示している。上記方法は高分子を安定化することはできるが、架橋結合された分子が分解されないため、生体に適用することができない。上記高分子ミセルは、中性pHの水溶液で多量の水難溶性薬剤を可溶化することができるが、短時間内に薬剤を放出する短所がある。また、米国特許第6,458,373号では、水難溶性薬剤がα−トコフェロールによりエマルジョン形態で可溶化されている。この特許では、エマルジョンを安定化するために、PEG修飾されたビタミンEが界面活性剤として使用されている。PEG修飾されたビタミンEは、親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む両親媒性二重ブロック共重合体と類似構造を有し、疎水性が強いトコフェロールが水難溶性薬剤の共重合体との親和力を増加させるために、水難溶性薬剤を可溶化することができる。しかし、親水性高分子として用いられたポリエチレングリコールの分子量が限定されるので、PEG修飾されたビタミンE単独では、パクリタキセルを僅か2.5mg/mLまで可溶化できるに過ぎない。2.5mg/mLの以上の濃度では不安定なミセルが形成され、薬剤の結晶が沈澱物を形成し得る。
【0011】
化学療法に対する臨床的な腫瘍耐性は、先天的または後天的でありうる。先天的な耐性は、診断時、第1に選択した化学療法に反応しない腫瘍に存在するものである。後天的な耐性は、初期段階の治療に対しては敏感に反応するが、再発時、完全に異なった表現型を見せる腫瘍でよく発生する。耐性は、従来使用された薬剤と、構造及び作用メカニズムが異なる新しい薬剤のいずれに対しても形成され得る。例えば、タキソール(登録商標)を用いた癌化学療法は、癌細胞の後天的耐性により失敗することがあるが、このことは、P−gpの過剰発現とβ−チューブリンの変形としばしば結び付けられる。タキソール(登録商標)耐性細胞は、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ビンブラスチン、及びビンクリスチンを含む他の薬剤に対して交差耐性を示す。よって、臨床的薬剤耐性は、化学療法が転移性癌患者を治療できるようにするために、克服しなければならない主要な障害である。
【0012】
薬剤耐性癌細胞は、正常細胞より高いIC50(薬剤の50%細胞抑制濃度)を示すので、正常細胞では濃度を低くする一方で、腫瘍細胞では薬剤濃度を高くする化学療が効果的である。従って、薬剤耐性癌に対する効果を改善するためには、長い全身循環と腫瘍組織での薬剤の特異的な送達が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した観点から、疎水性薬剤送達のためのものであり、生体適合性と生分解性を示す改良高分子ミセル組成物の開発が求められてきた。本発明は、生体適合性かつ生分解性で、安全性を貶めることなく疎水性薬剤を效果的に送達できる改良高分子ミセル組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つの様態は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体であって、疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されたものと、その製造方法に関するものである。本発明の両親媒性ブロック共重合体は、在来の高分子とほぼ同じ分子量を保持しながら、疎水性ブロックの疎水性を顕著に増加させる。また、疎水性官能基が水難溶性薬剤との親和力を大きく向上させることによって、高分子から形成された高分子ミセルは水溶液中でさらに安定になり、ミセルに可溶化された水難溶性薬剤の血漿濃度をより長時間保持することができる。さらに、上記の両親媒性ブロック共重合体は、別の高分子と混合され、薬剤送達用高分子組成物とされ得る。
【0015】
本発明の他の様態は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している高分子組成物に関するものである。
【0016】
本発明の第三の形態は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しており、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基が二価または三価金属イオンで固定された高分子組成物に関するものである。
【0017】
本発明の高分子組成物は、体液や水溶液中で安定な高分子ミセルやナノ粒子を形成し得る。本発明の組成物で形成されたミセルやナノ粒子は、親水性外皮と、多量の疎水性薬剤を物理的に封入できる疎水性内核を有する。本発明の薬剤含有ミセルとナノ粒子は、投与後、血流中で滞留時間が延長され、様々な医薬製剤の製造に使われ得る。本発明の組成物から製造された抗癌剤含有高分子ミセルは、癌組織によく移行され、抗癌剤耐性癌細胞に対して效果的に作用し得る。本発明の付加的な特徴と長所は、実施例を通じて本発明の特徴を示す添付図面と共に、下記の詳細な説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明高分子組成物とその使用方法及び製造方法を説明する前に、本発明はここに開示された特定形態、製造ステップと材料に限定されず、そのような形態、製造ステップ及び材料は変更し得ることが理解されなければならない。また、ここで使われる用語は特定具体例のみについて記述する目的で使われており、添付された特許請求の範囲とその均等物によってのみ制限される本発明の範囲を制限するものではないことが理解されなければならない。
【0019】
本明細書と添付された特許請求の範囲において、単数型を示す「a」、「an」または「the」は、明確に他の意味として言及しない限り、複数形態を含む。従って、例えば「末端基」を含有する高分子に関する言及は、2以上のそのような基に関する言及を含み、「疎水性薬剤」に関する言及は、2以上のそのような薬剤に関する言及を含む。さらに、両親媒性ブロック共重合体に関する言及は、各A及びBブロックの組成物、各ブロックのそれぞれの比率、及び各ブロック及び/又は全体ブロック高分子組成物の重量または数平均分子量が、ここで定義された規定内のものであるならば、ブロック共重合体の混合物を含むものとする。
【0020】
本発明の説明と請求において、下記用語が下記定義に従って使われる。
【0021】
本明細書で使われる「生物活性薬剤」若しくは「薬剤」または他の類似用語は、当該技術分野で既に公知の方法および/または本発明で教示された方法による投与に適し、所望の生物学的または薬理学的効果を示すあらゆる化学的または生物学的物質または化合物を意味する。そのような効果は、これらに限定されるものではないが、(1)生物に対して予防的効果を有し、感染防止のような、望まない生物学的影響の防止、(2)疾患により誘発された異常の緩和、例えば疾患による痛みや炎症の緩和、及び/または(3)生物からの疾患の緩和、減少、または完全除去を含み得る。その効果は、局所麻酔効果の提示のように局所的であってもよく、全身的であってもよい。
【0022】
本明細書で使われる「生分解性(biodegradable)」または「生分解(biodegradation)」の語は、可溶化加水分解、または酵素や生物の他の産物であり生物学的に形成された物質の作用によって、物質があまり複雑でない中間体や最終産物に転換されることを意味する。
【0023】
本明細書で使われる「生体適合性」の語は、生体に副作用を及ぼさない可溶化加水分解、または酵素若しくは生物の他の産物であり生物学的に形成された物質の作用によって形成された物質または物質の中間体または最終産物を意味する。
【0024】
本明細書で使われる「有効量」の語は、任意の医学的処置に伴うものと同じ程度の合理的なリスク/利益比率における所望の局所または全身効果の提供に十分な生物活性薬剤の量を意味する。
【0025】
本明細書で使われる「投与」及びその類似の語は、組成物が全身的に循環できるように組成物を治療される個体へ送達することを意味する。好ましくは、本発明の組成物は皮下、筋肉内、経皮、経口、経粘膜、静脈内、または腹腔内経路で投与される。そのような用途のための注射剤は、通常的な形態、即ち液状溶液若しくは懸濁液、または注射前に液状溶液や懸濁液として製造するのに適当な固体形態、またはエマルジョンとして製造することができる。投与のために使われ得る適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどを含み;必要な場合、湿潤剤や乳化剤、緩衝剤などのような少量の補助剤を含む。経口投与のために、液剤、錠剤、カプセル剤などのような様々な形態に製剤化できる。
【0026】
以下では例示的な具体例を示し、これを記述するために具体的な用語を使用する。それによって、本発明の範囲は制限されるものではないことが理解されなければならない。本開示内容に関して、関連分野の技術者にとって、ここに示された発明的特徴の変化と追加的な変形と、ここに説明された本発明の原理の付加的な応用は、本発明の範囲内に属するものと見なされるべきである。
【0027】
1つの態様として、本発明は、親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を提供する。
【0028】
本発明は、また、上記両親媒性ブロック共重合体の製造方法に関するものであり、下記方法I〜IIIを含む。
【0029】
方法I:
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、開始剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下、上記カルボキシル化された疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【0030】
方法II:
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化し、得られたカルボキシ化疎水性化合物をオキサリルクロリドにより活性化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、上記の活性化されたカルボキシル化疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【0031】
方法III:
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物を、連結剤であるジクロライド化合物と混合するステップ;
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、ステップ1)の反応混合物に添加することによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性化合物を化学結合させるステップ;及び
3)段階2)で得られたブロック共重合体を溶解して沈澱させるステップ、
を含む方法。
【0032】
本発明の「カルボキシル化疎水性化合物」とは、カルボキシ基が結合したヒドロキシル基を有する疎水性化合物を意味し、カルボキシ基は、サクシネート、マロネート、グルタレートまたはアジペート由来のものであってもよい。
【0033】
また、本発明は、本発明の両親媒性ブロック共重合体を含有する薬剤担体を提供する。
また、本発明は、両親媒性ブロック共重合体と水難溶性薬剤を含み、体液または水溶液中で高分子ミセルを形成し得る医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明の両親媒性ブロック共重合体は、好ましくは、親水性Aブロック及び疎水性Bブロックを含むA−B型ジブロック共重合体またはB−A−B型トリブロック共重合体であってもよく、疎水性ブロックの末端基はヒドロキシル基である。本発明の両親媒性ジブロック共重合体は、水性環境に置かれると、疎水性Bブロックがコアを形成し親水性Aブロックがシェルを形成するコア−シェルタイプの高分子ミセルを形成する。
【0035】
好ましくは、親水性Aブロックは、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、及びその誘導体よりなる群から選択されるものである。より好ましくは、親水性Aブロックは、モノメトキシポリエチレングリコール、モノアセトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンとプロピレングリコールの共重合体、及びポリビニルピロリドンで構成された群から選択されるものである。好ましくは、親水性Aブロックの数平均分子量は、200〜50,000ダルトンである。より好ましくは、親水性Aブロックの数平均分子量は、1,000〜20,000ダルトンである。
【0036】
本発明の両親媒性ブロック共重合体の疎水性Bブロックは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル及びポリホスファジンで構成された群から選択される高度な生体適合性かつ生分解性の高分子である。より好ましくは、疎水性Bブロックは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン−2−オン、ラクチドとグリコリドの共重合体、ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体、ラクチドとカプロラクトンの共重合体、及びグリコリドとカプロラクトンの共重合体よりなる群から選択される1つ以上である。好ましくは、両親媒性ブロック共重合体の疎水性Bブロックの数平均分子量は、50〜50,000ダルトンである。より好ましくは、両親媒性ブロック共重合体の疎水性Bブロックの数平均分子量は、200〜20,000ダルトンである。
【0037】
疎水性Bブロックは末端ヒドロキシル基を有し、この末端ヒドロキシ基は、疎水性Bブロックの疎水性を増加させるために、疎水性に優れたトコフェロールまたはコレステロール基で置換される。本発明の両親媒性ブロック共重合体における疎水性ブロックは、水溶液中に置かれると、水との接触を避けて内核を形成し、球形の高分子ミセルを形成する。従って、水との親和力に劣る水難溶性薬剤を両親媒性ブロック共重合体と反応させるとき、水難溶性薬剤は高分子ミセルの内核の疎水性高分子により囲まれながらミセル内に封入され得る。この際、形成されるミセルの安定性は、疎水性ブロックの疎水性と薬剤に対する親和力に依存する。よって本発明では、疎水性ブロックの高分子の分子量をそのまま保持しながら疎水性を増加させるために、トコフェロール、コレステロールなどのような疎水性の強い官能基を、結合剤を用いて疎水性ブロックの末端に化学結合させる。トコフェロールとコレステロールは生体適合性化合物であって、水難溶性薬剤とのブロック共重合体親和性を増大させることができる環状構造を有する疎水性化合物である。
【0038】
本発明の両親媒性ブロック共重合体における親水性Aブロック対疎水性Bブロックの比率は、好ましくは30:70〜97:3の重量比の範囲であり、より好ましくは、4:6〜7:3の範囲である。親水性Aブロックの含量が過度に低ければ高分子が水溶液で高分子ミセルを形成できず、その含量が過度に高ければ形成された高分子ミセルが安定的ではない。
【0039】
1つの具体例において、本発明の両親媒性ブロック共重合体は、下記一般式(I’)で示すことができる。
R1’−O−[R3’]l’−[R4’]m’−[R5’]n’−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−O−R2’ (I’)
式中、
R1’は、CH3−、H−[R5’]n’−[R4’]m’−またはR2’−O−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−[R5’]n’−[R4’]m’−であり、
R2’はトコフェロールまたはコレステロールであり、
R3’は−CH2CH2−O−、−CH(OH)−CH2−、−CH(C(=O)−NH2)−CH2−、または
【0040】
【化1】
であり;
R4’は−C(=O)−CHZ’−O−(ここで、Z’は水素原子またはメチル基である)であり;
R5’は−C(=O)−CHY”−O−(ここで、Y”は水素原子またはメチル基である)、−C(=O)−CH2CH2CH2CH2CH2−O−または−C(=O)−CH2CH2CH2−O−であり;
l’は4〜1150の整数であり;
m’は1〜300の整数であり;
n’は0〜300の整数であり;及び
X’は0〜4の整数である。
【0041】
従来の両親媒性ブロック共重合体に比べ、疎水性基で置換された疎水性ブロックを有する本発明の共重合体は、疎水性が増加しており、低い臨界ミセル濃度(CMC)を有し、水難溶性薬剤との親和力が大きいため、薬剤を安定的に含有することができる。また、末端に結合された官能基により水溶液中で形成されるミセルの大きさが増大するので、十分な量の薬剤をミセル中に包含することができる。従って、本発明の両親媒性ブロック共重合体は、効率的な薬剤担体として使用できる。本発明で導入される疎水性の強い官能基は分子量が大きい化合物である。よって、ブロック高分子の疎水性と薬剤に対するブロック共重合体の親和性を同時に大きく増加させて、ミセルを含有する製剤を顕著に安定化させる。
【0042】
さらに、本発明の両親媒性ブロック共重合体を用いた高分子ミセルは、体内滞留時間が増加されている。高分子ミセル中の薬剤の血中濃度は、両親媒性ジブロック共重合体の疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に置換した疎水性部分に依存する。表6と図8に示すように、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に置換された疎水性部位(トコフェロールまたはコレステロール)を有する両親媒性ジブロック共重合体の高分子ミセル(組成物1〜2)は、従来のmPEG−PLA−OH高分子ミセル(組成物3)に比べて、遥かに長い血流滞留時間を示した。さらに、mPEG−PLA−トコフェロールミセル(組成物1)が、高分子中で最も長く血液中に循環した。この結果は、疎水性Bブロックのトコフェロールとコレステロール部分の疎水性増加により説明できる。
【0043】
その末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロールで置換された疎水性ブロックを有するブロック共重合体は、下記方法で製造することができる。1つの具体例では、好適なリンカー、例えばコハク酸、マロン酸、グルタル酸またはアジピン酸のようなジカルボン酸をトコフェロールやコレステロールのヒドロキシル基に導入して、カルボキシル化されたトコフェロールやコレステロールを疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基へ化学結合させる。
【0044】
1つの具体例として、米国特許第6,322,805号の方法に従って、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG;Mn=20,000)とポリラクチド(PLA;Mn=1,750)からなる両親媒性ブロック共重合体(mPEG−PLA)を定量し、真空ポンプを用いて120℃で水分を除去した後、アセトニトリルまたはメチレンクロリドに溶解する。ここへトコフェロールサクシネートまたはコレステロールサクシネートを添加し、開始剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と触媒として4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を定量して添加した後、室温で反応させる。mPEG−PLAの末端基−OHと疎水性化合物の−COOHの反応により生成するジシクロヘキシルウレア(DCU)によって、反応物は不透明になる。24時間後、グラスフィルタを用いてDCUを除去した後、塩酸水溶液を用いDMAPを抽出して除去する。このように精製された生成物溶液へ硫酸マグネシウム(MgSO4)を加えて残留する水分を除去した後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈澱させて、トコフェロールスクシニルまたはコレステロールスクシニルが結合した両親媒性ブロック共重合体であるmPEG−PLA−トコフェロールまたはmPEG−PLA−コレステロール(ここで、トコフェロールやコレステロールはコハク酸ジエステルによりPLAへ結合される)を得る。沈澱した高分子生成物は、濾過した後に真空乾燥して白色粒子形態として得られる。
【0045】
他の製造方法としては、触媒無を用いることなくオキサリルクロリドでカルボキシル化された疎水性化合物を活性化し、mPEG−PLAの末端に結合させる方法がある。即ち、トコフェロール(またはコレステロール)サクシネートをオキサリルクロリドと反応させた後、過剰のオキサリルクロリドを室温で真空除去する。ここへ、mPEG−PLAを定量して添加し、100℃で12時間反応させ、mPEG−PLA−トコフェロール(またはコレステロール)を得る。合成された高分子をアセトニトリルまたはメチレンクロリドに溶解した後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈殿させて濾過する。
【0046】
上記2種類の製造工程において、トコフェロール(またはコレステロール)サクシネートの代わりに、トコフェロール(またはコレステロール)マロネート、トコフェロール(またはコレステロール)グルタレートまたはトコフェロール(またはコレステロール)アジペートなどを使用することができる。
【0047】
他の方法として、結合剤としてジクロライド化合物を使用し、トコフェロールまたはコレステロールをmPEG−PLAの末端に結合させる方法がある。具体的には、トコフェロールまたはコレステロールを定量し、真空ポンプを利用して50℃で水分を除去する。ここへ過量の結合剤を添加し、12時間反応させる。反応終了後、過量添加された結合剤を100℃で真空除去する。ここに定量したmPEG−PLAを添加し、100℃で12時間反応させる。合成された高分子をメチレンクロリドに溶かした後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈澱させることによって、トコフェロールまたはコレステロールがPLAにコハク酸ジエステルを介して結合した両親媒性ブロック共重合体、即ち、mPEG−PLA−トコフェロールまたはmPEG−PLA−コレステロールを得る。沈澱させた高分子生成物は、濾過した後に真空乾燥して高分子として白色粒子形態として得られる。この反応で使用可能な結合剤は、スクシニルクロリド、オキサリルクロリド、マロニルクロリド、グルタリルクロリドまたはアジポイルクロリドなどのようなジクロライド化合物から選択して使用することができる。
【0048】
上述のように合成したブロック共重合体は、水難溶性薬剤と混合して高分子ミセル組成物を得ることができる。即ち、ブロック共重合体(10〜200mg)と水難溶性薬剤(1〜50mg)をアセトニトリルまたはメチレンクロリドなどの有機溶媒に溶解する。溶液を攪拌して混合した後、真空条件下60℃で乾燥してマトリックスを調製する。水難溶性薬剤と高分子のマトリックスを蒸留水に溶解した後、凍結乾燥して水難溶性薬剤が導入された高分子ミセル組成物を得る。上記高分子ミセル組成物は、生理食塩水のような水溶液に希釈して注射剤として使用することができる。
【0049】
「水難溶性薬剤」または「疎水性薬剤」の語は、水に対する溶解度が33.3mg/mL以下のあらゆる薬剤または生物活性薬剤を示す。これには、抗癌剤、抗生物質、抗炎症剤、麻酔剤、ホルモン、抗高血圧剤、及び糖尿病治療剤、抗高脂血症剤、抗ウィルス剤、パーキンソン病治療剤、抗痴呆制、抗嘔吐剤、免疫抑制剤、抗潰瘍剤、緩下剤及び抗マラリア剤が含まれる。具体的な水難溶性薬剤には、パクリタキセル、ケトコナゾール、イトラコナゾール、サイクロスポリン、シサプリド、アセトアミノフェン、アスピリン、アセチルサリチル酸、インドメタシン、ナプロキセン、ワルファリン、パパベリン、チアベンダゾール、ミコナゾール、シナリジン、ドキソルビシン、オメプラゾール、コレカルシフェロル、メルファラン、ニフェジピン、ジゴキシン、安息香酸トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、アズスレオナム、イブプロフェン、フェノキシメチルペニシリン、サリドマイド、メチルテストステロン、プロクロルペラジン、ヒドロコルチゾン、ジデオキシプリンヌクレオシド、ビタミンD2、スルホンアミド、スルホニルウレア、パラアミノ安息香酸、メラトニン、ベンジルペニシリン、クロランブシル、ジアゼピン、ジギトキシン、ヒドロコルチゾンブチラート、メトロニダゾール安息香酸塩、トルブタミド、プロスタグランジン、フルドロコルチゾン、グリゼオフルビン、硝酸ミコナゾール、ロイコトリエンB4抑制剤、プロプラノロール、テオフィリン、フルルビプロフェン、安息香酸ナトリウム、安息香酸、リボフラビン、ベンゾジアゼピン、フェノバルビタール、グリブリド、スルファジアジン、スルファエチルチアヂアゾール、ジクロフェナクナトリウム、フェニトイン、チオリダジン塩酸塩、ブロピリミン、ヒドロクロロチアジド、フルコナゾールなどが含まれる。
【0050】
上記水難溶性薬剤は、0.1〜20.0:80.0〜99.9のw/w比でブロック共重合体に添加され、本発明の両親媒性ブロック共重合体から形成されたミセル内部に適宜包含される。
【0051】
他の実施様態として、本発明は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している用高分子組成物を提供する。
【0052】
親水性Aブロック及び疎水性Bブロックを含み、疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基が、疎水性に優れたトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体については、上述した通りである。
【0053】
本発明のポリ乳酸誘導体の1つ以上の末端は、少なくとも一つのカルボン酸またはカルボン酸と共有結合する。本発明のポリ乳酸誘導体の結合していない末端は、ヒドロキシ、アセトキシ、ベンゾイルオキシ、デカノイルオキシ及びパルミトイルオキシ基よりなる群から選択された官能基と共有結合できる。カルボン酸またはカルボン酸は、pH4以上の水溶液中で親水性基として作用し、ポリ乳酸誘導体が高分子ミセルを形成できるようにする。本発明のポリ乳酸誘導体が水溶液に溶解される際、高分子ミセルを形成するためには、ポリ乳酸誘導体に存在する親水性及び疎水性成分が均衡を保たなければ為らない。従って、本発明のポリ乳酸誘導体の数平均分子量は、好ましくは50〜50,000ダルトンの範囲である。ポリ乳酸誘導体の分子量は、製造工程中の反応温度や時間などを制御することにより調節することができる。
【0054】
ポリ乳酸誘導体は、好ましくは下記一般式(I)で示される。
RO−CHZ−[A]n−[B]m−COOM (I)
式中、Aは−COO−CHZ−であり;Bは−COO−CHY−、−COO−CH2CH2CH2CH2CH2−または−COO−CH2CH2OCH2であり;Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル、若しくはエチル基であり;ZとYはそれぞれ水素原子、またはメチル若しくはフェニル基であり;MはH、Na、K、またはLiであり;nは1〜30の整数であり;及びmは0〜20の整数である。
【0055】
本発明のポリ乳酸誘導体の1つ以上の末端は、カルボキシル基またはそのアルカリ金属塩、好ましくはそのアルカリ金属塩と共有結合する。ポリ乳酸誘導体を形成するアルカリ金属塩の金属イオンは一価であり、例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムである。金属イオン塩形態のポリ乳酸誘導体は常温で固体であり、比較的中性のpHを示すことから非常に安定である。
【0056】
より好ましくは、ポリ乳酸誘導体は一般式(II)で示される。
RO−CHZ−[COO−CHX]p−[COO−CHY’]q−COO−CHZ−COOM (II)
式中、Xはメチル基であり;Y’は水素原子またはフェニル基であり;pは0〜25の整数;qは0〜25の整数であり(但し、p+qは5〜25の整数である。);R、Z及びMは一般式(I)の定義と同義である。
【0057】
さらに、下記一般式(III)〜(V)のポリ乳酸誘導体が、本発明において適している。
【0058】
RO−PAD−COO−W−M’ (III)
式中、W−M’は
【0059】
【化2】
であり;PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものであり;R及びMは一般式(I)の定義と同義である。
【0060】
S−O−PAD−COO−Q (IV)
式中、Sは
【0061】
【化3】
であり[ここで、Lは−NR1−または−O−であり(R1は水素原子またはC1-10アルキルである。)、aは0〜4の整数であり、 bは1〜10の整数であり、Mは一般式(I)の定義と同義である。];QはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、またはCH2C6H5であり;及びPADは一般式(III)の定義と同義である。
【0062】
【化4】
【0063】
式中、R’は−PAD−O−C(O)−CH2CH2−C(O)−OMであり;Mは一般式(I)の定義と同義であり;PADは一般式(III)の定義と同義であり;aは1〜4の整数である。例えば、a=1のとき、3−armPLA−COONa;a=2のとき、4−armPLA−COONa;a=3のとき、5−armPLA−COONa;a=4のとき、6−armPLA−COONaである。
【0064】
高分子(一般式(V))合成のための開始剤としては、グリセロール、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリトリトール、キシリトール、アドニトール、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。
【0065】
本発明の高分子組成物は、両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸誘導体の全重量に対して、0.1〜99.9重量%の両親媒性ブロック共重合体と0.1〜99.9重量%のポリ乳酸誘導体を含有することができる。好ましくは、本発明の高分子組成物は、20〜95重量%の両親媒性ブロック共重合体と5〜80重量%のポリ乳酸誘導体を含有する。より好ましくは、本発明の高分子組成物は、50〜90重量%の両親媒性ブロック共重合体と10〜50重量%のポリ乳酸誘導体を含有する。
【0066】
本発明のポリ乳酸誘導体は、単独でpH4以上の水溶液中でミセルを形成できるが、高分子組成物は溶液のpHと関係がなく水溶液中でミセルを形成できる。生分解性高分子は通常10以上のpHで加水分解されるので、本発明の高分子組成物は、1〜10の範囲のpH、好ましくは4〜8の範囲のpHで使用できる。本発明の高分子組成物から製造されたミセルやナノ粒子の粒径は、高分子の分子量とポリ乳酸誘導体の両親媒性ブロック共重合体に対する比率に従って1〜400nm、より好ましくは5〜200nmの範囲に調節することができる。
【0067】
図1〜3に示されるように、ポリ乳酸誘導体または両親媒性ブロック共重合体単独及びこれらの混合物は、水溶液中でミセルを形成できるが、両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸誘導体の高分子組成物は、ポリ乳酸誘導体や両親媒性ブロック共重合体単独で形成されたミセルに比べて、水溶液中で形成されたミセルの薬剤封入効率と安定性が高い。図において、1は水難溶性薬剤を示し;10はモノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド疎水性部分(mPEG−PLA−疎水性部分)を示し;11はモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を示し;12はポリラクチド疎水性部分(PLA−疎水性部分)を示し;20はD,L−ポリ(乳酸)のナトリウム塩を示し;21はD,L−ポリ乳酸を示し;22はカルボン酸ナトリウムを示す。しかし、本発明の高分子組成物では、ポリ乳酸誘導体または両親媒性ブロック共重合体単独から形成されたミセルと比較して、水溶液中で形成されたミセルの薬剤封入効率と安定性が顕著に向上されている。
【0068】
本発明における他の実施様態として、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体と、ポリ乳酸誘導体を含有し、当該末端ヒドロキシル基が疎水性のトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しており、当該カルボキシ基が二価または三価金属イオンで固定された高分子組成物を提供する。
【0069】
金属イオンで固定された高分子組成物は、二価または三価金属イオンを、両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体の高分子組成物に加えて製造できる。高分子ミセルやナノ粒子は、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基を結合または固定するために添加する二価または三価金属イオンの量を変えることにより形成できる。
【0070】
二価または三価金属イオンは、好ましくは、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cr3+、Fe3+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+及びAl3+よりなる群から選択されるものである。二価または三価金属イオンは、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、リン酸塩または水酸化物の形態、好ましくは、CaCl2、MgCl2、ZnCl2、AlCl3、FeCl3、CaCO3、MgCO3、Ca3(PO4)2、Mg3(PO4)2、AlPO4、MgSO4、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Al(OH)3、またはZn(OH)2の形態で、両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体の高分子組成物に添加し得る。
【0071】
図4と図5に示されるように、ポリ乳酸誘導体のカルボキシル末端の一価金属イオンが二価または三価金属イオンで置換され、金属イオン結合を形成すると、形成されたミセルやナノ粒子の安定性が向上し得る。
【0072】
高分子ミセルやナノ粒子は、金属イオンの添加当量を変えることにより製造することができる。具体的には、二価金属イオンをポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基に対して0.5当量以下で添加すれば、末端カルボキシル基と結合を形成できる金属イオンが不十分となるため、高分子ミセルが形成される。二価金属イオンを0.5当量以上に添加すれば、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基と結合を形成できる金属イオンが十分となるため、高分子ミセルを堅固に固定することによって、ナノ粒子が形成される。
【0073】
また、高分子ミセルまたはナノ粒子からの薬剤放出速度は、金属イオンの添加当量を変えることにより調節することができる。金属イオンがポリ乳酸誘導体のカルボキシル基に対して1当量以下で存在する場合、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基に結合できる数が減少して薬剤放出速度が増加する。金属イオンが1当量以上に存在すれば、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基に結合できる数が増加して、薬剤放出速度が減少する。従って、血中で薬剤放出速度を増加させるためには、金属イオンを少ない当量で使用し、薬剤放出速度を減少させるためには、金属イオンを多い当量で使用する。
【0074】
本発明に係る金属イオンで固定された高分子組成物は、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基の当量に対して、5〜95重量%の両親媒性ブロック共重合体、5〜95重量%のポリ乳酸誘導体、及び0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含有し得る。好ましくは、20〜80重量%の両親媒性ブロック共重合体、20〜80重量%のポリ乳酸誘導体、及び0.1〜5当量の二価または三価金属イオンを含有する。より好ましくは、20〜60重量%の両親媒性ブロック共重合体、40〜80重量%のポリ乳酸誘導体、及び0.2〜2当量の二価または三価金属イオンを含有する。
【0075】
親水性ブロック及び末端ヒドロキシル基が疎水性の高いトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている疎水性ブロックを含む両親媒性ブロック共重合体と、少なくとも1つのポリ乳酸末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しているポリ乳酸誘導体と、金属イオンで固定化された高分子組成物を含有する高分子組成物は、水性環境で安定な高分子ミセルやナノ粒子を形成することができる。従って、本発明は、本発明の高分子組成物から形成された高分子ミセルやナノ粒子と、それらに封入された疎水性薬剤を含む医薬組成物に関するものである。上記組成物は、投与後において、血流中で有効薬剤濃度保持時間を延長させる。本発明の医薬組成物は、疎水性薬剤の血漿濃度を増加させるものであり、様々な薬剤学的剤形で使用できる。
【0076】
