説明

両親媒性ペプチド含有医薬組成物

【課題】 経口または経腸投与した生理活性タンパク質を腸管内から血中に移行させる医薬組成物医薬組成物を提供する。これにより、生理活性タンパク質の経口経腸投与が可能となり、患者の苦痛、不便を大幅に改善する薬剤を提供することが出来る。
【解決手段】 経口または経腸投与した生理活性タンパク質を腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質および両親媒性ペプチドを含有することを特徴とする医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性タンパク質の活性を保持した状態で腸管内から血中に移行させるための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、ペプチドやタンパク質からなるいくつかの生理活性物質が臨床現場に登場し、医薬品として使用されて顕著な治療効果を示している。しかしながら、現在その投与方法はほとんどの場合注射剤に限られている。これは、ペプチドやタンパク質は経口投与をした際には消化管に存在する酵素(プロテアーゼ)による分解を受けやすく、また腸管からの吸収効率が低いために経口投与されたペプチドやタンパク質のごく一部しか血中に到達しないことが主な理由となっている。特に後者については、腸管は、本来生体にとって有害な物質を体内に入れないための障壁としての役割を担っているために、腸管上皮細胞層は本質的にペプチド、タンパク質のようなある程度以上の分子量を有する親水性の物質を透過させにくい性質を有しており、この障壁を越えて生理活性タンパク質を血中に移行させることは非常に困難と考えられている。
【0003】
薬剤を注射投与することは、特に、治療が頻回、長期にわたる場合には、患者および医師にとって大きな負担であり、このため生理活性ペプチドやタンパク質を経口投与可能にするための様々な方法が検討されてきた。例えば、添加物として界面活性剤などを共存させて人工的に腸管の浸透性を向上させる方法が試みられているが、非特異的に腸管透過性を上げる物質を用いることは生体にとって有害な物質も体内に流入する危険性を排除できない。
【0004】
近年、特定の配列を有する両親媒性ペプチドが、細胞膜を透過する性質を有することが見いだされてきている。例えば、一次構造上疎水性の領域と親水性の領域がわかれて存在する“Primary Amphipathicity”を有するペプチドや、ペプチドがαヘリックスなどの2次構造をとったときに疎水性の面と親水性の面が生じる“Secondary Amphipathicity”を有するペプチドにおいて細胞膜を効率よく透過して細胞内に移行するペプチドが存在することが示されており、このような細胞透過性のペプチドに蛋白質、DNAなどをコンジュゲート化することで目的物質を細胞外から細胞内に取り込ませることが可能であることが報告されている(非特許文献1、2参照)。
【0005】
このような細胞透過性ペプチドと薬剤のコンジュゲートを用いることで経口投与した薬剤を腸壁を透過させて血中へ移行させることは、可能性として提示はされているものの、実証には到っていない。これは、腸壁を透過させて薬剤を血中に移行させることは、腸壁細胞層を構成する上皮細胞の管腔側の刷子縁膜と血管側の側底膜の2つのバリアを透過する必要があり、細胞内への侵入とは異なった機能が必要とされることに起因すると考えられる。また、腸管内には、ペプチド分解活性を持つ酵素(プロテアーゼ)が種々存在しているため、用いる細胞透過性ペプチドが速やかに分解されてしまい、その機能を失う可能性も考えられる。この酵素分解の受け易さはペプチドの配列に依存するため、試験管内の細胞実験において高い細胞膜透過性を示すペプチドであっても、その配列によっては腸管内では機能しないことが考えられる。このような要因から、これまでに、細胞透過性ペプチドを利用して腸管内から血中への高効率での生理活性タンパク質の移行を実証した例は知られていない。
【0006】
また、細胞透過性ペプチドを用いる以外の方法として、生理活性タンパク質に透過性キャリアとして分子内に疎水性部分を有する低分子量のアミノ酸誘導体を共存させる方法が報告されている(特許文献1参照)が、この方法では共存させるアミノ酸誘導体中の疎水性部分と細胞膜との非特異的かつ受動的な弱い作用で取り込みが起こると考えられ、高い効率で生理活性タンパク質を血中に移行させることは困難であり、必然的に用いるキャリアの量が非常に多くなってしまう。このことは、生体成分ではない修飾アミノ酸誘導体であるキャリアを大量に生体に投与することによる望ましくない影響への懸念につながる。また大量のキャリアを必要とすることはコストの点からも望ましくない。
【非特許文献1】Biopolymers (2004) volume 76, 196-203
【非特許文献2】Experimental Cell Research (2001) volume 269, 237-244
【特許文献1】特表平8−509474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、経口または経腸投与した生理活性タンパク質を、腸管内から血中に移行させる医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を克服するために、本発明者らは、通常の条件では腸管からの血中移行性の低い生理活性タンパク質に対して、その腸管吸収性を向上させる手段を検討した結果、生理活性タンパク質と両親媒性ペプチドを含有する組成物が有効であることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のような構成を有する。
【0010】