図3〜図5に示されるように、水難溶性薬剤を両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体の高分子組成物と混合し、その中に薬剤を含有する高分子ミセルを形成する。二価または三価金属イオンを加えてポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基と金属イオン結合を形成させることによって、安定性がより増した薬剤含有高分子ミセル及びナノ粒子を形成することができる。
【0077】
水難溶性薬剤の含量は、好ましくは、両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体及び疎水性薬剤を含む医薬組成物全重量に対して、0.1〜30重量%範囲内である。薬剤含有高分子ミセルまたはナノ粒子の大きさは、高分子の分子量、及びポリ乳酸誘導体に対する両親媒性ブロック共重合体の比率に従って5〜400nm、好ましくは10〜200nmに調節することができる。例えば、表7に示すように、金属イオンで固定された高分子ミセルまたはナノ粒子は、20〜40nmの平均大きさを持つ。この大きさの範囲のミセルは、注射剤と滅菌濾過に適する。
【0078】
本発明に係る金属イオン−無処理高分子組成物または金属イオン−固定化高分子ミセルまたはナノ粒子は、水溶液中で安定であり、特に金属イオンで固定された場合の安定性がより高い。表9に示すように、本発明の薬剤含有高分子ミセル組成物(組成物4及び5)は力学的に安定で、金属イオンで固定されたパクリタキセル含有高分子ミセル組成物が、さらに安定していることが分かる。金属イオンの添加によって、本発明の高分子ミセル中の薬剤滞留時間を有意に増加せることができる。これは、ポリ乳酸誘導体のカルボキシレートアニオンの架橋的静電相互作用が、疎水性コアの堅固性の増加を誘導するためである。
【0079】
さらに、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基が置換された疎水性部位(トコフェロールコハク酸)を有する両親媒性ジブロック共重合体の金属イオン固定化高分子ミセル(組成物4)が、従来のmPEG‐PLA‐OH(組成物7)に比べて力学的に安定であった。この結果は、両親媒性高分子中の疎水性Bブロックの疎水性を増加すれば、両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間のさらに強い相互作用によって、一層安定なミセルを形成できることを示す。
【0080】
表11及び図9に示すように、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基が置換された疎水性部位(トコフェロールコハク酸)を有する両親媒性ジブロック共重合体の金属イオン固定化高分子ミセル(組成物8)は、従来の両親媒性ジブロック共重合体の金属イオン固定化高分子ミセル(組成物9)より長い血流滞留時間を有する。この結果は、実施例36で実証されているように、両親媒性高分子の疎水性Bブロックの疎水性増加が両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間の相互作用をより強化し、さらに安定なミセルを形成していることを示す。
【0081】
図10〜13に示すように、薬剤が金属イオンで固定された高分子組成物に封入された組成物は、血流中で薬剤滞留時間が増加され、市販製剤に比べて長時間の間有効血漿薬剤濃度を維持する。
【0082】
また、本発明は、抗癌活性を示す医薬組成物を提供する。好ましい一様態として、本発明は、抗癌剤として有用な医薬組成物であって、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物を提供する。上記ポリ乳酸誘導体のカルボキシ末端基は、さらに、二価または三価金属イオンで固定することができる。
【0083】
抗癌剤としては、これらに限定されないが、パクリタキセル及びドセタキセルなどのタキソイド類、タキシン類及びタキサン類;ポドフィロトキシン類;カンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、カンプトテシン−11、トポデカンなどのカンプトテシン類;ドキソルビシン、エピルビシン、アクラルビシン、イダルビシン、ピラルビシンなどのアントラサイクリン類;ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビントリポール、ビンサルチンなどのビンカアルカロイド類;エポシロン、プラチナ、エトポシド、メトトレキサート、カルムスチン、5−フルオロウラシル、レチノイン酸、レチノール、タモキシフェン、マイトマイシンB、マイトマイシンC、アモナフィド、イルージンSなどが挙げられる。
【0084】
本発明の高分子ミセル医薬組成物は、医薬的効能が大きく向上されている。具体例として図14〜21に示すように、パクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセルは、高い癌増殖抑制率を示し、抗癌剤耐性癌細胞の増殖も抑制する(図22及び図23)。
【0085】
癌の化学療法において、タキソール(登録商標)(またはパクリタキセル)やドキソルビシンなどの薬剤が広く使われてきた。これら抗癌剤は化学療法で効果的且つ有用であるが、癌細胞で抗癌剤耐性癌細胞が発現することにより薬剤の効能が低下する。P−グリコプロテイン(P−gp)の過剰発現とb−チューブリンの変形を含むタキソール(登録商標)耐性の様々なメカニズムとして特定されている。それらの内、P−gpの過剰発現が、タキソール(登録商標)耐性を含む多重薬剤耐性現象を説明するのに有力なメカニズムである。抗癌剤耐性癌細胞は正常細胞より高いIC50(薬剤の50%細胞抑制濃度)を示すので、抗癌剤を用いた化学療法では、腫瘍細胞での薬剤濃度をより高くしなければならない。従って、癌に対する有効性を保障するためには、薬剤が腫瘍組織へ特異的に送達されなければならない。図10に示すように、金属イオンで固定された高分子ミセルは、通常的な製剤に比べて長い循環性を示した。従って、通常のものより増加された透過滞留(EPR)効果によって、腫瘍組織により選択的に蓄積された。本発明では、抗癌剤耐性癌に対する金属イオン固定化高分子ミセルの有効性を立証するために、タキソール(登録商標)耐性癌に対する生体内の抗癌活性に関する動物モデルを確立した。マウスに接種した癌細胞をタキソール(登録商標)に反復的に曝すと、タキソール(登録商標)で前処理された癌細胞に対する薬剤のIC50が、元来の癌細胞に対する薬剤のものに比べて有意に増加した。この動物モデルにおいて、金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)処理群が、クレモフォアEL製剤(組成物11)−処理群に比べてより高い抑制率を示した。このことは、図22及び表22に示すように、おそらく金属イオン固定化高分子ミセルに導入された薬剤の有効濃度の滞留時間がより長くなったことによる、また、ドキソルビシン耐性癌動物でも同じ効果を得ることができた(図23)。
【0086】
よって、本発明は、薬剤耐性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物を提供する。
【0087】
さらに本発明は、上記医薬組成物を製造する方法を含む。具体的には、図3及び5に示すように、ポリ乳酸誘導体、両親媒性ブロック共重合体、及び水難溶性薬剤を一定の割合で、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム、酢酸及びジオキサンよりなる群より選択される1以上の有機溶媒に溶解する。当該有機溶媒を除去することによって、水難溶性薬剤と高分子との均一混合物を製造する。水難溶性薬剤と本発明の高分子組成物との均一した混合物を、0〜80℃でpH4〜8の水溶液に加え、水難溶性薬剤含有混合高分子ミセル水溶液を製造する。その後、当該薬剤含有高分子ミセル水溶液を凍結乾燥して、固体形態の高分子ミセル組成物を製造する。
【0088】
0.001〜2Mの二価または三価金属イオンを含有する水溶液を、水難溶性薬剤含有混合高分子ミセル水溶液に加えて、金属イオンで固定された高分子ミセルを製造する。当該混合物を常温で0.1〜1時間ゆっくり攪拌した後、凍結乾燥することによって、固体形態の金属イオンで固定された高分子ミセルまたはナノ粒子組成物を製造する。
【0089】
水難溶性薬剤が封入され溶解された本発明の高分子ミセルまたはナノ粒子は、経口または非経口的に投与することができる。ミセルが分解されつつ、薬剤はミセルの疎水性コアから放出され、薬理効果を示す。特に、金属イオンで固定された高分子ミセルまたはナノ粒子は、長時間血流内に存在し、標的病巣に蓄積される。
【0090】
非経口送達のために、薬剤は、静脈内、筋肉内、腹腔内、経鼻、直腸内、眼球内、または肺内に投与することができる。経口送達のために、薬剤を本発明の高分子ミセルと混合した後、錠剤、カプセル、または水溶液の形態で投与する。
【0091】
本発明で使われる高分子ミセルまたはナノ粒子の容量は、患者の症状、年齢及び体重などの様々な条件に応じて広い範囲にわたって変更できる。
【0092】
下記実施例は、本発明をどのように実施するかを、当業者がより明確に理解できるようにしたものである。本発明を好ましい具体例で説明するが、下記は本発明の範囲を制限するものではない。本発明の他の側面は、本発明が属する技術分野の当業者に自明であろう。
【実施例】
【0093】
製造例1 D,L−ポリ乳酸(PLA−COOH)の合成1
100gのD,L−乳酸を250mLの三口丸底フラスコへ挿入した。フラスコに攪拌機を取り付け、油浴で80℃ に加熱した。真空アスピレーターで25mmHgに減圧することにより過剰な水分を除去しつつ、反応を1時間行なった。その後、25mmHgの減圧下、反応を150℃で6時間行なった。生成した産物を1Lの蒸留水に加え、高分子を沈殿させた。次いで、沈殿した高分子を蒸留水に加えることによって、pH4以下の水溶液に溶ける低分子量高分子を除去した。その後、沈殿した高分子を1Lの蒸留水に加え、炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて水溶液のpHを6〜8に調節して高分子を溶解させた。水に不溶の高分子を遠心分離または濾過により分離除去した。1N塩酸を滴下して、高分子を水溶液中で沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で2回洗浄し、分離し、減圧下に乾燥して粘性の高い液体(78gのD,L−ポリ乳酸、収率:78%)を得た。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は540ダルトンであった。
【0094】
製造例2〜4 D,L−ポリ乳酸(PLA−COOH)の合成2
反応温度、圧力、時間を表1に示すようにした以外は製造例1と同様の手段によって、D,L−ポリ乳酸を得た。上記製造例1〜4から合成されたD,L−ポリ乳酸の数平均分子量と収率を、下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
製造例5 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成1
55gのD,L−乳酸(0.6モル)と45gのグリコール酸(0.6モル)を250mL三口丸底フラスコへ挿入した。10mmHgの減圧下、150℃で12時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0097】
製造例6 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成2
73gのD,L−乳酸(0.8モル)と27gのグリコール酸(0.35モル)を250mL三口丸底フラスコに挿入した。10mmHgの減圧下、160℃で12時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0098】
製造例7 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成3
91gのD,L−乳酸(1.0モル)と9gのグリコール酸(0.12モル)を250mL三口丸底フラスコに挿入した。10mmHgの減圧下、160℃で12時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0099】
製造例8 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成4
73gのD,L−乳酸(0.8モル)と27gのグリコール酸(0.35モル)を250mL三口丸底フラスコに挿入した。5mmHgの減圧下、180℃で24時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0100】
上記製造例5〜8で合成された共重合体を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
製造例9 D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体(PLMA−COOH)の合成
75gのD,L−乳酸(0.83モル)と25gのD,L−マンデル酸(0.16モル)を、250mL三口丸底フラスコに挿入した。10〜20mmHgの減圧下、180℃で5時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。54g(収率:54%)のD,L−乳酸とマンデル酸の共重合体を得た。D,L−乳酸とマンデル酸のモル比は85/15であった。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は1,096ダルトンであった。
【0103】
製造例10 アセトキシD,L−ポリ乳酸誘導体(AcO−PLA−COOH)の合成
製造例2で合成した50gのD,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)と、20mLのクロロ酢酸を250mL丸底フラスコに挿入した。フラスコに冷却器を取り付けて、反応混合物を窒素気流下に4時間還流した。過量のクロロ酢酸を蒸留で除去した後、反応産物を氷と水の混合物に加えた。全混合物をゆっくり攪拌することによって、高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を分離し、蒸留水で2回洗浄した後、無水アセトンに溶解した。無水硫酸マグネシウムを加えて過剰の水分を除去した。得られた産物を濾過して硫酸マグネシウムを除去した。アセトンを真空エバポレーターで除去することによって、液体のアセトキシD,L−ポリ乳酸(46g、収率:92%)を得た。1H−NMRによって、アセトキシ基が2.02ppmで単一ピークとして確認された。
【0104】
製造例11 パルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸誘導体(PalmO−PLA−COOH)の合成
製造例2で合成した20gのD,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)を、250mL丸底フラスコに挿入した。反応物を、120度の油浴で真空下に完全に脱水した。油浴を50℃に冷却し、50mLのアセトンを加えて高分子を完全に溶解した。5mLのクロロパルミチン酸を加えて、窒素下、50℃で10時間反応を行なった。反応産物を過量のヘキサンで洗浄し、残っている反応物を除去した。その後、産物をアセトンに溶解し、溶液を氷と水の混合物に加えた。全混合物をゆっくり攪拌することによって、オリゴマーを沈殿させた。オリゴマーを分離し、蒸留水で2回洗浄した後、無水アセトンに溶解した。無水硫酸マグネシウムを溶液に加え、過剰の水分を除去した。得られた産物を濾過し、硫酸マグネシウムを除去した。アセトンを真空エバポレーターで除去することによって、パルミトイルオキシD,L−ポリ乳酸誘導体(19.1g、収率:96%)を得た。1H−NMRによって、パルミトイル基が0.88、1.3及び2.38ppmのピークとして確認された。
【0105】
製造例12 3armポリ乳酸(3arm PLA−COOH)の合成
1gのグリセロール(0.011mol)を100mL三口丸底フラスコに挿入した。フラスコに攪拌機を取り付けて、油浴で80℃に加熱した。真空アスピレーターにより25mmHgに減圧して、反応を30分間行なうことによって、過剰の水分を除去した。反応触媒であるオクチル酸スズ(Tin(Oct)2)をトルエンに溶解し、グリセロールに加えた。反応混合物を30分間攪拌し、110℃で1時間、圧力を1mmHgに減圧することによって、触媒を溶解した溶媒(トルエン)を除去した。精製されたラクチド(35.8、0.249mol;10wt%)を加え、25mmHgの減圧下、混合物を130℃で6時間加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、0.2N NaHCO3水溶液を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で3〜4回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(3arm PLA−OH)を得た。
【0106】
100gの3arm PLA−OH(0.033モル)を100mL一口丸底フラスコに挿入し。真空アスピレーターで25mmHgに減圧しながら、反応を30分間行なって過剰の水分を除去した。19.8gの無水コハク酸(0.198mol)を加え、混合物を125℃で6時間加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、蒸留水を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を、60℃で0.2N NaHCO3水溶液に溶解した。溶けない高分子を濾過で除去した。2N HClを滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で5〜6回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(3arm PLA−COOH)を得た。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は3,000ダルトンであった。
【0107】
製造例13 5armポリ乳酸(5arm PLA−COOH)の合成
1gのキシリトール(0.0066mol)を100mL三口丸底フラスコに挿入した。フラスコに攪拌機を取り付けて、油浴で80℃に加熱した。真空アスピレーターで25mmHgに減圧し、反応を30分間行なうことによって、過剰の水分を除去した。反応触媒であるオクチル酸スズ(Tin(Oct)2)をトルエンに溶解し、グリセロールに加えた。反応混合物を30分間攪拌し、反応混合物を30分間攪拌し、110℃で1時間、圧力を1mmHgに減圧することによって、触媒を溶解した溶媒(トルエン)を除去した。精製されたラクチド(31.7、0.151モル;10wt%)を加え、混合物を6時間、25mmHgの減圧下に130℃に加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、0.2N NaHCO3水溶液を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で3〜4回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(5arm PLA−OH)を得た。
【0108】
100gの5arm PLA−OH(0.033mol)を100mL一口丸底フラスコに挿入した。真空アスピレーターで25mmHgに減圧し、反応を30分間行なうことによって、過剰の水分を除去した。33.0gの無水コハク酸(0.33mol)を加え、混合物を6時間125℃に加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、蒸留水を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を0.2N NaHCO3水溶液に60℃で溶解した。溶けない高分子を濾過で除去した。2N HCl水溶液を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で5〜6回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(3arm PLA−COOH)を得た。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は3,000ダルトンであった。
【0109】
製造例14 ポリ乳酸ナトリウム塩(PLA−COONa)の合成1
製造例1で合成したD,L−ポリ乳酸(Mn:540ダルトン)をアセトンに溶解した。溶液を丸底フラスコに挿入し、フラスコに攪拌機を取り付けた。溶液を室温でゆっくり攪拌し、pH7になるように炭酸水素ナトリウム溶液(1N)をゆっくり加えた。無水硫酸マグネシウムを加えて過剰の水分を除去した。得られた混合物を濾過し、アセトンを溶媒エバポレーターで留去した。白色固体が得られた。得られた固体を無水アセトンに溶解し、溶液を濾過して不溶部分を除去した。アセトンを留去することによって、D,L−ポリ乳酸のナトリウム塩(収率:96%)を白色固体として得た。 図2に示されるように、1H−NMRによってカルボン酸に隣接した水素ピークを4.88ppmで観察した。また、高分子は水に溶かした時、6.5〜7.5のpHを示した。
【0110】
製造例15 ポリ乳酸ナトリウム塩(PLA−COONa)の合成2
製造例2で合成したD,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)と炭酸ナトリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりポリ乳酸のナトリウム塩(収率:95%)を合成した。
【0111】
製造例16 アセトキシ−D,L−ポリ乳酸ナトリウム塩(AcO−PLA−COONa)の合成
製造例10で合成したアセトキシ−D,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)と炭酸ナトリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりアセトキシ−D,L−ポリ乳酸のナトリウム塩(収率:95%)を合成した。
【0112】
製造例17 パルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸ナトリウム塩(PalmO−PLA−COONa)の合成1
製造例11で合成したパルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)をアセトン水溶液(28.6v/v%)に完全に溶解した。溶液を丸底フラスコに挿入し、フラスコに攪拌機を取り付けた。溶液を常温でゆっくり攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(1N)を加えて中和した。溶液を室温でゆっくり攪拌し、炭酸水素ナトリウム(1N)をpH7になるまでゆっくり加えた。無水硫酸マグネシウムを加えて過剰の水分を除去した。得られた溶液を濾過し、アセトン溶液を溶媒エバポレーターで留去した。白色固体が得られた。得られた固体をアセトンに溶解し、溶液を濾過してアセトンに溶けない物質を除去した。アセトンを留去して、パルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸のナトリウム塩を白色固体として得た(収率:96%)。
【0113】
製造例18 ポリ乳酸カリウム塩(PLA−COOK)の合成
製造例3で合成したD,L−乳酸(Mn:1,550ダルトン)と炭酸水素カリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりポリ乳酸のカリウム塩(収率:98%)を合成した。
【0114】
製造例19 ポリ乳酸ナトリウム塩(PLA−COONa)の合成3
製造例4で合成したD,L−乳酸(Mn:2,100ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりポリ乳酸のナトリウム塩(収率:95%)を合成した。
【0115】
製造例20 D,L−乳酸とグリコール酸共重合体のナトリウム塩(PLGA−COONa)の合成1
製造例5で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:920ダルトン)と炭酸ナトリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸共重合体のナトリウム塩(収率:98%)を合成した。
【0116】
製造例21 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(PLGA−COONa)の合成2
製造例6で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:1,040ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(収率:93%)を合成した。
【0117】
製造例22 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のカリウム塩(PLGA−COOK)の合成
製造例7で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:1,180ダルトン)と炭酸カリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のカリウム塩(収率:92%)を合成した。
【0118】
製造例23 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(PLGA−COONa)の合成3
製造例8で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:1,650ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(収率:98%)を合成した。
【0119】
製造例24 D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体のナトリウム塩(PLMA−COONa)の合成
製造例9で合成したD,L−乳酸とマンデル酸の共重合体(Mn:1,096ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とマンデル酸の共重合体のナトリウム塩(収率:96%)を白色固体として合成した。
【0120】
製造例25 3armポリ乳酸のナトリウム塩(3arm PLA−COONa)の合成
製造例12で合成した3−arm D,L−乳酸の共重合体(Mn:3,000ダルトン)を用いたことを除いては、製造例14と同様の処理により3armポリ乳酸のナトリウム塩を白色固体として合成した。
【0121】
製造例26 5armポリ乳酸のナトリウム塩(5arm PLA−COONa)の合成
製造例13で合成した5−arm D,L−乳酸(Mn:3,000ダルトン)を用いたことを除いては、製造例14と同様の処理により5armポリ乳酸のナトリウム塩を白色固体として合成した。
【0122】
上記製造例14〜26で合成したポリ乳酸誘導体のカルボン酸塩を表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
製造例27 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(mPEG−PLA)ブロック共重合体(AB型)の重合
5gのモノメトキシポリエチレングリコール(Mn:2,000ダルトン)を100mL二口丸底フラスコに挿入し、混合物を2〜3時間、減圧(1mmHg)下に100℃ に加熱して脱水した。反応フラスコに乾燥窒素を充填し、反応触媒であるオクチル酸スズ(Sn(Oct)2)を注射器でラクチドの0.1wt%(5mg)に注入した。反応混合物を30分間攪拌し、110℃で1時間、1mmHgに減圧して触媒を溶解した溶媒(トルエン)を除去した。精製されたラクチド(5g)を加え、混合物を130℃で12時間加熱した。形成された高分子をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加えて高分子を沈殿させた。得られた高分子を真空オーブンで48時間乾燥した。得られたmPEG−PLAの数平均分子量は2,000〜1,765ダルトンであり1H−NMRによってAB型であることが確認された。
【0125】
製造例28 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとグリコリドの共重合体)(mPEG−PLGA)ブロック共重合体(AB型)の重合
mPEG−PLGAブロック共重合体を合成するために、製造例27と同様の処理によって、120℃で12時間、モノメトキシポリエチレングリコール(Mn:5,000ダルトン)を、触媒であるオクチル酸スズの存在下、ラクチド及びグリコリドと反応させた。得られたmPEG−PLGAの数平均分子量は5,000〜4,000ダルトンであり、1H−NMRによってAB型であることが確認された。
【0126】
製造例29 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとp−ジオキサン−2−オンの共重合体)(mPEG−PLDO)ブロック共重合体(ABタイプ)の重合
mPEG−PLDOブロック共重合体を合成するために、製造例27と同様の処理によって、110℃で12時間、モノメトキシポリエチレングリコール(Mn:12,000ダルトン)を、触媒であるオクチル酸スズの存在下、ラクチド及びp−ジオキサン−2−オンと反応させた。得られたmPEG−PLDOの数平均分子量は、12,000〜10,000ダルトンであり、1H−NMRによりAB型であることが確認された。
【0127】
製造例30 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(mPEG−PCL)ブロック共重合体(AB型)の重合
mPEG−PCLブロック共重合体を合成するために、製造例27と同様の処理によって、130℃で12時間、触媒であるオクチル酸スズの存在下、モノメトキシポリエチレングリコール(Mn:12,000ダルトン)をカプロラクトンと反応させた。得られたmPEG−PCLの数平均分子量は12,000−5,000ダルトンであり、1H−NMRによってAB型であることが確認された。
【0128】
上記製造例27〜30で合成されたブロック共重合体を下記表4に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
製造例31 モノメトキシポリエチレングリコール−モノメトキシポリエチレングリコール(PLA−mPEG−PLA)ブロック共重合体(BAB型)の重合
25gのメトキシポリエチレングリコール(分子量=2,000)と50gのD,L−ラクチドを用いたことを除いては、製造例27と同様の処理によって、PLA−mPEG−PLAを得た。PLA−mPEG−PLAの数平均分子量は1,765〜2,000〜1,765ダルトンであり、1H−NMRによってBAB型であることが確認された。
【0131】
実施例1 mPEG−PLA−コレステロールの重合1
a)コレステロールサクシネートの合成
7.6gのコレステロールと2.36gの無水コハク酸を、丸底フラスコ中で100mLの1,4−ジオキサンに溶解した。反応触媒である2.9gの4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を加え、当該混合物を室温で24時間攪拌した。当該反応混合物をHCl溶液に加えることによって、コレステロールサクシネート(9.1g;収率95%)を沈殿させた。
【0132】
b)mPEG−PLAとコレステロールサクシネートの結合
製造例27で合成した10gのmPEG−PLAと、1.55gのコレステロールサクシネート(高分子の1.2モル倍)を、丸底フラスコ中、50mLのアセトニトリルに溶解した。反応触媒として、0.76gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と0.045gの4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を加え、室温で24時間攪拌した。反応終了後、混合物をガラスフィルターにより濾過することによって、副生物であるシクロヘキシルカルボウレア(DCU)を除去した。残留した触媒は、塩酸で抽出して除去した。精製された生成物溶液にマグネシウム硫酸塩を加えることによって、残留水分を除去した後、再結晶のために混合物をn−ヘキサン/ジエチルエーテル(v/v=7/3)の混合溶媒へ加え、精製されたmPEG−PLA−コレステロール(10g;収率88.6%)を得た。そのNMRスペクトルを図6に示す。
【0133】
実施例2 mPEG−PLA−コレステロールの重合2
a)コレステロールサクシネートの合成
7.6gのコレステロールとスクシニルクロリド(コレステロールの2モル倍)をフラスコに入れ、50mLのアセトニトリルに溶解した。50℃で12時間反応することによって、コレステロールのヒドロキシル基にサクシネートを結合させた後、HCl中で沈殿させることによって、コレステロールサクシネート(8.2g;収率92%)を得た。
【0134】
b)mPEG−PLAとコレステロールサクシネートの結合
10gのmPEG−PLAと、実施例2a)で得られたコレステロールサクシネート(高分子の1.2モル倍)を用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、mPEG−PLA−コレステロール(9.52g;収率85%)を得た。
【0135】
実施例3〜5 mPEG−PLA−コレステロールの重合3〜5
マロニルクロリド(実施例3)、グルタリルクロリド(実施例4)及びアジポイルクロリド(実施例5)を高分子の2モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例2と同様にして、mPEG−PLA−コレステロールを得た。
【0136】
実施例6〜9 mPEG−PLA−トコフェロールの重合1〜4
8.5gのトコフェロールと、マロニルクロリド(実施例6)、スクシニルクロリド(実施例7)、グルタリルクロリド(実施例8)及びアジポイルクロリド(実施例9)を高分子の2モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例2と同様にして、mPEG−PLA−トコフェロールを得た。そのNMRスペクトルを図7(実施例7)に示す。
【0137】
実施例10 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとグリコリドの共重合体)トコフェロール(mPEG−PLGA−トコフェロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例28で合成した10gのmPEG−PLGAと1.767gのトコフェロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLGA−トコフェロール(10g;収率=87.5%)を得た。
【0138】
実施例11 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとグリコリドの共重合体)コレステロール(mPEG−PLGA−コレステロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例28で合成した10gのmPEG−PLGAと0.70gのコレステロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLGA−コレステロール(10g;収率=88.6%)を得た。
【0139】
実施例12 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとp−ジオキサン−2−オンの共重合体)トコフェロール(mPEG−PLDO−トコフェロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例29で合成した10gのmPEG−PLDOと0.314gのトコフェロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLDO−トコフェロール(10g;収率=87.5%)を得た。
【0140】
実施例13 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体)コレステロール(mPEG−PLDO−コレステロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例29で合成した10gのmPEG−PLDOと0.288gのコレステロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLDO−コレステロール(10g;収率=88.6%)を得た。
【0141】
実施例14 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトントコフェロール(mPEG−PCL−トコフェロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例30で合成した10gのmPEG−PCLと0.406gのトコフェロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PCL−トコフェロール(10g;収率=87.5%)を得た。
【0142】
実施例15 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトンコレステロール(mPEG−PCL−コレステロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例30で合成した10gのmPEG−PCLと0.372gのコレステロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PCL−コレステロール(10g;収率=88.6%)を得た。
【0143】
実施例16 mPEG−PLA−コレステロールの重合6
4gのコレステロールを定量し、真空ポンプを用いて50℃で水分を除去した。ここにスクシニルクロリド(3.0g;コレステロールの2.0モル倍)を添加し、12時間反応した。反応終了後、過剰のスクシニルクロリドを真空下100℃で除去した。ここにmPEG−PLA(36g;コレステロールの0.95モル倍)を添加し、12時間反応した。合成された高分子をメチレンクロリドに溶解した後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈澱することによって、コレステロール基が結合した両親媒性ブロック共重合体であるmPEG−PLA−コレステロールを得た。沈澱した高分子生成物(35g;収率88%)は、濾過した後に真空乾燥することによって、白色粒子としてで得た。
【0144】
実施例17〜20 mPEG−PLA−コレステロールの重合7〜10
オキサリルクロリド(実施例17)、マロニルクロリド(実施例18)、グルタリルクロリド(実施例19)及びアジポイルクロリド(実施例20)をコレステロールの2.0モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例16と同様にして、mPEG−PLA−コレステロールを得た。
【0145】
実施例21〜25 mPEG−PLA−トコフェロールの重合5〜9
4.3gのトコフェロールと、オキサリルクロリド(実施例21)、マロニルクロリド(実施例22)、スクシニルクロリド(実施例23)、グルタリルクロリド(実施例24)及びアジポイルクロリド(実施例25)をトコフェロールの2.0モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例16と同様にして、mPEG−PLA−トコフェロールを得た。
【0146】
実施例26 mPEG−PLA−コレステロールの重合11
コレステロールサクシネート(4.9g)とオキサリルクロリド(2.53g;コレステロールサクシネートの2モル倍)を定量し、50℃で6時間反応した。反応終了後、過剰のオキサリルクロリドを真空条件で除去した。ここに、mPEG−PLA(36g;コレステロールサクシネートの0.95モル倍)を定量して添加した。反応温度を100℃とし、12時間反応した。合成された高分子をメチレンクロリドに溶解した後、ヘキサン/ジエチルエーテル中で沈殿させ、濾過した。産生物を真空乾燥してmPEG−PLA−コレステロール(34.6g;収率91%)を得た。
【0147】
実施例27〜29 mPEG−PLA−コレステロールの重合12〜14
コレステロールマロネート(実施例27)、コレステロールグルタレート(実施例28)及びコレステロールアジペート(実施例29)をそれぞれ用いたことを除いては、実施例26と同様にして、mPEG−PLA−コレステロールを得た。
【0148】
実施例30〜33 mPEG−PLA−トコフェロールの重合10〜13
トコフェロールマロネート(実施例30)、トコフェロールサクシネート(実施例31)、トコフェロールグルタレート(実施例32)及びトコフェロールアジペート(実施例33)をそれぞれ用いたことを除いては、実施例26と同様にして、mPEG−PLA−トコフェロールを得た。
【0149】
実施例34 トコフェロール−PLA−PEG−PLA−トコフェロールの製造
製造例31で合成した10gのPLA−mPEG−PLAとトコフェロールサクシネート(高分子の2.4モル倍)を用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、トコフェロール−PLA−PEG−PLA−トコフェロール(収率=92.4%)を得た。
【0150】
実施例35 コレステロール−PLA−mPEG−PLA−コレステロールの製造
製造例31で合成した10gのPLA−mPEG−PLAを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、コレステロール−PLA−PEG−PLA−コレステロール(収率=94.2)を得た。
【0151】
実施例36 疎水性部位とコンジュゲートされた両親媒性ジブロック共重合体のパクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
パクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間に関する両親媒性ジブロック共重合体(mPEG−PLA、Mn2000−1765)の疎水性Bブロックにおける末端ヒドロキシル基に置換した疎水性部位の影響を評価するために、下記のように組成物を製造した。パクリタキセルと実施例1、7または製造例27の両親媒性ジブロック共重合体を1:99の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して透明な溶液を調製した。エタノールを真空エバポレーターで除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0152】
上記組成物と薬剤含量を表5に要約した。
【0153】
【表5】
【0154】
動物実験のために、体重250〜300gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物1〜3を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0155】
また、薬剤の血漿濃度を分析するために、0.1mLの血漿を蓋付きガラス管に挿入し、内部標準物質を含有する0.1mLのアセトニトリル溶液を加えた。10mLの酢酸エチルを上記溶液に加えて混合物を30秒間激しく混合した後、2,500rpmで10分間遠心分離した。全酢酸エチル層を取り試験管に移した後、有機溶媒を窒素気流下40℃で完全に留去した。そこへ0.1mLの40%(v/v)アセトニトリル溶液を加え、混合物を30秒間激しく攪拌した後、HPLCを行なった。HPLC条件は下記通りである。
注入容積:0.075mL
流速:1.0mL/分
波長:227nm
移動相:5分間24%アセトニトリル水溶液、16分間58%に増加、2分間70%に増加、4分間34%に減少して5分間保持
カラム:4.6×50nm(C18、Vydac、USA)。
【0156】
ミセルの大きさと薬剤血漿濃度の分析結果を、下記表6と図8に示した。
【0157】
【表6】
【0158】
表6と図8の通り、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性部位(トコフェロールコハク酸またはコレステロールコハク酸)が置換した両親媒性ジブロック共重合体の高分子ミセル(組成物1または2)は、従来のmPEG−PLA−OH高分子ミセル(組成物3)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。この結果は、両親媒性高分子にある疎水性Bブロックにおける疎水性の増加が、両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間の相互作用を強めることによって、より安定なミセルを形成することを示唆するものである。
【0159】
また、mPEG−PLA−トコフェロールミセル(組成物1)が、mPEG−PLA−コレステロールミセル(組成物2)に比べて、より長く血液中に循環していることが分かる。
【0160】
実施例37 イオンで固定された高分子ミセルの製造
ステップ1:D,L−PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体の高分子ミセルの製造
製造例15で得られた248.1mg(0.218mmol)のD,L−PLA−COONa(Mn:1,140)と、実施例7で得られた744.3mgのmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)を、5mLのエタノールに完全に溶解し、透明な溶液を得た。エタノールを除去して高分子組成物を得た。蒸留水(6.2mL)を加え、混合物を60℃で30分間攪拌して、高分子ミセル水溶液を製造した。
【0161】
段階2:二価金属イオンによる固定
無水塩化カルシウムの0.9M水溶液0.121mL(0.109mmol)をステップ1で製造した高分子ミセル水溶液に加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。動的光散乱(DLS)法によれば、測定粒径は25nmであった。
【0162】
実施例38 D,L−PLA−COONa、及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有ミセルの製造
ステップ1:パクリタキセル含有D,L−PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体の高分子ミセルの製造
製造例15で得られた248.1mg(0.218mmol)のD,L−PLA−COONa(Mn:1,140)、7.5mgのパクリタキセル、および実施例7で得られた744.3mgのmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)を、5mLのエタノールに完全に溶解して透明な溶液を得た。エタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(6.2mL)を加え、混合物を60℃で30分間攪拌することによって、パクリタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。
【0163】
ステップ2:二価金属イオンによる固定
無水塩化カルシウムの0.9M水溶液の0.121mL(0.109mmol)をステップ1で製造した高分子ミセル水溶液に加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。パクリタキセルの含量と溶解度をHPLCで測定し、粒径を動的光散乱(DLS)法により測定した。
【0164】
D,L−PLA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:29nm。
【0165】
実施例39 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のMg2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
製造例24で得られた248.1mg(0.226mmol)のD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)、7.5mgのパクリタキセル、実施例7で得られた744.3mgのmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.230mL(0.113mmol)の塩化マグネシウム6水和物(Mw:203.31)の0.5M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Mg2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:30nm。
【0166】
実施例40 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.226mmol)の製造例24で得られたD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)、7.5mgのパクリタキセル、744.3mgの実施例7で得られたmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.126mL(0.113mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:34nm。
【0167】
実施例41 D,L−PLA−COOK及びmPEG−PLA−コレステロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.160mmol)の製造例18で得られたD,L−PLA−COOK(Mn:1,550)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例1で得られたmPEG−PLA−コレステロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.089mL(0.080mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLA−COONa/mPEG−PLA−コレステロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:34nm。
【0168】
実施例42 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−コレステロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有の高分子ミセルの製造
248.1mg(0.226mmol)製造例24で得られたD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例1で得られたmPEG−PLA−コレステロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.126mL(0.113mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−コレステロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:34nm。
【0169】
実施例43 3arm PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.0827mmol)の製造例25で得られた3arm PLA−COONa(Mn:3,000)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例7で得られたmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.1377mL(0.124mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
3arm PLACOONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:29nm。
【0170】
実施例44 5arm PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル−含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.0827mmol)の製造例26で得られた5arm PLA−COONa(Mn:3,000)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例7で得られたmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.2295mL(0.207mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
5arm PLACOONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:29nm。
【0171】
実施例45 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のドキソルビシン含有高分子ミセルの製造
mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、D,L−PLMA−COONa(Mn:969)及びドキソルビシンHClを78.62:17.24:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水メタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてメタノールを除去して、ドキソルビシン含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌して、ドキソルビシンを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/4.56
ドキソルビシン含量:1.03wt%
粒径:35nm。
【0172】
実施例46 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のエピルビシン含有高分子ミセルの製造
mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、D,L−PLMA−COONa(Mn:969)及びエピルビシンHClを78.62:17.24:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水メタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてメタノールを除去し、エピルビシン含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、エピルビシンを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/4.56
エピルビシン含量:1.03wt%
粒径:30nm。
【0173】
実施例47 Ca2+固定化高分子ミセルの粒径
Ca2+で固定された高分子ミセルの粒径を測定するために、高分子ミセル組成物を下記のように製造した。
mPEG−PLA(Mn:2,000〜1,800)とD,L−PLMA−COONa(Mn:866、994、1,156、1,536)を1:1の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、高分子組成物を製造した。蒸留水を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。上記高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、pH7.4のPBS緩衝液を加え、混合物中の高分子が40mg/mLとなるように希釈した。0.22um薄膜フィルタで濾過した後、粒径を光子相関粒径分析器で測定した。
【0174】
【表7】
【0175】
表7の通り、Ca2+で固定された高分子ミセルの粒径は、平均20〜40nmであった。この粒径範囲のミセルは、注射剤と滅菌濾過に適する。D,L−PLMA−COONaの分子量が866から1536まで増加するにつれて、Ca2+処理された全ミセルと無処理のものにおいて、粒径は若干増加した。Ca2+で固定された高分子ミセルの粒径は、Ca2+無処理のミセルより約10nm大きい。
【0176】
実施例48 Ca2+で固定されたパクリタキセル−含有高分子ミセルの力学的安定性
ナノ粒子組成物の安定性を試験するために、高分子ミセル組成物を下記のように製造した。
【0177】
(組成物4) パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)を1:3:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を10分間60℃で攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0178】
(組成物5) パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)を1:3:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに加えて、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子組成物を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0179】
(組成物6) パクリタキセルとmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)を1:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターでエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(5mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0180】
(組成物7) パクリタキセル、mPEG−PLA(Mn:2,000〜1,765)及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)を1:3:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターでエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌してパクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を室温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0181】
【表8】
【0182】
pH7.4のPBS緩衝液を凍結乾燥組成物に加え、パクリタキセルの濃度が1.0mg/mLになるようにした。混合物を37℃で静置して、時間経過に伴うパクリタキセル濃度をHPLCによって測定した。その結果を表9に示す。
【0183】
【表9】
【0184】
表9の通り、Ca2+で固定されたパクリタキセル含有高分子ミセル組成物(組成物4)は、Ca2+無処理組成物(組成物5)に比べて力学的により安定であった。Ca2+を添加することによって、本発明の高分子ミセル中のパクリタキセルの保有を有意的に増加させることができた。これは、疎水性コアの堅固性増加を誘導できるD,L−PLACOO−とCa2+の架橋結合静電気的相互作用による。疎水性Bブロックの疎水性部位(トコフェロールコハク酸)が末端ヒドロキシル基に置換された両親媒性ジブロック共重合体のCa2+固定化高分子ミセル(組成物4)は、従来のmPEG−PLA−OHのCa2+固定化高分子ミセル(組成物7)に比べて、より長い滞留時間を示した。この結果は、両親媒性高分子における疎水性Bブロックの疎水性を増加させれば、両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間の相互作用強化によって、より安定なミセルを形成できることを示すものである。
【0185】
実施例49 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
両親媒性ジブロック共重合体(mPEG−PLA、Mn2000〜1765)における疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に置換された疎水性部位のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間に対する影響を評価するために、組成物を下記のように製造した。
【0186】
パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)またはmPEG−PLA−OH及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,004)を、74.25:24.75:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mL無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0187】
上記組成物と薬剤含量を表10に示す。
【0188】
【表10】
【0189】
動物実験のために、体重220〜270gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物8と9を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0190】
また、薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析し、薬剤血漿濃度分析結果を下表11と図9に示す。
【0191】
【表11】
【0192】
表11と図9に示されたように、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性部位(トコフェロールコハク酸)が置換した両親媒性ジブロック共重合体のCa2+固定化高分子ミセル(組成物8)は、従来のmPEG−PLA−OHのCa2+固定化高分子ミセル(組成物9)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。この結果は、実施例36で立証されたように、両親媒性高分子の疎水性Bブロックの疎水性増加が両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤との間の相互作用を強化することによって、より安定なミセルを形成することを示す。
【0193】
実施例50 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+で固定されたパクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0194】
(組成物10) Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル
パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,004)を99.25:33.08:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調整した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌し、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を室温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は34nmであった。
【0195】
(組成物11) パクリタキセル、クレモフォアEL、及び無水エタノール含有組成物
パクリタキセル(30mg)を、クレモフォアELと無水エタノールの混合溶液(50:50v/v)5mLに溶解して、透明な溶液を得た。この溶液を、細孔の大きさが200nmのフィルタで濾過した。
【0196】
(組成物12) パクリタキセル、ポリソルベート80(ツイーン80)、及び無水エタノール含有組成物
パクリタキセル(30mg)を、ポリソルベート80と無水エタノールの混合溶液(50:50v/v)5mLに溶解して、透明な溶液を得た。細孔の大きさが200nmのフィルタでこの溶液を濾過した。
【0197】
上記組成物及び薬剤含量を表12に要約した。
【0198】
【表12】
【0199】
動物実験のために、体重230〜250gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物10,11及び12を、5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0200】
また、薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表13と図10に示す。
【0201】
【表13】
【0202】
表13及び図10に示すように、Ca2+で固定された高分子ミセル(組成物10)は、別の界面活性剤を含有する注射剤(組成物11及び12)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物10)は、市販製剤であるタキソール(登録商標)(組成物11)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソール(登録商標)以上に、血流中において薬剤滞留時間を増大することができる。
【0203】
実施例51 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+で固定されたパクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0204】
(組成物13) Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル
パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及び5arm PLA−COONa(Mn:3,000)を99.25:33.08:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加えて混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液に5arm PLA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は32nmであった。
【0205】
(組成物11) パクリタキセル、クレモフォアEL及び無水エタノール含有組成物
パクリタキセル(30mg)をクレモフォアELと無水エタノールの混合溶液(50:50v/v)5mLに溶解して、透明な溶液を得た。溶液を、細孔の大きさが200nmのフィルタで濾過した。
【0206】
上記組成物と薬剤含量を表14に要約する。
【0207】
【表14】
【0208】
動物実験のために、体重230〜250gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物13と11を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0209】
薬剤の血漿濃度を、実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表15と図11に示す。
【0210】
【表15】
【0211】
表15及び図11に示すように、Ca2+固定化高分子ミセル(組成物13)は、別の界面活性剤を含有する注射剤(組成物11)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物13)は、市販製剤であるタキソール(登録商標)(組成物11)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソール(登録商標)以上に血流中における薬剤滞留時間を増大することができる。
【0212】
実施例52 Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を、別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0213】
(組成物14) Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセル
ドセタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及び3arm PLA−COONa(Mn:3,000)を99.25:33.08:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、ドセタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、ドセタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液に3arm−PLACOONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を室温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は30nmであった。
【0214】
(組成物15) ドセタキセル、ポリソルベート80(Tween80)及び無水エタノール含有組成物
ドセタキセル(20mg)とツイーン80(520mg)を、1.5mLの13%(v/v)エタノール水溶液に溶解し、透明な溶液を得た。細孔の大きさが200nmのフィルタで溶液を濾過した。
【0215】
上記組成物と薬剤含量を表16に要約する。
【0216】
【表16】
【0217】
動物実験のために、体重210〜240gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物14と15を10mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から5、15、30分及び1、2、3、6、8時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0218】
薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表17と図12に示す。
【0219】
【表17】
【0220】
表17及び図12に示すように、Ca2+固定化高分子ミセル(組成物14)は、ツイーン80を含有する注射剤(組成物15)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物14)は、市販製剤であるタキソテール(登録商標)(組成物15)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソテール(登録商標)以上に血流で薬剤滞留時間を増大することができる。
【0221】
実施例53 Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を、別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0222】
(組成物16) Ca2+固定化ドセタキセル-含有高分子ミセル
ドセタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及びD,L−PLA−COONa(Mn:1,700)を75.0:25.0:1.0の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、ドセタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、ドセタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLACOONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は32nmであった。
【0223】
(組成物15) ドセタキセル、ツイーン80及び13%エタノール含有組成物
ドセタキセル(20mg)とツイーン80(520mg)を1.5mLの13%(v/v)エタノール水溶液に溶解して、透明な溶液を得た。細孔の大きさが200nmのフィルタで溶液を濾過した。
【0224】
上記組成物と薬剤含量を表18に要約する。
【0225】
【表18】
【0226】
動物実験のために、体重230〜250gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物16と15を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0227】
薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表19と図13に示す。
【0228】
【表19】
【0229】
表19及び図13に示すように、Ca2+固定化高分子ミセル(組成物16)は、ツイーン80を含有する注射剤(組成物15)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物16)は、市販製剤であるタキソテール(登録商標)(組成物15)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソテール(登録商標)以上に血流中における薬剤滞留時間を増加することができる。
【0230】
実施例54 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの最大耐用量(maximum tolerated dose)
10群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、20.5±0.50g;雄性、8週齢、21.3±1.6g)へ、それぞれ16、20、25、30mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、1、2日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重の変化を30日にわたって毎日観察した。
【0231】
5群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、24.7±1.2g;雄性、8週齢、24.2±1.3g)へ、それぞれ20、25、30、35mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、2、4日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重変化を30日にわたって毎日観察した。
【0232】
4群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、22.5±0.8g;雄性、8週齢、24.3±1.6g)へ、それぞれ20、25、30mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、2、4、6日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重変化を30日にわたって毎日観察した。