経口または経腸投与した生理活性タンパク質を腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質および両親媒性ペプチドを含有することを特徴とする医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、生理活性タンパク質の経口または経腸投与が可能となり、従来の注射による投与法に比べ、簡便で患者に優しい薬物治療が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、生理活性タンパク質を、腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質および両親媒性ペプチドを含有することを特徴とする医薬組成物である。
【0013】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドには、一次構造上疎水性の領域と親水性の領域がわかれて存在する“Primary Amphipathicity”を有するペプチド、および、ペプチドがαヘリックスなとの2次構造をとったときに疎水性の面と親水性の面が生じる“Secondary Amphipathicity”を有するペプチドが含まれる(非特許文献1)。
【0014】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、一次構造上疎水性の領域と親水性の領域がわかれて存在するペプチド、例えば、ブロックA−ブロックBまたはブロックB−ブロックAの構造を有し、ブロックAは80%以上のアミノ酸が疎水性アミノ酸からなる5−10個のアミノ酸の並びであり、かつ、ブロックBは60%以上のアミノ酸が親水性のアミノ酸から構成される5−15個のアミノ酸の並びであるペプチドは、特に好ましい。本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、親水性アミノ酸として塩基性アミノ酸を有するものは、さらに好ましい。このような性質を持つ特に好適なペプチドの例として、pVEC(非特許文献2)と呼ばれるペプチドがあげられる。
【0015】
なお、本発明において、疎水性アミノ酸とは、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、バリン、アラニンからなる群から選ばれるアミノ酸を表し、親水性アミノ酸とは、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンからなる群から選ばれるアミノ酸を表す。また、塩基性アミノ酸とは、リジン、アルギニン、ヒスチジンからなる群から選ばれるアミノ酸を表す。
【0016】
本発明の両親媒性ペプチドを構成するアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸の他に、天然のアミノ酸の構造を一部改変した誘導体など非天然のアミノ酸も使用されうる。例えば、立体配置がD体のアミノ酸は、腸管中に存在する蛋白分解酵素による分解を受けにくいことから有効に使用される。
【0017】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、通常のペプチド合成の方法を用いて合成することが可能である。
【0018】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、大腸菌などの微生物、動物細胞、昆虫細胞などに目的とする両親媒性ペプチドを含む配列をコードする遺伝子を導入して発現させて作製することも可能である。
【0019】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、天然に存在するペプチドを単離または単離後分解して用いることも可能である。
【0020】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、両親媒性ペプチドは、単一のペプチドとしてもまたは2種以上のペプチドの混合物としても使用することができる。
【0021】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、より好ましくは、Leu−Leu−Ile−Ile−Leu−Arg−Arg−Arg−Ile−Arg−Lys−Gln−Ala−His−Ala−His−Ser−Lysのアミノ酸配列を有する。
【0022】
本発明において用いられる両親媒性ペプチドは、より好ましくは、Leu−Leu−Ile−Ile−Leu−Arg−Arg−Arg−Ile−Arg−Lys−Gln−Ala−His−Ala−His−Ser−Lysのアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が欠失、置換または付加された配列からなる。
【0023】
本発明で用いられる両親媒性ペプチドは、その量が多すぎると腸管に対して非特異的な障害作用を示す可能性があり、またコストの面でも投与量が少ないことが望ましい。このため、本医薬組成物における生理活性タンパク質と両親媒性ペプチドの混合比は、(両親媒性ペプチドの分子数)/(生理活性タンパク質の分子数)の数値として、3000以下であることが望ましく、より好ましくは1000以下であり、より好ましくは200以下である。
【0024】
本発明で使用される生理活性タンパク質としては、ペプチドホルモン、酵素タンパク質、抗体などがある。
【0025】
本発明で使用される生理活性タンパク質は、例えば、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、インスリン、アンギオテンシン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、ガストリン、成長ホルモン、プロラクチン(黄体刺激ホルモン)、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)、サイロトロピックホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、バソプレシン、オキシトシン、プロチレリン、黄体形成ホルモン(LH)、コルチコトロピン、ソマトロピン、チロトロピン(甲状腺刺激ホルモン)、ソマトスタチン(成長ホルモン刺激因子)、視床下部ホルモン(GnRH)、G−CSF、エリスロポエチン、HGF、EGF、VEGF、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン類、スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)、ウロキナーゼ、リゾチーム、ワクチン等をあげることができる。
【0026】
本発明で使用される生理活性タンパク質は、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インターフェロン類、インターロイキン類、およびG−CSFであることが好ましく、さらに、インスリンがより好ましい。
【0027】
これら生理活性タンパク質は、天然のタンパク質またはペプチドであっても、その配列の一部を改変した誘導体であっても構わない。また、ポリエチレングリコール(PEG)化などの化学的な修飾を行った誘導体であっても構わない。
【0028】
本発明で使用される生理活性タンパク質は、生理活性タンパク質の大きさは、特に限定されるものではないが、十分高い腸管透過効率を得るためには分子量が30000以下であることが望ましく、10000以下であることがさらに望ましい。
【0029】
また、本発明で用いられる生理活性タンパク質の等電点は、特に限定されるものではないが、等電点が7以下であることが好ましく、より好ましくは等電点が5.5以下の生理活性タンパク質を用いることが望ましい。例えばインスリンは頻回投与が必要な比較的分子量の小さい等電点が7以下のタンパク質であり、特に好適に使用されうる。
【0030】
本発明でいう生理活性タンパク質が腸管内から血中に移行するとは、生理活性タンパク質を腸管内に投与した時に、その生理活性タンパク質の血中濃度の上昇または薬理活性の発現が確認されることを意味する。生理活性タンパクの血中濃度は、免疫学的測定法など通常、用いられる方法で測定することができる。また薬理活性は、例えば、酵素であればその酵素活性、細胞の受容体に作用する物質であれば、標的細胞の機能あるいはマーカー物質の産生量を変化させる能力などを指標に測定することができる。例えば、インスリンの薬理活性であれば、投与した動物の血中グルコース濃度を指標に測定することが可能である。経口または経腸投与した生理活性タンパクが医薬品として十分な機能を発揮するためには、AUC(血中濃度−時間曲線下面積)の値として、同量の生理活性物質を皮下に投与したときを100%としたときに3%以上の移行が認められることが望ましく、10%以上であることがさらに望ましい。
【0031】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、生理活性タンパク質と両親媒性ペプチドが共有結合で連結されていない。
【0032】
本発明は、生理活性タンパク質を、腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質および両親媒性ペプチドを含有することを特徴とする医薬組成物である。
【0033】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、溶液、固体、粉末状などの種々の形態で使用されうるが、安定性及び取扱いの容易さから、例えば、凍結乾燥等の方法で、固形状あるいは粉末状にした形態が好ましく、粉末または固形製剤であることが好ましい。
【0035】
経口投与に用いられる医薬組成物としては、好ましくは腸溶性製剤として、例えば腸溶性カプセル等に充填するか、あるいは錠剤として打錠された後、腸溶性コーティングを行うなどの方法によって腸溶性の経口投与用医薬組成物として使用される。
【0036】
本発明の医薬組成物を、動物(ヒトを含む)に経口または経腸投与する方法には、特にその具体的形態に制限はない。例えば、経口剤としては、乾燥状態のものあるいは溶液状のものをそのまま服用したり、あるいはそれを賦形剤とともにカプセルに充填して服用したり、さらには乾燥状態のものを水に一旦もどして分散させてから服用したりすることができる。坐剤の形態を利用して直腸等に直接的に投与することもできる。生理活性タンパク質を動物に投与する方法は、経口または経腸投与することが好ましい。
【0037】
本発明により、これまで注射剤として用いられてきた生理活性タンパク質の経口経腸投与が可能となり、患者の苦痛、不便を大幅に改善する薬剤を提供することが出来る。これらの注射剤が患者に与える苦痛や通院の不便を改善することは医療現場における患者本位の医療を実現するだけではなく、これまでのタンパク質製剤の概念を根底から変え、画期的製剤の創製につながる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されない。
【0039】
実施例1
pVECによるインスリンin situ(ラット)腸管吸収促進効果。
【0040】
<方法>
1.インスリン溶液の調製
ヒトリコンビナントインスリン(和光純薬)1.923mg(=50IU=0.33
μmol)を秤量し、0.1M塩酸50μlに溶解した。これにメチルセルロース(MC)
添加リン酸生理緩衝液pH7.4(PBS)1.2mlおよび0.1MNaOH溶液5
0μlを加えて中和し、さらにMC添加PBS1.2mlを加えて総容量を2.5m
lとした。(インスリン濃度0.769mg/ml=20IU/ml)。
【0041】
2.インスリン−pVECペプチド混合液の調製
pVEC(シグマジェノシス社にて合成、配列:Leu−Leu−Ile−Ile−Leu−Arg−Arg−Arg−Ile−Arg−Lys−Gln−Ala−His−Ala−His−Ser−Lys)0.609mg (0.25mmol) を秤量し、上記1で作製したインスリン溶液0.5ml(インスリン0.385mg=0.066μmol)を添加して溶解し、pVEC−インスリン混合溶液とした。コントロール(pVEC無し)については、インスリン溶液そのものを投与に用いた。
【0042】
3.ラット腸管吸収実験
24時間絶食した体重約200gのSD系雄性ラットにペントバルビタールナトリ
ウム50mg/kgを腹腔内注射することにより麻酔した後、正中線に沿って開腹し、腸