【0233】
10群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、19.3±0.71g;雄性、8週齢、23.3±1.1g)へ、それぞれ25、28、30、35、39mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、4、8日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重変化を30日にわたって毎日観察した。
【0234】
MTDを、薬剤投与後から2週間以内に毒性による死やバイタルサインの顕著な変化を誘発しない範囲で、平均体重が対照群に比べて約10〜20%減少する容量として定義した。表20に示すように、各容量スケジュールでのMTDは、20〜30mg/kgの範囲であった。
【0235】
また、担体毒性実験を行なった。薬剤を含有しないCa2+固定化高分子ミセルを投与された動物は速かに成長し、食塩水を投与するか或いは注射しない動物に比べて、若干体重が増加した。これは、製剤のカロリー含量によるものである。
【0236】
【表20】
【0237】
実施例55 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの抗癌活性
細胞を液体窒素中に保存されたものから採取し、インビトロ細胞培養として確立した。細胞を集めた後、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、生存細胞数を測定した。細胞を約7×107細胞/mLの濃度で滅菌PBSに再懸濁した。健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、7×106ヒト癌細胞(MX−1、SKOV−3、MDAMB435S、HT29、PC−3、U373MG)を含有する0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。癌が一定の大きさに達した後、3回異種移植して3〜4mmの異種移植片を形成した。この異種移植断片を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌体積が100〜300mm3に達した後、薬剤を投与し、この時点を0日と記録した。0日目にマウスを5群に分け、0、1及び2日、0、2及び4日、または0、4及び8日目に、金属イオンで固定された高分子ミセル(組成物10)とクレモフォアEL製剤(組成物11)を、様々なパクリタキセル容量で尾静脈を通じて投与し、癌容積を異なる時間間隔で測定した。癌容積は、式(W2×L)/2(ここで、Wは短軸、Lは長軸である)により計算した。
【0238】
治療効果を評価するために、腫瘍容積を下記のように計算した。
腫瘍容積(TV)=0.5×L×W2(L:長軸、W:短軸)
相対的腫瘍容積(RTV)=(Vt/V0)×100%(Vt:t日のTV、V0:0日のTV)
治療効果を、3つの基準を併行使用して決定した:平均腫瘍増殖曲線、最適の成長阻害(T/C%)及び特異的な増殖遅延(SGD)。
【0239】
最終の注射から4週間以内における特定日での最適の成長阻害を、処理群対対照群の平均RTV値に100%(T/C%)を乗じて計算した。
【0240】
SGDを、下記のように1及び2倍増時間にかけて計算した。
特異的増殖遅延(SGD):SGD=(TD処理群−TD対照群)/TD対照群
TD:腫瘍倍増時間。
【0241】
活性水準は、下記のように定義した。
【0242】
T/C% SGD
(+) <50 又は >1.0
+ <50 及び >1.0
++ <40 及び >1.5
+++ <25 及び >2.0
++++ <10 及び >3.0
NCI標準によれば、T/C≦42%が最低活性水準である。T/C<10%であれば、更なる開発を正当化する高い抗腫瘍活性水準と見なされる。
【0243】
実験を有意なものとするために、対象群に対して1処理当り少なくとも4匹のマウスと、1群当り少なくとも4個の腫瘍を使用した。処理開始時、最小腫瘍径は4mmであるか、30mm3容積であった。最終薬剤投与後から2週間以内に死亡する動物を、毒性による死亡と見なして評価から除外した。3匹当り1匹より多い毒性死亡や完全に回復せず平均体重が15%超で減少した処理群は、抗腫瘍効能がないものと見なした。
【0244】
図14〜21及び表21に示すように、金属イオンで固定された高分子ミセルによる処理群とクレモフォアEL製剤による処理群のいずれもが、対照群に比べて相当な癌成長抑制を示しており、また、特に金属イオンで固定された高分子ミセル(組成物10)による処理群は、クレモフォアEL製剤(組成物11)による処理群に比べて高い抑制率を示した。
【0245】
【表21】
【0246】
実施例56 タキソール(登録商標)耐性癌動物モデルに対するCa2+固定化パクリタキセル有高分子ミセルの抗癌活性
細胞を液体窒素中に保存されたものから採取し、インビトロ細胞培養として確立した。細胞を集めた後、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、生存細胞数を測定した。細胞を約7×107細胞/mLの濃度で滅菌PBSに再懸濁した。健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、7×106ヒト癌細胞(HT29)を含有する0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。癌が一定の大きさに達した後、3回異種移植し、3〜4mmの異種移植片を形成した。この異種移植断片を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌容積が一定大きさに達した後、パクリタキセル(クレモフォアEL製剤、タキソール(登録商標))を、q1dX5投与スケジュールにより尾静脈を通じて20mg/kg/日容量で投与した。3週間後、薬剤をq1dX5投与スケジュールにより20mg/kg/日容量で再投与し、タキソール(登録商標)耐性癌の異種移植断片を得た。癌が一定の大きさに達した後、異種移植断片(3〜4mm)を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20−25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌容積が100〜300mm3に達した後、薬剤を投与し、この時点を0日と記録した。0日目にマウスを5群に分け、0、2、4日に金属イオンで固定された高分子ミセル(組成物10)とクレモフォアEL製剤(組成物11)を、様々なパクリタキセル容量で尾静脈を通じて投与し、癌容積を異なる時間間隔で測定した。
【0247】
上記実験で示した通り、金属イオンで固定された高分子ミセルのタキソール(登録商標)耐性癌に対する効果を立証するために、タキソール(登録商標)耐性癌に対する金属イオン固定化高分子ミセルの効果に関する動物モデルを確立した。マウスに接種された癌細胞をタキソール(登録商標)に反復的に曝したところ、タキソール(登録商標)で前処理した癌細胞に対するパクリタキセルのIC50は、元来の癌細胞に対するパクリタキセルのそれより有意に増加した(結果未図示)。この動物モデルで、金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)による処理群は、クレモフォアEL製剤(組成物11)処理群に比べて、図22及び表22に示されたように、おそらく金属イオン固定化高分子ミセルに導入された薬剤の有効血中濃度をより長く維持するので、より高い抑制率を示した。
【0248】
【表22】
【0249】
実施例57 ドキソルビシン耐性癌動物モデルに対するCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの抗癌活性
凍結状態のドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))耐性ヒト子宮肉腫細胞株(MES−SA/Dx5;MDR変異株)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から購入し、10%FBSが添加されたRPMI−1640培地で培養、分離した。細胞を集めた後、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、生存細胞数を測定した。細胞を約7×107細胞/mLの濃度で滅菌PBSに再懸濁した。健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、7×106ヒト癌細胞(MES−SA/Dx5)を含有する0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。癌が一定の大きさ(500〜700mg)に達した後、その腫瘍片を一定の大きさ(3×3×3mm)で切断し、トロカールニードルを用いて移植した後に3回継代培養し、再び3〜4mmの異種移植片を得た。この異種移植断片を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌容積が100〜300mm3に達した後、薬剤を投与し、この時点を0日と記録した。0日目にマウスを5群に分け、0、2、4日に金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)とクレモフォアEL製剤(組成物11)を、尾静脈を通じて、20mg/kgのパクリタキセル容量で投与し、癌容積を異なる時間間隔で測定した。
【0250】
上記実験で示したように、金属イオンで固定された高分子ミセルのドキソルビシン耐性癌に対する効能を立証するために、ドキソルビシン耐性癌動物モデルを確立した。この動物モデルで、金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)による処理群は、クレモフォアEL製剤(組成物11)処理群に比べて、図23及び表23に示されるように、おそらく金属イオン固定化高分子ミセルに導入された薬剤の有効濃度をより長く保持するので、より高い抑制率を示した。
【0251】
【表23】
【0252】
本発明に係る両親媒性ブロック共重合体から製造されたミセルは、無害で薬剤の封入率が高いだけでなく、水溶液中で薬剤を長時間安定に保持するので、注射剤体内に投与した時、薬剤の血漿濃度を向上することができる。
【0253】
また、本発明の高分子組成物は、体液または水溶液中で安定な高分子ミセルまたはナノ粒子を形成しうる。本発明の組成物から形成されたミセルまたはナノ粒子は、親水性外皮と、多量の疎水性薬剤を物理的に封入できる疎水性内核とを有する。本発明の薬剤含有ミセルとナノ粒子は、投与後に血流中での滞留時間が延長されており、様々な医薬製剤を製造するのに使用され得る。
【0254】
上記の具体例は、本発明の原理の適用を説明のみのものであることが理解されるべきである。本発明の精神と範囲を逸脱しなければ、種々の変形や代替態様が導き出せ、添付された特許請求の範囲は、そのような変形やアレンジを含むものである。従って、現在、本発明の最も実用的かつ好ましい形態と見なされるものに関して、図面に示し、また、特定的に詳しく十分に記載したが、特許請求の範囲に記載されたような本発明の原理と概念を逸脱しないならば、種々変形が加えられることは当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0255】
本発明の付加的な特徴と長所は、実施例を通じて本発明の特徴を示す添付図面と共に、詳細な説明から明らかになる。
【図1】図1は、水性環境でモノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド−疎水性部分(mPEG−PLA−疎水性部分)によって形成された高分子ミセルの模式図である。
【図2】図2は、水性環境でカルボン酸ナトリウムにより誘導体化されたD,L−ポリ乳酸によって形成された高分子ミセルの模式図である。
【図3】図3は、水性環境でモノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド−疎水性部分(mPEG−PLA−疎水性部分)、及びカルボン酸ナトリウムにより誘導体化されたD,L−ポリ乳酸の混合物によって形成された高分子ミセルの模式図である。
【図4】図4は、Ca2+で固定された図3の高分子ミセルの模式図である。
【図5】図5は、ミセルの疎水性コア内に封入された疎水性薬剤を含み、Ca2+で固定された高分子ミセルの模式図である。
【図6】図6は、mPEG−PLA−コレステロール(実施例1)の1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、mPEG−PLA−トコフェロール(実施例7)の1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、様々な時間間隔で様々なジブロック共重合体により製造されたパクリタキセル含有高分子ミセルの投与後における血漿薬剤濃度プロファイルを示す。
【図9】図9は、様々な時間間隔でmPEG−PLA−トコフェロール及びmPEG−PLA−OHにより製造されたパクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセルの投与後にける血漿薬剤濃度を示す。
【図10】図10は、様々な時間間隔でパクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル、クレモフォールEL(タキソール(登録商標))及びツイーン80製剤の投与後における血漿薬剤濃度プロファイルを示す。
【図11】図11は、様々な時間間隔でパクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル及びクレモフォールEL(タキソール(登録商標))の投与後における血漿薬剤濃度を示す。
【図12】図12は、様々な時間間隔でドセタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル及びツイーン80製剤(タキソテール(登録商標))の投与後における血漿薬剤濃度を示す。
【図13】図13は、様々な時間間隔でドセタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル及びツイーン80製剤(タキソテール(登録商標))の投与後における血漿薬剤濃度を示す。
【図14】図14は、ヒト乳癌細胞株MX−1を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図15】図15は、ヒト乳癌細胞株MDAMB435Sを用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図16】図16は、ヒト卵巣癌細胞株SKOV−3を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図17】図17は、ヒト卵巣癌細胞株SKOV−3を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図18】図18は、ヒト結腸癌細胞株HT−29を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果(3サイクル)を示す。
【図19】図19は、ヒト結腸癌細胞株HT−29を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図20】図20は、ヒト前立腺癌細胞株PC3を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図21】図21は、ヒト脳腫瘍細胞株U−373MGを用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図22】図22は、パクリタキセル(タキソール(登録商標))耐性ヒト癌動物モデルでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図23】図23は、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))耐性ヒト癌動物モデルでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【0256】
参照文献は、例示的な具体例として示すものであり、特別な用語も同様に示されるものである。何れにせよ、それにより本発明の範囲は制限されないものと理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性ブロック及び、末端ヒドロキシル基を有する疎水性ブロックを含む両親媒性ブロック共重合体であって、疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されているものに関する。また、本発明は、両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体を含む高分子組成物であって、ポリ乳酸の1以上の末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しているものに関する。さらに本発明は、金属イオンで固定された高分子組成物であって、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基が、二価または三価金属イオンで固定されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤が生体に投与されると、投与された薬剤のうち極微量のみが標的部位に達し、投与された大部分は標的でない部位へ送達され、望ましくない副作用を引き起こすことがある。従って、ここ20年においては、適切な担体を利用して薬剤を部位特異的に送達するための効率的なシステムを開発することに研究が集中されてきており、このような担体には、リポソーム、小分子界面活性剤ミセル、高分子ナノ粒子及び高分子ミセル(硬質ミセルでできている高分子ナノ粒子)が含まれる。リポソームを薬剤担体として使用することは、主に封入効率が低い、薬剤の不安定性、急速な薬剤流出及び低い貯蔵安全性のような問題のために制限されることが分かっている。小分子界面活性剤ミセルは、体内投与後、体液で希釈されて容易に分解するので、薬剤担体として十分な役割を遂行することは難しい。
【0003】
最近、生分解性高分子を利用する高分子ナノ粒子と高分子ミセルが、このような問題を克服するのに非常に有用であることが報告された。これらは静脈内投与薬剤の生体内における分布を変化させることにより副作用を減少して効能を向上させ、薬剤の特異的な細胞標的化や放出制御といった利点を呈する。これらはまた、体液との適合性に優れ、水難溶性薬剤の溶解度と生体利用効率を向上させる。
【0004】
親水性表面を有するナノメートルサイズの薬剤担体は、細網内皮系[reticulo-endothelial systems(RES)]による認識と取込みを回避して、血液中に長時間循環できることが明らかにされている。これらの親水性ナノ粒子の別の長所としては、サイズが非常に小さいために、粒子が受動的標的化メカニズムを通じて固体癌のような病変に到達できることがある。しかし、薬剤を特異的な標的位置へ上手く送達するためには、循環中、担体が薬剤を安定に保持することが要求される。薬剤標的化は長い循環時間を必要とするものと見られ、担体は長時間血液成分に露出されるので、速かに除去される担体に比べて薬剤−担体の結合安全性を改善させる必要がある。
【0005】
親水性表面を持つナノメートルサイズの薬剤担体において、高分子ミセルは通常数百個のブロック共重合体からなり、その直径は約20〜50nmである。高分子ミセルは、2つの球形の共通−中心部位、即ち、疎水性薬剤を封入する役割を有する疎水性物質で稠密に充填されたコアと、体内RESを回避して血液中で長時間循環できるようにする親水性物質でできている外皮を持つ。これらの担体はサイズが小さく、溶解度が高く、滅菌過程が簡単で薬剤を放出制御できるという際立った長所を示すにもかかわらず、導入された薬剤が生体内で急速に放出され得るので、その物理的安定性が重大な課題である。
【0006】
ミセルは、総共重合体濃度が臨界ミセル濃度(CMC)より高くなると、熱力学的に安定となる。従って、CMC値が低い共重合体システムを用いれば、ミセルの生体内における安定性を向上させることができる。力学的安定性は、ミセルの分解速度を意味する。この分解速度は、ミセルコアの物理的状態に依存する。ガラス転移温度が高い疎水性ブロックを含む共重合体で形成されたミセルは、ガラス転移温度が低いものに比べて、ゆっくり分解される傾向がある。また、ミセル間でユニマー(unimer)交換速度に影響を及ぼす多くの因子によっても影響され得る。ユニマー交換速度は、コア内の溶媒含量、共重合体の疎水性成分含量及び親水性と疎水性ブロックの長さのような多くの因子に依存することが見出されている。
【0007】
水難溶性薬剤を封入でき、安定性と効能が改善された生分解性で且つ生体適合性のコア−シェル型薬剤担体を開発するための鋭意研究が為されてきた。高分子ミセルを化学的に固定する製造方法であって、当該高分子がシェルとして親水性ポリエチレンオキサイドと、コアとして水溶液中で架橋結合した疎水性生分解性高分子を含むコア−シェル型ポリマーである方法が、EP 0,552,802 A2に開示されている。しかし、この高分子ミセルは、コアを形成する高分子が安定な構造を示すように、架橋結合剤をA−B型ジブロックまたはA−B−A型トリブロック共重合体の親水性成分へ導入しなければならないので、製造することが難しい。また、人体に適用したことがない架橋結合剤を使用することは、安全性問題を引き起こし得る。
【0008】
ミセル形成ブロック共重合体−薬剤複合体が、米国特許第6,080,396号に開示されている。高分子ブロック共重合体が親水性高分子分画と疎水性高分子分画を有する高分子ブロック共重合体−薬剤複合体は、外皮として親水性分画を持つミセルを形成し、その疎水性内核にアントラサイクリン抗癌剤を含有する。抗癌剤分子は、ミセルのコア内に共有結合される。しかし、薬剤が高分子ミセル内に共有結合されれば、薬剤−共重合体結合の分解速度を制御することが難しくなる。
【0009】
一方、親水性高分子であるポリアルキレングリコール誘導体と、脂肪酸ポリエステルまたはポリアミノ酸のような疎水性生分解性高分子を含む二重または三重ブロック共重合体からなる高分子ミセルを用いて、疎水性薬剤を可溶化し得ることが報告された。米国特許第5,449,513号は、親水性高分子であるポリエチレングリコール、及び疎水性高分子であるポリアミノ酸誘導体、例えば、ポリベンジルアスパラギン酸などを含むジブロック共重合体を開示している。このジブロック共重合体は、例えば、ドキソルビシンのような疎水性抗癌剤や、インドメタシンのような抗炎症剤を可溶化することができる。しかし、ポリアミノ酸誘導体は生体内で加水分解されないことから、免疫反応による副作用を誘発する。
【0010】
高分子ミセルの安全性を向上する方法としては、高分子の疎水性を増加させる方法がある。そのためには、高分子の分子量や濃度を調節しなければならない。しかし、分子量が増加するにつれて生分解効率が低下し、体外への排泄が難しくなり、臓器に蓄積されて毒性を示す。米国特許第5,429,826号は、親水性ポリアルキレングリコールと疎水性ポリ乳酸を含むジブロックまたはマルチブロック共重合体を開示している。具体的には、上記特許は、アクリル酸誘導体がジブロックまたはマルチブロック共重合体の末端基に結合されたジブロックまたはマルチブロック共重合体をミセル化した後、水溶液中で高分子を架橋結合させて高分子ミセルを形成することによって、高分子ミセルを安定化する方法を開示している。上記方法は高分子を安定化することはできるが、架橋結合された分子が分解されないため、生体に適用することができない。上記高分子ミセルは、中性pHの水溶液で多量の水難溶性薬剤を可溶化することができるが、短時間内に薬剤を放出する短所がある。また、米国特許第6,458,373号では、水難溶性薬剤がα−トコフェロールによりエマルジョン形態で可溶化されている。この特許では、エマルジョンを安定化するために、PEG修飾されたビタミンEが界面活性剤として使用されている。PEG修飾されたビタミンEは、親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む両親媒性二重ブロック共重合体と類似構造を有し、疎水性が強いトコフェロールが水難溶性薬剤の共重合体との親和力を増加させるために、水難溶性薬剤を可溶化することができる。しかし、親水性高分子として用いられたポリエチレングリコールの分子量が限定されるので、PEG修飾されたビタミンE単独では、パクリタキセルを僅か2.5mg/mLまで可溶化できるに過ぎない。2.5mg/mLの以上の濃度では不安定なミセルが形成され、薬剤の結晶が沈澱物を形成し得る。
【0011】
化学療法に対する臨床的な腫瘍耐性は、先天的または後天的でありうる。先天的な耐性は、診断時、第1に選択した化学療法に反応しない腫瘍に存在するものである。後天的な耐性は、初期段階の治療に対しては敏感に反応するが、再発時、完全に異なった表現型を見せる腫瘍でよく発生する。耐性は、従来使用された薬剤と、構造及び作用メカニズムが異なる新しい薬剤のいずれに対しても形成され得る。例えば、タキソール(登録商標)を用いた癌化学療法は、癌細胞の後天的耐性により失敗することがあるが、このことは、P−gpの過剰発現とβ−チューブリンの変形としばしば結び付けられる。タキソール(登録商標)耐性細胞は、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ビンブラスチン、及びビンクリスチンを含む他の薬剤に対して交差耐性を示す。よって、臨床的薬剤耐性は、化学療法が転移性癌患者を治療できるようにするために、克服しなければならない主要な障害である。
【0012】
薬剤耐性癌細胞は、正常細胞より高いIC50(薬剤の50%細胞抑制濃度)を示すので、正常細胞では濃度を低くする一方で、腫瘍細胞では薬剤濃度を高くする化学療が効果的である。従って、薬剤耐性癌に対する効果を改善するためには、長い全身循環と腫瘍組織での薬剤の特異的な送達が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した観点から、疎水性薬剤送達のためのものであり、生体適合性と生分解性を示す改良高分子ミセル組成物の開発が求められてきた。本発明は、生体適合性かつ生分解性で、安全性を貶めることなく疎水性薬剤を效果的に送達できる改良高分子ミセル組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つの様態は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体であって、疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されたものと、その製造方法に関するものである。本発明の両親媒性ブロック共重合体は、在来の高分子とほぼ同じ分子量を保持しながら、疎水性ブロックの疎水性を顕著に増加させる。また、疎水性官能基が水難溶性薬剤との親和力を大きく向上させることによって、高分子から形成された高分子ミセルは水溶液中でさらに安定になり、ミセルに可溶化された水難溶性薬剤の血漿濃度をより長時間保持することができる。さらに、上記の両親媒性ブロック共重合体は、別の高分子と混合され、薬剤送達用高分子組成物とされ得る。
【0015】
本発明の他の様態は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している高分子組成物に関するものである。
【0016】
本発明の第三の形態は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しており、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基が二価または三価金属イオンで固定された高分子組成物に関するものである。
【0017】
本発明の高分子組成物は、体液や水溶液中で安定な高分子ミセルやナノ粒子を形成し得る。本発明の組成物で形成されたミセルやナノ粒子は、親水性外皮と、多量の疎水性薬剤を物理的に封入できる疎水性内核を有する。本発明の薬剤含有ミセルとナノ粒子は、投与後、血流中で滞留時間が延長され、様々な医薬製剤の製造に使われ得る。本発明の組成物から製造された抗癌剤含有高分子ミセルは、癌組織によく移行され、抗癌剤耐性癌細胞に対して效果的に作用し得る。本発明の付加的な特徴と長所は、実施例を通じて本発明の特徴を示す添付図面と共に、下記の詳細な説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明高分子組成物とその使用方法及び製造方法を説明する前に、本発明はここに開示された特定形態、製造ステップと材料に限定されず、そのような形態、製造ステップ及び材料は変更し得ることが理解されなければならない。また、ここで使われる用語は特定具体例のみについて記述する目的で使われており、添付された特許請求の範囲とその均等物によってのみ制限される本発明の範囲を制限するものではないことが理解されなければならない。
【0019】
本明細書と添付された特許請求の範囲において、単数型を示す「a」、「an」または「the」は、明確に他の意味として言及しない限り、複数形態を含む。従って、例えば「末端基」を含有する高分子に関する言及は、2以上のそのような基に関する言及を含み、「疎水性薬剤」に関する言及は、2以上のそのような薬剤に関する言及を含む。さらに、両親媒性ブロック共重合体に関する言及は、各A及びBブロックの組成物、各ブロックのそれぞれの比率、及び各ブロック及び/又は全体ブロック高分子組成物の重量または数平均分子量が、ここで定義された規定内のものであるならば、ブロック共重合体の混合物を含むものとする。
【0020】
本発明の説明と請求において、下記用語が下記定義に従って使われる。
【0021】
本明細書で使われる「生物活性薬剤」若しくは「薬剤」または他の類似用語は、当該技術分野で既に公知の方法および/または本発明で教示された方法による投与に適し、所望の生物学的または薬理学的効果を示すあらゆる化学的または生物学的物質または化合物を意味する。そのような効果は、これらに限定されるものではないが、(1)生物に対して予防的効果を有し、感染防止のような、望まない生物学的影響の防止、(2)疾患により誘発された異常の緩和、例えば疾患による痛みや炎症の緩和、及び/または(3)生物からの疾患の緩和、減少、または完全除去を含み得る。その効果は、局所麻酔効果の提示のように局所的であってもよく、全身的であってもよい。
【0022】
本明細書で使われる「生分解性(biodegradable)」または「生分解(biodegradation)」の語は、可溶化加水分解、または酵素や生物の他の産物であり生物学的に形成された物質の作用によって、物質があまり複雑でない中間体や最終産物に転換されることを意味する。
【0023】
本明細書で使われる「生体適合性」の語は、生体に副作用を及ぼさない可溶化加水分解、または酵素若しくは生物の他の産物であり生物学的に形成された物質の作用によって形成された物質または物質の中間体または最終産物を意味する。
【0024】
本明細書で使われる「有効量」の語は、任意の医学的処置に伴うものと同じ程度の合理的なリスク/利益比率における所望の局所または全身効果の提供に十分な生物活性薬剤の量を意味する。
【0025】
本明細書で使われる「投与」及びその類似の語は、組成物が全身的に循環できるように組成物を治療される個体へ送達することを意味する。好ましくは、本発明の組成物は皮下、筋肉内、経皮、経口、経粘膜、静脈内、または腹腔内経路で投与される。そのような用途のための注射剤は、通常的な形態、即ち液状溶液若しくは懸濁液、または注射前に液状溶液や懸濁液として製造するのに適当な固体形態、またはエマルジョンとして製造することができる。投与のために使われ得る適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどを含み;必要な場合、湿潤剤や乳化剤、緩衝剤などのような少量の補助剤を含む。経口投与のために、液剤、錠剤、カプセル剤などのような様々な形態に製剤化できる。
【0026】
以下では例示的な具体例を示し、これを記述するために具体的な用語を使用する。それによって、本発明の範囲は制限されるものではないことが理解されなければならない。本開示内容に関して、関連分野の技術者にとって、ここに示された発明的特徴の変化と追加的な変形と、ここに説明された本発明の原理の付加的な応用は、本発明の範囲内に属するものと見なされるべきである。
【0027】
1つの態様として、本発明は、親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を提供する。
【0028】
本発明は、また、上記両親媒性ブロック共重合体の製造方法に関するものであり、下記方法I〜IIIを含む。
【0029】
方法I:
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、開始剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下、上記カルボキシル化された疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【0030】
方法II:
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化し、得られたカルボキシ化疎水性化合物をオキサリルクロリドにより活性化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、上記の活性化されたカルボキシル化疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【0031】
方法III:
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物を、連結剤であるジクロライド化合物と混合するステップ;
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、ステップ1)の反応混合物に添加することによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性化合物を化学結合させるステップ;及び
3)段階2)で得られたブロック共重合体を溶解して沈澱させるステップ、
を含む方法。
【0032】
本発明の「カルボキシル化疎水性化合物」とは、カルボキシ基が結合したヒドロキシル基を有する疎水性化合物を意味し、カルボキシ基は、サクシネート、マロネート、グルタレートまたはアジペート由来のものであってもよい。
【0033】
また、本発明は、本発明の両親媒性ブロック共重合体を含有する薬剤担体を提供する。
また、本発明は、両親媒性ブロック共重合体と水難溶性薬剤を含み、体液または水溶液中で高分子ミセルを形成し得る医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明の両親媒性ブロック共重合体は、好ましくは、親水性Aブロック及び疎水性Bブロックを含むA−B型ジブロック共重合体またはB−A−B型トリブロック共重合体であってもよく、疎水性ブロックの末端基はヒドロキシル基である。本発明の両親媒性ジブロック共重合体は、水性環境に置かれると、疎水性Bブロックがコアを形成し親水性Aブロックがシェルを形成するコア−シェルタイプの高分子ミセルを形成する。
【0035】
好ましくは、親水性Aブロックは、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、及びその誘導体よりなる群から選択されるものである。より好ましくは、親水性Aブロックは、モノメトキシポリエチレングリコール、モノアセトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンとプロピレングリコールの共重合体、及びポリビニルピロリドンで構成された群から選択されるものである。好ましくは、親水性Aブロックの数平均分子量は、200〜50,000ダルトンである。より好ましくは、親水性Aブロックの数平均分子量は、1,000〜20,000ダルトンである。
【0036】
本発明の両親媒性ブロック共重合体の疎水性Bブロックは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル及びポリホスファジンで構成された群から選択される高度な生体適合性かつ生分解性の高分子である。より好ましくは、疎水性Bブロックは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン−2−オン、ラクチドとグリコリドの共重合体、ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体、ラクチドとカプロラクトンの共重合体、及びグリコリドとカプロラクトンの共重合体よりなる群から選択される1つ以上である。好ましくは、両親媒性ブロック共重合体の疎水性Bブロックの数平均分子量は、50〜50,000ダルトンである。より好ましくは、両親媒性ブロック共重合体の疎水性Bブロックの数平均分子量は、200〜20,000ダルトンである。
【0037】
疎水性Bブロックは末端ヒドロキシル基を有し、この末端ヒドロキシ基は、疎水性Bブロックの疎水性を増加させるために、疎水性に優れたトコフェロールまたはコレステロール基で置換される。本発明の両親媒性ブロック共重合体における疎水性ブロックは、水溶液中に置かれると、水との接触を避けて内核を形成し、球形の高分子ミセルを形成する。従って、水との親和力に劣る水難溶性薬剤を両親媒性ブロック共重合体と反応させるとき、水難溶性薬剤は高分子ミセルの内核の疎水性高分子により囲まれながらミセル内に封入され得る。この際、形成されるミセルの安定性は、疎水性ブロックの疎水性と薬剤に対する親和力に依存する。よって本発明では、疎水性ブロックの高分子の分子量をそのまま保持しながら疎水性を増加させるために、トコフェロール、コレステロールなどのような疎水性の強い官能基を、結合剤を用いて疎水性ブロックの末端に化学結合させる。トコフェロールとコレステロールは生体適合性化合物であって、水難溶性薬剤とのブロック共重合体親和性を増大させることができる環状構造を有する疎水性化合物である。
【0038】
本発明の両親媒性ブロック共重合体における親水性Aブロック対疎水性Bブロックの比率は、好ましくは30:70〜97:3の重量比の範囲であり、より好ましくは、4:6〜7:3の範囲である。親水性Aブロックの含量が過度に低ければ高分子が水溶液で高分子ミセルを形成できず、その含量が過度に高ければ形成された高分子ミセルが安定的ではない。
【0039】
1つの具体例において、本発明の両親媒性ブロック共重合体は、下記一般式(I’)で示すことができる。
R1’−O−[R3’]l’−[R4’]m’−[R5’]n’−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−O−R2’ (I’)
式中、
R1’は、CH3−、H−[R5’]n’−[R4’]m’−またはR2’−O−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−[R5’]n’−[R4’]m’−であり、
R2’はトコフェロールまたはコレステロールであり、
R3’は−CH2CH2−O−、−CH(OH)−CH2−、−CH(C(=O)−NH2)−CH2−、または
【0040】
【化1】
であり;
R4’は−C(=O)−CHZ’−O−(ここで、Z’は水素原子またはメチル基である)であり;
R5’は−C(=O)−CHY”−O−(ここで、Y”は水素原子またはメチル基である)、−C(=O)−CH2CH2CH2CH2CH2−O−または−C(=O)−CH2CH2CH2−O−であり;
l’は4〜1150の整数であり;
m’は1〜300の整数であり;
n’は0〜300の整数であり;及び
X’は0〜4の整数である。
【0041】
従来の両親媒性ブロック共重合体に比べ、疎水性基で置換された疎水性ブロックを有する本発明の共重合体は、疎水性が増加しており、低い臨界ミセル濃度(CMC)を有し、水難溶性薬剤との親和力が大きいため、薬剤を安定的に含有することができる。また、末端に結合された官能基により水溶液中で形成されるミセルの大きさが増大するので、十分な量の薬剤をミセル中に包含することができる。従って、本発明の両親媒性ブロック共重合体は、効率的な薬剤担体として使用できる。本発明で導入される疎水性の強い官能基は分子量が大きい化合物である。よって、ブロック高分子の疎水性と薬剤に対するブロック共重合体の親和性を同時に大きく増加させて、ミセルを含有する製剤を顕著に安定化させる。
【0042】
さらに、本発明の両親媒性ブロック共重合体を用いた高分子ミセルは、体内滞留時間が増加されている。高分子ミセル中の薬剤の血中濃度は、両親媒性ジブロック共重合体の疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に置換した疎水性部分に依存する。表6と図8に示すように、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に置換された疎水性部位(トコフェロールまたはコレステロール)を有する両親媒性ジブロック共重合体の高分子ミセル(組成物1〜2)は、従来のmPEG−PLA−OH高分子ミセル(組成物3)に比べて、遥かに長い血流滞留時間を示した。さらに、mPEG−PLA−トコフェロールミセル(組成物1)が、高分子中で最も長く血液中に循環した。この結果は、疎水性Bブロックのトコフェロールとコレステロール部分の疎水性増加により説明できる。
【0043】
その末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロールで置換された疎水性ブロックを有するブロック共重合体は、下記方法で製造することができる。1つの具体例では、好適なリンカー、例えばコハク酸、マロン酸、グルタル酸またはアジピン酸のようなジカルボン酸をトコフェロールやコレステロールのヒドロキシル基に導入して、カルボキシル化されたトコフェロールやコレステロールを疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基へ化学結合させる。
【0044】
1つの具体例として、米国特許第6,322,805号の方法に従って、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG;Mn=20,000)とポリラクチド(PLA;Mn=1,750)からなる両親媒性ブロック共重合体(mPEG−PLA)を定量し、真空ポンプを用いて120℃で水分を除去した後、アセトニトリルまたはメチレンクロリドに溶解する。ここへトコフェロールサクシネートまたはコレステロールサクシネートを添加し、開始剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と触媒として4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を定量して添加した後、室温で反応させる。mPEG−PLAの末端基−OHと疎水性化合物の−COOHの反応により生成するジシクロヘキシルウレア(DCU)によって、反応物は不透明になる。24時間後、グラスフィルタを用いてDCUを除去した後、塩酸水溶液を用いDMAPを抽出して除去する。このように精製された生成物溶液へ硫酸マグネシウム(MgSO4)を加えて残留する水分を除去した後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈澱させて、トコフェロールスクシニルまたはコレステロールスクシニルが結合した両親媒性ブロック共重合体であるmPEG−PLA−トコフェロールまたはmPEG−PLA−コレステロール(ここで、トコフェロールやコレステロールはコハク酸ジエステルによりPLAへ結合される)を得る。沈澱した高分子生成物は、濾過した後に真空乾燥して白色粒子形態として得られる。
【0045】
他の製造方法としては、触媒無を用いることなくオキサリルクロリドでカルボキシル化された疎水性化合物を活性化し、mPEG−PLAの末端に結合させる方法がある。即ち、トコフェロール(またはコレステロール)サクシネートをオキサリルクロリドと反応させた後、過剰のオキサリルクロリドを室温で真空除去する。ここへ、mPEG−PLAを定量して添加し、100℃で12時間反応させ、mPEG−PLA−トコフェロール(またはコレステロール)を得る。合成された高分子をアセトニトリルまたはメチレンクロリドに溶解した後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈殿させて濾過する。
【0046】
上記2種類の製造工程において、トコフェロール(またはコレステロール)サクシネートの代わりに、トコフェロール(またはコレステロール)マロネート、トコフェロール(またはコレステロール)グルタレートまたはトコフェロール(またはコレステロール)アジペートなどを使用することができる。
【0047】
他の方法として、結合剤としてジクロライド化合物を使用し、トコフェロールまたはコレステロールをmPEG−PLAの末端に結合させる方法がある。具体的には、トコフェロールまたはコレステロールを定量し、真空ポンプを利用して50℃で水分を除去する。ここへ過量の結合剤を添加し、12時間反応させる。反応終了後、過量添加された結合剤を100℃で真空除去する。ここに定量したmPEG−PLAを添加し、100℃で12時間反応させる。合成された高分子をメチレンクロリドに溶かした後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈澱させることによって、トコフェロールまたはコレステロールがPLAにコハク酸ジエステルを介して結合した両親媒性ブロック共重合体、即ち、mPEG−PLA−トコフェロールまたはmPEG−PLA−コレステロールを得る。沈澱させた高分子生成物は、濾過した後に真空乾燥して高分子として白色粒子形態として得られる。この反応で使用可能な結合剤は、スクシニルクロリド、オキサリルクロリド、マロニルクロリド、グルタリルクロリドまたはアジポイルクロリドなどのようなジクロライド化合物から選択して使用することができる。
【0048】
上述のように合成したブロック共重合体は、水難溶性薬剤と混合して高分子ミセル組成物を得ることができる。即ち、ブロック共重合体(10〜200mg)と水難溶性薬剤(1〜50mg)をアセトニトリルまたはメチレンクロリドなどの有機溶媒に溶解する。溶液を攪拌して混合した後、真空条件下60℃で乾燥してマトリックスを調製する。水難溶性薬剤と高分子のマトリックスを蒸留水に溶解した後、凍結乾燥して水難溶性薬剤が導入された高分子ミセル組成物を得る。上記高分子ミセル組成物は、生理食塩水のような水溶液に希釈して注射剤として使用することができる。
【0049】
「水難溶性薬剤」または「疎水性薬剤」の語は、水に対する溶解度が33.3mg/mL以下のあらゆる薬剤または生物活性薬剤を示す。これには、抗癌剤、抗生物質、抗炎症剤、麻酔剤、ホルモン、抗高血圧剤、及び糖尿病治療剤、抗高脂血症剤、抗ウィルス剤、パーキンソン病治療剤、抗痴呆制、抗嘔吐剤、免疫抑制剤、抗潰瘍剤、緩下剤及び抗マラリア剤が含まれる。具体的な水難溶性薬剤には、パクリタキセル、ケトコナゾール、イトラコナゾール、サイクロスポリン、シサプリド、アセトアミノフェン、アスピリン、アセチルサリチル酸、インドメタシン、ナプロキセン、ワルファリン、パパベリン、チアベンダゾール、ミコナゾール、シナリジン、ドキソルビシン、オメプラゾール、コレカルシフェロル、メルファラン、ニフェジピン、ジゴキシン、安息香酸トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、アズスレオナム、イブプロフェン、フェノキシメチルペニシリン、サリドマイド、メチルテストステロン、プロクロルペラジン、ヒドロコルチゾン、ジデオキシプリンヌクレオシド、ビタミンD2、スルホンアミド、スルホニルウレア、パラアミノ安息香酸、メラトニン、ベンジルペニシリン、クロランブシル、ジアゼピン、ジギトキシン、ヒドロコルチゾンブチラート、メトロニダゾール安息香酸塩、トルブタミド、プロスタグランジン、フルドロコルチゾン、グリゼオフルビン、硝酸ミコナゾール、ロイコトリエンB4抑制剤、プロプラノロール、テオフィリン、フルルビプロフェン、安息香酸ナトリウム、安息香酸、リボフラビン、ベンゾジアゼピン、フェノバルビタール、グリブリド、スルファジアジン、スルファエチルチアヂアゾール、ジクロフェナクナトリウム、フェニトイン、チオリダジン塩酸塩、ブロピリミン、ヒドロクロロチアジド、フルコナゾールなどが含まれる。
【0050】
上記水難溶性薬剤は、0.1〜20.0:80.0〜99.9のw/w比でブロック共重合体に添加され、本発明の両親媒性ブロック共重合体から形成されたミセル内部に適宜包含される。
【0051】
他の実施様態として、本発明は、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している用高分子組成物を提供する。
【0052】
親水性Aブロック及び疎水性Bブロックを含み、疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基が、疎水性に優れたトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体については、上述した通りである。
【0053】
本発明のポリ乳酸誘導体の1つ以上の末端は、少なくとも一つのカルボン酸またはカルボン酸と共有結合する。本発明のポリ乳酸誘導体の結合していない末端は、ヒドロキシ、アセトキシ、ベンゾイルオキシ、デカノイルオキシ及びパルミトイルオキシ基よりなる群から選択された官能基と共有結合できる。カルボン酸またはカルボン酸は、pH4以上の水溶液中で親水性基として作用し、ポリ乳酸誘導体が高分子ミセルを形成できるようにする。本発明のポリ乳酸誘導体が水溶液に溶解される際、高分子ミセルを形成するためには、ポリ乳酸誘導体に存在する親水性及び疎水性成分が均衡を保たなければ為らない。従って、本発明のポリ乳酸誘導体の数平均分子量は、好ましくは50〜50,000ダルトンの範囲である。ポリ乳酸誘導体の分子量は、製造工程中の反応温度や時間などを制御することにより調節することができる。
【0054】
ポリ乳酸誘導体は、好ましくは下記一般式(I)で示される。
RO−CHZ−[A]n−[B]m−COOM (I)
式中、Aは−COO−CHZ−であり;Bは−COO−CHY−、−COO−CH2CH2CH2CH2CH2−または−COO−CH2CH2OCH2であり;Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル、若しくはエチル基であり;ZとYはそれぞれ水素原子、またはメチル若しくはフェニル基であり;MはH、Na、K、またはLiであり;nは1〜30の整数であり;及びmは0〜20の整数である。
【0055】
本発明のポリ乳酸誘導体の1つ以上の末端は、カルボキシル基またはそのアルカリ金属塩、好ましくはそのアルカリ金属塩と共有結合する。ポリ乳酸誘導体を形成するアルカリ金属塩の金属イオンは一価であり、例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムである。金属イオン塩形態のポリ乳酸誘導体は常温で固体であり、比較的中性のpHを示すことから非常に安定である。
【0056】
より好ましくは、ポリ乳酸誘導体は一般式(II)で示される。
RO−CHZ−[COO−CHX]p−[COO−CHY’]q−COO−CHZ−COOM (II)
式中、Xはメチル基であり;Y’は水素原子またはフェニル基であり;pは0〜25の整数;qは0〜25の整数であり(但し、p+qは5〜25の整数である。);R、Z及びMは一般式(I)の定義と同義である。
【0057】
さらに、下記一般式(III)〜(V)のポリ乳酸誘導体が、本発明において適している。
【0058】
RO−PAD−COO−W−M’ (III)
式中、W−M’は
【0059】
【化2】
であり;PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものであり;R及びMは一般式(I)の定義と同義である。
【0060】
S−O−PAD−COO−Q (IV)
式中、Sは
【0061】
【化3】
であり[ここで、Lは−NR1−または−O−であり(R1は水素原子またはC1-10アルキルである。)、aは0〜4の整数であり、 bは1〜10の整数であり、Mは一般式(I)の定義と同義である。];QはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、またはCH2C6H5であり;及びPADは一般式(III)の定義と同義である。
【0062】
【化4】
【0063】
式中、R’は−PAD−O−C(O)−CH2CH2−C(O)−OMであり;Mは一般式(I)の定義と同義であり;PADは一般式(III)の定義と同義であり;aは1〜4の整数である。例えば、a=1のとき、3−armPLA−COONa;a=2のとき、4−armPLA−COONa;a=3のとき、5−armPLA−COONa;a=4のとき、6−armPLA−COONaである。
【0064】
高分子(一般式(V))合成のための開始剤としては、グリセロール、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリトリトール、キシリトール、アドニトール、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。
【0065】
本発明の高分子組成物は、両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸誘導体の全重量に対して、0.1〜99.9重量%の両親媒性ブロック共重合体と0.1〜99.9重量%のポリ乳酸誘導体を含有することができる。好ましくは、本発明の高分子組成物は、20〜95重量%の両親媒性ブロック共重合体と5〜80重量%のポリ乳酸誘導体を含有する。より好ましくは、本発明の高分子組成物は、50〜90重量%の両親媒性ブロック共重合体と10〜50重量%のポリ乳酸誘導体を含有する。
【0066】
本発明のポリ乳酸誘導体は、単独でpH4以上の水溶液中でミセルを形成できるが、高分子組成物は溶液のpHと関係がなく水溶液中でミセルを形成できる。生分解性高分子は通常10以上のpHで加水分解されるので、本発明の高分子組成物は、1〜10の範囲のpH、好ましくは4〜8の範囲のpHで使用できる。本発明の高分子組成物から製造されたミセルやナノ粒子の粒径は、高分子の分子量とポリ乳酸誘導体の両親媒性ブロック共重合体に対する比率に従って1〜400nm、より好ましくは5〜200nmの範囲に調節することができる。
【0067】
図1〜3に示されるように、ポリ乳酸誘導体または両親媒性ブロック共重合体単独及びこれらの混合物は、水溶液中でミセルを形成できるが、両親媒性ブロック共重合体及びポリ乳酸誘導体の高分子組成物は、ポリ乳酸誘導体や両親媒性ブロック共重合体単独で形成されたミセルに比べて、水溶液中で形成されたミセルの薬剤封入効率と安定性が高い。図において、1は水難溶性薬剤を示し;10はモノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド疎水性部分(mPEG−PLA−疎水性部分)を示し;11はモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を示し;12はポリラクチド疎水性部分(PLA−疎水性部分)を示し;20はD,L−ポリ(乳酸)のナトリウム塩を示し;21はD,L−ポリ乳酸を示し;22はカルボン酸ナトリウムを示す。しかし、本発明の高分子組成物では、ポリ乳酸誘導体または両親媒性ブロック共重合体単独から形成されたミセルと比較して、水溶液中で形成されたミセルの薬剤封入効率と安定性が顕著に向上されている。
【0068】
本発明における他の実施様態として、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体と、ポリ乳酸誘導体を含有し、当該末端ヒドロキシル基が疎水性のトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しており、当該カルボキシ基が二価または三価金属イオンで固定された高分子組成物を提供する。
【0069】
金属イオンで固定された高分子組成物は、二価または三価金属イオンを、両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体の高分子組成物に加えて製造できる。高分子ミセルやナノ粒子は、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基を結合または固定するために添加する二価または三価金属イオンの量を変えることにより形成できる。
【0070】
二価または三価金属イオンは、好ましくは、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cr3+、Fe3+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+及びAl3+よりなる群から選択されるものである。二価または三価金属イオンは、硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩、リン酸塩または水酸化物の形態、好ましくは、CaCl2、MgCl2、ZnCl2、AlCl3、FeCl3、CaCO3、MgCO3、Ca3(PO4)2、Mg3(PO4)2、AlPO4、MgSO4、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Al(OH)3、またはZn(OH)2の形態で、両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体の高分子組成物に添加し得る。
【0071】
図4と図5に示されるように、ポリ乳酸誘導体のカルボキシル末端の一価金属イオンが二価または三価金属イオンで置換され、金属イオン結合を形成すると、形成されたミセルやナノ粒子の安定性が向上し得る。
【0072】
高分子ミセルやナノ粒子は、金属イオンの添加当量を変えることにより製造することができる。具体的には、二価金属イオンをポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基に対して0.5当量以下で添加すれば、末端カルボキシル基と結合を形成できる金属イオンが不十分となるため、高分子ミセルが形成される。二価金属イオンを0.5当量以上に添加すれば、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基と結合を形成できる金属イオンが十分となるため、高分子ミセルを堅固に固定することによって、ナノ粒子が形成される。
【0073】
また、高分子ミセルまたはナノ粒子からの薬剤放出速度は、金属イオンの添加当量を変えることにより調節することができる。金属イオンがポリ乳酸誘導体のカルボキシル基に対して1当量以下で存在する場合、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基に結合できる数が減少して薬剤放出速度が増加する。金属イオンが1当量以上に存在すれば、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基に結合できる数が増加して、薬剤放出速度が減少する。従って、血中で薬剤放出速度を増加させるためには、金属イオンを少ない当量で使用し、薬剤放出速度を減少させるためには、金属イオンを多い当量で使用する。
【0074】
本発明に係る金属イオンで固定された高分子組成物は、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基の当量に対して、5〜95重量%の両親媒性ブロック共重合体、5〜95重量%のポリ乳酸誘導体、及び0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含有し得る。好ましくは、20〜80重量%の両親媒性ブロック共重合体、20〜80重量%のポリ乳酸誘導体、及び0.1〜5当量の二価または三価金属イオンを含有する。より好ましくは、20〜60重量%の両親媒性ブロック共重合体、40〜80重量%のポリ乳酸誘導体、及び0.2〜2当量の二価または三価金属イオンを含有する。
【0075】
親水性ブロック及び末端ヒドロキシル基が疎水性の高いトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている疎水性ブロックを含む両親媒性ブロック共重合体と、少なくとも1つのポリ乳酸末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しているポリ乳酸誘導体と、金属イオンで固定化された高分子組成物を含有する高分子組成物は、水性環境で安定な高分子ミセルやナノ粒子を形成することができる。従って、本発明は、本発明の高分子組成物から形成された高分子ミセルやナノ粒子と、それらに封入された疎水性薬剤を含む医薬組成物に関するものである。上記組成物は、投与後において、血流中で有効薬剤濃度保持時間を延長させる。本発明の医薬組成物は、疎水性薬剤の血漿濃度を増加させるものであり、様々な薬剤学的剤形で使用できる。
【0076】
図3〜図5に示されるように、水難溶性薬剤を両親媒性ブロック共重合体とポリ乳酸誘導体の高分子組成物と混合し、その中に薬剤を含有する高分子ミセルを形成する。二価または三価金属イオンを加えてポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基と金属イオン結合を形成させることによって、安定性がより増した薬剤含有高分子ミセル及びナノ粒子を形成することができる。
【0077】
水難溶性薬剤の含量は、好ましくは、両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体及び疎水性薬剤を含む医薬組成物全重量に対して、0.1〜30重量%範囲内である。薬剤含有高分子ミセルまたはナノ粒子の大きさは、高分子の分子量、及びポリ乳酸誘導体に対する両親媒性ブロック共重合体の比率に従って5〜400nm、好ましくは10〜200nmに調節することができる。例えば、表7に示すように、金属イオンで固定された高分子ミセルまたはナノ粒子は、20〜40nmの平均大きさを持つ。この大きさの範囲のミセルは、注射剤と滅菌濾過に適する。
【0078】
本発明に係る金属イオン−無処理高分子組成物または金属イオン−固定化高分子ミセルまたはナノ粒子は、水溶液中で安定であり、特に金属イオンで固定された場合の安定性がより高い。表9に示すように、本発明の薬剤含有高分子ミセル組成物(組成物4及び5)は力学的に安定で、金属イオンで固定されたパクリタキセル含有高分子ミセル組成物が、さらに安定していることが分かる。金属イオンの添加によって、本発明の高分子ミセル中の薬剤滞留時間を有意に増加せることができる。これは、ポリ乳酸誘導体のカルボキシレートアニオンの架橋的静電相互作用が、疎水性コアの堅固性の増加を誘導するためである。
【0079】
さらに、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基が置換された疎水性部位(トコフェロールコハク酸)を有する両親媒性ジブロック共重合体の金属イオン固定化高分子ミセル(組成物4)が、従来のmPEG‐PLA‐OH(組成物7)に比べて力学的に安定であった。この結果は、両親媒性高分子中の疎水性Bブロックの疎水性を増加すれば、両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間のさらに強い相互作用によって、一層安定なミセルを形成できることを示す。
【0080】
表11及び図9に示すように、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基が置換された疎水性部位(トコフェロールコハク酸)を有する両親媒性ジブロック共重合体の金属イオン固定化高分子ミセル(組成物8)は、従来の両親媒性ジブロック共重合体の金属イオン固定化高分子ミセル(組成物9)より長い血流滞留時間を有する。この結果は、実施例36で実証されているように、両親媒性高分子の疎水性Bブロックの疎水性増加が両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間の相互作用をより強化し、さらに安定なミセルを形成していることを示す。
【0081】
図10〜13に示すように、薬剤が金属イオンで固定された高分子組成物に封入された組成物は、血流中で薬剤滞留時間が増加され、市販製剤に比べて長時間の間有効血漿薬剤濃度を維持する。
【0082】
また、本発明は、抗癌活性を示す医薬組成物を提供する。好ましい一様態として、本発明は、抗癌剤として有用な医薬組成物であって、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物を提供する。上記ポリ乳酸誘導体のカルボキシ末端基は、さらに、二価または三価金属イオンで固定することができる。
【0083】
抗癌剤としては、これらに限定されないが、パクリタキセル及びドセタキセルなどのタキソイド類、タキシン類及びタキサン類;ポドフィロトキシン類;カンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、カンプトテシン−11、トポデカンなどのカンプトテシン類;ドキソルビシン、エピルビシン、アクラルビシン、イダルビシン、ピラルビシンなどのアントラサイクリン類;ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビントリポール、ビンサルチンなどのビンカアルカロイド類;エポシロン、プラチナ、エトポシド、メトトレキサート、カルムスチン、5−フルオロウラシル、レチノイン酸、レチノール、タモキシフェン、マイトマイシンB、マイトマイシンC、アモナフィド、イルージンSなどが挙げられる。
【0084】
本発明の高分子ミセル医薬組成物は、医薬的効能が大きく向上されている。具体例として図14〜21に示すように、パクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセルは、高い癌増殖抑制率を示し、抗癌剤耐性癌細胞の増殖も抑制する(図22及び図23)。
【0085】
癌の化学療法において、タキソール(登録商標)(またはパクリタキセル)やドキソルビシンなどの薬剤が広く使われてきた。これら抗癌剤は化学療法で効果的且つ有用であるが、癌細胞で抗癌剤耐性癌細胞が発現することにより薬剤の効能が低下する。P−グリコプロテイン(P−gp)の過剰発現とb−チューブリンの変形を含むタキソール(登録商標)耐性の様々なメカニズムとして特定されている。それらの内、P−gpの過剰発現が、タキソール(登録商標)耐性を含む多重薬剤耐性現象を説明するのに有力なメカニズムである。抗癌剤耐性癌細胞は正常細胞より高いIC50(薬剤の50%細胞抑制濃度)を示すので、抗癌剤を用いた化学療法では、腫瘍細胞での薬剤濃度をより高くしなければならない。従って、癌に対する有効性を保障するためには、薬剤が腫瘍組織へ特異的に送達されなければならない。図10に示すように、金属イオンで固定された高分子ミセルは、通常的な製剤に比べて長い循環性を示した。従って、通常のものより増加された透過滞留(EPR)効果によって、腫瘍組織により選択的に蓄積された。本発明では、抗癌剤耐性癌に対する金属イオン固定化高分子ミセルの有効性を立証するために、タキソール(登録商標)耐性癌に対する生体内の抗癌活性に関する動物モデルを確立した。マウスに接種した癌細胞をタキソール(登録商標)に反復的に曝すと、タキソール(登録商標)で前処理された癌細胞に対する薬剤のIC50が、元来の癌細胞に対する薬剤のものに比べて有意に増加した。この動物モデルにおいて、金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)処理群が、クレモフォアEL製剤(組成物11)−処理群に比べてより高い抑制率を示した。このことは、図22及び表22に示すように、おそらく金属イオン固定化高分子ミセルに導入された薬剤の有効濃度の滞留時間がより長くなったことによる、また、ドキソルビシン耐性癌動物でも同じ効果を得ることができた(図23)。
【0086】
よって、本発明は、薬剤耐性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物を提供する。
【0087】
さらに本発明は、上記医薬組成物を製造する方法を含む。具体的には、図3及び5に示すように、ポリ乳酸誘導体、両親媒性ブロック共重合体、及び水難溶性薬剤を一定の割合で、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム、酢酸及びジオキサンよりなる群より選択される1以上の有機溶媒に溶解する。当該有機溶媒を除去することによって、水難溶性薬剤と高分子との均一混合物を製造する。水難溶性薬剤と本発明の高分子組成物との均一した混合物を、0〜80℃でpH4〜8の水溶液に加え、水難溶性薬剤含有混合高分子ミセル水溶液を製造する。その後、当該薬剤含有高分子ミセル水溶液を凍結乾燥して、固体形態の高分子ミセル組成物を製造する。
【0088】
0.001〜2Mの二価または三価金属イオンを含有する水溶液を、水難溶性薬剤含有混合高分子ミセル水溶液に加えて、金属イオンで固定された高分子ミセルを製造する。当該混合物を常温で0.1〜1時間ゆっくり攪拌した後、凍結乾燥することによって、固体形態の金属イオンで固定された高分子ミセルまたはナノ粒子組成物を製造する。
【0089】
水難溶性薬剤が封入され溶解された本発明の高分子ミセルまたはナノ粒子は、経口または非経口的に投与することができる。ミセルが分解されつつ、薬剤はミセルの疎水性コアから放出され、薬理効果を示す。特に、金属イオンで固定された高分子ミセルまたはナノ粒子は、長時間血流内に存在し、標的病巣に蓄積される。
【0090】
非経口送達のために、薬剤は、静脈内、筋肉内、腹腔内、経鼻、直腸内、眼球内、または肺内に投与することができる。経口送達のために、薬剤を本発明の高分子ミセルと混合した後、錠剤、カプセル、または水溶液の形態で投与する。
【0091】
本発明で使われる高分子ミセルまたはナノ粒子の容量は、患者の症状、年齢及び体重などの様々な条件に応じて広い範囲にわたって変更できる。
【0092】
下記実施例は、本発明をどのように実施するかを、当業者がより明確に理解できるようにしたものである。本発明を好ましい具体例で説明するが、下記は本発明の範囲を制限するものではない。本発明の他の側面は、本発明が属する技術分野の当業者に自明であろう。
【実施例】
【0093】
製造例1 D,L−ポリ乳酸(PLA−COOH)の合成1
100gのD,L−乳酸を250mLの三口丸底フラスコへ挿入した。フラスコに攪拌機を取り付け、油浴で80℃ に加熱した。真空アスピレーターで25mmHgに減圧することにより過剰な水分を除去しつつ、反応を1時間行なった。その後、25mmHgの減圧下、反応を150℃で6時間行なった。生成した産物を1Lの蒸留水に加え、高分子を沈殿させた。次いで、沈殿した高分子を蒸留水に加えることによって、pH4以下の水溶液に溶ける低分子量高分子を除去した。その後、沈殿した高分子を1Lの蒸留水に加え、炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて水溶液のpHを6〜8に調節して高分子を溶解させた。水に不溶の高分子を遠心分離または濾過により分離除去した。1N塩酸を滴下して、高分子を水溶液中で沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で2回洗浄し、分離し、減圧下に乾燥して粘性の高い液体(78gのD,L−ポリ乳酸、収率:78%)を得た。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は540ダルトンであった。
【0094】
製造例2〜4 D,L−ポリ乳酸(PLA−COOH)の合成2
反応温度、圧力、時間を表1に示すようにした以外は製造例1と同様の手段によって、D,L−ポリ乳酸を得た。上記製造例1〜4から合成されたD,L−ポリ乳酸の数平均分子量と収率を、下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
製造例5 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成1
55gのD,L−乳酸(0.6モル)と45gのグリコール酸(0.6モル)を250mL三口丸底フラスコへ挿入した。10mmHgの減圧下、150℃で12時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0097】
製造例6 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成2
73gのD,L−乳酸(0.8モル)と27gのグリコール酸(0.35モル)を250mL三口丸底フラスコに挿入した。10mmHgの減圧下、160℃で12時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0098】
製造例7 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成3
91gのD,L−乳酸(1.0モル)と9gのグリコール酸(0.12モル)を250mL三口丸底フラスコに挿入した。10mmHgの減圧下、160℃で12時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0099】
製造例8 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA−COOH)の合成4
73gのD,L−乳酸(0.8モル)と27gのグリコール酸(0.35モル)を250mL三口丸底フラスコに挿入した。5mmHgの減圧下、180℃で24時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。
【0100】
上記製造例5〜8で合成された共重合体を表2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
製造例9 D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体(PLMA−COOH)の合成
75gのD,L−乳酸(0.83モル)と25gのD,L−マンデル酸(0.16モル)を、250mL三口丸底フラスコに挿入した。10〜20mmHgの減圧下、180℃で5時間反応を行なったことを除いては、製造例1と同様の処理を行なった。54g(収率:54%)のD,L−乳酸とマンデル酸の共重合体を得た。D,L−乳酸とマンデル酸のモル比は85/15であった。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は1,096ダルトンであった。
【0103】
製造例10 アセトキシD,L−ポリ乳酸誘導体(AcO−PLA−COOH)の合成
製造例2で合成した50gのD,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)と、20mLのクロロ酢酸を250mL丸底フラスコに挿入した。フラスコに冷却器を取り付けて、反応混合物を窒素気流下に4時間還流した。過量のクロロ酢酸を蒸留で除去した後、反応産物を氷と水の混合物に加えた。全混合物をゆっくり攪拌することによって、高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を分離し、蒸留水で2回洗浄した後、無水アセトンに溶解した。無水硫酸マグネシウムを加えて過剰の水分を除去した。得られた産物を濾過して硫酸マグネシウムを除去した。アセトンを真空エバポレーターで除去することによって、液体のアセトキシD,L−ポリ乳酸(46g、収率:92%)を得た。1H−NMRによって、アセトキシ基が2.02ppmで単一ピークとして確認された。