管を露出した。回盲接合部から2−3cm回腸よりの部分からシリコンチューブを、お
よびその上部約10cmの部分からゾンデを挿入し、さらに内側6cmの部分に縫合糸を
通した。
【0043】
ゾンデから、あらかじめ37℃に加温したリン酸生理緩衝液pH7.4(PBS)
40mlを流速5ml/minで流し込んで内容物を排出させた後、シリコンチューブに栓をし
て、ゾンデからあらかじめ37℃に加温したPBS1mlを投与し、30分貯留させた。
投与後は速やかにゾンデに栓をして、腸管を腹腔内に戻して切開部をクリップで閉じ
安静にした。
【0044】
貯留後、ゾンデおよびシリコンチューブの栓をはずし、ループ内にあらかじめ37℃
に加温したPBS20mlを流速5ml/minで流し込んで内容物を排出させた後、あらか
じめ縫合糸を通した6cmの部分を結紮してループを作成した。このループ内に、2.で調製したpVEC−インスリン混合溶液0.5mlを投与し、腸管を腹腔内に戻し、切開部をクリップで閉じ安静にした。
【0045】
実験中のラットは、温水循環ポンプにより37℃に加温したホットプレート上に背
位で固定し体温調節を行った。
【0046】
投与前および投与後5、10、15、30、60、120、180、240分後に
頸静脈より0.25mlを採血し、ノボアシストプラスを用いて血糖値の測定を行った。
残りの血液は遠心分離により血漿に分離し、酵素免疫測定法によりインスリン濃度を
定量した。
【0047】
同量のインスリン溶液(pVEC無し)を皮下に投与したラットについても、同様にして採血、測定を行ない、その時の血中濃度AUC(時間曲線下面積)値および血糖値低下活性を100%として、生物学的利用能(BA)および薬理学的利用率(PA)を算出した。
【0048】
<結果>
コントロールのインスリン単独の投与時と比較して、pVECを同時投与することにより、血中インスリン濃度の明らかな上昇、および血糖値の明らかな低下が認められた(図1および図2)。
【0049】
本結果から算出される生物学的利用能(BA)は、インスリン単独投与の場合が0.43%に対してpVEC−インスリン混合溶液投与では15.53%、また薬理学的利用率(PA)はインスリン単独投与の場合が0.07%に対してpVEC−インスリン混合溶液投与では7.75%と、それぞれ30倍以上、100倍以上の顕著な上昇が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】pVECペプチドと混合したインスリンをラット腸管ループ内に投与し、経時的に採血した血漿サンプル中のインスリン濃度を測定した結果を示す。Insulin solutionは、同量のインスリンを単独で投与したコントロールラットでの結果を示す。
【図2】図1の各サンプルにおける血糖値測定結果を示す。Insulin solutionは、同量のインスリンを単独で投与したコントロールラットでの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口または経腸投与した生理活性タンパク質を腸管内から血中に移行させる医薬組成物であって、成分として生理活性タンパク質および両親媒性ペプチドを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
生理活性タンパク質と両親媒性ペプチドが共有結合で連結されていないことを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
両親媒性ペプチドが、Leu−Leu−Ile−Ile−Leu−Arg−Arg−Arg−Ile−Arg−Lys−Gln−Ala−His−Ala−His−Ser−Lysのアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
両親媒性ペプチドが、Leu−Leu−Ile−Ile−Leu−Arg−Arg−Arg−Ile−Arg−Lys−Gln−Ala−His−Ala−His−Ser−Lysのアミノ酸配列において1もしくは2個のアミノ酸が欠失、置換または付加された配列からなる、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
生理活性タンパク質の等電点が7以下である請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
生理活性タンパク質の分子量が、30000以下である請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
生理活性タンパク質が、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インターフェロン類、インターロイキン類、および、G−CSFから選ばれる請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
生理活性タンパク質が、インスリンである請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
粉末または固形製剤である請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
生理活性タンパク質を動物に投与する方法であって、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物を経口または経腸投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−7448(P2008−7448A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178118(P2006−178118)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成18年度独立行政法人科学技術振興機構革新技術開発研究事業」の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】