【0104】
製造例11 パルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸誘導体(PalmO−PLA−COOH)の合成
製造例2で合成した20gのD,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)を、250mL丸底フラスコに挿入した。反応物を、120度の油浴で真空下に完全に脱水した。油浴を50℃に冷却し、50mLのアセトンを加えて高分子を完全に溶解した。5mLのクロロパルミチン酸を加えて、窒素下、50℃で10時間反応を行なった。反応産物を過量のヘキサンで洗浄し、残っている反応物を除去した。その後、産物をアセトンに溶解し、溶液を氷と水の混合物に加えた。全混合物をゆっくり攪拌することによって、オリゴマーを沈殿させた。オリゴマーを分離し、蒸留水で2回洗浄した後、無水アセトンに溶解した。無水硫酸マグネシウムを溶液に加え、過剰の水分を除去した。得られた産物を濾過し、硫酸マグネシウムを除去した。アセトンを真空エバポレーターで除去することによって、パルミトイルオキシD,L−ポリ乳酸誘導体(19.1g、収率:96%)を得た。1H−NMRによって、パルミトイル基が0.88、1.3及び2.38ppmのピークとして確認された。
【0105】
製造例12 3armポリ乳酸(3arm PLA−COOH)の合成
1gのグリセロール(0.011mol)を100mL三口丸底フラスコに挿入した。フラスコに攪拌機を取り付けて、油浴で80℃に加熱した。真空アスピレーターにより25mmHgに減圧して、反応を30分間行なうことによって、過剰の水分を除去した。反応触媒であるオクチル酸スズ(Tin(Oct)2)をトルエンに溶解し、グリセロールに加えた。反応混合物を30分間攪拌し、110℃で1時間、圧力を1mmHgに減圧することによって、触媒を溶解した溶媒(トルエン)を除去した。精製されたラクチド(35.8、0.249mol;10wt%)を加え、25mmHgの減圧下、混合物を130℃で6時間加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、0.2N NaHCO3水溶液を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で3〜4回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(3arm PLA−OH)を得た。
【0106】
100gの3arm PLA−OH(0.033モル)を100mL一口丸底フラスコに挿入し。真空アスピレーターで25mmHgに減圧しながら、反応を30分間行なって過剰の水分を除去した。19.8gの無水コハク酸(0.198mol)を加え、混合物を125℃で6時間加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、蒸留水を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を、60℃で0.2N NaHCO3水溶液に溶解した。溶けない高分子を濾過で除去した。2N HClを滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で5〜6回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(3arm PLA−COOH)を得た。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は3,000ダルトンであった。
【0107】
製造例13 5armポリ乳酸(5arm PLA−COOH)の合成
1gのキシリトール(0.0066mol)を100mL三口丸底フラスコに挿入した。フラスコに攪拌機を取り付けて、油浴で80℃に加熱した。真空アスピレーターで25mmHgに減圧し、反応を30分間行なうことによって、過剰の水分を除去した。反応触媒であるオクチル酸スズ(Tin(Oct)2)をトルエンに溶解し、グリセロールに加えた。反応混合物を30分間攪拌し、反応混合物を30分間攪拌し、110℃で1時間、圧力を1mmHgに減圧することによって、触媒を溶解した溶媒(トルエン)を除去した。精製されたラクチド(31.7、0.151モル;10wt%)を加え、混合物を6時間、25mmHgの減圧下に130℃に加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、0.2N NaHCO3水溶液を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で3〜4回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(5arm PLA−OH)を得た。
【0108】
100gの5arm PLA−OH(0.033mol)を100mL一口丸底フラスコに挿入した。真空アスピレーターで25mmHgに減圧し、反応を30分間行なうことによって、過剰の水分を除去した。33.0gの無水コハク酸(0.33mol)を加え、混合物を6時間125℃に加熱した。形成された高分子をアセトンに溶解し、蒸留水を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を0.2N NaHCO3水溶液に60℃で溶解した。溶けない高分子を濾過で除去した。2N HCl水溶液を滴下して高分子を沈殿させた。沈殿した高分子を蒸留水で5〜6回洗浄し、分離、減圧乾燥して粉末(3arm PLA−COOH)を得た。1H−NMRスペクトル測定によれば、高分子の数平均分子量は3,000ダルトンであった。
【0109】
製造例14 ポリ乳酸ナトリウム塩(PLA−COONa)の合成1
製造例1で合成したD,L−ポリ乳酸(Mn:540ダルトン)をアセトンに溶解した。溶液を丸底フラスコに挿入し、フラスコに攪拌機を取り付けた。溶液を室温でゆっくり攪拌し、pH7になるように炭酸水素ナトリウム溶液(1N)をゆっくり加えた。無水硫酸マグネシウムを加えて過剰の水分を除去した。得られた混合物を濾過し、アセトンを溶媒エバポレーターで留去した。白色固体が得られた。得られた固体を無水アセトンに溶解し、溶液を濾過して不溶部分を除去した。アセトンを留去することによって、D,L−ポリ乳酸のナトリウム塩(収率:96%)を白色固体として得た。 図2に示されるように、1H−NMRによってカルボン酸に隣接した水素ピークを4.88ppmで観察した。また、高分子は水に溶かした時、6.5〜7.5のpHを示した。
【0110】
製造例15 ポリ乳酸ナトリウム塩(PLA−COONa)の合成2
製造例2で合成したD,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)と炭酸ナトリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりポリ乳酸のナトリウム塩(収率:95%)を合成した。
【0111】
製造例16 アセトキシ−D,L−ポリ乳酸ナトリウム塩(AcO−PLA−COONa)の合成
製造例10で合成したアセトキシ−D,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)と炭酸ナトリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりアセトキシ−D,L−ポリ乳酸のナトリウム塩(収率:95%)を合成した。
【0112】
製造例17 パルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸ナトリウム塩(PalmO−PLA−COONa)の合成1
製造例11で合成したパルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸(Mn:1,140ダルトン)をアセトン水溶液(28.6v/v%)に完全に溶解した。溶液を丸底フラスコに挿入し、フラスコに攪拌機を取り付けた。溶液を常温でゆっくり攪拌した後、炭酸水素ナトリウム水溶液(1N)を加えて中和した。溶液を室温でゆっくり攪拌し、炭酸水素ナトリウム(1N)をpH7になるまでゆっくり加えた。無水硫酸マグネシウムを加えて過剰の水分を除去した。得られた溶液を濾過し、アセトン溶液を溶媒エバポレーターで留去した。白色固体が得られた。得られた固体をアセトンに溶解し、溶液を濾過してアセトンに溶けない物質を除去した。アセトンを留去して、パルミトイルオキシ D,L−ポリ乳酸のナトリウム塩を白色固体として得た(収率:96%)。
【0113】
製造例18 ポリ乳酸カリウム塩(PLA−COOK)の合成
製造例3で合成したD,L−乳酸(Mn:1,550ダルトン)と炭酸水素カリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりポリ乳酸のカリウム塩(収率:98%)を合成した。
【0114】
製造例19 ポリ乳酸ナトリウム塩(PLA−COONa)の合成3
製造例4で合成したD,L−乳酸(Mn:2,100ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりポリ乳酸のナトリウム塩(収率:95%)を合成した。
【0115】
製造例20 D,L−乳酸とグリコール酸共重合体のナトリウム塩(PLGA−COONa)の合成1
製造例5で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:920ダルトン)と炭酸ナトリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸共重合体のナトリウム塩(収率:98%)を合成した。
【0116】
製造例21 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(PLGA−COONa)の合成2
製造例6で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:1,040ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(収率:93%)を合成した。
【0117】
製造例22 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のカリウム塩(PLGA−COOK)の合成
製造例7で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:1,180ダルトン)と炭酸カリウム水溶液を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のカリウム塩(収率:92%)を合成した。
【0118】
製造例23 D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(PLGA−COONa)の合成3
製造例8で合成したD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体(Mn:1,650ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とグリコール酸の共重合体のナトリウム塩(収率:98%)を合成した。
【0119】
製造例24 D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体のナトリウム塩(PLMA−COONa)の合成
製造例9で合成したD,L−乳酸とマンデル酸の共重合体(Mn:1,096ダルトン)を用いたことを除いては、上記製造例14と同様の処理によりD,L−乳酸とマンデル酸の共重合体のナトリウム塩(収率:96%)を白色固体として合成した。
【0120】
製造例25 3armポリ乳酸のナトリウム塩(3arm PLA−COONa)の合成
製造例12で合成した3−arm D,L−乳酸の共重合体(Mn:3,000ダルトン)を用いたことを除いては、製造例14と同様の処理により3armポリ乳酸のナトリウム塩を白色固体として合成した。
【0121】
製造例26 5armポリ乳酸のナトリウム塩(5arm PLA−COONa)の合成
製造例13で合成した5−arm D,L−乳酸(Mn:3,000ダルトン)を用いたことを除いては、製造例14と同様の処理により5armポリ乳酸のナトリウム塩を白色固体として合成した。
【0122】
上記製造例14〜26で合成したポリ乳酸誘導体のカルボン酸塩を表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
製造例27 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(mPEG−PLA)ブロック共重合体(AB型)の重合
5gのモノメトキシポリエチレングリコール(Mn:2,000ダルトン)を100mL二口丸底フラスコに挿入し、混合物を2〜3時間、減圧(1mmHg)下に100℃ に加熱して脱水した。反応フラスコに乾燥窒素を充填し、反応触媒であるオクチル酸スズ(Sn(Oct)2)を注射器でラクチドの0.1wt%(5mg)に注入した。反応混合物を30分間攪拌し、110℃で1時間、1mmHgに減圧して触媒を溶解した溶媒(トルエン)を除去した。精製されたラクチド(5g)を加え、混合物を130℃で12時間加熱した。形成された高分子をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加えて高分子を沈殿させた。得られた高分子を真空オーブンで48時間乾燥した。得られたmPEG−PLAの数平均分子量は2,000〜1,765ダルトンであり1H−NMRによってAB型であることが確認された。
【0125】
製造例28 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとグリコリドの共重合体)(mPEG−PLGA)ブロック共重合体(AB型)の重合
mPEG−PLGAブロック共重合体を合成するために、製造例27と同様の処理によって、120℃で12時間、モノメトキシポリエチレングリコール(Mn:5,000ダルトン)を、触媒であるオクチル酸スズの存在下、ラクチド及びグリコリドと反応させた。得られたmPEG−PLGAの数平均分子量は5,000〜4,000ダルトンであり、1H−NMRによってAB型であることが確認された。
【0126】
製造例29 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとp−ジオキサン−2−オンの共重合体)(mPEG−PLDO)ブロック共重合体(ABタイプ)の重合
mPEG−PLDOブロック共重合体を合成するために、製造例27と同様の処理によって、110℃で12時間、モノメトキシポリエチレングリコール(Mn:12,000ダルトン)を、触媒であるオクチル酸スズの存在下、ラクチド及びp−ジオキサン−2−オンと反応させた。得られたmPEG−PLDOの数平均分子量は、12,000〜10,000ダルトンであり、1H−NMRによりAB型であることが確認された。
【0127】
製造例30 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(mPEG−PCL)ブロック共重合体(AB型)の重合
mPEG−PCLブロック共重合体を合成するために、製造例27と同様の処理によって、130℃で12時間、触媒であるオクチル酸スズの存在下、モノメトキシポリエチレングリコール(Mn:12,000ダルトン)をカプロラクトンと反応させた。得られたmPEG−PCLの数平均分子量は12,000−5,000ダルトンであり、1H−NMRによってAB型であることが確認された。
【0128】
上記製造例27〜30で合成されたブロック共重合体を下記表4に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
製造例31 モノメトキシポリエチレングリコール−モノメトキシポリエチレングリコール(PLA−mPEG−PLA)ブロック共重合体(BAB型)の重合
25gのメトキシポリエチレングリコール(分子量=2,000)と50gのD,L−ラクチドを用いたことを除いては、製造例27と同様の処理によって、PLA−mPEG−PLAを得た。PLA−mPEG−PLAの数平均分子量は1,765〜2,000〜1,765ダルトンであり、1H−NMRによってBAB型であることが確認された。
【0131】
実施例1 mPEG−PLA−コレステロールの重合1
a)コレステロールサクシネートの合成
7.6gのコレステロールと2.36gの無水コハク酸を、丸底フラスコ中で100mLの1,4−ジオキサンに溶解した。反応触媒である2.9gの4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を加え、当該混合物を室温で24時間攪拌した。当該反応混合物をHCl溶液に加えることによって、コレステロールサクシネート(9.1g;収率95%)を沈殿させた。
【0132】
b)mPEG−PLAとコレステロールサクシネートの結合
製造例27で合成した10gのmPEG−PLAと、1.55gのコレステロールサクシネート(高分子の1.2モル倍)を、丸底フラスコ中、50mLのアセトニトリルに溶解した。反応触媒として、0.76gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と0.045gの4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を加え、室温で24時間攪拌した。反応終了後、混合物をガラスフィルターにより濾過することによって、副生物であるシクロヘキシルカルボウレア(DCU)を除去した。残留した触媒は、塩酸で抽出して除去した。精製された生成物溶液にマグネシウム硫酸塩を加えることによって、残留水分を除去した後、再結晶のために混合物をn−ヘキサン/ジエチルエーテル(v/v=7/3)の混合溶媒へ加え、精製されたmPEG−PLA−コレステロール(10g;収率88.6%)を得た。そのNMRスペクトルを図6に示す。
【0133】
実施例2 mPEG−PLA−コレステロールの重合2
a)コレステロールサクシネートの合成
7.6gのコレステロールとスクシニルクロリド(コレステロールの2モル倍)をフラスコに入れ、50mLのアセトニトリルに溶解した。50℃で12時間反応することによって、コレステロールのヒドロキシル基にサクシネートを結合させた後、HCl中で沈殿させることによって、コレステロールサクシネート(8.2g;収率92%)を得た。
【0134】
b)mPEG−PLAとコレステロールサクシネートの結合
10gのmPEG−PLAと、実施例2a)で得られたコレステロールサクシネート(高分子の1.2モル倍)を用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、mPEG−PLA−コレステロール(9.52g;収率85%)を得た。
【0135】
実施例3〜5 mPEG−PLA−コレステロールの重合3〜5
マロニルクロリド(実施例3)、グルタリルクロリド(実施例4)及びアジポイルクロリド(実施例5)を高分子の2モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例2と同様にして、mPEG−PLA−コレステロールを得た。
【0136】
実施例6〜9 mPEG−PLA−トコフェロールの重合1〜4
8.5gのトコフェロールと、マロニルクロリド(実施例6)、スクシニルクロリド(実施例7)、グルタリルクロリド(実施例8)及びアジポイルクロリド(実施例9)を高分子の2モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例2と同様にして、mPEG−PLA−トコフェロールを得た。そのNMRスペクトルを図7(実施例7)に示す。
【0137】
実施例10 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとグリコリドの共重合体)トコフェロール(mPEG−PLGA−トコフェロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例28で合成した10gのmPEG−PLGAと1.767gのトコフェロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLGA−トコフェロール(10g;収率=87.5%)を得た。
【0138】
実施例11 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとグリコリドの共重合体)コレステロール(mPEG−PLGA−コレステロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例28で合成した10gのmPEG−PLGAと0.70gのコレステロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLGA−コレステロール(10g;収率=88.6%)を得た。
【0139】
実施例12 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとp−ジオキサン−2−オンの共重合体)トコフェロール(mPEG−PLDO−トコフェロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例29で合成した10gのmPEG−PLDOと0.314gのトコフェロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLDO−トコフェロール(10g;収率=87.5%)を得た。
【0140】
実施例13 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリ(ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体)コレステロール(mPEG−PLDO−コレステロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例29で合成した10gのmPEG−PLDOと0.288gのコレステロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PLDO−コレステロール(10g;収率=88.6%)を得た。
【0141】
実施例14 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトントコフェロール(mPEG−PCL−トコフェロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例30で合成した10gのmPEG−PCLと0.406gのトコフェロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PCL−トコフェロール(10g;収率=87.5%)を得た。
【0142】
実施例15 モノメトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトンコレステロール(mPEG−PCL−コレステロール)ブロック共重合体(AB型)の重合
製造例30で合成した10gのmPEG−PCLと0.372gのコレステロールサクシネートを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、精製されたmPEG−PCL−コレステロール(10g;収率=88.6%)を得た。
【0143】
実施例16 mPEG−PLA−コレステロールの重合6
4gのコレステロールを定量し、真空ポンプを用いて50℃で水分を除去した。ここにスクシニルクロリド(3.0g;コレステロールの2.0モル倍)を添加し、12時間反応した。反応終了後、過剰のスクシニルクロリドを真空下100℃で除去した。ここにmPEG−PLA(36g;コレステロールの0.95モル倍)を添加し、12時間反応した。合成された高分子をメチレンクロリドに溶解した後、ヘキサン/ジエチルエーテル溶媒で沈澱することによって、コレステロール基が結合した両親媒性ブロック共重合体であるmPEG−PLA−コレステロールを得た。沈澱した高分子生成物(35g;収率88%)は、濾過した後に真空乾燥することによって、白色粒子としてで得た。
【0144】
実施例17〜20 mPEG−PLA−コレステロールの重合7〜10
オキサリルクロリド(実施例17)、マロニルクロリド(実施例18)、グルタリルクロリド(実施例19)及びアジポイルクロリド(実施例20)をコレステロールの2.0モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例16と同様にして、mPEG−PLA−コレステロールを得た。
【0145】
実施例21〜25 mPEG−PLA−トコフェロールの重合5〜9
4.3gのトコフェロールと、オキサリルクロリド(実施例21)、マロニルクロリド(実施例22)、スクシニルクロリド(実施例23)、グルタリルクロリド(実施例24)及びアジポイルクロリド(実施例25)をトコフェロールの2.0モル倍でそれぞれ用いたことを除いては、実施例16と同様にして、mPEG−PLA−トコフェロールを得た。
【0146】
実施例26 mPEG−PLA−コレステロールの重合11
コレステロールサクシネート(4.9g)とオキサリルクロリド(2.53g;コレステロールサクシネートの2モル倍)を定量し、50℃で6時間反応した。反応終了後、過剰のオキサリルクロリドを真空条件で除去した。ここに、mPEG−PLA(36g;コレステロールサクシネートの0.95モル倍)を定量して添加した。反応温度を100℃とし、12時間反応した。合成された高分子をメチレンクロリドに溶解した後、ヘキサン/ジエチルエーテル中で沈殿させ、濾過した。産生物を真空乾燥してmPEG−PLA−コレステロール(34.6g;収率91%)を得た。
【0147】
実施例27〜29 mPEG−PLA−コレステロールの重合12〜14
コレステロールマロネート(実施例27)、コレステロールグルタレート(実施例28)及びコレステロールアジペート(実施例29)をそれぞれ用いたことを除いては、実施例26と同様にして、mPEG−PLA−コレステロールを得た。
【0148】
実施例30〜33 mPEG−PLA−トコフェロールの重合10〜13
トコフェロールマロネート(実施例30)、トコフェロールサクシネート(実施例31)、トコフェロールグルタレート(実施例32)及びトコフェロールアジペート(実施例33)をそれぞれ用いたことを除いては、実施例26と同様にして、mPEG−PLA−トコフェロールを得た。
【0149】
実施例34 トコフェロール−PLA−PEG−PLA−トコフェロールの製造
製造例31で合成した10gのPLA−mPEG−PLAとトコフェロールサクシネート(高分子の2.4モル倍)を用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、トコフェロール−PLA−PEG−PLA−トコフェロール(収率=92.4%)を得た。
【0150】
実施例35 コレステロール−PLA−mPEG−PLA−コレステロールの製造
製造例31で合成した10gのPLA−mPEG−PLAを用いたことを除いては、実施例1b)と同様にして、コレステロール−PLA−PEG−PLA−コレステロール(収率=94.2)を得た。
【0151】
実施例36 疎水性部位とコンジュゲートされた両親媒性ジブロック共重合体のパクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
パクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間に関する両親媒性ジブロック共重合体(mPEG−PLA、Mn2000−1765)の疎水性Bブロックにおける末端ヒドロキシル基に置換した疎水性部位の影響を評価するために、下記のように組成物を製造した。パクリタキセルと実施例1、7または製造例27の両親媒性ジブロック共重合体を1:99の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して透明な溶液を調製した。エタノールを真空エバポレーターで除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0152】
上記組成物と薬剤含量を表5に要約した。
【0153】
【表5】
【0154】
動物実験のために、体重250〜300gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物1〜3を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0155】
また、薬剤の血漿濃度を分析するために、0.1mLの血漿を蓋付きガラス管に挿入し、内部標準物質を含有する0.1mLのアセトニトリル溶液を加えた。10mLの酢酸エチルを上記溶液に加えて混合物を30秒間激しく混合した後、2,500rpmで10分間遠心分離した。全酢酸エチル層を取り試験管に移した後、有機溶媒を窒素気流下40℃で完全に留去した。そこへ0.1mLの40%(v/v)アセトニトリル溶液を加え、混合物を30秒間激しく攪拌した後、HPLCを行なった。HPLC条件は下記通りである。
注入容積:0.075mL
流速:1.0mL/分
波長:227nm
移動相:5分間24%アセトニトリル水溶液、16分間58%に増加、2分間70%に増加、4分間34%に減少して5分間保持
カラム:4.6×50nm(C18、Vydac、USA)。
【0156】
ミセルの大きさと薬剤血漿濃度の分析結果を、下記表6と図8に示した。
【0157】
【表6】
【0158】
表6と図8の通り、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性部位(トコフェロールコハク酸またはコレステロールコハク酸)が置換した両親媒性ジブロック共重合体の高分子ミセル(組成物1または2)は、従来のmPEG−PLA−OH高分子ミセル(組成物3)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。この結果は、両親媒性高分子にある疎水性Bブロックにおける疎水性の増加が、両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間の相互作用を強めることによって、より安定なミセルを形成することを示唆するものである。
【0159】
また、mPEG−PLA−トコフェロールミセル(組成物1)が、mPEG−PLA−コレステロールミセル(組成物2)に比べて、より長く血液中に循環していることが分かる。
【0160】
実施例37 イオンで固定された高分子ミセルの製造
ステップ1:D,L−PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体の高分子ミセルの製造
製造例15で得られた248.1mg(0.218mmol)のD,L−PLA−COONa(Mn:1,140)と、実施例7で得られた744.3mgのmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)を、5mLのエタノールに完全に溶解し、透明な溶液を得た。エタノールを除去して高分子組成物を得た。蒸留水(6.2mL)を加え、混合物を60℃で30分間攪拌して、高分子ミセル水溶液を製造した。
【0161】
段階2:二価金属イオンによる固定
無水塩化カルシウムの0.9M水溶液0.121mL(0.109mmol)をステップ1で製造した高分子ミセル水溶液に加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。動的光散乱(DLS)法によれば、測定粒径は25nmであった。
【0162】
実施例38 D,L−PLA−COONa、及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有ミセルの製造
ステップ1:パクリタキセル含有D,L−PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体の高分子ミセルの製造
製造例15で得られた248.1mg(0.218mmol)のD,L−PLA−COONa(Mn:1,140)、7.5mgのパクリタキセル、および実施例7で得られた744.3mgのmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)を、5mLのエタノールに完全に溶解して透明な溶液を得た。エタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(6.2mL)を加え、混合物を60℃で30分間攪拌することによって、パクリタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。
【0163】
ステップ2:二価金属イオンによる固定
無水塩化カルシウムの0.9M水溶液の0.121mL(0.109mmol)をステップ1で製造した高分子ミセル水溶液に加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。パクリタキセルの含量と溶解度をHPLCで測定し、粒径を動的光散乱(DLS)法により測定した。
【0164】
D,L−PLA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:29nm。
【0165】
実施例39 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のMg2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
製造例24で得られた248.1mg(0.226mmol)のD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)、7.5mgのパクリタキセル、実施例7で得られた744.3mgのmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.230mL(0.113mmol)の塩化マグネシウム6水和物(Mw:203.31)の0.5M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Mg2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:30nm。
【0166】
実施例40 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.226mmol)の製造例24で得られたD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)、7.5mgのパクリタキセル、744.3mgの実施例7で得られたmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.126mL(0.113mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:34nm。
【0167】
実施例41 D,L−PLA−COOK及びmPEG−PLA−コレステロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.160mmol)の製造例18で得られたD,L−PLA−COOK(Mn:1,550)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例1で得られたmPEG−PLA−コレステロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.089mL(0.080mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLA−COONa/mPEG−PLA−コレステロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:34nm。
【0168】
実施例42 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−コレステロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有の高分子ミセルの製造
248.1mg(0.226mmol)製造例24で得られたD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例1で得られたmPEG−PLA−コレステロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.126mL(0.113mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−コレステロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:34nm。
【0169】
実施例43 3arm PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.0827mmol)の製造例25で得られた3arm PLA−COONa(Mn:3,000)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例7で得られたmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.1377mL(0.124mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
3arm PLACOONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:29nm。
【0170】
実施例44 5arm PLA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のCa2+固定化パクリタキセル−含有高分子ミセルの製造
248.1mg(0.0827mmol)の製造例26で得られた5arm PLA−COONa(Mn:3,000)、7.5mgのパクリタキセル、744.4mgの実施例7で得られたmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800ダルトン)と、0.2295mL(0.207mmol)の無水塩化カルシウムの0.9M水溶液を用いたことを除いては、実施例38と同様の処理によって、Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル組成物を製造した。
5arm PLACOONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/3
パクリタキセル含量:0.75wt%
粒径:29nm。
【0171】
実施例45 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のドキソルビシン含有高分子ミセルの製造
mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、D,L−PLMA−COONa(Mn:969)及びドキソルビシンHClを78.62:17.24:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水メタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてメタノールを除去して、ドキソルビシン含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌して、ドキソルビシンを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/4.56
ドキソルビシン含量:1.03wt%
粒径:35nm。
【0172】
実施例46 D,L−PLMA−COONa及びmPEG−PLA−トコフェロールブロック共重合体のエピルビシン含有高分子ミセルの製造
mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、D,L−PLMA−COONa(Mn:969)及びエピルビシンHClを78.62:17.24:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水メタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてメタノールを除去し、エピルビシン含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、エピルビシンを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
D,L−PLMA−COONa/mPEG−PLA−トコフェロール(重量比):1/4.56
エピルビシン含量:1.03wt%
粒径:30nm。
【0173】
実施例47 Ca2+固定化高分子ミセルの粒径
Ca2+で固定された高分子ミセルの粒径を測定するために、高分子ミセル組成物を下記のように製造した。
mPEG−PLA(Mn:2,000〜1,800)とD,L−PLMA−COONa(Mn:866、994、1,156、1,536)を1:1の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、高分子組成物を製造した。蒸留水を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。上記高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、pH7.4のPBS緩衝液を加え、混合物中の高分子が40mg/mLとなるように希釈した。0.22um薄膜フィルタで濾過した後、粒径を光子相関粒径分析器で測定した。
【0174】
【表7】
【0175】
表7の通り、Ca2+で固定された高分子ミセルの粒径は、平均20〜40nmであった。この粒径範囲のミセルは、注射剤と滅菌濾過に適する。D,L−PLMA−COONaの分子量が866から1536まで増加するにつれて、Ca2+処理された全ミセルと無処理のものにおいて、粒径は若干増加した。Ca2+で固定された高分子ミセルの粒径は、Ca2+無処理のミセルより約10nm大きい。
【0176】
実施例48 Ca2+で固定されたパクリタキセル−含有高分子ミセルの力学的安定性
ナノ粒子組成物の安定性を試験するために、高分子ミセル組成物を下記のように製造した。
【0177】
(組成物4) パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)を1:3:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を10分間60℃で攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0178】
(組成物5) パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)、及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)を1:3:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに加えて、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子組成物を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0179】
(組成物6) パクリタキセルとmPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)を1:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターでエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(5mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0180】
(組成物7) パクリタキセル、mPEG−PLA(Mn:2,000〜1,765)及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,096)を1:3:3の当量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターでエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌してパクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を室温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0181】
【表8】
【0182】
pH7.4のPBS緩衝液を凍結乾燥組成物に加え、パクリタキセルの濃度が1.0mg/mLになるようにした。混合物を37℃で静置して、時間経過に伴うパクリタキセル濃度をHPLCによって測定した。その結果を表9に示す。
【0183】
【表9】
【0184】
表9の通り、Ca2+で固定されたパクリタキセル含有高分子ミセル組成物(組成物4)は、Ca2+無処理組成物(組成物5)に比べて力学的により安定であった。Ca2+を添加することによって、本発明の高分子ミセル中のパクリタキセルの保有を有意的に増加させることができた。これは、疎水性コアの堅固性増加を誘導できるD,L−PLACOO−とCa2+の架橋結合静電気的相互作用による。疎水性Bブロックの疎水性部位(トコフェロールコハク酸)が末端ヒドロキシル基に置換された両親媒性ジブロック共重合体のCa2+固定化高分子ミセル(組成物4)は、従来のmPEG−PLA−OHのCa2+固定化高分子ミセル(組成物7)に比べて、より長い滞留時間を示した。この結果は、両親媒性高分子における疎水性Bブロックの疎水性を増加させれば、両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤と間の相互作用強化によって、より安定なミセルを形成できることを示すものである。
【0185】
実施例49 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
両親媒性ジブロック共重合体(mPEG−PLA、Mn2000〜1765)における疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に置換された疎水性部位のCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間に対する影響を評価するために、組成物を下記のように製造した。
【0186】
パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)またはmPEG−PLA−OH及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,004)を、74.25:24.75:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mL無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。
【0187】
上記組成物と薬剤含量を表10に示す。
【0188】
【表10】
【0189】
動物実験のために、体重220〜270gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物8と9を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0190】
また、薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析し、薬剤血漿濃度分析結果を下表11と図9に示す。
【0191】
【表11】
【0192】
表11と図9に示されたように、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性部位(トコフェロールコハク酸)が置換した両親媒性ジブロック共重合体のCa2+固定化高分子ミセル(組成物8)は、従来のmPEG−PLA−OHのCa2+固定化高分子ミセル(組成物9)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。この結果は、実施例36で立証されたように、両親媒性高分子の疎水性Bブロックの疎水性増加が両親媒性高分子の疎水性部位と薬剤との間の相互作用を強化することによって、より安定なミセルを形成することを示す。
【0193】
実施例50 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+で固定されたパクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0194】
(組成物10) Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル
パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及びD,L−PLMA−COONa(Mn:1,004)を99.25:33.08:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調整した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌し、パクリタキセルを含有する高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLMA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を室温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は34nmであった。
【0195】
(組成物11) パクリタキセル、クレモフォアEL、及び無水エタノール含有組成物
パクリタキセル(30mg)を、クレモフォアELと無水エタノールの混合溶液(50:50v/v)5mLに溶解して、透明な溶液を得た。この溶液を、細孔の大きさが200nmのフィルタで濾過した。
【0196】
(組成物12) パクリタキセル、ポリソルベート80(ツイーン80)、及び無水エタノール含有組成物
パクリタキセル(30mg)を、ポリソルベート80と無水エタノールの混合溶液(50:50v/v)5mLに溶解して、透明な溶液を得た。細孔の大きさが200nmのフィルタでこの溶液を濾過した。
【0197】
上記組成物及び薬剤含量を表12に要約した。
【0198】
【表12】
【0199】
動物実験のために、体重230〜250gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物10,11及び12を、5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0200】
また、薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表13と図10に示す。
【0201】
【表13】
【0202】
表13及び図10に示すように、Ca2+で固定された高分子ミセル(組成物10)は、別の界面活性剤を含有する注射剤(組成物11及び12)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物10)は、市販製剤であるタキソール(登録商標)(組成物11)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソール(登録商標)以上に、血流中において薬剤滞留時間を増大することができる。
【0203】
実施例51 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+で固定されたパクリタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0204】
(組成物13) Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル
パクリタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及び5arm PLA−COONa(Mn:3,000)を99.25:33.08:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、パクリタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加えて混合物を60℃で10分間攪拌することによって、パクリタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液に5arm PLA−COONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は32nmであった。
【0205】
(組成物11) パクリタキセル、クレモフォアEL及び無水エタノール含有組成物
パクリタキセル(30mg)をクレモフォアELと無水エタノールの混合溶液(50:50v/v)5mLに溶解して、透明な溶液を得た。溶液を、細孔の大きさが200nmのフィルタで濾過した。
【0206】
上記組成物と薬剤含量を表14に要約する。
【0207】
【表14】
【0208】
動物実験のために、体重230〜250gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物13と11を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0209】
薬剤の血漿濃度を、実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表15と図11に示す。
【0210】
【表15】
【0211】
表15及び図11に示すように、Ca2+固定化高分子ミセル(組成物13)は、別の界面活性剤を含有する注射剤(組成物11)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物13)は、市販製剤であるタキソール(登録商標)(組成物11)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソール(登録商標)以上に血流中における薬剤滞留時間を増大することができる。
【0212】
実施例52 Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を、別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0213】
(組成物14) Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセル
ドセタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及び3arm PLA−COONa(Mn:3,000)を99.25:33.08:1.00の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、ドセタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、ドセタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液に3arm−PLACOONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を室温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は30nmであった。
【0214】
(組成物15) ドセタキセル、ポリソルベート80(Tween80)及び無水エタノール含有組成物
ドセタキセル(20mg)とツイーン80(520mg)を、1.5mLの13%(v/v)エタノール水溶液に溶解し、透明な溶液を得た。細孔の大きさが200nmのフィルタで溶液を濾過した。
【0215】
上記組成物と薬剤含量を表16に要約する。
【0216】
【表16】
【0217】
動物実験のために、体重210〜240gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物14と15を10mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から5、15、30分及び1、2、3、6、8時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0218】
薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表17と図12に示す。
【0219】
【表17】
【0220】
表17及び図12に示すように、Ca2+固定化高分子ミセル(組成物14)は、ツイーン80を含有する注射剤(組成物15)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物14)は、市販製剤であるタキソテール(登録商標)(組成物15)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソテール(登録商標)以上に血流で薬剤滞留時間を増大することができる。
【0221】
実施例53 Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの薬剤動態
Ca2+固定化ドセタキセル含有高分子ミセルの血流滞留時間を、別の担体を含有する製剤と比較するために、組成物を下記のように製造した。
【0222】
(組成物16) Ca2+固定化ドセタキセル-含有高分子ミセル
ドセタキセル、mPEG−PLA−トコフェロール(Mn:2,000〜1,800)及びD,L−PLA−COONa(Mn:1,700)を75.0:25.0:1.0の重量比で混合した後、混合物を5mLの無水エタノールに溶解して、透明な溶液を調製した。真空エバポレーターを用いてエタノールを除去し、ドセタキセル含有高分子組成物を製造した。蒸留水(4mL)を加え、混合物を60℃で10分間攪拌することによって、ドセタキセル含有高分子ミセル水溶液を製造した。当該高分子ミセル溶液にD,L−PLACOONaと同じ当量のCaCl2水溶液(濃度:100mg/mL)を加え、混合物を常温で20分間攪拌した。細孔の大きさが200nmのフィルタで混合物を濾過した後、凍結乾燥した。高分子ミセルの流体力学粒径は32nmであった。
【0223】
(組成物15) ドセタキセル、ツイーン80及び13%エタノール含有組成物
ドセタキセル(20mg)とツイーン80(520mg)を1.5mLの13%(v/v)エタノール水溶液に溶解して、透明な溶液を得た。細孔の大きさが200nmのフィルタで溶液を濾過した。
【0224】
上記組成物と薬剤含量を表18に要約する。
【0225】
【表18】
【0226】
動物実験のために、体重230〜250gの雄性Sprague−Dawleyラットの大腿静脈と大腿動脈に挿管した。組成物16と15を5mg/kg容量で15秒かけて大腿静脈に注射した。注射から1、5、15、30分及び1、2、3、4、6時間後、0.3mLの全血を大腿動脈から採血した後、遠心分離して透明な上清血漿を得た。
【0227】
薬剤の血漿濃度を実施例36と同様の処理により分析した。薬剤血漿濃度分析結果を下表19と図13に示す。
【0228】
【表19】
【0229】
表19及び図13に示すように、Ca2+固定化高分子ミセル(組成物16)は、ツイーン80を含有する注射剤(組成物15)に比べて、より長い血流滞留時間を示した。本発明のCa2+固定化高分子ミセル(組成物16)は、市販製剤であるタキソテール(登録商標)(組成物15)より長い血流滞留時間を示すので、本発明は、本発明の生分解性生体適合性高分子を利用することによって、タキソテール(登録商標)以上に血流中における薬剤滞留時間を増加することができる。
【0230】
実施例54 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの最大耐用量(maximum tolerated dose)
10群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、20.5±0.50g;雄性、8週齢、21.3±1.6g)へ、それぞれ16、20、25、30mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、1、2日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重の変化を30日にわたって毎日観察した。
【0231】
5群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、24.7±1.2g;雄性、8週齢、24.2±1.3g)へ、それぞれ20、25、30、35mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、2、4日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重変化を30日にわたって毎日観察した。
【0232】
4群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、22.5±0.8g;雄性、8週齢、24.3±1.6g)へ、それぞれ20、25、30mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、2、4、6日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重変化を30日にわたって毎日観察した。
【0233】
10群のTac:Cr:(Ncr)−nu無胸腺マウス(雌性、8週齢、19.3±0.71g;雄性、8週齢、23.3±1.1g)へ、それぞれ25、28、30、35、39mg/kgの容量でCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセル溶液(組成物10)を、尾静脈を通じて0、4、8日の日程で静脈内投与した。群全体において、生存マウスと体重変化を30日にわたって毎日観察した。
【0234】
MTDを、薬剤投与後から2週間以内に毒性による死やバイタルサインの顕著な変化を誘発しない範囲で、平均体重が対照群に比べて約10〜20%減少する容量として定義した。表20に示すように、各容量スケジュールでのMTDは、20〜30mg/kgの範囲であった。
【0235】
また、担体毒性実験を行なった。薬剤を含有しないCa2+固定化高分子ミセルを投与された動物は速かに成長し、食塩水を投与するか或いは注射しない動物に比べて、若干体重が増加した。これは、製剤のカロリー含量によるものである。
【0236】
【表20】
【0237】
実施例55 Ca2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの抗癌活性
細胞を液体窒素中に保存されたものから採取し、インビトロ細胞培養として確立した。細胞を集めた後、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、生存細胞数を測定した。細胞を約7×107細胞/mLの濃度で滅菌PBSに再懸濁した。健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、7×106ヒト癌細胞(MX−1、SKOV−3、MDAMB435S、HT29、PC−3、U373MG)を含有する0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。癌が一定の大きさに達した後、3回異種移植して3〜4mmの異種移植片を形成した。この異種移植断片を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌体積が100〜300mm3に達した後、薬剤を投与し、この時点を0日と記録した。0日目にマウスを5群に分け、0、1及び2日、0、2及び4日、または0、4及び8日目に、金属イオンで固定された高分子ミセル(組成物10)とクレモフォアEL製剤(組成物11)を、様々なパクリタキセル容量で尾静脈を通じて投与し、癌容積を異なる時間間隔で測定した。癌容積は、式(W2×L)/2(ここで、Wは短軸、Lは長軸である)により計算した。
【0238】
治療効果を評価するために、腫瘍容積を下記のように計算した。
腫瘍容積(TV)=0.5×L×W2(L:長軸、W:短軸)
相対的腫瘍容積(RTV)=(Vt/V0)×100%(Vt:t日のTV、V0:0日のTV)
治療効果を、3つの基準を併行使用して決定した:平均腫瘍増殖曲線、最適の成長阻害(T/C%)及び特異的な増殖遅延(SGD)。
【0239】
最終の注射から4週間以内における特定日での最適の成長阻害を、処理群対対照群の平均RTV値に100%(T/C%)を乗じて計算した。
【0240】
SGDを、下記のように1及び2倍増時間にかけて計算した。
特異的増殖遅延(SGD):SGD=(TD処理群−TD対照群)/TD対照群
TD:腫瘍倍増時間。
【0241】
活性水準は、下記のように定義した。
【0242】
T/C% SGD
(+) <50 又は >1.0
+ <50 及び >1.0
++ <40 及び >1.5
+++ <25 及び >2.0
++++ <10 及び >3.0
NCI標準によれば、T/C≦42%が最低活性水準である。T/C<10%であれば、更なる開発を正当化する高い抗腫瘍活性水準と見なされる。
【0243】
実験を有意なものとするために、対象群に対して1処理当り少なくとも4匹のマウスと、1群当り少なくとも4個の腫瘍を使用した。処理開始時、最小腫瘍径は4mmであるか、30mm3容積であった。最終薬剤投与後から2週間以内に死亡する動物を、毒性による死亡と見なして評価から除外した。3匹当り1匹より多い毒性死亡や完全に回復せず平均体重が15%超で減少した処理群は、抗腫瘍効能がないものと見なした。
【0244】
図14〜21及び表21に示すように、金属イオンで固定された高分子ミセルによる処理群とクレモフォアEL製剤による処理群のいずれもが、対照群に比べて相当な癌成長抑制を示しており、また、特に金属イオンで固定された高分子ミセル(組成物10)による処理群は、クレモフォアEL製剤(組成物11)による処理群に比べて高い抑制率を示した。
【0245】
【表21】
【0246】
実施例56 タキソール(登録商標)耐性癌動物モデルに対するCa2+固定化パクリタキセル有高分子ミセルの抗癌活性
細胞を液体窒素中に保存されたものから採取し、インビトロ細胞培養として確立した。細胞を集めた後、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、生存細胞数を測定した。細胞を約7×107細胞/mLの濃度で滅菌PBSに再懸濁した。健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、7×106ヒト癌細胞(HT29)を含有する0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。癌が一定の大きさに達した後、3回異種移植し、3〜4mmの異種移植片を形成した。この異種移植断片を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌容積が一定大きさに達した後、パクリタキセル(クレモフォアEL製剤、タキソール(登録商標))を、q1dX5投与スケジュールにより尾静脈を通じて20mg/kg/日容量で投与した。3週間後、薬剤をq1dX5投与スケジュールにより20mg/kg/日容量で再投与し、タキソール(登録商標)耐性癌の異種移植断片を得た。癌が一定の大きさに達した後、異種移植断片(3〜4mm)を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20−25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌容積が100〜300mm3に達した後、薬剤を投与し、この時点を0日と記録した。0日目にマウスを5群に分け、0、2、4日に金属イオンで固定された高分子ミセル(組成物10)とクレモフォアEL製剤(組成物11)を、様々なパクリタキセル容量で尾静脈を通じて投与し、癌容積を異なる時間間隔で測定した。
【0247】
上記実験で示した通り、金属イオンで固定された高分子ミセルのタキソール(登録商標)耐性癌に対する効果を立証するために、タキソール(登録商標)耐性癌に対する金属イオン固定化高分子ミセルの効果に関する動物モデルを確立した。マウスに接種された癌細胞をタキソール(登録商標)に反復的に曝したところ、タキソール(登録商標)で前処理した癌細胞に対するパクリタキセルのIC50は、元来の癌細胞に対するパクリタキセルのそれより有意に増加した(結果未図示)。この動物モデルで、金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)による処理群は、クレモフォアEL製剤(組成物11)処理群に比べて、図22及び表22に示されたように、おそらく金属イオン固定化高分子ミセルに導入された薬剤の有効血中濃度をより長く維持するので、より高い抑制率を示した。
【0248】
【表22】
【0249】
実施例57 ドキソルビシン耐性癌動物モデルに対するCa2+固定化パクリタキセル含有高分子ミセルの抗癌活性
凍結状態のドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))耐性ヒト子宮肉腫細胞株(MES−SA/Dx5;MDR変異株)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から購入し、10%FBSが添加されたRPMI−1640培地で培養、分離した。細胞を集めた後、滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、生存細胞数を測定した。細胞を約7×107細胞/mLの濃度で滅菌PBSに再懸濁した。健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、7×106ヒト癌細胞(MES−SA/Dx5)を含有する0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。癌が一定の大きさ(500〜700mg)に達した後、その腫瘍片を一定の大きさ(3×3×3mm)で切断し、トロカールニードルを用いて移植した後に3回継代培養し、再び3〜4mmの異種移植片を得た。この異種移植断片を、健常なヌード(nu/nu)無胸腺マウス(20〜25g、8週齢)の右側腹部に、12ゲージトロカールニードルで皮下注射した。癌容積が100〜300mm3に達した後、薬剤を投与し、この時点を0日と記録した。0日目にマウスを5群に分け、0、2、4日に金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)とクレモフォアEL製剤(組成物11)を、尾静脈を通じて、20mg/kgのパクリタキセル容量で投与し、癌容積を異なる時間間隔で測定した。
【0250】
上記実験で示したように、金属イオンで固定された高分子ミセルのドキソルビシン耐性癌に対する効能を立証するために、ドキソルビシン耐性癌動物モデルを確立した。この動物モデルで、金属イオン固定化高分子ミセル(組成物10)による処理群は、クレモフォアEL製剤(組成物11)処理群に比べて、図23及び表23に示されるように、おそらく金属イオン固定化高分子ミセルに導入された薬剤の有効濃度をより長く保持するので、より高い抑制率を示した。
【0251】
【表23】
【0252】
本発明に係る両親媒性ブロック共重合体から製造されたミセルは、無害で薬剤の封入率が高いだけでなく、水溶液中で薬剤を長時間安定に保持するので、注射剤体内に投与した時、薬剤の血漿濃度を向上することができる。
【0253】
また、本発明の高分子組成物は、体液または水溶液中で安定な高分子ミセルまたはナノ粒子を形成しうる。本発明の組成物から形成されたミセルまたはナノ粒子は、親水性外皮と、多量の疎水性薬剤を物理的に封入できる疎水性内核とを有する。本発明の薬剤含有ミセルとナノ粒子は、投与後に血流中での滞留時間が延長されており、様々な医薬製剤を製造するのに使用され得る。
【0254】
上記の具体例は、本発明の原理の適用を説明のみのものであることが理解されるべきである。本発明の精神と範囲を逸脱しなければ、種々の変形や代替態様が導き出せ、添付された特許請求の範囲は、そのような変形やアレンジを含むものである。従って、現在、本発明の最も実用的かつ好ましい形態と見なされるものに関して、図面に示し、また、特定的に詳しく十分に記載したが、特許請求の範囲に記載されたような本発明の原理と概念を逸脱しないならば、種々変形が加えられることは当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0255】
本発明の付加的な特徴と長所は、実施例を通じて本発明の特徴を示す添付図面と共に、詳細な説明から明らかになる。
【図1】図1は、水性環境でモノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド−疎水性部分(mPEG−PLA−疎水性部分)によって形成された高分子ミセルの模式図である。
【図2】図2は、水性環境でカルボン酸ナトリウムにより誘導体化されたD,L−ポリ乳酸によって形成された高分子ミセルの模式図である。
【図3】図3は、水性環境でモノメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド−疎水性部分(mPEG−PLA−疎水性部分)、及びカルボン酸ナトリウムにより誘導体化されたD,L−ポリ乳酸の混合物によって形成された高分子ミセルの模式図である。
【図4】図4は、Ca2+で固定された図3の高分子ミセルの模式図である。
【図5】図5は、ミセルの疎水性コア内に封入された疎水性薬剤を含み、Ca2+で固定された高分子ミセルの模式図である。
【図6】図6は、mPEG−PLA−コレステロール(実施例1)の1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、mPEG−PLA−トコフェロール(実施例7)の1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、様々な時間間隔で様々なジブロック共重合体により製造されたパクリタキセル含有高分子ミセルの投与後における血漿薬剤濃度プロファイルを示す。
【図9】図9は、様々な時間間隔でmPEG−PLA−トコフェロール及びmPEG−PLA−OHにより製造されたパクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセルの投与後にける血漿薬剤濃度を示す。
【図10】図10は、様々な時間間隔でパクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル、クレモフォールEL(タキソール(登録商標))及びツイーン80製剤の投与後における血漿薬剤濃度プロファイルを示す。
【図11】図11は、様々な時間間隔でパクリタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル及びクレモフォールEL(タキソール(登録商標))の投与後における血漿薬剤濃度を示す。
【図12】図12は、様々な時間間隔でドセタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル及びツイーン80製剤(タキソテール(登録商標))の投与後における血漿薬剤濃度を示す。
【図13】図13は、様々な時間間隔でドセタキセル含有Ca2+固定化高分子ミセル及びツイーン80製剤(タキソテール(登録商標))の投与後における血漿薬剤濃度を示す。
【図14】図14は、ヒト乳癌細胞株MX−1を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図15】図15は、ヒト乳癌細胞株MDAMB435Sを用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図16】図16は、ヒト卵巣癌細胞株SKOV−3を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図17】図17は、ヒト卵巣癌細胞株SKOV−3を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図18】図18は、ヒト結腸癌細胞株HT−29を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果(3サイクル)を示す。
【図19】図19は、ヒト結腸癌細胞株HT−29を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図20】図20は、ヒト前立腺癌細胞株PC3を用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図21】図21は、ヒト脳腫瘍細胞株U−373MGを用いたマウスでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図22】図22は、パクリタキセル(タキソール(登録商標))耐性ヒト癌動物モデルでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【図23】図23は、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))耐性ヒト癌動物モデルでの薬剤含有Ca2+固定化高分子ミセルの抗癌効果を示す。
【0256】
参照文献は、例示的な具体例として示すものであり、特別な用語も同様に示されるものである。何れにせよ、それにより本発明の範囲は制限されないものと理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性ブロック共重合体であって、
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、
当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体。
【請求項2】
A−B型ジブロック共重合体またはB−A−B型トリブロック共重合体である請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項3】
親水性Aブロックが、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、及びその誘導体よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項4】
疎水性Bブロックが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン−2−オン、ラクチドとグリコリドの共重合体、ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体、ラクチドとカプロラクトンの共重合体、及びグリコリドとカプロラクトンの共重合体よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項5】
親水性Aブロック対疎水性Bブロックの比率が30:70〜97:3の重量比である請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項6】
親水性ブロックの数平均分子量が200〜50,000ダルトンである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項7】
疎水性ブロックの数平均分子量が50〜50,000ダルトンである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項8】
下記一般式(I’)の両親媒性ブロック共重合体。
R1’−O−[R3’]l’−[R4’]m’−[R5’]n’−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−O−R2’ (I’)
式中、
R1’は、CH3−、H−[R5’]n’−[R4’]m’−またはR2’−O−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−[R5’]n’−[R4’]m’−であり、
R2’はトコフェロールまたはコレステロールであり、
R3’は−CH2CH2−O−、−CH(OH)−CH2−、−CH(C(=O)−NH2)−CH2−、または
【化1】
であり;
R4’は−C(=O)−CHZ’−O−(ここで、Z’は水素原子またはメチル基である)であり;
R5’は−C(=O)−CHY”−O−(ここで、Y”は水素原子またはメチル基である)、−C(=O)−CH2CH2CH2CH2CH2−O−または−C(=O)−CH2CH2CH2−O−であり;
l’は4〜1150の整数であり;
m’は1〜300の整数であり;
n’は0〜300の整数であり;及び
X’は0〜4の整数である。
【請求項9】
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を製造するための方法であって、
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、開始剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下、上記カルボキシル化された疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【請求項10】
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を製造するための方法であって、
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化し、得られたカルボキシ化疎水性化合物をオキサリルクロリドにより活性化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、上記の活性化されたカルボキシル化疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【請求項11】
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を製造するための方法であって、
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物を、連結剤であるジクロライド化合物と混合するステップ;
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、ステップ1)の反応混合物に添加することによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性化合物を化学結合させるステップ;及び
3)段階2)で得られたブロック共重合体を溶解して沈澱させるステップ、
を含む方法。
【請求項12】
請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体を含む薬剤担体。
【請求項13】
請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体と水難溶性薬剤を含み、体液または水溶液中で高分子ミセルを形成し得る医薬組成物。
【請求項14】
水難溶性薬剤の水溶解度が33.3mg/mL以下である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、
疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、
ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している薬剤送達用高分子組成物。
【請求項16】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(I)で表されるものである請求項15に記載の高分子組成物。
RO−CHZ−[A]n−[B]m−COOM (I)
式中、
Aは−COO−CHZ−であり;
Bは−COO−CHY−、−COO−CH2CH2CH2CH2CH2−または−COO−CH2CH2OCH2であり;
Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル、若しくはエチル基であり;
ZとYはそれぞれ水素原子、またはメチル若しくはフェニル基であり;
MはH、Na、K、またはLiであり;
nは1〜30の整数であり;及び
mは0〜20の整数である。
【請求項17】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(II)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
RO−CHZ−[COO−CHX]p−[COO−CHY’]q−COO−CHZ−COOM (II)
式中、
Xはメチル基であり;
Y’は水素原子またはフェニル基であり;
pは0〜25の整数;qは0〜25の整数であり(但し、p+qは5〜25の整数である。);
Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル若しくはエチル基であり;
Zは水素原子、またはメチル若しくはフェニル基であり;及び
MはH、Na、K、またはLiである。
【請求項18】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(III)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
RO−PAD−COO−W−M’ (III)
式中、
W−M’は
【化2】
であり;
PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものであり;
Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル若しくはエチル基であり;及び
MはH、Na、K、またはLiである。
【請求項19】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(IV)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
S−O−PAD−COO−Q (IV)
式中、
Sは
【化3】
であり[ここで、Lは−NR1−または−O−であり(R1は水素原子またはC1-10アルキルである。)、aは0〜4の整数であり、 bは1〜10の整数であり、 MはH、Na、K、またはLiである]、
QはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、またはCH2C6H5であり;及び
PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものである。
【請求項20】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(V)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
【化4】
式中、
R’は−PAD−O−C(O)−CH2CH2−C(O)−OMであり;
PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものであり;
Mは一般式(I)の定義と同義であり;及び
aは1〜4の整数である。
【請求項21】
親水性Aブロックが、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びポリアクリルアミドよりなる群から選択され;
疎水性Bブロックが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサン−2−オン、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドの共重合体、ラクチドとカプロラクトンの共重合体、ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体、及びその誘導体よりなる群から選択されるものである請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項22】
両親媒性ブロック共重合体が下記一般式(I’)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
R1’−O−[R3’]l’−[R4’]m’−[R5’]n’−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−O−R2’ (I’)
式中、
R1’はCH3−、H−[R5’]n’−[R4’]m’−またはR2’−O−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−[R5’]n’−[R4’]m’−であり;
R2’はトコフェロールまたはコレステロールであり;
R3’は−CH2CH2−O−、−CH(OH)−CH2−、−CH(C(=O)−NH2)−CH2−、または
【化5】
であり;
R4’は−C(=O)−CHZ’−O−(ここで、Z’は水素原子またはメチル基である。)であり;
R5’は−C(=O)−CHY”−O−(ここで、Y”は水素原子またはメチル基である。)、−C(=O)−CH2CH2CH2CH2CH2−O−、または−C(=O)−CH2CH2CH2−O−であり;
l’は4〜1150の整数であり;
m’は1〜300の整数であり;
n’は0〜300の整数であり;及び
X’は0〜4の整数である。
【請求項23】
親水性Aブロック及び疎水性Bブロックの数平均分子量が、それぞれ200〜50,000ダルトン及び50〜50,000ダルトンの範囲である請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項24】
両親媒性ブロック共重合体における親水性Aブロック対疎水性Bブロックの比率が30:70〜97:3の重量比である請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項25】
組成物全重量に対して0.1〜99.9wt%の両親媒性ブロック共重合体及び0.1〜99.9wt%のポリ乳酸誘導体を含む請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項26】
ポリ乳酸誘導体の数平均分子量が50〜50,000ダルトンである請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項27】
ポリ乳酸誘導体が、触媒不在下に縮合反応させた後、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、または炭酸カリウムで中和して得られたナトリウムまたはカリウム塩の形態である請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項28】
さらに、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基1当量に対して、0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含む請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項29】
二価または三価金属イオンが、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cr3+、Fe3+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+及びAl3+よりなる群から選択される請求項28に記載の高分子組成物。
【請求項30】
請求項15に記載の高分子組成物から製造されたミセルまたはナノ粒子。
【請求項31】
ミセルまたはナノ粒子の粒径が1〜400nmの範囲である請求項30に記載のミセルまたはナノ粒子。
【請求項32】
請求項15に記載の高分子組成物を70〜99.9wt%及び水難溶性薬剤を0.1〜30wt%含む医薬組成物。
【請求項33】
請求項28に記載の高分子組成物を70〜99.9wt%及び水難溶性薬剤を0.1〜30wt%含む医薬組成物。
【請求項34】
水難溶性薬剤を含有する高分子組成物の製造方法であって、
1)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換された疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、少なくとも1つの末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しているポリ乳酸誘導体、及び水難溶性薬剤を有機溶媒の中に溶解するステップ、及び
2)有機溶媒を減圧留去し、水溶液を加えて水難溶性薬剤を含有する高分子ミセルを形成するステップ、
を含む方法。
【請求項35】
さらに、二価または三価金属イオンを水難溶性薬剤含有高分子ミセルに加え、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基を固定するステップを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
有機溶媒が、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム、酢酸及びジオキサンよりなる群から選択されるものである請求項34に記載の方法。
【請求項37】
抗癌剤として有用な医薬組成物であって、
親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、
疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つ
ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物。
【請求項38】
さらに、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基1当量に対して0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含む請求項37に記載の薬剤学的組成物。
【請求項39】
薬剤耐性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、
親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、
疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つ
ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物。
【請求項40】
さらに、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基1当量に対して0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含む請求項39に記載の薬剤学的組成物。
【請求項1】
両親媒性ブロック共重合体であって、
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、
当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体。
【請求項2】
A−B型ジブロック共重合体またはB−A−B型トリブロック共重合体である請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項3】
親水性Aブロックが、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、及びその誘導体よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項4】
疎水性Bブロックが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン−2−オン、ラクチドとグリコリドの共重合体、ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体、ラクチドとカプロラクトンの共重合体、及びグリコリドとカプロラクトンの共重合体よりなる群から選択されるものである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項5】
親水性Aブロック対疎水性Bブロックの比率が30:70〜97:3の重量比である請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項6】
親水性ブロックの数平均分子量が200〜50,000ダルトンである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項7】
疎水性ブロックの数平均分子量が50〜50,000ダルトンである請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体。
【請求項8】
下記一般式(I’)の両親媒性ブロック共重合体。
R1’−O−[R3’]l’−[R4’]m’−[R5’]n’−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−O−R2’ (I’)
式中、
R1’は、CH3−、H−[R5’]n’−[R4’]m’−またはR2’−O−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−[R5’]n’−[R4’]m’−であり、
R2’はトコフェロールまたはコレステロールであり、
R3’は−CH2CH2−O−、−CH(OH)−CH2−、−CH(C(=O)−NH2)−CH2−、または
【化1】
であり;
R4’は−C(=O)−CHZ’−O−(ここで、Z’は水素原子またはメチル基である)であり;
R5’は−C(=O)−CHY”−O−(ここで、Y”は水素原子またはメチル基である)、−C(=O)−CH2CH2CH2CH2CH2−O−または−C(=O)−CH2CH2CH2−O−であり;
l’は4〜1150の整数であり;
m’は1〜300の整数であり;
n’は0〜300の整数であり;及び
X’は0〜4の整数である。
【請求項9】
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を製造するための方法であって、
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、開始剤であるジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下、上記カルボキシル化された疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【請求項10】
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を製造するための方法であって、
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物をカルボキシ化し、得られたカルボキシ化疎水性化合物をオキサリルクロリドにより活性化するステップ;及び
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、上記の活性化されたカルボキシル化疎水性化合物と反応させることによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基にカルボキシル化疎水性化合物を化学結合させるステップ
を含む方法。
【請求項11】
親水性Aブロック、及び末端にヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含み、当該疎水性ブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されている両親媒性ブロック共重合体を製造するための方法であって、
1)トコフェロールまたはコレステロール基を有する疎水性化合物を、連結剤であるジクロライド化合物と混合するステップ;
2)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体を、ステップ1)の反応混合物に添加することによって、疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基に疎水性化合物を化学結合させるステップ;及び
3)段階2)で得られたブロック共重合体を溶解して沈澱させるステップ、
を含む方法。
【請求項12】
請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体を含む薬剤担体。
【請求項13】
請求項1に記載の両親媒性ブロック共重合体と水難溶性薬剤を含み、体液または水溶液中で高分子ミセルを形成し得る医薬組成物。
【請求項14】
水難溶性薬剤の水溶解度が33.3mg/mL以下である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックを含む両親媒性ブロック共重合体、並びにポリ乳酸誘導体を含み、
疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、
ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している薬剤送達用高分子組成物。
【請求項16】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(I)で表されるものである請求項15に記載の高分子組成物。
RO−CHZ−[A]n−[B]m−COOM (I)
式中、
Aは−COO−CHZ−であり;
Bは−COO−CHY−、−COO−CH2CH2CH2CH2CH2−または−COO−CH2CH2OCH2であり;
Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル、若しくはエチル基であり;
ZとYはそれぞれ水素原子、またはメチル若しくはフェニル基であり;
MはH、Na、K、またはLiであり;
nは1〜30の整数であり;及び
mは0〜20の整数である。
【請求項17】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(II)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
RO−CHZ−[COO−CHX]p−[COO−CHY’]q−COO−CHZ−COOM (II)
式中、
Xはメチル基であり;
Y’は水素原子またはフェニル基であり;
pは0〜25の整数;qは0〜25の整数であり(但し、p+qは5〜25の整数である。);
Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル若しくはエチル基であり;
Zは水素原子、またはメチル若しくはフェニル基であり;及び
MはH、Na、K、またはLiである。
【請求項18】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(III)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
RO−PAD−COO−W−M’ (III)
式中、
W−M’は
【化2】
であり;
PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものであり;
Rは水素原子、またはアセチル、ベンゾイル、デカノイル、パルミトイル、メチル若しくはエチル基であり;及び
MはH、Na、K、またはLiである。
【請求項19】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(IV)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
S−O−PAD−COO−Q (IV)
式中、
Sは
【化3】
であり[ここで、Lは−NR1−または−O−であり(R1は水素原子またはC1-10アルキルである。)、aは0〜4の整数であり、 bは1〜10の整数であり、 MはH、Na、K、またはLiである]、
QはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、またはCH2C6H5であり;及び
PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものである。
【請求項20】
ポリ乳酸誘導体が下記一般式(V)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
【化4】
式中、
R’は−PAD−O−C(O)−CH2CH2−C(O)−OMであり;
PADはD,L−ポリ乳酸、D−ポリ乳酸、ポリマンデル酸、D,L−乳酸とグリコール酸の共重合体、D,L−乳酸とマンデル酸の共重合体、D,L−乳酸とカプロラクトンの共重合体、及びD,L−乳酸と1,4−ジオキサン−2−オンの共重合体よりなる群から選択されるものであり;
Mは一般式(I)の定義と同義であり;及び
aは1〜4の整数である。
【請求項21】
親水性Aブロックが、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びポリアクリルアミドよりなる群から選択され;
疎水性Bブロックが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサン−2−オン、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドの共重合体、ラクチドとカプロラクトンの共重合体、ラクチドとジオキサン−2−オンの共重合体、及びその誘導体よりなる群から選択されるものである請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項22】
両親媒性ブロック共重合体が下記一般式(I’)で示される請求項15に記載の高分子組成物。
R1’−O−[R3’]l’−[R4’]m’−[R5’]n’−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−O−R2’ (I’)
式中、
R1’はCH3−、H−[R5’]n’−[R4’]m’−またはR2’−O−C(=O)−(CH2)x’−C(=O)−[R5’]n’−[R4’]m’−であり;
R2’はトコフェロールまたはコレステロールであり;
R3’は−CH2CH2−O−、−CH(OH)−CH2−、−CH(C(=O)−NH2)−CH2−、または
【化5】
であり;
R4’は−C(=O)−CHZ’−O−(ここで、Z’は水素原子またはメチル基である。)であり;
R5’は−C(=O)−CHY”−O−(ここで、Y”は水素原子またはメチル基である。)、−C(=O)−CH2CH2CH2CH2CH2−O−、または−C(=O)−CH2CH2CH2−O−であり;
l’は4〜1150の整数であり;
m’は1〜300の整数であり;
n’は0〜300の整数であり;及び
X’は0〜4の整数である。
【請求項23】
親水性Aブロック及び疎水性Bブロックの数平均分子量が、それぞれ200〜50,000ダルトン及び50〜50,000ダルトンの範囲である請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項24】
両親媒性ブロック共重合体における親水性Aブロック対疎水性Bブロックの比率が30:70〜97:3の重量比である請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項25】
組成物全重量に対して0.1〜99.9wt%の両親媒性ブロック共重合体及び0.1〜99.9wt%のポリ乳酸誘導体を含む請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項26】
ポリ乳酸誘導体の数平均分子量が50〜50,000ダルトンである請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項27】
ポリ乳酸誘導体が、触媒不在下に縮合反応させた後、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、または炭酸カリウムで中和して得られたナトリウムまたはカリウム塩の形態である請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項28】
さらに、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基1当量に対して、0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含む請求項15に記載の高分子組成物。
【請求項29】
二価または三価金属イオンが、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Cr3+、Fe3+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+及びAl3+よりなる群から選択される請求項28に記載の高分子組成物。
【請求項30】
請求項15に記載の高分子組成物から製造されたミセルまたはナノ粒子。
【請求項31】
ミセルまたはナノ粒子の粒径が1〜400nmの範囲である請求項30に記載のミセルまたはナノ粒子。
【請求項32】
請求項15に記載の高分子組成物を70〜99.9wt%及び水難溶性薬剤を0.1〜30wt%含む医薬組成物。
【請求項33】
請求項28に記載の高分子組成物を70〜99.9wt%及び水難溶性薬剤を0.1〜30wt%含む医薬組成物。
【請求項34】
水難溶性薬剤を含有する高分子組成物の製造方法であって、
1)親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換された疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、少なくとも1つの末端が少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合しているポリ乳酸誘導体、及び水難溶性薬剤を有機溶媒の中に溶解するステップ、及び
2)有機溶媒を減圧留去し、水溶液を加えて水難溶性薬剤を含有する高分子ミセルを形成するステップ、
を含む方法。
【請求項35】
さらに、二価または三価金属イオンを水難溶性薬剤含有高分子ミセルに加え、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基を固定するステップを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
有機溶媒が、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム、酢酸及びジオキサンよりなる群から選択されるものである請求項34に記載の方法。
【請求項37】
抗癌剤として有用な医薬組成物であって、
親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、
疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つ
ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物。
【請求項38】
さらに、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基1当量に対して0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含む請求項37に記載の薬剤学的組成物。
【請求項39】
薬剤耐性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、
親水性Aブロック及び末端ヒドロキシル基を有する疎水性Bブロックの両親媒性ブロック共重合体、ポリ乳酸誘導体、及び抗癌剤を含み、
疎水性Bブロックの末端ヒドロキシル基がトコフェロールまたはコレステロール基で置換されており、且つ
ポリ乳酸誘導体の少なくとも1つの末端が、少なくとも1つのカルボキシル基と共有結合している医薬組成物。
【請求項40】
さらに、ポリ乳酸誘導体の末端カルボキシル基1当量に対して0.01〜10当量の二価または三価金属イオンを含む請求項39に記載の薬剤学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2006−526052(P2006−526052A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508547(P2006−508547)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002583
【国際公開番号】WO2005/035606
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(500578515)サムヤン コーポレイション (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002583
【国際公開番号】WO2005/035606
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(500578515)サムヤン コーポレイション (20)
【Fターム(参考)】
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